HIFIMAN SUNDARA Closed-BackはSUNDARAの密閉型バージョンとなる平面磁界型ヘッドフォンです。
10月28日に発売され、価格は55,880円です。SUNDARAの音性能を継承しつつ、密閉型だが開放型のような音場感を目指したヘッドフォンです。
以下の記事では前タイプのSUNDARAをSUNDARA開放型と呼びます。
* 特徴
ベースモデルのSUNDARAは2018年に発売されたスタンダードクラスの平面磁界型ヘッドフォンです。
HIFIMANはAUDEZEと並んで今日の平面磁界型ヘッドフォンの隆盛に導いた功労者ですが、その製品ラインナップも広くハイエンドだけではなくHE400など低価格機にも平面型を広げてきましたが、このSUNDARAはその結実と言えるようなコスパの高いヘッドフォンでした。これは開放型でしたが、そのイヤカップを木製にして密閉型にしたのが今回のSUNDARA Closed-Backです。
SUNDARA Closed-Backにおいては新たにステルスマグネットが採用されている点も特徴です。
従来の平面型ヘッドフォンにおけるマグネットはマグネット自体が回析減少で空気の流れを乱してしまい、音質を劣化させてしまいます。そこで特殊形状の「ステルス・マグネット」を採用して、空気の流れをあまり乱すことなく透過させることで音質劣化を防いでいるわけです。つまり透過的なエアフローを、見えないステルスに例えているわけです。これによって歪みの少ない、ピュアでハーモニーを阻害しない音楽再現を実現しているということです。
下の図を見てもらうとわかりますが、従来のマグネットは四角く、ステルス・マグネットは丸くなっています。回析というのは波が回り込む現象を言います。回り込みが多いということは直進する成分が減っているということですので、これによってエアフローが最適化されているということでしょう。
またSUNDARA Closed-BackにおいてはHIFIMAN独自のNEO “supernano”振動板(NsD)搭載されています。
この新しいNsD振動板はSusvaraなどの高級モデルのために開発された技術でNEOスーパーナノ(NsD)振動板は以前よりも75%薄く、より歪みのないハイスピードサウンドを提供できるというものです。
ハウジングにはブナ材の木製イヤカップを使用しています。これは職人が手作業で丁寧に組み立てているとのことです。ヘッドバンドはマットブラックでアルミと皮革をハイブリッド構成で使用しています。
標準ケーブルは着脱式で3.5mmの両出しタイプです。
製品仕様は以下の通りです。
周波数特性 6Hz-50kHz
インピーダンス 20Ω
感度 : 98dB
重量: 432g
* インプレッション
試聴にはヘッドフォンアンプとしてA&K Acro CA1000を使用しました。
各部は十分に剛性感があり、側圧はややきつめなくらいでよくフィットします。重さ的にはSUNDARA開放型よりも50g程度重いのですが、長時間使用して首が痛くなるほどではありません。
能率はやや鳴らしにくい方ですがSUNDARA開放型よりも多少鳴らしやすくなっています。CA1000だとHighゲインを使いました。
SUNDARA Closed-BackはヘッドバンドなどはSUNDARAと同じですが、なかなか綺麗な仕上げのウッドカップになっています。単に密閉型にしたんではなく木材を使用した点が良いですね。この価格帯で木製ヘッドフォンはなかなかないので、ちょっと高級なものを欲しい人にも向いています。
肝心の音質ですが、たしかに密閉型にしてはすっきりとしてこもり感が少ない方で、音場がかなり広いと感じます。それでいて低音はぐっと密度感のある密閉型らしいサウンドが楽しめます。ずしっとした重みのある低音です。
楽器やヴォーカルの定位感というか音の重なり感を感じられると思います。この辺の強みはSUNDARA開放型からきちんと引き継がれている特徴です。この音の立体感という点においてはSUNDARA Closed-Backはこの価格帯にしてはかなりレベルが高い方だと思います。
低音も密閉型らしい重みのある低音なのにきりっと引き締まってタイトなのがいいですね。ロックなんかでは畳み掛けるようなドラミングがとても気持ち良く楽しめます。ジャズトリオのような落ち着いて疾走感のある感じもよく伝わってきます。振動板が薄くて軽いだけあって、歯切れも良くスピード感があるのでノリのよい音楽にもむいています。音の素早さ、整った周波数再現性はこのクラスのヘッドフォンではなかなか聞くことができず、また平面型らしいと感じるところでもあります。
低音が良いだけではなく高域もよくチューニングされていてきつさは抑え気味ながらシャープに聞こえます。ベルやハイハットの高音も綺麗で澄んでいます。そして特に中音域が良いのでヴォーカルがとてもよく感じられます。
またウッドカップらしい音の響きがあって音楽を美しく聴くことができます。木製ヘッドフォンの入門にも良いと思います。
SUNDARA Closed-Backは平面型の良いところでもありますが、性能が高くても誇張感はあまり大きくないので合わせるジャンルは広いと思います。電子音が主体の音楽でも、アコースティックな音楽でも広く合います。またヴォーカルがとても魅力的なのでアニソンなんかにも良いですね。ヴォーカルがきれいにバックの楽器群と分かれて聞こえるので多少込み入った音楽でもヴォーカルを楽しみやすいと思います。
付属ケーブルは余裕があれば変えてみると高級感のあるハイグレードな音を楽しめると思います。手元にこのタイプの交換ケーブルがないので変えて試せませんが、ヘッドフォン自体はもっとポテンシャルはあるように感じます。この点はオリジナルのSUNDARA開放型と同じです。
* オリジナルのSUNDARA開放型との比較
SUNDARA開放型と比べてみると単に密閉型になっただけではなく、音質的にさらに向上しているのが感じられます。まず音の広がりがSUNDARA Closed-Backの方が少し広く、ちょっと驚くことに開放型よりもあるように感じられます。水平的だけではなくSUNDARA Closed-Backの方が逆に立体的な広がり感も高く感じられます。
開放型特有の音の抜けの良さとかすっきり感ではSUNDARA開放型の方がややすっきりとはしています。ただ低音はSUNDARA開放型は鋭くても軽めなのに対して、SUNDARA Closed-Backでは同じくらいタイトでかつ密度感があり重くベースらしく感じます。
弦楽器の響きも着色感の少なかったSUNDARA開放型に比べるとclosedでは少し暖かみが乗ってより響きも深く美しく楽しめます。この音の響きの違いも大きな違いの一つです。おそらく木製イヤカップの関係だと思います。
SUNDARA開放型とSUNDARA Closed-Backを比べてみるとスペック的にはステルスマグネットだけが変化点ですが、それだけではないように思うほどには音質も進化して優れています。正直はじめは開放型が密閉型になった違いくらいかと思いましたが、実際に聞いてみるとそれ以上の進化があるように思います。
* まとめ
SUNDARA Closed-Backは密閉型ではあるけれども抜群の立体感を備え、基本的な音性能も平面型らしく高く音の歯切れの良さを味わえます。木製ヘッドフォンらしい音もするので、木製ヘッドフォンのファンにもいいと思います。ただし平面型で多少鳴らしにくいので、それなりのヘッドフォンアンプはあった方が良いです。
元のSUNDARA開放型はややモニター的な優等生の感もありましたが、Closedでは音の響きがウッドらしく良く、低音がぐっと強くなり立体感が増したことでより音楽的に楽しめるヘッドフォンになったと思います。SUNDARAとは古代サンスクリット語で美しいという意味を持っているということですが、SUNDARA Closed-Backはそれに相応しいようなコスパの良い平面磁界型ヘッドフォンになっていると思います。
Music TO GO!
2022年02月11日
高いコストパフォーマンスの平面型、HIFIMAN Edition XSレビュー
HIFIMAN EditionXSはHIFIMAN得意の平面磁界型ヘッドフォンで、2015年に発売されて性能の高さで話題となったEdition Xのアップグレードモデルです。
開放型の平面磁界型のヘッドフォンで、静電型ではないので独自の静電型ドライバーのようなヘッドフォンアンプは必要ありません。ただし後に述べるようにかなり本格的なヘッドフォンなので、普通のヘッドフォンアンプを推奨します。
価格は59,950円(税込)で、発売は2月11日からです。
EDiton XSは外観のデザインからわかるように、HIFIMANの製品系列では図のようにEdition 1000の流れを組む平面磁界型のメインストリーム上にあります。直接的にはEdition Xの後継ですが、実質的にはAnanda同等ですから、それがさらに安くなったものと言うこともできます。
Edition XSでは主に二点の大きな改良が加えられています。
1. HIFIMAN独自のステルスマグネット技術
従来の平面型ヘッドフォンにおけるマグネットはマグネット自体が回析減少で空気の流れを乱してしまい、音質を劣化させてしまいます。Edition XSでは特殊形状の「ステルス・マグネット」を採用して、空気の流れをあまり乱すことなく透過させることで音質劣化を防いでいるということです。つまり透過的なエアフローを、見えないステルスに例えているわけです。これによって歪みの少ない、ピュアでハーモニーを阻害しない音楽再現を実現しています。
下の図を見てもらうとわかりますが、従来のマグネットは四角く、ステルス・マグネットは丸くなっています。回析というのは波が回り込む現象を言います。回り込みが多いということは直進する成分が減っているということですので、これによってエアフローが最適化されているということでしょう。
2. HIFIMAN独自のNEOスーパーナノ振動板
この新しいNsD振動板はSusvaraなどの高級モデルのために開発された技術でNEOスーパーナノ(NsD)振動板は以前よりも75%薄く、より歪みのないハイスピードサウンドを提供できるというものです。
HIFIMANはAUDEZEと並んで平面磁界型ヘッドフォンのパイオニアのひとつですが、こうした技術的な蓄積が生かされているということですね。
* インプレッション
振動板の大きさを最大限にとるための楕円形のハウジングは本格的で大きな感じを受けますが、持ってみると意外と軽く感じます。実際に装着してみると側圧の柔らかさもあって長い時間つけていても快適な感じをうけます。
音を聞くとすぐにDeva等とは大きく音が違うのに気づくことでしょう。ひとつは音質がよりハイエンドの平面型の音に近いということと、周波数特性がよりフラットでニユートラルな音造りがされていることです。つまりハイエンドに近い音であり、コンシューマモデルよりもよりプロっぽい音造りがなされているわけです。
その分で能率は低く、スマホだとぎりぎり音量が取れるくらいなのでヘッドフォンアンプ推奨です。試聴ではChord Hugo2で聴きました。
音の印象は透明感がひときわ高く音空間が立体的に広大と感じられます。解像力が高く、ハイスピードで静電型っぽい平面磁界型の良さを味わえるような高いレベルの音質です。価格に対しての実力は相当高いと言えるでしょう。
音傾向はニュートラル・フラットで色付けも少ない感じです。音が遠すぎずにあまり客観的になりすぎないので、モニターというよりは多少リスニング寄りの音に聞こえます。
周波数特性はフラットで密閉型ダイナミックに慣れてると低音は一見軽めに感じると思います。ただし超低域はかなり低い方まで沈んでいてサブベースも含んだ低域の量感はけっこうあります。高音域はベルの音は鮮明だがきつさは少ないので良くチューニングされてるか特性が良いと思います。楽器音は澄んでいて歪みが少ない感じです。かなり自然なワイドレンジ感がありますね。
音の歯切れが良く、歪み感が少ないので楽器音はとても美しく聞こえます。下手に低音誇張してないのでヴォーカルもマスクされずにかなり明瞭感高く声がはっきりと聴こえます。とても細かい音までよく拾う解像力があり、迫力ある音までダイナミックレンジも広いことでしょう。
音楽ジャンルで言うとスケール感のあるクラシックのオーケストラサウンドを堪能したい感じの音です。楽器音の定位感がよく、スピード感もあるのでジャズトリオも良いですね。
ゼンハイザーHD800に似たモニター的で素直な特性なので、HD800とも聴き比べてみました。
HD800と比べると重量はより軽くて側圧も抑えめなので、より快適さも高いと感じられます。フラットでワイドレンジなど音の個性はよく似ているんですが、Edition XSの方が全体により透明感があって楽器音がより鮮明に楽しめます。Edition XSのほうがより情報量があって音に厚みもあります。音傾向はHD800の方がやはりモニター的というかより客観的で少し奥の席で聞いてる感じです。Edition XSはもう少し前の席でよりリスニング寄りですね。
*まとめ
Edition XSはいわゆるドンシャリとは対極的なハイファイで音が良いヘッドフォンです。音もスピードがあり平面磁界型らしさが味わえます。おそらくリケーブルするとさらにひとランク上になるように思います。ミッドクラスの価格でいきなりハイエンドの音が味わえるコスパの良いヘッドフォンで、本格的な平面型の音を求めている人におすすめです。しかしこの価格でこんな音が手に入るようになったんですね。
開放型の平面磁界型のヘッドフォンで、静電型ではないので独自の静電型ドライバーのようなヘッドフォンアンプは必要ありません。ただし後に述べるようにかなり本格的なヘッドフォンなので、普通のヘッドフォンアンプを推奨します。
価格は59,950円(税込)で、発売は2月11日からです。
EDiton XSは外観のデザインからわかるように、HIFIMANの製品系列では図のようにEdition 1000の流れを組む平面磁界型のメインストリーム上にあります。直接的にはEdition Xの後継ですが、実質的にはAnanda同等ですから、それがさらに安くなったものと言うこともできます。
Edition XSでは主に二点の大きな改良が加えられています。
1. HIFIMAN独自のステルスマグネット技術
従来の平面型ヘッドフォンにおけるマグネットはマグネット自体が回析減少で空気の流れを乱してしまい、音質を劣化させてしまいます。Edition XSでは特殊形状の「ステルス・マグネット」を採用して、空気の流れをあまり乱すことなく透過させることで音質劣化を防いでいるということです。つまり透過的なエアフローを、見えないステルスに例えているわけです。これによって歪みの少ない、ピュアでハーモニーを阻害しない音楽再現を実現しています。
下の図を見てもらうとわかりますが、従来のマグネットは四角く、ステルス・マグネットは丸くなっています。回析というのは波が回り込む現象を言います。回り込みが多いということは直進する成分が減っているということですので、これによってエアフローが最適化されているということでしょう。
2. HIFIMAN独自のNEOスーパーナノ振動板
この新しいNsD振動板はSusvaraなどの高級モデルのために開発された技術でNEOスーパーナノ(NsD)振動板は以前よりも75%薄く、より歪みのないハイスピードサウンドを提供できるというものです。
HIFIMANはAUDEZEと並んで平面磁界型ヘッドフォンのパイオニアのひとつですが、こうした技術的な蓄積が生かされているということですね。
* インプレッション
振動板の大きさを最大限にとるための楕円形のハウジングは本格的で大きな感じを受けますが、持ってみると意外と軽く感じます。実際に装着してみると側圧の柔らかさもあって長い時間つけていても快適な感じをうけます。
音を聞くとすぐにDeva等とは大きく音が違うのに気づくことでしょう。ひとつは音質がよりハイエンドの平面型の音に近いということと、周波数特性がよりフラットでニユートラルな音造りがされていることです。つまりハイエンドに近い音であり、コンシューマモデルよりもよりプロっぽい音造りがなされているわけです。
その分で能率は低く、スマホだとぎりぎり音量が取れるくらいなのでヘッドフォンアンプ推奨です。試聴ではChord Hugo2で聴きました。
音の印象は透明感がひときわ高く音空間が立体的に広大と感じられます。解像力が高く、ハイスピードで静電型っぽい平面磁界型の良さを味わえるような高いレベルの音質です。価格に対しての実力は相当高いと言えるでしょう。
音傾向はニュートラル・フラットで色付けも少ない感じです。音が遠すぎずにあまり客観的になりすぎないので、モニターというよりは多少リスニング寄りの音に聞こえます。
周波数特性はフラットで密閉型ダイナミックに慣れてると低音は一見軽めに感じると思います。ただし超低域はかなり低い方まで沈んでいてサブベースも含んだ低域の量感はけっこうあります。高音域はベルの音は鮮明だがきつさは少ないので良くチューニングされてるか特性が良いと思います。楽器音は澄んでいて歪みが少ない感じです。かなり自然なワイドレンジ感がありますね。
音の歯切れが良く、歪み感が少ないので楽器音はとても美しく聞こえます。下手に低音誇張してないのでヴォーカルもマスクされずにかなり明瞭感高く声がはっきりと聴こえます。とても細かい音までよく拾う解像力があり、迫力ある音までダイナミックレンジも広いことでしょう。
音楽ジャンルで言うとスケール感のあるクラシックのオーケストラサウンドを堪能したい感じの音です。楽器音の定位感がよく、スピード感もあるのでジャズトリオも良いですね。
ゼンハイザーHD800に似たモニター的で素直な特性なので、HD800とも聴き比べてみました。
HD800と比べると重量はより軽くて側圧も抑えめなので、より快適さも高いと感じられます。フラットでワイドレンジなど音の個性はよく似ているんですが、Edition XSの方が全体により透明感があって楽器音がより鮮明に楽しめます。Edition XSのほうがより情報量があって音に厚みもあります。音傾向はHD800の方がやはりモニター的というかより客観的で少し奥の席で聞いてる感じです。Edition XSはもう少し前の席でよりリスニング寄りですね。
*まとめ
Edition XSはいわゆるドンシャリとは対極的なハイファイで音が良いヘッドフォンです。音もスピードがあり平面磁界型らしさが味わえます。おそらくリケーブルするとさらにひとランク上になるように思います。ミッドクラスの価格でいきなりハイエンドの音が味わえるコスパの良いヘッドフォンで、本格的な平面型の音を求めている人におすすめです。しかしこの価格でこんな音が手に入るようになったんですね。
2021年12月22日
コスパの高い静電型セットHifiman JADE II
Hifiman Jade IIは静電型ヘッドフォンとアンプのセット製品です。HIFIMANは平面磁界型のヘッドフォンの他に静電型ヘッドフォンでも海外では先駆的に取り組んできたメーカーです。静電型ヘッドフォンはバイアス電圧をかける必要があるのでSTAXで言うドライバーのような専用のアンプを必要とします。つまりJADEIIはそれがセットになっている製品です。
静電型ヘッドフォンは振動板がとても薄く、平面型(全面駆動)方式ですが平面磁界型のようにコイルがないためとても軽量にできます。そのため可能となった独特の高精細な音の世界はオーディオファンを魅了してきましたが高価な製品が多く、しかも専用アンプまで必要なのでなかなか手を出しにくい分野ではありました。JadeIIはShangri-LaなどHIFIMANの静電型機で培った静電型の知見を活かしながら、セットで¥187000と20万円を切るようなかなり低価格に抑えた製品です。
JadeIIは開放型のヘッドフォンで、高域は90kHzまで達するワイドレンジ設計が為されています。技術的にはShangri-La Jrを基にしていて、独特の青みを秘めたナノテクノロジードライバーや音を濁さない超薄型のダストカバーなどを引き継いでいます。ヘッドフォン自体は365gと軽量に設計されています。
JadeIIの付属アンプはSTAX Pro端子なので、他の STAX Pro端子のヘッドフォンと互換性があるでしょう。また実際に試してはいませんが、ヘッドフォンも他のSTAX Pro端子の静電型アンプに使用できると思います。
インプレッション
静電型アンプはシンプルなミニマルデザインですが価格に似合わないくらいの堂々としたかなり本格的な作りのアンプで、操作はボリュームと入力切替のみのシンプルな構成です。
ヘッドフォンは軽く長時間聴いていても疲れは少ないと思います。側面が緑色に光るのも面白い点です。
ケーブルは平たいタイプで取り回しは悪くないですね。
アンプ背面
音は静電型らしくとても細かく音のエッジの立ち上がりが早く感じられます。ヴァイオリンやウッドベースの弦の鳴りの豊かさが気持ち良く、これは静電型ならではの愉悦だと思いますね。ウッドベースはピチカートのキレが良くシャープだがきつさがないのも良い点です。
帯域バランスの良さは平面型ならではの良さで、誇張されている帯域はありません。どんな曲でも低域が膨らんだり、いやな音を出すピークは感じられません。高域のベルの音は美しく響き歪み感の少なさを感じさせる。
音の歯切れが良くスピード感があるのでハイテンポのジャズトリオなどもスピード感のあるライブが堪能できます。
ヘルゲリエントリオのTake Fiveではドラムスの打撃感と音の歯切れの良さ、ハイハットの音のシャープさに感嘆します。楽器音もかなり正確で再現度が高いと思います。また音と音の間にプレーヤーが、よくライブで出すようなかすれ声を入れているのがはっきりと聴こえています。楽器音の情報量の多さとともにかなり生々しいサウンドを感じさせますね。音空間も広くMCのヴォーカルと観客との距離感がよく感じられる。
Dhafer YoussefのBirds Requiemではファルセットの伸びが静電型らしく素晴らしく、民族楽器と絡んで行く様がよく表現されています。上原ひろみのAliveではロックのようにパワフルなジャズピアノがよく再現されて彼女らしい白熱したプレイを感じさせる。SHANTIも録音にこだわるアーティストですが、Memoriseではこう歌いたいという唇の動きがよく伝わってくるのがわかります。
ダイナミックレンジの広いアルヴォ・ペルトのIn Principioを聴くと、迫力ある音圧のオーケストラのサウンドに圧倒されてしまう。家にいながらこれだけの音が楽しめるならばなにをかいわんやです。
Amazon Music unlimitedでハイレゾを聞いてみましたが、音は素晴らしくハイレゾサウンドをストリーミングで聞くのも良いものです。アニソンを聴くと普通のダイナミックヘッドフォンよりもヴォーカルと演奏が団子にならずに分離できるので、それぞれ聞き取りやすい点も優れていると思う。ダイナミックヘッドフォンと高性能アンプだと、アニソンとかポップなどはごちゃごちゃとして少しうるさい感じの音になるが、JadeIIでは音が整理されて聞こえるのも良い点だと思います。
日頃スピーカーで聴いている人が夜に聞くのにも向いていると思います。もちろん言うまでもなくDACが良いほど能力を発揮できる製品です。
実際にShanglila JRと聞き比べてみましたが、少しダイナミックレンジがShanglilaのほうが広く余裕のある音再現ではありますが、全体的に少し譲る程度でそう大きく聞き劣りはしないのでかなりコスパは良いと言えるでしょう。国産の静電型ヘッドフォンと比べても遜色ないレベルだと思います。
価格がアンプとヘッドフォンのセットで18万円ということなので、かなりコスパが高いと言えます。音的にはセットで数十万くらいでもおかしくない感じです。平面磁界型で20万の予算でこの音クラスの良いアンプと良いヘッドフォンを揃えるのは無理なのではないでしょうか。
なおHIFIMANでは来年1/3から1/8くらいまでAmazonで最大15%オフのタイムセールを予定しているそうです。興味ある方はチェックしてください。
静電型ヘッドフォンは振動板がとても薄く、平面型(全面駆動)方式ですが平面磁界型のようにコイルがないためとても軽量にできます。そのため可能となった独特の高精細な音の世界はオーディオファンを魅了してきましたが高価な製品が多く、しかも専用アンプまで必要なのでなかなか手を出しにくい分野ではありました。JadeIIはShangri-LaなどHIFIMANの静電型機で培った静電型の知見を活かしながら、セットで¥187000と20万円を切るようなかなり低価格に抑えた製品です。
JadeIIは開放型のヘッドフォンで、高域は90kHzまで達するワイドレンジ設計が為されています。技術的にはShangri-La Jrを基にしていて、独特の青みを秘めたナノテクノロジードライバーや音を濁さない超薄型のダストカバーなどを引き継いでいます。ヘッドフォン自体は365gと軽量に設計されています。
JadeIIの付属アンプはSTAX Pro端子なので、他の STAX Pro端子のヘッドフォンと互換性があるでしょう。また実際に試してはいませんが、ヘッドフォンも他のSTAX Pro端子の静電型アンプに使用できると思います。
インプレッション
静電型アンプはシンプルなミニマルデザインですが価格に似合わないくらいの堂々としたかなり本格的な作りのアンプで、操作はボリュームと入力切替のみのシンプルな構成です。
ヘッドフォンは軽く長時間聴いていても疲れは少ないと思います。側面が緑色に光るのも面白い点です。
ケーブルは平たいタイプで取り回しは悪くないですね。
アンプ背面
音は静電型らしくとても細かく音のエッジの立ち上がりが早く感じられます。ヴァイオリンやウッドベースの弦の鳴りの豊かさが気持ち良く、これは静電型ならではの愉悦だと思いますね。ウッドベースはピチカートのキレが良くシャープだがきつさがないのも良い点です。
帯域バランスの良さは平面型ならではの良さで、誇張されている帯域はありません。どんな曲でも低域が膨らんだり、いやな音を出すピークは感じられません。高域のベルの音は美しく響き歪み感の少なさを感じさせる。
音の歯切れが良くスピード感があるのでハイテンポのジャズトリオなどもスピード感のあるライブが堪能できます。
ヘルゲリエントリオのTake Fiveではドラムスの打撃感と音の歯切れの良さ、ハイハットの音のシャープさに感嘆します。楽器音もかなり正確で再現度が高いと思います。また音と音の間にプレーヤーが、よくライブで出すようなかすれ声を入れているのがはっきりと聴こえています。楽器音の情報量の多さとともにかなり生々しいサウンドを感じさせますね。音空間も広くMCのヴォーカルと観客との距離感がよく感じられる。
Dhafer YoussefのBirds Requiemではファルセットの伸びが静電型らしく素晴らしく、民族楽器と絡んで行く様がよく表現されています。上原ひろみのAliveではロックのようにパワフルなジャズピアノがよく再現されて彼女らしい白熱したプレイを感じさせる。SHANTIも録音にこだわるアーティストですが、Memoriseではこう歌いたいという唇の動きがよく伝わってくるのがわかります。
ダイナミックレンジの広いアルヴォ・ペルトのIn Principioを聴くと、迫力ある音圧のオーケストラのサウンドに圧倒されてしまう。家にいながらこれだけの音が楽しめるならばなにをかいわんやです。
Amazon Music unlimitedでハイレゾを聞いてみましたが、音は素晴らしくハイレゾサウンドをストリーミングで聞くのも良いものです。アニソンを聴くと普通のダイナミックヘッドフォンよりもヴォーカルと演奏が団子にならずに分離できるので、それぞれ聞き取りやすい点も優れていると思う。ダイナミックヘッドフォンと高性能アンプだと、アニソンとかポップなどはごちゃごちゃとして少しうるさい感じの音になるが、JadeIIでは音が整理されて聞こえるのも良い点だと思います。
日頃スピーカーで聴いている人が夜に聞くのにも向いていると思います。もちろん言うまでもなくDACが良いほど能力を発揮できる製品です。
実際にShanglila JRと聞き比べてみましたが、少しダイナミックレンジがShanglilaのほうが広く余裕のある音再現ではありますが、全体的に少し譲る程度でそう大きく聞き劣りはしないのでかなりコスパは良いと言えるでしょう。国産の静電型ヘッドフォンと比べても遜色ないレベルだと思います。
価格がアンプとヘッドフォンのセットで18万円ということなので、かなりコスパが高いと言えます。音的にはセットで数十万くらいでもおかしくない感じです。平面磁界型で20万の予算でこの音クラスの良いアンプと良いヘッドフォンを揃えるのは無理なのではないでしょうか。
なおHIFIMANでは来年1/3から1/8くらいまでAmazonで最大15%オフのタイムセールを予定しているそうです。興味ある方はチェックしてください。
2021年04月13日
HIFIMANの新機軸ヘッドフォンHE-R10D (ダイナミックドライバー版)レビュー
HIFIMANから4月15日に新しいヘッドフォンが登場します。形は某社の名機R10を思わせる大型のヘッドフォンで、ダイナミック版のHE-10Dと平面型ドライバー版がありますが、今回はダイナミック型のレビューです。価格は税込み138,800円です。
注)デモ機で試聴したのでブログの写真のBlueminiは第一世代のものですが、製品には第二世代が付属しています。
* HE-R10Dの特徴
1 大型のトポロジー振動板を採用
HE-R10Dの特徴は見た目もさることながら、初めて大型振動板のヘッドフォンとしてトポロジー振動板が採用されたことです。トポロジー振動板はHIFIMAN創業者であるFang博士の研究論文「個々に異なる形状の振動板上のナノ素材は異なる構造と特性を有する」から派生したもので、適切にナノ素材を表面に配置することでかつてないような音響特性を得るという技術です。
ダイナミックドライバーにはBAにはない良い特徴もありますが、問題点も抱えています。そのひとつは分割振動と言う現象で、振動板の素材に伝搬特性があるため、振動が表面の場所によって異なってしまうものです。簡単に言うと(振動の)中心に比べて端が物性の関係でたわんでしまいます。これは周波数特性を劣化させて歪を生みます。これはスピーカーではツィーターでよく言及される問題です。またヘッドフォンでは平面型の利点としても紹介されます。
先に書いたようにトポロジー振動板は、「異なるナノ素材は構造が違い、特性も違う」という発想からヒントを得て開発したもので、振動板の異なる表面構造の特性を適切に調整することで、ワイドで滑らかなサウンドを実現したということです。これによって、振動板の分割振動による歪を大幅に低減させることができるということです。
トポロジーダイヤフラムを採用したRE2000はベストセラーとなりましたが、R10Dでは50mmという大口径の振動板をトポロジー振動板で設計しています。レアメタル素材の採用されているということです。
2 大型の木製イヤカップを採用
本機の見た目はいわば名機R10のオマージュ的なものですが、これはパワフルなドライバーが動作するのに十分な余裕を提供するためということです。あとで書きますが、実際に音を聴いてもその効果は実感できます。
製造には木工用CNC加工された木材と航空機グレードのアルミニウムを採用しています。
3 デジタル入力やワイヤレスでも使用可能なBlueminiが付属
HE-10D自体は普通の有線ヘッドフォンですが、HIFIMAN独自のBlueminiアダプターが付属しています。これはDEVAに付属していたものと同じです。そのためBluetoothワイヤレスと長いUSB-Cケーブルを使用してデジタル入力のヘッドフォンとしても使うことができます。これはAndroidだとより便利でしょう。
BlueminiはHE-10Dに「合体」できる専用アダプターで、DAC内蔵のヘッドフォンアンプでもあります。Blueminiによって、Bluetoothワイヤレス機能と、USB DAC機能が使えるようになります。
内蔵アンプの出力段は据え置きヘッドフォンアンプ並みの高出力を実現したということ。確認してみたところ内部はフルバランス仕様ということです。実際に音を聞いてみると納得します。またBluetoothレシーバーとしては多彩なコーデックに対応しているのも特長です。BlueminiにはUSB端子があるので、これを使用してUSB DACとしても使えます。
対応BluetoothコーデックはLDACやaptX-HDが使える優れものです。このほかにもaptX,AAC,SBCが使用できます。
このほかにHE-R10ダイナミック型ドライバー版のパッケージには、異なるヘッドフォン端子(3.5mmステケオミニ端子、4ピンのXLRバランス接続端子、6.35mm標準端子)を採用した三種類の着脱式のケーブルが同梱されています。
スペックは周波数特性が10-35kHz、インピーダンスは32オーム、重量は337gです。参考までにR10とCD3000は400gです。
* インプレッション
まず感じたのは持って見て見た目よりもだいぶ軽いということです。私はR10は持ってないんですがその簡易版というべきCD3000は持ってました。HE-R10Dはそれよりも軽いように感じられますね。側圧も軽めなので室内で長時間装着していてもあまり気にならないと思います。
外観はきれいに面取りされていて立体的な造形で、実際のR10は見たことしかないんですがたしかによくできています。ケーブルは品質が高そうですが少しタッチノイズがあります。
ケーブルはヘッドフォン側がTRRS(4極)でバランス対応ですが、両側出しではなく片出しになってます。これはBlueminiを装着するためと考えられます。
はじめにHugo2/2goの組み合わせで聴いてみました。
まず密閉型にしてはかなり音場が広いのが特徴的です。あの音場の広い開放型のHD800と比べてもそう悪くないほどです。楽器音はかなり立体感があります。
次に気がつくのは低音に力があって広い空間に響き渡るような音が出ていることです。ライブホールに響き渡るような銅鑼の音やパーカッションなどが特に印象的ですね。呪術的なパーカッションをドロドロと鳴らすような音楽だと圧倒的な迫力で楽しめます。また叩きつけるような低音のアタック感が鋭くて気持ちが良く、低音があると言ってゆるい低音ではなくなかなか上質の低音です。
高音域はわりと落ち着いて大人しめですが、ベルの音は十分にきれいに聴こえています。中域のヴォーカルは響くような低音があってもよく聞こえているが、高域が強調されていないので女声よりは男声の方が好ましく聴こえますね。
音もスピード感があってハイテンポの曲で体が乗るようなリズム感の良さもあります。たっぷりした低音との組み合わせでロックやポップなどではなかなか楽しく音楽を聴かせてくれます。
楽器の音色が整っていてあまり歪み感がない点が独特でもあるのでトポロジー振動板はこのへんに聞いているのではないかと思います。おそらく音をチューニングしながらトポロジー振動板のナノ粒子の形も決めて行っているのではないでしょうか。
低音が支配的といっても中高域もきちんと音が出ているんですが、ジャズトリオなどシンプルな音楽ではややウッドベースが重すぎる時はあります。
同じ曲をHD800と聴き比べると音質のレベルがより高いとともに、音楽を感動的に聞かせてくれるようなチューニングだと感じます。能率はやや低いんですが、鳴らしにくいほどではないです。
音は高性能でリスニングよりの音で広い音場と低音の組み合わせが密閉型ダイナミックタイプのファンにもアピールすると思う。その他の音域は整っていて音楽を聴きやすい。ロックにはなかなか好適です。シンプルな楽曲に聞き入るよりも、複雑で躍動感があるような音楽で真価を発揮するように思う。クラシックにおいてもオーケストラ曲など壮大な音楽を聴くときに向いているように思います。
次にソースをDAPで試してみます。添付のケーブルはTRRS(4極)側がヘッドフォン側なので注意。
Astell & KernのSE200を使ってみました。少しボリューム位置が高くなりますが普通のロックやポップの録音ならば十分な音量で鳴らすことができます。ただしできれば高出力タイプのDAPかアンプを組み合わせた方が良いと思います。TRRS->2.5mmなど対応ケーブルがあれば、バランスを使用するとより良いでしょう。
SE200の場合はやはりAKM側の方が高音質を感じますが、音楽を楽しむにはESS側と組み合わせた方が聴きやすく整っていて長時間楽しめると思います。DAPでもやはりたっぷりした低音と広い音場を堪能することができます。
Bluemini
Blueminiを3.5mm端子に取り付けるだけで簡単にDEVAに合体できます。これによってBTワイヤレスとUSB DACが使えるようになります。ワイヤレス機能はiPhoneから使用してます。ペアリングモードは電源ボタンの長押しではなく二回押し(ダブルクリックみたいに)なので注意してください。
Blueminiを使用すると手軽にワイヤレスヘッドフォンとして使用できるのでかなり便利です。しかもBlueminiは音質がなかなか良いです。DEVAのときよりもさらに音が良いHE-R10Dだとそれを堪能できます。Blueminiがバランス駆動アンプを搭載しているので能率のやや低いHE-R10Dでも躍動感あふれる音で鳴らせます。これだけ音質の高いヘッドフォンがワイヤレスということはあまりないので、この組み合わせ目当てで買うのもアリだと思います。
まとめ
オマージュ的な感じでR10の形にしているのかと思えば、このカップの容積の大きさが音にも聞いているような気がしますね。たしかにCD3000もこうした広い感じの音だったように思えますが、さすがにクリアさや音質はだいぶHE-R10Dの方がすぐれています。
R10を思わせる見た目はクラシカルだが、中身は最新の設計がなされています。またワイヤレス対応が標準で付いているのもポイントでしょう。BlueminiはDEVAの記事でも書いたが大変に優秀なBluetoothアダプターで、HE-R10Dのような高性能機でその真価を発揮すると言っても良いと思います。
特にHE-R10Dは広い音場とたっぷりした低音が出るのでiPadなどと組みわせて映画を見るのにとても適しているのに気がつきます。かなり大迫力で楽しめますね。爆発シーンなどでも遅延をそう大きく感じるようなことはないと思います。
ダイナミック型の密閉型らしいたっぷりした低音がありながら、音場も十分に広い点が魅力的な機種といえるでしょう。
注)デモ機で試聴したのでブログの写真のBlueminiは第一世代のものですが、製品には第二世代が付属しています。
* HE-R10Dの特徴
1 大型のトポロジー振動板を採用
HE-R10Dの特徴は見た目もさることながら、初めて大型振動板のヘッドフォンとしてトポロジー振動板が採用されたことです。トポロジー振動板はHIFIMAN創業者であるFang博士の研究論文「個々に異なる形状の振動板上のナノ素材は異なる構造と特性を有する」から派生したもので、適切にナノ素材を表面に配置することでかつてないような音響特性を得るという技術です。
ダイナミックドライバーにはBAにはない良い特徴もありますが、問題点も抱えています。そのひとつは分割振動と言う現象で、振動板の素材に伝搬特性があるため、振動が表面の場所によって異なってしまうものです。簡単に言うと(振動の)中心に比べて端が物性の関係でたわんでしまいます。これは周波数特性を劣化させて歪を生みます。これはスピーカーではツィーターでよく言及される問題です。またヘッドフォンでは平面型の利点としても紹介されます。
先に書いたようにトポロジー振動板は、「異なるナノ素材は構造が違い、特性も違う」という発想からヒントを得て開発したもので、振動板の異なる表面構造の特性を適切に調整することで、ワイドで滑らかなサウンドを実現したということです。これによって、振動板の分割振動による歪を大幅に低減させることができるということです。
トポロジーダイヤフラムを採用したRE2000はベストセラーとなりましたが、R10Dでは50mmという大口径の振動板をトポロジー振動板で設計しています。レアメタル素材の採用されているということです。
2 大型の木製イヤカップを採用
本機の見た目はいわば名機R10のオマージュ的なものですが、これはパワフルなドライバーが動作するのに十分な余裕を提供するためということです。あとで書きますが、実際に音を聴いてもその効果は実感できます。
製造には木工用CNC加工された木材と航空機グレードのアルミニウムを採用しています。
3 デジタル入力やワイヤレスでも使用可能なBlueminiが付属
HE-10D自体は普通の有線ヘッドフォンですが、HIFIMAN独自のBlueminiアダプターが付属しています。これはDEVAに付属していたものと同じです。そのためBluetoothワイヤレスと長いUSB-Cケーブルを使用してデジタル入力のヘッドフォンとしても使うことができます。これはAndroidだとより便利でしょう。
BlueminiはHE-10Dに「合体」できる専用アダプターで、DAC内蔵のヘッドフォンアンプでもあります。Blueminiによって、Bluetoothワイヤレス機能と、USB DAC機能が使えるようになります。
内蔵アンプの出力段は据え置きヘッドフォンアンプ並みの高出力を実現したということ。確認してみたところ内部はフルバランス仕様ということです。実際に音を聞いてみると納得します。またBluetoothレシーバーとしては多彩なコーデックに対応しているのも特長です。BlueminiにはUSB端子があるので、これを使用してUSB DACとしても使えます。
対応BluetoothコーデックはLDACやaptX-HDが使える優れものです。このほかにもaptX,AAC,SBCが使用できます。
このほかにHE-R10ダイナミック型ドライバー版のパッケージには、異なるヘッドフォン端子(3.5mmステケオミニ端子、4ピンのXLRバランス接続端子、6.35mm標準端子)を採用した三種類の着脱式のケーブルが同梱されています。
スペックは周波数特性が10-35kHz、インピーダンスは32オーム、重量は337gです。参考までにR10とCD3000は400gです。
* インプレッション
まず感じたのは持って見て見た目よりもだいぶ軽いということです。私はR10は持ってないんですがその簡易版というべきCD3000は持ってました。HE-R10Dはそれよりも軽いように感じられますね。側圧も軽めなので室内で長時間装着していてもあまり気にならないと思います。
外観はきれいに面取りされていて立体的な造形で、実際のR10は見たことしかないんですがたしかによくできています。ケーブルは品質が高そうですが少しタッチノイズがあります。
ケーブルはヘッドフォン側がTRRS(4極)でバランス対応ですが、両側出しではなく片出しになってます。これはBlueminiを装着するためと考えられます。
はじめにHugo2/2goの組み合わせで聴いてみました。
まず密閉型にしてはかなり音場が広いのが特徴的です。あの音場の広い開放型のHD800と比べてもそう悪くないほどです。楽器音はかなり立体感があります。
次に気がつくのは低音に力があって広い空間に響き渡るような音が出ていることです。ライブホールに響き渡るような銅鑼の音やパーカッションなどが特に印象的ですね。呪術的なパーカッションをドロドロと鳴らすような音楽だと圧倒的な迫力で楽しめます。また叩きつけるような低音のアタック感が鋭くて気持ちが良く、低音があると言ってゆるい低音ではなくなかなか上質の低音です。
高音域はわりと落ち着いて大人しめですが、ベルの音は十分にきれいに聴こえています。中域のヴォーカルは響くような低音があってもよく聞こえているが、高域が強調されていないので女声よりは男声の方が好ましく聴こえますね。
音もスピード感があってハイテンポの曲で体が乗るようなリズム感の良さもあります。たっぷりした低音との組み合わせでロックやポップなどではなかなか楽しく音楽を聴かせてくれます。
楽器の音色が整っていてあまり歪み感がない点が独特でもあるのでトポロジー振動板はこのへんに聞いているのではないかと思います。おそらく音をチューニングしながらトポロジー振動板のナノ粒子の形も決めて行っているのではないでしょうか。
低音が支配的といっても中高域もきちんと音が出ているんですが、ジャズトリオなどシンプルな音楽ではややウッドベースが重すぎる時はあります。
同じ曲をHD800と聴き比べると音質のレベルがより高いとともに、音楽を感動的に聞かせてくれるようなチューニングだと感じます。能率はやや低いんですが、鳴らしにくいほどではないです。
音は高性能でリスニングよりの音で広い音場と低音の組み合わせが密閉型ダイナミックタイプのファンにもアピールすると思う。その他の音域は整っていて音楽を聴きやすい。ロックにはなかなか好適です。シンプルな楽曲に聞き入るよりも、複雑で躍動感があるような音楽で真価を発揮するように思う。クラシックにおいてもオーケストラ曲など壮大な音楽を聴くときに向いているように思います。
次にソースをDAPで試してみます。添付のケーブルはTRRS(4極)側がヘッドフォン側なので注意。
Astell & KernのSE200を使ってみました。少しボリューム位置が高くなりますが普通のロックやポップの録音ならば十分な音量で鳴らすことができます。ただしできれば高出力タイプのDAPかアンプを組み合わせた方が良いと思います。TRRS->2.5mmなど対応ケーブルがあれば、バランスを使用するとより良いでしょう。
SE200の場合はやはりAKM側の方が高音質を感じますが、音楽を楽しむにはESS側と組み合わせた方が聴きやすく整っていて長時間楽しめると思います。DAPでもやはりたっぷりした低音と広い音場を堪能することができます。
Bluemini
Blueminiを3.5mm端子に取り付けるだけで簡単にDEVAに合体できます。これによってBTワイヤレスとUSB DACが使えるようになります。ワイヤレス機能はiPhoneから使用してます。ペアリングモードは電源ボタンの長押しではなく二回押し(ダブルクリックみたいに)なので注意してください。
Blueminiを使用すると手軽にワイヤレスヘッドフォンとして使用できるのでかなり便利です。しかもBlueminiは音質がなかなか良いです。DEVAのときよりもさらに音が良いHE-R10Dだとそれを堪能できます。Blueminiがバランス駆動アンプを搭載しているので能率のやや低いHE-R10Dでも躍動感あふれる音で鳴らせます。これだけ音質の高いヘッドフォンがワイヤレスということはあまりないので、この組み合わせ目当てで買うのもアリだと思います。
まとめ
オマージュ的な感じでR10の形にしているのかと思えば、このカップの容積の大きさが音にも聞いているような気がしますね。たしかにCD3000もこうした広い感じの音だったように思えますが、さすがにクリアさや音質はだいぶHE-R10Dの方がすぐれています。
R10を思わせる見た目はクラシカルだが、中身は最新の設計がなされています。またワイヤレス対応が標準で付いているのもポイントでしょう。BlueminiはDEVAの記事でも書いたが大変に優秀なBluetoothアダプターで、HE-R10Dのような高性能機でその真価を発揮すると言っても良いと思います。
特にHE-R10Dは広い音場とたっぷりした低音が出るのでiPadなどと組みわせて映画を見るのにとても適しているのに気がつきます。かなり大迫力で楽しめますね。爆発シーンなどでも遅延をそう大きく感じるようなことはないと思います。
ダイナミック型の密閉型らしいたっぷりした低音がありながら、音場も十分に広い点が魅力的な機種といえるでしょう。
2020年10月31日
HIFIMANの平面型エントリーモデル、HE400i 2020
HIFIMANはAudezeと並んで現在の平面磁界型ヘッドフォン隆盛に導く立役者です。HE400はそのラインナップの中でもエントリークラスの平面磁界型ヘッドフォンとなります。
* 特徴
最近HIFIMANの低価格機が多くなってきたので、住み分けがわかりにくい点もありますが、HE400i 2020は価格が18,700円(税込)と他のSUNDRAの37,950円やDEVAの33,000円と比べてもかなり低価格です。もともとHE400iは発売当初は6万円くらいしましたので、そのドライバーをそのままエントリーモデルに採用したという感じのヘッドフォンです。また少し上のSUNDRAに比べると能率が高いのでデジタルプレーヤーでも鳴らしやすいという面もあります。
HE400i 2020バージョンでの改良は主にヘッドバンドや外装です。
HE400i Ver2020は新規設計のヘッドバンドで以前よりも快適性が向上しています。新規設計のヘッドバンドは軽量で調整もしやすくなっています。HE400i 2020は軽いことも特徴でこれも快適性を向上させる要因となっています。
ドライバーはHE400iのドライバーをそのまま採用しています。これはシングルエンド方式(片支持方式)の平面磁界型ドライバーで、大型の振動板は信号入力に応じて低音域も高音域も高い再現製を発揮し、優れた音場感と立体感を生み出すということです。等しく配分された磁力は低歪みとリアルなサウンドに貢献するとのこと。
また能率も高く鳴らしやすいのも特徴です。93dBの能率の高さは普及型のヘッドフォンアンプで十分に鳴らすことが可能です。
* インプレッション
HE400i 2020の外観は価格の割にはけっこうな高級感があり、ヘッドバンドもイヤパッドも柔らかく感触が良いです。イヤカップはABSポリマー樹脂製で光沢チャコール仕上げであまりエントリーモデルには見えません。中級機くらいの風貌です。
ケーブルは着脱式で3.5mmプラグをコネクタに採用しています。ヘッドフォンを手に持った感覚も軽く、頭に装着してみてもかなり軽い感じですね。
音は軽快で楽器音の歯切れが良く、とても明瞭感が高いと感じられます。高域のベルの音が美しく鮮明に聞こえてきます。中音域はとてもクリアでヴォーカルはかなり聴きやすく声質がよくわかります。
音が早くスピード感がある点も高級な平面型のように優れています。やはり音の歯切れの良さやリズム感の良さ、そして音の立ち上がりや立ち下りの素早さという点もユーザーが平面型ヘッドフォンに期待することのひとつだと思いますが、HE400 2020はかなり高いレベルで期待に応えてくれると思います。
低音域のパンチは十分にありますが、わりと軽めであまり誇張感はなく周波数特性もバランスがとれています。低音過剰になりすぎないという点も周波数によるインピーダンス変動が少ない平面型の特徴と言えます。HE400i 2020はその点でもなかなか優れて特性があるように思います。ダイナミック型のイヤフォンよりはBA型イヤフォンの低域に近いという感じでしょうか。よく締まっていてタイトですが膨らみすぎない感じです。
解像力もこのクラスのヘッドフォンにしては十分ある方だと思います。
音場は奥行きなどの立体感に優れていて、音が空間に響く感じがよく伝わりますが、左右の広さは標準的というところです。
端正な音なのでむいているジャンルはジャズとかクラシックになると思います。音がなかなか良いのでそのままずっと試聴してしまいましたが、軽くて長時間つけられるという点では偽りはないと思います。
一昔前は平面型は重量も重く、サウンドも重くて暗いというのが一般的でしたが、それはどこ行ったという感じの最新のトレンドに沿った平面磁界型ヘッドフォンです。平面型も変わりましたね。DAPでもそれなりに駆動力があれば十分に音を堪能できます。
* まとめ
HE400i 2020は平面型は重いとか、音が暗いという思い込みを払拭してくれるような最新の平面磁界型ヘッドフォンです。
音は端的に言うと上級機の音を帯域特性や細やかさや低域の深みなどを少しコンパクトにしたという感じです。スピード感のある音や帯域特性の良さなど、音の個性自体はエントリーモデルというより上級機のヘッドフォンに近いものがあると思います。チュニーニングもそうですね。
2万円を切る価格でここまで本格的なサウンドのヘッドフォンはなかなかないと思います。価格が安くても音の誇張感が少ない本格的なサウンドを求めている方にオススメです。
* 特徴
最近HIFIMANの低価格機が多くなってきたので、住み分けがわかりにくい点もありますが、HE400i 2020は価格が18,700円(税込)と他のSUNDRAの37,950円やDEVAの33,000円と比べてもかなり低価格です。もともとHE400iは発売当初は6万円くらいしましたので、そのドライバーをそのままエントリーモデルに採用したという感じのヘッドフォンです。また少し上のSUNDRAに比べると能率が高いのでデジタルプレーヤーでも鳴らしやすいという面もあります。
HE400i 2020バージョンでの改良は主にヘッドバンドや外装です。
HE400i Ver2020は新規設計のヘッドバンドで以前よりも快適性が向上しています。新規設計のヘッドバンドは軽量で調整もしやすくなっています。HE400i 2020は軽いことも特徴でこれも快適性を向上させる要因となっています。
ドライバーはHE400iのドライバーをそのまま採用しています。これはシングルエンド方式(片支持方式)の平面磁界型ドライバーで、大型の振動板は信号入力に応じて低音域も高音域も高い再現製を発揮し、優れた音場感と立体感を生み出すということです。等しく配分された磁力は低歪みとリアルなサウンドに貢献するとのこと。
また能率も高く鳴らしやすいのも特徴です。93dBの能率の高さは普及型のヘッドフォンアンプで十分に鳴らすことが可能です。
* インプレッション
HE400i 2020の外観は価格の割にはけっこうな高級感があり、ヘッドバンドもイヤパッドも柔らかく感触が良いです。イヤカップはABSポリマー樹脂製で光沢チャコール仕上げであまりエントリーモデルには見えません。中級機くらいの風貌です。
ケーブルは着脱式で3.5mmプラグをコネクタに採用しています。ヘッドフォンを手に持った感覚も軽く、頭に装着してみてもかなり軽い感じですね。
音は軽快で楽器音の歯切れが良く、とても明瞭感が高いと感じられます。高域のベルの音が美しく鮮明に聞こえてきます。中音域はとてもクリアでヴォーカルはかなり聴きやすく声質がよくわかります。
音が早くスピード感がある点も高級な平面型のように優れています。やはり音の歯切れの良さやリズム感の良さ、そして音の立ち上がりや立ち下りの素早さという点もユーザーが平面型ヘッドフォンに期待することのひとつだと思いますが、HE400 2020はかなり高いレベルで期待に応えてくれると思います。
低音域のパンチは十分にありますが、わりと軽めであまり誇張感はなく周波数特性もバランスがとれています。低音過剰になりすぎないという点も周波数によるインピーダンス変動が少ない平面型の特徴と言えます。HE400i 2020はその点でもなかなか優れて特性があるように思います。ダイナミック型のイヤフォンよりはBA型イヤフォンの低域に近いという感じでしょうか。よく締まっていてタイトですが膨らみすぎない感じです。
解像力もこのクラスのヘッドフォンにしては十分ある方だと思います。
音場は奥行きなどの立体感に優れていて、音が空間に響く感じがよく伝わりますが、左右の広さは標準的というところです。
端正な音なのでむいているジャンルはジャズとかクラシックになると思います。音がなかなか良いのでそのままずっと試聴してしまいましたが、軽くて長時間つけられるという点では偽りはないと思います。
一昔前は平面型は重量も重く、サウンドも重くて暗いというのが一般的でしたが、それはどこ行ったという感じの最新のトレンドに沿った平面磁界型ヘッドフォンです。平面型も変わりましたね。DAPでもそれなりに駆動力があれば十分に音を堪能できます。
* まとめ
HE400i 2020は平面型は重いとか、音が暗いという思い込みを払拭してくれるような最新の平面磁界型ヘッドフォンです。
音は端的に言うと上級機の音を帯域特性や細やかさや低域の深みなどを少しコンパクトにしたという感じです。スピード感のある音や帯域特性の良さなど、音の個性自体はエントリーモデルというより上級機のヘッドフォンに近いものがあると思います。チュニーニングもそうですね。
2万円を切る価格でここまで本格的なサウンドのヘッドフォンはなかなかないと思います。価格が安くても音の誇張感が少ない本格的なサウンドを求めている方にオススメです。
2020年08月13日
コスパの良い平面型HIFIMAN DEVAと専用Bluetoothアダプター、レビュー
平面磁界型ヘッドフォンでは老舗のHIFIMANの新製品の特徴は、平面型なのに33,000円と価格が安いということ、そしてBlueminiというワイヤレス/USBアダプターが付属しているということです。DEVAとはサンスクリット語で「天国のような」という意味ということ。
HIFIMAN DEVAとBluemini(右)
* DEVAの特徴
平面磁界型ヘッドフォンとしての特徴はHIFIMAN独自のNEO "supernano" 振動板(NsD)を採用していることです。この新しいNsD振動板はSusvaraなどの高級モデルのために開発された技術で以前の設計よりも80%薄く、早いレスポンスと高解像力を実現して豊かなフルレンジの音質を実現するということです。HIFIMANはAUDEZEと並んで平面磁界型ヘッドフォンのパイオニアのひとつですが、こうした技術的な蓄積が生かされているということですね。また最近の平面磁界型ヘッドフォンのトレンドでもある高能率化も取り入れられているので、ソースを選ばないで鳴らせるということです。
次の特徴は新しい付属アダプターであるBlueminiとそれを生かした多彩な入出力、つまりさまざまなシーンで使えるということです。本体はアナログ入力ですが、4本独立したバランス対応の設計になっています。
Bluemini
そのためDEVAでは下記の3種類の使い方ができます。
1.アナログ有線接続
3.5mmステレオミニ、6.3mm標準プラグアダプタ付き(ヘッドフォン側はTRRS 3.5mm4極端子)
2. Bluetooth ワイヤレス (Bluemini使用)
aptx,LDAC,LHDC(HWA)に対応
3. USB デジタル有線接続 (Bluemini使用)
USB-C端子
BlueminiはDEVAに「合体」できる専用アダプターで、DAC内蔵のヘッドフォンアンプでもあります。Blueminiによって、Bluetoothワイヤレス機能と、USB DAC機能が使えるようになります。
内蔵アンプの出力段は据え置きヘッドフォンアンプ並みの高出力を実現したということ。確認してみたところ内部はフルバランス仕様ということです。実際に音を聞いてみると納得します。またBluetoothレシーバーとしては多彩なコーデックに対応しているのも特長です。BlueminiにはUSB端子があるので、これを使用してUSB DACとしても使えます。
*実機インプレ
DEVAのキャメルカラーの本体はなかなか高級感があって価格以上の感じがします。本体は軽くて側圧が弱めなので装着感は高いほうだと思います。ただしオープンタイプなので遮音性はありません。家で使うヘッドフォンですね。
やはり平面磁界型なので少し能率は低めです。DAPで音量が取れないことはないですが、Astell&KernでいうとAK380クラスだとややきつくて、SP1000以降のハイパワータイプが必要になってくるでしょう。本機は音性能的にも高いので、ソースにDAPを使うならばそのクラスが好適だと思います。
きちんと駆動力のあるアンプを使えば音は明るめで能率は平面型としては高いほうの感じがします。据え置きならばあまりハイパワーのアンプでなくても鳴らせるでしょう。
1.アナログ有線接続
まず付属の標準ケーブルでアナログ接続で聴いてみます。
感じるのは音の広がりがよい立体的な音場で、包まれるような心地よさがあります。高音域はよく伸びるがきつさがない程度に抑えられ、ベルの音が美しく響き、古楽器では倍音成分がたっぷり楽しめます。
低域は誇張感が少なく整っていて、超低域の深みがあって誇張感は少ないのですが低域は豊かです。低音にパンチのある曲では驚くほどの打撃感を感じます。全体に音のチューニングは高級機志向で、価格が安いからドンシャリで、というものではありません。
また中音域は適度な温かみがあって、厚みがあり音楽を楽しめる表現です。いわゆる音楽的な感じに近く、モニター的で無機的なものではないですね。ただしあまり過剰に暖かいわけではありません。この辺はケーブルでも変わるかもしれませんね。
かなり細かい音まで明瞭に聞くことができ、解像感もかなり高いものがあります。またスピード感があってリズムの刻みが気持ち良く、テンポの速い曲によく乗れる感じです。この辺は平面型の良さの一つです。
全体に価格に対してはかなり高いレベルでコストパフォーマンスは高いと思います。Blueminiなしでこれだけでも十分価格に見合うと思います。
HIFIMANはマニア系メーカーなので低価格モデルでもケーブルはそれほど悪くないですが、本体性能が高いのでリケーブルしても良いかもしれません。ただヘッドフォン側TRRSという点に注意が必要です。
2. Bluetooth ワイヤレス (Bluemini使用)
Blueminiを3.5mm端子に取り付けるだけで簡単にDEVAに合体できます。これによってBTワイヤレスとUSB DACが使えるようになります。ワイヤレス機能はiPhoneから使用してます。電源ボタンを青緑の明滅まで押し続けるとペアリングモードになります。
音を聞くとちょっとびっくりするくらいのパワー感を感じます。音に力感があって、躍動感があってパワフルなサウンドです。こんな小さなアダプタなのに。たしかにバランスという感じで、押しが強く立体感もあります。音には厚みもあって解像力もあり、音は安く感じません。たださすがにハイエンドDAPやDACほどの細かさはありません。躍動感があってロックにも向いていて、音の歯切れも良くトランジェントが高い感じです。
BTレシーバーとしてもかなりレベルが高いほうでしょう。これがおまけとは信じられないくらいですね。Bluminiは汎用化して単体販売しても良いと思う。
3. USB デジタル有線接続 (Bluemini使用)
BlueminiにUSBケーブルを接続します。付属のケーブルはBluemini側はUSB-CでPC側はUSB-Aですが、別にケーブルを用意すればさらに広く使えると思います。Windows 10のRoonで使用してみましたが、とくにドライバーインストールは不要で標準ドライバーで使えます。
基本的にはBluetoothワイヤレスと同じく立体感があって力感がある音ですが、有線なのでいっそう音が良く感じます。かなりレベルが高く、透明感も高いですね。
この方式のメリットはRoonなどで192/24にアップスケールして使うこともできることです。ただヘッドフォン側ボリュームがないのでDSPボリュームを使ったほうが便利です。
* まとめ
DEVAはかなりコストパフォーマンスが良く、用途が広いヘッドフォンです。ヘッドフォン自体の音質が高いのはもちろん、付属のBlueminiがやはり音も良く柔軟に使いこなせるのでかなりお得感のあるヘッドフォンです。
HIFIMAN DEVAとBluemini(右)
* DEVAの特徴
平面磁界型ヘッドフォンとしての特徴はHIFIMAN独自のNEO "supernano" 振動板(NsD)を採用していることです。この新しいNsD振動板はSusvaraなどの高級モデルのために開発された技術で以前の設計よりも80%薄く、早いレスポンスと高解像力を実現して豊かなフルレンジの音質を実現するということです。HIFIMANはAUDEZEと並んで平面磁界型ヘッドフォンのパイオニアのひとつですが、こうした技術的な蓄積が生かされているということですね。また最近の平面磁界型ヘッドフォンのトレンドでもある高能率化も取り入れられているので、ソースを選ばないで鳴らせるということです。
次の特徴は新しい付属アダプターであるBlueminiとそれを生かした多彩な入出力、つまりさまざまなシーンで使えるということです。本体はアナログ入力ですが、4本独立したバランス対応の設計になっています。
Bluemini
そのためDEVAでは下記の3種類の使い方ができます。
1.アナログ有線接続
3.5mmステレオミニ、6.3mm標準プラグアダプタ付き(ヘッドフォン側はTRRS 3.5mm4極端子)
2. Bluetooth ワイヤレス (Bluemini使用)
aptx,LDAC,LHDC(HWA)に対応
3. USB デジタル有線接続 (Bluemini使用)
USB-C端子
BlueminiはDEVAに「合体」できる専用アダプターで、DAC内蔵のヘッドフォンアンプでもあります。Blueminiによって、Bluetoothワイヤレス機能と、USB DAC機能が使えるようになります。
内蔵アンプの出力段は据え置きヘッドフォンアンプ並みの高出力を実現したということ。確認してみたところ内部はフルバランス仕様ということです。実際に音を聞いてみると納得します。またBluetoothレシーバーとしては多彩なコーデックに対応しているのも特長です。BlueminiにはUSB端子があるので、これを使用してUSB DACとしても使えます。
*実機インプレ
DEVAのキャメルカラーの本体はなかなか高級感があって価格以上の感じがします。本体は軽くて側圧が弱めなので装着感は高いほうだと思います。ただしオープンタイプなので遮音性はありません。家で使うヘッドフォンですね。
やはり平面磁界型なので少し能率は低めです。DAPで音量が取れないことはないですが、Astell&KernでいうとAK380クラスだとややきつくて、SP1000以降のハイパワータイプが必要になってくるでしょう。本機は音性能的にも高いので、ソースにDAPを使うならばそのクラスが好適だと思います。
きちんと駆動力のあるアンプを使えば音は明るめで能率は平面型としては高いほうの感じがします。据え置きならばあまりハイパワーのアンプでなくても鳴らせるでしょう。
1.アナログ有線接続
まず付属の標準ケーブルでアナログ接続で聴いてみます。
感じるのは音の広がりがよい立体的な音場で、包まれるような心地よさがあります。高音域はよく伸びるがきつさがない程度に抑えられ、ベルの音が美しく響き、古楽器では倍音成分がたっぷり楽しめます。
低域は誇張感が少なく整っていて、超低域の深みがあって誇張感は少ないのですが低域は豊かです。低音にパンチのある曲では驚くほどの打撃感を感じます。全体に音のチューニングは高級機志向で、価格が安いからドンシャリで、というものではありません。
また中音域は適度な温かみがあって、厚みがあり音楽を楽しめる表現です。いわゆる音楽的な感じに近く、モニター的で無機的なものではないですね。ただしあまり過剰に暖かいわけではありません。この辺はケーブルでも変わるかもしれませんね。
かなり細かい音まで明瞭に聞くことができ、解像感もかなり高いものがあります。またスピード感があってリズムの刻みが気持ち良く、テンポの速い曲によく乗れる感じです。この辺は平面型の良さの一つです。
全体に価格に対してはかなり高いレベルでコストパフォーマンスは高いと思います。Blueminiなしでこれだけでも十分価格に見合うと思います。
HIFIMANはマニア系メーカーなので低価格モデルでもケーブルはそれほど悪くないですが、本体性能が高いのでリケーブルしても良いかもしれません。ただヘッドフォン側TRRSという点に注意が必要です。
2. Bluetooth ワイヤレス (Bluemini使用)
Blueminiを3.5mm端子に取り付けるだけで簡単にDEVAに合体できます。これによってBTワイヤレスとUSB DACが使えるようになります。ワイヤレス機能はiPhoneから使用してます。電源ボタンを青緑の明滅まで押し続けるとペアリングモードになります。
音を聞くとちょっとびっくりするくらいのパワー感を感じます。音に力感があって、躍動感があってパワフルなサウンドです。こんな小さなアダプタなのに。たしかにバランスという感じで、押しが強く立体感もあります。音には厚みもあって解像力もあり、音は安く感じません。たださすがにハイエンドDAPやDACほどの細かさはありません。躍動感があってロックにも向いていて、音の歯切れも良くトランジェントが高い感じです。
BTレシーバーとしてもかなりレベルが高いほうでしょう。これがおまけとは信じられないくらいですね。Bluminiは汎用化して単体販売しても良いと思う。
3. USB デジタル有線接続 (Bluemini使用)
BlueminiにUSBケーブルを接続します。付属のケーブルはBluemini側はUSB-CでPC側はUSB-Aですが、別にケーブルを用意すればさらに広く使えると思います。Windows 10のRoonで使用してみましたが、とくにドライバーインストールは不要で標準ドライバーで使えます。
基本的にはBluetoothワイヤレスと同じく立体感があって力感がある音ですが、有線なのでいっそう音が良く感じます。かなりレベルが高く、透明感も高いですね。
この方式のメリットはRoonなどで192/24にアップスケールして使うこともできることです。ただヘッドフォン側ボリュームがないのでDSPボリュームを使ったほうが便利です。
* まとめ
DEVAはかなりコストパフォーマンスが良く、用途が広いヘッドフォンです。ヘッドフォン自体の音質が高いのはもちろん、付属のBlueminiがやはり音も良く柔軟に使いこなせるのでかなりお得感のあるヘッドフォンです。
2020年05月05日
平面型ワイヤレスヘッドフォン、HIFIMAN ANANDA-BT
簡単に紹介すると、Bluetoothワイヤレスを平面磁界型のハイエンドヘッドフォンに組み込んだのがANANDA-BTです。またヘッドフォン内部に平面型も鳴らせる高性能の内蔵DACとバランス出力アンプが組み込まれているのも特徴です。
またUSB-CでもPCやスマホと接続することができますので、その場合には24ビット/192kHzに対応しています。
BluetoothヘッドフォンとしてはさまざまなHDコーデックに対応しています。例えばApt-X HD、HWAそしてLDACロスレスHD Bluetoothコーデックをもサポートしています。Walkmanやファーウエイのスマホを使っている人にもよいでしょう。
内蔵DAC/アンプのフィルターとアナログ回路設計は高性能DAPのR2R2000を設計したエンジニアの手によるものです。アンプはバランス出力アンプが内蔵されています。
面白いのは外部マイクがついていて、ゲーマー、ポッドキャスター、ビデオロガーなども対象としていることです。
もちろんヘッドフォンとしての性能も高く、HIFIMAN独自の新"スーパーナノ"振動板 (NsD)を採用し、以前から80%薄くなり、そのため素早いレスポンスと解像感の高く鮮烈で豊かな音質を提供できるということです。
ウインドウシェイド型のグリルデザインも上級機種と共通のもので、これは透明感の高いサウンドを得るために不要な音の反射を大幅に低減するということです。イヤカップの形も人間工学に基づいた非対称形状をしています。
周波数特性は8Hz-55KHz、インピーダンスは35Ω、感度は103dBです。もっとも実際に鳴らすのは内蔵アンプですから、鳴らしやすさはあまり気にかける必要はないでしょう。重さは460g (495g マイクとケーブルを含む)です。
バッテリーは再生時間が10時間で、最大充電時間が2.7時間です。
バッテリーの注意点はUSBケーブルを単につないだだけでは充電されないことです。パワーボタン(長い)の横の小さいチャージボタンを2秒押すことで充電がされます。これはスマートフォンなどから繋ぐときにUSBケーブルをつないで自動的に充電されるとスマホのバッテリーを消費してしまうからです。それを抑えるためにこういう仕様になっています。
充電中はライトが赤く点灯しますので確認してください。単にUSBケーブルをつないだだけだとライトはつきません。充電が終わるとライトが青くなります。
また、なかなかしゃれたヘッドフォンケースか付属しています。
ケースはよく考えられていて、ハンドルのところが持ちやすいようにベルクロで二重になっていて、中のヘッドフォンが動かないようにやはりベルクロで固定するようになっています。また小物を入れるポーチにもベルクロの両面テープがついています。これは国産でもあまりないようによく考えられたケースだと思います。こうした細かな気遣いは国産製品の独壇場でしたが、中国製品でもこうした製品が増えてきたと思います。
ANANDA-BTの外観はHE1000の流れを組むものでシェイドグリルの設計も取り入れられた本格派です。本当にHifimanのハイグレードモデルからケーブルを取り去って、中にアンプをつけたというようなモデルになっています。
音楽再生はまずiPhoneで試します。ペアリングは押しっぱなしだと赤青点滅のペーアリングモードになるというもので特に難はありません。
音を出してみるとその音の良さにちょっと驚きます。奥行きが深く感じられ、音の明瞭感が高くひとつひとつの音が鮮明に聞こえます。解像感も高く、透明でクリアな音空間がいっぱいに広がる感じです。かなりハイレベルなアンプが内蔵されているのではと思います。
これを聞いて「Bluetoothの悪い音質」と思う人はいないでしょう。むしろiPhoneからケーブルでヘッドフォンに繋いでもこんな素晴らしい音質は出てきません。内蔵アンプならではの音ですね。しかし平面型を十分に駆動するようなハイパワーアンプを小型化して内蔵するのはなかなか他にはできないと思います。iPhoneの普通のSBCとかAACでも十分な音質ですが、iPhoneでもHifimanアプリを使うとHWAでANANDA-BTとつなげるということです。実際にミュージックアプリとHIFIMANアプリで同じ曲を再生するとたしかにHIFIMANアプリのほうがより良いようには思います。ただベースのANANDAの音質が十分に高いのでiPhoneの普通のアプリでも高音質で楽しめます。
低域は深く鋭いパンチがあります。ロックポップを楽しむにも十分な躍動感を楽しめます。帯域特性は洗練されていて低域が大きすぎるということはありません。
ただ開放型の大型ヘッドフォンなので、主な用途は家でPCと接続することになるのでしょう。実際にWindowsに繋いでみたんですが、aptXでつながっているのか、ホストのパワーに余裕があるからか、より明瞭感高いはっきりとした音で繋がるように思います。AmazonHDとかTIDALなどのストリーミングを駆使する人にもおすすめですね。ケーブルがないのは家の中でもやはり自由を感じます。また家で聞くと全ての音源にアクセスできるので次々に聞けて飽きませんね。
優れた内蔵アンプと平面型振動板でハイエンドクラスの音質をBluetoothというお手軽ワイヤレスで楽しめるなかなか稀有な製品だと思います。
またUSB-CでもPCやスマホと接続することができますので、その場合には24ビット/192kHzに対応しています。
BluetoothヘッドフォンとしてはさまざまなHDコーデックに対応しています。例えばApt-X HD、HWAそしてLDACロスレスHD Bluetoothコーデックをもサポートしています。Walkmanやファーウエイのスマホを使っている人にもよいでしょう。
内蔵DAC/アンプのフィルターとアナログ回路設計は高性能DAPのR2R2000を設計したエンジニアの手によるものです。アンプはバランス出力アンプが内蔵されています。
面白いのは外部マイクがついていて、ゲーマー、ポッドキャスター、ビデオロガーなども対象としていることです。
もちろんヘッドフォンとしての性能も高く、HIFIMAN独自の新"スーパーナノ"振動板 (NsD)を採用し、以前から80%薄くなり、そのため素早いレスポンスと解像感の高く鮮烈で豊かな音質を提供できるということです。
ウインドウシェイド型のグリルデザインも上級機種と共通のもので、これは透明感の高いサウンドを得るために不要な音の反射を大幅に低減するということです。イヤカップの形も人間工学に基づいた非対称形状をしています。
周波数特性は8Hz-55KHz、インピーダンスは35Ω、感度は103dBです。もっとも実際に鳴らすのは内蔵アンプですから、鳴らしやすさはあまり気にかける必要はないでしょう。重さは460g (495g マイクとケーブルを含む)です。
バッテリーは再生時間が10時間で、最大充電時間が2.7時間です。
バッテリーの注意点はUSBケーブルを単につないだだけでは充電されないことです。パワーボタン(長い)の横の小さいチャージボタンを2秒押すことで充電がされます。これはスマートフォンなどから繋ぐときにUSBケーブルをつないで自動的に充電されるとスマホのバッテリーを消費してしまうからです。それを抑えるためにこういう仕様になっています。
充電中はライトが赤く点灯しますので確認してください。単にUSBケーブルをつないだだけだとライトはつきません。充電が終わるとライトが青くなります。
また、なかなかしゃれたヘッドフォンケースか付属しています。
ケースはよく考えられていて、ハンドルのところが持ちやすいようにベルクロで二重になっていて、中のヘッドフォンが動かないようにやはりベルクロで固定するようになっています。また小物を入れるポーチにもベルクロの両面テープがついています。これは国産でもあまりないようによく考えられたケースだと思います。こうした細かな気遣いは国産製品の独壇場でしたが、中国製品でもこうした製品が増えてきたと思います。
ANANDA-BTの外観はHE1000の流れを組むものでシェイドグリルの設計も取り入れられた本格派です。本当にHifimanのハイグレードモデルからケーブルを取り去って、中にアンプをつけたというようなモデルになっています。
音楽再生はまずiPhoneで試します。ペアリングは押しっぱなしだと赤青点滅のペーアリングモードになるというもので特に難はありません。
音を出してみるとその音の良さにちょっと驚きます。奥行きが深く感じられ、音の明瞭感が高くひとつひとつの音が鮮明に聞こえます。解像感も高く、透明でクリアな音空間がいっぱいに広がる感じです。かなりハイレベルなアンプが内蔵されているのではと思います。
これを聞いて「Bluetoothの悪い音質」と思う人はいないでしょう。むしろiPhoneからケーブルでヘッドフォンに繋いでもこんな素晴らしい音質は出てきません。内蔵アンプならではの音ですね。しかし平面型を十分に駆動するようなハイパワーアンプを小型化して内蔵するのはなかなか他にはできないと思います。iPhoneの普通のSBCとかAACでも十分な音質ですが、iPhoneでもHifimanアプリを使うとHWAでANANDA-BTとつなげるということです。実際にミュージックアプリとHIFIMANアプリで同じ曲を再生するとたしかにHIFIMANアプリのほうがより良いようには思います。ただベースのANANDAの音質が十分に高いのでiPhoneの普通のアプリでも高音質で楽しめます。
低域は深く鋭いパンチがあります。ロックポップを楽しむにも十分な躍動感を楽しめます。帯域特性は洗練されていて低域が大きすぎるということはありません。
ただ開放型の大型ヘッドフォンなので、主な用途は家でPCと接続することになるのでしょう。実際にWindowsに繋いでみたんですが、aptXでつながっているのか、ホストのパワーに余裕があるからか、より明瞭感高いはっきりとした音で繋がるように思います。AmazonHDとかTIDALなどのストリーミングを駆使する人にもおすすめですね。ケーブルがないのは家の中でもやはり自由を感じます。また家で聞くと全ての音源にアクセスできるので次々に聞けて飽きませんね。
優れた内蔵アンプと平面型振動板でハイエンドクラスの音質をBluetoothというお手軽ワイヤレスで楽しめるなかなか稀有な製品だと思います。
2020年04月22日
コスパの高い平面型ヘッドフォン、HIFIMAN SUNDARA
最近ハイエンドヘッドフォンではダイナミック型の平面駆動タイプ(オルソダイナミック)がよく使われているが、この形式を世に広めた功績はAudezeとHIFIMANにあります。もともとダイナミック型の平面型はオーディオ黄金期には国産メーカーも参入していたのですが、コストがかかるこの方式はオーディオが衰退していくにつれて忘れられてきました。それをマニアックメーカーとして復活させたのがHIFIMANです(Audezeはライブ音響機器の応用として開発されてます)。HIFIMANはハイエンドだけではなくHE400など低価格機にも平面型を広げてきましたが、このSUNDARAはその結実と言えます。
最近の価格改正で旧価格の50,000円(税別)から新価格の34,600円になったことで、平面型の入門にはうってつけです。
特徴はやはりこの価格にして本格的な平面型ヘッドフォンが楽しめるということです。
SUNDARAでは振動板も改善され、HE400に比べると80%も薄型になっているとのことです。振動板が薄いほど軽くなるので平面型には有利ですね。この辺はHIFIMANが得意としているナノテクの産物でもあるのでしょう。
ヘッドバンドはアルミと皮革で製作されて、この価格とは思えないくらいの高級感があります。また快適性も向上しています。
再生周波数は6Hzから75kHzと広帯域で、インピーダンスは37Ω、感度は94dBです。重さは372gと軽量です。
ケーブルは着脱式で標準ケーブルは3.5mm端子が付いています。ヘッドフォン側はステレオミニ(TRS)タイプです。端子はかなりしっかりとしたもので、低価格品とはいえマニアックメーカーらしいパーツです。
各部は十分に剛性感があり、側圧はややきつめなくらいでよくフィットします。わりと軽めなので長い時間つけていても大丈夫でしょう。
能率はやや鳴らしにくい方で、ポータブルプレーヤーでも音量を取ることはできますがやや暗めに感じられるのでパワーのあるアンプを使用したほうが良いです。実際にアンプを使用して鳴らすとその真価を発揮することができます。
たとえばAK380だとやや足りなく、SP1000だと申し分ありません。あるいは据え置きのヘッドフォンアンプを使うのが良いと思います。
音質はこの価格帯では比類ないくらい高いレベルだと思います。かなりコストパフォーマンスはよいと思いますね。この独特の立体感や音の素早さ、整った周波数再現性はこのクラスのヘッドフォンではなかなか聞くことができず、また平面型らしいと感じるところでもあります。
高域はよく制御されてきつくなく、低域も量感がたっぷりある割には膨らむ感じはないのでこちらもよく整っています。低域はぶおっという量感ではなく、小気味良いタイトなパンチを感じるタイプです。低音が軽いわけではなく、それなりの深みもあります。音はニュートラルで着色感はあまりありません。
振動板が薄くて軽いだけあって、歯切れも良くスピード感があるのでノリのよい音楽にもむいています。ただ低音どかっというタイプではなく、周波数特性が整っていてタイトなので、どちらかというとジャズクラシック系の音です。平面型の利点は高域とか低域に変わりなくインピーダンス変動が少ないというものがありますので、本来こうした周波数特性が整っていて低音の不自然な張り出し感が少ないほうが平面型らしくありますね。
上級機のHE1000seなどに比べればやはり音は粗めで厚みが足りなくはありますが、同価格帯の普通のヘツドフォンではまず実現できないような立体感が特に良いと感じます。三次元的な音の広がりと、楽器やヴォーカルの定位感というか音の重なり感を感じられると思います。
音の細かさは平面型ならではと思えると思います。こうした音楽の空気感というか情報量豊かな音を感じられるのはさすがという感じではありますね。
録音のきつめの音楽ではやや音の荒さが気になるところがあり、この価格では文句が出ないレベルなのですが、本機のポテンシャルが高いのでやや勿体無い感はあります。録音が良い音源だとそれほど気になりません。
余裕があればケーブルを変えてもう少し滑らか感を出すとかなり高級感のあるハイグレードな音を楽しめると思います。今手元にこのタイプのケーブルがないので変えて試せませんがヘッドフォン自体はもっとポテンシャルはあるように感じます。
この価格でも平面型ヘッドフォンを買った感じは味わえると思います。おそらくいままで使ってきたヘッドフォンとは一味違うと感じるでしょう。いずれにせよ開放型でポータブルには向かないので、家で使うヘッドフォンで5万円以下で一味違うものを探している人におすすめです。
かなりコストパフォーマンスの良い買い物ができると思います。
SUNDARAとは古代サンスクリット語で美しいという意味を持っているそうです。たしかに価格以上の内容と見た目の美しさ、音の美しさを兼ね備えたヘッドフォンと言えるでしょう。
最近の価格改正で旧価格の50,000円(税別)から新価格の34,600円になったことで、平面型の入門にはうってつけです。
特徴はやはりこの価格にして本格的な平面型ヘッドフォンが楽しめるということです。
SUNDARAでは振動板も改善され、HE400に比べると80%も薄型になっているとのことです。振動板が薄いほど軽くなるので平面型には有利ですね。この辺はHIFIMANが得意としているナノテクの産物でもあるのでしょう。
ヘッドバンドはアルミと皮革で製作されて、この価格とは思えないくらいの高級感があります。また快適性も向上しています。
再生周波数は6Hzから75kHzと広帯域で、インピーダンスは37Ω、感度は94dBです。重さは372gと軽量です。
ケーブルは着脱式で標準ケーブルは3.5mm端子が付いています。ヘッドフォン側はステレオミニ(TRS)タイプです。端子はかなりしっかりとしたもので、低価格品とはいえマニアックメーカーらしいパーツです。
各部は十分に剛性感があり、側圧はややきつめなくらいでよくフィットします。わりと軽めなので長い時間つけていても大丈夫でしょう。
能率はやや鳴らしにくい方で、ポータブルプレーヤーでも音量を取ることはできますがやや暗めに感じられるのでパワーのあるアンプを使用したほうが良いです。実際にアンプを使用して鳴らすとその真価を発揮することができます。
たとえばAK380だとやや足りなく、SP1000だと申し分ありません。あるいは据え置きのヘッドフォンアンプを使うのが良いと思います。
音質はこの価格帯では比類ないくらい高いレベルだと思います。かなりコストパフォーマンスはよいと思いますね。この独特の立体感や音の素早さ、整った周波数再現性はこのクラスのヘッドフォンではなかなか聞くことができず、また平面型らしいと感じるところでもあります。
高域はよく制御されてきつくなく、低域も量感がたっぷりある割には膨らむ感じはないのでこちらもよく整っています。低域はぶおっという量感ではなく、小気味良いタイトなパンチを感じるタイプです。低音が軽いわけではなく、それなりの深みもあります。音はニュートラルで着色感はあまりありません。
振動板が薄くて軽いだけあって、歯切れも良くスピード感があるのでノリのよい音楽にもむいています。ただ低音どかっというタイプではなく、周波数特性が整っていてタイトなので、どちらかというとジャズクラシック系の音です。平面型の利点は高域とか低域に変わりなくインピーダンス変動が少ないというものがありますので、本来こうした周波数特性が整っていて低音の不自然な張り出し感が少ないほうが平面型らしくありますね。
上級機のHE1000seなどに比べればやはり音は粗めで厚みが足りなくはありますが、同価格帯の普通のヘツドフォンではまず実現できないような立体感が特に良いと感じます。三次元的な音の広がりと、楽器やヴォーカルの定位感というか音の重なり感を感じられると思います。
音の細かさは平面型ならではと思えると思います。こうした音楽の空気感というか情報量豊かな音を感じられるのはさすがという感じではありますね。
録音のきつめの音楽ではやや音の荒さが気になるところがあり、この価格では文句が出ないレベルなのですが、本機のポテンシャルが高いのでやや勿体無い感はあります。録音が良い音源だとそれほど気になりません。
余裕があればケーブルを変えてもう少し滑らか感を出すとかなり高級感のあるハイグレードな音を楽しめると思います。今手元にこのタイプのケーブルがないので変えて試せませんがヘッドフォン自体はもっとポテンシャルはあるように感じます。
この価格でも平面型ヘッドフォンを買った感じは味わえると思います。おそらくいままで使ってきたヘッドフォンとは一味違うと感じるでしょう。いずれにせよ開放型でポータブルには向かないので、家で使うヘッドフォンで5万円以下で一味違うものを探している人におすすめです。
かなりコストパフォーマンスの良い買い物ができると思います。
SUNDARAとは古代サンスクリット語で美しいという意味を持っているそうです。たしかに価格以上の内容と見た目の美しさ、音の美しさを兼ね備えたヘッドフォンと言えるでしょう。
2015年02月05日
世界最薄の振動版を採用したHiFiManの新フラッグシップ、HE1000のプレビュー
先日のCESで発表されて話題になったHiFiManの新しいフラッグシップであるHE1000のプリプロダクションモデルを試すことができました。またHiFiMan HM901の新型であるHM901Sの最終生産前モデルを試す機会もあったので合わせてレポートします。
* HE1000
HiFiMan(ハイファイマン)はマニアックな傾向の中国のメーカーで、平面型ヘッドフォンとハイレゾプレーヤーについては昔から手掛けてきました。
いままでのHiFimanのフラッグシップヘッドフォンはやはり平面型で、あの能率が低すぎてアンプをクリップさせちゃうHE6でしたが、HE1000はそれに代わるフラッグシップとなります。HE1000はCES 2015で発表されて話題になりました。HeadFiのJudeはHE1000をベストオブCESに選んでいます。
下記はHE1000のホームページです。
http://hifiman.com/he1000/
HE1000の特徴はまずダイアフラム(振動版)がとても薄いということで、史上最薄となりナノメーターで測るほどだそうです。静電型ではなくオルソダイナミックなのでダイアフラムのほかに導体のパターンが必要ですが、それもサブミクロン程度の薄さということです。またダイアフラムの面積もおそらく世界最大級だと思います。下記にナノメーターダイアフラムがどの程度薄いかということがわかる動画があります。
もうひとつの特徴としてはアシンメトリカル(非対称)・ドライバーを採用しているということです。HE560ではシングルサイドでしたが、HE1000はダブルサイドになります。ただしマグネットなどが対称ではなく非対称に配置されています。この利点としては通常の対称型のドライバーは干渉して位相歪みを生じるけれども、この非対称型だと干渉しないのでそうした歪みが生じないということです。これは下記の図のように片側に逃げていく逆相の音との相互作用なんでしょう。
左側が従来タイプのドライバーで右側がアシンメトリカルドライバーです。
またブラインドグリルと呼ばれるデザインのハウジングも開口性を重視して設計されています。
ケーブルは4pinのバランスが基本で、ここからコネクタで標準プラグと3.5mmミニプラグのケーブルが付けられます。
実際に使ってみるとサイズにしては重さは軽く感じられます。装着の感じはAbyssに似たかぶる感覚に近いですね。ただこの辺はプリプロダクションなのでまた変わってくるかもしれません。
音に関してはHiFiMan HE560とゼンハイザーHD800と簡単に比べてみました。ヘッドフォンはすべて標準ケーブルを使用してます。
ヘッドフォンアンプはパーソンのSoloist SLを使用してみました。次のようなシステムです。
PC(JRMC) → Hugo(USB DAC) → kimber RCAケーブル → Soloist SL
HE1000でまず感じたのはなんかSTAXっぽい、ということで、これは音が細かくて速いということから来ている感覚のように思えます。この辺は最薄ダイアフラムが効いているのでしょうかね。パーソンの音の生々しさがかなり気味悪いくらいリアルに感じられます。それと高い能率も寄与していると思います。HE560と比べると顕著ですが、音が明るく軽く感じます。重く暗い感じではないですね。
HE560よりもさらに歯切れが良く、高音域の伸びが良く突き抜ける感じで、低音域はとてもパンチがあります。低域は特に超低域がどーっと出てくる感じで、音の広さと合わせてスケール感が半端なく感じます。
HD800もHE1000に比べるとかなり甘い感じに感じられ、インパクトが軽くHD800でさえもHE1000に比べると鈍重な感じです。
プレビューなのでこのくらいにしておきますが、なかなか性能の高さは実感できました。HE560やHD800よりも性能が高いのは間違いないところです。HE1000は能率がそれほど低くないので、いわゆる平面型向けのヘッドフォンアンプでなくてもかまいません。HE560より能率が高いです。平面型の良い点が能率が改善されたことで100%発揮できているという感じでしょうか。
iPhoneでもボリュームをワンノッチ残すくらいで十分音量は取れます。またiPhoneで鳴らしてさえけっこう立体感や低域レスポンスは得られて良いヘッドフォンだということはわかります。
価格はまだ分かりませんが、それなりにお高くなりそうです。国内の取り扱いについてはそのうち案内があるのではと思います。
* HM901S
あのHM901が金属シャーシになったものがHM901Sです。これはHM901ではシャーシが電気的な問題があったそうで、この金属シャーシ化でかなり問題は解決したということです。たしかアルミ製だったと思います。
その他のDACチップや回路は変更がないそうです。アンプカードも同じだと思います。ただしデジタルフィルタースイッチがなくなり、スイッチではなくイヤフォンプラグでシングルエンドとバランスの使い分けをします。バランスは3.5mmTRRSです。
このほかにはファームウエアも改良されています(FWは太極というそうです)。ただこのバージョンではまだ不安定でした。
シャーシはかなりがっちりとして精密感があります。ただ前よりも重くはなっています。
音は前と似て濃くて繊細な音ですが、よりクリーンで洗練された気はしますね。制動力もあってしっかりイヤフォンをドライブしています。
そういえば最近ではAK240のステンレスシャーシ版のAK240SSも発表されていますが、これもA&Kの人に言わせるとシャーシが変わったことだけでグランドの変化で音の変化があるということです。ポータブルオーディオもこれだけ音が良くなってくると、いままでは気に書けなかった要素も重要になってくるということかもしれません。
* HE1000
HiFiMan(ハイファイマン)はマニアックな傾向の中国のメーカーで、平面型ヘッドフォンとハイレゾプレーヤーについては昔から手掛けてきました。
いままでのHiFimanのフラッグシップヘッドフォンはやはり平面型で、あの能率が低すぎてアンプをクリップさせちゃうHE6でしたが、HE1000はそれに代わるフラッグシップとなります。HE1000はCES 2015で発表されて話題になりました。HeadFiのJudeはHE1000をベストオブCESに選んでいます。
下記はHE1000のホームページです。
http://hifiman.com/he1000/
HE1000の特徴はまずダイアフラム(振動版)がとても薄いということで、史上最薄となりナノメーターで測るほどだそうです。静電型ではなくオルソダイナミックなのでダイアフラムのほかに導体のパターンが必要ですが、それもサブミクロン程度の薄さということです。またダイアフラムの面積もおそらく世界最大級だと思います。下記にナノメーターダイアフラムがどの程度薄いかということがわかる動画があります。
もうひとつの特徴としてはアシンメトリカル(非対称)・ドライバーを採用しているということです。HE560ではシングルサイドでしたが、HE1000はダブルサイドになります。ただしマグネットなどが対称ではなく非対称に配置されています。この利点としては通常の対称型のドライバーは干渉して位相歪みを生じるけれども、この非対称型だと干渉しないのでそうした歪みが生じないということです。これは下記の図のように片側に逃げていく逆相の音との相互作用なんでしょう。
左側が従来タイプのドライバーで右側がアシンメトリカルドライバーです。
またブラインドグリルと呼ばれるデザインのハウジングも開口性を重視して設計されています。
ケーブルは4pinのバランスが基本で、ここからコネクタで標準プラグと3.5mmミニプラグのケーブルが付けられます。
実際に使ってみるとサイズにしては重さは軽く感じられます。装着の感じはAbyssに似たかぶる感覚に近いですね。ただこの辺はプリプロダクションなのでまた変わってくるかもしれません。
音に関してはHiFiMan HE560とゼンハイザーHD800と簡単に比べてみました。ヘッドフォンはすべて標準ケーブルを使用してます。
ヘッドフォンアンプはパーソンのSoloist SLを使用してみました。次のようなシステムです。
PC(JRMC) → Hugo(USB DAC) → kimber RCAケーブル → Soloist SL
HE1000でまず感じたのはなんかSTAXっぽい、ということで、これは音が細かくて速いということから来ている感覚のように思えます。この辺は最薄ダイアフラムが効いているのでしょうかね。パーソンの音の生々しさがかなり気味悪いくらいリアルに感じられます。それと高い能率も寄与していると思います。HE560と比べると顕著ですが、音が明るく軽く感じます。重く暗い感じではないですね。
HE560よりもさらに歯切れが良く、高音域の伸びが良く突き抜ける感じで、低音域はとてもパンチがあります。低域は特に超低域がどーっと出てくる感じで、音の広さと合わせてスケール感が半端なく感じます。
HD800もHE1000に比べるとかなり甘い感じに感じられ、インパクトが軽くHD800でさえもHE1000に比べると鈍重な感じです。
プレビューなのでこのくらいにしておきますが、なかなか性能の高さは実感できました。HE560やHD800よりも性能が高いのは間違いないところです。HE1000は能率がそれほど低くないので、いわゆる平面型向けのヘッドフォンアンプでなくてもかまいません。HE560より能率が高いです。平面型の良い点が能率が改善されたことで100%発揮できているという感じでしょうか。
iPhoneでもボリュームをワンノッチ残すくらいで十分音量は取れます。またiPhoneで鳴らしてさえけっこう立体感や低域レスポンスは得られて良いヘッドフォンだということはわかります。
価格はまだ分かりませんが、それなりにお高くなりそうです。国内の取り扱いについてはそのうち案内があるのではと思います。
* HM901S
あのHM901が金属シャーシになったものがHM901Sです。これはHM901ではシャーシが電気的な問題があったそうで、この金属シャーシ化でかなり問題は解決したということです。たしかアルミ製だったと思います。
その他のDACチップや回路は変更がないそうです。アンプカードも同じだと思います。ただしデジタルフィルタースイッチがなくなり、スイッチではなくイヤフォンプラグでシングルエンドとバランスの使い分けをします。バランスは3.5mmTRRSです。
このほかにはファームウエアも改良されています(FWは太極というそうです)。ただこのバージョンではまだ不安定でした。
シャーシはかなりがっちりとして精密感があります。ただ前よりも重くはなっています。
音は前と似て濃くて繊細な音ですが、よりクリーンで洗練された気はしますね。制動力もあってしっかりイヤフォンをドライブしています。
そういえば最近ではAK240のステンレスシャーシ版のAK240SSも発表されていますが、これもA&Kの人に言わせるとシャーシが変わったことだけでグランドの変化で音の変化があるということです。ポータブルオーディオもこれだけ音が良くなってくると、いままでは気に書けなかった要素も重要になってくるということかもしれません。
2014年07月26日
平面型ヘッドフォンの新機軸、HiFiMan HE560
HE560は平面型に力を入れているHiFiManが平面型ヘッドフォンに新機軸を取り入れた自信作です。
* HE560の特徴
平面型(海外ではPlanar)というのは従来のヘッドフォンが(スピーカーのように)ある点で振動を振動板に伝えるのに対して、振動板の全面が振動することによって振動板の真ん中から端まで均質に振動することによって周波数特性が自然に再現されるという特徴があります。真ん中で振動していると端まで振動が伝わるのが振動板の物的な特性で左右されてしまうからです。
HiFiManではHE6という平面型のフラッグシップがありました。これは音質は素晴らしいのですが能率が異常ともいえるほど低く、ヘッドフォンアンプを選ぶというより、専用に設計されたようなハイパワーアンプでもなければ駆動できないというものでした。以前こちらにレビューリンクを書きました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/171206322.html
HE560はHE6に代わるフラッグシップともなり得るもので、ドライバーにシングルエンド・平面マグネット(Singled ended planer magnetic)を採用するなど新機軸を採用して音質と能率の両面で改良を図ったのがポイントです。これは通常両側にあるマグネットが片側だけにあるという方式です。
この方式を取るとダイアフラムがより自由に動くので広大な音空間を生むのですが、歪みをコントロールするのが難しいということです。今回それを解決するダンピング素材をJade(以前静電型を作ったメーカー)と共同開発で見つけた点がキーです。またこの方式ではマグネットが一つなので軽量化できて能率もあがるということです。
製品をレビューのために送ってもらいましたが、パッケージもいままでのHiFiManよりこなれているように思います。
製品版ではデモ版よりもさまざまな点で改良されています。まず手にもって軽いと思ったのもそのひとつです。これもシングルエンド方式のゆえでしょうか。
ハウジングやイヤパッド、ヘッドバンドなどの作りもなかなか高級感があると思います。
* HE560の音質
HE560に関しては能率が向上したこともあり、まず普及タイプのコストパフォーマンスのよいUSB DAC+ヘッドフォンアンプで試してみました。まずDENONのDA300USBです。これも音的にはよい相性を聴かせてくれるのですが、ゲインがないのでやや音量が取りづらいですね。ただポップスなどの高めの録音レベルなら問題ないくらいだと思います。また高コストパフォーマンスというとAudioGdのNFB11.32を取り出してきました。こちらに以前書いたレビューリンクがあります。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/291164866.html
HE560とNFB11.32
HE560の音はとてもクリアで透明感が高いのがまず感じられる特徴です。楽器の音の鳴り方が自然で分離感がよく浮き上がって聞こえます。中高音域は美しい音のなり方が感じられます。低域は突出しているわけではないけれども、量感は豊かで、重いベースラインが堪能できます。おそらくかなり低いところまでなっているせいかと思います。音はかなり細かいところまで抽出して解像力は高いように感じられます。楽器音などの音像を明瞭に浮き彫りにするというタイプです。立体感も優れていて、三次元的な音空間の楽器や音の配置がわかりやすいと思います。
音の切れ味が鋭く、ハイスピード表現が可能ですが、ここは電源が外部のDA300USBではやや不利なので、やはり電源はなるべく強力なアンプを使うのが良いと思います。これは後で書くEF6でもっとはっきりわかります。
出音は平面型にしては軽やかなのも特徴です。HE6との大きな違いはここだと思います。また他の平面型と比べても特徴的だと言えるでしょう。一聴するとまるで低インピーダンスの鳴らしやすいようにも聴こえます。
もう少し聞きすすめるとHE560のもうひとつの特徴がわかってきます。それは出音の滑らかさ、です。実際HE560で特筆する点はこの音の立ち上がりがなめらかさ・スムーズ感だと思います。FOSTEXのTH500RPの発表会の時にも、測定すると振幅が少なくても音が出るので共振点が目立ちにくい、つまりスムースに振動板を動かせるということが言われていました。たとえばTH900は振幅自体は速いが、振幅の動き自体はRPが滑らかというわけです。実際に実機のTH500RPを聴いてもそう思います。
HE560でもそうした特徴があって、ハイスピードとか切れが良いという表現は普通の高性能のヘッドフォンでも言えることなのですが、HE560では特にスムーズさ滑らかさが一段と上質感を感じさせてくれます。
HE560とHiFiMan EF6
次に平面型用のハイパワーアンプ、HiFiMan EF6とも組み合わせてみました。DENON DA300USBをDACとして使用します。さすがにこの組み合わせではより優れた音再現ができます。ぐっと力感が上がり、たたみかけるようなドラムスでは圧倒的な迫力を感じます。音もより引き締まって贅肉が取れてふくらみ感がなくなってきます。前に書いたように電源が強力であればあるほど、リニアに反応が上がっていくポテンシャルの高さをHE560が持っていることがわかります。特にスピード感・音楽のダイナミズム・ベースのパワー感で向上が聴き取れます。
ただEF6はHE6でさえ駆動できますが、ここまでハイパワーでなくてもHE560は大丈夫な気はします。ひとつにはHE560の良さは音の出だしのスムーズさというのがあるので、そこは力感とかタイトさともちょっと違った部分だからです。
意外と面白いのは大柄なEF6と対極にコンパクトなRessonessenseのHerusです。この組み合わせでiPhoneから考えられないような高音質でDSDネイティブ再生を楽しめるというのはちょっと愉快な体験です。(アプリはhibiki)
能率の改善は手軽さと可能性も引き出すという好例とも言えます。ただしやはりパワー的には物足りなさはあります。
HE560とHD800
ハイエンドヘッドフォン対決ということでゼンハイザーHD800と比べてみると、中高域での音のシャープさと細やかさはもはやどちらがとは言えないけれども、中低音域での音の充実感と全体的な厚み・豊かさという点でHE560が上回っていると思います。HE560の独特の滑らかさもこの点で有利です。音場はHE560は空間的な広がり感が良く、HD800はステージ的な平面的な広がりに優れるというところでしょうか。
もともとモニターとして使われるHD800に比べれば、普通に音楽を楽しく聞くための個性としてはHE560はよくできていると思います。低音域の強すぎる強調感はない程度で重厚なベースの良さも感じさせてくれます。
ただHD800よりもややボリュームの位置は高めとなります。HE560の能率は微妙なところで、平面型用とうたわれるようなハイパワーアンプが必要なほどではありませんが、やはりそれなりのヘッドフォンアンプは必要です。
* まとめ
HiFiMan HE560はシングルエンド・平面マグネットという新方式を採用して、性能と平面型の能率の問題を解決しています。能率はHE6にくらべると、というくらいでまだ低いのでパワーのある(電源の強力な)アンプが向いているという側面はまだ持っています。ただしいわゆる平面型向けのハイパワーヘッドフォンアンプが必要なほどでもなく、平面型ならではのスムーズさも楽しめます。
販売はトップウイングで下記のフジヤさんなどでお求めください。
http://www.fujiya-avic.jp/products/detail62468.html
* HE560の特徴
平面型(海外ではPlanar)というのは従来のヘッドフォンが(スピーカーのように)ある点で振動を振動板に伝えるのに対して、振動板の全面が振動することによって振動板の真ん中から端まで均質に振動することによって周波数特性が自然に再現されるという特徴があります。真ん中で振動していると端まで振動が伝わるのが振動板の物的な特性で左右されてしまうからです。
HiFiManではHE6という平面型のフラッグシップがありました。これは音質は素晴らしいのですが能率が異常ともいえるほど低く、ヘッドフォンアンプを選ぶというより、専用に設計されたようなハイパワーアンプでもなければ駆動できないというものでした。以前こちらにレビューリンクを書きました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/171206322.html
HE560はHE6に代わるフラッグシップともなり得るもので、ドライバーにシングルエンド・平面マグネット(Singled ended planer magnetic)を採用するなど新機軸を採用して音質と能率の両面で改良を図ったのがポイントです。これは通常両側にあるマグネットが片側だけにあるという方式です。
この方式を取るとダイアフラムがより自由に動くので広大な音空間を生むのですが、歪みをコントロールするのが難しいということです。今回それを解決するダンピング素材をJade(以前静電型を作ったメーカー)と共同開発で見つけた点がキーです。またこの方式ではマグネットが一つなので軽量化できて能率もあがるということです。
製品をレビューのために送ってもらいましたが、パッケージもいままでのHiFiManよりこなれているように思います。
製品版ではデモ版よりもさまざまな点で改良されています。まず手にもって軽いと思ったのもそのひとつです。これもシングルエンド方式のゆえでしょうか。
ハウジングやイヤパッド、ヘッドバンドなどの作りもなかなか高級感があると思います。
* HE560の音質
HE560に関しては能率が向上したこともあり、まず普及タイプのコストパフォーマンスのよいUSB DAC+ヘッドフォンアンプで試してみました。まずDENONのDA300USBです。これも音的にはよい相性を聴かせてくれるのですが、ゲインがないのでやや音量が取りづらいですね。ただポップスなどの高めの録音レベルなら問題ないくらいだと思います。また高コストパフォーマンスというとAudioGdのNFB11.32を取り出してきました。こちらに以前書いたレビューリンクがあります。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/291164866.html
HE560とNFB11.32
HE560の音はとてもクリアで透明感が高いのがまず感じられる特徴です。楽器の音の鳴り方が自然で分離感がよく浮き上がって聞こえます。中高音域は美しい音のなり方が感じられます。低域は突出しているわけではないけれども、量感は豊かで、重いベースラインが堪能できます。おそらくかなり低いところまでなっているせいかと思います。音はかなり細かいところまで抽出して解像力は高いように感じられます。楽器音などの音像を明瞭に浮き彫りにするというタイプです。立体感も優れていて、三次元的な音空間の楽器や音の配置がわかりやすいと思います。
音の切れ味が鋭く、ハイスピード表現が可能ですが、ここは電源が外部のDA300USBではやや不利なので、やはり電源はなるべく強力なアンプを使うのが良いと思います。これは後で書くEF6でもっとはっきりわかります。
出音は平面型にしては軽やかなのも特徴です。HE6との大きな違いはここだと思います。また他の平面型と比べても特徴的だと言えるでしょう。一聴するとまるで低インピーダンスの鳴らしやすいようにも聴こえます。
もう少し聞きすすめるとHE560のもうひとつの特徴がわかってきます。それは出音の滑らかさ、です。実際HE560で特筆する点はこの音の立ち上がりがなめらかさ・スムーズ感だと思います。FOSTEXのTH500RPの発表会の時にも、測定すると振幅が少なくても音が出るので共振点が目立ちにくい、つまりスムースに振動板を動かせるということが言われていました。たとえばTH900は振幅自体は速いが、振幅の動き自体はRPが滑らかというわけです。実際に実機のTH500RPを聴いてもそう思います。
HE560でもそうした特徴があって、ハイスピードとか切れが良いという表現は普通の高性能のヘッドフォンでも言えることなのですが、HE560では特にスムーズさ滑らかさが一段と上質感を感じさせてくれます。
HE560とHiFiMan EF6
次に平面型用のハイパワーアンプ、HiFiMan EF6とも組み合わせてみました。DENON DA300USBをDACとして使用します。さすがにこの組み合わせではより優れた音再現ができます。ぐっと力感が上がり、たたみかけるようなドラムスでは圧倒的な迫力を感じます。音もより引き締まって贅肉が取れてふくらみ感がなくなってきます。前に書いたように電源が強力であればあるほど、リニアに反応が上がっていくポテンシャルの高さをHE560が持っていることがわかります。特にスピード感・音楽のダイナミズム・ベースのパワー感で向上が聴き取れます。
ただEF6はHE6でさえ駆動できますが、ここまでハイパワーでなくてもHE560は大丈夫な気はします。ひとつにはHE560の良さは音の出だしのスムーズさというのがあるので、そこは力感とかタイトさともちょっと違った部分だからです。
意外と面白いのは大柄なEF6と対極にコンパクトなRessonessenseのHerusです。この組み合わせでiPhoneから考えられないような高音質でDSDネイティブ再生を楽しめるというのはちょっと愉快な体験です。(アプリはhibiki)
能率の改善は手軽さと可能性も引き出すという好例とも言えます。ただしやはりパワー的には物足りなさはあります。
HE560とHD800
ハイエンドヘッドフォン対決ということでゼンハイザーHD800と比べてみると、中高域での音のシャープさと細やかさはもはやどちらがとは言えないけれども、中低音域での音の充実感と全体的な厚み・豊かさという点でHE560が上回っていると思います。HE560の独特の滑らかさもこの点で有利です。音場はHE560は空間的な広がり感が良く、HD800はステージ的な平面的な広がりに優れるというところでしょうか。
もともとモニターとして使われるHD800に比べれば、普通に音楽を楽しく聞くための個性としてはHE560はよくできていると思います。低音域の強すぎる強調感はない程度で重厚なベースの良さも感じさせてくれます。
ただHD800よりもややボリュームの位置は高めとなります。HE560の能率は微妙なところで、平面型用とうたわれるようなハイパワーアンプが必要なほどではありませんが、やはりそれなりのヘッドフォンアンプは必要です。
* まとめ
HiFiMan HE560はシングルエンド・平面マグネットという新方式を採用して、性能と平面型の能率の問題を解決しています。能率はHE6にくらべると、というくらいでまだ低いのでパワーのある(電源の強力な)アンプが向いているという側面はまだ持っています。ただしいわゆる平面型向けのハイパワーヘッドフォンアンプが必要なほどでもなく、平面型ならではのスムーズさも楽しめます。
販売はトップウイングで下記のフジヤさんなどでお求めください。
http://www.fujiya-avic.jp/products/detail62468.html
2010年12月30日
平面駆動ヘッドフォン向け高出力アンプ、Schiit Lyr
前にHE6の記事を書きましたが、実際に店頭で色々なヘッドフォンアンプと試してみたところ、けっこう高性能と思われるヘッドフォンアンプのハイゲインでもほぼ8-9割に振り切ってしまいます。たまたまあったCDをかけてこれでは録音レベルの低い良録音の曲では音量が取れないかもしれません。
HE6はある意味やり過ぎなところが良い点ではありますが、お勧めするのもちょっと困ったと思ってたらすごいヘッドフォンアンプが出てきました。このSchiitのLyrという新しいアンプです。
http://schiit.com/products/lyr/
HeadFiではこちらにスレッドがあります。
http://www.head-fi.org/forum/thread/530556/new-schiit-lyr-hybrid-6w-headphone-amp-yes-six-watts-rms
Lyrはヘッドフォンアンプの常識を破るような6W/ch(32Ω)という高出力を出すことができます。これは上の製品ページに書いていますが、HE6とかLCD2のような低能率の平面駆動タイプのために設計したとあります。これ、うっかりすると壊れるヘッドフォンもありそうですが、まさにHE6などにうってつけです。
もちろん平面駆動とか低能率のもの専用というわけではなく、正しい音量で使えば普通のヘッドフォンにも向いている機能もついています。Dynamically Adaptive Output Stageというもので、電流を監視していて低出力で済む時はA級増幅をして、高出力を必要とする時はAB級にスイッチするというものです。
Lyrは真空管とMOSFETのハイブリッドタイプで、真空管はECC88を使用しています。購入時はJJのがついてくるので悪くはないと思いますが、交換可能になってます。前段の管は交換するとけっこう差は大きいのでビンテージものと替えてみるのも良さそう。
真空管を採用しているのもノスタルジーではなく、一段のみで増幅を済ませるために最適ということで真空管を採用したとFAQに書いてます。
あとFAQを見ると分かりますが、メーカー名のSchiitはいわゆるfour letter words(卑猥語)のひとつ(iが一個ないもの)と同じ発音ということです。だからiを一個増やしたんでしょう。ちなみにいまは改修したのでどうか分かりませんが、以前はHead Fiはfour letter wordsの入力禁止になっていて、matsushitaとか日本語でそういう文字が含まれていると入力エラーになってしまい、ma-tsu-shi-taとか入れたことがありました。
他もFAQの項は「なんだって6Wものヘッドフォンアンプが必要なんだい?」という問いに「じゃあなんだって400馬力の車なんかが必要なんだい?」と切り返すとか、「真空管は交換できるからビンテージでも、クライオでも、妖精に作ってもらっても良いよ」とか、結構読んでて面白いです。ふざけたメーカー名だけど本気で作ってると書いてるのも面白いところですが、開発してる人たちはThetaなど他のメーカーにいたベテランということで、良いものを安くというのがコンセプトだそうです。
たしかに価格も$449と手頃です。Made in USAを強調してますが、たしかに最近アメリカは不況の影響も大きいのかアジア勢に比すると元気のない感じもします。例えば老舗のHeadroomは最近新製品が無いんですが、いま開発よりも営業に専念しているということです。久しぶりのアメリカ製の注目製品という意味でも楽しみです。
ただし発売は三月になります。次のヘッドフォン祭りではぜひこれとHE6でデモしたいものです。
HE6はある意味やり過ぎなところが良い点ではありますが、お勧めするのもちょっと困ったと思ってたらすごいヘッドフォンアンプが出てきました。このSchiitのLyrという新しいアンプです。
http://schiit.com/products/lyr/
HeadFiではこちらにスレッドがあります。
http://www.head-fi.org/forum/thread/530556/new-schiit-lyr-hybrid-6w-headphone-amp-yes-six-watts-rms
Lyrはヘッドフォンアンプの常識を破るような6W/ch(32Ω)という高出力を出すことができます。これは上の製品ページに書いていますが、HE6とかLCD2のような低能率の平面駆動タイプのために設計したとあります。これ、うっかりすると壊れるヘッドフォンもありそうですが、まさにHE6などにうってつけです。
もちろん平面駆動とか低能率のもの専用というわけではなく、正しい音量で使えば普通のヘッドフォンにも向いている機能もついています。Dynamically Adaptive Output Stageというもので、電流を監視していて低出力で済む時はA級増幅をして、高出力を必要とする時はAB級にスイッチするというものです。
Lyrは真空管とMOSFETのハイブリッドタイプで、真空管はECC88を使用しています。購入時はJJのがついてくるので悪くはないと思いますが、交換可能になってます。前段の管は交換するとけっこう差は大きいのでビンテージものと替えてみるのも良さそう。
真空管を採用しているのもノスタルジーではなく、一段のみで増幅を済ませるために最適ということで真空管を採用したとFAQに書いてます。
あとFAQを見ると分かりますが、メーカー名のSchiitはいわゆるfour letter words(卑猥語)のひとつ(iが一個ないもの)と同じ発音ということです。だからiを一個増やしたんでしょう。ちなみにいまは改修したのでどうか分かりませんが、以前はHead Fiはfour letter wordsの入力禁止になっていて、matsushitaとか日本語でそういう文字が含まれていると入力エラーになってしまい、ma-tsu-shi-taとか入れたことがありました。
他もFAQの項は「なんだって6Wものヘッドフォンアンプが必要なんだい?」という問いに「じゃあなんだって400馬力の車なんかが必要なんだい?」と切り返すとか、「真空管は交換できるからビンテージでも、クライオでも、妖精に作ってもらっても良いよ」とか、結構読んでて面白いです。ふざけたメーカー名だけど本気で作ってると書いてるのも面白いところですが、開発してる人たちはThetaなど他のメーカーにいたベテランということで、良いものを安くというのがコンセプトだそうです。
たしかに価格も$449と手頃です。Made in USAを強調してますが、たしかに最近アメリカは不況の影響も大きいのかアジア勢に比すると元気のない感じもします。例えば老舗のHeadroomは最近新製品が無いんですが、いま開発よりも営業に専念しているということです。久しぶりのアメリカ製の注目製品という意味でも楽しみです。
ただし発売は三月になります。次のヘッドフォン祭りではぜひこれとHE6でデモしたいものです。
2010年11月29日
Head-Direct HifiMan HE6 ハイエンド平面駆動ヘッドフォン
以前HE5LEという平面駆動型のヘッドフォンを紹介しましたが、このHE6はその上位機種となります。価格も上(米国価格$1200)ですが、性能はそれ以上に上がっているようにも思えます。これちょっと期待以上で驚きました。
http://www.head-direct.com/product_detail.php?p=92
最近edition10とかChroma MD1とか軽いヘッドフォンがひとつの流行ではありますが、HE6はがっしりとして重めの本格的なモデルであるということを感じさせます。作りはとてもよく、edition8のような鏡面仕上げも高級感があります。
ケーブルはHE5LEと同じコネクタ式で途中にK1000タイプの4ピンキヤノンXLRをかませてシングルエンドの標準プラグにつながります。ケーブルははじめからリケーブルしているような品質のよさそうなもので、HE5LEのときは音質傾向の違うケーブルを二点同梱するなど迷いが多少ありましたが、これははじめから文句のない良いものがついているという感じです。
もし途中のキヤノンプラグがあまり好ましくないときには、Moon AudioでもとからXLR二個バランスに変換するケーブルが販売されています。
http://www.moon-audio.com/HiFiman.htm
自作する人にはこちらに(HE5ですが)サードウェーブさんの解説ページもあります。
http://www.twctokyo.co.jp/hifiman/balance%20drive.pdf
Audio-gdなんかもバランスヘッドフォンはこの4ピンキャノンx1を使っていますが、中国オーディオ界の標準なんでしょうか。前にも書きましたが、バランスヘッドフォンでXLR二個になっているのはバランスヘッドフォンアンプが元々物理的に二つアンプが分かれていたときの名残です。(そのときははっきりとBTL構成のようなものだったわけです)
HE6の特徴はまずなんといっても能率が異常に低いということです。K1000以降ではこれが一番鳴らしにくいヘッドフォンだと思います。
普通は鳴らしにくいといってもたいていはiPodなんかでもフルボリュームにすると普通聴くくらいにボリュームを取ることはできますが、HE6ではまったく音量が取れません。ためしにあるポータブルアンプを使ってみたらクリップしてしまいました。あわてて音量を下げましたが少し驚きました。
つまり高性能のヘッドフォンアンプが必須です。
試聴したシステムはWin7からFoobarまたはHQ Playerを主に使い、USB経由でAudiophilleo1からHeadroom desktopのDAC/Ampにつないで使いました。
まず驚くのはいままでHeadroom Desktopってゲイン過剰かとも思っていて、HD800でさえボリュームが取れすぎるくらいだったんですけど、HE6を使うとハイゲインにしてボリューム12時前後でちょうど良いくらいという振り切り状態にびっくりします。高音質盤のノーマライズしてないタイプのレベル低めの録音だと1-2時くらいになります。HE6はスピーカーアンプ使う人もいるようで、ここでK1000端子だとK1000用のスピーカーケーブルが使えるという利点があります。
一方で鳴らしにくく発音体が動きにくいということは、いったん動かすともとにすばやく戻りやすいということですから、鳴らせる力をもったアンプを使うと端正で正確な音が出せるということにもなります。強いバネをもって引っ張り、パッと離すようなものです。
また不要な雑音程度では動かないわけですから、ノイズフロアも低くなるので背景もすっきりと黒くなるでしょう。HE6ではそれがよく音に反映されていると思います。
実際に聴いて見るとまず音が早くてシャープで切れが良く緻密です。比べるとLCD2が少し甘めに感じくらいです。良い点は、それでいてハイの痛さがなく、逆に音が豊かで厚みがある点です。弦楽器の響きが豊かで倍音をたっぷり含んでいる感じがします。またヴォーカルも肉質感豊かで滑らかに気持ちよく描かれます。
背景も深く漆黒で音像の重なりも立体的です。かつ空間が広く、ゆったりとした余裕とスケール感を感じます。低域は深くて量感を感じ、たっぷり空気が動く感じがします。それでいて帯域的なバランスもよく、不自然な強調感はありません。
オーディオベーシックの低域テストの意図的にローカットしたテストファイルでは、いままでで一番ローカットのあるなしの差がわかる気がします。
端的に言ってHE6は音楽的でいて、かつHiFiであるという点を高い次元で両立しているところがすばらしいと感じます。音が軽くなく重みがあるし、楽器の音がタイトでスピードがありインパクトがあるのでロックもかっこいいですね。もちろんオーケストラのスケール感もあり、広いジャンルに適合すると思います。
全体的なレベルはハイエンドヘッドフォンと呼ばれる中でもかなり上でしょう。HE5LEからもずいぶん向上を感じます。ケーブルの質もよいですね。すばらしい仕上がりのヘッドフォンです。
実際にあんまり文句をつけるところがないという感じです、良いアンプがあれば。
HE6は私がこういうものを作ってほしいと考えていたものを作ってくれたヘッドフォンです。それは能率が低くてきちんとしたアンプなしでは鳴らせないけれども、きちんとしたアンプがあれば、あたかもそれと有機的に一体となってすばらしい音を作り上げる、というものです。
しかし、多くのメーカーはあいかわらず32オームとか、一般に広く売れるところに固執しています。
Head-Direct/HifiManブランドってたとえばPK1のようにイヤフォンのくせにiPodではならせないでポータブルアンプが必須である、しかしアンプとあわせるとすばらしい、というような製品を前にも出しています。また最近のHM801ではポータブルのわりにはかさばるのに、中身はハイエンドCDPなみのDACチップであるPCM1704を搭載してアンプ交換式、などのまさにマニア向けのものを作ってくれます。
Head-Direct/HifiManブランドの良さはそうした「一般人には理解されなくとも、オーディオマニアがいままで欲しかったもの」を作ってくれるところです。HE6もそうです。
音はすばらしいのですが、きちんとしたヘッドフォンアンプがない人には残念ながらお勧めできません。もしきちんとしたヘッドフォンアンプをもっている人であれば、20万円出しても安いと思います。
わたしもいまのHeadroomがHE6を鳴らしきっているとは思いません。いままでHeadroom Desktopを変えてなかったのは上のような背景があって、結局どこもそうしたヘッドフォンを作らないならDesktop balancedで十分、となめて考えていたからだと自分でも思います。いまHE6のおかげでひさびさにまたアンプの方にも燃えてきました。さて、、
http://www.head-direct.com/product_detail.php?p=92
最近edition10とかChroma MD1とか軽いヘッドフォンがひとつの流行ではありますが、HE6はがっしりとして重めの本格的なモデルであるということを感じさせます。作りはとてもよく、edition8のような鏡面仕上げも高級感があります。
ケーブルはHE5LEと同じコネクタ式で途中にK1000タイプの4ピンキヤノンXLRをかませてシングルエンドの標準プラグにつながります。ケーブルははじめからリケーブルしているような品質のよさそうなもので、HE5LEのときは音質傾向の違うケーブルを二点同梱するなど迷いが多少ありましたが、これははじめから文句のない良いものがついているという感じです。
もし途中のキヤノンプラグがあまり好ましくないときには、Moon AudioでもとからXLR二個バランスに変換するケーブルが販売されています。
http://www.moon-audio.com/HiFiman.htm
自作する人にはこちらに(HE5ですが)サードウェーブさんの解説ページもあります。
http://www.twctokyo.co.jp/hifiman/balance%20drive.pdf
Audio-gdなんかもバランスヘッドフォンはこの4ピンキャノンx1を使っていますが、中国オーディオ界の標準なんでしょうか。前にも書きましたが、バランスヘッドフォンでXLR二個になっているのはバランスヘッドフォンアンプが元々物理的に二つアンプが分かれていたときの名残です。(そのときははっきりとBTL構成のようなものだったわけです)
HE6の特徴はまずなんといっても能率が異常に低いということです。K1000以降ではこれが一番鳴らしにくいヘッドフォンだと思います。
普通は鳴らしにくいといってもたいていはiPodなんかでもフルボリュームにすると普通聴くくらいにボリュームを取ることはできますが、HE6ではまったく音量が取れません。ためしにあるポータブルアンプを使ってみたらクリップしてしまいました。あわてて音量を下げましたが少し驚きました。
つまり高性能のヘッドフォンアンプが必須です。
試聴したシステムはWin7からFoobarまたはHQ Playerを主に使い、USB経由でAudiophilleo1からHeadroom desktopのDAC/Ampにつないで使いました。
まず驚くのはいままでHeadroom Desktopってゲイン過剰かとも思っていて、HD800でさえボリュームが取れすぎるくらいだったんですけど、HE6を使うとハイゲインにしてボリューム12時前後でちょうど良いくらいという振り切り状態にびっくりします。高音質盤のノーマライズしてないタイプのレベル低めの録音だと1-2時くらいになります。HE6はスピーカーアンプ使う人もいるようで、ここでK1000端子だとK1000用のスピーカーケーブルが使えるという利点があります。
一方で鳴らしにくく発音体が動きにくいということは、いったん動かすともとにすばやく戻りやすいということですから、鳴らせる力をもったアンプを使うと端正で正確な音が出せるということにもなります。強いバネをもって引っ張り、パッと離すようなものです。
また不要な雑音程度では動かないわけですから、ノイズフロアも低くなるので背景もすっきりと黒くなるでしょう。HE6ではそれがよく音に反映されていると思います。
実際に聴いて見るとまず音が早くてシャープで切れが良く緻密です。比べるとLCD2が少し甘めに感じくらいです。良い点は、それでいてハイの痛さがなく、逆に音が豊かで厚みがある点です。弦楽器の響きが豊かで倍音をたっぷり含んでいる感じがします。またヴォーカルも肉質感豊かで滑らかに気持ちよく描かれます。
背景も深く漆黒で音像の重なりも立体的です。かつ空間が広く、ゆったりとした余裕とスケール感を感じます。低域は深くて量感を感じ、たっぷり空気が動く感じがします。それでいて帯域的なバランスもよく、不自然な強調感はありません。
オーディオベーシックの低域テストの意図的にローカットしたテストファイルでは、いままでで一番ローカットのあるなしの差がわかる気がします。
端的に言ってHE6は音楽的でいて、かつHiFiであるという点を高い次元で両立しているところがすばらしいと感じます。音が軽くなく重みがあるし、楽器の音がタイトでスピードがありインパクトがあるのでロックもかっこいいですね。もちろんオーケストラのスケール感もあり、広いジャンルに適合すると思います。
全体的なレベルはハイエンドヘッドフォンと呼ばれる中でもかなり上でしょう。HE5LEからもずいぶん向上を感じます。ケーブルの質もよいですね。すばらしい仕上がりのヘッドフォンです。
実際にあんまり文句をつけるところがないという感じです、良いアンプがあれば。
HE6は私がこういうものを作ってほしいと考えていたものを作ってくれたヘッドフォンです。それは能率が低くてきちんとしたアンプなしでは鳴らせないけれども、きちんとしたアンプがあれば、あたかもそれと有機的に一体となってすばらしい音を作り上げる、というものです。
しかし、多くのメーカーはあいかわらず32オームとか、一般に広く売れるところに固執しています。
Head-Direct/HifiManブランドってたとえばPK1のようにイヤフォンのくせにiPodではならせないでポータブルアンプが必須である、しかしアンプとあわせるとすばらしい、というような製品を前にも出しています。また最近のHM801ではポータブルのわりにはかさばるのに、中身はハイエンドCDPなみのDACチップであるPCM1704を搭載してアンプ交換式、などのまさにマニア向けのものを作ってくれます。
Head-Direct/HifiManブランドの良さはそうした「一般人には理解されなくとも、オーディオマニアがいままで欲しかったもの」を作ってくれるところです。HE6もそうです。
音はすばらしいのですが、きちんとしたヘッドフォンアンプがない人には残念ながらお勧めできません。もしきちんとしたヘッドフォンアンプをもっている人であれば、20万円出しても安いと思います。
わたしもいまのHeadroomがHE6を鳴らしきっているとは思いません。いままでHeadroom Desktopを変えてなかったのは上のような背景があって、結局どこもそうしたヘッドフォンを作らないならDesktop balancedで十分、となめて考えていたからだと自分でも思います。いまHE6のおかげでひさびさにまたアンプの方にも燃えてきました。さて、、
2009年10月16日
Head-Direct HE5平面駆動ヘッドホン到着
Head-DirectのHifiMan HE5が到着しました。これはヘッドホン祭りのデモ用として送ってもらったものです。
名称としてはHifiMan HE5となります。これは平面駆動のドライバを使用したものです。購入はこちらのHead-Directのサイトからどうぞ。当初よりも価格は抑えられて$600となっているようです。
http://www.head-direct.com/product_detail.php?p=78
木製のハウジングもなかなかしっかりとしていて、ケーブルは着脱式でねじ込みのプラグになっています。
音は出してすぐに聞いた感想ですが、それでもかなり素晴らしいものです。音の広がりが豊かで全体に厚みを感じさせ、音色もきれいです。
平面駆動らしく音は低域でも高域でも鋭く早く、かつ痛みを感じさせません。かなりバランスもよく考えられていますね。
全体的にかなりよいできです。これはデモ用ですけど、私も自分のを買うと思います。
ちょっと今週末いそがしいのでまたあとで写真やコメントなど追加します。
名称としてはHifiMan HE5となります。これは平面駆動のドライバを使用したものです。購入はこちらのHead-Directのサイトからどうぞ。当初よりも価格は抑えられて$600となっているようです。
http://www.head-direct.com/product_detail.php?p=78
木製のハウジングもなかなかしっかりとしていて、ケーブルは着脱式でねじ込みのプラグになっています。
音は出してすぐに聞いた感想ですが、それでもかなり素晴らしいものです。音の広がりが豊かで全体に厚みを感じさせ、音色もきれいです。
平面駆動らしく音は低域でも高域でも鋭く早く、かつ痛みを感じさせません。かなりバランスもよく考えられていますね。
全体的にかなりよいできです。これはデモ用ですけど、私も自分のを買うと思います。
ちょっと今週末いそがしいのでまたあとで写真やコメントなど追加します。