この動画を見るとLayla AIONの核心部分がわかります。
いままでBAノズルからシリコンチューブ(音導管)で音出口に導いていたのをSLA 3Dプリンタで音導管をモールドみたいに造形してるんですね。これで
AIONシリーズって最後に出てくるのは、つまりLaylaだけではなくロクサーヌなどでもAIONが出るのでしょうか?
Headfi TVでJudeもLayla AIONについて述べてます。Laylaが大きいのはドライバー数ではなくFreqPhaseでの音導管が長いからだと言ってます。AIONの音は前モデルよりもさらに広がりがあるようですが、新設のSound Chamberゆえではないかって言ってます。
JudeはKANN CUBEやFIIOのTHX AAAモジュールと使うのがお気に入りとのこと。それとLayla AIONの周波数測定グラフも低域調節した中で開示してます。
Music TO GO!
2019年08月09日
2019年08月08日
JH Audioの最新フラッグシップ"Layla AION"登場
あのLaylaがよりコンパクトになり、新技術を盛り込んだ"Layla AION"(レイラ・アイオン)となります。
AIONはわたしの好きなDead Can Danceのアルバム名にありますが、たしかラテン語の「永劫」みたいな意味だったと思います。ただTidal検索すると同一タイトルのアルバムが他にもあって、ジェリーが4ADと関係するようには思えないので別かもしれませんが。
Layla AIONはLayla IIにつぐ第3世代Laylaとなります。ジェリーはLaylaの完成度に自信を持っているようなので、Laylaを最新技術を取り入れながらブラッシュアップしていくというアプローチを取っているように思います。
従来との違いでは、まず内部のチャンバールームを3Dプリントで成型し12個のドライバーを最適な位置に配置するというSonic Tube Chassisテクノロジーで、シェル本体の内部容積を削減しています。Layla IIと比較すると約31%の小型化と約45%の軽量化を実現しているとのこと。これでより優れた装着感を得ています。
またBillie JeanのようにAcoustic Sound Chamberが設けられ、導管に汗や異物が入り込むことを防止します。これはジェリーによると高域特性を改善する意味もあるそうです。
それとケーブルコネクターが7ピンの新型になっていますね。
新技術を取り入れながら完成度の高いLaylaをさらにブラッシュアップしたモデルという感じでしょうか。
音については楽しみなところではあります。
AIONはわたしの好きなDead Can Danceのアルバム名にありますが、たしかラテン語の「永劫」みたいな意味だったと思います。ただTidal検索すると同一タイトルのアルバムが他にもあって、ジェリーが4ADと関係するようには思えないので別かもしれませんが。
Layla AIONはLayla IIにつぐ第3世代Laylaとなります。ジェリーはLaylaの完成度に自信を持っているようなので、Laylaを最新技術を取り入れながらブラッシュアップしていくというアプローチを取っているように思います。
従来との違いでは、まず内部のチャンバールームを3Dプリントで成型し12個のドライバーを最適な位置に配置するというSonic Tube Chassisテクノロジーで、シェル本体の内部容積を削減しています。Layla IIと比較すると約31%の小型化と約45%の軽量化を実現しているとのこと。これでより優れた装着感を得ています。
またBillie JeanのようにAcoustic Sound Chamberが設けられ、導管に汗や異物が入り込むことを防止します。これはジェリーによると高域特性を改善する意味もあるそうです。
それとケーブルコネクターが7ピンの新型になっていますね。
新技術を取り入れながら完成度の高いLaylaをさらにブラッシュアップしたモデルという感じでしょうか。
音については楽しみなところではあります。
2018年04月24日
JH Audioの末娘、Billie Jean登場
JH Audioの末娘、Billie Jeanが登場しました。
レビュー記事を今度のヘッドフォンブックに書きましたので発売のさいにご覧ください。
簡単に書くと、まず小さいのが特徴で、Billie Jeanの名はマイケルジャクソンの曲からとってます。音は低域が厚いMichelleと比べると、中高域の鮮明さが特徴的で、これは新規採用のアコースティックチャンバーゆえかもしれません。
このアコースティックチャンバーについてはジェリーに直接聞いてみたんですが、音質的にはTAECのようにアコースティックフィルターを排するものではなく、ロールオフする前の高域のピークをスムーズにして高域を伸ばすためということです。
2017年08月15日
JH Audio初のハイブリッドIEM、LOLAレビュー
LOLA(ローラ)は、Jerry HarveyのJH Audioが初めて開発したハイブリッドIEMで、シリーズとしてはPerformanceシリーズとなります。調整できる低域ノブなど、Sirenシリーズの特徴も兼ね備えています。ちなみにLolaはKinksの曲名です。
LOLAはカスタムとユニバーサルの二つのタイプがあり、本記事はユニバーサル版のレビューです。
製品名はJH Audio社ユニバーサルフィットIEM 「LOLA HYBRID UNIVERSAL IEM」でミックスウェーブから2017年7月13日(木)より発売されています。
特徴
通常ハイブリッドというと、中高域がBAで低域がダイナミックを採用するのが普通です。これはよく中高域が伸びて整ったBAドライバーと、迫力のある低域を再現するダイナミックの良いところどりをしたいという構図と言えます。
それに対してLOLAのアプローチは異なっていて、高域、中域、低域のうちの中域にダイナミックドライバーを採用し、高域と低域はBAを使用しています。また中域のダイナミックドライバーもD.O.M.E(ドーム)という独自技術を採用しています。これは人の声や楽器の多くの再現の基礎となる中音域に暖かみのあるダイナミックを用いるということです。またD.O.M.E.は2基のダイナミックドライバーが対向型で駆動するというもので、より広い振動版を採用したのと同じような効果があるということです
ドライバーのカバー領域は低域がBAの2ドライバーで10-200Hz、中域がダイナミックの2ドライバー(DOME)で200-3kHz、高域はBAが4ドライバーで3kHz-20kHzとなります。
パッケージはなかなか豪華なもので、従来のSirenシリーズのような構成を取っています。ケーブルもSirenシリーズと同様のようですね。
音質
AK380でまず聴いてみました。低域調整ノブは2時で固定して聴きました。高域はシャープだが厚みがあって高級機であることを感じさせてくれます。中高域ではバロックバイオリンの倍音表現は見事なものがあります。またジェリーらしい低域にたっぷりとある低域がロックを心地よく聞かせてくれます。打撃感も強く、ドラムやベースのインパクトは気持ちよく楽しめます。LOLAは他のJHAのSirenシリーズのように低域ノブを調整することでまた異なる面も聴かせてくれます。
フラッグシップらしい堂々たるスケール感や豊富な情報量、JH Audioらしい音の濃さとたっぷりしたベース、またプロデューサー向きともいえるような客観的な音つくりはLAYLA2とよく似ていると思います。その点でアグレッシブなRoxanneとLOLAは異なるタイプと言えます。
LAYLAとLOLAの違いをアカペラヴォーカル(Rajaton)で比べてみると、LOLAの方が中域をはじめ全体に音に厚みや豊かさがあります。反面でLAYLA2の方がBAらしい精緻ですっきりした感はあるので、違いというのは好みの要素も働くでしょう。LAYLA2とは性能の差ではなく個性の差だと行ったほうが良いかもしれません。
ただしLOLAは、いわゆる古風なダイナミックドライバーでありがちな厚みがあるけど緩い音とは違って、よく整って引き締まった音ですのでいままでのハイブリッドとは異なって、ちょっと聴くとダイナミックっぽい感じではないと思います。これはDOMEの効果というのもあるかもしれません。
AK380からSP1000SSに変えると、音性能が上がるだけでなくカッコ良く鳴りますね。よりジェリー作品らしい感じです。この辺はAK70の遺伝子をもったSP1000の良さをうまく引き出しているように思います。
まとめと考察
LOLAは細かいところでの違いはありますが、LAYLA2に似た高度な音再現レベルであり、異なったテイストを持っています。両者の差は好みの問題になるかもしれません。
Lolaで、なぜ中域のみダイナミックかということについては、春のヘッドフォン祭で私が司会をしたジェリー・ハービーのインタビューにおいて少し聞いてみました。
まず完璧なマルチドライバーイヤフォンを開発したいというところからはじまったということで、いままでの試行錯誤から、ダイアフラムスピーカー(ダイナミック)のスイートスポットが高域でも低域でもなく、200hz - 3000hzの中域にあるということがわかったということです。
なぜ一基ではなく二基かというと、まずインピーダンスを下げて感度を上げたかったそうで、向かい合わせにしてその間の空気を調整することで求めるハイミッドの周波数特性が得られたということです。二基の4.9mmドライバーで9.8mm相当のドライバーにすることができるからということもあります。これによりひずみが起きる前に求める出力をえることができるからということ。
なおクロスオーバーは、ガンズのギターを正確に再現できるように変えていった。中域重視の設定になっているとのことです。
このインタビューでジェリーは自社ブランドで一番気に入っている製品は、LAYLAとLOLAのどちらかだけれども、いまは中域の音質が気に入っているからLOLAがよいと思うとのこと。
LOLAは設計するときの音つくりにおいて、おそらくジェリー自身も気に入っているLAYLAをリファレンスにして作ったのだと思いますが、新開発のD.O.M.E.もダイナミックをよりBAのような整った音に近づけるように使われているように思います。ダイナミックとしての暖かみとかインパクトの特色を出すよりも、むしろBAと融合させてより自然な音にするということですね。
LAYLAがある意味でJHAイヤモニの完成形のようなものなので、この音質レベルで別なアプローチがしてみたいとジェリーは思ったのではないでしょうか、そしてこの独特の中音域ハイブリッドという形式に至ったのではないかと思います。
今後JH Audioがこの形式を継承していくのか、今作限りなのか、そこも注目してみたいと思います。
LOLAはカスタムとユニバーサルの二つのタイプがあり、本記事はユニバーサル版のレビューです。
製品名はJH Audio社ユニバーサルフィットIEM 「LOLA HYBRID UNIVERSAL IEM」でミックスウェーブから2017年7月13日(木)より発売されています。
特徴
通常ハイブリッドというと、中高域がBAで低域がダイナミックを採用するのが普通です。これはよく中高域が伸びて整ったBAドライバーと、迫力のある低域を再現するダイナミックの良いところどりをしたいという構図と言えます。
それに対してLOLAのアプローチは異なっていて、高域、中域、低域のうちの中域にダイナミックドライバーを採用し、高域と低域はBAを使用しています。また中域のダイナミックドライバーもD.O.M.E(ドーム)という独自技術を採用しています。これは人の声や楽器の多くの再現の基礎となる中音域に暖かみのあるダイナミックを用いるということです。またD.O.M.E.は2基のダイナミックドライバーが対向型で駆動するというもので、より広い振動版を採用したのと同じような効果があるということです
ドライバーのカバー領域は低域がBAの2ドライバーで10-200Hz、中域がダイナミックの2ドライバー(DOME)で200-3kHz、高域はBAが4ドライバーで3kHz-20kHzとなります。
パッケージはなかなか豪華なもので、従来のSirenシリーズのような構成を取っています。ケーブルもSirenシリーズと同様のようですね。
音質
AK380でまず聴いてみました。低域調整ノブは2時で固定して聴きました。高域はシャープだが厚みがあって高級機であることを感じさせてくれます。中高域ではバロックバイオリンの倍音表現は見事なものがあります。またジェリーらしい低域にたっぷりとある低域がロックを心地よく聞かせてくれます。打撃感も強く、ドラムやベースのインパクトは気持ちよく楽しめます。LOLAは他のJHAのSirenシリーズのように低域ノブを調整することでまた異なる面も聴かせてくれます。
フラッグシップらしい堂々たるスケール感や豊富な情報量、JH Audioらしい音の濃さとたっぷりしたベース、またプロデューサー向きともいえるような客観的な音つくりはLAYLA2とよく似ていると思います。その点でアグレッシブなRoxanneとLOLAは異なるタイプと言えます。
LAYLAとLOLAの違いをアカペラヴォーカル(Rajaton)で比べてみると、LOLAの方が中域をはじめ全体に音に厚みや豊かさがあります。反面でLAYLA2の方がBAらしい精緻ですっきりした感はあるので、違いというのは好みの要素も働くでしょう。LAYLA2とは性能の差ではなく個性の差だと行ったほうが良いかもしれません。
ただしLOLAは、いわゆる古風なダイナミックドライバーでありがちな厚みがあるけど緩い音とは違って、よく整って引き締まった音ですのでいままでのハイブリッドとは異なって、ちょっと聴くとダイナミックっぽい感じではないと思います。これはDOMEの効果というのもあるかもしれません。
AK380からSP1000SSに変えると、音性能が上がるだけでなくカッコ良く鳴りますね。よりジェリー作品らしい感じです。この辺はAK70の遺伝子をもったSP1000の良さをうまく引き出しているように思います。
まとめと考察
LOLAは細かいところでの違いはありますが、LAYLA2に似た高度な音再現レベルであり、異なったテイストを持っています。両者の差は好みの問題になるかもしれません。
Lolaで、なぜ中域のみダイナミックかということについては、春のヘッドフォン祭で私が司会をしたジェリー・ハービーのインタビューにおいて少し聞いてみました。
まず完璧なマルチドライバーイヤフォンを開発したいというところからはじまったということで、いままでの試行錯誤から、ダイアフラムスピーカー(ダイナミック)のスイートスポットが高域でも低域でもなく、200hz - 3000hzの中域にあるということがわかったということです。
なぜ一基ではなく二基かというと、まずインピーダンスを下げて感度を上げたかったそうで、向かい合わせにしてその間の空気を調整することで求めるハイミッドの周波数特性が得られたということです。二基の4.9mmドライバーで9.8mm相当のドライバーにすることができるからということもあります。これによりひずみが起きる前に求める出力をえることができるからということ。
なおクロスオーバーは、ガンズのギターを正確に再現できるように変えていった。中域重視の設定になっているとのことです。
このインタビューでジェリーは自社ブランドで一番気に入っている製品は、LAYLAとLOLAのどちらかだけれども、いまは中域の音質が気に入っているからLOLAがよいと思うとのこと。
LOLAは設計するときの音つくりにおいて、おそらくジェリー自身も気に入っているLAYLAをリファレンスにして作ったのだと思いますが、新開発のD.O.M.E.もダイナミックをよりBAのような整った音に近づけるように使われているように思います。ダイナミックとしての暖かみとかインパクトの特色を出すよりも、むしろBAと融合させてより自然な音にするということですね。
LAYLAがある意味でJHAイヤモニの完成形のようなものなので、この音質レベルで別なアプローチがしてみたいとジェリーは思ったのではないでしょうか、そしてこの独特の中音域ハイブリッドという形式に至ったのではないかと思います。
今後JH Audioがこの形式を継承していくのか、今作限りなのか、そこも注目してみたいと思います。
2016年11月25日
JH AudioとAstell & Kernコラボの新作、Michelleレビュー
JH Audio MichelleはJH AudioとAstell & KernのコラボでのユニバーサルIEMです。Michelleは低域、中音域、高音域にそれぞれ一つずつの3ドライバーで、3Wayの構成です。
名称はガンズの"My Michelle"ですが、ロックガールズ名が付いていることでも本作がSirenシリーズとして製作されたことが分かります。
日本での販売日は12月3日で本日(11/25)から予約開始です。直販価格は65,980円(税込み)で、これまでのラインナップに比較するとかなりお手頃な価格です。この価格でA&Kコラボらしく2.5mmバランスケーブルも標準で付属しています。
* Michellの特徴
Michelleのポイントのひとつは3Dプリントされたシェルと10度の角度のついた音導管です。
JH Audioでは過去にも3Dプリントを使っていましたが、これは主にプロトタイプを作るときだけで、実際は手作りでやっていたようです。今回は25万ドルと言うProject 6000シリーズと言う高性能3Dプリンタを購入して本格的に製作しています。
Project 6000 3Dプリンタ
またJH Audioではいままでの数万と言うカスタム制作の経験から、人の耳にはある程度の共通パターンがあるのに気が付いていたということです。それがこの10度のアングルを持ったノズル部分です。これはMichelleではじめて採用されたものです。
また耳の形を3Dモデリングして、それを3Dプリンタに適用することでカスタムライクなフィットを実現したということです。これは3Dプリントによってのみ実現できたということです。
だだし組み立てはハンドメイドと言うことで、ペイントもひとつずつやっているということです。
またJH Audioでは左右のユニットのマッチ率を1dB以内に抑えているということで、これも他のメーカーならば3dB程度ですからかなりシビアに左右特性を合わせているということになります。
また他のJH AudioのIEMと同じにFreqPhaseが採用されている点も見逃せません。これはマルチドライバーで発生する複数のドライバーから届く音の時間を一致させるというもので、主に音場や立体感、音のフォーカス(ピントの良さ)を向上させます。
* Michelleの使用感
いままでのJH AudioのIEMは音は良いけれどもマルチドライバーでいささか大柄なモデルが多かったのですが、このMichelleはかなりコンパクトに作られています。
3Dプリントの造形もなかなか滑らかできれいにできていると思います。ここはさすが高価な機械を導入しただけはあります。
これはいままでにJH Audioに向いていなかった人にも良いかもしれません。特に女性は試してみてはいかがでしょうか。
イヤチップは標準のものでも十分に良いと思います。
能率はかなり高く、特にパワーを必要としません。
ケーブルは銀メッキ銅線をケプラーに巻きつけたという新開発のMoon Audio製です。ただし他のSirenシリーズのような4ピンではなく普通の2ピンで、低音調整機能はついていません。
* Michelleの音質
主にAK380を使用して聴きました。
まず音のバランスが良く、フラットと言うよりは音楽を楽しめるような帯域特性になっていると思います。クリアで明瞭感が高い音で、他のSirenシリーズに比べると濃さはほどほどでやや細身ですが、厚みは十分にあって音の高級感も感じられます。またパンチのある低域はジェリーらしいところです。
Michelleの音の特徴としては音の立体感が秀でている点が挙げられます。FreqPhaseの効果か、音が空間に広がる感じはよく出てる。また楽器の立体感も際立って良好です。横の広さだけではなく、楽器の配置が楽しめる感じですね。
BAは複数あった方が音域は広くカバーできますが、各ドライバーからバラバラに音が耳に届くと曖昧な音になるので、FreqPhaseがあるとぴりっとしまった音になります。
もうひとつ気がつくMichelleの良い点は、生楽器の音がきれいだということです。またリズムのきざみやパーカッション・ドラムのパンチが気持ち良いのも音楽を楽しめるポイントです。
すでに販売している海外のHeadFiでは高域が足りないと言う人もいますが、私はいわゆる高域が詰まっているとかロールオフして落ちているようには思えません。十分以上に高域のレスポンスは良くきれいに伸びていると思います。ただし高域4ユニットのAngieなどに比べると高域がややもの足りない感はあります。
多少モニター的な傾向のあるAngieよりは、感覚的にはRogieに近いと思いますが、音楽を楽しむうえで全体にバランスが取れている優等生サウンドだと思います。
標準付属の2.5mmバランスケーブルを使うとさらに音場も広がり、いっそう迫力のある音を楽しめるようになる。音場がより整理されてヴォーカルも聴きやすくなるように思います。バランス化することで音の性格もやや変わってより正確でリアル志向になります。こういう感じでバランスとシングルエンドのケーブルを変えることでMichelleをふた通りに楽しむこともできます。
* TriFiとの比較
価格も近く3ドライバーで形も似ているのでTriFiと比較したいと言う人もいるかもしれませんので付記しておきます。結論的に言うと両者はかなり異なる別個のモデルです。
TriFiとMichelle
TriFiはまずJH Audioの特別モデルで、Triple.Fi 10 proの10周年記念であり、貝殻のシェルや限定個数、日本限定など使用も特別です。MichelleはAstell&Kernとのコラボでのレギュラーモデルであり、Sirenシリーズの一員と言うことで位置づけは大きく異なります。
またTriFiは2Way、3ドライバーですが、Michelleは3Way、3ドライバーです。ドライバー自体もTriFiとは異なるということです。音の違いを一言で言うと、Michelleは優等生的な音で、TriFiは低音がかなりブーストされている点も含め、個性的というかやんちゃな音と言えます。
もともとジェリーハービーがテンプロを作ろうとしたのは当時の5proよりもさらにHiFi調、つまり整った音にするのが目的だったのですが、10年たつと2way IEMという意味も変わり、2wayで設計できる記念モデルならではのユニークで面白いモデルと言うことでTriFiは作られたのではないかと思います。対してMichelleはJH Audioの手ごろな価格帯を受け持つ戦略商品のような主戦力モデルと言う感じでしょうか。
Michelleは万人にお勧めできますが、TriFiは人を選ぶと思います(いずれにせよ、すでに入手困難だと思いますが)。
* まとめ
他のSirenシリーズに比べると、手頃な価格で音も良い、というのがMichelleのポイントです。優等生的な音の良さでさまざまなジャンルの音楽を楽しめ、音の広がりや立体感、楽器音の美しさなどきらっと光る点もあります。人によっては上級モデルよりも好ましいと言う人もいるかもしれません。
Sirenシリーズはプロが使うことも前提にしているため、帯域バランス良く、楽器の位置関係がつかみやすいことも重要ですが、Michelleはより手軽で音楽をカジュアルに楽しめます。さらにコンパクトで他のラインにはない魅力もありますし、この価格で2.5mmバランスケーブルも付属して来ます。
コストパフォーマンスに優れたSirenシリーズの新ラインナップと言えるでしょう。
名称はガンズの"My Michelle"ですが、ロックガールズ名が付いていることでも本作がSirenシリーズとして製作されたことが分かります。
日本での販売日は12月3日で本日(11/25)から予約開始です。直販価格は65,980円(税込み)で、これまでのラインナップに比較するとかなりお手頃な価格です。この価格でA&Kコラボらしく2.5mmバランスケーブルも標準で付属しています。
* Michellの特徴
Michelleのポイントのひとつは3Dプリントされたシェルと10度の角度のついた音導管です。
JH Audioでは過去にも3Dプリントを使っていましたが、これは主にプロトタイプを作るときだけで、実際は手作りでやっていたようです。今回は25万ドルと言うProject 6000シリーズと言う高性能3Dプリンタを購入して本格的に製作しています。
Project 6000 3Dプリンタ
またJH Audioではいままでの数万と言うカスタム制作の経験から、人の耳にはある程度の共通パターンがあるのに気が付いていたということです。それがこの10度のアングルを持ったノズル部分です。これはMichelleではじめて採用されたものです。
また耳の形を3Dモデリングして、それを3Dプリンタに適用することでカスタムライクなフィットを実現したということです。これは3Dプリントによってのみ実現できたということです。
だだし組み立てはハンドメイドと言うことで、ペイントもひとつずつやっているということです。
またJH Audioでは左右のユニットのマッチ率を1dB以内に抑えているということで、これも他のメーカーならば3dB程度ですからかなりシビアに左右特性を合わせているということになります。
また他のJH AudioのIEMと同じにFreqPhaseが採用されている点も見逃せません。これはマルチドライバーで発生する複数のドライバーから届く音の時間を一致させるというもので、主に音場や立体感、音のフォーカス(ピントの良さ)を向上させます。
* Michelleの使用感
いままでのJH AudioのIEMは音は良いけれどもマルチドライバーでいささか大柄なモデルが多かったのですが、このMichelleはかなりコンパクトに作られています。
3Dプリントの造形もなかなか滑らかできれいにできていると思います。ここはさすが高価な機械を導入しただけはあります。
これはいままでにJH Audioに向いていなかった人にも良いかもしれません。特に女性は試してみてはいかがでしょうか。
イヤチップは標準のものでも十分に良いと思います。
能率はかなり高く、特にパワーを必要としません。
ケーブルは銀メッキ銅線をケプラーに巻きつけたという新開発のMoon Audio製です。ただし他のSirenシリーズのような4ピンではなく普通の2ピンで、低音調整機能はついていません。
* Michelleの音質
主にAK380を使用して聴きました。
まず音のバランスが良く、フラットと言うよりは音楽を楽しめるような帯域特性になっていると思います。クリアで明瞭感が高い音で、他のSirenシリーズに比べると濃さはほどほどでやや細身ですが、厚みは十分にあって音の高級感も感じられます。またパンチのある低域はジェリーらしいところです。
Michelleの音の特徴としては音の立体感が秀でている点が挙げられます。FreqPhaseの効果か、音が空間に広がる感じはよく出てる。また楽器の立体感も際立って良好です。横の広さだけではなく、楽器の配置が楽しめる感じですね。
BAは複数あった方が音域は広くカバーできますが、各ドライバーからバラバラに音が耳に届くと曖昧な音になるので、FreqPhaseがあるとぴりっとしまった音になります。
もうひとつ気がつくMichelleの良い点は、生楽器の音がきれいだということです。またリズムのきざみやパーカッション・ドラムのパンチが気持ち良いのも音楽を楽しめるポイントです。
すでに販売している海外のHeadFiでは高域が足りないと言う人もいますが、私はいわゆる高域が詰まっているとかロールオフして落ちているようには思えません。十分以上に高域のレスポンスは良くきれいに伸びていると思います。ただし高域4ユニットのAngieなどに比べると高域がややもの足りない感はあります。
多少モニター的な傾向のあるAngieよりは、感覚的にはRogieに近いと思いますが、音楽を楽しむうえで全体にバランスが取れている優等生サウンドだと思います。
標準付属の2.5mmバランスケーブルを使うとさらに音場も広がり、いっそう迫力のある音を楽しめるようになる。音場がより整理されてヴォーカルも聴きやすくなるように思います。バランス化することで音の性格もやや変わってより正確でリアル志向になります。こういう感じでバランスとシングルエンドのケーブルを変えることでMichelleをふた通りに楽しむこともできます。
* TriFiとの比較
価格も近く3ドライバーで形も似ているのでTriFiと比較したいと言う人もいるかもしれませんので付記しておきます。結論的に言うと両者はかなり異なる別個のモデルです。
TriFiとMichelle
TriFiはまずJH Audioの特別モデルで、Triple.Fi 10 proの10周年記念であり、貝殻のシェルや限定個数、日本限定など使用も特別です。MichelleはAstell&Kernとのコラボでのレギュラーモデルであり、Sirenシリーズの一員と言うことで位置づけは大きく異なります。
またTriFiは2Way、3ドライバーですが、Michelleは3Way、3ドライバーです。ドライバー自体もTriFiとは異なるということです。音の違いを一言で言うと、Michelleは優等生的な音で、TriFiは低音がかなりブーストされている点も含め、個性的というかやんちゃな音と言えます。
もともとジェリーハービーがテンプロを作ろうとしたのは当時の5proよりもさらにHiFi調、つまり整った音にするのが目的だったのですが、10年たつと2way IEMという意味も変わり、2wayで設計できる記念モデルならではのユニークで面白いモデルと言うことでTriFiは作られたのではないかと思います。対してMichelleはJH Audioの手ごろな価格帯を受け持つ戦略商品のような主戦力モデルと言う感じでしょうか。
Michelleは万人にお勧めできますが、TriFiは人を選ぶと思います(いずれにせよ、すでに入手困難だと思いますが)。
* まとめ
他のSirenシリーズに比べると、手頃な価格で音も良い、というのがMichelleのポイントです。優等生的な音の良さでさまざまなジャンルの音楽を楽しめ、音の広がりや立体感、楽器音の美しさなどきらっと光る点もあります。人によっては上級モデルよりも好ましいと言う人もいるかもしれません。
Sirenシリーズはプロが使うことも前提にしているため、帯域バランス良く、楽器の位置関係がつかみやすいことも重要ですが、Michelleはより手軽で音楽をカジュアルに楽しめます。さらにコンパクトで他のラインにはない魅力もありますし、この価格で2.5mmバランスケーブルも付属して来ます。
コストパフォーマンスに優れたSirenシリーズの新ラインナップと言えるでしょう。
2016年10月07日
JH AudioとAstell & Kernの新コラボIEM、Michelle登場
JH AudioとAstell & Kernの新コラボIEMであるユニバーサルIEMにMichelleが登場しました。
低域、中域、高域にドライバーが一つずつで3Way構成です。日本での発売日、価格は未定ですが、参考価格としてはUS$499ということですのでかなりお手軽な価格です。この価格で2.5mmバランスケーブルも付属しています。ケーブルはMoon Audio製ですが、他のSirenシリーズモデルのような4ピンの低域調整機構はなくて、2ピン端子です。
3Dプリンタでのシェルデザインで、優れた装着感を実現し、JH AudioならではのFreq Pahseも採用されています。名称はガンズの"My Michelle"です。
実はおととい記事に書いたHeadFiのCanJamのビデオにも15:20に登場していますので動画で見たい方は下記のリンクをクリックしてください。(15:20から始まります)
https://youtu.be/6i87LEnC1O8?t=917
なおJH AudioではJH16v2も発表されています。
低域、中域、高域にドライバーが一つずつで3Way構成です。日本での発売日、価格は未定ですが、参考価格としてはUS$499ということですのでかなりお手軽な価格です。この価格で2.5mmバランスケーブルも付属しています。ケーブルはMoon Audio製ですが、他のSirenシリーズモデルのような4ピンの低域調整機構はなくて、2ピン端子です。
3Dプリンタでのシェルデザインで、優れた装着感を実現し、JH AudioならではのFreq Pahseも採用されています。名称はガンズの"My Michelle"です。
実はおととい記事に書いたHeadFiのCanJamのビデオにも15:20に登場していますので動画で見たい方は下記のリンクをクリックしてください。(15:20から始まります)
https://youtu.be/6i87LEnC1O8?t=917
なおJH AudioではJH16v2も発表されています。
2016年07月29日
JH Audio Layla カスタムIEMレビュー
世に数々のイヤフォン・イヤモニがありますが、その最高峰の一つがJH AudioのLaylaです。
うちのブログでは過去にユニバーサル版のLaylaを取り上げてきましたが、今回はカスタム版の記事を書きます。
* Layla再訪
Sirenシリーズにはカスタムモデルとユニバーサルモデルがあります。2014年暮れに発表されたLayla(レイラ)とAngie(アンジー)以降はユニバーサルモデルはAstell & Kernとのコラボ製品となり日本ではアユートが販売を担当しています。カスタム版はひきつづきミックスウェーブが担当しています。
レイラはロクサーヌと同じ4x4x4の12ドライバーですが、ドライバーは一新されています。特にクロスオーバーに改良がくわえられ、フラットな特性のために急峻な4次クロスオーバーを使用しています。ちなみにロクサーヌは2次クロスオーバーだそうです。名称はロクサーヌに続いてロック女性名でクラプトンの名曲レイラから取られています(原曲はデレク&ドミノス)。
もともとひとつの帯域に複数のドライバーを配するというのは、ジェリーがJH13で創始したもので、彼のエンジニアとしてのPAの経験から着想を得たと言われます。こうすることでひとつのドライバーの負担が減って、歪みなどが抑えられるというものです。Sienシリーズのロクサーヌではこれをさらに発展させて、各帯域(低域、中音域、高音域)に4つずつを配置しています。
これは特に高域の周波数特性をフラットに23kHzまで伸ばすのに効果的で、Angieの高域だけが4個なのもこの理由です。
一方でマルチウエイにすることやドライバー数を増やすことは一概に有利なわけではなく、不利な点は大型化・高価格化もありますが、音の面では位相を揃えることへの不安もあります。そうしないと音がぼやけて広がり感も失われてしまいます。そこをJH Audioでは特許技術のFreq Phaseで音導管の長さを適正に調整することで、位相の問題を解決しています。実際にJH Audio IEMは音像が鮮明で立体的なのも特徴ですので、この機構は正しく働いていると言えます。
またSirenシリーズとしては新しいLaylaでは周波数特性を正しく保つために4次クロスオーバーの導入をしています。これは従来(たとえば旧Roxanneは2次)のイヤフォンに比較するとより急峻な特性を確保することができ、帯域分割をより正しくすることが可能となっています。
現在Laylaには発表順に、第一世代ユニバーサル(UF)、カスタムモデル、第二世代(フルメタルジャケット)ユニバーサル(UF)の3つがあります。
標準ケーブルについては少し前に調整して送り返してもらった時に第二世代ケーブルがついてきたので、今購入すると第二世代のケーブルがついてくると思いますが、気になる場合はかくにんしたほうが良いかもしれません。
パッケージ
Laylaカスタムではシェルの作成から選ぶことができます。
デザインはJH Audioのアンディーのものなんですが、このまえあったときに「あ、おれの。。」と言われてしまいましたが、本人にも「しっかりコピーさせてもらいました」と言っておきました 笑
大きさは12ドライバーのゆえに大きいのですが、カスタムだとそれほどマイナス要素にはならないような気がします。
ドライバーが多いと良いのかというのはなかなかどちらが良いとは言えませんが、ただ経験的にドライバー数が多いものほど音が濃ゆい傾向はあると思います。特にJH Audioではそうですね。
* Laylaカスタムの音
まず一般的な音質ですが、AK380+AMPなどで聴きました。
聴いてみると改めてLaylaのワイドレンジ、高域の鮮明さ、超低域の沈み込みと量感がズバ抜けたレベル。高い方と低い方のレンジの広さがずば抜けてるという感じ。この辺はまさにトップレベルの存在感を感じさせてくれます。ヴォーカルもぽっかり浮かび上がってFreqPhaseらしい立体感を感じられます。
音はフラットで、ケーブルのベースチューニングは標準位置でも超低域がたっぷりあるので低域不足とは感じません。
楽器音の再現は明瞭感が強くて鮮明に聴こえます。濃密で情報量がギッシリ詰まった感じもLayla独特の良さです。
ロックを聴く時のアタックがとても鋭くインパクトが強いのがLaylaというかJH Audioの良さで、モニターモニターした無機的なイメージがありません。ダイナミックも顔負けってくらいのダイナミックさも兼ね備えてます。
帯域的にワイドレンジで広く、フラットに近く、解像力も高い、と言わば優等生だけれどもただの優等生ではない感じで、おとなしい音ではなくむしろパワフル、つまりフラット・パワフルみたいな感じですね。
* ユニバーサル(1UF・2UF)との違い
Layla 1 UFと同じベース調整にして聴き比べると、音質はほぼ同じだけれども、カスタムのほうが全体により少しクリアで、アタックも強いのが感じられます。言い換えるとLayla 1 UFは聴きやすく、カスタムはより鮮明だがわずか強めで、Layla 1UFとは音質の違いがあるように思えます。
これは別記事で書いたようなLayla 1 UFとLayla 2 UF(フルメタル)との音の違いに似ています。実際にLayla 2 UF(フルメタル)とカスタムLaylaを比べると、そうした差はあまり感じられません。ただし、もちろんカスタムとユニバーサルの違いがあってそうした違いはあります。
たとえば解像度、情報量は同じだと思う。ただカスタムのほうが遮音よくSN高いため、より良い感じはありますね。
Layla UF(左)とLayla II UF(フルメタル)
はじめはUFとカスタムでは、カスタムの方がフラットでUFの方がFitEarのToGo334的に低域を強調していると思ったのですが、これはジェリーに直接聞いたのですが、カスタムLaylaとユニバーサルではそうしたチューニングの違いは行っていないということです。
つまりはカスタムできちんと耳型が取れて、ユニバーサルでもきちんとイヤチップがフィットできれば同じように聞こえるはずということです。
ただそれでもカスタムとユニバーサルの基本的な違いはあるでしょうし、ユニバーサルでイヤチップで音が変えられるという違いも残ると思います。そうした違いは音の差となると思います。
* まとめ
Laylaの音は周波数特性がよく整って、立体感も高く、音楽を俯瞰的に客観的に見るにはとても適しています。また同時に解像力も高くリアルでありながら、動的で濃く、音楽的に主観的に楽しむこともできます。こうしたパーフェクトはフラッグシップの名に恥じないものです。
AK70 + Laylaカスタム
そのlaylaを買う時にカスタムとユニバーサルの選択があります。
第一世代ユニバーサル(UF)、カスタムモデル、第二世代ユニバーサル(UF)の3タイプがありますが、すべて比較して聴くと、第一世代ユニバーサル(UF)よりもカスタムの方がやや音質は上(カスタムということを考えなくても)、カスタムモデルと第二世代ユニバーサル(UF)はほぼ同じだと思います。それにカスタムモデルと第二世代ユニバーサル(UF)はそれぞれカスタムとユニバーサルならではの一般的な差異がある(遮音性やシェルの違いなど)、と考えてもらってよいのではと思います。ですので、ここはリセールバリューやイヤチップで凝るか、やはりカスタムでこだわるか、という好みの問題であるともいえます。
第一世代ユニバーサル(UF)とカスタムモデル、第二世代ユニバーサル(UF)の差はケーブルではなく、なにか基本的な部分だと思いますが、そこはよくわかりません。
一時期ロクサーヌのころにJH Audioは納品が遅いともいわれましたが、Laylaでは割と早く届いたと思いました。シェルの調整も一度やったのですがそのときもわりと対応は早かったと思います。事務所が変わってからは改善されたようですね。
カスタムはチタンやカーボンシェルがない分価格的にお得になるともいえます。為替の変動などの恩恵を受けて8/1からミクスウェーブでカスタム製品が求めやすくなるということです(下記リンク)が、このタイミングで最高のIEMをカスタムで入手というのを考える手はあると思います。
http://www.mixwave.co.jp/c_audio/c_news/caudio_news160721_01.html
うちのブログでは過去にユニバーサル版のLaylaを取り上げてきましたが、今回はカスタム版の記事を書きます。
* Layla再訪
Sirenシリーズにはカスタムモデルとユニバーサルモデルがあります。2014年暮れに発表されたLayla(レイラ)とAngie(アンジー)以降はユニバーサルモデルはAstell & Kernとのコラボ製品となり日本ではアユートが販売を担当しています。カスタム版はひきつづきミックスウェーブが担当しています。
レイラはロクサーヌと同じ4x4x4の12ドライバーですが、ドライバーは一新されています。特にクロスオーバーに改良がくわえられ、フラットな特性のために急峻な4次クロスオーバーを使用しています。ちなみにロクサーヌは2次クロスオーバーだそうです。名称はロクサーヌに続いてロック女性名でクラプトンの名曲レイラから取られています(原曲はデレク&ドミノス)。
もともとひとつの帯域に複数のドライバーを配するというのは、ジェリーがJH13で創始したもので、彼のエンジニアとしてのPAの経験から着想を得たと言われます。こうすることでひとつのドライバーの負担が減って、歪みなどが抑えられるというものです。Sienシリーズのロクサーヌではこれをさらに発展させて、各帯域(低域、中音域、高音域)に4つずつを配置しています。
これは特に高域の周波数特性をフラットに23kHzまで伸ばすのに効果的で、Angieの高域だけが4個なのもこの理由です。
一方でマルチウエイにすることやドライバー数を増やすことは一概に有利なわけではなく、不利な点は大型化・高価格化もありますが、音の面では位相を揃えることへの不安もあります。そうしないと音がぼやけて広がり感も失われてしまいます。そこをJH Audioでは特許技術のFreq Phaseで音導管の長さを適正に調整することで、位相の問題を解決しています。実際にJH Audio IEMは音像が鮮明で立体的なのも特徴ですので、この機構は正しく働いていると言えます。
またSirenシリーズとしては新しいLaylaでは周波数特性を正しく保つために4次クロスオーバーの導入をしています。これは従来(たとえば旧Roxanneは2次)のイヤフォンに比較するとより急峻な特性を確保することができ、帯域分割をより正しくすることが可能となっています。
現在Laylaには発表順に、第一世代ユニバーサル(UF)、カスタムモデル、第二世代(フルメタルジャケット)ユニバーサル(UF)の3つがあります。
標準ケーブルについては少し前に調整して送り返してもらった時に第二世代ケーブルがついてきたので、今購入すると第二世代のケーブルがついてくると思いますが、気になる場合はかくにんしたほうが良いかもしれません。
パッケージ
Laylaカスタムではシェルの作成から選ぶことができます。
デザインはJH Audioのアンディーのものなんですが、このまえあったときに「あ、おれの。。」と言われてしまいましたが、本人にも「しっかりコピーさせてもらいました」と言っておきました 笑
大きさは12ドライバーのゆえに大きいのですが、カスタムだとそれほどマイナス要素にはならないような気がします。
ドライバーが多いと良いのかというのはなかなかどちらが良いとは言えませんが、ただ経験的にドライバー数が多いものほど音が濃ゆい傾向はあると思います。特にJH Audioではそうですね。
* Laylaカスタムの音
まず一般的な音質ですが、AK380+AMPなどで聴きました。
聴いてみると改めてLaylaのワイドレンジ、高域の鮮明さ、超低域の沈み込みと量感がズバ抜けたレベル。高い方と低い方のレンジの広さがずば抜けてるという感じ。この辺はまさにトップレベルの存在感を感じさせてくれます。ヴォーカルもぽっかり浮かび上がってFreqPhaseらしい立体感を感じられます。
音はフラットで、ケーブルのベースチューニングは標準位置でも超低域がたっぷりあるので低域不足とは感じません。
楽器音の再現は明瞭感が強くて鮮明に聴こえます。濃密で情報量がギッシリ詰まった感じもLayla独特の良さです。
ロックを聴く時のアタックがとても鋭くインパクトが強いのがLaylaというかJH Audioの良さで、モニターモニターした無機的なイメージがありません。ダイナミックも顔負けってくらいのダイナミックさも兼ね備えてます。
帯域的にワイドレンジで広く、フラットに近く、解像力も高い、と言わば優等生だけれどもただの優等生ではない感じで、おとなしい音ではなくむしろパワフル、つまりフラット・パワフルみたいな感じですね。
* ユニバーサル(1UF・2UF)との違い
Layla 1 UFと同じベース調整にして聴き比べると、音質はほぼ同じだけれども、カスタムのほうが全体により少しクリアで、アタックも強いのが感じられます。言い換えるとLayla 1 UFは聴きやすく、カスタムはより鮮明だがわずか強めで、Layla 1UFとは音質の違いがあるように思えます。
これは別記事で書いたようなLayla 1 UFとLayla 2 UF(フルメタル)との音の違いに似ています。実際にLayla 2 UF(フルメタル)とカスタムLaylaを比べると、そうした差はあまり感じられません。ただし、もちろんカスタムとユニバーサルの違いがあってそうした違いはあります。
たとえば解像度、情報量は同じだと思う。ただカスタムのほうが遮音よくSN高いため、より良い感じはありますね。
Layla UF(左)とLayla II UF(フルメタル)
はじめはUFとカスタムでは、カスタムの方がフラットでUFの方がFitEarのToGo334的に低域を強調していると思ったのですが、これはジェリーに直接聞いたのですが、カスタムLaylaとユニバーサルではそうしたチューニングの違いは行っていないということです。
つまりはカスタムできちんと耳型が取れて、ユニバーサルでもきちんとイヤチップがフィットできれば同じように聞こえるはずということです。
ただそれでもカスタムとユニバーサルの基本的な違いはあるでしょうし、ユニバーサルでイヤチップで音が変えられるという違いも残ると思います。そうした違いは音の差となると思います。
* まとめ
Laylaの音は周波数特性がよく整って、立体感も高く、音楽を俯瞰的に客観的に見るにはとても適しています。また同時に解像力も高くリアルでありながら、動的で濃く、音楽的に主観的に楽しむこともできます。こうしたパーフェクトはフラッグシップの名に恥じないものです。
AK70 + Laylaカスタム
そのlaylaを買う時にカスタムとユニバーサルの選択があります。
第一世代ユニバーサル(UF)、カスタムモデル、第二世代ユニバーサル(UF)の3タイプがありますが、すべて比較して聴くと、第一世代ユニバーサル(UF)よりもカスタムの方がやや音質は上(カスタムということを考えなくても)、カスタムモデルと第二世代ユニバーサル(UF)はほぼ同じだと思います。それにカスタムモデルと第二世代ユニバーサル(UF)はそれぞれカスタムとユニバーサルならではの一般的な差異がある(遮音性やシェルの違いなど)、と考えてもらってよいのではと思います。ですので、ここはリセールバリューやイヤチップで凝るか、やはりカスタムでこだわるか、という好みの問題であるともいえます。
第一世代ユニバーサル(UF)とカスタムモデル、第二世代ユニバーサル(UF)の差はケーブルではなく、なにか基本的な部分だと思いますが、そこはよくわかりません。
一時期ロクサーヌのころにJH Audioは納品が遅いともいわれましたが、Laylaでは割と早く届いたと思いました。シェルの調整も一度やったのですがそのときもわりと対応は早かったと思います。事務所が変わってからは改善されたようですね。
カスタムはチタンやカーボンシェルがない分価格的にお得になるともいえます。為替の変動などの恩恵を受けて8/1からミクスウェーブでカスタム製品が求めやすくなるということです(下記リンク)が、このタイミングで最高のIEMをカスタムで入手というのを考える手はあると思います。
http://www.mixwave.co.jp/c_audio/c_news/caudio_news160721_01.html
2016年05月26日
JH Audioらしいプロ品質のエントリー機、ROSIEレビュー
* ROSIE登場
Sirenの新世代シリーズで唯一発売が延びていたROSIE(ロージー)の発売日が5月27日に決まりました。各ショップで予約を受け付けています。価格はオープンで参考の直販価格は税込みの139,980円です。
ROSIEはマルチドライバーのBA機でユニバーサルモデルです。ドライバー数は片側計6 (高音域に2基、中音域に2基、低音域に2基)個、クロスオーバーは3Wayです。
JH Audioの「THE SIRENシリーズ」では末妹となり、Angieの下に来るエントリー的な位置付けです。他のSiren姉妹同様にロックガールズから名を取っていて、名称由来はAC/DCの「ホール・ロッタ・ロージー」です。
ROISEは価格もSirenシリーズでは手ごろであることから、はじめてSirenシリーズに手を出したいと言う人も多いと思います。そこでまず「THE SIRENシリーズ」を簡単にまとめます。
端的に言うと「THE SIRENシリーズ」とはジェリーハービー率いるJerry Harvey Audioの新世代IEM(In Ear Monitor)シリーズのことです。特徴は以下の通り。
1. 新設計ドライバーとマルチBAドライバーの採用
Sirenシリーズでは高域・中域・低域の各帯域ごとに複数のBAドライバーが採用されています。これによりひとつのドライバーの負荷が減るので全体的な性能が改善されて、特に高域方向の周波数特性も伸ばすことができます。またドライバーも新設計されたものです。
2. 位相を正確に制御した「FreqPhase テクノロジー」を採用
JH Audioの製品ではFreqPhaseと呼ばれる位相特性を改善する技術を搭載していることが特徴です。これにより音場感、音のピントの良さを改善できます。
3. 低域調整機能を搭載したケーブルとロック式プラグを採用
ケーブルはユーザー自身で低域の調整ができる調整機構がついています。(試聴では標準状態にしています)
またアルミ加工によるロック機構を搭載した独自のコネクターにより、安全で強固な接続を実現しています。
またアユートから発売されている「THE SIRENシリーズ」のユニバーサルモデルはAstell&Kernとのパートナーシップ契約により、2.5o 4極のAstell&Kern用バランスケーブルを同梱しています。ROSIEにも含まれています。
「THE SIRENシリーズ」は最近第二世代となりました。ROSIEは第二世代で加わったモデルで、これまでのエントリー的な位置付けのAngieに代わってより手ごろな価格帯を担当します。といってもジェリーの設計したシリーズですからみな個勢揃いのモデルですので単純に松竹梅とはならないかもしれません。自分に好みが合うモデルを見つけるのもまたこのシリーズの魅力の一つです。(他のモデルに関してはこちらとこちらの記事を参照してください)
第二世代は「フルメタルジャケット」と言う愛称の通りにハウジングにそれまでのカーボンやケプラーではなく、チタンやアルミなどのメタル素材が使われています。
ROSIEでは黒色のアルミシェルとカーボンフェイスプレートを採用しています。ベゼル(縁)もアルミ製です。エントリーモデルであっても高級感が感じ取れるボディ造形だと思います。ボディは適度なサイズで装着しやすいのが特徴です。他のSiren姉妹に比べると軽く小さく感じられます。
わずかAngie IIより能率が低いようにおもいますが、ほとんど変わらないくらいだと思います。
箱は他のSirenシリーズ同様に豪華なもので、内箱の中に本体とアクセサリーが詰まっています。
金属製のケースの中に2.5mmバランスケーブルが入っています。これはAstell & Kernなどの2.5mmバランス端子に適合します。
* 音質
音質ですが、製品版をAk320やAK380+AMPで聴いてみました。主に3.5mmで聴いています。イヤピースは標準のラバータイプです(他のSirenシリーズでもそうです)。
時間の都合で一晩だけエージングして、ケーブルはすでにエージング済みのAngieIIのJH Audioの第二世代の標準ケーブルを付け変えて聴いたのですが、ぱっと聴いて音がとても良いので驚きました。あれ、覚えているより良い、と言う感じです。
実はROSIEについてはヘッドフォンブック2016に乗せるためにそのころ(今年の二月)の試聴機(初期版?)を使用してレビューを既に書いています。そのときには高音域と低音域がコンシューマー向けに味付けされて強調されている、つまりヴォーカルが引っ込むドンシャリ傾向があると言う旨で書きました。
そのときは実際にそう思ったんですが、それからROSIEの発売延期があり、満を持して出てきたこの日本での製品版を聴いてみると帯域的には初期版のようにヴォーカルが後退している印象はなく、ヴォーカルは明瞭で聴き取りやすく、引っ込んでいる印象もないですね。むしろ中域は厚く音に適度な厚みがあって、帯域バランスがとても良い感じです。
前に試聴機を聞いた時にはコンシューマーライクな味付けにすることで、プロユースも考えられている上のSiren3姉妹とは差をつけたのだろうと思ったけれども、製品版では十分にプロユースにも使えるのではないかという良い感じのバランスの良さを感じます。JH Audioというブランドから感じる堂々とした音の完成度の高さをROSIEでも感じます。Angieに近いという感じよりも、JH13に近いと言う方が正しいかもしれません。Angieは適度な低域の量感と中高域に強みがあるように思いますが、ROSIEは中高域はAngieほど強くなく、重心が中低域にあるような感じです。低域の量感はAngieよりも抑えてあるように思いますが、十分にあります。(ベース調整ノブの標準位置であっても
初期版の試聴機で雑誌記事を書いていた時は自分のブログで記事にするときは「JH Audioの作るコンシューマー機の音」というタイトルにしようと考えていたんですが、いま製品版を聴いてみると「JH Audioらしいプロ品質のエントリー機」という方が正しいように思えます。
この音のバランスの良さのほかに製品版のROSIEを聴いてみて、特に標準ケーブルのままで音のクリアさ・明瞭感がとても高い点に驚きました。リケーブルの必要性をあまり感じさせない点は特筆ものかと思います。そしてもう一つのROSIEの音の強みは立体感が際立って良いことだと思います。
帯域バランスの聴きやすい良さと共にこの標準ケーブルでもクリアなことでROSIEはとても広い音楽の守備範囲を持っていると感じます。それに加えてFreqPhaseらしい音の立体感が際立ち、音場感の良さで音質レベルを上質なものにしています。
たとえばAK320との相性が良いと感じます。AK320もDAPとイヤフォンだけのようなシンプルな組み合わせにおいて分かりやすい抑揚のある音の良さがありますが、シンプルに標準ケーブルで音が良いROSIEとも良い組み合わせです。
楽器やヴォーカルの音がクリアに明瞭感高く聴き取れます。シャープでソリッド、音が濃くて中低域に厚みがあり、重厚感を感じさせるほどよいロックンロールサウンドと言う点もJH Audioらしい音のエッセンスがよく伝わってきます。
音楽をランダムに聴いていても、ロックでのインパクトの強さ、クラシックでのオーケストラのスケール感、ポップでのヴォーカルの明瞭感、ジャズトリオの楽器の切れの良いシャープさなど、とてもオールラウンドに会う基本力の高さを感じさせる完成度の高さです。
* ROSIEとANGIE II
それでは上級のAngie IIと比べてどうかということで、Angie IIとAK380+AMPで標準ケーブルで比較してみます。聴いてみるとやはりAngieIIの方がスケール感があり、高域の伸びや力強さ、低域の量感は良いように思います。たとえばバロックバイオリンの中高域で比較すると、ROSIEはやや線がか細く、Angie IIの方がより豊かに倍音の情報量を持っているように思えます。
しかしROSIEは比べると小ぶりに感じますが、Angieのように強くなくても自然に伸びる中高域とともに中低域の厚みがまとまった音の良さを感じさせ、音の輪郭のピントはよりシャープで甘さが少なく、音の立体感がより際立っているように感じられます。この点で標準ケーブルではむしろROSIEの方が好印象と感じる人も多いでしょう。
もうひとつの差のポイントは帯域バランスの重心位置です。ROSIEはAngie IIよりも重心が低く感じられ、より好ましいバランスとなっているように思います。低域の量感はむしろAngieの方があるのですが、重心位置の問題と言いますか。。これによって聴く人の好みの問題が違ってくると思います。
性能的にどうというと、やはりAngie IIの方がよりワイドレンジであると答えますが、そうした重心位置のバランスの関係でROSIEの方がむしろ音としてまとまって聞こえることもあります。
Layla/Angie系のフラット・ワイドレンジ傾向のチューニングとはやや違うのかもしれません。
JH Audioらしい濃密感・濃ゆさはAngie IIの方がありますが、ROSIEも負けずに十分に感じられます。だいたいJH Audioのイヤフォンは濃厚感が特徴ですが、それが上級機に行くほど強くなる感じです。
たとえばBlackDragonやBeatなどでリケーブルする人はAngie IIの方がリケーブルすると伸びしろがあり、より高いところに行く感じです。最終的にはAk380+AMPの良さもより引き出せるようになります。ROSIEでBlackDragonリケーブルするとよりクリアにはなりますが、もともと持っていた良さがなにかなくなるようで、好ましいという言い方をすると、ROSIEは標準ケーブルで使用した方がむしろ好ましいように思えます。
Angie II,Roxanne II,Layla IIはかならずBlackDragonにリケーブルして音を楽しみたい感じですが、ROSIEではあえてリケーブルしない方が音が好ましいように感じられます。チューニングの関係かもしれませんが。。
* まとめ
ROSIEは濃密なジェリーハービーの音のエッセンスが詰まっているハイエンドイヤフォンであるSirenシリーズのエントリー機と言えます。
完成度が高い音で、標準ケーブルのままで音が良く、帯域バランスの良さでオールジャンルの音楽に合います。高い交換ケーブルに頼ることなく立体感が高く、鮮明な音が楽しめます。コンパクトで軽い点も魅力ですので、LaylaやRoxanneでフィットに苦労した人にも良いでしょう。
イヤフォンを標準ケーブルのままで使う人にはROSIEがお勧めです。ポータブルアンプを組み合わせたり、高価なリケーブルをして音を突き詰めたい人にはポテンシャルのより大きな上級機の方がよいかもしれませんが、それぞれ個性のある音なのでひとそれぞれの音の好みもまたあります。
前のレビューでSirenシリーズを擬人化したときにイメージにあったのは来生三姉妹だったんですが、4姉妹となると、ROSIEは三姉妹に末っ子が増えたという点では海街ダイアリーのすずですけど、感覚的には姉たちにも譲らない面もある若草物語のエイミーの方が近いかもしれません。
他のSirenシリーズの姉妹たちが個性あふれているように、ROSIEにも単なる上下のランクに収まらない独特の音の魅力があります。
ROSIEは全国各地のお店でも試聴機が用意されていますので、そのROSIEの魅力を是非確かめてください。
Sirenの新世代シリーズで唯一発売が延びていたROSIE(ロージー)の発売日が5月27日に決まりました。各ショップで予約を受け付けています。価格はオープンで参考の直販価格は税込みの139,980円です。
ROSIEはマルチドライバーのBA機でユニバーサルモデルです。ドライバー数は片側計6 (高音域に2基、中音域に2基、低音域に2基)個、クロスオーバーは3Wayです。
JH Audioの「THE SIRENシリーズ」では末妹となり、Angieの下に来るエントリー的な位置付けです。他のSiren姉妹同様にロックガールズから名を取っていて、名称由来はAC/DCの「ホール・ロッタ・ロージー」です。
ROISEは価格もSirenシリーズでは手ごろであることから、はじめてSirenシリーズに手を出したいと言う人も多いと思います。そこでまず「THE SIRENシリーズ」を簡単にまとめます。
端的に言うと「THE SIRENシリーズ」とはジェリーハービー率いるJerry Harvey Audioの新世代IEM(In Ear Monitor)シリーズのことです。特徴は以下の通り。
1. 新設計ドライバーとマルチBAドライバーの採用
Sirenシリーズでは高域・中域・低域の各帯域ごとに複数のBAドライバーが採用されています。これによりひとつのドライバーの負荷が減るので全体的な性能が改善されて、特に高域方向の周波数特性も伸ばすことができます。またドライバーも新設計されたものです。
2. 位相を正確に制御した「FreqPhase テクノロジー」を採用
JH Audioの製品ではFreqPhaseと呼ばれる位相特性を改善する技術を搭載していることが特徴です。これにより音場感、音のピントの良さを改善できます。
3. 低域調整機能を搭載したケーブルとロック式プラグを採用
ケーブルはユーザー自身で低域の調整ができる調整機構がついています。(試聴では標準状態にしています)
またアルミ加工によるロック機構を搭載した独自のコネクターにより、安全で強固な接続を実現しています。
またアユートから発売されている「THE SIRENシリーズ」のユニバーサルモデルはAstell&Kernとのパートナーシップ契約により、2.5o 4極のAstell&Kern用バランスケーブルを同梱しています。ROSIEにも含まれています。
「THE SIRENシリーズ」は最近第二世代となりました。ROSIEは第二世代で加わったモデルで、これまでのエントリー的な位置付けのAngieに代わってより手ごろな価格帯を担当します。といってもジェリーの設計したシリーズですからみな個勢揃いのモデルですので単純に松竹梅とはならないかもしれません。自分に好みが合うモデルを見つけるのもまたこのシリーズの魅力の一つです。(他のモデルに関してはこちらとこちらの記事を参照してください)
第二世代は「フルメタルジャケット」と言う愛称の通りにハウジングにそれまでのカーボンやケプラーではなく、チタンやアルミなどのメタル素材が使われています。
ROSIEでは黒色のアルミシェルとカーボンフェイスプレートを採用しています。ベゼル(縁)もアルミ製です。エントリーモデルであっても高級感が感じ取れるボディ造形だと思います。ボディは適度なサイズで装着しやすいのが特徴です。他のSiren姉妹に比べると軽く小さく感じられます。
わずかAngie IIより能率が低いようにおもいますが、ほとんど変わらないくらいだと思います。
箱は他のSirenシリーズ同様に豪華なもので、内箱の中に本体とアクセサリーが詰まっています。
金属製のケースの中に2.5mmバランスケーブルが入っています。これはAstell & Kernなどの2.5mmバランス端子に適合します。
* 音質
音質ですが、製品版をAk320やAK380+AMPで聴いてみました。主に3.5mmで聴いています。イヤピースは標準のラバータイプです(他のSirenシリーズでもそうです)。
時間の都合で一晩だけエージングして、ケーブルはすでにエージング済みのAngieIIのJH Audioの第二世代の標準ケーブルを付け変えて聴いたのですが、ぱっと聴いて音がとても良いので驚きました。あれ、覚えているより良い、と言う感じです。
実はROSIEについてはヘッドフォンブック2016に乗せるためにそのころ(今年の二月)の試聴機(初期版?)を使用してレビューを既に書いています。そのときには高音域と低音域がコンシューマー向けに味付けされて強調されている、つまりヴォーカルが引っ込むドンシャリ傾向があると言う旨で書きました。
そのときは実際にそう思ったんですが、それからROSIEの発売延期があり、満を持して出てきたこの日本での製品版を聴いてみると帯域的には初期版のようにヴォーカルが後退している印象はなく、ヴォーカルは明瞭で聴き取りやすく、引っ込んでいる印象もないですね。むしろ中域は厚く音に適度な厚みがあって、帯域バランスがとても良い感じです。
前に試聴機を聞いた時にはコンシューマーライクな味付けにすることで、プロユースも考えられている上のSiren3姉妹とは差をつけたのだろうと思ったけれども、製品版では十分にプロユースにも使えるのではないかという良い感じのバランスの良さを感じます。JH Audioというブランドから感じる堂々とした音の完成度の高さをROSIEでも感じます。Angieに近いという感じよりも、JH13に近いと言う方が正しいかもしれません。Angieは適度な低域の量感と中高域に強みがあるように思いますが、ROSIEは中高域はAngieほど強くなく、重心が中低域にあるような感じです。低域の量感はAngieよりも抑えてあるように思いますが、十分にあります。(ベース調整ノブの標準位置であっても
初期版の試聴機で雑誌記事を書いていた時は自分のブログで記事にするときは「JH Audioの作るコンシューマー機の音」というタイトルにしようと考えていたんですが、いま製品版を聴いてみると「JH Audioらしいプロ品質のエントリー機」という方が正しいように思えます。
この音のバランスの良さのほかに製品版のROSIEを聴いてみて、特に標準ケーブルのままで音のクリアさ・明瞭感がとても高い点に驚きました。リケーブルの必要性をあまり感じさせない点は特筆ものかと思います。そしてもう一つのROSIEの音の強みは立体感が際立って良いことだと思います。
帯域バランスの聴きやすい良さと共にこの標準ケーブルでもクリアなことでROSIEはとても広い音楽の守備範囲を持っていると感じます。それに加えてFreqPhaseらしい音の立体感が際立ち、音場感の良さで音質レベルを上質なものにしています。
たとえばAK320との相性が良いと感じます。AK320もDAPとイヤフォンだけのようなシンプルな組み合わせにおいて分かりやすい抑揚のある音の良さがありますが、シンプルに標準ケーブルで音が良いROSIEとも良い組み合わせです。
楽器やヴォーカルの音がクリアに明瞭感高く聴き取れます。シャープでソリッド、音が濃くて中低域に厚みがあり、重厚感を感じさせるほどよいロックンロールサウンドと言う点もJH Audioらしい音のエッセンスがよく伝わってきます。
音楽をランダムに聴いていても、ロックでのインパクトの強さ、クラシックでのオーケストラのスケール感、ポップでのヴォーカルの明瞭感、ジャズトリオの楽器の切れの良いシャープさなど、とてもオールラウンドに会う基本力の高さを感じさせる完成度の高さです。
* ROSIEとANGIE II
それでは上級のAngie IIと比べてどうかということで、Angie IIとAK380+AMPで標準ケーブルで比較してみます。聴いてみるとやはりAngieIIの方がスケール感があり、高域の伸びや力強さ、低域の量感は良いように思います。たとえばバロックバイオリンの中高域で比較すると、ROSIEはやや線がか細く、Angie IIの方がより豊かに倍音の情報量を持っているように思えます。
しかしROSIEは比べると小ぶりに感じますが、Angieのように強くなくても自然に伸びる中高域とともに中低域の厚みがまとまった音の良さを感じさせ、音の輪郭のピントはよりシャープで甘さが少なく、音の立体感がより際立っているように感じられます。この点で標準ケーブルではむしろROSIEの方が好印象と感じる人も多いでしょう。
もうひとつの差のポイントは帯域バランスの重心位置です。ROSIEはAngie IIよりも重心が低く感じられ、より好ましいバランスとなっているように思います。低域の量感はむしろAngieの方があるのですが、重心位置の問題と言いますか。。これによって聴く人の好みの問題が違ってくると思います。
性能的にどうというと、やはりAngie IIの方がよりワイドレンジであると答えますが、そうした重心位置のバランスの関係でROSIEの方がむしろ音としてまとまって聞こえることもあります。
Layla/Angie系のフラット・ワイドレンジ傾向のチューニングとはやや違うのかもしれません。
JH Audioらしい濃密感・濃ゆさはAngie IIの方がありますが、ROSIEも負けずに十分に感じられます。だいたいJH Audioのイヤフォンは濃厚感が特徴ですが、それが上級機に行くほど強くなる感じです。
たとえばBlackDragonやBeatなどでリケーブルする人はAngie IIの方がリケーブルすると伸びしろがあり、より高いところに行く感じです。最終的にはAk380+AMPの良さもより引き出せるようになります。ROSIEでBlackDragonリケーブルするとよりクリアにはなりますが、もともと持っていた良さがなにかなくなるようで、好ましいという言い方をすると、ROSIEは標準ケーブルで使用した方がむしろ好ましいように思えます。
Angie II,Roxanne II,Layla IIはかならずBlackDragonにリケーブルして音を楽しみたい感じですが、ROSIEではあえてリケーブルしない方が音が好ましいように感じられます。チューニングの関係かもしれませんが。。
* まとめ
ROSIEは濃密なジェリーハービーの音のエッセンスが詰まっているハイエンドイヤフォンであるSirenシリーズのエントリー機と言えます。
完成度が高い音で、標準ケーブルのままで音が良く、帯域バランスの良さでオールジャンルの音楽に合います。高い交換ケーブルに頼ることなく立体感が高く、鮮明な音が楽しめます。コンパクトで軽い点も魅力ですので、LaylaやRoxanneでフィットに苦労した人にも良いでしょう。
イヤフォンを標準ケーブルのままで使う人にはROSIEがお勧めです。ポータブルアンプを組み合わせたり、高価なリケーブルをして音を突き詰めたい人にはポテンシャルのより大きな上級機の方がよいかもしれませんが、それぞれ個性のある音なのでひとそれぞれの音の好みもまたあります。
前のレビューでSirenシリーズを擬人化したときにイメージにあったのは来生三姉妹だったんですが、4姉妹となると、ROSIEは三姉妹に末っ子が増えたという点では海街ダイアリーのすずですけど、感覚的には姉たちにも譲らない面もある若草物語のエイミーの方が近いかもしれません。
他のSirenシリーズの姉妹たちが個性あふれているように、ROSIEにも単なる上下のランクに収まらない独特の音の魅力があります。
ROSIEは全国各地のお店でも試聴機が用意されていますので、そのROSIEの魅力を是非確かめてください。
2016年04月26日
JH Audio Siren第二世代、フルメタルジャケットシリーズ レビュー #2 音質編
Sirenのフルメタルジャケットシリーズの音質編レビューです。
今回は機種ごとににコメントすると言うよりも、いろいろ途中で取り交ぜて比較を行い、各機種の個性差を知ると言う点をポイントにおいてみました。試聴に使ったのはAK380AMPコンボです。
まず主にLaylaIIの音のコメントから始めます。LaylaIIはフラッグシップらしくメタルボディと中身がぎっしりち詰まった感があり高い質感を感じさせます。ただし、やや重さを感じます。
音質もフラッグシップらしい堂々たると言うべきな性能レベルの高さを感じさせます。すべてのモデル中最もワイドレンジで高い音と低い音の範囲がとても広く感じられます。またもっとも音が整っている感じがします。音が整っているという意味で言うと2番目はAngieIIかもしれません。RoxanneIIは楽器音自体の音再現はクリーンと言うか歪み感は少なくシャープでキレ味もよいのですが、低域が強めでバランスが良いというのではなくちょっと個性的です。
そのように周波数特性という点ではLaylaIIはヴォーカルからバイオリン、ベースギターまでさまざまな楽器や声が等しくそれぞれが主張し過ぎずに聞こえます。音場も広く、スケール感があって楽器や声は程よい感覚で広い音場に整列して聴こえます。対してRoxanneIIはぐっと密度感が高いというかコンパクトな音場に楽器や声が圧縮したように重なりあって聴こえます。RoxanneIIは良く言うと密度感があって熱く、悪く言うとLaylaIIと比較して少しごちゃごちゃして聴こえます。AngieIIはLaylaIIに印象は似ていますが、もっとコンパクトであっさりとして感じられます。
LaylaIIの解像感はとても高く、音自体が濃い感じですね。この点では同じくらい濃いのはRoxanneIIですが、AngieIIは比較的という意味でやや濃さは少なくなります。といっても他社機種に比べるとAngieIIでも濃い口でしょうけれども。
LaylaIIはダイナミックレンジを広く取った大編成のオーケストラもの(ベルトのin principioなど)てば圧倒的なスケール感があります。また器楽曲やアコースティック音楽ではRoxanneIIよりも楽器の分離と間隔がより広く、ひとつの楽器音が鮮明に聞こえるので見通しが良く音楽を理解することができるという感じがします。
端的に言うとLaylaIIのほうがRoxanneIIより余裕があります。高域・低域の広さの意味でも、音場的な意味でもそうです。
Layla I とLayla II
次にLaylaIとLaylaIIの比較をしてみます。同じケーブル(II世代)で付け替えて比較してみると、ヴォーカルの明瞭感がIIではより明確にはっきりと聴き取れ、やや前に出て聴こえます(ほんの少し)、高域はよりクリアで低域はより深くより締まって聞こえますね。全体的にもIIではスムーズさが少し良くなっているように思う。差はすごく大きいというわけではないけれども明確にあると思います。(一個しか比較してないので個体差ではないとは言い切れませんが)
これはいつもLayla(I)で聴いていたオーナーだとぱっと聴いて「あれ、違うかも」と思うくらいにはわかることです。そして直接比較するとそれがはっきりとわかるようになります。前作より甘さがとれてよりモニターらしい音になったというべきかもしれません。まさにプロデューサーが音を確認する音、完璧にして欠点のない音、すべてを聴くための音、それでいて濃密な音楽体験もできるというのがLaylaIIなんだと思います。
次にRoxanneIIに焦点を移します。Roxsanne IIの音質は中低域が図太い感じで、ロックンロールサウンドと言う言葉がよく似合います。低域も強めでLaylaIIよりも音楽的に脚色感が少しだけあります。低域は全モデルで一番強いと思います。ある意味一番ロックンロールチューニングであり、実のところJH13の後継はRoxanneだと思う。Laylaは旧Triple.fi系統(TriFiではなく)でしょうか。
また濃くて密度感の高いRoxanneIIのヴォーカルは独特の訴えかけるような魅力があります。
RoxanneはUFモデルが手元にないのでIとの直接比較はできないけれども(AKR03はちょっと違うので)、実のところIとIIの差が一番大きいのはRoxanneでしょう。Roxsanne IIはクロスオーバーが以前より再設計され、低域がよりフラットに感じられます。
AKR03とRoxanneII
クロスオーバーの再設計の効果か他のチューニングかもしれないけれども、第一世代でのRoxanneとAngieの近しい感じはなくなって、やはりAngieより一段音質レベルはLaylaに近くなった感じに思います。たとえばロックとかエレクトロを楽しみながらかっこ良く聴くのはRoxanneIIがお勧めだと思います。高級機だがロックにノれるモデルだと言えます。
音の差はMoon AudioのBlack Dragonなど高音質ケーブルに付け替えるとよりはっきりと感じられるようになります。
それではRoxanneIIとLaylaIIを比較してみます。
RoxanneIIとLaylaIIでジャズトリオのダブルベースソロからピアノソロのパートを聴くと、音の高域の伸びと低域の沈み方の音域の差、つまりワイドレンジ感はLaylaIIの方が優れています。また音のつながりや楽器の分離もLaylaIIがよりスムーズです。RoxanneIIの方はよりベースソロやピアノソロが躍動的に聴こえ、音のつながりのスムーズさよりも楽器の音の強調感がより強く、音楽的に心地よいですね。
音の広さや立体感でいうとLaylaIIの方が立体的で奥行きも横の広さも感じられ、楽器の重なりがより独立しています。
RoxanneIIはLaylaよりは音場が狭い感じですが、別の言い方をするとより密度感があります。ヴォーカルと楽器がやや干渉してうるさく感じられる曲もあるけれども、Roxanneの場合はこの密度感が独特のロックやジャズライブに向いたかっこよさを作っていると思います。
同じ音楽を聴いていてもLaylaIIとRoxanneIIだと感じ方に違いがあります。RoxanneIIだともっとエモーショナルな感じ、ここは好みもあると思うけれど、やはりlaylaはプロデューサーやミキサー、あるいは音をより正確に聴きたいオーディオリスナー向きであり、Roxanneはそうした客観的な音の聴き方よりも、音楽にノリたいというリスナー向きであると思います。
次にAngieIIに焦点を移します。AngieIIは12ドライバーの上位モデルよりも軽くて装着感はよいですね。耳が小さめの人にはより向いているかもしれません。
AngieIIの音は全体的に整っていて、すっきりとクリアで気持ちが良い感じです。特にヴォーカルが鮮明に聴こえてくる印象があります。
アカペラグループ(Rajaton)のヴォーカルを聴いてみるとRoxanneIIではやや男声の低域が女声の中高域にかぶさる傾向があるけれども、AngieIIだとすっきりとして全体が聴き取りやすいと感じます。LaylaIIではRoxanneIIよりも各メンバーの声が分離されてかぶさる感は強いがそれぞれのメンバーの項がそれぞれ主張するという感じ。AngieIIだとLaylaIIよりもコンパクトにまとまった感はあるが女声が中心となって、男声の低域がそのバックアップになっている感がよく伝わります。
SHANTIを聴いてもやはりAngieだとヴォーカル中心に聞こえるけれども、RoxanneIIだとバックのベースやギターがやや主張が強くなりすぎる傾向はあると思います。またヴォーカル自体もAngieIIの方が明瞭感は高いと思います。
低域は他の二機種よりも少な目で、重みのあるロックとかエレクトロよりもポップや調子のよいジャズに向いた明るく陽気な音が向いていると思う。ただしこれは他の二機種がJH Audioらしくやや低域が多めと言う「ロックンロールチューニング」傾向なので、全般的なイヤフォンとしてみるとAngieのベースは十分あると言えます。
AngieIIは他の2モデルより少し濃さが少なくなりわりとあっさりとした感じではあるけれども、かえってすっきりとして好みだという人も多いかもしれません。
LaylaIIやRoxanneIIよりは譲るけれども、他のイヤフォンの中では解像力とか全体的な音質性能は極めて高い。
RoxxanneIIよりもヴォーカルは聴きやすいと思います。ベースはRoxxanneIIとはだいぶ表現が異なり、RoxanneIIでは強め、AngieIIでは正しいという感じですね。
LaylaIIやRoxanneIIと並べてしまうと、一歩譲る感もありますが、他のイヤフォンに比べると音性能的にはとても高くお得な感じがします。
Angie IとAngie II
AngieIとAngieIIを同じケーブル(II世代)で付け替えて比較してみます。
Iとの差はLaylaよりもAngieの方が大きいと思います。Laylaでは2-3回付け返して確認したけれども、Angieでは一回で差がわかります。
IIでは高音域がより鮮明で伸びるように感じられ、ヴォーカルのクリアさがけっこうより透明感があります。比較するとIはちょっとこもった感が感じられます。IIでは全体にかなりすっきりとしてAngieの良さが際立っています。中高域の差が大きいとおもいますね。Angieは新旧を聴き比べると買い換えたくなるかもしれません。Laylaは差はあるけれども買い換えるほどではないかもしれないですね。
またAngieIIの良さはベースの調整幅が大きく自分で個性を調整できるということです。試聴は基本的にフラット位置で聴いているけれども、ベースがうねるような低音がほしいときはベース調整ノブを低域側にやるとたっぷりしたベースの量感が得られます。そういう意味では他の二機種はフラット位置で十分ベースの量感はあり(RoxanneIIは多少多いくらい)なので、AngieIIが一番ベース調整ノブを使う余地があります。
いうなればAngieIIは個性が強いSiren姉妹で一番素直な末っ子(Rosieは未発売なので)であるため、低域調整で自分の好みにあわせやすいという感じでもあります。
擬人化するとLaylaIIはなんでもこなす優等生の長女、RoxanneIIは優秀だけれども個性が強くやや気性が荒いタイプ、AngieIIはやんちゃな姉を良く見ていて良くできた子で落ち着いている、声がきれいな才能の持ち主、という感じでしょうか。
実のところジェリーはよく考えてSiren姉妹の個性を作り分けていると思います。
やはり客観的音性能で言うと、LaylaII、RoxanneII、AngieIIという順となりますが、実のところそれぞれ独自の魅力を持っているので、聴く音楽の好みや音自体の好みで選ぶというのが良いのかもしれません。いずれにせよ比較で書いたのでAngieIIが下に思えますが、実のところAngieIIでもマーケットの中ではかなり高いレベルにあります。
端的にいうと、LaylaIIはスケール感と音の分離の良さからクラシック、RoxanneIIは音の密度感と低域のパワフルさからロック、AngieIIは中高域を鮮明に引き立てる感じから女性ヴォーカルものに向いていると思います。もちろんベース調整ノブを変えて違うジャンルに合うように変えていくこともできると思います。
そして今回触れなかったRosieですが、これらのSiren3姉妹が個性の差こそあれ、プロのモニター的IEMであるというのとはやや異なるベクトルで、もっとコンシューマーライクな味付けになっていると思います。
最後にケーブルについて少し補足します。ケーブルがSirenIからIIで変わりましたがこの詳細は下記のMoon AudioのDrewさんから聞いてまとめた記事を参照ください。
(link)
あくまでIIの標準ケーブルもMoon AudioのDragonシリーズではありませんので念のため。
そこでイヤフォンをAngieIIとLaylaIIで固定してそれぞれIとIIのケーブルを聴き比べてみたけれども、多少IIの方がより洗練された音にはなっているけれども、そう大きな違いではないと思います。たとえばヴァイオリンの音のIでのとげとげしさがIIでは多少緩和されているというような感じです。むしろイヤフォン自体のIとIIの差が大きいように思えます。
ただケーブルの場合はエージングの差とかベース調整ノブの微妙な違いがあるかもしれないので参考程度ではあると思います。リケーブル目的で買うときはことさらIIのケーブルを使うというよりはBlack DragonあるいはBeat Audioを買ったほうが良いと思う。ケーブルはもちろんMoon AudioのBlack Dragonに変えると大きく違います。Beat Audioもよいですね。VermilionとAngieIIの組み合わせは見た目も良いと思います。
ぜひ最高のIEMを生かすためにもリケーブルしてください。
今回は機種ごとににコメントすると言うよりも、いろいろ途中で取り交ぜて比較を行い、各機種の個性差を知ると言う点をポイントにおいてみました。試聴に使ったのはAK380AMPコンボです。
まず主にLaylaIIの音のコメントから始めます。LaylaIIはフラッグシップらしくメタルボディと中身がぎっしりち詰まった感があり高い質感を感じさせます。ただし、やや重さを感じます。
音質もフラッグシップらしい堂々たると言うべきな性能レベルの高さを感じさせます。すべてのモデル中最もワイドレンジで高い音と低い音の範囲がとても広く感じられます。またもっとも音が整っている感じがします。音が整っているという意味で言うと2番目はAngieIIかもしれません。RoxanneIIは楽器音自体の音再現はクリーンと言うか歪み感は少なくシャープでキレ味もよいのですが、低域が強めでバランスが良いというのではなくちょっと個性的です。
そのように周波数特性という点ではLaylaIIはヴォーカルからバイオリン、ベースギターまでさまざまな楽器や声が等しくそれぞれが主張し過ぎずに聞こえます。音場も広く、スケール感があって楽器や声は程よい感覚で広い音場に整列して聴こえます。対してRoxanneIIはぐっと密度感が高いというかコンパクトな音場に楽器や声が圧縮したように重なりあって聴こえます。RoxanneIIは良く言うと密度感があって熱く、悪く言うとLaylaIIと比較して少しごちゃごちゃして聴こえます。AngieIIはLaylaIIに印象は似ていますが、もっとコンパクトであっさりとして感じられます。
LaylaIIの解像感はとても高く、音自体が濃い感じですね。この点では同じくらい濃いのはRoxanneIIですが、AngieIIは比較的という意味でやや濃さは少なくなります。といっても他社機種に比べるとAngieIIでも濃い口でしょうけれども。
LaylaIIはダイナミックレンジを広く取った大編成のオーケストラもの(ベルトのin principioなど)てば圧倒的なスケール感があります。また器楽曲やアコースティック音楽ではRoxanneIIよりも楽器の分離と間隔がより広く、ひとつの楽器音が鮮明に聞こえるので見通しが良く音楽を理解することができるという感じがします。
端的に言うとLaylaIIのほうがRoxanneIIより余裕があります。高域・低域の広さの意味でも、音場的な意味でもそうです。
Layla I とLayla II
次にLaylaIとLaylaIIの比較をしてみます。同じケーブル(II世代)で付け替えて比較してみると、ヴォーカルの明瞭感がIIではより明確にはっきりと聴き取れ、やや前に出て聴こえます(ほんの少し)、高域はよりクリアで低域はより深くより締まって聞こえますね。全体的にもIIではスムーズさが少し良くなっているように思う。差はすごく大きいというわけではないけれども明確にあると思います。(一個しか比較してないので個体差ではないとは言い切れませんが)
これはいつもLayla(I)で聴いていたオーナーだとぱっと聴いて「あれ、違うかも」と思うくらいにはわかることです。そして直接比較するとそれがはっきりとわかるようになります。前作より甘さがとれてよりモニターらしい音になったというべきかもしれません。まさにプロデューサーが音を確認する音、完璧にして欠点のない音、すべてを聴くための音、それでいて濃密な音楽体験もできるというのがLaylaIIなんだと思います。
次にRoxanneIIに焦点を移します。Roxsanne IIの音質は中低域が図太い感じで、ロックンロールサウンドと言う言葉がよく似合います。低域も強めでLaylaIIよりも音楽的に脚色感が少しだけあります。低域は全モデルで一番強いと思います。ある意味一番ロックンロールチューニングであり、実のところJH13の後継はRoxanneだと思う。Laylaは旧Triple.fi系統(TriFiではなく)でしょうか。
また濃くて密度感の高いRoxanneIIのヴォーカルは独特の訴えかけるような魅力があります。
RoxanneはUFモデルが手元にないのでIとの直接比較はできないけれども(AKR03はちょっと違うので)、実のところIとIIの差が一番大きいのはRoxanneでしょう。Roxsanne IIはクロスオーバーが以前より再設計され、低域がよりフラットに感じられます。
AKR03とRoxanneII
クロスオーバーの再設計の効果か他のチューニングかもしれないけれども、第一世代でのRoxanneとAngieの近しい感じはなくなって、やはりAngieより一段音質レベルはLaylaに近くなった感じに思います。たとえばロックとかエレクトロを楽しみながらかっこ良く聴くのはRoxanneIIがお勧めだと思います。高級機だがロックにノれるモデルだと言えます。
音の差はMoon AudioのBlack Dragonなど高音質ケーブルに付け替えるとよりはっきりと感じられるようになります。
それではRoxanneIIとLaylaIIを比較してみます。
RoxanneIIとLaylaIIでジャズトリオのダブルベースソロからピアノソロのパートを聴くと、音の高域の伸びと低域の沈み方の音域の差、つまりワイドレンジ感はLaylaIIの方が優れています。また音のつながりや楽器の分離もLaylaIIがよりスムーズです。RoxanneIIの方はよりベースソロやピアノソロが躍動的に聴こえ、音のつながりのスムーズさよりも楽器の音の強調感がより強く、音楽的に心地よいですね。
音の広さや立体感でいうとLaylaIIの方が立体的で奥行きも横の広さも感じられ、楽器の重なりがより独立しています。
RoxanneIIはLaylaよりは音場が狭い感じですが、別の言い方をするとより密度感があります。ヴォーカルと楽器がやや干渉してうるさく感じられる曲もあるけれども、Roxanneの場合はこの密度感が独特のロックやジャズライブに向いたかっこよさを作っていると思います。
同じ音楽を聴いていてもLaylaIIとRoxanneIIだと感じ方に違いがあります。RoxanneIIだともっとエモーショナルな感じ、ここは好みもあると思うけれど、やはりlaylaはプロデューサーやミキサー、あるいは音をより正確に聴きたいオーディオリスナー向きであり、Roxanneはそうした客観的な音の聴き方よりも、音楽にノリたいというリスナー向きであると思います。
次にAngieIIに焦点を移します。AngieIIは12ドライバーの上位モデルよりも軽くて装着感はよいですね。耳が小さめの人にはより向いているかもしれません。
AngieIIの音は全体的に整っていて、すっきりとクリアで気持ちが良い感じです。特にヴォーカルが鮮明に聴こえてくる印象があります。
アカペラグループ(Rajaton)のヴォーカルを聴いてみるとRoxanneIIではやや男声の低域が女声の中高域にかぶさる傾向があるけれども、AngieIIだとすっきりとして全体が聴き取りやすいと感じます。LaylaIIではRoxanneIIよりも各メンバーの声が分離されてかぶさる感は強いがそれぞれのメンバーの項がそれぞれ主張するという感じ。AngieIIだとLaylaIIよりもコンパクトにまとまった感はあるが女声が中心となって、男声の低域がそのバックアップになっている感がよく伝わります。
SHANTIを聴いてもやはりAngieだとヴォーカル中心に聞こえるけれども、RoxanneIIだとバックのベースやギターがやや主張が強くなりすぎる傾向はあると思います。またヴォーカル自体もAngieIIの方が明瞭感は高いと思います。
低域は他の二機種よりも少な目で、重みのあるロックとかエレクトロよりもポップや調子のよいジャズに向いた明るく陽気な音が向いていると思う。ただしこれは他の二機種がJH Audioらしくやや低域が多めと言う「ロックンロールチューニング」傾向なので、全般的なイヤフォンとしてみるとAngieのベースは十分あると言えます。
AngieIIは他の2モデルより少し濃さが少なくなりわりとあっさりとした感じではあるけれども、かえってすっきりとして好みだという人も多いかもしれません。
LaylaIIやRoxanneIIよりは譲るけれども、他のイヤフォンの中では解像力とか全体的な音質性能は極めて高い。
RoxxanneIIよりもヴォーカルは聴きやすいと思います。ベースはRoxxanneIIとはだいぶ表現が異なり、RoxanneIIでは強め、AngieIIでは正しいという感じですね。
LaylaIIやRoxanneIIと並べてしまうと、一歩譲る感もありますが、他のイヤフォンに比べると音性能的にはとても高くお得な感じがします。
Angie IとAngie II
AngieIとAngieIIを同じケーブル(II世代)で付け替えて比較してみます。
Iとの差はLaylaよりもAngieの方が大きいと思います。Laylaでは2-3回付け返して確認したけれども、Angieでは一回で差がわかります。
IIでは高音域がより鮮明で伸びるように感じられ、ヴォーカルのクリアさがけっこうより透明感があります。比較するとIはちょっとこもった感が感じられます。IIでは全体にかなりすっきりとしてAngieの良さが際立っています。中高域の差が大きいとおもいますね。Angieは新旧を聴き比べると買い換えたくなるかもしれません。Laylaは差はあるけれども買い換えるほどではないかもしれないですね。
またAngieIIの良さはベースの調整幅が大きく自分で個性を調整できるということです。試聴は基本的にフラット位置で聴いているけれども、ベースがうねるような低音がほしいときはベース調整ノブを低域側にやるとたっぷりしたベースの量感が得られます。そういう意味では他の二機種はフラット位置で十分ベースの量感はあり(RoxanneIIは多少多いくらい)なので、AngieIIが一番ベース調整ノブを使う余地があります。
いうなればAngieIIは個性が強いSiren姉妹で一番素直な末っ子(Rosieは未発売なので)であるため、低域調整で自分の好みにあわせやすいという感じでもあります。
擬人化するとLaylaIIはなんでもこなす優等生の長女、RoxanneIIは優秀だけれども個性が強くやや気性が荒いタイプ、AngieIIはやんちゃな姉を良く見ていて良くできた子で落ち着いている、声がきれいな才能の持ち主、という感じでしょうか。
実のところジェリーはよく考えてSiren姉妹の個性を作り分けていると思います。
やはり客観的音性能で言うと、LaylaII、RoxanneII、AngieIIという順となりますが、実のところそれぞれ独自の魅力を持っているので、聴く音楽の好みや音自体の好みで選ぶというのが良いのかもしれません。いずれにせよ比較で書いたのでAngieIIが下に思えますが、実のところAngieIIでもマーケットの中ではかなり高いレベルにあります。
端的にいうと、LaylaIIはスケール感と音の分離の良さからクラシック、RoxanneIIは音の密度感と低域のパワフルさからロック、AngieIIは中高域を鮮明に引き立てる感じから女性ヴォーカルものに向いていると思います。もちろんベース調整ノブを変えて違うジャンルに合うように変えていくこともできると思います。
そして今回触れなかったRosieですが、これらのSiren3姉妹が個性の差こそあれ、プロのモニター的IEMであるというのとはやや異なるベクトルで、もっとコンシューマーライクな味付けになっていると思います。
最後にケーブルについて少し補足します。ケーブルがSirenIからIIで変わりましたがこの詳細は下記のMoon AudioのDrewさんから聞いてまとめた記事を参照ください。
(link)
あくまでIIの標準ケーブルもMoon AudioのDragonシリーズではありませんので念のため。
そこでイヤフォンをAngieIIとLaylaIIで固定してそれぞれIとIIのケーブルを聴き比べてみたけれども、多少IIの方がより洗練された音にはなっているけれども、そう大きな違いではないと思います。たとえばヴァイオリンの音のIでのとげとげしさがIIでは多少緩和されているというような感じです。むしろイヤフォン自体のIとIIの差が大きいように思えます。
ただケーブルの場合はエージングの差とかベース調整ノブの微妙な違いがあるかもしれないので参考程度ではあると思います。リケーブル目的で買うときはことさらIIのケーブルを使うというよりはBlack DragonあるいはBeat Audioを買ったほうが良いと思う。ケーブルはもちろんMoon AudioのBlack Dragonに変えると大きく違います。Beat Audioもよいですね。VermilionとAngieIIの組み合わせは見た目も良いと思います。
ぜひ最高のIEMを生かすためにもリケーブルしてください。
2016年04月07日
JH Audio Siren第二世代、フルメタルジャケットシリーズ レビュー #1 イントロ・開封編
JH AudioのSirenシリーズ第二世代、フルメタルジャケットシリーズのレビューをしていきます。
いままでだと機種ごとにレビューを書くと言う形式が多いんですが、各モデルの個性の差が分かりやすいように、テーマ別に横並びで比較しながらレビューを書いていこうと思います。
今回はまずイントロ・開封編を書いていきます。
* Sirenシリーズとは
JH Audioは2013年に新世代機種である「Roxanne」を発表し、これが「THE SIRENシリーズ」の始まりとなりました。名前の由来はギリシャ神話に登場するサイレーン(またはセイレーン)です。ジェリー自身は単なる数字の名前に飽きてしまったので女性名を使いたかったと言っていました。初代のRoxanne(ロクサーヌ )もそうですが、以後ロックの名曲で使われる女性の名前を冠することになります。
Sirenシリーズにはカスタムモデルとユニバーサルモデルがあります。2014年暮れに発表されたLayla(レイラ)とAngie(アンジー)以降はユニバーサルモデルはAstell & Kernとのコラボ製品となります。日本ではアユートが販売を担当しています。(カスタムはミックスウェーブ)
Sirenシリーズの特徴は次のようなものです。
1. 多ドライバーによる広帯域設計
Roxanneは片側12ドライバーと言うドライバー数の多さで話題となりましたが、これはJH13以降続いている同一の帯域に複数のドライバーを配してひとつのドライバーの負荷を軽減して性能を高めると言う設計方針によるものです。これはジェリーのスタジオ経験から着想を得たものとも言われています。
JH13では同一帯域に2個のドライバーでしたが、Sirenシリーズでは4個に進化しています。(Angieの中低域とRogieは各2個)
これは特に高域の周波数特性をフラットに23kHzまで伸ばすのに効果的で、Angieの高域だけが4個なのもこの理由です。ドライバー数を増やすことは一概に有利なだけではないですが、JH Audioではそこを工夫してまで真の高域特性にこだわったということは、ハイレゾを語ることで逆に高域特性が不透明にされている感のあるイヤフォン界の現状を考えさせてくれます。
2. 4次クロスオーバーの導入
SirenシリーズではLayla、Angieからマルチドライバー機では重要なクロスオーバーを4次形式としています。これは従来(たとえば旧Roxanneは2次)のイヤフォンに比較するとより急峻な特性を確保することができ、周波数特性をより正しくすることが可能となっています。
Roxanneもこのフルメタル世代から4次に改良されています。
3. 位相を正しく再現する「FreqPhase テクノロジー」
ドライバー数を多くすると、音の波がそろわずに像がぼやけてしまうような位相不具合の問題が発生しやすくなりますが、JH Audioでは独自特許のFreqPhaseを採用することでこの問題を解決しています。これによって音像が明確になり、音の広がり感もよくなります。
これもともすればサイズの増大などを招きやすくするそうですが、それよりも正しく音を再現することにこだわっているわけです。
3. 新設計のケーブルとプラグ
かつてジェリーにインタビューした際に「おれが作るものは みなプロ向けを考えているのさ」と語っていましたが、その表れのひとつはこの新形式のケーブルプラグです。
いままでのIEMでは2ピンの頼りないプラグがメインでしたが、演奏時にIEMが外れるなどの事態を避けるためにSirenシリーズではロック式のプラグが採用されました。
また低音域の量感を調整するためのダイヤルも採用されています。プロ用途や音を正しく聴きたいために特性をフラットにすると、カジュアルリスニングでは低音域が不足して物足りなくなったりするため、これで好みの低域の量を調整ができます。
またユニバーサルモデルではAstell&Kernとのパートナーシップ契約により、2.5o 4極のAstell&Kern用バランスケーブルを同梱しています。
* フルメタルジャケットシリーズとは
今回「THE SIRENシリーズ」第二世代として発表されたのがいわゆるフルメタルジャケットシリーズです。「フルメタルジャケット」という名の通りにハウジングにそれまでのカーボンやケプラーではなく、チタンやアルミなどのメタル素材が採用されています。ラインナップには新たにエントリーモデルのRosieが加わっています。これまで下記のモデルが発表されています。Rosieを除いて現在発売中です。
Layla II
シェル素材: チタン削り出しボディ、チタンベゼル、カーボンフェイスプレート
名称由来: エリッククラプトン(デレク&ドミノス)の「愛しのレイラ」
ドライバー数: 片側計12 (高音域に4基、中音域に4基、低音域に4基)
クロスオーバー: 3Way
価格: オープン(直販価格 税込 399,980円)
Roxsanne II
シェル素材: アルミボディ、チタンベゼル、カーボンフェイスプレート
名称由来: ポリスの「ロクサーヌ」
ドライバー数: 片側計12 (高音域に4基、中音域に4基、低音域に4基)
クロスオーバー: 3Way
価格: オープン(直販価格 税込 269,980円)
⇒クロスオーバーがこれまでのLaylaやAngie同様に4次クフィルターに更新されています
Angie II
シェル素材: アルミボディ、カーボンフェイスプレート
名称由来: ローリングストーンズの「アンジー」
ドライバー数: 片側計8 (高音域に4基、中音域に2基、低音域に2基)
クロスオーバー: 3Way
価格: オープン(直販価格 税込 189,980円)
またケーブルが新設計となり、交換ケーブルがMoon Audioが設計したものに変わっています。これについてはMoon AudioのDrewさんから聞いた話をより詳しい記事にまとめていますので下記リンクを参照してください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/432056785.html
* 開封の儀
パッケージはAstell & Kernのコラボ製品らしくどれも豪華なものです。AngieIIはこのシリーズでは普及モデルに相当しますが、それでも他社製品に比べると相当豪華なパッケージとなっています。
LaylaIIは他のモデルのパッケージよりも一回り大きく、RoxxaneIIとAngieIIは同じ大きさです。箱の裏にはいずれもジェリーの写真が載っています。
LaylaII
箱の中の構造は前作と同じです。LaylaIIは中箱にさらにインナーボックスがあってイヤフォンが入っています。そして底の箱にカーボン製のイヤフォンケースが入っています。このケースはかなりがっしりとした剛性感を感じます。カーボン製のケースには同梱の2.5mmのバランスケーブルがはいっています。
Layla II
LaylaIIのイヤチップや説明書・ワランティシート、低域調整用のドライバー、クリーニングキットはアクセサリーとして外箱のインナーボックスにはいっています。またLaylaIIだけJH Audio採用アーティストリストが別のシートとして入っています。これらは前作と同様です。アクセサリーは三兄弟共通ですが、イヤチップはラバーとフォームがLMSの三つずつ付いてます。これも前作と同じで、私はラバーのLを良く使っています。
RoxanneII
RoxxaneIIとAngieIIは中箱を上下に開けるタイプです。(写真の関係でワランティカードは外しています)
RoxxanneIIとAngieIIのどちらもアクセサリーは底部に入っています。JH Audio採用アーティストリストはこれに印刷されています。アクセサリーのインナーを外すと金属の丸いケースが出てきます。RoxanneIIはブルーグレーのような色です。前は黒でしたが、これはきれいな色です。
RoxanneII
考えてみるとRoxxaneのユニバーサル版は前回はAstell & Kernコラボではなかったので、今回がはじめてのAKコラボパッケージとなります(AKR03は別として)。RoxxaneもAstell & Kernとのコラボになってから1レベルよくなったように思います。
AngieII
AngieIIでは金属ケースは赤と言うかルビーのようにきれいな配色です。
AngieII
箱の構造などはRoxanneIIと同じです。AngieIIに関してはパッケージ面では前回とほぼ同じに思えます。
laylaII
LaylaIIの本体はずっしりと重みを感じます。本体についてはLaylaIIは前のカーボンシェルとくらべるとかなり異なった印象を受けます。前のカーボンシェルとレインボーのベゼルもなかなか良かったので、これはどちらがよいというよりはまったく別のものになったという感じを受けます。LaylaIIはチタンシェルの削り出しというイヤフォンでは考えられない高級なものですが、フルメタルの名の通りにがっしりして頑丈そうです。フェイスプレートはカーボンがはまっていて工芸品のようですね。
前は多少派手な印象でしたが、LaylaIIは三兄弟では一番シックで落ち着いた配色です。この辺はよりプロ用途を意識したものかもしれません。
RoxanneII
AngieとRoxxaneについては前モデルよりも改良されて良くなったという印象を受けます。メタルシェルになったこともあり、ボディの作りの美しさがさらに前よりよくなったと思います。
RoxxaneIIはアルミのブルーグレーのシェルで、カーボンのフェイスプレートがはまっています。ベゼルはチタンで高級感を感じます。フェイスプレートのAKとJH Audioのロゴは赤なのも良いデザインですね。若々しいエネルギッシュな感じです。前の黒のアクリルからするとRoxxaneIIはかなり品質が向上した感じがします。
AngieII
AngieIIは三兄弟では一番コンパクトで少し軽く感じられます。
アルミのレッドシェルに黒いフェイスプレートにベゼルも黒で赤のロゴは三兄弟では一番カッコよく、デザインに惚れる人も多いでしょう。深みのある赤のシェルもいい感じです。隠れてますがステムも黒です。三穴ですね。
JH Audioの製品はわたしは2009年のデビュー作のJH13からずっと使っていますけれども、前は音質はトップクラスといえどもボディやパッケージの作りはいま一歩という感もあったと思います。Astell & kernとのコラボになってからはこの点がグレードアップされました。
トップブランドのJH Audio製品が、その音質レベルの高さに見合う外装もまとった、と言うのがこのAstell & Kernとのコラボシリーズの成果であるでしょう。
次は音質編の予定です。
いままでだと機種ごとにレビューを書くと言う形式が多いんですが、各モデルの個性の差が分かりやすいように、テーマ別に横並びで比較しながらレビューを書いていこうと思います。
今回はまずイントロ・開封編を書いていきます。
* Sirenシリーズとは
JH Audioは2013年に新世代機種である「Roxanne」を発表し、これが「THE SIRENシリーズ」の始まりとなりました。名前の由来はギリシャ神話に登場するサイレーン(またはセイレーン)です。ジェリー自身は単なる数字の名前に飽きてしまったので女性名を使いたかったと言っていました。初代のRoxanne(ロクサーヌ )もそうですが、以後ロックの名曲で使われる女性の名前を冠することになります。
Sirenシリーズにはカスタムモデルとユニバーサルモデルがあります。2014年暮れに発表されたLayla(レイラ)とAngie(アンジー)以降はユニバーサルモデルはAstell & Kernとのコラボ製品となります。日本ではアユートが販売を担当しています。(カスタムはミックスウェーブ)
Sirenシリーズの特徴は次のようなものです。
1. 多ドライバーによる広帯域設計
Roxanneは片側12ドライバーと言うドライバー数の多さで話題となりましたが、これはJH13以降続いている同一の帯域に複数のドライバーを配してひとつのドライバーの負荷を軽減して性能を高めると言う設計方針によるものです。これはジェリーのスタジオ経験から着想を得たものとも言われています。
JH13では同一帯域に2個のドライバーでしたが、Sirenシリーズでは4個に進化しています。(Angieの中低域とRogieは各2個)
これは特に高域の周波数特性をフラットに23kHzまで伸ばすのに効果的で、Angieの高域だけが4個なのもこの理由です。ドライバー数を増やすことは一概に有利なだけではないですが、JH Audioではそこを工夫してまで真の高域特性にこだわったということは、ハイレゾを語ることで逆に高域特性が不透明にされている感のあるイヤフォン界の現状を考えさせてくれます。
2. 4次クロスオーバーの導入
SirenシリーズではLayla、Angieからマルチドライバー機では重要なクロスオーバーを4次形式としています。これは従来(たとえば旧Roxanneは2次)のイヤフォンに比較するとより急峻な特性を確保することができ、周波数特性をより正しくすることが可能となっています。
Roxanneもこのフルメタル世代から4次に改良されています。
3. 位相を正しく再現する「FreqPhase テクノロジー」
ドライバー数を多くすると、音の波がそろわずに像がぼやけてしまうような位相不具合の問題が発生しやすくなりますが、JH Audioでは独自特許のFreqPhaseを採用することでこの問題を解決しています。これによって音像が明確になり、音の広がり感もよくなります。
これもともすればサイズの増大などを招きやすくするそうですが、それよりも正しく音を再現することにこだわっているわけです。
3. 新設計のケーブルとプラグ
かつてジェリーにインタビューした際に「おれが作るものは みなプロ向けを考えているのさ」と語っていましたが、その表れのひとつはこの新形式のケーブルプラグです。
いままでのIEMでは2ピンの頼りないプラグがメインでしたが、演奏時にIEMが外れるなどの事態を避けるためにSirenシリーズではロック式のプラグが採用されました。
また低音域の量感を調整するためのダイヤルも採用されています。プロ用途や音を正しく聴きたいために特性をフラットにすると、カジュアルリスニングでは低音域が不足して物足りなくなったりするため、これで好みの低域の量を調整ができます。
またユニバーサルモデルではAstell&Kernとのパートナーシップ契約により、2.5o 4極のAstell&Kern用バランスケーブルを同梱しています。
* フルメタルジャケットシリーズとは
今回「THE SIRENシリーズ」第二世代として発表されたのがいわゆるフルメタルジャケットシリーズです。「フルメタルジャケット」という名の通りにハウジングにそれまでのカーボンやケプラーではなく、チタンやアルミなどのメタル素材が採用されています。ラインナップには新たにエントリーモデルのRosieが加わっています。これまで下記のモデルが発表されています。Rosieを除いて現在発売中です。
Layla II
シェル素材: チタン削り出しボディ、チタンベゼル、カーボンフェイスプレート
名称由来: エリッククラプトン(デレク&ドミノス)の「愛しのレイラ」
ドライバー数: 片側計12 (高音域に4基、中音域に4基、低音域に4基)
クロスオーバー: 3Way
価格: オープン(直販価格 税込 399,980円)
Roxsanne II
シェル素材: アルミボディ、チタンベゼル、カーボンフェイスプレート
名称由来: ポリスの「ロクサーヌ」
ドライバー数: 片側計12 (高音域に4基、中音域に4基、低音域に4基)
クロスオーバー: 3Way
価格: オープン(直販価格 税込 269,980円)
⇒クロスオーバーがこれまでのLaylaやAngie同様に4次クフィルターに更新されています
Angie II
シェル素材: アルミボディ、カーボンフェイスプレート
名称由来: ローリングストーンズの「アンジー」
ドライバー数: 片側計8 (高音域に4基、中音域に2基、低音域に2基)
クロスオーバー: 3Way
価格: オープン(直販価格 税込 189,980円)
またケーブルが新設計となり、交換ケーブルがMoon Audioが設計したものに変わっています。これについてはMoon AudioのDrewさんから聞いた話をより詳しい記事にまとめていますので下記リンクを参照してください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/432056785.html
* 開封の儀
パッケージはAstell & Kernのコラボ製品らしくどれも豪華なものです。AngieIIはこのシリーズでは普及モデルに相当しますが、それでも他社製品に比べると相当豪華なパッケージとなっています。
LaylaIIは他のモデルのパッケージよりも一回り大きく、RoxxaneIIとAngieIIは同じ大きさです。箱の裏にはいずれもジェリーの写真が載っています。
LaylaII
箱の中の構造は前作と同じです。LaylaIIは中箱にさらにインナーボックスがあってイヤフォンが入っています。そして底の箱にカーボン製のイヤフォンケースが入っています。このケースはかなりがっしりとした剛性感を感じます。カーボン製のケースには同梱の2.5mmのバランスケーブルがはいっています。
Layla II
LaylaIIのイヤチップや説明書・ワランティシート、低域調整用のドライバー、クリーニングキットはアクセサリーとして外箱のインナーボックスにはいっています。またLaylaIIだけJH Audio採用アーティストリストが別のシートとして入っています。これらは前作と同様です。アクセサリーは三兄弟共通ですが、イヤチップはラバーとフォームがLMSの三つずつ付いてます。これも前作と同じで、私はラバーのLを良く使っています。
RoxanneII
RoxxaneIIとAngieIIは中箱を上下に開けるタイプです。(写真の関係でワランティカードは外しています)
RoxxanneIIとAngieIIのどちらもアクセサリーは底部に入っています。JH Audio採用アーティストリストはこれに印刷されています。アクセサリーのインナーを外すと金属の丸いケースが出てきます。RoxanneIIはブルーグレーのような色です。前は黒でしたが、これはきれいな色です。
RoxanneII
考えてみるとRoxxaneのユニバーサル版は前回はAstell & Kernコラボではなかったので、今回がはじめてのAKコラボパッケージとなります(AKR03は別として)。RoxxaneもAstell & Kernとのコラボになってから1レベルよくなったように思います。
AngieII
AngieIIでは金属ケースは赤と言うかルビーのようにきれいな配色です。
AngieII
箱の構造などはRoxanneIIと同じです。AngieIIに関してはパッケージ面では前回とほぼ同じに思えます。
laylaII
LaylaIIの本体はずっしりと重みを感じます。本体についてはLaylaIIは前のカーボンシェルとくらべるとかなり異なった印象を受けます。前のカーボンシェルとレインボーのベゼルもなかなか良かったので、これはどちらがよいというよりはまったく別のものになったという感じを受けます。LaylaIIはチタンシェルの削り出しというイヤフォンでは考えられない高級なものですが、フルメタルの名の通りにがっしりして頑丈そうです。フェイスプレートはカーボンがはまっていて工芸品のようですね。
前は多少派手な印象でしたが、LaylaIIは三兄弟では一番シックで落ち着いた配色です。この辺はよりプロ用途を意識したものかもしれません。
RoxanneII
AngieとRoxxaneについては前モデルよりも改良されて良くなったという印象を受けます。メタルシェルになったこともあり、ボディの作りの美しさがさらに前よりよくなったと思います。
RoxxaneIIはアルミのブルーグレーのシェルで、カーボンのフェイスプレートがはまっています。ベゼルはチタンで高級感を感じます。フェイスプレートのAKとJH Audioのロゴは赤なのも良いデザインですね。若々しいエネルギッシュな感じです。前の黒のアクリルからするとRoxxaneIIはかなり品質が向上した感じがします。
AngieII
AngieIIは三兄弟では一番コンパクトで少し軽く感じられます。
アルミのレッドシェルに黒いフェイスプレートにベゼルも黒で赤のロゴは三兄弟では一番カッコよく、デザインに惚れる人も多いでしょう。深みのある赤のシェルもいい感じです。隠れてますがステムも黒です。三穴ですね。
JH Audioの製品はわたしは2009年のデビュー作のJH13からずっと使っていますけれども、前は音質はトップクラスといえどもボディやパッケージの作りはいま一歩という感もあったと思います。Astell & kernとのコラボになってからはこの点がグレードアップされました。
トップブランドのJH Audio製品が、その音質レベルの高さに見合う外装もまとった、と言うのがこのAstell & Kernとのコラボシリーズの成果であるでしょう。
次は音質編の予定です。
2016年03月29日
JH Audio LaylaII,RoxanneII,AngieII発売!
すでに発表はされていますが、いよいよJH AudioのSirenシリーズの第二世代である「フルメタルシリーズ」JH Audio LaylaII,RoxanneII,AngieIIが発売されます。発売日は4/2ということです。「Rosie」につきましては、準備が整い次第の発売となるということです。
この新シリーズ機はフルメタルジャケットの名の通りにハウジングがメタル素材を使ってます(ちなみにフルメタルジャケットの元の意味は貫通力が高い被覆弾のこと)。LaylaIIはチタンシェル、RoxanneIIとAngieIIはアルミシェルです。またRoxanneIIはクロスオーバーがLayla同様に4次に変わっています。
左からLaylaII,RoxanneII,AngieII
この第二世代ではケーブルも刷新されています。この辺をMoon AudioのDrewさんに聞いてまとめた記事はこちらです。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/432056785.html
音的にもみな個性的です。端的に言うと、LaylaIIは一番整っていてワイドレンジ、RoxanneIIは至高のロックンロールサウンド、AngieIIはヴォーカルの良さで真価を発揮する、などでしょうか。Rosieもまたちょっと違います。
ジェリーは実に入念に考えてこれらのキャラクターを作り分けて設計していると思います。この進化したSirenシリーズをぜひ聴いてみてください。
この新シリーズ機はフルメタルジャケットの名の通りにハウジングがメタル素材を使ってます(ちなみにフルメタルジャケットの元の意味は貫通力が高い被覆弾のこと)。LaylaIIはチタンシェル、RoxanneIIとAngieIIはアルミシェルです。またRoxanneIIはクロスオーバーがLayla同様に4次に変わっています。
左からLaylaII,RoxanneII,AngieII
この第二世代ではケーブルも刷新されています。この辺をMoon AudioのDrewさんに聞いてまとめた記事はこちらです。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/432056785.html
音的にもみな個性的です。端的に言うと、LaylaIIは一番整っていてワイドレンジ、RoxanneIIは至高のロックンロールサウンド、AngieIIはヴォーカルの良さで真価を発揮する、などでしょうか。Rosieもまたちょっと違います。
ジェリーは実に入念に考えてこれらのキャラクターを作り分けて設計していると思います。この進化したSirenシリーズをぜひ聴いてみてください。
2016年01月03日
Moon Audioの新しいJH Audio用交換ケーブルと標準ケーブルの関係
昨年末にJH AudioのSirenシリーズIEMがフルメタルとして一新されましたが、そのポイントの一つはケーブルが以前とは違うことです。フルメタルシリーズの(第二世代ともいうべき)標準ケーブルはうちのブログを読む方にはおなじみのDrewさんのMoon Audioによって再設計されています。しかし、同時にMoon AudioではJH Audio用の交換ケーブルも発売しました。この関係がわかりにくいのでDrewさんに直接確認しました。
さっそく新ケーブルも購入しましたので少し使ったインプレも書いていきます。
* Moon Audioの新しいJH Audio用交換ケーブルと標準ケーブルの関係
Sirenシリーズ用のケーブルには以下の3つがあります。
#1. 第一世代Sirenシリーズ4ピン標準ケーブル(Roxsanne, Layla, Angie)
線材・パーツともMoon Audioとは関係ないそうです。
#2. 第二世代Sirenシリーズ4ピン標準ケーブル(Roxsanne2, Layla2, Angie2, Rosie)
線材・パーツともMoon Audioの設計によって、再設計されています。
まず弱いと言われていた4ピンプラグとロックナットを金属製でより圧力的にも化学的にも(汗とか)耐久力のあるものにしています。またベース調整ノブも間違って変わらないようにへこみがあり、位置がより分かりやすくなっています。それとケーブルのほつれにくさも改善されているようです。
ベース調整ノブの差
線材は米国製でMoon Audioの監修のもとに作られていますが、次に述べるBlack Dragonとは別ものです。
なおJH Audioでは今年出るJH13 pro v2もこの第二世代Sirenシリーズ標準ケーブルを採用するようですので、順次全ラインに切り替えていくのではないかと思われます。
#3. Sirenシリーズ用のMoon Audio BlackDragon V2 4ピン交換ケーブル
線材とYスプリットのロゴ以外は第二世代Sirenシリーズ4ピン標準ケーブルと同じです。つまり見た目はYスプリットのロゴ以外は同じです。違うのは線材で、新しいBlack Dragon v2が採用されています。
Black Dragon v2のYスプリット
Drewさんの言によるとかなり高品質で標準ケーブルの線材とは価格的な差も大きいそうです。また以前のBlack Dragon v1に比べてもさらに改良されています。IEM用にはこれまではV1しかありませんでした。あとでも書きますが、v2では銀コート線らしい特性に変わっています。
JH Audioの交換ケーブルはBeatなども出しています。
* Moon Audio BlackDragon V2について
簡単にMoon Audioのケーブルを説明すると、Silver Dragon系はいわゆる銀線っぽい音で硬めでシャープ、Black Dragon系は銅線っぽい暖かく低域に深みがあります。以前はBlue Dragonという銅線で安価な系統がありましたが今はないようです。
Moon Audio BlackDragon V2交換ケーブルは下記Moon Audioのページで販売しています。
http://www.moon-audio.com/black-dragon-iem-headphone-cable-v2.html
3.5mm(ストレートとL)とAKバランス用の2.5mmストレートが選べます。
今回はMojoでも使うので3.5mmL字を買いました。プラグは将来的にはさらに選べるようです。
Black Dragon v2のL字プラグ部分
$200と手軽な価格もよいですね。Paypalがあればあとはタイプを選んでボタンを押していくだけですので、ぜひどうぞ。私は国際送料はFeDexを選びました。送料があるので前から買おうと思ってたMojo光ケーブルもいっしょに買いました。
またMoon Audio BlackDragon V2交換ケーブルにはcustom resistor(抵抗値のカスタム設定)というオプションが新設されました。これはユーザーの好みの低音位置で抵抗値を固定してケーブルを作れるというものです。あらかじめベース位置を調整したケーブルの写真を撮ってMoon Audioに送るか、もっと正確にはセットしたケーブルを送ってほしいということ。
DrewさんはBlack Dragon v2の設計にあたり、Black Dragonの音の豊かさ・厚みを保ちながら、Silver Dragonの解像力とシャープさを取り入れて、それを求めやすい価格で生かすように設計したということです。このためにいわゆる銀コート銅線の銀メッキ(silver plated)の手法を使いながら、銀の量を増やす(15-18%)ことできつさを抑えてスムーズさを生かしたということです。
実際にいままで持っていた第一世代JH Audioの標準ケーブル(上の#1)とBlackDragon v2を比較レビューしてみました。Sirenシリーズではもっとも特性が平坦で再現域が広いLaylaカスタムを主に使用しています。
Mojo, Layla CIEM, Black Dragon v2
まず全体的にBlack Dragon v2のほうがよりクリアで、細かい音の明瞭感も上がっています。またBlack Dragon v2のほうが高域がより伸びて、低域はより低い方にピークが沈んだように感じます。全体にBlack Dragon v2では滑らかさが増していて、従来の標準ケーブル(#1)はちょっと荒さがあったかと思います。
音楽を聴く上では楽器の音がより明瞭感を持って聴き分けられるようになって、より周波数的にもワイドになり整った音調になった感じです。
ちょっと気が付いたのは従来のBlack Dragon v1とは音の個性がやや変わったことです。従来のBlack Dragonほど低域よりの感じが少なくバランスが良く、よりシャープです。思ってたよりも銀成分が強い感じで、従来のBlack DragonとSilver Dragonを足した感じになったように思いますが、これは上に書いたように意図したことでしょう。Gray Dragonといった感じ?
なお第二世代(#2)標準ケーブルとはケーブルだけでは比較していないのでわかりませんが、Drewさんの言では同様に向上が見込めるとのこと。
また使用においてもよりナットがきちんと締まるようになり、かつスムーズに締められると思います。前のケーブルでは線がすぐにばらけてしまうのが難でしたが、このケーブルではそうしたことは少なくなったように思います(まだ1-2週間程度ではありますが)。ケーブルの柔らかさとか取り回しに関してはそれほどの差はない感じです。
総じて価格的にはよいように思いますし、JH AudioのSirenシリーズを使っていたけどJHはリケーブルができなくて、と思っていた人にはお勧めです。
Silver Dragon opt cable
また、今回は海外送料の点もあって、いっしょにMoon AudioのMojo用のSilver Dragon光ケーブル($100)も買いました。ドラゴンマークが信号の方向性になっています。いままで使っていた元タイムロードの光ケーブルもわりと良いと思いますが、Moon Audioの光ケーブルは少しクリアで音場が広くなり、全体により整った音調になると思います。Sysopticとも音は違うように思いますので材質は異なると思います。また平らで太いケーブルなので、バッグでこちらを下にして置くこともできるのは便利です。ただ巷ではやっているMojoの天地逆の使用には使えませんので念のため
さっそく新ケーブルも購入しましたので少し使ったインプレも書いていきます。
* Moon Audioの新しいJH Audio用交換ケーブルと標準ケーブルの関係
Sirenシリーズ用のケーブルには以下の3つがあります。
#1. 第一世代Sirenシリーズ4ピン標準ケーブル(Roxsanne, Layla, Angie)
線材・パーツともMoon Audioとは関係ないそうです。
#2. 第二世代Sirenシリーズ4ピン標準ケーブル(Roxsanne2, Layla2, Angie2, Rosie)
線材・パーツともMoon Audioの設計によって、再設計されています。
まず弱いと言われていた4ピンプラグとロックナットを金属製でより圧力的にも化学的にも(汗とか)耐久力のあるものにしています。またベース調整ノブも間違って変わらないようにへこみがあり、位置がより分かりやすくなっています。それとケーブルのほつれにくさも改善されているようです。
ベース調整ノブの差
線材は米国製でMoon Audioの監修のもとに作られていますが、次に述べるBlack Dragonとは別ものです。
なおJH Audioでは今年出るJH13 pro v2もこの第二世代Sirenシリーズ標準ケーブルを採用するようですので、順次全ラインに切り替えていくのではないかと思われます。
#3. Sirenシリーズ用のMoon Audio BlackDragon V2 4ピン交換ケーブル
線材とYスプリットのロゴ以外は第二世代Sirenシリーズ4ピン標準ケーブルと同じです。つまり見た目はYスプリットのロゴ以外は同じです。違うのは線材で、新しいBlack Dragon v2が採用されています。
Black Dragon v2のYスプリット
Drewさんの言によるとかなり高品質で標準ケーブルの線材とは価格的な差も大きいそうです。また以前のBlack Dragon v1に比べてもさらに改良されています。IEM用にはこれまではV1しかありませんでした。あとでも書きますが、v2では銀コート線らしい特性に変わっています。
JH Audioの交換ケーブルはBeatなども出しています。
* Moon Audio BlackDragon V2について
簡単にMoon Audioのケーブルを説明すると、Silver Dragon系はいわゆる銀線っぽい音で硬めでシャープ、Black Dragon系は銅線っぽい暖かく低域に深みがあります。以前はBlue Dragonという銅線で安価な系統がありましたが今はないようです。
Moon Audio BlackDragon V2交換ケーブルは下記Moon Audioのページで販売しています。
http://www.moon-audio.com/black-dragon-iem-headphone-cable-v2.html
3.5mm(ストレートとL)とAKバランス用の2.5mmストレートが選べます。
今回はMojoでも使うので3.5mmL字を買いました。プラグは将来的にはさらに選べるようです。
Black Dragon v2のL字プラグ部分
$200と手軽な価格もよいですね。Paypalがあればあとはタイプを選んでボタンを押していくだけですので、ぜひどうぞ。私は国際送料はFeDexを選びました。送料があるので前から買おうと思ってたMojo光ケーブルもいっしょに買いました。
またMoon Audio BlackDragon V2交換ケーブルにはcustom resistor(抵抗値のカスタム設定)というオプションが新設されました。これはユーザーの好みの低音位置で抵抗値を固定してケーブルを作れるというものです。あらかじめベース位置を調整したケーブルの写真を撮ってMoon Audioに送るか、もっと正確にはセットしたケーブルを送ってほしいということ。
DrewさんはBlack Dragon v2の設計にあたり、Black Dragonの音の豊かさ・厚みを保ちながら、Silver Dragonの解像力とシャープさを取り入れて、それを求めやすい価格で生かすように設計したということです。このためにいわゆる銀コート銅線の銀メッキ(silver plated)の手法を使いながら、銀の量を増やす(15-18%)ことできつさを抑えてスムーズさを生かしたということです。
実際にいままで持っていた第一世代JH Audioの標準ケーブル(上の#1)とBlackDragon v2を比較レビューしてみました。Sirenシリーズではもっとも特性が平坦で再現域が広いLaylaカスタムを主に使用しています。
Mojo, Layla CIEM, Black Dragon v2
まず全体的にBlack Dragon v2のほうがよりクリアで、細かい音の明瞭感も上がっています。またBlack Dragon v2のほうが高域がより伸びて、低域はより低い方にピークが沈んだように感じます。全体にBlack Dragon v2では滑らかさが増していて、従来の標準ケーブル(#1)はちょっと荒さがあったかと思います。
音楽を聴く上では楽器の音がより明瞭感を持って聴き分けられるようになって、より周波数的にもワイドになり整った音調になった感じです。
ちょっと気が付いたのは従来のBlack Dragon v1とは音の個性がやや変わったことです。従来のBlack Dragonほど低域よりの感じが少なくバランスが良く、よりシャープです。思ってたよりも銀成分が強い感じで、従来のBlack DragonとSilver Dragonを足した感じになったように思いますが、これは上に書いたように意図したことでしょう。Gray Dragonといった感じ?
なお第二世代(#2)標準ケーブルとはケーブルだけでは比較していないのでわかりませんが、Drewさんの言では同様に向上が見込めるとのこと。
また使用においてもよりナットがきちんと締まるようになり、かつスムーズに締められると思います。前のケーブルでは線がすぐにばらけてしまうのが難でしたが、このケーブルではそうしたことは少なくなったように思います(まだ1-2週間程度ではありますが)。ケーブルの柔らかさとか取り回しに関してはそれほどの差はない感じです。
総じて価格的にはよいように思いますし、JH AudioのSirenシリーズを使っていたけどJHはリケーブルができなくて、と思っていた人にはお勧めです。
Silver Dragon opt cable
また、今回は海外送料の点もあって、いっしょにMoon AudioのMojo用のSilver Dragon光ケーブル($100)も買いました。ドラゴンマークが信号の方向性になっています。いままで使っていた元タイムロードの光ケーブルもわりと良いと思いますが、Moon Audioの光ケーブルは少しクリアで音場が広くなり、全体により整った音調になると思います。Sysopticとも音は違うように思いますので材質は異なると思います。また平らで太いケーブルなので、バッグでこちらを下にして置くこともできるのは便利です。ただ巷ではやっているMojoの天地逆の使用には使えませんので念のため
2015年12月19日
JH Audio , Astell & Kernの新シリーズ発表!
JH Audio , Astell & Kernの新シリーズであるフルメタルジャケットが発表されました。HeadFi TVにアナウンスされています。この記事はHeadFi TVを基にした米国情報ですので念のため。国内情報はわかったら補完します。
http://www.head-fi.org/t/791717/jh-audio-astell-kern-siren-series-full-metal-jacket-line-announced/0_50#post_12174812
フルメタルジャケットの名の通りにハウジングがメタル素材を使ってます(ちなみにフルメタルジャケットの元の意味は貫通力が高い被覆弾のこと)。
レイラはチタンシェル、ロクサーヌとアンジーはアルミシェルです。レイラとアンジーは中身は同じで音も聴いてみたところ同じよう。
ロクサーヌはクロスオーバーがレイラ同様に4次に変わっています。
また新作としてロージーが加わっています。従来のサイレーンシリーズ同様にロックガールから取っていて、今回はAC/DCの「Whole Lotta Rosie/ホール・ロッタ・ロージー」から取ってます。
ロージーは最も安い価格で、6ドライバーの3wayで高中低域がそれぞれ 2x2x2、4次クロスオーバー、FreqPhaseを採用しています。
Judeが言うにはJH13とほぼ同じだけど、4次クロスオーバーとベース調整でより自由度が高いということ。
また6:27からMoon AudioのJH Audioケーブルのトピックが乗っています。
http://www.head-fi.org/t/791717/jh-audio-astell-kern-siren-series-full-metal-jacket-line-announced/0_50#post_12174812
フルメタルジャケットの名の通りにハウジングがメタル素材を使ってます(ちなみにフルメタルジャケットの元の意味は貫通力が高い被覆弾のこと)。
レイラはチタンシェル、ロクサーヌとアンジーはアルミシェルです。レイラとアンジーは中身は同じで音も聴いてみたところ同じよう。
ロクサーヌはクロスオーバーがレイラ同様に4次に変わっています。
また新作としてロージーが加わっています。従来のサイレーンシリーズ同様にロックガールから取っていて、今回はAC/DCの「Whole Lotta Rosie/ホール・ロッタ・ロージー」から取ってます。
ロージーは最も安い価格で、6ドライバーの3wayで高中低域がそれぞれ 2x2x2、4次クロスオーバー、FreqPhaseを採用しています。
Judeが言うにはJH13とほぼ同じだけど、4次クロスオーバーとベース調整でより自由度が高いということ。
また6:27からMoon AudioのJH Audioケーブルのトピックが乗っています。
2015年02月08日
JH Audio Sirenシリーズの末妹、アンジー レビュー
先日レイラの記事を書きましたが、引き続いてアンジーの紹介記事です。JH Audioの新世代IEMと言えるSirenシリーズはレイラ、ロクサーヌ、アンジーの順となります。
レイラの記事はこちらです。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/412685882.html
AK120II + Angie
レイラはクラプトンの有名な曲でしたが、アンジーはストーンズの曲から取られています。この前ジェリーに聞いたところでは、彼が作るイヤフォンは低域を少し持ち上げている特徴がありましたが、それをジェリー自身は「ロックンロールチューニング」と呼んでいました。私が底を突っ込んで「だから名前はロックンロールガールズなんですね」って言ったらちょっと笑ってました。
ロクサーヌはまさにそういう特性だったのですが、レイラとアンジーはそこをリファレンス的に下げて調整しています。そして周波数特性をフラットにするために4次クロスオーバー(ロクサーヌは2次)で急峻にカットをしています。この低域とクロスオーバーのチューニングはレイラとアンジーでも異なりますが、ロクサーヌに対しては別なアプローチと言えます。
これによってJudeが前に行っていたようにSirenシリーズの特徴であるベース調整の幅が大きいことで、音の調整幅が大きいとも言えます。つまりはロクサーヌのようにはじめから強調していないのであげる余地が大きいというわけです。ロクサーヌは演奏者向けにもう少し明確に低域を持ち上げた「ロックンロールチューニング」をしているというわけです。
ドライバーの構成は3Wayで高域に4つ、中音域に2つ、低音域に2つの8ドライバー構成となり、レイラとロクサーヌの妹という位置づけになっています。
高音域だけ4つのドライバーにしているのはレイラやロクサーヌと同じ特性をもつためです。ジェリーが言うにはIEMにおいて低音域と中音域の特性を得るのはそれほどむずかしくないが、高音域はむずかしいということです。もともとBAは高音域特性を得るのがむずかしく、16kHz以上はなかなか達成しがたいものになっています。しかしSirenシリーズでは16kHzでたしかに特性はおちはじめるが、16kHzから20kHzまではなんと-0.5dBを保ち、20kHzや23kHzでさえもまだ有意なほど特性をもっているということです。ジェリーのIEMは見かけのハイレゾロゴこそありませんが、真実の高域特性をもったイヤフォンだと言えるでしょう。
他の帯域では、低域はやや抑えめで、高めの中音域はやや強調されるので、ヴォーカルやギターが少し前に出てくる特性を持っているということです。アンジーは低音域が2つのドライバーで少なめなのでクロスオーバーではやや持ち上げた(レイラほど急峻でない)調整をしているそうです。
アンジーユニバーサルのシェルサイズはやや小型で、シェルはケブラー製です。ベゼルはCNCアルミでギターピックはカーボンファイバーです。
ジェリーに聞いたところロクサーヌユニバーサルは3Dプリンタで制作されていたそうですが、レイラとアンジーはどちらもシェルは3Dプリントではなくハンドメイドで作られているということです。カスタムとの違いは耳型くらいで違いはあまりないそうです。
* 開封の儀
アンジーはレイラのようにカーボン模様がちょっと覗くという演出はなく、普通の中箱です。紙質も普通のものです。アンジーは中箱がぱかっと折れて開くタイプで、片側にアンジーが格納され、JH Audioのクライアントリストシートは別紙ではなく、この印刷となっています(レイラでは別紙でした)。
アンジーのケースはユニバーサルの丸カンケースです。中を開けると2.5mmバランスケーブルが入ってます。AKR03についてきた2.5mmにくらべると今回アンジーとレイラについてきた2.5mmは金メッキされています。
底のアクセサリー箱にはレイラと似たようにチップと保証書とベース調整ドライバー、クリーニングキットが入ってます。
アンジーはレイラよりコンパクトです。見た目より耳に装着するとよくわかります。レイラだと大きめですがアンジーだとこのクラスでは標準的なサイズでしょう。
アンジーはSirenシリーズではロクサーヌの下に位置するけれども、実際はロクサーヌとはほぼ音質レベルでは変わらずに、音の個性で変わっているというべきだと思う。レイラ記事でも簡単に書きましたが、音質レベルというとロクサーヌとアンジーはほぼ同じくらいで、個性により長短があるという感じです。そうした意味では高い音質に比べてコストパフォーマンスはよいと言えるでしょう。最新の技術を採用したアンジーか、12ドライバーのロクサーヌかという違いですね。
音はロクサーヌ譲りでよく整っていて細かな再現ができています。また立体感に秀でている感じですね。雑踏とアナウンスのような環境音を聴くと、立体感と空間再現はレイラ譲りの良さは感じられます。
ベース調整ノブを標準位置にして、ロクサーヌのA&KモデルであるAKR03と聴き比べてみました。
AKR03よりもさらに音の広がりというか空間再現力、立体感は上がっているように思えます。ベースのパンチが上でより音の歯切れが良い感じ。ただ全体にやや軽くベースの迫力という点でいうとAKR03のほうが量感もある感じではあります。アンジーのほうが楽器の音の甘さが少なく正確に聞こえます。
AKR03のほうが濃くて太いけれども、アンジーはよりすっきりとして聴こえシャープで引き締まっているというかんじでしょうか。音の好みの差ではあるけれども、HiFiとかリファレンスという言葉ではアンジーのほうがより適切だと思います。
アンジーはだいたいにおいてはロクサーヌのような音ですが、よく聴くとアンジーではそうした違いがロクサーヌ(AKR03)に対してありますね。
AKR03(左)とアンジー
アンジーは基本位置でも低域が少ないということはないけれども、調整ノブを上げていくことで上記の迫力少ない感じはわりと埋まってきます。上記は両方とも標準位置での比較だけれども、ロクサーヌのほうがもともと多めなのでより低域は多めと言えるかもしれません。
反面でアンジーでも低域を上げていくとタイトさは減ってゆるくなってくるのでここはさじ加減と好みですね。
またレイラとアンジーはFreqPhaseを突き詰めたせいかわからないけど、チップのはめ込む深さで音が変わってくるように思います。特にレイラはチップのはめ込みの深さでもけっこう音が変わるので深くしたり浅くしたりして調整するとよいと思います。
個人的にはチップをチューブが見えるくらい深くはめないで少し浮かせたほうが空間再現力が上がるように思いますが、ここは人の耳の長さなどでも変わるかもしれません。
アンジーは来週末のポタ研でアユートさんのブースにありますので、レイラともどもぜひ聴いてみてください。
レイラの記事はこちらです。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/412685882.html
AK120II + Angie
レイラはクラプトンの有名な曲でしたが、アンジーはストーンズの曲から取られています。この前ジェリーに聞いたところでは、彼が作るイヤフォンは低域を少し持ち上げている特徴がありましたが、それをジェリー自身は「ロックンロールチューニング」と呼んでいました。私が底を突っ込んで「だから名前はロックンロールガールズなんですね」って言ったらちょっと笑ってました。
ロクサーヌはまさにそういう特性だったのですが、レイラとアンジーはそこをリファレンス的に下げて調整しています。そして周波数特性をフラットにするために4次クロスオーバー(ロクサーヌは2次)で急峻にカットをしています。この低域とクロスオーバーのチューニングはレイラとアンジーでも異なりますが、ロクサーヌに対しては別なアプローチと言えます。
これによってJudeが前に行っていたようにSirenシリーズの特徴であるベース調整の幅が大きいことで、音の調整幅が大きいとも言えます。つまりはロクサーヌのようにはじめから強調していないのであげる余地が大きいというわけです。ロクサーヌは演奏者向けにもう少し明確に低域を持ち上げた「ロックンロールチューニング」をしているというわけです。
ドライバーの構成は3Wayで高域に4つ、中音域に2つ、低音域に2つの8ドライバー構成となり、レイラとロクサーヌの妹という位置づけになっています。
高音域だけ4つのドライバーにしているのはレイラやロクサーヌと同じ特性をもつためです。ジェリーが言うにはIEMにおいて低音域と中音域の特性を得るのはそれほどむずかしくないが、高音域はむずかしいということです。もともとBAは高音域特性を得るのがむずかしく、16kHz以上はなかなか達成しがたいものになっています。しかしSirenシリーズでは16kHzでたしかに特性はおちはじめるが、16kHzから20kHzまではなんと-0.5dBを保ち、20kHzや23kHzでさえもまだ有意なほど特性をもっているということです。ジェリーのIEMは見かけのハイレゾロゴこそありませんが、真実の高域特性をもったイヤフォンだと言えるでしょう。
他の帯域では、低域はやや抑えめで、高めの中音域はやや強調されるので、ヴォーカルやギターが少し前に出てくる特性を持っているということです。アンジーは低音域が2つのドライバーで少なめなのでクロスオーバーではやや持ち上げた(レイラほど急峻でない)調整をしているそうです。
アンジーユニバーサルのシェルサイズはやや小型で、シェルはケブラー製です。ベゼルはCNCアルミでギターピックはカーボンファイバーです。
ジェリーに聞いたところロクサーヌユニバーサルは3Dプリンタで制作されていたそうですが、レイラとアンジーはどちらもシェルは3Dプリントではなくハンドメイドで作られているということです。カスタムとの違いは耳型くらいで違いはあまりないそうです。
* 開封の儀
アンジーはレイラのようにカーボン模様がちょっと覗くという演出はなく、普通の中箱です。紙質も普通のものです。アンジーは中箱がぱかっと折れて開くタイプで、片側にアンジーが格納され、JH Audioのクライアントリストシートは別紙ではなく、この印刷となっています(レイラでは別紙でした)。
アンジーのケースはユニバーサルの丸カンケースです。中を開けると2.5mmバランスケーブルが入ってます。AKR03についてきた2.5mmにくらべると今回アンジーとレイラについてきた2.5mmは金メッキされています。
底のアクセサリー箱にはレイラと似たようにチップと保証書とベース調整ドライバー、クリーニングキットが入ってます。
アンジーはレイラよりコンパクトです。見た目より耳に装着するとよくわかります。レイラだと大きめですがアンジーだとこのクラスでは標準的なサイズでしょう。
アンジーはSirenシリーズではロクサーヌの下に位置するけれども、実際はロクサーヌとはほぼ音質レベルでは変わらずに、音の個性で変わっているというべきだと思う。レイラ記事でも簡単に書きましたが、音質レベルというとロクサーヌとアンジーはほぼ同じくらいで、個性により長短があるという感じです。そうした意味では高い音質に比べてコストパフォーマンスはよいと言えるでしょう。最新の技術を採用したアンジーか、12ドライバーのロクサーヌかという違いですね。
音はロクサーヌ譲りでよく整っていて細かな再現ができています。また立体感に秀でている感じですね。雑踏とアナウンスのような環境音を聴くと、立体感と空間再現はレイラ譲りの良さは感じられます。
ベース調整ノブを標準位置にして、ロクサーヌのA&KモデルであるAKR03と聴き比べてみました。
AKR03よりもさらに音の広がりというか空間再現力、立体感は上がっているように思えます。ベースのパンチが上でより音の歯切れが良い感じ。ただ全体にやや軽くベースの迫力という点でいうとAKR03のほうが量感もある感じではあります。アンジーのほうが楽器の音の甘さが少なく正確に聞こえます。
AKR03のほうが濃くて太いけれども、アンジーはよりすっきりとして聴こえシャープで引き締まっているというかんじでしょうか。音の好みの差ではあるけれども、HiFiとかリファレンスという言葉ではアンジーのほうがより適切だと思います。
アンジーはだいたいにおいてはロクサーヌのような音ですが、よく聴くとアンジーではそうした違いがロクサーヌ(AKR03)に対してありますね。
AKR03(左)とアンジー
アンジーは基本位置でも低域が少ないということはないけれども、調整ノブを上げていくことで上記の迫力少ない感じはわりと埋まってきます。上記は両方とも標準位置での比較だけれども、ロクサーヌのほうがもともと多めなのでより低域は多めと言えるかもしれません。
反面でアンジーでも低域を上げていくとタイトさは減ってゆるくなってくるのでここはさじ加減と好みですね。
またレイラとアンジーはFreqPhaseを突き詰めたせいかわからないけど、チップのはめ込む深さで音が変わってくるように思います。特にレイラはチップのはめ込みの深さでもけっこう音が変わるので深くしたり浅くしたりして調整するとよいと思います。
個人的にはチップをチューブが見えるくらい深くはめないで少し浮かせたほうが空間再現力が上がるように思いますが、ここは人の耳の長さなどでも変わるかもしれません。
アンジーは来週末のポタ研でアユートさんのブースにありますので、レイラともどもぜひ聴いてみてください。
2015年01月21日
JH Audio Layla(レイラ) 登場! 開封の儀とファーストインプレ
本日アユートさんからJH AudioとAstell&KernのコラボであるLayla(レイラ)とAngie(アンジー)の待望のアナウンスがありました。
JH Audio Layla + AK240
レイラとアンジーはまず1/21(水)12時、直販限定でのモニター先行販売実施します。詳細は下記をご覧ください。
http://www.akiba-eshop.jp/JHAudio
本稿ではまず新しいフラッグシップであるレイラについて書いていきます。レイラについては先の記事もご覧ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/410935413.html
レイラはロクサーヌと同じ4x4x4の12ドライバーですが、ドライバーは一新されています。特にクロスオーバーに改良がくわえられ、フラットな特性のために急峻な4次クロスオーバーを使用しています。ちなみにロクサーヌは2次クロスオーバーだそうです。名称はロクサーヌに続いてロック女性名でクラプトンの名曲レイラから取られています(原曲はデレク&ドミノス)。 このまえジェリーに「次はロザーナ(TOTO)かジュリア(ビートルズ)でしょ?」と聞いたら「はは、あとはロージー(ルースターズ)とかね」と言ってたんで次はRosieだったりして。
* 開封の儀とファーストインプレ
レビュー用のレイラが届きましたので開封の儀とファーストインプレをさっそくお届けします。
箱はシュリンクラップされていて、背面にはジェリーの写真が印刷されています。
外箱を取ると内箱に少し隙間があって、そこにカーボン柄の内箱が覗いてるのが凝っています。
外箱を開けると薄い内箱があり、その下にカーボンカスタムについてきたカーボンのケースが底に入っています。外箱にはアクセサリー用の箱があって、保証書とベース調整ドライバーとクリーニングキットが入ってます。
インサートの紙でJHAudioのクライアントリストが入ってます。この外箱の外周にスペアチップが付いてます。チップはラバーとフォームのMLSが入ってます。チップはロクサーヌと同じように見えます。
カーボンのケースには豪華なベルベットのポーチが入っていて、その中に2.5mmバランスケーブルが入っています。このポーチがレイラケースになると思います。
中箱にはレイラが入っていて、3.5mmケーブルが付いてます。レイラはカスタムロクサーヌと同じくフルカーボンシェルで見ると思わず、おお、と出来の美しさに声をあげてしまいます。
そしてレイラではさらにチタン枠のカーボンフェイスプレートがはめてあります。この部分はジェリーに聞いたところギターのピックをデザインしたということです。チタン枠は光の当たり方で光が変わり、ユニットごとにみな異なるはずです。
AKR03との比較です。AKR03ではプレートのみカーボンで、シェルはクリアです。レイラは音導穴が3穴でステンレスチューブであることがわかります。
まずエージングゼロですが、ファーストインプレということで音を聴いてみました。装着感はAKR03と似た感じです。チップはラバーのLを使いました。
まず3.5mmケーブルでAK240で聴いてみます。ベース調整は今回は初期位置から動かしていません。
音はロクサーヌと似た傾向でとても洗練された整った音調です。しかしロクサーヌよりさらに広がりがあり、音が澄んでクリアでシャープです。低音域はないわけではなく、標準位置で十分あります。チップLでけっこうシールされているということもあると思います。またベースのピークがロクサーヌより低い方にあるように思います。ベースはパンチがあり、とても引き締まった感じですね。ぱっと聴いて一言で言うとたしかにカスタムロクサーヌを上回る音質です。
音数が多く、音の遷移がなめらかです。また音の豊かさという点でも優れています。厚ぼったくならない感じで豊かな音です。比較するとロクサーヌは痩せて音が薄い感じです。それだけ聞けばそんな印象ありませんが。。生パーカッションではハッとするような打撃感のリアルさを感じます。情報量という点もありますが、歪み感が少ないのか楽器の音色のリアルさはいままでにないレベルです。ソプラノの伸びの良さも逸品です。
AK120IIではさらにシャープ感があり、楽器音が美しいですね。脚色された美しさではなく、雑味がないというか純粋な美しさです。立体感は際立っていて楽器の分離感はいままで聞いたイヤフォンの中でも最高レベルです。
しかし本当にこれが12個もドライバーが入ってるんだろうか?と思いますね。まるで調和して完全なハーモニーを奏でる小宇宙のようです。
エージング前にちょっとだけ聴こうと思ったけど、ちょっと耳から話せなくなった。聴きなれたAK240やAK120IIでもたびたびハッとしてこれはっていう音再現を聴かせてくれます。なにこのヴォーカルは、なにこのパーカッションはっていう感じでため息が出てきます。
アンジーとロクサーヌは長短があるけれども同じくらいの音質レベルのように思いますが、レイラは完全にいち抜けしてより高みにいます。私が持ってるイヤフォンではカスタムもユニバーサルも含めてさっそく一番の座を奪ったかなとも感じます。しかも完成度が高い、とちょっと興奮気味です。
あれ?もしかして私、エージングゼロのイヤフォンにこんなこと書いちゃった? 笑
しかし正直レイラは事前情報からモニター的でドライと思ってたんで完全に肩透かしされた感じです。これは完全な性能を誇り、かつ「音楽的な」イヤフォンです。
この前12月にジェリーが来日した時にレイラとアンジーのインタビューをしたんですが、そのときにレイラとアンジーのチューニングの違いを聴いていて、「それはつまりアンジーのほうが音楽的ということですか?」と突っ込んだところ、「ははは、おれの作るものはみな音楽的だよ」って返されてしまったのを思い出します。
ジェリーに謝らないといけないなあ。。
いずれにせよさすが神様ジェリーハービー、すごいイヤフォンを作ってくれました。これこそ本当のリファレンスです。
* ジェリーのFreqPhaseによる位相制御が米国特許を取得しました。
United States Patent no. 8,925,674, issued on Jan. 6.
PHASE CORRECTING CANALPHONE SYSTEM AND METHOD
Jerry Harvey, Apopka, FL (US)
JH Audio Layla + AK240
レイラとアンジーはまず1/21(水)12時、直販限定でのモニター先行販売実施します。詳細は下記をご覧ください。
http://www.akiba-eshop.jp/JHAudio
本稿ではまず新しいフラッグシップであるレイラについて書いていきます。レイラについては先の記事もご覧ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/410935413.html
レイラはロクサーヌと同じ4x4x4の12ドライバーですが、ドライバーは一新されています。特にクロスオーバーに改良がくわえられ、フラットな特性のために急峻な4次クロスオーバーを使用しています。ちなみにロクサーヌは2次クロスオーバーだそうです。名称はロクサーヌに続いてロック女性名でクラプトンの名曲レイラから取られています(原曲はデレク&ドミノス)。 このまえジェリーに「次はロザーナ(TOTO)かジュリア(ビートルズ)でしょ?」と聞いたら「はは、あとはロージー(ルースターズ)とかね」と言ってたんで次はRosieだったりして。
* 開封の儀とファーストインプレ
レビュー用のレイラが届きましたので開封の儀とファーストインプレをさっそくお届けします。
箱はシュリンクラップされていて、背面にはジェリーの写真が印刷されています。
外箱を取ると内箱に少し隙間があって、そこにカーボン柄の内箱が覗いてるのが凝っています。
外箱を開けると薄い内箱があり、その下にカーボンカスタムについてきたカーボンのケースが底に入っています。外箱にはアクセサリー用の箱があって、保証書とベース調整ドライバーとクリーニングキットが入ってます。
インサートの紙でJHAudioのクライアントリストが入ってます。この外箱の外周にスペアチップが付いてます。チップはラバーとフォームのMLSが入ってます。チップはロクサーヌと同じように見えます。
カーボンのケースには豪華なベルベットのポーチが入っていて、その中に2.5mmバランスケーブルが入っています。このポーチがレイラケースになると思います。
中箱にはレイラが入っていて、3.5mmケーブルが付いてます。レイラはカスタムロクサーヌと同じくフルカーボンシェルで見ると思わず、おお、と出来の美しさに声をあげてしまいます。
そしてレイラではさらにチタン枠のカーボンフェイスプレートがはめてあります。この部分はジェリーに聞いたところギターのピックをデザインしたということです。チタン枠は光の当たり方で光が変わり、ユニットごとにみな異なるはずです。
AKR03との比較です。AKR03ではプレートのみカーボンで、シェルはクリアです。レイラは音導穴が3穴でステンレスチューブであることがわかります。
まずエージングゼロですが、ファーストインプレということで音を聴いてみました。装着感はAKR03と似た感じです。チップはラバーのLを使いました。
まず3.5mmケーブルでAK240で聴いてみます。ベース調整は今回は初期位置から動かしていません。
音はロクサーヌと似た傾向でとても洗練された整った音調です。しかしロクサーヌよりさらに広がりがあり、音が澄んでクリアでシャープです。低音域はないわけではなく、標準位置で十分あります。チップLでけっこうシールされているということもあると思います。またベースのピークがロクサーヌより低い方にあるように思います。ベースはパンチがあり、とても引き締まった感じですね。ぱっと聴いて一言で言うとたしかにカスタムロクサーヌを上回る音質です。
音数が多く、音の遷移がなめらかです。また音の豊かさという点でも優れています。厚ぼったくならない感じで豊かな音です。比較するとロクサーヌは痩せて音が薄い感じです。それだけ聞けばそんな印象ありませんが。。生パーカッションではハッとするような打撃感のリアルさを感じます。情報量という点もありますが、歪み感が少ないのか楽器の音色のリアルさはいままでにないレベルです。ソプラノの伸びの良さも逸品です。
AK120IIではさらにシャープ感があり、楽器音が美しいですね。脚色された美しさではなく、雑味がないというか純粋な美しさです。立体感は際立っていて楽器の分離感はいままで聞いたイヤフォンの中でも最高レベルです。
しかし本当にこれが12個もドライバーが入ってるんだろうか?と思いますね。まるで調和して完全なハーモニーを奏でる小宇宙のようです。
エージング前にちょっとだけ聴こうと思ったけど、ちょっと耳から話せなくなった。聴きなれたAK240やAK120IIでもたびたびハッとしてこれはっていう音再現を聴かせてくれます。なにこのヴォーカルは、なにこのパーカッションはっていう感じでため息が出てきます。
アンジーとロクサーヌは長短があるけれども同じくらいの音質レベルのように思いますが、レイラは完全にいち抜けしてより高みにいます。私が持ってるイヤフォンではカスタムもユニバーサルも含めてさっそく一番の座を奪ったかなとも感じます。しかも完成度が高い、とちょっと興奮気味です。
あれ?もしかして私、エージングゼロのイヤフォンにこんなこと書いちゃった? 笑
しかし正直レイラは事前情報からモニター的でドライと思ってたんで完全に肩透かしされた感じです。これは完全な性能を誇り、かつ「音楽的な」イヤフォンです。
この前12月にジェリーが来日した時にレイラとアンジーのインタビューをしたんですが、そのときにレイラとアンジーのチューニングの違いを聴いていて、「それはつまりアンジーのほうが音楽的ということですか?」と突っ込んだところ、「ははは、おれの作るものはみな音楽的だよ」って返されてしまったのを思い出します。
ジェリーに謝らないといけないなあ。。
いずれにせよさすが神様ジェリーハービー、すごいイヤフォンを作ってくれました。これこそ本当のリファレンスです。
* ジェリーのFreqPhaseによる位相制御が米国特許を取得しました。
United States Patent no. 8,925,674, issued on Jan. 6.
PHASE CORRECTING CANALPHONE SYSTEM AND METHOD
Jerry Harvey, Apopka, FL (US)
2014年12月19日
JH Audioから新しいIEM、レイラとアンジー登場
ジェリーさん率いるJH Audioからロクサーヌに続くサイレーンシリーズの新しいIEMが登場します。
さっそくJudeがHeadFi TVで紹介してます。
http://www.head-fi.org/t/746964/jh-audio-layla-and-angie-head-fi-tv#post_11141683
内容をかいつまんで紹介します。以下は米国発表内容になりますので念のため。
名前はレイラ(Layla)とアンジー(Angie)です。ロクサーヌと同様にロッククラシックから取った女性名で、レイラはクラプトン(元はデレク・アンド・ザ・ドミノス)、アンジーはストーンズです。レイラは$2499、アンジーは$999で、レイラはロクサーヌに代わるフラッグシップとなります。
それぞれカスタムとユニバーサル版がありますが、今回はユニバーサルの紹介です。ちなみにユニバーサル版はAstell&Kernとのパートナーシップでその代理店によって販売されるそうです。カスタム版のレイラとアンジーは引き続きJH Audio直かその代理店から販売されます。どちらも3.5mmと2.5mmバランスケーブルが付いてきます。
レイラは12ドライバーで4L,4M,4Hの3wayはロクサーヌと同じですが、ドライバーとクロスオーバーは新設計です。中身はロクサーヌとまったく異なるようです。また新しいステンレススチールの音導孔を採用してます。
ロクサーヌはステージミュージシャン用だったが、レイラはJH Audio初のリファレンス/マスタースタジオ用モニターということです。
JudeによるとJH Audioはロクサーヌを含めてローミッドがやや強調されているだけれども、レイラは完全フラットで、新ドライバーの採用もそれに沿うものだそうです。また特徴的なのはネットワークの設計で、(おそらく)イヤフォンで初めて急峻な4次(4th order)フィルターのクロスオーバーを採用しているということ。
たとえばシリーズの特徴であるバリアブルベース機能に関してはロクサーヌだと最低でもそれなりにあるのでめいっぱいあげるとだいぶベースヘビーになってしまうけれども、レイラの場合には低くするとほんとにフラットで一般音楽用にはちょっと細く(lean)あるいはドライに感じてしまうが、目いっぱいあげてもクリーンなので意味があり、性格がだいぶ変えられるということ。つまりベース調整で音が大きく変わる範囲が大きいので、それをJudeはversatile(汎用性が高い)と言ってます。
イメージの正確さでもよりfreqPhaseが進化したのか、ユニバーサルのレイラの方がカスタムロクサーヌより上だと言ってます。レイラのシェルはカーボンファイバーでチタンの枠を採用してます。
アンジーはレイラと同じドライバーで2L,2M,4Hの8ドライバー。高域4つは23kHzキープのためでしょうか?
クロスオーバーはレイラと同じ4次タイプです。ベースはレイラみたいに控えめなのでときにはベース調整ノブをめいっぱい上げたくなるそう。つまりレイラと同じく調整が意味のある幅が大きいということですね。これもレイラに近いがレイラほどversatileではなく、ややヴォーカル強調があるということ。
これは下記リンクではレイラに比べると低域ドライバー数が少ないので60Hzでレイラより3dBほどベース低めと言ってるので、中域は同じですが低域がちょっと下がってるのかもしれません。
http://www.audio360.org/iems_a0038_jerry_harvey_jh_audio_layla_angie_exclusive_info_early_impressions.php
アンジーのシェルは3Dプリンター製のようです。レイラのエッセンスを受け継ぐものとしてかなりコストパフォーマンスは高いと言えるでしょうね。
レイラもアンジーも画期的な技術を投入した 新世代のイヤフォンと言えるでしょうね。音を聴くのが楽しみなところです!
さっそくJudeがHeadFi TVで紹介してます。
http://www.head-fi.org/t/746964/jh-audio-layla-and-angie-head-fi-tv#post_11141683
内容をかいつまんで紹介します。以下は米国発表内容になりますので念のため。
名前はレイラ(Layla)とアンジー(Angie)です。ロクサーヌと同様にロッククラシックから取った女性名で、レイラはクラプトン(元はデレク・アンド・ザ・ドミノス)、アンジーはストーンズです。レイラは$2499、アンジーは$999で、レイラはロクサーヌに代わるフラッグシップとなります。
それぞれカスタムとユニバーサル版がありますが、今回はユニバーサルの紹介です。ちなみにユニバーサル版はAstell&Kernとのパートナーシップでその代理店によって販売されるそうです。カスタム版のレイラとアンジーは引き続きJH Audio直かその代理店から販売されます。どちらも3.5mmと2.5mmバランスケーブルが付いてきます。
レイラは12ドライバーで4L,4M,4Hの3wayはロクサーヌと同じですが、ドライバーとクロスオーバーは新設計です。中身はロクサーヌとまったく異なるようです。また新しいステンレススチールの音導孔を採用してます。
ロクサーヌはステージミュージシャン用だったが、レイラはJH Audio初のリファレンス/マスタースタジオ用モニターということです。
JudeによるとJH Audioはロクサーヌを含めてローミッドがやや強調されているだけれども、レイラは完全フラットで、新ドライバーの採用もそれに沿うものだそうです。また特徴的なのはネットワークの設計で、(おそらく)イヤフォンで初めて急峻な4次(4th order)フィルターのクロスオーバーを採用しているということ。
たとえばシリーズの特徴であるバリアブルベース機能に関してはロクサーヌだと最低でもそれなりにあるのでめいっぱいあげるとだいぶベースヘビーになってしまうけれども、レイラの場合には低くするとほんとにフラットで一般音楽用にはちょっと細く(lean)あるいはドライに感じてしまうが、目いっぱいあげてもクリーンなので意味があり、性格がだいぶ変えられるということ。つまりベース調整で音が大きく変わる範囲が大きいので、それをJudeはversatile(汎用性が高い)と言ってます。
イメージの正確さでもよりfreqPhaseが進化したのか、ユニバーサルのレイラの方がカスタムロクサーヌより上だと言ってます。レイラのシェルはカーボンファイバーでチタンの枠を採用してます。
アンジーはレイラと同じドライバーで2L,2M,4Hの8ドライバー。高域4つは23kHzキープのためでしょうか?
クロスオーバーはレイラと同じ4次タイプです。ベースはレイラみたいに控えめなのでときにはベース調整ノブをめいっぱい上げたくなるそう。つまりレイラと同じく調整が意味のある幅が大きいということですね。これもレイラに近いがレイラほどversatileではなく、ややヴォーカル強調があるということ。
これは下記リンクではレイラに比べると低域ドライバー数が少ないので60Hzでレイラより3dBほどベース低めと言ってるので、中域は同じですが低域がちょっと下がってるのかもしれません。
http://www.audio360.org/iems_a0038_jerry_harvey_jh_audio_layla_angie_exclusive_info_early_impressions.php
アンジーのシェルは3Dプリンター製のようです。レイラのエッセンスを受け継ぐものとしてかなりコストパフォーマンスは高いと言えるでしょうね。
レイラもアンジーも画期的な技術を投入した 新世代のイヤフォンと言えるでしょうね。音を聴くのが楽しみなところです!
2014年05月22日
Astell&KernのAKR03イヤフォンレビュー
Astell&KernフラッグシップであるAK240向けにチューニングされたイヤフォン、AKR03が登場しました。
ベースはあのジェリーハービーのロクサーヌです。まさに最高のDAPと最強のイヤフォンの組み合わせと言えます。
AKR03の紹介に移る前にまず今回はAKRシリーズを振り返ってみたいと思います。
* AKRシリーズとは
Astell&KernはAK100をはじめとするハイレゾDAPの他にさまざまな周辺の製品も企画しています。たとえばこれまでにイヤフォンメーカーと共同でAKRシリーズとしてイヤフォンの企画を行ってきました。これはAKシリーズのDAPに合うようなイヤフォンをユーザーに提供するために既存の機種をベースにチューニングやロゴなどのカスタマイズを行って販売するというものです。
一番初めにはFitEarと共同でFitEar F111をチューニングしたモデルAK100-111iSを販売しましたが、これはAKRシリーズになる前のことです。いわばAKRゼロという感じでしょうか。
AK100-111iS
AKRシリーズとしての第一弾はAKR01ですが、これはファイナルオーディオデザイン(FAD)と共同でheaven IV をベースにしたイヤフォンです。音的には音響フィルタを使用したチューニングを行い、ロゴの変更をしています。AKR01はAK100をリファレンスとしてチューニングをしています。
ただし日本ではAKR01という名前では出ていません。なぜかというと、これはもともと日本の企画だった「新生活セット」のバンドル品として製造されたもので、それを海外企画として発展させたものがAKR01となったからです。
新生活セットのheaven IVとAK100
音質的にはAKR01をAK100と組み合わせた音はバランスドアーマチュアながら高域のきつさもよく抑えられ、より重心が下がるようにチューニングされたおかげか低域も十分な量感を確保していました。初期AK100は出力インピーダンスの高さから低インピーダンスのイヤフォンと合わせた時の低域のレスポンスに難点がありましたが、それはきちんと確保されるようにチューニングされていました。またカチッとした正確なAK100の音をよく活かしていたモデルだと思います。ステンレス筐体がよかったですね。
なお「新生活セット」ではeonkyoのダウンロードクーポンとmicroSDカードの32GBがセットにされていました。
次にAKR02は同じくFADのFI-BA-SSをベースにしたイヤフォンです。これはFI-BA-SSをAK120をリファレンスとして音響フィルタとケーブルをオリジナルのPCOCCに変えてチューニングしたモデルです。FI-BA-SS自体がheaven IVに比べればレベルの高いもので、AK120用という用途にあっています。これは日本でも販売され、価格は145,000円でした。
AKR02とAK120
私はシンガポールのヘッドフォンショウではじめてみましたが、ベースのインパクトも良いし、全体にクリアで明瞭感も高く躍動感もあります。これもBAMというFAD独自のエアフロー最適化の仕組みを持っています。
シンガポールで見たAKR02とAK100MK2
* AKR03の登場
これまでのAKRを見てもらうとわかるように、AK100をリファレンスとしてAKR01を作り、AK120をリファレンスとしてAKR02を作っています。つまり各世代ごとのAKシリーズに合わせたモデルを出していたわけです。そしていよいよAK240をリファレンスとしたAKRシリーズが登場しました。
それがIEMの神様ジェリーハービー率いるJH Audioのフラッグシップ、最強のイヤフォンであるロクサーヌのユニバーサルモデルをベースにしたAKR03です。
プロ用のスタジオモニターとして使われるIEM(イヤモニ)ですが、このユニバーサル版では通常のイヤチップを使いますので、耳型を取る必要もありません。耳型を使って個人に合わせて作成するカスタムIEM版のロクサーヌでは制作期間が4カ月という待ちも伝えられますが、これならば特に待ちもありません。また中古で手放すときのリセールバリューも高くなります。
私はカスタム版のロクサーヌのユーザーですが、実際に使っていてAK240は普通でもロクサーヌとの相性が抜群であると思いますが、AKR03は自らがAK240ユーザーでもあるジェリーも加わってAK240に合わせてチューニングしたということです。加えて従来ロクサーヌの可変ベースも健在ですのでさらに音を自分でも調整できます。
また、なんといっても最大のAKR03のポイントは標準でAK240用の2.5mmバランスケーブルが付属するということです。ロクサーヌは後述するように専用のケーブルが必要ですが、2.5mmバランス版はまだ市販していませんので、これは大きなポイントです。
* ベースモデルのロクサーヌに関して
まずベースとなったロクサーヌについて解説します。詳しくはこちらの私の書いたレビューを参照ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/396209255.html
ロクサーヌはTHE SIRENS SERIESという新しい製品系列のフラッグシップとして位置づけられたカスタムIEMです。IEM(In Ear Monitor)とは主にミュージシャンがステージで使うモニター用のイヤフォンのことで、日本ではイヤモニなどといわれます。これは高性能なので、ミュージシャンでなくても、オーディオマニア層によく使われるようになってきたというわけです。IEMは個人の耳型を取得して作成されるカスタムIEMと、通常のカナル型イヤフォンのようないやチップを使用して誰でも使えるユニバーサルに分かれますがロクサーヌではユニバーサル版も用意されていて、AKR03はこのユニバーサル版をベースにしています。
ちなみにTHE SIRENS SERIESという名前の由来はギリシャ神話に登場するサイレーン(セイレーン)から来ています。
ロクサーヌではまず、バランスドアーマチュアドライバーを片側で計12基も搭載した点がポイントです。バランスドアーマチュアはダイナミックに比べてより細かな音を出すことができますが、帯域特性が広くないのでマルチユニットを合わせて高性能イヤフォンを設計するのが一般的です。
ロクサーヌは低域、中音域、高音域に分かれた3Wayですが、各帯域ごとに4基のBAドライバーが採用されています。これは1ユニットで2個ドライバーのデュアルユニットを2ユニット組合わせているようです。それが帯域ごとに3組あるので計12基というわけですね。これによってひとつのドライバーの負担が軽減されてよりゆがみの少ない正確な音が再現できます。このためロクサーヌはイコライゼーション無しに23KHzまで周波数特性が延びた初めてのイヤフォンとなりました。
JH16では4基の低域ドライバーをすでに採用していたのですが、ロクサーヌではそれを中音域と高音域にも拡張したわけです。
また各帯域の位相を極限まで正確に制御した「FreqPhase」を採用しています。
これはどういうものかというと、位相は各ドライバー間の音の遅れ・不揃いなどによるもので、位相特性を改善することで音のイメージングやフォーカス(音のピント)を改善します。低音域、中音域、高音域とドライバーが分かれている時はそれぞれから出た音に時間特性の違いが起きます。低域から出た音は遅れ、高音域から出た音は早く着きます。それをイヤピースのところで同じにするために長さを調整して音導菅を作り、同時に到達するようにしたものです。ロクサーヌでは改良されたこの技術を使用しています。
またケーブルとプラグも改良があります。いままでの2ピンプラグには抜けやすくイヤピースをなくしやすいという欠点がありました。
独自開発した4 pinコネクターは、アーティストがライブパフォーマンス中でも耐えられるように設計されたものです。
この4ピン・コネクターは従来のものより頑丈である上に、低中高の回路の信号線がそれぞれ独自に本体に接続されているので、コントロールできる範囲がより広くなっているのも特徴です。このため後述の可変ベース機構も可能となりました。
ロクサーヌはまた、低域用ドライバーをフラットから+15dBまで調節できる点でも初めてのイヤフォンです。だからどんな低域でもリスナーは自由に調整をすることができるわけです。
* AKR03のインプレッションと試聴レビュー
AKR03はユニバーサルですから、一般の箱に入って提供されます。
AKR03はカーボンのフェイスプレートを採用しています。この辺も高級感があるところですね。シェルは半透明で12ドライバー(6ユニット)の構成がよくわかります。12ドライバーは2個ずつドライバー(発音体)が格納されたデュアルのBAユニットが並列配置で2個ずつ、一帯域ごとに組になり、(2x2ドライバー)x3wayで12個のドライバーが効率よく格納されているのが分かります。
特徴的なのはステムの部分で、ここは以前のユニバーサルの試聴機と比べると新設計のようです。やや大柄で3穴が確保されています。帯域ごとに別のポートになるのは正しい周波数特性を得るうえでも重要なポイントです。
この太めのステムと12ドライバーをおさめたやや大きめのシェルのために、全体は少し大柄なイヤフォンとなっていますが、装着性は悪くありません。ただ人によってはステムがやや太すぎるきらいはあるかもしれません。
イヤチップは少ないほうですが大中小のラバーとフォームチップがはいっています。私はもっぱらラバータイプを使用しています。理由は後でも書くようにAKR03は十分なベースレスポンスがあるので、フォームだとベース過剰になりがちだからです。
ケースは円筒形のユニバーサル版についてくるものが使われています。またシェルのロゴはJH Audioのロゴと、Astell&kernのロゴがそれぞれ左右に別々にプリントされたカスタムロゴを使用しています。
以下の試聴では主にカスタム版のロクサーヌと比べてみました。もちろんカスタムとユニバーサルではそれ自体が違いますが、ロクサーヌの純正のユニバーサル版は持っていませんし、音傾向の比較をするという点であればカスタム版との比較でもかまわないと思います。
主に標準(ミッドのラバー)チップをつけて聴いています。ケーブルは同じく3.5mmのシングルエンド(バランスでないもの)を使用しています。また使用している機材はAK240です。
まずぱっと聞いた音質はさすがロクサーヌでかなりの音質レベルの高さを感じます。またカスタム版と同様にユニバーサルの試聴機とは音が違うことが感じられます。違いは高音域の伸びと華やかさですね。
またカスタム版と共通した音の広がりの良さ、深みがあって厚みを感じる立体感の高さを感じます。そして音再現のこまやかさ、音色の良さ・音の色彩感の豊かさを感じるところもカスタムと同じです。
違いは周波数特性です。とても整ってベースがやや強めながらフラットな感じのある標準のカスタムロクサーヌに比べると、AKR03はかなり低音域が豊かで、音の雰囲気感・空気感がより出ている全体にメリハリがついた強調感のある音になっています。これはベースを基底にピラミッドバランスの音でもあり、骨太でより脚色感があります。比較するとカスタム版はほっそりとした感じ、引き締まってより正確な感じですね。高域もAKR03の方がやや強調感があるかもしれません。
プロ用のカスタムロクサーヌに比べると、よりコンシューマー的な味付けともいえるでしょう。これはAK240がAK120に比べれば、スタジオしようというよりも、むしろハイエンドオーディオ的な音楽リスニングを目指していることを考えると方向性はあっているかもしれません。AK240自体はあまり着色感は強くありませんが、もともとバランスが良いので、こうしたコンシューマー的な味付けのイヤフォンと組み合わせることで、より音楽を楽しく聞くことができると思います。
これはたとえるとJH13とJH16にも似ている気がします。AKR03がJH16に相当します。また音圧が違っていて、ユニバーサルの方が能率が高い気がしますね。おそらくインピーダンス低めにして良い意味で柔らかく甘めの表現にしてると思います。
さらに低域を可変ベースで高めてみるとベースヘビーになりますが、音楽再生的には魅力的でもあります。なぜかというと、AKR03の興味深い点はかなり強調された音作りと言っても、破綻してるほどドンシャリではなく、全域に派手めですが、きちっとまとまった音つくりもしっかりと感じられる点です。派手なロックを聴くとベースがブンブンと唸ってドラムスがバリバリと音を立てても、次の曲のバラードではアコースティック楽器やしっとりとしたヴォーカルが普通にさらっと聴けてしまいます。キレがあるのでカッコ良く、ヴォーカルも明瞭なので、迫力はありますが丸まったダンゴ感がありません。
性能が低いイヤフォンがベースヘビーだとうるさいだけですが、ベースのロクサーヌがとても音が整っているのでこの辺がなみのイヤフォンとは血統が違うことを感じさせます。逆にもとのロクサーヌの魅力も再確認できますね。
ちょっと聴いていてAKR03はEdition7/9を思い出しました。久々にEdition7/9的な「高級ドンシャリ」みたいな感覚もちょっとあります。つまり高性能でかつモニター的でない遊び要素を持っているといいましょうか。もちろんJH13とJH16のたとえのように失われた低域をカバーする必要がある場合にモニターにも使えるのかもしれませんが、もっと楽しめるベクトルを持ったものといった方がよいでしょう。
高性能なイヤフォンはたいてい「モニター的」で落ち着いた「クラシック・ジャズ向け」なんだよなーと嘆く人に高性能だけどロックポップ・エレクトロをカッコ良く迫力満点に聞かせてくれるイヤフォンでもあります。
でもジャズもカスタムのように細身でよく切れる代わりに、AKR03は太く厚く迫力があります。現代的なジャズトリオよりはスモーキーな雰囲気が合うとは思いますが。もちろん太いといっても比較的ということで、普通のイヤフォンよりはずっと切れ味は鋭いですね。
写真フィルムではかつて富士フィルムのベルビアが派手な色再現と強いコントラストで記憶色と評されたことがあります。これは忠実ではないかもしれないけど、こうであったと強い印象で記憶に残った色、あるいはこうでて欲しいという色ですね。
ロックやジャズはこうなっていてほしい、ライブはこんなカッコよかったよな、というそうした人の記憶・願望に正しいイヤフォンがAKR03なのかもしれません。
カスタムロクサーヌと2.5mmバランスケーブル
そしてバランスケーブルですが、今度はAKR03でバランスケーブルを使うと立体感が増すというより、音場がリアルで自然になるという方が良さそうに思います。また音が端正に聴こえるようになりますが、AKR03自体はわりとシングルエンドで迫力ある再現でも十分良いので、このバランスケーブルはカスタムロクサーヌによりよくあうように思います。
カスタムロクサーヌに2.5mmバランスケーブルを使うとヘッドフォン・イヤフォン的な不自然さが少なくより自然に聴くことができます。これはちょっと独特の音世界ですね。
*そして
というわけでレビューを書きましたが、このAKR03、なんと発売初日で即売り切れてしまいました。。これは香港でも同じだったそうですが、さすがに人気が高いですね。
ただAKRシリーズというものを俯瞰的に見てみるのもまた別な意味で、AKシリーズの世界を知る糸口になるのではないかと思います。
ベースはあのジェリーハービーのロクサーヌです。まさに最高のDAPと最強のイヤフォンの組み合わせと言えます。
AKR03の紹介に移る前にまず今回はAKRシリーズを振り返ってみたいと思います。
* AKRシリーズとは
Astell&KernはAK100をはじめとするハイレゾDAPの他にさまざまな周辺の製品も企画しています。たとえばこれまでにイヤフォンメーカーと共同でAKRシリーズとしてイヤフォンの企画を行ってきました。これはAKシリーズのDAPに合うようなイヤフォンをユーザーに提供するために既存の機種をベースにチューニングやロゴなどのカスタマイズを行って販売するというものです。
一番初めにはFitEarと共同でFitEar F111をチューニングしたモデルAK100-111iSを販売しましたが、これはAKRシリーズになる前のことです。いわばAKRゼロという感じでしょうか。
AK100-111iS
AKRシリーズとしての第一弾はAKR01ですが、これはファイナルオーディオデザイン(FAD)と共同でheaven IV をベースにしたイヤフォンです。音的には音響フィルタを使用したチューニングを行い、ロゴの変更をしています。AKR01はAK100をリファレンスとしてチューニングをしています。
ただし日本ではAKR01という名前では出ていません。なぜかというと、これはもともと日本の企画だった「新生活セット」のバンドル品として製造されたもので、それを海外企画として発展させたものがAKR01となったからです。
新生活セットのheaven IVとAK100
音質的にはAKR01をAK100と組み合わせた音はバランスドアーマチュアながら高域のきつさもよく抑えられ、より重心が下がるようにチューニングされたおかげか低域も十分な量感を確保していました。初期AK100は出力インピーダンスの高さから低インピーダンスのイヤフォンと合わせた時の低域のレスポンスに難点がありましたが、それはきちんと確保されるようにチューニングされていました。またカチッとした正確なAK100の音をよく活かしていたモデルだと思います。ステンレス筐体がよかったですね。
なお「新生活セット」ではeonkyoのダウンロードクーポンとmicroSDカードの32GBがセットにされていました。
次にAKR02は同じくFADのFI-BA-SSをベースにしたイヤフォンです。これはFI-BA-SSをAK120をリファレンスとして音響フィルタとケーブルをオリジナルのPCOCCに変えてチューニングしたモデルです。FI-BA-SS自体がheaven IVに比べればレベルの高いもので、AK120用という用途にあっています。これは日本でも販売され、価格は145,000円でした。
AKR02とAK120
私はシンガポールのヘッドフォンショウではじめてみましたが、ベースのインパクトも良いし、全体にクリアで明瞭感も高く躍動感もあります。これもBAMというFAD独自のエアフロー最適化の仕組みを持っています。
シンガポールで見たAKR02とAK100MK2
* AKR03の登場
これまでのAKRを見てもらうとわかるように、AK100をリファレンスとしてAKR01を作り、AK120をリファレンスとしてAKR02を作っています。つまり各世代ごとのAKシリーズに合わせたモデルを出していたわけです。そしていよいよAK240をリファレンスとしたAKRシリーズが登場しました。
それがIEMの神様ジェリーハービー率いるJH Audioのフラッグシップ、最強のイヤフォンであるロクサーヌのユニバーサルモデルをベースにしたAKR03です。
プロ用のスタジオモニターとして使われるIEM(イヤモニ)ですが、このユニバーサル版では通常のイヤチップを使いますので、耳型を取る必要もありません。耳型を使って個人に合わせて作成するカスタムIEM版のロクサーヌでは制作期間が4カ月という待ちも伝えられますが、これならば特に待ちもありません。また中古で手放すときのリセールバリューも高くなります。
私はカスタム版のロクサーヌのユーザーですが、実際に使っていてAK240は普通でもロクサーヌとの相性が抜群であると思いますが、AKR03は自らがAK240ユーザーでもあるジェリーも加わってAK240に合わせてチューニングしたということです。加えて従来ロクサーヌの可変ベースも健在ですのでさらに音を自分でも調整できます。
また、なんといっても最大のAKR03のポイントは標準でAK240用の2.5mmバランスケーブルが付属するということです。ロクサーヌは後述するように専用のケーブルが必要ですが、2.5mmバランス版はまだ市販していませんので、これは大きなポイントです。
* ベースモデルのロクサーヌに関して
まずベースとなったロクサーヌについて解説します。詳しくはこちらの私の書いたレビューを参照ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/396209255.html
ロクサーヌはTHE SIRENS SERIESという新しい製品系列のフラッグシップとして位置づけられたカスタムIEMです。IEM(In Ear Monitor)とは主にミュージシャンがステージで使うモニター用のイヤフォンのことで、日本ではイヤモニなどといわれます。これは高性能なので、ミュージシャンでなくても、オーディオマニア層によく使われるようになってきたというわけです。IEMは個人の耳型を取得して作成されるカスタムIEMと、通常のカナル型イヤフォンのようないやチップを使用して誰でも使えるユニバーサルに分かれますがロクサーヌではユニバーサル版も用意されていて、AKR03はこのユニバーサル版をベースにしています。
ちなみにTHE SIRENS SERIESという名前の由来はギリシャ神話に登場するサイレーン(セイレーン)から来ています。
ロクサーヌではまず、バランスドアーマチュアドライバーを片側で計12基も搭載した点がポイントです。バランスドアーマチュアはダイナミックに比べてより細かな音を出すことができますが、帯域特性が広くないのでマルチユニットを合わせて高性能イヤフォンを設計するのが一般的です。
ロクサーヌは低域、中音域、高音域に分かれた3Wayですが、各帯域ごとに4基のBAドライバーが採用されています。これは1ユニットで2個ドライバーのデュアルユニットを2ユニット組合わせているようです。それが帯域ごとに3組あるので計12基というわけですね。これによってひとつのドライバーの負担が軽減されてよりゆがみの少ない正確な音が再現できます。このためロクサーヌはイコライゼーション無しに23KHzまで周波数特性が延びた初めてのイヤフォンとなりました。
JH16では4基の低域ドライバーをすでに採用していたのですが、ロクサーヌではそれを中音域と高音域にも拡張したわけです。
また各帯域の位相を極限まで正確に制御した「FreqPhase」を採用しています。
これはどういうものかというと、位相は各ドライバー間の音の遅れ・不揃いなどによるもので、位相特性を改善することで音のイメージングやフォーカス(音のピント)を改善します。低音域、中音域、高音域とドライバーが分かれている時はそれぞれから出た音に時間特性の違いが起きます。低域から出た音は遅れ、高音域から出た音は早く着きます。それをイヤピースのところで同じにするために長さを調整して音導菅を作り、同時に到達するようにしたものです。ロクサーヌでは改良されたこの技術を使用しています。
またケーブルとプラグも改良があります。いままでの2ピンプラグには抜けやすくイヤピースをなくしやすいという欠点がありました。
独自開発した4 pinコネクターは、アーティストがライブパフォーマンス中でも耐えられるように設計されたものです。
この4ピン・コネクターは従来のものより頑丈である上に、低中高の回路の信号線がそれぞれ独自に本体に接続されているので、コントロールできる範囲がより広くなっているのも特徴です。このため後述の可変ベース機構も可能となりました。
ロクサーヌはまた、低域用ドライバーをフラットから+15dBまで調節できる点でも初めてのイヤフォンです。だからどんな低域でもリスナーは自由に調整をすることができるわけです。
* AKR03のインプレッションと試聴レビュー
AKR03はユニバーサルですから、一般の箱に入って提供されます。
AKR03はカーボンのフェイスプレートを採用しています。この辺も高級感があるところですね。シェルは半透明で12ドライバー(6ユニット)の構成がよくわかります。12ドライバーは2個ずつドライバー(発音体)が格納されたデュアルのBAユニットが並列配置で2個ずつ、一帯域ごとに組になり、(2x2ドライバー)x3wayで12個のドライバーが効率よく格納されているのが分かります。
特徴的なのはステムの部分で、ここは以前のユニバーサルの試聴機と比べると新設計のようです。やや大柄で3穴が確保されています。帯域ごとに別のポートになるのは正しい周波数特性を得るうえでも重要なポイントです。
この太めのステムと12ドライバーをおさめたやや大きめのシェルのために、全体は少し大柄なイヤフォンとなっていますが、装着性は悪くありません。ただ人によってはステムがやや太すぎるきらいはあるかもしれません。
イヤチップは少ないほうですが大中小のラバーとフォームチップがはいっています。私はもっぱらラバータイプを使用しています。理由は後でも書くようにAKR03は十分なベースレスポンスがあるので、フォームだとベース過剰になりがちだからです。
ケースは円筒形のユニバーサル版についてくるものが使われています。またシェルのロゴはJH Audioのロゴと、Astell&kernのロゴがそれぞれ左右に別々にプリントされたカスタムロゴを使用しています。
以下の試聴では主にカスタム版のロクサーヌと比べてみました。もちろんカスタムとユニバーサルではそれ自体が違いますが、ロクサーヌの純正のユニバーサル版は持っていませんし、音傾向の比較をするという点であればカスタム版との比較でもかまわないと思います。
主に標準(ミッドのラバー)チップをつけて聴いています。ケーブルは同じく3.5mmのシングルエンド(バランスでないもの)を使用しています。また使用している機材はAK240です。
まずぱっと聞いた音質はさすがロクサーヌでかなりの音質レベルの高さを感じます。またカスタム版と同様にユニバーサルの試聴機とは音が違うことが感じられます。違いは高音域の伸びと華やかさですね。
またカスタム版と共通した音の広がりの良さ、深みがあって厚みを感じる立体感の高さを感じます。そして音再現のこまやかさ、音色の良さ・音の色彩感の豊かさを感じるところもカスタムと同じです。
違いは周波数特性です。とても整ってベースがやや強めながらフラットな感じのある標準のカスタムロクサーヌに比べると、AKR03はかなり低音域が豊かで、音の雰囲気感・空気感がより出ている全体にメリハリがついた強調感のある音になっています。これはベースを基底にピラミッドバランスの音でもあり、骨太でより脚色感があります。比較するとカスタム版はほっそりとした感じ、引き締まってより正確な感じですね。高域もAKR03の方がやや強調感があるかもしれません。
プロ用のカスタムロクサーヌに比べると、よりコンシューマー的な味付けともいえるでしょう。これはAK240がAK120に比べれば、スタジオしようというよりも、むしろハイエンドオーディオ的な音楽リスニングを目指していることを考えると方向性はあっているかもしれません。AK240自体はあまり着色感は強くありませんが、もともとバランスが良いので、こうしたコンシューマー的な味付けのイヤフォンと組み合わせることで、より音楽を楽しく聞くことができると思います。
これはたとえるとJH13とJH16にも似ている気がします。AKR03がJH16に相当します。また音圧が違っていて、ユニバーサルの方が能率が高い気がしますね。おそらくインピーダンス低めにして良い意味で柔らかく甘めの表現にしてると思います。
さらに低域を可変ベースで高めてみるとベースヘビーになりますが、音楽再生的には魅力的でもあります。なぜかというと、AKR03の興味深い点はかなり強調された音作りと言っても、破綻してるほどドンシャリではなく、全域に派手めですが、きちっとまとまった音つくりもしっかりと感じられる点です。派手なロックを聴くとベースがブンブンと唸ってドラムスがバリバリと音を立てても、次の曲のバラードではアコースティック楽器やしっとりとしたヴォーカルが普通にさらっと聴けてしまいます。キレがあるのでカッコ良く、ヴォーカルも明瞭なので、迫力はありますが丸まったダンゴ感がありません。
性能が低いイヤフォンがベースヘビーだとうるさいだけですが、ベースのロクサーヌがとても音が整っているのでこの辺がなみのイヤフォンとは血統が違うことを感じさせます。逆にもとのロクサーヌの魅力も再確認できますね。
ちょっと聴いていてAKR03はEdition7/9を思い出しました。久々にEdition7/9的な「高級ドンシャリ」みたいな感覚もちょっとあります。つまり高性能でかつモニター的でない遊び要素を持っているといいましょうか。もちろんJH13とJH16のたとえのように失われた低域をカバーする必要がある場合にモニターにも使えるのかもしれませんが、もっと楽しめるベクトルを持ったものといった方がよいでしょう。
高性能なイヤフォンはたいてい「モニター的」で落ち着いた「クラシック・ジャズ向け」なんだよなーと嘆く人に高性能だけどロックポップ・エレクトロをカッコ良く迫力満点に聞かせてくれるイヤフォンでもあります。
でもジャズもカスタムのように細身でよく切れる代わりに、AKR03は太く厚く迫力があります。現代的なジャズトリオよりはスモーキーな雰囲気が合うとは思いますが。もちろん太いといっても比較的ということで、普通のイヤフォンよりはずっと切れ味は鋭いですね。
写真フィルムではかつて富士フィルムのベルビアが派手な色再現と強いコントラストで記憶色と評されたことがあります。これは忠実ではないかもしれないけど、こうであったと強い印象で記憶に残った色、あるいはこうでて欲しいという色ですね。
ロックやジャズはこうなっていてほしい、ライブはこんなカッコよかったよな、というそうした人の記憶・願望に正しいイヤフォンがAKR03なのかもしれません。
カスタムロクサーヌと2.5mmバランスケーブル
そしてバランスケーブルですが、今度はAKR03でバランスケーブルを使うと立体感が増すというより、音場がリアルで自然になるという方が良さそうに思います。また音が端正に聴こえるようになりますが、AKR03自体はわりとシングルエンドで迫力ある再現でも十分良いので、このバランスケーブルはカスタムロクサーヌによりよくあうように思います。
カスタムロクサーヌに2.5mmバランスケーブルを使うとヘッドフォン・イヤフォン的な不自然さが少なくより自然に聴くことができます。これはちょっと独特の音世界ですね。
*そして
というわけでレビューを書きましたが、このAKR03、なんと発売初日で即売り切れてしまいました。。これは香港でも同じだったそうですが、さすがに人気が高いですね。
ただAKRシリーズというものを俯瞰的に見てみるのもまた別な意味で、AKシリーズの世界を知る糸口になるのではないかと思います。
2014年05月04日
JH Audioのカスタムイヤフォン、ロクサーヌ(Roxanne)レビュー
Roxanne(ロクサーヌ)はジェリーハービー率いるJH Audioのカスタムイヤフォン(IEM)の新世代フラッグシップモデルです。実のところ、このカスタムイヤフォンの世界自体がジェリーの創始したものであり、ロクサーヌにはその歴史とノウハウの蓄積が詰まっています。
そこでまずその歩みからロクサーヌに至るまでを昨年カスタムブックのインタビューをしたときの記録から明らかにしていきます。
JH Audio Roxanne Custom
* ロクサーヌへの道
ジェリーハービーはミズーリ州のセントルイスに生まれました。空手を教えていた時にあるミュージシャンと知り合いとなり、以後深く音楽業界にかかわっていくことになります。やがてサウンドエンジニアの道を歩んだ彼はバンドのライブサウンドミキシングの世界に入り込んでいきました。そしてタスコサウンドでトップエンジニアたちとの交流の中から技術力を身につけていき、デビッド・リー・ロスやヴァンヘイレン、キッス、リンキンパークなど一流ミュージシャンのサウンドを担当しています。
そして1995年、ヴァン・ヘイレンのライブサウンドの担当をしていた時、バンドのドラマーであるアレックス・ヴァンヘイレンにインイヤーモニター(以降IEM)を使用してもらう機会を得ました。当時のIEMは未成熟でメーカーもイヤフォンよりもアンプ機材のほうに気を取られていたといいます。アレックスはそのIEMが気に入らず、ジェリーにもっと良いものを探すかあんたが作ってくれよ、といったそうです。その言葉をきっかけにジェリーはイヤフォンの開発に取り組むことになり、その時に生まれたイヤフォンはのちにUE5になりました。
アレックスはそれを気に入ってくれ、他のミュージシャンもその噂を聞きつけてジェリーに依頼するようになっていきます。そこでジェリーはIEMを商売にすることを思いつきます。Ultimate Earsという名前はツアーの最中に生まれ、それがジェリーの会社の名前となりました。
やがてUE5は業界のスタンダードになり、エアロスミスがグラミー賞授賞式の演奏でも使用したんですが、ジェリーはそれを見て感銘したといいます。ジェリーがUEの製品で気に入っているのはTriple.Fi 10 proだそうですが、やはり一番初めに生まれたUE5は格別だそうです。
Shure E5c
この時にシェルの制作をしていたのはWestoneでした。Westoneはヒアリングエイドでは老舗ということもあったんでしょう。
ShureがIEMの開発をするという際にもジェリーが協力して、UE5はShure E5のベースとなりました。そのさいにもWestoneがシェルの設計をしていたといいます。WestoneはUEと別れた後にShureのユニバーサルを作成していた技術を応用してUMシリーズを作成することになります。
これがIEMの誕生と、それにまつわる我々のよく知るIEMの老舗であるUE、Shure、Westoneの関係です。
その後UEは大きくなっていき、ジェリーのコントロールも利かなくなっていきます。そのためTriple.Fiの開発も会社ともめながら隠れてやっていたほどだったそうです。Triple.Fi 10 proはそれまでのカスタムを母体としていないユニバーサル独自設計というユニークなものでした。
やがてジェリーは大きくなりすぎたUEを去ることになります。設計者が現役のプロエンジニアという起業精神を守るために。
これはAppleとスティーブジョブスの関係を想起させますね。アメリカではベンチャー精神と大企業のはざまではこうしたことはよくあるのでしょう。
JH Audio JH13
その後ジェリーは自らの会社であるJH Audioを起業します。キャッチフレーズはHear No Evil。これはEvil(悪)を悪い音に例えて、Hear No Bad-Audio(悪い音は聴くな)と言う意味でつけたそうです。(ちなみにHear no evil, Speak no evil, See no Evilで日本語で言うところの、みざる・きかざる・いわざるの意味になる)
そして記念すべき初代フラッグシップであるJH13を発表します。これは2009年のHeadFiのCanJamでのことです。JH13は片側6基のドライバーを持つ画期的なIEMでした。3Wayですが同じ帯域に二個のドライバーをタンデム配置することで、一つのドライバーの負荷を減らします。これはライブ経験の多いジェリーのPAを応用した発想によるものです。
このJH13をきっかけに、IEM業界はさらなるマルチドライバー化に動かされていくことになります。
JH Audio JH16
次にJH Audioが発表したのはJH16です。これはライブパフォーマンスを行うドラマーがステージ上で消えやすい低域を補完するために開発されました。そのため低域ドライバーを4基タンデム(クワッド)配置して片側8基としています。ひとつの帯域にドライバーを4基配置するという発想はこのままロクサーヌに引き継がれます。また消えやすい低域を補完するために低域を増強するという考え方もロクサーヌの可変ベース機構につながります。
JH Audio JH3Aと専用JH16
この同じ帯域でのドライバーの複数配置の他にもうひとつジェリーが注力した特徴があります。それは位相の適正化です。バランスド・アーマチュアドライバーは音の細かな再現性には秀でていますが、一つのドライバーの帯域が狭いため、広帯域化するには低音や高音を別々に担当させ、マルチドライバーとすることが一般的です。
しかしながらマルチドライバーになれば、ドライバーの発する音はバラバラに耳に届くことになり時間的な(位相の)ズレが生じて音がぼけたり立体感が喪失したりする原因となります。
それを根本的に解決しようとしたのが帯域ごとにアクティブクロスオーバーを持つJH3Aです。これはもともとジェリーがUEに居た時代の特許でしたが、ジェリーがUEを離れたことで、彼がその特許を使えなくなるという皮肉なことになり、完全には実現できませんでした。
そこでパッシブに位相の問題を解決しようとしたのがFreqPhaseです。さきに書いたように低音域、中音域、高音域とドライバーが分かれている時はそれぞれから出た音に時間特性の違いが起きます。低域から出た音は遅れ、高音域から出た音は早く着きます。それをイヤピースのところで同じにするために長さを調整して音導菅を作り、同時に到達するようにしたものです。
普通は音が中心から5度ほどずれてしまいますが、これによりヴォーカルもドラムのキックもぴったりと中心に会うようになります。また位相に問題があると音が滲んでしまいますが、その問題も解決できます。
そして、これらのFreqPhase、4基のドライバー、ベースの補強という考え方を総括したものとして、最新のフラッグシップ、ロクサーヌが生まれたというわけです。
ロクサーヌはこのようにジェリーとIEMの長い道のりの上に設計されたものです。
JH Audio Roxanne
* ロクサーヌの特徴
ロクサーヌはTHE SIRENS SERIESという新しい製品系列のフラッグシップとして位置づけられたカスタムイヤフォンです。またユニバーサル版も用意されています。AK240用のAKR03モデルにはAK240用のバランスケーブルも付属します。
THE SIRENS SERIESという名前の由来はギリシャ神話に登場するサイレーン(セイレーン)から来ています。これはいままで数字で名前を付けてきて、それに飽きてもっと楽しくセクシーな名前を付けたかったことによるそうです。サイレーンとは声の魅力で船乗りたちを岩に引き寄せてしまう一種の魔女です。もともとはギリシャ神話ですけど発音が問題なので英語名にしたそうです。
そのサイレーン姉妹の長女がロクサーヌというわけです。これは女性の名まえとしてはイヤフォンによく合うからということです。技術的なものよりセクシーな名前を付けるというのが面白いだろう、とジェリーは語っていました。
下記はJH Audioのロクサーヌ商品紹介ページです。
http://www.jhaudio.com/content/sirens-roxanne
ジェリーはロクサーヌは正しい位相で広帯域を誇るフラッグシップにふさわしいIEMと言っていました。この一言がロクサーヌの特徴を端的に物語っています。
ロクサーヌの特徴とは以下のものです。
1. 片側で計12ドライバーを搭載した「soundrIVe Technology」を採用
帯域特性、周波数特性という点では片側で計12ドライバーという点がポイントです。
ロクサーヌは低域、中音域、高音域に分かれた3Wayですが、各帯域ごとに4基のBAドライバーが採用されています。これは1ユニットで2個ドライバーのデュアルユニットを2ユニット組合わせているようです。それが帯域ごとに3組あるので計12基というわけですね。
ジェリーはロクサーヌはイコライゼーション無しに23KHzまで周波数特性が延びた初めてのイヤフォンだと語っています。それはこの帯域ごとの4基のドライバーの機構によって達成されたといいます。
JH16では4基の低域ドライバーをすでに採用していたのですが、ロクサーヌではそれを中音域と高音域にも拡張したわけです。これには内部配線にも工夫が必要でした。
2. 各帯域の位相を極限まで正確に制御した「FreqPhase」を採用
位相特性はジェリーのもうひとつのテーマです。位相は各ドライバー間の音の遅れ・不揃いなどによるもので、位相特性を改善することで音のイメージングやフォーカス(音のピント)を改善します。
ロクサーヌ開発においては、先に述べたFreqPhaseとその役割においても大きな発見があったと言います。この技術をいち早く応用したロクサーヌの位相はかなり正確ということですね。
3. 新開発のケーブルとロック式プラグを採用
独自開発した4 pinコネクターは、アーティストがライブパフォーマンス中でも耐えられるように設計されたものです。
いままでの2ピンプラグには抜けやすくイヤピースをなくしやすいという欠点がありました。スタジオでミュージシャンがイヤピースをなくすというのは一大事であり、それを避けるためには、もっとしっかりとしたプラグを持つケーブルが必要だったのです。ジェリーが作るものはこのようにまずプロユースを前提とした頑強なものですが、それらは同時にオーディオファイルでももちろんうまく使えるというわけです。
この4ピン・コネクターは従来のものより頑丈である上に、低中高の回路の信号線がそれぞれ独自に本体に接続されているので、コントロールできる範囲がより広くなっているのも特徴です。このため後述の可変ベース機構も可能となりました。
このケーブル用パーツは技術的にオープンにする予定で、WhiplashやMoon Audioなど他のメーカーにもパーツを提供して作れるようにするつもりだということです。
4. 可変ベース調整機構を採用
ロクサーヌはまた、低域用ドライバーをフラットから+15dBまで調節できる点でも初めてのイヤフォンです。だからどんな低域でもリスナーは自由に調整をすることができるわけです。
5. カーボン製のシェルをオプションとして採用
最近ではイヤフォンにチタンなどいろいろな素材も使われてきていますが、反面みな似たり寄ったりになってきています。
ジェリーはカーボンは金属材よりセクシーだし、ほかのメーカーとの差別化になると言っています。これは音質面よりは単にデザインの問題ですが、軽くて強固という利点もあります。
また航空機にも使用される頑丈なアルミニウムにカーボンを使用した高級感あるオリジナルキャリングケースも用意されています。
* 耳型取得 (東京ヒアリングケアセンター大井町店)
まずカスタムIEMの注文は耳型(インプレッション)の取得から始まります。今回は東京ヒアリングケアセンターの大井町店にお願いしました。
下記はホームページです。
http://tokyohearing.jp
ここは大井町のNikon光学通り(大井町光学通り)を少し行ったところにあります。大井町店は行きづらいですが、こちらの方が予約は取りやすいという利点もあります。
東京ヒアリングケアセンターは青山店の方が有名ですが、もともとは大井町店がはじまりで、ここのおやじさんの息子さんが青山に店舗を拡張したということです。ここも超有名アーティストのインプレッション採取などがあり、青山という土地柄が大事でもあるのでそちらにも店舗を増やしたということです。この大井町店のおやじさんは某オーディオメーカーSのOBで、かなりオーディオ系にも詳しいのでオーディオ話で盛り上がってしまいました。またこの方はこの道19年というベテランでもあります。ただそれでも人の耳は千差万別なので日々勉強と話していました。
プロのイヤモニ経験も豊富なのでプロフェッショナルという点で耳型採取に関しては安心だと思います。実際に技術的にも丁寧に対応してくれました。耳の毛の立ち具合で耳型の遮音性も異なるようで、そうした点や個人の耳の左右差などかなり細かいところまで注意を払って取ってくれました。(ただしここは採取した耳型についてはウエブへの写真アップは禁止という注意事項があります)
またどこでも同じですが耳型採取に関しては下記2点を厳守願います。
1. 自分で耳型を取らない
2. 行く前に耳掃除をする
注文は国内代理店ミックスウェーブさんのホームページをご覧ください。
http://www.mixwave.jp/audio/jhaudio/roxanne.html
またこちらはフジヤさんの販売ページです。
http://fujiya-avic.jp/products/detail57784.html
いまはそれなりに時間がかかると思いますので納期は確認した方がよいかもしれません。
* 到着とファーストインプレ
だいたい発注から4カ月くらいで手元に届きました。注文したのはフルカーボンシェルにロクサーヌのロゴ入りのオプション設定です。フルカーボンシェルはフェイスプレートだけではなく、シェル全体をカーボンで成型するものです。
フルカーボンシェルモデルは航空機グレードアルミとカーボンの立派なケースに入ってきます。
しかしロクサーヌのカーボンシェルモデルの存在感は感動的です。思わず興奮気味にTwitterで何件か写真を撮って連続tweetしてしまいました。まるでモデル撮影みたいにずっと写真を撮っていたくなった、とその時に書きこんでますが、まさにジェリーの言うとおり、ロクサーヌはセクシーです。私もいくつもカスタムIEMを注文してきましたが、出来をみて感動したというのははじめてですね。例えるとAK100とAK240のようなもので、質感と高級感で他のカスタムIEMと比べてもまるで別格に思えます。
ちょっと高いけれどもロクサーヌをオーダーするときはカーボンオプションをオススメします。所有感・もつ喜び満足感がちがうと思います。
良くライカや時計なんかでも「持つ喜び」って表現がありますが、カーボンロクサーヌとAK240で思うのはポータブルオーディオで言われることのなかった持つ喜びという言葉が当てはまることです。従来のハイエンドオーディオにはそれがあったと思います。
ポータブルオーディオが文化という面でもそうした先達にならんだ文化の成熟に来たかという感を新たにしますね。ライカも外見だけでなく100年経ってもいまだに画質でもカメラ世界のトップクラスです。そうした外見と中身が高い次元で調和したレベルの高さがポータブルオーディオでも出てきたと思います。
ちなみにカスタムIEMとしてのフィットもピッタリです。これはインプレッションの東京ヒアリングケアセンターとJH Audioの両方がよいということですね。
改良されたケーブルはかなり太く、これまた存在感があります。いまのところまだ交換ケーブルは他のメーカーから出ていませんが、期待したいところです。またロクサーヌは標準ケーブルでも音質は悪くないと思うので、この標準ケーブルのAK240バランス版が早くほしいところです。
またロクサーヌで画期的なのはL字タイプのプラグなのにステムが長いんでHugoでもミニプラグにちゃんとはまるところです。
* 音質検証と考察
試聴では主にAK240を使いました。断りがない限りはAK240での感想です。
まず思ったのは試聴で聴いた印象からだいぶ改良されたということです。特に高音域のレスポンスです。ロクサーヌは昨年あたりは試聴ユニットで何回か聞きました。試聴機ではやや高域が出ないという感もありましたが、この製品版のロクサーヌはそうしたことはなく、鮮明でのびやかな高音域が感じられます。これは23kHzまで伸びることをうたった主張通りに思えますね。このことはワイドレンジ感・広帯域感につながります。
AK240とRoxanne
全体的な音質のレベルはかなり高く、フラッグシップとしての余裕が感じられます。直前まで聴いていたそれまでのフラッグシップモデルであるJH13やJH16の音質をエージングゼロの時点でも軽く凌駕しています。JH13やJH16はリケーブルしていて、ロクサーヌは標準ケーブルなのに、です。
JH13(標準ケーブル・non-FP)とロクサーヌを聴き比べてみると、JH13にしたときに音空間が小さく感じられます。またロクサーヌでは楽器がより明瞭に分離されていて位置関係が団子にならずに聞き取れます。ロクサーヌは音が濃いというより音が豊かという感覚でしょうか。それと細かいところでロクサーヌのほうがきつさが少なくなめらかな点も感じられますが、これはケーブルの違いもあるかもしれません。また全体に音楽をより正確に再現しているように感じられます。
周波数特性的にはJH13に近いと思います。フラットに近く低域がやや強調されているという感じでしょうか。これは可変ベースを調整しないデフォルトでの印象です。一般的にはデフォルト位置でベースレスポンスも十分に得られていると思います。以下音の印象は可変ベースのデフォルト位置によるものです。
ロクサーヌで聴いてぱっと一番初めに感じることは音空間の広さとスケール感の豊かさです。これはエージングされてなくてもそう思いますが、この音空間の再現力が優れているのはFreqPhaseによるものではないかと思います。私のJH13は最も初期のものなのでFreqPhaseではありませんから一層そう思のでしょう。ロクサーヌにはJH13のこじんまり感がなく、ヴォーカルの口の大きさとか、楽器配置の立体感などもフォーカスがあったピントがはっきりしてる感があります。おそらくこれで楽器の音像の解像感もエッジが立っていてより高く感じられるのだと思います。
これは上で書いたワイドレンジ感と合わせてオーケストラものを聴くときにスケール感豊かに再生できます。またジャズトリオでは切れのあるライブが再現できます。
音色の良さ、正しさ、描き分ける色彩感もロクサーヌの良さです。楽器の音の明瞭感が高く、高音域のレスポンスがよいこととあいまってとてもクリアでみずみずしい感じがします。全体的な音の濃さと濃密感はJH13に似ていて、1964Earsなどに感じられる軽いものではありません。楽器の音色はリアルで脚色なく音色の美しさを堪能できます。このリアルな感覚は解像力の高さと関係していて、情報量がとても高いために楽器の再現がリアルであると感じるのだと思います。
音の豊かさはアコースティックで複雑な要素をもった楽曲でよくわかります。単に濃いというより色彩感の描き分けに優れていて、音色がリアルです。赤ん坊の鳴き声が効果音で入った曲では思わずその方向に振り向いてしまったほどです。方向までわかったというのはFreqPhaseの威力でしょう。
様々な楽器が紹介されるマイクオールドフィールドのチューブラーベルズ後半パートの楽器音も単にきれいとかではなく、いままで気がつかなかったくすんで響きれない金属質の音色までわかります。ヴォーカルの声質も上質です。
このようにスケール感よく、JH Audioらしい音の密度感も濃いところもさらに磨かれ、AK240の音がさらに良くなるのが感じられます。AK240と合わせると掌に50万円近くの機器をにぎっていることになりますが、それに見合う音の豊かさがあります。
また、個人的に思うロクサーヌのポイントは鳴りの良さだと思います。
音が濃いと書きましたが、JH13的なやや暗さはなく、軽快感があります。発音体が軽やかによく動くという感じです。かといって音自体は1964的な軽さではなく、濃密だが軽快という相反する要素の両立も感じられます。たとえば1964 V6SとJH13を比べた時のようなJHの重厚さは感じられるが、暗いという印象ではなく明るくはつらつとした方にやや振られている感じです。
鳴らしやすいゆえにソース機器の性能を120%出しきれて空気に伝えているという感じが味わえます。能率が高いというのもありますが、それより「鳴りが良い」と言うオーディオ用語をあてはめる方があってると思います。
これは理由の一つには4x4x4のタンデム(クワッド)ドライバー配置が利いていると思います。同じ帯域に複数のドライバーを配する手法はジェリーがUE11で低域デュアルを採用した時から試行していたようですが、二個のドライバーを採用することでヘッドルームに余裕ができて歪みを減らすことが出来るとジェリーから聞きました。
これは歪みが少なくリアルな楽器の音色再現ができるということもあるし、負担が減ることによる余裕が鳴らしやすさにもつながると思います。それを1帯域ドライバー4つにまで拡張したのがJH16の低域だし、それを中音域と高音域にまで適用したのがロクサーヌだとジェリーは言っていました。こうした並列(タンデム)のドライバー駆動はジェリーが長年携わってきたライブステージでのPA運用からもノウハウを得ているのでしょう。これによりロクサーヌはJH13より軽く明るく動くようになっているのだと思います。
そのため、ロクサーヌはアンプ二段重ねのような本格的なポータブルシステムの音を受け止められケーブルの微妙な違いまでよく再現するだけではなく、iPhone直やハイレゾDAPのようなシンプルなシステムでもその能力を発揮します。
この点で特筆すべきはやはりさきにも書きましたがAK240との相性の良さでしょう。AK240とロクサーヌの両方の高い性能がより高めあい、磨きあいます。音的にもきつさは少なく、上質であることをうかがわせます。ここはバランス再生をそのうちぜひ試したいところです。
AK100MKIIとも相性よく再生ができます、やはり音が美しくバランスが良いのでかなり上質な感覚があります。
これは須山さん曰くですが10-12kHzをいかに伸ばすかがイヤモニ設計の一つのポイントだそうです。須山さんは得意のチタン加工技術によるチューブでそれを稼いでいくようです。
作り手によってイヤモニもさまざまな考え方があると思いますが、ドライバーを二基にすれば3dBあがり、より高域特性を稼ぐことができます。また位相を揃えることで原音に揃えるのがジェリーの考え方なんでしょう。複数ドライバーで一つのドライバーの負担を減らすともども、PAの経験がベースになっているようです。23kHzをうたうロクサーヌはそこから始まっていると思います。
* ロクサーヌの新機軸
ロクサーヌではケーブルが刷新されたとともに可変ベース機構と新型プラグが導入されました。可変ベース機構は左右独立の小さなダイヤルを付属のマイナスドライバーで調整するものです。デフォルトでは中央よりややベース強めになっているように思います。左方向に回すと低域が減少しますが同時によりすっきりとした音再現になるように思います。反対に回すと低域が増すとともによりアグレッシブになるように思います。EstronケーブルのVocalとBaXの違いにも似ています。同じような考えでケーブルのインピーダンスを変えるんでしょうか。単に低域を増減するというよりも、標準のロクサーヌをもっとモニターライクにもできますし、もっとロックポップ向けにもできるという感じです。
プラグは今回の目玉の一つです。いままでの2ピンと呼ばれるカスタムのプラグは脆弱なものでしたが、ロクサーヌではロック機構がついてより確実に止められるようになりました。これもジェリー曰く「私の作るものはすべてプロ前提で作られる」ということです。
ロクサーヌの発売された初期のころにここの部分が弱いといった批判が出ていたこともあるのですが、いまのものは強化されています。それにしても力を変な風にかけすぎてはいけないということで、ジェリーが下記のYoutubeに正しいプラグの着脱方法についての説明をしています。
https://www.youtube.com/watch?v=ZBCRR7oRM6s
それと付属品としてカスタム用のコンプライフォームがついてきました。JH Audio向けのOEM品となっています。カスタムの隙間にいれることでさらに密着性を高めるというものです。いまひとつ低域がでないというときには使ってみるのもよいかと思います。
* まとめ
マルチドライバーIEMのドライバー数は片側2個か3個から、最近は10個、12個と大幅に増えてきています。これはあたかもデジカメの画素数競争のようなインフレーションにも見えるかもしれません。しかし、それにはさまざまな理由と方向性があると思います。
たとえばNobleのK10のように10ドライバーがあるが2個ずつデュアルは同じ帯域でペアごとには違う帯域を受け持つというものもありますし、ロクサーヌのようにデュアルをさらにペアにして帯域は増やさずに並列配置するドライバー数を増やすという考え方もあります。それはひとえに設計者の思想によるものです。
ロクサーヌの良さはさまざまな言葉で表現できます。空間の広さ・密度感・解像力・情報量の豊かさ・音色再現性の高さ、などです。しかしながらそのポイントは鳴りの良さと正確な位相特性にあり、それが優れた空間表現力や音の再現力の高さを実現しているのだと思います。
これらは一帯域に複数のドライバーを配し、位相を正確にするFreqPhaseを採用するということで、JH13のタンデムドライバー、そして同じ帯域に多くのドライバーを並列で使うというPAの発想とそれを拡張したJH16の4基拡張(可変ベースにもつながる)、FreqPhaseモデルの位相適正化、そしてJH3の試行の線の延長にあるものといえます。いわばいままでのジェリーのイヤモニ制作とライブステージエンジニアとしての膨大な経験とノウハウの集大成と言えるでしょう。
つまりロクサーヌはイヤモニの歴史を作ってきたジェリーハービーの長い経験に裏打ちされたもので、他ではまねできないような高い完成度を誇っていると言えます。
JH Audioはジェリーがやりたいことをやるための会社です。そのためにさきに書いたように大企業化したUEを辞めてまで自分の会社を持ったわけです。将来の計画について聞いた時も、適度にぼやかしながら、うちは小回りの効く会社だから柔軟にいろいろ開発できるよ、とも言っていました。
JH Audioについてはカスタマーサポート・納期で不満の声も聞かれますが、JH Audioのシェアは全米で活動するバンドのかなり多くであると聞いています。そのユーザー数の多さと、小回りの効く小さな会社で居続けるという両立をジェリーは試行錯誤しているのでしょう。
そうまでして頑張る理由についてジェリーはこう言います。
「つまるところ、私たち誰もが音楽を愛しており、自分が設計したイヤフォンを通して音楽を聞いたリスナーが良い気分になったり、感動を得られたりすれば、私の使命は達せられたことになる。」
イヤモニの神様であるジェリーハービーと、その集大成ともいえるロクサーヌ、それはユーザーからの支援が結実したものとも言えます。そしてジェリーはインタビューの最後にこう言ってくれました。
「ミュージシャンでもない私自身がファンを持つというのは光栄なことだ。私も彼らを失望させないような良い製品を作っていきたいね。そしてユーザーからの厚い支持のお陰で、何よりも自分がやりたいことをさせてもらっている。本当にありがとう!」
そこでまずその歩みからロクサーヌに至るまでを昨年カスタムブックのインタビューをしたときの記録から明らかにしていきます。
JH Audio Roxanne Custom
* ロクサーヌへの道
ジェリーハービーはミズーリ州のセントルイスに生まれました。空手を教えていた時にあるミュージシャンと知り合いとなり、以後深く音楽業界にかかわっていくことになります。やがてサウンドエンジニアの道を歩んだ彼はバンドのライブサウンドミキシングの世界に入り込んでいきました。そしてタスコサウンドでトップエンジニアたちとの交流の中から技術力を身につけていき、デビッド・リー・ロスやヴァンヘイレン、キッス、リンキンパークなど一流ミュージシャンのサウンドを担当しています。
そして1995年、ヴァン・ヘイレンのライブサウンドの担当をしていた時、バンドのドラマーであるアレックス・ヴァンヘイレンにインイヤーモニター(以降IEM)を使用してもらう機会を得ました。当時のIEMは未成熟でメーカーもイヤフォンよりもアンプ機材のほうに気を取られていたといいます。アレックスはそのIEMが気に入らず、ジェリーにもっと良いものを探すかあんたが作ってくれよ、といったそうです。その言葉をきっかけにジェリーはイヤフォンの開発に取り組むことになり、その時に生まれたイヤフォンはのちにUE5になりました。
アレックスはそれを気に入ってくれ、他のミュージシャンもその噂を聞きつけてジェリーに依頼するようになっていきます。そこでジェリーはIEMを商売にすることを思いつきます。Ultimate Earsという名前はツアーの最中に生まれ、それがジェリーの会社の名前となりました。
やがてUE5は業界のスタンダードになり、エアロスミスがグラミー賞授賞式の演奏でも使用したんですが、ジェリーはそれを見て感銘したといいます。ジェリーがUEの製品で気に入っているのはTriple.Fi 10 proだそうですが、やはり一番初めに生まれたUE5は格別だそうです。
Shure E5c
この時にシェルの制作をしていたのはWestoneでした。Westoneはヒアリングエイドでは老舗ということもあったんでしょう。
ShureがIEMの開発をするという際にもジェリーが協力して、UE5はShure E5のベースとなりました。そのさいにもWestoneがシェルの設計をしていたといいます。WestoneはUEと別れた後にShureのユニバーサルを作成していた技術を応用してUMシリーズを作成することになります。
これがIEMの誕生と、それにまつわる我々のよく知るIEMの老舗であるUE、Shure、Westoneの関係です。
その後UEは大きくなっていき、ジェリーのコントロールも利かなくなっていきます。そのためTriple.Fiの開発も会社ともめながら隠れてやっていたほどだったそうです。Triple.Fi 10 proはそれまでのカスタムを母体としていないユニバーサル独自設計というユニークなものでした。
やがてジェリーは大きくなりすぎたUEを去ることになります。設計者が現役のプロエンジニアという起業精神を守るために。
これはAppleとスティーブジョブスの関係を想起させますね。アメリカではベンチャー精神と大企業のはざまではこうしたことはよくあるのでしょう。
JH Audio JH13
その後ジェリーは自らの会社であるJH Audioを起業します。キャッチフレーズはHear No Evil。これはEvil(悪)を悪い音に例えて、Hear No Bad-Audio(悪い音は聴くな)と言う意味でつけたそうです。(ちなみにHear no evil, Speak no evil, See no Evilで日本語で言うところの、みざる・きかざる・いわざるの意味になる)
そして記念すべき初代フラッグシップであるJH13を発表します。これは2009年のHeadFiのCanJamでのことです。JH13は片側6基のドライバーを持つ画期的なIEMでした。3Wayですが同じ帯域に二個のドライバーをタンデム配置することで、一つのドライバーの負荷を減らします。これはライブ経験の多いジェリーのPAを応用した発想によるものです。
このJH13をきっかけに、IEM業界はさらなるマルチドライバー化に動かされていくことになります。
JH Audio JH16
次にJH Audioが発表したのはJH16です。これはライブパフォーマンスを行うドラマーがステージ上で消えやすい低域を補完するために開発されました。そのため低域ドライバーを4基タンデム(クワッド)配置して片側8基としています。ひとつの帯域にドライバーを4基配置するという発想はこのままロクサーヌに引き継がれます。また消えやすい低域を補完するために低域を増強するという考え方もロクサーヌの可変ベース機構につながります。
JH Audio JH3Aと専用JH16
この同じ帯域でのドライバーの複数配置の他にもうひとつジェリーが注力した特徴があります。それは位相の適正化です。バランスド・アーマチュアドライバーは音の細かな再現性には秀でていますが、一つのドライバーの帯域が狭いため、広帯域化するには低音や高音を別々に担当させ、マルチドライバーとすることが一般的です。
しかしながらマルチドライバーになれば、ドライバーの発する音はバラバラに耳に届くことになり時間的な(位相の)ズレが生じて音がぼけたり立体感が喪失したりする原因となります。
それを根本的に解決しようとしたのが帯域ごとにアクティブクロスオーバーを持つJH3Aです。これはもともとジェリーがUEに居た時代の特許でしたが、ジェリーがUEを離れたことで、彼がその特許を使えなくなるという皮肉なことになり、完全には実現できませんでした。
そこでパッシブに位相の問題を解決しようとしたのがFreqPhaseです。さきに書いたように低音域、中音域、高音域とドライバーが分かれている時はそれぞれから出た音に時間特性の違いが起きます。低域から出た音は遅れ、高音域から出た音は早く着きます。それをイヤピースのところで同じにするために長さを調整して音導菅を作り、同時に到達するようにしたものです。
普通は音が中心から5度ほどずれてしまいますが、これによりヴォーカルもドラムのキックもぴったりと中心に会うようになります。また位相に問題があると音が滲んでしまいますが、その問題も解決できます。
そして、これらのFreqPhase、4基のドライバー、ベースの補強という考え方を総括したものとして、最新のフラッグシップ、ロクサーヌが生まれたというわけです。
ロクサーヌはこのようにジェリーとIEMの長い道のりの上に設計されたものです。
JH Audio Roxanne
* ロクサーヌの特徴
ロクサーヌはTHE SIRENS SERIESという新しい製品系列のフラッグシップとして位置づけられたカスタムイヤフォンです。またユニバーサル版も用意されています。AK240用のAKR03モデルにはAK240用のバランスケーブルも付属します。
THE SIRENS SERIESという名前の由来はギリシャ神話に登場するサイレーン(セイレーン)から来ています。これはいままで数字で名前を付けてきて、それに飽きてもっと楽しくセクシーな名前を付けたかったことによるそうです。サイレーンとは声の魅力で船乗りたちを岩に引き寄せてしまう一種の魔女です。もともとはギリシャ神話ですけど発音が問題なので英語名にしたそうです。
そのサイレーン姉妹の長女がロクサーヌというわけです。これは女性の名まえとしてはイヤフォンによく合うからということです。技術的なものよりセクシーな名前を付けるというのが面白いだろう、とジェリーは語っていました。
下記はJH Audioのロクサーヌ商品紹介ページです。
http://www.jhaudio.com/content/sirens-roxanne
ジェリーはロクサーヌは正しい位相で広帯域を誇るフラッグシップにふさわしいIEMと言っていました。この一言がロクサーヌの特徴を端的に物語っています。
ロクサーヌの特徴とは以下のものです。
1. 片側で計12ドライバーを搭載した「soundrIVe Technology」を採用
帯域特性、周波数特性という点では片側で計12ドライバーという点がポイントです。
ロクサーヌは低域、中音域、高音域に分かれた3Wayですが、各帯域ごとに4基のBAドライバーが採用されています。これは1ユニットで2個ドライバーのデュアルユニットを2ユニット組合わせているようです。それが帯域ごとに3組あるので計12基というわけですね。
ジェリーはロクサーヌはイコライゼーション無しに23KHzまで周波数特性が延びた初めてのイヤフォンだと語っています。それはこの帯域ごとの4基のドライバーの機構によって達成されたといいます。
JH16では4基の低域ドライバーをすでに採用していたのですが、ロクサーヌではそれを中音域と高音域にも拡張したわけです。これには内部配線にも工夫が必要でした。
2. 各帯域の位相を極限まで正確に制御した「FreqPhase」を採用
位相特性はジェリーのもうひとつのテーマです。位相は各ドライバー間の音の遅れ・不揃いなどによるもので、位相特性を改善することで音のイメージングやフォーカス(音のピント)を改善します。
ロクサーヌ開発においては、先に述べたFreqPhaseとその役割においても大きな発見があったと言います。この技術をいち早く応用したロクサーヌの位相はかなり正確ということですね。
3. 新開発のケーブルとロック式プラグを採用
独自開発した4 pinコネクターは、アーティストがライブパフォーマンス中でも耐えられるように設計されたものです。
いままでの2ピンプラグには抜けやすくイヤピースをなくしやすいという欠点がありました。スタジオでミュージシャンがイヤピースをなくすというのは一大事であり、それを避けるためには、もっとしっかりとしたプラグを持つケーブルが必要だったのです。ジェリーが作るものはこのようにまずプロユースを前提とした頑強なものですが、それらは同時にオーディオファイルでももちろんうまく使えるというわけです。
この4ピン・コネクターは従来のものより頑丈である上に、低中高の回路の信号線がそれぞれ独自に本体に接続されているので、コントロールできる範囲がより広くなっているのも特徴です。このため後述の可変ベース機構も可能となりました。
このケーブル用パーツは技術的にオープンにする予定で、WhiplashやMoon Audioなど他のメーカーにもパーツを提供して作れるようにするつもりだということです。
4. 可変ベース調整機構を採用
ロクサーヌはまた、低域用ドライバーをフラットから+15dBまで調節できる点でも初めてのイヤフォンです。だからどんな低域でもリスナーは自由に調整をすることができるわけです。
5. カーボン製のシェルをオプションとして採用
最近ではイヤフォンにチタンなどいろいろな素材も使われてきていますが、反面みな似たり寄ったりになってきています。
ジェリーはカーボンは金属材よりセクシーだし、ほかのメーカーとの差別化になると言っています。これは音質面よりは単にデザインの問題ですが、軽くて強固という利点もあります。
また航空機にも使用される頑丈なアルミニウムにカーボンを使用した高級感あるオリジナルキャリングケースも用意されています。
* 耳型取得 (東京ヒアリングケアセンター大井町店)
まずカスタムIEMの注文は耳型(インプレッション)の取得から始まります。今回は東京ヒアリングケアセンターの大井町店にお願いしました。
下記はホームページです。
http://tokyohearing.jp
ここは大井町のNikon光学通り(大井町光学通り)を少し行ったところにあります。大井町店は行きづらいですが、こちらの方が予約は取りやすいという利点もあります。
東京ヒアリングケアセンターは青山店の方が有名ですが、もともとは大井町店がはじまりで、ここのおやじさんの息子さんが青山に店舗を拡張したということです。ここも超有名アーティストのインプレッション採取などがあり、青山という土地柄が大事でもあるのでそちらにも店舗を増やしたということです。この大井町店のおやじさんは某オーディオメーカーSのOBで、かなりオーディオ系にも詳しいのでオーディオ話で盛り上がってしまいました。またこの方はこの道19年というベテランでもあります。ただそれでも人の耳は千差万別なので日々勉強と話していました。
プロのイヤモニ経験も豊富なのでプロフェッショナルという点で耳型採取に関しては安心だと思います。実際に技術的にも丁寧に対応してくれました。耳の毛の立ち具合で耳型の遮音性も異なるようで、そうした点や個人の耳の左右差などかなり細かいところまで注意を払って取ってくれました。(ただしここは採取した耳型についてはウエブへの写真アップは禁止という注意事項があります)
またどこでも同じですが耳型採取に関しては下記2点を厳守願います。
1. 自分で耳型を取らない
2. 行く前に耳掃除をする
注文は国内代理店ミックスウェーブさんのホームページをご覧ください。
http://www.mixwave.jp/audio/jhaudio/roxanne.html
またこちらはフジヤさんの販売ページです。
http://fujiya-avic.jp/products/detail57784.html
いまはそれなりに時間がかかると思いますので納期は確認した方がよいかもしれません。
* 到着とファーストインプレ
だいたい発注から4カ月くらいで手元に届きました。注文したのはフルカーボンシェルにロクサーヌのロゴ入りのオプション設定です。フルカーボンシェルはフェイスプレートだけではなく、シェル全体をカーボンで成型するものです。
フルカーボンシェルモデルは航空機グレードアルミとカーボンの立派なケースに入ってきます。
しかしロクサーヌのカーボンシェルモデルの存在感は感動的です。思わず興奮気味にTwitterで何件か写真を撮って連続tweetしてしまいました。まるでモデル撮影みたいにずっと写真を撮っていたくなった、とその時に書きこんでますが、まさにジェリーの言うとおり、ロクサーヌはセクシーです。私もいくつもカスタムIEMを注文してきましたが、出来をみて感動したというのははじめてですね。例えるとAK100とAK240のようなもので、質感と高級感で他のカスタムIEMと比べてもまるで別格に思えます。
ちょっと高いけれどもロクサーヌをオーダーするときはカーボンオプションをオススメします。所有感・もつ喜び満足感がちがうと思います。
良くライカや時計なんかでも「持つ喜び」って表現がありますが、カーボンロクサーヌとAK240で思うのはポータブルオーディオで言われることのなかった持つ喜びという言葉が当てはまることです。従来のハイエンドオーディオにはそれがあったと思います。
ポータブルオーディオが文化という面でもそうした先達にならんだ文化の成熟に来たかという感を新たにしますね。ライカも外見だけでなく100年経ってもいまだに画質でもカメラ世界のトップクラスです。そうした外見と中身が高い次元で調和したレベルの高さがポータブルオーディオでも出てきたと思います。
ちなみにカスタムIEMとしてのフィットもピッタリです。これはインプレッションの東京ヒアリングケアセンターとJH Audioの両方がよいということですね。
改良されたケーブルはかなり太く、これまた存在感があります。いまのところまだ交換ケーブルは他のメーカーから出ていませんが、期待したいところです。またロクサーヌは標準ケーブルでも音質は悪くないと思うので、この標準ケーブルのAK240バランス版が早くほしいところです。
またロクサーヌで画期的なのはL字タイプのプラグなのにステムが長いんでHugoでもミニプラグにちゃんとはまるところです。
* 音質検証と考察
試聴では主にAK240を使いました。断りがない限りはAK240での感想です。
まず思ったのは試聴で聴いた印象からだいぶ改良されたということです。特に高音域のレスポンスです。ロクサーヌは昨年あたりは試聴ユニットで何回か聞きました。試聴機ではやや高域が出ないという感もありましたが、この製品版のロクサーヌはそうしたことはなく、鮮明でのびやかな高音域が感じられます。これは23kHzまで伸びることをうたった主張通りに思えますね。このことはワイドレンジ感・広帯域感につながります。
AK240とRoxanne
全体的な音質のレベルはかなり高く、フラッグシップとしての余裕が感じられます。直前まで聴いていたそれまでのフラッグシップモデルであるJH13やJH16の音質をエージングゼロの時点でも軽く凌駕しています。JH13やJH16はリケーブルしていて、ロクサーヌは標準ケーブルなのに、です。
JH13(標準ケーブル・non-FP)とロクサーヌを聴き比べてみると、JH13にしたときに音空間が小さく感じられます。またロクサーヌでは楽器がより明瞭に分離されていて位置関係が団子にならずに聞き取れます。ロクサーヌは音が濃いというより音が豊かという感覚でしょうか。それと細かいところでロクサーヌのほうがきつさが少なくなめらかな点も感じられますが、これはケーブルの違いもあるかもしれません。また全体に音楽をより正確に再現しているように感じられます。
周波数特性的にはJH13に近いと思います。フラットに近く低域がやや強調されているという感じでしょうか。これは可変ベースを調整しないデフォルトでの印象です。一般的にはデフォルト位置でベースレスポンスも十分に得られていると思います。以下音の印象は可変ベースのデフォルト位置によるものです。
ロクサーヌで聴いてぱっと一番初めに感じることは音空間の広さとスケール感の豊かさです。これはエージングされてなくてもそう思いますが、この音空間の再現力が優れているのはFreqPhaseによるものではないかと思います。私のJH13は最も初期のものなのでFreqPhaseではありませんから一層そう思のでしょう。ロクサーヌにはJH13のこじんまり感がなく、ヴォーカルの口の大きさとか、楽器配置の立体感などもフォーカスがあったピントがはっきりしてる感があります。おそらくこれで楽器の音像の解像感もエッジが立っていてより高く感じられるのだと思います。
これは上で書いたワイドレンジ感と合わせてオーケストラものを聴くときにスケール感豊かに再生できます。またジャズトリオでは切れのあるライブが再現できます。
音色の良さ、正しさ、描き分ける色彩感もロクサーヌの良さです。楽器の音の明瞭感が高く、高音域のレスポンスがよいこととあいまってとてもクリアでみずみずしい感じがします。全体的な音の濃さと濃密感はJH13に似ていて、1964Earsなどに感じられる軽いものではありません。楽器の音色はリアルで脚色なく音色の美しさを堪能できます。このリアルな感覚は解像力の高さと関係していて、情報量がとても高いために楽器の再現がリアルであると感じるのだと思います。
音の豊かさはアコースティックで複雑な要素をもった楽曲でよくわかります。単に濃いというより色彩感の描き分けに優れていて、音色がリアルです。赤ん坊の鳴き声が効果音で入った曲では思わずその方向に振り向いてしまったほどです。方向までわかったというのはFreqPhaseの威力でしょう。
様々な楽器が紹介されるマイクオールドフィールドのチューブラーベルズ後半パートの楽器音も単にきれいとかではなく、いままで気がつかなかったくすんで響きれない金属質の音色までわかります。ヴォーカルの声質も上質です。
このようにスケール感よく、JH Audioらしい音の密度感も濃いところもさらに磨かれ、AK240の音がさらに良くなるのが感じられます。AK240と合わせると掌に50万円近くの機器をにぎっていることになりますが、それに見合う音の豊かさがあります。
また、個人的に思うロクサーヌのポイントは鳴りの良さだと思います。
音が濃いと書きましたが、JH13的なやや暗さはなく、軽快感があります。発音体が軽やかによく動くという感じです。かといって音自体は1964的な軽さではなく、濃密だが軽快という相反する要素の両立も感じられます。たとえば1964 V6SとJH13を比べた時のようなJHの重厚さは感じられるが、暗いという印象ではなく明るくはつらつとした方にやや振られている感じです。
鳴らしやすいゆえにソース機器の性能を120%出しきれて空気に伝えているという感じが味わえます。能率が高いというのもありますが、それより「鳴りが良い」と言うオーディオ用語をあてはめる方があってると思います。
これは理由の一つには4x4x4のタンデム(クワッド)ドライバー配置が利いていると思います。同じ帯域に複数のドライバーを配する手法はジェリーがUE11で低域デュアルを採用した時から試行していたようですが、二個のドライバーを採用することでヘッドルームに余裕ができて歪みを減らすことが出来るとジェリーから聞きました。
これは歪みが少なくリアルな楽器の音色再現ができるということもあるし、負担が減ることによる余裕が鳴らしやすさにもつながると思います。それを1帯域ドライバー4つにまで拡張したのがJH16の低域だし、それを中音域と高音域にまで適用したのがロクサーヌだとジェリーは言っていました。こうした並列(タンデム)のドライバー駆動はジェリーが長年携わってきたライブステージでのPA運用からもノウハウを得ているのでしょう。これによりロクサーヌはJH13より軽く明るく動くようになっているのだと思います。
そのため、ロクサーヌはアンプ二段重ねのような本格的なポータブルシステムの音を受け止められケーブルの微妙な違いまでよく再現するだけではなく、iPhone直やハイレゾDAPのようなシンプルなシステムでもその能力を発揮します。
この点で特筆すべきはやはりさきにも書きましたがAK240との相性の良さでしょう。AK240とロクサーヌの両方の高い性能がより高めあい、磨きあいます。音的にもきつさは少なく、上質であることをうかがわせます。ここはバランス再生をそのうちぜひ試したいところです。
AK100MKIIとも相性よく再生ができます、やはり音が美しくバランスが良いのでかなり上質な感覚があります。
これは須山さん曰くですが10-12kHzをいかに伸ばすかがイヤモニ設計の一つのポイントだそうです。須山さんは得意のチタン加工技術によるチューブでそれを稼いでいくようです。
作り手によってイヤモニもさまざまな考え方があると思いますが、ドライバーを二基にすれば3dBあがり、より高域特性を稼ぐことができます。また位相を揃えることで原音に揃えるのがジェリーの考え方なんでしょう。複数ドライバーで一つのドライバーの負担を減らすともども、PAの経験がベースになっているようです。23kHzをうたうロクサーヌはそこから始まっていると思います。
* ロクサーヌの新機軸
ロクサーヌではケーブルが刷新されたとともに可変ベース機構と新型プラグが導入されました。可変ベース機構は左右独立の小さなダイヤルを付属のマイナスドライバーで調整するものです。デフォルトでは中央よりややベース強めになっているように思います。左方向に回すと低域が減少しますが同時によりすっきりとした音再現になるように思います。反対に回すと低域が増すとともによりアグレッシブになるように思います。EstronケーブルのVocalとBaXの違いにも似ています。同じような考えでケーブルのインピーダンスを変えるんでしょうか。単に低域を増減するというよりも、標準のロクサーヌをもっとモニターライクにもできますし、もっとロックポップ向けにもできるという感じです。
プラグは今回の目玉の一つです。いままでの2ピンと呼ばれるカスタムのプラグは脆弱なものでしたが、ロクサーヌではロック機構がついてより確実に止められるようになりました。これもジェリー曰く「私の作るものはすべてプロ前提で作られる」ということです。
ロクサーヌの発売された初期のころにここの部分が弱いといった批判が出ていたこともあるのですが、いまのものは強化されています。それにしても力を変な風にかけすぎてはいけないということで、ジェリーが下記のYoutubeに正しいプラグの着脱方法についての説明をしています。
https://www.youtube.com/watch?v=ZBCRR7oRM6s
それと付属品としてカスタム用のコンプライフォームがついてきました。JH Audio向けのOEM品となっています。カスタムの隙間にいれることでさらに密着性を高めるというものです。いまひとつ低域がでないというときには使ってみるのもよいかと思います。
* まとめ
マルチドライバーIEMのドライバー数は片側2個か3個から、最近は10個、12個と大幅に増えてきています。これはあたかもデジカメの画素数競争のようなインフレーションにも見えるかもしれません。しかし、それにはさまざまな理由と方向性があると思います。
たとえばNobleのK10のように10ドライバーがあるが2個ずつデュアルは同じ帯域でペアごとには違う帯域を受け持つというものもありますし、ロクサーヌのようにデュアルをさらにペアにして帯域は増やさずに並列配置するドライバー数を増やすという考え方もあります。それはひとえに設計者の思想によるものです。
ロクサーヌの良さはさまざまな言葉で表現できます。空間の広さ・密度感・解像力・情報量の豊かさ・音色再現性の高さ、などです。しかしながらそのポイントは鳴りの良さと正確な位相特性にあり、それが優れた空間表現力や音の再現力の高さを実現しているのだと思います。
これらは一帯域に複数のドライバーを配し、位相を正確にするFreqPhaseを採用するということで、JH13のタンデムドライバー、そして同じ帯域に多くのドライバーを並列で使うというPAの発想とそれを拡張したJH16の4基拡張(可変ベースにもつながる)、FreqPhaseモデルの位相適正化、そしてJH3の試行の線の延長にあるものといえます。いわばいままでのジェリーのイヤモニ制作とライブステージエンジニアとしての膨大な経験とノウハウの集大成と言えるでしょう。
つまりロクサーヌはイヤモニの歴史を作ってきたジェリーハービーの長い経験に裏打ちされたもので、他ではまねできないような高い完成度を誇っていると言えます。
JH Audioはジェリーがやりたいことをやるための会社です。そのためにさきに書いたように大企業化したUEを辞めてまで自分の会社を持ったわけです。将来の計画について聞いた時も、適度にぼやかしながら、うちは小回りの効く会社だから柔軟にいろいろ開発できるよ、とも言っていました。
JH Audioについてはカスタマーサポート・納期で不満の声も聞かれますが、JH Audioのシェアは全米で活動するバンドのかなり多くであると聞いています。そのユーザー数の多さと、小回りの効く小さな会社で居続けるという両立をジェリーは試行錯誤しているのでしょう。
そうまでして頑張る理由についてジェリーはこう言います。
「つまるところ、私たち誰もが音楽を愛しており、自分が設計したイヤフォンを通して音楽を聞いたリスナーが良い気分になったり、感動を得られたりすれば、私の使命は達せられたことになる。」
イヤモニの神様であるジェリーハービーと、その集大成ともいえるロクサーヌ、それはユーザーからの支援が結実したものとも言えます。そしてジェリーはインタビューの最後にこう言ってくれました。
「ミュージシャンでもない私自身がファンを持つというのは光栄なことだ。私も彼らを失望させないような良い製品を作っていきたいね。そしてユーザーからの厚い支持のお陰で、何よりも自分がやりたいことをさせてもらっている。本当にありがとう!」
2012年08月10日
JHAudio JH3AとALO Rx MK3-Bの試聴レビュー
MixwaveさんからJHAudio JH3AとALO Rx MK3-Bを貸し出してもらいました。なかなかうちのサイト向けの機材です。
* JHAudio JH3A
JH3Aはカスタムイヤフォンで知られるJHAudioが開発したポータブルアンプです。
はじめにうちのサイトで紹介したのはこちらの記事です。このときはイヤフォン内部からクロスオーバーを取り去って、帯域ごとに別個のアンプを使用するアクティブクロスオーバーとして紹介しました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/152067854.html
この時点から特許問題とか開発会社変更とかいろいろと紆余曲折ありました。そのためはじめにここで紹介したときとはいろいろと異なる点があるようです。そこでHead-Fiを少し探って調べてみました。
まず当時はJH13でもJH16でも任意に改造できるように書きましたが、現在の製品は「JH3A with 16PRO」というJH16改造品とJH3Aのセットされた商品となっているようです。これは代理店ミックスウェーブの都合ではなく、本家JH Audioのサイトでもそのようです。JH13が使えないのは本体内のゲインがJH13には高すぎるという問題のようです。おそらく単なるゲインスイッチではなく、JH3AにおけるゲインはDSPにも絡むので簡単には対応できないものと思います。このため当分はJH16のみになると思います。
そして目玉のアクティブクロスオーバー(Active Cross-over)の仕組みですが、ここは変更がなされています。
もともとマルチウエイIEMに対して帯域別のアクティブクロスオーバーを適用するという考え方は、Jerry HarveyがUEに在籍していた時にJerry自身が発明者として特許申請をしたものです。こちらにその特許のリンクがあります。発明者がJerryで権利の譲受者(Assignee)がLogitecという点に注意ください。
http://www.google.com/patents/US7876920?dq=jerry+harvey&ei=WHuTTqr8ONS08QPAm6DvBg
これが2006年のことで、そのあとJerryがUEを出てしまったためにその特許はUEをいま所持しているLogitecに所有権が移ったというわけです。
JerryはみずからのJH Audioに移ってからこのアイディアを実現しようとしてJH3Aを開発したわけですが、2011年の1月にこの特許が取得されてしまったために、発明者のJerry自身がこれを使えなくなってしまいました。
そこでこのActive Cross-overはInverse Active Cross-over(あるいはRevese Active Cross-over)として再設計されました。
このInverse Active Cross overではクロスオーバーはイヤフォンに戻しています。ちなみにもともとJHAのBAドライバーユニットのMidとLowについてはユニットにクロスオーバー(帯域フィルター)が内蔵されているそうです(これはJHAの独占供給のため、ユニットがいくぶん高価になっているとのこと)。Highドライバーユニットはパッシブクロスオーバー回路があるはずです。
一方で帯域ごとの3つのアンプを持つというデザインは変わっていません。これはイコライザと位相調整のためです。もともとこのシステムの眼目は単にクロスオーバーの音質低下を減らすというだけではなく、マルチウエイ・ドライバーが持つ複数の発音体から別々に耳に届いてしまうという位相と時間の問題を解決するという意味がありました。そのため32bit DSPと帯域別アンプを使用して位相問題を解決しているということです。DSPは依然本体側のクロスオーバーの役割も果たしていて、低域 (20-200Hz), 中域 (200-4kHz) 高域 (4-22kHz)と帯域を分けてから増幅しているようです。この時点でDSPで時間もずらしているんでしょうね。
つまりInverse Active Crossoverではアクティブクロスオーバー(DSP)とパッシブクロスオーバー(IEM内)の両方を使うということになります。クロスオーバーを二度通ることになりますが、その代わりアダプターを使うことで普通のアンプでもイヤフォンを使うことができるようになりました。
JH16を改造した片側4つの線が出ているのはHigh・Mid・LowとGroundのようです。本体側にはLEMOコネクタで接続されます。
上の写真はアダプター(LEMO->mini)です。実際に試してみましたが普通に他のアンプで聴くことができました。アダプターについてはオプション品として「JH3A with 16PRO」を注文の際 に購入の選択ができる形になっているということです。価格は1万円前後だそうです。
- 音質
はじめにアナログ接続でいつものiModで聴きました。結線はDirigent red labelです。試聴機はカスタムJH16にフォームチップを付けたもので聴きました。
まず感じる特徴としては音が澄んでいてピュアな点です。正確でクリーンというのか雑味がないですね。この辺がInverse Active Cross-overの効果でしょうか。透明感もとても高く感じられます。
また音の広がりも良いんですが、これはかつてないほどというわけではないと思います。その代わりに音の分離感・定位の音像再現性がとても優れていて立体的な表現が際立っています。これは整った位相の調整による効果なのかもしれません。
次に感じるのは楽器の音の切れの良さです。制動力がかなり高く、パーカッションの打撃音の切れがすさまじいほどです。これはスピーカーで言うバイアンプ的な利点があるからかもしれません。
JH16自体は私もよく使っている聴きなれたはずの音ですが、JH16ってもっと暴れ馬というか特徴的なイヤフォンなんですが、JH16がまるでJH13のようにとても素直で整った感じに聞こえます。暴れ馬がよく調教されたという印象で、そのポイントは高い制動力のように思えます。たしかにいままでも駆動力の高いポータブルアンプだと整って聴こえていましたが、ここまでJH16が整った音は始めて聴きましたね。ただ試聴用チップの影響で低域が減っている点もありますので念のため。
アンプの基本的な音傾向としてはフラットニュートラル・無着色でRSA的な柔らかさではありません。ここはさすがにスタジオの人が作ったアンプらしいところです。
電源スイッチの隣にはB/Mという切り替えスイッチがありますが、これをB側にするとBassコントロールで低域のレスポンスを0dbから+14dbの範囲で変えられます。フラットにするときはMにします。MはMicのことで、ステージ上の音を拾うマイク機能を意味していたようですが、現在はその機能はありません。この辺もJH3Aをもともとはプロミュージシャン用に考えていたのが分かります。
Bassコントロールをすると低域の量感が増すというよりもタイトだったのが緩くなる(ダンピングが下がる?)という感じです。 音があまりシャープすぎるというときはこれで調整しても良いかもしれません。
JH-3Aは96/24対応のDACを内蔵していてSPDIFデジタル入力が可能です。そこで次にソース機器をCypher Labs AlgoRhythm Solo(HeadFiではCLASとよく呼ばれます)を使用してデジタル接続してみました。iPod ->デジタル(USB) -> CLAS ->デジタル(SPDIF) -> JH3Aです。接続はデジタルケーブル(RCA-mini 4極)を使います。このケーブルはミックスウェーブさんが用意してくれたものですが、取り扱いはまだ未定ということです。
端子はアナログと共通で、入力切り替えスイッチで切り替えを行います。JH-3AのサイズはCLASとぴったり重なります。
さすがCLASを付けると一段上の上質感が得られます。iPodベースにあった粗さが消え、音は滑らかになり、音は厚みが増して情報量も増え、上流が変わったレベルのちがいをそのまま音質の向上に結び付くという感じですね。ヴォーカルもきれいで、楽器の音再現も的確です。
CLASはシャープなだけではなく、なかなかにオーディオ的な厚みのある音ですが、JH3A自体は先に書いたようにニュートラル傾向のアンプなので、CLASが加わることで適度にオーディオ的な暖かさが加わる感じです。そのためシステムとしてのバランスも良いですね。
CLAS +JH3Aの組み合わせではかなりレベルが高く、またお互いの音傾向を補って適度なシナジーの良さもあると言えます。ものすごく良く完成されたポータブルオーディオ機器という感じです。
JH3Aでは他にない世界が聴けるのはあると思います。JH3Aを聴くとJerryの目指していた音の理想というのが分かるようですね。こうした正確な音というのがUEを辞して自分のブランドを持った彼が目指しているものではないかと思います。
JH3Aの価格は少し高いんですがJH16だけでも通常16万するので本体としては意外とお得かもしれません。
こちらはフジヤさんの購入リンクです。現在はJHaudio製品 円高還元キャンペーンとして205,000 円(税込)と設定されています。[2012年7月1日(日)〜8月31日(金)]
http://www.fujiya-avic.jp/products/detail12601.html
私も自分のJH16を改造できるなら、アダプターで普通のアンプにも使えますし、JH3A試してみたいと思いますね。
* ALO Rx MK3-BとBeatオーディオ
次にALO Rx MK3-BとBeatオーディオのバランスケーブルについて試聴してみました。
ALO Rx MK3-Bはポータブルのバランス駆動アンプです。バランス端子はRSAタイプを採用しています。SR71Bなんかと同じですね。
こちらもサイズはCLASとぴったり重なりますが、こちらはもともと合わせて設計しています。CLASもKenさん系の製品です。
BeatオーディオのケーブルはSilver Sonic MKIVというタイプで、これはミックスウェーブさんのキャンペーン期間中(2012年6月15日 〜 2012年8月31日)にALO Audio「Rx MK3-B」をミックス ウェーブ経由で購入した人全員に、「Silver Sonic MKIV」を 1本プレゼントするというキャンペーンを行っているということです。このMKIVというのはキャンペーン用の特別モデルということです。Silver Sonic MKIVの対応プラグは[ SE535, TripleFi 10, Westone(リケーブル対応モデル)/JH Audio, SENNHEISER IE8 80, Unique Melody Custom ]のうちからひとつ選べるということです。今回使ったものはJH Audio用です。自前のJH13カスタムを使用しました。
こちらもまずアンプ自体の音を確かめるためにiMod+dirigent red labelで聴きました。イヤフォンは自前のJH13カスタムを使用して、まず自前のWhiplashのTWag OMケーブルで聴いてみました。
RX3自体の音は基本的に透明感・解像感が高い高性能なものですが、個性としてはパワフルで厚みがあり躍動感のある音という面を持ち、JH3Aとは対照的です。ちょっとHeadRoomの音っぽいところもあると私には感じられます。たしかKenさん系のアンプを設計しているのはRed WineのVinnieさんだったと思いました。
TWagシングルエンドだと音の広がりは標準的だけれども立体感は高いものが感じられます。ただちょっと背景に暗ノイズがあります。Bassノブを変えると低域がより図太くなるという感じですね。
ここでJH13を私のSR71Bで使用している自前のWhiplashのバランスケーブル(SCScag 単線) に変えると音の広がりが顕著となり、シングルエンドでは考えられなかった立体感が聞き取れます。この空間表現はかなり大きな質的変化ですね。また楽器の切れや制動力も高くなり、フラメンコのタップなんかが切れ味鋭くなります。
次にBeatのバランスケーブルに換えると音色の自然さが向上するように感じられます。帯域バランスとか音色、楽器の質感など全体により聴きやすくなり、かつ切れの良さを持っているという感じに思えます。銀コート銅線ということですが、なかなか良い感触のケーブルです。反面で透明感はWhiplashの方があるかもしれませんが、音は相対的にややきつめなので一長一短ではあるかもしれません。
バランスコネクタのケーブルを買うのも大変だと思いますので、ポータブルバランス駆動に興味ある人はキャンペーン中に入手するのが良いでしょうね。なんにせよJH3Aともども、こんなマニアックなものが国内で簡単に買えて保証もついてしまうというのはたいした進歩です。
こちらはフジヤさんの購入リンクです。キャンペーンについても適用されています。
http://www.fujiya-avic.jp/products/detail12821.html
そのうちFitEar to go 334もバランスケーブルにして試してみたいものです。たださえ広い空間表現がどうなるのか、、ちょっと楽しみです。
* JHAudio JH3A
JH3Aはカスタムイヤフォンで知られるJHAudioが開発したポータブルアンプです。
はじめにうちのサイトで紹介したのはこちらの記事です。このときはイヤフォン内部からクロスオーバーを取り去って、帯域ごとに別個のアンプを使用するアクティブクロスオーバーとして紹介しました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/152067854.html
この時点から特許問題とか開発会社変更とかいろいろと紆余曲折ありました。そのためはじめにここで紹介したときとはいろいろと異なる点があるようです。そこでHead-Fiを少し探って調べてみました。
まず当時はJH13でもJH16でも任意に改造できるように書きましたが、現在の製品は「JH3A with 16PRO」というJH16改造品とJH3Aのセットされた商品となっているようです。これは代理店ミックスウェーブの都合ではなく、本家JH Audioのサイトでもそのようです。JH13が使えないのは本体内のゲインがJH13には高すぎるという問題のようです。おそらく単なるゲインスイッチではなく、JH3AにおけるゲインはDSPにも絡むので簡単には対応できないものと思います。このため当分はJH16のみになると思います。
そして目玉のアクティブクロスオーバー(Active Cross-over)の仕組みですが、ここは変更がなされています。
もともとマルチウエイIEMに対して帯域別のアクティブクロスオーバーを適用するという考え方は、Jerry HarveyがUEに在籍していた時にJerry自身が発明者として特許申請をしたものです。こちらにその特許のリンクがあります。発明者がJerryで権利の譲受者(Assignee)がLogitecという点に注意ください。
http://www.google.com/patents/US7876920?dq=jerry+harvey&ei=WHuTTqr8ONS08QPAm6DvBg
これが2006年のことで、そのあとJerryがUEを出てしまったためにその特許はUEをいま所持しているLogitecに所有権が移ったというわけです。
JerryはみずからのJH Audioに移ってからこのアイディアを実現しようとしてJH3Aを開発したわけですが、2011年の1月にこの特許が取得されてしまったために、発明者のJerry自身がこれを使えなくなってしまいました。
そこでこのActive Cross-overはInverse Active Cross-over(あるいはRevese Active Cross-over)として再設計されました。
このInverse Active Cross overではクロスオーバーはイヤフォンに戻しています。ちなみにもともとJHAのBAドライバーユニットのMidとLowについてはユニットにクロスオーバー(帯域フィルター)が内蔵されているそうです(これはJHAの独占供給のため、ユニットがいくぶん高価になっているとのこと)。Highドライバーユニットはパッシブクロスオーバー回路があるはずです。
一方で帯域ごとの3つのアンプを持つというデザインは変わっていません。これはイコライザと位相調整のためです。もともとこのシステムの眼目は単にクロスオーバーの音質低下を減らすというだけではなく、マルチウエイ・ドライバーが持つ複数の発音体から別々に耳に届いてしまうという位相と時間の問題を解決するという意味がありました。そのため32bit DSPと帯域別アンプを使用して位相問題を解決しているということです。DSPは依然本体側のクロスオーバーの役割も果たしていて、低域 (20-200Hz), 中域 (200-4kHz) 高域 (4-22kHz)と帯域を分けてから増幅しているようです。この時点でDSPで時間もずらしているんでしょうね。
つまりInverse Active Crossoverではアクティブクロスオーバー(DSP)とパッシブクロスオーバー(IEM内)の両方を使うということになります。クロスオーバーを二度通ることになりますが、その代わりアダプターを使うことで普通のアンプでもイヤフォンを使うことができるようになりました。
JH16を改造した片側4つの線が出ているのはHigh・Mid・LowとGroundのようです。本体側にはLEMOコネクタで接続されます。
上の写真はアダプター(LEMO->mini)です。実際に試してみましたが普通に他のアンプで聴くことができました。アダプターについてはオプション品として「JH3A with 16PRO」を注文の際 に購入の選択ができる形になっているということです。価格は1万円前後だそうです。
- 音質
はじめにアナログ接続でいつものiModで聴きました。結線はDirigent red labelです。試聴機はカスタムJH16にフォームチップを付けたもので聴きました。
まず感じる特徴としては音が澄んでいてピュアな点です。正確でクリーンというのか雑味がないですね。この辺がInverse Active Cross-overの効果でしょうか。透明感もとても高く感じられます。
また音の広がりも良いんですが、これはかつてないほどというわけではないと思います。その代わりに音の分離感・定位の音像再現性がとても優れていて立体的な表現が際立っています。これは整った位相の調整による効果なのかもしれません。
次に感じるのは楽器の音の切れの良さです。制動力がかなり高く、パーカッションの打撃音の切れがすさまじいほどです。これはスピーカーで言うバイアンプ的な利点があるからかもしれません。
JH16自体は私もよく使っている聴きなれたはずの音ですが、JH16ってもっと暴れ馬というか特徴的なイヤフォンなんですが、JH16がまるでJH13のようにとても素直で整った感じに聞こえます。暴れ馬がよく調教されたという印象で、そのポイントは高い制動力のように思えます。たしかにいままでも駆動力の高いポータブルアンプだと整って聴こえていましたが、ここまでJH16が整った音は始めて聴きましたね。ただ試聴用チップの影響で低域が減っている点もありますので念のため。
アンプの基本的な音傾向としてはフラットニュートラル・無着色でRSA的な柔らかさではありません。ここはさすがにスタジオの人が作ったアンプらしいところです。
電源スイッチの隣にはB/Mという切り替えスイッチがありますが、これをB側にするとBassコントロールで低域のレスポンスを0dbから+14dbの範囲で変えられます。フラットにするときはMにします。MはMicのことで、ステージ上の音を拾うマイク機能を意味していたようですが、現在はその機能はありません。この辺もJH3Aをもともとはプロミュージシャン用に考えていたのが分かります。
Bassコントロールをすると低域の量感が増すというよりもタイトだったのが緩くなる(ダンピングが下がる?)という感じです。 音があまりシャープすぎるというときはこれで調整しても良いかもしれません。
JH-3Aは96/24対応のDACを内蔵していてSPDIFデジタル入力が可能です。そこで次にソース機器をCypher Labs AlgoRhythm Solo(HeadFiではCLASとよく呼ばれます)を使用してデジタル接続してみました。iPod ->デジタル(USB) -> CLAS ->デジタル(SPDIF) -> JH3Aです。接続はデジタルケーブル(RCA-mini 4極)を使います。このケーブルはミックスウェーブさんが用意してくれたものですが、取り扱いはまだ未定ということです。
端子はアナログと共通で、入力切り替えスイッチで切り替えを行います。JH-3AのサイズはCLASとぴったり重なります。
さすがCLASを付けると一段上の上質感が得られます。iPodベースにあった粗さが消え、音は滑らかになり、音は厚みが増して情報量も増え、上流が変わったレベルのちがいをそのまま音質の向上に結び付くという感じですね。ヴォーカルもきれいで、楽器の音再現も的確です。
CLASはシャープなだけではなく、なかなかにオーディオ的な厚みのある音ですが、JH3A自体は先に書いたようにニュートラル傾向のアンプなので、CLASが加わることで適度にオーディオ的な暖かさが加わる感じです。そのためシステムとしてのバランスも良いですね。
CLAS +JH3Aの組み合わせではかなりレベルが高く、またお互いの音傾向を補って適度なシナジーの良さもあると言えます。ものすごく良く完成されたポータブルオーディオ機器という感じです。
JH3Aでは他にない世界が聴けるのはあると思います。JH3Aを聴くとJerryの目指していた音の理想というのが分かるようですね。こうした正確な音というのがUEを辞して自分のブランドを持った彼が目指しているものではないかと思います。
JH3Aの価格は少し高いんですがJH16だけでも通常16万するので本体としては意外とお得かもしれません。
こちらはフジヤさんの購入リンクです。現在はJHaudio製品 円高還元キャンペーンとして205,000 円(税込)と設定されています。[2012年7月1日(日)〜8月31日(金)]
http://www.fujiya-avic.jp/products/detail12601.html
私も自分のJH16を改造できるなら、アダプターで普通のアンプにも使えますし、JH3A試してみたいと思いますね。
* ALO Rx MK3-BとBeatオーディオ
次にALO Rx MK3-BとBeatオーディオのバランスケーブルについて試聴してみました。
ALO Rx MK3-Bはポータブルのバランス駆動アンプです。バランス端子はRSAタイプを採用しています。SR71Bなんかと同じですね。
こちらもサイズはCLASとぴったり重なりますが、こちらはもともと合わせて設計しています。CLASもKenさん系の製品です。
BeatオーディオのケーブルはSilver Sonic MKIVというタイプで、これはミックスウェーブさんのキャンペーン期間中(2012年6月15日 〜 2012年8月31日)にALO Audio「Rx MK3-B」をミックス ウェーブ経由で購入した人全員に、「Silver Sonic MKIV」を 1本プレゼントするというキャンペーンを行っているということです。このMKIVというのはキャンペーン用の特別モデルということです。Silver Sonic MKIVの対応プラグは[ SE535, TripleFi 10, Westone(リケーブル対応モデル)/JH Audio, SENNHEISER IE8 80, Unique Melody Custom ]のうちからひとつ選べるということです。今回使ったものはJH Audio用です。自前のJH13カスタムを使用しました。
こちらもまずアンプ自体の音を確かめるためにiMod+dirigent red labelで聴きました。イヤフォンは自前のJH13カスタムを使用して、まず自前のWhiplashのTWag OMケーブルで聴いてみました。
RX3自体の音は基本的に透明感・解像感が高い高性能なものですが、個性としてはパワフルで厚みがあり躍動感のある音という面を持ち、JH3Aとは対照的です。ちょっとHeadRoomの音っぽいところもあると私には感じられます。たしかKenさん系のアンプを設計しているのはRed WineのVinnieさんだったと思いました。
TWagシングルエンドだと音の広がりは標準的だけれども立体感は高いものが感じられます。ただちょっと背景に暗ノイズがあります。Bassノブを変えると低域がより図太くなるという感じですね。
ここでJH13を私のSR71Bで使用している自前のWhiplashのバランスケーブル(SCScag 単線) に変えると音の広がりが顕著となり、シングルエンドでは考えられなかった立体感が聞き取れます。この空間表現はかなり大きな質的変化ですね。また楽器の切れや制動力も高くなり、フラメンコのタップなんかが切れ味鋭くなります。
次にBeatのバランスケーブルに換えると音色の自然さが向上するように感じられます。帯域バランスとか音色、楽器の質感など全体により聴きやすくなり、かつ切れの良さを持っているという感じに思えます。銀コート銅線ということですが、なかなか良い感触のケーブルです。反面で透明感はWhiplashの方があるかもしれませんが、音は相対的にややきつめなので一長一短ではあるかもしれません。
バランスコネクタのケーブルを買うのも大変だと思いますので、ポータブルバランス駆動に興味ある人はキャンペーン中に入手するのが良いでしょうね。なんにせよJH3Aともども、こんなマニアックなものが国内で簡単に買えて保証もついてしまうというのはたいした進歩です。
こちらはフジヤさんの購入リンクです。キャンペーンについても適用されています。
http://www.fujiya-avic.jp/products/detail12821.html
そのうちFitEar to go 334もバランスケーブルにして試してみたいものです。たださえ広い空間表現がどうなるのか、、ちょっと楽しみです。
2010年09月09日
JH-3A遅れる
CanJamの時の記事で書いたJH Audioの下記のカスタムイヤホン向けのアクティブクロスオーバー(というかクロスオーバーなしというか)システムのJH-3Aですが、大幅に遅れているとのこと。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/152067854.html
当初のエンジニアが辞めて交代を探したりとかあったんで当初予定から大幅に遅れて、いま時点の状況でいまから12週間ほどかかるようです。
(下記はFacebookへのリンクです)
http://www.facebook.com/note.php?note_id=432093452282
ヘッドホン祭りにデモ機持ってきてもらいたかったけど、微妙な状況に。。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/152067854.html
当初のエンジニアが辞めて交代を探したりとかあったんで当初予定から大幅に遅れて、いま時点の状況でいまから12週間ほどかかるようです。
(下記はFacebookへのリンクです)
http://www.facebook.com/note.php?note_id=432093452282
ヘッドホン祭りにデモ機持ってきてもらいたかったけど、微妙な状況に。。