Music TO GO!

2024年07月31日

アスキーにヘッドフォン祭mini2024レポート記事を書きました

アスキーにヘッドフォン祭miniのレポート記事を書きました。

https://ascii.jp/elem/000/004/212/4212406/
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2024年07月26日

Spotify HIFI再び

海外メディアVergeの伝えるところによると、7月24日のSpotifyの決算発表でCEOのDaniel Ek氏が、かつて”Spotify HiFi”と呼ばれていたSpotifyの高音質オプションは進行中でまもなく発表されオプション込みの月額サブスクリプションが約17から18ドルになるということを確認したようです。
また高音質オプションと同時に「より多くのコントロール」を語っているようです。このことは最近のSpotify HiFiの噂と符合します。

https://www.theverge.com/2024/7/23/24204520/spotify-ceo-hifi-audio-deluxe-plan-confirmed

これまでの”Spotify HiFi”を振り返ると、まず2021年の2月頃にその年の後半に登場するという触れ込みでSpotifyの「Stream ON」イベントで「CDロスレス品質とSpotify Connect対応」の”Spotify HiFi”がアナウンスされます。
しかしその年の6月にAppleがApple Musicのロスレス対応と192/24ハイレゾ対応、およびDolby Atmos対応を発表します。

その後に”Spotify HiFi”の話は聞かなくなり、また今年になってさまざまな噂が浮上してきました。
まず4月にRedditユーザーがSpotifyのコードを解析して“lossless has arrived”(ロスレスがやってきた)という記述を見つけます。この時にはMusic Proというアドオンという形になることが見つかっています。
またアドオンにはイヤホンのモデルに応じた特許技術を使用した最適化機能の記述があります。

そして5月にまたコード解析によりSpotify HIFIというプランの名前ではなく、品質オプションの一つのSpotify Losslessという設定になっていることがわかりました。この時も最大品質はCD品質です。これはビットレートの「ロスレス(最大2117kbps)」という記述から逆算してCD品質(44/16)ということがわかります。ただし24bitロスレスは一部の曲でのみ使用できるという注意書きがあります。また数々の注意書きが増えてよりロンチに近くなっていることが伺えました。


これらを総合すると現在の推測では”Spotify HiFi”はアドオンプランとなり、トータルで月額$17前後、品質は44/16または24で、イヤフォンの最適化機能などが含まれるということになるように思われます。
posted by ささき at 08:43 | TrackBack(0) | ○ PCオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年07月25日

AMPACSがヘッドフォン向けMEMSスピーカー技術を発表

7月23日にダイナミックドライバーのOEM/ODMメーカーである台湾のAMPACS Corporationは、MEMSスピーカーを組み込んだ2wayヘッドフォンのリファレンスモデルを発表しました。リファレンスモデルとは製品ではないが、ヘッドフォンメーカーが手本にして製品を作るためのヘッドフォンです。
このAMPACS製40mmのダイナミックドライバーとxMEMS社のCowelを組み込んで2way、2ユニットのモデルは、従来の50mmのシングル・ダイナミックドライバーのヘッドフォンよりも音の明瞭さと空間オーディオ向けの広い音場に優れるとAMPACSでは述べています。

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AMPACS リファレンスモデル

ヘッドフォン向けのMEMSスピーカーのソリューションとしては、xMEMS社がCESに出品したPresidio(プレシディオ)というリファレンスモデルがあり、Philewebにその試聴記を書きました。
https://www.phileweb.com/review/article/202407/03/5659.html

Precidio.png
xMEMS Precidio

Presidioに対して今回のAMPACSのモデルは、MEMSスピーカーの能率を上げるためにホーン型のユニットに反射させるために背面でMEMSスピーカーを設置している点では同じですが、MEMSスピーカーに最新のMuirではなくすでに実績のあるCowelを組み込んでいるという点と、Presidioでは2基搭載しているのに対してAMPACSのモデルでは1基のみであるという点が異なります。

このモデルは9月に提供可能になるということです。おそらくdigikeyにアップされると思います。

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xMEMS搭載ヘッドフォンのイメージ
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2024年07月22日

Softearsのフラッグシップモデル「Softears Enigma」レビュー

Softears は中国を拠点とする若いブランドで、創業者は2014年にオーディオの仕事を始め、2017年に中国のシリコンバレーである深センにスタジオを設立。2019年には成都に研究開発のための独立したラボと自社工場を設立しています。究極の音楽再生をスローガンとしているとのこと。本稿はJaben Japanから借りた試聴機によるレビューです。

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* 特徴

Enigmaは4年かけて開発したというSoftearsのフラッグシップモデルで、2基の10mmのダイナミックドライバー、6基のBAドライバー、4基のESTを搭載したハイブリッドのマルチドライバーIEMです。

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低音域ドライバーは"Composit Woofer"と呼ばれていて、ダイナミックドライバー1基とBAドライバー2基が低音を担当することで量感と鋭さを両立させる仕組みになっています。また2基のダイナミックドライバーのうちの1基はパッシブラジエーターです。これは直接音は出しませんが低音ドライバーと共鳴することで定在波を減らしてクリーンな低音再生に寄与するという仕組みが採用されています。このパッシブラジエーターはフェイスプレートの透明なサファイアガラスカバーから見えていて外観上のアクセントにもなっています。

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ダイナミックドライバーはウールペーパーというバイオ素材を採用しています。
中音域は4基のフルレンジのBAドライバーをまとめて搭載しています。この仕組みはSoftears独自のものだそう。高音域には4基のESTドライバーが搭載されています。ノズル先端には4つのボア(音導孔)があり、ひとつにはダストカバーがされています。

ケーブル.png

ケーブルはEFFECT Audioと共同開発によるもので、3.5mmと4.4mmバランスの二組が添付されています。それぞれ線材が異なっているという点がなかなか凝っています。

* インプレッション

Enigmaはパッケージも凝っていて、大きく黒いキューブ状の箱に入っています。
中にはレザーの内箱がひとつとさらにキューブ型の内箱が詰まっています。このうちレザーのケースは保証書などが入っていますが、キャリングケースだと思います。
もう一つの内箱が特徴的でカラクリ箱のようになっていて、折りたためるルービックキューブのような構造になっています。この箱を折り返して広げると8個の引き出しのある小さなキューブから構成されています。この折り畳み方には行く通りかあるようで、畳み方によっては中身が出せなくなることがあり、まさにEnigma(謎という意味)を象徴していると思う。

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それぞれに引き出しにはクリーニングキット、謎のキューブ、3.5mmケーブル、本体L、本体R、4.4mmケーブルと6.3mmアダプター、謎の耳型のオブジェ、イヤピースとドライバーがバラバラに入っていて、それを組み立ててイヤフォンにしますが、謎のキューブと耳型は単なる遊びで、キューブは組み立てるとルービックキューブのようになるようです。ちなみに付属のドライバーはこのキューブを組み立てるためのものです(組み立て動画があります)。イヤーピースはフォームSML、シリコンSML、シリコンラバーの透明SMLが入っています。

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イヤフォンはユニバーサルタイプのシェルで大きさの割には割と軽く感じます。フェイスプレートには透明で中のドライバー(パッシブドライバー)が見えているのがユニークです。ケーブルは高級線材のような外観でしなやか、タッチノイズはあまりありません。
イヤフォンはかなり大柄ですが、軽量でユニバーサル形状のため装着感は悪くないです。装着感としてはノズルが太いので気になる程度です。女性だと少しはめにくいかもしれません。

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能率はやや低めなのでパワーのあるDAPを使用した方が良いと思います。ハイエンドモデルに相応しくAstell & Kern SP3000とKANN Ultraで聴いてみました。
Enigamaの音はハイエンドイヤフォンとしてかなり優秀で、立体感があり三次元的、とてもクリアで音の分離が明確になされています。ワイドレンジで解像力が高くSN感が高く感じられます。様々なドライバーの集合体でもあり箱から出した後は初めはまとまりなく聞こえるのですが、エージングをすると全体の音がまとまって溶け合い一つの濃密な音空間となります。独特の端正でいて重厚な音表現です。
このように音が濃厚というのがいちばんの音の特徴で、音の密度感がいままであまり聴いたことがないくらいのレベルで芳醇で厚みがあります。本格的なオーディオ機器の音のように感じられます。

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低音では量感はありますが誇張感は少なく、リスニング目的でも低音が物足りなくならないように適度な量感にしています。それでいてあまり出過ぎないで曲の印象を大きく変えないのも特徴です。GoGoPenguinのようなユーロジャズではドラムスのタイトさが印象的でBAとダイナミックの相乗効果は出ていると思います。
中高音域はよくコントロールされていてキツさが少なく滑らかで美しい音です。ベルの音は歪みすくなく綺麗に響きます。ヴォーカルは肉質感があって厚みがあり、音のバランスが適度で男声も女声も良い感じです。古楽器の良録音音源を聞いてもかなり細かい音がよくはいっていて、楽器の音色が美しく響くのも特徴の一つです。
様々なドライバーが使われているのですが、溶け合うようにうまく調整されていると思います。例えばアニソンの「アイドル」を聴くとがちゃがちゃとしたバックの音の中でも歌詞がよく聞き取れていて、低音によって中音域がマスクされている感は少ないですね。
この音の聞きやすさにはケーブルの品質の高さも貢献していると思います。ケーブルは2ピン端子で交換できますので、他のケーブルに変えても印象は異なるでしょう。

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付属のイヤーピースを透明ラバー製に変えると音はやや軽めに出ます。フォームチップは低音寄りになります。イヤーピースでよく考えられているのは、イヤーピースを変えると音が大きく変わるものも多いのですが、Softearsの場合には全体の音調はあまり変わらずに、透明(軽め)-シリコン(中間)-フォーム(重め)と音の調子がやや変わることで選択できるということです。わりと考えてイヤーピース選びをしていると思います。ただ個人的にはやはり中間のシリコンがもっともEnigmaらしいと思います。まず標準で試してみると良いでしょう。

* まとめ

全体的に高性能ですがモニター的な味気ないものではなく、濃厚で美しい出音で音楽リスニング寄りに聞いて楽しく感動するような音作りがなされていると思います。特に本機の濃厚な音再現はあまり他にはないようなものなので、他にない個性を求めるハイエンドユーザーにお勧めです。

Jaben Japanの販売リンクはこちらです。現在セール中だそうです。
https://jabenjapan.thebase.in/items/88424923

またPhatLab RIOのEnigma向け特別チューニング版(カッパ)同梱版もあります。
カッパとはRIOが河の意味だからということのようです。
https://jabenjapan.thebase.in/items/88657275

なお今週末のヘッドフォン祭miniにJaben Japanのブースで展示するということです。興味ある方は試してみてください。

最後に付属のミニルービックキューブの組み立て動画を添付します。
posted by ささき at 19:26 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年07月21日

アスキーにNTTソノリティ「nwm ONE」の開発者に聞く音の秘密の記事を執筆

アスキーにNTTソノリティ「nwm ONE」の開発者に聞く音の秘密の記事を執筆しました。
「nwm ONE」透明モデルやPSZが音響的な技術であることが明かされています。

https://ascii.jp/elem/000/004/211/4211068/
posted by ささき at 10:17 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年07月20日

L&Pの新たなフラッグシップシリーズ「E7 4497」PREMIUMレビュー

8月にLUXURY&PRECISIONの新しいDAP「E7 4497」が登場する。限定モデルを除き、L&Pの新DAPとしては5年ぶりの注目製品となる。全世界499台限定で、E7 4497 PREMIUMとE7 4497 STANDARDの二つのモデルがあり、搭載しているDACチップは同じですが、PREMIUM版はDACチップの選別品を使用しています。
発売日は2024年8月17日ですが、すでにPREMIUM版は5月17日からフジヤさんで販売しています。本稿ではPREMIUM版を借りてレビューしています。

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E7 4497とAK ZERO2

* 特徴

LUXURY&PRECISIONというと、うちのブログではたくさん扱ってきましたし、HeadFiなど海外フォーラムを見ている人にもおなじみのブランドです。このブランドは、AMDのチップ開発に携わったエンジニアや「COLORFLY C4」の開発者たちによって、2014年に中国で創立されました。
今回LUXURY&PRECISIONは新たにEシリーズを立ち上げていくというのが一つのポイントで、「E7 4497」のPREMIUMとSTANDARDが最初のEシリーズとなります。Eシリーズは「L&Pフラッグシップの原点」に立ち返るというスローガンの元に開発され、EはECONOMY(経済性)や、EXCHANGE(交換)の意味を有しています。これはモジュール交換機構を備えることで、将来的な新技術や新DACチップに素早く対応できるという意味合いを含んでいます。
このモジュール着脱機構は他の取り外し可能なDAPよりも取り外し可能な基盤面積が広いのが特徴で、モジュール基盤にはヘッドフォン端子などのパーツは含まれていません。重量は300グラムと比較的軽量かつコンパクトですが、交換基盤にしたのでL6よりは大きくなっているとのこと。

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「E7 4497」の名の由来はDACチップにAKM AK4497をデュアルで使用しているということです。AK4497はLINNのKLIMAX DS/3などにも使われたチップで、ポータブル向けのICではなく据え置き機材にも採用されるようなハイエンドDACチップです。
LUXURY&PRECISIONによると、AK4497チップは、AKMのフラッグシップチップの中で最もバランスが取れており、聴感も優れて電力消費が少ないことなどポータブル機器との相性が最適とのことです。ポータブル機器との相性が良いということの一つには現在のAKMフラッグシップのAK4499が電流出力であるのに対し、AK4497は電圧出力であることが挙げられます。オーディオ機器では最終的に信号として電圧が必要なので、電圧出力であるAK4497は電圧変換のためのI/V回路が不要であるという特徴があるからです。
またもう一つの「E7 4497」の特徴はAK4497の選別品を使用しているということです。AK4497はチップのばらつきが大きく、データシート上のTHD+Nの代表値は-116dBですが、最低値は-108dBにまで下振れすることがあり、選別品を使用することで公称性能を4dB上回る性能を得たということです。

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DAPとしての基本ソフトウエアにはLE OSという新しい独自開発のOSを搭載しています。これは可能な限り小型で軽量に設計したというもので、軽量なので音質に寄与するというだけではなく、デジタル部の電力よりもアナログ部分により多くの電力を割り当てるという「E7 4497」の開発方針が反映されたものでもあります。
またPREMIUM版ではFPGAを活かしたLP Tuneという音質変更モードがあり、これは普通のイコライザーとは再現性、聴感の差異、原理が完全に異なるということです。LP Tuneには3つのモードがあり、「High Dynamic」は華やかでエネルギッシュ、「Harmonic Tune」では柔らかな温かみ、「Low Distortion」は標準の低歪みモードと切り替えて使うことができます。STANDARD版では「Low Distortion」のみとなります。

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LP Tune比較図

回路部分ではLPFオペアンプ電圧調整機能というユニークな試みがあり、これはダイナミックドライバーや、BAドライバー、ハイブリッドなど各種ドライバーがLPFオペアンプの電圧に対して異なる感度を持つことがわかったということが開発のきっかけだったということです。固定電圧では「このイヤホンでは良いが、あのイヤホンではダメだ」という現象が起こってしまうので、E7は広範囲で0.1V刻みの細かい電圧調整ができるように設計し、調整と試聴を通じて様々なイヤホンの特性を最適に引き出すことができるようにしたとのことです。

また「E7 4497」ではWi-Fiが搭載されていないので直接ストリーミングを再生することはできませんが、その代わりにBluetoothレシーバー機能を凝ったものにするというアプローチが行われています。コーデックはaptX、aptX HD、aptX LL、そしてAACとSBCに対応しています。
ちなみに「E7 4497」では内蔵メモリはなく、外付けのMicroSDカードに音源を格納します。

* インプレッション

デザインはL&Pらしくメタリックで鋭角的なデザインで、装着していた革製のケースを外すとブラックのシャープな造形のシャーシが現れます。サイズ的には片手で持てるので、フラッグシップモデルとしてはそう大きくはないように思う。側面に凹みがあるのがユニークで、持った時の指かかりになっています。

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ちなみに写真の革製ケースは今後発売を予定している別売り品で、フジヤエービックの発売分にはプレゼント品として同梱されているものだということです。

底面にはビスが見えて交換が可能であることを示しています。どちらかというと頻繁にモジュールを差し替えて機能を変えるような目的ではなく、アップグレードのためなのですぐには外せないけれども、確実に固定できるような方式となっていると思います。

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E7 4497とWhite Tiger

ボリュームにはガードがデザインされ、ノブを回すとカチカチと適度なクリック感があります。

電源ボタンを押下してからのブート時間はロゴ表示後までほぼ8秒でAndroid系より早いですね。電源オフのたち下げは瞬時です。

画面は質実剛健というかシンプルなデザインで、これも軽量OSという感じで音質優先ということがわかります。
基本的には音楽画面と設定画面のタブを切り替えるだけで音楽画面も最小限のデザインですが、画面をフリックするとVUメーターが現れ、ボリューム表示もグラフィカルでわかりやすいなど凝った点もあります。

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ちなみにグラフィックのボリューム表示のホイールは一周以上回るので、一周で音量が足りないと思ってはいけません。ボリューム表示のホイールは指でなぞってクルクル回すことができますが、これは細かい音量の調整がしやすく便利です。
液晶表示は鮮明で色は鮮やかに感じられます。画面を横にフリックするとVUメーターが現れ、音源のサンプリングレートの表示も行われます。

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VUメーター表示モード

音源はexFATのMicroSDカードを使用し、カードの直下に音源を格納して再生しました。ちなみに音源の格納はMicroSDカードのみです。カードを挿入したらメディアライブラリの更新を行うと音源が反映されます。

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E7 4497とqdc White Tiger

まずqdc White Tigerで聴いた。ゲイン位置はLowですが、ボリューム調整がとても細かく行えるので高感度IEMでも使いやすいと思う。
音は解像力がとても高く、細かい音がよく聞こえる割には子音の音のキツさなどがほとんどないのは、とてもよくチューニングされた音であり、高級オーディオ機器のような高品質な音を感じます。
従来のL&Pに比べても硬質感が抑えめで滑らかでスムーズな音だと思います。音調はやや温かみがあるニュートラルで、低音や高音の誇張感はないです。
ジャズヴォーカルでの女性の声が艶やかでかつ滑らか、囁くような小さな声から叫ぶ声までスムーズに再現されます。楽器音や声質に厚みがあって、豊かな音楽を奏でる感じです。
全体的に音が上質でよく調整された感じがします。

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E7 4497とDITA Perpetua

イヤフォンをダイナミックイヤフォンの最高峰であるDITA Perpetuaに変えるとダイナミックらしく力強く鳴らしてくれ、E7がパワーもあることが分かります。マルチBAでは繊細さがよくわかったが、Perpetuaでは力感と解像力の高さがよく両立している感じですね。
上原ひろみのジャズのようにスピード感あふれる曲もスムーズでかつパワフルに鳴らしてくれます。AK4497らしく解像力が高く、ウッドベースでは細かな鳴りや響きをよく表現します。叩きつけるようなドラムスやパーカッションでも歪み感が少なく、打撃力の強さと切れ味の良さをよく伝えてくれます。おそらく電源なども強力だと思いますが、E7 4497は基礎体力というか基本性能が高いDAPと言えます。
DSDネイティブ再生だけではなく、PCM音源を聴いても音が滑らかでキツさが少ないのは全体的に上質な回路設計がなされていることを窺わせます。この辺は上級機ならではの良さがよく出ているところです。

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E7 4497とAK ZERO2

ハイブリッドのAK ZERO02を使うと、中域から高音域にかけてはバロックバイオリンが倍音豊かになる音もよく再現されて厚みがあり、音色の美しさがよくわかります。これはZERO2の高音域のプラナーとピエゾドライバーが活き活きと動いているようです。低音ではダイナミックドライバーらしいたっぷりとした低音が楽しめます。
消え入りそうになるヴォーカルの歌唱の表現も解像感高く、艶やかに描き出す点はなかなか心地よく見事だと思います。

このようにマルチBAやハイブリッドなどさまざまな形式、さまざまなタイプのドライバーのイヤフォンで聴いていくとE7 4497がイヤフォンの適応範囲が広く苦手なイヤフォンがないという印象を受けます。マルチBAはマルチBAらしく、シングルダイナミックドライバーはシングルダイナミックらしく、ハイブリッドもハイブリッドらしいサウンドで高品質に楽しむことができます。

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E7 4497とDITA Perpetua

次にBluetoothレシーバーのモードを試してみるとiPhoneで簡単にペアリングできました。
iPhoneからAAC での接続ですがBluetoothでの音も極めて高いと思う。これまで書いてきたような厚みがあるオーディオらしい音がワイヤレスでも十分に楽しめます。内蔵音源とそう遜色ないというと言い過ぎだが、たぶん聴いていて不満を持つことは少ないと思う。かなり高品質なBuetooth回路が搭載されていると思う。
E7 4497にはストリーミング機能は内蔵されていないので、 ストリーミングを楽しむ時にはスマホでストリーミングを再生してBluetoothでE7 4497に送って楽しむということが想定されてよく考えられています。

まとめ

E7 4497は基本的には原音忠実に音源をよく再現するDAPですが、いわゆるモニター的な味気ない音ではなく適度な温かみと滑らかさで音楽的な心地よさもよく表現していると思います。音の細かさも低音のパンチも必要な時に必要なだけ出てくる感じして、そこがチューニングがよくなされている音だと感じます。カタログに基板の設計改良を重ねたように記されている気持ちがわかります。

開発比較.png
開発での設計改良

高性能機というとシャープだがきつい音になることも多いが、E7 4499は良い音を長時間聴いていられるDAPだと思う。
DACが強力なだけではなく、アンプも力強くかつイヤフォンに適切に出力を出し電源も強力と、全ての回路がバランスよく性能が高いフラッグシップらしい完成度の高いDAPです。
E7 4497は様々な種類のハイエンドイヤフォンを使いこなしたいという上級者に向いているDAPです。

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E7 4497とDITA Perpetua
posted by ささき at 08:01 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年07月16日

分厚くダイナミックな音の個性派イヤフォン「iBasso 3T-154 」

iBasso 3T-154はiBasso Audioの個性的なシングルダイナミックイヤフォンです。使用されている技術、出音、アクセサリーの全てにわたって個性的なのがポイントです。現状で市場価格が20,750円程度と求めやすい価格帯でもあります。

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特徴

3T-154という名前はそのまま特徴を表していて、3T-154の3Tとは磁気回路が強力で3T(テラ)もの磁束密度を実現していることをしめしています。これまでは1Tあると強力と言われていましたから、3Tというのはかなり強大なマグネットが使われていることになります。これは振動板を動かす力が優れているということです。

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また154というのは振動版の口径が15.4mmあることを示しています。普通は10mmを超えると大口径と言いますので、15.4mmというのは超大口径です。また口径に比較するとかなりコンパクトに設計したということです。以前ソニーに16mmの振動板を搭載したXBA-Z5やMDR-EX1000というモデルがありましたが、これは振動板が大きいので傾けたレイアウトを採用していましたので、大口径イヤフォンの設計が難しいことがわかります。15.4mmの3T-154が普通のイヤフォンのように設計されているのは特筆ものといえるでしょう。12mmダイヤフラムを採用したドライバーユニットと比較した際に、ユニットサイズが65%で済んでいるということです。
振動板が大口径だと迫力がありそうなのは直感的にも想像はつきますが、実は大口径だと振動版の移動距離が短くて済むので歪みも低減できるという側面もあります。ただし振動板が大きい場合にはその面積が広いため、動かすためにより多くのエネルギーが必要となります。そこで3T-154では3T(テスラ)というマグネットを組み合わせているのでしょう。

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振動板はベリリウムメッキが表面に施されています。また3T-154は大柄ですが、シェルは軽量なマグネシウム合金で片側9gと軽量に設計されています。
ケーブルとは2ピン端子でリケーブルが可能です。面白いのはプレーヤー側の端子が3.5mmと4.4mmで交換可能なのですが、これがビス留めされていることです。これは普通よりも太い端子を使用しているので確実に固定するためのようです。

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3T-154はシルバーとブラックの2色展開。付属品が豊富です。特にイヤーピースはシリコン4種類(各3サイズ)、フォーム1種類(2サイズ)が標準で添付されています。またノズルが着脱可能で、スペアノズルまで添付されています。

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インプレッション

イヤフォン本体は大きめですが意外と軽く、耳にはめてしまうとそれほど違和感は感じられません。ただしシェルが大柄なので女性や耳の小さい人は店で試した方が良いかもしれません。
ケーブルはしなやかでタッチノイズ等はあまりありません。太い割には使いやすいケーブルです。イヤフォン端子もかなりごつい大きなものですが、これも不都合を感じるケースはあまりないでしょう。4.4mmと3.5mmの交換式プラグはビスで締め付けるので確実ですが、ビスが小さいので気を使ってしまいます。

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添付のケース

まず標準チップの柔らかいシリコンで聞いてみます。チップ別の音質変化については後で触れます。
3T-152はとても第一印象が独特で、あまり聴いたことがないくらい低音が分厚く重い音です。迫力があって音場も広いと感じられます。バスドラとベースギターは低音のアタックが腹にくるほど半端ないほど響きます。ロック、ポップにはとても相性が良く、音にやや暖かみがあるのが過激な音を聞きやすくしています。
一方で少し聞き込むと、それでいて中高域もしっかりとしています。意外とヴォーカルに大きく被らないのも良いと感じます。多少は被りますが、第一印象の低音の重さから思っているほどではありません。この辺が単なるベースヘッドの低価格機とも異なっていて、歌詞もわりとよく聴こえます。ポップの歌ものも良いと思えますね。楽器音も鮮明でクリアに聞こえます。ハイエンド機に比べると荒さは残っていますが悪くありません。BA機のように整っているわけではないですが、シャープに感じられます。
ロックポップ向けではあるが、音が骨太で空間に太いペンで音像を書いたような独特のサウンドで静かな器楽曲を聴いても意外と鮮明な音で悪くない。


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A&K SR35と3T-154

分厚く太い音ですが、曖昧さという意味での甘さは少なく、大口径振動板ででかい音が出るけれどもそれを3T(テスラ)の強力マグネットでグイグイとコントロールする感じですね。ただし打撃感はやや甘く出ることがあるのでパワーのあるアンプを使うのがおすすめです。
例えばAstell & Kern KANNシリーズや同じiBassoのスティックDACであるDC-Eliteです。KANN Ultraで聞くと余裕のある音空間が楽しめ、パワー感と共に音の広がりも堪能できます。

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DC-Eliteと3T-154

またスティックDACにしてはパワーのあるDC-Eliteと組み合わせると、メタルのドドドドドとかダガダガダガダガというドラムロールがあまり聴いたことがないくらい激しく打ち付けられ、破壊力と言って良いほどでちょっとクセになるほどです。またDC-Eliteの搭載するローム社のDACは音楽志向で柔らかな聴きやすさがあるので、メタルでもあまりキツくならないと言うことで良い組み合わせといえます。
A&K SR35で聴く時はハイゲインモードにして聴くとパワフルな音になって良いです。個性ある音だが鳴らすにはそれなりに必要です。やはりパワーが必要なので4.4mmバランスで聴くのがベストです。

各チップの相性

3T-154にはイヤーチップがたくさん付属してくるのが特徴です。特徴的な音なので個人的には標準チップで少し聞き込んだ方が良いと思いますが、慣れてきたらイヤーチップを変えてみると個性あふれるサウンドにあった音傾向を見つけられるかもしれません。

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白いシリコンチップ
標準チップよりも少し音が明るく、音がややシャープになります。少し抜ける感じで、女性ヴォーカルやポップスに良いと思います。

黒いフォームチップ
より低音が強く出るようになりますが、一方で高域も十分シャープで悪くありません。

濃い青のシリコンチップ
より中高域が伸びるようになり、少し低域を抑えたい時に使うと良いと思います。

黒の硬いシリコンチップ
標準よりは低域が抑えられますが、少し超低域が出にくくなります。音傾向は標準と似ていますが、耳の相性で選ぶと良いと思います。

柔らかい黒いシリコンチップ
他のシリコンチップと音傾向は似ていますが、低音の出方が硬いシリコンと標準の中間くらいです。


まとめ

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3T-154は他にない個性が楽しめるユニークなイヤフォンです。A&K KANNのパワフルさはマルチBAなどではもてあましてしまうんですが、こうしたパワーを要求するイヤフォンにはよく適合します。
3T-154は安価ではありますが、しっかりとしたアンプやスティックDACを使ってきちんと鳴らし込んでユニークな音を楽しむことができます。高音質でちょっと変わった個性のイヤフォンが欲しいというユーザーにおすすめです。

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MEMS搭載NUARLのMEMS搭載完全ワイヤレス「Inovatör」(旧X878)の秘密の記事を執筆

MEMS搭載NUARLのMEMS搭載完全ワイヤレス「Inovatör」(旧X878)の秘密の記事を執筆しました。

https://ascii.jp/elem/000/004/209/4209876/
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AirPodsで使用者の動きからBPMを認識してミュージックに適用可能な特許の記事を執筆

AirPodsで使用者の動きからBPMを認識してミュージックに適用可能な特許の記事を執筆しました。

https://ascii.jp/elem/000/004/208/4208511/
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LinkPlayの多機能ネット再生機「WiiM」とSHANLINGの「EC Smart」を聴くをアスキーに質筆

LinkPlayの多機能ネット再生機「WiiM」とSHANLINGの「EC Smart」を聴くをアスキーに質筆しました。

https://ascii.jp/elem/000/004/207/4207127/
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