Neutron Music PlayerはAndroidの本格的な音楽プレーヤーアプリで、高音質に特化したものです。スマートフォンの音楽再生アプリはどちらかというとデザインとか機能に行きがちですが、こうしたアプローチはAndroid Rockbox以外ではいままでにはありませんでした。内容的にもPCやMacなどの音楽再生プレーヤーに近いような本格的な再生アプリです。というか、HQ Playerなみのかなりマニアックなソフトウエアです。
Walkman ZやiBasso DX100にも使用できます。Walkman Zが一番素晴らしい組み合わせです。
以下の画像はNEONの項のDX100のHardware表示以外はすべてWalkman Z(Android 2.3)でデバッガー(ddms)を利用してスクリーンキャプチャしたものです。DX100も同様にddmsでスクリーンキャプチャしています。
* Neutron Music Playerの特徴
1 64bit処理
Neutron Music Playerは32/64-bitの切り替え可能なオーディオレンダリングエンジンを採用しています。Aurdivanaなどでうたっているような64bit処理がスマートフォンでも可能となります。
64bit処理と32bit処理の切り替えは設定メニューから動作中に可能です。64bit処理の利点としてはEQやリサンプリングなど計算を伴う信号処理をしたときの計算精度が高い(音質が高い)ということですね。こうした64bit処理やディザ処理には1GHzを超えるスペックのCPUが推奨とされます。
2. NEON対応
Neutron Music PlayerはNEONに対応した別バージョンが用意されている点も特徴的です。普通にGoogle PlayからインストールするとNEON非対応版がインストールされるようです。NEON対応版のダウンロードはNeutronのホームページのDownloadリンクから行います(これはapkインストールになります)。
NEONは大量のデータ処理を効率よく行うものでAdvanced SIMDと呼ばれます。このSIMDというのは一つの命令(Single Instruction)で複数のデータ(Multi Data)を同時に処理する演算器のことです。これはマルチメディア処理に大きな力を発揮します。これ自体は珍しいわけではなくPentiumの昔からMME/SSEとしてプロセッサに入っています。
NEONが使えるかどうかは設定のAudio Hardware画面で確認できます。下記にWalkman ZとiBasso DX100を例示します。CPUの欄を見て、ARMアーキテクチャの隣に+NEONと表示されてあればそのプロセッサではNEON対応しています。VFPはNEONではなく前の規格です。
ハードウエア表示(左: Walkman Z、右:iBasso DX100)
iBasso DX100のARMプロセッサはNEONに対応してるのでNEONバージョンをインストールできます。上のDX100の画面はNEONバージョンを導入済です。
AudioHardwareのところのVECがNEONになってればNEONバージョンが動作しています。VECはベクタープロセッサーのことでしょう。ベクター演算とは行列演算のことで、SIMD演算器みたいに並列処理できるプロセッサのことです。対して一般的なCPUはスカラープロセッサと言います。
と、いう情報処理講座はともかく、NEONだと25%ほど処理性能を改善できるそうです。DX100のNEONバージョンだとiBasso音楽アプリに対してもなかなか引けを取りません。Android標準のAudioFlingerのAudioTrack APIでオーディオデータを書きだしているので44/16しか対応できないのが残念です。これはiBasso APIを使わないとだめですね。この辺はオープン化してほしいところです。なぜAndroidは標準のAPIを使うと16bitが限界なのかはこちらのRockboxのときに書いた記事をご覧ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/251275779.html
Walkman Zで使われているTegra2は残念ながらNEONに対応していません(Tegra3はNEON対応)。代わりにVFPを使用します。これははじめのVでわかるようにやはりベクター演算機能です。(NEONはVFPの置き換えになります)
一方でこの開発者の弁によると、Tegra作ってるNVIDIAはGPU使ったデータ処理にたけているので、Tegra2でNEONが使われていなくても、他の同クラスARMチップよりは効率よくNeutronに向いているとのこと。ですのでWalkman Zが必ずしもNeutronに向いていないことはないようです。Nexus 7はTegra 3なのでNEON版が使えます(後述)。
NEONとかVFPってスマートフォンを普通に使ってるぶんにはユーザーが意識する必要はありませんが、たかが携帯って言っても現代スマートフォンの中にはこれだけ先進的な機構が入ってるということです。
3. ネイティブコード実行
Neutron Music Playerのもうひとつの特徴はAndroid SDKを使用していないということです。
これはRockboxでも一部そうですが、AndroidのJAVAフレームワークではなく、既存のマルチメディアライブラリをCかなんかで流用しているのだと思います。つまりそれだけ実行は早いということです。これはNeutronの音の良さの大きな理由の一つでしょう。ただし容量は多少かさみます。またNeutronはUI操作や表示がAndroid標準ではなく使いにくいところがありますが、それもSDKを使用していないからのようです。
ソフトウエアの構成としてはAndroid Rockboxアプリに近いですね。もちろん実験的なAndroid Rockboxよりは完成度はずっと高く普通に使えます。また他のOSに移植性も高いでしょう。実際にBlackberry版もあるようですが、もしかするとBlackberryがオリジナルなのかもしれません。
4. 豊富な機能
Neutron Music Playerは機能設定がとても豊富で、ギャップレスやリプレイゲインなどの機能もありますし、クロスフィード、ディザ処理など信号処理系もそろっています。信号処理系を使う時は64bit処理モードにすると良いでしょう。イコライザーもクロスフィードも細かく設定が可能です。イコライザー設定はアルバムごとに設定することが可能です。これは後のノーマライゼーション設定でも使います。
設定リストとイコライザー、クロスフィード画面
ちなみにクロスフィードとサラウンドは排他関係です。これはクロスフィードはヘッドフォン用でサラウンドはスピーカー用の設定だからということのようですが、Neutronはヘッドフォンだけではなくスピーカー用の機能もいろいろとあるのが特徴です。おそらくAndroid Rockboxみたいになにかの汎用マルチメディアライブラリを使用するということなのかもしれません。
Neutron Music Playerの機能のなかでも面白いのはノーマライゼーションキューという機能です。音が割れるようなオーバーロードする音源ファイルの適正化(ノーマライズ)をバッチ処理で行うことができます。ノーマライズするためにはいったんファイルのなかを解析して最大音量部分を検出しなければならないので、これはリアルタイムではなくバッチ処理で行います。Neutronでは音源ファイルをリサンプリングするのではなく、ファイルは修正しないでイコライザーなどで補正するパラメーターを作成し、さきに書いたイコライザーのアルバム別設定機能を使用して音を変化させるという手法です。
左はBind EQ設定、右はBind EQを適用した後のノーマライズ設定
まずノーマライズしたいAlbumをどれか選んで長押し、Bind EQを選んでからNormaliseを選択すると曲別にノーマライゼーションをバッチで実行します。(数値が入ってる曲が解析済み)
左は処理中、右はノーマライズ適用したアルバム
画面はアルバム"12&1 Song"にノーマライズを設定したところです。Unbind EQをすると設定を簡単に解除できます。64bit処理と併用するとクリアさはさほど遜色なく、割れるような曲をスムーズに再生できます。これはちょっと他にない長所ですね。
設定リストとリサンプリング設定、ノーマライゼーションキューの説明画面(作業中は進展が表示される)
設定リスト
またリサンプリングもユーザーが変換品質を設定可能です。ここでいうリサンプリングは44kHz以外のサンプリングレート(48とか96)の楽曲を再生するときに44kHzにリサンプルするための設定です。Androidですので出力は44/16固定になります。これはAudio Hatdware表示でも確認できます。前にも書きましたが、iBasso APIのような特殊な仕組みがない限りはAndroidでは44/16が限界です。
よくDAPで24bitファイルや96kHzが再生できたからハイレゾ音源がDAPで再生できたという人がいますが、実際にはiBasso DX100やiriver AK100のようなハイレゾDAP以外ではこうしたOSのボトルネックやDACの制限などで、仮に再生できたとしても実際は44/16に切られるか丸められています。NeutronのResampling設定はその丸めを明示的に行うことができるというものです。
* Neutron Music Playerの音と使用感
再生フォーマットはかなり豊富で有名どころはほとんどカバーしてます。(もちろんDRM付きはサポートしてません)
MP1, MP2, MP3, OGG (Vorbis), FLAC, WMA, WMA Lossless (16-bitのみ), AC3, AAC, M4A, M4B, M4R, MP4, 3GP, 3G2, MOV, ALAC, APE (Monkey's Audio), WV (WavPack), MPC (MusePack), WAV, AU, AIFF, MPG/MPEG (audioのみ), AVI (audioのみ)
以上はホームページから記載
アルバムアートをダウンロードする機能は付いていません。埋め込まれていれば表示できる。ただアルバムリスト画面ではPowerAmpなどが取ってきた画像を表示しているようですが、再生画面ではそうした画像は表示されません。
曲の長押しメニュー
アルバムや曲メニューの上で長押しするとその曲をキューに入れるか、プレイリストに入れるかの選択ができます。
音楽ライブラリのスキャン(データベースの再構築)は初回にスキャンするか聞いてきます。手動でやるときはArtistやAlbumの選択のある階層の下にSourceというメニューがあり、そこでRefreshを選択すると再スキャンします。Playlistメニューの長押しでもRefreshできるようです。また実際は自動でもスキャンしているようです。
タグのデータベースだけではなく、フォルダー階層たどれますので、タグ付けされてなくても大丈夫です。
Androidらしく、Widgetも用意されています。
実際に音を聴いてみるとWalkman ZではPowerAmpなどと比較すると明らかにわかるくらいの透明感と空間表現の向上があります。PowerAmpとMeridianやWinAmpを比べても微々たる音質差しかありませんが、そうした差とは大きく異なります。Rockboxよりもさらにクリアで上質ですね。
PowerAmpとWalkman Zの組み合わせだと音がドライで薄いところがあったので、イコライザーとかトーンでごまかしてたところがありますが、そうすると音がやや曇りがちです。Neutronではクリアでかつ自然で豊かな音が楽しめます。イコライザーは必要な時だけ本来の目的で使えば良いことですし、同時にイコライザーでの音質低下も最小にできるので積極的に使えます(ノーマライズも同様)。
Walkman Z持っている人はその実力を見直すことでしょう。K3003とかFitear togo 334などの高性能イヤフォンと組み合わせると性能の高さを堪能できます。Walkman Z単体でPCオーディオやっているような雰囲気が味わえるのが面白いところです。Neutronでいろいろと設定を変えて、いかにWalkmanのS-Masterのもともと持ってる性能が引き出されるかということですね。
ただMP3などのビットレートの低い音源を再生すると悪さもそのまま出てしまいますので、そうした低ビットレートの音源についてはWalkman付属のソフトで高域補完などDSP処理をして再生した方が良いと思います。
Walkman Fでも使えると思いますが、Android4.0の場合は設定メニューが2.3のようにハードキーでは出ないので、いったん設定アイコンのあるメニュー画面に戻って設定が必要です。
Android WalkmanはもともとAndroid端末してはそれほどスペックが高い方ではないので、もっとハイスペックのスマートフォンならNeutronの性能を引き出せるかもしれませんが、そうしたハイスペックのスマートフォンではWalkman Zのような高度なオーディオハードウエアを搭載していませんから悩ましいところです。
iBasso DX100でも使うことができて、なかなか良い音を聴かせてくれます。さきに書いたようにDX100ではNEON版をインストールしました。DX100の場合はNeutronがiBasso APIをサポートできればもしかすると最強となるかもしれませんが、なんとかしてほしいところです。DX100の兄弟機であるHDP-R10ではGoogle Playが無効化されるそうなのでインストールについてはコメントできません。
Nexus 7ではTegra 3を使用しているのでNEONバージョンを使えます。NEONバージョンのNeutronはなかなか音質も良く感じられます。
それとAndroidのマスターヴォリュームとの連携がうまくないのかそういう仕様なのか、Neutronの再生画面を出してるときにボリュームを上下させると、AndroidのマスターボリュームではなくNeutron内部のゲインが上下するようです。いったん再生画面を閉じてウィジット状態でボリュームを操作するとAndroidのマスターヴォリュームで操作できます。妙に音が小さいという時の原因はこの辺を確認ください。
Neutron Music Playerではスピーカーを使用するシステムも考慮しています。マルチチャンネルも考慮しているのですが、仕様からするとスマートフォン向けというだけではなく、やはり汎用のミュージックプレーヤーライブラリを流用しているように思えます。
Neutron Music PlayerはWalkman ZでDAPがAndroid化した利点を存分に生かせるアプリという感じです。
Neutron Music Playerの購入はGoogle Playから可能です。こちらはGoogle Playのリンクです。無料版もありますので試してみてください。
Neutronは音は良いし機能豊富ですが、UIが分かりにくく使いにくいのが難点です。UIが使いやすいのはSelect! Music Playerなどが最近の新しいのでは良いのではと思います。画面の広いタブレットでカジュアルに使うにはSelect! Music Playerをチェックしてみると良いかもしれません。
下はNexus 7でのSelect! Music Playerです。Select!では波形が表示されるのも面白いところです。
Select! Music Playerのリンクはこちらです。
Music TO GO!
2012年12月20日
2012年12月11日
Audirvana Plus 1.4リリース
人気のMac用再生ソフトであるAudirvana Plusの1.4バージョンがリリースされました。
今回の目玉はダイレクトモードの採用です。
ダイレクトモードってすでに入っているのですけれども、ベータ扱いだったんでしょう。もともとダイレクトモードが入るのは1.4からサポートするという予定で、下記の記事でも4月頃にもう書いてますがのびのびになっていました。ダイレクトモードの安定性を見極めるのに時間がかかったんでしょうか。あるいは途中でマウンテンライオンがリリースされたのでそこでも対応に時間がかかったのかもしれません。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/267858777.html
最近仕入れたFusion Drive搭載の新Mac Mini(マウンテンライオン)でさっそく試してみました。
Computer Audiophileでも話題になっていますが、ダイレクトモードなしで聴き比べてもより透明感も増して音質が上がっているように感じられます。また、1.39のダイレクトモードではマウンテンライオン上で不安定なところがありカーネルパニック(Windowsで言うとブルースクリーン)に陥ることがありましたが、1.4では安定度が上がっているようにも思います。ただこの辺はもう少し見てみないとなんとも言えません。
*ちなみにFusion DriveはSSDとHDDをOS上で統合してひとつのボリュームとして使用できるというものです。つまり見た目は単一のドライブですが、使用頻度が高い部分はSSD、あまり使われないものはHDDに置くということでSSDの速度とHDDの容量を両立させています。
私はテスターライセンスを供与してもらってるのでちょっとわかりませんが、たしか1.39からのアップデートは無料で行えたと思います。ぜひお試しください。
こちらはAudirvanaホームページです。
http://audirvana.com/
今回の目玉はダイレクトモードの採用です。
ダイレクトモードってすでに入っているのですけれども、ベータ扱いだったんでしょう。もともとダイレクトモードが入るのは1.4からサポートするという予定で、下記の記事でも4月頃にもう書いてますがのびのびになっていました。ダイレクトモードの安定性を見極めるのに時間がかかったんでしょうか。あるいは途中でマウンテンライオンがリリースされたのでそこでも対応に時間がかかったのかもしれません。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/267858777.html
最近仕入れたFusion Drive搭載の新Mac Mini(マウンテンライオン)でさっそく試してみました。
Computer Audiophileでも話題になっていますが、ダイレクトモードなしで聴き比べてもより透明感も増して音質が上がっているように感じられます。また、1.39のダイレクトモードではマウンテンライオン上で不安定なところがありカーネルパニック(Windowsで言うとブルースクリーン)に陥ることがありましたが、1.4では安定度が上がっているようにも思います。ただこの辺はもう少し見てみないとなんとも言えません。
*ちなみにFusion DriveはSSDとHDDをOS上で統合してひとつのボリュームとして使用できるというものです。つまり見た目は単一のドライブですが、使用頻度が高い部分はSSD、あまり使われないものはHDDに置くということでSSDの速度とHDDの容量を両立させています。
私はテスターライセンスを供与してもらってるのでちょっとわかりませんが、たしか1.39からのアップデートは無料で行えたと思います。ぜひお試しください。
こちらはAudirvanaホームページです。
http://audirvana.com/
2012年12月05日
Kindleアプリの使い方とLearning CoreAudio
日本でもKindleストアが開始され、Amazonから電子書籍の洋書を買うのが簡単になりました。KindleはAmazonのリーダーでなくてもiPadやAndroidのKindleアプリでも閲覧可能です。
この機会に今年米国Kindleストアから"Learning CoreAudio"を買った経験を書いてみようと思います。というかこの記事を夏ころ書こうとして忘れてました。
日本のKindleストアからの購入は検索するとたくさん出てくると思いますのでそちらを参照ください。以下の例は米国Amazonで購入する際の話です。またKindleストアは日本と米国では異なるアカウントに基づくということにご注意ください。(統合にはまた注意が必要です)
* Learning CoreAudio
まずLearning CoreAudioについて説明します。これはMacのCoreAudio解説本の決定版といえます。日本語でもiOSのCoreAudio解説本はあったのですが、MacのCoreAudioを中心に本格的に解説した本はありませんでした。これは実のところ海外でも同じです。Amazon.comのコメント欄を見るとみな4-5☆の高い評価に加えて、いままでいくつもの文書を見なければならなかったけどこれでまとめられるとあります。
この本は2年前くらいからアナウンスされていたのですが、今年春くらいにようやくリリースされて私もKindle版で入手しました。Kindle版は$14.4でした。
ちなみに日本Amazonで紙の本も購入できます。
この本は割と平易でわかりやすく、段階的にCoreAudio APIを使用したプログラミングを解説していきます。はじめに音源ファイルを読んで属性を表示する簡単なHello World的なイントロから解説し、PCMなど音声処理の基本の解説、そして録音・再生・変換とAudioQueを用いた高レベルAPIでオーディオデータを扱うアプリケーションの流れを解説し、さらにAudio Unitなどの細かいAPI解説をします。そしてiOSとの違いやCore MIDIなどの解説があります。
なぜ再生ハードウエアに書きこむときにバッファリングが必要か、というところもノイマンのボトルネックなどコンピュータ工学的観点から説明しているのがちょっと面白いと思います。
ソフトウエア解説本としては例を引きながら章のテーマ別にプログラムを組んでいくという実践的な解説本です。CoreAudio APIを使用したMacのオーディオソフトウエアの基礎を学ぶという感じですね。プログラムに関してはステップバイステップで細かく丁寧に書いてありますが、プログラミングの知識は前提条件です。iOSではObjective-Cの比率が多くなるけど、それはハイレベルフレームワーク(Androidのメディアプレーヤークラスみたいなやつ)が導入されるからであって、CoreAudioの基本はC言語です。またGUIには触れていないのでそこで悩む必要はなくて音声処理に集中できるのも上手な書き方です。
つまり一般のオーディオファンがCoreAudioってなに、というのを知るための本ではありませんが、そうした記事はまあ当ブログなどをご覧ください笑。
CoreAudioってWASAPIとかASIOなどと「音を良くするもの」ってカテゴリでいっしょくたにされるんですが、それらとは別なものです。そもそも「CoreAudioの設定画面」なんてないですし、ユーザーではなくプログラマのためのものです。さらにやる気になればHALも含めてCoreAudioを使わないことも可能です(AudirvanaのDirectモードがそうです)。
とはいえ基本的な解説も多いのでユーザーサイドのオーディオファンでも勉強になることも多いとは思います。たとえばCore Audio File(CAF)の利点としてはタイムテーブルを持っているのでMP3のようにある時間に飛ぶのに計算コストがかからないということや、CAFはすべてのデータフォーマット(CODEC)を入れることのできるファイルフォーマットである、という点からはなぜMastered For iTunesで中間形式にCAFが使われるかというのが分かると思います。
* iPadなどでのKindleの使い方
ここでKindleのiPadなどでの使用を解説します。(私はKindleデバイス自体は持っていません)
KindleはAmazonの電子書籍リーダーで、Kindleには専用のKindleストアがあります。Kindleで読むための電子書籍はKindle Editionと付いていますので確認が必要です。以下、例は米国アカウントにのっとっています。買った時点では米国のみだったからです。(Learning CoreAudioに関しては現在は日本語Kindleストアでも購入可能です)
基本はKindle電子書籍リーダーで読むためのものですが、iOSとAndroidにはKindleアプリがあり、PC/MacにはKindle Cloud readerというウエブベースのリーダーがあります。
まずiPadのKindleアプリを使う例を書きます。注意点はiPadでKindleアプリを使っても直接アプリからAmazonのストアにはつなぐことができないので、購入自体はいったんPC(またはiPadのブラウザ)でAmazon.comで行います。
1. US Amazonにアカウントを作ります(少なくともKindle Editionについては日本のクレジットカードが使用できるようです)
2. iPadのKindleアプリをインストール
3. iPadアプリを立ち上げてUSアカウントでログイン。Kindle機器として認証がされる(5台まで)
4. PC(またはiPadのブラウザ)でAmazon.com(アメリカの方)を開け、Kindle Storeに行く
5. 書籍(Kindle Editionと書いてあるもの)を選び、buyを選ぶと右側に"send to"でiPadの登録名が表示されていることを確認。購入する。
*テストでsampleを送れるので初めての時はやったほうが良い
6. iPadにおいてはアプリの立ち上げ時に同期するので、Kindleを立ち上げていたら終了させる(ホームボタン押すだけではなく終了させるのが確実)
7. iPadのKindleを立ち上げると同期される (Androidは明示的に同期するというメニュー項目がある)
8. iPadのKindleの「端末→本」に入っているはずです
これをiPhoneでも読みたいときはiPhoneでKindleを立ち上げてクラウドを選んでください。すると端末にダウンロードされます。iPadで読んでいて続きをiPhoneで読むときはしおりがクラウドで同期します(同期しないときもしばしば)。AndroidではNexus 7でも試してみましたが、片手で軽くもてる7インチタブレットは電子書籍を読むのにかなり便利です。
左はiPadのKindleアプリ、右はNexus 7でのKindleアプリです。
米国Kindle Storeで扱っている本は言うまでもなく英語版のみですが、コンピューターをやってる人ならだれでも知ってるオライリーの解説本も買えます。なかでもWhat is HTML5やWhat is ePub3など無料本もゲットできるのでこれを試しにダウンロードしてKindleの使い方を覚えるのも良いでしょう。(サンプルだとクラウド上には置かれないのでこうした無料本はテストに便利です)
What is HTML5 (O'Reilly)
実際にKindleの世界は大中小どの端末でも読めるし、同期も取れるのでとても便利で自由です。音楽もそうですけれども、日本のネット世界からアメリカのネット世界にいったとたんにぱっと可能性と自由度がひろがるというのは残念な事実ではありますね。
ただKindleがすべてではないと思います。上のオライリーの話をさらにつづけると、オライリーの本は電子化が進んでいて翻訳版もDRMフリーでePubで入手できますので、まじめに買うときはそちらをお勧めします。電子書籍もkoboだのkindleだのとデバイスやストアではなく、音楽のMP3のようにフォーマットで語れるようになれば普及が進むと思うのですけれども。電子書籍のあり方というのは音楽配信と同様にどうあるべきか、という点から考えていくべきだと思います。
この機会に今年米国Kindleストアから"Learning CoreAudio"を買った経験を書いてみようと思います。というかこの記事を夏ころ書こうとして忘れてました。
日本のKindleストアからの購入は検索するとたくさん出てくると思いますのでそちらを参照ください。以下の例は米国Amazonで購入する際の話です。またKindleストアは日本と米国では異なるアカウントに基づくということにご注意ください。(統合にはまた注意が必要です)
* Learning CoreAudio
まずLearning CoreAudioについて説明します。これはMacのCoreAudio解説本の決定版といえます。日本語でもiOSのCoreAudio解説本はあったのですが、MacのCoreAudioを中心に本格的に解説した本はありませんでした。これは実のところ海外でも同じです。Amazon.comのコメント欄を見るとみな4-5☆の高い評価に加えて、いままでいくつもの文書を見なければならなかったけどこれでまとめられるとあります。
この本は2年前くらいからアナウンスされていたのですが、今年春くらいにようやくリリースされて私もKindle版で入手しました。Kindle版は$14.4でした。
ちなみに日本Amazonで紙の本も購入できます。
この本は割と平易でわかりやすく、段階的にCoreAudio APIを使用したプログラミングを解説していきます。はじめに音源ファイルを読んで属性を表示する簡単なHello World的なイントロから解説し、PCMなど音声処理の基本の解説、そして録音・再生・変換とAudioQueを用いた高レベルAPIでオーディオデータを扱うアプリケーションの流れを解説し、さらにAudio Unitなどの細かいAPI解説をします。そしてiOSとの違いやCore MIDIなどの解説があります。
なぜ再生ハードウエアに書きこむときにバッファリングが必要か、というところもノイマンのボトルネックなどコンピュータ工学的観点から説明しているのがちょっと面白いと思います。
ソフトウエア解説本としては例を引きながら章のテーマ別にプログラムを組んでいくという実践的な解説本です。CoreAudio APIを使用したMacのオーディオソフトウエアの基礎を学ぶという感じですね。プログラムに関してはステップバイステップで細かく丁寧に書いてありますが、プログラミングの知識は前提条件です。iOSではObjective-Cの比率が多くなるけど、それはハイレベルフレームワーク(Androidのメディアプレーヤークラスみたいなやつ)が導入されるからであって、CoreAudioの基本はC言語です。またGUIには触れていないのでそこで悩む必要はなくて音声処理に集中できるのも上手な書き方です。
つまり一般のオーディオファンがCoreAudioってなに、というのを知るための本ではありませんが、そうした記事はまあ当ブログなどをご覧ください笑。
CoreAudioってWASAPIとかASIOなどと「音を良くするもの」ってカテゴリでいっしょくたにされるんですが、それらとは別なものです。そもそも「CoreAudioの設定画面」なんてないですし、ユーザーではなくプログラマのためのものです。さらにやる気になればHALも含めてCoreAudioを使わないことも可能です(AudirvanaのDirectモードがそうです)。
とはいえ基本的な解説も多いのでユーザーサイドのオーディオファンでも勉強になることも多いとは思います。たとえばCore Audio File(CAF)の利点としてはタイムテーブルを持っているのでMP3のようにある時間に飛ぶのに計算コストがかからないということや、CAFはすべてのデータフォーマット(CODEC)を入れることのできるファイルフォーマットである、という点からはなぜMastered For iTunesで中間形式にCAFが使われるかというのが分かると思います。
* iPadなどでのKindleの使い方
ここでKindleのiPadなどでの使用を解説します。(私はKindleデバイス自体は持っていません)
KindleはAmazonの電子書籍リーダーで、Kindleには専用のKindleストアがあります。Kindleで読むための電子書籍はKindle Editionと付いていますので確認が必要です。以下、例は米国アカウントにのっとっています。買った時点では米国のみだったからです。(Learning CoreAudioに関しては現在は日本語Kindleストアでも購入可能です)
基本はKindle電子書籍リーダーで読むためのものですが、iOSとAndroidにはKindleアプリがあり、PC/MacにはKindle Cloud readerというウエブベースのリーダーがあります。
まずiPadのKindleアプリを使う例を書きます。注意点はiPadでKindleアプリを使っても直接アプリからAmazonのストアにはつなぐことができないので、購入自体はいったんPC(またはiPadのブラウザ)でAmazon.comで行います。
1. US Amazonにアカウントを作ります(少なくともKindle Editionについては日本のクレジットカードが使用できるようです)
2. iPadのKindleアプリをインストール
3. iPadアプリを立ち上げてUSアカウントでログイン。Kindle機器として認証がされる(5台まで)
4. PC(またはiPadのブラウザ)でAmazon.com(アメリカの方)を開け、Kindle Storeに行く
5. 書籍(Kindle Editionと書いてあるもの)を選び、buyを選ぶと右側に"send to"でiPadの登録名が表示されていることを確認。購入する。
*テストでsampleを送れるので初めての時はやったほうが良い
6. iPadにおいてはアプリの立ち上げ時に同期するので、Kindleを立ち上げていたら終了させる(ホームボタン押すだけではなく終了させるのが確実)
7. iPadのKindleを立ち上げると同期される (Androidは明示的に同期するというメニュー項目がある)
8. iPadのKindleの「端末→本」に入っているはずです
これをiPhoneでも読みたいときはiPhoneでKindleを立ち上げてクラウドを選んでください。すると端末にダウンロードされます。iPadで読んでいて続きをiPhoneで読むときはしおりがクラウドで同期します(同期しないときもしばしば)。AndroidではNexus 7でも試してみましたが、片手で軽くもてる7インチタブレットは電子書籍を読むのにかなり便利です。
左はiPadのKindleアプリ、右はNexus 7でのKindleアプリです。
米国Kindle Storeで扱っている本は言うまでもなく英語版のみですが、コンピューターをやってる人ならだれでも知ってるオライリーの解説本も買えます。なかでもWhat is HTML5やWhat is ePub3など無料本もゲットできるのでこれを試しにダウンロードしてKindleの使い方を覚えるのも良いでしょう。(サンプルだとクラウド上には置かれないのでこうした無料本はテストに便利です)
What is HTML5 (O'Reilly)
実際にKindleの世界は大中小どの端末でも読めるし、同期も取れるのでとても便利で自由です。音楽もそうですけれども、日本のネット世界からアメリカのネット世界にいったとたんにぱっと可能性と自由度がひろがるというのは残念な事実ではありますね。
ただKindleがすべてではないと思います。上のオライリーの話をさらにつづけると、オライリーの本は電子化が進んでいて翻訳版もDRMフリーでePubで入手できますので、まじめに買うときはそちらをお勧めします。電子書籍もkoboだのkindleだのとデバイスやストアではなく、音楽のMP3のようにフォーマットで語れるようになれば普及が進むと思うのですけれども。電子書籍のあり方というのは音楽配信と同様にどうあるべきか、という点から考えていくべきだと思います。
2012年09月23日
BitPerfectもダイレクトモードを採用へ
CoreAudioをまるっとバイパスしてしまうダイレクトモードはいまのところAudirvana Plusのみ採用していますが、次はBitPerfectもダイレクトモードに対応するようです。名称はダイレクトモードではなく、BitPerfectionというものになるようで鋭意開発中です。
ただPure Musicの人も指摘しているようにダイレクトモードはOSの一部たるCoreAudio、特にドライバーに直接触るHALをバイパスするという性格上カーネルパニック(Windowsでいうブルースクリーン)を起こす可能性があるというのは、Bitperfectの人も指摘しています。この辺ダイレクトモードがどう熟成していくかというのはちょっと注目ではあります。
ただPure Musicの人も指摘しているようにダイレクトモードはOSの一部たるCoreAudio、特にドライバーに直接触るHALをバイパスするという性格上カーネルパニック(Windowsでいうブルースクリーン)を起こす可能性があるというのは、Bitperfectの人も指摘しています。この辺ダイレクトモードがどう熟成していくかというのはちょっと注目ではあります。
2012年08月16日
ソフトウエア開発者の語るプレーヤーソフトの特徴
AudioStreamで面白い連載企画をやっています。
Audirvanaの開発者であるDamienとかDecibelのBoothにインタビューして、プレーヤーソフトウエアを語るという企画で、一回目はiTunesについてでした。ただこれはだいたいiTunesはライブラリとしては優れているが音質はいまひとつである、などだいたいわかる範囲でした。それを受けるという意味もありますが、二回目は開発者が自らのプレーヤーソフトウエアの特徴を語るというものでなかなか面白いものです。その問は「あなたのソフトウエアのどの機能が音質を改善するのか、それはなぜなのか」です。
http://www.audiostream.com/content/media-player-qa-q2-what-are-your-products-most-important-features
また第三回では他方で理解されていないかあまり使われていない機能は、との質問です。以下、二回目と三回目を少し私見を挟めながらまとめてみます。
Amarraでは25年の経験を生かしたSonic Studio Engine (SSE)でもっともアナログ的な音を提供する、信号処理とSSE/コンピュータ間の最適化を重視しているということ、信号処理においてはEQやデジタルボリュームの品質も自信がある、SSEは競合するメモリの管理を最適化することでハードとソフトのやりとりやオーバーヘッドを減らして結果的にノイズを減少させるとのこと。
また、あまり使われていない機能はFLAC変換とEQとのこと。
Audirvanaでは基本的に元の信号に変更を加えないビットパーフェクト再生を64bit処理で行うということ、DACへの最短で排他的なアクセスを行うということでコンピューター由来のジッターなどの影響を低減するということ、メモリー上にDAC形式(integer)で展開しておくことでCPU使用を最小にできるということ、またSystem Optimizerでの最適化やiZotopeも音質向上に寄与するとのこと。この辺はさきに書いたDamienのホワイトペーパーに沿っていますね。
あまり使われていない機能はないけれどもしいて言えばディザボリュームかな、ということ。
BitPerfectでは、特に機能というよりもディスクからDACまで効率のよいステップで実行すること。
使われていない機能というよりもうちは機能は最小限にする主義ですということです。ちなみにBitPerfectって会社になってたんですね。
Decibelではもっとも重要な機能は自動サンプルレート切り替えと最小限の処理で元データに忠実であるとのこと。つまり必要のない限りビットパーフェクトで処理して元のデータには手を加えないということ、また音飛び(glitch)を最小にするためにメモリーに読みこんで再生するなど、ボリュームが必要な場合は64bit処理をするなどなど。基本を忠実に守るという感じでしょうか。
あまり使われていない機能はマルチチャンネルサポートとのこと。今後拡張したいのはライブラリ機能(特に多数のファイルの管理)だそうです。
HQ Playerでは特徴はかなり技術的なことだと前置きして、、RedBook(CD品質)データにいくつもの手段でアップサンプリングを提供すること、特にリンギングを最小にしてストップバンド・アッテネーションを最大にするという組み合わせによりDACがもとの波形を正確に再現できるようにするとのこと。これはデジタルフィルター、アーティファクト(不要生成物)に関するところですね。
また二番目の特徴としてDSD対応DACへのデルタシグマによる出力も書いているのが注目点です。これはつまり現代DACの"native language"だから、としているのがポイントですね。これは計算処理を必要とするのでコンピューターに向くところだとのこと。
HQ Playerは基本的にDACでやるべきこと(デジタルフィルター処理など)をコンピューター側でやってしまうというコンセプトです。これはまたビットパーフェクトに忠実という既述Macプレーヤーソフトたちに比べると手を加えることが前提という点が面白い対比です。
あまり使われていない機能はデジタル処理によるルームコレクション機能であるとのこと。またデジタルボリュームも現代DACの性能を考えるならロスは許容範囲ではないかとのこと。
JPlayではただメモリ上に置くだけでなくメモリ管理の最適化を行い、CPUのタイマー・スケジューリングを最適化することでタスクスイッチの最小化をして、レイテンシーを向上させるという点がポイントということのようです。また強制ハイバネーションさせることでノイズ・ジッター出しそうなプロセスをすべて止めるということ。ビットパーフェクトなだけでなく、タイム・パーフェクトだと言ってます。
つまりきわどいくらいハードに近い低レベルの処理を最適化しているといのが、JPlayですね。ほとんど近代OSの機能を殺してしまって音楽再生プロセスだけで動かそうというコンセプトです。アセンブラで書いたら、と突っ込みたくなります。
これもMacソフトではここまで低レベルのことをいじっているのはあまりないので(ダイレクトモードはかなり低レベルですが)、WindowsよりもDOSっぽいというかちょっと個性的です。
一方でハイバネーションはあまり使われていないし、バッファ設定ももっと試してほしいということ。
JRiver Media Playerは内部処理を64bitで行っているのでいかなるDSP処理をしても音質は問題ない、またあるゆるダイレクトパス(ASIO、排他WASAPI、カーネルストリーミング)を備えている、マルチチャンネルやハイサンプルレート処理も可能、と柔軟性をアピールしています。
しかしHQ PlayerとJPlayがあまり強烈だったのでJRMCはWindowsプレーヤーソフトではかなり普通に見えます 笑。
JRiverではやはり機能が多いのでユーザーも迷いやすいかもということ。
Pure Music Playerではまず技術的な機能を語る前に信頼性が大事だとのこと。これは標準的なAPIにのっとって、あやしいAPIやコールを使わないなどが重要だろうとのこと。またPure Musicの前身であるPure Vinylの開発を通して(ソフトウエア技術よりも)まず自らがオーディオファイルであることを重視しているとあります。(Channel Dの試聴室の画像があるのはそういうこと)
またオーディオショウに出展する実績をあげることもユーザーとのつながりで大事たとしています。我々はデジタルオーディオもやっているがアナログを理解しているとも書いています。
技術に走りがちな他のソフトを暗に批判しているようにもちょっと読めますね。ちなみにPure Music Playerはサイトの中で(名指ししてませんが)AudirvanaのダイレクトモードはOS標準であるCoreAudioを使用していないので危険性があると批判しています。
他方でPure Musicの見過ごされがちの良さは一ライセンスコードでいくつでもマシンにインストールしてよいということ。またユーザーサポートも強力なのでぜひ使ってくださいということです。
しかし意外と各社とも個性的な見解で面白い内容です。
端的にまとめるとひとつにはコンピューター側でのソフトウエア処理を最適化すれば、ノイズやジッターなどでのハードであるところのオーディオ機器へのアナログ的な影響も結果的に抑えることができる、という感じでしょうか。
なぜソフトウエアを変えると音が変わるか、ビットパーフェクト以上に音が良くなるのか、という問いにはひとつの回答にはなっていると思います。
そういえばFoobar2000はありませんが、作ってる人がソフトで音は変わらないよと言ってるようなのであえて聞かなかったのかも。Foobar2000は本体というよりコンポーネントですね。
Audirvanaの開発者であるDamienとかDecibelのBoothにインタビューして、プレーヤーソフトウエアを語るという企画で、一回目はiTunesについてでした。ただこれはだいたいiTunesはライブラリとしては優れているが音質はいまひとつである、などだいたいわかる範囲でした。それを受けるという意味もありますが、二回目は開発者が自らのプレーヤーソフトウエアの特徴を語るというものでなかなか面白いものです。その問は「あなたのソフトウエアのどの機能が音質を改善するのか、それはなぜなのか」です。
http://www.audiostream.com/content/media-player-qa-q2-what-are-your-products-most-important-features
また第三回では他方で理解されていないかあまり使われていない機能は、との質問です。以下、二回目と三回目を少し私見を挟めながらまとめてみます。
Amarraでは25年の経験を生かしたSonic Studio Engine (SSE)でもっともアナログ的な音を提供する、信号処理とSSE/コンピュータ間の最適化を重視しているということ、信号処理においてはEQやデジタルボリュームの品質も自信がある、SSEは競合するメモリの管理を最適化することでハードとソフトのやりとりやオーバーヘッドを減らして結果的にノイズを減少させるとのこと。
また、あまり使われていない機能はFLAC変換とEQとのこと。
Audirvanaでは基本的に元の信号に変更を加えないビットパーフェクト再生を64bit処理で行うということ、DACへの最短で排他的なアクセスを行うということでコンピューター由来のジッターなどの影響を低減するということ、メモリー上にDAC形式(integer)で展開しておくことでCPU使用を最小にできるということ、またSystem Optimizerでの最適化やiZotopeも音質向上に寄与するとのこと。この辺はさきに書いたDamienのホワイトペーパーに沿っていますね。
あまり使われていない機能はないけれどもしいて言えばディザボリュームかな、ということ。
BitPerfectでは、特に機能というよりもディスクからDACまで効率のよいステップで実行すること。
使われていない機能というよりもうちは機能は最小限にする主義ですということです。ちなみにBitPerfectって会社になってたんですね。
Decibelではもっとも重要な機能は自動サンプルレート切り替えと最小限の処理で元データに忠実であるとのこと。つまり必要のない限りビットパーフェクトで処理して元のデータには手を加えないということ、また音飛び(glitch)を最小にするためにメモリーに読みこんで再生するなど、ボリュームが必要な場合は64bit処理をするなどなど。基本を忠実に守るという感じでしょうか。
あまり使われていない機能はマルチチャンネルサポートとのこと。今後拡張したいのはライブラリ機能(特に多数のファイルの管理)だそうです。
HQ Playerでは特徴はかなり技術的なことだと前置きして、、RedBook(CD品質)データにいくつもの手段でアップサンプリングを提供すること、特にリンギングを最小にしてストップバンド・アッテネーションを最大にするという組み合わせによりDACがもとの波形を正確に再現できるようにするとのこと。これはデジタルフィルター、アーティファクト(不要生成物)に関するところですね。
また二番目の特徴としてDSD対応DACへのデルタシグマによる出力も書いているのが注目点です。これはつまり現代DACの"native language"だから、としているのがポイントですね。これは計算処理を必要とするのでコンピューターに向くところだとのこと。
HQ Playerは基本的にDACでやるべきこと(デジタルフィルター処理など)をコンピューター側でやってしまうというコンセプトです。これはまたビットパーフェクトに忠実という既述Macプレーヤーソフトたちに比べると手を加えることが前提という点が面白い対比です。
あまり使われていない機能はデジタル処理によるルームコレクション機能であるとのこと。またデジタルボリュームも現代DACの性能を考えるならロスは許容範囲ではないかとのこと。
JPlayではただメモリ上に置くだけでなくメモリ管理の最適化を行い、CPUのタイマー・スケジューリングを最適化することでタスクスイッチの最小化をして、レイテンシーを向上させるという点がポイントということのようです。また強制ハイバネーションさせることでノイズ・ジッター出しそうなプロセスをすべて止めるということ。ビットパーフェクトなだけでなく、タイム・パーフェクトだと言ってます。
つまりきわどいくらいハードに近い低レベルの処理を最適化しているといのが、JPlayですね。ほとんど近代OSの機能を殺してしまって音楽再生プロセスだけで動かそうというコンセプトです。アセンブラで書いたら、と突っ込みたくなります。
これもMacソフトではここまで低レベルのことをいじっているのはあまりないので(ダイレクトモードはかなり低レベルですが)、WindowsよりもDOSっぽいというかちょっと個性的です。
一方でハイバネーションはあまり使われていないし、バッファ設定ももっと試してほしいということ。
JRiver Media Playerは内部処理を64bitで行っているのでいかなるDSP処理をしても音質は問題ない、またあるゆるダイレクトパス(ASIO、排他WASAPI、カーネルストリーミング)を備えている、マルチチャンネルやハイサンプルレート処理も可能、と柔軟性をアピールしています。
しかしHQ PlayerとJPlayがあまり強烈だったのでJRMCはWindowsプレーヤーソフトではかなり普通に見えます 笑。
JRiverではやはり機能が多いのでユーザーも迷いやすいかもということ。
Pure Music Playerではまず技術的な機能を語る前に信頼性が大事だとのこと。これは標準的なAPIにのっとって、あやしいAPIやコールを使わないなどが重要だろうとのこと。またPure Musicの前身であるPure Vinylの開発を通して(ソフトウエア技術よりも)まず自らがオーディオファイルであることを重視しているとあります。(Channel Dの試聴室の画像があるのはそういうこと)
またオーディオショウに出展する実績をあげることもユーザーとのつながりで大事たとしています。我々はデジタルオーディオもやっているがアナログを理解しているとも書いています。
技術に走りがちな他のソフトを暗に批判しているようにもちょっと読めますね。ちなみにPure Music Playerはサイトの中で(名指ししてませんが)AudirvanaのダイレクトモードはOS標準であるCoreAudioを使用していないので危険性があると批判しています。
他方でPure Musicの見過ごされがちの良さは一ライセンスコードでいくつでもマシンにインストールしてよいということ。またユーザーサポートも強力なのでぜひ使ってくださいということです。
しかし意外と各社とも個性的な見解で面白い内容です。
端的にまとめるとひとつにはコンピューター側でのソフトウエア処理を最適化すれば、ノイズやジッターなどでのハードであるところのオーディオ機器へのアナログ的な影響も結果的に抑えることができる、という感じでしょうか。
なぜソフトウエアを変えると音が変わるか、ビットパーフェクト以上に音が良くなるのか、という問いにはひとつの回答にはなっていると思います。
そういえばFoobar2000はありませんが、作ってる人がソフトで音は変わらないよと言ってるようなのであえて聞かなかったのかも。Foobar2000は本体というよりコンポーネントですね。
2012年08月13日
JRiver Media Center 18でMacサポートへ
JRiver Media Center 18のリリースがアナウンスされています。
登録ユーザーには案内が来ていると思いますので触れませんが私もディスカウント価格でアップデートしました(8/15まで)。新規ユーザーはいまJRMC17を購入するとフリーでJRMC18にアップデートできます。
JRMC18は1-2か月後にリリースされると言うことです。
http://yabb.jriver.com/interact/index.php?board=27.0
JRMC18の大きなポイントはMac版が出るということです。ただしライセンスは別に買う必要があるということ。また、JRMC18でプログラムの移植性能向上の工夫をしたようで、他のOSも可能だと言うことです。LINUX版もあるかも?
JRMC18はAV方面とピュアオーディオの両方の人が使える総合ソフトなので、機能向上はビジュアル方面も含みますが、オーディオではDSDサポートが改良されるようです。いまのJRMC17のDSDネイティブ再生の設定はややこしいですからね。この辺が改良されるのでしょう。
またMacでDSD対応した高音質プレーヤーソフトの選択肢が増えることは歓迎ですね。
登録ユーザーには案内が来ていると思いますので触れませんが私もディスカウント価格でアップデートしました(8/15まで)。新規ユーザーはいまJRMC17を購入するとフリーでJRMC18にアップデートできます。
JRMC18は1-2か月後にリリースされると言うことです。
http://yabb.jriver.com/interact/index.php?board=27.0
JRMC18の大きなポイントはMac版が出るということです。ただしライセンスは別に買う必要があるということ。また、JRMC18でプログラムの移植性能向上の工夫をしたようで、他のOSも可能だと言うことです。LINUX版もあるかも?
JRMC18はAV方面とピュアオーディオの両方の人が使える総合ソフトなので、機能向上はビジュアル方面も含みますが、オーディオではDSDサポートが改良されるようです。いまのJRMC17のDSDネイティブ再生の設定はややこしいですからね。この辺が改良されるのでしょう。
またMacでDSD対応した高音質プレーヤーソフトの選択肢が増えることは歓迎ですね。
2012年07月26日
マウンテンライオンとオーディオ
MacのOS10.8であるマウンテンライオンがリリースされました。
ちょっとまた旅行に行くので自分では試してませんが、ネットで見る限りではオーディオ周りではまずAirPlayの統合が大きいようですね。AudioMidiでも見えますし、システムのサウンドからも選べるはずです。(44k固定です)
http://www.computeraudiophile.com/f11-software/official-os-x-mountain-lion-thread-12787/#post169647
またダミアンによればダイレクトモード(およびインテジャーモード)も使えるはずです。
ちょっとまた旅行に行くので自分では試してませんが、ネットで見る限りではオーディオ周りではまずAirPlayの統合が大きいようですね。AudioMidiでも見えますし、システムのサウンドからも選べるはずです。(44k固定です)
http://www.computeraudiophile.com/f11-software/official-os-x-mountain-lion-thread-12787/#post169647
またダミアンによればダイレクトモード(およびインテジャーモード)も使えるはずです。
2012年06月17日
プレーヤーソフトXBMCのHDリニューアル
XBMCはXbox Media Centerという名称のとおり、Xboxを母体にしていますがいまではマルチプラットフォームのメディアプレーヤーとして知られています(フリーです)。ただしこれまで紹介してきたようなAudirvanaやHQ Playerに比べるとピュアオーディオ向けというよりはAV用途のメディアプレーヤーと考えられています。
そのXBMCが最近内部のAudioEngineという再生エンジン部分を大幅刷新してHD対応しました。こちらにアナウンスがあります。
http://xbmc.org/dddamian/2012/05/30/xbmc-audio-goes-hd/
音質的にも大きく改良され、384kHz対応などがなされていますが、大きなポイントは DTS-MA / Dolby TrueHD のブルーレイフォーマットに対応したことです。これはXBMCがHTPC(ホームシアターPC)のソフトウエアとなることを意図しているようです。HTPCというのはいわゆるPCオーディオ専用PCみたいなもので、主にAV用途でホームシアター用に製作されるものです。
この新しいAudioEngine対応版はまだベータ運用ですが、ダウンロードは可能なようです。新しいAudioEngine対応はWindows版だけですが、最新のビルドにはコードが反映されていると思います。
http://wiki.xbmc.org/index.php?title=Nightly_build
そのXBMCが最近内部のAudioEngineという再生エンジン部分を大幅刷新してHD対応しました。こちらにアナウンスがあります。
http://xbmc.org/dddamian/2012/05/30/xbmc-audio-goes-hd/
音質的にも大きく改良され、384kHz対応などがなされていますが、大きなポイントは DTS-MA / Dolby TrueHD のブルーレイフォーマットに対応したことです。これはXBMCがHTPC(ホームシアターPC)のソフトウエアとなることを意図しているようです。HTPCというのはいわゆるPCオーディオ専用PCみたいなもので、主にAV用途でホームシアター用に製作されるものです。
この新しいAudioEngine対応版はまだベータ運用ですが、ダウンロードは可能なようです。新しいAudioEngine対応はWindows版だけですが、最新のビルドにはコードが反映されていると思います。
http://wiki.xbmc.org/index.php?title=Nightly_build
2012年05月31日
ダイレクトモードとインテジャーモード
昨日の記事でダイレクトモードの条件はインテジャーモードと同じって書きましたが、この辺をちょっと補足訂正します。
基本的にダイレクトモードとインテジャーモードは別の概念です。端的に言うとダイレクトモードはAU+HALをバイパスして短縮経路を確保することで、インテジャーモードは経路上をnon-mixable integer streamでオーディオデータを送ることです。ですからインテジャーモードはオンにできないけど、ダイレクトモードはオンになっていると言うことがあり得るということのようです。
この場合ではインテジャーモードのメリット(ドライバーの負担減など)は受けないけど、ダイレクトモードのメリット(経路短縮でのレイテンシーの向上など)は受けるということですね。
ダミアンは違いについてこう語っています。コンピュータをご存知の方には分かりやすいでしょう。
「ダイレクトモードはユーザー空間(つまりカーネルの外)での最適化であり、インテジャーモードはカーネルの内側、ドライバー内部の最適化だ」
インテジャーモードについては下記リンクのダミアンの書いた文書を私が訳した記事を参照ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/211699878.html
ですのでダイレクトモードを使える条件は特にないと言うことになり、どのDACでもダイレクトモードに入れると思います。実際に入っているかどうかはINT表示ではなくdebugログでわかると思います。(Direct Mode audio pathという記述があるはず)
ただし10.7 ライオンにおいてはダイレクトモードになっていることが、10.7でのインテジャーモードの条件になります。(10.6ではインテジャーモードに入ることとAUをバイパスすることが一緒にされることが多かった)
10.7ライオンでINT表示がされていれば、ダイレクトモードとインテジャーモードの両方のメリットが発揮されているということになりますね。
Mac OSにおいては実際はこの他にさらにhogモード(デバイスの排他使用)がオンになっているはずです。
またDSD再生でもダイレクトモードの効果を得ることができると言うことです。
こちらにCAでダミアンの書いたポストがあり参考になります。
http://www.computeraudiophile.com/f11-software/audirvana-plus-direct-mode-12261/index2.html#post159482
基本的にダイレクトモードとインテジャーモードは別の概念です。端的に言うとダイレクトモードはAU+HALをバイパスして短縮経路を確保することで、インテジャーモードは経路上をnon-mixable integer streamでオーディオデータを送ることです。ですからインテジャーモードはオンにできないけど、ダイレクトモードはオンになっていると言うことがあり得るということのようです。
この場合ではインテジャーモードのメリット(ドライバーの負担減など)は受けないけど、ダイレクトモードのメリット(経路短縮でのレイテンシーの向上など)は受けるということですね。
ダミアンは違いについてこう語っています。コンピュータをご存知の方には分かりやすいでしょう。
「ダイレクトモードはユーザー空間(つまりカーネルの外)での最適化であり、インテジャーモードはカーネルの内側、ドライバー内部の最適化だ」
インテジャーモードについては下記リンクのダミアンの書いた文書を私が訳した記事を参照ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/211699878.html
ですのでダイレクトモードを使える条件は特にないと言うことになり、どのDACでもダイレクトモードに入れると思います。実際に入っているかどうかはINT表示ではなくdebugログでわかると思います。(Direct Mode audio pathという記述があるはず)
ただし10.7 ライオンにおいてはダイレクトモードになっていることが、10.7でのインテジャーモードの条件になります。(10.6ではインテジャーモードに入ることとAUをバイパスすることが一緒にされることが多かった)
10.7ライオンでINT表示がされていれば、ダイレクトモードとインテジャーモードの両方のメリットが発揮されているということになりますね。
Mac OSにおいては実際はこの他にさらにhogモード(デバイスの排他使用)がオンになっているはずです。
またDSD再生でもダイレクトモードの効果を得ることができると言うことです。
こちらにCAでダミアンの書いたポストがあり参考になります。
http://www.computeraudiophile.com/f11-software/audirvana-plus-direct-mode-12261/index2.html#post159482
2012年05月30日
ダイレクトモード対応のAudirvana Plusベータ版リリース
以前お知らせしたAudirvana Plusのダイレクトモード対応のベータ版がリリースされました。アナウンスはこちらです。
http://audirvana.com/?p=304
ダウンロードはこちらです。
http://audirvana.com/?page_id=216
ページの使用許諾契約の一番下の"I fully agree with above terms"(同意します)をクリックしてください。dmgがダウンロードされます。
*ダイレクトモードとは
Macのプレーヤーソフトではインテジャーモードの採用が一時トレンドになりましたが、Mac OSが10.7ライオンになったときにインテジャーモードが使えなくなりました。これ以後Macでは10.6のままインテジャーモードを使い続けるか、10.7に移行するか、が悩みでもありました。
そこでインテジャーモードを初めて搭載したことでも知られるAudirvanaのダミアンが「ダイレクトモード」という解決策を考案しました。
ダイレクトモードとはどういうものかというと、まずMacOS内の模式図は下記のようになります。このうちAU(Audio Unit)+HALをCoreAudioと言います。カッコ内は数値表現形式です。なぜAUのところが32bit float(浮動小数点)かというとここはリサンプリングやDAWプラグインなどを処理する数値計算を行う層だからです。
Audirvana → Audio Unit (32bit float) → HAL (int) → ドライバー (int) → DAC
インテジャーモードはこのうちAUをバイパスしてHALに直接インテジャー(int:整数形式)でオーディオデータを渡すというものです。
ところがライオンではこれに必要なDACとの情報交換に使うGET/SELECTコールの処理を変えてしまったようです。これはWavelengthのゴードンがずいぶんAppleと交渉してくれたようですが、理由はこの辺でバッファリングに伴うバグが多いためと言うことで、オーディオファンのためだけに巨大Appleが動くのは難しいかもしれません。
そこでダイレクトモードではなんとHALまでバイパスすることでCoreAudio自体全てバイパスしてしまいました。これにより経路は下記のようにまさにハードにダイレクトに直結となりました。オーディオで言うところのショートシグナルパスですね。
Audirvana → ドライバー → DAC
ただこれはアイディアよりも実装はそう簡単ではなさそうです。(デバイスに簡単に触れるようにしたのがHAL- ハードウエア抽象化層ですから)
今回はベータ版のリリースとなりますが、私は少し先行させてテストさせてもらっていました。
ダイレクトモードの使用条件はインテジャーモードと同じです。使用するにはFileメニューからPreferenceを選んでAudio Systemから新設されたDirect Modeをオンにしてください。インテジャーモードもオンになります。画面表示にINTが出ればOKです。
*こちらに補足記事あり - http://vaiopocket.seesaa.net/article/272746069.html
10.7の64bitモードでテストして見ました。音質向上はかなり大きく、パッと聞いてDACが変わったか、という感じのクリアな晴れ上がり感と細部の明瞭さがあり、ベースのピチカートの歯切れの良さもより鮮明になります。インテジャーモードの差よりも大きいように思いますね。やはりハードウエアに近い低いレベルでの改良は効果が大きく、これがハードウエア「ダイレクト」の良さなんでしょう。
インテジャー(整数型)というわかりにくい専門用語に比べて、ダイレクトっていう言葉の分かりやすさもよいポイントかも。
ぜひ10.7ライオンでの新しい世界を楽しんでください!
http://audirvana.com/?p=304
ダウンロードはこちらです。
http://audirvana.com/?page_id=216
ページの使用許諾契約の一番下の"I fully agree with above terms"(同意します)をクリックしてください。dmgがダウンロードされます。
*ダイレクトモードとは
Macのプレーヤーソフトではインテジャーモードの採用が一時トレンドになりましたが、Mac OSが10.7ライオンになったときにインテジャーモードが使えなくなりました。これ以後Macでは10.6のままインテジャーモードを使い続けるか、10.7に移行するか、が悩みでもありました。
そこでインテジャーモードを初めて搭載したことでも知られるAudirvanaのダミアンが「ダイレクトモード」という解決策を考案しました。
ダイレクトモードとはどういうものかというと、まずMacOS内の模式図は下記のようになります。このうちAU(Audio Unit)+HALをCoreAudioと言います。カッコ内は数値表現形式です。なぜAUのところが32bit float(浮動小数点)かというとここはリサンプリングやDAWプラグインなどを処理する数値計算を行う層だからです。
Audirvana → Audio Unit (32bit float) → HAL (int) → ドライバー (int) → DAC
インテジャーモードはこのうちAUをバイパスしてHALに直接インテジャー(int:整数形式)でオーディオデータを渡すというものです。
ところがライオンではこれに必要なDACとの情報交換に使うGET/SELECTコールの処理を変えてしまったようです。これはWavelengthのゴードンがずいぶんAppleと交渉してくれたようですが、理由はこの辺でバッファリングに伴うバグが多いためと言うことで、オーディオファンのためだけに巨大Appleが動くのは難しいかもしれません。
そこでダイレクトモードではなんとHALまでバイパスすることでCoreAudio自体全てバイパスしてしまいました。これにより経路は下記のようにまさにハードにダイレクトに直結となりました。オーディオで言うところのショートシグナルパスですね。
Audirvana → ドライバー → DAC
ただこれはアイディアよりも実装はそう簡単ではなさそうです。(デバイスに簡単に触れるようにしたのがHAL- ハードウエア抽象化層ですから)
今回はベータ版のリリースとなりますが、私は少し先行させてテストさせてもらっていました。
*こちらに補足記事あり - http://vaiopocket.seesaa.net/article/272746069.html
10.7の64bitモードでテストして見ました。音質向上はかなり大きく、パッと聞いてDACが変わったか、という感じのクリアな晴れ上がり感と細部の明瞭さがあり、ベースのピチカートの歯切れの良さもより鮮明になります。インテジャーモードの差よりも大きいように思いますね。やはりハードウエアに近い低いレベルでの改良は効果が大きく、これがハードウエア「ダイレクト」の良さなんでしょう。
インテジャー(整数型)というわかりにくい専門用語に比べて、ダイレクトっていう言葉の分かりやすさもよいポイントかも。
ぜひ10.7ライオンでの新しい世界を楽しんでください!
2012年05月05日
Fideliaにヘッドフォン向けDSPオプションFHXが登場
FideliaはV1.2にアップデートされ、64bit対応、メモリ再生オプション(Advancedライセンス要)とともに$49の別オプションとしてFHXというオプションが追加されました。
http://www.audiofile-engineering.com/fidelia/
これはクロスフィードのようなもののようで、ヘッドフォン再生の音場感を改善してスピーカーで聴くようにするというもの。ただ単なるクロスフィードではなくイコライザーや位相反転などの機能もついたものです。
Audirvana Plusの直球のダイレクトモード、Amarraの分化、そしてFideliaの新機能FHXとプレーヤーソフトもいろんな方向性がまた出てきましたね。
http://www.audiofile-engineering.com/fidelia/
これはクロスフィードのようなもののようで、ヘッドフォン再生の音場感を改善してスピーカーで聴くようにするというもの。ただ単なるクロスフィードではなくイコライザーや位相反転などの機能もついたものです。
Audirvana Plusの直球のダイレクトモード、Amarraの分化、そしてFideliaの新機能FHXとプレーヤーソフトもいろんな方向性がまた出てきましたね。
Amarra V2.4の二つの顔
Amarraが大きくラインナップを変更したことで、私の持っていたAmarra Miniのライセンスはフルバージョンにアップグレードできました。私のライセンスはCPUにつくファイルライセンスだったんですが、通常のライセンスにコンバートできました。(この場合はシリアル番号がライセンスキーになります)
Amarra V2.4ですが、いままでどおりiTunesにくっつくこともできますし、iTunesを終了してAmarraのプレイリストだけでも動作できます。
こちらはiTunesと使用しているところで、Amarraを通しているときはAmarraアイコンが青くなります。アルバムアートはAmarraウインドウの右側にも表示できます。
Amarraプレイリストで再生しているときは色が付きません。こちらはiTunesを切ってAmarraプレイリストで再生しているところです。プレイリストはFLACを再生しています。Amarraプレイリストでは単にドラッグしてくれば良いので、以前のようにiTunesにブックマークを使用して挿入するというトリッキーな操作の必要はありません。
AmarraというとMac標準のiTunesの音質を高めることができる、ということで高音質プレーヤーソフトの嚆矢となったものですが、それから月日がたちPCオーディオの環境も変わり、iTunesに特化するというのがメリットからだんだんとiTunesのフォーマットに束縛されてしまうというデメリットが目立ちようになってきました。
こうしてモードを使い分けられるようになったというのはAmarraの進歩でもあり、PCオーディオ環境の変化も感じさせてくれます。
Amarra V2.4ですが、いままでどおりiTunesにくっつくこともできますし、iTunesを終了してAmarraのプレイリストだけでも動作できます。
こちらはiTunesと使用しているところで、Amarraを通しているときはAmarraアイコンが青くなります。アルバムアートはAmarraウインドウの右側にも表示できます。
Amarraプレイリストで再生しているときは色が付きません。こちらはiTunesを切ってAmarraプレイリストで再生しているところです。プレイリストはFLACを再生しています。Amarraプレイリストでは単にドラッグしてくれば良いので、以前のようにiTunesにブックマークを使用して挿入するというトリッキーな操作の必要はありません。
AmarraというとMac標準のiTunesの音質を高めることができる、ということで高音質プレーヤーソフトの嚆矢となったものですが、それから月日がたちPCオーディオの環境も変わり、iTunesに特化するというのがメリットからだんだんとiTunesのフォーマットに束縛されてしまうというデメリットが目立ちようになってきました。
こうしてモードを使い分けられるようになったというのはAmarraの進歩でもあり、PCオーディオ環境の変化も感じさせてくれます。
Amarraラインナップの分化
Amarraは他のプレーヤーに比べると高価な印象が否めませんでしたが、新たにAmarra HiFiという廉価バージョンが登場しました。またAmarraはV2.4が登場して価格が引き下げられています。このラインナップ変更でminiとジュニアはなくなり、miniはフルバージョンにアップグレードされ、ジュニアは$99でAmarraにアップグレードすることができるとのこと。なお従来のフルバージョンのAmarra V2.3はAmarra Symphonyと呼ばれ別に使用できるようです。AmarraのSonic Studioのページはこちらです。
http://www.sonicstudio.com/amarra/index.html
Computer AudiophileでこのAmarra HiFiのライセンスプレゼント企画があったのでさっそくゲットしました。(アナウンスの記事にコメントつけた人に先着50名までHiFiのライセンス進呈というもの)
AmarraとAmarra HiFiの違いというと価格がAmarraは$189、Amarra HiFiは$49となります。おそらくエンジン基本部分は同じですが、メモリー再生やFLAC再生がHiFiでは省かれていて、iTunes用と位置づけが明確化されています。AmarraはiTunesなしでも動作するようになったようです。つまり他のプレーヤーのようにスタンドアローン化して独自プレイリストを使えるというわけです。これはFLACとかDSDのようにiTunesに束縛されてしまう状態からの独立をしたいのでしよう。
つまり
Amarra HiFi=従来のiTunes拡張プレーヤー、シンプルだがiTunes再生フォーマットに束縛される
Amarra=スタンドアローンプレーヤー、高機能でDSDやFLACなども再生可能
とも考えられます。分離したおかげでシンプルになってよかったと思います。
Amarra HiFiでも192kHzまでサポートできますが、Amarraではさらに384kまでサポートします。それとAmarraでいうと従来ノイズシェービングはMBit+だったんですが、これが変更されています。HiFiでもON/OFFすると再生箇所が飛ぶのでなんらかのキャッシュはされているようです。
またHiFiはM2Tech、WEISS、Musical Fidelity、dCS、Peachtree、Bel CantoのDACにバンドル版として搭載される予定のようです(海外の話ですので念のため)。これによってやや劣勢となったAmarraのシェアを取り戻すという意味合いもあるのでしょうね。
http://www.sonicstudio.com/amarra/index.html
Computer AudiophileでこのAmarra HiFiのライセンスプレゼント企画があったのでさっそくゲットしました。(アナウンスの記事にコメントつけた人に先着50名までHiFiのライセンス進呈というもの)
AmarraとAmarra HiFiの違いというと価格がAmarraは$189、Amarra HiFiは$49となります。おそらくエンジン基本部分は同じですが、メモリー再生やFLAC再生がHiFiでは省かれていて、iTunes用と位置づけが明確化されています。AmarraはiTunesなしでも動作するようになったようです。つまり他のプレーヤーのようにスタンドアローン化して独自プレイリストを使えるというわけです。これはFLACとかDSDのようにiTunesに束縛されてしまう状態からの独立をしたいのでしよう。
つまり
Amarra HiFi=従来のiTunes拡張プレーヤー、シンプルだがiTunes再生フォーマットに束縛される
Amarra=スタンドアローンプレーヤー、高機能でDSDやFLACなども再生可能
とも考えられます。分離したおかげでシンプルになってよかったと思います。
Amarra HiFiでも192kHzまでサポートできますが、Amarraではさらに384kまでサポートします。それとAmarraでいうと従来ノイズシェービングはMBit+だったんですが、これが変更されています。HiFiでもON/OFFすると再生箇所が飛ぶのでなんらかのキャッシュはされているようです。
またHiFiはM2Tech、WEISS、Musical Fidelity、dCS、Peachtree、Bel CantoのDACにバンドル版として搭載される予定のようです(海外の話ですので念のため)。これによってやや劣勢となったAmarraのシェアを取り戻すという意味合いもあるのでしょうね。
2012年04月30日
Audirvana Plusが次の1.4で新機能「ダイレクトモード」を実装へ
好評のMac用プレーヤーソフトのAudirvana Plusですが、Audirvanaはインテジャーモードをはじめに実装したことでも知られています。ところがライオン(10.7)以降ではAppleの意向か、インテジャーモードがMacOSレベルでサポートされず、おそらく次のマウンテンライオンでもだめであるようです。オーディオ的にはライオンの方が洗練されて音はよさそうだけど、インテジャーモードが使えないのでマイナスというジレンマがあったわけです。
そこで次のアップデートである1.4からAudirvana Plusでは「ダイレクトモード」という新機能を実装する予定です。従来の「インテジャーモード」はCoreAudioのミキサーでもあるAU(AudioUnit)をバイパスして直でHAL(Hardware Abstract Layer)にアクセスすることでDAC形式のデータを送っていたのですが、この「ダイレクトモード」はなんとCoreAudio全体をバイパスします。つまりHALもバイパスしてドライバーをAudirvanaから直でアクセスすることになります。
まさに再生ソフトからドライバーまでダイレクト、OSが介在しません。インテジャーモードの利点も復活し、さらに経路も短縮され、これで一層の音質向上が得られることでしょう。
ますます楽しみなAudirvana Plus、サイトはこちらです。
http://audirvana.com/
購入はこちらからどうぞ。
http://audirvana.com/?page_id=112
*ちなみにAudirvana Plusのシェアは日本がトップです。作者のDamienさんも日本の皆様に感謝しておりました。このダイレクトモードもみなさまの厚い支持のゆえだと思います。
そこで次のアップデートである1.4からAudirvana Plusでは「ダイレクトモード」という新機能を実装する予定です。従来の「インテジャーモード」はCoreAudioのミキサーでもあるAU(AudioUnit)をバイパスして直でHAL(Hardware Abstract Layer)にアクセスすることでDAC形式のデータを送っていたのですが、この「ダイレクトモード」はなんとCoreAudio全体をバイパスします。つまりHALもバイパスしてドライバーをAudirvanaから直でアクセスすることになります。
まさに再生ソフトからドライバーまでダイレクト、OSが介在しません。インテジャーモードの利点も復活し、さらに経路も短縮され、これで一層の音質向上が得られることでしょう。
ますます楽しみなAudirvana Plus、サイトはこちらです。
http://audirvana.com/
購入はこちらからどうぞ。
http://audirvana.com/?page_id=112
*ちなみにAudirvana Plusのシェアは日本がトップです。作者のDamienさんも日本の皆様に感謝しておりました。このダイレクトモードもみなさまの厚い支持のゆえだと思います。
2012年04月18日
マークレビンソンとディックバウエンのいま - Burwen Bobcat
はじめに断っておくと、この記事はMLAS(Mark Levinson Audio Systems)の伝説的プリアンプであるLNP2の記事ではありません。検索で来た人すみません。
しかしそのLNP2を創ったのと同じ人たちの話です。ここで言うマークレビンソンはハーマンのブランドではなく、マークレビンソン氏その人です。マークレビンソン氏の名を高めたのはこのLNP2というプリアンプで、特にバウエンモジュールが搭載された個体はひときわ人気があります。ここでいうディックバウエン氏(リチャード・S・バウエン)はそのバウエンモジュールに携わったバウエン氏です。
そしてこの記事はビンテージオーディオの話ではなく、PCオーディオの話です。つまりマークレビンソンとディックバウエンのいまのお話です。
この前マークレビンソン氏は伝説の中や過去の人ではなく、いまも精力的に活動している人だと書きました。Daniel Heartzというスイスのブランドを立ち上げています。ラインナップはいわゆるハイエンドオーディオでスピーカーからアンプ、DACまでそろっていますが、CD/SACDプレーヤーが用意されてないという点に目を留めておいてください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/238516292.html
上に引用したMonoAndStereo誌の記事の中でマークレビンソン氏が意味ありげに今後の展開を見ていてほしいと言っていましたのが気になっていましたが、最近レビュアーのスコット・ウィルキンソンの長いインタビューにマークレビンソン氏が答えている動画を見つけました。
http://www.computeraudiophile.com/content/Mark-Levinson-Video-Interview
http://www.computeraudiophile.com/content/Mark-Levinson-PCM
このインタビューの中で、マークレビンソン氏が「PCMの音は粗いが向上させる方法はある」というようなことを語ったのに対して、ある人がこれのことではないかとポストしていたのが"Burwen Bobcat"というものです。この名前にちょっと目が留まりました。
バウエンといえばあのLNP2のバウエンモジュールですが、いまでもマークレビンソン氏とバウエン氏が親密にやっているんだという点と、バウエンというとアンプのモジュールをつくるハードの人という感じですが、ここで書かれているのはソフトウエアであるという点に興味を持って調べてみることにしました。
まずBurwen Bobcat(バウエン・ボブキャット)とはなにかというところから説明していきます。
*Burwen Bobcatとは
Burwen Bobcatはバウエン氏が開発したPCMの音質を向上させるソフトウエアと技術の総称です。こちらにホームページがあります。
http://www.burwenbobcat.com/BBTB_Home.html
ちなみにBOBCAT(山猫)というのはBURWEN OPERATING SYSTEM, BEST COMPUTER AUDIO TECHNOLOGYの略でマークレビンソン氏による命名です(後述)。
2005年のDaniel HeartzのDACとのバンドル版をはじまりに、現在はTR(Trueの意)とTone Balancerの二種類があります。TRは2011年にリリースされた再生に特化したもので設定がプリセットされています。Tone Balancerはエクセルシートによるトーンコントローラを搭載したものです。TRは$105、Tone BalancerはTRを含んで$465です。
私はTRを一ライセンス買って試してみました。ここからはコア(エンジン)部分ともなるBobcat TRの説明になります。
Bobcat TRはWindows Media Playerのプラグインです。DSPプラグインの一種というとわかりやすいかもしれません。なにをするかというとBobcat TRは音質を改善させる目的で高域にリバーブを適用し、低域にトーンコントロールを適用します。ただしリバーブ(reverberation)といっても人工的なリバーブはBurwen氏も好きではなく、リバーブといってもエコーのように聞こえるものではなく、"Air"・空気感みたいなものだと言ってます。他のソフトのエコーのようなリバーブ・エフェクトはトランジェントを甘くしてしまうが、Bobcatは逆にトランジェントを鮮明にして明瞭感を増すということです。
これは5kHzより上の高域にポイントを絞るというところがミソのようで、そこが自然の反射音やいわゆるリバーブエフェクトとは異なるそうです。もともとは自分で録音に使っていた鳴りの良いホールの自然な反響の研究からはじまったけれども、結果的には自然界にはない反響の仕方を高域に加えるという方法で音質向上が得られることが分かったということのようです。また実際のホールの反響よりも10倍くらい複雑な波と反射の要素を計算しているとのこと。
この技術はいくつかの国で特許取得しているようです。調べてみたところ米国特許の8,041,045で"Unnatural Revervation"(自然には存在しないリバーブの適用)というタイトルでファイルされています。出願したのは2005年10月です。このソフトウエアの発表時ですね。
従来技術では高域が不完全(imperfection)であり、いらいらする刺激を与えてしまうが、高域を減衰させると細部が失われてしまうのが問題点であるとしています。このUnnatural Revervationの仕組みとしてはFIFOバッファにサンプルを入れて、ある係数に基づいて計算を加えていくというもの。先入れ先だしのFIFO(First In First Out)バッファに入れるというところがディレイというかリバーブのシミュレートなんでしょう。
*Bobcatの購入と使用について
購入はこちらのサイトで行い、ライセンスキーはあとで別メールできます。
http://www.burwenbobcat.com/BBTB_Download.html
立ち上げ方はWindows Media Playerのメニューがデフォルトではオフになっているので、これをオンにしてメニューをまず表示させます。つぎにメニューからプラグインの設定で
Burwen Bobcat TRを有効化します。すると下記のウインドウが出てきます。囲まれているところは現在の設定です。
Bobcat TRは次の3つの使い方があります。
1. Windows Media Playerで音源を再生するさいにBobcat TR経由でリアルタイムに効果を加えます
ちなみに96/24まで対応するということです。
2. WAV、MP3、WMAロスレスファイルを一括変換して、MP3、WMAロスレスとして効果を加えて保存できます。出力はWAVを選べませんが、WMAロスレスにしておけばあとでFLACとかWAVに変換しても問題ありません。
3. Windows Media Playerでリッピングするときにも効果を加えて音源を保存できます。
Bobcat TRには3つの出力オプションがあります。
1. Pure Bobcat (またはBasic Bobcat) - 基本的なプリセット
このとき5kHz以上の高域にわずかなリバーブを加え、超低域を少し増強するということです。
2. Smooth Bobcat - 古い録音や良くない録音の再生のためのプリセット
高域にリバーブを加えて3.5kHzあたりのレスポンスを下げて、600Hzあたりを増強します。さらにNo Screechという処理をしてヴォーカル帯域のきつさを抑えます。これは昔のモニタースピーカーの特性とか近すぎるマイク配置が必要以上に高域を強調して録音していたからということです。もともとBobcatはSplendarというBurwen氏が作ったマスタリングソフトウエアから派生したものということです。
3. No Bobcat - Bobcatのバイパスをして無効化します。
ちなみにバッチ処理した音源を再度BOBCATプラグインのあるWMPで再生すると、自動的にBOBCAT処理されたことを認識して自動的にNo Bobcatが選ばれて二重適用されることはないようです。
Pure BobcatとSmooth Bobcatの使い分けは音の好みというよりは普通に録音が良い時はPure Bobcatを使用し、古い録音や録音が良くないときはSmooth Bobcatで補正するということのようです。
*Bobcatの効果と音質
次に実際の音ですが、まずこちらのページでMP3での効果が試聴できます。
http://www.burwenbobcat.com/BBTR_DEMO.html
ここでははじめに効果適用済みのジャズ(バウエン氏が録音したもの)が再生され、次に効果を適用する前のものが再生されます(つまり「あり」->「なし」です)。はじめの解説部分で効果はわずか(Subtle)と自分で言っているように、効果は微妙です。ただたしかにあります。MP3では鮮度感が増していきいきとする感じがあるようです。
わたしは主にバッチ処理変換を使用していくつか手持ちのアルバムをBobcat変換して、元の音源と比較してみました。PCにおいてはWMPではないFoobarなどのプレーヤーを使用し、iBasso DX100などポータブルでも使ってみました。
良録音のとてもシャープな(ある意味きつめで鮮明な)録音だとPure Bobcatの効果が分かりやすいと思います。一言で言うと、解像感を減らさずに聴き疲れを減らす、という点です。
いわゆる「デジタル的な」ギラギラしたきつさが取れて聴き疲れがしなくなる一方で、音の鮮明度や解像感は変わりなく、機材が上質になったような気もします。
Pure Bobcatは変化が大きくはないので、逆に常用できるという気がしますね。Smooth bobcatは変わったのがかなり明白です。効果を確認してから適用した方が良いでしょう。
このほかには携帯のLGがこのライセンスに興味をしめしたので、Mobileバージョンというのを作ってLGのスマートフォンのKM900 Arenaなどに搭載しているようです。
ちなみにマークレビンソン氏はLGのオーディオアドバイザーを務めていたそうです。
* Burwen BobcatとDaniel Heartz、ハードとソフトのはざま
本記事を書くために、このバウエン氏のサイトをずっと読んでいたのですが、面白かったのはFAQのところの「真空管アンプを用意した方がよいですか?」という質問に、「やめておけ、それは歪みが大きいイコライザーみたいなものだ」、と答えている点です。60年もの経験を持つ回路設計の神様みたいな人がそう言い切って、いまではPCオーディオのソフトウエアを作っているというのがとっても意外です。バウエン氏は当然ながらたくさんの真空管アンプを作ってきています。
バウエン氏いわく、オーディオにおいてもっとも重要なものは周波数特性だそうで、そもそもオーディオシステムが不完全なものだからとしています。
http://www.burwenbobcat.com/Why_EQ.html
オーディオファイルはピュアリストアプローチ(接点は少なく、回路は最小などの考え方)に陥りがちだけれども、もっとイコライザーを使った方が良いと説いています。そのポリシーがこのBurwen Bobcat、特にTone Balancerにあらわれています。
バウエン氏というとMLASのLNP2で知られていますが、チェロのAudio Paletteにも関係してるようです。書いたようにバウエン氏は周波数特性に重きをおいてるので、手製のトーンコントロールを作っていて、それがチェロのAudio Paletteの原型となったようです。マークレビンソン氏はバウエン氏を師と仰いでいるのでその影響があるのでしょう。
つまりBobcat Tone Balancerはソフトウエア版のAudio Paletteみたいなものでしょう。そう考えると回路設計やってた人がソフトウエアやってる理由もわかるし、むしろ筋が通ってますね。
このBobcat TRでいくつかのアルバムをバウエン処理して、少し聴いているとより上質なハードで聴いているようにも思えてきます。もっと高級な機材ならここのきつめの硬いところはもっと滑らかなのに、という感じがソフトで実現されるという感覚でしょうか。
結局のところ、自分のポリシーを生かそうというのならば、それをハードでやろうがソフトでやろうが、同じことができれば良いということです。以前はハードウエアでしかできなかったけど、最新の技術によりソフトでやった方が効率が良いというのであれば合理的にこちらを使うということでしょうか。大事なのは実現手段よりもむしろなにをしたいか、ということで、昔はハードでやらねばならなかったことが今はソフトウエアでより効果的にできるならそれを使おうという柔軟さには敬服します。
もともとこのトーンコントロールとリバーブのアイディアというのは、さきに書いたように鳴りの良いホールの研究からはじまって、マイクを使ってアナログ的に行って研究していたようですが、それをPentium1時代にDSPを使用してソフトウエアで実現できるようになり、ついにPentium4の時代になってプロセッサ(PC)だけでそれが可能となったということです。
それをもともとはバウエン氏はレコーディングのさいに使用してCDの音質を向上するために応用しようと開発して、Audio Splendarというレコーディングのシステムにしたようですが、それをマークレビンソン氏が聴いていたく気に入ったので、マークレビンソン氏の提案でその再生専用バージョンをオーディオ再生のためにつくろうじゃないかということで出来たのがこのBobcatというソフトウエアで、このBobcatというネーミングもマークレビンソン氏のアイディアのようです。
こちらはマークレビンソン氏のBobcatへの賛辞ですが、いかなる価格のCDプレーヤーよりも優れた向上をもたらすと書いています。
Burwen Bobcat elevates the quality of CD, and MP3 to be equal to or better than analog and SACD. No CD player at any price can come close to making this improvement. - Mark Levinson
それでマークレビンソン氏のDaniel HeartzのシステムははじめからCDプレーヤーを持たないラインナップとして開発されたのではないでしょうか?
Daniel HeartzのシステムがもともとCDプレーヤーを用意せずに、はじめからPCオーディオありきで用意されているのは、PCにこのバウエンのソフトウエアを搭載して、USB DACと組み合わせるという目論見があったものではないかと思います。
こちらのPositive-feedbackの記事にこのBobcatとDaniel HeatzのDACの記載がありました。
http://www.positive-feedback.com/Issue28/burwen.htm
ここに書かれているのはマークレビンソン氏のDaniel HeartzのUSB DAC Model 1とBurwen Bobcatの組み合わせのレビューです。ちなみにこの記事は2006年の記事で、探してみるとBurwen Bobcatは2005年のドイツハイエンドショウでデビューしたようです。
これは直接バウエン氏に聞いてみたのですが、Bobcatはその当時はDaniel HeartzのUSB DAC Model 1と組み合わせることが前提だったが、いまでは特にDACを特定しないで使えるように改修しているということです。2005年の当時はDAC Model 1が接続された状態でのみBobcatが動作するようにプロテクトされていたようです。
しかし2005年にすでにPCのソフトウエアとUSB DACの組み合わせをCDプレーヤーに代わるスタンダードにしたのはマークレビンソン氏はなかなか先見の明があります。本格的にUSB DACというものがハイエンドでも使えるという一般に認知されたのは2009年のQB-9ですからね。そもそもPCオーディオっていうもの自体が世間に広まったのは2007-8年のLINNのKlimax DSあたりからのように思いますが、Daniel Heartzははるかに先を行っていたようです。というか、先すぎて発表当時は受け入れられなかったことでしょう。
マークレビンソン氏のこの辺のビジョンの豊かさというのは、やはりスティーブジョブズを想起します。この場合はバウエン氏がウォズに当たるでしょう。先見の明のあるビジョニストと優秀なエンジニアのどちらかだけではだめですが、二人が結び付くと大きな力となります。もちろんマークレビンソン氏にはジョンカールとかトムコランジェロもいて、ジョブズにはアンディーハーツフェルドとかピルアトキンソンがいました。そうして偉大なビジョニストとそれに集うエンジニアたちによってAppleやMLAS/Celloのような優れた存在が創り上げられます。しかしながら両者ともそこから追われてしまう運命まで符合するというのは、いささか皮肉なことではあります。
* そしていま
はじめのスコット・ウィルキンソンのインタビューに戻ると、マークレビンソン氏は「iTunesにマークレビンソンのライブラリを近々リリースする」とも語っています。
以前マークレビンソン氏は中国のABCという良録音レーベルにこのBobcatを用いてマスタリングしたLPをラインナップしています。つまりデジタル処理(Bobcat処理)したアナログレコードです。
http://www.burwenbobcat.com/ABCRecords.html
上で言うiTunesライブラリ、というのはおそらくはBobcat処理したマスターを使ったMastered for iTunesバージョンを計画しているのではないかと思います。
iTunesとマークレビンソンの名の組み合わせに違和感を覚える人もいるでしょうが、いまでも積極的に動いている人の証ではありますね。
マークレビンソン氏の名を聞く機会が少し増えて来たのはなにか仕掛けようとしているのでしょうか。そのなにかが上のiTunesライブラリなのか、それともLNP2とバウエンモジュールに代わる新しい伝説になるものか、それはわかりません。
しかしマークレビンソン氏にしろ、ディックバウエン氏にしろ、かなりの歳の生ける伝説という感じの人ですが、「昔は良かった、パソコンでオーディオなんかダメだ」と言わないで、PCオーディオという新しい可能性にまっこうから取り組んで挑戦し、それを自分のものとして進んでいくという情熱には拍手を送りたくなります。
しかしそのLNP2を創ったのと同じ人たちの話です。ここで言うマークレビンソンはハーマンのブランドではなく、マークレビンソン氏その人です。マークレビンソン氏の名を高めたのはこのLNP2というプリアンプで、特にバウエンモジュールが搭載された個体はひときわ人気があります。ここでいうディックバウエン氏(リチャード・S・バウエン)はそのバウエンモジュールに携わったバウエン氏です。
そしてこの記事はビンテージオーディオの話ではなく、PCオーディオの話です。つまりマークレビンソンとディックバウエンのいまのお話です。
この前マークレビンソン氏は伝説の中や過去の人ではなく、いまも精力的に活動している人だと書きました。Daniel Heartzというスイスのブランドを立ち上げています。ラインナップはいわゆるハイエンドオーディオでスピーカーからアンプ、DACまでそろっていますが、CD/SACDプレーヤーが用意されてないという点に目を留めておいてください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/238516292.html
上に引用したMonoAndStereo誌の記事の中でマークレビンソン氏が意味ありげに今後の展開を見ていてほしいと言っていましたのが気になっていましたが、最近レビュアーのスコット・ウィルキンソンの長いインタビューにマークレビンソン氏が答えている動画を見つけました。
http://www.computeraudiophile.com/content/Mark-Levinson-Video-Interview
http://www.computeraudiophile.com/content/Mark-Levinson-PCM
このインタビューの中で、マークレビンソン氏が「PCMの音は粗いが向上させる方法はある」というようなことを語ったのに対して、ある人がこれのことではないかとポストしていたのが"Burwen Bobcat"というものです。この名前にちょっと目が留まりました。
バウエンといえばあのLNP2のバウエンモジュールですが、いまでもマークレビンソン氏とバウエン氏が親密にやっているんだという点と、バウエンというとアンプのモジュールをつくるハードの人という感じですが、ここで書かれているのはソフトウエアであるという点に興味を持って調べてみることにしました。
まずBurwen Bobcat(バウエン・ボブキャット)とはなにかというところから説明していきます。
*Burwen Bobcatとは
Burwen Bobcatはバウエン氏が開発したPCMの音質を向上させるソフトウエアと技術の総称です。こちらにホームページがあります。
http://www.burwenbobcat.com/BBTB_Home.html
ちなみにBOBCAT(山猫)というのはBURWEN OPERATING SYSTEM, BEST COMPUTER AUDIO TECHNOLOGYの略でマークレビンソン氏による命名です(後述)。
2005年のDaniel HeartzのDACとのバンドル版をはじまりに、現在はTR(Trueの意)とTone Balancerの二種類があります。TRは2011年にリリースされた再生に特化したもので設定がプリセットされています。Tone Balancerはエクセルシートによるトーンコントローラを搭載したものです。TRは$105、Tone BalancerはTRを含んで$465です。
私はTRを一ライセンス買って試してみました。ここからはコア(エンジン)部分ともなるBobcat TRの説明になります。
Bobcat TRはWindows Media Playerのプラグインです。DSPプラグインの一種というとわかりやすいかもしれません。なにをするかというとBobcat TRは音質を改善させる目的で高域にリバーブを適用し、低域にトーンコントロールを適用します。ただしリバーブ(reverberation)といっても人工的なリバーブはBurwen氏も好きではなく、リバーブといってもエコーのように聞こえるものではなく、"Air"・空気感みたいなものだと言ってます。他のソフトのエコーのようなリバーブ・エフェクトはトランジェントを甘くしてしまうが、Bobcatは逆にトランジェントを鮮明にして明瞭感を増すということです。
これは5kHzより上の高域にポイントを絞るというところがミソのようで、そこが自然の反射音やいわゆるリバーブエフェクトとは異なるそうです。もともとは自分で録音に使っていた鳴りの良いホールの自然な反響の研究からはじまったけれども、結果的には自然界にはない反響の仕方を高域に加えるという方法で音質向上が得られることが分かったということのようです。また実際のホールの反響よりも10倍くらい複雑な波と反射の要素を計算しているとのこと。
この技術はいくつかの国で特許取得しているようです。調べてみたところ米国特許の8,041,045で"Unnatural Revervation"(自然には存在しないリバーブの適用)というタイトルでファイルされています。出願したのは2005年10月です。このソフトウエアの発表時ですね。
従来技術では高域が不完全(imperfection)であり、いらいらする刺激を与えてしまうが、高域を減衰させると細部が失われてしまうのが問題点であるとしています。このUnnatural Revervationの仕組みとしてはFIFOバッファにサンプルを入れて、ある係数に基づいて計算を加えていくというもの。先入れ先だしのFIFO(First In First Out)バッファに入れるというところがディレイというかリバーブのシミュレートなんでしょう。
*Bobcatの購入と使用について
購入はこちらのサイトで行い、ライセンスキーはあとで別メールできます。
http://www.burwenbobcat.com/BBTB_Download.html
立ち上げ方はWindows Media Playerのメニューがデフォルトではオフになっているので、これをオンにしてメニューをまず表示させます。つぎにメニューからプラグインの設定で
Burwen Bobcat TRを有効化します。すると下記のウインドウが出てきます。囲まれているところは現在の設定です。
Bobcat TRは次の3つの使い方があります。
1. Windows Media Playerで音源を再生するさいにBobcat TR経由でリアルタイムに効果を加えます
ちなみに96/24まで対応するということです。
2. WAV、MP3、WMAロスレスファイルを一括変換して、MP3、WMAロスレスとして効果を加えて保存できます。出力はWAVを選べませんが、WMAロスレスにしておけばあとでFLACとかWAVに変換しても問題ありません。
3. Windows Media Playerでリッピングするときにも効果を加えて音源を保存できます。
Bobcat TRには3つの出力オプションがあります。
1. Pure Bobcat (またはBasic Bobcat) - 基本的なプリセット
このとき5kHz以上の高域にわずかなリバーブを加え、超低域を少し増強するということです。
2. Smooth Bobcat - 古い録音や良くない録音の再生のためのプリセット
高域にリバーブを加えて3.5kHzあたりのレスポンスを下げて、600Hzあたりを増強します。さらにNo Screechという処理をしてヴォーカル帯域のきつさを抑えます。これは昔のモニタースピーカーの特性とか近すぎるマイク配置が必要以上に高域を強調して録音していたからということです。もともとBobcatはSplendarというBurwen氏が作ったマスタリングソフトウエアから派生したものということです。
3. No Bobcat - Bobcatのバイパスをして無効化します。
ちなみにバッチ処理した音源を再度BOBCATプラグインのあるWMPで再生すると、自動的にBOBCAT処理されたことを認識して自動的にNo Bobcatが選ばれて二重適用されることはないようです。
Pure BobcatとSmooth Bobcatの使い分けは音の好みというよりは普通に録音が良い時はPure Bobcatを使用し、古い録音や録音が良くないときはSmooth Bobcatで補正するということのようです。
*Bobcatの効果と音質
次に実際の音ですが、まずこちらのページでMP3での効果が試聴できます。
http://www.burwenbobcat.com/BBTR_DEMO.html
ここでははじめに効果適用済みのジャズ(バウエン氏が録音したもの)が再生され、次に効果を適用する前のものが再生されます(つまり「あり」->「なし」です)。はじめの解説部分で効果はわずか(Subtle)と自分で言っているように、効果は微妙です。ただたしかにあります。MP3では鮮度感が増していきいきとする感じがあるようです。
わたしは主にバッチ処理変換を使用していくつか手持ちのアルバムをBobcat変換して、元の音源と比較してみました。PCにおいてはWMPではないFoobarなどのプレーヤーを使用し、iBasso DX100などポータブルでも使ってみました。
良録音のとてもシャープな(ある意味きつめで鮮明な)録音だとPure Bobcatの効果が分かりやすいと思います。一言で言うと、解像感を減らさずに聴き疲れを減らす、という点です。
いわゆる「デジタル的な」ギラギラしたきつさが取れて聴き疲れがしなくなる一方で、音の鮮明度や解像感は変わりなく、機材が上質になったような気もします。
Pure Bobcatは変化が大きくはないので、逆に常用できるという気がしますね。Smooth bobcatは変わったのがかなり明白です。効果を確認してから適用した方が良いでしょう。
このほかには携帯のLGがこのライセンスに興味をしめしたので、Mobileバージョンというのを作ってLGのスマートフォンのKM900 Arenaなどに搭載しているようです。
ちなみにマークレビンソン氏はLGのオーディオアドバイザーを務めていたそうです。
* Burwen BobcatとDaniel Heartz、ハードとソフトのはざま
本記事を書くために、このバウエン氏のサイトをずっと読んでいたのですが、面白かったのはFAQのところの「真空管アンプを用意した方がよいですか?」という質問に、「やめておけ、それは歪みが大きいイコライザーみたいなものだ」、と答えている点です。60年もの経験を持つ回路設計の神様みたいな人がそう言い切って、いまではPCオーディオのソフトウエアを作っているというのがとっても意外です。バウエン氏は当然ながらたくさんの真空管アンプを作ってきています。
バウエン氏いわく、オーディオにおいてもっとも重要なものは周波数特性だそうで、そもそもオーディオシステムが不完全なものだからとしています。
http://www.burwenbobcat.com/Why_EQ.html
オーディオファイルはピュアリストアプローチ(接点は少なく、回路は最小などの考え方)に陥りがちだけれども、もっとイコライザーを使った方が良いと説いています。そのポリシーがこのBurwen Bobcat、特にTone Balancerにあらわれています。
バウエン氏というとMLASのLNP2で知られていますが、チェロのAudio Paletteにも関係してるようです。書いたようにバウエン氏は周波数特性に重きをおいてるので、手製のトーンコントロールを作っていて、それがチェロのAudio Paletteの原型となったようです。マークレビンソン氏はバウエン氏を師と仰いでいるのでその影響があるのでしょう。
つまりBobcat Tone Balancerはソフトウエア版のAudio Paletteみたいなものでしょう。そう考えると回路設計やってた人がソフトウエアやってる理由もわかるし、むしろ筋が通ってますね。
このBobcat TRでいくつかのアルバムをバウエン処理して、少し聴いているとより上質なハードで聴いているようにも思えてきます。もっと高級な機材ならここのきつめの硬いところはもっと滑らかなのに、という感じがソフトで実現されるという感覚でしょうか。
結局のところ、自分のポリシーを生かそうというのならば、それをハードでやろうがソフトでやろうが、同じことができれば良いということです。以前はハードウエアでしかできなかったけど、最新の技術によりソフトでやった方が効率が良いというのであれば合理的にこちらを使うということでしょうか。大事なのは実現手段よりもむしろなにをしたいか、ということで、昔はハードでやらねばならなかったことが今はソフトウエアでより効果的にできるならそれを使おうという柔軟さには敬服します。
もともとこのトーンコントロールとリバーブのアイディアというのは、さきに書いたように鳴りの良いホールの研究からはじまって、マイクを使ってアナログ的に行って研究していたようですが、それをPentium1時代にDSPを使用してソフトウエアで実現できるようになり、ついにPentium4の時代になってプロセッサ(PC)だけでそれが可能となったということです。
それをもともとはバウエン氏はレコーディングのさいに使用してCDの音質を向上するために応用しようと開発して、Audio Splendarというレコーディングのシステムにしたようですが、それをマークレビンソン氏が聴いていたく気に入ったので、マークレビンソン氏の提案でその再生専用バージョンをオーディオ再生のためにつくろうじゃないかということで出来たのがこのBobcatというソフトウエアで、このBobcatというネーミングもマークレビンソン氏のアイディアのようです。
こちらはマークレビンソン氏のBobcatへの賛辞ですが、いかなる価格のCDプレーヤーよりも優れた向上をもたらすと書いています。
Burwen Bobcat elevates the quality of CD, and MP3 to be equal to or better than analog and SACD. No CD player at any price can come close to making this improvement. - Mark Levinson
それでマークレビンソン氏のDaniel HeartzのシステムははじめからCDプレーヤーを持たないラインナップとして開発されたのではないでしょうか?
Daniel HeartzのシステムがもともとCDプレーヤーを用意せずに、はじめからPCオーディオありきで用意されているのは、PCにこのバウエンのソフトウエアを搭載して、USB DACと組み合わせるという目論見があったものではないかと思います。
こちらのPositive-feedbackの記事にこのBobcatとDaniel HeatzのDACの記載がありました。
http://www.positive-feedback.com/Issue28/burwen.htm
ここに書かれているのはマークレビンソン氏のDaniel HeartzのUSB DAC Model 1とBurwen Bobcatの組み合わせのレビューです。ちなみにこの記事は2006年の記事で、探してみるとBurwen Bobcatは2005年のドイツハイエンドショウでデビューしたようです。
これは直接バウエン氏に聞いてみたのですが、Bobcatはその当時はDaniel HeartzのUSB DAC Model 1と組み合わせることが前提だったが、いまでは特にDACを特定しないで使えるように改修しているということです。2005年の当時はDAC Model 1が接続された状態でのみBobcatが動作するようにプロテクトされていたようです。
しかし2005年にすでにPCのソフトウエアとUSB DACの組み合わせをCDプレーヤーに代わるスタンダードにしたのはマークレビンソン氏はなかなか先見の明があります。本格的にUSB DACというものがハイエンドでも使えるという一般に認知されたのは2009年のQB-9ですからね。そもそもPCオーディオっていうもの自体が世間に広まったのは2007-8年のLINNのKlimax DSあたりからのように思いますが、Daniel Heartzははるかに先を行っていたようです。というか、先すぎて発表当時は受け入れられなかったことでしょう。
マークレビンソン氏のこの辺のビジョンの豊かさというのは、やはりスティーブジョブズを想起します。この場合はバウエン氏がウォズに当たるでしょう。先見の明のあるビジョニストと優秀なエンジニアのどちらかだけではだめですが、二人が結び付くと大きな力となります。もちろんマークレビンソン氏にはジョンカールとかトムコランジェロもいて、ジョブズにはアンディーハーツフェルドとかピルアトキンソンがいました。そうして偉大なビジョニストとそれに集うエンジニアたちによってAppleやMLAS/Celloのような優れた存在が創り上げられます。しかしながら両者ともそこから追われてしまう運命まで符合するというのは、いささか皮肉なことではあります。
* そしていま
はじめのスコット・ウィルキンソンのインタビューに戻ると、マークレビンソン氏は「iTunesにマークレビンソンのライブラリを近々リリースする」とも語っています。
以前マークレビンソン氏は中国のABCという良録音レーベルにこのBobcatを用いてマスタリングしたLPをラインナップしています。つまりデジタル処理(Bobcat処理)したアナログレコードです。
http://www.burwenbobcat.com/ABCRecords.html
上で言うiTunesライブラリ、というのはおそらくはBobcat処理したマスターを使ったMastered for iTunesバージョンを計画しているのではないかと思います。
iTunesとマークレビンソンの名の組み合わせに違和感を覚える人もいるでしょうが、いまでも積極的に動いている人の証ではありますね。
マークレビンソン氏の名を聞く機会が少し増えて来たのはなにか仕掛けようとしているのでしょうか。そのなにかが上のiTunesライブラリなのか、それともLNP2とバウエンモジュールに代わる新しい伝説になるものか、それはわかりません。
しかしマークレビンソン氏にしろ、ディックバウエン氏にしろ、かなりの歳の生ける伝説という感じの人ですが、「昔は良かった、パソコンでオーディオなんかダメだ」と言わないで、PCオーディオという新しい可能性にまっこうから取り組んで挑戦し、それを自分のものとして進んでいくという情熱には拍手を送りたくなります。
2012年01月26日
オーディオファイル向けミュージックプレーヤー(18) - Sonata
Computer Audiophileの記事でSonataというミュージックプレーヤーソフトの紹介が載っています。
Computer Audiophile - Sonata Music Server Review
ひとことで言うとSonataって以前紹介したJRiver Media Center(JRMC)にDigibitという会社がカスタマイズ再販したもののようです。以前うちで書いたJRiver Media Centerの紹介はこちらです。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/164063891.html
詳細はわかりませんが、後述の特徴からHTPCのようなオーディオPCのフロントエンドとして作られたと思います。これを搭載したオーディオPCがあるのかもしれません。下記Digibitのホームページに紹介動画がのっています。
http://www.sonataserver.com/
ローカルにDACを接続してWASAPIやASIOのサポートをし、ネットワークではDLNAのレンダラー、サーバー、コントロールポイントのなににでもなれるというなんでもありの機能はJRiver Media Centerに準ずるようです。SonataとJRiver Media Centerの違いは上記記事の最後のリンク集にまとめられたPDFがありますが、主な特徴はタッチパネル・iPhoneアプリのリモートなど簡単に使えるようにしたということで、あえて詳細画面が見えないように「らくらくモード」みたいな画面をかませているようです。設定等もあらかじめ用意されてるようです。
またリッピングソフトをdBpowerampのOEM版に交換しています。メタデータ編集・管理も売りの一つで細かくデータ項目を持っています。ここで面白いのは「クラシックファンのためのソフト」を標榜していることで、どういうことかというとこのSonataのための専用のCDDBを持っていてクラシックを中心に40000タイトルくらいの詳細なメタデータが登録されているということです。メタデータもクラシック専用と言っていいほど多岐にわたってます。
具体的には年代として古楽、ルネッサンス、バロック、ロマン派、近代、現代などなど、スタイルとしてバレエ、室内楽、宗教曲、コンチェルト、オペラなどなど他多数、楽器はもちろんたっぷり、作曲家とソリストと指揮者はそれぞれ名前と苗字が別の項目に別れているというこりよう。「クラシックファンはこれを待っていた」とキャッチがついてます。iTunesでクラシックをリッピングするとよくタイトルに曲名とごっちゃにオケや作曲家がいっしょにされてますが、そういう悲しさもないでしょうね。こういうところにこるのも一つの道かもしれません。
価格は$130で、JRMCのカスタマイズなので対応はWindowsのみです。
こちらにデモ版のダウンロードできるページがあります。またJRMCとの違いやマニュアルがあります。
http://www.sonataserver.com/index.php/en/download/software-trial.html
*すでにdBpowerampやJRMCをインストールしている方は注意ください。この場合はまずマニュアルを読んでください。
Computer Audiophile - Sonata Music Server Review
ひとことで言うとSonataって以前紹介したJRiver Media Center(JRMC)にDigibitという会社がカスタマイズ再販したもののようです。以前うちで書いたJRiver Media Centerの紹介はこちらです。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/164063891.html
詳細はわかりませんが、後述の特徴からHTPCのようなオーディオPCのフロントエンドとして作られたと思います。これを搭載したオーディオPCがあるのかもしれません。下記Digibitのホームページに紹介動画がのっています。
http://www.sonataserver.com/
ローカルにDACを接続してWASAPIやASIOのサポートをし、ネットワークではDLNAのレンダラー、サーバー、コントロールポイントのなににでもなれるというなんでもありの機能はJRiver Media Centerに準ずるようです。SonataとJRiver Media Centerの違いは上記記事の最後のリンク集にまとめられたPDFがありますが、主な特徴はタッチパネル・iPhoneアプリのリモートなど簡単に使えるようにしたということで、あえて詳細画面が見えないように「らくらくモード」みたいな画面をかませているようです。設定等もあらかじめ用意されてるようです。
またリッピングソフトをdBpowerampのOEM版に交換しています。メタデータ編集・管理も売りの一つで細かくデータ項目を持っています。ここで面白いのは「クラシックファンのためのソフト」を標榜していることで、どういうことかというとこのSonataのための専用のCDDBを持っていてクラシックを中心に40000タイトルくらいの詳細なメタデータが登録されているということです。メタデータもクラシック専用と言っていいほど多岐にわたってます。
具体的には年代として古楽、ルネッサンス、バロック、ロマン派、近代、現代などなど、スタイルとしてバレエ、室内楽、宗教曲、コンチェルト、オペラなどなど他多数、楽器はもちろんたっぷり、作曲家とソリストと指揮者はそれぞれ名前と苗字が別の項目に別れているというこりよう。「クラシックファンはこれを待っていた」とキャッチがついてます。iTunesでクラシックをリッピングするとよくタイトルに曲名とごっちゃにオケや作曲家がいっしょにされてますが、そういう悲しさもないでしょうね。こういうところにこるのも一つの道かもしれません。
価格は$130で、JRMCのカスタマイズなので対応はWindowsのみです。
こちらにデモ版のダウンロードできるページがあります。またJRMCとの違いやマニュアルがあります。
http://www.sonataserver.com/index.php/en/download/software-trial.html
*すでにdBpowerampやJRMCをインストールしている方は注意ください。この場合はまずマニュアルを読んでください。
2011年12月20日
Fidelia 1.2.0b1で64bit化とヘッドフォンDSP追加
Mac用のプレーヤーソフトであるFideliaの最新アップデート(1.2.0)があるようで、現在ベータ版がアップされています。
http://www.audiofile-engineering.com/support/appcast.php?titleID=15&testing=1&style=html
ポイントは次のような機能追加です。
1. 64bit化
Audirvanaのように内部64bit演算(倍精度演算)処理を行うようになりました。
2. ヘッドフォン用のDSP追加
これはヘッドフォン用に最適化されたDSP(信号)処理を行うアドインで、別料金のオプションとなります。
スピーカー音場のシミュレーション、クロスフィード、イコライザー(高低の2バンドのみ)が使用できます。
スピーカー音場のシミュレーションはよくわかりませんが、スピーカーの振りみたいな開度を指定可能のようです。クロスフィードは以前からヘッドフォンアンプを使っている方はおなじみですが、ヘッドフォンではLRチャンネルの音が完全に分かれてしまいますので、左右の音を混ぜてスピーカーで聴くように自然な音にするという機能です。だいたい反対側チャンネルの音にディレイを加えて出力するようです。これは好き嫌いが分かれます。
以前の海外製のヘッドフォンアンプ・ポータブルアンプなどでは標準機能的にありましたが、最近はクロスフィードがないものも多いですからソフトウエア側にこうした機能があるのも良いかもしれません。
3. メモリープレイ
これはAudirvanaのようなアウトプットフォーマットでメモリーに展開するのではなく、元の曲データファイルをメモリー上に置いておくようです。
4. そのほか
アルバムアートワーク表示とメタデータ(曲情報)の編集が可能となりました。
なおベータ版のインストールに際してはバックアップを取っておいた方が良いとのことですので上記ホームページをご覧ください。
http://www.audiofile-engineering.com/support/appcast.php?titleID=15&testing=1&style=html
ポイントは次のような機能追加です。
1. 64bit化
Audirvanaのように内部64bit演算(倍精度演算)処理を行うようになりました。
2. ヘッドフォン用のDSP追加
これはヘッドフォン用に最適化されたDSP(信号)処理を行うアドインで、別料金のオプションとなります。
スピーカー音場のシミュレーション、クロスフィード、イコライザー(高低の2バンドのみ)が使用できます。
スピーカー音場のシミュレーションはよくわかりませんが、スピーカーの振りみたいな開度を指定可能のようです。クロスフィードは以前からヘッドフォンアンプを使っている方はおなじみですが、ヘッドフォンではLRチャンネルの音が完全に分かれてしまいますので、左右の音を混ぜてスピーカーで聴くように自然な音にするという機能です。だいたい反対側チャンネルの音にディレイを加えて出力するようです。これは好き嫌いが分かれます。
以前の海外製のヘッドフォンアンプ・ポータブルアンプなどでは標準機能的にありましたが、最近はクロスフィードがないものも多いですからソフトウエア側にこうした機能があるのも良いかもしれません。
3. メモリープレイ
これはAudirvanaのようなアウトプットフォーマットでメモリーに展開するのではなく、元の曲データファイルをメモリー上に置いておくようです。
4. そのほか
アルバムアートワーク表示とメタデータ(曲情報)の編集が可能となりました。
なおベータ版のインストールに際してはバックアップを取っておいた方が良いとのことですので上記ホームページをご覧ください。
2011年12月13日
iTunesのリッピング問題
iTunes10.5.2がリリースされます。大きなところはiTunes Matchの改良ですが、オーディオ的にはiTunesのリッピング問題のFixが入るようです。
http://www.macrumors.com/2011/12/12/apple-releases-itunes-10-5-2/
これはある特定のCDをリッピングしたときにdistortion(歪み)が出ると言うものです。
これはこちらのApple Forumに先月ポストされた問題に対応したものと思われます。
https://discussions.apple.com/thread/3472347?start=0&tstart=0
どういうCDかというとダイナミックレンジを広げるために高周波数をブーストしてエンコードされた(Pre-emphasis)もので、主にクラシックなどが該当するようです。多くはないけど例えばBIS, BBC Music Magazine, Classical FM Magazineなどで、日本製でもけっこうあるとのこと。XLDとかMAXなどでは問題ないのでiTunesの問題ですね。
これはおそらく10.5固有の問題で、以前のものでは起きないようです。またすごい歪みになるようなのですぐに分かるものだと思います。
10.5でCDをリッピングしてすごい歪みが出た人はこれで修正されると思います。
なおドライブの読み取りではなく、ソフトの問題ですので念のため。
*初出ではHDCDみたいなもの?と書きましたが、Pre-emphasisはCDの初期の頃に行われていたノイズリダクション(ドルビーとかレコードのRIAAカーブみたいな感じ)の技術のようです。
ただ多くは1980年代後半になくなったとありますが、おそらく今回の件は上の例を見ると音楽雑誌の付録で古い音源がプレスされてたんではないでしょうか。
なお下記をみるとiTunesでは対応がされてるとありますのでやはり10.5でなんらかの問題があったように思います。
http://wiki.hydrogenaudio.org/index.php?title=Pre-emphasis
おそらくかなりレアケースですね。
http://www.macrumors.com/2011/12/12/apple-releases-itunes-10-5-2/
これはある特定のCDをリッピングしたときにdistortion(歪み)が出ると言うものです。
これはこちらのApple Forumに先月ポストされた問題に対応したものと思われます。
https://discussions.apple.com/thread/3472347?start=0&tstart=0
どういうCDかというとダイナミックレンジを広げるために高周波数をブーストしてエンコードされた(Pre-emphasis)もので、主にクラシックなどが該当するようです。多くはないけど例えばBIS, BBC Music Magazine, Classical FM Magazineなどで、日本製でもけっこうあるとのこと。XLDとかMAXなどでは問題ないのでiTunesの問題ですね。
これはおそらく10.5固有の問題で、以前のものでは起きないようです。またすごい歪みになるようなのですぐに分かるものだと思います。
10.5でCDをリッピングしてすごい歪みが出た人はこれで修正されると思います。
なおドライブの読み取りではなく、ソフトの問題ですので念のため。
*初出ではHDCDみたいなもの?と書きましたが、Pre-emphasisはCDの初期の頃に行われていたノイズリダクション(ドルビーとかレコードのRIAAカーブみたいな感じ)の技術のようです。
ただ多くは1980年代後半になくなったとありますが、おそらく今回の件は上の例を見ると音楽雑誌の付録で古い音源がプレスされてたんではないでしょうか。
なお下記をみるとiTunesでは対応がされてるとありますのでやはり10.5でなんらかの問題があったように思います。
http://wiki.hydrogenaudio.org/index.php?title=Pre-emphasis
おそらくかなりレアケースですね。
2011年12月02日
32bit 整数型と32bit 浮動小数点型
32bit再生について前に記事を書きましたが、これは音源が「32bit integer(整数)」であることが前提の話です。DAWなどでは「32bit float(浮動小数点形式)」が使われているようなので補足しておきます。
24bitというのは整数のタイプしかないので明記する必要はありませんが、32bit幅のデータには整数型(int/integer)と浮動小数点型(float)があります。(32bitの浮動小数点型は単精度、64bitの浮動小数点型は倍精度といいます。)
前のCoreAudio記事にも書きましたが、32bit浮動小数点形式のデータの表現形式は24bitが数値を表現するのに使われていて、8bitは指数表現するために使われていますから、中身は24bit整数と同じになります。だから192kHz,32bit floatは192kHz,24bit intと実質的に同じです。再生しても24bit精度になりますね。
24bit精度と言っているのはつまり24bitというのは最小00000000000000000000から最大111111111111111111111111までですが、これを10進数に直すと0から16777215までになります。言い換えるとこれは16777216通りの数を表現できると言うことです。32bit floatでも数値を表現できる仮数部は24bitですから、実際に表現できる数はやはり16777216通りです。ですから表現できる幅は同じです。
これが32bit整数ではさらに16777216 x 2^8と大きく増えるわけですが、オーディオですからこのビット幅はダイナミックレンジに反映されます。ダイナミックレンジはあくまで聴覚に関するものなので対数的に増加してdBで表現します。(省略しますが)これは計算式があって1bit増加するごとに6dB増えます。つまりCD品質の16bitでは16x6=96dBがダイナミックレンジになり、ハイレゾの24bitでは24x6で144dB、32bitなら32x6で192dBとなるでしょう。うがった言い方をすれば24bitから32bitへの変化(144:192)は16bitから24bitへの変化(96:144)ほどはないともいえるかもしれません。
ちなみにビット幅のことを量子化ビット数とも書きますが、量子化というのはあくまでサンプリング時点の話ですから、中身が32bit floatである場合には量子化32bitではなく量子化24bitの32bit浮動小数点形式というべきでしょうね。ですから32bit音源データの場合はユーザーが迷わないように32bit intか32bit floatかを明記することが必要でしょう。
なぜDAWなどでは32bit floatを使うかと言うと、なんらかの計算をするときは整数ではなく小数点形式が必要なので、もとの音源のデータが整数でも小数点形式に変換しますが、これをマスタリングのプロジェクトとして中間形式で保存しておくためです。そして最終成果物である音源にするときはまた整数にするわけです。それはDAC(あるいはCDプレーヤー)が整数データを音源として必要だからです。
DACの32bitというのはあくまで32bit整数(いわゆるnative format)ですから、32bit DACで32bit再生するという場合には32bit整数での音源が必要と言うことになります。その上で先の記事に書いた"32bit perfect"の経路の話になるということです。
24bitというのは整数のタイプしかないので明記する必要はありませんが、32bit幅のデータには整数型(int/integer)と浮動小数点型(float)があります。(32bitの浮動小数点型は単精度、64bitの浮動小数点型は倍精度といいます。)
前のCoreAudio記事にも書きましたが、32bit浮動小数点形式のデータの表現形式は24bitが数値を表現するのに使われていて、8bitは指数表現するために使われていますから、中身は24bit整数と同じになります。だから192kHz,32bit floatは192kHz,24bit intと実質的に同じです。再生しても24bit精度になりますね。
24bit精度と言っているのはつまり24bitというのは最小00000000000000000000から最大111111111111111111111111までですが、これを10進数に直すと0から16777215までになります。言い換えるとこれは16777216通りの数を表現できると言うことです。32bit floatでも数値を表現できる仮数部は24bitですから、実際に表現できる数はやはり16777216通りです。ですから表現できる幅は同じです。
これが32bit整数ではさらに16777216 x 2^8と大きく増えるわけですが、オーディオですからこのビット幅はダイナミックレンジに反映されます。ダイナミックレンジはあくまで聴覚に関するものなので対数的に増加してdBで表現します。(省略しますが)これは計算式があって1bit増加するごとに6dB増えます。つまりCD品質の16bitでは16x6=96dBがダイナミックレンジになり、ハイレゾの24bitでは24x6で144dB、32bitなら32x6で192dBとなるでしょう。うがった言い方をすれば24bitから32bitへの変化(144:192)は16bitから24bitへの変化(96:144)ほどはないともいえるかもしれません。
ちなみにビット幅のことを量子化ビット数とも書きますが、量子化というのはあくまでサンプリング時点の話ですから、中身が32bit floatである場合には量子化32bitではなく量子化24bitの32bit浮動小数点形式というべきでしょうね。ですから32bit音源データの場合はユーザーが迷わないように32bit intか32bit floatかを明記することが必要でしょう。
なぜDAWなどでは32bit floatを使うかと言うと、なんらかの計算をするときは整数ではなく小数点形式が必要なので、もとの音源のデータが整数でも小数点形式に変換しますが、これをマスタリングのプロジェクトとして中間形式で保存しておくためです。そして最終成果物である音源にするときはまた整数にするわけです。それはDAC(あるいはCDプレーヤー)が整数データを音源として必要だからです。
DACの32bitというのはあくまで32bit整数(いわゆるnative format)ですから、32bit DACで32bit再生するという場合には32bit整数での音源が必要と言うことになります。その上で先の記事に書いた"32bit perfect"の経路の話になるということです。
2011年11月08日
32bit音源の再生というテーマ
インターナショナルオーディオショウのレポートのところで書いた32bit音源の再生問題ですが、インテジャーモードの大御所であるAudirvanaの作者Damienさんにメールして聞いてみたところ、やはり私の理解で間違いないということです。つまりインテジャーモードが使えなければ32bitは8bit欠けて24bitになってしまうと言うことです。
この場合MacOS 10.6でAudirvanaを用いてインテジャーモードが使えれば32bit音源を問題なく再生できるとのこと。
McIntoshのデモの例で言うと、DACプリのC50はESSの32bit DACですからドライバーが32bit対応してあれば受け手は問題ありません。ドライバーが認識されたらAudioMidiに「32bit (整数)」と表示が出るでしょう。32bitは小数点と整数がありますのでここは整数と明記されるライオンのAudioMidiが意味を持ちます。
ここでAudioMidiで32bit整数を指定すれば32bit長の「箱」でDACに送られるのでC50の表示では192kHz 32bitと表示されると思います。つまり外からは一見問題なさそうに見えるでしょう。
ただしCoreAudioで切られていれば下位8bitは実際はヌル(0)でいっているだろうということです。ここで問題視しているCoreAudioのボトルネックはドライバー(HAL)より前のAudio Unitですのでドライバーが32bit対応していてもその前段階でデータは切られてしまいます。
つまり32bitの転送用の「箱」は用意されて32bit長で送られるのですが、「中身」は24bitになってしまうので、それが積めて収納されるため下位はゼロのままとなると思います。
この問題は前に書いたiPadのハイレゾ出力に似ていると思います。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/191432693.html
はじめにiPad(iOS4.1だったか)がUSB DACに対応したときはこの「箱」自体が24bitに対応していませんでした。そのため24bit DACでは再生ができませんでした。しかし4.2だったかでこの箱が24bitに対応しました。この結果として24bit DACで再生ができるようになりました。
しかし、24bit音源を再生しても中身は16bitに切られてしまっていたので、結果的に16bitを積めて収納されていました(上のリンクでI2S出力で確認したグラフです)。16bitに切られた理由はiOSのCoreAudioが24bit整数を扱えなかったからです。
その後にFLAC PlayerでDanにお願いして上記問題を工夫して解決し、中身も24bitで出せるようになりました。つまりボトルネックが解消されてきちんと24bitの箱に24bitの中身がつめられるようになったわけです。
もうひとつの考慮点はそもそも再生ソフトが32bit扱えるかということになるようです。たとえば32bitのデータを読んでそれをなんらかの処理をするとします。CoreAudioが32bit浮動小数点で計算しているため24bit整数が「精度」としては限界と言うことと同様にアプリケーション内でも32bitの「精度」を保つ必要があるならば、演算処理は32bitの単精度ではなく64bitの倍精度が必要になります。Aurdirvanaは64bit演算処理していますね。
ですので、32bit音源を扱う際のポイントは再生ソフトがインテジャーモードに対応していることと、ソフトウエアが32bitに対応していることがあげられるということでしょうか。
ただし一応書いておきますが、C50と32bit音源についてはモノを直接持っているわけではありませんからあくまで推測ですので念のため。
ここで書きたかったのは32bit再生というのは単に24bitを再生するのとは異なる考慮点があると言うことです。DSD音源と同様に32bit音源もまた取り組むのに興味あるテーマと言えるのかもしれませんね。
この場合MacOS 10.6でAudirvanaを用いてインテジャーモードが使えれば32bit音源を問題なく再生できるとのこと。
McIntoshのデモの例で言うと、DACプリのC50はESSの32bit DACですからドライバーが32bit対応してあれば受け手は問題ありません。ドライバーが認識されたらAudioMidiに「32bit (整数)」と表示が出るでしょう。32bitは小数点と整数がありますのでここは整数と明記されるライオンのAudioMidiが意味を持ちます。
ここでAudioMidiで32bit整数を指定すれば32bit長の「箱」でDACに送られるのでC50の表示では192kHz 32bitと表示されると思います。つまり外からは一見問題なさそうに見えるでしょう。
ただしCoreAudioで切られていれば下位8bitは実際はヌル(0)でいっているだろうということです。ここで問題視しているCoreAudioのボトルネックはドライバー(HAL)より前のAudio Unitですのでドライバーが32bit対応していてもその前段階でデータは切られてしまいます。
つまり32bitの転送用の「箱」は用意されて32bit長で送られるのですが、「中身」は24bitになってしまうので、それが積めて収納されるため下位はゼロのままとなると思います。
この問題は前に書いたiPadのハイレゾ出力に似ていると思います。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/191432693.html
はじめにiPad(iOS4.1だったか)がUSB DACに対応したときはこの「箱」自体が24bitに対応していませんでした。そのため24bit DACでは再生ができませんでした。しかし4.2だったかでこの箱が24bitに対応しました。この結果として24bit DACで再生ができるようになりました。
しかし、24bit音源を再生しても中身は16bitに切られてしまっていたので、結果的に16bitを積めて収納されていました(上のリンクでI2S出力で確認したグラフです)。16bitに切られた理由はiOSのCoreAudioが24bit整数を扱えなかったからです。
その後にFLAC PlayerでDanにお願いして上記問題を工夫して解決し、中身も24bitで出せるようになりました。つまりボトルネックが解消されてきちんと24bitの箱に24bitの中身がつめられるようになったわけです。
もうひとつの考慮点はそもそも再生ソフトが32bit扱えるかということになるようです。たとえば32bitのデータを読んでそれをなんらかの処理をするとします。CoreAudioが32bit浮動小数点で計算しているため24bit整数が「精度」としては限界と言うことと同様にアプリケーション内でも32bitの「精度」を保つ必要があるならば、演算処理は32bitの単精度ではなく64bitの倍精度が必要になります。Aurdirvanaは64bit演算処理していますね。
ですので、32bit音源を扱う際のポイントは再生ソフトがインテジャーモードに対応していることと、ソフトウエアが32bitに対応していることがあげられるということでしょうか。
ただし一応書いておきますが、C50と32bit音源についてはモノを直接持っているわけではありませんからあくまで推測ですので念のため。
ここで書きたかったのは32bit再生というのは単に24bitを再生するのとは異なる考慮点があると言うことです。DSD音源と同様に32bit音源もまた取り組むのに興味あるテーマと言えるのかもしれませんね。