今日は評論家の角田郁雄さんが最近自宅のシステムをフォーカルの新型スピーカーに模様替えしたということで聴きにいきましたが、この前紹介したWavelengthのProtonを持参して、最高レベルのスピーカーシステムでこの小さなシステムを試してみる機会を得ました。
角田さんはPS AudioのPerfectWaveシステムも導入されてますので、今日はMAレーベルのハイサンプリングのデモ音源やリファレンス・レコーディングスのHRxなどハイサンプリング漬けで味わえたのですが、さすがにこのクラスのシステムでハイサンプリング音源を聴くとかなり圧巻です。
そこに写真のようにMacにUSBでProtonをソース機器として差し替えてみました。Macのとなりにある小さな箱がProtonです。
MacではiTunesに話題のアマラを加えて高音質化したものに88.2などのハイサンプリング音源を使います。
まさに大きなシステムの中の小さなシステムですが、Protonはこんな高性能スピーカーを鳴らすに恥ない高品質で高精度な音をだすのでふたりともちょっと驚いてしまいました。これでこんな音が出ると参っちゃうという感じですね。Async転送USB恐るべし。音もアナログ的で好ましいとの好評価でした。
小さくてもよく練られたProtonの実力やハイサンプリングの世界など、ちょっと考えを揺さぶられた一日ではありました。
Music TO GO!
2009年12月12日
2009年11月26日
Wavelength Proton USB DACとAsync転送
海の向こうではStereophile誌の今年2009年度のProduct of the yearはUSB DACのAyre QB-9が受賞しました。いままで音が悪いといわれてきたUSB機材がStereophileが選出するベストプロダクトとなったわけです。かたやLINNがCDプレーヤーの生産をやめるというニュースもあり、時代は音を立てて動いているかのようです。
そこでオーディオの新時代を考えるにあたり、このWavelength社のProtonというUSB DACを入手しました。今年の前半にでて来たもので、AyreのQB-9とは異母兄弟になります。
1.Wavelength社とUSBオーディオ
PCとオーディオを融合するキーのひとつはPCに一般的に装備されているUSBを活用することですが、オーディオ分野での最近のUSB応用におけるキーポイントは大きく二つあります。
ひとつはUSB->SPDIFのD/Dコンバーターを使用して、PCとオーディオの世界をつなぎ、高品質なデジタルデータを供給するもの。これはいまや多種多様な製品が発売されています。
もうひとつはUSBの転送品質それ自体を根本的に見直すAsync転送です。
これは日本ではAyreのQB-9に採用されたことで知られるようになりましたが、この方式を開発したのはWavelengthという会社を運営しているJ. Gordon Rankinという技術者です。Wavelengthはアメリカの小規模メーカーで、主に真空管アンプやDACを製作していましたが、最近このAsync転送方式でオーディオ分野に知られるようになりました。
Wavelengthのウエブページはこちらです。
http://www.usbdacs.com/
このAsync転送とはなにか、という前にUSBとオーディオについて簡単に整理しておきます。
もともとUSBは汎用の周辺機器インターフェースであり、オーディオ系に特化したものではないのでオーディオ向けの工夫が必要です。
たとえばUSBのハードディスクにファイルやソフトウエアを転送するときはデータの到着順はでたらめになってもかまいませんが、最終的には確実に100%のデータがそろわなければなりません。一方でUSBのオーディオ機器であればデータが100%届くことは理想ですが多少欠けても致命的ではありません。その代わりぴったりと時間的にあわせて転送する必要があります。特に音質というファクターを重視するハイエンドオーディオにおいては単にバイナリーデータを転送すればよいのではなく、クロック'(タイミング)の情報をいかに正確に伝えるかが重要です。
そのためUSBは機器に適したいくつかのモードがあり、オーディオ機器向けにはIsochronous(アイソクロナス)転送という同時性を重視した方式が使われます。そして、その中でも同期の取り方でさらにいくつかの方式があります。
従来のほとんどの機器が使用しているのはAdaptive方式というもので、受け手側(DAC)が動的にクロックを抽出することを前提としています。
この方式の利点はそもそもPCではさまざまな処理が行われてUSBバスの占有が不確かなうえ、外部クロック(PCの基準クロック)自体もオーディオ的には不正確だからです。簡単に言うと信号がまちまちでいつ来るか分からないので、受け手のほうでPLLなどを使って動的にタイミングをあわせるということです。
Adaptiveは適合するということなのですが、端的に言うとPCの都合のいいようにDACがあわせているということでしょう。つまりそこでジッターが大きく発生してしまいます。
Async方式は逆に受け手(DAC)は固定のクロック(タイミング)を持っていて、送り手がそれにあわせるというものです。そうするとDACは固定クロックを使えるのでこれはオーディオ的に好都合です。
しかし今度はDACの都合にPCがあわせる必要があります。そのソフトウエアは普通のものとは異なるというのは容易に推測ができるでしょう。では具体的にどうするのか、というと実のところそこを書いた記事というのはあまりないように思えます。というのはその具体的な手段(実装)こそがミソだからです。
ここでのポイントはUSBにおけるAsync転送自体が優れているのではなく、Async転送はUSBのひとつのモードに過ぎないので、このモードを使ってどうやってそうした理想的な転送を実現させるかというソフトウエアの実装の部分です。海外の記事では良くGordonのコードと書かれたりします。それゆえ、Ayreもそのコードライセンスを獲得してQB-9を設計したというわけです。もしAsync転送自体がキーならばそうしたライセンスを取る必要はありません。
Wavelengthの代表であるGordon氏はオーディオ好きのソフトウエア技術者がこうじて、メーカーを作ったそうです。基本的にはWavelengthは真空管アンプなどを作る会社だったのですが、根がそうしたコンピューター系技術者だったのでUSB転送という方式に目が向けられたということなのでしょう。
"Gordonのコード"によるジッターの低減率は二桁違うとも言いますので劇的な低減です。
Ayreのページにもこちらに解説(PDF)があります。
2. Wavelength Protonとは
ProtonはWavelengthのUSB DACです。入出力はシンプルでデジタル入力はUSB入力がひとつとアナログRCA出力がひとつのみです。96/24まで対応しています。
またミニプラグでヘッドホンアンプがついています。
インストールは通常のUSB DACと同様に接続するだけです。
Wavelengthの製品は比較的高価なものが多いので、Protonはエントリー価格帯に属するもので$900です。"Price from $900"となにか他にオプションがあるようにも見受けられますが、fromは間違いのようで、オプションはないとのこと。(他のモデルはオプションで価格が高くなるのでそれをコピーしてきたようです)
外見上はシンプルに見えますが、Protonには以下のような個性的な特徴があります。
2-1. Async-USBのサポート
Protonの最大の特徴はさきに書いたGordonのコードによるAsync転送をサポートしていることです。
これまでのUSB DACというと、たとえばDAC機能を持ったUSBレシーバーのPCM2702系などをそのまま簡易DACとして使ってしまうというのが最も簡単な形です。
もう少し進歩したものではUSBレシーバーのPCM2702系は単にSPDIFとかI2Sのコンバーターとして使用して、DACは独立したチップで行うというのが従来の多くの「高性能USB DAC」でした。ただその方法ではDACチップのフロントエンドなどでジッター低減することはできますが、もとのUSB転送自体の根本的な解決にはならないというわけです。そこを改善するのがAsync転送ですが、Async転送自体は前の章をご覧ください。
このProtonやQB-9はTAS1020というTIの新しい世代のUSBレシーバーを使用しています。このチップも大きく関連しているようです。
2-2. バッテリー駆動であること
Protonは電源不要でUSBポートから給電できます。しかしいわゆるUSBバスパワーとはちょっと違います。ここがProtonのもうひとつのポイントです。
USBは電力も外部機器に供給できるため、そのUSBバスパワーを使うことで独立した電源コードは不要になるという利便性があります。しかし、その電源はPCというノイズの巣窟から出てくるわけなので、クリーンであることを期待できません。
そのためProtonではリチウムイオン電池を内蔵していて、主要なオーディオ回路にはいったんバッテリーにためた電力を供給しています。
これによりPCからでもクリーンなノイズレスの電源を供給できるというわけです。
2-3. ヘッドホンアンプ内蔵であること
Protonにはミニのヘッドホン端子が装備されていて、ヘッドホンアンプも内蔵されています。これもブラックゲートなどが使われていて、おまけ以上のものになっています。
nuforceなんかもそうですが、アメリカのこうしたマニアック系のメーカーはこういうところにも手を抜かないところが好感が持てます。
ただプラグに挿してもラインアウトはミュートされません。
3. Protonの音質
ここではとりあえず届いたばかりの第一印象を書いてみます。
システムは下記の通りです。
WindowsXP SP2->Proton->RWA Signature30->JohnBlue JB3
ヘッドホンは直接Protonのミニ端子から取っています。
プレイヤーはSamplitudeやWinamp,Foobar2kなど多種使用して試しています。
まずスピーカーで聞くと音が滑らかでスムーズというのが第一印象です。これはたぶんバッテリー駆動というところも拠るところが大きいと思います。音調はニュートラルですが音楽的で美しく感じます。楽器の細かいニュアンスをよく再現し、響きが気持ちよく聴こえます。
ハイサンプリングの96/24などの古楽をかけてみると透明感に吸い込まれそうな感じになります。また、Handsなんかのウッドベースのピチカートの小気味よさ、切れの良さはかなり秀でています。
全体にオーディオ機器としての質感の高さを感じさせてくれます。
ヘッドホンアンプもかなりよく出来ています。
平面型のAudeze LCD-1で聴いてみると細やかさや立体感が際立ちます。こうした反応の早いヘッドホンと組み合わせるとProton独特の滑らかさと両立するタイトさ、エッジがきりっとしたシャープさが堪能できます。
パニアグア古楽合奏団の良録音盤では背景にかすかに入っている鳥の声が有名ですが、これがかなり明瞭に聞き取れます。背景もかなり静かでよく微細音を拾うと思います。SNは高いでしょう。
この贅肉がなく気持ちよく引き締まった音からはかなりジッターが低減されている様子がうかがえます。思わずもう一度接続を確かめてみて本当にUSBから出ているのかを確認してしまいました。
ノートPCとAudioEngine2のような高性能アクティブスピーカーと組み合わせてデスクトップでの鳴りを楽しむのもよいでしょうが、もっと本格的にオーディオシステムに組み合わせるポテンシャルがあると思います。
この辺はもう少しバーンインしてからいろいろと試してみたいと思います。
ただAsync転送は本物だということはだんだんつかめてきました。
(写真のノートPCはB5ノートです)
4. Async転送とUSBオーディオの明日
Async転送はUSBの可能性を一歩進めましたが、いままでおまけ的に扱われてきたUSB接続が果たして本格的なオーディオ分野でSPDIFなみに主流の地位を占めるか、という問いについてはPS Audioの最新のニュースレター(11月号)に興味深い記事が載っていました。
それは先月号のニュースレター(10月号)でPS AudioのPaul氏が(Async転送は良いと認めたうえで)USBでは96/24の転送が限界であり、長期的に見てオーディオのハイサンプリングの流れではSPDIFやAESのような主流になれない、と説いたところ、このGordon氏から反論のメールが来たというものです。
それによると96/24の限界は単に現行のチップの製品としての限界であり、USBの仕様的な限界ではないということです。どうやらGordon氏の開発環境では試験的にUSBでもAsync転送で192/24まで到達しているようです。
来年はUSB3.0が登場してきます。
USB3.0では転送速度が10倍になりますが、ケーブル自体も変更されて信号線が増えるということもあり、その影響もどうでるか分かりません。
USBとオーディオのかかわりについては来年に向けてさらに注目度が高まると思います。
そこでオーディオの新時代を考えるにあたり、このWavelength社のProtonというUSB DACを入手しました。今年の前半にでて来たもので、AyreのQB-9とは異母兄弟になります。
1.Wavelength社とUSBオーディオ
PCとオーディオを融合するキーのひとつはPCに一般的に装備されているUSBを活用することですが、オーディオ分野での最近のUSB応用におけるキーポイントは大きく二つあります。
ひとつはUSB->SPDIFのD/Dコンバーターを使用して、PCとオーディオの世界をつなぎ、高品質なデジタルデータを供給するもの。これはいまや多種多様な製品が発売されています。
もうひとつはUSBの転送品質それ自体を根本的に見直すAsync転送です。
これは日本ではAyreのQB-9に採用されたことで知られるようになりましたが、この方式を開発したのはWavelengthという会社を運営しているJ. Gordon Rankinという技術者です。Wavelengthはアメリカの小規模メーカーで、主に真空管アンプやDACを製作していましたが、最近このAsync転送方式でオーディオ分野に知られるようになりました。
Wavelengthのウエブページはこちらです。
http://www.usbdacs.com/
このAsync転送とはなにか、という前にUSBとオーディオについて簡単に整理しておきます。
もともとUSBは汎用の周辺機器インターフェースであり、オーディオ系に特化したものではないのでオーディオ向けの工夫が必要です。
たとえばUSBのハードディスクにファイルやソフトウエアを転送するときはデータの到着順はでたらめになってもかまいませんが、最終的には確実に100%のデータがそろわなければなりません。一方でUSBのオーディオ機器であればデータが100%届くことは理想ですが多少欠けても致命的ではありません。その代わりぴったりと時間的にあわせて転送する必要があります。特に音質というファクターを重視するハイエンドオーディオにおいては単にバイナリーデータを転送すればよいのではなく、クロック'(タイミング)の情報をいかに正確に伝えるかが重要です。
そのためUSBは機器に適したいくつかのモードがあり、オーディオ機器向けにはIsochronous(アイソクロナス)転送という同時性を重視した方式が使われます。そして、その中でも同期の取り方でさらにいくつかの方式があります。
従来のほとんどの機器が使用しているのはAdaptive方式というもので、受け手側(DAC)が動的にクロックを抽出することを前提としています。
この方式の利点はそもそもPCではさまざまな処理が行われてUSBバスの占有が不確かなうえ、外部クロック(PCの基準クロック)自体もオーディオ的には不正確だからです。簡単に言うと信号がまちまちでいつ来るか分からないので、受け手のほうでPLLなどを使って動的にタイミングをあわせるということです。
Adaptiveは適合するということなのですが、端的に言うとPCの都合のいいようにDACがあわせているということでしょう。つまりそこでジッターが大きく発生してしまいます。
Async方式は逆に受け手(DAC)は固定のクロック(タイミング)を持っていて、送り手がそれにあわせるというものです。そうするとDACは固定クロックを使えるのでこれはオーディオ的に好都合です。
しかし今度はDACの都合にPCがあわせる必要があります。そのソフトウエアは普通のものとは異なるというのは容易に推測ができるでしょう。では具体的にどうするのか、というと実のところそこを書いた記事というのはあまりないように思えます。というのはその具体的な手段(実装)こそがミソだからです。
ここでのポイントはUSBにおけるAsync転送自体が優れているのではなく、Async転送はUSBのひとつのモードに過ぎないので、このモードを使ってどうやってそうした理想的な転送を実現させるかというソフトウエアの実装の部分です。海外の記事では良くGordonのコードと書かれたりします。それゆえ、Ayreもそのコードライセンスを獲得してQB-9を設計したというわけです。もしAsync転送自体がキーならばそうしたライセンスを取る必要はありません。
Wavelengthの代表であるGordon氏はオーディオ好きのソフトウエア技術者がこうじて、メーカーを作ったそうです。基本的にはWavelengthは真空管アンプなどを作る会社だったのですが、根がそうしたコンピューター系技術者だったのでUSB転送という方式に目が向けられたということなのでしょう。
"Gordonのコード"によるジッターの低減率は二桁違うとも言いますので劇的な低減です。
Ayreのページにもこちらに解説(PDF)があります。
2. Wavelength Protonとは
ProtonはWavelengthのUSB DACです。入出力はシンプルでデジタル入力はUSB入力がひとつとアナログRCA出力がひとつのみです。96/24まで対応しています。
またミニプラグでヘッドホンアンプがついています。
インストールは通常のUSB DACと同様に接続するだけです。
Wavelengthの製品は比較的高価なものが多いので、Protonはエントリー価格帯に属するもので$900です。"Price from $900"となにか他にオプションがあるようにも見受けられますが、fromは間違いのようで、オプションはないとのこと。(他のモデルはオプションで価格が高くなるのでそれをコピーしてきたようです)
外見上はシンプルに見えますが、Protonには以下のような個性的な特徴があります。
2-1. Async-USBのサポート
Protonの最大の特徴はさきに書いたGordonのコードによるAsync転送をサポートしていることです。
これまでのUSB DACというと、たとえばDAC機能を持ったUSBレシーバーのPCM2702系などをそのまま簡易DACとして使ってしまうというのが最も簡単な形です。
もう少し進歩したものではUSBレシーバーのPCM2702系は単にSPDIFとかI2Sのコンバーターとして使用して、DACは独立したチップで行うというのが従来の多くの「高性能USB DAC」でした。ただその方法ではDACチップのフロントエンドなどでジッター低減することはできますが、もとのUSB転送自体の根本的な解決にはならないというわけです。そこを改善するのがAsync転送ですが、Async転送自体は前の章をご覧ください。
このProtonやQB-9はTAS1020というTIの新しい世代のUSBレシーバーを使用しています。このチップも大きく関連しているようです。
2-2. バッテリー駆動であること
Protonは電源不要でUSBポートから給電できます。しかしいわゆるUSBバスパワーとはちょっと違います。ここがProtonのもうひとつのポイントです。
USBは電力も外部機器に供給できるため、そのUSBバスパワーを使うことで独立した電源コードは不要になるという利便性があります。しかし、その電源はPCというノイズの巣窟から出てくるわけなので、クリーンであることを期待できません。
そのためProtonではリチウムイオン電池を内蔵していて、主要なオーディオ回路にはいったんバッテリーにためた電力を供給しています。
これによりPCからでもクリーンなノイズレスの電源を供給できるというわけです。
2-3. ヘッドホンアンプ内蔵であること
Protonにはミニのヘッドホン端子が装備されていて、ヘッドホンアンプも内蔵されています。これもブラックゲートなどが使われていて、おまけ以上のものになっています。
nuforceなんかもそうですが、アメリカのこうしたマニアック系のメーカーはこういうところにも手を抜かないところが好感が持てます。
ただプラグに挿してもラインアウトはミュートされません。
3. Protonの音質
ここではとりあえず届いたばかりの第一印象を書いてみます。
システムは下記の通りです。
WindowsXP SP2->Proton->RWA Signature30->JohnBlue JB3
ヘッドホンは直接Protonのミニ端子から取っています。
プレイヤーはSamplitudeやWinamp,Foobar2kなど多種使用して試しています。
まずスピーカーで聞くと音が滑らかでスムーズというのが第一印象です。これはたぶんバッテリー駆動というところも拠るところが大きいと思います。音調はニュートラルですが音楽的で美しく感じます。楽器の細かいニュアンスをよく再現し、響きが気持ちよく聴こえます。
ハイサンプリングの96/24などの古楽をかけてみると透明感に吸い込まれそうな感じになります。また、Handsなんかのウッドベースのピチカートの小気味よさ、切れの良さはかなり秀でています。
全体にオーディオ機器としての質感の高さを感じさせてくれます。
ヘッドホンアンプもかなりよく出来ています。
平面型のAudeze LCD-1で聴いてみると細やかさや立体感が際立ちます。こうした反応の早いヘッドホンと組み合わせるとProton独特の滑らかさと両立するタイトさ、エッジがきりっとしたシャープさが堪能できます。
パニアグア古楽合奏団の良録音盤では背景にかすかに入っている鳥の声が有名ですが、これがかなり明瞭に聞き取れます。背景もかなり静かでよく微細音を拾うと思います。SNは高いでしょう。
この贅肉がなく気持ちよく引き締まった音からはかなりジッターが低減されている様子がうかがえます。思わずもう一度接続を確かめてみて本当にUSBから出ているのかを確認してしまいました。
ノートPCとAudioEngine2のような高性能アクティブスピーカーと組み合わせてデスクトップでの鳴りを楽しむのもよいでしょうが、もっと本格的にオーディオシステムに組み合わせるポテンシャルがあると思います。
この辺はもう少しバーンインしてからいろいろと試してみたいと思います。
ただAsync転送は本物だということはだんだんつかめてきました。
(写真のノートPCはB5ノートです)
4. Async転送とUSBオーディオの明日
Async転送はUSBの可能性を一歩進めましたが、いままでおまけ的に扱われてきたUSB接続が果たして本格的なオーディオ分野でSPDIFなみに主流の地位を占めるか、という問いについてはPS Audioの最新のニュースレター(11月号)に興味深い記事が載っていました。
それは先月号のニュースレター(10月号)でPS AudioのPaul氏が(Async転送は良いと認めたうえで)USBでは96/24の転送が限界であり、長期的に見てオーディオのハイサンプリングの流れではSPDIFやAESのような主流になれない、と説いたところ、このGordon氏から反論のメールが来たというものです。
それによると96/24の限界は単に現行のチップの製品としての限界であり、USBの仕様的な限界ではないということです。どうやらGordon氏の開発環境では試験的にUSBでもAsync転送で192/24まで到達しているようです。
来年はUSB3.0が登場してきます。
USB3.0では転送速度が10倍になりますが、ケーブル自体も変更されて信号線が増えるということもあり、その影響もどうでるか分かりません。
USBとオーディオのかかわりについては来年に向けてさらに注目度が高まると思います。