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2010年01月05日

CEntrance DACport - ハイサンプリング対応、ポータブルUSB DAC

DACportはCEntranceが開発したポータブルのUSB DAC内蔵型ヘッドホンアンプです。
真のポータブルサイズと真のハイサンプリング対応を合わせて実現した画期的なUSB製品です。

dacport2.jpg     dacport3.jpg

実はCEntranceという会社もUSBオーディオを語る上では外せないキーになる会社です。
WavelengthがAyreにライセンスを提供してるように、CEntranceもBenchmark、Lavry、PS Audio、Belcanto、Empiricalなどに対してUSB技術のライセンス提供をしています。
その会社が自ら出したUSB DAC内蔵型ヘッドホンアンプがこのDACportで昨年暮れに出たばかりの新製品です。

CEntranceのページはこちらです。近々DACportのためのサイトも立ち上がると思います。
http://centrance.com/products/dacport/
また、こちらに開発ブログがあってなかなか参考になります。(12/31にSold our first DACport to Japan today! Domo Arigato Gozaimasu!なんていうのがありますね :)
下記の記事はこのブログを主に参考にしています。


1. 特徴

1-1. コンパクトでポータブル

わずか50gの手に乗るサイズです。バスパワーによる給電で電源不要ですので完全なポータブル運用を実現しています。これもノートPCとの相性が良いと思います。
バスパワーの電源もかなりこったもので、小さいながら内部に5系統の電源を持っていて、PCからのノイズを排除し、かつデジタル部とアナログ部を分けるというハイエンドオーディオの常道を踏まえて設計されています。

シャーシは航空用アルミのシリンダーでデンマークの会社に特注したものです。録音機器である同社製のMicPortなどとも共用させているものだと思います。レタリングはペイントではなくレーザーです。性能でも妥協しないという意気込みが外観からも見て取れます。
(取り外しできるプラのスタンドがついてきます)

1-2. コンパクトでハイサンプリング対応

DACportの一番の売りはここなのですが、似たような小型ポータブルDACとしてのIcon uDACなどとの最大の違いでもあります。
たとえばuDACもコンパクトで音質はとてもよいんですが、PCからのサンプリングデータは48kHz/16bitが上限です。これはnuforceのせいというわけではなく、PCM2700系のUSBレシーバーチップの限界です。
DACportはCEntranceの独自技術(おそらくTAS1020B)を使ってこれを打破して、カスタムドライバー不要のまま96/24までのハイサンプリング対応をしています。

たとえばLINNのスタジオマスターを再生しようとしても、USBデバイス側が48/16までの対応であればUSB接続がボトルネックになってしまい、ハイサンプリングデータがDACに伝えられません。そこからDAC側でアップサンプリングしても、補完でしかありません。
DACportならばハイサンプリング・ハイリゾリューション(24bit)のデータをそのままUSB接続を通してDACに伝えられます。

また、この前書いたさまざまなfoobar2kのアップサンプラーなどを使用して好みの音にチューニングしていても、USBデバイス側が48/16までの対応では意味がありません。DACportならばDAC側ではなく、PC側でアップサンプリングのコントロールが可能です。

これらにより、外出先でもノートPCさえあれば自宅のPCオーディオなみのことができる可能性が出てきたわけです。

dacport6.jpg

第二のポイントはカスタムドライバーのインストールが不要であるということです。このためOSの標準ドライバーでハイサンプリング対応可能なので、対応OSも広いのがポイントです。Windows 7やMac OSはもちろん、Linuxでもオーケーということです。これは後述のようにTIから委託開発を任されているというところも関係あるでしょう。

1-3. コンパクトで高音質

ハイサンプリングというだけではなく、軍仕様の10ppm高精度クロックを使用するなど音質を高めるための工夫が随所に見られます。
またDACだけではなく、ヘッドホンアンプもA級増幅のかなり高性能のものが搭載されています。アルミのシャーシは放熱効果も考慮されているそうです。

さきに少し書いたようにこれはバスパワーですが、給電機構にかなり力が入っていて、電源もハイエンドDACやCDプレーヤーなみにデジタル回路とアナログ回路で別の電源をもって分けることでデジタル部のノイズの影響を減らしています。また、USBの5V給電をスイッチングで昇圧してオーディオ回路には18V(+/-9)で使っています。
USBの限界まで電力をとって、かつ母艦PCのバッテリーも考慮した設計としているそうです。

性能的にはジッターについてもかなり優秀で、周波数特性も10hzから40kHzまでほぼフラット(.1dB以内)を達成しているということです。小さいながらもかなり気合の入ったアンプといえますね。

2. CEntrance社とUSBについて

前にProtonの記事を書いた時に資料としてAyreのページのリンクを掲載しました。
その説明文の中にWavelength以前に「かつてTIから認証を受けたサードパーティーがTAS1020Bの開発を行い」という一節があります。ここでは社名は書かれてませんが、このサードパーティーがCEntranceのようです。これはAdaptiveモードで動作するTAS1020Bの使い方のようです。これによって従来の48/16での制限から開放されます。
こちらにライセンスのページがあります。たくさんありますが、このTAS1020Bというところがそうですね。
http://centrance.com/licensing/tas1020b.shtml

どちらかというとCEntranceのコードの方がTI推奨のものなのか、ライセンスを受けたメーカーはBenchmark、Lavry、PS Audio、Belcanto、Empiricalなど多くあります。

ちなみに以前Protonの記事を書いたときにソフトウエアに工夫があることを書きましたが、これはドライバーではなく独自のプログラムコードはTAS1020B側のようです。つまりTAS1020Bは固定の動作をするのではなく、プログラム可能なUSBレシーバーということです。ここがPCM2700系との大きな違いです。

いずれにせよ、hiFace、Proton、DACportと見てくると、やはりハードウエアのみならず、ソフトウエアのプログラムコードとも両方工夫されていることがUSB機器のポイントのようです。その理由も含めてこの辺についてはまた別にまとめ記事を書こうと思います。

3. 音質

標準ドライバーを使用するのでインストールは不要で差し込むだけで使用することができます。この標準ドライバーを使用できてハイサンプリング対応というところがDACportのCEntrance方式のポイントです。(Wavelength方式も同様に標準ドライバーのみで対応できます)
また必要に応じてCEntrance Universal DriverというASIOドライバーもサイトからダウンロードできます。(わたしはいまのところ慣れているASIO4ALLを使ってます)

dacport5.jpg

ところでUSBにDACportを差し込んだら「USBバスの帯域幅超過」というメッセージを初めて見てしまいました。これはProtonを一緒に付けていたらからのようで、Protonの方を抜いたら問題なくなりました。かなりバスの帯域幅を占有するもののようですね。

システムは家のデスクトップPC(WinXP)や7インチUMPCで標準ドライバー+Asio4allでFoobar2000はじめさまざまなプレーヤーで試しました。USBケーブルは付属の1.8mのものを使用しました。
少したつと音楽を鳴らしてなくても本体が少し暖かくなりますが、この辺もA級動作をきちんとしているように思います。

端的に言って音質はかなり良いです。
はじめポータブルという点が頭にあったのでESW10jpnをつけて聴きはじめましたが、すぐにHD800に変えました。HD800でも2-3時くらいで音量は取れるし、なによりHD800クラスでないと真の力は分かりません。小さいながらホームアンプとしても満足できるレベルにあると思います。

まず特徴は背景が非常に静かで黒く、微細な音の抽出に優れている点です。この点で電源系に気を配っているのが利いているように思います。解像感がとても高く、録音の良いソースでは小さな環境音がざわざわとするのがぞっとするくらいに聞こえます。
また、音の定位がかなり明瞭で、音像自体が鮮明なのとあわせて立体感も際立っています。
超高感度(120dB)のイヤホンES3xでノイズフロアのテストをすると3時くらいでかすかに音が出る程度で、降りきってもかすかなノイズを感じるくらいです。驚くほど静かですね。ソースも異なるけど、iPod用のポータブルアンプの比ではないと思います。

またピアノやギターなんかは弦の擦れなど細かい音だけではなく、響きがリアルで正確に聞こえます。タイトで贅肉のないところからもジッターはかなり低減されていると思います。
音調はニュートラルで色付けはすくなく、プロ機材の音に近い感じではないでしょうか。色付けがないというのはシグナルパスにコンデンサーがないということも利いているように思います。帯域的にもフラットでヘッドホンを変えるとその性格が良く出てきます。
HD800にするとフラットで、低域がほしいときはEdition8だと期待通りなど、自分のイメージどおりの音のように思えます。ただしニュートラルといってもドライとか無機質というのとは違います。ピュアなミネラルウォーターの気持ちよさという感じでしょうか。
明瞭で鮮度感も高く聞こえるのはケーブルレスのDACとアンプ一体型ならではのように思います。
ハイサンプリング(88.2とか96)・ハイリゾリューション(24bit)の音も透明感の高さと空間の深みに驚きますね。


4. DACportとPCオーディオ

なかなか魅力的な製品ですが、難点は$500とやや高いところです。(プリオーダーは10%オフに送料サービスでした)
ただし音を聞くと納得してしまいます。またポータブルでハイサンプリングという付加価値は他に無いことも考慮する必要があるでしょう。
購入はこちらからどうぞ。初回ロットは売り切れてますが、そろそろ次のロットがはいると思います。
http://centrance.com/store/

標準ドライバーで動くというのはOSを選ばないという利点があります。作る方は開発費を省けますし、ユーザーもvistaだ7だという互換性を気にせずに使えます。
Linuxをミニノートpcに入れてる人も注目でしょうね。わたしは試してませんが、ディストリビューションにはあまり左右されないそうです。

PCオーディオというのが、PCとオーディオ趣味の関係にまじめに取り組むもの、というならば、これはPCオーディオ時代のポータブルヘッドホンアンプと言ってもいい真面目でユニークな製品です。
たとえばプレーヤーソフト側でアップサンプラーを変えたり音を調整するとそれにきちんと応えます。ポータブルオーディオ、PCオーディオ、ヘッドホンオーディオの渾然一体となった、ポータブルPCオーディオともいうべき新しい使い方ができそうな期待感がある製品といえます。
posted by ささき at 22:03 | TrackBack(0) | __→ DACport | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする