ボリュームコントロールはデジタル機器でもアナログ機器でもキーポイントです。NFB11.32の記事でデジタルボリュームとアナログボリュームの得失について触れたのですが、実際はどうなのかということをSaberDACチップのESS Technologyが昨年の10月にRMAFで行ったプレゼンテーションの資料から見てみます。
http://www.esstech.com/PDF/digital-vs-analog-volume-control.pdf
こちらはESSのキーパーソンのひとりMartin Mallinsonが行っている上記セミナーの動画です。
プレゼンテーションの図を見るとわかりやすいのですが、デジタルボリュームが16bitの場合にはボリュームを下げると信号が下がるのに対してノイズレベルは下がりません。しかしアナログボリュームの場合にはボリュームを下げると信号が下がるとともにノイズも減少します。つまりアナログボリュームの優位点がみて取れます。
しかしデジタルボリュームが32bitの場合(ESSのDAC内蔵ボリュームを指していると思います)にはアナログボリュームのように信号が下がるとともにノイズも減少します。
これをビットレベルでみると以下のようになります。
16bitのデータ(30,003)を16bit幅のデジタルボリュームで-35dB変えたとすると、次のように誤差がある結果となります。16bitのデータを16bit幅で計算しても冗長部がないので余りが吸収できないというわけです。
0010010100010000 = 30,003
↓
0000001000010110 = 534 (本来は533.5372)
ただし下記のように16bitのデータを32bit幅のデジタルボリュームに(左詰めで)入れたとすると同じ-35dB減少させたとしても下記のように誤差がなくなります。
(表現形式は32bit整数ではなく固定小数点を使用していますね)
0111010100110011.0000000000000000 = 30,003
↓
0000001000010110.1000100110000100 = 533.5372
つまり余剰ビット幅(冗長分)の16bitを余りの余裕として吸収できます。
ESSは「アナログボリュームがDAC自体よりも低いノイズフロアを持っていれば、DAC内部のデジタルボリュームを使用するよりも優れている」と結論付けています。ただしESS Sabre DACのノイズフロアの-135dBより低ければだが、と付け加えて。
たとえばNFB11.32の例で言うとDACにアナログボリュームがついていますが、やはり低価格製品ですのでそれほどボリューム自体の品質には期待できないかもしれません(測定したわけではないですが)。そこでデジタルボリュームとのトレードオフとなるでしょう。ただNFB11.32の場合にはデジタルボリュームを生かしてもアナログボリュームはカットできないでしょうからもっぱら利便性の問題にはなります。
ちなみにこれらでESSが念頭に置いているのはPC側ボリュームではなく、DAC側ボリュームです。
DAC側ボリュームについては下記のDragonflyの項を参照ください。NFB11.32ではAudio-gd DeckというソフトウエアでPCからコントロールします。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/278372379.html
Music TO GO!
2012年09月12日
2012年06月12日
OraStream、adapt(適応)型ストリーミングとスケーラブル・ロスレス圧縮
AudioStreamに面白いストリーミングサービスの記事が載っていました。
A Lossless Music Locker and a Q&A with OraStream
OraStreamのクライアントアプリ、Digital LP
このOraStreamというミュージックストリーミングサービスです。これはユーザーからの音源をクラウドにアップロードしてそこからストリーミングできるという、いわゆるAmazonみたいなロッカー型のストリーミングサービスです。
OraStreamの売りは現在ではいいとこ300kbpsのストリーミングサービスをロスレスCD品質を超える1000-2000kbpsで運用するというもので、そのキー技術はadapt(適応)型ストリーミングとスケーラブル・ロスレス圧縮です。(将来的には192kHz/24まで考えているよう)
adaptive(適応)ストリーミング型はつまりストリーミングを受けるクライアント側の再生環境に合わせてビットレートを変えるというもので、受け手の再生環境(iPhoneか、PCでハイレゾ可能か)とかネットワークの帯域幅などに応じて、送り手(サーバー)が最適なビットレートで送るというものです。
これは前にAppleが作っているのではないかとかニールヤングが独自にやっているのではないかなどのうわさがあったのと同じものですね。
運用のワークフローとしては、ユーザーはWAVかFLACでアップロードしますが、それをサーバーではMPEG4-SLSというフォーマットに変換します。このMPEG4-SLSというのはSLS(スケーラブル・ロスレス)というもので、非可逆圧縮方式であるAACとそのロスレスとの差分を0.4kbps単位でレイヤー(層化)しているとのこと。下記にMPEG4-SLSの解説があります。少しでもロスがあったらロスレスっていうか、という話もありますがここではニアロスレスという言葉が使われていますね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/MPEG-4_SLS
OraStreamではリアルタイムでネットワーク負荷をモニターしてこの段階化差分をストリーミングします。つまりユーザーの環境に適用するのでAdaptive(適用)ストリーミングというわけです。OraStreamingではこの調整があまり極端にならないようにスムージングしているとのこと(つまり80kbpsの次のフレームが急に800kbpsになったりしない)。現在のOraStreamではこれを64kbpsから1200kbpsまで動的に調整するそうです。またスマートフォンなどにおいてはユーザーのデータプランに影響しないようにビットレートの上限値設定ができます(下記参照)。
前に書いたようにWavPackフォーマットもロッシーとロスレスの差分がとれますが、このように積層化(段階化)しているのではなく、差分は一つ(ロッシーとロスレスとの差分)だと思います。MPEG4-SLSでは段階的に積層した差分を持つことでオーディオのミルフィーユみたいになっているんでしょう。
7月には運用開始するようです。料金プランはストレージと速度に応じて無料から年$240までいくつか用意されています。
当然法的なところが気になる点ですが、OraStream自体は中身にたいして責任を負わないが、ロッカーを貸すだけというスタンスのようです。これはこの記事のコメント欄まで読むとより明確に書かれているのですが、このサービスはもともと個人用ではなくミュージシャンか音楽プロデューサー向けと位置付けているということです。それで価格もやや高めだそう。(もちろん個人が違法アップロードしたらサービス停止するとのこと)
* OraStream Digital LPアプリ
受け手側はPCならばJAVAを使用したウエブか、iPhonesなどのアプリを想定しているようです。こちらの記事でクライアントであるOraStream DLP app(iOSアプリ)が紹介されています。
OraStream Digital Long-Play (DLP) App
これはいま試用版がAppストアからダウンロードできます。実際に試してみました。
OraStream Digital Long-PlayのAppストアページ
iTunesリンクはこちらです。
http://itunes.apple.com/jp/app/orastream-dlp/id447633767?mt=8
OraStream Digital LPのアルバム選択画面。Concordレーベルからサンプルが提供されています。
OraStreamの設定画面、キャッシュサイズやビットレート上限が設定できます。
再生コントロール画面、アップロードされているのは44/16のデータであることがわかります。
ライナーノートとアルバムアート画面もオプションで表示できます
ビットレートが変わるのは確認できませんでしたが、実際に試してみると音質もなかなか悪くないです。
*6/13追記 バージョンアップされてかなり動的に変化するのが分かるようになりました。
いまでも自分の作った曲をYoutubeにアップして有名になる人がたくさんいますが、OraStreamを使用すると高品質にそれを配信できます。さきのニールヤングとかAppleが作ろうとしているというのも、MPEG4-SLSみたいなものなんでしょうか。なんとなくこのタイプも仕組みが見えてきましたね。
いままではAACやMP3みたいに非可逆(ロッシー)圧縮か、FLACやALACみたいに可逆(ロスレス)圧縮かのふたつしかなかったんですが、このスケーラブル・ロスレス(段階化ロスレス圧縮)は第3の選択肢となるでしょうか。もう一つのアダプティブ・ストリーミングという言葉ももしかするとこの先いろいろと聞く機会が多くなるかもしれません。
2011年06月12日
USB DAC 192kHz対応技術のまとめ (2011/6月版)
以前USB DACと192k対応、クラス2などについてまとめた記事を書きました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/163361655.html
しかしその後いろいろと知見を深めていくうちに、この理解に修正が必要なことが分かってきました。そこで最近洗いなおして現時点で判明していることをまとめてみます。
推測もありますが、多くは直接開発元などに確かめています。このためMSBとかdCSみたいに私があまり詳しくないところのものは入っていません。ですから実際はもっとパターンがあるかもしれません。
1. USB DAC/USB DDCの192k対応方式の違いのまとめ
hiFace、Musilandなど
ドライバ: カスタムドライバ
174k/192k達成のためのドライバのインストール: WinもMacも必要
転送方式: USB Audio device classではないBulk転送
USBコントローラ: EZ-USBなどによるHigh Speed
備考: Macプレーヤーソフトのインテジャーモードは使えないものが多い
Zodiac +
ドライバ: 標準(クラス)ドライバ USB Audio Class1 (UH1モード)
174k/192k達成のためのドライバのインストール: WinもMacも不要
転送方式: USB Audio device classのSynchronous
USBコントローラ: 独自設計によるClass1でのHigh Speed
Audiophilleo1&2
ドライバ: 標準ドライバ USB Audio Class1
174k/192k達成のためのドライバのインストール: Mac(10.5以降?)不要、Win Vista/7必要、XP不要
転送方式: USB Audio device classのASynchronous
USBコントローラ: RISCプロセッサによる独自実装、RISCは信号処理も担当する
Wavelink、QB9 192、m903、HD7A 192など
ドライバ: 標準ドライバ USB Audio Class2
174k/192k達成のためのドライバのインストール: Mac(10.6.4以降)不要、Win必要
転送方式: USB Audio device classのASynchronous
USBコントローラ: XMOS、HighSpeed
備考: XMOSについては厳密に言うとさらにベンダーごとに実装の違いがあります。
たとえばゴードン系(Wavelink, QB-9 192, m903)とHD-7A 192も違います。
Zodiac Gold
ドライバ: 標準ドライバ USB Audio Class2 (UH2モード)
174k/192k達成のためのドライバのインストール: WinもMacも不要
358k/384k達成のためのドライバのインストール: Mac(10.6.4以降)不要、他は不可
転送方式: USB Audio device classのSynchronous
USBコントローラ: 独自設計、High Speed(384k対応可)
2. 考察 - OSのHigh Speed転送の対応状況
上の表を理解するポイントの一つは標準規格であるUSB Audio Device Class2.0に対応していなくても、OSの方ではメーカー(Apple/MS)の独自実装でClass1のままでHigh Speed転送が出来るようになっているということです。たとえばWinodws7のUSBクラスドライバーはClass2の対応はしていませんが、Class1でHighSpeed対応しているというのが現状のようです。いわば暫定対応です。
Macは10.6.4以降USB Audio Device Class2.0の対応を正式にしています。その反面でWin同様にMacでもClass1でのHigh Speed転送ができるようです。つまりMacは正式対応も暫定対応も両方されています。
このようにHighSpeed転送はOSの標準ドライバーでは正式でも暫定でも対応ができるので、標準ドライバーで192kHzが達成できてもそれがイコールClass2というわけではないということです。これは規格というより実装の問題で、XPで出来てVista/7では逆に出来ないというものもあるし、WindowsとMacでも細部の動作に食い違いがあるようです。このことから私もいままで標準ドライバーで192k達成できるものはClass2といっていましたが、一概にそうとはいえないと言うことです。
またこの前提はUSB Audio Class1.0 (つまりUSB 1.1のFull Speed)では96/24が上限であって、それ以上のサンプリングレートを送るときには計算上USB 2.0のHighSpeed転送が必要であると言う前提に基づいています。しかし、ここも実は裏道があるらしいということも分かってきました。とどのつまりはこの辺はOSの実装にかなり左右されるようだと言うことです。
逆に言うとこうしてメーカーごとにばらついたHighSpeed対応状況を標準化してデスクリプタにまとめたのがUSB Audio Class2.0といえるかもしれません。
3. 考察 - USBの転送制御とコントローラの問題
ここでいったん前に書いた記事に戻るのですが、192k対応を引き出すためにはUSB コントローラの制限があります。これは仮にClass1でHighSpeedを実現していても同じです。
たとえば96/24時代でよく使われたTAS1020だと対応はFull Speedまでなので、Class1だろうがClass2だろうがHigh Speedを使用するにはこれらでは対応できずに独自設計のコントローラが必要です。また、さきに書いたようにこの設計にはOSの実装が関係してきます。
つまりポイントは先のようにOSの標準ドライバーといっても、その実装はかなりまちまちであり、それを独自設計のコントローラで引き出すことで規格外の転送が可能であるというのも分かってきたところです。
そして、そのためにはコントローラ設計にも柔軟さが必要です。
ここで上の表のUSBコントローラの項を見てもらうと分かるのですが、この「独自設計のカスタムUSBコントローラー」も様々です。
本来はUSBの制御などはハードウエアの高速な論理ゲート動作などで行いそうですが、96/24ハイレゾを実現するためにTAS1020でゴードンさんなどベンダーがソフトウエアを書いて対応するようになって以来、プロセッサ+ソフトウエアという形式で転送制御をするのが一般的になってきました。
さらに192/24時代のいまではトランスピューター(トランジスタ+コンピュータ)と称されるXMOSが一般的になり、AudiophilleoではRISCでUSB制御のみならずさまざまな信号処理も担当しています。これで柔軟性と多機能化などをもたらしています。つまりはDACといえどもソフトウエア(ファームウエア)の比重が大きくなってきたということです。
XMOSという点で言うと、USBの192k技術はXMOSでそろってきたようにも思えますが独自の実装があります。これはさきのHD-7A 192のカスタムファームウエアの記事で書いた通りです。
プレーヤーソフト的に見てもインテジャーモードのようにかなりDACよりのバッファなども見据えたきわどい実装をするものも出てきたので、ファームの違いも関係してきます。Audirvanaのインテジャーモードは0.9.1からクラス2に対応していますが、当初同じXMOS採用機でもばらつきがあったのはこのあたりに関係しているようです。
たとえばインテジャーモードの対応の場合、DAC側のコントローラーがPCM270xのようにハードの固定動作チップの場合はDACベンダーで変更ができないので、PCM270xが入っていればインテジャーモードの対応はどのDACでも大丈夫だろうと推測ができます。しかしコントローラーがXMOSのようにDACベンダーが書き換え可能なソフトウエア比重の高いチップの場合は一概にXMOS搭載のA-DACがOKだったからB-DACもOKとは保障できません。ただしベンダーによってはグループ化が可能なので(たとえばゴードン系)、WavelinkがOKならQB9 192も大丈夫だろうと言う予測は可能です。そういう意味ではこうしたカテゴリー分けは必要であるといえるでしょう。
ちなみにインテジャーモード対応DACのリストはこの辺のCAリンクが便利です。
USBの転送制御をソフトで行うと言う点では昨年のキーワードとなったAsync云々というところも関係してきます。これはDAC側の高精度固定クロックが有効に使えるということでAsyncがもてはやされたんですが、クロックで知られたアンテロープ社製で高精度クロックを売りにするZodiacがクロックを生かすために必要と思われていたAsyncではなくSyncであったというのも興味深い点です。SyncはAdaptiveの元になった規格で、いまはあまり使われていないという理解でした。これも意図的にやっているようで、あえて第三の方式などと言っていました。
4. コンピューターとオーディオの世界
こうしてみただけで、コンピューターオーディオの世界は深く多様で全て理解しようとするとめまいがしてきますが、トランスポートであるパソコン(OSやプレーヤーソフト)も、DAC/DDC側のコントローラも、ソフトウエアの比重が大きくなるとそのベンダーごとの実装で挙動がおおきく左右されてしまうと言うことはいえると思います。これは実際は規格化されて同じことをやっていそうですが、見えない挙動は異なってきて、それがときに見える違いとなると言うことです。
このソフトウエアによる柔軟性の高さと、柔軟ゆえの不統一さというトレードオフが従来ハード一辺倒だったオーディオ機器にないコンピューターオーディオの特徴を端的に表しているようにも思えます。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/163361655.html
しかしその後いろいろと知見を深めていくうちに、この理解に修正が必要なことが分かってきました。そこで最近洗いなおして現時点で判明していることをまとめてみます。
推測もありますが、多くは直接開発元などに確かめています。このためMSBとかdCSみたいに私があまり詳しくないところのものは入っていません。ですから実際はもっとパターンがあるかもしれません。
1. USB DAC/USB DDCの192k対応方式の違いのまとめ
hiFace、Musilandなど
ドライバ: カスタムドライバ
174k/192k達成のためのドライバのインストール: WinもMacも必要
転送方式: USB Audio device classではないBulk転送
USBコントローラ: EZ-USBなどによるHigh Speed
備考: Macプレーヤーソフトのインテジャーモードは使えないものが多い
Zodiac +
ドライバ: 標準(クラス)ドライバ USB Audio Class1 (UH1モード)
174k/192k達成のためのドライバのインストール: WinもMacも不要
転送方式: USB Audio device classのSynchronous
USBコントローラ: 独自設計によるClass1でのHigh Speed
Audiophilleo1&2
ドライバ: 標準ドライバ USB Audio Class1
174k/192k達成のためのドライバのインストール: Mac(10.5以降?)不要、Win Vista/7必要、XP不要
転送方式: USB Audio device classのASynchronous
USBコントローラ: RISCプロセッサによる独自実装、RISCは信号処理も担当する
Wavelink、QB9 192、m903、HD7A 192など
ドライバ: 標準ドライバ USB Audio Class2
174k/192k達成のためのドライバのインストール: Mac(10.6.4以降)不要、Win必要
転送方式: USB Audio device classのASynchronous
USBコントローラ: XMOS、HighSpeed
備考: XMOSについては厳密に言うとさらにベンダーごとに実装の違いがあります。
たとえばゴードン系(Wavelink, QB-9 192, m903)とHD-7A 192も違います。
Zodiac Gold
ドライバ: 標準ドライバ USB Audio Class2 (UH2モード)
174k/192k達成のためのドライバのインストール: WinもMacも不要
358k/384k達成のためのドライバのインストール: Mac(10.6.4以降)不要、他は不可
転送方式: USB Audio device classのSynchronous
USBコントローラ: 独自設計、High Speed(384k対応可)
2. 考察 - OSのHigh Speed転送の対応状況
上の表を理解するポイントの一つは標準規格であるUSB Audio Device Class2.0に対応していなくても、OSの方ではメーカー(Apple/MS)の独自実装でClass1のままでHigh Speed転送が出来るようになっているということです。たとえばWinodws7のUSBクラスドライバーはClass2の対応はしていませんが、Class1でHighSpeed対応しているというのが現状のようです。いわば暫定対応です。
Macは10.6.4以降USB Audio Device Class2.0の対応を正式にしています。その反面でWin同様にMacでもClass1でのHigh Speed転送ができるようです。つまりMacは正式対応も暫定対応も両方されています。
このようにHighSpeed転送はOSの標準ドライバーでは正式でも暫定でも対応ができるので、標準ドライバーで192kHzが達成できてもそれがイコールClass2というわけではないということです。これは規格というより実装の問題で、XPで出来てVista/7では逆に出来ないというものもあるし、WindowsとMacでも細部の動作に食い違いがあるようです。このことから私もいままで標準ドライバーで192k達成できるものはClass2といっていましたが、一概にそうとはいえないと言うことです。
またこの前提はUSB Audio Class1.0 (つまりUSB 1.1のFull Speed)では96/24が上限であって、それ以上のサンプリングレートを送るときには計算上USB 2.0のHighSpeed転送が必要であると言う前提に基づいています。しかし、ここも実は裏道があるらしいということも分かってきました。とどのつまりはこの辺はOSの実装にかなり左右されるようだと言うことです。
逆に言うとこうしてメーカーごとにばらついたHighSpeed対応状況を標準化してデスクリプタにまとめたのがUSB Audio Class2.0といえるかもしれません。
3. 考察 - USBの転送制御とコントローラの問題
ここでいったん前に書いた記事に戻るのですが、192k対応を引き出すためにはUSB コントローラの制限があります。これは仮にClass1でHighSpeedを実現していても同じです。
たとえば96/24時代でよく使われたTAS1020だと対応はFull Speedまでなので、Class1だろうがClass2だろうがHigh Speedを使用するにはこれらでは対応できずに独自設計のコントローラが必要です。また、さきに書いたようにこの設計にはOSの実装が関係してきます。
つまりポイントは先のようにOSの標準ドライバーといっても、その実装はかなりまちまちであり、それを独自設計のコントローラで引き出すことで規格外の転送が可能であるというのも分かってきたところです。
そして、そのためにはコントローラ設計にも柔軟さが必要です。
ここで上の表のUSBコントローラの項を見てもらうと分かるのですが、この「独自設計のカスタムUSBコントローラー」も様々です。
本来はUSBの制御などはハードウエアの高速な論理ゲート動作などで行いそうですが、96/24ハイレゾを実現するためにTAS1020でゴードンさんなどベンダーがソフトウエアを書いて対応するようになって以来、プロセッサ+ソフトウエアという形式で転送制御をするのが一般的になってきました。
さらに192/24時代のいまではトランスピューター(トランジスタ+コンピュータ)と称されるXMOSが一般的になり、AudiophilleoではRISCでUSB制御のみならずさまざまな信号処理も担当しています。これで柔軟性と多機能化などをもたらしています。つまりはDACといえどもソフトウエア(ファームウエア)の比重が大きくなってきたということです。
XMOSという点で言うと、USBの192k技術はXMOSでそろってきたようにも思えますが独自の実装があります。これはさきのHD-7A 192のカスタムファームウエアの記事で書いた通りです。
プレーヤーソフト的に見てもインテジャーモードのようにかなりDACよりのバッファなども見据えたきわどい実装をするものも出てきたので、ファームの違いも関係してきます。Audirvanaのインテジャーモードは0.9.1からクラス2に対応していますが、当初同じXMOS採用機でもばらつきがあったのはこのあたりに関係しているようです。
たとえばインテジャーモードの対応の場合、DAC側のコントローラーがPCM270xのようにハードの固定動作チップの場合はDACベンダーで変更ができないので、PCM270xが入っていればインテジャーモードの対応はどのDACでも大丈夫だろうと推測ができます。しかしコントローラーがXMOSのようにDACベンダーが書き換え可能なソフトウエア比重の高いチップの場合は一概にXMOS搭載のA-DACがOKだったからB-DACもOKとは保障できません。ただしベンダーによってはグループ化が可能なので(たとえばゴードン系)、WavelinkがOKならQB9 192も大丈夫だろうと言う予測は可能です。そういう意味ではこうしたカテゴリー分けは必要であるといえるでしょう。
ちなみにインテジャーモード対応DACのリストはこの辺のCAリンクが便利です。
USBの転送制御をソフトで行うと言う点では昨年のキーワードとなったAsync云々というところも関係してきます。これはDAC側の高精度固定クロックが有効に使えるということでAsyncがもてはやされたんですが、クロックで知られたアンテロープ社製で高精度クロックを売りにするZodiacがクロックを生かすために必要と思われていたAsyncではなくSyncであったというのも興味深い点です。SyncはAdaptiveの元になった規格で、いまはあまり使われていないという理解でした。これも意図的にやっているようで、あえて第三の方式などと言っていました。
4. コンピューターとオーディオの世界
こうしてみただけで、コンピューターオーディオの世界は深く多様で全て理解しようとするとめまいがしてきますが、トランスポートであるパソコン(OSやプレーヤーソフト)も、DAC/DDC側のコントローラも、ソフトウエアの比重が大きくなるとそのベンダーごとの実装で挙動がおおきく左右されてしまうと言うことはいえると思います。これは実際は規格化されて同じことをやっていそうですが、見えない挙動は異なってきて、それがときに見える違いとなると言うことです。
このソフトウエアによる柔軟性の高さと、柔軟ゆえの不統一さというトレードオフが従来ハード一辺倒だったオーディオ機器にないコンピューターオーディオの特徴を端的に表しているようにも思えます。
2011年01月18日
コンピューターオーディオの開発面での進化と効率化、nSDKとXMOS
最近特にコンピューターオーディオ機材の開発ペースが早いように思えますが、それは気のせいではないというお話です。
*ネットワークオーディオ
本日のニュースによるとTIがネットワークオーディオ開発キット、nSDKというのを発表したとのこと。
こちら日本語プレスリースです。
こちら英語リリースです。
英語リリースで見ると日本語リリースに書いてあるOSとはLinuxと明確に書いています。このnSDKが対応しているTIのオーディオ用プロセッサ・DA8xファミリーというのがARMプロセッサとDSPのパッケージのようですから、つまりはDA8xを使用する(ARMベースの)組み込みLinuxをOSとしたミュージックサーバーを作るためのキットということでしょう。ここで書いているプレーヤーとはミュージックサーバーのコントロールソフトのことで、ストリーミングやストレージ上の楽曲ファイルを再生できるような機能と、管理機能、操作UI画面などの提供をさしているようです。
これにより、つまり最近CESでポンポンと出たようなDLNA対応のネットワークオーディオ対応のミュージックサーバーの開発が効率化できるということですね。さらにもっとたくさん出てくることでしょう。
ちょっと日本語リリースは訳がおかしいところがありますが、USBに関してはDA8xでサポートしているのがUSBマスストレージクラスとポータブルプレーヤー(DAP)というところから推測してもUSBに関してはホスト機能(A端子側)を持ってUSBメモリーとかポータブルプレーヤーからの再生を可能にするということのようです。(それとRobust solutionは高い堅牢性というより、高い安定性と書いた方がより分かりやすいでしょう)
これはさきに書いた"DA8x Aureus"というオーディオプロセッサ・モジュールのための拡販政策ともとれますが、似たようなのが実はUSB DACの192対応で見られます。
*192/24対応USB DAC
昨年末に少し書いたんですが、昨年予想外だったことはUSBオーディオクラス2.0の対応機種が意外と早く出て、多かったということです。これはXMOS社がUSBオーディオクラス2.0用に特化したパッケージ化されたモジュールであるXS1-L1を提供しているということが要因のひとつのようです。
http://www.xmos.com/products/development-kits/usbaudio2
XS1はUSBコントローラとして従来のFPGAのようなカスタムLSIに変わるものですが、XMOS自体は"Software Defined Silicon"(ソフトウエア定義シリコン)と別名がついているようにハードウエアではなく、小さなコンピューターのようなもののようです。http://www.atmarkit.co.jp/fsys/zunouhoudan/091zunou/xmos_cpu.html
つまり従来のハードウエアロジックでやることをソフトウエアで記述し、超高速のマルチコア並列プロセッサで処理します。言い換えるとハードでやることをソフトでやってるけど、その速度がハードなみに追いついてきたということですね。トランスピュータ(トランジスタ+コンピュータ)とも呼ばれていた一昔前の先進的な考えが、昨今のマルチコア技術の進展などで現実化したという側面もありそうです。
このソフトウエアを記述するさいにはアプリケーションを組むように高級言語(より分かりやすいということ)で記述できるというのがXMOSのポイントです。つまりASICはもとよりFPGAよりもさらに柔軟性が高く、(語弊はあるかもしれませんが)簡単に開発できるというものです。
そしてXMOS社がこのチップの応用領域を広げるためにさまざまな領域にキットを作り、そのひとつがこのUSB オーディオクラス2.0ということのようです。オーディオは比較的小ボリュームマーケットなのでASICよりFPGAが向いているように、FPGAよりもXMOSのほうがよいということなんでしょう。
最近ではXMOS WOWなんかも発表してます。
応用例は例えばこちらのOEM向けの192/24対応のUSB DDCボードのようなものです。
http://www.abc-pcb.com/?page_id=187
こちらも市場にも出てくることでしょう。
いまあるUSBオーディオクラス2.0対応の多くのUSB DAC製品の制限と機能がなぜか揃っている、つまり「Macは10.6.4以上が必要で、Win7は対応がなくThesyconかCEntranceのドライバを使う、かつAsync対応できる」という「特性」は実はこのXMOSのモジュールがもつ機能・制限を引き継いでいるというわけです。
昨年9月ころにUSBクラス2.0のまとめを書いたときはWavelinkやQB9 192をゴードングループと書きましたが、もしかするとここはXMOSグループと書くべきかもしれません。しかしすべてのメーカーが独自で一からやっているわけではなく、やはり最近出たグレースデザインのm903などはゴードンさんのXMOS用のコードを使っているようなのでグループというのは依然残るとは思います。ゴードンさんはStreamlength HSといっていますが、つまりはTAS1020のUSBオーディオクラス2版がこのXMOS XS1のコードといっても良さそうです。もちろん各々開発しているところもあるでしょう。
オーディオの改革というのはこうしたユーザーに見えないところでも着々と進んでいて、その進化のスピードが上がっているようです。
私も技術畑の人なので最近特に開発の効率化って言うのはうるさく言われるわけですが、オーディオも例外ではないということろでしょうか。こういう点でもオーディオが広い世の中の流れに組み込まれているというのが分かるのではないでしょうか。
*ネットワークオーディオ
本日のニュースによるとTIがネットワークオーディオ開発キット、nSDKというのを発表したとのこと。
こちら日本語プレスリースです。
こちら英語リリースです。
英語リリースで見ると日本語リリースに書いてあるOSとはLinuxと明確に書いています。このnSDKが対応しているTIのオーディオ用プロセッサ・DA8xファミリーというのがARMプロセッサとDSPのパッケージのようですから、つまりはDA8xを使用する(ARMベースの)組み込みLinuxをOSとしたミュージックサーバーを作るためのキットということでしょう。ここで書いているプレーヤーとはミュージックサーバーのコントロールソフトのことで、ストリーミングやストレージ上の楽曲ファイルを再生できるような機能と、管理機能、操作UI画面などの提供をさしているようです。
これにより、つまり最近CESでポンポンと出たようなDLNA対応のネットワークオーディオ対応のミュージックサーバーの開発が効率化できるということですね。さらにもっとたくさん出てくることでしょう。
ちょっと日本語リリースは訳がおかしいところがありますが、USBに関してはDA8xでサポートしているのがUSBマスストレージクラスとポータブルプレーヤー(DAP)というところから推測してもUSBに関してはホスト機能(A端子側)を持ってUSBメモリーとかポータブルプレーヤーからの再生を可能にするということのようです。(それとRobust solutionは高い堅牢性というより、高い安定性と書いた方がより分かりやすいでしょう)
これはさきに書いた"DA8x Aureus"というオーディオプロセッサ・モジュールのための拡販政策ともとれますが、似たようなのが実はUSB DACの192対応で見られます。
*192/24対応USB DAC
昨年末に少し書いたんですが、昨年予想外だったことはUSBオーディオクラス2.0の対応機種が意外と早く出て、多かったということです。これはXMOS社がUSBオーディオクラス2.0用に特化したパッケージ化されたモジュールであるXS1-L1を提供しているということが要因のひとつのようです。
http://www.xmos.com/products/development-kits/usbaudio2
XS1はUSBコントローラとして従来のFPGAのようなカスタムLSIに変わるものですが、XMOS自体は"Software Defined Silicon"(ソフトウエア定義シリコン)と別名がついているようにハードウエアではなく、小さなコンピューターのようなもののようです。http://www.atmarkit.co.jp/fsys/zunouhoudan/091zunou/xmos_cpu.html
つまり従来のハードウエアロジックでやることをソフトウエアで記述し、超高速のマルチコア並列プロセッサで処理します。言い換えるとハードでやることをソフトでやってるけど、その速度がハードなみに追いついてきたということですね。トランスピュータ(トランジスタ+コンピュータ)とも呼ばれていた一昔前の先進的な考えが、昨今のマルチコア技術の進展などで現実化したという側面もありそうです。
このソフトウエアを記述するさいにはアプリケーションを組むように高級言語(より分かりやすいということ)で記述できるというのがXMOSのポイントです。つまりASICはもとよりFPGAよりもさらに柔軟性が高く、(語弊はあるかもしれませんが)簡単に開発できるというものです。
そしてXMOS社がこのチップの応用領域を広げるためにさまざまな領域にキットを作り、そのひとつがこのUSB オーディオクラス2.0ということのようです。オーディオは比較的小ボリュームマーケットなのでASICよりFPGAが向いているように、FPGAよりもXMOSのほうがよいということなんでしょう。
最近ではXMOS WOWなんかも発表してます。
応用例は例えばこちらのOEM向けの192/24対応のUSB DDCボードのようなものです。
http://www.abc-pcb.com/?page_id=187
こちらも市場にも出てくることでしょう。
いまあるUSBオーディオクラス2.0対応の多くのUSB DAC製品の制限と機能がなぜか揃っている、つまり「Macは10.6.4以上が必要で、Win7は対応がなくThesyconかCEntranceのドライバを使う、かつAsync対応できる」という「特性」は実はこのXMOSのモジュールがもつ機能・制限を引き継いでいるというわけです。
昨年9月ころにUSBクラス2.0のまとめを書いたときはWavelinkやQB9 192をゴードングループと書きましたが、もしかするとここはXMOSグループと書くべきかもしれません。しかしすべてのメーカーが独自で一からやっているわけではなく、やはり最近出たグレースデザインのm903などはゴードンさんのXMOS用のコードを使っているようなのでグループというのは依然残るとは思います。ゴードンさんはStreamlength HSといっていますが、つまりはTAS1020のUSBオーディオクラス2版がこのXMOS XS1のコードといっても良さそうです。もちろん各々開発しているところもあるでしょう。
オーディオの改革というのはこうしたユーザーに見えないところでも着々と進んでいて、その進化のスピードが上がっているようです。
私も技術畑の人なので最近特に開発の効率化って言うのはうるさく言われるわけですが、オーディオも例外ではないということろでしょうか。こういう点でもオーディオが広い世の中の流れに組み込まれているというのが分かるのではないでしょうか。
2010年12月31日
2010年度のオーディオまとめと2011年展望
この2010年は自分としてもオーディオ業界としてもコンピューターオーディオの年でした。秋にはコンピューターオーディオのムックが3冊同時発刊されるという盛り上がりをみせ、新製品に活気付きました。
私も各オーディオ雑誌やPCオーディオムック、また単行本まで書かせてもらい、雑誌やムックと単行本のそれぞれの良さ、難しさ、など勉強になりました。
もともとコンピューターオーディオの世界はネットワークオーディオ機材であるLINN DSシリーズが火をつけたかもしれませんが、 2010年は QB9が嚆矢となった高性能USB DACが、フェーズテックHD7Aなどを中心にしてUSBのAsyncモードというキーワードとともに充実して行った年でした。
またブレークしたhiFaceをはじめUSB DDCも新たな選択肢となり、USBオーディオ系が市場を牽引して行きました。USBオーディオ用のケーブルも注目されたのも顕著な点でした。
今年のUSBオーディオの話題はもう一つはUSBオーディオクラス2.0です。うちで最新の話題として取り上げたのが7月頃ですが、今年後半は思っていた以上にUSBオーディオクラス2.0移行が加速して多数の機材が登場してきましたのに驚かされました。
これは新しいソフトウエア制御によるコントローラを使うことで開発が効率化されたということがあるようです。つまり普通のユーザーには見えない開発のところでも変革があったということですね。
そういう意味でもオーディオというのが表面的なところだけではなく、深いところからも着実に変わって行ってると思います。
それと今年は音楽再生プレーヤーソフトも豊作でした。もともと充実していたWindowsに比べると特にMacの進歩が良かったですね。昨年くらいから人気が出てきたAmarraだけではなくフリーウエアもAyreWaveやAudirvanaなど従来と一線を画するものが登場してきました。
Mac自体のシェアもiPhone人気で上がってますが、もともとオーディオに向いていると言われてたけど、再生プレーヤーの種類が少ないのがネックでしたから、ハードとソフトが揃って動くというのは良い傾向です。
iPadのUSBオーディオ対応もちょっと注目点でした。
iOS4.2で見せた音の良さ、オーディオへの適性というのは侮れません。ただ一部の機種では据え置きでもバスパワーを要求しているものがあって、4.2で供給リミットが100mAから20mAにカットされたこととあいまって、まだ大きく広がるには制約があります。
他にもiOSのオーディオへの適用というのは多様なものがあって、下記のように音楽をデータファイルではなく、アプリとして配信するという形もあります。
http://www.itmedia.co.jp/promobile/articles/1012/29/news015.html
さて来年2011年はということですが、トレンドとして見えてるのは先に書いたような今年黎明期だったUSBクラス2対応の加速化による192kHz対応の充実と、さらに384kHz対応の黎明期となるかもしれません。
どこまでDACのハイサンプリング化が続くか分かりませんが、かつてのパソコンのクロック競争とかデジカメの画素競争にも似てきたかもしれません。
ちなみにこれらを振り返って見ると下記のような結果となりました。
*CPUのクロック競争->製造プロセス細分化による発熱の壁->マルチコアなど別方面に進化の方向を変える
*デジカメの画素競争->センサーの細分化によるDレンジ不足で画質低下->手振れ補正など機能面に進化の方向を変える
オーディオに関してはまず対応ソースという問題もあるし、細分化によるジッターへの影響というのもあるかもしれません。上の両者は明らかな壁にぶつかって方向を変えてますので、どこかに何かが潜んでるんでしょう。
似たようなところでは32bit対応も出てくることでしょう。ただこれもMacのcore audioのところで書いたようにソフトウエアドメインでの壁があります。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/167849910.html
この他だとESS Sabre32チップの台頭とかDSDなんかも話題に登ってくるかもしれません。
ネットワークはどうかというと、2010年はUSBオーディオがブレークしたけれども、2011年はネットワークオーディオがブレークするだろう、と書けばもっともらしいように見えます。でもちょっと違和感も残ります。
そもそもUSBオーディオか、ネットワークオーディオか、というジャンルわけはどうなのでしょう。
例えば私のWindows7 PCではUSBオーディオクラス2のUSB DDCであるAudiophilleoを繋げて「USBオーディオ」になってるように見えますが、同時にfoobarにuPnPコンポーネントをいれて無線LANにつないでるので、iPhoneやiPadからPlugPlayerアプリでDLNA(uPnP)等価の「ネットワークオーディオ」として使えます。
またCantataのところで書いたようにUSB over IPなどを応用すると、USBで接続してもネットワーク透過でありえます。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/159069115.html
こうしてネットワークの一員としてのオーディオ機材のあり方も考えることになるでしょう。
さらに来年になるとMacでは10.7 ライオン、Win7はSP1が出ることでオーディオも左右されるかもしれません。例えばUSBオーディオクラス2の制限がOSの実装によるものならばそれが変わるかもしれないし、スノーレパードで移行期のようだったMacの64bit環境もライオンでデフォルトになれば再生ソフトも変わるかもしれません。
結局コンピューターオーディオというのは、単にトランスポートの代わりにパソコンを使うものであるというよりも、むしろコンピューターの世界とオーディオの世界の関係を見つめ直すものであるようにも思います。
それをまた考える年になることでしょう。
また、トレンドから推測はできますが、新しいものはどんなものが出てくるか分かりません。あとはCES2011が来年の幕開けです!
私も各オーディオ雑誌やPCオーディオムック、また単行本まで書かせてもらい、雑誌やムックと単行本のそれぞれの良さ、難しさ、など勉強になりました。
もともとコンピューターオーディオの世界はネットワークオーディオ機材であるLINN DSシリーズが火をつけたかもしれませんが、 2010年は QB9が嚆矢となった高性能USB DACが、フェーズテックHD7Aなどを中心にしてUSBのAsyncモードというキーワードとともに充実して行った年でした。
またブレークしたhiFaceをはじめUSB DDCも新たな選択肢となり、USBオーディオ系が市場を牽引して行きました。USBオーディオ用のケーブルも注目されたのも顕著な点でした。
今年のUSBオーディオの話題はもう一つはUSBオーディオクラス2.0です。うちで最新の話題として取り上げたのが7月頃ですが、今年後半は思っていた以上にUSBオーディオクラス2.0移行が加速して多数の機材が登場してきましたのに驚かされました。
これは新しいソフトウエア制御によるコントローラを使うことで開発が効率化されたということがあるようです。つまり普通のユーザーには見えない開発のところでも変革があったということですね。
そういう意味でもオーディオというのが表面的なところだけではなく、深いところからも着実に変わって行ってると思います。
それと今年は音楽再生プレーヤーソフトも豊作でした。もともと充実していたWindowsに比べると特にMacの進歩が良かったですね。昨年くらいから人気が出てきたAmarraだけではなくフリーウエアもAyreWaveやAudirvanaなど従来と一線を画するものが登場してきました。
Mac自体のシェアもiPhone人気で上がってますが、もともとオーディオに向いていると言われてたけど、再生プレーヤーの種類が少ないのがネックでしたから、ハードとソフトが揃って動くというのは良い傾向です。
iPadのUSBオーディオ対応もちょっと注目点でした。
iOS4.2で見せた音の良さ、オーディオへの適性というのは侮れません。ただ一部の機種では据え置きでもバスパワーを要求しているものがあって、4.2で供給リミットが100mAから20mAにカットされたこととあいまって、まだ大きく広がるには制約があります。
他にもiOSのオーディオへの適用というのは多様なものがあって、下記のように音楽をデータファイルではなく、アプリとして配信するという形もあります。
http://www.itmedia.co.jp/promobile/articles/1012/29/news015.html
さて来年2011年はということですが、トレンドとして見えてるのは先に書いたような今年黎明期だったUSBクラス2対応の加速化による192kHz対応の充実と、さらに384kHz対応の黎明期となるかもしれません。
どこまでDACのハイサンプリング化が続くか分かりませんが、かつてのパソコンのクロック競争とかデジカメの画素競争にも似てきたかもしれません。
ちなみにこれらを振り返って見ると下記のような結果となりました。
*CPUのクロック競争->製造プロセス細分化による発熱の壁->マルチコアなど別方面に進化の方向を変える
*デジカメの画素競争->センサーの細分化によるDレンジ不足で画質低下->手振れ補正など機能面に進化の方向を変える
オーディオに関してはまず対応ソースという問題もあるし、細分化によるジッターへの影響というのもあるかもしれません。上の両者は明らかな壁にぶつかって方向を変えてますので、どこかに何かが潜んでるんでしょう。
似たようなところでは32bit対応も出てくることでしょう。ただこれもMacのcore audioのところで書いたようにソフトウエアドメインでの壁があります。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/167849910.html
この他だとESS Sabre32チップの台頭とかDSDなんかも話題に登ってくるかもしれません。
ネットワークはどうかというと、2010年はUSBオーディオがブレークしたけれども、2011年はネットワークオーディオがブレークするだろう、と書けばもっともらしいように見えます。でもちょっと違和感も残ります。
そもそもUSBオーディオか、ネットワークオーディオか、というジャンルわけはどうなのでしょう。
例えば私のWindows7 PCではUSBオーディオクラス2のUSB DDCであるAudiophilleoを繋げて「USBオーディオ」になってるように見えますが、同時にfoobarにuPnPコンポーネントをいれて無線LANにつないでるので、iPhoneやiPadからPlugPlayerアプリでDLNA(uPnP)等価の「ネットワークオーディオ」として使えます。
またCantataのところで書いたようにUSB over IPなどを応用すると、USBで接続してもネットワーク透過でありえます。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/159069115.html
こうしてネットワークの一員としてのオーディオ機材のあり方も考えることになるでしょう。
さらに来年になるとMacでは10.7 ライオン、Win7はSP1が出ることでオーディオも左右されるかもしれません。例えばUSBオーディオクラス2の制限がOSの実装によるものならばそれが変わるかもしれないし、スノーレパードで移行期のようだったMacの64bit環境もライオンでデフォルトになれば再生ソフトも変わるかもしれません。
結局コンピューターオーディオというのは、単にトランスポートの代わりにパソコンを使うものであるというよりも、むしろコンピューターの世界とオーディオの世界の関係を見つめ直すものであるようにも思います。
それをまた考える年になることでしょう。
また、トレンドから推測はできますが、新しいものはどんなものが出てくるか分かりません。あとはCES2011が来年の幕開けです!
2010年09月22日
USB Audio Class 2.0についての最新情報 (2)
*この記事はこの時点での最新情報でしたが、2011/6月にさらに更新した記事をアップしました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/209382239.html
USB Audio Class 2.0についての振り返りとまとめ
USBのハードディスクはたいていがドライバーのインストールがなくともPCにつなげば自動的に認識します。同様に多くのUSBオーディオ機器はパソコンにつなぐだけで音が出るようになります。これはOSがもともと持っているドライバーが自動的に標準規格に沿った機器を認識するからです。標準的なこの規格をUSB接続ではClassといい、オーディオの場合はUSB Audio Classといいます。このようにOSがはじめから持っている標準規格に沿ったドライバーのことを標準ドライバーまたはクラスドライバーと言います。英語記事でOSのnative driverと言った場合は標準ドライバーのことです。
*このドライバーを作るのはマイクロソフトなどOSサプライヤーです
しかし、USBオーディオではこの標準ドライバーを使う限りにおいては、対応するサンプリングレートは96/24までが限界というのが定説でした。192/24まで達成するにはhiFaceのようにカスタムドライバーをインストールする必要があるということです。hiFaceなどはオーディオクラスの等時的なアイソクロナスではなく、ストレージクラスなどで使われているバルク転送を使うことでこの制限から逃げています。(つまりバルク転送では同期ができないので必然的に非同期となります)
しかし最近のUSB DACなどで標準ドライバーのままでも192/24や176/24を可能とするものが出てきました(zodiacの記事参照)。
先に書いたUSB Audio Classが1.0から2.0に拡張されたようです。Class 2.0ではClass 1.0に比べてUSBのオーディオクラスに関する属性が増えているようです。
つまりUSB Audio Class 2.0とは、カスタムドライバーをインストールすることなしに、標準ドライバーだけで176/24と192/24が再生できるものです。もうちょっと別な言い方をすると、バルク転送ではなく、アイソクロナス転送で176/24と192/24が再生できるもの、ともいえるかもしれません。つまりhiFaceとかMusilandは今回の記事の対象外です。
(アイソクロナス転送は同期できるのでさらに同期、非同期とAdaptiveのモードがあります)
Audiophilleo1を買ったことでさらにいろいろ分かるようになり、ここの開発者のフィリップさんとも少しいろいろ聞いてみて分かりましたのでClass 2.0に関する中間報告として書いておきます。
Class 2.0対応状況の分類
いまのところUSB Class 2.0をサポートしているUSBオーディオ機材は私の知っている限りは下記4機種です。
Wavelength Wavelink (USB DDC)
http://www.usbdacs.com/Products/Products.html
Antelope Zodiac+ (USB DAC)
http://www.antelopeaudio.com/jp/products_zodiacplus.html
Audiophilleo 1と2 (USB DDC)
http://www.audiophilleo.com/
Ayre QB-9改 (USB DAC)
*未リリース
実質的にAyre QB-9改はゴードンのコードを使っているのでWavelinkとおんなじと考えることができますので、さらに各開発元により標準ドライバーでの192/24対応の状況をまとめると下記のようになります。このように対応は開発元によりばらつきがあることが分かります。
*Wavelengthグループ(aka. ゴードングループ) (Async)
Mac 10.6.4要
Window 7 対応なし - 付属のカスタムドライバーのインストールが必要
*Zodiac+ (Adaptive - 情報に基づく推測)
Mac 10.6対応 (10.5も?詳細不明)
Windows 7 対応あり
*Audiophilleo (Async)
Mac 10.5でもOK
Windows 7 対応なし - 付属のカスタムドライバーのインストールが必要
なかにはLinuxもサポートされていますが省きます。書くとするとLinuxの場合はUbuntuみたいにディストリビューションではなく、カーネルバージョンが必要でしょう。そのカーネルバージョンがどのディストリビューションに入っているかというところまで調べて書かねばなりません。
*MSBの新しいのもClass 2.0かもしれませんが、まだちょっとよく分かりません。
http://www.msbtech.com/products/usb2.php
Class 2.0対応の要件とは
一般的なUSBオーディオ機器については96/24までの対応ではわりときれいにそろっていたのですが、Class 2.0の対応はかなりばらつきがあるのが分かります。
これについて分解するといくつかの問題(ボトルネック)があることがわかります。
1. OS側のクラスドライバーの実装
2. デバイス側のUSBコントローラの制限
3. デバイス側のファームウエア設計
これらは複雑に絡んでいます。
たとえば前にWavelengthの情報からClass2.0はMacOSX10.6.4から対応と書きましたが、実際は10.5からClass2.0自体は対応されていたようです。ただし10.5ではOSのクラスドライバーの実装に問題があったようです。ただしこれはファームウエアの書き方によっては回避できる問題のようで、ゴードンさんは10.6.4までだめだったといってますが、Audiophilleoのフィリップさんは回避できると言ってます。もしかすると2.0の規格を厳密に守った場合10.5ではだめなのかもしれません。ここでは書きませんが(というか私は理解していませんが)、これにはちょっとワザがあるようです。ゴードンさんはこの点でまじめに守っているんでしょう。
またいかにファームウエアをClass2.0のオーディオクラスDescriptorにあわせて書いて、OSのクラスドライバーが2.0をサポートしていても、USBコントローラがTAS1020などの1.1対応機種ではそこがボトルネックになるので192/24転送はできません。(この場合の帯域幅はけっこう惜しいので192/16とか170/24とか半端なのはできるようです)
つまりClass2.0というのが実は前から可能であったにもかかわらず、最近になって見えてきたのは、実はOSが最近対応したからではなく、コントローラが最近対応したから、ということのように思います。
Audiophilleoではコントローラーをカスタムで設計しているようです。Zodiac+もそうです。つまりTAS1020みたいな1.1時代の古い既製品を使っている限りはClass2.0サポートは達成できないということです。
もうひとつ問題はなぜWavelinkとAudiophilleoはMacOSXでは標準ドライバーで192/24まで達成できるのに、Windows7だとだめなのか、という点です。
これは少しフィリップさんともお話ししたんですが、確実なことはわかりません。ただ上の表を見ていただくとなんとなく気づくかもしれませんが、WavelinkとAudiophilleoはAsyncですが、Zodiac+はAdaptive(推測)です。おそらくこの辺にポイントがありそうです。これはファームウエアとOSが、どちらが問題かはともかく複雑な関係で動いているということです。
そしてOSの実装もまた完全ではないということです。はじめに標準ドライバーを作成するのはOSを作るメーカーであると書きましたが、御存じのようにOSは完全から程遠く穴だらけです。もっともOSは数千万ステップものプログラムの集合体であり、それが一行たりとも間違えてはいけないというのは酷なことではあります。
つまり結局はClass 2.0という枠はできているのに、クラスドライバー、コントローラ、ファームウエアの3者がそれぞれ問題を抱えながら複雑に絡み合って、ここに書いたような状況になっている、ということでしょう。そのため、こういう足並みがそろわない状況となっているようです。
これもiPadのUSBオーディオサポートと同様に「できるけれども完全ではない」ということだと思います。
今度WAONさんが176k/24のマスターデータを採用したハイレゾ音源の販売をするそうです。そうした96/24を超える動きも出てきていますので、まだこのClass2.0の件については見ていく必要があると思います。
2010年08月10日
USB DACとネットワークオーディオのはざま
一月のCESで発表されていた話題の製品のひとつ、Resolution AudioのCantataが出荷され始めているようです。
こちらがResolution AudioのCantataのページです。
http://www.resolutionaudio.com/cantata.html
これは人気のあったCDプレーヤー、Opus21の後継機ということですが、基本的にはOpus21と同じCDプレーヤー部分を中心にネットワークセンターとして拡張を図ったというもののようです。DLNAベースのホームオーディオの中核という位置づけになります。DACチップとしてPCM1704を4個搭載して音もなかなか良いようです。
Cantataは面白いことにUSB DACとしても機能します。DAコンバータとしての性能も良いなら、USB DACとしてパソコンにも使えればたしかに便利です。ただ問題はコンパクトなUSB DACならともかく、こんな外装も豪華なミュージックセンターの置く場所はリビングの真ん中だし、パソコン置き場とは異なるわけです。そこでCantataではPont Neufという興味深い解法を用意しています。Pont NeufはコンパクトなUSBデバイスです。
これは上記Cantataページの下の図を見ると分かりやすいのですが、パソコンのUSB端子にPont Neufを取り付けて、他方の口からネットワークケーブルでハブなどにつなぎます。そうすると同一ネットワーク上のCantataがなんとUSBデバイスとして認識されるというもののようです。(専用のドライバーが必要でWindowsかLinux対応です)
これは無線を介しても機能するようです。つまりは無線LANを介してとなりの部屋においてあるPCからUSB DACとしてCantataが認識されるということになります。そうだとするとちょっとすごいですね。
USB DACについて隠れた問題点は接続するパソコンとの距離です。USB接続には距離(ケーブル長さ)の限界があり、具体的には5m前後となります。
これ以上接続距離を伸ばすためにはひとつにはリピーターをかませて延長する方法とか、光を使ってメディア変換する方法があります。(この辺は別なネタなので今回省きます)
もうひとつ考えられているのがネットワークを介して距離を伸ばす方法、USB over ipと呼ばれているものです。USB over networkといったほうが分かりやすいと思います。おそらくUSB over ipはUSB orgが正式に規格しているのではなく、サードパーティー規格だと思いますが、USB接続をインターネット標準のTCP/IPネットワークを使用して距離を伸ばすものです。Pont Neufはこれを応用したと思われます。
こうしたネットワークベースのUSBを使用したと思われるのはたとえばサイレックス・テクノロジー SX-3000GBがあります。
ただしオーディオに使うときはアイソクロナスに対応していることを確認したほうがよいですし、オーディオ機器が確実に動くとは限らないようですので念のため。
Pont Neufはその点でCantataと組で開発されているので安心してシステムとして使えます。Cantataは家の中心にある存在でありながら、Pont NeufのおかげでUSB本来の距離制限を無視して書斎のPCともUSB DACとしてつなげる柔軟性を確保したわけです。
同様なホームネットワークではやはりLINNのDSシリーズがあります。
LINNはもともとホームオーディオ志向の会社ですし、Knekt(クネクト)というホームネットワークのシステムをすでに持っていました。knektはCat5ケーブルを使いますが実体はストリーミングのようなネットワーク転送ではなく、スタジオみたいにアナログ信号のバランス伝送で長距離を引き回していたようです。普通のRCAアンバランスだとあまり距離は伸びないのでこれもアナログ時代の距離を伸ばす工夫と言えるでしょうね。こちらにKnektの解説があります。
http://www.linn.co.uk/faq_knekt
それがデジタル時代のホームネットが必要と言うことでLinn DSが考えられ、前のknektはアナログ伝送のクローズ技術(proprietary)だったのでオープン技術のストリーミングを使用するDLNAを採用したと言うことでしょう。そう考えると"DS"がデジタル・ストリームの略という意味が良くわかってくると思います。
LINNの中でDSは異質な製品とも思われがちですが、LINNからみた場合にDSはクローズからオープンへとあくまで自然な進化であると思います。
しかし、それが市場に導入されたときに「これが次世代のオーディオシステム」という捉えられ方をされて、ちょっと方向が異なってきます。たとえばオープンなシステムですから本来は家にPCやNASなどを中心としたネットワークシステムがすでにあって、そこにLINN DSが入るということを想定したのに、LINN DSが特別視されたためにLINN DSを入れるためにホームネットワークを設置するといういささか主客転倒な結果になってしまってもいます。
そのため結局NASを含めてもDS関連の機器しかネットワークにつながないため、ネットワークケーブルがUSBケーブルとかデジタルケーブルと混同されてしまい、DSとPCの接続はケーブルが短いほうが良いとか、Cat6ケーブルよりCat7ケーブルの方が音がいいとか、そうした風潮を生んでしまっています。それが間違っているとは言いませんが、そのことがネットワークというものに対しての誤解を生んでしまって、コンピューターオーディオというものを混沌と分からなくさせている原因のひとつになっているのではないでしょうか。
またLINN DSにしても、短いケーブルで直結がいいならUSB DACの方が手軽で良いということになってしまい、本来の力と意義を認めてもらえないことにもなるように思えます。
USB DACとネットワークオーディオがいまのコンピューターオーディオの双璧のように思われますが、Pont Neufのような新技術はその境界をあいまいにしていきます。
新技術がどんどん出てくるので、いまあるものを整理しておかないと混沌とする一方でしょう。こうしたスタンスがいまはコンピューターオーディオには必要な気がします。
こちらがResolution AudioのCantataのページです。
http://www.resolutionaudio.com/cantata.html
これは人気のあったCDプレーヤー、Opus21の後継機ということですが、基本的にはOpus21と同じCDプレーヤー部分を中心にネットワークセンターとして拡張を図ったというもののようです。DLNAベースのホームオーディオの中核という位置づけになります。DACチップとしてPCM1704を4個搭載して音もなかなか良いようです。
Cantataは面白いことにUSB DACとしても機能します。DAコンバータとしての性能も良いなら、USB DACとしてパソコンにも使えればたしかに便利です。ただ問題はコンパクトなUSB DACならともかく、こんな外装も豪華なミュージックセンターの置く場所はリビングの真ん中だし、パソコン置き場とは異なるわけです。そこでCantataではPont Neufという興味深い解法を用意しています。Pont NeufはコンパクトなUSBデバイスです。
これは上記Cantataページの下の図を見ると分かりやすいのですが、パソコンのUSB端子にPont Neufを取り付けて、他方の口からネットワークケーブルでハブなどにつなぎます。そうすると同一ネットワーク上のCantataがなんとUSBデバイスとして認識されるというもののようです。(専用のドライバーが必要でWindowsかLinux対応です)
これは無線を介しても機能するようです。つまりは無線LANを介してとなりの部屋においてあるPCからUSB DACとしてCantataが認識されるということになります。そうだとするとちょっとすごいですね。
USB DACについて隠れた問題点は接続するパソコンとの距離です。USB接続には距離(ケーブル長さ)の限界があり、具体的には5m前後となります。
これ以上接続距離を伸ばすためにはひとつにはリピーターをかませて延長する方法とか、光を使ってメディア変換する方法があります。(この辺は別なネタなので今回省きます)
もうひとつ考えられているのがネットワークを介して距離を伸ばす方法、USB over ipと呼ばれているものです。USB over networkといったほうが分かりやすいと思います。おそらくUSB over ipはUSB orgが正式に規格しているのではなく、サードパーティー規格だと思いますが、USB接続をインターネット標準のTCP/IPネットワークを使用して距離を伸ばすものです。Pont Neufはこれを応用したと思われます。
こうしたネットワークベースのUSBを使用したと思われるのはたとえばサイレックス・テクノロジー SX-3000GBがあります。
ただしオーディオに使うときはアイソクロナスに対応していることを確認したほうがよいですし、オーディオ機器が確実に動くとは限らないようですので念のため。
Pont Neufはその点でCantataと組で開発されているので安心してシステムとして使えます。Cantataは家の中心にある存在でありながら、Pont NeufのおかげでUSB本来の距離制限を無視して書斎のPCともUSB DACとしてつなげる柔軟性を確保したわけです。
同様なホームネットワークではやはりLINNのDSシリーズがあります。
LINNはもともとホームオーディオ志向の会社ですし、Knekt(クネクト)というホームネットワークのシステムをすでに持っていました。knektはCat5ケーブルを使いますが実体はストリーミングのようなネットワーク転送ではなく、スタジオみたいにアナログ信号のバランス伝送で長距離を引き回していたようです。普通のRCAアンバランスだとあまり距離は伸びないのでこれもアナログ時代の距離を伸ばす工夫と言えるでしょうね。こちらにKnektの解説があります。
http://www.linn.co.uk/faq_knekt
それがデジタル時代のホームネットが必要と言うことでLinn DSが考えられ、前のknektはアナログ伝送のクローズ技術(proprietary)だったのでオープン技術のストリーミングを使用するDLNAを採用したと言うことでしょう。そう考えると"DS"がデジタル・ストリームの略という意味が良くわかってくると思います。
LINNの中でDSは異質な製品とも思われがちですが、LINNからみた場合にDSはクローズからオープンへとあくまで自然な進化であると思います。
しかし、それが市場に導入されたときに「これが次世代のオーディオシステム」という捉えられ方をされて、ちょっと方向が異なってきます。たとえばオープンなシステムですから本来は家にPCやNASなどを中心としたネットワークシステムがすでにあって、そこにLINN DSが入るということを想定したのに、LINN DSが特別視されたためにLINN DSを入れるためにホームネットワークを設置するといういささか主客転倒な結果になってしまってもいます。
そのため結局NASを含めてもDS関連の機器しかネットワークにつながないため、ネットワークケーブルがUSBケーブルとかデジタルケーブルと混同されてしまい、DSとPCの接続はケーブルが短いほうが良いとか、Cat6ケーブルよりCat7ケーブルの方が音がいいとか、そうした風潮を生んでしまっています。それが間違っているとは言いませんが、そのことがネットワークというものに対しての誤解を生んでしまって、コンピューターオーディオというものを混沌と分からなくさせている原因のひとつになっているのではないでしょうか。
またLINN DSにしても、短いケーブルで直結がいいならUSB DACの方が手軽で良いということになってしまい、本来の力と意義を認めてもらえないことにもなるように思えます。
USB DACとネットワークオーディオがいまのコンピューターオーディオの双璧のように思われますが、Pont Neufのような新技術はその境界をあいまいにしていきます。
新技術がどんどん出てくるので、いまあるものを整理しておかないと混沌とする一方でしょう。こうしたスタンスがいまはコンピューターオーディオには必要な気がします。
2010年07月26日
Wavelength WaveLinkとUSB Class 2.0サポート
いよいよ待望のWavelengthのUSB DDCであるWaveLink HSが登場しました。$900です。
http://www.usbdacs.com/Products/Products.html
昨年のロッキーマウンテンオーディオフェスタに出展されていたものです。もちろんAsync USBでBNCコネクタを採用しています。そしてやはり192/24をサポートしています。TAS1020かはわかりませんが、Thesyconというところと協業したということです。
興味深いことにここにはMac OSX 10.6.4が出るまでは出せなかったと書いています。それはUSB Class 2.0サポートの対応です。10.6.4まではUSB Class 2.0が使えなかったということです。
前回Antelope Zodiac+のところで、USB標準ドライバーの96/24超えについてHigh Speed対応とUSB Class 2.0をごっちゃに書いてしまったのかもしれませんが、この両者は異なるのかもしれません。
Computer Audiophileでゴードンさんがそれを語っています。
http://www.computeraudiophile.com/content/2496-Above
これは前からゴードンさんは言ってたんですが、WindowsではClass 2.0サポートはされていないそうです。
わたしがZodiac+でやってみてなんのドライバーも入れずに192/24までいけたことで、はじめに疑問に思ったところも実はここで、「たしかゴードンの話だとWindowsは標準ドライバーでは192/24はいけないはずでは?」というところでした。Zodiac+はまた別の何かを使用しているのかもしれません。Zodiacはなにしろ同軸入力よりUSBのほうが音がいいくらいUSBに力入れてますからね。
ただこのスレッド、Class2.0がなにかというより半分以上は96/24以上が必要かというところで燃え上がっちゃってはいます。
それとさきのスレッドに書いてありますが、Ayreも192/24対応をするようです。ここもひとつポイントです。製品版として出荷される192/24対応のQB-9はUSB1.0と2.0の切り替えスイッチがつくようです。
交換はUSBボードとFPGAも手を加えるように言ってますね。USBボードはともかく、FPGAを変えるというところがキーのようにも思えます。単に192/176対応かもしれませんが、もしかするとなんらかのデコードのカスタマイズが必要なのではないでしょうか?
やはりClass 2.0はHigh Speed対応ではなく、従来のFull Speed対応のデバイス側のコントローラでなにかできる枠組みのようにも思えます。それに対してZodiacはHigh Speed対応できるようなデバイス側のコントローラを独自開発したのかも。
また最新のLinuxのALSAドライバーはClass 2.0に対応しているという情報もあります(これはゴードンさんは否定しています)。
http://www.computeraudiophile.com/content/Ayre-QB-9-w-USB-Audio-v20-here-w-Linux
USB標準ドライバーの192対応についてはなかなか深みがありそうです。この辺はしばらく要チェックです。
http://www.usbdacs.com/Products/Products.html
昨年のロッキーマウンテンオーディオフェスタに出展されていたものです。もちろんAsync USBでBNCコネクタを採用しています。そしてやはり192/24をサポートしています。TAS1020かはわかりませんが、Thesyconというところと協業したということです。
興味深いことにここにはMac OSX 10.6.4が出るまでは出せなかったと書いています。それはUSB Class 2.0サポートの対応です。10.6.4まではUSB Class 2.0が使えなかったということです。
前回Antelope Zodiac+のところで、USB標準ドライバーの96/24超えについてHigh Speed対応とUSB Class 2.0をごっちゃに書いてしまったのかもしれませんが、この両者は異なるのかもしれません。
Computer Audiophileでゴードンさんがそれを語っています。
http://www.computeraudiophile.com/content/2496-Above
これは前からゴードンさんは言ってたんですが、WindowsではClass 2.0サポートはされていないそうです。
わたしがZodiac+でやってみてなんのドライバーも入れずに192/24までいけたことで、はじめに疑問に思ったところも実はここで、「たしかゴードンの話だとWindowsは標準ドライバーでは192/24はいけないはずでは?」というところでした。Zodiac+はまた別の何かを使用しているのかもしれません。Zodiacはなにしろ同軸入力よりUSBのほうが音がいいくらいUSBに力入れてますからね。
ただこのスレッド、Class2.0がなにかというより半分以上は96/24以上が必要かというところで燃え上がっちゃってはいます。
それとさきのスレッドに書いてありますが、Ayreも192/24対応をするようです。ここもひとつポイントです。製品版として出荷される192/24対応のQB-9はUSB1.0と2.0の切り替えスイッチがつくようです。
交換はUSBボードとFPGAも手を加えるように言ってますね。USBボードはともかく、FPGAを変えるというところがキーのようにも思えます。単に192/176対応かもしれませんが、もしかするとなんらかのデコードのカスタマイズが必要なのではないでしょうか?
やはりClass 2.0はHigh Speed対応ではなく、従来のFull Speed対応のデバイス側のコントローラでなにかできる枠組みのようにも思えます。それに対してZodiacはHigh Speed対応できるようなデバイス側のコントローラを独自開発したのかも。
また最新のLinuxのALSAドライバーはClass 2.0に対応しているという情報もあります(これはゴードンさんは否定しています)。
http://www.computeraudiophile.com/content/Ayre-QB-9-w-USB-Audio-v20-here-w-Linux
USB標準ドライバーの192対応についてはなかなか深みがありそうです。この辺はしばらく要チェックです。
2010年07月19日
USBオーディオ、新世代へ
いまAntelopeのZodiac+を試聴用に借りています。
これはスタジオで使われるクロックで有名なAntelope社製のヘッドホンアンプ付きDACです。こちらPCオーディオ展のときの写真ですが、真ん中の黒いのがZodiacです。

音は素晴らしく良いですが、機材自体のレビューはここでは書きません。ここで書くのはZodiac+をいじっているうちに面白い発見をしたことです。
それはUSBの標準ドライバーでMac もWindows7も192/24までいけるということです!
Macはさらにいけるかもしれません。
いままでUSBの標準ドライバー(カスタムドライバーをインストールしないで済むタイプ)では96/24が限界だと思われていましたが、最近Wavelengthのゴードンさんがどうも現行ドライバーで192までいけるような発言をしていたので臭いと思ってたんですが、Zodiac+で確かめられました。(Zodiacも+バージョンが必要です)
それはUSB標準ドライバーのUSB High Speed modeのサポートが、WindowsとMacではすでになされているということです。(Class 2サポートと言うのかもしれません)
ただしMac OSXはスノーレパード(10.6)のみ、Windowsは7のみと思われます。(現時点での情報からの推測です)
*USB標準ドライバーとその96k限界
前にも書いたようにUSBにはクラスドライバーというOSにあらかじめ入ってる規定された標準ドライバーがあり、ハードディスクなどのマスストレージ・クラスドライバーのようにそのおかげでハードディスクをさすだけでデバイスドライバーのインストール不要で便利に使えます。
ただしUSBオーディオクラスの場合、その規定は古くて標準ドライバーの多くはずいぶん前に制定されたUSB1.1(つまりFull Speed)に基づく帯域幅で設計されていて、これでは96/24が限界です。つまりハードディスク(マスストレージクラス)はUSB2.0(High Speed)に基づく高速転送ができるのにオーディオクラスはUSB1.1(Full Speed)のまま取り残されていたという状況でした。
ただしデバイス側のUSBコントローラーもPCM270x系とかTAS1020のようにUSB1.1対応のみの古いものがいまだに多数使われているので、実質あまり影響ないということです。
パソコン(OS)側のドライバーも、デバイス側のコントローラーも古い同志ということですね。実質96kより上のハイサンプリングソースもあまりありませんし、なんとなくこれで良いと思われていたという状況です。
これを打開して192kを達成するための策として、いわばこの標準ドライバーを無視して独自のカスタムドライバーを使うのがHifaceやMusilandのようなカスタムドライバー方式です。これには主にCypress EZ-USBなどのバルク転送を行うコントローラを使用しているようです。バルク転送はハードディスクで行われている転送方式です(これに対して普通のUSBオーディオはアイソクロナス転送)。これなら2.0のHighspeedの帯域幅で転送できます。
ただしカスタムドライバーなのでインストールが必要という不便な点もあるし、サポートされるOSも限定されてしまいます。Win7でいうところの「理想的な」ドライバーという保証もありません。またHifaceを取り付けるとWindowsの安全な取り外しオプションが出たりします。つまりOSからはオーディオデバイスとして認識してもらっていないということになります。
そのため、できればOSの標準ドライバーでのサポートが望ましいわけです。
ただこれも書いたんですが、昨年5月ころにそのUSBオーディオクラス規格に改訂がはいったようです。そこで、さきのゴードンさんの言動と合わせてちょっと動向をうかがっていた所、Zodiac+を使って自分で確かめることができたというわけです。
*標準ドライバーの96k越えの実際
さきに書いたようにZodiacもZodiac+でなければ192をサポートしません。Zodiac+ではUSBのHigh speed modeをサポートするためのUH1というモードが用意されています。UH1モードに入れるためにはいったん電源を切って、モード切替の儀式をやる必要があります(マニュアルに書いてあります、なおマニュアルは英語マニュアルをご覧ください)。
このほかにUF1というモードがあり、UF1(Full Speed USB1.1対応)では普通の標準ドライバーを使うものと同じ96/24までです。これはデバイスのファームウエア側も対応が必要なので、互換性維持のために残しているのだとおもいます。
まずWindows 7で試してみました。もちろんなんのドライバーも入れていませんし、Windows7ではMacOSXやUbuntuのようにシステムを改変する作業では必ず確認ダイアログが出るので勝手にはいりません。
まず共有モードのサンプリングレート選択メニューで192/24が出て来ます。176が出ないのは88が出ないのと同じ理由でWindows7のバグでしょう。

左がZodiac+、右は比較用のIcon HDPのデバイス画面です。
Zodiacで16bitの選択がないのはZodiacが24bit native(16bitでも24bitに詰める)転送を要求しているせいと思われます。
これで192を選択するとWin7のオーディオエンジンでリサンプリングされてから標準ドライバー経由でZodiac+に送られる訳です。もちろんZodiac+側でもきちんと192でロックされています!
音的にも精細感が上がったように思えますしこれは良いですね。これはオーディオエンジンでリサンプリングするのでどんなサンプリングレートの楽曲でも同じです。
次にfoobar2000の排他モードWASAPIでPCオーディオファン2付録の88.2と176.4で収録されている同じ曲(El Choclo)をかけてみると、ちゃんとどちらも指定のレートでZodiac側でロックします。もちろん共有モードの指定も無視していますし、まさに期待どおりの動作をしています。
次にMacで試してみました。MacOSXではAudioMidiの設定パネルがWindow7の共有モード設定みたいなものですが、そこでもやはり192の選択が出てきます!しかもWin7と違ってちゃんと88.2系列も出てきます。

左がZodiac+、右は比較用のHalide Bridgeです。
ここで192を選択してiTunesやPlayで出してみるとたしかにzodiac+側でもロックして192と表示されます。
おそらくMac OSXのCore AudioでのWin7のCore Audioの排他モードみたいなもの(ややこしい?)は外から見えない設定になっていると思いますが、おそらく「Win7の排他モードみたいなもの」対応と思われるAmarraは私のはminiで96までなので残念ながらそれを試せません。それで上のWindows7でのFoobar2000のテストのようなことはMacではできません。
*USB標準ドライバーの新時代
Antelopeの次のZodiac GoldではUH2というモードを搭載してMac(10.6)ならば384kまで対応できるようです。Wavelengthの次の製品であるUSB DDCのWavelinkも192対応してくるということですが、おそらく標準ドライバーで使えるでしょう。(こちらはMacのみかもしれません) Wavelengthのコードが変わるということは、、つまりそういうことかもしれません。
次は標準ドライバーで192対応の時代が来ると思うし、そうなるとカスタムドライバーを使っていたところはまた別の対応が必要になるかもしれません。
ただしデバイス側のコントローラの対応も必要ですので、普及というのはわかりません。
ちなみにここに書いたことは私の現時点での推測・考察という事を念のために書いておきます。
時代は変わるし、手法も変わる。それをうまく使って行きたいものです。
これはスタジオで使われるクロックで有名なAntelope社製のヘッドホンアンプ付きDACです。こちらPCオーディオ展のときの写真ですが、真ん中の黒いのがZodiacです。
音は素晴らしく良いですが、機材自体のレビューはここでは書きません。ここで書くのはZodiac+をいじっているうちに面白い発見をしたことです。
それはUSBの標準ドライバーでMac もWindows7も192/24までいけるということです!
Macはさらにいけるかもしれません。
いままでUSBの標準ドライバー(カスタムドライバーをインストールしないで済むタイプ)では96/24が限界だと思われていましたが、最近Wavelengthのゴードンさんがどうも現行ドライバーで192までいけるような発言をしていたので臭いと思ってたんですが、Zodiac+で確かめられました。(Zodiacも+バージョンが必要です)
それはUSB標準ドライバーのUSB High Speed modeのサポートが、WindowsとMacではすでになされているということです。(Class 2サポートと言うのかもしれません)
ただしMac OSXはスノーレパード(10.6)のみ、Windowsは7のみと思われます。(現時点での情報からの推測です)
*USB標準ドライバーとその96k限界
前にも書いたようにUSBにはクラスドライバーというOSにあらかじめ入ってる規定された標準ドライバーがあり、ハードディスクなどのマスストレージ・クラスドライバーのようにそのおかげでハードディスクをさすだけでデバイスドライバーのインストール不要で便利に使えます。
ただしUSBオーディオクラスの場合、その規定は古くて標準ドライバーの多くはずいぶん前に制定されたUSB1.1(つまりFull Speed)に基づく帯域幅で設計されていて、これでは96/24が限界です。つまりハードディスク(マスストレージクラス)はUSB2.0(High Speed)に基づく高速転送ができるのにオーディオクラスはUSB1.1(Full Speed)のまま取り残されていたという状況でした。
ただしデバイス側のUSBコントローラーもPCM270x系とかTAS1020のようにUSB1.1対応のみの古いものがいまだに多数使われているので、実質あまり影響ないということです。
パソコン(OS)側のドライバーも、デバイス側のコントローラーも古い同志ということですね。実質96kより上のハイサンプリングソースもあまりありませんし、なんとなくこれで良いと思われていたという状況です。
これを打開して192kを達成するための策として、いわばこの標準ドライバーを無視して独自のカスタムドライバーを使うのがHifaceやMusilandのようなカスタムドライバー方式です。これには主にCypress EZ-USBなどのバルク転送を行うコントローラを使用しているようです。バルク転送はハードディスクで行われている転送方式です(これに対して普通のUSBオーディオはアイソクロナス転送)。これなら2.0のHighspeedの帯域幅で転送できます。
ただしカスタムドライバーなのでインストールが必要という不便な点もあるし、サポートされるOSも限定されてしまいます。Win7でいうところの「理想的な」ドライバーという保証もありません。またHifaceを取り付けるとWindowsの安全な取り外しオプションが出たりします。つまりOSからはオーディオデバイスとして認識してもらっていないということになります。
そのため、できればOSの標準ドライバーでのサポートが望ましいわけです。
ただこれも書いたんですが、昨年5月ころにそのUSBオーディオクラス規格に改訂がはいったようです。そこで、さきのゴードンさんの言動と合わせてちょっと動向をうかがっていた所、Zodiac+を使って自分で確かめることができたというわけです。
*標準ドライバーの96k越えの実際
さきに書いたようにZodiacもZodiac+でなければ192をサポートしません。Zodiac+ではUSBのHigh speed modeをサポートするためのUH1というモードが用意されています。UH1モードに入れるためにはいったん電源を切って、モード切替の儀式をやる必要があります(マニュアルに書いてあります、なおマニュアルは英語マニュアルをご覧ください)。
このほかにUF1というモードがあり、UF1(Full Speed USB1.1対応)では普通の標準ドライバーを使うものと同じ96/24までです。これはデバイスのファームウエア側も対応が必要なので、互換性維持のために残しているのだとおもいます。
まずWindows 7で試してみました。もちろんなんのドライバーも入れていませんし、Windows7ではMacOSXやUbuntuのようにシステムを改変する作業では必ず確認ダイアログが出るので勝手にはいりません。
まず共有モードのサンプリングレート選択メニューで192/24が出て来ます。176が出ないのは88が出ないのと同じ理由でWindows7のバグでしょう。
左がZodiac+、右は比較用のIcon HDPのデバイス画面です。
Zodiacで16bitの選択がないのはZodiacが24bit native(16bitでも24bitに詰める)転送を要求しているせいと思われます。
これで192を選択するとWin7のオーディオエンジンでリサンプリングされてから標準ドライバー経由でZodiac+に送られる訳です。もちろんZodiac+側でもきちんと192でロックされています!
音的にも精細感が上がったように思えますしこれは良いですね。これはオーディオエンジンでリサンプリングするのでどんなサンプリングレートの楽曲でも同じです。
次にfoobar2000の排他モードWASAPIでPCオーディオファン2付録の88.2と176.4で収録されている同じ曲(El Choclo)をかけてみると、ちゃんとどちらも指定のレートでZodiac側でロックします。もちろん共有モードの指定も無視していますし、まさに期待どおりの動作をしています。
次にMacで試してみました。MacOSXではAudioMidiの設定パネルがWindow7の共有モード設定みたいなものですが、そこでもやはり192の選択が出てきます!しかもWin7と違ってちゃんと88.2系列も出てきます。
左がZodiac+、右は比較用のHalide Bridgeです。
ここで192を選択してiTunesやPlayで出してみるとたしかにzodiac+側でもロックして192と表示されます。
おそらくMac OSXのCore AudioでのWin7のCore Audioの排他モードみたいなもの(ややこしい?)は外から見えない設定になっていると思いますが、おそらく「Win7の排他モードみたいなもの」対応と思われるAmarraは私のはminiで96までなので残念ながらそれを試せません。それで上のWindows7でのFoobar2000のテストのようなことはMacではできません。
*USB標準ドライバーの新時代
Antelopeの次のZodiac GoldではUH2というモードを搭載してMac(10.6)ならば384kまで対応できるようです。Wavelengthの次の製品であるUSB DDCのWavelinkも192対応してくるということですが、おそらく標準ドライバーで使えるでしょう。(こちらはMacのみかもしれません) Wavelengthのコードが変わるということは、、つまりそういうことかもしれません。
次は標準ドライバーで192対応の時代が来ると思うし、そうなるとカスタムドライバーを使っていたところはまた別の対応が必要になるかもしれません。
ただしデバイス側のコントローラの対応も必要ですので、普及というのはわかりません。
ちなみにここに書いたことは私の現時点での推測・考察という事を念のために書いておきます。
時代は変わるし、手法も変わる。それをうまく使って行きたいものです。
2010年01月25日
USB DACの変遷と課題 - おまけの機能からオーディオの主役へ
最近LINN DSなどDLNAネットワーク機器と並んでPCオーディオのキーのひとつになっているのはUSB入力のDACです。

Nuforce uDACとWavelength Proton
USB DACは目新しいものではありませんが、はじめはUSB入力はDACやアンプの付加機能的なものでした。また音質も期待されていませんでした。単にPCの楽曲が再生できればよいという、いわばおまけのための機能です。
しかし昨年2009年度のStereophile誌の年間ベスト賞を受賞したAyreのQB-9はUSB DACです。これはデジタル機材部門だけではなく、数百万円のアンプやスピーカーも含めたすべてのオーディオ機材の年間最優秀として選ばれたのです。
http://stereophile.com/features/istereophileis_products_of_2009/index8.html
これはLINNのCDプレーヤー生産停止と並んで昨年2009年度を代表する出来事だったと思います。そこに至る流れをPCとDACをつなぐUSBレシーバー(デバイス側の受け取りチップ)という観点からまとめて見ました。
(ちなみに本稿は代表的なBurr Brown系のチップについての流れですが、TI/BB以外にもUSBレシーバーはありますので念のため)
1. 初期のUSB DAC - PCM2700系の時代
USB DACの初期のUSBレシーバーの代表的なチップはTI(Burr Brown)のPCM2700系のチップでした。これはひとつにはUSBレシーバーの機能とともにDACがワンチップで内蔵されているという便利さにあります。
USBの信号を受け取るだけのはずのUSBレシーバーチップにそもそもDACがついているというのは、WindowsがUSBをサポート始めた当時のバーブラウンがUSB市場に打って出るための戦略的なものだそうです。
*PCM2702
これはDACが内蔵されているので、手軽にUSBのデジタル信号からアナログのオーディオ出力を取り出すことができます。これにより安価で小型のUSB DACが可能になりました。
しかし、さすがにUSBレシーバーにおまけについているDACなので、音質的にも限られています。またワンチップだとジッターを取り除くための機能を介在させる余地がありません。
*PCM2704以降
DACとともにSPDIF変換機能が付きました。これを使うとPCM2704自体ではDA変換をせずに、いったんSPDIFにして別の本格的なDACチップに渡してそちらでアナログにすることで高音質化がはかれます。
また、USBレシーバーとDACの間にジッターリダクションのためにASRCなどを行うICを介在させる余地も生まれます。
*PCM2706以降
I2Sをサポートしました。I2Sはクロック信号を分離できるためにSPDIFよりも有利なDACチップへのインターフェースとして働きます。このため、より高品質にDACチップまでデータを渡すことができます。
これら2700系はUSB DACの普及に役立ちましたが、同時にUSB DACは低価格向けとか音が良くないという悪評も生んでしまいました。
初期のUSB DACはオーディオ機材というよりPCの周辺機器としての考え方であったでしょう。それはオーディオ趣味という視点から見たときに受け入れられません。
しかし、USB DACをPCの周辺機器というよりも、オーディオ機器のソース機材であるという考え方をしたときに変化がうまれました。
これがいまのPCオーディオの考え方であると言えるかもしれません。ハイエンド機器の口として高品質なソースデータを供給する必要が出てきたからです。
2. USB DACのハイサンプリングへの道
PCM2700系の問題はネイティブで48/16が最大であるということです。
USBレシーバー以後にDACに入る前に88.2など高いサンプルレートに再サンプリングする手もありますが、これでは補完になってしまうので、ソースがハイサンプリングであるというメリットを生かせません。このように2700系がベースではUSBで受けるところがボトルネックになるため、ハイサンプリング時代のソースに対応できません。
またPC側のプレーヤーで88.2とか96kHzに再サンプリングしても無駄になってしまいます。
*TAS1020B
そこで出てきたのがTAS1020BというUSBレシーバーチップです。
2700系との違いは内蔵DACはないけれども、内部にマイクロプロセッサがあるのでその動作をプログラムして変更することが可能であるということです。これでUSBを受け取る振る舞いをプログラムを書いて制御することができるようになりました。2700ではそれがハードで固定なので48/16以上に対応できません。
これはレシーバー側で行うことなので、ドライバーは普通の標準ドライバーですむため余分なインストールは不要という利点もあります。
しかしこれはそう簡単ではないようです。
まず成功させたのはDACportのところで書いたようにCEntranceがTIから委託を受けてAdaptiveモードで実現をさせました。これはライセンスされてBenchmark、Lavry、PS Audio、Belcanto、Empiricalなどで使われています。これについてはDACportの項をご覧ください。
もうひとつはProtonのところで書いたようにWavelengthです。WavelengthのGordonさんはAsync転送でそれを実現させて、AyreはそのライセンスによりQB-9の成功を導きました。Async転送についてはProtonの項をご覧ください。
たぶんオーディオやっている人ならその多くはUSBとSPDIFのどちらかといわれれば、間違いなくSPDIFの方を選ぶでしょう。
わたしもGordonさんに「Protonがこれだけいいなら、Async方式のUSB-SPDIFコンバーターはすごいんでしょうね」と聞いたら、あっさりと「SPDIFにしたら音質落ちるよ、Async USB転送で直にDACに入れるのが一番良い」と言われました。それがいまのUSBの力です。
ただし公平に書くと、CEntranceのGoodmanさんはAsyncだから一概にAdaptiveよりよいわけではないと反論しています。つまりPC側のクロックを使おうとDAC側のクロックを使おうと、USBの転送自体がPC(OS)のバス占有の不確定さによって不安定であり、それによるジッターは避けられないということです。前にAsyncではDAC側にPCがあわせると書きましたが、かならずしもそうはならないということでしょうか。
WavelengthもCEntranceもUSBオーディオについては世界で一番知見があるので、私がどちらが良いと口を挟める余地はありません。ただ言えるのは、AsyncとかAdaptiveという前に重要なのは実際のプログラムコードであるということです。単にTAS1020BがAsyncモードで動作するとか、Adaptiveで動作するとか、それ自体ではなく、GordonさんやGoodmanさんの書いたプログラムが優れているという点です。それゆえ他のメーカーはそれをライセンスしているわけです。
いまの状況としてはAdaptive方式はTIの推奨として多くのメーカーに採用され、Async方式はQB-9の成功に刺激されてとくに今年のCESを見ると採用メーカーが増えてきているようです。
これらにより高性能なオーディオファイル品質のDAC機器がUSBの口を持ち、ハイサンプリングソースにも対応できるようになりました。
しかしまだ問題は残ります。96/24の壁です。
3. TAS1020Bの限界と96/24の壁
TAS1020Bで48/16は突破できましたが、96/24は突破することができません。この大きな理由はTAS1020BがUSB1.1で動作しているからのようです。USB2.0ではありません。
そのためUSB1.1の細い口に処理限界が生じるようです。たぶんこれがGordonさんの指摘した「96/24はUSB規格の問題ではなく、製品としてのチップの問題である」ということだと思います。
そこで96/24を突破するには標準ドライバーではなく、カスタムドライバーが必要ということです。これは互換性やバグの問題を生じてしまいます。
ただしこれはTIだけを責めるわけにはいきません。TAS1020Bも新しいチップというわけではないようですが、USBの周辺についても少し説明が必要です。
USBデバイスを差しても特にドライバーのインストールもなく使用できるのはデバイスの種類に応じた標準ドライバーがあらかじめOSで用意されているからです。
このデバイスの種類をクラスといいます。たとえばハードディスクをつなぐときのマスストレージクラスなんかはよく聞くでしょう。他にもいくつかのクラスがあります。それらに共通して使える標準ドライバーをクラスドライバーとも言います。
オーディオにはUSB Audio Classというクラスがあり、USB.orgで規格化されています。ところがUSB自体については2.0は当たり前でそろそろ3.0に移ろうとかという時に、USB Audio Classについては、USB Audio Class 2.0が制定されたのはつい昨年(2009年)の5月です。それまでは1998年に制定されたUSB Audio Class 1.0が生きてきたわけです。
つまりUSBが新しい3.0に移行しようというこのときにも、オーディオの世界はまだ古い基準で動いているということです。ちなみにスペックに"USB Full Speed対応"とある場合は速度は早いように思えますが、1.1動作をしているということです。この辺はカタログマジックなのですが、USB2.0であれば"Hi Speed"です。(3.0は"Super Speed")
USBの前身というとシリアルインターフェースですが、これは低速デバイス接続の代名詞でした。
いずれにせよマウスやハードディスクなどでも使う汎用シリアルインターフェースのUSBをハイエンドオーディオのデータ受け渡しに使うという考え方に周辺までもが付いていっていないということは事実だと思います。
ハードウエアのみならず、ソフトウエアのプログラムコードとも両方工夫されていることがUSB機器のポイントと前に書きましたが、つまりはUSBについては与えられたままではハイエンドオーディオについてあまり考慮されていないので、それなりの工夫しないといけないということですね。

DACportとUMPC
4. USBオーディオの今後
今年はUSB3.0元年となると思いますが、ことオーディオ分野ではUSB3.0がでたとしても改善がもたらされるかということについてははっきりとは言えません。バスの転送速度はあがりますが、対応するチップでないとそれを生かせません。
あきらかなプラスは給電能力があがるということで、これはDACportみたいに電力がほしいアンプには良いでしょう。
また別の課題もあります。
USBにしろ、SPDIFにしろ、こうしたシリアル転送方式をオーディオで使う時の問題は転送速度よりもむしろクロックと音楽データを一本の線で混ぜて送るという点にあると思います。ふたつの情報を混ぜるためには加工して符号化し、それをまた加工して戻す必要があります。これでジッターが増大します。これは前にLINNのNumerikのときにクロックリカバリーのところで書いた問題です。
PS AudioはHDMIでクロックとデータを別にI2Sで送る方法を提案してPerfectWave Transportで実現させ、また公開もしています。そしてこの方式に追随するメーカーも表れています。今後はこうした点も考慮が必要です。
もちろんUSBの有利な点はスペックよりも、いうまでもなくすべてのPCに等しく装備されているという点です。
FirewireやHDMIはすべてのPCで装備されているわけではありませんが、USBならばすべてのPC(そしてMac)で装備されています。カードスロットも不要でカバーを開ける必要もありません。USBを装備しているというのは簡単で汎用なオーディオインターフェースを持っているということと同じです。
今年のCESで出展されたResolution AudioのPont neuf/CantataシステムはUSBとネットワークの世界を融合するブリッジ製品を提案しています。これはちょっと考えられませんでしたが、今後もこうした進歩的なデバイスが出てくるかもしれません。
おそらくはUSBオーディオというくくり自体があいまいになる時代もやがて来るかもしれませんが、それはまた別の話です。
いずれにせよ普通のPCがハイエンドオーディオのラックに並べられるということを10年前に想像しえた人は少ないでしょう。そもそもPCをハイエンドオーディオに使うという発想がだれにもなかったという点がUSBの問題と言えるのかもしれません。それをいま駆け足で追いつこうとしているわけです。
「USBオーディオ」という言葉は古くからあったようでいて、実はその言葉の意味するところは新しい試みであるという考え方の変化が求められているのではないでしょうか。
Nuforce uDACとWavelength Proton
USB DACは目新しいものではありませんが、はじめはUSB入力はDACやアンプの付加機能的なものでした。また音質も期待されていませんでした。単にPCの楽曲が再生できればよいという、いわばおまけのための機能です。
しかし昨年2009年度のStereophile誌の年間ベスト賞を受賞したAyreのQB-9はUSB DACです。これはデジタル機材部門だけではなく、数百万円のアンプやスピーカーも含めたすべてのオーディオ機材の年間最優秀として選ばれたのです。
http://stereophile.com/features/istereophileis_products_of_2009/index8.html
これはLINNのCDプレーヤー生産停止と並んで昨年2009年度を代表する出来事だったと思います。そこに至る流れをPCとDACをつなぐUSBレシーバー(デバイス側の受け取りチップ)という観点からまとめて見ました。
(ちなみに本稿は代表的なBurr Brown系のチップについての流れですが、TI/BB以外にもUSBレシーバーはありますので念のため)
1. 初期のUSB DAC - PCM2700系の時代
USB DACの初期のUSBレシーバーの代表的なチップはTI(Burr Brown)のPCM2700系のチップでした。これはひとつにはUSBレシーバーの機能とともにDACがワンチップで内蔵されているという便利さにあります。
USBの信号を受け取るだけのはずのUSBレシーバーチップにそもそもDACがついているというのは、WindowsがUSBをサポート始めた当時のバーブラウンがUSB市場に打って出るための戦略的なものだそうです。
*PCM2702
これはDACが内蔵されているので、手軽にUSBのデジタル信号からアナログのオーディオ出力を取り出すことができます。これにより安価で小型のUSB DACが可能になりました。
しかし、さすがにUSBレシーバーにおまけについているDACなので、音質的にも限られています。またワンチップだとジッターを取り除くための機能を介在させる余地がありません。
*PCM2704以降
DACとともにSPDIF変換機能が付きました。これを使うとPCM2704自体ではDA変換をせずに、いったんSPDIFにして別の本格的なDACチップに渡してそちらでアナログにすることで高音質化がはかれます。
また、USBレシーバーとDACの間にジッターリダクションのためにASRCなどを行うICを介在させる余地も生まれます。
*PCM2706以降
I2Sをサポートしました。I2Sはクロック信号を分離できるためにSPDIFよりも有利なDACチップへのインターフェースとして働きます。このため、より高品質にDACチップまでデータを渡すことができます。
これら2700系はUSB DACの普及に役立ちましたが、同時にUSB DACは低価格向けとか音が良くないという悪評も生んでしまいました。
初期のUSB DACはオーディオ機材というよりPCの周辺機器としての考え方であったでしょう。それはオーディオ趣味という視点から見たときに受け入れられません。
しかし、USB DACをPCの周辺機器というよりも、オーディオ機器のソース機材であるという考え方をしたときに変化がうまれました。
これがいまのPCオーディオの考え方であると言えるかもしれません。ハイエンド機器の口として高品質なソースデータを供給する必要が出てきたからです。
2. USB DACのハイサンプリングへの道
PCM2700系の問題はネイティブで48/16が最大であるということです。
USBレシーバー以後にDACに入る前に88.2など高いサンプルレートに再サンプリングする手もありますが、これでは補完になってしまうので、ソースがハイサンプリングであるというメリットを生かせません。このように2700系がベースではUSBで受けるところがボトルネックになるため、ハイサンプリング時代のソースに対応できません。
またPC側のプレーヤーで88.2とか96kHzに再サンプリングしても無駄になってしまいます。
*TAS1020B
そこで出てきたのがTAS1020BというUSBレシーバーチップです。
2700系との違いは内蔵DACはないけれども、内部にマイクロプロセッサがあるのでその動作をプログラムして変更することが可能であるということです。これでUSBを受け取る振る舞いをプログラムを書いて制御することができるようになりました。2700ではそれがハードで固定なので48/16以上に対応できません。
これはレシーバー側で行うことなので、ドライバーは普通の標準ドライバーですむため余分なインストールは不要という利点もあります。
しかしこれはそう簡単ではないようです。
まず成功させたのはDACportのところで書いたようにCEntranceがTIから委託を受けてAdaptiveモードで実現をさせました。これはライセンスされてBenchmark、Lavry、PS Audio、Belcanto、Empiricalなどで使われています。これについてはDACportの項をご覧ください。
もうひとつはProtonのところで書いたようにWavelengthです。WavelengthのGordonさんはAsync転送でそれを実現させて、AyreはそのライセンスによりQB-9の成功を導きました。Async転送についてはProtonの項をご覧ください。
たぶんオーディオやっている人ならその多くはUSBとSPDIFのどちらかといわれれば、間違いなくSPDIFの方を選ぶでしょう。
わたしもGordonさんに「Protonがこれだけいいなら、Async方式のUSB-SPDIFコンバーターはすごいんでしょうね」と聞いたら、あっさりと「SPDIFにしたら音質落ちるよ、Async USB転送で直にDACに入れるのが一番良い」と言われました。それがいまのUSBの力です。
ただし公平に書くと、CEntranceのGoodmanさんはAsyncだから一概にAdaptiveよりよいわけではないと反論しています。つまりPC側のクロックを使おうとDAC側のクロックを使おうと、USBの転送自体がPC(OS)のバス占有の不確定さによって不安定であり、それによるジッターは避けられないということです。前にAsyncではDAC側にPCがあわせると書きましたが、かならずしもそうはならないということでしょうか。
WavelengthもCEntranceもUSBオーディオについては世界で一番知見があるので、私がどちらが良いと口を挟める余地はありません。ただ言えるのは、AsyncとかAdaptiveという前に重要なのは実際のプログラムコードであるということです。単にTAS1020BがAsyncモードで動作するとか、Adaptiveで動作するとか、それ自体ではなく、GordonさんやGoodmanさんの書いたプログラムが優れているという点です。それゆえ他のメーカーはそれをライセンスしているわけです。
いまの状況としてはAdaptive方式はTIの推奨として多くのメーカーに採用され、Async方式はQB-9の成功に刺激されてとくに今年のCESを見ると採用メーカーが増えてきているようです。
これらにより高性能なオーディオファイル品質のDAC機器がUSBの口を持ち、ハイサンプリングソースにも対応できるようになりました。
しかしまだ問題は残ります。96/24の壁です。
3. TAS1020Bの限界と96/24の壁
TAS1020Bで48/16は突破できましたが、96/24は突破することができません。この大きな理由はTAS1020BがUSB1.1で動作しているからのようです。USB2.0ではありません。
そのためUSB1.1の細い口に処理限界が生じるようです。たぶんこれがGordonさんの指摘した「96/24はUSB規格の問題ではなく、製品としてのチップの問題である」ということだと思います。
そこで96/24を突破するには標準ドライバーではなく、カスタムドライバーが必要ということです。これは互換性やバグの問題を生じてしまいます。
ただしこれはTIだけを責めるわけにはいきません。TAS1020Bも新しいチップというわけではないようですが、USBの周辺についても少し説明が必要です。
USBデバイスを差しても特にドライバーのインストールもなく使用できるのはデバイスの種類に応じた標準ドライバーがあらかじめOSで用意されているからです。
このデバイスの種類をクラスといいます。たとえばハードディスクをつなぐときのマスストレージクラスなんかはよく聞くでしょう。他にもいくつかのクラスがあります。それらに共通して使える標準ドライバーをクラスドライバーとも言います。
オーディオにはUSB Audio Classというクラスがあり、USB.orgで規格化されています。ところがUSB自体については2.0は当たり前でそろそろ3.0に移ろうとかという時に、USB Audio Classについては、USB Audio Class 2.0が制定されたのはつい昨年(2009年)の5月です。それまでは1998年に制定されたUSB Audio Class 1.0が生きてきたわけです。
つまりUSBが新しい3.0に移行しようというこのときにも、オーディオの世界はまだ古い基準で動いているということです。ちなみにスペックに"USB Full Speed対応"とある場合は速度は早いように思えますが、1.1動作をしているということです。この辺はカタログマジックなのですが、USB2.0であれば"Hi Speed"です。(3.0は"Super Speed")
USBの前身というとシリアルインターフェースですが、これは低速デバイス接続の代名詞でした。
いずれにせよマウスやハードディスクなどでも使う汎用シリアルインターフェースのUSBをハイエンドオーディオのデータ受け渡しに使うという考え方に周辺までもが付いていっていないということは事実だと思います。
ハードウエアのみならず、ソフトウエアのプログラムコードとも両方工夫されていることがUSB機器のポイントと前に書きましたが、つまりはUSBについては与えられたままではハイエンドオーディオについてあまり考慮されていないので、それなりの工夫しないといけないということですね。
DACportとUMPC
4. USBオーディオの今後
今年はUSB3.0元年となると思いますが、ことオーディオ分野ではUSB3.0がでたとしても改善がもたらされるかということについてははっきりとは言えません。バスの転送速度はあがりますが、対応するチップでないとそれを生かせません。
あきらかなプラスは給電能力があがるということで、これはDACportみたいに電力がほしいアンプには良いでしょう。
また別の課題もあります。
USBにしろ、SPDIFにしろ、こうしたシリアル転送方式をオーディオで使う時の問題は転送速度よりもむしろクロックと音楽データを一本の線で混ぜて送るという点にあると思います。ふたつの情報を混ぜるためには加工して符号化し、それをまた加工して戻す必要があります。これでジッターが増大します。これは前にLINNのNumerikのときにクロックリカバリーのところで書いた問題です。
PS AudioはHDMIでクロックとデータを別にI2Sで送る方法を提案してPerfectWave Transportで実現させ、また公開もしています。そしてこの方式に追随するメーカーも表れています。今後はこうした点も考慮が必要です。
もちろんUSBの有利な点はスペックよりも、いうまでもなくすべてのPCに等しく装備されているという点です。
FirewireやHDMIはすべてのPCで装備されているわけではありませんが、USBならばすべてのPC(そしてMac)で装備されています。カードスロットも不要でカバーを開ける必要もありません。USBを装備しているというのは簡単で汎用なオーディオインターフェースを持っているということと同じです。
今年のCESで出展されたResolution AudioのPont neuf/CantataシステムはUSBとネットワークの世界を融合するブリッジ製品を提案しています。これはちょっと考えられませんでしたが、今後もこうした進歩的なデバイスが出てくるかもしれません。
おそらくはUSBオーディオというくくり自体があいまいになる時代もやがて来るかもしれませんが、それはまた別の話です。
いずれにせよ普通のPCがハイエンドオーディオのラックに並べられるということを10年前に想像しえた人は少ないでしょう。そもそもPCをハイエンドオーディオに使うという発想がだれにもなかったという点がUSBの問題と言えるのかもしれません。それをいま駆け足で追いつこうとしているわけです。
「USBオーディオ」という言葉は古くからあったようでいて、実はその言葉の意味するところは新しい試みであるという考え方の変化が求められているのではないでしょうか。

