Music TO GO!

2024年11月05日

ヘッドフォン祭2024秋レポート

先週末に恒例のヘッドフォン祭が開催されました。場所は今回もステーションコンファレンス東京で、約80社が展示しました。いくつか興味をひいたものを紹介します。

まずDITA AudioではCEOダニー氏が来日、注目の新モデル「KA1」についていろいろ詳しく聞くことができました。
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まずKA1のヘッドバンド付きでイヤーピース無しというセミオープンのコンセプトについては、アイディアとしては最近流行りのフルオープンタイプのように外の音を聞くことができる開放型イヤホンというコンセプトです。しかし、フルオープンだと低音のコントロールができないので、そこはDITAらしく音質を高めるためにセミオープンという形式を採用したとのこと。
日本の地下鉄でも使用できるだろうということ。音漏れも最小限とのことです。
実際に低音もよく出るようです。ドライバーはダイナミックで、詳細は明かせませんがかなり良いものを使用していますので音質は期待できます。
もう一つのポイントはケーブル端子がMMCXと2ピンの二つあるということです。これは音質重視のイヤフォンなので、どちらでもケーブルが使えるようにするという意味もありますが、ポイントは2ピンが側面についているということで、これはShure掛けを可能にするとともに、フォステクスTM2やiFi GO PodなどのTWSタイプのBTアダプターを使用可能とするためだそうです。
このほかにも稼働部はかなり考え抜かれた設計になっており、多機能性も期待できます。価格はターゲット価格がUSD299近辺ということです。

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DITA KA1プロトタイプ

DITA Audioはこのほかにも「Mecha」という新製品が登場。
比重がアルミニウムの約半分という超軽量なLiMa(リチウムマグネシウム)合金振動板+高効率デュアルマグネットを採用したメカっぽいイヤホンです。ちなみにDITA Audioの関連会社は金属加工に長けています。価格は12万前後とのことで、音はシャープで鮮明、クリアな音で、ニュートラル傾向でした。

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DITA Mecha

finalでは11月14日に発売される「A6000」がおそらく関東初出展ではないかと思います。かなり小さく、低域も深く中高域もシャープです。A4000の上位機種という感じで、音傾向はA4000に似ているがより高品質なサウンドという感じでした。A3000とはちょっと違うように思います。
また高音質TWSの草分けだった「ZE3000」にANCがついた「ZE3000SV」も展示。ANCは音質重視でマイルド調整ということ。ANC以外にも音質はより向上していて、よりクリアで特に空間再現力が高くなったように思います。

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fina A6000(左)とZE3000SV(右)


次にお馴染みのFitEarですが、今回は一層怪しい「謎のイヤフォン・大」と「謎のイヤフォン・小」を展示。
これはいままでのFitEarにない設計を試行したもので、特に大きい方は新設計のフィット感を試してほしいとのこと。小さい方はIMargeに似た造形のようです。
どちらもノズルの音導管の奥に「白い何か」が詰まっているのが特徴で、これも新採用のようです。
聴いてみると、両方とも今までのfitearとちょっと違うサウンドで、最近のシャープ傾向の堀田サウンドよりも柔らかくリッチで、開放感が感じられます。大きい方はより音楽的で、装着感はやや大きめですが悪くはないです。小さい方は大きいのに比べると正確系ですが一般的にはリスニング寄りと思えます。

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FitEar謎のイヤフォン大小(左)と謎のイヤフォンの謎の白い何か

アユートブースではFir Audioの新製品に注目。Fir Audio「Projeck K」は全域高性能で、大きなベントホールはATOMのものだと思います。「第二の鼓膜技術」に共通したATOMらしい音抜けがよいイヤフォンでひときわクリアなリスニング寄りの音です。
Fir Audio「FR10」はエレクトロダイナミック形式というよくわからない形式のシングルドライバーですが、かなり音は良く、モニター的でやはりATOMらしく音抜けが良い印象です。
四角く回転しないMMCX端子も特徴。

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FiR Audio Project K

MUSINブースではiBasso Audioの新製品「DX340」の先行版を展示。位置付けとしてはDX260の上で、MAXラインとは異なるそう。特徴は「D16 TAIPAN」で採用された1bitディスクリートDACを採用していること。電源をデジタルとアナログで完全に分ける方式を採用し、設定画面ではDACとアンプで別々のゲインが設定できるのが面白い。
音はDX260系統の音で、より鮮明な感じです。DX260は音が細かい、DX340は音がシャープという感じでしょうか。

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iBasso DX340

Jaben JapanのブースではSoftearsの新製品を展示。「Volume S」は人気のあったVolumeの後継機ですが大幅に改良されています。低音の強さを二種類選べるスイッチ搭載。
「Studio2」はモニター傾向の音だけど躍動感があって、リスニングでも使いやすいと思います。また「Soft Tail」というUSB-C/3.5mmアダプターも展示していましたが、これは小型ながら音は良かったです。

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Softears Volume S(左)とStudio2(右)

Softearsは技術力に長けていて、「RS10」にはBAドライバーのパッシブタイプ(ダイナミックのパッシブラジエーターに相当)なども搭載しています。
下の図では赤丸のBAに結線されていないのでそれがわかります。効果についてはまた後で書きます。
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RS10と赤丸部分がパッシブBA


FIIOでは「RR11」という普通のポータブルFMラジオが展示されていたのがユニーク。日本は災害時の必要性もあって意外と出そうな気がします。

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FIIO RR11

またNIPOという中国のメーカーではヘッドフォン祭初展示となる「N2」というDAPを展示していました。
AndroidベースのDAPでES9039を搭載しています。音は解像力が高く、試聴曲の手嶌葵の声の掠れ具合もよく再現していました。ニュートラルでややドライのESSらしい音です。
また面白いのは「A100」というスティックDACとは言えませんがスマホ用のDACです。これはまだ開発中ですが、やや平たい筐体の背面が磁石(magsafe?)でスマホにくっつくというもの。音質はN2の90%近くまで持って行きたいとのこと。

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NIPO N2(左)とA100(右)

Campfire AudioではCamJamに登場していた「Clara」は展示がありませんでした。

今回は平面磁界型イヤフォンの共演も聴きどころでした。Campfire Audioの「Astrolith」の他に、ミックスウェーブでは64 Audioの初の平面磁界型イヤフォン「SOLO」を展示。
どちらかというとリスニングよりの音で、音が速いのもAstrolithと似ています。歯切れが良く、低音もたっぷり出ていて、パンチが強く、正確性も高いのもAstrolithと共通の特徴に思えます。ただ高域がややきつい点があり、ここは2wayで高域専用チャンバーのあるAstrolithに部がありそうです。ちなみにSOLOも高域で共振するヘルムホルツ・レゾネーター方式のチャンバーを備えています。
FIIOも「FP3」という平面型のイヤホンを展示していました。こちらもクリアさが高く、きれいなサウンドが楽しめました。

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64 Audio SOLO(左)とFIIO FP3(右)

こうした平面型イヤフォンの音質性能の高さを考えると、今後ともますます平面磁界型イヤホンが加熱していくのかもしれません。
posted by ささき at 11:58 | TrackBack(0) | ○ オーディオショウ・試聴会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年10月31日

Bluetooth東京セミナー2024にてAuracastを試す

10月30日に室町三井ホール&カンファレンスにて開催されたBluetooth東京セミナー2024に参加しました。
ここでは様々なAuracast機器が展示、デモされていましたが、そこに先のPhilewebの記事で書いたJBL Tour Pro3を持参して行って実際に使いました。
PhilewebのAuracast記事リンク
https://www.phileweb.com/sp/review/column/202410/28/2457.html

会場は手前の部屋が様々なメーカーがBluetooth機器を展示するブースで、奥のホールがセミナー会場です。
「Bluetooth最新情報:技術発展とAuracastの普及に関するハイライト」というセミナーではBluetooth SIG APAC&中国担当 シニアディレクター ロリ・リー氏がBluetooth の概要と歩みの概要を解説、興味深かったのは米国FCCがワイヤレスイヤフォンと補聴器の関係について勧告を行ったという点、そしてAuracastアシスタントにTWSのチャージングケースも使えると言及した点です。
前者は最近のAirPods Pro2のOTC補聴器機能とも関係しますし、後者はこれまでAuracastアシスタントは主にスマホやPCと言われていたものを、私のPhilewebの記事のようにTour Pro3の液晶ケースのようなデバイスにもBluetooth SIGが言及したという点で画期的です。
またAuracastのシナリオを解説した図には私がアスキーで記事を書いたAuriも含まれていました。
Auriシステム紹介記事リンク
https://ascii.jp/elem/000/004/183/4183952/2/
自分の情報認識とSIGの考えていることをすり合わせできたという点でも意味があります。
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右図の赤丸部分がAuriシステム

「広がる Bluetooth LE Audio ワールド」というセミナーではLE Audioのキーパーソンであるソニーの関正彦氏によるLE Audio概要を解説。興味深い点としてはゲーミングプロファイルであるGMAPと従来の音声プロファイルTMAPの拡張です。
GMAPは昨年暮れに発表された新しいプロファイルで、ゲーミングに特化したものです。特徴は低遅延で30msを達成するとのこと。次世代TMAPではハイレゾ、サラウンド、安定性向上、ワイヤレスマイク(複数) 、そして機能拡張などが可能になるということ。
2028年には80%がLE Audio対応機器になるということですが、さてアップルはという気もします。
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ノルディックのAuracast対応SoCのセミナーも興味あったのですが都合があり退席。

さて、セミナー会場では同時通訳が行われており、それをBoschのワイヤレスタイプの受信機で聴講することができました。これはINTEGRUSというシステムで赤外線通信を用いています。これが一般的な会議・セミナーでの聴講システムですね。
Bosch INTEGRUSリンク
https://www.boschsecurity.com/xc/en/solutions/conference-solutions/language-distribution-system/
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Bosch INTEGRUSポケット受信機

一方で実は会場ではAuracastで同時通訳がブロードキャストされており、私は持参したJBL Tour Pro3でAuracastで聴くことができました。Auracast送信機にはST Microのシステムが使われていたようです。
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BoschのINTEGRUSポケット受信機(右)とJBL Tour Pro3

Auracastの使用法は液晶ケースの画面をフリックしてBluetoothマークの表示されている画面に持ってきます。そこで「追加」ボタンを押下すると最下部に三角のAuracastのロゴが表示されます。これを押下すると少しの同期する時間の後に会場にブロードキャストされているAuracastチャンネルの一覧が現れます。ちなみに正確にいうと「Auracastチャンネル」は私が便宜的に使用している名称で、Auracast送信機がブロードキャストしているAdvertise情報の一覧です。
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Tour Pro3の画面。一番下のロゴがAuracastロゴで、これを押下すると同期ができる

ここには隣の部屋のデモも合わせて複数のチャンネルが表示されますが、その中の"Japanese"(日本語音声)と"English"(英語音声)の二つがセミナーのチャンネルです。これを選択するとTour Pro3から日本語または英語の音声が流れてきます。
BoschのINTEGRUSの音声は中域に特化した昔の電話のような音質ですが、Tour Pro3は高域寄りの鮮明な音質です。もちろんTour Pro3のANC機能を使って会場の背景ノイズを消すことが可能です。
Auracastの音声はやや途切れがちですが、これはなんの影響かはわかりません。もしかするとWi-Fi機器が多いので2.4G帯干渉によるものかもしれません。(BoschのINTEGRUSが赤外線を使用しているのは2.4G帯干渉を避けるため)

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セミナーで実際にAuracastで聴講。Englishは英語音声チャンネル

実際にAuracastで聴講してみて気がついたのは、Tour Pro3の液晶ケースで音量調整ができることが便利だということです。なぜかというと、Auracast使用中はスマホとはコントロールが切断されてるので、スマホで音量は変えられません。イヤフォンでもボリュームは変えられますが、方法が機種によって違うので使用に難があります。液晶ケースで音量調整できると便利ですね。

この状況でiPhoneのJBLアプリを開くとBluetoothソースリストにAuracastのチャンネルも表示されます。スマホとはコントロールは切断されていますが、セッション自体は維持していて、Auraacastを終了して通常のBluetooth(ここではクラシックBluetooth)に戻っても再接続やペアリングをし直す必要はありません、

展示会場ではAuracast experienceと似たAuracastのデモが行われていましたが、このAuracast送信機は中国のtelink製でUSBドングルに実装されています。
Tour Pro3ではチャンネルにB23 Gate(空港ゲート案内)とTV1(スポーツバーのデモ、バスケの試合)を選んで聴くことができました。この会場では音声の途切れはありません。
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TV1チャンネルでバスケの試合観戦、右はTelinkの送信機

Philewebの記事に書いた東芝情報システムも出展していて、同時通訳システムのデモをしていました。ここでも自分のTour Pro3で再度試してみました。
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またCEarではパヴェでいち早くAuracastを取り入れてCEar Fieldとして独自展開していましたが、その送信機のみの機能を持つ機器を展示していました。これは3.5mmアナログ端子を備えていて、TVなどの音声をCEar Filedで飛ばせます。Privateモードでパヴェ専用ですが、通常のAuracastでの送信もできるようです。
価格は11,000円で年末に発売されるようです。
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パヴェ・送信専用モデル

今回は実際にJBL Tour Pro3を用いてAuracastを実際に試せましたが、たしかに自分のイヤフォンを持ってセミナーを聞きに行くというのはちょっとした未来体験でした。ANCなどの機能を合わせることができ、工夫すればさらに音質も改善できるでしょう。
一方でセミナーでの音質や途切れの問題など、課題もいくつかあるように思います。しかしBoschのシステムではこちらでは何もできませんが、自前のイヤフォンならイコライザーの調整など調整手段もあります。
また会場ではSTマイクロ(セミナー)、ノルディック(東芝情報システム)、Telink(Auracast Experienceデモ)、クアルコム(パヴェ)など様々な種類の送信機が使われていました。それぞれチップ型やマイコン型などいろいろと実装の方式や柔軟性が異なり、アナログ入力やドングル型など様々な応用ができます。これらの多様な機器の組み合わせで、これまでのスマホとTWSの組み合わせよりもより柔軟なBluetoothオーディオの可能性が見えてくるのかもしれないとも思います。
posted by ささき at 10:01 | TrackBack(0) | ○ オーディオショウ・試聴会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

PhilewebにAuracastの実際の使用の記事を執筆

PhilewebにJBLのTour Pro3の液晶ケースを用いて、Auracastの実際に近い使用シナリオのデモを東芝情報システムさんのシステムを借りて実施した記事を執筆しました。
JBLのイヤホンを東芝情報システムの送信機と組み合わせて実施したわけです。操作にはTour Pro3の液晶ケースのUIをAuraacstアシスタントとして活用しています。

https://www.phileweb.com/sp/review/column/202410/28/2457.html

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posted by ささき at 07:56 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年10月25日

マイクロソフトがARM向けにネイティブのASIOドライバーを開発

開催中のSnapdragonSummitで、マイクロソフトがARMプラットフォーム向けにネイティブのユニバーサルASIOドライバーを開発。YAMAHAとの共同開発のようです。
純正のASIO4ALLのようなものかもしれませんが、もちろんネイティブなのでレイテンシーはかなり低いと思われます。
オーディオ向けには排他WASAPIがありますが、やはりDAW向けにはより低レイテンシーのASIOが必要ということでしょう。おそらくはタブレットのDAW市場でのiPad対抗と考えられます。

参考リンク: SoundOnSoundの記事
posted by ささき at 06:25 | TrackBack(0) | ○ PCオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年10月07日

CanJam SoCal 2024での注目機種

さる9月28日・29日の週末にCanJam SoCalが開催されました。SoCalはSouth Californiaのことです。イベントはロサンゼルスで開催され、HeadFiでも最大規模のイベントです。
以下動画やコメントを読みながら気になった機種をいくつか挙げます。日本からはfinal D8000 DCやブリスオーディオの富嶽も出ていたようです。
動画は下記リンク。画像は主に動画から。なんと最長の3時間もあり、単に見るだけでも大変です。




Campfire Audio「Clara」
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おそらく今回の目玉でCampfire Audioの新作。Nine Inch Nailsのアレッサンドロ・コルティーニとのコラボレーション。
ノーマル版と限定のチタニウム版の二種類のシェルがあり、ケーブルも異なるようです。チタン版にはより高級なケーブルが付属するよう。標準はおそらくタイムストリームケーブルだと思います。
低域は一基のバイオセルロース振動板のデュアルマグネット形式で新設計だけどCascara とBonnevilleの延長。2個マグネットあるけどドライバーとしては一基だそう。
中域はデュアルダイアフラムのBAが一基、二基のスーパーツイーター高域ドライバーだそう。
ゲストコメントによると音的には低音の重さが印象的で、チタン版は少し暖かめで通常版は明るめということ。NINの曲には合っていそうです。

AUBUS Acoustics「SIERRA」
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CanJam発のヘッドフォンでHeadFierが開発したヘッドフォンのようで、Judeがダンクラークと比較してました。ダンクラークも元々はCanJamに改造Fostexを持ってきていたHeadFierで、そこから今のダンクラークオーディオにつながっています。
アルミの3Dプリントを多用したパーツを使用、特に耳介にに当たるような工夫をしているようで、元ゼンハイザーのアクセル氏のヘッドフォンとの共通性もあるかもしれません。
価格は$900のようです。イベントのコメントでも音質は好意的で、低域はかなりあるけれどもよくコントロールされているとか。

HiFi for all「HFA Dalia」
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50mmドライバーを搭載した開放型のヘッドフォン。特徴は2ステージのリゾネーターシステムというのを搭載していて音のチューニングを変えることができます。「バランス」と「ダイナミック」というチューニングがあるようです。
これは動画でJudeが持っているようにリング状をしていて、はめ込んでエアフローを変えるという方式のようです。もしかするとダンクラークのAMTSのような働きがあるのかもしれません。
https://hififorall.com/products/hfa-dahlia-headphone?srsltid=AfmBOoqkyzV_0jMvC-YpHFCzVVqyDdROotZuJZyYjpBR2qOvgndWzNmN

64 Audio 「SOLO」
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ブランド初の平面磁界型ドライバーを採用。14.2mmのシングルフルレンジドライバー。2Wayで平面磁界型を採用したCampfire AudioのAstrolithも極めて高い音性能を有していますが、平面磁界型イヤフォンもMEMS同様に次の波になるかもしれません。SOLOでは独自のヘルムホルツ・レゾネーターを開発、SOLOでもAstrolithでも新設計の音響チャンバーを加えていることからも、ちょっとした工夫とノウハウは必要と思われます。
https://www.64audio.com/products/solo?srsltid=AfmBOorVxW9WYjELKBsSTdz500lhboh557bnZD8Rp0y7d2niuvgo8xra

Ray Samuels Audio「B-21 Raider」
なんとSR-71のレイサミュエルズ氏の新作。ヘッドフォンアンプでダイナミック型と静電型の両方を使用できます。
https://www.raysamuelsaudio.com/products/a-10.html
https://www.head-fi.org/showcase/ray-samuels-audio-b-21-raider.27324/reviews
ちなみにレイサミュエルズ氏をヘッドフォン祭に招いたことがあります。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/299556400.html

2012年のヘッドフォン祭です。この時は記念にSR-71にサインをしてもらいました。またいつかきて欲しいところです。
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2012年のヘッドフォン祭より





posted by ささき at 10:33 | TrackBack(0) | ○ オーディオショウ・試聴会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年09月27日

LUXMANから二台結合可能のバランスヘッドフォンアンプ「P-100 CENTENNIAL」登場

国内のヘッドフォンアンプでは先駆たるLUXMANから創業100周年を記念したヘッドフォンアンプ「P-100 CENTENNIAL」が発表されました。

https://www.luxman.co.jp/presspro/p-100-centennial

究極の駆動力を誇るという「P-100 CENTENNIAL」のユニークな特徴は「P-100 CENTENNIAL」を二台使用してそれぞれを左右別のモノラル駆動としてXLR 3ピン端子を使うことによりさらに駆動力を高める方式(Phone-4)が採用されたことです。

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P-100 CENTENNIAL 二台使用モード

面白いと思うのはこれがバランスアンプとしていわば先祖帰りの手法だからです。この二台接続が可能なのは、3ピンXLRケーブルの端子が二股に分かれているからです。しかしなぜそのようなケーブルになっているかというと、これはバランス駆動方式の先祖であるHeadroomのBlackheadというアンプが、Maxというヘッドフォンアンプを二台物理的に結合させたものだからです。

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Headroom Blackhead(右)とMax(左)

この3ピンバランスケーブルは当初はバランス駆動アンプの標準的なケーブルだったのですが、次第にバランス駆動方式が当たり前になってくるともっと簡易な4ピンXLRが次第に広まってきました。しかし「P-100 CENTENNIAL」をみると冗長性というものが実は無駄ではないということがわかるような気がします。
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2024年09月21日

AirPods 4はどのようにイヤチップなしでANCをしているか

AirPods 4はどのようにイヤチップなしでANCをしているか、という記事がengadgetに掲載されています。
https://www.engadget.com/audio/headphones/weve-got-to-make-it-happen-how-apple-designed-airpods-4-for-effective-anc-130008844.html

これはアップルのハードウエア担当Kate Bergeronとマーケティング担当Eric Treskiがインタビューで語ったものです。
それによるとAirPods 4のフィット感の監視のためのアルゴリズムの延長にあるようです。アップルによればそのリアルタイム監視機能はH2でなければ実現できなかったとのこと。また実のところイヤーチップなしの外音取り込み機能の方がさらに難しかったということです。これは外音取り込みの場合にはレイテンシーがより重要になるからのようです。また内側マイクとドライバーが干渉しないような工夫も必要だったとのこと。
以前クアルコムがアダプティブANCの発表をした際に、イヤフォンがズレて装着されていてもそれを補完する形でANCを効かせられるという説明をしたことがありますが、それに近いのではと思います。いずれにせよアダプティブ機能の延長ではあるのでしょう。
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2024年09月17日

ヘッドフォンもマルチBAも鳴らすスティックDAC「L&P W2Ultra」レビュー

これまでこのブログではLUXURY&PRECISIONのスティックDACをいくつか紹介してきました。「W2」,「W2-131」,「W4」,「W4EX」です。
LUXURY&PRECISION(LP楽彼)は中国のオーディオブランドで、はじめはHeadFiなど海外マニアックフォーラムで人気を集めていましたが、2018年からサイラスが国内でも扱いを始めました。

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W2UltraとHD800 (液晶にHD800設定が表示されている)

今回紹介するのはW2-131の後継機である「W2Ultra」です。W2-131とDAC構成は同じくシーラスロジック製「CS43131」のデュアルですが内部回路の再設計や特注パーツの新規作成、追加機能などがあります。
まずW2Ultraの特徴はハイパワーを可能にして鳴らしにくいヘッドフォンにも対応したことです。

W2Ultraの製品情報のページはこちらです。
https://cyras.myshopify.com/products/w2ultra

* W2Ultraの特徴

まずヘッドフォンへの対応ということですが性能面で言えば、W2Ultraの最大出力は32Ω負荷時890mWを実現しているということなので、スティック型DACながら据え置きアンプに近いくらいのハイパワーを出すことができます。だいたい1W(1000mW)くらい出力があれば据え置きなみと言って良いと思います。
これはデータシートに載せるためだけの瞬間ピーク値ではなく機器の持続的で安定した真の駆動力を重視しているということで、800mW持続可能高出力アンプを搭載するほかに特性の大型ヒートシンクも採用しています。小型ながらコンパクトな据え置きアンプのような設計です。
かなり電力を消費するようですが、PAV±6V時に60分の再生ではスマートフォンのバッテリーは4%程度の消費ということです。

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W2Ultraのヒートシンク

しかしながらW2Ultraのポイントはハイパワー版という特別モデルではなく、あくまで応用範囲が広がったという点です。つまり単に「パワー番長」のようなスティックDACではなく、様々なイヤフォン・ヘッドフォンに対応できるスティックDACということができます。
ハイパワー版というと今まで上手く相性があった高感度マルチBAには今度は合わなくなるような印象を受けますが、W2Ultraではそれを設定の多様さを活かして解決しています。

それを実現するためには出力先に合わせたいくつかの設定を組み合わせて最適なイヤフォン・ヘッドフォンを使い分けることができます。
例えば従来からある「ゲイン切り替え」、そして新しい機能のイヤフォンとヘッドフォン向けに電圧を最適化する「PAV切り替えモード」、特定のイヤフォン/ヘッドフォンの特性に合わせたサウンドスタイルに切り替えられる「SDF切り替えモード」があります。SDFは従来からありましたが、ゼンハイザーHD800、FOCAL Utopiaなどのヘッドフォンが加わっています。LP楽彼ではSDFとHigh Gainを組み合わせるとフラッグシップ級ヘッドホンですら完全に駆動するとしています。

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W2Ultra

このほかにも曲に応じたTUNE01、TUNE02のカスタム設定も継続して搭載されています。LP楽彼ではTUNE01ではより広がりのある音で人の声を特徴とする楽曲に最適、TUNE02は精巧な音で交響曲や複雑な楽曲に最適としています。わたしの受けた印象としてはTUNE01は音に着色感がなく広がりのあるハイファイ系・モニター系の音で、TUNE02はやや温かみがあって密度感のあるリスニング寄りの音に感じます。試聴は主にTUNE01で行いました。

* 実機インプレッション

大きさやサイズ感は以前のW2/W4シリーズとほぼ同じで、外観デザインと操作性はW4譲りのものとなっています。前機種に慣れているとマニュアルを読まずにも操作できますが、設定項目が増えています。
パッケージも同じですが同梱品からライトニングケーブルがなくなっています。これはライトニング端子の制限および電流の不安定さがW2Ultraの本来のスペックを十分に発揮できず、接続の想定外となったためということです。

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まずゼンハイザーHD800を使用してみました。(設定 SDF:HD800 Gain:High PAV:6.0V)
たしかにW2Ultraの駆動力は高く、鳴らしにくいハイインピーダンスのHD800を軽々と鳴らしているのが分かります。単に音量が取れるというのではなく、軽々と駆動しているようで苦しそうな歪みも重苦しさもありません。HD800の性能と個性を十二分に引き出している感じです。
ジャズヴォーカル曲のウッドベースのピチカートはBAイヤホンのように繊細で細かな鳴りが楽しめ、ヴォーカルは鮮明で声質の細かいところまでよく聴くことができます。空間表現も奥行き感があって立体的です。低音の打撃力もきちんと制動がきいていてタイトでかつ鋭いアタック感です。またHD800はわりと低域がフラットで軽めですが、そういう感じがなくパンチのある量感たっぷりの音楽が楽しめます。
小さなDACから出ているとは思えないようなパワーが出ているのがわかります。目を瞑って目の前のスティックを見なければ優秀なアンプで駆動しているように思える感覚です。

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W2UltraとHD800

ここで試しにSDF設定を「HD800」ではなく「Normal(汎用)」にしてみると音量は取れていますが全体的な整った音が減退して少し雑に感じられます。SDFの設定をもどすと高性能アンプから出ているようなとても高い整った音質レベルに感じられます。またこれも試しにPAV設定を4.5Vにすると音が少し薄く軽く感じられるので、やはり6.0Vの方が良いようです。
HD800の独自端子に合う4.4mmケーブルがなかったので3.5mmで試聴しましたが、これでも相当満足できるレベルです。おそらく4.4mmで聴くとさらに素晴らしい音質になるでしょう。

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W2UltraとWHITE TIGER

次にマルチBAイヤホンであるqdc「White Tiger」を4.4mmで試聴しました。(設定 SDF:Normal Gain:Low PAV:4.5V)
これまで同様に解像力は高く、弦楽器の鳴りが細やかでリアルです。音の切れ味の鋭さ、周波数特性のフラットさ、歪みが少ないすっきりとした音の端正な感じもW2/W4と同系統であり、LP楽彼のDAPにも通じる音作りだと思います。フェイキーやFRIED PRIDEのようなシンプルなヴォーカルとギターデュオの音で音質の高さの本領を聴かせてくれます。
PAV設定を6.0Vにするとゲインと違って音量は変化しませんが、音に力強さが加わります。好みの部分もありますが、適正でいうとやはりマルチBAイヤフォンにはPAV:4.5の方が繊細な音を取り出せる感じがあって良いと思います。

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W2Ultraと3T-154

次にダイナミック型で駆動力が必要なiBasso「3T-154」を4.4mmで試聴しました。(設定 SDF:Normal Gain:Low PAV:6.0V, TUNE02)
3T-154では線が太く重みのあるダイナミックドライバーらしさをたっぷり味わえるような濃厚なサウンドを楽しめます。ウッドベースも鳴りっぷりがよく聞こえます。3T-154ではTUNE02にするとより雰囲気のある温かみが楽しめます。
また3T-154ではPAVを6.0Vにすることでより力強いパワフルな音が楽しめます。これはなかなかよく3T-154の良さを引き出しています。音もより端切れがよくパンチの強さが向上します。かなり相性の良い設定だと思います。PAV:6.0Vで聴いてからPAV:4.5に戻すと物足りなさが感じられます。
ちなみにゲインを変えると音量自体が大きくなりますが、PAVだと音量は変化せず力強さが変わります。

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W2UltraとW2-131(左)

前モデルのW2-131とマルチBAイヤホンのWhite Tigerを用いて比較試聴しました。W2-131の設定はSDF:Normal Gain:Lowです。
W2-131でも同じ設定にするとパッと聴きにはほとんど同じ音質と感じます。少し詳細に聴き比べるとW2-131の方が少しおとなしい感じで、ややW2Ultraの方が解像力が高いようには感じます。特にハイパワーだからW2Ultraではホワイトノイズが大きいと言うこともないと思います。
いずれにせよW2-131で感じたハイエンドのマルチBAイヤフォンとの相性の良さと言うのは、設定さえ変えればW2Ultraでもそのまま引き継がれていると言うことが言えると思います。
そう言う意味ではW2Ultraが特別なバージョンではなく、W2-131の後継機に当たると言うのは正しいと思う。以前のものはきちんと引き継がれた上で、さらにハイパワーのヘッドフォン対応がなされているわけです。

* まとめ

W2Ultraは音の傾向は従来を踏襲していますが、パワーと音のカスタマイズの自由度が格段に向上したモデルです。W2Ultraのポイントは単にヘッドフォンに特化したのではなく、設定によりさまざまな種類のヘッドフォン・イヤフォンにむいているということです。ハイエンドヘッドフォンが鳴らせるようになったと言っても、従来相性の良かったマルチBAイヤホンとの相性がなくなったわけではありません。イヤホンで使ってもまったくこれまで同様に使えます。ハイパワーすぎてイヤホンではボリュームの調整が難しいということもありません。

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イヤホンでもハイエンドヘッドフォンでも使用できるだけではなく、イヤフォンもマルチBAとダイナミックで音を変えて最適な音を引き出せます。ハイエンドヘッドフォンをスティックDACで楽しみたいというユーザーだけではなく、自慢のダイナミックドライバーイヤフォンをきちんと鳴らしたいというユーザーにも向いています。マルチBAイヤホンとはいままで通りに相性は良いので、色々な種類のイヤホン、ヘッドフォンを所持しているマニアのユーザーに一番向いているといえるでしょう。特にHD800ユーザーで手軽にHD800を楽しみたい人には特におすすめだと言えます。

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2024年09月10日

AppleがAirPodsを刷新、AirPods Pro2にOTC補聴器モードを搭載

日本時間9月10にAppleの恒例の発表会があり、iPhone 16/16 Proと共にAirPods 4が発表されました。
AirPods 4ではH2が搭載され、ANC採用のモデルもラインナップされています。カナルタイプではなく、オープンイヤータイプでANCが入ったのはポイントかもしれません。音響部分や装着感にも手が入っています。
なおAirPods Maxはカラバリが増えてUSB-C化されましたが、USB-C化はEU要求で必須ですので最小限度のみということのようです。この辺の匙加減には売り上げも影響しているのかもしれません。

今回注目点はAirPods Pro2に(OTC)補聴器モードが搭載される案内があったことです。国制限がありますが、日本にもこの秋にアップデートで提供されるようです。
Appleでは「聴覚の健康をサポートする体験」と呼んでいますが、これはつまり噂されていたAirPods Pro2のOTC補聴器モードです。
リリースでは「軽度から中程度の難聴が認められる方向けに処方箋不要のヒアリング補助機能」がAirPods Pro2に追加されるとありますが、この説明はアメリカにおけるOTC(Over The Counter)補聴器の説明と同じです。ちなみにOTC補聴器はアメリカの法に基づく呼称なので、Appleのようなグローバル企業では言い方は変えるでしょう。

ここ2-3年でアメリカからの情報では完全ワイヤレスイヤフォンを巡る話題に補聴器が絡むことも多くなっていました。この背景としてはアメリカで2022年の8月に米国FDAが医療従事者(オーディオロジストなど)の関与しないOTC補聴器が認可されたことが理由です。OTC補聴器とは店頭販売が可能な補聴器のことです。それまではアメリカでは補聴器の購入にオーディオロジストの処方箋が必要でした。
これによって軽度から中程度の難聴者にとっては従来よりもかなり安価に補聴器が入手できるようになったわけです。これは全米人口の15%に関係するというのでかなり大きな市場の話になります。
OTC補聴器は本格的な補聴器に比べるとかなり安価ですが、完全ワイヤレスイヤホンに比べると価格を上げることができます。

実際に世界的にはオーディオメーカーと補聴器メーカーが協業する動きが近年進んでいます。例えばSONOVAに買収されたゼンハイザー、ソニーもデンマークのWS Audiologyとの協業で業界参入をしています。JAVARAもすでにOTC補聴器を市場導入しています。
これは流通や互いの分野のノウハウの問題でどうしても協業体制が必要となるからのようです。

このようにOTC補聴器と完全ワイヤレスイヤホンの相互関係も注目したい流れの一つと言えます。
もともとLE Audioも補聴器をワイヤレス化するために低消費電力化しなければならないのでBluetoothオーディオ機能にBLEを適用するというところから始まっていますから。

アップルのアナウンス
https://www.apple.com/jp/newsroom/2024/09/apple-introduces-airpods-4-and-a-hearing-health-experience-with-airpods-pro-2/
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2024年09月07日

Bluetooth6.0の登場とオーディオとの関係性

Bluetoothのあらたなコア規格、Bluetooth6.0がBluetooth SIGから発表されました。
https://www.bluetooth.com/core-specification-6-feature-overview/

一番的には新機能であるBluetooth Channel Soundingという機能で高精度な距離測定ができるということが主たる改良点です。
以前は経路損失計算(RSSI)という受信強度を測る方法で距離を測定していましたが、環境(壁や反射など)要因などによって精度が確保できませんでした。それが今回の新しいBluetooth Channel Soundingでは位相差の測定と送受信の時間計算を合わせることでより精度の向上を果たしました。これは最近Bluetoothが力を入れている物量管理にも関係していると考えられます。
またオーディオ的にはFind My機能の精度向上により紛失イヤホンが見つけやすくなるでしょう。

今回の6.0でオーディオ的に大きなものは、Isochronous Adaptation Layer (ISOAL) の改良によって、より低遅延でオーディオが送ることができるということが挙げられます。Isochronous(アイソクロナス)は時間優先で送信するモードで、これはLE Audioのコアスペックでの核になる機能です。正確に送るよりも時間通りに送ることを優先するという意味で、オーディオデータの送信に向いています。ちなみにLE Audioでは双方向の通信がなされますが、Auracast(ブロードキャスト)では一方向になります。
ISOALはアイソクロナスデータ(つまりオーディオデータ)の形式やタイミングを調整するための層です。Bluetooth 6.0ではISOALの改良として「セグメント化されていないフレーミングモード」という新しいモードが追加されたことにより、データのセグメント化(分割)の時間を省略することにより、低遅延を図っています。

それとFrame Spaceの改良もオーディオに関連します。
Frame SpaceはLE Audioにおいて隣接するパケットの送信を分ける時間のことです。Bluetooth 6.0ではデバイスに応じてこの間隔を調整することが可能となりました。つまりより高性能なイヤホンならばより短い間隔で送れるので、リアルタイム性が向上します。レイテンシーも関係するかもしれませんが、音声通話品質の向上になるかもしれません。また電力消費も減少します。
接続時のネゴシエーションで決めるようなので、デバイスに依存するという点がポイントです。

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Advertising

またMonitoring Advertisersという機能もオーディオに関係します。これはエネルギー消費を抑えながらBluetooth LEデバイスを効率的にデバイスを管理するというものです。AdvertiseとはAuracastでも登場しますが、Bluetooth規格の中では自分のことを相手に知らせることをAdvertiseといいます。
LE Audioのユースケースは、Monitoring Advertisers機能の重要なシナリオの1つですとSIGでは書いています。

まとめると、イヤホンの音質的にはISOALの改良とFrame Spaceの改良でより低遅延が可能となり、Monitoring AdvertisersとBluetooth Channel Soundingによってイヤホンの管理が向上したということになると思います。
なおBluetooth 6.0の登場と言う場合には、コアスペックと呼ばれる、より基本的でより低レベルの部分の変更という意味です。LE AudioやAuracastはもっと上位層がメインなので、今回LE Audioが大きく変わったわけではなく、その基礎になる部分の変更という意味です。念のため。
posted by ささき at 21:02 | TrackBack(0) | ○ PCオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする