プロトタイプに登場していたような「合体メカ」ではなくなったのが残念ですが、これは主にAppleの定めた電波規制によるものということです。その代わりにiPod/iPhoneを一緒に収納できるケースがついてきます。


改めて説明すると、HP-P1はDAC内蔵のポータブルアンプです。最大の特徴はiPod/iPhone/iPadからiTransportのようにデジタルでオーディオ信号が取り出せるという点です。つまりiPodの中の小さなDACよりもより本格的なDACチップと周辺回路を使用してDA変換が出来ることで音質を大きく向上することが出来ます。ヘッドフォンアンプを内蔵しているのでそのままDAC・ヘッドフォンアンプ一体型機として使用することが出来ます。


製品としてのHP-P1は多機能で、アナログのインとアウトがあり、DACとして使用して別のアンプに出力することも出来ますし、アナログ入力の普通のポータブルアンプとしても使用ができます。さらに光デジタル出力がついていて、トランスポートとしても機能します。この辺は特にユーザーの声を重視したということです。iBasso D10/D12などにも使えそうですね。もちろん据え置きのDACに接続することもできます。HP-P1は底面が置きやすく設計されてるので、据え置き的に使うこともできます。
またゲインも3段階あります。ポータブルなら二つでも良さそうに見えますが、海外の例などを見るとやはりポータブルアンプをそのまま据え置きとして使う人もまた多くいます。そうした場合には二段階だけではなく3段階あるほうが柔軟に使えます。
普通に会社の会議で決めたら、ゲインなんかhi/loだけで良いじゃないとか、光アウトなんかなにに使うの、と言われそうですが、いまのヘッドフォン文化を吸い上げて取り込んでいくというのもフォステクスが小回りの効く良い会社であるゆえんだと思います。そう言う意味ではクリプトンのUSBケーブルでも書いたように新しい文化に向けたメーカーの取り組みが見える製品ですね。
もちろん新機軸もあって、たとえばデジタルフィルターの切り替えです。これはAKM DACチップに内蔵するフィルターを切り替えできるもので、微妙に音の表情を変えることが出来ます。普通の単体DACでもあまり採用されることはない機能なので本格的ですね。フィルターはモード1の方がピアノのアタックなどが明瞭に聞こえるので性能が良い風に聞こえますが、モード2の方がより自然で音色が素直に聞こえます。ただ曲によってはもの足らなくなることもあるので、そうしたときにモード1に戻せば良い、というように良い補完関係にあるので曲の好みによって変えられます。
音質
一聴してiPod/iPhoneの音とは別物で、iPodにポータブルアンプを付けたシステムよりもさらにひとクラス上です。やはりDACを外付けにすると言う効果は高いと言えますね。HP-P1の場合はDACとアンプが一体型でその間にケーブルが不要ということも明瞭感の高さに寄与していると言えます。
イヤフォンは主にJH16にWiplashのTWag OMを使用しました。(TWag Over Moldの記事って書いたっけ?)
こうした高性能イヤフォンと組み合わせると音の細やかさ、消え入りそうな細かい音まで浮き上がってくるさまがリアルに再現されます。音再現もスムーズでなめらかですね。
音像に曖昧さがなく、鳴り響く鐘の音など正確な音色で整った再現ができています。良録音のリファレンスCDを聞くと複雑に楽器の絡むパートでも音がよく整理されていて楽曲構造が分かりやすく聞こえます
全体的な音の傾向はフォステクスらしく特定の強調感はなく自然な傾向で、フィルターモード2だと一層そう感じます。
設計としてはHP-A3をベースにしているようですが、よりプロ機っぽいモニターライクなA7に比べたA3の聴きやすさというところがここには活かされているように思います。つまりフォステクスというスタジオ仕様っぽいイメージよりは普通のオーディオに近い聴きやすさがある感じです。この辺が高再現性ながらも、きつ過ぎず聴きやすいところで、ロックみたいに激しいガチャガチャした音楽でも整理されて良いと思います。
もちろん着色は少なく再現性は素直なのでイヤフォンの個性で好みを合わせやすいとも言えます。
光出力でのデジタル品質も高いですね。
iPodかiPhoneか
HP-P1はiPodの他にiPhoneやiPadも使うことが出来ます。詳細は仕様をご覧ください。
iPhoneとiPodでも音は違うし、iPhoneではアプリでも違います。
ポータブルオーディオもやっぱり音質重視とはいえ、HM801とかColorflyに慣れてるとiPodのような優れたUIが使えるのは利点と感じられます。
iPodに関しては私のRWA iModは5.5GなのでiTransportの場合と同じく、デジタルアウトは可能ですが付けたら操作不能になりますので、実質あまり使い物になりません。
そこで最新のiPod classic 160GBを買ってしまいました。2010 6.5Gというんでしょうか、まさかいまただのiPodをまた買うとは思いませんでしたが、これは意外と正解でした。iPhoneも良いけどやはり手持ちの音源をどっと入れたいですからね。またハードボタンがないとプレーヤーとしては使いにくいというのもあります。
音もiPhoneの方がややクリアですが全体的な音の聴きやすさはiPod classicの方がやや良いようにも思いますね。
ただしiPhoneであればスマートフォンの柔軟さを活かしてさらに応用範囲は広がります。
FLAC PlayerアプリとGolden Earアプリ
たとえばアプリを入れ替えることで対応ファイルフォーマットを増やすことが出来ます。iPodやiPhoneではAppleロスレスやAIFFなどアップルのフォーマットに限られてしまいますが、FLAC Playerを使えばFLACを再生することが出来ます。またこれも高音質のiPhoneアプリですがGolden earを使うとape(Media Monkeyのロスレス形式)まで再生が可能になります。それぞれで音質も変わります。Golden EarではCUEシートサポートまで可能になります。
Golden Earアプリ
http://itunes.apple.com/jp/app/golden-ear/id407945101?mt=8
Plug PlayerアプリとiOSのホームシェアリング機能
もっと面白いのはiPhoneの無線LANに適合した優れた柔軟性を活かすということです。それと先に書いた光デジタル出力を活用して、無線LANネットワーク対応のトランスポートとして使用ができます。
つまりiPhoneの周辺機器としてHP-P1を活用できます。
iPhoneだと携帯として使うので付けっぱなしに出来ないなら、iPod touchを使うこともできるでしょう。あるいはiPhone4に交換して使わなくなった3GSを活用することもできます。

パソコンに入っている音楽ファイルを無線LANを使って離れたところのオーディオで使いたい場合はHP-P1の光出力をDACに接続して、iPhoneでは対応アプリをインストールします。
例えばDLNAで使いたい時はPlug Playerを使うことができます。またiOS4.3で強化されたiTunesのホームシェアリング機能を使うこともできます。もしiTunesのクラウド化が実現すればパソコンを立ち上げる必要さえないことになります。
WiFi2HiFiアプリ
上の二つではiPhoneがコントロールポイントになるので、iPhone画面から再生曲をコントロールすることになります。
もしiPhone+HP-P1をDACのところにおいたままMac/PCで再生をコントロールしたいときはストリーミングアプリのWiFi2HiFiを使うと良いですね。ここではMacを使って解説します。(PCでも使えるはず)

WiFi2HIFiアプリとMac側の画面
http://itunes.apple.com/jp/app/wifi2hifi/id417409424?mt=8
WiFi2HiFiはiPhoneに入れるアプリ(いわば受信機)とPCとMacにインストールするソフト(いわば送信機)からなります。
WiFi2HiFiソフトをMacにインストールして立ち上げるとそのWiFi2HiFi自体がオーディオデバイスとしてMacに認識されます。
これはあたかもUSB DACを付けて認識されたのと同じですので、そこでWifi2Hifiを出力デバイスとしてミュージックプレーヤーから再生するとそのままWiFi越しに同一ネット上のiPhone+Wifi2Hifiアプリにストリーミングされます。アプリ側は立ち上げておくだけで特に操作は必要ありません。
プレイヤーソフトに関してはPure MusicやAmarraが使えます。ただしFideliaやAudirvanaでは使えませんでした。これはWifi2HiFiのネイティブフォーマットがなぜか32bitのみだからと思いますが、ちょっと分かりません。
iPhoneをHP-P1につないでトランスポートとしてDACに光で入れておけばかなりの高音質が楽しめます。
こうすることで特にネットワークオーディオ機器を使用しなくても、ネットワークオーディオが構成できます。
このようにiPhoneをHP-P1に組み合わせるというのは単に楽曲データの入ったトランスポートを提供するというだけではなく、ネットワークの柔軟性ももたらしてくれます。
基本的にいまからはこれはPCオーディオ機材でこれはポータブルオーディオ機材なんていう垣根はなくなっていくのかもしれません。