Music TO GO!

2019年03月16日

スタインウェイの「ハイレゾ」ピアノと自動ピアノについて

スタインウェイが世界初の「ハイレゾリューション・ピアノ」と銘打った新製品Spirioを発売しています。
https://www.steinway.co.jp/spirio
スタインウェイとしては実に80年ぶりの新製品ということですが、端的にいうと従来のスタインウェイのピアノに自動演奏システムを搭載したもので、いわゆる自動ピアノです。
なぜハイレゾかというとピアノの解像力が高くなったわけではなくて、自動演奏記録の精度(解像力)が高くなったということのようです。自動演奏システムの部分はiPadを使用して、独自のアプリを搭載しています。

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Spirioのカタログより

このフォーマットはSpirio High Resolutionというらしく、記録しているのは打鍵の強さと長さ、ペダルのデータで、おそらく昔のピアノのロール紙をベースにしているように思います。記録方法はSpirioで演奏しているのを記録するか、または音源から解析することができます。
再現精度はハンマー速度が一秒間に880回、1020段階、ペダルが1秒間に100回、256段階ということです。

わたしは自動ピアノにわりと興味があって、前にZenph社がヤマハの自動ピアノを使ってグールドの演奏を再現したときに下記リンクの記事を書いています。
グレングールドは電気ピアノの夢を見るか?

これはグールドの録音したマスターテープを解析してデータ化(MIDI)します。このときは2007年で10年以上前ですが、この当時でも100万分の一秒の精度で鍵盤を叩く角度まで検出していたというので、今だとAIを使用してもっと進んだ解析ができるのでしょう。

こうした先進的な自動ピアノのもとになったのが、昔ながらのロール紙を読んで再生する自動ピアノで英語でいうとPlayer Piano(ボネガットの小説タイトルにもなった)またはReproducing Piano(再現ピアノ)ともいいます。わたしが行った範囲では清里と河口湖にわりと良い自動ピアノがあります。

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清里の自動ピアノ(ホールオブホールズ所蔵)

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河口湖の自動ピアノ(河口湖オルゴール博物館所蔵)

清里ではガーシュインとかラフマニノフが自分で記録したロール紙があります。下記動画は学芸員さんの了承を得て撮った自動ピアノの再生動画で、ガーシュイン自身によるラプソディインブルーのピアノ演奏です。




当時(100年くらい前)は自動ピアノがビジネスとして成立していて、作曲家も小遣い稼ぎになるのでよく自分自身で自動ピアノの記録を行ったそうです。記録には専用の記録ピアノを自動ピアノの発売の前に作っておいて、ロール紙に記録しますが、当時の技術では完全ではありません。そこで記録時に別の演奏家が立ち会って自分でもメモを取っていて、あとでロール紙を手作業で修正するのだそうです。(この辺がいまではAIなんでしょうけれども)

わたしが興味あるテーマの一つはオーディオがない時代はどのように家で音楽を楽しんでいたか、です。
その一つの答えは「自分で演奏する」で、よくオーケストラ曲のソロギターなどのアレンジ版がありますが、あれはギター演奏家のためというよりも、演奏会で楽しんだ感動を家でも味わいたいという人々の需要があったからのようです。そしてもう一つの答えは「オルゴールによる機械演奏」で、これが自動ピアノにつながります。

私自身はピアノを弾くわけではないですが、こうした科学と音楽の融合という分野には心惹かれるものがありますね。オーディオもそうなんですけれども。
posted by ささき at 11:58| ○ 音楽 : アルバム随想録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月12日

iPhoneのTIDALアプリでもMQAサポート開始

AndroidのTIDALアプリでは少し前からMQAサポート(ソフトウエアデコード)が開始されていましたが、iPhoneのTIDALアプリでもソフトウエアデコードができるようになったようです。以下はMQA社のリリース。
https://www.mqa.co.uk/customer/news

とはいえ日本ではTIDALはサービスインしておらず、アプリも日本のApp Storeでは入手できません。ここはソフトバンクあたりになんとかしてほしいところですね。
一応米国アカウントを作る方法はありますがあまりよろしくないので紹介はいたしません。ただMQAは使えませんが日本でTIDALが使えるアプリを簡単に入手するにはmconnect liteがあります。またHIFIMANアプリでもTIDALを使うことができます。いずれにしてもTIDALアカウントは作成する必要はあります。

posted by ささき at 07:37| ○ 日記・雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月08日

Ultrasoneから静電型ハイブリッドイヤフォンとEdition15の密閉型が登場

3/1よりアユートが代理店引き継ぎを行ったUltrasoneから2つの新製品が発表されました。
ひとつは静電型ハイブリッド形式のイヤフォン、SAPHIRE(サファイア)とEdition15の密閉型であるEdition15 Veritusです。
当日は再びCEOに戻ったマイケルウインバーグ氏が来日して製品解説をしました。ひげをはやしていたので前のイメージとはちょっと違いますね。

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Veritusとは真実という意味でEdition15の密閉型版です。ドライバーは同じですが、音は密閉型に合わせて一からチューニングしたということです。イヤパッドにも改良があるということ。

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Ultrasoneはチタン振動板の少し硬めの音が特徴でしたが、GTCドライバーでは柔らかめの音を目指しているということです。
デモ機を聴いてみましたが、解像感はとても高くてeditionスタンダードという感じです。

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また密閉型だけども広がりのある音が特徴的で、S-Logicが効いているように思います。もちろん密閉型のパンチもあって、低域は膨らみすぎてないが気持ち良いと思いました。edition9のような低域偏重という感じではなく全体にバランスは良く、高域もかなり伸びてワイドレンジ感も高いと思います。

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もうひとつの新製品、SAPHIREの登場した背景としては、edition7から15年ということで、edition7は当時はなかった価格帯のモデルだったが評判を得てハイエンドヘッドフォンとUltrasoneの礎となった、その15年後にイヤフォンで同じことをしたいということです。

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サファイアの名前はedition7 tributeをインスピレーションに青く輝く名前にしたということです。
Tribute7の記事はこちら
当初editionラインでイヤフォンをやりたかったが、前のIQがレベルが十分高かったので静電型で他社にないものにしたかったということです。
IQではダイナミックとBAのハイブリッドでしたが、BAとのハイブリッドにしたのは主にサイズ的な要因があったようです。実際にマルチドライバー・ハイブリッドとしてはかなりコンパクトです。

