Music TO GO!

2011年03月21日

フォステクスポータブル FOSTEX HP-P1

何回かフォローしてきました待望のフォステクスのポータブルが発売されました。
プロトタイプに登場していたような「合体メカ」ではなくなったのが残念ですが、これは主にAppleの定めた電波規制によるものということです。その代わりにiPod/iPhoneを一緒に収納できるケースがついてきます。

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改めて説明すると、HP-P1はDAC内蔵のポータブルアンプです。最大の特徴はiPod/iPhone/iPadからiTransportのようにデジタルでオーディオ信号が取り出せるという点です。つまりiPodの中の小さなDACよりもより本格的なDACチップと周辺回路を使用してDA変換が出来ることで音質を大きく向上することが出来ます。ヘッドフォンアンプを内蔵しているのでそのままDAC・ヘッドフォンアンプ一体型機として使用することが出来ます。

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製品としてのHP-P1は多機能で、アナログのインとアウトがあり、DACとして使用して別のアンプに出力することも出来ますし、アナログ入力の普通のポータブルアンプとしても使用ができます。さらに光デジタル出力がついていて、トランスポートとしても機能します。この辺は特にユーザーの声を重視したということです。iBasso D10/D12などにも使えそうですね。もちろん据え置きのDACに接続することもできます。HP-P1は底面が置きやすく設計されてるので、据え置き的に使うこともできます。
またゲインも3段階あります。ポータブルなら二つでも良さそうに見えますが、海外の例などを見るとやはりポータブルアンプをそのまま据え置きとして使う人もまた多くいます。そうした場合には二段階だけではなく3段階あるほうが柔軟に使えます。

普通に会社の会議で決めたら、ゲインなんかhi/loだけで良いじゃないとか、光アウトなんかなにに使うの、と言われそうですが、いまのヘッドフォン文化を吸い上げて取り込んでいくというのもフォステクスが小回りの効く良い会社であるゆえんだと思います。そう言う意味ではクリプトンのUSBケーブルでも書いたように新しい文化に向けたメーカーの取り組みが見える製品ですね。
もちろん新機軸もあって、たとえばデジタルフィルターの切り替えです。これはAKM DACチップに内蔵するフィルターを切り替えできるもので、微妙に音の表情を変えることが出来ます。普通の単体DACでもあまり採用されることはない機能なので本格的ですね。フィルターはモード1の方がピアノのアタックなどが明瞭に聞こえるので性能が良い風に聞こえますが、モード2の方がより自然で音色が素直に聞こえます。ただ曲によってはもの足らなくなることもあるので、そうしたときにモード1に戻せば良い、というように良い補完関係にあるので曲の好みによって変えられます。

音質

一聴してiPod/iPhoneの音とは別物で、iPodにポータブルアンプを付けたシステムよりもさらにひとクラス上です。やはりDACを外付けにすると言う効果は高いと言えますね。HP-P1の場合はDACとアンプが一体型でその間にケーブルが不要ということも明瞭感の高さに寄与していると言えます。

イヤフォンは主にJH16にWiplashのTWag OMを使用しました。(TWag Over Moldの記事って書いたっけ?)
こうした高性能イヤフォンと組み合わせると音の細やかさ、消え入りそうな細かい音まで浮き上がってくるさまがリアルに再現されます。音再現もスムーズでなめらかですね。
音像に曖昧さがなく、鳴り響く鐘の音など正確な音色で整った再現ができています。良録音のリファレンスCDを聞くと複雑に楽器の絡むパートでも音がよく整理されていて楽曲構造が分かりやすく聞こえます

全体的な音の傾向はフォステクスらしく特定の強調感はなく自然な傾向で、フィルターモード2だと一層そう感じます。
設計としてはHP-A3をベースにしているようですが、よりプロ機っぽいモニターライクなA7に比べたA3の聴きやすさというところがここには活かされているように思います。つまりフォステクスというスタジオ仕様っぽいイメージよりは普通のオーディオに近い聴きやすさがある感じです。この辺が高再現性ながらも、きつ過ぎず聴きやすいところで、ロックみたいに激しいガチャガチャした音楽でも整理されて良いと思います。
もちろん着色は少なく再現性は素直なのでイヤフォンの個性で好みを合わせやすいとも言えます。
光出力でのデジタル品質も高いですね。

iPodかiPhoneか

HP-P1はiPodの他にiPhoneやiPadも使うことが出来ます。詳細は仕様をご覧ください。
iPhoneとiPodでも音は違うし、iPhoneではアプリでも違います。
ポータブルオーディオもやっぱり音質重視とはいえ、HM801とかColorflyに慣れてるとiPodのような優れたUIが使えるのは利点と感じられます。

iPodに関しては私のRWA iModは5.5GなのでiTransportの場合と同じく、デジタルアウトは可能ですが付けたら操作不能になりますので、実質あまり使い物になりません。
そこで最新のiPod classic 160GBを買ってしまいました。2010 6.5Gというんでしょうか、まさかいまただのiPodをまた買うとは思いませんでしたが、これは意外と正解でした。iPhoneも良いけどやはり手持ちの音源をどっと入れたいですからね。またハードボタンがないとプレーヤーとしては使いにくいというのもあります。
音もiPhoneの方がややクリアですが全体的な音の聴きやすさはiPod classicの方がやや良いようにも思いますね。

ただしiPhoneであればスマートフォンの柔軟さを活かしてさらに応用範囲は広がります。

FLAC PlayerアプリとGolden Earアプリ

たとえばアプリを入れ替えることで対応ファイルフォーマットを増やすことが出来ます。iPodやiPhoneではAppleロスレスやAIFFなどアップルのフォーマットに限られてしまいますが、FLAC Playerを使えばFLACを再生することが出来ます。またこれも高音質のiPhoneアプリですがGolden earを使うとape(Media Monkeyのロスレス形式)まで再生が可能になります。それぞれで音質も変わります。Golden EarではCUEシートサポートまで可能になります。

IMG_2235.PNG
Golden Earアプリ
http://itunes.apple.com/jp/app/golden-ear/id407945101?mt=8

Plug PlayerアプリとiOSのホームシェアリング機能

もっと面白いのはiPhoneの無線LANに適合した優れた柔軟性を活かすということです。それと先に書いた光デジタル出力を活用して、無線LANネットワーク対応のトランスポートとして使用ができます。
つまりiPhoneの周辺機器としてHP-P1を活用できます。
iPhoneだと携帯として使うので付けっぱなしに出来ないなら、iPod touchを使うこともできるでしょう。あるいはiPhone4に交換して使わなくなった3GSを活用することもできます。

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パソコンに入っている音楽ファイルを無線LANを使って離れたところのオーディオで使いたい場合はHP-P1の光出力をDACに接続して、iPhoneでは対応アプリをインストールします。
例えばDLNAで使いたい時はPlug Playerを使うことができます。またiOS4.3で強化されたiTunesのホームシェアリング機能を使うこともできます。もしiTunesのクラウド化が実現すればパソコンを立ち上げる必要さえないことになります。

WiFi2HiFiアプリ

上の二つではiPhoneがコントロールポイントになるので、iPhone画面から再生曲をコントロールすることになります。
もしiPhone+HP-P1をDACのところにおいたままMac/PCで再生をコントロールしたいときはストリーミングアプリのWiFi2HiFiを使うと良いですね。ここではMacを使って解説します。(PCでも使えるはず)

IMG_2236.PNG     wifi2hifi.gif
WiFi2HIFiアプリとMac側の画面
http://itunes.apple.com/jp/app/wifi2hifi/id417409424?mt=8

WiFi2HiFiはiPhoneに入れるアプリ(いわば受信機)とPCとMacにインストールするソフト(いわば送信機)からなります。
WiFi2HiFiソフトをMacにインストールして立ち上げるとそのWiFi2HiFi自体がオーディオデバイスとしてMacに認識されます。
これはあたかもUSB DACを付けて認識されたのと同じですので、そこでWifi2Hifiを出力デバイスとしてミュージックプレーヤーから再生するとそのままWiFi越しに同一ネット上のiPhone+Wifi2Hifiアプリにストリーミングされます。アプリ側は立ち上げておくだけで特に操作は必要ありません。
プレイヤーソフトに関してはPure MusicやAmarraが使えます。ただしFideliaやAudirvanaでは使えませんでした。これはWifi2HiFiのネイティブフォーマットがなぜか32bitのみだからと思いますが、ちょっと分かりません。
iPhoneをHP-P1につないでトランスポートとしてDACに光で入れておけばかなりの高音質が楽しめます。

こうすることで特にネットワークオーディオ機器を使用しなくても、ネットワークオーディオが構成できます。
このようにiPhoneをHP-P1に組み合わせるというのは単に楽曲データの入ったトランスポートを提供するというだけではなく、ネットワークの柔軟性ももたらしてくれます。

基本的にいまからはこれはPCオーディオ機材でこれはポータブルオーディオ機材なんていう垣根はなくなっていくのかもしれません。
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2010年05月04日

フォステクスポータブルヘッドホンアンプ続報

フォステクスポータブルの画像の第二段をいただきました。こちらはもっとリアルですね。上面のグレイのところはデザインがこうなるというより、まだ未確定のエリアということのようです。

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iTrasnportって実際に使ってみると、もともと手で持って使うiPod/iPhoneをドックに刺したまま使うという点で使いにくさがあります。これは手で持って使えるのでデジタルアウトもより生きてくるでしょう。

まだ機能の細かいところは公開できないところも多々あるようですが、面白いのは下部パネルについているボリュームが二つ見えるところです。これはひとつはゲイン切り替えのノブのようです。
ヘッドホンの世界ってインピーダンスが大きく異なる機材をいくつも持っていて、いろいろ取り替えて楽しむ趣味でもあります。ここはスピーカーとは違います。ポータブルは特に昨日はポータブルヘッドホンで、今日は高能率のイヤホン、夜は家においてゼンハイザー聴きたい、というように大きく変わりえますのでこうした使いやすい位置にあるのはとても便利です。
最近ヘッドホンがブームということで参入してくるメーカーも多いのですが、根本的にこうしたヘッドホン独自の世界を理解してもらえないことが多くてがっかりすることもしばしばあります。しかしフォステクスはこの辺もしっかりしています。この点ひとつとってもかなりまじめにこの分野に取り組もうという気概が分かるのではないでしょうか?

ヘッドホン祭のときにはぜひみなさんもフォステクスのブースに行って、自分の意見を教えてあげてください。
posted by ささき at 19:43 | TrackBack(0) | __→ フォステクスポータブル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年05月01日

フォステクスから驚きの新世代ポータブルヘッドホンアンプが登場します!

フォステクスがiPod/iPhoneをプレーヤーとして使える、DACとアンプが一体になったポータブル製品を開発中です!
わたしも長いことこのポータブルアンプの世界に居ますが、これはいままでの新製品とは異なる驚きがあります。

DACとアンプの一体型モデルというとポータブルプレーヤー単体ではなしえない高性能のDACを内蔵して、高性能アンプとともに高品質な音を提供します。いままではiHP140を使ったiBasso D10とかHeadroom micro portableとかありましたが、このフォステクスのアンプは根本的に異なります。まずこのCG画像をご覧ください。(画像は承諾を得て使用しています)

fostex_1.gif     fostex_2.gif

驚くことに従来の積み重ね方式を根本的に覆す、iPod/iPhoneをはめ込むことで合体でき、ケースとして一体化します。つまりケーブルレスです。iPhoneとiPodのサイズ差は側面のつまみで調整してフィットできます。
またなんとiPod/iPhoneからはiTransportのようにデジタル出力を取り出すことができます。これはAppleの認証取得を行っているそうです。
つまりiPod/iPhoneからデジタル出力を取り出して内蔵の高性能DACで高品質のアナログ出力を取り出し、それをヘッドホンアンプで増幅してヘッドホンを鳴らします。さらに光デジタル出力も備えて、システム的な発展性もあります。
まさに夢に描いたのが出てきたような製品ですが、現状は製品化を目指したコンセプトモデルという段階で、製品化までは形状も含め仕様変更もありえるということです。


わたしはこれでポータブルオーディオがいよいよ「第二世代」に入ったことを感じます。
いままでポータブルヘッドホンアンプは個人やガレージメーカーの手で発展してきましたが、手作りではやはりいろいろ限界があります。たとえばAppleとの認証(MFI)取得やこうした凝ったシャーシの設計などはなかなか難しいでしょう。
こうして力を持ったメーカーが参入することで壁を破って進化することができます。QCでも製品として安心できますね。
フォステクス・カンパニー(フォスター電機)というと一般にはスピーカーやヘッドホンのメーカーとして知られていますが、プロオーディオの分野でも録音機器に長い経験を持っていて電子機器の設計能力にも長けています。これは最近のHP-A7でも分かります。

ヘッドホン祭にモックアップが展示されるということですので、ぜひみなさんご来場して確認ください。

PS.
(発売情報等はフジヤさんのブログにも掲載されています)
こちらにフォステクスさんのインタビュー動画がアップされています。
http://www.youtube.com/user/FUJIYAllAVIC#p/u/12/5-4KZGFvSAw
発売時期は10月末(秋のヘッドホン祭あたり)から年末ということです。楽しみですね!
posted by ささき at 10:01 | TrackBack(0) | __→ フォステクスポータブル | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする