この辺で比較試聴をしたほうが分かりやすいと思いますので、簡単にこの3つのポータブルアンプを比べて見ました。
XinのSuperMicro-3と
サミュエルズのSR-71と
エゴシスのDrHeadです。
構成はiPod(4G/20GB)->minidock/SilverDragon->アンプ->ATH-ES7とHD25(Senn V2)です。
まずおおまかに言うと、SR-71はフラットで端正、SuperMicro-3はダイナミックです。やはりSR-71とSuperMicro-3の能力差はありますが、見かけの差から想像するほどではないと思います。ただしDrHeadはこの二者からは格下に感じられます。
音はSR-71がニュートラルでSuperMicro-3は少し温調に感じられます。
次に細かく言うと、帯域の上下の伸びはSuperMicro-3もいいですが、一番上下が伸びるのはやはりSR-71です。低域はより深く沈み、高域はより突き抜けるように伸びるということです。音場もダイナミックレンジも広いSR-71と比べてしまうとSuperMicro3はややつまっていますがダイナミックさはSuperMicro-3の方があり、あまりこじんまりとしているという感じはありません。
ただ端正なSR-71に比べるとSuperMicro-3は全体にやや荒っぽく感じます。低音はSR-71の方がよく締まっていてコントロールしている感じがしますが、SuperMicro-3の方がやや荒削りながらパンチがあります。対してSR-71はフラットで前に出るということはありません。SR-71はあるだけきちんと重低音が出るという感じです。DrHeadは低域が沈まないことに加えて、低音が膨らんだ感じがします。またDrHeadは高い方がややきつい傾向がありますが、場合によってはよいかなとも思う程度です。
SN感はSR-71が大きくリードして静かです。また音像もしっかりしていてほしい形がきちんと出ている感じです。SuperMicro-3はやはり少しヒスノイズが聞こえますし、全体に音の抜けのよさがいまひとつです。ただしSuperMicro-3の音像ははっきりしています。
DrHeadはさらに全体にベールが何枚かかぶさった感じです。また複雑なパートで音が混濁する感じがあります。DrHeadは音像もはっきりしませんが、iPodの内蔵アンプよりはきちんとしています。
SuperMicro-3のスピード感はほんとにたいしたもので、かなり良いと思われるSR-71の同等以上だと思います。DrHeadはかなり遅くもったりと感じます。
音の広がりはポップオペラ系の電子的な効果音のミックスとオーケストラを何枚か聴きました。
DrHeadは真ん中方向に集まってしまう感じですが、SuperMicro-3に換えるとぱっと視界が広がり、SR-71に換えるとさらに空間一杯に音がいきわたる感じになります。
ただ楽器の定位に関してはMicro-3もかなりはっきりとしていて、Xin博士言うところの"-3"チャンネルアーキテクチャが利いているような気がします。
解像力を見るにはまずセイゲン・オノの録音の良いライブレコーディングを聴いてみました。これの冒頭のライブが始まる前の静かな店内での客のひそひそ話やナイフ・フォークのかちかちいう音がどれだけ聞こえるか、という点でチェックします。
これもSR-71がやはり一番でかなり細かい音とそれに付随するかすかな物音も聞こえてきて情報量はかなりのものです。クリアな背景とあいまって臨場感が豊かになります。DrHeadは大まかな音は拾うという感じですね。その周りのこまごました音がする感じは低くて埋もれてしまいます。SuperMicro-3はSR-71にかなり肉迫している感じはしますが、細かい音をはっきり描くというところが少し劣ります。
たとえばアコースティック楽器のピックでひっかいたり叩いたりする音の生々しさはSR-71が群を抜いています。SuperMicro-3は解像しますが生々しいまでにはいたりません、DrHeadはまずスピードが遅いのでこうした音はだれて聴こえます。
最後にたとえて言うと、SR-71は観客と一定の距離を保って技巧を駆使しながらもとても冷静にプロフェッショナルな演奏をする「聴かせるタイプ」のミュージシャン。
SuperMicro-3はSR-71ほどベテランではないけど基礎はちゃんとできていて、ときには観客にぐっと近寄ったり大げさなパフォーマンスをしながら観客を楽しませるタイプのライブ型ミュージシャン。
DrHeadはアマチュアのちょっとうまい人でステージ慣れも今ひとつ、という感じです。
音質的にはやはりバランスがよく据え置きにも通用するようなハイレベルのSR-71がすばらしいですが、ポータブルにおいてはSuperMicro-3の十分な性能を備えたダイナミックさは聴いていて魅力的です。DrHeadは全体にクラス落ちしますが、パワーはあるのでER-4SなどiPodが単体では苦手とするようなものと組み合わせるのが良いと思います。
サイズを考慮するとSuperMicro-3の性能は驚きですが、小ささゆえの限界もありそうです。Xin氏のアンプの実力を知るにはやはりSuperMacro-3 V6と比べてあげないといけないのでしょう。