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SAPHIREは6ドライバーのBAと静電型とのハイブリッドタイプのイヤフォンで完全密閉型のシェルデザインです。静電型は2ユニットをスーパーツィーターとして使用しているということ。クロスオーバーは設けていないようです。2ユニット使用したのは試行錯誤していろいろな組み合わせを試した結果、この組み合わせが良かったということです。2ユニットはスタガード(ずらし)ではなく同一帯域を担当しているということ。
静電型としてはいわゆるエレクトレットタイプで自己荷電して外部のバイアス電流は不要なタイプです。ちなみに静電型ドライバーユニットはすでに市場に出ている他社の静電型イヤフォンの採用しているユニットとは異なるようです。

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3つ穴が開いているのはそれぞれ高域(と静電ドライバー)、中域、低域と分かれています。

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ケーブルは2ピンでリケーブルできますが、引っ込んでいるタイプで極性指示のためのノッチがついています。
用意されていたアンバランスとバランスは線材も異なり、アンバランスで聴くとIQに似た音調で、高音質だが厚みがあって優しく滑らかな音です。バロックバイオリンの倍音の響きは美しく、スーパーツィーターはアンビエント感のためのようなことを言っていたように音楽的な傾向の音作りのように感じられました。バランスではケーブル線材も異なり、より明瞭感が高くなるように思います。

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(左はFitEar EST)

BTとかワイヤレス製品は、と聴いてみるといまやっているという感じでした。また体制も少し変わったようで今後の展開も興味が持てます。

ところでedition7から15年ということは、考えてみるとうちのブログも15年ということに気が付きました。この世界もスピーカーオーディオ同様に歴史というものが感じられるようになってきましたね。
posted by ささき at 11:02| ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月06日

ちょっとややこしいUSB新規格

USB4.0の仕様がUSB.orgで発表されています。(下記リリース参照)
https://usb.org/sites/default/files/2019-03/USB_PG_USB4_DevUpdate_Announcement_FINAL_20190226.pdf

最大40Gbpsという高速規格で、ポイントはUSB3.2、USB2.0やThunderbolt3とも互換性があるということです。上のリリースでもエンドタイプを動的に切り替えることができるとありますので、これらは自由に差し替え可能だと思われます。
さて、ここでもうひとつポイントは上の互換性記述でUSB3.1とかUSB3.0というのがないですよね?これはどうしてかというと、これとは別に最近のMWCで最大20GbpsのUSB3.2の規格が制定され、従来のUSB3.1とUSB3.0は"USB3.2"という規格に統合されたからだと思います。
これがややこしいのはUSB3.0(5Gbps)はUSB3.2 gen1、USB3.1(10Gbps)はUSB3.2 gen2、そしてUSB3.2自体はUSB3.2 gen2x2とリブランドされています。これはUSB3.2が2チャンネルの10Gbpsを使用する規格なので、技術的にはただしいのかもしれませんが、ややこしいとは言えますね。
ただ実のところUSB3.1のときもUSB3.0がUSB3.1 gen1とリブランドされてたようなので、それを引き継いでややこしくなったものと思います。
ちなみに名称はそれぞれ、USB3.1 gen1はSuperSpeed USB、USB3.2 gen2はSuperSpeed USB 10Gbps、USB3.2 gen2x2はSuperSpeed USB 20Gbps、USB4はまだわかりません。USB2.0はHigh Speed USBでしたね。
posted by ささき at 09:32| __→ PCオーディオ最新技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月21日

ハイレゾストリーミング比較、TIDALとQobuz

先日Roonが1,6にバージョンアップしました。その目玉はTIDALと並び称されるロスレスストリーミングサービスQobuz(コーブズ)のサポートです。Qobuzはフランスの会社で、欧州では以前からロスレスストリーミング・ハイレゾストリーミングを提供していましたが、アメリカではこの年初から開始されています。Roon1.6でのアップグレードはそれを見据えてのことでしょう。
1.6での注目機能はTIDALでMQAによるハイレゾストリーミングが可能となったように、QobuzでもハイレゾストリーミングがRoon上で可能となるということです。

ただ残念ながら日本では両サービスともまだ正式にサービス開始していないこともありますので、まず基本からハイレゾストリーミングサービスのTIDALとQobuzを数字や必要要件で比較してみます。

* ハイレゾストリーミングのサービスプラン

TIDALの場合はハイレゾストリーミングをするためには月$20のHIFIプラン(CD品質のロスレス配信)を取ることによってハイレゾストリーミングも同時に使用できます。これは後に詳しく述べますが、TIDALがハイレゾ配信でMQAコーデックを採用しているために実質的にCD品質と通信速度の必要性がほぼ変わらないからです。
最大は352kHz/24bitですが、ソフトウエアデコードの場合には96kHz/24bitまでとなります。

Qobuzの場合はハイレゾストリーミングをするためには月$20のHiFiプラン(CD品質のロスレス配信)ではだめで、Studioプラン(月$25) かまたはSublime+プラン(年$300)が必要です。Sublime+プランではStudioプランに加えてダウンロード音源の購入で割引が適用されます。
最大は192kHz/24bitまでです。

* ハイレゾストリーミングの楽曲数

TIDALの場合は総数が約6000万曲、ハイレゾストリーミング可能な曲が約100万曲
https://www.whathifi.com/news/tidals-hi-res-masters-tracks-surpass-one-million
Qobuzの場合は総数が約4000万曲、ハイレゾストリーミング可能な曲が約75,000アルバム
https://help.qobuz.com/hc/en-us/articles/115001675592-What-does-the-streaming-catalogue-contain-
曲数は不明ですが、だいたい1アルバム10曲とすると75万曲くらいなので、双方ほぼ同じくらいでしょうか。Qobuzに関してはハイレゾ200万曲という数字もどこかで見た気がしますが、いずれにせよ双方とも増えていくでしょう。

* ハイレゾストリーミングに必要な機材

TIDALの場合はフルにハイレゾストリーミングをするためにはハードウエアデコードをするためのMQA対応機材が必要です。たとえばMQAフルデコーダーもしくはMQAレンダラーの機能を持つネットワークプレーヤーとかMQA対応DACです。この場合に録音されたオリジナルのサンプリングレートまで再生可能です。
もしMQA対応製品がない場合にはMQAアプリやRoonなどのソフトウエアデコード機能を使用して96kHz/24bitまでとなります。

Qobuzの場合はハイレゾストリーミングをするために必要なものはFLACをデコードするソフトとハイレゾ対応DACくらいで、これらはいまは普通ですので特別な機材は必要ありません。これはQobuzは標準的なFLACコーデックで配信されているからです。

* ハイレゾストリーミングに必要な通信速度

TIDALの場合はCD品質のストリーミングが可能な回線ならば、ハイレゾストリーミングは問題ありません。これはMQAコーデックによる圧縮の高さでCD品質で必要とされる約1.4Mbpsよりも低いレートでハイレゾの配信が可能だからです。

Qobuzの場合は基本的にFLACコーデック(ファイルではなく)でストリーミングしています。これはMQA配信に比べてより通信速度が必要となります。ただし非圧縮ではなくFLACコーデックにおいて圧縮されて配信されています。

具体的な例として176.4kHzを24bitで配信する場合を考えてみましょう。このとき非圧縮であれば必要な通信速度は計算すると約8.4Mbpsです。
MQAではこのときに約1.2Mbps(MQA社提供のデータ)で済みますのでほぼ1/8の帯域幅で済みます。これはハイレゾストリーミングがスマートフォンに拡大された場合にモバイルやセルラー回線で有利となります。
対してQobuzですが、圧縮していますので実測値で約4.8Mbpsということです(Qobuz社提供のデータ)。ですからQobuzでは1/2くらいの圧縮率で圧縮していると推測できます。この程度は通常の可逆圧縮で十分達成可能な値です。このためTIDALの8倍の通信速度が必要なわけではなく、だいたいTIDALの4倍程度の通信速度が必要となります。
ただしFLACの圧縮率は曲によっても大きく変わり、Qobuzでの実測だと4割程度も変わることがあるということなので注意は必要です。

目安としてQobuz社ではインターネットはストリーミングだけではないので、フルに196/24bitのハイレゾストリーミングを楽しむには20Mbps程度の接続速度が必要ではないかと言ってます。
さくっと手元のWiMaxでダウンロード速度を実測すると25Mbps程度出てますし、おそらくはこの程度の回線ならば問題ないし、光回線の人ならまったく大丈夫でしょう。

* まとめ

簡単に言うとTIDALではより通信速度は低く済みますが、フルに楽しむにはMQA対応機材が必要となります。Qobuzではより高い通信速度は必要ですが、機材は普通の機材で問題ありません。
またMQAではエンコード時に独自のデジタルフィルターが適用されているので、音質的な違いも出るでしょう。

総じてモバイルでのハイレゾストリーミングではTIDALのほうが向いていると言えるかもしれません。また機材においてはESSが主にモバイル向けのMQA対応チップを発表していますので、MQA関連はこれらの普及待ちという面もあります。家では十分な通信速度が得られるので機材の柔軟なQobuzが向いているかもしれません。

ただ重要なのはハイレゾストリーミングというよりは聴きたい楽曲がどちらのサービスに多いかということになるとは思います。
posted by ささき at 22:46| ○ 日記・雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月18日

CanJam NYの新製品

Head-Fiの全国大会であるCanJam NYの紹介ビデオが公開されています。



そこから気になる新製品など。
2:30 FIIO IEMではFA7でknowlesとの関係が強調されてますね。
8:38 HIFIMAN アナンダのBTバージョン。初の平面型ワイヤレス?BAデスクトップスピーカーも出て、やはりBT中心にシフトしてきています。
11:15 CampfireはCascadeの新しいイヤパッドでしょうか
33:23 Focal StelliaはUtopiaの密閉型バージョンのような新製品。現行の密閉型Ellegiaよりも高価な$3000です。Ediition9の再来なるか?
HeadFiで聴いた人の話だと、メタリカの曲を聞いていままで幾度も聴いてるけどまるで違う体験だって言ってますね。ヘリやマシンガンなどの効果音がすぐ目の前で鳴ってるようにリアルだっていう感じのようです。
44:06 Noble Audio新フラッグシップKhan、6ドライバーで4BA、1ダイナミック、1がピエゾドライバーです。ピエゾはエニュームでも使われていますが、おそらくスーパーツイーター。
Judeに言わせるとK10プレステージに比してもっと空気感が強調されより暖かみがありmore forgivingって言ってるので音楽的な、違うアプローチだということです。K10もKatanaと比するとmore forgivingだと思いますが、リファレンス系のKatanaやリスニング系のK10とも違うラインナップかもしれません。
46:24 日本でもでてますがUMの新製品が紹介されています。

ちなみにHeadF-でのCanJamのインプレッションスレッドはこちらです。
https://www.head-fi.org/threads/canjam-nyc-2019-impressions-thread.900214/
posted by ささき at 13:53| ○ 日記・雑感 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年02月03日

HIFIMANの平面駆動型、HE1000seレビュー

HE1000seはHIFIMANの平面駆動型のハイエンド・ヘッドフォンです。

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HE1000seは平面型としてはオルソダイナミック、アイソダイナミックと呼ばれるダイナミック型のタイプで、静電型とは異なって専用ドライバを必要としない特徴があります。このタイプは最近のハイエンドヘッドフォンの潮流の一つですが、最近開発された技術ではなく、もともとはオーディオの黄金期と呼ばれる数十年前の時代には珍しくなかった形式です。

平面駆動型のヘッドフォンでは振動板の全面が振動することにより、一点でしか振動しない普通のヘッドフォンに比べて理想的な音質が発揮できます。しかし普通のタイプに比べると平面駆動型はコストのかかる方式で、オーディオ販売が低迷する時代になるとこうした価格度外視で音質を追求する技術はあまり採用がなされなくなってきたという事情があります。
しかし、そのいったんは忘れさられかけた技術を現代によみがえらせた功績はAudezeのLCD-1とHIFIMANのHE-5の登場にあります。どちらもマニアックなメーカーであり、ヘッドフォン人気の隆盛に従ってさらなる音質追及のためにこの形式を現代によみがえらせたわけです。

HE1000は海外では高い評価を得てきたモデルで、HE1000se(SEはSpecial Editionの略)はその第三世代の製品です。HE1000seでは、フラッグシップであるSUSVARAの技術を受け継ぎ、さらなる音質向上と高能率化が図られています。

HE1000seの特徴

* 高能率化

平面駆動型ヘッドフォンは音質はよいのですが、一般に能率が低く鳴らしにくいのがネックです。「平面駆動型でも鳴らせる」がうたい文句のヘッドフォンアンプが多いことでもそれはわかります。このHE1000seでは能率を前の91dBから96dBに大幅に効率を高めています。感度(能率)の5dBアップは大幅な効率改善と言ってよいでしょう。

* 薄い振動板

最近は中国も先端技術では日米に迫り、追い越すレベルに来ている分野も多くあります。つまり売りが先進技術というのは、もうおかしいことではありません。

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HIFIMANはナノテクノロジーに強いメーカーで、イヤフォンにおけるトポロジーダイヤフラムなどさまざまな技術を取り入れてきました。HE1000seではわずか1ナノメーターという薄さの振動板を採用しているため、素早いレスポンスが可能となっていくす。
オルソダイナミックタイプでは静電型とは異なり振動板にダイナミック型のコイルが必要となりますが、それもサブミクロンという薄さです。

* ステルスマグネット

従来の平面型ヘッドフォンにおけるマグネットはマグネット自体が回析減少で空気の流れを乱してしまい、音質を劣化させてしまいまうということです。
HE1000seでは特殊形状の「ステルス・マグネット」を採用して、空気の流れをあまり乱すことなく透過させることで音質劣化を防いでいるということです。つまり透過的なエアフローを、見えないステルスに例えているわけです。

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これによって歪みの少ない、ピュアでハーモニーを阻害しない音楽再現を実現するということです。
下の図を見てもらうとわかりますが、従来のマグネットは四角く、HE1000seのマグネットは丸くなっています。回析というのは波が回り込む現象をいいます(写真レンズでもありますが)。回り込みが多いということは直進する成分が減っているということですので、これによってエアフローが最適化されているということでしょう。

* ウインドウシェイド・デザインのオープンバック

これもエアフローをスムーズにすることを目的としていて、オープンバックタイプの最適化を図った「ウインドウ・シェード”」システムを採用しています。これはまたドライバーの保護にも貢献しています。これも下図を見てもらうと独特の形状がわかります。

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これらの技術によってHE1000seはとても広い周波数レンジを有していて、再生周波数帯域は8Hz - 65kHzです。
他の仕様としてはインピーダンスは35Ω、感度は96dB、質量は440gです。

インプレッション

HE1000seは立派な木箱に入っていて、パッケージは高級感があります。ケーブルはとてもしなやかで扱いやすいタイプです。

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ヘッドフォン側のケーブルコネクタはミニ端子となっていてケーブル交換が可能です。製品版では3.5mmミニケーブル、6.35mm標準ケーブル、4.4mmバランス用ケーブルが同梱されています。(画像のXLR4ピンはデモ用に貸し出してもらったものです)

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まずリファレンスであるゼンハイザーHD800と比較するために1/4標準端子でシングルエンドで聴きました。
ヘッドフォンアンプはバランス端子の豊富なパイオニアU-05を使用しました。U-05はなかなか駆動力もあって、なみのヘッドフォンアンプをクリップさせてしまうような超低能率HE-6も鳴らせます。DACもU-05内蔵DACを使用して、音楽再生ソフトはRoon(1.6)を使用しました。

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HE1000se本体は金属製でメタリックで現代的なデザインが感じられます。手磨きという表面の質感もよいですね。イヤーカップは耳に自然にフィットするという非対称デザインを採用ということですが、なかなか快適性が高く、スペック上はより軽量なHD800(369g)と比べても感覚的に軽量に感じられます。

能率に関してはボリューム位置としてはHD800よりも能率が良いと思います。U-05のLowゲイン位置でも普通に鳴らせます。これでさまざまなヘッドフォンアンプが使えると思います。
音的にも能率の低いヘッドフォン特有の暗さがなく、明るめで軽やかにリズムを刻む気持ちの良い音です。

HE1000seの音はひと言でいうと、自然でかつ壮麗な音です。
HD800もかなり音の広がりはよいのですが、HE1000seはさらに横にも広く、奥行きもより深みが感じられます。このため、オーケストラ物のクラシックや、サントラのような壮大な音楽ではかなり豊かなスケール感が感じられるます。
また高低のワイドレンジ感も驚くほど優れていて、特筆したいのはその超低域の豊かさです。単なる低域、ではなく。あまり聞いたことがないくらい、かなり低い音が豊かに出てきます。ここはHD800とは比較にならないくらい優れています。これは単に低域が張り出しているのではなく、HE1000seも周波数特性はフラット傾向ですが、超低域がとても豊かに出ているのです。高域も気持ちよく上に伸び、かつ音の痛さが少ない優れた再現です。
ウッドベースでは不自然な低域強調感がなく、周波数特性がフラットで良好であるとともに、HD800よりもかなり低域が深く下に沈むので豊かさという意味で量感があります。この良好な低域はくせになりそうな魅力的なものです。
アコースティックな楽器だけではなく、電子楽器や打ち込み系でもこの良さは感じられますが、この曲のウッドベースをちょっと見直した、という感覚が味わえるのはちょっと魅力的ですね。

HE1000seの良さはそうした壮麗さというマクロ的なほかに、ミクロ的な音の細かさでも感じられます。
音の立ち上がりが極めて高く、楽器音の歯切れがよくスピード感が感じられます。ダイナミック型というよりは静電型に近い感じですね。
解像力も極めて高く、さざ波のような音の細やかさが感じられます。これもダイナミックというよりは静電型に近い感じがしますね。ナノメーター振動板というのはかなり効いているように思います。
192kハイレゾのストリングカルテットを聴いていても、HD800と比べてもまだ音と音の間に別の音があるような情報量の高さが感じられます。またピアノソロを聴いていると、HD800に比べて音の響きがより豊かで、これも音と音の間にホールの反響音とか残響音が聞こえてくるような豊かさを感じます。

またヴォーカルはやや耳に近く迫力が感じられます。いわゆるHD800のような「プロデューサーのためのモニター」のような一歩引いた音ではなく、ライブステージの近くのような音楽の迫力を感じられる音です。
全体にニュートラルな音だが、音に冷たさが少なく、わずか暖かみがのっています。これはたぶんケーブルの色のように思います。
こうした点では音楽的でもあり、フラットで自然な音調ととてもに音楽に真摯に取り組みたい人のヘッドフォンと言いましょうか。

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HE1000seがよいのは楽しむジャンルを問わないことで、ジャズやクラシックの良録音盤を楽しむのはもちろん、ロックを聴いてもスピード感があり、アタックが激しく、ボリューム感のある低域を感じられます。ただし周波数特性がかなりフラット傾向なので、メタル等ではやや物足りなさを覚えるかもしれません。しかし抜群のスピード感やアタックの鋭さでまた別に曲の良さを感じ取れると思います。

XLRバランスで聴いてみると、バランスでは期待したように音の広がりがさらに増すとともに、より立体感も増して音の重なり感が明瞭になります。ストリングカルテックを聴いても楽器音の鮮明さがさらによくなり、全体がより華やいだ感じとなります。
また音のアタックがより強くなり歯切れ感も増します。これらがすべて整理されていて、ごちゃごちゃとしていないのは高級感がある音という印象です。

まとめ

HD800も今聞いてもすごく良いんだけれども、HE1000seを聴くとCEO Fang氏の言うところの「ベストよりベターなものがある」という感じでしょうか。

とてつもないワイドレンジ感、静電型のように錯覚する高精細感と音の早さ、音の広がりの良さなど、ヘッドフォンで最高の音を求めたい方にお勧めしたい製品です。
静電型はほしいけどいまのヘッドフォンアンプが気に入っていて、という人にも静電型的なテイストの音も楽しめるためお勧めですね。

HE1000seの価格はオープンですが、だいたい390,000円前後での実売を想定しているということ。昨年のヘッドフォン祭で公開され、昨年の12月から発売されています。

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HIFIMANのホームページはこちらです。
http://hifiman.jp/products/detail/296
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ポタ研2019

2/1は恒例のポタ研でした。

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東神奈川でカスタム作ってるというメーカーさん。低価格がポイントのよう。
http://iem.kitagawa-net.com/

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finalさんのところではなにやら面白い耳掛け式の平面イヤフォンD6000を展示。

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L&Pからは70万という超ド級のDAPが登場。

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アユートさんのところではオープンApkの展開とVRとポータブルオーディオの融合みたいなことをやっていたのが面白かったですね。これはVRゴーグルで映像をみて、Hugo2やMojoで高音質でイヤフォンで聴くという提案。

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最近はBTレシーバーはiFI xDSDを使うことが多いんですが、xCANもいいですね。こっちはアンプメイン、xDSDはDACメインで悩むところ。

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しかし昨日は数年前のドカ雪を忘れさせてくれるくらいに天気が良かったですね。このページの写真はすべてiPhoneですが、iPhoneも画像処理次第では下記の15Fからの眺望と冒頭のサンプラザの画像のように高精細な画像を見せてくれます(この3枚はRAW現像したもの)。スマホのポテンシャルって本当はとても高いんですがそれをどう引き出すか、ですね。オーディオも写真も。

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posted by ささき at 09:32| ○ オーディオショウ・試聴会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月16日

THX AAA技術を採用したFiiO X7/Q5アンプモジュールAM3Cレビュー

AM3CはFiiO X7/X7mkII/Q5用の取り外し可能なアンプモジュールです。FiiO X7/X7 mkIIはFiiOのデジタルオーディオプレーヤーの最新世代のフラッグシップ機であり、ESS社製のハイエンドDACを採用したDAPですが、アンプ部分がユーザー交換可能で様々な音を楽しめるのが特徴です。Q5はBluetoothレシーバーとUSB DAC機能を持ったポータブルアンプです(固有のUIはありません)が同様にX7用のモジュールを使うことができます。

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FiiO X7 mkIIとAM3Cモジュール

アンプモジュールではこれまでにAM2(シングルエンド中出力)、AM5(シングルエンド高出力)、AM3A(2.5mmバランス)、AM3B(4.4mmバランス)などが出ていますが、その新しいラインナップがこのAM3Cです。これはAM3Bを出してから特に日本のユーザーに4.4mmバランス端子が好評であったために開発した、4.4mmバランス端子を搭載した新しいアンプモジュールだということです。AM3Bと同様に3.5mm端子も装備しています。

* THX AAAとは

AM3Cの特徴は最近開発されたTHX AAAと呼ばれるヘッドフォンアンプ技術を採用していることです。THXは映画館に行くとドルビーとともにロゴが現れることでご存知の方も多いと思いますが、映画の音響評価をつかさどっている会社で、もとはルーカスフィルムの一部門でした。映画館で出てくるロゴはTHXお墨付きのシアターですという意味です。同様にAV機器に対してもTHXお墨付きという認証を与えてもいます。

そのTHX社がTriad Semiconductor社と共同で開発したオーディオアンプ用のICがAAA(Achromatic Audio Amplifier)です。これはTHX社の戦略によるVRなどのパーソナル製品のオーディオ面を支えるために開発されたものですが、THX社のLaurie Finchamという音響開発担当重役がオーディオマニアであったということも関係しているようです。つまりTHXと聞くと重低音とかサラウンド音響効果を思い浮かべますので、そうしたDSP的なものかと考えてしまいますが、実のところTHX AAAはHIFIオーディオ寄りのところからスタートしているヘッドフォンアンプICです。

AAAのAchromatic(アクロマティック)とは望遠鏡やカメラレンズでよく使われる単語ですが、色のにじみがないという意味です(アポクロマートも同様な意味です)。この場合オーディオでは着色感のない、あるいは高忠実度という意味で使われています。つまり原音そのままを通す技術という感じですね。
その名のように、AAAチップは低ノイズ、低歪み、そして低消費電力を特徴としています。特に歪みという点ではフィードフォワードという技術で他とは文字通り桁違いの低歪みを達成しているとのことです。「フィードフォワード」はCHORDの最新アンプのetudeでも採用されていましたね。
これは増幅のさいの歪みとして取り出した成分を最終出力で逆相で減らして歪を取るというようなもののようです。増幅としては一般的なAB級よりもバイアス電流は少なくて効率が良い(省電力)ということです。
あまり詳しい説明は私もできませんが、興味ある方にはTHXが出願しているこちらの米国特許を参照できます。
https://patents.google.com/patent/US8421531B2/en
https://patents.google.com/patent/US8004355B2/en

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AM3Cモジュール

THX AAA技術を採用したICはいくつかあるのですが、AM3CではTHXAAA-78というヘッドフォンアンプICを採用しています。これはTHX AAAファミリーではモバイル向けのFrontierというシリーズの高音質タイプのICで、DAPやポータブルヘッドフォンアンプのために開発されたものです。SN比は128dB(モジュールで)というもので、よく知られるヘッドフォンアンプICのLME49600よりも低歪みで消費電力も低くなっています。
IC単体ではなく製品としてのAM3Cでも従来品のAM3Bを超えた性能を発揮できます。AM3Bに比べるとより出力インピーダンスが低く、周波数特性がよりフラット、特に歪であるTHDはAM3Bが0.001%に対してAM3Cでは0.0008%と大幅に改善されていてTHX AAAモジュール採用の効果が表れています。
THXAAA-78は2chアンプですので、バランスアンプ回路を実現するためにAM3CにはTHXAAA-78が二基搭載されています。またAM3CはTHX社の定めた検査に合格しています。
他のヘッドフォンアンプICやTHX AAAでの各IC間の比較は下記ページにあります。
https://www.thx.com/mobile/aaa/

海外ではすでにBenchmarkやMassdropなどからTHX AAA技術を採用した据え置きヘッドフォンアンプが発売されており、Heafiなどオーディオコミュニティで高い評価を得ています。特にMassdropのコンシューマタイプのアンプですが評価としてはさまざまなアンプと比べてもやはり着色感がとても少なく、分析的でフラットな価格を超えたサウンドというものです。

もちろんアンプICだけではなく製品としての評価が必要ですので、本稿では以降AM3BやAM5など他のモジュールと比較しながらレビューしていきます。

* AM3Cと他のモジュールの比較

はじめにFiiO X7 MkIIを使いました。アンプモジュールの脱着はドライバーで簡単に行うことができます。ただしねじが小さいので紛失に注意しましょう。ドライバーは日本にはあまりないトルクスタイプです。このアンプモジュールの脱着はなかなかに精密感があって、ぴったりと嵌合します。

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アンプモジュールの脱着

AM3Cはプロトタイプを使用して試聴したので製品版とは異なるかもしれないことは注記しておきます。他は製品版です。イヤフォンはCampfire AudioのフラッグシップであるSolarisを主に使いました。まずシングルエンドの3.5mm端子を使用します。

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AM3Bモジュール

全体の音は上流がESSらしくニュートラル傾向だけれども、AM3Bではわずか暖かみを感じます。またAM3BではSolarisの豊かな低域が少しふくらみを感じます。
AM3Cではほぼ音の着色感はなく、AM3Bのシングルエンドに比べるとAM3Cでは特に低域が引き締まって低域のふくらみが少なくタイトで、帯域バランス的にもフラット感が感じられます。AM3Cのほうがより低いところまで出る感じで良質な低域ですね。

AM3Cではより音が整理されていて、一つ一つの楽器の音が聴き取りやすく感じます。透明感はAM3Bでも高いレベルにありますが、比較するとAM3Cのほうが少し透明感が高いと思います。音の広がりはAM3Bのほうが少し広く感じます。

AM3CではAM3Bに比べると粗さが減って端正な音表現になるのも気が付いた点です。例えばバロックバイオリンの中高域ではAM3Bではややきつさが感じられますが、AM3Cではスムーズできつさの少ない美しい倍音再現が楽しめます。

AM3Cは分析的だからと言って無機的というのではないですね。ただベースに迫力を求める人はAM3Bの方を好むかもしれません。端的にいうとAM3Bはやや演出的で、AM3Cはかなり忠実な音再現を感じ取れます。
AM3BとAM3Cの諸特性の比較はFiiO Japanの製品紹介ページにあります。
https://www.fiio.jp/products/amp-module/

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左:AM2、右:AM5

シングルエンドのみのAM5と比べると、パワー感ではAM5がとてもパワフルな表現であるのに対して、AM3Cは自然な再現と言えます。ハイパワータイプのAM5とイヤモニでは少し音が強すぎるかもしれないですが、その場合ではAM2を使用すると力強さは少し抑えられて聴きやすく音の締まりも切れもよいと感じられます。AM2とAM5は音的には似ていて、力強さの度合いが異なるというべきかもしれません。

次に3.5mmと同じ種類のALOケーブルで4.4mm端子に付け替えてバランスでも聴いてみました。AM2とAM5はシングルエンドのみです。
AM3Bはバランスに変えることで立体感がより際立って、3次元的に聴こえます。AM3Bはバランスで聴いたほうが音も整理されて聴きやすく洗練されて聞こえます。
バランスにおいてもやはりAM3CのほうがAM3Bよりもよりシャープでタイトな音再現を聴かせてくれます。
気が付いたのはAM3Cをバランスで聴くとパワー感が加わって力強さが感じられるようになるということです。
3.5mmで聴くとAM3Cは多少控えめな優等生的な感じですが、4.4mmバランスで聴くとAM3Cも元気でパンチがより感じられるようになります。音の歯切れもよく気持ちよく音楽を楽しめます。こうした点からAM3Cでもやはりバランス駆動の効果はあると思います。

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FiiO Q5(アンプモジュールを外したところ)

iPhoneからBluetoothレシーバーとしてQ5でもAM3BとAM3Cで聴き比べてみましたが、やはり同様な差は感じられます。やはりAM3Cのほうがよりタイトで引き締まった音が感じられます。
Q5自体はBluetoothレシーバーとしてなかなかすぐれていると思いますね。どのモジュールでも音の広がりが気持ちよく感じられます。

* まとめ

いろいろとモジュールを変えて聞いてみましたが、それぞれ個性を楽しめました。
端的にいうとAM3Bは音楽的で演出感があり、AM3C(THX)はよりHIFIで優等生的で玄人好みの音です。またAM5はパワフルな音再現を望む人に向いています。
FiiO X7/Q5のモジュラーシステムの場合は上流が同じということもありますが、音質のレベルがモジュール間で大きく違うというよりも、個性で選ぶべきかもしれません。自分はどう音楽を聴きたいかということと、イヤフォン・ヘッドフォンとの組み合わせもあるでしょう。暴れ気味のイヤフォンを手なづけるにはAM3Cが良いでしょう。
またロックファンとしてはシングルエンドだけどAM2やAM5もパンチがあって魅力的に思えました。ジャズとかクラシックではAM3Cを取ると思いますが、オーケストラ物ではAM3Bもスケール感があってよいですね。ポップではAM3Bを使いたい感じです。

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X7 mkIIブート画面

それぞれ個性があってよいのですが、客観的にレビュワーとしてどのモジュールの完成度・チューニングがもっともHIFIオーディオらしいかというと、やはりAM3Cであると思います。帯域がフラットになるということと、着色感が少なくなること、音にきつさが少なくなめらかであることなど、よくチューニングされてると思うのはTHXのお墨付きゆえかもしれません。
映画館でのTHXから想起されるようなでかい重低音だとかDSPサラウンドっぽくなるのではなく、あくまで一番ピュアオーディオ的な洗練された印象となるのがAM3Cです。低歪み、低ノイズ、低出力インピーダンスのTHX AAA技術が効いていると言えるでしょう。
AM3Cは優等生的ですが無機的というわけではなく、ジャズトリオのスピード感あふれる演奏ではリズムに乗れるし、楽器音の滑らかな再現は魅力的です。なかなかすぐれたアンプモジュールだと思います。

AM3Cは本日予約開始で、1月下旬に数量限定で発売ということです。詳しくは下記の案内をご覧ください。
https://www.fiio.jp/news/am3c/
posted by ささき at 12:03| ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年01月12日

「ストリーミングプレーヤー」HIFIMANのハイエンドDAP R2R2000レビュー

R2R2000は音質の良さで定評あるPCM1704Kをデュアルで搭載したHIFIMANのハイエンドDAPです。
製品ページはこちらです。
http://hifiman.jp/products/detail/295

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R2R2000

この製品はなかなか画期的な点がいくつかあるのですが、それを説明するためにまず時間を少し巻き戻してみます。

* HIFIMANとハイレゾプレーヤーとその進歩

いまはハイレゾプレーヤー(DAP)が全盛の時代ですが、このDAPの第一号はHIFIMANのHM801というモデルでした。下記にうちのブログ記事があります。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/128041366.html

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HIFIMAN HM801

これは約10年前の2009年のことです。当時はポータブルオーディオの高音質化というと、iPodにケーブルでポータブルヘッドフォンアンプを使うというのが一般的でした。しかしこの方法ではソース音源にそもそもハイレゾを扱うことができません。このHM801が画期的だったのはまずプレーヤー自体を独自のものとしてハイレゾ音源を扱えるようにしたこと、そしてDACにハイエンドオーディオなみのDAC IC(PCM1704)を採用したということです。この二点はどこのDAPでもいまでも引き継がれているハイエンドDAPの特徴であり、その嚆矢がHM801です。また、このことによってiPodに上流の音を縛られていたポータブルオーディオに新たな道を示したわけです。
このHM801は当時はHead Directという輸入オーディオショップを経営していたFang Bienによるもので、この時からHIFIMANという名称を使用しています。あまりに画期的だったので、HeadFiに入り浸っていた私はすぐさま連絡を取ったものです。

このHM801と同じPCM1704を再び採用して設計された最新のポータブルデジタルオーディオプレーヤーがR2R2000です。
この間に時は流れ、ユーザーがハイレゾファイルを再生したいためのプレーヤーだったHM801と比較すると、ユーザーが再生したい音源はいまやスマホやPCを軸としたストリーミングが主流となっています。それを反映したR2R2000は「ストリーミングプレーヤー」と呼ばれています。

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R2R2000とRE2000

例えばFang CEOに聞くと中国で既にR2R2000を使用しているユーザーの80パーセントはR2R2000を高音質Bluetooth レシーバーとして使い、10パーセントがUSB DAC、10パーセントの人のみがDAPとして使用しているということです。これはストリーミングがメイン音源だからということです。それゆえに小型さがもっとも重要てあり、R2R2000ではBluetoothのコーデックに高音質のHWA(ファーウエイ提唱)を採用しています。
Bluetoothは音質が悪いと良く考えられていますが、WiFiに対して低消費電力で発生ノイズが少ないということが利点になるともR2R2000のリリースノートでは述べられています。
またDAC機能も強力であり、据え置きに負けないようポテンシャルも秘められていて、セルフパワーモードのようにスマートフォンでUSB DACとしての使い勝手も考えられています。ただし反面でデジタルプレーヤー面はR2R2000ではわりとあっさりとした形で実装されています。

わかりやすくするために先に少しまとめましたが、R2R2000は使い方という点で大きく3つに分けることができます。

1. コンパクトなDAP
2. 高音質のUSB DAC
3. HWA対応のBluetoothレシーバー


* コンパクトなR2R DAP

R2R2000はコンパクトなハイレゾプレーヤーとして使用できます。内蔵音源はないので音源はMicroSDカード(TFカード)に格納します。SDカードはスロットではなくトレイ方式を採用していて確実な固定ができ、不用意な飛び出しを防ぐことができます。その代りピンが必要なのでSIMスロットを取り出すようなピンを用意しておいたほうが良いです。再生フォーマットはFLAC、DSD、mp3、WAV、ALAC、AACなどです。

R2R(Register to Register)とはマルチビットDACの別名で、PCM1704は唯一の24bit精度のマルチビットDAC ICとして知られた高音質の代名詞でもあるDAC ICです。最近のDAC ICはデルタシグマというDSDに向いたD/A変換方式を使用しているものがほとんどですが、このマルチビットDACとはPCMに向いたD/A変換方式を採用しており、音の良いことで知られています。

すでにPCM1704は生産されていませんが、R2R2000ではこのDAC ICの新品ストックを使用して作られています。しかもPCM1704Kという選別品を採用しているとのこと。R2R2000のポイントの一つはコンパクトであるということです。これはひとつには独自OSを採用したため、消費電力を抑えることができたのでバッテリーを小型化できたということ
またPCM1704は最近のDAC ICのようにワンチップでOKというものではなく、前段や後段に手間がかかるため、このサイズで押さえたのは回路設計が優れている故と言えるでしょう。

R2R2000ではシングルタスクの独自OSを採用しています。このため、さまざまな処理が走っているスマートフォンベースのOSに比べると軽くて音楽再生に向いているという利点があります。その代りUIでのタッチ操作は簡素なものとなっています。少々変則的ですが、画面すべてがタッチできるのではなく、画面下部の矢印キーをタッチしてメニューを操作する方式になっています。

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R2R2000操作画面

一方でこの軽いOSのおかげで消費電力の95%が音楽再生のために使われるため、再生時間を長くできるという利点もあります。R2R2000では高音質(HiFi)モードでも8時間程度の再生が可能ですが、さらにエコモードを用意していて50時間の再生が可能ということです。

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デジタルプレーヤーの音はHIFIMANのベストセラー機ともいうべきRE2000で試聴しました。
まずとても細かな音の情報量がたっぷりと聴こえる繊細な音再現が印象的です。全体に滑らかできつさが少ないのはPCM1704のおかげかもしれません。シンプルなアカペラの曲でも平板的にならずに陰影があるのがPCM1704らしい音だと思います。
音は透明感が高く、音像がシャープで明瞭、楽器音の輪郭がくっきりとしています。
低音は力強く豊かで、ドラマやベースギターのアタックが鋭く音に深みがあります。高域は繊細で、中音域は透明感が高く豊かです。

4.4mmケーブルを用いてバランスモードで聴くと3次元的に音空間が広がり、より音に厚みが加わります。力強さも感じられます。
ゲインでかなり大きく変わるのもマニアック製品らしいところで、HIゲインを使用する際は音量に注意してください。
ゲインにSuper lowがありますが、Super Lowは4.4mmのみ使用ができます。この時はいっそう背景の黒さが増して音がより澄んで透明感高く聞こえますが、ほんとにかなり音量が小さくなるのでかなり高感度イヤフォンの時のみに使えるモードと言えるでしょう。(*ゲイン切り替えは2019/1現在のファームでは再生画面から変更できます)

ECOモードでは音が少し甘くなり、ECOモードとHIFIではずいぶん音が違うので、普通に聴く際はHIFIモードに入っているかを確認したほうが良いです。ただしECOモードでも音質はなかなか良いので飛行機など長時間使う人にはECOモードは使えると思います。(*2019/1現在のファームではECOモードは一時的に省かれているということです)


* パワフルで高音質なUSB DAC

マニアック向け製品という点ではR2R2000の本領発揮はむしろUSB DACモードかもしれません。
R2R2000ではUSB-Cポートを使用して最大384kHz、24bitの再生をサポートします。またポータブルで使われているUSB-OTGとPCからのOTGではない直接再生の両方をサポートしています。

実際R2R2000にUSBケーブルを接続してつなげると、USB DACモードをPCとモバイルで選択して選ぶことができます。
USB DACとPCでは標準ドライバーで使えます(MacやWin10最新版の場合)。この時にはプロパティを見ると384kHzがサポートされているのがわかります。

R2R2000の音の真価はプレーヤーモードよりもむしろ、大型ヘッドフォンを使用してUSB DACモードで発揮されます。ここでゲインのHIが効いてきます。普通のヘッドフォンではLOWで大丈夫です。HIは低能率の平面型ヘッドフォン向けと考えたほうが良いでしょう。
いまでは平面型ヘッドフォンは珍しくなくなってきましたが、もともとオーディオ黄金期の数十年前の技術だった平面型ヘッドフォンを現代によみがえらせた功績はAUDEZEとHIFIMANにありますが、HIFIMANはたくさんの平面型ヘッドフォンを開発していてそれに向けたものといるでしょう。

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USB DACでの音は鳴らしにくさではAKG K1000と双璧のHIFIMAN HE6を使用してみました。3.5mmに変換プラグを使っています。
LOWゲインだと音量も取れないのでささやくようにしかならないが、HIゲインモードにすると5-6レベルの低い位置でもHE6で十分な音量が取れます。とてもコンパクトなDAPなんですが独特の深みのあるHE6での低域の再現性もなかなかのもので、力感もあって弱弱しくはありません。さすがにHE6向けにベストな機材とまでは言いませんが、十分使えるレベルにあると思います。実のところ久しぶりにHE6を取り出してきて、R2R2000で聴きながら改めてその音質の高さに感銘したくらいです。ちなみに普通のヘッドフォンアンプでHE6を使うと低域の再現性云々の前に音量を取ろうとしてクリップして音が割れてもおかしくありません。

後でHIFIMAN Shanglira Jrと組み合わせてラインアウトの音質も確かめたんですが、一緒に用意していたデスクトップDACよりも音質が高く驚いてしまいました。音の正確性が高くフラットで着色感が少なく据え置きDACなみの音質を聴かせてくれます。解像力も高く、静電型で聴いてもそれに負けないくらい情報量が豊富でした。ぜひラインアウトでDACとしても活用してほしいと思います。

* 高音質のBluetoothレシーバー

R2R2000にはいまの事情を反映した最新のBluetooth機能も搭載されています。R2R2000はハイレゾ・ストリーミングオーディオプレーヤーと銘打たれていますが、これはBluetoothレシーバーとしても機能ができ、Bluetoothレシーバーとしては世界初のHWA方式に対応しているからです。
最近はAptX HDとか、LDACなどBluetoothでのハイレゾストリーミングが流行りですが、このHWAもそのひとつでスマホメーカーのファーウェイによって開発されたものです。ハイレゾ伝送においてWIFIはよいように見えますが、電力消費が大きいという難点を持ちます。対してBluetoothは省電力ですが、音質に難がありました。このHWAでは従来の伝送よりもはるかに歪み率を低く抑えることができるとされています。
これはスマホ側にも対応が必要ですが、HIFIMANではiPhoneの専用アプリを用意していて、このアプリを使って再生するとHWAで伝送が可能ということです。
また専用アプリにはTIDALも対応しているため、iPhoneでTIDALを使いたいという人にも良いでしょう。

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BluetoothモードにするにはSettingからBluetooth modeを選択するとペアリングモードになるので、リストからR2R2000-xxxというデバイスを選択してください。
普通のアプリからも使うことができます。

iPhoneのミュージックアプリとHIFIMANアプリをiPhone内のAAC楽曲でBluetooth経由で聴き比べても音質はHIFIMANアプリの方が良いんですが、その真価を発揮するのはロスレス音源を使用した時です。
ハイレゾやロスレスなど再生したい楽曲はiPhoneの場合はiTunesからファイル共有でWindowsやMacから格納します。
もしファイルがアプリで見つからない時は立ち上げ直したり、アルバムのunknownの項を見ると良いでしょう。

たしかに良録音音源を入れてBluetooth聞いてみるとかなりの高音質で楽しむことができます。Bluetoothで聴いているとは思えないと言ってもよいでしょう。
ショップの試聴機で試してみるときはあらかじめHIFIMANアプリをダウンロードして楽曲をスマホに入れてからお店で聴いてみてください。きっと驚くことでしょう。


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R2R2000の正面と背面

* まとめ

R2R2000は単体のDAPとしてみると音質はよいのですが簡素なUIなどで少しあっさりとしたものと思えるかもしれません。しかしその真価はUSB DACやHWA対応のBluetoothレシーバーとしてスマートフォンと組み合わせることで発揮できると考えたほうが良いと思います。そうした意味ではHM801が現在のDAPの始祖となったように、R2R2000はストリーミングプレーヤーというべきものの始祖となるのかもしれません。


posted by ささき at 15:10| __→ HiFiMan HM-901, 801 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする