Music TO GO!

2017年03月27日

Unique Melodyの12ドライバーカスタム、MASON IIレビュー

MASON IIカスタムは昨年12月17日に発表されたUnique Melody(以下UM)のカスタムIEMです。
価格はオープンですが、希望小売価格は税別で255,834円ということです。

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* MASON IIカスタムの特徴と開発ポリシー

MASON IIカスタムは12個のドライバーを持つハイエンド機で、低域x4、中域x4、高域x4の3Way構成です。
以前のMASONユニバーサルの後継機として2年をかけて開発されたということ。ドライバーは前モデルとは異なるものを搭載し、特に低域用と中域用のドライバーにはUMがメーカーに対して特注でカスタマイズをしたドライバーを採用しているということです。

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全てBAドライバーですが、中音域の向上のためにオープンBAドライバーを中域用に採用し、オープン型BAドライバーに対してベントでのエアフローの最適化を採用しているという点です。このためオールBAドライバーでありながらフェイスプレートにポート(ベント)が空いているのが特徴です。これはADELやAPEXとも違うアプローチのようです。

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また音導管にはプラチナ塗装の合金チューブを採用しています。ここはMAVERICK IIユニバーサルやMAVIS IIユニバーサルとも共通していますね。
ケーブルは2pinでリケーブルができます。

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宮永氏によれば、MASON IIカスタムはライブ会場で聴いているかのような空間表現を生かしたということで、TOTOのライブ体験を再現したかったということ。実際に聞いてみると独特の音場の立体感と空間の余裕ある表現力を感じます。ここはのちに書く「個性」のパートになると思います。

またもうひとつのキーはサントリーウイスキー「響」ということで、整ったブレンドの中にもオリジナルな部分があって深みを出していることがヒントのひとつになったということ。MASON IIカスタムも「整ったバランス」と「個性」を7:3か8:2くらいの割合でブレンドして、リスナーを飽きさせないものにしたかったということです。

その個性のキーとなるのがオープン型BAドライバとベントによる最適化チューニングです。このオープン型BAとベントというのはADELやAPEXとはまた別のもので、オープン型BAにはADELのような音圧を外に逃がしてやるような機構はないということ。
オープン型BA自体はなにかというとBAドライバーに穴があいているもので、これはいままででも採用機種はあります。たとえばUMではメンターに採用されています。これはミッドレンジの特性が良いためにMASON IIカスタムに採用したということです。

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問題はオープンBA型ドライバーの開発過程で、フェイスプレートを取り付けたことによる聴覚上の閉塞感が感じられたということだそうです。そこで、オープン型BAとベントを組み合わせることによって、音質の向上ができるのではないかということで開発を進めたということです。
これは周波数測定しても現れないたぐいのもので、なにかどう変化したかはまさにノウハウの世界だということ。つまりは測定機械よりも聴覚上の良さを求めてチューニングしていたことにより発見ができたというわけです。
それがMASON IIで感じる、聴覚的な気持ち良さ、独特の立体感と余裕のある表現の秘密であるのかもしれません。
独特の音の余裕感はオープン型BAドライバーとベントによる最適化によるもので、指をベントで閉じてみるとこの独特感が消えてしまうとのことです。

* 実機のインプレッション

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ケースを開けると、おーとため息つくくらい美しいシェルが出てきます。
いつも思うけれど、UMはシェル作りが上手ですね。シェルの造形もきれいですが、ぴったり密着するようにはまります。カスタムの中でも装着感はトップクラスだと思います。

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音のインプレは主にAK380と標準ケーブルで聴いています。
MASON IIカスタムで感じられるのは、まずオープンBAとエアフローの改良の効果か、いままで聴いたことがないような個性的な空間表現というか音空間の余裕が感じられます。また音色も自然ですね。
ヘッドホンに例えると今までのBAは密閉型で、MASON IIカスタムは開放型という感じの違いといいましょうか、ちょっと表現しにくい「個性」ではあります。音の広さというのともちょっと違います。クロスフィードとかサラウンドDSPとかそういう人工的な味付けでもありません。
この良さはMAVERICK IIにもMAVIS IIにもないものです。

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「整ったバランス」という意味ではMASON IIカスタムは12ドライバーらしいワイドレンジ感が見事です。この意味でも音の高い方と低い方にたっぷりとした余裕を感じます。自然な音であまり強調感は少なく、尖った所のあるMAVERICKIIよりも落ち着いた感はあります。これは初代からだと思いますが、全域で整って端正なBAサウンドで荒っぽいところはありません。もちろん解像感も高く、情報量がたっぷりあります。標準ケーブルとの相性も良いですね。
実に堂々たると言うか、12ドライバーの横綱相撲的な余裕あるスケール感、低域の深み、中域の厚み、高域の伸びの良さ、トップレベルの実力だと思います。

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帯域感としてはフラットよりはやや低域よりだと思いますけれど、これはMASON II自身というより標準ケーブルの個性だと思います。例えばCrystal Cable NEXTだともっと全域フラットで銀線っぽい味わいは付加できます。キラキラっとして、よりフラットな音が好きな人はリケーブルも良いと思いますが、上級者でも標準ケーブルで十分満足できると思います。
標準ケーブルの相性が良いという点ではMAVISに似ていて、MAVERICKの場合は私だとSignalかなんかを使いたくなります。

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ジャズトリオの演奏は生っぽく、アコースティック系だと生っぽさが際立って良く、ライブリスニングに一歩近づいたともいえますが、実のところ電子音楽も深みが圧巻です。濃いインダストリアル系アンビエントをループしてMASON IIカスタムのめくるめく音空間に浸るのも気持ち良いものです。

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音の鳴り方がリアルなんですが、生楽器・ヴォーカルだけでなく電子音でもリアルです。電子音がリアルっていうのもなんですが、実際にありそうな感じに聴こえるのが面白いところ。なんでも合いますね、これは。

* まとめ

UMではあえてフラッグシップという呼び方はしないのだそうですけれども、フラッグシップだから12ドライバーで作ったというよりは、この高度なまとまりの良さを得るために12ドライバーになったという感じでしょうか。
MASON IIカスタムの魅力は、この12ドライバーによる「整ったバランス」とワイドレンジ性能、そしてオープン型BAとベントのチューニングによるミッドレンジの「個性」というブレンドによるものというところは開発の狙い通りだと思います。

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12ドライバーの基本的性能は優れていてワイドレンジで高域も低域も強すぎるところもなく整っています。音のひとつひとつの出方は先鋭なMAVERICKと落ち着いたMAVISの中間的なものだと思います。
ただしオーディオファイルは贅沢なもので、中庸で整ったバランスだけだとある意味面白みに欠いてしまいます。そこを個性がおぎなって、常に飽きない音で楽しめます。音に独自性があり、かなり優れたカスタムと言えるでしょう。

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2017年03月26日

On Horseback - マイク・オールドフィールド

マイク・オールドフィールドは「チューブラーベルズ」で大ヒットを記録した後に人嫌いとなって、ウェールズ地方のハージェスト・リッジという片田舎に移りすみました。

「オマドーン」は前にも書いたんですが初期三部作の最後の作品で、チューブラーベルズ同様に様々な楽器で多重録音を駆使した複雑な大曲です。そしてその最後にシンプルに自分の声を使って素朴なパートを入れてエンディングとしました。その部分はオマドーンの発表時には曲の一部と思われていましたが、のちにシングルカットされていまでは"On horseback"として知られています。

こちらのYoutubeで聴くことができます。


英語の元歌詞は画面に表示されますが、下にわたしが日本語の訳出をしました。

高原に行って森の中を馬の背で揺られていくと、森の木々の中で自然と一体になれたような気がします。そうしたとき、この曲がふと頭をよぎります。
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(左で見えているのは八ヶ岳の赤岳)

---------"On horseback"-------------------
*は繰り返し部分

ぼくはビールが好きだ、チーズも好きだ。
そして西からそよ風に運ばれてくる匂いも好きだ。
でもそれら全部より、馬に乗ることが好きなんだ。

* さあ、草原を、雪の上を駆けていこう。
茶色い大きな背中、茶色い大きな顔、
ぼくは宇宙を飛んでいくよりも、おまえといっしょの方がいいんだ。

ぼくは雷が好きだ、雨も好きだ。
そして焚き火で燃えさかる炎も好きだ。
でも頭の中で音がとどろくくらいなら、馬の背に揺られていたいんだ。

あるものは都会を好み、喧噪を好む。
あるものは混沌やらなにやら作りだす。
でもぼくがもし選べるならば、馬に乗っていたいと思う。

* さあ、草原を、雪の上を駆けていこう。
茶色い大きな背中、茶色い大きな顔、
ぼくは宇宙を飛んでいくよりも、おまえといっしょの方がいいんだ。

こんな小さな星の上に自分がいるのを不思議に思う人もいる。
でもここがどこだか知っている人がいるのだろうか。
もしそうした不安につぶされそうになったら、馬に乗るといいよ。

世の中にはちっちゃな人もいる、でっかい人もいる。壁に頭を打ちつけてる人もいる。
でもそんなことはどうでもよいことなんだ、馬に乗ればそれが分かるよ。

* さあ、草原を、雪の上を駆けていこう。
茶色い大きな背中、茶色い大きな顔、
ぼくは宇宙を飛んでいくよりも、おまえといっしょの方がいいんだ。

だからもし、きみの気持ちがすさんできたら、
ハージェスト・リッジに来てごらん。
夏でも、冬でも、雨でも、晴れでも、
馬に乗るにはいいところなんだ。

* さあ、草原を、雪の上を駆けていこう。
茶色い大きな背中、茶色い大きな顔、
ぼくは宇宙を飛んでいくよりも、おまえといっしょの方がいいんだ。

* さあ、草原を、雪の上を駆けていこう。
茶色い大きな背中、茶色い大きな顔、
ぼくは宇宙を飛んでいくよりも、おまえといっしょの方がいいんだ。

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Return to Ommadon - マイク・オールドフィールド

マイクオールドフィールドの初期3部作の続編が彼自身の手によって続編が製作されました。その名も「Return to OMMADON」、オマドーンへの回帰という感じでしょうか。
高校の時にみんなで好きな音楽を持ち寄って観賞するという時間があったんですが、私が持ってきたのがこの「オマドーン」で、みなを思いっきり眠らせてしまったというのを思い出します。それほど思い入れがある作品ではありますね。
チューブラーベルズはいくつも続編が出ていますが、どれも初期作の続きというわけではなくアレンジ作品というべきでしょう。またAmarokがオマドーン2ともいわれましたが、あまりしっくりするわけではありません。

Roonの曲解説を読むと、ネットで次はどういうスタイルで作曲するか投票をしたそうで、その結果初期作品懐古のテーマを決めたということのようです。
たしかにCDというより、もはやダウンロードやストリーミングの時代にわざとLP時代のように一曲20分にした大作、コンセプトアルバム、一人多重録音(アナログ時代より楽だったと思うけれど)などなど初期作を思わせます。
またこれも前に書いたのですが、Robert Reedとか日本の大山耀(Asturius)氏によるマイクの初期作へのオマージュのような作品がいまでも作られていますのでそれに刺激されたというのもあるかもしれません。大山氏は新作のAt the Edge of the worldを出していますし、Robert Reedも以前紹介したSanctualyの続編を出しています。下記に記事を書いています。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/408328727.html

期待も大きくて、夜e-onkyoのダウンロードを始めてダウンロード終わったら寝ようかと思ってたんですが、結局そのまま聴いてしまいました。
前がアフリカっぽいリズムを取り入れていたところに、今回はネイティヴアメリカンっぽいのを取り入れたり、最後に"On Horseback"と子供のコーラスを入れたりと複雑と言えば複雑な曲構成はオマドーンだけど、オリジナルがもっと内省的だったのに対して、これはどちらかと言うとインカンテーションズ・呪文の続編的には思えます。

ただ、悪くいうとRobert Reedのカバーっぽくも聞こえてしまいますね。なぜかというと、前のRobert Reedの時の記事にも書いたんですがRobert Reedも当時のマイクのエッセンスをうまく取り入れたのだけれども、Robert Reedが真似できなかったのはマイクの病んだ当時の精神性だったと思うんです。Robert Reedは人嫌いになって馬とともに田舎に引っ込んで鬱になるってことはないでしょう。その精神性がこの「Return to OMMADON」にもないんです。それはマイク自身が捨てたものだから。

たしかに70年代当時はアナログでのあれだけの多重録音する人間はそれだけで、少し偏執狂的な要素があったかもしれない。そしてマイクオールドフィールドの場合はチューブラーベルズでは多重録音のデモ音楽に過ぎなかったものが、オマドーンではそれを内的探求の旅へのツールとして昇華できたと思う。
今でもまだ大変かもしれないけれど、今はそれは音楽の探求者でなくてもやるでしょう。ミュージシャンがもはや探究者ではないのなら、これはやはり単なるベテランミュージシャンのファンサービスと言えるでしょう。

音楽なんて優秀作で十分なのに、優秀作が名作となるのはなにか切れたものが必要だと思います。
それは彼が成長するにつれて克服したものでマイクの場合は呪文でそれがありました。長髪を切ったジャケ写のように。
でも、おそらく我々が求めるのはそうした中二病とも言える若さゆえのなにかなのかもしれないとも思います。高校の私が共感して今は失くしたもの、70年代の音楽にあって、21世紀の音楽が失ったもの。
とか文句を言いながらも、今日もまた聴くわけですが。

ちなみに「オマドーン」はゲール語(古代アイルランド語)のバカとか間抜けという意味です。

e-onkyoのリンクはこちら。
http://www.e-onkyo.com/music/album/uml00602557277685/
Amazonリンクはこちら。
posted by ささき at 13:39 | TrackBack(0) | ○ 音楽 : アルバム随想録 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月22日

VSTハイブリッドイヤフォン、n+um(エニューム) NUM-E1000レビュー

先日のポタ研で注目製品の一つはハイブリッドイヤフォンのn+um(エニューム)でした。特徴は独自技術であるVST(Vertical Support Tweeter)を高域ドライバーに採用している点で、n+um NUM-E1000はVSTとダイナミックドライバーの2ドライバーのハイブリッドイヤフォンです。

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n+umはイヤフォンのブランド名で、イヤフォンの製品名はNUM-E1000といいます。販売はネディアという会社が担当して、フジヤエービックの限定販売です。
販売リンクは下記の通りです。
http://www.fujiya-avic.jp/products/detail128891.html

* エニュームブランドについて

エニュームというのはネディアのブランドで、ネディア・ウルトラ・ミュージックの頭文字をとってn u mとしたということです。またナチュラル(natural)な音、新しい(new)技術、素晴らしい(neat)などnに複数の意味を持たせているので+がついて、n+umとしたということもあるということです。
開発はO2ad(オーツェイド)という会社が担当しています。もしかすとるこの社名はすでに聞いたことがある人もいるでしょう。今回オーツェイドの渡部社長に製品についての話を聞く機会を得ました。

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オーツェイドの渡部社長

もともと渡部社長は以前大手電子部品メーカでセラミックを使用した積層型スピーカーの技術開発のプロマネをしており、その高域に強いという特徴を如何にオーディオに活かすかを模索していたそうです。2014年に同社を退職し、独自にセラミック音響の開拓を進めさまざまなOEM先や提携先と仕事をしていましたが、2015年にセラミックドライバーの共振周波数の問題を解決したVSTという特許技術を開発します。
それを応用したイヤフォンの第一弾がアンティームのSORA(ソラ)です。これはVSTを低価格でも作れる可能性を示したコスパが高いと評判のイヤフォンですが、VSTにまつわる特性をさらに改良し、音質的にも上を目指したいと考えた渡部社長は、販売会社に弟のやっているネディアを選びました。つまりOEMやODMではなく、自分の好きなことをしたかったので、兄弟がやっているという強みを生かしたかったようです。ネディアの渡部(弟)社長も兄の技術を世に出したいと考え、このコラボがはじまったというわけです。ここで渡部社長はSORAよりもより高度なVSTの開発を進めることができました。

コンセプトは「聞く喜び」と「持つ喜び」と言うことで、音もさることながら、筺体部分は制振のために日本の加工会社に頼んだステンレスのローレットで、職人技で製作し一日に30個しか作れないということです。
筺体にはコストをかけて職人の手作りがかかっているので追加生産ができず1000個限定となると言います。

* VST技術のポイント

NUM-E1000のポイントはVSTで20kHzを超えて50kHzに及ばんとする超高音域の再生に挑んだことで、それをスピーカーで言うところの「フルレンジユニット + スーパーツィーター」という構成にまとめたという点です。NUM-E1000ではツィーターであるVSTとダイナミックドライバーの2ドライバー構成ですが、従来的な高域と低域の2Wayというよりも、可聴帯域の16kHzまての音はほぼすべてダイナミックドライバーで担当しています。そのためダイナミックドライバーはウーファーというよりもフルレンジとして捉えた方がよいでしょう。VSTはそれを超えるような超高域の再生を担当しているわけです。
ふたつのドライバー間では電気的なクロスオーバーはありません(VSTの中心部の孔が音響的なハイパスフィルターとして働くそうです)。

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この「フルレンジユニット + スーパーツィーター」という形式で何が良いかというと、可聴帯域の音はフルレンジなのでつながりがよく位相的な問題はありません。そして20kHz以上の音はスーパーツィーターで倍音再生することで高域だけではなく、すべての帯域で音質向上ができるというわけです。
ハイレゾ対応に有利と思いがちですが、実のところ普通にCDで聴いていても音質はよくなります。ハイレゾ対応というよりも、むしろ可聴帯域の音を向上させるのがポイントです。

この方式は私はけっこう好きで、以前Bat PureとJohn Blueのスピーカーを組み合わせたり、村田製作所のスーパーツィーターをディナウディオに組み合わせたりしていました。イヤフォンでもそうしたものができるというわけです。下に記事があります。
http://vaiopocket.seesaa.net/category/6244798-1.html
http://vaiopocket.seesaa.net/article/16778366.html
セラミック発音体は魚群探知機に使われているように超高域の再生に適しているということで、村田製作所の作ったスーパーツィーターもセラミックのドライバーを採用しています。経験的には2Wayスピーカーに組み合わせるよりも、フルレンジのほうがスーパーツィーターの効果はわかりやすいと思います。

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つまりNUM-E1000において、基本の音はダイナミックドライバーの音であり、スーパーツィーター(VST)はそれを高めると言う考え方です。そのため、単に高域だけではなく、低域も含めた全域で効果が出ていると思います。上のスピーカーの例だとスーパーツィーターのあるなしをするようなもので、スーパーツィーターがなくても高域を含めて普通に音は聞こえますが、スーパーツィーターを付けることで音質がかなり向上します。
つまり上の記事で書いたように、ありなしをしてみると、いつもの音となにかちがう、音像がよりくっきりと明瞭になるという感じ、という効果ですね。

VSTは振動版がニッケルで高剛性を確保し、ドライバーはセラミックを用いたピエゾ圧電素子(素子を電極ではさんだユニモルフ構造)となっています。ここに実は特許技術があり、VSTの振動は全面駆動ですかと聞いたところ、点支持と全面振動の複合となっているということ。
ダイナミックドライバーの振動版の材質はPEEK(ボリエーテルエーテルケトン)というもので、これは一般的なマイラーとは異なり新素材で、ShureのSRH1540にも使われていましたね。
剛性に優れリニアな特性をもっているということですが、高域が伸びる特性が特に役にたっているということです。また筐体のローレット加工についても、ローレットのあるなしで試してみて制振効果(低域のたるみの防止)があったということです。
今回のNUM-E1000はSORAとは異なりオーディオファイル向けの音つくりをしますが、同時になるべく広いジャンルで楽しめるようにしているとのことでチューニングもそうした点で苦労したということです。
製品のターゲットは音にこだわりがあり、他とは違うものを持ちたい人ということです。

* 実機のインプレッション

箱はシンプルなもので、中にはラバーイヤチップが3種類ついています。本体はステンレス金属で高級感があり適度にずっしりとした重みがあります。ボディがインシュレーターのようでがっしりして制振性がありそうなところも目で見てわかる感じですね。

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コンパクトでシンプルなデザインでステムの太さも適度なので装着感は良く、耳では重くも感じるわけではありません。遮音性も悪くありません。

エージングなしでも音は極めて良い印象です。
中高域の解像度の高さと低音のインパクトがすごいという感じで、独特の空気感があるのが特徴的です。独特の質感表現といいましょうか、ダイナミックならではの厚みのある音ですが、きっちりとした芯があります。

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一晩エージングするとクラス上の音になる感じで、ケーブルもドライバーもこなれるのか、低域が深みが増して、高音域がより鋭くなります。ちょっと能率は低めではあります。中高域だけでなく低音域も独特の立体感と言うか空気感があります。
音場の広がりは標準的だけれども、独特の立体感がありますね。

基本的にシングルダイナミックなので、高低のつながりはスムーズで一体感が高く、ヴォーカルがキリッとセンターに像を結んで口元も小さく引き締って歌詞もよく聞こえます。特に女性ヴォーカルが逸品ですね。
低域がたっぷりあるけど、ヴォーカルが引っ込まずに出て来るようです。

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一般の高性能マルチドライバーBAイヤフォンと比べると、音はややコンパクトだけど、ダイナミックらしい躍動感があって、引き締って強靭な音です。きれいに伸びるけれど、BAみたいに細く薄くない感じです。ドライでもないですね。独特の中高域で、BAにない不思議な空気感があります。オーディオファイル向けと言ってもいわゆるモニター的な味気のない音ではなく楽しめるのはダイナミックならではの良いところです。

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普通のダイナミックだと音の芯の鋭さが足りないのでアタックが鈍くなりがちですけど、NUM-E1000は芯が強くその点で不満がありません。緩くなく小口径ドライバーのような音の切れ味があり、制振設計が効いているのかもしれません。たぶんマルチBAよりこっちが好きと言う人も多いと思います。

おそらくスーパーツイーターがなくても、ダイナミックだけでかなり高いレベルだと思いますね。PEEKの採用もよいのでしょう。ダイナミックにしては一つの音の鮮明さ、明瞭さが高いのはスーパーツイーターとしてのVSTの効果のように思えます。高域から低域まで一様な良さがあります。
最近よくあるハイレゾ対応イヤフォンのように不自然に高域を高めた感も少ないです。いわゆるハイレゾ対応イヤフォンも倍音をうたってはいますが、こうした感覚は薄いのでVSTほどにはあまり効いてないようにも思います。

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なかなか隙がなくよくチューニングされていると思いますが、リケーブルできないのが残念ですね。これだけ音が良いと良いケーブル使いたくなります。
ただあまり荒れたザラザラした音ではないので、このケーブルも悪くないとは思います。また今の音に文句もないのでこの音で聴いてほしいという作り手の気持ちもあるのかもしれません。ただ音の好みもあるので調整できる方が良いとは言えますね。あとはバランスにしたいとか、このくらいの音レベルだと上級機と比べて見たくなります。

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主にAK380を使って聞きましたが、iPhoneでもけっこう良いです。ただし一個注意点はiPhone7の3.5mmアダプタで謎のノイズが出てきます(注意書きが同梱されています)。iPadでは問題ありません。iPhoneでも5とか6のように3.5mmがついているものでは問題ありません。なにかセラミックのドライバーと相性が良くないようです。

ちょっと新感覚の鋭く空気感のある中高域が楽しめて、たっぷりした低音のインパクトも良いです。今までのハイブリッドにないような個性もあります。個性的なダイナミックドライバー機としてお勧めです。
これからもVSTでいろいろなアプローチをしていきたいということですので楽しみにしたいものです。
posted by ささき at 22:02 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月16日

Hugo 2とChord固有技術 パルスアレイDACの仕組みと利点

本日アユートのChord製品発表会で私がロバートワッツをまじえてHugo2とChord社の独自技術の解説をしました。

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Chord社の主要技術であるパルスアレイDACについては詳しく解説する機会はあまりなかったと思いますので、ここでまとめてみます。

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一般的なDACではESSやバーブラウンなどのように市場に売られている汎用品のDACチップICを買ってきてそれを使います。
ChordではFPGAを中心に据えたより洗練されたものでパルスアレイDACと呼ばれます。これはFPGAが独自のプログラミングができるカスタムICであるから可能なことです。
FPGAではWTAフィルターやボリューム・クロスフィードなどデジタルドメインの処理を担当します。処理の細かさであるタップ数はHugoの26368タップから、ほぼ倍の49,152タップに向上しています。またWTAフィルターは二段階になっているのですが、Hugoでは初段が8FS(CDの8倍)、二段目が16FSだったところが、Hugo2では初段が16FS、二段目が256FSとさらに細分化、高性能化されています。
ちなみに二段目の256FSフィルターはDAVEに使われているものと同じだそうです。このようにHugo2には先行していたDAVEゆずりの技術がいくつも採用されています。
またFPGAはMojoと同じシリーズ7のザイリンクスのFPGAですが、電源の関係でその性能を十分な発揮できなかったMojoに対して、より電源に余裕のあるHugo2では100%その力を発揮できたということです。

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そしてFPGAでフィルタリングされたデジタル信号はフリップ・フロップ回路(IC)に送られてアナログ信号に変換されます。一個のパルスアレイは上の図のFPGAの横にあるフリップフロップICと抵抗のペアで、上の図では4組見えています(回路図はMojoのものです)。
よくChordのパルスアレイDACはFPGAをベースにしているということでFPGAチップでDA変換がおこなわれているようにも言われることがありますが、実際にはFPGAではなく、そこから出たデジタル信号をこのフリップ・フロップ回路と抵抗の組み合わせでアナログに変換します。
ただしフリップ・フロップ回路に送られるパルスアレイ信号はFPGAによって作られるため、FPGAとフリップ・フロップ回路は分離できず、ハード的には双方を合わせてパルスアレイDACと呼ぶのが正しいでしょう。

このフリップ・フロップ回路と抵抗のペアをパルスアレイエレメント(要素)と呼び、Hugo2では片チャンネル10個のパルスアレイ・エレメントで構成されます。HugoとMojoでは4個、DAVEでは20個。ロバートによると、パルスアレイエレメントが4つの場合はどうしても妥協があるということです。

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パルスアレイDACはスイッチング動作によってデジタル信号をアナログにします。上の図はHugo2の10個のパルスアレイの様子です。
この10個のパルスアレイ・エレメントでパルス信号を10列の並列的にスイッチング動作させてアナログに変換します。そのためパルスのアレイ(列)と言います。
横に見ていくと、7のときは7個のパルスアレイエレメントがオンとなり、8のときは8個オンとなります。

パルスアレイDACのポイントはスイッチング動作が入力信号と無関係で一定だということです。
ここは分かりにくいと思いますが、たとえば4本の指が4つのパルスDACエレメントと思ってください。一本の指がひと組のフリップフロップICと抵抗に相当します。
4本の指をすべて上にあげると最大音量です。すべてさげると最小音量です。中間の音量はどの指が上で、どの指が下かの組み合わせになります。実際に上げ下げしてみるとパルスアレイの様子がわかりやすいと思います。
このとき一本の指だけに着目すると、信号の大小にかかわらずやっているのは一定の上げ下げだけだということが分かるでしょう。上げ下げはスイッチング動作ですから、スイッチング動作は信号の大小にかかわらず一定というのはそういう意味です。
(さきに書いたように4エレメントの場合は妥協があるので本当はもっと複雑ということです)

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またこのときに一本を上げて、もう一本を下げると動きが相殺されるのが分かると思います。これでスイッチング時のノイズが相殺されます。実際は図のように少しずれて動作が行われるため、横から見ると互いの立ち上がりと立下りが重なることで、その悪影響をキャンセルできるということです。

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左が普通のDACのノイズフロア変動、右はChord DAC

このことはノイズフロア変動による歪に関係します。
ノイズフロア変動というのはDACの残留ノイズであるノイズフロアが、信号が入ることで変動してしまうということによって生じます。本来ノイズフロアは一定のはずですが、それが信号入力で揺れてしまうという現象で、音質の悪さとして働きます。(信号のハーモニクスと非同期になるから)
これはちょっと困ったことで、上の図のように一般のDACはかなりの量のノイズフロア変動があります。ChordのDACの場合にはさきほどの説明のようにパルスアレイの原理的にほとんどそれが生じませんし、出たとしてもわずかでスムーズなため音質にあまり悪影響を及ぼしません。

この辺がパルスアレイDACの優れた点です。もちろんChord DACではこのほかにも優れた部品や電源などさまざまな工夫をして最高の音質に仕上げています。ロバートワッツによれば、Hugo2の仕上がりにはかなり満足しているということです。

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実際に聴いてみても前Hugoからの音質向上は顕著で、シャープだけれどもきつく感じられることがあった前Hugoにくらべると、まるでDAVEを聴いているかのようなスムーズで自然な高品質の音はDACのあるべき姿を聴いているかのようです。
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2017年03月06日

アフターグロウ - 進藤麻美

週末にピアニストの進藤麻美さんのデビュー曲記念のミニコンサートを見てきました。
http://mamishindo.wp.xdomain.jp/
技術力がすばらしく高くて指がよく動き滑らかで、音が鋭いというのが印象的です。アルバムも購入したんですが、選曲も興味深く有名曲と無名曲、時代が選ばれてます。
ピアニストがデビューアルバムでラ・カンパネラを収録するのはヴァイオリニストがデビュー盤でツィゴイネルワイゼンを収録するみたいな技術力の証明のようなものかもしれませんが、こうしたよく知られてる曲では切れの良いタッチがよくわかります。
演奏スタイルはダイナミックなタイプですが、タッチがよく音色が多彩なのでドビュッシーみたいなフランス系もこなす器用さもわかりますね。

でもこういう人はやはり現代曲が似合うと思います。そういう意味ではヴィラロボスのオリオン座の三つ星と、なんと言っても最後のヴァインのソナタが圧巻でした。
コンサートの冒頭はオリオン座の三つ星で始めたけど、その指使いにちょっと聞いてこの人は上手いって思わせてくれます。
ソナタは冒頭からノンジャンルの感覚がユニークですが、88鍵全部使うっていうこの曲はテクニカルでスピーディ、緩急自在のダイナミックさ。これはコンサートの最後の曲だったんですが、終わった時はこの人このまま倒れるんじゃないかと思ったくらいの演奏への没入感がすごい。アンコールさせるのがかわいそうと思ったくらい。
書評でも選曲が良いと書かれてるそうだけど、それは自分の魅せ所をよく知ってるということでもあると思います。

私もそんなにクラシック系は聞くほうではないけれども、最近だとこの人とヴァイオリンの小林美樹さんが、同じ楽器でも弾く人で違うんだなと思わせてくれた感じです。オーディオもそういうところを表現して欲しいところではありますね。

* Roonでのダイナミックレンジ表示: 16

Amazonのリンクで試聴できます。
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2017年02月19日

ポタ研 2017冬

今年もポタ研が行われました。ヘッドフォン祭に比べると小規模ですがマニアック系にふったイベントです。今回はnutubeとのコラボイベントなどが行われたようです。人もかなり出ていました。
私は今回都合で一時間ほどしかいられませんでしたが、いくつか紹介します。

Analog Squared Paper(A2P)の新アンプTUR - 08、Abyssもならせるというハイパワーが売りでメーターがかっこいい。真空管ハイブリッドだと思いましたが、TU05に似たフル真空管みたいな滑らかな音でした。
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Jabebでは人気ブランドPHATの小さいほうの新バージョンが出てました。このカラーはハイパワー版ということ。こちらもAbyss使ってましたが、シャープ系の音ですね。
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Finalの新平面型ヘッドフォン。大人気で試聴できませんでしたが、話を聞くと平面型ならではのコイルパターンに工夫があって能率と低域の深みを改善したそうです。ちょっと注目ですね。
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新ブランド、エニュームのイヤフォン。5万と高いんですがハイブリッドで中高域の音質、低域の質感はなかなか良いです。できればケーブルはMMCXにして欲しかったところ。
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須山さんところでのAYA Snowのシェルカラー投票。お昼くらいで青系優勢でしたが結果もこんな感じだったようです。AK70とかに合わせたいと思う人が多かったんでしょうか。
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タイムロードのCHROD TTのケース。ポータブルかというと、、
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posted by ささき at 09:08 | TrackBack(0) | ○ オーディオショウ・試聴会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月16日

ミックスウェーブからUM ユニバーサル第二世代機、MAVERICK IIとMAVIS II登場

ミックスウェーブからUnique Melodyのユニバーサル第二世代機であるMAVERICK IIとMAVIS II登場します。

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MAVERICK II

MAVERICK IIはオープン価格(メーカー希望価格 税別137,600円)、発売日は2月20日となります。
大型ダイナミックとBAのハイブリッド形式は従来通りですが、ポート(ベント穴)がMASONのように二個に変更されています。またクロスオーバーの最適化、プラチナ塗装の合金をサウンドチューブに採用し、前モデルとはダイナミックドライバーと中音域BAが変更されているということで改良がなされています。

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MAVIS II

MAVIS IIはオープン価格(メーカー希望価格 税別 111,000円)、発売日はMAVERICK IIと同じ2月20日です。
前モデルに比較してクロスオーバーの最適化、プラチナ塗装の合金をサウンドチューブに採用しています。すでにMAVISは生産終了しましたので後継機となります。

音は試聴機が届いたばかりなので少し聴いただけですが、特にMAVERICK IIは前よりも音質がより良く明瞭感が増しているように思います。相変わらず低音のパンチもよく、名器の改良版という期待に応えたレベルが高い音です。MAVIS IIは少し控えめで落ち着いた感じなところは前に似ているようにも思います。この両者は好みによって切り分けができると思います。


またこちらはすでに発表されていますが、カスタムモデルのMASON IIも届きました。

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MASON II

これは12基ものドライバーを搭載しています。全てBAドライバーですが、中音域の向上のためにオープンBAドライバーをミッドレンジに採用し、エアフローを向上させるためにオールBAでありながらフェイスプレートにポート(ベント)が空いているのが特徴です。これはADELやAPEXとも違うアプローチのようです。

MASON IIはオープンBAとエアフローの改良の効果か、いままで聴いたことがないような個性的な空間表現というか音空間の余裕が感じられます。また音色も自然ですね。音に独自性があり、かなり優れたカスタムです。
またカスタムという点でいうとUMはシェルつくりが上手です。シェルも綺麗ですが、ぴったりとしたフィット感が絶妙です。
また詳しいレビューは使ってから書きます。

これらは今週末に中野サンプラザで開催されるフジヤエービック主催の「ポタ妍」に出展されます。
どうぞミックスウェーブのブース(15F奥のアクア)に行ってぜひ進化したUMのモデルを自分の耳で試してみてください。
posted by ささき at 16:02 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月14日

LINNのMQA批判

LINNがサイトでMQAの批判をしています。書いたのはJim CollinsonというLINNのデジタルマーケット担当(兼ウエブデザイナー)です。"MQA is Bad For Music"という過激なタイトルが目を引きます。
https://www.linn.co.uk/blog/mqa-is-bad-for-music

MQAではほんとうに音質が上がっているのか、本当にロスレスか、など技術的な批判が多いのですが、ここでは音楽業界的なビジネスモデルとしての立場から批判している点が興味深いところです。
具体的に言うと音楽のサプライチェーンの一個所ではなく、全域にわたってかせげるようなエコシステムを構築しようとしているということがまずあります。たとば録音エンジニアリングの時点でもMQAに金が入り、ストリーミングプロバイダーでもMQAに金が入り、オーディオ機材でもMQAに金が入る、などなど。
またMQAはDRMないっていうけど、それは視点の違いで実質はMQAデコーダがDRMみたいなものではないかとか、この動きが売れ線の古い音楽により集中して新しい音楽への投資を怠ることになるのではないかとも言ってます。MQAで付加価値を付けるというのが、いわゆるリマスター再発豪華CD3枚組、などという感じでしょうか。
実のところはMQAがオープンではないという点が問題で、かつてのAppleロスレスとかSACDなどのように思えるということのようです。
LINNは総帥ティーフェンブルンがAppleロスレスのコメントしたり、DSD批判したりしてますね。LINNはオープンフォーマットへのこだわりが強いとも言えます。
http://vaiopocket.seesaa.net/s/article/235601629.html
ある意味ではLINN/(中小レーベルの)LINNレコーズとMeridian/(メジャーの)Warnerという対立構図が透けて見えていることも言えるかもしれません。

私もけっしてMQAに否定的ではありません。たとえばAK380でTIDALを使っているとやはりAstell & kernに次はMQA対応してほしいと思います。
しかしMQAをハイレゾPCMとかDSDのようなものとしてとらえるのは分かりやすいけど危険であるようには思いますね。ユーザーとしてはMQAのストリーミングは良いと思うけど、MQAのダウンロードには手を出したくないというところもあるかもしれません。

マーケット面からMQAに興味ある方はご一読してはいかがでしょうか。
posted by ささき at 21:39 | TrackBack(0) | ○ PCオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月13日

Erato Audioの新しい完全ワイヤレス、Muse 5とRio 3のレビュー

Apollo 7のErato Audioからクラウドファンディング(indieGoGo)にてMuse 5とRio 3という新しい完全ワイヤレスイヤフォンが発売されました。Muse 5については国内導入されるようです。Eratoは台湾系のオーディオメーカーでnuForceとも関連があります。

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Muse 5

Muse 5はApolloの兄弟ともいえるもので、小口径ドライバーを採用しています。ただし独自の特徴があり、イヤチップのほかに独自の装着性をよくする外耳用のスリープが採用され、3Dサウンドとして音場を広げる回路を内蔵しています。チャージャーもついていますがコストダウンされた感じで、Apolloよりも低価格です。

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Rio 3

Rio 3は大口径ドライバー採用です。耳フックが付いているのでスポーツモデルに見えますが、音質もかなり良いです。Museより低コストでチャージャーがついていません。大柄でボタンも片側3つついています。

以下はiPhone 7 Plusで聴いています。

* ドライバー

Muse 5のドライバーは5.5mmの小口径ダイナミックドライバーを採用しています。Rio 3のドライバーは14.2mmの大口径ダイナミックドライバーを採用しています。
この違いはそのまま音質に現れてきます。最近ShureやSennheiserが小口径ダイナミックを採用しているように、大きいから良いとも限りません。ただし大きいドライバーにはそれなりの良さがあります。(後述)
両者は音質の差というよりも音の個性の差が大きいと感じます。

* スマホとの接続、左右ユニット接続

スマートフォンとの接続はBluetoothを採用、左右ユニット間の通信方式は明記がありませんが通常のBluetoothだと思います。

Muse5の場合、左右の音切れはかなり少なく優秀です。一日使っていて数回あるかないかというレベルです。最近は完全ワイヤレスも増えてきて、左右音切れを防止するためにNFMIを採用するモデルも増えてきましたが、BTでもこのくらいのレベルになると十分であるようには思います。
音切れ確認テストとして、ためしに両手で両耳を覆うと左(親機)は切れませんが、右の子機は切れます。iPhoneをポケットに入れていても親機との接続は切れません。電車の中のようにWiFiの濃い環境でも特に問題ありません。
ただし、たまに音が切れたまましばらく戻らないことがありますが、リスタートすると直りますのでおそらく電波的なものではなくソフトウエアの問題だと思います。

Rio3は左右の音切れはややあります。ただしEarinやW800BTよりはずっと少なくて、Aria Oneと同等かやや良いくらいです。なぜMuse 5と違うのか分かりませんがファームウエアは違うところに出しているのかもしれません。

両方ともペアリングは同じで、まず書かれた手順により左右をペアリングします。そのあとでいったん電源切って親機である左をスマートフォンとペアリングします。そしてふたたび右を立ち上げて左右を接続します。このときに音声ガイドがあり、左右接続の時は"True Wireless connected"、スマートフォンとつながったときは"Phone connected"としゃべります。
この辺はやや煩雑で、AirPodsとは差が出るかもしれません。

両方とも日本語マニュアルがあります(クラウドファンディングモデルでも)。ただしやや分かりにくいです。

* 対応CODEC

Muse 5、RIO 3ともにAptX,AAC,SBCに対応しています。またRio3ではどのコーデックで受信しているかの確認がLEDでできます。これは珍しいですね。

* チャージングステーション

Muse 5はApollo 7 同様にチャージャーがついています。ただしApolloの金属製のチャージャーに比べるとプラスチックでやや安くなっています。これは全体的なコストダウン(Apolloの約半額)を考えると仕方ないでしょう。

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Muse 5チャージャーケース

実用的にはあまり問題ありませんが、独特のイヤチップのおかげでややはめ込みにくくなっています。ラフにはめ込んで軽く左右にひねると入りやすくなります。ユニットに赤いランプがつくと充電&電源オフとなります。完全ワイヤレスでありがちな、片側だけの充電もこのランプで防止できます。Muse 5はApolloよりも長く4時間持ちます(実測)。

Rio 3はチャージャーがなく、その分長く6時間電池が使えます。充電は各ユニットごとにマイクロUSBの口があるのでそれで充電します。同梱で二股のUSBケーブルがついてきます。


* ユニット側での操作

Muse 5はワンボタンでApollo 7と同様な操作ができます。ボタンが大きくなったのでやや操作感は向上しています。
Rio 3は3つの独立したボタンがあり、多様な機能がありますが、指探りで引っかかりがないのでどのボタン触ってるかがわかりにくいのが難点です。デザイン性はともかく、独立のポッチにした方がよかったと思いますね。
いずれにせよどちらも再生のポーズは簡単なので、ちょっと音楽を止めて外の音を聴きたいと言う時には役に立ちます。

こうしたBTで左右独立タイプの場合は子機側に操作系があると子機側を手で覆ってしまい途切れることがあるので、操作系は親機側においたほうがよいと思います。NFMIだともっと柔軟性があるかもしれません。

* 通話機能

Muse 5もRio 3もマイク内蔵で通話が可能です。またSiriなどの操作にも使用できます。

* 外観と使用感

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Muse 5

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Rio 3

両方とも箱・パッケージはよくできています。パッケージデザインは共通です。Rio 3にはチャージャーケースがないのでジップポーチがついています。

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Muse 5

Muse 5の大きな特徴はフィットスリープという外耳用のスリープがついていて、セミカスタムのようにフィットの適用範囲が大きいということです。これはいままでのイヤフォンにはなかった特徴です。つまり従来通りのシリコンイヤチップのS/M/L、フィットスリープのS/M/Lの3x3の組み合わせでフィットできることになります。

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Muse 5のイヤチップとフィットスリーブ

このフィットスリープは実際かなり有効です。特に外耳のフィットスリープは向きが重要なので、少し回転させながらポイントを探すと良いと思います。装着感はすべてのユニバーサルの中でもかなり上位と言えます。

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Rio 3

RIO 3はやや大柄でフックにかけるタイプのためにやや装着に違和感はあります。耳掛けは柔軟で痛さはあまりありません。イヤチップは普通のIEMのようにラバーシリコンのイヤチップを使います。
Rio 3は装着性、遮音性に関しては標準的というくらいです。

* レイテンシー

Muse 5はHuluで映画を見るときはまあ悪くない程度だと思います。ゲームではちょっと使えないですね。Rio 3はもう少し遅れます。ちょっと映画でもつらいかもしれません。ただどちらもW800BTよりはかなり良いです。

* 音質

Muse 5の音質はかなり上質です。Apollo同等かそれ以上で私が聞いた中では完全ワイヤレスでいまのところ一番音が良いですね。
だいたいApollo 7と同じような音ですが、遮音性がより高いのと3D機能(後述)があるので実質はMuse 5の方がよいと思います。
シャープで歯切れが良く、スピードがあってノリが良い感じです。ベースの打撃感が鋭くパンチがあります。低音の量はほどほどですが深みが感じられます。全体にわりとワイドレンジ感もあります。ダイナミックだからはじめ音は甘いので、最低3-4時間はエージングして聞いた方が良いですね。

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Muse 5

Muse5の売りの一つの3D機能ですが、標準で聴く分にはわりと自然で常用できます。感じとしてはサラウンドというよりは上質なクロスフィードだと思います。
メールによる製品説明によると、右側ユニットに仮想的に左側の音が聞こえるように、という説明なのでDSPを使用して左右チャンネルを混ぜるような仕組みであり、やはりクロスフィードの一種と言えると思います。ただこの仕組みにHead Related Transfer Function (HRTF)というノンリニアで周波数に応じた仕組みを採用しているところがみそのようです。

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Rio 3

Rio 3も音質はかなり優れています。Muse 5とくらべると第一印象はRio3の方が音がいいかもとも思います。まあまあクリアというところですが、迫力がかなりあってパワフル。スケール感もあります。さすが大口径でダイアフラムでかい(15mm)だけありますね。低域がイヤフォン離れして、ヘッドホンみたいな余裕のある音が出ます。
なめらかで、思ったより低音出っ張ってる感はなくて、くらべるとAria Oneの方がドンシャリっぽい感じです。低音出るっていうよりも、迫力があってスケール感もあると言えます。また素直できれいな音色も良いです。

ただしよく聴きこむと、ワイドレンジ感とか音の細かさはMuse5やApolloの方が良いと思います。くらべてみるとMuse5の方が端正な音ではあります。どっちかというとオーディオファイル向けですね。ただしぱっと聞きはRio3が良いと言う人も多いでしょう。Rio3はより一般向けで、ロック系はRio3の方が好ましいと思います。
いずれにせよ小口径と大口径のダイナミックドライバー競演というか、それぞれのよいところがうまく生かされているのはEratoさすがだと思います。

* まとめ

簡単にまとめると、Muse 5は端的に完全ワイヤレスで私が見たなかで一番良いです。欠点も少なく、音質も良いですね。電池も十分持ちます。ただし全体にApollo7よりは低コストにした感があってチープではあります。またチャージャーの収納性と取り出してすぐ電源オンに関してはEarinの方がよいですね。それとペアリングはなんとかしてほしいところ。

Rio3は音質が独特で高得点ですが、操作性が良くないとか左右音切れがややあるなど欠点もあります。まずMuse 5を買って、お金に余裕があれば違う音質を楽しむためにRio 3も買うのがお勧めです。(わたしはRio3は70$くらいだったので)
posted by ささき at 21:16 | TrackBack(0) | __→ 完全ワイヤレスイヤフォン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする