Music TO GO!

2015年03月15日

音を画像で考える

私も音質のレビューを書くときによく「解像力」という言葉を使います。しかしながら、突っ込まれれば「解像力」って音ではなく像だからデジタルカメラの言葉じゃないって言われてもおかしくはありません。でもオーディオでも音像っていうし、と言い訳したりもします。
最近ハイレゾ関連の話題もあり、解像力やらレゾリューションなどが語られますが、あいまいに語られることも多いのはひとつは音が目で見えないために説明しにくいということがあると思います。人間は外部情報の9割を視覚に頼っているという話もありますが、実のところ画像化すると納得しやすいというところもあるでしょう。

私はオーディオもカメラもそれなりに深みにはまっているわけですが、デジタルの分野において画像とオーディオが基本的に置き換え可能な共通概念があるということには気がついていました。

1. 音と画像のデジタル処理の共通点

まず簡単にアナログとデジタルのおさらいをしながら、デジタル化におけるオーディオと画像の共通項を考えます。
簡単に言うとある波をデータとして記録する際に、波を波の形として記録するのがアナログ記録方式であり、波をいったん数値に変換するのがデジタル記録です。
たとえば空気を伝わる音の振動の波形をアナログレコード盤の溝でも拡大すると似たように波形のように記録しています。似た形で記録するのでアナログ記録と呼びます。Analogueの英語の意味は"類似"とか"近似"です。
デジタルでは音の振動をアナログのようにそのままではなく0と1の数値にいったん変換して記録します。数値にするとどういう良い点があるかというと、仮に1が多少汚れて1となっても読みだすときは1と見なせますので、メディアに汚れがあっても音質に変化がありません。アナログでは溝が汚れると汚れた音になります。さらに数値ならば加算することで記録に間違いがあっても発見・訂正が容易です。
よくデジタルを断続、アナログを連続と言いますが、それぞれ本当は、断続というより数値化、連続というより類似です。そう理解するとより正しく見えてくると思います。

デジタル記録では数値化が必要ですから、数値にするためにはもともと一続きのものを細切れに分割する(離散化する)必要があります。これをサンプリングといいます。分割(サンプリング)したデータを数値化します。これが量子化です。
このように、サンプリングと量子化の二点がデジタル記録の肝ですが、それぞれデジタルオーディオとデジタルカメラに例えると下記のようになります。

*サンプリング (どう分割するか)
オーディオ: サンプリングレート(例 44kHzとか96kHzなど) → 1秒間の音の変化を細かく区切る
カメラ: 画素数(例 1000万画素とか、4Kなどの言い方) → レンズが結像する像面を細かく区切る

*量子化 (分割したものを数値化)
オーディオ: ビット数(例 16bitや24bit) → 音の強度を記録
カメラ: ビット数(例 8bitや12bit) → 光の明度を記録

量子化後の数値は人の視覚・聴覚に関係するものなので、測定の基準は両方ともダイナミックレンジです(dB)。オーディオでは16bitで96dB、人の聴覚限界は約120dBといわれています。画像では8bitで50dB(不確か)、人の視覚限界は約80dB(不確か)だったと思います。(カメラにおいてはステップ数・段数の方が一般的です)

なお画像では8bitというとRGBの一色についてであり、フルカラー1670万色という場合はRGBの組み合わせです(8bit=256ですから、256^3=16777216)。センサー自体は色は分からず、モノクロの光の強さを感じるだけです。そのため発色にはカラーフィルタを組み合わせて近傍と計算処理後に色に変換してから記録する必要があります。一方でオーディオも時間方向のジッターなどがあるので、オーディオとカメラ画像はまったく同じということではありません、念のため。
しかし、理解のための考え方は置き換えできるということが本稿の趣旨です。

2. 音を画像で見る、アップサンプリング

タイトルで書いた音を画像で見るというのは、音の波形をオシロで解析するというのではなく、音の世界を画像の世界で例えて説明するということです。

下記のHQ PlayerのSignalystのページに面白い例として、アップサンプリングの説明があります。
http://www.signalyst.com/upsampling.html
このページの一番上の大きい画像が192kHz / 24bitを例えた画像です。すぐ下の小さい画像が44kHz / 16bitのCD品質です。これは192kHz / 24bitのマスターをダウンサンプルしたと考えても良いでしょう。
画像で見るとこのようにハイレゾは大きな画像として見ることができます。これによりデータ量が大きいということが視覚的に分かりやすいと思います。実際にはMQAの三角形の説明であったように、ほんとに数倍あるデータの全てが意味があるのかという問題もありますが、それはこうした基本を踏まえたうえで討議すべき問題でしょう。
ちなみにこれは画面解像度を同じにしているため画像サイズの大小として見えますが、同じサイズ(たとえば2Lサイズ)に印刷すると印刷解像度があがることで細かい画像になるということが分かります。

上の44/16と192/24は音源データの例えでしたが、この二枚以降はDA変換されたデータストリームの例えになっています。
44/16の下の二枚ではフィルタを適用しないと本来ないはずの縞模様が浮き出してくるのも分かると思います。これはオーディオでも言うところのアーチファクト(計算副作用)です。初めの一枚にフィルタを加えることで干渉縞を滑らかにすることができます。
次に大きな画像は44/16を4倍オーバーサンプリングした画像で、データサイズは192kHz / 24bitの音源データと同じことが分かると思います。ただし元の192kHz / 24bitのマスターに比べると計算的に拡大したため細部は粗くなっています。次の二枚ではフィルタリングをしたり、高品質アップサンプリングをすることで細部の粗さが改善されていくことが見て分かります。ただし元の192kHz / 24bitデータには画質は及ばないわけで、この辺りが良く「ハイレゾ相当」と呼ばれる品質ですね。

注意してほしいのは「192kHz相当」であってもデータのサイズはあくまで192kHzと同じであるということです。つまり中身の品質がどうあろうと、ナイキスト周波数は同じです。これはローパスフィルタなど回路設計に関係してくると思います。

3. 目で見るナイキスト周波数

もうひとつ画像で考えた場合に分かりやすいものの例はこの「ナイキスト周波数」だと思います。

ナイキストの定理というのは簡単に言うとデジタル記録における実際の解像力は最大解像力の半分であるということです。さきに書いたようにオーディオでの解像力は定義としてはサンプリングレートに相当します。
たとえばCDはサンプリングレートが44kHzですから、実際に有意に記録できるのは22kHzまでで、これをナイキスト周波数と言います。人の耳に聞こえるのは20kHzと言われていますから、人が聞こえる音をすべて記録するためには20kHz必要であり(実際の解像力)、そこから40kHzがサンプリングレートとして必要と言うことが導かれます(最大解像力)。実際には40kHzではなく44kHzになっているのは当時のなんだったかデジタル記録方式との互換性だったと思います。
22kHzから44kHzまでの領域は通常はノイズとしてSNを下げる原因となるのでローパスフィルタで除去されます。なぜノイズとなるのかはエイリアシングという問題があるからです。

ナイキスト周波数とはいいかえるとエイリアシングが発生しない一番高い周波数のことです。もう少し端的に言うと、意味のある信号が得られるもっとも高い周波数です。(ですからMQAの説明でもナイキスト周波数で切られています)
そのためナイキスト周波数の理解の肝はエイリアシングを理解するということだと思います。このエイリアシングは自転車のスポークの回転に例えられることもありますが、オーディオ的にはなかなかどういうものか直観的に理解がむずかしいところです。そこをカメラ画像に置き換えて説明してみます。

ナイキストの定理というのは、たとえばセンサーのピクセルとピクセルの間に髪の毛があるときに、その髪の毛の太さとセンサーのピクセルの大きさとの関係です。
下記の図において、四角はセンサーで、赤い丸は髪の毛です。

ナイキスト.png

この髪の毛がセンサーのピクセルと同じ大きさの時(1と2)、センサーにうまく重なれば記録されます(1)。しかしピクセルとピクセルのあいだに挟まると(2)どちらのピクセルに映るのか映らないかが決定できません。この状態がエイリアシング(aliasing)です。これは言い換えると連続のものをぶつ切りにして記録することで生じる中途半端な状態のことです。Alias自体は別名と訳されますが、偽の(証明されていない)という語彙を含んでいるので、Aliasingは確定していない状態という感じの意味だと思います。
決定できない状態はこの髪の毛を少しずつ左右にずらしても同じです。この髪の毛がセンサーに必ず記録されるための条件は、髪の毛の大きさがセンサーの2倍であることです(3と4)。このとき、どの方向に動かしても髪の毛はかならずどこかのセンサーをカバーします。
つまり言い換えると、ある太さの髪の毛を確実に記録するために必要なセンサーのサイズは、髪の毛の太さの1/2です。つまりセンサーの数は倍必要になり、解像力は2倍必要ということが分かると思います。

オーディオであれば、44KHzのサンプリングレートで44kHzのデータは「確実に」サンプリングできません。不確か、つまりエイリアシングの状態(上図の1と2)でサンプリングされることになります。
つまり1/22000秒というサンプリングの間隔を確実に記録するためにはその半分の細かさの1/44000秒の間隔が必要であるということです。つまり22kHzの周波数の音を記録するためには44kHzの解像力が必要です。

ちなみに画像における「高い周波数」とはビルと家の隙間のようなごちゃごちゃしたところです。低い周波数は青空などです。高い周波数のところではノイズである偽色(アーチファクト)が出やすいので、ローパスフィルタ(カメラの場合は結晶板)を適用します。オーディオにおいては高い周波数とはご存じのように高い音です。

もちろんカメラはADであり、オーディオはDAであるなど違いはありますが、ナイキストの定理というものが連続的なものをぶつ切りにする(デジタル化)ことで生じる原理的なものだということは分かってもらえると思います。

4. シャープネスの単位を考える

最後に「シャープネス」について考えてみます。
はじめに書いたように音質レビューでは音がシャープだとよく書きますが、画像のほうのカメラの世界でもやはりレンズの「シャープさ」と良く言います。
しかし「シャープさ」の単位はなに?と問えば、それが測定できない感覚的な概念だとわかるでしょう。レンズの世界では一般的に使われる解像力はMTFと呼ばれる空間コントラスト密度を使用します。しかし低い周波数のときの10本線MTFと高い周波数のときの30本線MTFに違いがある場合、それぞれで人によって10本線MTFが高いレンズ(いわゆるドイツ型)がシャープであるとか、30本線MTFが高いレンズ(国産型)がシャープであるというのは昔から議論があります。MTF自体は測定できても、それをシャープ、尖鋭的と感じるのは人の感覚によるものだからです。
ここは意図的に解像力とコントラストをごっちゃにして語っているのですが、実のところシャープさというのはあいまいで感覚的なものです。

一方でMTFはフィルム時代から使われているものですが、時代がデジタルになってくるとDXOベンチマークのLens Blurなど、別な視点でのシャープさの定義というのも模索されています。そうした意味ではデジタル信号のシャープさという考え方も必要なのかもしれません。たとえばMQAのところでMeridianのボブ・スチュワートはtemporal Blur(時間方向のプレ・ボケ)という言葉を使っています。オーディオでもなにかそうした新しい基準が必要になってきているようにも思います。


実のところ、実用的なデジタル化が始まったのはカメラは90年代後半くらいですが、オーディオでは80年代のCDからはじまっているので、デジタル化という意味ではオーディオの方が古いのですが、カメラにおいては当初からユーザーがデジタル処理を意識していたのに対して、オーディオではユーザーがデジタル処理を意識するのはPCオーディオが言われてきたここ数年ですから、そうした点ではカメラの方が先駆的な点もあるでしょう。
オーディオもカメラも古くからの伝統のあるものですが、デジタル化によってそれぞれの世界をヒントにしたり智恵を相互に融通ができるようになったと考えれば相乗効果があるといえるのではないかと思います。
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2015年03月12日

GoogleのNestがホームオーディオへ?

Nestはスマートホーム関連の会社で、ネットワーク化された人工知能ベースの室温調整や火災報知器など、いわゆるIoTのハブ的存在にもなりつつあります。
Googleに巨額で買収されたことでも話題となりましたが、もっとも注目すべきなのはCEOが元アップルで初代のiPodの父と呼ばれ、初代iPhoneまでの重鎮だったトニーファデルということです。
http://www.gizmodo.jp/sp/2014/07/nest_2.html

このNestが今度はオーディオ人材を募集しているということでニュースになっています。
http://www.audiostream.com/content/googles-nest-audio
今年のCESではIoTが注目されましたが、それもNestの影響が少なからずあったのかもしれません。
まだ製品にもなっていませんが、IoTと次世代のホームオーディオのあり方を示すものとして注目していきたいところです。
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2015年02月11日

米国ハイレゾ論争事情

アメリカでも昨年CEAが日本のハイレゾロゴ取り入れたり、ハイレゾ規格を制定したりと、日本のようなハイレゾムーブメントみたいなものはあります。
日本とちょっと違うのはPONOの存在が意外と大きいことです。そのバックにいるニールヤングですね。
日本だとソニーを中心としたメーカーがハイレゾを宣伝してる感じですが、アメリカだとニールヤングが声高に矢面に立ってる感は強いと思います。

昨年PONOが出るあたりからPONOとハイレゾに対してのバッシングの傾向があったんですが、今年になってから加速してきて今ではITメディア対オーディオメディアという感じの対立の構図が出来てきたように思います。

まず米国ギズモの"Don't Buy What Neil Young is Selling"ニールヤングが売ってるものは買うな、っていう記事が書かれました。
http://gizmodo.com/dont-buy-what-neil-young-is-selling-1678446860
論旨はハイレゾってすごく違うというけど、ダブルブラインドテストで科学的に実証できないよね、あと"$400"もの高価な機材が意味があるの?という感じ。
記事の日本語版もあります。下記リンクです。
http://www.gizmodo.jp/sp/2015/01/pono_1.html

米ヤフーでもPONOレビューで批判記事が出ています。iPhoneとPONOでABスイッチでブラインドテストしたけど、大体の場合はiPhoneの方が良いと感じた、これは裸の王様の現代版だとしてます。
https://www.yahoo.com/tech/it-was-one-of-kickstarters-most-successful-109496883039.html
ただこの後でフォロー記事も書いてるんですが、この人の言い分としては(オーディオファイルが差を語るのはともかく)PONOは一般向けだし誰が聴いても差があるって言ってるでしょ?だと思います。
https://www.yahoo.com/tech/the-ponoplayer-review-criticism-and-follow-up-110040409129.html


それに対してニールヤングは「PONOは始まりにすぎない」としながら、こうした批判には「“Science says it doesn’t matter, but who cares about science?” 科学はそれが意味ないっていうけど、誰が科学なんか気にするんだ?」って言ったりしてます。
http://www.digitaltrends.com/music/neil-young-pono-ces-rolling-stone-ponoplayer-hi-res/?utm_campaign=trueAnthem:+Trending+Content&utm_content=dmfNOR&utm_medium=trueAnthem&utm_source=twitter#!dmfNOR

そしてオーディオメディアもギズやヤフーなど一般ITメディアのこれらの記事に反撃してます。

AudioStreamでは、こういう話はこれまでやってきたよね、いま2015年だよってはじめ、いろいろと反駁してます。
http://www.audiostream.com/content/gizmodos-garbage-dump-pono

Real-HDではヤフー記事を書いた人はオーディオファイルだけどアナログテープ派でハイレゾデジタルオーディオにそもそも批判的ではということも書かれてます。ちょっと宗教戦争っぽくもなってきてますね。
http://www.realhd-audio.com/?p=4118

フォーラムでもComupter Audiophileではこれらを受けて「ここではダブルブラインドテスト話題を禁止すべきか?」という話題が投稿されたりもしてます。「主観主義」対「客観主義」と言ってる人もいますね。
http://www.computeraudiophile.com/f8-general-forum/should-blind-testing-discussion-be-banned-computer-audiophile-poll-23277/
ちなみにHeadFiでは下記のケーブルフォーラムはダブルブラインドテストの話題は禁止です(不毛に荒れるから)。
http://www.head-fi.org/f/21/cables-power-tweaks-speakers-accessories-dbt-free-forum
DBT-FreeはDBTはDouble Blind Testでfreeは日本語的には自由にして良いって勘違いされますが禁止の意味です。Smoke free areaは禁煙場所という意味なのでご注意。

そして今度はAudioStreamでPS AudioとBlue Coast Recordsが米ギズモや米ヤフーに挑戦状を突きつけたと記事になってます。
http://www.audiostream.com/content/ps-audio-and-blue-coast-records-high-res-challenge

PS Audioは米ギズモ記事への反論を書いてます。
http://www.psaudio.com/pauls-posts/warning/
ハイレゾの差がわからないっていうのは馬鹿げている(absurd)ので、飯おごるからうちのオーディオルームでブラインドABテストしようよ、という感じ。

Blue Coast Records(DSDで有名なクッキーさん)はここで米ヤフー記事への反論を書いています。
http://positive-feedback.com/Issue77/pogue.htm
ブラインドテストは私は30年近くやってるけどフェアなテストは難しい、私のスタジオでフェアなテストの手伝いをするよ、あなたの宗旨替えを強いるつもりはないからさ、っていう感じ。

さてこの論争の行方やいかに。
posted by ささき at 23:13 | TrackBack(0) | ○ PCオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年10月01日

デジタルオーディオのいま、ハイレゾとは

34年前の今日、1980年10月1日にはじめてのCDプレーヤーであるSONY CDP101が誕生して、世界初のCDソフトであるビリージョエルの「ニューヨーク52番街」が発売されたそうです。デジタルデータによる初の音源ですね。実質的にそれからずっと今日まで、少なくとも日本ではCDが音楽メディアの主力となっています。

CDという規格は1979年にSONYとPhilipsで制定されたわけですが、CDDAというCDの記録形式は論理的なデジタルフォーマットであるにもかかわらずコンピューターとは互換性がなく、現在ではリッピングという作業によってこの古いCDDAフォーマットのデータをコンピューターにインポートする必要があります。これはある意味仕方がありません。1979年の当時に650MBものデータを扱えるコンピューターなど家庭にはなかったのですから。
コンピューターでCDをメディアとして使うには1985年のハイシェラフォーマット(のちのISO9660)を待たねばなりません。ここでやっとCDがコンピューターから直接認識つまりマウントができる時代になります。
1990年代も後半となると、CDの次世代規格としてSACDが登場しますが、物理メディアとしてのSACDは失速してCDに取って代わることはできず、中身のDSDが後に生き残ります。
2000年代になるとPCオーディオが台頭してきて、それまでの44kHz/16bitという物理メディアに縛られたCD規格に依存する必要は薄れてきます。そしてLINNがStudio Masterという名前で24bitデータを配信を始めて話題となります。ハイレゾ、High Resolutionの音源です。ただしそれは一部の人のものでした。
2013年にSONYが「ハイレゾ」をたからかにうたいあげると、ハイレゾは晴れて市民権をもつに至ります。そして2014年には日本や米国でハイレゾという規格はそもそもどういうものだ、ということでハイレゾの規格化が始まります。

このようにハイレゾというキーワードが浸透してきたことで、最近ハイレゾ対応をうたったオーディオ機材が出てきていますが、違和感を覚えることもあります。たとえば最近のハイレゾ再生機の定義として使われるJASの「高域再生性能 40kHz以上」ですけど、このままだと前にも書いたように40kHzでどれだけ減衰しているのかという基準がないとそもそも規格にならない、とも思いました。最近では自主的に「-10dB@40kHz」とか掲げるメーカーもありますのでこれはよしとして、もうひとつの問題点はそもそもJEITAが音源の定義で44/24もハイレゾ音源と決めているのに、JEITAを基本踏襲すると言っているJASのハイレゾ再生機器の定義が40kHz以上とだけ決めてるのは矛盾してるんではないかということです。

オーディオにおける24bitデータのポイントは、単にダイナミックレンジが広がるということよりも、16bitから24bitに増えたさいの差分の8bitは最下位バイトであるということだと思います。ここはもっとも小さな音の情報がはいっているところです。
16bitしか扱えないソフトやOSの場合には、よく24bitのデータは単に左詰めされて最下位の8bitはなくなります。ディザ処理とか高度な処理がなされる場合もありますが、たいていはそのまま再生されます。これで音が割れたりするわけではなく、単に極小音の情報がなくなるわけです。それは24色の色鉛筆を16色に変えた時に減るのが微妙な変化を担当する中間色だということに似ていると思います。音を豊かにする情報が足りなくなるわけです。音の奥行とかスムーズなつながりが減退するという感じでしょうか。
つまりはこの場合にはいかに小さな音が再現できるかということにハイレゾ再生機の定義がなされるべきかもしれません。これは以前に書いた「遮音性とダイナミックレンジ」の記事にも通じているでしょう。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/403635836.html
弱小音再現の指標としてはSN比などがあるかもしれませんが、それを提案したりするつもりはありません。ただ考え方として、40kHzという一面だけを取り出してとりあえずそれを定義としてしまうのはどうか、ということです。実際はそうした微細な豊かさはもっとトータルに音再現として現れると思います。

高い周波数と倍音に着目するのは良いと思いますが、それがゆき過ぎて耳は20kHzまでしか聞こえないけど顔とか体の表面で40kHzも感じるからハイレゾは意味があるんだ、とかいう話になるとどうなんでしょうか。証明されてないことを前提に仮説をたてるのは「ミステリーサークルはUFOが作ったと仮定すると一番合理的に説明できる」と言ってるのと同じで、便利だけど危険です。
また測定上は40kHzを保証しない機材であっても、測定上40kHzを保証する機材よりも実際に聞いてみてハイレゾ音源の音の豊かさが分かるということはオーディオの世界ではざらにあると思います。メーカーはハイレゾプレーヤーにはハイレゾ対応ヘッドフォンを買って下さい、と言いたいと思いますが、実のところ普及機の「ハイレゾ対応」ヘッドフォンよりも、ハイレゾ対応表明していなくてもフラッグシップクラスのヘッドフォンの方がハイレゾ音源の良さはよく分かるでしょう。

私は個人的にもハイレゾ音源の方が好ましいし、オーディオ業界の活性化を考えるとハイレゾムーブメントはあっていいと思います。またハイレゾに目が向くことで配信がみなおされ、いまCDに束縛されて硬直化してる日本の音楽業界を変えることもできるかもしれません。
しかし、あまりにハイレゾという言葉を便利に使うのは諸刃の剣となりうることを考えておくべきではないかと思います。
posted by ささき at 21:35 | TrackBack(0) | ○ PCオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年06月16日

パイオニアからDAC内蔵のバランスヘッドフォンアンプ、U-05登場

音響機器大手のパイオニアから本格的なDAC内蔵のバランスヘッドフォンアンプが登場します。
これはU-05という機種で、好評を博したN50の実績をもとにDACをメインとした製品です。またオーディオ製品としての作りを意識した点もポイントです。

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* DAC部分の特徴

U-05はDAC部分で機能が豊富な点が特徴です。
まずU-05はESSのDACチップを採用しています。これはパイオニアがESSの知見が深いので、それを生かしたということです。具体的にはESSのES9016をデュアルで使用しています。また最近の2M版とは異なり、8chのオリジナル版を使用していて、8chをパラで使用してSNを高めています。このデュアルDAC、8chパラ出力によって精緻で整った音を再現します。
これは最近出てきている2チャンネルにスケールダウンしたモバイル版の低消費電力2Mタイプとは異なる据え置きならではの音質メリットを享受できる点となるでしょう。

最近では必要機能になりつつあるDSD対応も5.6MHzまでネイティブで対応します。またPCMも384kHzまで対応と、現在の音源のフルスペックまで再生することができます。
Macでは特徴的なDSDの伝送方法を採用していますが、これはまたあとで説明します。

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デジタル入力の種類も豊富で、USB、光、同軸SPDIFに加えて、AES/EBUも入力可能です。プロ規格の AES/EBUも入力可能なことで、低価格製品ながら高い音質を、ハイエンドオーディオ機器システムのなかに組み込むことも可能でしょう。
出力でもバランス出力が用意され、バランスのホット番号切り替えも可能な本格派です。

また基本的なスペックの高さに加えて、U-05ではデジタルオーディオを知り尽くした老舗の技術力として多彩な機能を持っています。
まず特徴的なのは私も初めて見たんですが、ロックレンジ・アジャスト(Lock Range Adjust)という機能です。これはデジタル信号をロックする許容幅を調整して音質改善をするというものです。説明すると、デジタルオーディオがデジタル信号を入力する際にその周波数に合わせて同期整合(ロック)をしますが、その際に普通のオーディオ機器では多少の整合の許容度(機械的に言うとあそび)を持っています。そうでないとさまざまなデジタルソースに対応できずに、同じサンプルレートでもある機器ではロックせず、ある機器とはロックするということになりかねません。しかしながらこの「遊び」はいわばオーディオ的には「甘い」要素になります。そこでU-05ではその許容幅をユーザーがマニュアルで調整できる機能を持っています。とはいっても難しいものではありません。
パイオニアさんの試聴室でデモを聴かせてもらったときに試しましたが、リモコンの矢印を左右に振って行くだけです。そうするとあるところで音が途切れるのでその手前にあわせると最適なスイートスポットになるわけです。実際に音を振って行くと音がだんだん引き締まっていきシャープになるのが分かります。これはなかなか新鮮な体験で遊び感覚・チューニング感覚があって面白いと思います。

また地味なところですがデジタルフィルターに自社製のパラメーター設定を持ったモードを追加しています。これは一般的な"SLOW","SHARP"に加えて"SHORT"というフィルターの追加です。これはショートロールオフという意味ですが、プリエコーなどの自然音にはない不自然な付帯音の原因となるもの(いわゆるデジタルっぽい原因の一つ)が少なく、よく言われるMPフィルターのようなもののようです。聴き比べるとより自然に聞こえます。

またオーディオスケーラー(DSP)という機能ではビット拡張とアップサンプリングがDAC側で可能です。これはビット幅を32bitに拡張し、サンプリングレートを最大384kHzまで変換します(サンプリングレートについては調整が可能です)。簡単にいうとCDリッピングの音源をハイレゾ化できるというような機能です。
これを利かせないスルーのモードをDirectと呼びます。

* ヘッドフォンアンプ部分の特徴

またU-05の大きな特徴はヘッドフォンアンプが本格的なバランス駆動に対応しているということです。しかも4ピンタイプも3ピンx2のタイプも両方採用していますので、たいていのバランス対応ヘッドフォンは使用することができるでしょう。内部的にもDAC出力からヘッドフォン出力までフルバランスで設計されているということです。

またU-05でユニークなのは大出力のバランスヘッドフォンだけではなく、高感度のイヤフォンにも対応できるような設計がなされているということです。これは単にゲイン切り替えがあるだけではなく、ファインチューニングボリュームというサブボリュームがあるためです。これは微調整のためのボリュームで、高感度イヤフォンなどボリュームの調整がラフなものになりがちなときに、こまかな調整ができるので最適な音量で聴くことができます。

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基本的なところではヘッドフォンアンプ回路もディスクリートで組んでいて高級なオーディオグレードパーツの使用がなされています。

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* 作りの良さ

U-05は外観としてもフルアルミのボディに大きなアナログトランスを配して電源強化するなど正攻法のオーディオ設計がなされています。そのため見た眼よりも結構重く感じられます。機能も充実していますが、基本的な部分でも質実剛健なところはこの作りを見ればわかるでしょう。

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* PC周りの設定について

U-05は入出力の豊富さも特徴ですが、今回はUSB DACとしてPCオーディオでの適性を見ました。
使用したのはWindows8.1(ミニタワー)とMacOS10.9(Mac mini)です。

Windows7/8ではPCM再生でもDSD再生でもドライバーが必要です。ドライバーはASIOを使用しているようです。ドライバーのインストールはexeをクリックするという簡単なものです。

MacにおいてはPCM再生でのドライバーのインストールは不要ですが、DSD再生はドライバーのインストールが必要です。
これはちょっと変わったところですが、なぜかというとU-05においてはDAC側ではDoPのようにPCMにエンコードされたDSDデータではなく、ASIO(ライク)なDSDそのままのデータストリームで受けるからです。これはKORGの方式に近いのですが、このままだとKORGのように専用のアプリケーションでないとデータの送信ができなくなります。それではAudirvanaを使ったりPure Musicを使ったりというソフトウエアを変える面白さがなくなります。そこでパイオニアでU-05においてドライバーの中でDoPをネイティブDSDストリームに変換するという仕組みを考案しました。
この方式だとAudirvana Plusなど音楽再生アプリケーションでは出力方式としてDoPを選択して送信をします。するとドライバーでDoPをネイティブDSDストリームに変換してUSBケーブルでDACに送るということになります。この方式だとPC側のパワーでDoP/DSDのデコード処理を行うのでDACに負担をかけないという利点があります。

Macのドライバーはdmgで入っていますので、それをダブルクリックするとデスクトップにインストーラーが出てきます。そのインストーラーをダブルクリックすればインストールは簡単に出来ます。特別な知識は不要です。
ただしカーネルエクステンションの開発元が不明というウォーニングが出てきますが、これは単に閉じればよいと思います(WindowsのWHQL開発元認証みたいなものでしょう)。ちなみにMacにおいてカーネルエクステンションとはカーネルを拡張するローダブルモジュールという意味でドライバーのことです。

インストール後にプレイリストでPCMとDSDを交互に再生しましたが、切り替えによる大きなポップノイズは生じません。
Audirvana Plusで384kHzまでアップサンプリングしましたが問題なく再生できます。44/16よりも濃密な
U-05ではDAC側でもアップサンプリングができますので、効果を比べてみるのも面白いでしょう。

* U-05の音質

まず試聴機がとどいて箱から出した印象は重いっていうことです。10万以下商品の重さではないですね。次に袋から出して思ったのは作りがしっかりしていて高級感がある。なお下記は試聴のための試作機の印象ですから製品版では異なることがあるのを含みおきください。

音はゼンハイザーHD800のシングルエンド(標準ケーブル)とベイヤーT1改造のバランスヘッドフォンで試してみました。
まず全体に端正で整った音再現が印象的です。帯域的には少しベースに重みを持ったバランスの良い音再現で、リアルな楽器音の再現が感じられます。色付けはあまりなく、かつ無機的なところにも陥っていない聴きやすい音です。細かいところでは音はESSの音らしく細かさと際立ったSN感が音の豊かさを作るタイプだと思います。その繊細さはアコースティック楽器を使用した音楽でもよくわかりますが、女性ヴォーカルのSHANTIではその細かさが声の表情や艶っぽさに繋がっていると感じられます。
そしてヘッドフォンアンプとしてU-05の音の特徴的なのはとても歯切れよくスピード感、パワー感のあるところです。特に上品でリファレンス色の濃いHD800やT1をぐいぐいとハイスピードで力強くドライブしてゆく気持ちよさはこのU-05ならではの強みになっていると思います。

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バランスT1をまずシングルエンドアダプタで聞きます。この組み合わせではパワフルで音の切れ・テンポの良さが気持ちよく、ジャズトリオではスピード感のある展開もさることながらウッドベースの弦の響きの細やかさも音楽に厚みを持たせてくれます。T1をシングルエンドからバランスに変えるとあきらかに音質レベルが一クラスあがります。より空間的な広がりが増すとともに音がより整理されてステージの見通しが良くなり楽器の位置関係も明瞭になります(ケーブルは同じです)。音の鮮明度もさらに向上してT1の能力を100%を超えて引き出しているかのようです。シングルエンドでも魅力的ですが、やはりバランスで活きるアンプだと思いますね。

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HD800で聞くと、とてもシャープでタイト、洗練された音であると同時に躍動感があるのが良い点です。ベースにがっちりと重みが乗ってスピード感、リズムのテンポ運びもかっこよいですね。ロックファンにも人気のある上原ひろみジャズトリオのAliveハイレゾはカッコよくスピード感あふれて再生されます。
ハイレゾでない音源の場合にはDirectを切ってオーディオスケーラーDSP(bit拡張とアップサンプリング)を利かせると手軽により密度感のある濃い音を楽しませてくれます。

精細感が厚みを作り、切れ味の鮮明さとスピードのある点が特徴のU-05ですが、同時に音の荒さが少なく、音のエッジは切り立ってシャープだけれどもきつさや痛みの不快感がないという点で、さすが老舗と思える設計の熟練が感じられました。
また、U-05の音の良さの秘密のひとつは電源の強力さに隠されていると思います。実際に内部ではかなり大きなトランスがどんと鎮座しています。高性能オーディオ機器の正道ですね。

U-05で自宅試聴していて興味深い発見をしました。うちでは電源フィルタリングをかませてプリ用とパワー用の口がありますが、その違いが明確に出るという点です。プリ用の電源ポートはフィルタリングが強いので、より音はなめらかで粗さは少ないが鮮度感が低め、パワー用は鮮度感が高めで勢い重視と別れています。驚くことにU-05ではその違いがかなりよくわかります。ヘッドフォンアンプは普通プリアンプとして設計されるものなんですが、このアンプはプリの素質もパワーの要素もあると感じられます。むしろベースの力強さやスピードなど鮮度感を活かした方がこのアンプの性格をいかしてるようですね。

HD800との相性ではいままでのヘッドフォンアンプの中でもトップクラスではないかと思います。HD800というと音を分析的に聴くのに適していて、私もこういうテストではHD800をリファレンスとして使うことが多いのですが、U-05はHD800を音楽的にも楽しくノリ良く聞かせてくれるヘッドフォンアンプだと思います。

U-05は特徴も多いんですが、その最後のポイントの最後は価格だと思います。音のレベルはもっと高価なクラスで期待されていた音のレベルですね。いままでなら15万から20万超えていてもおかしくないレベルですが、実売はおそらく10万を切るくらいのところだと思います。これはかなりコストパフォーマンスは高いと思いますね。

* 試聴会の開催

本稿ではヘッドフォンアンプとして主に使用した感想を書いてきましたが、DACとしての性能が高いところも本機の特徴です。この点においてはスピーカーを使ってお聞かせする発表会・試聴会を開催することが決定しました。
来週の6/22に中野サンプラザで試聴会・発表会を開催します。私が講演で解説を務めますので、よろしくお願いします。

6月22日(日)中野サンプラザ 15F リーフルーム

11:30 開場
11:30〜12:00 自由試聴
12:00〜12:30 講演 1回目
12:30〜13:30 自由試聴
13:30〜14:00 講演 2回目
14:00〜15:00 自由試聴
15:00 終了

試聴会ではヘッドフォン機材とスピーカー機材を両方用意して、講演ではスピーカー機材で主要機能のデモをする予定です。
参加は一般でも自由ですのでふるってご来場をお願いします。
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2014年05月02日

シーラスロジックがWolfsonを買収


おなじみ英国のDACチップICのメーカーであるWolfsonがおなじみDACチップメーカーである米国のCirrus Logicに買収されることになったとBBCニュースが伝えています。買収額は$467ミリオンです。
http://m.bbc.com/news/uk-scotland-scotland-business-27202322
Wolfsonは英アーカムはじめ多くのオーディオブランドに採用され、iPodも初めはWolfsonでしたね。

今年二月の同ニュースによるとWolfsonは2012年に比べても巨額の損失を2013年に計上し「ライバルとの競争に負けた」と評されていました。加えて昨年は10%人員削減をしたようです。
http://m.bbc.com/news/uk-scotland-scotland-business-26044177
他のソースによると今年の第一四半期の業績も予測より低かったようです。

Wolfsonはスマートフォン関係の低消費電力チップやサムスンなどへの供給で強みを見せてたんですが、反面で過去からBlackBerryに依存していた点が大きかったようです。
代わりにシーラスがその資産を使うことになりそうです。またこうしたDACメーカーの主戦場が実のところ携帯機器・スマートフォンであることも改めてちょっと考えさせられます。
posted by ささき at 07:34 | TrackBack(0) | ○ PCオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月19日

ESSがヘッドフォンアンプIC、SABRE9601を発表

ESS9018などで高性能DACチップICでおなじみESS Technologyが今度はヘッドフォンアンプチップを作成したようです。下記Mono and Stereo誌に記載されています。
http://www.monoandstereo.com/2014/02/sabre9601-headphone-amplifier.html

これはセイバーシリーズの名を冠するSABRE9601というチップで、定電圧DACのSABRE-2Mシリーズと合わせて使うことを目的に製作されたということです。つまりはHerusのようなポータブルDACをより高性能に作れるということです。
ヘッドフォンアンプチップというからにはTIのTPA6102のようなバッファチップですね。TIでいうとTPA6102A2のような低電圧版に相当するモバイル向でしょう。SABRE9601は+3.3V片電源で動作します。用途はスマートフォンやタブレット、あるいはDAPを考えているようです。あるいはHerus2なんてのもあったりして。。

2014の3月にサンプル出荷を開始するということなので、Resonessenceあたりにまずは注目ですね。あるいはCalyxか。。
posted by ささき at 22:49 | TrackBack(0) | ○ PCオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年06月20日

全米レコード協会がストリーミング配信にもゴールドディスク認定を拡張

オーディオ的にはRIAAカーブで知られる全米レコード協会(RIAA)は1958年から55年もゴールドディスク認定を行ってますが、最近この歴史的な認定をストリーミング配信にも広げたそうです。
カウント方法は100ストリームあたり1ダウンロード(一枚購入)換算です。この計画はRIAA内でもずいぶん練られていたようで、換算方法はコンシューマーの相対的な使い方(activity)によるもので、価格価値(financial value)的なものではないとのこと。

http://www.riaa.com/newsitem.php?content_selector=newsandviews&news_month_filter=5&id=03662575-C88F-51CF-779C-8396A2B8D74D

最近AppleやGoogleなどもストリーミング配信に乗り出すことで、活性化するストリーミング配信ですがインフラも整いつつあるようです。アメリカでは、ですが。
posted by ささき at 20:26 | TrackBack(0) | ○ PCオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月29日

iFi Audioの新製品、USB DDCのiLinkレビュー

iFi AudioのDACやヘッドフォンアンプのレビューを前の記事で書きましたが、新製品でiLinkというUSB DDC(Digital to Digital Converter)が出ました。USB DDCはhiFaceのようにUSBデジタル入力をSPDIFデジタル出力に変換する機器です。

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こちらがiFi iLinkの製品ページです。
http://www.ifi-audio.com/en/iLink.html

iLinkの筐体やパッケージは他の製品と同じタイプです。はじめから必要なケーブル類が付属しているのも同じです。iLinkはバスパワーで動作するので、付属品はUSBケーブル、光ケーブル、同軸ケーブルです。今回のポイントは付属の同軸ケーブルで、ショートタイプのBNC同軸ケーブルにRCAアダプタが両端で装着されています。(これは後で出てきます)

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筐体の片側はBタイプのUSB端子があり、USB接続はUSB Audio class 2.0対応です。Mac 10.6.4以降はドライバー不要ですがWindowsではドライバーインストール(ホームページから)が必要です。サンプリングレートは192kHz 24bitまでの対応となります。
反対側は出力端子がまとめられていて、光出力とSPDIF(NormalとHigh)出力、JETのオンオフスイッチがあります。
iFi Audioらしいユニーク機能としてiLinkの特徴的な技術はJETとSuper Digital Outputですが、私がAMR技術者に直接問い合わせて確認した内容を以降で解説して行きます。

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音はMac (10.8)で聴いてみました。ドライバーのインストールは不要です。USBケーブルは添付のものを使ってみました。SPDIFの同軸デジタルはhiFaceと比較するためにWireWorldを使用しています。添付のUSBケーブルでもhiFaceに比べるとスケール感も向上し、細部は滑らかで上質な音と感じられます。
全体にiFi製品はノイズ対策にとても気を配って音を荒さ・きつさのないものにしてるように思います。これはJETをONにするとさらに明らかで、いままで感じられた硬質感が取れて滑らかで音楽的ないかにもiFi/AMRがめざすアナログっぽい音になります。USB DDCでこういう効果があるのはあまり聴いたことがありませんね。今ではハイレゾUSB DACが当たり前になり必要性という意味ではUSB DDCの必要性は後退してるけれども、iLinkは音を上質にするという面白い可能性を提示しているように思います。

技術的にいうとJETは20kHz以下のベースバンドのジッターを効率よく高い周波数にシフトさせるというもので、こうすることで受け手のレシーバーICの性能が悪くても効果的にジッターを低減できるようになるということです。ただしこうすることでDACによっては176kHzや192kHzのような高い周波数でのロックがうまく働かなくなることがあるようです。そこで通常はONでよいけれどもこうした場合にはOFFでも試してみるとよいそうです。低価格帯でのDACの実情というものをよく考慮したシステムと言えるでしょうね。

さて、JETとならんでiLinkのもう一つの特徴はSuper Digital Outputです。Super Digital OutputはiLink独自のHigh/Normalに別れたSPDIF出力のことです。こうした出力端子はあまり見たことがないでしょう。
これは以前の記事で少し触れたのですが、その時はHighは対応機器が限られると書きました。一方でiLink製品版のマニュアルでは基本的にHighにしておいた方が良いと説明があるのでちょっと矛盾するようですが、以下もう少し細かく補足します。

iLinkのSPDIF出力のHighとNormalは電圧のことで、Normalが通常でHighがそれよりも高い電圧で出力しているということを示しています。しかしSPDIFにHigh規格ってあったのか、という人もいると思います。このSPDIFのHigh/Normalというのは規格ではなくDACの実装で使い分けるものです。

市販のさまざまなDACに使われているSPDIF入力レシーバーにはさまざまなDAC個別の違いがあります。たとえばシーラスロジックのCS841x系のチップを使ったレシーバーは本来SPDIFより高い電圧(5V)を使用するバランス(プロ仕様)のAES/EBU向けのチップですが、より低電圧(0.5V)が一般的なSPDIFにも使用できます。こうしたチップを使った実装ではSPDIFであってもやはり高い電圧の方が最適でジッターも低いということです。AKMでも似たようなものがあるようです。
反面でそれ以外の多くのSPDIF対応DACはやはりSPDIFの低い電圧に最適化していて、高い電圧を送れば音が良くなるというものではありません。やはり適材適所で最適な電圧を送るのがジッター低減にも寄与するというわけです。

他のメーカーでもDAC側でこうした違いに着目した例もあり、一例をあげるとマークレビンソンのDAC No36ではSPDIF入力端子とレシーバーの間にアンプ回路が入っていて、レシーバー回路に最適な電圧に増幅しているようです。つまりこうした最適化をDDC側であらかじめ行っておくというのがiLinkのHigh端子です。
No36の場合はAES/EBUとデジタルレシーバーが共通だからSPDIF入力の方はそうしたアンプが入っているのかもしれませんが、似たような実装は他にもありそうです。

送り出し側で工夫した例としては日本の47研究所があります。47研のDACはSPDIFレシーバーにCS8412/8414を採用していてiLinkのHigh向きですが、47研究所のCDトランスポートではDCカップリングとACカップリングという二つのSPDIF出力端子があって、DCカップリングの方がiLinkのHighの考え方に近いそうです。(ただしiLinkはよりインピーダンスマッチやアイソレーションを考慮した設計をしているということです)

こうしたことからiLinkのHigh/Normalの使い分けは使用するDACがどういうレシーバーでどういう設計をしているかに左右されます。とはいえ、普通の人はそういうのはわかりませんから、違いについては両方試してみて音の良い方を選んでほしいということです。NormalとHighを両方入れてみてDACやiLinkが壊れるとかそういうことはないということです。
つまり47研のようなSPDIFレシーバーのDACはHighを使用するのが最適ですが、もちろんNormalでもロックして音は普通に再生できます。ただしHighの方がより最適で音が良いだろうということです。またそうでないDACはNormalを使用するのが最適ですが、Highでもロックして音は普通に再生できるようです。ただしNormalの方がより最適で音が良いだろうというわけです。

またマークレビンソンのNo36の場合はレシーバーはHighに最適化されているはずですが、SPDIF入力からはアンプ回路を入れて既に内部的にHighに対応していますからiLinkからの出力はNormalが最適になるはずです。この辺も実装の問題になりますね。そういうわけでこの辺は複雑なところもありますから、とりあえずHigh/Normalを使い分けて音を試してほしいということになります。
実際にやってみるとどちらも普通に使えます。音の変化はJETのON/OFFに比べると微妙な差ではありますが、High対応の機器でちょっと試してみたいですね。

さきほども少し書きましたが、iLinkのSPDIF出力はNormal/Highが分かれているだけではなく、アイソレーションやインピーダンスマッチという観点からもしっかりと設計しているということです。それも音質向上に寄与しているでしょう。
USB DDCとしての総合的な性能はだいぶ高いようで、iFiのページに比較表がありますが、Emprical AduioのOff-Rampよりもジッターが低いというものです。Emprical Audioは日本ではあまり知られていませんがアメリカのPCオーディオ系ではよく出てくる中堅メーカーで、その$1000を超える立派なデスクトップUSB DDCより低いというからたいしたものです。
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ちなみにiFiでは12インチ(30cm)以下のデジタルケーブルを推奨しているそうです。これはインピーダンスマッチング問題における末端反射によるものだそうで、DAC側はBNCが推奨でその場合はiLink側にBNCアダプターを付けて対応してほしいということです。これはつまり先に書いた付属のケーブルのことですね。

しかし100万円のマークレビンソンならともかく、この価格でここまで細かい音にこだわるとはiFiオーディオには改めて驚かされます。先に書いたように電源のフィルタリングやインピーダンスという点でも細かい配慮があります。
普通はAMRというハイエンドブランドがあるなら、差別化のためこちらは手を抜きそうなものですがiFiの場合はこの価格の範囲(あるいはそれを超える)での最高を目指そうとしているようです。おそらく今まで低価格機を買うのはマニアではないから音質もこのくらいで良いだろうという妥協があったと思います。iFiの考え方はこれからの新基準というか、現在のオーディオ市場を的確にとらえて考えていると思います。
iUSB Powerなんかでも面白いと思ってましたが、iLinkで改めてiFiはなかなかの注目ブランドだと思いました。

製品情報としてiLinkは5/11(ヘッドフォン祭)で発売開始、価格は39800円だそうです。
下記にiFi Audioの日本語サイトがありますのでこちらも参照ください。
http://ifi-audio.jp/
posted by ささき at 20:07 | TrackBack(0) | ○ PCオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月19日

ネットオーディオVol10に執筆しました

本日発売のネットオーディオVol10にいくつか記事を書きました。
まずiFi Audioのレビュー記事を書いています(P104)。ここではiFiだけではなくバックグランドとしてのAMRも解説しているところがポイントです。なお補足ですが、iFiでは最近iLinkというUSB DDCが発表されています。 http://www.ifi-audio.com/en/iLink.html
これはSPDIF出力にNormalとHighと二つ端子があるところがポイントです。このNormalとかHighというのは電圧振幅のことで、Normalは通常の(アンバランス)SPDIFの規格で通常はこちらを使います。Highはそれより高いので、この規格に合うDACでないと対応できません。いまわかっているのはAMRと一部の国内外のDACのみです。性能的にも高いようで、日本では出ていませんがアメリカでは有名なEmpirical AudioのOff-ramp(据え置きタイプの立派なDDC)よりも低ジッターということです。iFiもなかなかにユニークで注目のブランドですね。

それと再生ソフトウエアの技術的解説の記事を書きました(P62)。ここでは各ソフトウエアの技術的な解説と序文のみ書いています。音の感想などはほかの方ですので念のため。
またいつも書いているオーディオ最前線ではAndroidのデジタル出力対応についてまとめて書いています。興味のある方はどうぞご覧下さい。


posted by ささき at 20:24 | TrackBack(0) | ○ PCオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月06日

Mac miniのオーディオ用外部電源

Mac miniはなかなかPCオーディオに向いていますが、より高音質化するためにローノイズのオーディオ用外部電源が出ました。これはClones Audioという香港のアンプなどを作っているオーディオメーカーの製品です。$499+送料と115Vへの改造費で日本だと$550くらいです。(対応は2010年モデル以降)
http://www.clonesaudio.com/#!product/prd1/667867321/mpsu

以前アメリカの会社でMac miniを引き取ってスパイクまでつけて専用のオーディオ向けに改造するというところはありましたが、こちらはユーザーインストーラブルというところがユニークです。電源を上のサイトで買って送ってもらったら自分で改造をします。
下に設置の解説ビデオがアップされていますが、Mac mini内蔵の電源を取って専用のケーブルに差し替えるというものです。工程は約10分ほどとのこと。Macとしてサポートしてほしいときはまた元に戻すというわけです。ちなみに電源本体とのケーブルは1mです。



電源本体はシンプルなキューブ状というのもApple製品にマッチします。Mac miniを主に音楽再生に使用している人にはちょっと面白い製品ですね。
posted by ささき at 20:35 | TrackBack(0) | ○ PCオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年02月20日

欧州の新しいPCオーディオブランド、iFiのDAC・アンプとiUSB Power

iFi(アイ・ファイ)はポタ研のさいにトップウイングのブースで展示されていた新オーディオブランドです。
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今回はヘッドフォンアンプのiCan、USB DACのiDAC、そして「USBクリーン電源」のiUSB Powerを発売に先行してお借りしたのでレビューします。下記では親会社のAMRの技術者に直接聞いてみた情報も反映させています。

* iFi とAMRについて

iFiというのは新しいブランドですが、AMR(Abbingdon Music Research)というイギリスのハイエンドオーディオメーカーの新ブランドです。AMRというのも日本ではなじみがないのですが、クラスレンジは数十万から百万くらいだと思います。私はAMR DP-777というDACは知っていたんですが、これはAudirvanaが初期のころにインテジャーモードをテストするのにダミアンがAMRとタイアップして進めていたので名前を覚えていました。私が訳出したインテジャーモードの白書にも書いてあります。また実際にAudirvanaのショウデビューもイギリスのオーディオショウのAMRブースでした。

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AMR CD-777

AMRの人の話によると、AMRは過去と最新の技術の良いところどりをするというのが開発哲学であるということです。英国オクスフォードにあるAbbingdonというのは大型車を打ち負かすような高性能の小型車ラリーで有名なところだということで、AMRも電源やアンプを分離しないでコンパクトなワンパッケージとして、かつ大きなセパレートタイプのシステムに対抗できるような製品を目指しているということです。(たとえばプリとパワーを分けないでプリメインで高性能を目指すという感じ)
なかでも先に書いたDP-777というDACはユニークで、16bitのDACチップと32bitのDACチップをいっしょに搭載しています。それを切り替えて使えるという仕組みになっていて、かつアナログ回路には真空管を使っているというものです。DACチップ切り替えは入力によるようで、16bit DACはフィリップスのUDA1305ATという「最後のマルチビットDAC」をNOS(ノンオーバーサンプリング)で使用しています。これと真空管を組み合わせるのですから音はだいたい想像はつきますね。つまりアナログっぽい滑らか志向の音楽的な音なんでしょう。一方でハイレゾは32bit DACで再生できるというわけです。こちらはWolfsonを使用しているようです。ちなみに定評あるマルチビットDACのTDA1541はおそらくAMRが世界で一番ストック持ってるんじゃないかと言ってました。(PCM1704は一番ストックあるのはAudio-gdのような気がしますが)
AMRの音再現の方向性というのがこれらからわかるのではないかと思います。
こちらはAMRのホームページです。
http://www.amr-audio.co.uk/index.php

AMRの話を長めに書いたのはこれらの技術やポリシーがiFiに受け継がれているからです。

iFiはほぼAMR出資の子会社で、2011年のRMAF(ロッキーマウンテンオーディオショウ)のときにデビューしました。新ブランドの目的としては、従来AMRが対象にしていた伝統的なスピーカーオーディオに対して、動きが早く若者向けのヘッドフォンオーディオに特化した製品開発をするということです。やはり若年層の顧客開拓というのが大きい理由のようですが、この辺の事情は日本とも似ているところが興味深いところです。
そのために価格は手頃な現実価格にするけれども、技術的にはハイエンドのAMRを受け継いでいるということです。たとえば下記で紹介しますが、A級増幅、TubeState、DirectDrive(ダイレクトカップリング)、オーディオ品質の電源供給などです。(価格的にはAMRが$3000-$5000くらいなのに対して、iFiはいずれもUS$200-300くらいの価格帯です)
ですから新ブランドといっても出自があやしいものではなく、血統正しく技術的にも確立した安心できるブランドであると言えるでしょうね。

こちらはiFi audioのホームページです。
http://ifi-audio.com/en/index.html

以下製品紹介をしていきます。
このシリーズはすべてコンパクトな同一サイズでまとめられていますし、パッケージもデザインも共通しています。アクセサリーは異なりますが、おおむねはじめからケーブルなどが付属していて初心者でも困らないように考えられています。上面に状態表示のLEDがついているところも同じですが意味は機種で異なります。プラグ等は入力と出力がそれぞれ反対側にまとめられています。機器間のケーブル接続の間に挟まるようなイメージですね。
価格も安く設定されていて、コンシューマー向けブランドを思わせます。国内価格は完全に決まっていないので、参考として現地価格を乗せておきます。

* ヘッドフォンアンプ iCanについて

iCanは純粋なヘッドフォンアンプでデジタル入力など内蔵DACはありません。現地価格は$249。アクセサリーはRCAケーブル、ミニミニケーブル(iPodなどからの入力用)、電源アダプターが入っています。

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入力はRCAのほかにステレオミニ端子も用意されている点はiPodなどやiPhoneなどからの使用も考慮しているのでしょう。ミニ端子からミニ端子への白いケーブルが付属しています。
付加機能としては低域強調のXBassや音場感を広げる3D Holographic Soundなどが用意されています。
3D Holographic Soundというのはヘッドフォンの頭内定位を解消するというものです。従来技術ではクロスフィードがありましたが、これは独自の技術を使用しているということです。特徴的なのはこうした機能はたいていDSPなどデジタル領域で行うものですが、この技術はアナログ回路で設計されているということです。この辺のこだわりもハイエンドメーカーの気質を受け継いでいるのでしょうか。

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もうひとつの機能であるXBassはいわゆる低音増強のベースブーストです。こちらもヘッドフォンが低域特性に個性差が大きいので、低域不足と感じるヘッドフォンに対して補正するという考えのようです。ですから低域を足すというよりも、低域をあるべきレスポンスに戻すという考え方で設定しているということです。
これらは従来スピーカー向けに作られていたAMRに対して、iFiではヘッドフォンオーディオがメインターゲットになっているので、基本機能に加えてこうしたヘッドフォン向けの付加機能をプラスしたという風にも考えられます。AMRから受け継ぐ基本機能というのはたとえばDirectDriveやTubeStateと呼んでいるものです。
DirectDriveというのは後段に通常ある抵抗やコンデンサーをバイパスしてアンプ部からヘッドフォンアウトにダイレクトに出力するというものです。つまりはこの前RWAK100で書いたような改造を純正でやっているような感じでしょうか。これにより出力インピーダンスは1オーム以下となりヘッドフォンの制動力も高くなるということです。
TubeStateというのはTube + SolidStateというような意味らしく、真空管のように滑らかな音をソリッドステートのように歪みなく再生するというもので、技術というより設計ポリシーのようです。

* USB DAC iDACについて

iDACはバスパワーで動作するUSB DACです。現地価格は$299。RCAケーブルとUSBケーブルが付属します。
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USB DACとしては192kHz/24bitまでサポートするUSBオーディオクラス2.0(UAC2)に対応しています。XMOSを使用しているのでアシンクロナス転送に対応しています。つまりMacOS 10.6.4以上であればドライバーのインストールは必要ありません。Windowsではドライバーをインストールする必要があります。

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しかしながらAMRの技術者に聞いてみたところ、UAC2に対応していないOSの場合にはフォールパック機構(失敗したときに働く機構)としてオーディオクラス1(UAC1)ドライバーで働くようになるようです。これはAyreのQB-9ではファームのスイッチで切り替えたりできましたが、iDACでは自動で行われるようです。この辺はAMRのファームによって動作しているようです。
ただし開発者の言うことにはiFiの提供するドライバーを利用した方がバッファの制御などで優れているので44kだけ使うとしてもこちらを使用してほしいとのことです。ドライバーにはAMRのロゴがありますのでDP-777あたりと共通かもしれません。

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DACチップは旬のESS ES9023を使用しているという点もiDACのポイントです。開発者の弁によるとES9023は競合と比べても優れたチップなので余分にデジタルフィルターなどを追加しないで、素のままで使うようにしているということ。これもAMRから受け継ぐポリシーのようです。マルチビットDACを志向しているメーカーが(Wolfsonはともかく)その対極のようなESSを使うというのも面白いですが、9023ではなるべくワンチップで完結してシンプルにDACを構成できるという点が良いのでしょうね。
またジッター低減ではZeroJitter Liteという機能を採用しています。なぜLiteかというと、この上位に当たるAMRのDAC DP-777で採用されているジッター低減技術がZeroJitterというもので、そのスケールダウン版としてZeroJitter Liteという機能をiDACに搭載しているということです。もちろんスケールダウンしたとしても十分な能力を持っているとのこと。つまりはAMRでの経験を生かして上位機種譲りの機能を備えているということですね。この辺にもAMRの技術の継承が見えます。

またiDACには内蔵ヘッドフォンアンプがついていて、ミニ端子ですがこれ単体で音楽を聴くことができます。ボリュームもついていますが、これはおまけかと思いきや意外と力があります。

* 「USBクリーン電源」 iUSB Power

iUSB Powerはユニークなラインナップですが、USB DACへの給電をクリーンにして音質を向上するというものです。現地価格は$199。使用する際には外部電源が必要です。ACアダプタとUSBケーブルが付属します。

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一般的なUSB DACでは全体をバスパワー給電したり一部を給電したりしますが、PCからのこうした信号はたいていノイズで汚染されています。そのUSB電源をクリーン化するのが、このiUSB Powerです。使用法としてはPCとUSB DACの間に挟むようにして使用します。

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つまりPCからUSBケーブルをiUSB PowerのUSB Bプラグに接続します。そして反対側のAプラグからもう一本USBケーブルを使用して、DACのBプラグに接続します。またiUSB Powerには外部電源が必要です。反対側に二口USB Aがあるのは後で発売されるGEMINIという電源・信号別になったUSB ケーブル(あのアコリバのやつみたいなもの)を使用するためです。通常は一口(信号+電源の方)のみ使用します。コンシューマーブランドではありますが、こうして電源にこだわりを見せるのも伝統的なオーディオメーカーらしいところです。

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電源ノイズ (iFiホームページから)

カタログの方には面白い紹介があって、普通は電池から給電するのが一番安定しているのでノイズレスでクリーンだと考えられますが、実のところは充電池ではそれほどクリーンでもないというのがiFiの主張です。そこでiUSB Powerでは電池よりもさらにクリーンな電源供給を実現しているということです。

またユニークな機能としてISOEarthというスイッチがあります。これは仮想アース?のような機能によって、グランドループを断ち切って電気的にPCとDACを分離するというような機能のようです。これによってノイズフロアを下げることができるということ。これはAMRの技術者に聞いてみたところ、機器にダメージを与えずかつUSB信号を遮断しない方法で行っているということ。ただし日本のように電源が2口プラグの環境では、やはり違いはあるだろうが大きくはないかもしれないということです。

* 音のインプレッション

試聴はWindows7にiFiのサイトからiDACのドライバーをインストールしてJRMCをプレーヤーとしたPCオーディオのシステムとして試聴しました。後でMac(10.8)でも接続は確認しています。ヘッドフォンはHD800を使っています。またRCAケーブルとUSBケーブルは聴き慣れた自分のキンバー(RCA)とSAEC(USB)を使用しています。iUSB powerについてはPC側を付属USBケーブルを使用しています。

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HD800とiCan

はじめにiDACをPCに接続して内蔵ヘッドフォンアンプで聴いてみました。HD800ではミニ変換プラグが必要ですけど、iDAC単体のヘッドフォン端子でもHD800で十分音量を取ることができます。iDACの内蔵ヘッドフォンアウトもわりと悪くはないというか、後で書くiCanを通すよりこちらの方がいわゆるESSらしい音に近い感じですね。ただそれでもDragonflyあたりに比べると滑らかでわずか暖かみがあるように感じられますので、ESSのドライな感じを適度に和らげているようには思えます。反面で高域が少しきつめに出ることがありましたが、これはエージングの問題かもしれません。また後で書くiCanを通すより音の広がりが弱くこじんまりとした音空間ではあります。

次にiDACをiCanに接続してiCanからHD800で聴いてみました。iCanを通すとより暖かく厚みのある豊かな音楽的な音になります。全体的なバランスも含めて、かなり良い感じですね。また音の広がりは3D Holographic Soundを使わなくても十分にあります。
ここでiDACをバスパワーで性能の良いWavelength Protonあたりと変えて比べてみました。iDACは透明感や解像力が際立つタイプではないけれども、適度なクリアさがあり音の広がり感や滑らかで音楽的な表現が良いと思いますね。この辺もAMRの音の継承という感じなのでしょう。また前述したようにiDACの内蔵ヘッドフォンアンプだとこじんまりとした音空間ですが、DACとして使うとiDACは意外と音が広いのも面白いところです。

iCanとiDACの組み合わせはなかなか素晴らしく、一体感のある音で組み合わせて使うことを考えていると思います。音楽的で音色も美しく、滑らかで温かみがあります。女声ヴォーカルも魅力的ですね。ただ柔らかすぎずに楽器音の分離もしっかりしていていて、ギターなど生音の切れも良いようです。ヘッドフォンオーディオ的には聴き疲れも少ない上質な音だと思います。価格的に考えると十分な能力を持っていることを感じさせますね。
基本的にはiCanは素性の良いアンプという感じで極端な帯域強調はないので、味付けは3D Holgraphoc soundやXBassの機能を使っていくことになります。

3D Holgraphoc soundをオンにすると世界がぱっとひらけて明るく広くなった、という感じになります。単に音が横に広くなっただけではなく、感覚的には帯域特性というか音の個性も微妙に変わっているように思いますね。
XBassの効果はこの手の低域増強の機能にしてはわりと自然で音質の低下も少ないように思います。「・・・」と「・」のモードがあって・だとわりと自然にかかり、・・・は効きがかなり大きいけれども、これはHD800のようなフラット傾向のヘッドフォンでビート主体の音楽を聴くときに良いかもしれません。通常は・で常用してもあまり違和感はないかもしれません。

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DragonflyとiUSB Power

iUSB PowerについてはまずUSB直結のDragonflyで試してみました。余分なUSBケーブルを追加してもなお効果があるかということを見るためです。この時の接続はこうなります。
変更前:PC→Dragonfly
変更後:PC→付属USBケーブル→iUSB Power→Dragonfly

実際に聴いてみるとDragonflyだとかなり効果はわかりやすくありますね。Dragonflyなんかは直差しからiUSB Powerについていた付属USBケーブルを追加しても、なお音質は大きく向上します。透明感が高まってクリアになり、音の広がりも向上して低域もより深みが増します。ISOEarthは微妙だけれどもやはりオンにしたほうが良いかもしれません。

次にもともと透明感の高いAudio-gdのNFB11.32にもつけてみました。USBケーブルはSAECを使用しています。
変更前:PC→SAEC USB→NFB11.32
変更後:PC→付属USBケーブル→iUSB Power→SAEC USB→NFB11.32

これはDragonflyほどではないけれども、たしかに効果はあって音の広がり・奥行き感の向上とさらに透明感も向上します。
そしていわば純正ともいえる3段重ね、iCan+iDAC+iUSBpowerだとiCan+iDACの印象をさらにひとレベル上げて豊かさを増した感じですね。

なおiUSB PowerはMac10.8でも使ってみましたが問題なく使用できました。

*

まとめるとiFiは全体的に音楽性を重視した気持ち良い音再現のシステムと言えるでしょう。またiUSB PowerはPCオーディオでUSB DACを使っている人には良い音質向上手段となると思います。
iFi製品はAMRの上位機種の技術をうまく理由することでコストパフォーマンスの高いパッケージに仕上げていると思います。低価格といっても中国製品のように原材料や工賃で安くするというのではなしに、すでに確立した技術や手法を流用することでコストを抑えるという考え方でしょう。
ちなみにAMRの技術者にこういう普及価格のDSD対応DACがほしいよ、と言ってみたら、作ることはできるけどまだ検討段階で市場を見ているところだと言ってました。そのうちにはiDSDなんていうのがほしいですね。
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2013年02月12日

MeridianからコンパクトUSB DAC登場

海外では人気のブランドMeridianからDACportみたいなコンパクトなUSB DACが登場しました。Meridian Explorerです。CESのアンダーテーブルで公開されて昨日解禁だったようでいくつかのメディアに載っています。価格は$299と比較的安価ですね。
Computer Audiophile
AudioStream

形としてはDACportのようですが、XMOSを用いて192kまでの対応が可能で出力はミニヘッドフォン端子と2Vラインレベル出力が両方装備されています。またラインアウトの方には光デジタル出力も装備されているようです。つまりUSB DDCとしても働くということですね。
円筒形に見えますけど底面はフラットで置きやすくなっているようです。DACportの改良版にも見えますね。ちなみにDACportはUSBアダプティブモード転送ですが、こちらはXMOSを使用していますのでアシンクロナス転送です。
DACチップはPCM5102で、ファームウエアでアップサンプリングなどカスタム設定が可能なようです。LEDが3つついていて入力しているサンプリングレートに合わせて点灯するということ。中身をみると大型のコンデンサーがどーんと鎮座しているところはしっかりしたアナログ回路の設計を思わせます。
音もDragonflyよりは一枚上手のようですが、反面でやや大きいということですね。Dragonflyに続いてこうしたコンパクト機材が好まれる素地というのもあるようです。
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2013年01月22日

CDジャーナル2月号に執筆しました

発売中のCDジャーナルに執筆しました。といってもCD評ではなくP102からのPCオーディオコーナーで、iPadタブレットで使えるHRT iStreamer、コンパクトなハイレゾDACのDragonfly、DSDネイティブ再生のQuteHDをそれぞれ新しい音楽の楽しみ方を紹介するということで書いています。オーディオ誌に書くのとはまた違ってわかりやすく書くことが求められるので新鮮でした。
本誌もモーニング娘から富田勲まで幅広く取り上げられています。


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ネットオーディオVol09に執筆しました

発売中のネットオーディオVol09に執筆しました。P157のHifiMan HM901レビューとP188の連載において2012年の回顧と2013年の展望を書いています。
HM901もようやく生産モデルが出てきて発売まで今少しとなりました。聴き比べてみましたがヘッドフォン祭でのデモ機に比較すると生産モデルはさらに音質が高くなっています。今年まずはじめの期待のモデルですね。


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2012年12月15日

タイムロードのショウルームオープンとChannel Classicsとのキャンペーン

タイムロードさんのショウルーム「遊」が六本木にオープンしました。GEMのある六本木AXISの4Fです。
http://www.timelord.co.jp/blog/news/roppongi-showroom-open/?mode=consumer
中は大きくディスプレイコーナーとデモルームに別れてます。

IMG_0603_filtered.jpg   IMG_0605_filtered.jpg   IMG_0594_filtered.jpg

ディスプレイコーナーではデスクトップシステムやヘッドフォンなどが置かれています。元のGEMは時空のイヤフォンだけになって、ウルトラゾーンのヘッドフォンなどはこちらの方に持ってきたそうです。

IMG_0596_filtered.jpg     IMG_0608_filtered.jpg

デモルームは茶室をイメージしたという入り口(頭上注意)をくぐると、スピーカーやホームシアターのデモができる部屋に入ります。本日はオープンイベントとして角田さんの解説でChordの新型ネットワークプレーヤーでデモを行っていました。パワーアンプはApril Music S1、スピーカーはRhaido S2.0でした。これらは今年の新顔です。あらかじめ予約してもらえば希望の組み合わせでシステムを聴くこともできるそうです。

こちらはChordの新型ネットワークプレーヤーDSX1000です。上にあるのは操作用のiPadです。LINNのuPnPアプリで操作していましたが、来年にはChord独自のアプリも出るそうです。

IMG_0599_filtered.jpg     IMG_0616_filtered.jpg

それとタイムロードさんではあのDSDの取り扱いに力を入れているオランダのクラシックレーベル、Channel Classicsとの提携でキャンペーンを始めました。CHORD QuteHD, QBD76HDSDを買い上げた方にクーポンをプレゼントするというものです。これは一回しか使えませんがその時に何枚でも買い上げができて50%オフになるというお得なクーポンです。(2012年12月15日AM0:00から2013年3月14日AM0:00まで)
http://www.timelord.co.jp/blog/news/campaign_channel-classics/?mode=consumer

そこで期間中にこのショウルーム「遊」に来訪してアンケートを書いてメールアドレスを書いた人にもこのクーポンをもらえるということです。この機会にどうぞお出かけください。
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2012年11月28日

PS AudioもDSDへ移行表明

(前の記事からの続きです)
PS Audioポール社長のその後のブログ記事を見ると、やはりPS AudioもDSD対応に向かうと表明しています。時期は2014年になんらかの新製品が出てくるようです。
おもしろいのはDSD対応するのに、PCM/DSD両用使える出来合いのDACチップを使用するのではなく、DACの仕組みを根本的に変えるような妥協ない設計をすると書いていることです。もちろんPCMに対しても妥協なく対応するとのこと。
これをこれまでポール社長ブログで書いてきたことと重ね合わせると、DSDにおいてはDACチップの部分をディスクリートで組んでDSD専用の仕組みを作り、PCMはPCMで別に16bit専用でマルチビットDACを使うなどが考えられるように思われます。他にもなにか考えられるかもしれませんが、PS Audioも技術志向の会社なのでいまから楽しみなことではあります。
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Stereophileの年間最優秀Computer AudioプロダクトはDragonfly

いまのPCオーディオ(Computer Audio)の転換点はどこだったか、と聞かれたら私はまずStreophileの総合のプロダクトオブザイヤーでQB-9が選ばれた時、と答えると思います。これによってPCの周辺機器にすぎないと思われていたUSB音源が晴れて「オーディオ」として認められたという瞬間です。(二番目はLINNがCDプレーヤーやめたというニュースでしょうね)
さてStreophileの今年の年間優秀賞ではComputer Audio Component部門でAudio QuestのDragonflyが受賞しました。Dragonflyのうちの紹介ページはこちらです。これはお勧めの製品です。Audio Questの製品ですが、設計はQB-9を光らせたUSBアシンクロナス部分を担当したゴードンさんです。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/278372379.html
次点のHalide DAC HDとWeiss DAC202に倍の大差をつけて堂々の受賞です。ちなみにDragonflyはBudget(普及価格)コンポーネント部門でも受賞してダブルクラウンです。日本ではD&Mから販売されていますが、大きな話題になってないので日本から見ると驚きかもしれませんが、私のMac Airの常備品です。Dragonflyはむこうの評論家には実質ゴードンの製品ということが認知されているというのはあるでしょうね。

Computer Audio Component部門はDAC(Digital Source Component)部門とは分離しています。DAC部門では400万円ほどのMSB Diamond IV DACが受賞しています。DAC部門はDACというよりもネットワークプレーヤー・サーバーなどといっしょのようです。この分け方が適切かという話もありますね。たとえばComputer AudiophileフォーラムではDragonflyは発表されてからずっと上の方の人気スレですが、MSB Diamond DACはほとんど話題になっているのを見たことありません。そもそも単体DACってPCオーディオがなければこんなに活性化したはずはありませんが、Computer Audioとわける意味がちょっと取りかねますね。DAC部門でDSD系がないというのもさみしいところではあります。
そして総合のプロダクトオブザイヤーは100万円くらいのAudio Reseachのハイエンドアンプが受賞しています。しかし実は読んでみるとDragonflyはこの総合部門でもけっこういい線いっていたようです。他の部門での実績で言っても実際はDragonflyが実のプロダクトオブザイヤーっていってもおかしくない気はしますけれども。
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2012年11月16日

Mac Audio 2013に執筆しました

11/15発売の音楽出版社(CDジャーナル)さんのMac Audio 2013に執筆しました。今回はたくさん書いたのですが、なにしろテーマ的に力がこもっています。
まずアップルファンが書いたMacの本、という視点からいかにMacの魅力を伝えるかというところに注力して書きました。
そういう点ではまずMacの魅力を書いた巻頭文(P11)です。ここでまずMacを使うということの意味、Macを選ぶということの意味を伝えたいと思いました。Macがなぜオーディオに向いているか、という視点もありますが、実のところユーザーはなぜMacを選ぶのか、というところからすべてが始まると思います。
またPowerCD、スパルタカスなどの記事(P152)も面白いと思います。まずこの2012年にPowerCDやスパルタカスの記事の企画が通るというのがすごいところ。提案してみたところ本誌では編集の人もMacユーザーなので快く通してくれました。
ちなみにジョニーアイブというとiMacで知られていますが実はジョブズ復帰前からAppleのデザインを担当していて、ここで書いたスパルタカス(20周年記念Mac)のデザインも彼のようです。こちらにスパルタカスと若きアイブのビデオがあります。またNewtonのeMateも彼のデザインです。

そのほかはPCオーディオ系の得意分野ではありますが、iPadのオーディオ利用、Macの高音質再生ソフト解説、MacでのDSDネイティブ再生解説なども書いています。
iPadのオーディオ利用(P117)ではハイレゾまで書いていますが、海外でもAntelopeやBenchmark、AudioStreamなどでハイレゾ再生を検証していますのでこの分野ももうちょっと活性化してもいいと思いますね。
Macの高音質再生ソフト解説(P130)では各ソフトの最新の情報を取り入れ、かつポイントをわかりやすく解説するということを考えました。
DSDでは基本的な解説から実践編としてAudirvana Plus + QuteHDの組み合わせでDoP接続するところを書いてます(P92)。DoPに関してはまず標準規格である、という理解が重要だと思います。いまや世の中にDSDをサポートする再生ソフトがいろいろあって、DSDをサポートするDACもいろいろとあります。その仲立ちをするのが標準規格であり、標準があるからそれを軸にさまざまな組み合わせができるわけです。そこがオーディオがコンピューターをインフラにしていくときに重要なポイントとなると思います。
このほかではベイヤーT90のヘッドフォンレビュー(P103)やお勧めイヤフォン(P110)なども書いています。

ちなみに私が良くWindows機を"PC"と書いてMacと分けて書くのはMacはPCと違うぞ、という意識的な意味からではなく、PCというと一般にIBM PC(AT)とそのクローンの系列を指すからです。つまりPCというのはPersonal Computerの略というよりはIBM PCのPCです。そのためPCというと暗示的にWindows(DOS)機を指すので、MacをPCと書くのは気持ちが悪いからです。
このようにコンピューターにも歴史があり、分化があります。オーディオがさまざまな先達によって育まれてきた文化ならば、コンピューターもまた同じく先達によって育まれてきた文化です。AppleとかMacはそれがかなり色濃く出ています。たとえばマーク・レビンソンとスティーブ・ジョブズの類似性などを考えて見るのも面白いでしょう。
そうした理想を求める個性的な人たちによって作られた文化というところは似ているはずですので、本来コンピュータとオーディオは共通するものがあるはずです。その辺を書いていくのが私の書くべきことの一つかなとも思います。

他にも吉松隆さんのインタビューとか、USBケーブルの付録もついて分厚い冊子となっています。ぜひ本屋さんで手に取ってみてください。

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2012年09月28日

ニールヤングのPONOはハイレゾDAP

ニールヤングが以前PONOというハイレゾフォーマット?のようなものを開発しているという記事を書きましたが、PONOとはハイレゾ対応ポータブルプレーヤーだったようです!
http://mobile.theverge.com/2012/9/28/3422018/neil-young-pono-audiophile-music-player-prototype-on
今までで最高の音と言っています。実際はハイレゾダウンロードとタイアップさせるようでWarner, Sony, Universalなんかと提携しようとしてるよう。まさにハイレゾ携帯プレーヤー時代が到来するのかもしれません。
posted by ささき at 20:59 | TrackBack(0) | ○ PCオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする