以前こちらの記事に書いた平面駆動方式(Planar)のヘッドホン、LCD-1の新型というか正式版がようやく登場しました。
http://vaiopocket.seesaa.net/category/6961941-1.html
LCD-2です。
Audezeは大型の平面型のPAシステムを製作する会社が、ヘッドホン分野に進出するために製作したものです。オーディオファイル向けというだけでなくプロ用のモニターも意識したもののようです。
http://www.audeze.com/
以前は既製品を流用するだけだったハウジングやケースも立派なものになりました。以前のものは装着感が難点だっただけにこれは良いポイントです。カリビアンローズウッドのハウジングとラムスキンイヤパッドを使用しています。米国ではメンテ用のオイルも入っているようですが、日本には通関の関係から送ってないそうです。
今流行のようにドライバーはかなり傾けてマウントされるようになっています。
装着してみると側圧がやや強めということもあってかなりぴったりします。ただプラグが交換式なのはよいんですが、首を振るとプラグがややあたるのはなんとも。ケーブルはLCD-1ではマイクケーブルだったんですが、LCD-2ではスピーカーケーブルになっています。テストトラックでたしかめるとL Rが逆なのが海外製らしいご愛嬌です(写真では見映えのために揃えています)。
LCD1とはドライバーが進歩していてさらに薄くなっているようです。また振幅幅はLCD2の2mmに対して2.5mmあり、振動板の面積も広いと言うことでより大きく空気を動かせます。
価格も$945と堂々たるハイエンドクラスです。LCD1からのアップグレードは$600でうれしいことに送り返す必要はありません。
音はニュートラル・フラットでスタジオ使用を考慮しているというのも分かります。ただしドライになりすぎず、音に適度な潤いがあるのは木製ハウジングのゆえでしょうか。ヴォーカルも気持ちよく聴こえます。
音の速さ、切れの良さは健在で、しゃきしゃきとした楽器の音鳴りは気持ちがよいんですが、同時に自然さも兼ね備えています。精細なヴァイオリンの音はSTAXを思わせます。ただSTAXと違ってアンプが選べるのはよいですね。
また音の立体感もかなりあります。明瞭感の高さとともにかなりひとつひとつの音は際立ちます。
また低域性能に凄さを感じます。
どう凄いかというと、ボンボン言うような量感が凄いのではなく、超低域までフラットに伸びてます。40hzくらいまで平坦か、なだらかに落ちていて、30hzくらいからやっと急に落ちる位です。これは脅威的です。
こんな感じで超フラットです。
http://www.audeze.com/2010/05/lcd-2-frequency-response/
HD800などと比べて際立つのは音の重み・厚みですね。これがどこから来るのかはわかりませんが・・
これもぜひバランス化してみたいですね。
Music TO GO!
2010年05月14日
2009年08月26日
Audeze LCD-1 平面駆動の新たな夜明け
*前口上
またヘッドホンの世界に新星の登場です。しかし、これにはいささかの前口上が必要になります。
すこし前にCanJam2009の記事を書きましたが、実はCanJamでその高い音質でけっこう話題になっていたけどその記事では触れなかったものがありました。これは書けなかった、というのが正しいのですが、そのときは何者かよく分からなかったからです。
それがこのAudez'e LCD-1です。最近正式にリリースされました。
これは説明が必要かもしれません。
まず写真に写っているヘッドホンの「ガワ」はNadyというブランドのものらしく数十ドル程度のものです。
Audeze LCD-1はその中身をそっくりAudeze独自の平面駆動のドライバーに換装して、ケーブルをモガミのものにリケーブルしてノイトリックのプラグをつけたものです。
つまりAudeze LCD1はヘッドホンの名称というよりはドライバーの名称と言ったほうが良いでしょう。Audezeはアメリカのガレージメーカーでスピーカーの技術を応用してヘッドホンの平面駆動形式を研究するところのようです。LCD-1はそのためプロトタイプ的に作られた製品ということになります。
Audezeのホームページはこちらです。ちなみにLCD1は約$400です。
http://www.audeze.com/
平面駆動というのは普通に見られるドライバーのように一点とかリング状のようにマグネットやコイルが形成されているのではなく、振動板全体が信号に応じて動く方式の総称でSTAXのような静電型やTakeTのようなハイルドライバーも含まれます。
ここで言っているのはこれを従来と同じダイナミック型で行うもので、YAMAHAではオルソダイナミック、FostexではRP(Regular Phase)などと呼びます。またアイソダイナミックとも呼びますが、みな同じものです。海外では端的に平面という意味でプラナー(Planar)とも呼びます。
Planarタイプは固定ファンも多く、海外ではPlanartariumというこうしたページもあります。
http://planartarium.fortsigma.net/index.php?title=Main_Page
余談ですがカールツァイスにPlanarというレンズ構成がありますが、これは像面が均一で平坦であるというひとつのレンズの理想を意味しています。
平面(全面)ドライバーであろうが、リングドライバーであろうが、一箇所にマグネットとコイルがあろうが、結局振動板全体から音が出ているのはみな同じです。 なにが違うかというと、振動している部分から振動板全体への音の伝わりかたです。これが振動板の振動の仕方に不均一を生むことになります。
平面駆動方式については、以前YAMAHA HP-1の項で書きましたのでこちらも参照ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/category/4708524-1.html
*Audeze LCD-1
さて、実際の製品としてのLCD-1は箱には入っていませんが、キャリングバックに入って届きます。
見た目はわりと悪くありません。装着も特に書くことはありません。つまり物理的なものはやはりメインではありません。
ただロゴ部分はAudezeの手が加えられています。
肝心の音はHeadroomのDesktop balancedをシングルエンドで使って聴きます。やはり能率はかなり低めですが、このくらいのアンプなら問題ありません。
予想としてはFostex T50RPの音の傾向から静電型に近いものを予想していましたが、それよりはどちらかというとバランスドアーマチュアを巨大にしてこのサイズにするとこんな音になるのではないかという感じです。
解像感が高く、とにかく音が速い、切れが良い、もちろんBAとは動かせる空気のマスは段違いです。特に低域での切れのよさは圧巻ですね。
それと空間表現がかなり独特です。HD800を知っていてもなおそう思います。いま時間がありませんが後で比べてみたいと思わせます。平面的にも広いんですが、立体的な表現と言う意味で独特です。
もちろん高い方から低い方まで全域でのバランスも良く、低域もかなり深く出ています。
これについてはヘッドホン自体の実験的な要素も強いので、いろいろなオーディオチェックのソースで性能的な面からざっと確認してみましたが、なかなか基本的なところもしっかりしています。それとバランスというよりもスムーズさですね、仔細に聴くとまだ硬さや荒さが見られるのでこれらはもう少しバーンインしてから見ていきたいと思います。
これ、すでにリケーブルされているということを加味してもすごいと思いますね。これは箱を開けたばかりの感想ですし、$400という価格を考えるとさらに驚きます。
*平面駆動の新たな夜明け
こうした方式の原理的な利点としては振動板の剛性や物性的な依存が低いので周波数全体にディップやピークが発生しにくく、特に高い周波数の方向が改善されるということがあります。ただ基本はそうでも実装はそう簡単ではないのでしょう。たとえばFostexのRP方式ではジグザグのパターンでコイルを構成して不要な共振を減らしているとあります。やはりこの辺はメーカーのノウハウが必要です。
平面駆動は70年代を中心としたオーディオの古きよき時代にひとつの理想として複数の会社で研究がされてきましたが、研究開発よりコスト優先的な合理化時代になると次第に消えてしまいます。当時はYAMAHAやFostexのラインは当時としては高価な価格で堂々と登場していましたが、現在はFostexのRPのラインが数千円から一万前後のところで細々と続いています。
しかしいまこうしてヘッドホンの時代がまた訪れているときにこれは見直されても良いのではないでしょうか。
かのときから30余年も経て現代ではマグネットや素材などが大きく進歩しているので現代の技術を投入された平面ドライバーのフラッグシップクラスを作るというのは魅力的に思えます。またもうひとつ言えるのは平面駆動の場合は一般に能率が低いので、現代の優れたヘッドホンアンプを持って鳴らしたいということです。YAMAHA HP-1やFostexの初代T50はいずれも高い音質評価がありますが、同時にとても能率が低く鳴らしにくいことでも知られています。
はたしてHP-1や初代T50の時代にそれらをきちんと歌わせるようなヘッドホン向けのオーディオ環境があったのでしょうか?
ここに平面駆動ドライバーがいま復権する価値があるといえます。
こうしてHeadroomの高性能ヘッドホンアンプとあわせたAudezeの平面ドライバーはちょっとした驚きをもたらしてくれます。
Head-direct(HiFiMan)もCanJamに平面駆動タイプを出品しましたし、Audezeも来年はさらに本格的に始動する予定ということです。
ヘッドホンっていろんな製品が出てますけど、実はまだまだ可能性が広がることを感じさせてくれますね。オーディオの黄金時代は過去へ去ったのかもしれませんが、ヘッドホンの黄金時代というのがもし来るとするとそうした多様性がもたらすもののように思えます。
今週末のフジヤさんのショウには持参するので、参加する方で興味あるひとはそこで一聴ください。
またヘッドホンの世界に新星の登場です。しかし、これにはいささかの前口上が必要になります。
すこし前にCanJam2009の記事を書きましたが、実はCanJamでその高い音質でけっこう話題になっていたけどその記事では触れなかったものがありました。これは書けなかった、というのが正しいのですが、そのときは何者かよく分からなかったからです。
それがこのAudez'e LCD-1です。最近正式にリリースされました。
これは説明が必要かもしれません。
まず写真に写っているヘッドホンの「ガワ」はNadyというブランドのものらしく数十ドル程度のものです。
Audeze LCD-1はその中身をそっくりAudeze独自の平面駆動のドライバーに換装して、ケーブルをモガミのものにリケーブルしてノイトリックのプラグをつけたものです。
つまりAudeze LCD1はヘッドホンの名称というよりはドライバーの名称と言ったほうが良いでしょう。Audezeはアメリカのガレージメーカーでスピーカーの技術を応用してヘッドホンの平面駆動形式を研究するところのようです。LCD-1はそのためプロトタイプ的に作られた製品ということになります。
Audezeのホームページはこちらです。ちなみにLCD1は約$400です。
http://www.audeze.com/
平面駆動というのは普通に見られるドライバーのように一点とかリング状のようにマグネットやコイルが形成されているのではなく、振動板全体が信号に応じて動く方式の総称でSTAXのような静電型やTakeTのようなハイルドライバーも含まれます。
ここで言っているのはこれを従来と同じダイナミック型で行うもので、YAMAHAではオルソダイナミック、FostexではRP(Regular Phase)などと呼びます。またアイソダイナミックとも呼びますが、みな同じものです。海外では端的に平面という意味でプラナー(Planar)とも呼びます。
Planarタイプは固定ファンも多く、海外ではPlanartariumというこうしたページもあります。
http://planartarium.fortsigma.net/index.php?title=Main_Page
余談ですがカールツァイスにPlanarというレンズ構成がありますが、これは像面が均一で平坦であるというひとつのレンズの理想を意味しています。
平面(全面)ドライバーであろうが、リングドライバーであろうが、一箇所にマグネットとコイルがあろうが、結局振動板全体から音が出ているのはみな同じです。 なにが違うかというと、振動している部分から振動板全体への音の伝わりかたです。これが振動板の振動の仕方に不均一を生むことになります。
平面駆動方式については、以前YAMAHA HP-1の項で書きましたのでこちらも参照ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/category/4708524-1.html
*Audeze LCD-1
さて、実際の製品としてのLCD-1は箱には入っていませんが、キャリングバックに入って届きます。
見た目はわりと悪くありません。装着も特に書くことはありません。つまり物理的なものはやはりメインではありません。
ただロゴ部分はAudezeの手が加えられています。
肝心の音はHeadroomのDesktop balancedをシングルエンドで使って聴きます。やはり能率はかなり低めですが、このくらいのアンプなら問題ありません。
予想としてはFostex T50RPの音の傾向から静電型に近いものを予想していましたが、それよりはどちらかというとバランスドアーマチュアを巨大にしてこのサイズにするとこんな音になるのではないかという感じです。
解像感が高く、とにかく音が速い、切れが良い、もちろんBAとは動かせる空気のマスは段違いです。特に低域での切れのよさは圧巻ですね。
それと空間表現がかなり独特です。HD800を知っていてもなおそう思います。いま時間がありませんが後で比べてみたいと思わせます。平面的にも広いんですが、立体的な表現と言う意味で独特です。
もちろん高い方から低い方まで全域でのバランスも良く、低域もかなり深く出ています。
これについてはヘッドホン自体の実験的な要素も強いので、いろいろなオーディオチェックのソースで性能的な面からざっと確認してみましたが、なかなか基本的なところもしっかりしています。それとバランスというよりもスムーズさですね、仔細に聴くとまだ硬さや荒さが見られるのでこれらはもう少しバーンインしてから見ていきたいと思います。
これ、すでにリケーブルされているということを加味してもすごいと思いますね。これは箱を開けたばかりの感想ですし、$400という価格を考えるとさらに驚きます。
*平面駆動の新たな夜明け
こうした方式の原理的な利点としては振動板の剛性や物性的な依存が低いので周波数全体にディップやピークが発生しにくく、特に高い周波数の方向が改善されるということがあります。ただ基本はそうでも実装はそう簡単ではないのでしょう。たとえばFostexのRP方式ではジグザグのパターンでコイルを構成して不要な共振を減らしているとあります。やはりこの辺はメーカーのノウハウが必要です。
平面駆動は70年代を中心としたオーディオの古きよき時代にひとつの理想として複数の会社で研究がされてきましたが、研究開発よりコスト優先的な合理化時代になると次第に消えてしまいます。当時はYAMAHAやFostexのラインは当時としては高価な価格で堂々と登場していましたが、現在はFostexのRPのラインが数千円から一万前後のところで細々と続いています。
しかしいまこうしてヘッドホンの時代がまた訪れているときにこれは見直されても良いのではないでしょうか。
かのときから30余年も経て現代ではマグネットや素材などが大きく進歩しているので現代の技術を投入された平面ドライバーのフラッグシップクラスを作るというのは魅力的に思えます。またもうひとつ言えるのは平面駆動の場合は一般に能率が低いので、現代の優れたヘッドホンアンプを持って鳴らしたいということです。YAMAHA HP-1やFostexの初代T50はいずれも高い音質評価がありますが、同時にとても能率が低く鳴らしにくいことでも知られています。
はたしてHP-1や初代T50の時代にそれらをきちんと歌わせるようなヘッドホン向けのオーディオ環境があったのでしょうか?
ここに平面駆動ドライバーがいま復権する価値があるといえます。
こうしてHeadroomの高性能ヘッドホンアンプとあわせたAudezeの平面ドライバーはちょっとした驚きをもたらしてくれます。
Head-direct(HiFiMan)もCanJamに平面駆動タイプを出品しましたし、Audezeも来年はさらに本格的に始動する予定ということです。
ヘッドホンっていろんな製品が出てますけど、実はまだまだ可能性が広がることを感じさせてくれますね。オーディオの黄金時代は過去へ去ったのかもしれませんが、ヘッドホンの黄金時代というのがもし来るとするとそうした多様性がもたらすもののように思えます。
今週末のフジヤさんのショウには持参するので、参加する方で興味あるひとはそこで一聴ください。