Music TO GO!

2025年11月26日

AV WatchにDITA VENTURAのレビュー記事を執筆

AV WatchにDITAの新しいフラッグシップ「VENTURA」の詳細なレビューを執筆しました。CEOのダニー氏から直接聞いた話も交えてVenturaの全てに迫ります。

https://av.watch.impress.co.jp/docs/review/review/2062171.html

5-1 外で聴いてるイメージ、VENTURAとSR35 2.JPG
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2025年11月25日

音質のパーソナライズが可能なfinal新フラッグシップTWS「TONALITE」レビュー

本稿はfinalの新フラッグシップTWS「TONALITE」の音質を中心にしたレビュー記事です。TONALITEの特徴は端的にいうとDTASという技術で「音色のパーソナライズ」ができるという点と、ハードウエア的にfinalの最新最強のTWSであるということです。

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まず「音色のパーソナライズ」から説明します。

* パーソナライズとTONALITE

世の中に「パーソナライズ」ができるイヤフォンは今や珍しくありません。しかし、それらのほとんどは補聴器の延長的な「聞こえ・聴力のパーソナライズ」ができるタイプです。また一部のものは空間知覚(空間オーディオ)をパーソナライズできるものもあります。それらに対してfinalの技術がパーソナライズするのは「音色」です。
このようにイヤフォンの「パーソナライズ」とは分類すると、聴力(パーソナライズの多く)、空間知覚(パーソナライズの一部)、音色(finalのみ)の3種類に分けられます。つまりfinalの技術は補聴器技術や映画視聴の延長ではなく、「音色」というハイファイオーディオのための本質的な「音質のパーソナライズ」ができる唯一の存在です。

もう少し補足しましょう。
同じ楽器でも音が違うのは「音色」が異なっているからです。ただし、その感じ方は人の身体形状で変わります。なぜかというと、例えば直進性が強い高い周波数の音は耳穴に直接入るわけではなく、耳たぶにあたって反射した音が耳穴に入ります。低音は直進しないで曲がるので、顔かたちに沿って直接耳穴に入ります。このように音の聞こえ方は個人の外形の影響を受けますが、それでもピアノの音が個人ごとに違わないのは脳が補正しているからです。これは人間が生まれ持った機能の一つです。
しかし、イヤフォンは直接耳に挿入するので、そうした耳たぶや顔の形が影響するはずの現実の音とは異なる聞こえ方となり、脳が補正できません。それでもヘッドフォンやイヤフォンの音がスピーカーのように正しく聞こえるのは、イヤフォンの音を現実に似せて補正する仕組み、いわゆるハーマンカーブに代表されるターゲットカーブ(特性曲線)を使用して本来聞こえるはずの音に補正するからです。しかしこれは万人向けであり、個人の外形差は反映できません。つまりターゲットカーブでだいたいは補正できますが、完全には補正できません。その足りない個人差まで完全に補正ができるのがfinalの技術(JDH/DTAS)となるわけです。

簡単に例えるとハーマンカーブなどは万人向けの店頭売りの既成品メガネであり、0.5度くらい違うけどなんとなく合うのでOKなメガネです。それでもメガネがないよりはずっとマシです。それに対してfinalの技術は個人の眼球を測定して作る完全オーダーメイドのメガネなのでピッタリと度数が合い、ものがよりピントが合ってはっきりくっきり見えるわけです。
これは後述のDTASありなしの聞こえ方の違いにも関係してくると思います。DTASは細部がよく見える(解像力が上がる)のではなく、今までズレていた世界の輪郭を正しい位置に戻してピッタリ見えるようにするわけです。

そのfinalの技術の第一弾がZE8000に適用する「自分ダミーヘッド(JDH)」と呼ばれる技術で、測定して自分に似せた仮想のダミーヘッドを作り、それをコンピューター内で物理シミュレーションするという技術です。
これについては私が以前体験した記事をアスキーに以前に書いているので参照してください。
https://ascii.jp/elem/000/004/177/4177228/

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しかし効果は高かったものの、「自分ダミーヘッド」はオプション価格も高価で、final本社の測定機器を使うために手軽なものとは言えませんでした。finalはそれをより手軽に自分の家でスマホを使って測定可能として、「DTAS」という第二世代技術を開発しました。また中の技術もJDHから改良されているようです。
そして「DTAS」を適用した新規開発のフラッグシップTWSが「TONALITE(トナリテ)」です。パーソナライズは手持ちのスマホ(iPhone/Android)で、finalのアプリを使用して行います。
TONALITEとDTASを用いたパーソナライズの手順についてはAV Watchに書いた先日の体験会の記事を参照ください。
https://av.watch.impress.co.jp/docs/review/review/2060103.html IMG_3868.jpg
少し補足するとGeneral(一般)とPersonalized(パーソナライズ)の二通りがありますが、PersonalizedはGeneralから個人カスタマイズするのではなく、一から毎回作り直すとのことです。

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簡単に手順を再掲すると、まずARマーカー付きのヘッドバンドを頭に被り、自分のスマホのインカメで顔・頭部の撮影を上下左右行います。これはスマホの顔認証と似ていて簡単です。
次に耳のアップの撮影をします。ここが自分ではスマホ画面が見えないので多少やりにくいかもしれませんが、コツはスマホを持つ手を動かさないで頭だけ動かすことだと思います。自分で思うよりも手前で撮影されるようです。
今度はTONALITEをイヤーピースを取り付けて耳に装着します。すると耳にキュイーンというスイープ音が強弱で聞こえ、すぐ測定は終わります。これは簡単です。
この次は普通に聞いている状態を再現するためイヤーピースを外して耳に付け直します。同様にスイープ音で測定します。このときには周囲は静かでなければなりません。コツとしては始めに二本の指で挟んできっちりと耳穴に位置決めしてから一本指で軽く抑えた方が良いでしょう。
こうした作業が終わるとサーバーにデータが送られて、コンピューターの中でシミュレーションが行われ、データが作成されます。終わるとTONALITEに書き込みが行われます。

自分ダミーヘッドの時は大学の実験室で研究しているようなものものしい感じでしたが、それに比べるとだいぶ簡単です。とても厳密に行わなければならないものでもなく、やり直しもできます。慣れない体験だと思いますが気軽にやってみるのが良いと思います。

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* TONALITEのイヤフォンとしての特徴

次のTONALITEの特徴であるハードウエア的にfinalの最新最強のTWSであるということを説明します。
DTAS Personalizedの音を正確に再現するには、計算結果をイヤフォンのドライバーユニットの出力に0.1dBレベルで正確に反映させる必要があるとのこと。つまりイヤフォンの性能が高くなければなりません。ドライバーユニットは「f-CORE for DTAS」という新規設計です。
この精度を実現するために通常は接着される振動板とエッジを一体化。コイルの引出しも空中配線を採用するなど、接着剤を削減することで高い精度を実現しています。この辺りはダイナミック型ドライバーユニットを設計から製造まで自社開発できるfinalの強みなのでしょう。

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またインナーベント機構によって筐体内部の空気圧を最適化と密閉性を両立させたとありますが、これはTONALITEの特徴の一つである「トリプル・ハイブリッドノイズキャンセリング」にも関係してきます。
一般的なANCはデュアルハイブリッド方式と呼ばれ、フィードバック方式(内部マイク)とフィードフォワード方式(外側マイク)がミックスされたという意味です。TONALITEの場合はトリプルなのでもう一つはというとそれは筐体自体の遮音性での「パッシブ・ノイズキャンセリング」です。これはカナルイヤフォンでは一般的ですが、finalの場合はここに秘密があります。
ダイナミックドライバーではドライバーの最適動作のためにベント穴が必要ですが、それは同時に遮音性を落としてしまうことにもなります。そこでTONALITEではそのベントの仕組みに長いチューブを組み合わせて減衰させることで密閉度を上げることに成功したということです
そしてこの「ダイナミックドライバーで密閉度を上げる」という発想は、フラッグシップ有線イヤフォン「A10000」での開発ノウハウを元にしたものであり、密閉状態で低域を稼ぐことで振動板の動きを抑制して低域の歪みを小さくするという効果があります。
ちなみにANCはアプリ内の設定で「音質優先」と「ANC優先」が選択可能ですが、DTASを有効にしている時は音質優先のみとなります。

イヤーピースにはシリコンの柔軟性とフォームの遮音性を兼ね備えたFUSION-Gを採用、イヤーピースは交換可能ですがDTASの仕組み上で測定時と異なるものを使用するとあまり良くないでしょう。ワイヤレスのコーデックはSBC、AAC、LDACです。

* 実機のインプレッション

パッケージには本体の他にARマーカーシールや布製のヘッドバンドなど測定用具一式が入っています。
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本体はオカリナのような形状で、表面にシボ加工が施してあり高級感があります。ヒンジが金属なのも耐久性がありそうです。イヤーピース部分にはZE8000のイヤーピースのような耳掛けが設けられていてしっかりと耳に装着できます。やや大きめですが装着感は良好です。本体を掴みやすく、ケースから取り出しやすい形状でもあります。

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* TONALITEの音質 - DTAS適用前

まずDTAS適用前にしっかりと音傾向を確認しました。この時はGeneralプロファイルで聴くことになるのでTONALITE(General)と記します。
今回は時間があるので数十時間エージングしてから聴き始めましたが、はじめに思ったことはさきの体験会の時はおそらくエージングがあまりされていなかったのではないかということです。TONALITE(General)はあの時に感じた音よりもだいぶ良い音です。

パーソナライズ前の音ですが、普通にTWSとしてかなり良い音です。解像力が高くかなり細かい音が聞こえます。
低音の誇張はあまり大きくはなく、ここは「finalの3000番」っぽい音でもあるのでしょう。音調としては軽い温かみがあり、いわゆるモニターっぽいドライな音ではありません。どちらかというとリスニング寄りの音です。
また、ヴォーカルの発音がとても明瞭で、ウッドベースが鳴っていてもあまり声に被りません。中高域の伸びが良くハイトーンボイスが気持ち良く聴こえます。高域のベルやシンバルの音の響きがよく整っていて歪み感が少なく、刺激分も少ないので良くチューニングされているようです。

ZE3000(初代)と比べると、TONALITE(General)を聴いた後だとZE3000の音が軽くこじんまりと聴こえます。また解像力が物足りなく感じられます。音場感もTONALITE(General)の方がZE3000(初代)より広く感じられます。ZE3000(初代)は中高音の伸びが今ひとつで、TONALITE(General)よりもワイドレンジ感が低いと感じます。
ZE3000の音調自体はTONALITEと似ていて、同じメーカーが作ったサウンドという感じがあります。基本的にはやはりTONALITEはZE3000の進化系という感じです。
このように音傾向はZE3000の正統進化系という感じなので、この点で賛否両論のあったZE8000のようなことはなく、今回は普通に受け入れられるでしょう。もっとも今回はDTAS適用の障壁がないので、TONALITEを買った人の多くはANCが必要な時以外はDTAS適用で聴くと思われます。

具体的な比較としては、レゼ(CV 上田麗奈)が歌うアカペラ曲「ジェーンは教会で歌った」をTONALITE(General)で聴くと、かなり耳に近く解像感が高く感じられます。背後のリバーブもよく感じられて、大きな空間で歌っているように感じられます。このリバーブはZE3000(初代)だとやや気がつきにくいです。さらにTONALITE(General)では音が少し温かみがありレゼに残っている人間性を感じられます。ZE3000(初代)よりもTONALITE(General)の方が温かみが強いようです。またZE3000よりもTONALITE(General)の方が耳に近く感じられます。

TWSとして高音質なTONALITE(General)ですが、この時点でZE8000(JDH)と比べるとTONALITE(General)は少しクリアさに欠けるように思います。これは比較しないとわからないようなものではありますが、音のエッジが少し丸みを帯びて感じます。標準のTONALITE(General)でもかなり優秀だけれども、さらに上があるなという感じもあります。そこでいよいよDTASの適用をしました。

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* TONALITEの音質 - DTAS適用後

DTASデータをTONALITEに書き込んでアプリからPersonalizedに変更したものをTONALITE(DTAS)と呼びます。
TONALITE(DTAS)は切り替えた瞬間にハッとするくらいクリアになり(元々クリアだったのだが)、鮮明度が増します。先ほどZE8000(JDH)とTONALITE(General)を比較して物足りなかった成分がTONALITEにもやってきた、という感覚です。DTASのオンオフはJDHのオンオフに似ています。
例えていうと、接続機器のDAPかアンプのSN比が上がったようにも感じられます。感覚的には「より生々しくなった」という言葉が一番しっくりきますね。

さきほどの「ジェーンは教会で歌った」を聞くとDTASのありなしでは大きく音質が違います。TONALITE(General)だとイヤフォンを通して歌を聞いている感じですが、TONALITE(DTAS)だとレゼに羽交い締めにされて耳元で歌を囁かれているような、ある意味でASMR的なティングル感覚を感じるほどです。生々しく怖いほどですね。

クリアさの向上の他には、TONALITE(DTAS)ではTONALITE(General)と比較すると低音の打撃感が強くなります。ウッドベースの荒っぽいピチカートでも打ち込みのような電子音でもそう感じます。例えていうとDACのジッターが大きく低減されたような感じで、音が引き締まります。
ものすごく高域がキツめの音源を再生してみると、音のキツさはGeneralでもPersonalizedでもさほど変わらないように思います。Personalizedだと先鋭的に聞こえるので、より高域が刺激的かというとそうでもないようです。低域は激変して打撃が鋭くなりますが、こちらも量感が変わるわけではありません。周波数バランスが変わるわけではないようです。

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面白いのはTONALITE(DTAS)からアプリで切り替えて、TONALITE(General)に戻したときで、さきほどはかなり良いと思えたのだけれども少し曇りが生じたように感じられます。低音の打撃感も軽く甘く感じられます。
聞けば聞くほどPersonalizedとGeneralの差が大きくなるように感じられ、脳がより自然な方(こうあるべき方)に慣れていってるんだと思います。

JDHとの違いはRef +、Ref -という設定があることです。JDHの時はRF noneとRF +nという選択肢がありました。それぞれ対になるものかは分かりません。また「再計算」というメニューがあります。
個人的な感覚ですが、Ref -にすると低域に寄るように感じられ、Ref +だと高域に寄るように感じられますが、曲によっても異なります。個人的にはReferenceでちょうど良いと感じましたが、もし+あるいは-の方がより自然と感じられたら「再計算」をするとそちらが今度はReferenceの基準となるようです。プロファイルを調整して、標準よりもっとギリに攻めてチューニングするみたいな感じでしょうか。
あるいは聴く楽曲がメタルとかEDMみたいなものを聞く場合にも好きな方に寄せて再計算しても良いように思います。

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ZE8000(JDH)とTONALITE(DTAS)で比べると、少し音傾向が異なっていてZE8000(JDH)はよりニュートラルで薄味、全体におとなしめでいわゆるモニターライクに感じます。TONALITE(DTAS)はそれに対すると少しリスニング寄りで濃い音に聴こえます。
性能的にはやはりTONALITE(DTAS)の方がベールを剥がしたようにより鮮明でクリアであり、現時点ではやはりTONALITE(DTAS)の方がfinalのフラッグシップにふさわしいという音レベルではあると思います。ただ好みの違いは残るかもしれません。

* まとめ

TONALITEはハードウエアとDTASの両面から現行TWSの中でも間違いなくトップクラスの音質と言えるでしょう。またDTASの効果はJDHと同等以上のものがあると思います。

DTASの応用はTONALITEだけのものではなく、さらにDTAS用のヘッドフォンも検討されているようです。ヘッドフォンもイヤフォン同様にDTASの効果が期待できるでしょう。またイヤフォン以外にも応用ができるようです。
有線イヤフォンはマイクとSoCがないので難しいかもしれませんが、もしかするとパーソナライズされたDAPによって様々なイヤフォンが同様の効果を得られるという可能性もあるのかもしれません。

TONALITEの入手は現在クラウドファンディングを実施中です。価格は39,800円ですがクラウドファンディングでは先行で安く買えます。また現在のところクラウドファンディングページは製品ページも兼ねているようです。
https://greenfunding.jp/final/projects/9005

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ところで、今朝早く家を出ようとすると静けさの中に小鳥の清涼な囀りが聞こえてきました。その時にこの透明感がTONALITEの音に近いかも、と思わず考えてしまいました。
先日のfinal LIVE配信ではfinal社内に蔓延するTONALITE病なるものが紹介されていましたが、わたしも感染してしまったのかもしれません。
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2025年11月24日

NFCAとX-Hybridの融合が生む、現代的な高精度サウンドTOPPING「DX5II」

DX5iiブログ記事 NFCAとX-Hybridの融合が生む、現代的な高精度サウンド

TOPPING(トッピング)は、中国・広州に拠点を置く2008年設立のオーディオブランドです。
デスクトップ向けDACやヘッドフォンアンプを中心に展開、測定性能が高く、高コストパフォーマンスのブランドとして知られています。
その中核技術が「NFCA」です。DX5IIはそのNFCAをベースに、さらに発展させた「X-Hybrid Triple-Stage Hybrid Amplification」を採用したフルバランスDAC内蔵ヘッドフォンアンプです。市場価格は約49,500円と手頃ながら、内容は上位機にも迫る完成度を持っています。

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1 NFCAとは何か

TOPPING社の基幹技術はNFCA(Nested Feedback Composite Amplifier)技術です。しかしNFCAとはなにかということに触れた記事があまりないのでTOPPINGの開発に直接聞いてみました。

NFCAとは「Nested Feedback Composite Amplifier(入れ子型複合フィードバックアンプ)」の略で、端的に言えば複数のNFB(負帰還)ループを多段式に組み合わせることで、極めて高いS/N比と低歪みを実現する設計です。NFBとは回路の出力を反転させて戻し、その差分から歪みを取る仕組みのことで、NFB自体は古くからある技術です。しかし、過度な負帰還はトランジェント(立ち上がり)が鈍くなり、音の勢いを失わせるという問題がありました。例えばドラムの瞬発的な立ち上がりで、音の立ち上がりが鈍くなることで音が生き生きとしていないなどということです。これはオーディオ設計のトレードオフとして古くから知られた問題の一つです。
しかし最近では設計の進歩や優れたパーツのおかげでこの欠点を克服するアンプ回路がいろいろと出てきました。例えば日本でよく知られているTHX AAAもその一つで、最近話題にのぼるフィードフォーワード方式もその一つです。
NFCAもそうした最新の設計によりNFBの欠点を克服したアンプ設計です。例えば、位相の補償や電圧・電流ハイブリッド型の帰還方式(Voltage-Current Hybrid Feedback)など現代的な設計手法で、古い欠点を克服したわけです。こうした方式のポイントは単に古い欠点を克服しただけではなく、トランジェントをより向上させる可能性も有するということです。
結果として、NFCAは高い測定性能だけでなく応答速度や音の立ち上がりにも優れ、TOPPING製品が「測定値と聴感の両立」を実現している理由の一つになっています。

また、NFCAは多段NFBによって増幅動作を高精度に制御できるため、出力段の動作がより安定することで出力インピーダンスを極めて低く抑えることができます。これはヘッドフォンアンプに向いた特徴であり、このことによりヘッドフォンのインピーダンス変動に対しても安定した駆動を可能にしています。特にダイナミック型ヘッドフォンのように周波数ごとにインピーダンスが変化しやすいタイプでも、しっかりと制動を効かせます。つまりダイナミック型にありがちな低域が膨らまずに、それが引き締まるわけですね。
これは出力インピーダンスが小さいほど、ヘッドフォン側の揺らぐ抵抗値に影響されずに必要な電流を供給できるからです。結果的に音の信号である電圧に正しく沿ってヘッドフォンの再生ができます。

このようにNFCAは高SN、低出力インピーダンスを実現できるなど、ヘッドフォンアンプとして優れた資質を備えています。
次にDX5IIにおいてX-HybridとNFCAがどう関係しているのかを説明します。

2 X-Hybrid Triple-Stage Hybrid Amplificationとはなにか

TOPPINGではNFCAを基底技術としていますが、DX5IIでは、このNFCA技術をさらに安価な価格帯に落とし込むために「X-Hybrid Triple-Stage Hybrid Amplification(以下X-Hybrid)」を採用しています。
これは名前の通り、3段構成のハイブリッドアンプ構造で、「入力段」と「出力段」にディスクリート設計、「ゲイン段」にはオペアンプを用いる設計のことです。
入力と出力をディスクリート設計にする主な理由は設計の自由度の高さで、オペアンプよりも限界を上げられるということです。入力段・出力段をディスクリート化することで高い自由度と理想的なインピーダンス特性(ハイ受け・ロー出し)を確保し、ゲイン段に高性能オペアンプを採用することでコストと性能のバランスを取っているという設計がX-Hybridです。
つまりX-HybridがNFCAに代わるという説明は正しくありません。NFCAがX-Hybridになったわけではなく、過去にTOPPINGが開発したTanggulaアンプのようにコスト度外視で性能を追求したモデル向けに開発されたのがNFCAですが、そのエッセンスを5万円という手頃価格に落とし込むための工夫がX-Hybridというわけです。(例えば上位機種のA90 Discreteでは全てディスクリートです)

つまりTOPPING DX5IIがコスパが高い理由は、高価なパーツを使うのではなく、NFCAをX-Hybridで実現したような「巧みな回路設計の工夫」によって音を良くしているからです。測定性能が高いのは、NFCAという多段NFBを効果的に設計に活かしているからというわけです。
ここまででDX5IIの性能の高さの理由がわかってもらえたと思います。

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次にDX5IIのDAC内蔵ヘッドフォンアンプとしての説明をします。

3 機能と設計

DX5 IIのDACには最新の ES9039Q2Mをデュアル搭載してフルバランス回路を構成しています(2chx2個)。
入力はUSB、光、同軸SPDIF、Bluetooth(LDAC対応)を備え、出力は4ピンXLR、4.4mm、6.3mm、RCA/XLRライン出力と充実しています。3.5mmはアダプタで対応します。

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電源はACアダプターではなく、AC100Vを直接入力できるIECコネクター式というのが隠れたポイントです。中に巨大なトランスがあるわけではないかもですが、ケーブル交換の利便性が高いですね。なにげに12Vトリガーにも対応しています。
また、2.0インチのフルカラースクリーンを備え、再生状態、再生周波数表示(FFT)、VUメーター表示などが可能です。FFT表示は実際に再生中の楽曲の周波数分布を視覚的に確認できるなど、実用性も高く、UIデザインも洗練されています。これはなかなかみやすく使いやすいです。UIはボタン押しによるメニューの上下移動ですが、慣れれば簡単です。
また音質傾向を調整できるDACフィルターや、10バンドのパラメトリックEQ(PEQ)も搭載しています。NFCAによる高SN・低歪み設計はときに「分析的すぎる」と感じるユーザーもいますが、PEQによって好みに合わせた音色を変えられ、低音をやや強調したいユーザーにも柔軟に対応できます。

4 音質インプレッション、基本的な音質傾向について

主な試聴はMacBook Air M2をUSB接続し、まずモニター的性格のqdc「White Tiger」で音の全般的な確認をしました。
試聴して驚かされるのはノイズフロアの低さと着色感の少なさ、そして透明感の高さです。音の立ち上がりが早く、全帯域がフラットで、過剰な演出を感じさせません。強めのNFB構造でありながら、音がだるい印象はなく、躍動感をしっかりと感じさせます。
高域はスムーズで刺激が少なく、中域は端正で自然。低域は深く引き締まり、量感よりもコントロールを重視した鳴り方です。特に低域は抜群で、当然誇張感はありませんが、正確で深く引き締まる音です。
やはりTHX AAA系のクリーンな傾向に似ていますが、THX系よりもわずかに温度感があり、冷たすぎない感じです。

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相性としてはジャズやクラシックなど上品な音楽が合いますが、アニソンのようなきつい録音の曲でもコントロールがうまくできているので、そつなく鳴らし切ってしまう良さもあってポップにも良いです。例えば「アイドル」のような複雑な曲でも破綻なく鳴らします。
ただ標準だと少し上品な鳴らし方なので、荒くしたい人はPEQを有効にして色をつけても面白いでしょう。プリセットでは「アイドル」にはAiry(EQ3)がよく合うと思いました。ヴォーカルの声がとてもきれいに通ります。
ただしPEQはXMOSを使用して32bitで演算しているようですが、オンにするとやや音が曇ります。標準の音が透明感が高いので余計に感じるが、おそらく計算の桁落ちなどの影響と考えられますが、PEQは必要な時だけに入れた方が良いと思う。

5 音質インプレッション、組み合わせと相性について

DX5IIは非常に駆動力が高く、高感度IEMからハイインピーダンスヘッドフォンまで幅広く対応します。いくつか、White Tiger以外にも試してみました。

* Campfire Audio 「Fathom」- 高感度イヤフォン(ノイズチェック)
かなり高感度のイヤフォンだが、ボリュームを動かす余地がかなり広くて、きめ細かい音量調整ができます。ゲインLはかなり低い設定に感じますね。ボリュームをかなり回しても無音では背景ノイズはほとんど聴こえません。DX5IIはかなりノイズフロアは低いですね。
Fathomの透明感の高さ、解像力の高さも十分引き出せます。ヘッドフォンアンプというとヘッドフォンと考えますが、デスクトップにおいてイヤフォン用としても使えます。

* Ultrasone 「Signature Pure」- ダイナミック型ヘッドフォン(制動感チェック)
3.5mm/6.3mmでの接続ですが、これはとても良い組み合わせです。ジャズヴォーカルではウッドベースがとても引き締まり、かつ鋭いパンチがあり、ダイナミック型ヘッドフォンにはとても向いているのを実証できます。そして解像力の高さも引き出してくれます。ウッドベースの支配的な音の中でもヴォーカルの音が埋もれずに聴こえます。
低域だけではなく、全域をしっかりとコントロールしてます。荒っぽく高い音量で鳴らすアンプではなく、こういうアンプを駆動力が高いというべきだと思う。DX5IIはダイナミック型ヘッドフォンにとても向いています。

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Signature PueとDX5II

* Sennheiser「HD800」 - 高インピーダンス・ヘッドフォン(駆動力チェック)
これもかなり良い組み合わせです。鳴らしにくいと言われるハイインピーダンスのHD800ですが、ゲインHではうるさいくらいの音量が取れます。低域が出にくいと言われるHD800ですが、十分に量感があり、かつぴしっと引き締まるベースサウンドが楽しめます。空間の広がりが三次元的で、HD800の美点の空間再現性もよく発揮できます。楽器音の端切れ良さも優れています。
また上品な音楽だけではなく、アニソンやポップスなどの打ち込みが複雑で派手な録音の音楽でも破綻せずにしっかりと立体的に鳴らしてくれます。
DX5IIは駆動力もかなり高いと感じます。

6 ケーブルについて

なかなか隙のない良い製品のDX5IIですが、残念なのはUSB入力がType-Bである点です。Type-C端子が前面にもあれば文句なかったところです。
添付ケーブルにアダプターをつける手もありますが、試しに高音質タイプのUSB-C to Bケーブル(ELECOM DH-CB10)を使用しましたが、これはなかなかおすすめです。単価1700円ほどのケーブルですが音場が広がりよりクリアで解像力も上がるように感じます。
低価格のDX5IIはオーディオマニアだけではなく、ガジェット系のユーザーも気になるでしょう。ガジェット系の人はケーブル交換に抵抗がある人も多いと思いますが、この辺から始めると良いかもです。音質を抜きにしても、取り回しは確実に良くなるので損はしません。

まとめ

TOPPING DX5IIは、NFCA技術を核とした高度な回路設計と、最新DACチップES9039Q2Mの組み合わせにより、価格帯を超えた性能を実現したDAC内蔵ヘッドフォンアンプと言えます。冷静で高精度な測定派サウンドながら、わずかに温かみを残した自然な聴き心地を兼ね備えています。
低価格ながら強力な駆動力、低ノイズ、豊富な入出力、視認性の高いUI、そしてユーザーの好みに合わせられるPEQなど、据え置き機としての完成度は非常に高いと思います。

普通は据え置きアンプというとヘッドフォンで、DX5IIもたしかにヘッドフォンにも良いですが、特に価格が安くイヤフォンに使いやすいので、家で本格的にハイエンドイヤフォンを使いたい人にも向いています。特に高感度マルチBAイヤフォンに良いですね。
ヘッドフォンであれば低インピーダンスの手頃な価格のヘッドフォンに向いています。そうしたヘッドフォンは緩んだ音になりやすいのですが、DX5IIは抜群のコントロール力(ダンピング)で引き締まった音が楽しめます。

いまどきのDAPと比べると解像力で勝るとは言えないけれども、やはり音に力強さがあります。電源の違いからなのでしょう。据え置きヘッドフォンアンプのエントリーとして長く使うことができると思う。
イヤフォンからヘッドフォンまで幅広く対応できる万能機であり、初めての本格据え置きアンプとしてお勧めです。
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2025年11月05日

AV WatchでFitEarのDECフィルターモデルと中国ブースのレポートを執筆

AV WatchでFitEarのDECフィルターモデルと中国ブースのレポートを執筆しました。どちらも試聴レポートを交えて詳しく書いています。

https://av.watch.impress.co.jp/docs/topic/2060187.html

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AV Watchでfinal TONALITEの測定体験記を執筆

AV Watchでfinal TONALITEの測定体験記を執筆しました。トリプルノイキャンの秘密にも迫っています。

https://av.watch.impress.co.jp/docs/review/review/2060103.html

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2025年10月23日

MQAの新たなプロ用ツール「Inspira」と「Endura」の紹介

MQAはいままでQRONO、FOQUS、AIRIAという3つの製品領域に再編されていましたが、新たにプロ用のInspiraとEnduraというプラグインが登場しています。
MQAサイトにホワイトペーパーがありますので、それを元にInspiraとEnduraを紹介します。画像はホワイトペーパーから引用。

inspira.png
Inspira画面

Inspira プラグイン
どこで使うか:録音→オーバーダブ→ミックスの初期段階、録音時に使う
効果: トラックを重ねた際に生じる「マスク」や時間的干渉を初期段階で抑えられる
機能:
Clarity Control : プリリンギングを時間的に後ろへズラすことで、自然な音の到来→残響の順序に近づけられる
Noise Shaping と Dithering : ディザを加えることで量子化の誤差をマスク、低レベル信号の表現力を上げる。ノイズシェイピングでそのディザノイズを聴覚上敏感でない周波数帯へ移動させ、目立たないようにする

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Endura画面

Endura プラグイン
どこで使うか:マスター出力に挿入することを前提にした最終処理プラグイン
効果: ミックス全体の時間的なシャープさを調整、トラック専用の最適なディザやノイズ整形が可能となる
機能:
Align と Depth : トラック全体の時間的な整列量(プリリンギングをどの程度後ろへずらすか)、整形の量やノイズシェイピングの強さを調整
Custom Noise Shaper : マスター全体のノイズフロアを解析し、そのノイズシェイパーを自動生成する

実際にInspiraとEnduraを使用したワークフローを例示します。
ポイントはアーティファクト、ポストリングを残す量を意識すること、FOQUS (搭載のADC)を使用している場合は自動連携で overcorrectionを回避する機能が働くことに注意するなどです。

録音時(Inspira)
マイク→ADC の直後に Inspira を挿入し、Clarity Control で過度な前鳴りを軽減。ディザは最小限に設定しておく。これによりオーバーダブしたときのレイヤー分離が良くなる。
ミックス段階(Inspira)
個別の重要なトラック(スネア、クラベス、アコースティック楽器など)に対して、局所的に時間整合を調整。極端にするのではなく微調整するのがコツのよう。
マスタリング(Endura)
マスター出力に Endura を挿入 → Learn モードでノイズフロア解析 → 推奨の Align/Depth を確認 → 聴感で微調整 → 必要なら専用のノイズシェイパーを試し最終書き出し。

特に効果的なのは、打撃音(クラベス、スネア、ピアノのアタック)や、残響が豊かな小編成の録音など、また息遣い、弦の擦れ、アンビエンスの微細成分を失いたくないレコーディングや、古典的なアナログ録音の温かみを目指す制作などです。
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MQAの最新事情とAIRIA(SCL6)の詳しい情報

海外のオーディオメディア「SoundStage!Simplifi」がMQAの最新事情について興味深いレポートを掲載しています。
https://www.soundstagesimplifi.com/index.php/feature-articles/294-mqa-update-october-2025

これはHigh End 2025のLMGブースのデモのレポートで、噂されていたHD Tracks(Chesky)と組んだMQAハイレゾストリーミングについては発表はなかったとのことですが、MQA技術のQrono、Foqus、Airiaについて面白いレポートが載っています。またMQAはさきの3分野で再編されましたが、さらにDAWプラグインのEnduraというのが出来たようです。(補足するともう一つInspiraがあります)

中でも興味深いのは謎に包まれていたAIRIAの詳細が推測できることです。すでにQronoについてはBluesoundのNude Nanoにすでに搭載、FoqusについてはES9823MPROに実装されています。もともとSCL6(MQAir)と呼ばれていたAIRIAについてはわかっていませんでした。

AIRIAは先述したHD TracksでのMQAハイレゾストリーミングにも採用されるコーデックです。特徴はスケーラブル(自動調整可能)であること。
AIRIAのポイントは従来よりもストリーミングの混雑の予測・調整を高精度にできることです。つまり従来のSpotifyなどよりも、ストリーミングの負荷予測が高精度なので、途切れが起きないのでバッファリングによる停止がない、しかも下げる時にレートを落とすだけでなく、レートを上げるときにも迅速に上げられるという点です。従来サービスはレートを下げるときには自動ですが、逆に状況が良くなってレートを上げられるときに上げられない、または上げにくいんだそうです。さらに従来サービスでは精度が甘いので、状況が悪くなったときに急にバッファリングして再生が止まってしまったりするわけです。

つまり従来のストリーミングサービスではそもそもFLACやAACなど従来型コーデックのデータレートを下げるだけなので混雑時に音質低下しやすいのですが、AIRIAはもともと聴覚ベースで動的変化を考慮したコーデックであり、折り畳み技術で効率よく圧縮できるので、レートが下がっても音質低下が少ないと言う点がポイントです。動的に下げるだけではなく上げることができるということと併せて音質の変動が少ないというわけです。

まとめるとAIRIAを搭載したハイレゾストリーミングサービスの他と比べた長所は、バッファリングで停止しないことでスムーズにストリーミングでき、かつ音質の変化が少ないということです。
デモではロスレス48/24の音源を3Mbpsから500kbps、さらに3Mbpsへ戻すという変化では音質変化も停止もなかったとのこと。この条件は家の据え置きオーディオだと妥当ですが、スマホでワイヤレスで使う際にさらにビットレートが下がった時がAIRIAの真価が発揮されるでしょう。

またAIRIAの登場は、従来のハイレゾストリーミングの問題というのが従来コーデックを単にレート低下させてるだけで、ネットワークの動的変化が考慮されていたものではないという問題点を浮き彫りにしています。(AmazonやQobuzはFLAC、Apple MusicはALAC)

レポートによるとLenbrookはRoonやAudirvana、さらにStreamUnlimitedなどにMQA技術を採用した再生エンジンを提供予定だとのこと。(StreamUnlimitedについてはこちらの記事を参照のこと)
これらのことからRoonやAudirvanaにもこのHDTracksのハイレゾストリーミングが実装されて、Qobuzなどのように使用できると考えられます。
HDTracksのハイレゾストリーミングの準備は進んでいるようですが、展開はおそらく2026年以降となると思われます。

またAIRIAの真価は家での据え置きオーディオよりもむしろスマホでハイレゾストリーミングする方が恩恵があると推測できますが、そうした時代になればストリーミングサービスからスマホ間だけではなく、スマホとイヤホン間はどうなんだという話になって、Bluetooth HDTとかXPanが普及してくるのかもしれません。
posted by ささき at 05:35 | TrackBack(0) | __→ PCオーディオ最新技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年10月16日

Bluetoothセミナー、ハイレゾ対応のBLE HDT発表

本日開催された2025年度のBluetooth セミナーと記者発表に参加してきました

セミナー会場では万博で日本デビューしたAuriが送信機として使われ、日英同時通訳音声がAuracastでブロードキャストされていました。
(AV Watch記事)
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白いのが送信機、手前は受信機の充電ドック

セミナーではAuracastに関するパネルディスカッションを聴講しました。
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Auracastで補聴器とイヤホンの同化が進むのではという意見がある一方で、補聴器は高帯域化(音質向上)よりも低遅延化とロバストが重要だが、イヤホンではやはり音質も重要など対立する意見も出ました。こうした相反する要件をまとめるのも標準化規格の難しさではありますね。

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セミナー会場でブロードキャストされていたAuracastチャンネル

記者発表はBluetooth SIGの最高マーケティング責任者ケン・コルドラップ氏によって行われました。
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Bluetooth SIGは「繋がりの力でより良い世界へ」と題したビジョンを展開。前は単に繋がるだけだったが、なぜ繋がるかを明確にしたということです。
コミニティーのミッションとしては進化、保護、普及があげられ、進化では50のプロジェクトがアクティブ、保護では毎年6万の製品が認証を通り、普及では50億台が出荷されているとのこと。
SIGは20年で4万社が加入して毎年1000社増えているとのこと。日本はメンバー企業では世界第3位の数だそうです。

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Bluetoothの最近の機能強化については、デバイスネットワーク(1:1ではなく数千台が入れる)、ESL、Auracast、高精度測距(数メートルから数センチ)などが挙げられます。
注目のこれからの強化という点では、超低遅延HID(ゲーム分野など)、ハイレゾロスレス(これまでベンダー独自だったものを標準化する、他にも空間オーディオやサラウンドでも標準化)、高データスループット(2MBを8MBに、オーディオにも関係する)、高周波数帯対応(2.4G帯を5G帯や6G帯へ)

そしてテクニカルマーケティングエンジニアのゴンユウ・ルー氏によるBluetooth LE HDTデモが行われました。
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HDTとはハイデータスループットのことで、うちのブログでは先日レポートした物理層の新しい規格です。それがオーディオにも使われると確認できたわけです。
(HDT PHYの記事)

これはBluetooth LEのデータレートが最大7.5Mbpsに向上するというもので、HDTは来年10月にリリースを予定していてスペックがまだ固まっていないとのこと。
デモでは二つのスマホ間でのロードをかけたデータ転送のデモで、実測で4-5MBといったところです。96/24のデータ量は4.6Mbpsくらいなので、微妙なところもありますがこれはまだ向上の余地はあります。ちなみにHDT PHYではなく、現状の2MB PHYを使うとおそらく1Mbpsちょいくらいだと思うので、現状の4倍程度の速度は出ています。

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表示されている値は平均4Mbpsくらいです。

ゴンユウ氏にLC3はハイレゾ搬送できないのでは、と聞いたらコーデックもまた別に決まるとのこと。それはLC3plusかと突っ込むと、メンバー企業からさまざまなインプットをもらってるところなので、違うものになるかもしれないそうです。あくまでSIGではLC3plusはオプションと考えているようですね。

はじめて次世代Bluetoothのハイレゾ伝送の萌芽に触れたことはとても興味深かったと言えます。
posted by ささき at 18:22 | TrackBack(0) | ○ オーディオショウ・試聴会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年10月13日

AV WatchでQCY MeloBuds N70のレビュー記事を執筆

AV WatchでQCY MeloBuds N70のレビュー記事を執筆しました。以前これがUSoundのMEMSドライバーを初採用したTWSという記事を書きましたが、それが一体型ユニットの「Greip」だということがわかったのでそれを反映しています。
記事としては読みやすくエッセイ風にイヤピ交換まで書いています。

https://av.watch.impress.co.jp/docs/review/review/2052741.html

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posted by ささき at 08:30 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年09月30日

XPan開発者インタビューとXPanの考察

さて、ファイルウエブのイベント終了後に開発者のナイジェル・バージェスに直接話を聞く機会を得ました。3月のXPanイベントでの内容の確認でもあります。バージェス氏はその時にしつこく質問をしたことで覚えていてくれたようです。

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バージェス氏

まず、XPanのコンセプトを端的にいうと、「Bluetoothでつなぎ、Wi-Fiで届ける」ということです。Bluetoothで繋ぐので簡単で標準的、Wi-Fiで届けるので高音質データを家中に広範囲に届けられます。
まずこの辺りから解き明かしていきましょう。

1 Bluetoothでつなぎ、情報交換

はじめにXPanに疑問に思ったのはスマホはWi-Fi情報(SSIDとパスワード)を手で入力して入れられますが、イヤフォンはどうやってそれを知るのかということです。
バージェス氏によると「例えば、最初のペアリング後にデバイス同士が接続するとします。距離が近い間はBluetoothで通信しますが、もしスマホがWi-Fiに繋がっていれば、そのSSIDとパスワードをイヤフォンに渡して記憶させます。
その後、スマホ側はRSSI(受信信号強度)やネットワーク品質、オーディオ品質をモニターしていて、距離が離れつつあることを検知すると「そろそろBluetoothが切れる」と判断します。そこで「Wi-Fiに切り替えよう」とイヤフォンに伝え、イヤフォンはWi-Fi接続に切り替えるわけです」
これは3月の時にも試しましたが、具体的にはBluetooth LEとWi-FiのP2P接続を「同時に」張っていて、Wi-Fi P2Pの方が先に途切れるのでBLEを用いてこの制御を行います。

バージェス氏に「P2PからスマホのWi-Fiネットワークに切り替わるときに、SSIDやネットワークIDをイヤフォンに伝えるのですか」と聞くと、
バージェス氏は「はい。そのときスマホ(あるいはPC)は“親”の役割で、イヤフォンは“子”です。親が子に「今からWi-Fiに移動しよう」と指示を出す。Wi-Fi上に移った後も、通信は継続され、制御データのやり取りでスマホやPCはイヤフォンが接続していることを確認できます。イヤフォン側も常にハンドセット(スマホ/PC)に接続可能かをチェックしています」と答えてくれました。

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左がP2P接続、右がホームネットワーク

2 XPanでのイヤフォンのコントロール

次の疑問はイヤフォンはどうやって再生・停止などの制御信号をスマホやPCに伝えるのか、ということです。これを質問すると、
バージェス氏は「双方向でやり取りしています。イヤフォンはハンドセットのIPアドレスを知っているので、そこにオーディオデータと制御データを送ります。逆方向も同様です。つまり音声と制御の両方が流れるわけです。
P2Pモードの場合には制御はBluetooth経由で行い、ホームネットワークに切り替わった場合にはWi-Fi経由です。将来的には音声アシスタントの操作にも対応できる予定です」と答えてくれました。
将来的には音声アシスタントの操作にも対応できる予定というのはポイントです。

3 XPanでのレイテンシー

もし、XPanイヤフォンをゲームに使った場合、遅延はどうなるか、ということも聞いてみました。
バージェス氏は「現時点では、ゲーム用途はXPanはサポートしていません。高音質で聴くときはXPan(Wi-Fi)を使いますが、ゲームを始めると自動的にLE Audioに切り替わります。つまりWi-Fi接続を切って、Bluetooth LE Audioで低遅延モードに移行します。
Snapdragon Sound対応機種ならさらに遅延を抑えられますが、基本的にはBluetooth LE Audioでのゲーミングになります。」とのことです。

4 XPanでのaptX

3月にXiaomi 15を使用した時に表示で興味があったのはXPanでの通信時には使用コーデックが「aptX Adaptive R4」と謎のR4表示がなされることです。これを聞いてみました。
バージェス氏は「R4は次世代のコーデックで、96kHzのロスレス伝送に対応し、XPanと連携します。従来のR3はLE Audioに対応していましたが、R4(Revision 4)はXPanに対応し、96kHzロスレスをサポートするのです。」と答えてくれました。
つまりXPan上ではWi-Fi上をaptX Adaptive R4コーデックでデータが搬送されていることになります。

図2 aptX Adaptive R4の表示.jpg
XIaomiでの表示

考察

ちなみにここでWi-Fiと呼んでいるのはクアルコムが開発した「低電力Wi-Fi」のことです。これによってイヤフォンでもWi-Fiが使用できるようになりました。「低電力Wi-Fi」自体はXPanだけではなくIoT機器にも使用されているクアルコムの技術(IP)です。

もともとWiFiはBluetoothと違って広範囲・高データレートを主眼に進化してきましたが、そのハードを低電力WiFiに置き換えたと言っても、ソフトとしてのプロトコル全体まで低電力志向にはなりません。
例えばBluetooth では「待機中心・間欠動作」で無駄を排除した省電力指向の機器発見プロトコルで、見つからない場合の繰り返しを低コスト化します。一方、Wi-Fiにも機器発見プロトコルはありますが、「積極送信・連続動作」で高消費になりやすいわけです。
つまり近距離の部分はBluetooth の力を借りてP2Pでハイブリッドアプローチで低電力化を目指し、広範囲が必要になれば本来のWiFiとしてルーターを介して通信するというのがXPanの狙いだと思います。
これによって、ハードウエアでは低消費電力Wi-Fiを使用し、ソフトウエアにおいても低消費電力プロトコルが使えるというわけです。これで全体に低消費電力になり、イヤフォンなどに適した技術となります。これが「XPan」なのでしょう。


posted by ささき at 16:32 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする