以前レビューしたDX5IIは低価格ながら測定性能の高さと躍動感ある音質を楽しませる製品でしたが、その最上位版ということになります。DX5IIで興味を持った人には大注目でしょう。
"Discrete"の名の通りにディスクリート設計がポイントで、本記事ではそこを中心にToppingの開発チームに直接メールインタビューした結果を元にして、DX9 Discreteの実像を浮かび上がらせていきます。
* DX9 Discreteとは
まず位置付けについて解説すると、Toppingのラインナップで、DX9 Discreteは一体型のDAC内蔵型ヘッドフォンアンプのフラッグシップとなります。先代のDX9からはDAC部分が大きく異なり、DAC部分はD900譲りのPSRMを16要素にして採用、アンプ部分はA90 Discreteをさらに発展したモジュールを搭載という良いところ取りをした一台完結型製品という位置付けです。
さらにそれを誇示するかのように、天板部分が透明で中の回路がそのまま見え、液晶表示が左右別に用意されているという新しいデザインも独特です。
先に書いたように、DX9 Discreteのポイントはその名の通り、大きく分けて「二つのディスクリート設計」がポイントです。
ディスクリート(個別という意味)設計とは、普及価格帯では市販のオペアンプ(IC)で済ませる回路を、トランジスタなどパーツごとに分けた設計のことで、オペアンプよりも設計の自由度が高く、限界を高くできます。一方で問題もあり、パーツが多くなるので精度の管理が難しくなり、たいていは高価格品となります。このことを少し頭の隅に置いておいてください。
ちなみにDX5IIではDAC部分はICを採用、アンプ部分はオペアンプとディスクリートのハイブリッド方式でした。
* ディスクリート設計のDAC
DX9 Discreteのまず一つ目の「ディスクリート設計」はDAC部分のPSRM(Phase-Switching Reference Modulator)技術です。
端的にいうと、これはディスクリート方式の1bit形式DACです。ポイントはその設計です。1bit DACはDSD(PDM)信号を通すDACです。DSDはそのままでもアナログ信号に近いのですが、特に高周波ノイズが大きいのでその除去をしなければなりません。このDSDに適用するフィルタをアナログ信号に戻すためのフィルターという意味で再構成フィルタとも呼びますが、この出来が大きく音質を左右します。
普通はこの部分はチャンネルあたり1組のローパスフィルタであり、RCフィルタと呼ばれる抵抗とコンデンサを組み合わせたものになっています。
ところがPSRMではこの部分がチャンネルあたり16組の「移動平均再構成フィルタ」になっています。つまり1chあたり1本あれば信号は通りますが、それが16本あります。ちょっとエンジニアリング的にいうと冗長化(余分に加える)設計されています。
PSRM部分
それはなぜなのか、移動平均とはなにか、というと、1chあたり16組の信号を少しずつタイミング(位相)をずらして出力し、平均化することで精度の高いフィルターとしているのです。タイミングをずらすのはエラーを分散させるためです。
つまり複数の1ビットストリームの出力を平均化することで、コンポーネントの個体差やエラーをランダム化して相殺するということです。もう少し噛み砕くと、1本の信号線でも信号は伝わるけれども、複数本にした冗長系を平均化した方がより正しく伝わる(線によってばらつくため、それを平均化した方が良い)というわけです。これはさきに書いたディスクリート設計における部品の質がばらつくという課題点をきれいに解決しています。
そして私ははじめ高周波ノイズのみの対応かと思っていたのですが、Toppingの開発チームに聞くと、この方式の優れた点は、高周波ノイズを減らすと同時に、低周波の熱雑音にも効果があるということです(熱雑音はランダムノイズだから平均化で効率的に低減できる)。結果として単なるRCフィルターのようなローパスフィルターではなく、広い帯域でSNを上げることができるわけです。
また、これはFPGAを使用するDACとは別の考え方であり、ノイズを平均化して消せるので、他のFPGA方式のDACのようにFPGAによる複雑なノイズシェーパーに頼らずにもっと軽量に高周波ノイズを低減できるというわけです。
高価なFPGAも不要なので、全体にコストパフォーマンスの高い設計ができます。さらに高速動作するFPGA自体が出すノイズもありません。Toppingの開発チームに、このPSRMはFPGAを不要とするものかという質問をしたところ、「目標とする性能をすでに達成しています。そのため、より複雑な解決策は必要ありません。」と回答してくれました。
これまでのDACが計算でノイズをねじ伏せてきたのだとすれば、DX9 DiscreteのPSRMは並列化(冗長化)という構造でノイズを消し去っています。ノイズを消すために自らがノイズ源となっていたFPGAのジレンマからも、オーディオ回路を解き放てるオーディオ的に美しい解法です。
高価なパーツを使えば良くなるのは当たり前ですが、設計の妙でそれを超えるというのがコスパを誇るToppingらしい手法とも言えますね。だからTopping製品は測定性能が良いのにコスパも高いというわけです。
* ディスクリート設計のアンプ
次にもう一つのディスクリート設計はアンプの部分です。そして、もう一つの冗長化設計の妙がここにも見てとれます。
まずToppingのアンプ技術のキーはNFCAです(DX5IIのページも参照)。NFCAとは「Nested Feedback Composite Amplifier(入れ子型複合フィードバックアンプ)」の略で、端的に言えば複数のNFB(負帰還)ループを多段式に組み合わせることで、極めて高いS/N比と低歪みを実現する設計です。こうした過度な負帰還はトランジェント(立ち上がり)が鈍くなり、音の勢いを失わせるという問題がありましたが、NFCAは最新の設計によりNFBの欠点を克服したアンプ設計です。このポイントは単に古い欠点を克服しただけではなく、トランジェントをより向上させる可能性も有しています。またNFCAは多段NFBによって出力段の動作がより安定することで出力インピーダンスを極めて低く抑えることができます。このようにNFCAは高SN、低出力インピーダンスを実現できるなど、ヘッドフォンアンプとして優れた資質を備えています。これは、TOPPING製品が「測定値と聴感の両立」を実現している理由の一つになっています。
ヘッドフォンアンプ部分
DX9 Discreteのポイントは、4チャンネルではなく、6チャンネルのアンプ回路モジュールを使っていることです。これはバランス(4チャンネル)とアンバランス(2チャンネル)を分離するためです。その目的はノイズとクロストークの低減です。
これもToppingの開発から聞いたのですが、増幅モジュール自体はA90 Discreteで使用されているものと同一なのですが、周辺回路とより上位レベルのトポロジー(回路構成)に違いがあり、その理由は主にバランス回路とシングルエンド回路の分離によるものだそうです。
これはNFCAのポイントはフィードバックなので、フィードバックのかけ方が、回路の出力形態(バランスかアンバランスか)によって最適値が異なるということです。バランス(4ch)とアンバランス(2ch)を分けたことで、フィードバックの設定を「バランス寄り」か「アンバランス寄り」のどちらかに合わせる必要がありません。それぞれ最適のチューニングができます。
ノイズとクロストークの低減についてはToppingの開発から補足説明をいただきましたので、翻訳してそのまま引用します。
「もし4モジュール(チャンネル)だけで設計した場合、位相反転/非反転の2モジュールがシングルエンド(アンバランス)と共有されることになります。しかし、シングルエンド信号はDAC出力から差動アンプを使って合成されるため、そこに抵抗が関与します。これによりノイズが発生します。
さらに、反転信号を生成する方法として、DAC出力から別の差動アンプを使うか、あるいはシングルエンド出力の後に反転アンプを入れる(A90 Discreteが採用した方法)のどちらかになります。結果として、ノイズは基本的に2倍以上になってしまいます。
一方、バランス回路とシングルエンド回路を完全に分離した6モジュール構成(DX9 Discreteが採用した方式)にすることで、バランス出力はDAC出力から直接バッファ(またはゲイン付きバッファ)で受け取ることができます。つまり、DAC出力に対して最も最小限の干渉しか加えません。これにより、バランス出力の純度が大幅に向上します。
クロストークについては、シングルエンドへの変換を行うたびに、クロストークを追加するリスクが生じます。この性能レベルでは、変換を実施すればクロストークの増加は避けられません。6モジュール構成にすることでこの変換工程を完全に回避できるため、クロストークが大幅に改善されます」
つまりまとめると、以下のようになります。
DAC部(PSRM): 1ビットDACの1本で済むフィルタを16本に冗長化し、平均化してエラーを相殺(FPGA自体のノイズも回避、低コスト化も実現)
アンプ部(NFCA): 4チャンネルで済むところを6チャンネルに冗長化し、バランス/アンバランスの信号経路を完全分離・個別最適化することで音質向上
* 操作感など
デスクトップではなくラックタイプなのでDX5IIに比べればかなり広いスペースが必要となりますが、一般的なラックタイプの据え置き機材に比べるとスリムで独立したデザインなので、一体型機として単独で置くことができます。上部開放型が特徴なのでインテリア的に棚とかに置くのも良いかもしれません。
基本的に操作感はDX5IIと同じメニューが使えます。操作は付属のリモコンでも、フロントパネルのスタンバイボタンとボリュームノブの押し込みと組み合わせて操作できます。
操作系メニュー
背面は入出力系がぎっしりと配置されていて、かなり多様な入出力に対応しています。USB、Bluetooth、光デジタル2系統、同軸デジタル2系統、AES、I2S(HDMI)が一通り揃っています。
追加機能で面白いのはDSPの「Convolution」(複雑演算/畳み込み演算)モードで、頭部の形状による音の伝わり方を加味したHRTFを取り入れたというクロスフィードモードです。これはなかなか面白く、通常だと左右に分かれた音があたかも立体音響のように包まれ感がするようになります。ただ前方定位というよりは拡散された音に近いように感じます。「Simple」(単純演算)モードだと普通のクロスフィードに近くなります。いずれも音の解像感低下もさほど変化ないのが優れものです。
このほかにもパラメトリックイコライザー搭載などの機能があります。
また細かい点ですが、保護回路なのかリレーがカチッと小さい音を立てるのが、とても丁寧に作り込まれている感はあります。
* 音のインプレッション
いくつかのタイプのヘッドフォン、イヤフォンを組み合わせて音を確認してみました。
Sendy Audio「Peacock」 ー 平面型フラッグシップヘッドフォン・XLRバランス接続
DX9 DiscreteとPeacock
まずここではDX9 DiscreteがSendy Audio Peacockを軽々と鳴らすのに驚きます。暗さや曇り感などの鳴らしにくさの弊害を感じさせずに、まるで低インピーダンスのヘッドフォンのように明るく朗々と音楽が奏でられます。PeacockはDAPだと暗い音になってしまいがちですが、さすがに10W/chの大出力です。NFCAの制動力の高さもあるのでしょう。
そして低域の制動感がかなり高く、GoGo Penguin「Call to the Void」の冒頭のようにエフェクトを効かせて低音を派手にした曲でも過剰に膨らむことがほとんどありません。制動力の強さはいままでヘッドフォンアンプで聞いた中でもトップクラスでBenchmark「HPA4」と並ぶと思う。
一方でとても低い領域まで超低音が出ているので、低音に底しれぬ深みを感じます。例えば「青少年のオーケストラ入門」の冒頭のオーケストラの強奏部(トゥッティ)の部分では圧倒的な迫力とスケール感を感じます。ここは据え置き機で聴くヘッドフォンならではの愉悦でしょう。
超低域ということではHeadFiの試聴用音源の「Heartbeat」の最も低い心臓の鼓動を模した20Hzのビート音でもよく聴こえます。質の高いワイドレンジ、というべきでしょう。
Lowゲインでも音量的には十分鳴らせるが、ヘッドフォンはHighゲインにした方がより音が研ぎ澄まされて先鋭的になり、より力感を感じます。
音はとても細かくSN感が高い点は予想通りですが、低音に深みがあり、かつ躍動感があるのがNFCAらしいところです。強NFB設計というとSNは高いけど、だるい音というのがオーディオ通念でしたが、NFCAはそれを覆してくれます。
村上ゆきの「Bang Bang」では疾走するようなスパニッシュギターとベース、そして歌声の絡みが感動的。アコギとハスキーヴォーカルのデュオ、Fried Prideの楽曲でも、超絶テクのギタリスト横田氏のロックを取り入れた叩きつけるようなアコギの歯切れ良さが気持ちよく、かつ刺激的な角が少ないのが圧巻です。解像力が高くシャープな音であり、かつ痛くないように角が丁寧に取れている感があります。この辺はPSRMの美点なのでしょうか。
細かい音ではアコースティックギターを手や指でラビングやスクラッチして出すような微細な音のニュアンスも鮮明に再現して描き出します。細かい音が積み重なって音の凄みになっているほど情報量は豊かです。
試聴用音源「Audiophile Jazz」では同じ曲を44/16,96/24,192/24と変えた音の違いもよく分かります。相対的に44/16の音が軽く薄く聴こえてしまうほど。
音色はニュートラル基調で着色感はあまりありませんが、無機的ではありません。女性ヴォーカルSHANTI「メモライズ」では、色着けがなく、素の声の細かな発声が魅力的だということがよく分かります。
SN感がかなり高いので、ピアノの強い打鍵音は明瞭感がとても高く、響く音が美しく感じます。音色などの脚色がないけれども、響く音が正しければ美しいということがよくわかる、正確ゆえに美しい音です。
奥行き表現がとても深いのも特徴で、細かな音再現と相まって、ホールに響く細かいリバーブが小さな音までよく聴こえます。こうした細かな音が積み重なって音楽の厚みができていくというのがよく分かる。
低音の深み、空間の奥行きが相まって、立体音響ではないけれど、平板的ではなく広がるような空間に包まれているような感じがあります。
Campfire Audio 「Fathom」ー 高感度マルチBA IEM・4.4mmバランス接続
DX9 DiscreteとFathom
DX9 Discreteは背景ノイズが極めて低く、こうした高感度IEMを使用しても背景のホワイトノイズはまったく聴こえません。音楽の再生停止状態では背景ノイズは全く聴こえず、徐々に音楽を再生していくと、背景の暗がりから音が徐々に増えていく様子が鮮明に浮き上がるように聴こえます。
SNが高いので、音の先鋭感が高く、とてもシャープな音質です。音の立体感も高く、音響系の音楽では左右で音が飛び回るのがはっきりと感じ取れます。
VOLK Audio「ETOIRE」ー スタジオモニターIEM・4.4mmバランス接続
DX9 DiscreteとETOIRE
細かい音表現ということでは、こうしたハイエンドIEMが白眉だと思う。細かい音が洪水のように襲いかかるような感覚で、ゾクゾクと鳥肌が立ちます。
ETOIREはミキシングエンジニア向けのスタジオを母体とするハイエンドIEMで、DX9 Discreteとは相性が良いです。複雑な曲でも音が整理されて、かつ躍動的に音楽を鳴らします。
VOLK Audioのスタジオの正確性とミュージシャンの情熱を同時に再現するという理念がわかりやすいともいえますね。
Ultrasone「Signature Pure」ー 低インピーダンス、DJタイプヘッドフォン・6.3mmアンバランス接続
DX9 DiscreteとSignature Pure
DX9 Discreteと低インピーダンスのヘッドフォンでも、制動力が遺憾なく発揮されていて、引き締まってパンチのある低音が楽しめます。Signature Pureでは、DJヘッドフォン譲りのかなり低音がたっぷりとして迫力あるライブ感あるサウンドが楽しめます。
クリムゾン「Radical Actionライブ盤」ではトリプルドラムの暴力的なロックサウンドが炸裂したようにパワフルで、かつ破壊的な迫力が楽しめます。決してDX9 Discreteがおとなしい弦楽四重奏向けのアンプではないことがわかりますね。これ聴くと名曲Redよりもむしろ二期クリムゾン以降のVROOMなどの方が暴力的で破壊力抜群なのが、はっきりとした違いで分かって個人的に感慨深い感があります。
ただSignature Pureだとクラス的にちょっと物足りない感はあります。
Fitear「Oriigin-1 」ー スタジオモニター・ヘッドフォン・6.3mmアンバランス接続
DX9 DiscreteとMonitor-1
「Oriigin-1 」はFitear初の民生用ヘッドフォンで、スタジオの正確性とリスニングの良さを兼ね備えます。これ実はかなりDX9 Discreteと相性が良いです。
同じクリムゾンのライブで聴き比べると、やはりSignature Pureよりもだいぶ整って音が整理されて聴こえます。低域はより引き締まり、かなり細かい音まで出ます。高域はあまり刺激感はなく自然です。低音域は誇張されずに、適度な量感がありますが、とても強いパンチやアタックを感じます。これはダイナミック・ドライバーならではの魅力です。
音の立体感も高く、チーガムドライバーらしい明瞭感の高いクッキリとした音像が楽しめます。Oriigin-1だとクリムゾンでは二期曲よりもサックスやヴォーカルがフィーチャーされたStarlessが聴きたくなります。
でもそれよりもゾクゾクとしてくるような重み感とか厚み感がすごいんです。凄みというべきか。冷静に試聴しているつもりだけど、躍動感の高さで勝手に手足がリズムを刻み出すのを止められません。モニターというと無機的なイメージが湧くけれども、そういうつまらない音ではありません。DX9 Discreteも、Oriigin-1も。
6.3mmアンバランスだけど、音の重みとか厚みという部分でそうバランスに比べて劣るという感じでもないのも考えてみると不思議です。もしかするとバランス・アンバランス分離方式はアンバランスにとって良いことなのかもしれません。
クリストファー・ティン「窓から見える」を聴くと、数人のヴォーカリストの声質がみな聴き分けやすく、合いの手のはっという小さな声もとても鮮明に聞こえます。声や音の強弱がとても滑らかで、ラストに向かって壮大な盛り上がるスケール感も感動的。
こうしていると、曲の感想を書いているんだか、オーディオのインプレをしているんだか分からなくなってくるけど、本来正しく音を出すというのはそういうものかもしれません。DX9 Discreteも、Oriigin-1も。
ただ、Oriigin-1は謎のメクラ穴を取り去り、オッドアイの封印を解き放って真の力を解放するバランス・ケーブルでリケーブルしたいと切実に思います。
* まとめ
Topping DX9 Discreteは、PSRMによる「構造でノイズを消し去る正確性」と、6チャンネル独立NFCAによる「最適化された力強い躍動感」が1台に凝縮された、現時点でのTopping究極のオールインワンです。
DACは極めて細やかで奥行き感ある再現性を、アンプは強力であり躍動感ある駆動力をもたらします。結果として生まれるのは、「正確でありながら冷たくない」サウンドです。
こうしたPSRMの正確性とNFCAの躍動感を兼ね備えるDX9 Discreteは、スタジオの正確性とリスニングとしての側面を兼ね備えるという「方程式」のヘッドフォンやイヤフォンがとても合うように思います。
ふと思い出したのは、かつてのBenchmark「DAC-1」です。音質レベルはDX9の方が遥かに上ですが、スタジオの正確性と音楽の熱量という点では似た性格を有しているように感じられます。
DX9 Discreteは一体型で単独で完結した外観デザインなので、使い方もさまざまに考えられると思います。DX5IIを使っていて、もう少し細かい音が欲しいと思う人のステップアップにも良いでしょう。いきなりDX5IIからDX9 Discreteでも良いと思いますが、ケーブル類も変えた方が良いでしょう。
PC上でRoonやAudirvanaに繋げても良いし、SP4000など高性能DAPを上流に使うとストリーミング(Apple Music)と内蔵音源の差もかなりはっきりわかるレベルです。上流やヘッドフォンの性能を浮き彫りにする側面もあり、たぶんケーブルも良いものを使えば使うほど良くなると思います。
なにより正確でかつ情熱的という音は、実のところ音楽再生の本質そのものかもしれない、DX9 Discreteはそんなオーディオの本質を、確かに思い出させてくれます。

