Music TO GO!

2014年11月23日

ユニークで機能的なUSB DAC、Aurender FLOW

先日のヘッドフォン祭でユニークな製品がエミライのAurenderブースで展示されました。

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美しいデザインのUSB DACであるAurender FLOWです。しかしFLOWは選曲キーを装備していて、SSDを内蔵しているなど他にない特徴を備えています。しかしはじめはユニークでよくわからない製品に感じられると思いますが、実際はとても実用的な観点から設計されています。
その辺を実際の使用から書いていきたいと思います。
今回評価したのはデモ機で製品版ではないことを記述しておきます。音質は違いはないと言われています。

*AurenderとFLOWの開発について

Aurenderは韓国TVLogic社のオーディオブランドで、日本ではネットワーク・トランスポートを中心に展開されています。USB DAC内蔵ヘッドフォンアンプという形態のFLOWは異質なように思えますが、その開発のきっかけをAurenderブランドの総指揮官であるHarry Leeさんに聞いてみました。HarryさんはHi-Fiマーケットからヘッドフォンマーケットに参入するにあたり、市場にないようなユニークな製品で参入したいと考えていたそうです。Harryさんもオーディオマニアであり、家ではHD800を使用しているそうですが、市販のUSB DACを実際に使って試してみるとノートブックPCでの使いにくさに気がついたと言います。そこで自分が使いたいような実用性をもった製品を開発しようと思ったのがFLOW開発のきっかけだそうです。たとえばそれは操作性や音源の容量、電源の持ちなどです。

もともとはMacbook Airを使用していたのでスリムノートブックに合う製品ということをターゲットにしていましたが、計画をすすめていくうちにいまではスマートフォンがハイレゾ音源を扱えることや、カスタムイヤフォンの再現性の高さなどを考えて、スマートフォンとポータブルでの使用も視野に入れて実際の開発をしたということです。

*FLOWの特徴

FLOWは少し前まではWAVEと呼ばれていましたので、ネットで検索したい人はAurender WAVEのキーワードも合わせて検索するとよいでしょう。形式名はAurender V-1000です。
FLOWは基本的にはUSB DACを内蔵したヘッドフォンアンプです。

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入力はデジタルのみで、USBと光入力が用意されています。USBは3.0ですが、マイクロ3.0端子ですので、従来のUSB2.0で使うMicroB端子のケーブルと互換性があります(アダプタなしでそのまま使えます)。
光入力は角(TOS)端子です。USBと光の入力切り替えは自動で行われます。
出力は標準ヘッドフォン端子一つのシンプルなものです。アナログ出力のRCA端子はありません。

DACとしてはESSのES9018K2Mを採用していますが、特にこのDACチップから最高の能力を引き出すことに注力を注いで何回も試作検討を重ねながら開発していったということです。FLOWではメニューからESSの内蔵デジタルフィルターを切り替えることが可能です。
他にICとしてはOPA1611とLME49600を使用しています。49600はかなり強力なバッファアンプですね。
USB DACとしてはFLOWはUSBオーディオクラス2.0に対応しているため、Mac(10.6.4移行)ではドライバーレスで使用ができ、Windowsではドライバーのインストールが必要です。

そしてFLOWは以下にあげるような他のUSB DACにはないようなユニークな特徴が際立っています。

1.mSATA SSD内蔵可能

FLOWはSSDを内蔵することでPCから外付けのストレージとして使うことができます。FLOW自体にプレーヤーソフトが入っていてFLOWが直接SSDを読むわけではありません。あくまでSSD(FLOW)->PC->DAC(FLOW)というデータの流れとなります。
この理由はUSBポートが少なく、内蔵ストレージも限られているMacbook Airなど薄型ノートPCの場合は音源を別途格納したUSBメモリなどをUSB DACと併用することで、USBポート不足に陥ることを防ぐためにあります。
PCからは外部ドライブとして認識されます。

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底面をあけると中の基盤にmSATAスロットがあり、そこにはめ込む形でSSDを設置します。mSATAのSSDのみ使用できますので注意ください。mSATAはSATA形式の一種でケーブルではなくコネクタを使って薄型ノートPCなどに内蔵させるタイプのSSDです。私はSamsung製の512GB SSDを使用しました。
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設置の方法に関しては後で別項で説明します。mSATA SSDはUSB3.0と組み合わせてかなり高速なアクセスが可能です。

2.バッテリー駆動

FLOWはDACとアンプのオーディオ回路はバッテリーで動作します。一方でUSBコントローラー回路はバスパワーで動作します。このためクリーンなバッテリー駆動のDACとして使えると同時に、バスパワーをあまり消費しないので、ノートPCにパスパワーのUSB DACをつないでしまいあっという間にノートPCの電池がきれるということを防ぐことができます。
またセルフパワーとして外部ホストからは認識されますのでiPhoneなどでの消費電力制限にもかかりません。
バッテリーチャージのオンオフはメニューからCHG項目を変えることで行います。また自動での設定(CHGA)も可能です。
バッテリー持続時間は公称7時間ということです。

3.ボリュームと操作ボタン

FLOWのデザイン的なポイントにもなっているのが大きなボリュームです。またFLOWの側面にはメニュー、電源ボタンのほかに、選曲のための操作キーが装備されています。選曲キーはFWD(曲スキップ)、Play/Pause(再生/ポーズ)、RWD(巻き戻し)です。
ボリュームリングの内側はディスプレイとなっていて、FLOWの動作状態や入力の周波数が表示されます。ただし曲名表示などはできません。

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いままではボリュームがUSB DACについていても小さなアップダウンボタンであるとか、箱型筐体の前面の小さなボリュームノブであるということが多いのですが、FLOWは広い上面に大きくボリュームが設置されているためノートPCのそばに置いたときにマウスなどのように手を添えて使いやすい配置となっています。また大きなリングと"velocity sensitive operation(速度感知式)"と呼ばれる回す速さでステップが異なる方式を採用したことで、ボリューム操作が素早く精密に可能なものになっています。ゆっくり回すと0.5dB単位の細かい調整が可能です。ボリュームはDACのデジタルボリュームを使用しているようで、音楽再生ソフトとは独立しています。ボリュームはプレーヤーが停止すると低レベルの位置にリセットされます(安全のため)。
これと側面の選曲キーを組み合わせることによって、FLOWをiTunesのコントロールパッドのようにつかえるため、基本的な操作は画面を見なくても可能になっています。つまりは曲を変えるのにいちいち裏画面になっているプレーヤーソフトをフォアグランドに持ってくる必要がありません。

操作ボタンを押した信号はUSB HIDクラスという規格でPCに送られます。これはUSBキーボードやUSBマウスと同じです。つまりはMacならキーボード上に再生やスキップボタンがありますが、あれを押したと同じというわけです。音楽再生ソフトもiTunesなどのようにHIDクラスに対応している必要があります。

つまりFLOWはUSB機器として見ると、SSD(マスストレージクラス)、DAC(オーディオクラス)、操作ボタン(HIDクラス)という3つのUSB標準規格でPCと通信をしているということになります。それを電源内蔵のパワードUSBバスでひとつにまとめているのがFLOWであるということも言えます。この辺りからFLOWの設計意図が見えてくるのではないかと思います。

3.USB 3.0の採用

FLOWのもうひとつの特徴はUSB接続に普通使用されるUSB2.0ではなく、USB3.0を採用しているということです。このためFLOWのUSB端子はマイクロUSB3.0となっていますので注意ください。ただしこれはUSB2.0のマイクロBと互換性があります(アダプタなしで接続できます)。
FLOWはいままで書いてきたようにUSB外部機器を集約したような機材なので、高速のUSB3.0が必要だとも言えますが、オーディオ用途に限って言うとUSB3.0までは必要はないと思います。
たとえばFLOWの場合はPCMでいうと384kHz x 32bit x 2ch = 24.5M bpsが最大の帯域幅であり、SSD内の音源を使った場合でも双方向の場合には倍以上にオーバーヘッドがあるかもしれませんが、それでも十分に480M bpsというUSB2.0の規格に収まります。

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これも実際にHarryさんに聞いてみたところ、オーディオ信号としてはその通りで、むしろ内蔵するSSDへのデータ移動を念頭に考えたということです。これはそのとおりで、mSATA SSDとUSB3.0の組み合わせは実際に驚くほど高速にデータを転送できます。FLOWを買ってまた音源ライブラリを何時間もかけて移動するのか、と悩む必要はないでしょう。

そのためデータ転送目的でないときにはFLOWの高音質を生かすためにもUSB2.0でよいのでオーディオ用のケーブルがお勧めです。実際に添付のUSB3.0ケーブルからオーディオ用のUSB高音質ケーブルに変えると驚くほど音質は向上します。

ちなみに簡単に言うとUSB2.0とか3.0というのはケーブル(伝送)の規格であり、USB class 1.0とかclass 2.0というのはUSB機器の接続形式(標準プロトコル)の規格です。FLOWはUSB3.0で伝送でき、USBオーディオクラスとUSBマスストレージクラス、USB HIDクラスに対応したUSB DACということができます。

*パッケージ開封

奥の深い箱に入れられて届きます。上段にはFLOWがケースに入った状態で収納されています。
下の部分にはケーブルが入っています(この辺は製品版と違うかもしれませんので念のため)。ケーブルはUSB3.0マイクロケーブル、USB OTGケーブルと、メスアダプタが余分についたUSB OTGケーブルが入っています。

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FLOWはとてもシンプルでかつ高級感があります。デザインは微妙に波をうっていて、
細かな表面仕上げもきれいで、シンプルなデザインのなかに液晶表示とボリュームダイヤルをあしらったデザインが近未来的な映画に出てくるデバイスという印象を受けます。カッコよさという点では最近のなかでも秀逸な出来だと思います。この近未来的なルックスだけでもかなりほしくなってしまう魅力にあふれています。

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デザインとしてはMacbook Airのような優れたデザインのノートPCの横に置いたときに映えるような形が考えられています。
また音を出す回路を箱で包んでボリュームを付けた、というような従来のオーディオDACの概念ではなく、まずとしてのボリュームと操作キーがあって、それをコントロールパッドとして使いやすいデザインとし、そこにDACを入れたという機能美があるのではないかと思います。

FLOWはずっしりとした重量でデスクトップに置いたときにはしっかり固定ができそうです。
ポータブル用途にはやや重いと思いますが、逆に言うとこのくらいのハイレベルのUSB DACを持ち出せるという点は面白い使い方ができそうです。
ポータブルがメインの目的には重いと思いますが、基本的にはノートPC用に買って、ときにはAK100やiPhoneと外に持ち出す、というくらいなら問題ないと思います。

*mSATA SSDドライブの設置

ここではFLOWへのmSATAドライブの設置について解説します。
まずSDカードと異なって、mSATA SSDは初期化とフォーマットが必要になります。私はディスク管理はWindowsが慣れているのでWindowsで初期化しました。以下はWindows8.1の手順です。

1. FLOW側の設定

FLOWの裏蓋をあけて、中のmSATAスロットにSSDを差し込みます。蓋を元に戻します。
FLOWの電源を入れてMENUキーを何回か押し、mSTを表示させます。FWDとRWDボタンで+/-を設定できるので、mSTを+に変えます。この状態でUSBでPCに接続します。

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2. PCでの作業

PCがFLOWを認識するとOSがディスクの初期化を促してきます。「論理ディスクマネージャがアクセスできるようにするにはディスクを初期化する必要があります」というメッセージの下でMBRかGPTを選択するのですが、FLOWの場合はこれはどちらでも良いはずです。私はFLOWをMacとWindowsの両方で使うけれどもどちらかというとMac向けにしたかったのでGPTでやりましたが、FLOWのように2TBを超えない場合は互換性を考慮してMBRでも大丈夫なはずです(Win8ではGPTがデフォルトのはず)。
MBRとかGPTは起動するときの情報に関するもので、ざくっというとMBRはBIOS向けでGPTはEFI向けです。MacOSX 10.4以上、Windows7以上でGPTが使用可能です。ただしWin7の32bitでは起動ディスクにできませんがFLOWには関係ありません。また容量が2TB以下ならMBRでよいはずです。まさかまだXPを使用している人はいないと思いますが、その場合はMBRが必要です。

次にコンピューターの管理を立ち上げて、デバイスマネージャーを確認します。デバイスマネージャーのディスクドライブの下にAurenderの表示が見えているはずです。
次に記憶域からディスクの管理を開けて、いま設置したSSDディスクを選択して右クリックから「新しいシンプルボリュームウィザードの開始」を選択します。ボリュームサイズの指定はすべてでかまいません。ドライブ文字を適当に割り当ててください。
次はフォーマットです。ここはデフォルトではWindowsではNTFSですが、Macと共用するために私はexFATを使用しました。
これでPCからFLOWが外部ドライブとして見えるはずです。あとは通常通りに使用してください。

またmST+を選択してFLOWを外部ドライブとして使用した場合には、かならずWindowsでは「安全なディスクの取り外し」あるいはMacではごみ箱アイコンに移動させてから、または電源を落としてからケーブルをはずして下さい。
オーディオのみの使用の場合(mST-)では「安全なディスクの取り外し」は必要ありません。

*FLOWの音質

試聴はWindows8.1のJRMC19でまずしばらく聴いてみました。

まず標準添付のUSB3.0ケーブルで接続して、HD800で聴いてみました。
PCに接続するとFLOWの表示パネルに画面のアイコンが現れ、ヘッドフォンを接続するとヘッドフォンのアイコンが現れます。
はじめはかなり低いレベルから始まるので、ボリュームを上げて-30dB程度にします。

音質のレベルはかなり高く、上品で端正な線の細い音で、楽器の音はシャープで切れ味が鋭い感じです。音空間がクリアで透明感が際立っています。音の広がり方が広く立体的で、かつ自然な広がり方が感じられます。
周波数帯域的にはワイドレンジで、かつ低域や高域の不自然な強調がなくフラットなので、HD800の性能が存分に生かされる感じです。
低域も張り出さない程度にきちんとアタック感があります。
平面型のHE560も使ってみましたが十分に鳴らすことができ、HE560では動感あふれるダイナミックな音再現が可能です。

次にUSBケーブルを短めのオーディオ用ケーブルであるFitEarケーブルに変えるとかなり音質は向上します。
透明感が一層際立ち、ヴォーカルの声が空間にぱっと広がります。特に立体感の点で目を見張り(耳を)ます。3次元的でひとつひとつの楽器の音がきれいに分離して情報量という意味でも素晴らしいですね。低域の存在感も上がって重みがきちんと表現されます。

なんとなくカジュアルでデザイン重視のデスクトップDACという見た目ですが、音的にはかなり本格的でハイレベルであり、ハイエンドオーディオブランドの名にふさわしいレベルのハイグレードな音と言えるでしょう。価格的に考えてもかなり良いのではないかと思います。

次にPCとのUSB接続のまま、カスタムイヤフォンで感度の高いWestone ES60を使ってみました。-75dBあたりでもう音が聞こえてくるのでヘッドフォンをはずすと安全のためにリセットされる効果があります。
驚くことにはFLOWはとても背景が静かでノイズが低くIEM専用アンプのようです。再生ポーズのまま音を上げていってもまったくノイズが聞こえてきません。バッテリー駆動の効果もあるのでしょうか、カスタムイヤフォンのためにも素晴らしい音再現が可能なことが印象的です。

また入力をはずした状態でFLOWを立ち上げるとMENUキーでさまざまな設定を変えることができます。pcm0,1,2などはESSのDACが持っているデジタルフィルターの設定で、これを変更することが可能です。

*FLOWの使いこなし

FLOWはさきに書いたように、単なるUSB DACというよりも、オーディオに必要なシステムをパックにしたオールインワンの機材ということもできます。
つまりはUSB DACのように単なる周辺機器とも言い難いので、あたらしいジャンルの機材としてはじめはとまどうかもしれません。しかしながらいままで書いてきたように、そのユニークな設計は実際の使用に基づいた不便な点を改善するためのものであり、実用的なものであると言えます。

- ノートPCと一緒に使う場合

まず第一にお勧めしたいのはHarryさんがもととも想定したような、Macbook AirのようなスリムノートPCを使っている人です。

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たとえば私は外でもの書きするときなどMacbook Air11インチ(SSD64GB)を使っていますが、もうディスクがいっぱいで音楽を入れる余地がありません。そこでUSBメモリに音楽を入れておくのですが、今度はUSBポートが足りないのでUSB DACをつけるともういっぱいです。旧Macbook Air13インチのときはUSBポートがひとつしかなかったのでさらに問題は大きかったと言えます。
Macの場合はマウスはBlutoothが標準だからまだ良いとしても、Windowsノートでのマウス派はUSBポートにこまることになるでしょう。
いままではこのようにUSBポートをやりくりしていましたが、FLOWを使えばひとつのUSBポートで音源のストレージとUSB DACをつなぐことができますのでUSBポート不足の問題は解決されます。

また、こうしたスリムノートPCでは電池の持ちが少ないため、外で半日は仕事をしようと思ってノートPCを持ち出しても実のところ画面の明るさを落として節電しながら使うのに、電池食いのUSB DACを接続して音楽を聴こうものなら、電池残量がみるみると減っていくのにどきどきしたという経験があります。
いままではこのように少ない電池容量をやりくりしていましたが、FLOWを使えば電池を食うオーディオ回路はバッテリー駆動ですから電池容量不足の問題は解決されます。

ノートPCではさらに画面がせまく、ただでさえ原稿を書きながら資料をPDFで参照しながら、参考情報をWebで検索したりというと画面がウインドウでいっぱいになり、そこに音楽再生のiTunesの操作画面を出しておくともう大変です。曲をスキップして変えたいだけでも、iTunesの画面を裏から引き出して操作する必要があります。
いままではこのように狭い画面で操作が大変だったものを、FLOWを使えばボリュームの調整と再生・ポーズ、曲のスキップと巻き戻しという基本操作は容易になります。もっともMacbookの場合はキーボードで音楽再生の操作はできますが、集約されていた方が使いやすいとは言えるでしょう。

操作キーはiTunesとiTunesを使うPure MusicやAmarraなども完ぺきに使えます。ただAudirvanaなどプレーヤーソフトによってはPlay/Pauseのみ使えることがあります。ここは調査中とのことです。

mSATAストレージはPCプレーヤーソフトから外部ドライブとして見えるので、プレーヤーのライブラリにこのドライブを指定しておけば次からは音源のソースとして使うことができます。

もちろん上の利点は家で使うときにも当てはまります。タワー型PCではそれほどUSBポートの不足になることはないと思いますが、音源を集約して置けるというのはPC機種変更した時にも便利と言えるでしょう。この場合には少し長めのUSBケーブルがあるとよいですね。

- スマートフォンと使う場合

次に面白い使い方ができるのは外でも良い音で聞きたいというポータブルユーザーです。FLOWはバッテリー駆動であり、バスパワーの消費電力が少ないのでスマートフォンからUSBデジタルで音を取りだすことができます。デスクトップに置くときはしっかりした筐体ですが、反面で常に持ち歩くには大きすぎるとはいえます。反面でFLOWをノートPCと外に持ち出すときに、移動中でもFLOWはiPhoneやAK100と組み合わせて持ち歩きながら聞く、というのは十分考えられるユースケースです。

- iPhone/iPad

iPhoneの場合はiOS7.0以上でライトニングカメラアダプタ(またはカメラコネクションキット)を使用して接続します。iPadはiOS4.0からカメラコネクションキットでのUSB DAC接続に対応しています。FLOWの必要とするクラス2対応になったのはiOS4.2以降ですが、そんな古いのはもう残ってないでしょうから現在ではまず問題ないでしょう。
FLOW側のUSB端子はUSB3.0ですが、マイクロ3.0端子ですので、従来のマイクロB端子と互換性があります。
この接続形態(iPhoneをホストで使用)ではバスパワー上限がありますが、FLOWは主要部分はバッテリー駆動なので問題ありません。またiOS側でONKYOのHF PlayerやFLAC Playerを使用することでハイレゾ音源を再生することができます。またHF PlayerかhibikiであればDoPを選択することでDSDネイティブ再生が可能です。
下記にHF Playerからハイレゾ音源を出力している例と、DSDネイティブ再生をしている例を示します。ハイレゾでは192kでロックしているのが分かると思います。DSDネイティブの場合はまずPCMでのDoPのためのエンコードサンプルレートが表示され、中身がDSDとシンボルで示されます。

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- Android

AndroidではWalkman ZX1でNWH10との組み合わせで出力ができました。なかなかいい音で再生してくれます。ZX1とNWH10にmicroB(USB2.0でよい)をFLOWのUSB3.0端子のUSB2.0側に接続。私は直結コネクタを使用しています。ここではZX1の標準Walkmanアプリで再生しています。
またUSB Audio Player proでも添付のOTGケーブルを使うことで再生が可能です。

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* 光出力つきDAPと使う場合

光入力ももともとはMacの光出力を意識していたかもしれませんが、ポータブルでは光出力のあるAK100と組み合わせることができます。ケーブルはタイムロードさんの光ケーブルを使うとうまく組み合わせられます。
画面ではハイレゾでもきちんとロックされているのが分かります。

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iBasso DX50だと光出力がついていて、USB OTGで外部ドライブの認識が可能なので、うまくいけばFLOWと合わせて面白い使い方ができるのではないかと思いますが、試せていません。

*まとめ

FLOWは端的に言ってかっこよいUSB DACです。しかしそのかっこよさは単なる見てくれではありません。
普通のUSB DACはまず回路ありきで設計され、その基盤を四角い箱に入れてボリュームを前面に付けて製品となると思いますが、FLOWの場合はまずこういう使い方がしたいということをHarryさん自身が考えて機能を設計し、さらにノートPCの横において手を添えて使いやすい形を考えて大きなボリュームを上に配置し、機能に合うように筐体をデザインしていったと思います。そこに工業デザイン的な機能美があると思います。
FLOWには機能ありきで設計された美しさがあります。

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FLOWははじめはコンセプトが分かりにくいかもしれませんが、使いこなしを覚えるとかなり便利に使える、きわめて実用的な製品だと思います。それは機能ありきで設計されたからだと思います。もちろん音質も犠牲になってはいません。
その機能と音質の両立を美しいデザインに包んだのがAurender FLOWだと言えるでしょう。
posted by ささき at 22:57 | TrackBack(0) | __→ USB DAC全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年10月25日

Windows 10 preview版でのUSB Audio Class 2の実装の状況

Windows 10 preview版でのUSB Audio Class 2の実装ですが、Computer AudiophileでMicrosoftに直訴しようということで、下記のMicrosoft Communityに直接書き込みしました。私も投票してます。
http://answers.microsoft.com/en-us/windows/forum/windows_tp-hardware/windows-support-for-usb-audio-20/0d633b9f-3193-4c63-8654-fb10b3614a04?msgId=218053c6-b08d-45df-a925-ff773a0e2ddf
そこでMicrosoftのWindoows Audio quality divisionの人から返信があって、状況を教えてくれています。
現在のWindows 10 Technical Previewでの状況は以下の通りでWindows 8.1同等だそうです。
基本的なUSB1.0-3.0のコントローラーの対応、Audio Classについては1.0で、USB Audio Class 2デバイスについてはやはりサードパーティードライバーが必要ということです。

native support for USB 1.0, USB 2.0, and USB 3.0 controllers
native support for USB Audio 1.0 audio devices
but, as you point out, USB Audio 2.0 devices require a third-party driver.


お話は聞くよ、ということですので、ぜひUSB Audio Class 2.0を実装して欲しいですね。
posted by ささき at 07:54 | TrackBack(0) | __→ USB DAC全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月24日

DENON初のUSB DAC、DA-300USBレビュー

DENON DA-300USBはDENONが発売したはじめてのヘッドフォンアンプ内蔵のUSB DACです。USB DAC機能がついたCDプレーヤーはありましたが、単体の製品としては初となります。

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USB DACとしては後発になってしまいましたが、その分でDA-300USBには価格付けとそれに対する音質・機能の充実度で作り込みの高さが見られます。そしてDA300においては老舗オーディオメーカーとしてのDENONがそのCDプレーヤー開発のノウハウを注ぎ込んでいるという点も見逃せません。PCオーディオ機器ですが従来のオーディオ製品のエッセンスが詰まっているということです。

* オーディオ機器としてのDA-300USB

まずDA-300USBではAdvanced AL32 Processingというビット拡張の技術が採用されている点が特徴です。これはPCMの入力信号を32bitに補完しながら拡張するということです。CDの16bit精度を32bit精度相当にアップするわけです。
注目すべき点はその拡張された32bit信号を、DA-300USBの心臓でもあるPCM1795 DACチップに伝送するということです。PCM1795は32bit対応のDACチップですから、32bit DACで32bitデータを受けることでPCM1795の性能を最大限に発揮することができるというわけです。
PCM1795はバーブラウンの32bit対応DACチップICで、最近はバーブラウンの主力といってもよいと思いますが、特にDSD対応製品によく使われてます。また同時にサンプリングレートも44kHzならば16倍、192kHzならば4倍相当のアップサンプリングを行います。これも単純な変換ではなく、高精度に補完計算をしながら処理を行います。
普及機(DCD755RE)では普通のAL32 Processingですが、DA-300USBでは高級機(SX1)並みの進化したAdvanced AL32 Processingが採用されているのがポイントです。

また高性能オーディオ機器らしいのはDACマスタークロックデザインです。これはDACの持つクロックをソースのデジタル回路のマスターとして使うことで音質を高めるというものです。
例えばDENONではSACDプレーヤーDCD SX1で、SX1に内蔵されるSACDドライブの部分とDACの部分において音を変換するDAC側のクロックをドライブ側に送ることによってトータルの音質を高めています。これも高級機SX1ならではの機能であり、普及機(DCD755RE)では採用されていません。DA-300USBの設計はDCD1500よりも洗練されていてSX1により近くなっています。
PCオーディオのUSB DACにおいてはもちろんドライブはありませんが、同じく音の入り口であるPCとのUSBインターフェイスの回路部分にDACがマスターとなってクロックを供給することで音質を高めています。つまり仕組みとしては高級機と同じ内容のものを採用しているというわけです。下の図では右がマスタークロック方式で左が従来方式です。クロックの位置に注意してください。

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DA-300USBにおけるマスタークロックデザイン

このようにDA-300USBはオーディオ機器としての機能が普及機ではなく、高級機なみの技術が採用されている点がポイントです。このほか、デジタル・アナログ独立電源などオーディオ回路設計が価格にしてはかなり贅沢に作られています。これは当初は価格的に機能設計はDCD1500RE相当の予定だったんですが、音質を突き詰めていくうちに結局Advanced AL32やらマスタークロックデザイン、その他でSX1相当になったということです。
これは実売5万円以下の価格を考えるとたいしたもので、USB DAC後発メーカーとしての戦略的な価格設定であると言えるでしょう。


* PCオーディオ製品としてのDA-300USB

PCオーディオ製品としてのDA-300USBの特徴は対応フォーマットが広いことです。最近はハイレゾ対応製品が気になる人も多いと思いますが、DA-300USBでは話題のDSD再生も含めて市販の高品質音源のほとんどに対応しています。USB伝送制御はアシンクロナスですからDA-300USB側のクロックを使用して高精度のDA変換ができます。
PCMでは192/24bitまでに対応していますが、これはUSBオーディオクラス2で実現しています。そのためWindowsではカスタムドライバーのインストールが必要です。これはASIOドライバーなので、WindowsではDSDはASIOでネイティブ再生ができます。DSDでは5.6MHzまでDSDネイティブ再生に対応しています。

WindowsにおいてはまずDENONのサイトからドライバーをダウンロードしてください。これをPCにインストールします。音楽再生ソフトではDENONのドライバを選択してください。ASIOを使うにはソフトにASIO対応が必要です。ASIO対応されていない場合には通常のドライバとして使うことができます。

つまりWindowsの場合は2つのパターンに分けられます。
1. 使用している音楽再生ソフトがASIO対応の場合
たとえばJRiver Media Centre(JRMC)です。この場合にはAudio DeviceではASIOドライバを選択して、DSDネイティブ再生でもASIOを使うことをお勧めします。この場合はDSDの再生は簡単で、JRMCならば設定からBitstreamを選んでDSDを選択しておけば終わりです。

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JRMC19のDSD設定画面

2. 使用している音楽再生ソフトがASIO対応ではない場合
たとえば素のfoobar2000とかiTunesです。この場合にはWindowsのサウンド設定でデフォルトにDENONドライバーを選択します。foobarならoutputの項目で単にDENONドライバーを選択します。前述したようにDENONドライバーはASIOでなくても使用できます(この場合はASIOインタフェースとしては働きません、念のため)。
またfoobar2000の場合はコンポーネントでASIO対応にすることができますので、無料で始めたい場合にはfoobarがよいかもしれません。この場合はDSD設定はややこしいんですが、以前書いたQuteHDのfoobarでの使用記事を参照ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/271984782.html

WindowsにおいてはJRMCが機能も豊富で音質もわりと良いので、JRMCは用意していた方がよいと思います。JRMC19であればPCM音源でもDSD5.6MHzに変換して出力することができます。この設定方法はDSP Studio->output encoding->2xDSD in native ASIOです。ちなみにここでDoPを選んだ場合は2.6MHzでDA-300USB側でロックしますのでPCでもAISOだけではなくDoPが使えることがわかります。
WindowsではASIOを使ったほうがDoPのミュート・ポップ音問題に悩まされない分で良いかもしれません。ただDA-300USBの場合はDoPでも問題はないと思います。

Macにおいては192kHz再生であってもドライバーのインストールは必要ありません。これはWindowsと違ってMacは内部にUSBオーディオクラス2ドライバーを持っているからです。その代わりMacにおいてはASIOドライバーは使えませんので、MacでのDSDネイティブ再生はDoP方式を使用します。
Macの場合には音楽再生ソフトは設定の簡単さと音質の高さでAudirvana Plusがお勧めです。DSDネイティブ再生の設定はPreferenceからNative DSD CapabilityのところをDSD over PCM 1.0と設定してください。これだけなので簡単です。DoPでの曲切り替え時のノイズなどはかなり極小だと思います。

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Audirvana PlusのDSD設定画面

MacからはDA-300USBはUSB HighSpeed Audioドライバーという名前で見えますが、注意点はDA-300USBが192kHzまでしか対応しないのにMacからは352kHzまで対応と見えていることです(上の画像でも353が可能になっていることが分かります)。実際に352kHzを出力すると無音です。
この理由はDSD128(5.6MHz)をDoPでサポートするためには352kHzが必要であるため(2.8MHzの場合は176kHzだから)、352kHzを形式上通す必要があるからです。PCMではあくまで192kHzが上限ですから注意ください。
一方でこれにより潜在的な問題が発生すると思います。たとえばAudirvana Plusなどで整数倍の最大値をアップサンプリング指定する場合、44kHzの最大値はこの場合に352kHzに自動的に計算されてしまい無音となりますので、別の設定にするように注意が必要です。

このほか入力はUSBだけではなくSPDIFや光にも対応してるので広いソースに対応しています。

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DA-300USBの背面

また、DA-300USBのハードとして見るとPCオーディオ対応に対応する特徴はポイントは、PCノイズを遮蔽するためにデジタル・アイソレーターを採用していることです。これはトランス結合タイプでPCからのノイズを信号から効率よく切り分けることができます。

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デジタル・アイソレーターのダイアグラム図とその効果

ここでもDA-300USBにおいて価格以上にこだわりのある設計をしていることが分かります。この辺は国産老舗オーディオメーカーとしての矜持を感じますね。

* ヘッドフォンアンプとしてのDA-300USB

DA-300USBはUSB DACとしてヘッドフォンアンプも内蔵しているので単体でも高音質で音楽が楽しめます。ヘッドフォンアンプ部分でもフルディスクリート構成のバッファーアンプを後段に採用し、十分な駆動力を確保しています。HD800でも問題あるとは思えません。

ヘッドフォンアンプ部は下図のような構成となっています。
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@ボリューム回路前段にアナログ出力との相互干渉を排除するバッファアンプを搭載
A電圧増幅段にハイスピード・ローノイズ高音質オペアンプを採用
B出力バッファにはディスクリート回路を採用

ただスペックを見ると出力インピーダンスが32Ωと高い点が気にはなりますが、ここはさまざまなヘッドフォンとの相性や初期のAK100と同様に安全面などや海外での基準なども考慮して決められたようです。ヘッドフォンアンプもガレージメーカー製が先行していたせいでこの辺は気になりませんでしたが、海外に広く展開するメーカー品が多くなるといろいろな事情も重なって来るようです。
ただ音的に聞く限り、300オームだけでなく32オーム程度のヘッドフォンを使っても低域も十分なレスポンスを得ているので、DA-300に関しては実際的には大きな問題ではないと思います。


* 製品インプレッション

製品を実際に見てみると、パッケージング、梱包などがきれいでメーカー品らしいと感じます。いつもは段ボールにプチプチで無造作に入れられている海外製マニアックオーディオ機器に慣れているので新鮮に感じられます。
説明書もきれいに整えられていますが、マニアック製品を買う人は自分でDSD再生などは調べると思いますが、メーカー品を買う方はもっとコンシューマーよりだと思うので、PCオーディオ周りについてはもう少し詳しい手順書があった方がよいかもしれません。ただDSD再生では海外製再生ソフトを使うことが多いので、その辺まで踏み込むのは難しいとは思いますが、DA-300に限らずこうした製品の課題と言えるかもしれません。

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ヘッドフォンプラグはなかなかきっちりとはまって抜けにくいと思います。こうした細かい点までしっかりしてると手を抜いてないという気がします。
外形的には縦横置きのコンバーチブルという点が特徴で、表示画面も縦横に対して回転します。外観デザイナーは女性を起用したということでなかなか滑らかなアールを描いたデザインです。ビスレスを意識したそうで、すっきりした外観です。

音のコメントですが、以下私のリファレンス機であるところのHD800で聴きました。(標準ケーブルです)

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まず中高音域は聴きやすい帯域特性を持っています。音調が整っていて音色がきれいと感じますね。高いほうも鋭すぎずに、かつきちんとしたレスポンスを持っています。価格は安いほうですが、高いパーツに頼らずに粗さきつさが少ないのはなかなか注意深く設計しているのだと思います。Goldmundの"All will prosper"でのシンプルなアコースティックギターによる音の細かさも、アーティストが録音に凝っているところが分かるほどに表現を引き出してくれています。
中音域ではヴォーカルが前に出過ぎないので、全体にアグレッシブさがやや抑え目になっているのは自然な感じがするところです。ケイトブッシュの"50words for snow"での落ち着いてしっとりとしたヴォーカルは極めて魅力的でした。
また音空間の表現力もよく、音が滑らかでかつ音空間に深みを感じるのはAdvanced AL32の32bit化の効果が生きているのかもしれません。かなりレベルの高い音だと思います。

全体の音の感じはダイナミックでロックのドラムスではインパクトがよく伝わり、リズムの刻みが活き活きとして活力を感じます。
海外メーカーのオーディオ機器は個性的で知られていますが、国産のブランドでもさまざまな個性があると思います。Accupahseは偉大な中庸、Luxmanはおとなしめで上品などなど、DENONは濃くてダイナミックな印象があります。DA-300USBはわりと洗練された音だと思いますが、そうしたダイナミックさも引き継いでいるように思います。
ダイナミックさを特徴とするDENONのD600ならもっとロック・ポップにあった音を出してくれるでしょう。

コントラバスソロのグループSoNAISHの"AMAPOLA"を聞くとHD800でも十分な低域の量感があり、かなり低いところまで低域のレスポンスが伸びて言っているのがわかります。オーケストラでは録音にもうるさい作曲家アルヴォ・ベルトの"交響曲3番"で聴いてみると、各楽器の再現性は悪くないけれども、オーケストラの迫力という点ではHD800では今少しのところもありました。
クラシックはスケール感豊かなDENONのD-7100あたりで聴くととても良くなるでしょう。

一方でHD800で聴いていると、若干ゲインが低めなのでHigh/Lowのゲイン切り替えがあった方が良いと思いました。HD800でもポップ系の高めにマスタリングされている場合はだいたいは十分な音量で聴けますが、良録音のレベルの低い録音の場合は少しぎりぎりな場合もありました。ただDENONでは先に書いた海外の音量制限も考慮しているので、最大音量でも割れないで聴ける音という点に注意して設計しているということです。

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そしてDA-300USBにはDSDネイティブ再生機能がついていますので、これはぜひ活用したいところです。DSD5.6MHzで聴くと音楽もいっそう引き立ちます。これはDA-300USBを買った人の特権みたいなものでぜひ体験してもらいたいところです。

DACとしてはDA-300USBのRCA出力から高性能ヘッドフォンアンプのHifiMan EF6につないでみました。同じくHD800で聴いてみましたが、これはちょっと驚きの音ですね。音の再現力に力感と温かみが加わり、かつ細かな音の再現は一級品です。EF6は平面型を鳴らすためのハイパワーマシンですが、その能力を十分に引き出しているように思います。楽器の音の切れの良さと引き締まったところからはDACとしてのDA-300USBのたしかな基本性能を感じ取ることができます。スタジオ系のDACにあるようないわゆる無機的とも言える着色感のなさではなく、音楽的な抑揚が感じられるのでモニターと言うよりはオーディオに使うDACに向いていると思います。

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EF6+DA-300USB

DA-300USBは気軽に直接ヘッドフォン端子から再生してもなかなか楽しめる良い音ですが、DACとしてこうした高性能ヘッドフォンアンプあるいはスピーカーアンプにつなぐとさらに素晴らしい音の世界を楽しめるでしょう。

* まとめ

DA-300USBはさまざまなソース機器、さまざまな音源を入力として、デスクトップでの気軽なヘッドフォンアンプとしての単体使用から、オーディオシステムにDACとして本格的に組み込むところまで安い価格で多様に使える製品だと思います。

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とにかく価格の割には音質が高く、DA-300USBを選んで聴きたくなるような魅力的な音楽再生が楽しめます。PCオーディオ機材としては5.6MHzのDSDネイティブ再生など最新の音源に対応するのもポイントです。コストパフォーマンスはかなり良いと言えるでしょう。
ヘッドフォンアンプとしてはゲインや出力インピーダンスなど、もうちょっと改良してほしい点はありますが、現状でも問題といえるほどでもないように思います(私みたいなマニアは突っ込みますけど)。
いろいろな基準・規制をクリアしなければならない大手メーカーの場合はマニアックメーカーほどの尖った仕様は作りにくいとは思いますが、反面で国産メーカー品としての品質やサポートでの安心感があります。人によって求めるものは様々なので、こうした選択の余地が広がったのは良いことでしょう。

総じて言うと、後発ではありますが、その分で価格を安く設定していて、設計も高級機のノウハウを上手に使い、DENONらしさ・老舗のオーディオメーカーとしての強みをうまく活かした製品に仕上がったと言えるでしょう。

      


     

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2014年03月23日

iFI Audioの"クラウドデザイン"

Kickstartのところでクラウドファンディングの良いところは、作り手と買い手の近しい関係にあると書きましたが、iFI Audioも面白いアプローチを始めています。それが"クラウドデザイン"です。下記のiFi Audio(日本)のFacebookページに情報が載っています。
https://www.facebook.com/permalink.php?story_fbid=644038755663254&id=449735338455976

もともとLightHarmonicがKickstarterでLH Labsとしてコンシューマーブランドを立ち上げたのはAMRに対するiFI Audioのようなビジネスモデルを意識したのではないかと思います。ゆっくりと重いハイエンドブランドが早くて軽いコンシューマーの流れに対応するブランドの試行です。

iFIの試みはクラウドファンディングではありませんが、人気の高いnano iDSDの次のMicro iDSDの開発においてユーザーの声を聴きながら行っていくということです。これは前に書いたようにindiegogoのLH LabsでのGeek Pulseを思わせます。Geek Pulseでもユーザーコメントを活用したり、メーカーからの提案をアップデートするなどして、プロジェクトの開始時と終了時では大きく異なった形になりました。はじめは低コストDACのように見えましたが、しまいにはFemtoクロックやデュアルDACのオプション提案にまで至っています。またLH LabsではGeek Forceというユーザーの声を聴くためのフォーラムも立ち上げています。
http://geek.lhlabs.com/force/home
iFIの方式ではHead-FiやiFIのFAcebookを使用しています。コメントやアップデートといったKickstarterやindiegogoなどクラウドファンディングにみられるユーザーとの相互関係を重視してそうした仕組みを取り入れていくということですね。
Head-Fiのスレッドは下記です。ちなみにスレッドのタイトルに入っているスカンク・ワークスはもともとロッキード社の先端技術ラボのことです。SR-71とかケリージョンソンとかこの辺を語りだすと私も長くなるので自制してやめておきますが、ケーブルの名前などを見るにトルステン氏もなかなかの航空宇宙マニアのようです。
(いまでは英語の慣用句として一般に秘密開発部門をskunk worksということもあります)

iFI skunkworks....micro iDSD. Crowd-Design - by you, for you
http://www.head-fi.org/t/711217/ifi-skunkworks-micro-idsd-crowd-design-by-you-for-you

すでにみながいろいろなアイディアをコメントしていますね。中にはデザインを含めてかなり具体的な提案もあります。

最近はいままでヘッドフォン世界にいなかったメーカーがこの分野に参入してきていますが、中には首をひねってしまうような仕様のものも多々あります。新しいオーディオの世界は作り手と買い手の近しさが必要だと思います。DIYとかガレージメーカーだけだった時代では当たり前だったけど、いまは考える必要が出て来ていると言うことでしょう。
オーディオがスピーカーの前で正座して聞くものから、外でヘッドフォンで自由に楽しむように劇的に変化していくとメーカー側も細かいノウハウを得るためにはやはり使っている人たちに聞くのが良いのではないでしょうか。もっと良いことは外から見ているのではなく、この世界に飛び込んできてくれることです。そしていままで持っていたハイエンドの技術とオーディオ機器のノウハウを反映してくれることです。iFI Audioはそれをやろうとしています。
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2013年12月24日

Geek通信7:Geek Pulseのfemtoクロックオプション

indiegogoで行われているGeek Pulse USB DACのクラウドファンディング開発ですが、そろそろ最終局面に入りました。
予定金額を大幅に上回る達成額でしたので、perk(特典)といういくつかのオプションが追加されてます。
http://www.indiegogo.com/projects/geek-pulse-a-digital-audio-awesomifier-for-your-desktop

perkにはヘッドフォンのバランス駆動や専用電源もありますが、今日は好評だったfemtoクロックの追加募集が行われたので私も前回を逃したのでオプション(US$119)を取りました。
これはfemtoクロックを採用する世界最安値のDACになります(DIY除く)。

Femtoクロックはいくつかのメーカーから出てるようですが、超高価なMSB Analog DAC(US$6995)/DAC IVのfemto clockはGalaxy 140で、Geek pulseのものはCrystekです。CrystekはCalyx femto(US$6850)やAuralic Vega(USD$3500)などがCrystekのfemto clockを採用していると思います。つまりUS$418のGeek Pulse fモデル(femto clock)の次に安いのは$3500のVegaになるでしょう。
ちょっとしたクリスマスプレゼントかもしれませんね。
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2013年12月05日

USBコネクタにType-Cが登場予定

USBケーブルのプラグは上下があって接続がわからなかったりしますが、iPhoneのライトニングのようにリバーシブルのType-Cというプラグが登場するようです。
http://arstechnica.com/gadgets/2013/12/new-usb-type-c-connector-is-smaller-reversible-supports-usb-3-1/
現在はホスト側(PCなど)がType-A、デバイス側(DACなど)がType-Bになっていますが、おそらく統一されるかもしれません。またサイズは現在のマイクロB程度になるようです。
2014年の中期に規格制定が行われるようです。
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2013年12月02日

Resonessenceの超小型USB DAC・ヘッドフォンアンプ、Herus

最近の高性能DACではES9018などESS社製のDACチップを採用するケースが増えています。Resonessence labs(レゾネッセンス ラボ)というと元ESSのキーメンバーが設立した会社のブランドと言うことで、製品のInvictaをはじめとしてESS DACの事実上のリファレンスDACを作るメーカーとも言われています。
そうした意味でResonessence labsはESSのDACの先端的なショウケースとも言えると思いますが、そのResonessenceが開発した注目のコンパクトなDAC製品がHerus(ヒールス)です。

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公式情報は下記エミライさんのホームページを参照ください。
http://www.resonessencelabs.jp/products/herus/

1 Herusの特徴

以下Herusの特徴を見ていきます。

1-1 コンパクトさ

前に書いたように最近ではPC/Macのノートブックと組み合わせられる手軽なヘッドフォンアンプ内蔵のコンパクトUSB DACが人気を集め出していますが、Herusもそのタイプの一つです。とてもコンパクトなヘッドフォンアンプ内蔵のUSB DACです。Herusは十分軽く、かつ、ずっしりと質感高い密度感があります。全体にも剛性が高い印象です。コンパクトながら高級感もあります。

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入出力はシンプルで片側にUSB B端子(フルサイズ)があり、片側にヘッドフォン端子(ミニではなく1/4インチの標準タイプ)があるだけです。普通ならばこのサイズならミニUSBとミニヘッドフォン端子となると思います。しかしHerusではUSBもヘッドフォンもフルサイズです。これは音質のためと言うこともあると思いますが、サイズにまどわされずに本格的に使用してほしいという作り手側のメッセージのようにも思えます。
表示もRマークが接続確立時に赤く光り、再生時に青く光るだけです。とてもシンプルで簡単に使えます。また、PCなどとの接続も標準のUSB クラス2ドライバー対応ですからこちらも簡単で、難しいところはWindowsではドライバーインストールが必要な点くらいでしょうか。

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ボリュームは本体にはないのでパソコンなどの接続ホスト側で変更します。これはHerus側がデジタルボリュームを備えているからで、iPhoneやPCのボリュームで音量を変えます。これはHerusのトリッキーな点で、まずはじめにボリュームをさげてから接続した方がよいし、ボリュームのステップも急な立ち上がりでステップが少し粗いように思えます。ここはHerusの数少ない難点のひとつです。

1-2 低消費電力

こう見ていくと一見普通の簡単シンプルDACにも見えますが、Herusは競合に対してResonessenceならではの長所を秘めています。それはHerusに採用された最新のDACであるES9010K2Mです。
この2Mシリーズは従来のESS DACが8チャンネル(9018)対応だったのに対して2チャンネルに特化していますが、Mが示すようにモバイル機器に対応した低消費電力がポイントです。この強みはiPhoneやiPadと接続する際に発揮されます。これまではこの種の機器ではできなかったことで、先行したDragonflyが消費電力が大きかったのでPCやMacにしか対応できなかったことに対して、HerusではiPhoneやAndroid機器とも接続ができます。

実のところ、この手のコンパクトデバイスではDACとしてはDragonflyのようにES9023を使用した方がDACに2Vのラインレベルドライバが内蔵されている分で回路も簡単にできると思います。しかし、あえて最新技術に賭けて下位のSABERグレード(24bit)のES9023ではなく、より上位のSABER32(32bit)クラスであるES9010K2Mの採用をしたというのは評価できる点です。。このことと先のフルサイズ端子を考えれば、Herusは小型ながら見かけに惑わされない本格的な製品であるということが分かると思います。
またResonessenceにおいてはHerusは2Mシリーズの低消費電力をアピールできるかっこうのモデルであると言えるでしょう。

1-3 DXD、DSD128対応

もうひとつのHerusの特徴はハイレゾ・DSD対応です。PCMにおいては352kHz、DSDにおいてはDSD128(5.6MHz)までの高いサンプリングレートの再生が可能です。
DSDはDoPにより、DSDネイティブ再生が可能です。さきの低消費電力と合わせてiPhoneからもOnkyo HF Playerを使うことでiPhoneからDSD128の再生もできます。これはかなり画期的なことです。
プレイリストでDSDとPCMが混在していて、曲が切り替わってもよく言われるDoPでのポップノイズが出ないのもよく出来ています。


2 ポータブルでの使用

Herusの最大のポイントはやはり低消費電力設計によりモバイル・ポータブルでも使用ができると言うことでしょう。しかもスマートフォンでも使えます。

まずiPhone5を使用してみました。iPhone5ではiOS7から従来のiPadと同様にカメラコネクションキットを使用することで外部DACに出力ができるようになりました。ここではライトニング用カメラコネクションキットを介しています。ただしiPhoneは現在はAppleの正式なカメラコネクションキットの対象機ではありませんので念のため(一時は対象でした)。iPadは正式な対象機種です。

2-1 使用要件

ここで問題となるのはHerusはUSB Bのフルサイズ端子なので、カメラコネクションキットのUSB AメスからHerusのUSB Bメスに接続するケーブルが必要なことです。ここは通常の高品質USBケーブルも使用できますが、ポータブル用途で便利な短いのがなかなかないため、ウエブで入手できるUSB Aオス→USB Bオスの直結タイプのコネクタを使用しました。
これはいくつか種類があるようで試してみるとUSBプラグのはまり具合などに差があるように思えます。試してみると下画像の短いタイプよりも長めのタイプの方がコネクタの接触は良いようです。ただしこれは個体差もあると思いますので念のため。コネクタやケーブルさえ問題なければこのシステムはかなり実用的です。

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iPhone/iPad(iOS)自体の制約についてはまず下記の要件があります。これはiTransportやFostexのHP-P1のような専用DACを使うデジタル取り出しとは異なりますので注意してください。
まず組み合わせるUSB DACが標準ドライバーのサポートをしていることです。iOSではドライバーのインストールはできませんので、カスタムドライバーを使用するDACは使用できません。HerusはUSB オーディオクラス2ドライバーをサポートしていますので問題ありません。(iOSでもUSB オーディオクラス2をサポートしていると考えられます)
もうひとつはバスパワーの制限です。これは現在ではけっこうきつくなっているのでたいていのDACはここではじかれてしまいます。回避には電源付きのUSBハブを使うこともできますが、そうするとポータブルではなくなります。この制限をクリアするにはひとつはxDuoo XD-01のようにUSBチャージオンオフスイッチなどを持っていて、内蔵のバッテリーから給電することでも回避できます。ただしそれには内蔵バッテリーが必要で大きくなってしまいます。
もうひとつはこのHerusのようにそもそも消費電力を低減して制限をクリアする方法があります。Herusはこれで要件を満たします。

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また、iPhone/iPad+USB DACのシステムでハイレゾ出力に対応するためには、さらにアプリの制約があります。これはiOSアプリがハイレゾ出力に対応していることです。上の写真はヘルゲ・リエンのLINN 192kHz音源をHF Playerで再生しているところです。
ただこれは192kHzのようにハイサンプリングレートよりも、むしろ24bit出力する方が難があるようです。
Golden Earなんかも24bit対応しているようですが、DAC側で192kHzなどハイサンプリングはロック確認できるものがよくありますが、24bit出ているかを表示確認できるものはまれなのであまり確証はありません。FLAC PlayerとHF PlayerはそれぞれDAC内部のI2Sレベルで24bitでビットパーフェクトの確認実績があります。(FLAC Playerに関しては下記リンク参照)
http://vaiopocket.seesaa.net/article/191432693.html
以下ではHF PlayerにハイレゾPCMとDSD64、DSD128の曲を入れて試してみました。FLAC Playerでも前に書いたようにハイレゾ出力が可能です。2.0になって情報表示も出来るようになりました。
またアップルロスレスでのCD品質音源はアップルサンプリング機能をオンにして、64bit EQ HDモードもオンにしています。

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イヤフォンはDita Answer Trueです。精緻で切れの良い音のAnswerはHerusとよく合うと思います。
システムはiPhone5(iOS7.0.4)⇒カメラコネクションキット⇒USB直結プラグ(A/B)⇒Herus⇒ミニ標準変換アダプタ⇒Dita Answer Trueとなります。

2-2 iPhoneと組み合わせた音質

ぱっと聞いてとても音質レベルが高いのが分かります。細身でシャープな音で、ハイレゾ192kHzの音源も聴き入ってしまいたくなるように細部の再現も見事です。2LのQuiet Winter Nightを聴くと、音楽の細かな音色や楽器の指使いなど音楽の細部に傾注すると言う感覚が分かると思います。
また音像が小さく引き締まっていてシャープさを感じます。細かい音の抽出はさすがESSという感じでDX100が好きな人は似た印象を垣間見るかもしれません。高いレベルの解像力で、音の明瞭感も高いと思います。
ジャズの楽器のキレやスピード感も一級です。高品質録音では楽器の音は緩みなく贅肉が感じられないほど引き締まっています。周波数特性はかなりフラットになってると思います。低域の強調ってないですね。とはいえ低域は十分なインパクトとアタック感を感じられると思います。これはすぐれたジッター低減だけではなく、0.2オームと低い出力インピーダンスも貢献しているでしょう。DACチップがスターではあるけれども、一点豪華という点にも陥らずに全体にバランスの取れた設計です。

スマートフォンOSでのハイレゾ再生機としてはハイレゾWalkmanは大きく超えるレベルだと思います(F880は以前デモ機試聴をしています)。iPhone(あるいはAndroid)+Herusは問題なくスマートフォンOSでハイレゾを楽しめる機材と言えるでしょう。スマートフォンOSでの音源の可能性も広がります。
よくiPhone単体に比べてもポータブルアンプを付けてもあまり差がないという話も聞きますが、Herusの場合はまるでiPhone単体とは異なるレベルの音です。ハイレゾDAPと同程度のレベルですね。
もっている最高のヘッドフォンやイヤフォンで聴いてください。使っていると少し暖かくなるのでけっこうアンプ部分もがんばっていると思います。

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HerusはiPhone5からDSDネイティブ再生も可能です。DSDネイティブ再生ではHF Playerの設定からDoP出力を選択してください。DSD128だとiPhoneでは考えられないような音が再生できます。しかし、iPhoneからこんな簡単にハイレゾやDSDが再生できるとは驚きです。しかも音質も驚くほど高いですね。私もこんな高音質のUSB DACが直でカメラコネクションキットに付けられるとは思っても見なかったです。

音のレベルは高いのですが、惜しむらくはカメラコネクションキットとUSB直結プラグのようなオーディオ向けではない結線を使用することで、これはノートPCで本格的なケーブルを使う場合には解消できます。

Android端末とはおそらくGalaxy S3、note3やLG G2などのUSBクラスドライバー対応機では、USB OTGケーブル経由で再生が可能であると思いますが未確認です。

3 Windows PC/Macでの使用

もともとはこのタイプのヘッドフォン内蔵のUSB DACはノートPCでの運用がメインに考えられているので、こちらが本筋とは言えるかもしれません。もちろんデスクトップPCにも手軽なコンパクトUSB DACとして使うことができます。家のWindows PC/Macで使うとHerusの入出力がフルUSB Bなのと、標準プラグであることが意味を持ってきます。

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HerusはUSB Audio Class2対応ですので、MacOSXはそのままで構いません(MacOSXは10.6.4以降でClass2対応しています)。しかしWindowsではドライバーのインストールが必要です。Linuxは試していませんが、おそらく最新ビルドならばUSB Audio Class2対応ですので接続可能ではあると思います。

ボリュームはやはり本体と連動します。ハード(Device)とソフトウエアの二つボリュームスライダーがあるDecibelで操作するとわかりやすいですが、HerusのボリュームはDevice Volumeに連動するというのがよく分かる思います。

Mac AirとEdition 8で聴いてみましたが、iPhoneからMacに変えて音質が上がるのは無論ですが、やはりケーブルが高音質ケーブルを使えるというのが大きいようにも思います。iPhone+カメラコネクションキットで少し気になった粗さは少なくなり、少し滑らかさが追加されるようにも思います。
HD800でも音量は取れますし、音質的にもなかなかのものがあります。やはり筐体の小ささもあるのか、豊かさとか厚みには欠けますが、シャープで切れが良い点は十分にHD800の良さを引き出せます。

4 Herusまとめ

MacからまたiPhoneに戻してみたところ、こういう場合音が大きく悪くなった感がするものですが、Herusの場合にはMacに比較して大幅に音質低下するというわけでもないように思えます。おそらくHerusが小さいながらも効果的に上流のジッターを除去しているからiPhone+カメラコネクションキットのような構成でも良い音が出ているかもしれません。
Herusのジッター削減の仕組みは詳しくはわかりませんが、サイズからするとES9010K2M内蔵のASRCなどに寄っていると思います。そうするとやはりESSチップの性能が良いことになり、ほとんど素のシンプルなDAC構成でも良い音が出せると証明したのは、ワンチップに周辺回路を統合すると言うESSの手法を実証したことにもなりますね。もちろんHerusのDAC周辺の回路設計も優れているとは思いますが、これはやはりESSのリファレンス的なResonessenceらしいと思います。

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Herusを使用していてやはり思うのはHerusの一番の特徴はやはり高い音質だと思います。スマートフォンのiPhoneに付加物を付けるのはやっかいなものではありますが、このくらい音質レベルが高いと積極的に使いたくなりますね。使っていて問題はボリュームのステップが粗いくらいでしょうか。
コンパクトでiPhoneからの直のDSDネイティブ再生やDXD再生のような可能性もありますし、音質の高さと直結しています。価格を考えてもかなり性能レベルが高く、簡単に使えるのも魅力です。
iPhoneユーザーでオーディオ好きなひとはお勧めですね。ノートPCユーザーにも良いのはむろんのことです。コンパクトUSB DACとしてはDragonflyを超えた音質レベルがあると思います。

ただ問題になるのはHerus自体ではなく、カメラコネクションキットのケーブルの音質やUSB直結コネクタの品質などです。
iPhoneライトニングからUSB Bオスでオーディオ向け高品質USBケーブルの10cmタイプ、なんていうのがあればHerusはもっと光ると思いますが、あやしい海外のiPhone OTGケーブル市場を探してみてもないですね。Herusが単体として優れていてもシステムとして考えると足を引っ張られると言うのは、ある意味でHerusが新しいジャンルの製品であるあかしともいえるかもしれません。
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2013年11月13日

USBメモリサイズのUSB DACアンプ一覧 (最終更新: 2013/11/14)

最近のPCオーディオ界流行のひとつはDragonflyのようなUSBメモリ(またはUSBドングル)型のコンパクトなヘッドフォンアンプ内蔵のUSB DACです。おそらく昨年度にDragonflyがStereophileの賞を取るくらい人気が出て評価も高かったのが理由の一つだとは思います。(こうしたUSBメモリタイプ機器のもともとはhiFaceだと思いますが)

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AudioQuest Dragonfly

下記にこうしたタイプについて私がいままで知っているラインナップを書きだします。

- AudioQuest Dragonfly
ケーブルメーカーのAudioQuestが開発したUSBメモリサイズのUSB DACアンプで実際の開発はWavelengthのゴードンさんがおこないました。
昨年度のStereophileの年間最優秀Computer Audioプロダクト賞を受賞。

USB入力のタイプ PCのUSB端子に直結(Aオス)
DACチップ ESS ES9023
USBドライバ USB Audio Class1.0
PCM対応 96kHz
DSD対応 なし
ボリュームノブ なし。内蔵アナログボリュームがある(PCから制御)
ディスプレイ情報 ロック周波数をライトの色で知らせる
価格 27500円(D&Mホールディングス)
URL http://dm-importaudio.jp/audioquest/lineup/dragonfly/
URL(Music To Go) http://vaiopocket.seesaa.net/article/278372379.html

- Resonnesence Herus (ヒールス)
ESS DACの純正メーカーとも別称されるResonnesenceの製品でDXD/DSD128対応。最新の2Mチップを採用した低消費電力もポイント。出力インピーダンスも低い(0.2Ω)。

USB入力のタイプ ケーブル経由(フルBメス)
USBドライバ USB Audio Class2.0
DACチップ ESS ES9010-2M
PCM対応 352kHz
DSD対応 5.6MHz
ボリュームノブ なし(DACのデジタルボリューム)
ディスプレイ情報 なし
価格 39800円(エミライ)
URL http://www.resonessencelabs.jp/products/herus/


- Light Harmonic Geek out
ハイエンドメーカーLight HarmonicがKickstarterでクラウドファンディング開発したDXD/DSD128対応製品。DSPによる3Dサウンドあり。
Kickstarterのオプションではアンプの出力別に3つのタイプあり(製品版はないかもしれない)。

USB入力のタイプ PCのUSB端子に直結(フルBオス)
USBドライバ 不明(たぶんUSB Audio Class2.0)
DACチップ BB PCM1795
PCM対応 384kHz
DSD対応 5.6MHz
ボリュームノブ あり(アップ・ダウンボタン)
ディスプレイ情報 周波数ロック?
価格 $200(Kickstarterでない小売価格)
URL http://mustgeekout.com/
Kickstarter http://www.kickstarter.com/projects/gavn8r/geek-a-new-usb-awesomifier-for-headphones

- Meridian Explorer
お手頃メーカーMeridianの製品。はじめは出力インピーダンスの高さを揶揄されたが、いまは改良版が出ている。
光デジタル出力とアナログアウトあり。

USB入力のタイプ ケーブル経由(ミニBメス)
USBドライバ USB Audio Class2.0
DACチップ 不明
PCM対応 192kHz
DSD対応 なし
ボリュームノブ 本体にアナログボリュームあり
ディスプレイ情報 周波数ロック
価格 $300
URL https://www.meridian-audio.com/en/collections/products/explorer-1000/4/


- Cambridge DACmagic XS
よく知られたDACmagicのCambridgeのUSBメモリサイズのUSB DACアンプで、アルミシャーシ製。

USB入力のタイプ ケーブル経由(マイクロBメス)
USBドライバ USB Audio Class2.0(Class1.0のフォールバック機能あり)
DACチップ 不明
PCM対応 192kHz
DSD対応 なし
ボリュームノブ あり(アップダウンボタン)
ディスプレイ情報 なし
価格 日本価格未定(ナスペック 28000円ほど?)
URL http://www.cambridgeaudio.com/products/dacmagic-xs-usb-dac-headphone-amp


- ALO island
おなじみALOの製品で、RSAタイプのポータブル用のバランス駆動ヘッドフォン端子を搭載している点と、大きなボリュームダイヤルを搭載している点が特徴。
ゲイン切り替えと通常のステレオミニもあり。HeadFi系のマニア向き仕様ですね。

USB入力のタイプ ケーブル経由(ミニBメス)
USBドライバ 不明
DACチップ CS4398
PCM対応 192kHz
DSD対応 なし
ボリュームノブ 大型のボリュームダイヤル
ディスプレイ情報 なし
価格 国内オープン(実勢45000円前後) ミックスウェーブ
URL http://www.aloaudio.com/the-island


- M2tech HiFace DAC
hiFaceで知られるM2techのDAC内蔵タイプでヘッドフォン端子としても使用可能。
比較的インピーダンス高めのヘッドフォン向き。

USB入力のタイプ PCのUSB端子に直結(Aオス)
USBドライバ USB Audio Class2.0
DACチップ 不明
PCM対応 384kHz
DSD対応 なし
ボリュームノブ なし
ディスプレイ情報 なし
価格 34800円(トップウイング)
URL http://m2tech.org/hifacedac


- AudioEngine D3
コストパフォーマンスの高さで知られるAudioEngineのRMAF2013で発見された製品。
出力インピーダンスが10オームとやや高め。

USB入力のタイプ PCのUSB端子に直結(Aオス)
USBドライバ USB Audio Class1.0
DACチップ AKM4396
PCM対応 96kHz
DSD対応 なし
ボリュームノブ なし
ディスプレイ情報 88/96のサンプルレートの時に点灯するLED
価格 $189
URL http://audioengineusa.com/Store/D3-24-Bit-DAC


- HRT microStreamer
これもコストパフォーマンス高い系のコンシューマーブランド、HRTのStreamerをさらにコンパクトにしたようなUSB DACアンプ。
ふたつの出力端子があり、ヘッドフォンとラインアウトに分かれている。

USB入力のタイプ ケーブル経由(ミニBメス)
USBドライバ USB Audio Class1.0
DACチップ AKM4396
PCM対応 96kHz
DSD対応 なし
ボリュームノブ なし
ディスプレイ情報 ロック周波数
価格 179.9英ポンド
URL http://highresolutiontechnologies.com/microstreamer

以上、間違ってたらすいません、あとでリスト更新しれます。

更新履歴: 2013/11/14 ALO islandの価格を国内価格に変更
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2013年11月05日

Geek通信4: Lightharmonicが再びクラウドファンディングでUSB DAC開発

この前ハイエンドオーディオメーカーのLightharmonicがGeek Outという(最近流行りの)ヘッドフォンアンプ内蔵のコンパクトUSB DACをKickstarterでのクラウドファンディング開発したという記事を書きました。(わたしも投資済み)
そのLightharmonicが今度はIndiegogoという別のサイトでGeek Pulseというデスクトップ版のGeek上位機種を再びクラウドファンディング開発してます。
http://www.indiegogo.com/projects/geek-pulse-a-digital-audio-awesomifier-for-your-desktop

Geek PulseはデスクトップのUSB DACでヘッドフォンアンプ内蔵、DSD128とDXD対応で9018 2M搭載(予定)です。予価は$499のようですが今ならEarly Bird(早割) entryで半額$249です。今朝時点で枠はあと70人ほどでした。(日本へは送料$40プラス必要)
Headfiにも記事があります。
http://www.head-fi.org/t/687851/geek-pulse-geek-desktop-dac-amp-by-light-harmonics/0_30
ただし満額達成してからクレジットで引き落とされるKickstarterと違ってIndiegogoはその場支払いのPaypalですが、Geek Pulseはもう満額行ってるので(たぶん)大丈夫でしょう。わたしもいきました。来年4月リリース予定です。クラウドファンディングは予算段階での投資ですから、普通にプリオーダーするより時間はかかります。

面白いのはLightharmonicって100万円くらいのDaVinci DACとか最近は10万円のUSB ケーブルとか出してるハイエンドオーディオメーカーですが、そこがこういう低価格コンシューマ製品を出すってことです。LightharmonicにとってのGeek系統は、AMRにとってのiFIに似た関係にありますね。AMRはハイエンドメーカーでその技術背景を応用してiFIのような高性能の低価格製品を出すという流れです。この前ヘッドフォン祭でiFI/AMRのトルステン博士と話した時もそれを指摘したら、他のメーカーが似たようなアプローチをとって来てるのは気付いてるって言ってました。
ただそうした企業内ベンチャーのようなアプローチをするのに、iFIの場合は他のメーカーとの共同出資という形をとってますが、Lightharmonicの場合はクラウドファンディングという形をとってるのが興味深いと思います。
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2013年09月07日

GEEK通信3: ライバルとの数値測定比較データ公開

私も投資しているクラウドファンディング開発によるUSB DAC、Light HarmonicのGEEKですが、下記リンクの開発ブログに数値測定してライバルとの比較データが掲載されています。
http://mustgeekout.blogspot.jp/2013/09/geek-vs-others-v2.html?m=1
GEEKはOutput VoltageからするとSuper Duper GEEKを使用していると思います。 (Super Duper GEEKは「心底からオタク」みたいな意味ですね)

DragonflyやMeridian Explorerと比べた場合、出力インピーダンスが大幅に低く、THDもDragonflyに対して低くなっていますね。またSNが少し優れています。GEEKはライバルに対して数値的にも優れているということが分かると思います。

ただし、Light Harmonicはポータブルやヘッドフォン系のメーカーではないので、はじめGeekの出力インピーダンスは10オームくらいでいいだろうと思ってたふしがあるのですが、わたし始めいろんな人が文句を言ったのでいま0.47オームまで出力インピーダンスを下げてくれました。
我々は投資者なので文句を言う権利があるのですが(笑)、クラウド(crowd=大衆)参加型の開発として、みなの意見を取り入れてくれながら開発するという面白いモデルではないかと思います。技術のことは開発者が一番知っているわけですが、使うのは我々ですから、すでにあるヘッドフォン文化を理解するうえでも有効でしょう。

またiPadとの接続も行ったようです。再生可能と言っていたので、GEEKがUSB オーディオクラス2(標準ドライバ)ということがわかりますね。またiPadのiOSはUSB オーディオクラス2のドライバを採用していることもわかります。

GEEK USB DACはなかなか期待が膨らんできます。リリースは2014 CESのときの予定です。
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2013年08月27日

GEEK通信2:Geek クラウドファンディング USB DACプロジェクトがアップグレード

Geekは先日書いたLight Harmonic社のクラウドファンディング開発によるUSB DACプロジェクトで、クラウドファンディングはKickstarterを利用しています。
GeekはDragonflyのようなコンパクトなUSB DACです。仕様はDSD5.6M対応、PCM384K対応と優れたデバイスでヘッドフォンアンプ内蔵です。
詳しくは下記前記事を参照ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/372014855.html

そのGeekのパワーアップ版が今日登場しました。Kickstarterのメールを使用したGeekコミュニティで私はスマートフォン対応の怪しい雰囲気を察したんで、しつこくハイカレントにしてねって突っついたせいもあるのか(Your wish is my commandって言ってる)、パワー60%増しのSuper Geekと120%増しのSuper Duper Geekの二種類が加わり、前者は720mW、後者は出力1000mW!になります(オリジナルは450mWで出力インピーダンスは10オーム)。これだけあるとどんなヘッドフォンでも大丈夫でしょう。
前者は30$プラス、後者は60$プラスで投資アップグレード可能です。私はさっそくSuper Duper Geekに投資スイッチしました。Super/Super Duperの表示Pledge額と各自の実際Pledge額の差分がありますが、投資差分は向こうでツールを使って修正するとのことです。

Geekは予定額の6倍以上の$18万ドルも集めてますから予算達成はしてますので、余裕があると開発者はこんな変更もできます。クラウドファンディングの強みですね。
別なクラウドファンディングのIndiegogoでやってるフィルムカメラのデジタル化アダプターであるDigiPodもこれだけ集まると良かったんですが。。
DigiPodについては下記写真ブログ記事を参照ください。
http://blog17gray.seesaa.net/article/372614837.html


なおKickstarterではIndiegogoと同様に目標額に達しないと投資は引き落とされませんので安心です(ただし目標達成しても開発がこける場合があります。 <- Geekの懸念はいまこっち)。
ちなみにクラウドファンディングのクラウドはcrowd(群衆)ですので、ITでよく使う雲の意味のクラウドではありません。念のため。
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2013年08月14日

GEEK通信1:Light HarmonicのエンジニアがKickstarter投資でUSB DACを開発

Da Vinchi DACを開発しているLight HarmonicのエンジニアがDragonflyのようなUSBメモリタイプの小さなUSB DAC・アンプを開発中です。ここではこのタイプのデバイスをUSB Awesomifier(すごいUSB機器みたいな意味)と呼んでいます。このデバイスはGeek(マニアとかオタクの意味)という名前でミニヘッドフォンアウトがついて384k/24bitまでPCMに対応し、DSD128にも対応するという優れモノです。ヘッドフォン端子は2個ついていて、3D DSPも内蔵しているようです。予定価格は$299ですが、面白いのは開発をKickstarterで投資を募っているところです。Kickstarterはなにか面白いものを開発したい人が前もって資金を募るところで、投資者には開発したものを安く買えるなどの特典があります。最近では私はOUYAに投資しました。(無事届きましたがまだ忙しくて開けてません)

KickstarterのGeekページは下記サイトです。
http://www.kickstarter.com/projects/gavn8r/geek-a-new-usb-awesomifier-for-headphones?ref=live

29日残っていますが、既に今朝の時点で目標$28,000のところ、$17,444がすでに集まっていましたが、今夜9時現在でなんと予定オーバーの$46,577も集まっています。
投資の特典は$1だと「ありがとう」、$29でTシャツ、$99になると製品を$99(払った費用)で安く入手できます(ただしこの枠は私が見つけた時点でもう売り切れ)、次は$119でこれに私は投資しました。海外へは追加$20必要です。次は$139、$179、$249と高くなっていきます。今9時現在でもう$119枠もなくなったので興味のある方は急いだ方がよいかもしれませんね。
また$1000投資だとGeekのプロトタイプのテスターとなることができます。$5000だと2014CESでブースに招き、ラスベガスのホテル3泊で高待遇するそうです。

KickstarterにはFacebookアカウントでログインができ、支払いはAmazon(USアカウントが必要)経由でクレジットカードです。ちなみにGeekのリリース予定は2014/1月と言うことでCESのときでしょうね。
またLight Harmonic自体ではなく、Light Harmonicのエンジニア(Gavin Fish)の個人プロダクトだと思います。Kickstarter(いわゆるクラウドファンディング)の場合、プロダクトがぽしゃってしまったときには保証は基本的にないので、投資がどうなるかはわかりませんので念のため。ただし投資がそもそも目標額に届かなかったときは引き落としされませんので安心ください。でも投資が予定オーバーしていても、開発者がさらに上を目指して結局完成しなかったものもあります。
まあこのケースは大丈夫だと思いますが、、

追記:
使用されてるDACチップはPCM1795のようです。
また本体にボリュームコントロール(ボタン)もあるとのこと。USBクラス2のようですので幅広く使用できそうです。
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2012年09月29日

PS AudioがDigital Link IIIの後継機を発表!

PS AudioがDigital Link IIIの後継機を発表しました。NuWave DACです。Digital LinkIIIというと長い間コストパフォーマンスの高いDACとしてベストセラーだったんですが、PS Audioが高価格路線に行ってしまったんでこの価格帯は放置されてしまいました。しかしここにやっと後継機が出てきたわけです。
こちらがリンクです。
http://www.psaudio.com/products/audio/media-players/nuwave/

PWDからDigital Lensなどの機能を取って簡略化して$995、XMOSで192/24まで対応してます。電源やアナログ部へのこだわりはDL3ゆずりですね。またDL3では強制的にアップサンプリングされたんですが、NuWave DACではNative modeを使うとアップサンプリングなしでいわばビットパーフェクトで伝送されるわけです。
DL3の頃に比べるとDAC戦争も激しい訳ですが、どう戦えるかちょっと楽しみですね。
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2012年07月01日

AudioQuest Dragonfly - USBメモリ型の超小型ヘッドフォンアンプ内蔵USB DAC

以前CES2012のときにニュースとして書いたのですが、ケーブルメーカーのAudioQuestのDAC製品が先日リリースされました。このDragonfly(とんぼ)です。これはUSBメモリ型でコンパクトなDAC内蔵ヘッドフォンアンプです。USBメモリ型ではdenDACがありましたが、DragonflyはHD対応の本格的なものです。価格は$250となっています。こちらがホームページです。
http://www.audioquest.com/usb_digital_analog_converter/dragonfly-dac
これはノートPCのお伴としてかなり興味があったんですが、2週ほど前に発売されましたのでさっそく入手しました。

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コンパクトという点ではnuforce uDAC、HRT Head Streamerなんかも良いですが、USBケーブルを付けねばならないので結果的にかさばるのが難点です。
DragonflyはdenDACと同じようなUSBメモリタイプでUSBポート直結なのでUSBケーブルは不要です。ただケーブルメーカーのAQがケーブルレスのUSB DACを作るというのも面白い点ではあります。
そもそもなぜケーブルメーカーのAudio Questがヘッドフォンアンプ内蔵DACを、と思いますが、これはAQの技術者が自分たちがほしいものを作ったということです。とはいえ実際に設計したのはAudio Questの人ではなく、ここでも何回か書いているあのWavelengthのゴードンさんが外装以外はみな設計したということです。ただしAQからはフェイズフィルターを最小限にしてくれなどの仕様要求はあったそうで、Wolfsonなども含めたプロトタイプを5つくらい作成して、AQの人たちの試聴で音決めしていまのESS Sabreを使うモデルにしたということです。(DACチップはODACなどでも使われているES9023のようです)

つまりAQ内のたまたま設計できる人が作った未知数のものというのではなく、米PCオーディオ界トップのゴードンが設計したということで性能的には安心できるというわけです。実際にDragonflyはWavelengthのDACの流れを引く次のような特徴が見られます。

* ゴードンのコード、アシンクロナスUSB搭載

ゴードンさんといえば、Wavelength Protonで「USBアシンクロナス転送」によるUSB DACの高音質化をはたしたことで有名です。それがAyreのQB-9でも採用されてUSB DACというものがオーディオのなかで市民権を得ていくきっかけともなりました。このコントロールプログラム(ファームウエア)をWavelength Streamlengthといいます。
いまではStreamlengthはXMOSを使用した192k対応になっていますが、DragonflyではTAS1020に対応した96/24対応のバージョンが採用されています。ここでいうXMOSとかTAS1020というのはUSBの入力をつかさどるコントローラチップのことです。(TAS1020はディスコンだったような)
Dragonflyでは入力サンプルレートに応じてロゴのLEDの色がQuteHDのように変わり、現在のサンプルレート確認が可能です。

* 64ステップの内蔵式アナログボリューム

これもProtonで使われた手法です。Dragonflyには外側にボリュームつまみがありませんが、内部にアナログのボリュームが内蔵されていて、いわゆるデジタル的な音質ロスを最小限にして音量調整が可能です。音量調整はPC/Macのシステムボリュームと連動します。

- DAC内蔵ヴォリュームについては後でもう少し詳しく書きます。

* 実際の使用と音質

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箱から出すと思ってたよりも小型で本当にUSBメモリサイズです。ただ見かけよりはずっしりした感じはしますね。表面はラバーコーティングされていて滑りにくく高級感もあります。

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標準ドライバー(ドライバーのインストール不用)で素姓も良いので広く使うことができます。Macbook、Windows PC、Linuxタブレットなどで使ってみました。接続性はみな良好で簡単に使うことができます。

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まずMacbook Air 11インチで使ってみました。標準ドライバなので、Macbookに接続するとすぐに使うことができます。
実のところMacbook Air 11インチの内蔵音源もいいんですが、やはり潤いにかけます。Dragonflyに変えると音の明瞭感があがり楽器の音鳴りが鮮明になるとともに、音に潤いがあるオーディオ的な豊かさが感じられます。また内蔵音源に比べると全体的に音がかなり整った滑らかさも感じられます。中高域の透明感や低域の深みもなかなか良いですね。背景ノイズも低く高感度イヤフォンで使っても問題ないと思います。
ただし音の広がりや力感はさすがにいまひとつかもしれません。こじんまりとしているけれども良く整った音空間という感じでしょうか。またEdition8やK3003などのポータブル機では文句ありませんが、HD800ではさすがに鳴らし切ると言うわけには行きませんね。

Windows7の高性能デスクトップPCでも良い音を聞かせてくれます。もっともこの辺に使うなら据え置きのきちんとしたものが良いですが、ヘッドフォンリスニングのためにちょっと足したいという人もいるでしょう。
JRMCなどのプレーヤーソフトを使うとなかなかの高音質で楽しめます。音は細かく解像され、ベースやドラムの音のタイトさ、切れの良さ、制動力もこのサイズにしてはなかなかのものがあります。音調はニュートラルで帯域バランスも良好です。テンポもよくスピードもある方です。
ここではより音の特徴は際立ってわかるように思えます。ゴードンさんは今はPCオーディオで有名ですが、もともとは真空管畑の人なのでProtonなどもそうですが柔らかな音が好きなようです。一方でDragonflyはESSっぽいというか、どちらかと言うとニュートラル・分析的な感じがします。この辺はやはり音決めはAQの人のテイストなのかもしれません。

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LinuxではひさびさにSharpのLinuxタブレットPC-T1を取り出してみましたが、これはすばらしく相性が良かったですね。接続も問題ないようです。(多少あやしい感もありますが)
PC-T1はubuntu 9.04をベースにしています。ドライバーはOSSもALSAも使えるようですが、OSSの方が安定しているように思います。プレーヤーソフトはARM向けなので限られてはいますが、ExaileとかListenが使えます。これらは機能的には十分です。
持ち運べて最小のPCオーディオシステムとも言えますが、音質も素晴らしく良いことに驚かされます。これとEdition8を組みあわせるとちょっとこの小さなシステムの音とは思えないくらいです。
ただしPC-T1は遅くて普通にタブレット用として使えるようなものではありませんので、念のため。パワーがないのでハイレゾもちょっと難しいですが、44/16を再生するうえではかなり良い音で楽しめます。

iPad はパワー供給制限のため使えませんが、ゴードンさんによるとこれは音質の都合でアンプ部分で使う電流を大きくするためにiPad対応は意図的に削ったということです。

Dragonflyはコンパクトでいて音も良く、特にノマドワーキングをして喫茶店や図書館で良くノートPCを使いながらも、BGMを良い音で聴きたいという人にお勧めしたいですね。

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---別項 : PCオーディオのボリュームコントロールとDAC側ボリュームについて (この項は後で別に分離させるかもしれません)

ボリューム調整というのは当たり前のようでいてなかなか深く、オーディオのポイントの一つです。それはPCオーディオでもまた例外ではありません。
この項ではDragonflyやProtonのように内部にボリュームのあるDACの使い方について説明します。

1. DAC内蔵ボリューム(Device Volume)とは

PCオーディオではビットパーフェクトを保つためにPC側のボリュームはフル(100%)にしておくことがよく書かれていると思いますが、これはPC側でオーディオデータを再計算することで精度を落としてしまうという前提に基づいています。しかし、DAC側でDragonFlyのような内蔵ボリュームを備えているものにおいてはPC/プレーヤーソフトのボリュームとDACの内蔵ボリュームの連動が可能です。
つまりデータは再計算しない状態でDACに渡して、同時にボリューム位置の情報も渡すというものです。この場合はソフト側でボリュームを変えていてもビットパーフェクトになります。これはUSB Audio Class 1.0のControl規定を使用しているようで、DACがDevice Volumeを備えているかはハンドシェイクのデスクリプタ(記述子)交換でわかると思います。なおこれはCoreAudioの機能ではなく、ドライバーの機能なのでAudirvanaでダイレクトモードを使ってCoreAudioをバイパスさせても問題ありません。

DACがDevice Volumeを備えているときはDAC側では2通りの処理が行えます。ひとつはDAC側でデジタル領域で再計算するという方法で、ESSはDACチップレベルでこれをサポートしているようです。もうひとつはアナログ領域でアナログボリュームの制御に用いるというもので、Dragonflyがそうです。Protonでもこの手法が使われていました。内部ではI2CシリアルIFを使用してDACアナログ段の後のアナログボリュームをコントロールしているそうです。

2. DAC内蔵ボリュームとPC側のボリューム調整について

OS側ではシステムボリュームでも可変できますが、プレーヤーソフトではAudirvanaのDAC Only/if availableやDecibelのdevice volumeで明示的に指定ができます。Decibelの場合はDigital volumeとDevice Vollumeが独立しているのでわかりやすいと思います。このときはDigital Volumeを最大にしたままで、Device volumeで音量を調整してください。(Device VolumeがグレイになっていたらDigital Volumeを使います)

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左:Audirvana Plusと右:Decibel

Decibelのdevice volumeについての記述は下記にありますが、やはりProtonなどを対象にしているとありますね。
http://forums.sbooth.org/viewtopic.php?f=22&t=5125
WindowsではJRMCはやはりボリュームを二系統持っていて、System Volumeを選択すると上で書いているDevice Volumeと同じになります。サウンド>プロパティ>レベル(ボリューム)と連動するのがわかると思います。Internal Volumeが64bit高精度ソフトウエアボリュームです。
iTunesなどの場合はプレーヤー側のボリュームは最大にしておいて、システムボリュームで調整できるはずです。Macではこのときメニューバーにボリュームを表示させておくと便利です。キーボード上のボリュームコントロールを動かすとシステムボリュームを動かします。

ただしプレーヤーソフト側がディザ対応などの高精度デジタルヴォリュームを採用しているときはこのかぎりではないので、device Volumeとdigital volumeのどちらが良いかは自分の試聴で決めると良いのではと思います。(DAC側のdevice volumeがすべて高精度とは限らないので機器と場合によります)
JRMCではこの切り分けについて無録音テスト音源を使用して行う方法がマニュアル(ヘルプ)の中で紹介されています。

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2012年05月22日

DSDネイティブ再生・パルスアレイDAC採用の低価格DAC、Chord QuteHD国内発売!

以前速報しましたが、本日タイムロードからChord QuteHDの国内発売発表のプレスリリースがありました。
http://www.timelord.co.jp/blog/news/chord-qute-hd/?mode=consumer
税込価格は142,800円で発売は2012年6月10日ということです。
本記事では実機を使った音質評価も交えながら詳細にレビューして行きます。

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Chord QuteHDはGEMのようなコンパクトでChordの普及価格帯のChordetteシリーズのUSB対応DACです。

* QuteHDとは
QuteHDは下記のようになかなかユニークな特徴を持っています。

*最高384kHzのUSB入力を将来的にサポート
*DSDネイティブ再生可能 (標準規格DoP対応)
*パルスアレイDACやWTAフィルタリングのような高級機にみられるChord独自技術を採用
*USBだけではなくSPDIFもBNC端子を備え、SPDIFは将来的に384kHz入力対応
*コンパクトでかつ高剛性、Chordの個性を持ったアルミ切削の筺体設計


まずQuteHDは価格に対しての音質面での作りこみが半端ではありません。いままでChordetteラインはGEMをはじめとして、上のDAC64やQBDなどに比すると少しギャップが大きすぎる印象がありました。
しかしQuteHDでは上の特徴に見られるように、内容的にも上級機に近いものでミニDAC64とか、ミニQBDなどと呼びたくなります。そしてそれにとどまらず中には凌駕する仕様さえあります。
実際に回路設計もコードらしくFPGAを多用したもので、DACの心臓部はこの価格帯では異例なことに、出来合いのDACチップではないパルスアレイDACを使っています。たいていのDACはPCM1794とかES9018のように出来合いのDACチップにメーカー独自のI/V変換とかアナログ出力、デジタル入力段を組みあわせたものですが、このパルスアレイDACはDA変換部分がChord独自のアルゴリズムによるもので、いわばオペアンプに対してのディスクリートのようなものです。この辺からも高級感が感じられます。
QuteHDのパルスアレイDACはDAC64の第4世代から一歩進んだQBD76相当の第5世代で、QBD76よりは簡略化されているというものです。さらにQuteHDではこのパルスアレイDACはなんと設計段階でDSD入力を考慮したという点でも特筆できます。WTA補完フィルターなどもDSPを10個並列仕様で実現するなど、なかなか凝ったものです。またジッター低減もかなり本格的な設計がなされています。

そしてこれはChordがはじめて本格的に取り組むPCオーディオ製品です。
ChordはDAC64やQBD76など電子回路設計は優れていましたが、コンピューター周りが弱い印象があって、たとえばQBD76でもこんなすごいスペックなのに当初USBは48/16対応でした。後からハイレゾ対応されましたが後手後手に回っていた感は否めませんでした。
ところがこのQuteHDは一転してUSBで384kHz、しかもDSDネイティブ再生対応と、先手で一気に他社を抜き去ってしまいました。
DSDネイティブ再生は最先端の話題でもある業界標準規格のDSD Over PCM(DoP)を採用しています。標準規格のため幅広く再生ソフトを選ぶことが出来ます。
USB 384k対応は将来的拡張ではありますが、おそらくUSB 384kHz対応とDSDネイティブ再生の最先端スペックを同時に満たしたDACは、どの価格帯を探してもまだないと思います。
USBドライバーはカスタムドライバーでアシンクロナス転送を採用、MacもWindowsも用意されています。

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端子はBNC(SPDIF)、光、USB

PCオーディオ以外でも手を抜かず、これも将来的ではあるけれどもSPDIFで384kをうたっているところも地味にすごい点ですね。SPDIF端子もBNCと、このクラスでは普通に見られるRCAよりもひとクラス上を感じさせます。
光入力に対してもしっかり作り込んで、トランスポートと電気的に切り離せる光の利点を積極的に利用できるとうたっています。

実機を使う機会を得ましたので、さっそく使用感と音質についてレビューしたいと思います。

* QuteHDの使い方

Chord QuteHDは他のCordetteシリーズと同じサイズなので片手で楽に持てるほどコンパクトで場所を取りません。電源はACアダプターを使用します。
仕上げもきれいでアルミ切削シャーシは高級感があると同時に効果的に放熱すると思います。QuteHDは使用しているとDACとしては意外なほど熱くなります。
ちなみに電源スイッチはありません。初代DAC64みたいですね。質実剛健です。本体カラーはシルバーとブラックがあります。

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デジタル入力は信号が出ていれば自動的に選択されます。手動で切り替える必要はありませんが優先順位があって、優先順はUSB、同軸デジタル、光入力となります。たとえばUSBと同軸デジタルを同時に接続している場合には、USBからの再生が選択されます。

QuteHDはカスタムドライバーを使用しているので、Windows/Macと接続する際には同梱のCDからドライバーをまずインストールします。Windowsは32bitと64bitが別に用意されています。Macのドライバーはdmgで格納されています。インストールした後は"Chord Async USB 44.1KHz - 192KHz"としてサウンドの設定に表示されます。

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MacとWindowsのインストーラ

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MacのAudioMidiとWindows7のデバイスのプロパティ画面

QuteHDはChordの個性的な窓がついていて中の回路が見えますが、ここの照明がどのサンプルレートをロックしているかで変わります(DSDもあります)。ロックしていないときは照明がつきません。

色は44Kは赤、48kはオレンジ、88kは黄色、96kは緑、176kは薄い青、192kは濃い青、DSDでロックしているときは白くなります。

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44k(赤)、48k(オレンジ)、88k(黄)

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96k(緑)、176k(薄い青)、196k(濃い青)

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DSDネイティブ再生(白色)

後で書きますが、特にDoPでDSDネイティブ再生できているかは青か白かで確認ください。

* QuteHDの音質

試聴のシステムはWindows/Macをソースにしてさまざまなプレーヤーソフトを使用し、主にUSB接続で聞きました。出力機器は当代髄一のヘッドフォンオーディオ機器としてHifiMANの平面型フラッグシップ、HE-6とEF6のプロトタイプを使用しています。

届いたばかりでエージングもしていない状態ですが、接続して音を出した瞬間にはっとするほどの高音質です。なんだかいままで聴いたことのないレベルの音世界が私の頭の中でひろがっています。
音は自然でかつシャープという理想を両立しています。まったくエージングゼロでもきつさがないのがまた驚きます。はじめはパルスアレイDACっていってもスイッチング電源のCordetteラインだし、などと不遜にも思ってたんですが、それが聞いた瞬間にみな吹き飛んだ感じですね。もちろん家ではオーディオ用の電源タップなどを使ってはいますが、バッテリー電源のWavelength Protonと比べても滑らかさに遜色がないし、Protonと比べるとかなりはっきり分かるほどよりシャープで鮮明・明瞭です。そして高域の明確さ、低域の重み・実体感もひときわ高く、レンジの広さも特筆ものです。楽器の音はかちっとして輪郭があいまいではありません。極めて明瞭でいながらきつさはなく、細かい音をよく拾います。ピュアで透明感が際立ったChordらしい音とも感じられますね。
アップサンプリングすると(色が変わり)、44k->88k->176kと素直で直線的に音質が上がる感じです。384kとなったらどうなるのでしょうか。
Chordが本気になるとこの価格のDACでもこんな音を出すんですね、と実感した瞬間です。ロバートワッツの技術を1000ポンド(イギリス)以下で、というキャッチコピーも伊達ではありません。

自然でシャープな音というところでは、いわばディスクリートのパルスアレイDACやWTAフィルターが効いているんでしょうか。そこで現在最高ともうたわれるESS Sabre32、ES9018と比べてみようと、あのマニアックなAudioGD NFB-10ESと聴き比べました。NFB10は私のはUSBを排したBNCモデルですので、Audiophilleo1を使って、同じBNCで比べました。

やはりNFB10はESSらしいシャープで精細な音で優れた音再現を聞かせますが、驚くことに重量でははるかに小さいQuteHDの方がさらに音質は上です。音の自然さ、リアルさ、厚み、低域の重みなどでQuteHDの方が優れています。特に自然さはやはりQuteHDの勝ちです。バイオリンの音色などを聞くとよくわかります。
音の細かさもEF6+HE6のような顕微鏡レベルのシステムでもあのES9018とそん色はないですね。むしろ細かい音がよく整理されてよく聴きとりやすいかもしれません。おそらく音場の立体感もQuteHDがまさっているでしょう。ポップ・ロックなんかでもQuteHDの方が整理されて良いですね。QuteHDでは細かな音が洪水のように出ていても整理されて整然と楽しむことができます。
アナログ部はどう見てもNFB10の方が電源も含めて数倍は物量投下されていますが、それを補ってもなおQuteHDの方が音が自然だというのはパルスアレイDACの素性の良さがデジタル部ですでに完成されているからなのでしょう。
次の興味はさらに上級のDACとどこまでいけるか、ですがこれはまたいずれ。

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QuteHDは、いわゆる戦略的商品というやつです。Chordとしては前例ないほどエントリークラスに力を入れていて、PCオーディオ最新分野にも完全に対応しています。ChordはこのほかにもIndexというネットワークプレーヤーも投入準備をしています。
いったいなにがあったんでしょうかと思わせるこのChordの変わり方ですが、Focalのヘッドフォン発売やnaim買収を見ても欧州オーディオメーカーにいろんな変化が出ていると言えるのかもしれません。
いずれにせよ新しいChordに期待が膨らみます。


ここまででも十分にQuteHDはお勧めなんですが、さらにQuteHDではトレンドの先端を走るDSDネイティブ再生が可能です。いままでは高価格のPlaybackか、もとはスタジオ機のMytekしか選択のなかったDSDネイティブ再生の分野に、いよいよ手軽な価格で本格的なオーディオDACが現れたというわけです。
ということで、次の記事はQuteHDのDSDネイティブ再生実践編です。QuteHDは業界標準規格のDoPを採用していますので、その利点である対応プレーヤーソフトの幅広さを生かして各ソフトの設定を中心に書いていきたいと思います。
posted by ささき at 15:38 | TrackBack(0) | __→ USB DAC全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月18日

384k対応の低価格USB DAC Kingrex UD384国内発売

昨年後半から少し話題になっているKingrex UD384が国内発売します。国内代理店はナスペックさんになります。

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こちらフジヤさんの販売リンクです。価格は43,800 円です。
http://www.fujiya-avic.jp/products/detail11157.html

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UD384本体

またバッテリータイプの専用電源があわせて販売されます。こちらは20,800 円です。
http://www.fujiya-avic.jp/products/detail11156.html

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別売の専用電源

UD384はUSB入力のみのDACで、DDC機能も付いています。入力はUSBのみ、出力はRCAアナログ出力とRCAデジタル出力です。非常にコンパクトで置き場所には困らない感じです。


*特徴

1. 384kHzに対応

2011年は192kHz対応のUSB DACがスタンダードになりましたが、UD384は低価格で384kHzまで対応可能なところがポイントです。
また384kHzに対応しますが、352kHzは対応しないようです。88.2と176の系列は対応しているので不思議ではありますが、これはKingrexに聴いてみた所チップとクロックに起因する問題のようです。
384kとなるとUSBコントローラーが気になりますが、ここは突っ込んでも教えてくれませんでした。

2. 32bitに対応

もうひとつの特徴は32bit入力をもうたっているところです。これはまず私の書いたこちらの32bitに関する記事をお読みください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/238154160.html
UD384は32bit入力に対応するのですが、6moonsのところでノルウェーの2Lと32bitデータの再生についてやりとりをしているという情報を見たのでKingrexの人にこの点から質問してみました。
するとこの件については32bitデータではなく、2Lの推しているところのDXDフォーマット(352/24 PCM)のことだったようです。そこで他の32bitデータと言うことで教えてくれたのが、こちらのカナダのUnipheye Musicというレーベルです。
http://www.unipheyemusic.com/filetest.cfm
ここはスタジオマスターとして32bit形式で配信をしています。また、試聴用にテストデータがあるのでこれをダウンロードしてみました。
しかし確認してみたところ、これも32bit float(少数点形式)ですね(上の記事リンク参照)。よく読むとUnipheye Musicのスタジオマスターのページにもそう記述してあります。まあマスターと言うからには仕方がないとはいえますけれども。

*音のコメント

空間的な広がり感が良く、シャープで音に切れがあり透明感も良いレベルです。帯域バランスは割とニュートラルであり、色付けもあまりないようです。音質のレベルも高く、コストパフォーマンスの良いDACといえそうです。ただし標準だとやや粗さや硬さがあるのですが、専用電源を使うと透明感は保ったまま適度に柔らかさが出て聴きやすくなります。
ハイサンプリング対応もしっかりと効いていて、Foobarでx2, x4とリサンプラーでアップサンプリングして行くと直線的に音がよくなる感じがして、とても得した気分があじわえます。

*実際の使用について

MacOSとUD384

UD384はUSBオーディオクラス2対応のようでMacOSではドライバーインストールなしで認識され、AudioMidiでの表示では384khzまで対応とわかります。DACの対応ビット幅とタイプ(ネイティブ・フォーマット)は10.7のAudioMidiで確認すると16bit整数、24bit整数、32bit整数となります。

ud384d.gif   ud384c.gif

上記のUnipheye Musicの32bit floatをAurdirvana Plusで再生したところ、問題なく再生できますし表示も32bitと表示されます。ただDACには32bitで下位8bitはヌルで転送されているでしょう(あるいは24bitかもしれませんが)。

ud384a.gif

いずれにせよこれはMacOS10.7で試しているのでインテジャーモードが使えないために32bit整数は転送できないはずですけれども。(10.7で試したのはDACの対応ビット幅表示がAudioMidiでどうなるか見たかったのです)

Window7とUD384

Windows7では再生にカスタムドライバーのインストールが必要です。ただしドライバーのインストール後にサウンドのプロパティで確認すると196/24が最大のように表示されます(ここはたとえばZodiac Goldなら384と表示されます)。またプレーヤーソフトウエアはFoobar+WASAPIを使いましたが、Foobarのoutputで送り出しに32bitを指定すると"device unsupported"とエラーになります。
おそらくこれは他のメーカーがXMOSのWindowsのクラス2用に出しているドライバーのようですが、それだと最大が196/24の問題はドライバのようにも思えますがこの辺ははっきりしません。

試聴が終わってからメーカーのKingrexと直接やりとりしたのですが、Windows7において32bitを達成できるのはWASAPIではなくカーネルストリーミングだそうです。つまりfoobar2000にWASAPIコンポーネントではなく、カーネルストリーミングコンポーネントのインストールが必要と言うこと。ただしカーネルストリーミングはとても不安定なためにマニュアルなどにはWASAPIを書いているそうです。この点についてはデモ機を返した後に聞いたので自分では確かめていません。

この対応フォーマットと再生方法の組み合わせがややこしいので、Kingrex担当者にWindowsでの対応一覧表を送ってもらいましたので下記に掲載します。(掲載はKingrexの許可を得ています)
これはFoobar2000をWindowsの各OS(XP,Vista,7)で使用したときに、どのプラグイン(コンポーネント)のときにどのサンプリングレートとビット幅が有効になるかと言う表です。Analog outとはDACとして使用したとき、Digital OutはDDCとして使用したときです。

プラグインとサンプルレート対応表(PDF)
UD384 plug in (ASIO4ALL WASAPI KS) VS. sampling rates.pdf

プラグインとビットレート対応表(PDF)
UD384 bit rate under Windows OS & plug in.pdf (Digitalでの出力は24bit固定です)

しかし現時点でWindows7とMacOSを比べるとどうしてもPCオーディオ対応はMacの方が長じているように思いますね。排他WASAPIなどは完成されて良い仕組みだと思いますが、USBドライバーのクラス2未対応問題やDACのプロパティに88kHz系列が出ない問題などです。Windows8ではオーディオ面で大きな変化は無いと思いますが、こうした細かいところをきちんと修正していってほしいですね。
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2011年12月01日

Perfect Wave DACがMkIIに

PS Audio NewsletterによるとPS AudioのPerfectWave DACがMkIIとして改良されるそうです。ポイントとしてはDigital Lensと呼ばれてたジッター減少機能がNativeXという新方式が追加される(切り替え可能)と言うことでクロック自体もより高精度なものが付いているようです。USB入力が192kHzまで対応できるようなり、PS Audioらしく電源供給系も改良されているようです。
またデジタル回路にアナログスイッチ(CMOSスイッチ)を使用したことでデジタルスイッチにくらべてジッターが抑えられるとか。

http://www.psaudio.com/products/audio/media-players/pwd-mkii-features

また前にPS AudioのeLyricについて書きましたが、これもPWD MkIIのUSB強化に合わせて普通のプレーヤーのようにUSB DACへのローカル出力ができるようになるようです。
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2011年10月11日

バッテリー駆動のDDCとhiFace OEMモジュール

ハイエンドショウに出ていたNmodeのDACはM2techのhiFaceを使用していると明言してあるところが興味を引きますけど、hiFaceの成功によってか、こうしたM2techライセンスものがいくつか見受けられるようになってきました。

このhuman designと言うところ(ハンガリー?)のtabla picoって言う新製品のUSB DDCはバッテリー駆動のコンパクトなUSB DDCと言うところで目を引きます。
http://www.human-audio.com/humanaudioeng_hirek.html
対応はMac/winとも192kHzでカスタムドライバーのインストール要ですが、なんとなくピンときて見てみたところ大きいタイプtablaのレビューが6moonsに載ってましたが、これもhiFace OEMモジュールを積んでますね。ドライバーはそのまま流用してるようです。
http://www.6moons.com/audioreviews/humanaudio2/2.html
これはドライバー、USBレシーバー、FPGA、クロックまでOEMモジュールになっていて、その後段は独自のものです。また電源はやはりバッテリー駆動になっています。

PCオーディオになってくると開発の効率化・スピードアップがさらに求められるのでこうしたアプローチが必要となってくるでしょうね。
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2011年09月29日

ARMベースのUSBコントローラー

こちらAuralicのARK MX+というUSB DACですがAKMチップによる192/32対応DACです。
興味深いのは192対応のUSBコントローラーをマルチコアARMを使った独自設計で実装し、二秒ほどのバッファを用いてPLLで行う制御をしています。アシンクロナスではないですね。ちょっと注目です。

http://www.auralic.com/en/
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2011年09月08日

ソウルノートの新作、CDも生かせるUSB DAC sd2.0B

ソウルノートはもとはマランツで主力製品の開発をしていた鈴木氏がみずからの音の理想を追求するために立ち上げたブランドです。そうした点で国産機の中でもユニークなメーカーで、根強いファン層を獲得しています。
もともとソウルノートは第一弾として単体DACを出したほど鈴木氏のもつDACへのこだわりというのがあったと思います。ソウルノート(魂の音)というブランド名にこめられたのは、一枚のCDを作るために演奏者が込めた想いをオーディオが損なってはいけないと言う考えがあり、DACを用意することで音楽再現の全体的な底上げができるという考えがあるということです。そのための機材として単体DACのdc1.0を発売して市場に受け入れられました。その当時(2006年)は単体DACというととてもマニアックな機材だったわけですが、現在はPCオーディオの普及に伴い単体DACが半ば当たり前となっています。そうした潮流の変化の中で満を持して発売する高性能DACがこのsd2.0です。
ホームページはこちらです。
http://www.soulnote.co.jp/lineup.html

このように期待の新製品ですが角田さんのところに試聴機が届いたと言うことでお邪魔していつもの試聴室で聴いてきました。また設計者にしてソウルノート主催の鈴木氏からも直接お話を伺う機会を得ました。

IMG_0969.jpg

sd2.0Bの技術と特徴

電源とDAC部が分離した堂々とした高級感のあるシャーシで底面はスパイクつきです。ピアノブラックの仕上げが高級感を演出していますね。
アナログ出力はバランスXLR端子を備え、内部もバランス構成で組まれています。もちろんアンバランスRCA端子も備えています。
入力はSPDIFが3系統、光が2系統、そして192kHz対応のUSB入力が1つと充実していて、ホームAV環境のセンターとしても使えるように工夫されています。

なかでも特徴的なのはSPDIF入力1番がCD専用として設計されていることです。入力1番は44kHzまでの専用設計で、CD入力専用のFPGA(カスタムIC)とメモリでジッターを低減させた高品位の音再現を実現しています。ここが選択されているときは他の回路は切り離されて完全にCD専用のDACとなります。このときにUSB部分の電源もシャットダウンされると言うことです。
この辺がいわゆるPCオーディオ向けのUSB DACとは異なる点ですね。ソウルノートのはじまりがCDにこめられた音楽をできるだけ正しく聞き手に伝えたいと言うこだわりからきているので、その思想がここにも見られます。

他方でPCオーディオへの対応については入力6番がUSB入力となっています。ここではTenorの新型で192kHz対応のUSBコントローラーを使用しています。これはXMOSやCMediaの6631と並んで最近出てきているHigh Speed対応の新型USBコントローラです。現行の良く使われるTenor7702は88.2kHzが非対応ですが、この新型は88.2kHzと176.4kHzもサポートされているようです。
USBのモード切替があり、USB 1.0モードのときはドライバーレスでWin/Macとも96kHzまでの対応で、2.0モードのときはWin/Macともドライバーをインストールして192kHzまで対応します。1.0モードではアダプティブ、2.0モードのときはアシンクロナスとして機能します。アシンクロナスではDAC側の高精度クロックを使用できるわけです。(この新型Tenorコントローラは内蔵クロックも持っていますが、それは使っていないと言うことです)
USB入力に関してもバスパワーを取らないで内部のクリーンな電源を使うというこだわりが貫かれています。そのためiPadもUSB1.0モードのときに使用ができるそうです。iPadもバスパワー取ってるかどうかテスターとして機能するというのも面白いところですね。またUSBでの電源を使用しているときはさきのFPGA部の電源をオフにすると言うことで、こちらも手抜かりがありません。
鈴木氏はPCオーディオ流行と言ってもUSBをただつけるだけのものはやりたくないと言います。どの場面でも最善を尽くすと言う意味で、CDの入力1とUSBの入力6番は同じくらい力を入れてるということです。

IMG_0972.jpg

内部を開けてみましたが電源部を開けてびっくり、アンプかいっという巨大なトランス(400VA)がどんと鎮座しています。単体DACで電源別は珍しいですが、小信号を扱う機器ほど電源部を分離した方が良いという思想によるものだそうです。

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DAC部のほうを開けると基盤をみてもDACとは思えない密度のぎっしり詰まったパーツが満載されていて、空中配線がまるで森のように感じられます。デジタル機器というと中はスカスカしたイメージがあるかもしれませんが、sd2.0Bに関しては重厚なオーディオの伝統がデジタル機器にも生きていると感じられます。
ハイスピードのため小容量コンデンサーのパラ使いをして、アナログ段ではあえてI/V変換は抵抗でパッシブにして鮮度を高くしたということです。またバランスイン・バランスアウトの無帰還バッファを使用しています。フルディスクリートはもちろんワイヤーの空中線がわたっているのはパターンを使いたくないという音へのこだわりがあり、全体に鮮度感・ハイスピードという思想が感じられる作りになっています。
いまはパーツ供給が不安定でもありディスクリートで回路を組むと言うことはなかなかむずかしくなっているそうですが、見ただけで技術者魂が感じられる内部といえるでしょうね。

IMG_0980.jpg

試聴

まずUSB入力でMacのAudirvanaから聞きましたが、2.0モードのハイレゾ再生では背景が黒く静かであり、音場の広さ深さも吸い込まれるように聞こえます。微細なニュアンスの抽出が素晴らしく、パーカッションの刻むリズムに倍音豊かな鳴りの弦がくっきりと浮かび上がる様は圧巻です。ひとつひとつの楽器の音再現も正確で、キャロルキッドの声の消え入り方が素晴らしく歌声に微妙なニュアンスが感じ取れます。
続いてCD入力からSHANTIの新作を聴きましたが、とても瑞々しく透明で鮮度感が高いと感じられます。バッキングのギターも美しく解像していますが、スピード感があるせいか音の立ち上がりも速く力強く生き生きとした演奏に感じられます。フルバランス・大容量電源の恩恵もあるのでしょう。
USB入力ではハイレゾの高精細感が生き、CD入力では演奏の生々しさが感じられともに魅力的です。
使用しているDACチップの1792Aは高性能DACの定番ですが、さらに発見があるようにも思えます。これはDACチップだけでは語れないアナログ部分の優秀さでしょう。聴いていて角田さんとも100万クラスの音と言ってもおかしくはないんじゃないですかとお話しをしましたが、実際高性能のフォーカルのスピーカーの能力が最大限に引き出されていると感じました。

ただ一番素晴らしいと感じたのは、これだけ高い再現力がありながら音の印象はあくまで自然であって、オーディオ機器自体の強い主張やクセが出ているわけではないと言うことです。技術を誇るのではなく、あくまで自然で音楽を大事にしている感じが伝わります。
設計の鈴木氏はとても経験ある技術者ですが、その経験が生かされた完成度の高い音だと感じました。鈴木氏は音楽畑なので演奏者がリスナーに音を届ける想いがよくわかるということです。だからこそ、演奏者の一音にこめた想いをオーディオがそのまま届けたいと言います。たしかに音楽ファンが聞くためのオーディオという感じがしますね。
単純に流行のUSB DACがまた出てきましたと言うのとは違います。CD再生も含めたDACらしいDACがSoulnoteと言うか鈴木氏らしいこだわりなんでしょう。

Soulnote sd2.0Bは来週はじめ(9/12)から出荷開始で35万7000円(税込)ということです。
ぜひ試聴機のあるショップでこのこだわりの音を聴いてみてください。
posted by ささき at 22:56 | TrackBack(0) | __→ USB DAC全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする