Music TO GO!

2024年12月07日

MQAのQRONO d2a技術とは何か、技術白書からの考察

先日発表されたMQA Labsの新技術、QRONOラインナップのひとつである「QRONO d2a」技術とは"d2a(Digital to Analog)"という名称から、DA変換に関する技術であることは容易に想像がつきます。またQRONOは時間を意味するChronoのアナグラムであり、時間に関する技術とも推測できます。
端的にいうとQRONO d2aとは、DACにカスタマイズしたデジタルフィルターです。それでは従来のものとはどのように違うのかというところをMQA Labsの発行した技術白書から考察します。

まず技術白書のサブタイトルが「アナログの魂を持つデジタルオーディオ」というところからも「QRONO d2a」の目指すところが推し量れると思います。
前書きではアナログオーディオからデジタルオーディオに移行して、数値的には性能が改善されたが、音は生き生きとしたものではなかった。それを聴覚的に探っていくところから始まったとあります。

まず従来のデジタルフィルターはデジタル変換に起因する問題(エイリアシング)を避けて、測定的な数値を向上するのが目的であり、そのことが副作用としての時間的なスミア(にじみ)を生じていたとしています。これは「ブリックウォール(レンガ壁)」設計ともいうべきもので、特定の周波数を壁のように急峻に切り立たせています。
なぜブリックウォールにすると時間的な滲みが出るかというと、車が道路の段差を通過する際、段差を超えた後も車が長時間揺れ続けるようなものです。この揺れが音のスミアに相当します。スミアとは絵の線がぼやけてしまうようなもので、この揺れはデジタルのアーティファクト(副作用)でよく出てくるポスト・リンギングでもあります。ポスト・リンギングは実際の音の後に聞こえないはずの音が生じることです。実際の音の前に音が聞こえるプリ・リンギングは車の例えでは表せませんが、それはつまり自然界にない不自然なものだということです。それゆえプリ・リンギングの方がより悪質です。

「QRONO d2a」はこうした当たり前と思われていたデジタルっぽさにメスを入れたものです。つまりプリリンギングは生じないようにし、スミア、ポストリンギングも最小に抑えるということです。
従来のフィルターは周波数に関係なく一様に適用されていましたが、これは88kHzなど高解像度の音楽信号に対してフィルターが過剰に働きすぎて(不要な処理を行い)、音質に悪影響を与えることがあるいうことです。それに対してQRONO d2aのフィルターは、88kHz以上についてサンプリング周波数に合わせて最適化されて設計されています。
次にノイズシェーピングを用いて信号の低レベルの部分を可聴帯域外に移動し、その部分をノイズマスキングします。低レベルの信号がマスクされるということは、データのビット数の下位ビット(24ビット目など)があまり重要ではなくなるということです。低レベルの信号部分はDACの精度が低いので、これはDAC自体のみかけの性能を向上させるのに役立ちます。つまりDAC性能のもっとも美味しい部分を取り出しやすくなり、それゆえにQRONO d2aのフィルターはDACハードに応じてカスタマイズされた設計になっています。
つまりQRONO d2aとは、入力周波数ごとにそのDACの最も美味しいところを取り出すことのできるデジタルフィルターということができます。

fig5 48kHz.png fig7 192kHz.png
48kHz(左)と192kHzにおける従来フィルター(赤)とQRONO d2a(緑)の違い
(MQA Labs WHITE PAPERより)


それでは実際にどのような効果があるかというと、上の技術白書のデータに表れています。
どちらも赤線が従来のDACの内蔵フィルターで、緑線がQRONO d2aフィルターです。QRONO d2aは48kHzでは従来のフィルターに対して1/2の時間で鳴り止んでいます。そして192kHzでは1/20もの短さで鳴り止んでいます。つまりQRONO d2aはハイレゾ領域でより有効に機能するということができます。
MQA labsではQRONO d2aによるCDレベルの再生は、従来の96kHzハイレゾファイルの時間応答に相当し、QRONO d2aで再生した192kHzハイレゾファイルは、最高のアナログ・システムの時間性能を超えるとさえ語っています。
聴覚上の効果としては、以前は不明瞭だったテクスチャーが明らかになり、ミクロレベルのダイナミクスが改善され、楽器の輪郭がはっきりし、ステレオの音場とイメージが向上するとしています。それによって音楽は自然に再生され、臨場感が増し、リスナーの疲労を軽減するということです。

まとめると、QRONO d2aとは数値的に優れたデータそのままの音再現よりも、音楽を聴いたときの音の良さを最大限に引き出すための技術ということができると思います。
またQRONO d2aが下位ビットを使わないで高音質を志向すると言うことは、MQAが下位ビットにデータを埋め込む技術であることを考えると、MQAの互換性を保ちながらも、その制約を克服してさらに高音質を目指した進化系の技術と言うことが考察できると思います。
posted by ささき at 13:56 | TrackBack(0) | __→ PCオーディオ最新技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年12月06日

MQA LabsがQRONOを市場投入、Bluesoundの新製品に搭載

またMQAに動きがありました。

まずここまでの流れを整理すると、2023年の9月にMQAはカナダのLenbrookグループに買収されます。レンブルックグループは傘下にBluesoundやNAD、PSB Speakersなどのオーディオブランドを擁しています。
アスキー記事: カナダのLendbrookがMQAを買収

その後に今年のCES2024直前の1月、再スタートすることをリリースで宣言しています。
アスキー記事: MQAのその後、衝撃の経営破綻から買収、再スタートへ
このリリースでは"監督"するに"oversee "というニュアンスを使ったことから、MQAの独立性に考慮してMQAには組織としての独立性には介入しないが戦略に関しては口を出すというようなスタンスでいると考えられます。MQAの業界スタンダードのポジションを考慮したと考えられます。

そして今年(2024年)の6月にはMQAの中核技術が「AIRIA」「FOQUS」「QRONO」という3つの技術であることをリリースで表明しています。
アスキー記事: MQAに新動向、MQA技術の先にある「AIRIA」「FOQUS」「QRONO」とは?
「AIRIA」はワイヤレスを考慮したMQAの延長線であるSCL6のリブランドであると考えられます。ただし残りの「FOQUS」と「QRONO」についてはあまり情報はなく、「FOQUS」はアナログ/デジタル変換における革新的なアプローチ、「QRONO」は再生機器内で様々なオーディオ処理を強化するものであるとだけアナウンスがありました。
ただし名称から推測すると、FOQUSは焦点が定まったという意味のFocus、QRONOは時間を意味するChronoに由来する造語と考えられます。つまりFOQUSはなんらかの解像度を上げる処理、QRONOはMQAのフィルタリングがそうであるような時間領域に関する処理であると推測できます。

そして12月5日、MQA Labは「QRONO」についての詳細を発表しました。
MQAニュースリリース: QRONO by MQA Labs Hits the Market (MQA LabsがQRONOを市場投入)

それによると「QRONO」ラインナップの中の「QRONO d2a」と「QRONO dsd」という二つの技術を発表しています。これらは(レンブルック傘下である)Bluesoundの新しいストリーマー(ネットワークプレーヤー)である「NODE ICON」に搭載されます。
端的にいうと、QRONO d2aはDACのフィルターと交換できる(DACハードに応じた)カスタムのデジタルフィルター、QRONO DSDは軽量なDSD/PCMコンバーターです。

MQA Labsのエンジニアリング・ディレクターであるAl Wood氏は次のように語っています。
「QRONO はハードウェアパートナーおよびライセンシーにソリューションを提供するプラットフォームです。我々は基本的な信号処理技術の緻密な適用に重点を置いています。これらには各DACチップから最高の性能を引き出すため、デジタル・アナログ変換の全体的なインパルス・レスポンスと透明性を向上させるフィルターやノイズ・シェイパーが含まれます。DSD変換は可能な限り軽く処理され、録音における重要な時間要素の細部までをすべて保持します。そしてBluesoundのNODE ICONにQRONOを統合した音質に満足しています」

MQA Labsのビジネス開発ディレクターであるAndy Dowell氏は次のように付け加えています。
「人間の聴覚は特に細かいディテールを聴くときにこれまで理解されていたよりもはるかに正確です。MQA Labsチームの専門知識をオーディオ再生の改善に応用することで、技術がユーザーの体験を向上させ続けるHiFi業界の繁栄というレンブルックのビジョンをさらに推し進めることができます」
このコメントはMQAのボブスチュアートがたびたび語っていたMQAの時間的処理の重要性と同じです。

BluesoundのNODE ICONはEversolo DMP-A8やA6に似た大きな液晶画面を搭載したネットワークプレーヤーです。ES9039Q2M DACをデュアル搭載し、ヘッドフォンアンプにTHX AAAを採用しています。
現在はプリオーダーとなっていますが、価格はUSD1399とあります。Bluesoundとしては新しいフラッグシップとなります。現行のNODEモデルはDSD対応がないようですが、その対応として今回の「QRONO dsd」の搭載に至ると考えられます。
https://www.bluesound.com/zz/node-icon?srsltid=AfmBOoqW2xl14dqoSZPZ7Hp8zz-u4mdLpBDgWACvBG4Kt07dBgETXMBe

MQA LabsではQRONO技術は、(デジタルでありながら)最高のアナログ・システムをさえ超える時間的性能を可能にするとしています。MQA LabsはCES、NAMMおよびISEに出展するとのことです。
posted by ささき at 09:46 | TrackBack(0) | __→ PCオーディオ最新技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年08月02日

Philewebに鹿島建設の立体音響技術「OPSODIS」の記事を執筆

Philewebに鹿島建設の立体音響技術「OPSODIS」の記事を執筆しました。
小さなサウンドバー上のスピーカーから後ろに回り込むような音が聞こえてくるのは圧巻です。
興味ある方はどうぞ。

脳が “バグる” 立体音響体験。クラファンで1億円を突破、鹿島建設のスピーカー「OPSODIS 1」は何がスゴい?
https://www.phileweb.com/review/article/202408/02/5689.html
posted by ささき at 15:25 | TrackBack(0) | __→ PCオーディオ最新技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年06月10日

アスキーにMQAに新動向の記事を執筆、MQA技術の先にある「AIRIA」「FOQUS」「QRONO」とは?

アスキーにMQAに新動向の記事を執筆、MQA技術の先にある「AIRIA」「FOQUS」「QRONO」とは?

https://ascii.jp/elem/000/004/203/4203236/
posted by ささき at 07:50 | TrackBack(0) | __→ PCオーディオ最新技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年03月15日

アスキーにWAVファイルに映像や照明の情報を書き込める、ヤマハの新技術「GPAP」の記事を執筆

アスキーにWAVファイルに映像や照明の情報を書き込める、ヤマハの新技術「GPAP」の記事を執筆しました。

https://ascii.jp/elem/000/004/182/4182798/
posted by ささき at 14:14 | TrackBack(0) | __→ PCオーディオ最新技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年10月24日

Stabe Diffusionの会社の音楽生成AI「Stable Audio」の試用記事をアスキーに執筆

Stabe Diffusionの会社の音楽生成AI「Stable Audio」の試用記事をアスキーに執筆しました。

https://ascii.jp/elem/000/004/162/4162873/
posted by ささき at 07:40 | TrackBack(0) | __→ PCオーディオ最新技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年10月22日

カナダのLendbrookがMQAを買収した記事をアスキーに執筆

カナダのLendbrookがMQAを買収した記事をアスキーに執筆しました。

https://ascii.jp/elem/000/004/158/4158545/
posted by ささき at 17:13 | TrackBack(0) | __→ PCオーディオ最新技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

RoonでのChatGPT応用AI検索の記事をアスキーに執筆

RoonでのChatGPT応用AI検索の記事をアスキーに執筆しました。


https://ascii.jp/elem/000/004/155/4155460/
posted by ささき at 17:07 | TrackBack(0) | __→ PCオーディオ最新技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年09月01日

フラウンホーファーIISインタビュー後編(次世代規格LC3plusの詳細)

アスキーにフラウンホーファーIISインタビュー後編(次世代規格LC3plusの詳細)を執筆。

https://ascii.jp/elem/000/004/149/4149687/
posted by ささき at 08:14 | TrackBack(0) | __→ PCオーディオ最新技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

フラウンホーファーIISインタビュー前編(フラウンホーファー研究所とLC3の詳細)

アスキーにフラウンホーファーIISインタビュー前編(フラウンホーファー研究所とLC3の詳細)を執筆。

https://ascii.jp/elem/000/004/148/4148665/
posted by ささき at 08:03 | TrackBack(0) | __→ PCオーディオ最新技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2023年04月26日

「KORG Live Extremeを活用した世界初の“DSDライブ映像配信”を体験」の記事をアスキーに執筆

「KORG Live Extremeを活用した世界初の“DSDライブ映像配信”を体験」の記事をアスキーに執筆しました。なかなか素晴らしい音のライブ配信です。

https://ascii.jp/elem/000/004/134/4134151/
posted by ささき at 11:09 | TrackBack(0) | __→ PCオーディオ最新技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「突然の報道、MQAが経営破綻?」の記事をアスキーに執筆

アスキーにMQA社が経営の危機にあるのではないかという記事をかきました。MQA社のホームページのフッターなどが情報になります。

https://ascii.jp/elem/000/004/133/4133268/
posted by ささき at 11:08 | TrackBack(0) | __→ PCオーディオ最新技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年05月02日

アップルミュージックにHIFIオプションが登場か?

今朝ほど海外のメディアが一斉にApple MusicにHIFI(おそらくロスレス)オプションが登場するという噂を報道しています。Techraderなどの有力紙も報じていますが、おそらくここが噂の震源です。
https://hitsdailydouble.com/news&id=326262&title=APPLE-GOING-HI-FI%253F

真偽のほどはわかりませんが、おそらく数週間以内に発表されてAirPods3の発表と込みではないかということです。このことからWWDCではないかとの観測も行われています。おそらくアップルミュージックHIFI(仮)が登場したとしてもSpotifi HIFIのように48/24でALACではないかと考えられますが、WWDCだとすると他になんらかのソフトウエア的な追加の可能性もあり、ちょっと楽しみな噂ではあります。

posted by ささき at 08:40| __→ PCオーディオ最新技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2021年03月08日

アスキーにGoogleの新しい低ビットレートコーデックLyraの記事を執筆しました

アスキーにAmazon Musicで採用されているコーデックOpusと、Googleの新しい低ビットレートコーデックLyraの記事を執筆しました。

https://ascii.jp/elem/000/004/046/4046656/
posted by ささき at 20:48| __→ PCオーディオ最新技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年03月11日

AKMがデジタルとアナログ分離型のDAC ICを発表

ASCII.JPにAKMがデジタルとアナログ分離型のDAC ICを発表した記事を書きました。
posted by ささき at 12:04| __→ PCオーディオ最新技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年12月15日

TIDALがDolby Atmosをサポート

TIDALがDolby Atmosのストリーミングをサポートしたようです。HIFIサブスクライバーのみで、現在はAndroidのみに限られているかも。
posted by ささき at 19:03| __→ PCオーディオ最新技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年11月18日

InterBeeでMQAと映像の融合デモ

InterBeeで動画とMQAの融合したHDビデオのデモを見てきました。これはWOWOWとの協力によるものです。
https://mqa.jp/article/WOWOW_MQA_collaboration/

IMG_3716_s.jpg IMG_3722_s.jpg

MQAのひとつの利点は柔軟性ですが、ビデオの音声トラックは48/24までなのでMQAでハイレゾを入れられるというメリットがあります。
しかし従来の動画の音声トラックのコーデックはAACなので、MQAをそのまま使うことはできません。それをMPEG4-ALSを用いてロスレスをサポートした方式にするという点がポイントです。

IMG_3711_s.jpg IMG_3721_s.jpg

デモではPCでVLCを使ってMP4ビデオを再生していました。たしかにライブなどはなかなかの臨場感があり、イマーシブという言葉がよくあいます。技術的にはアコースティックフィールドのHPLと、NTTスマートコネクト社のサポートがあるということです。
posted by ささき at 08:25| __→ PCオーディオ最新技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年03月06日

ちょっとややこしいUSB新規格

USB4.0の仕様がUSB.orgで発表されています。(下記リリース参照)
https://usb.org/sites/default/files/2019-03/USB_PG_USB4_DevUpdate_Announcement_FINAL_20190226.pdf

最大40Gbpsという高速規格で、ポイントはUSB3.2、USB2.0やThunderbolt3とも互換性があるということです。上のリリースでもエンドタイプを動的に切り替えることができるとありますので、これらは自由に差し替え可能だと思われます。
さて、ここでもうひとつポイントは上の互換性記述でUSB3.1とかUSB3.0というのがないですよね?これはどうしてかというと、これとは別に最近のMWCで最大20GbpsのUSB3.2の規格が制定され、従来のUSB3.1とUSB3.0は"USB3.2"という規格に統合されたからだと思います。
これがややこしいのはUSB3.0(5Gbps)はUSB3.2 gen1、USB3.1(10Gbps)はUSB3.2 gen2、そしてUSB3.2自体はUSB3.2 gen2x2とリブランドされています。これはUSB3.2が2チャンネルの10Gbpsを使用する規格なので、技術的にはただしいのかもしれませんが、ややこしいとは言えますね。
ただ実のところUSB3.1のときもUSB3.0がUSB3.1 gen1とリブランドされてたようなので、それを引き継いでややこしくなったものと思います。
ちなみに名称はそれぞれ、USB3.1 gen1はSuperSpeed USB、USB3.2 gen2はSuperSpeed USB 10Gbps、USB3.2 gen2x2はSuperSpeed USB 20Gbps、USB4はまだわかりません。USB2.0はHigh Speed USBでしたね。
posted by ささき at 09:32| __→ PCオーディオ最新技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月20日

PhilewebにRoon1.5のMQA再生の記事を執筆しました

PhilewebにRoon1.5のMQA再生機能の記事を執筆しました。
MQA-CDリッピング音源のRoonとAudirvana plusの挙動の違いやAudio MIDIでみるデータ転送幅など細かいところにも着目してMQAの実体に近づこうというものなのでぜひご覧ください。

https://www.phileweb.com/sp/review/article/201806/20/3077.html
posted by ささき at 09:11| __→ PCオーディオ最新技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年06月17日

MQAのポータブルオーディオ最前線についてボブスチュアート氏の話

xDSDの特徴の一つはMQA対応ですが、いまのところはデスクトップでAudirvanaやTidalと接続しなければなりません。それではxDSDのコンパクトさを生かすポータブルでは使えないのか、という課題をかかえつつ週末のOTOTENに行き、またボブスチュアート氏とも話をする機会を得たのでこの辺も聞いてきました。

IMG_4570_filtered[1].jpg

前提として、ポータブルオーディオではコンパクトさが優先されるため、ハードウエアでは低プロセッサパワーでも動作可能なMQAレンダラーが採用されるということがあります。レンダラーはコアデコーダーがないとMQAファイルを認証できないので、つまり外部にMQAコアデコーダーが必要です。

xDSDをポータブルでMQA再生するための一つ目の方法はMQA対応しているDAPを使用することです。DAPはアナログ出力が必要なので、MQA対応するためには単体完結できるMQAフルデコーダーが搭載されている必要があります。MQAフルデコーダーとはMQAコアデコーダーとMQAレンダラーが一体になったものでもあるため、MQAフルデコーダーは設定によってMQAコアデコーダーとしても動作が可能です。

このことから、まずxDSDをActivo CT10やOnkyo DPX1とUSBで接続してみました(AQ Dragontailケーブル)。ちなみにAstell & Kern DAPも近々MQA対応するはずです。

IMG_4563_filtered[1].jpg  IMG_4566_filtered[1].jpg

上はActivo CT10のUSB出力設定画面ですが、MQAソフトウエアデコードが選択できることがわかります。また実際にxDSD側でもマジェンタのLEDがついているのでMQAで入力されていることがわかります。

IMG_4574_filtered[1].jpg

上の写真はONKYO DPX1をスチュアート氏が操作しているところ。ONKYOはUSB接続によって自動選択されるようです。

xDSDをポータブルでMQA再生するための次の方法はスマートフォンです。EssentialなどMQA対応を表明しているアンドロイドスマホも出てきていますが、iPhoneの場合にはアプリが必要です。これは開発中のアプリをボブスチュアート氏が見せてくれたのですが、実はMQA Ltd.がiPhone用の再生アプリを開発しています。

IMG_4572_filtered[1].jpg

さっそくたまたま持っていた()カメラキットケーブルでiPhoneと接続してxDSDにiPhone上でMQAアプリを使用したMQAコアデコードを行ってみました。上の写真を見てわかるようにxDSD側でマジェンタのLEDがついているのでMQAで入力されていることがわかります。

IMG_4573[1].jpg


また、もうひとつiPhoneアプリではAmarra Playアプリもあります。これは現在でも使えるのですが、同一のWiFi上に親のAmarra luxeが必要です。ただし将来のアップデートでスタンドアローンで動作するバージョン(V1.6)を予告しています。ボブスチュアート氏はすでにこのスタンドアロンの開発版も持っていてデモを見せてくれました。上の写真のようにやはりxDSD側でマジェンタのLEDがついているのでMQAで入力されていることがわかります。また左下にAmarraのマークが表示されているのが見て取れるでしょう。


このようにMQAのポータブル応用はすでに始まりつつあります。
MQAの特徴の一つは階層的ともいいますが、さまざまな分野への応用力・柔軟性が高いことです。MQAはすでにファイル再生だけではなく、CDでも適用可能なことを見せてくれました。16bitでも32bitでも対応できるし、ハードも様々な対応が可能です。

IMG_4578_filtered[1].jpg

上はボブスチュアート氏が書いてくれたMQAコアデコーダーとMQAレンダラーの関係のメモです。ここではさらにレンダラーがチャンネルデバイダやデジタルクロスオーバーなども経由して、周波数帯別やチャンネル別のマルチアンプとの対応も可能であることが示されています。
MQAはまだ緒についたばかりですが、ポータブルへの応用をはじめ可能性の多様さに興味が惹かれます。
posted by ささき at 17:40| __→ PCオーディオ最新技術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする