http://www.audio-gd.com/Pro/Headphoneamp/NFB11.32/NFB11.32EN.htm

Audio-gdはKingwa率いる中国のオーディオメーカーでかなり広範な製品を開発しています。6moonsなんかでもよく取り上げられますが、マニアック系のオーディオファイルには洋の東西・ヘッドフォン/スピーカーを問わず知られているメーカーです。特徴としてACSSと呼ばれるDACからの電流出力での受け渡しやノンフィードバック(NFB)などがありますが、この辺は以前書いたNFB10ESの記事をご覧ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/171562949.html
- NFB11.32の特徴について
* ES9018搭載で安いこと
NFB11.32のポイントはESSの高級DACであるES9018をDACチップとして搭載して、価格が安いということです。買ったときはイントロ価格で$299でした。(日本にはプラス送料がかかる)
NFB11.32は一体型のDAC+ヘッドフォンアンプという考え方ですので、DACを別に単体使用することができます。出力はRCA端子があります。その場合は固定出力と可変出力を正面スイッチで選択できます。
デジタル入力はSPDIFと光デジタル入力も可能です。
* ES9018とUSBの相性を向上させたこと
上のNFB10ESの記事にもありますが、Audio-gdにおいてES9018とUSBの相性というのはずっと課題でした。初代のNFB11も同じ課題を抱えていて、よりUSBに相性の良いWM8741を使用したNFB12が変わって発売されたりしました。
その問題を新しいUSBコントローラ(USB32)を用いて解決したのがこのNFB11.32です。これはUSBオーディオクラス2に対応していて、Macではドライバーなしで使用ができ、Windowsではドライバーのインストールが必須です。MacでAudioMidiを開けると32bitに対応していることが分かります。対応サンプリングレートは192kHzまでです。
* DAC側ボリューム
箱には謎のチップが同梱されていたのですが、このチップを差し替えることでDAC側ボリュームを使えるようになるようです。(DAC側ボリュームはDragonflyの項参照)
NFB11.32のドライバーをインストールするとWindowsではAudio-gd Deckというプログラムもインストールされます。このAudio-gd Deckを使うことでDAC側ボリュームを調整するようです。この辺はそのうちホームページにアップするとのこと。
これはESS DACチップの機能を使うのか、USB32でやるかはわかりません。

一般にデジタルボリュームとアナログボリュームはアナログボリュームの方が良いのですが、それはボリューム自体の品質が高い高価なオーディオ機器の場合です。NFB11.32のように低価格機の場合はデジタルボリュームとアナログボリュームは天秤にかけられることになるのかもしれません。
- 接続と使い方
とてもコンパクトなDAC/ヘッドフォンアンプでNFB10ESのでかさ・重さに閉口していた人には良いです。筺体の質感もなかなか良いですね。正面のスイッチは出力切り替え、入力切り替えとゲイン切り替えです。背面に電源スイッチがあります。
出力切り替えではヘッドフォンとDACの切り替え、そしてDACとして固定出力と可変出力が選べます。


Mac10.6とWindows7で試してみました。Macではなんの問題もなくドライバーなしで動作します。Windowsでは機器を接続した状態でドライバーをインストールしてから使います。Win7でははじめ数分に一度再生ソフトが停止するという現象があったのですが、ポートを背面から前面に変えてみたところこれはなくなりました。背面USBバスのなにかとあたっていたかもしれません。これは環境の問題なのでドライバーの問題とは一概に言えませんので他の人の環境では起きないと思います。
以前の製品で懸案だったUSB入力の安定性ですが、実際に試してみたMacでもWindowsでもかなりスムーズで安定しています。再生中はもちろん、曲の切り替えでもノイズ等はありません。
- 音質
たいしてバーンインしてませんがそれでもかなり高い性能を感じます。試聴にはまずHD800を使いました。
はじめに感じるのは高い透明感です。そして音の細かさもかなり高いレベルにあります。この辺は高いSNと解像力を持つES9018の性能を存分に引き出しているという感がありますね。
またHD800を十分にドライブして音の制動力はかなり高いものがあります。高域の精細さ、ヴォーカルの正しさも良いですね。音はシャープで引き締まっていてタイトです。硬さはあるかもしれませんが、痛いとか刺さるということはないと思います。性格的にはニュートラル・フラットな音です。ただし適度な音の近さがあって、あまり分析的という客観的すぎることもないのが良いところかもしれません。
ヘッドフォンを変えてみると、平面型のHE500とかLCD2はゲインHiで音量自体はとれますが、ちょっと重いと言うかいわゆるベールかぶっている感があります。やはり平面型はトロイダルトランスがどーんと鎮座しているような高出力タイプがよいかもしれません。
また分析的といわれるESSのDACですがGrado HF-2使うとそれを吹き飛ばすようなノリの良さも楽しめます。スピードと歯切れが良いからでしょうかね。
ただやはりNFB11.32/ES9018の魅力を引き出すのは端正かつ精緻なHD800かなと思います。ベイヤーT1もあいそうですが、持っていないので確認はできません。
絶対的な音の性能はNFB10の方が上かもしれませんが、パワフルなDACとパワフルなアンプをくっつけただけという感のNFB10に比べると、NFB11.32はDACとアンプがシームレスに感じられ、完成度も高いと思います。
DX100もそうですが、これを聴くとES9018の良さっていうのは音の細かさを積み重ねて音楽の高い表現力としている点にあるというのがよくわかりますね。そういう意味ではヘッドフォン向けのDACと言えるかもしれません。
ちなみに使用しているとそれなりに熱くなります。DAC単体としての音はまた別記事ネタにとっておきます。
- 買い方
Audio-gdのサイトから通販しますがカートシステムはないので、直接Audio-gdにメールして見積もりをもらってからPaypalで支払うという流れになります。
http://www.audio-gd.com/Pro/Headphoneamp/NFB11.32/NFB11.32EN.htm
$299の価格はイントロで30-45台限定ということだったのですが、9/8現在でまだ$299って書いてます。
またTXCOアップグレードというオプションがありますのでアップグレードしたい人はそのむねを見積もりの際に添えるとよいと思います。(わたしは取っていません)
- まとめ
コンパクトで置き場にも困らず、音質は高く、価格は安い、とよくまとまっています。
コストパフォーマンスにこだわりたいビギナーから、コンパクトで音が良い機器がほしいベテランまで広く要求にこたえてくれると思います。