Music TO GO!

2020年05月05日

平面型ワイヤレスヘッドフォン、HIFIMAN ANANDA-BT

簡単に紹介すると、Bluetoothワイヤレスを平面磁界型のハイエンドヘッドフォンに組み込んだのがANANDA-BTです。またヘッドフォン内部に平面型も鳴らせる高性能の内蔵DACとバランス出力アンプが組み込まれているのも特徴です。
またUSB-CでもPCやスマホと接続することができますので、その場合には24ビット/192kHzに対応しています。

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BluetoothヘッドフォンとしてはさまざまなHDコーデックに対応しています。例えばApt-X HD、HWAそしてLDACロスレスHD Bluetoothコーデックをもサポートしています。Walkmanやファーウエイのスマホを使っている人にもよいでしょう。
内蔵DAC/アンプのフィルターとアナログ回路設計は高性能DAPのR2R2000を設計したエンジニアの手によるものです。アンプはバランス出力アンプが内蔵されています。
面白いのは外部マイクがついていて、ゲーマー、ポッドキャスター、ビデオロガーなども対象としていることです。

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もちろんヘッドフォンとしての性能も高く、HIFIMAN独自の新"スーパーナノ"振動板 (NsD)を採用し、以前から80%薄くなり、そのため素早いレスポンスと解像感の高く鮮烈で豊かな音質を提供できるということです。
ウインドウシェイド型のグリルデザインも上級機種と共通のもので、これは透明感の高いサウンドを得るために不要な音の反射を大幅に低減するということです。イヤカップの形も人間工学に基づいた非対称形状をしています。

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周波数特性は8Hz-55KHz、インピーダンスは35Ω、感度は103dBです。もっとも実際に鳴らすのは内蔵アンプですから、鳴らしやすさはあまり気にかける必要はないでしょう。重さは460g (495g マイクとケーブルを含む)です。

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バッテリーは再生時間が10時間で、最大充電時間が2.7時間です。
バッテリーの注意点はUSBケーブルを単につないだだけでは充電されないことです。パワーボタン(長い)の横の小さいチャージボタンを2秒押すことで充電がされます。これはスマートフォンなどから繋ぐときにUSBケーブルをつないで自動的に充電されるとスマホのバッテリーを消費してしまうからです。それを抑えるためにこういう仕様になっています。
充電中はライトが赤く点灯しますので確認してください。単にUSBケーブルをつないだだけだとライトはつきません。充電が終わるとライトが青くなります。

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また、なかなかしゃれたヘッドフォンケースか付属しています。

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ケースはよく考えられていて、ハンドルのところが持ちやすいようにベルクロで二重になっていて、中のヘッドフォンが動かないようにやはりベルクロで固定するようになっています。また小物を入れるポーチにもベルクロの両面テープがついています。これは国産でもあまりないようによく考えられたケースだと思います。こうした細かな気遣いは国産製品の独壇場でしたが、中国製品でもこうした製品が増えてきたと思います。

ANANDA-BTの外観はHE1000の流れを組むものでシェイドグリルの設計も取り入れられた本格派です。本当にHifimanのハイグレードモデルからケーブルを取り去って、中にアンプをつけたというようなモデルになっています。

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音楽再生はまずiPhoneで試します。ペアリングは押しっぱなしだと赤青点滅のペーアリングモードになるというもので特に難はありません。
音を出してみるとその音の良さにちょっと驚きます。奥行きが深く感じられ、音の明瞭感が高くひとつひとつの音が鮮明に聞こえます。解像感も高く、透明でクリアな音空間がいっぱいに広がる感じです。かなりハイレベルなアンプが内蔵されているのではと思います。
これを聞いて「Bluetoothの悪い音質」と思う人はいないでしょう。むしろiPhoneからケーブルでヘッドフォンに繋いでもこんな素晴らしい音質は出てきません。内蔵アンプならではの音ですね。しかし平面型を十分に駆動するようなハイパワーアンプを小型化して内蔵するのはなかなか他にはできないと思います。iPhoneの普通のSBCとかAACでも十分な音質ですが、iPhoneでもHifimanアプリを使うとHWAでANANDA-BTとつなげるということです。実際にミュージックアプリとHIFIMANアプリで同じ曲を再生するとたしかにHIFIMANアプリのほうがより良いようには思います。ただベースのANANDAの音質が十分に高いのでiPhoneの普通のアプリでも高音質で楽しめます。
低域は深く鋭いパンチがあります。ロックポップを楽しむにも十分な躍動感を楽しめます。帯域特性は洗練されていて低域が大きすぎるということはありません。

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ただ開放型の大型ヘッドフォンなので、主な用途は家でPCと接続することになるのでしょう。実際にWindowsに繋いでみたんですが、aptXでつながっているのか、ホストのパワーに余裕があるからか、より明瞭感高いはっきりとした音で繋がるように思います。AmazonHDとかTIDALなどのストリーミングを駆使する人にもおすすめですね。ケーブルがないのは家の中でもやはり自由を感じます。また家で聞くと全ての音源にアクセスできるので次々に聞けて飽きませんね。

優れた内蔵アンプと平面型振動板でハイエンドクラスの音質をBluetoothというお手軽ワイヤレスで楽しめるなかなか稀有な製品だと思います。
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2020年04月22日

コスパの高い平面型ヘッドフォン、HIFIMAN SUNDARA

最近ハイエンドヘッドフォンではダイナミック型の平面駆動タイプ(オルソダイナミック)がよく使われているが、この形式を世に広めた功績はAudezeとHIFIMANにあります。もともとダイナミック型の平面型はオーディオ黄金期には国産メーカーも参入していたのですが、コストがかかるこの方式はオーディオが衰退していくにつれて忘れられてきました。それをマニアックメーカーとして復活させたのがHIFIMANです(Audezeはライブ音響機器の応用として開発されてます)。HIFIMANはハイエンドだけではなくHE400など低価格機にも平面型を広げてきましたが、このSUNDARAはその結実と言えます。
最近の価格改正で旧価格の50,000円(税別)から新価格の34,600円になったことで、平面型の入門にはうってつけです。

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特徴はやはりこの価格にして本格的な平面型ヘッドフォンが楽しめるということです。
SUNDARAでは振動板も改善され、HE400に比べると80%も薄型になっているとのことです。振動板が薄いほど軽くなるので平面型には有利ですね。この辺はHIFIMANが得意としているナノテクの産物でもあるのでしょう。
ヘッドバンドはアルミと皮革で製作されて、この価格とは思えないくらいの高級感があります。また快適性も向上しています。
再生周波数は6Hzから75kHzと広帯域で、インピーダンスは37Ω、感度は94dBです。重さは372gと軽量です。
ケーブルは着脱式で標準ケーブルは3.5mm端子が付いています。ヘッドフォン側はステレオミニ(TRS)タイプです。端子はかなりしっかりとしたもので、低価格品とはいえマニアックメーカーらしいパーツです。

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各部は十分に剛性感があり、側圧はややきつめなくらいでよくフィットします。わりと軽めなので長い時間つけていても大丈夫でしょう。
能率はやや鳴らしにくい方で、ポータブルプレーヤーでも音量を取ることはできますがやや暗めに感じられるのでパワーのあるアンプを使用したほうが良いです。実際にアンプを使用して鳴らすとその真価を発揮することができます。
たとえばAK380だとやや足りなく、SP1000だと申し分ありません。あるいは据え置きのヘッドフォンアンプを使うのが良いと思います。

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音質はこの価格帯では比類ないくらい高いレベルだと思います。かなりコストパフォーマンスはよいと思いますね。この独特の立体感や音の素早さ、整った周波数再現性はこのクラスのヘッドフォンではなかなか聞くことができず、また平面型らしいと感じるところでもあります。
高域はよく制御されてきつくなく、低域も量感がたっぷりある割には膨らむ感じはないのでこちらもよく整っています。低域はぶおっという量感ではなく、小気味良いタイトなパンチを感じるタイプです。低音が軽いわけではなく、それなりの深みもあります。音はニュートラルで着色感はあまりありません。
振動板が薄くて軽いだけあって、歯切れも良くスピード感があるのでノリのよい音楽にもむいています。ただ低音どかっというタイプではなく、周波数特性が整っていてタイトなので、どちらかというとジャズクラシック系の音です。平面型の利点は高域とか低域に変わりなくインピーダンス変動が少ないというものがありますので、本来こうした周波数特性が整っていて低音の不自然な張り出し感が少ないほうが平面型らしくありますね。

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上級機のHE1000seなどに比べればやはり音は粗めで厚みが足りなくはありますが、同価格帯の普通のヘツドフォンではまず実現できないような立体感が特に良いと感じます。三次元的な音の広がりと、楽器やヴォーカルの定位感というか音の重なり感を感じられると思います。
音の細かさは平面型ならではと思えると思います。こうした音楽の空気感というか情報量豊かな音を感じられるのはさすがという感じではありますね。

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録音のきつめの音楽ではやや音の荒さが気になるところがあり、この価格では文句が出ないレベルなのですが、本機のポテンシャルが高いのでやや勿体無い感はあります。録音が良い音源だとそれほど気になりません。
余裕があればケーブルを変えてもう少し滑らか感を出すとかなり高級感のあるハイグレードな音を楽しめると思います。今手元にこのタイプのケーブルがないので変えて試せませんがヘッドフォン自体はもっとポテンシャルはあるように感じます。

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この価格でも平面型ヘッドフォンを買った感じは味わえると思います。おそらくいままで使ってきたヘッドフォンとは一味違うと感じるでしょう。いずれにせよ開放型でポータブルには向かないので、家で使うヘッドフォンで5万円以下で一味違うものを探している人におすすめです。
かなりコストパフォーマンスの良い買い物ができると思います。
SUNDARAとは古代サンスクリット語で美しいという意味を持っているそうです。たしかに価格以上の内容と見た目の美しさ、音の美しさを兼ね備えたヘッドフォンと言えるでしょう。

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2015年02月05日

世界最薄の振動版を採用したHiFiManの新フラッグシップ、HE1000のプレビュー

先日のCESで発表されて話題になったHiFiManの新しいフラッグシップであるHE1000のプリプロダクションモデルを試すことができました。またHiFiMan HM901の新型であるHM901Sの最終生産前モデルを試す機会もあったので合わせてレポートします。

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* HE1000

HiFiMan(ハイファイマン)はマニアックな傾向の中国のメーカーで、平面型ヘッドフォンとハイレゾプレーヤーについては昔から手掛けてきました。
いままでのHiFimanのフラッグシップヘッドフォンはやはり平面型で、あの能率が低すぎてアンプをクリップさせちゃうHE6でしたが、HE1000はそれに代わるフラッグシップとなります。HE1000はCES 2015で発表されて話題になりました。HeadFiのJudeはHE1000をベストオブCESに選んでいます。
下記はHE1000のホームページです。
http://hifiman.com/he1000/

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HE1000の特徴はまずダイアフラム(振動版)がとても薄いということで、史上最薄となりナノメーターで測るほどだそうです。静電型ではなくオルソダイナミックなのでダイアフラムのほかに導体のパターンが必要ですが、それもサブミクロン程度の薄さということです。またダイアフラムの面積もおそらく世界最大級だと思います。下記にナノメーターダイアフラムがどの程度薄いかということがわかる動画があります。



もうひとつの特徴としてはアシンメトリカル(非対称)・ドライバーを採用しているということです。HE560ではシングルサイドでしたが、HE1000はダブルサイドになります。ただしマグネットなどが対称ではなく非対称に配置されています。この利点としては通常の対称型のドライバーは干渉して位相歪みを生じるけれども、この非対称型だと干渉しないのでそうした歪みが生じないということです。これは下記の図のように片側に逃げていく逆相の音との相互作用なんでしょう。
左側が従来タイプのドライバーで右側がアシンメトリカルドライバーです。

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またブラインドグリルと呼ばれるデザインのハウジングも開口性を重視して設計されています。

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ケーブルは4pinのバランスが基本で、ここからコネクタで標準プラグと3.5mmミニプラグのケーブルが付けられます。

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実際に使ってみるとサイズにしては重さは軽く感じられます。装着の感じはAbyssに似たかぶる感覚に近いですね。ただこの辺はプリプロダクションなのでまた変わってくるかもしれません。
音に関してはHiFiMan HE560とゼンハイザーHD800と簡単に比べてみました。ヘッドフォンはすべて標準ケーブルを使用してます。
ヘッドフォンアンプはパーソンのSoloist SLを使用してみました。次のようなシステムです。

PC(JRMC) → Hugo(USB DAC) → kimber RCAケーブル → Soloist SL

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HE1000でまず感じたのはなんかSTAXっぽい、ということで、これは音が細かくて速いということから来ている感覚のように思えます。この辺は最薄ダイアフラムが効いているのでしょうかね。パーソンの音の生々しさがかなり気味悪いくらいリアルに感じられます。それと高い能率も寄与していると思います。HE560と比べると顕著ですが、音が明るく軽く感じます。重く暗い感じではないですね。
HE560よりもさらに歯切れが良く、高音域の伸びが良く突き抜ける感じで、低音域はとてもパンチがあります。低域は特に超低域がどーっと出てくる感じで、音の広さと合わせてスケール感が半端なく感じます。
HD800もHE1000に比べるとかなり甘い感じに感じられ、インパクトが軽くHD800でさえもHE1000に比べると鈍重な感じです。

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プレビューなのでこのくらいにしておきますが、なかなか性能の高さは実感できました。HE560やHD800よりも性能が高いのは間違いないところです。HE1000は能率がそれほど低くないので、いわゆる平面型向けのヘッドフォンアンプでなくてもかまいません。HE560より能率が高いです。平面型の良い点が能率が改善されたことで100%発揮できているという感じでしょうか。
iPhoneでもボリュームをワンノッチ残すくらいで十分音量は取れます。またiPhoneで鳴らしてさえけっこう立体感や低域レスポンスは得られて良いヘッドフォンだということはわかります。

価格はまだ分かりませんが、それなりにお高くなりそうです。国内の取り扱いについてはそのうち案内があるのではと思います。

* HM901S

あのHM901が金属シャーシになったものがHM901Sです。これはHM901ではシャーシが電気的な問題があったそうで、この金属シャーシ化でかなり問題は解決したということです。たしかアルミ製だったと思います。

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その他のDACチップや回路は変更がないそうです。アンプカードも同じだと思います。ただしデジタルフィルタースイッチがなくなり、スイッチではなくイヤフォンプラグでシングルエンドとバランスの使い分けをします。バランスは3.5mmTRRSです。
このほかにはファームウエアも改良されています(FWは太極というそうです)。ただこのバージョンではまだ不安定でした。

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シャーシはかなりがっちりとして精密感があります。ただ前よりも重くはなっています。
音は前と似て濃くて繊細な音ですが、よりクリーンで洗練された気はしますね。制動力もあってしっかりイヤフォンをドライブしています。

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そういえば最近ではAK240のステンレスシャーシ版のAK240SSも発表されていますが、これもA&Kの人に言わせるとシャーシが変わったことだけでグランドの変化で音の変化があるということです。ポータブルオーディオもこれだけ音が良くなってくると、いままでは気に書けなかった要素も重要になってくるということかもしれません。
posted by ささき at 20:55 | TrackBack(0) | __→ HifiMan HE5, HE6 平面ドライバ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年07月26日

平面型ヘッドフォンの新機軸、HiFiMan HE560

HE560は平面型に力を入れているHiFiManが平面型ヘッドフォンに新機軸を取り入れた自信作です。

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* HE560の特徴

平面型(海外ではPlanar)というのは従来のヘッドフォンが(スピーカーのように)ある点で振動を振動板に伝えるのに対して、振動板の全面が振動することによって振動板の真ん中から端まで均質に振動することによって周波数特性が自然に再現されるという特徴があります。真ん中で振動していると端まで振動が伝わるのが振動板の物的な特性で左右されてしまうからです。

HiFiManではHE6という平面型のフラッグシップがありました。これは音質は素晴らしいのですが能率が異常ともいえるほど低く、ヘッドフォンアンプを選ぶというより、専用に設計されたようなハイパワーアンプでもなければ駆動できないというものでした。以前こちらにレビューリンクを書きました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/171206322.html

HE560はHE6に代わるフラッグシップともなり得るもので、ドライバーにシングルエンド・平面マグネット(Singled ended planer magnetic)を採用するなど新機軸を採用して音質と能率の両面で改良を図ったのがポイントです。これは通常両側にあるマグネットが片側だけにあるという方式です。
この方式を取るとダイアフラムがより自由に動くので広大な音空間を生むのですが、歪みをコントロールするのが難しいということです。今回それを解決するダンピング素材をJade(以前静電型を作ったメーカー)と共同開発で見つけた点がキーです。またこの方式ではマグネットが一つなので軽量化できて能率もあがるということです。

製品をレビューのために送ってもらいましたが、パッケージもいままでのHiFiManよりこなれているように思います。

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製品版ではデモ版よりもさまざまな点で改良されています。まず手にもって軽いと思ったのもそのひとつです。これもシングルエンド方式のゆえでしょうか。
ハウジングやイヤパッド、ヘッドバンドなどの作りもなかなか高級感があると思います。

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* HE560の音質

HE560に関しては能率が向上したこともあり、まず普及タイプのコストパフォーマンスのよいUSB DAC+ヘッドフォンアンプで試してみました。まずDENONのDA300USBです。これも音的にはよい相性を聴かせてくれるのですが、ゲインがないのでやや音量が取りづらいですね。ただポップスなどの高めの録音レベルなら問題ないくらいだと思います。また高コストパフォーマンスというとAudioGdのNFB11.32を取り出してきました。こちらに以前書いたレビューリンクがあります。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/291164866.html

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HE560とNFB11.32

HE560の音はとてもクリアで透明感が高いのがまず感じられる特徴です。楽器の音の鳴り方が自然で分離感がよく浮き上がって聞こえます。中高音域は美しい音のなり方が感じられます。低域は突出しているわけではないけれども、量感は豊かで、重いベースラインが堪能できます。おそらくかなり低いところまでなっているせいかと思います。音はかなり細かいところまで抽出して解像力は高いように感じられます。楽器音などの音像を明瞭に浮き彫りにするというタイプです。立体感も優れていて、三次元的な音空間の楽器や音の配置がわかりやすいと思います。
音の切れ味が鋭く、ハイスピード表現が可能ですが、ここは電源が外部のDA300USBではやや不利なので、やはり電源はなるべく強力なアンプを使うのが良いと思います。これは後で書くEF6でもっとはっきりわかります。

出音は平面型にしては軽やかなのも特徴です。HE6との大きな違いはここだと思います。また他の平面型と比べても特徴的だと言えるでしょう。一聴するとまるで低インピーダンスの鳴らしやすいようにも聴こえます。

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もう少し聞きすすめるとHE560のもうひとつの特徴がわかってきます。それは出音の滑らかさ、です。実際HE560で特筆する点はこの音の立ち上がりがなめらかさ・スムーズ感だと思います。FOSTEXのTH500RPの発表会の時にも、測定すると振幅が少なくても音が出るので共振点が目立ちにくい、つまりスムースに振動板を動かせるということが言われていました。たとえばTH900は振幅自体は速いが、振幅の動き自体はRPが滑らかというわけです。実際に実機のTH500RPを聴いてもそう思います。
HE560でもそうした特徴があって、ハイスピードとか切れが良いという表現は普通の高性能のヘッドフォンでも言えることなのですが、HE560では特にスムーズさ滑らかさが一段と上質感を感じさせてくれます。

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HE560とHiFiMan EF6

次に平面型用のハイパワーアンプ、HiFiMan EF6とも組み合わせてみました。DENON DA300USBをDACとして使用します。さすがにこの組み合わせではより優れた音再現ができます。ぐっと力感が上がり、たたみかけるようなドラムスでは圧倒的な迫力を感じます。音もより引き締まって贅肉が取れてふくらみ感がなくなってきます。前に書いたように電源が強力であればあるほど、リニアに反応が上がっていくポテンシャルの高さをHE560が持っていることがわかります。特にスピード感・音楽のダイナミズム・ベースのパワー感で向上が聴き取れます。
ただEF6はHE6でさえ駆動できますが、ここまでハイパワーでなくてもHE560は大丈夫な気はします。ひとつにはHE560の良さは音の出だしのスムーズさというのがあるので、そこは力感とかタイトさともちょっと違った部分だからです。

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意外と面白いのは大柄なEF6と対極にコンパクトなRessonessenseのHerusです。この組み合わせでiPhoneから考えられないような高音質でDSDネイティブ再生を楽しめるというのはちょっと愉快な体験です。(アプリはhibiki)
能率の改善は手軽さと可能性も引き出すという好例とも言えます。ただしやはりパワー的には物足りなさはあります。

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HE560とHD800

ハイエンドヘッドフォン対決ということでゼンハイザーHD800と比べてみると、中高域での音のシャープさと細やかさはもはやどちらがとは言えないけれども、中低音域での音の充実感と全体的な厚み・豊かさという点でHE560が上回っていると思います。HE560の独特の滑らかさもこの点で有利です。音場はHE560は空間的な広がり感が良く、HD800はステージ的な平面的な広がりに優れるというところでしょうか。
もともとモニターとして使われるHD800に比べれば、普通に音楽を楽しく聞くための個性としてはHE560はよくできていると思います。低音域の強すぎる強調感はない程度で重厚なベースの良さも感じさせてくれます。
ただHD800よりもややボリュームの位置は高めとなります。HE560の能率は微妙なところで、平面型用とうたわれるようなハイパワーアンプが必要なほどではありませんが、やはりそれなりのヘッドフォンアンプは必要です。

* まとめ

HiFiMan HE560はシングルエンド・平面マグネットという新方式を採用して、性能と平面型の能率の問題を解決しています。能率はHE6にくらべると、というくらいでまだ低いのでパワーのある(電源の強力な)アンプが向いているという側面はまだ持っています。ただしいわゆる平面型向けのハイパワーヘッドフォンアンプが必要なほどでもなく、平面型ならではのスムーズさも楽しめます。

販売はトップウイングで下記のフジヤさんなどでお求めください。
http://www.fujiya-avic.jp/products/detail62468.html
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2010年12月30日

平面駆動ヘッドフォン向け高出力アンプ、Schiit Lyr

前にHE6の記事を書きましたが、実際に店頭で色々なヘッドフォンアンプと試してみたところ、けっこう高性能と思われるヘッドフォンアンプのハイゲインでもほぼ8-9割に振り切ってしまいます。たまたまあったCDをかけてこれでは録音レベルの低い良録音の曲では音量が取れないかもしれません。
HE6はある意味やり過ぎなところが良い点ではありますが、お勧めするのもちょっと困ったと思ってたらすごいヘッドフォンアンプが出てきました。このSchiitのLyrという新しいアンプです。
http://schiit.com/products/lyr/
HeadFiではこちらにスレッドがあります。
http://www.head-fi.org/forum/thread/530556/new-schiit-lyr-hybrid-6w-headphone-amp-yes-six-watts-rms

Lyrはヘッドフォンアンプの常識を破るような6W/ch(32Ω)という高出力を出すことができます。これは上の製品ページに書いていますが、HE6とかLCD2のような低能率の平面駆動タイプのために設計したとあります。これ、うっかりすると壊れるヘッドフォンもありそうですが、まさにHE6などにうってつけです。
もちろん平面駆動とか低能率のもの専用というわけではなく、正しい音量で使えば普通のヘッドフォンにも向いている機能もついています。Dynamically Adaptive Output Stageというもので、電流を監視していて低出力で済む時はA級増幅をして、高出力を必要とする時はAB級にスイッチするというものです。
Lyrは真空管とMOSFETのハイブリッドタイプで、真空管はECC88を使用しています。購入時はJJのがついてくるので悪くはないと思いますが、交換可能になってます。前段の管は交換するとけっこう差は大きいのでビンテージものと替えてみるのも良さそう。
真空管を採用しているのもノスタルジーではなく、一段のみで増幅を済ませるために最適ということで真空管を採用したとFAQに書いてます。

あとFAQを見ると分かりますが、メーカー名のSchiitはいわゆるfour letter words(卑猥語)のひとつ(iが一個ないもの)と同じ発音ということです。だからiを一個増やしたんでしょう。ちなみにいまは改修したのでどうか分かりませんが、以前はHead Fiはfour letter wordsの入力禁止になっていて、matsushitaとか日本語でそういう文字が含まれていると入力エラーになってしまい、ma-tsu-shi-taとか入れたことがありました。
他もFAQの項は「なんだって6Wものヘッドフォンアンプが必要なんだい?」という問いに「じゃあなんだって400馬力の車なんかが必要なんだい?」と切り返すとか、「真空管は交換できるからビンテージでも、クライオでも、妖精に作ってもらっても良いよ」とか、結構読んでて面白いです。ふざけたメーカー名だけど本気で作ってると書いてるのも面白いところですが、開発してる人たちはThetaなど他のメーカーにいたベテランということで、良いものを安くというのがコンセプトだそうです。

たしかに価格も$449と手頃です。Made in USAを強調してますが、たしかに最近アメリカは不況の影響も大きいのかアジア勢に比すると元気のない感じもします。例えば老舗のHeadroomは最近新製品が無いんですが、いま開発よりも営業に専念しているということです。久しぶりのアメリカ製の注目製品という意味でも楽しみです。
ただし発売は三月になります。次のヘッドフォン祭りではぜひこれとHE6でデモしたいものです。
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2010年11月29日

Head-Direct HifiMan HE6 ハイエンド平面駆動ヘッドフォン

以前HE5LEという平面駆動型のヘッドフォンを紹介しましたが、このHE6はその上位機種となります。価格も上(米国価格$1200)ですが、性能はそれ以上に上がっているようにも思えます。これちょっと期待以上で驚きました。
http://www.head-direct.com/product_detail.php?p=92

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最近edition10とかChroma MD1とか軽いヘッドフォンがひとつの流行ではありますが、HE6はがっしりとして重めの本格的なモデルであるということを感じさせます。作りはとてもよく、edition8のような鏡面仕上げも高級感があります。
ケーブルはHE5LEと同じコネクタ式で途中にK1000タイプの4ピンキヤノンXLRをかませてシングルエンドの標準プラグにつながります。ケーブルははじめからリケーブルしているような品質のよさそうなもので、HE5LEのときは音質傾向の違うケーブルを二点同梱するなど迷いが多少ありましたが、これははじめから文句のない良いものがついているという感じです。

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もし途中のキヤノンプラグがあまり好ましくないときには、Moon AudioでもとからXLR二個バランスに変換するケーブルが販売されています。
http://www.moon-audio.com/HiFiman.htm
自作する人にはこちらに(HE5ですが)サードウェーブさんの解説ページもあります。
http://www.twctokyo.co.jp/hifiman/balance%20drive.pdf
Audio-gdなんかもバランスヘッドフォンはこの4ピンキャノンx1を使っていますが、中国オーディオ界の標準なんでしょうか。前にも書きましたが、バランスヘッドフォンでXLR二個になっているのはバランスヘッドフォンアンプが元々物理的に二つアンプが分かれていたときの名残です。(そのときははっきりとBTL構成のようなものだったわけです)

HE6の特徴はまずなんといっても能率が異常に低いということです。K1000以降ではこれが一番鳴らしにくいヘッドフォンだと思います。
普通は鳴らしにくいといってもたいていはiPodなんかでもフルボリュームにすると普通聴くくらいにボリュームを取ることはできますが、HE6ではまったく音量が取れません。ためしにあるポータブルアンプを使ってみたらクリップしてしまいました。あわてて音量を下げましたが少し驚きました。
つまり高性能のヘッドフォンアンプが必須です。

試聴したシステムはWin7からFoobarまたはHQ Playerを主に使い、USB経由でAudiophilleo1からHeadroom desktopのDAC/Ampにつないで使いました。
まず驚くのはいままでHeadroom Desktopってゲイン過剰かとも思っていて、HD800でさえボリュームが取れすぎるくらいだったんですけど、HE6を使うとハイゲインにしてボリューム12時前後でちょうど良いくらいという振り切り状態にびっくりします。高音質盤のノーマライズしてないタイプのレベル低めの録音だと1-2時くらいになります。HE6はスピーカーアンプ使う人もいるようで、ここでK1000端子だとK1000用のスピーカーケーブルが使えるという利点があります。
一方で鳴らしにくく発音体が動きにくいということは、いったん動かすともとにすばやく戻りやすいということですから、鳴らせる力をもったアンプを使うと端正で正確な音が出せるということにもなります。強いバネをもって引っ張り、パッと離すようなものです。
また不要な雑音程度では動かないわけですから、ノイズフロアも低くなるので背景もすっきりと黒くなるでしょう。HE6ではそれがよく音に反映されていると思います。

実際に聴いて見るとまず音が早くてシャープで切れが良く緻密です。比べるとLCD2が少し甘めに感じくらいです。良い点は、それでいてハイの痛さがなく、逆に音が豊かで厚みがある点です。弦楽器の響きが豊かで倍音をたっぷり含んでいる感じがします。またヴォーカルも肉質感豊かで滑らかに気持ちよく描かれます。
背景も深く漆黒で音像の重なりも立体的です。かつ空間が広く、ゆったりとした余裕とスケール感を感じます。低域は深くて量感を感じ、たっぷり空気が動く感じがします。それでいて帯域的なバランスもよく、不自然な強調感はありません。
オーディオベーシックの低域テストの意図的にローカットしたテストファイルでは、いままでで一番ローカットのあるなしの差がわかる気がします。

端的に言ってHE6は音楽的でいて、かつHiFiであるという点を高い次元で両立しているところがすばらしいと感じます。音が軽くなく重みがあるし、楽器の音がタイトでスピードがありインパクトがあるのでロックもかっこいいですね。もちろんオーケストラのスケール感もあり、広いジャンルに適合すると思います。
全体的なレベルはハイエンドヘッドフォンと呼ばれる中でもかなり上でしょう。HE5LEからもずいぶん向上を感じます。ケーブルの質もよいですね。すばらしい仕上がりのヘッドフォンです。
実際にあんまり文句をつけるところがないという感じです、良いアンプがあれば。

HE6は私がこういうものを作ってほしいと考えていたものを作ってくれたヘッドフォンです。それは能率が低くてきちんとしたアンプなしでは鳴らせないけれども、きちんとしたアンプがあれば、あたかもそれと有機的に一体となってすばらしい音を作り上げる、というものです。
しかし、多くのメーカーはあいかわらず32オームとか、一般に広く売れるところに固執しています。
Head-Direct/HifiManブランドってたとえばPK1のようにイヤフォンのくせにiPodではならせないでポータブルアンプが必須である、しかしアンプとあわせるとすばらしい、というような製品を前にも出しています。また最近のHM801ではポータブルのわりにはかさばるのに、中身はハイエンドCDPなみのDACチップであるPCM1704を搭載してアンプ交換式、などのまさにマニア向けのものを作ってくれます。
Head-Direct/HifiManブランドの良さはそうした「一般人には理解されなくとも、オーディオマニアがいままで欲しかったもの」を作ってくれるところです。HE6もそうです。
音はすばらしいのですが、きちんとしたヘッドフォンアンプがない人には残念ながらお勧めできません。もしきちんとしたヘッドフォンアンプをもっている人であれば、20万円出しても安いと思います。

わたしもいまのHeadroomがHE6を鳴らしきっているとは思いません。いままでHeadroom Desktopを変えてなかったのは上のような背景があって、結局どこもそうしたヘッドフォンを作らないならDesktop balancedで十分、となめて考えていたからだと自分でも思います。いまHE6のおかげでひさびさにまたアンプの方にも燃えてきました。さて、、
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2009年10月16日

Head-Direct HE5平面駆動ヘッドホン到着

Head-DirectのHifiMan HE5が到着しました。これはヘッドホン祭りのデモ用として送ってもらったものです。

he5a.jpg


名称としてはHifiMan HE5となります。これは平面駆動のドライバを使用したものです。購入はこちらのHead-Directのサイトからどうぞ。当初よりも価格は抑えられて$600となっているようです。
http://www.head-direct.com/product_detail.php?p=78

木製のハウジングもなかなかしっかりとしていて、ケーブルは着脱式でねじ込みのプラグになっています。

音は出してすぐに聞いた感想ですが、それでもかなり素晴らしいものです。音の広がりが豊かで全体に厚みを感じさせ、音色もきれいです。
平面駆動らしく音は低域でも高域でも鋭く早く、かつ痛みを感じさせません。かなりバランスもよく考えられていますね。
全体的にかなりよいできです。これはデモ用ですけど、私も自分のを買うと思います。

ちょっと今週末いそがしいのでまたあとで写真やコメントなど追加します。
posted by ささき at 09:42 | TrackBack(0) | __→ HifiMan HE5, HE6 平面ドライバ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする