Music TO GO!

2009年03月09日

「つみきのいえ」(DVD) - 加藤久仁生

これは先日アカデミー賞の外国短編映画部門を受賞した作品として一躍有名になった短編アニメーション映画です。
海面の上昇により常に積み木のように上に家を建てまして行かねばならない世界に一人住む老人、という独特の世界観と落ち着いて重厚な絵画風のタッチによる美しい作品です。
わずか12分ほどの作品で大きなドラマや謎はありませんが、淡々と進む時間の中で人生と思い出や年齢を積み重ねることについて考えさせられます。

海面が上がるという設定を地球温暖化と直に結び付けることもできますが、わたしはもっと単純に海面が上がるということを人が歳月を重ねることと捉えました。人が住んでいない他の家は昔は老人の知人であったがもう人生を終えてしまった人々、という風にも思えます。(ナレーション版では別の説明がありますが)
輝いている時間もずっとそこに居続けることはできません。しかし、その時間は過ぎ去っても価値を失うわけではなく、それをいつでも取り出して自分の財産とすることができる、ということでしょうか。積み木の家が高ければ高いほど、その人の生は豊かなものだったのかもしれません。まるで年輪を重ねた大木の幹のように。

もしここから寓話的なものを掴み取りたいのならば、地球温暖化というよりは老人問題に対するエールであると思います。もちろんこれは難解な作品ではまったくありません。子供向けには長澤まさみのナレーション付バージョンもあります。たださきに書いたように自由に自分の考えを膨らませられるナレーションなしの版の方が好ましいと思います。

加藤氏(ROBOT)の作品としては以前Shockwave.comで公開していた「或る旅人の日記」を楽しみに見ていたのを覚えています。これも独特の世界観と作品の雰囲気にうたれます。いまはShockwave.comがなくなってしまったのですが、DVDで見ることができます。
短編アニメ作家だけではなくShockwave.comは良質な作品の発表が多かったと思うのでサイト閉鎖は残念でした。ちなみにShockwaveはFlashと異母兄弟みたいなものですが、多機能のShockwaveに比べるとFlashの方が軽いのでいまではプレゼンソフトはみなFlashになりました。

また、しばらく前ですけどユーリ・ノルシュテインと川本喜八郎をはじめとした国内作家が競作した「冬の日」を見に行ったのを思い出しました。これは俳句の世界を短編アニメーションを連作にすることで表現する試みで、連句という俳句のしりとりのようなリレー形式で各作家の個性的で感性豊かな作品を展開していきます。
こうした短編アニメ作品が好きな人にはお勧めです。

            
posted by ささき at 21:45 | TrackBack(0) | ○ 音楽 : アルバム随想録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック