Music TO GO!

2009年02月03日

プロ用サウンドカード DAL CardDeluxe

いまちょっとこっているのはPCベースでオーディオのサブシステムを作るということです。メインのオーディオにPCトラポとして組みこむというのではなく、PCを中心としたサブシステムとして別に組むということです。
最近XM5の委託レビューとかCES関連その他いろいろで書くことが多かったので書く暇がありませんでしたが、話は少し前にCardDeluxeを導入したときにさかのぼります。

PCのシステムとしては前に書いたAudioengine2とONKYOのPCI200Ltdという組み合わせでなかなか良いので満足していました。ヘッドホンで聴くときはステレオのシステムからケーブルを延ばせるのでまじめに聞くときは、GS-XやSTAXで聴きますし、ネットのサンプルを聴くときとかPCから取ることが必要な時はPCと組み合わせやすいのでiHA-1 v2などを使っていました。
そんな感じである程度はPCで音楽を聴くということは完結していました。

とはいえスタジオ用の高性能カードというものにも興味は持っていたので、少し前にDAL CardDeluxeをAES/光TOS出力カード付きで入手しました。
CardDeluxeはいまさらここに書くまでもないくらいくらい、ハイエンドというかプロ用のサウンドカードでは名の知られたものです。いまでは他にも優秀なカードやオーディオインターフェースはあると思いますが、10年近く前からまだ第一線というのはたしかな品質を感じます。PCの周辺機器ですがAudioengine2と同じくStreophileにもレビューがあります。
CardDeluxeはもともとDTM用途のものなので、わたしのように再生専用に使うにはいささか機能をもてあましますし、PCI200Ltdのシステムでも悪いとは思っていなかったのですが、やはり今以上の音、というところにひかれたわけです。

1. CardDeluxeとアンバランス(RCA)接続

インストール自体は最新のドライバーを取ってくるということのほかには普通のPCIカードと同じです。実際ONKYOのPCI200Ltdは銅のシールドがかっこよかったので写真を撮りましたが、CardDeluxeはただのボードなので特に写真は撮ってません。(こんなに記事が長いのに写真なしはめずらしいかも)

ただ注意する点は基本的にDTM/プロスタジオ用途のカードなのでコンシューマー環境で使うには多少使用に考慮が必要であるという点です。

まずアナログ接続について、プロ用途のものなのでアナログ出力はバランスのみです。それはケーブルを長くひきまわすときにバランスだとノイズの影響を受けにくいということによるようです。これはうちで書いているバランスヘッドホンアンプがブリッジ構成の利点を享受するというのとはちょっと違いますが、もともとはバランス接続の利点はこうしたスタジオ環境で使われることを前提にしているわけです。またカード内部がどうかはわかりませんが、バランスであればPC内部のノイズの影響もうけにくいとおもいます。

ここで注意したいのはカードのバランス出力プラグがオーディオでよくつかわれるXLR(キャノン)ではなくTRSフォーン端子(ヘッドホンの標準端子のようなもの)を使用しているところです。そのためRCAのアンバランス出力が必要なものについてはTRSフォーンとのアダプタが必要です。
またオーディオ用のバランスケーブルを使いたいときはフォーンとXLRのアダプタがやはり必要です。TRSフォーン出力から機器のXLR入力に直接接続するようなケーブルはおもにスタジオ機器のプロショップなどで扱っているようです。

また、CardDeluxeではアンバランスで使うときはボード上のジャンパーをデフォルトの+4dBから-10dBのコンシューマーモードに切り替える必要があります。
この辺はGenelecの6020Aのようにスタジオモニターでもアンバランス入力を持っているのは同じだと思います。

次にデジタル接続についての注意点です。CardDeluxeは単体では同軸のアンバランス・デジタルアウト(SPDIF)を持っていますが、拡張ボードを使うことでAES/EBUのバランスデジタルアウトと光デジタルアウトを使うことができます。このボードはPCIスロットに差すわけではなく、端子はCardDeluxeのボード上にあるコネクタから取りますが、PCに据え付けて出力の口を出すためにPCIスロットをひとつ消費します。
接続はPC環境だと電気的なノイズの影響を受けない光デジタルがよいように思えたので、TOS経由でSAECの手持ちの光ケーブルOpt-M1を使用しました。この辺はまたあらたな旅の始まりになりましたが、それはまた別の話です。

2. CardDeluxeの音質

かなり人気のあるボードなので期待していたのですが、確かに性能の向上は期待以上のものがあり、PCでこんな音が出せるのかという感じです。「こんな音が出せるのか」、という意味は単に音がきれいというのではなく、高精度できっちりした音という意味です。ぱっと聴いて綺麗に聞こえるONKYO PCI200Ltdと違い、ニュートラル基調なので一見地味ですがオーディオ的な性能の向上はあらゆる点でひとクラスかふたクラスは上です。
出力にはアナログとデジタルがありますが、傾向は同じです。デジタルはもちろんDACで違いますが、その前にトランスポートで音がいかに違うかというのを考えさせられます。

まずアナログ(アンバランス)の音をAudioengine A2やiHA-1 v2のRCA入力、その他のヘッドホンアンプでKimberのHeroをつないで聴いてみます。
構成はDELL(WinXP) -> CardDeluxe -> フォーン/RCAアダプタ -> Kimber hero(RCA) -> Audioengine2となります。
再生ソフトはAppleロスレスを使う関係でSongbird(またはWinamp+ALACプラグイン)を使います。

音の印象はさきに少しふれたように、全体にプロ機らしくニュートラル基調でかっちりして精緻な音です。
またかなり制動が利いた音で、全体に力強く引き締まっています。低域はベースがより引き締まって力強い音を感じさせます。ヴォーカルも質感が高くリアルで、情報量が多く厚みもあるのでとても力強く思えます。シャープで研ぎ澄まされ、形が整って芯がしっかりした音で、クロックの効いた高精度な音のように思います。
ポイントは力強く芯が明確という点で以前のONKYO PCI200Ltdと比べると、たしかにPCI200Ltdは全体にきれいに聞こえます。線が細いのは単体で聴くと繊細で美しいという感じですが、CardDeluxeと比べると弱々しく薄い音と感じてしまいます。とはいえCardDeluxeがドライとか無機的なのではなく、CarDeluxeはダイナミックさもあり音楽的にもよく聞こえます。性能的な面で見てみると、CardDeluxeの方がストレートでニュートラル基調、上下のレンジも広くより情報量があり、さきに書いたように高精度ということを思わせます。

オーディオ機器としてはPCI200LtdとCardDeluxeは格の違いがあるという感じで、全体的にPCI200Ltdに比べると音の質はひとつかふたレベル以上は上だと思います。音がしっかりしていて、クロックなんかもきちんとした感じで音が綺麗と言うよりも音の形が上質できれいという感じです。Stereophileにも載っていますが、数百ドルクラスのDACとしてみてもかなり良いと思います。ただし無機的ではありませんが、やはりプロ用機器なので感覚的な好みというのは出てくると思います。
PCI200Ltdは音を綺麗に聞かせようというやや演出した良さはあると思います。基本的な質も高いのですが、そこが価格以上によく思わせている点だと思います。価格を考えるとPCI200Ltdはアナログアウトに関しては検討していると思います。

しかしCardDeluxeで驚いたのはどちらかというとデジタルアウトの品質です。
アナログの方はONKYO PCI200Ltdでもまあいいじゃないと思わせるところがありますが、デジタルアウトの品質、つまりトランスポートとしての性能は比べるまでもなくCard Delexe+AES/TOS拡張カードの圧勝です。
デジタルアウトはAES/光拡張ボードの光TOS端子からSAECのOpc-M1光ケーブルでiHA-1につなぎます。ヘッドホンアンプはアナログとデジタルが比較できますし、デジタル入力も豊富なのでiHA-1 v2を光接続で使います。
それまでiHA-1ではUSB->iHA-1、PCI200Ltd->光->SAEC->iHA-1のいずれもさほどいいとは思わなかったんですが、CardDeluxe->拡張ボード->光->SAEC->iHA-1だとiHA-1がまるで見違えるようによく鳴るようになります。iHA-1は便利だけれども音的にはそれほど好きというわけではありませんでしたが、CardDeluxeに変えるとまったく見違えるようになりオーディオとして豊かに力強く高精度で鳴るようになります。もちろん音の性格が変わるわけではありませんが、あえて言うならばまるで別人という感じです。対するとPCI200ltdのデジタルはかなり薄くて軽いという印象です。音自体もかなりあいまいです。
もともとiHA-1も味系ではなくともニュートラルな良さというのがあると思いますが、CardDeluxeの高精度でニュートラルなデジタルアウトと組み合わされることでそれが十二分に引き出され、逆にPCI200Ltdのあいまいなデジタルアウトだと輪をかけてさえない感じになるという感じでしょうか。

環境やケーブル・アンプは同じでカードを変えただけなんですが、まさにiTransportに引き続いてトランスポートがいかに重要かを思い知らされました。そしてここがまた新たな旅の始まりとなったわけです。

3. PCベースのサブシステムへ

DACで音が変わるのは感覚的にも良く分かりますが、単にデジタル出力をするトランスポートでもこんなに音が変わるというのは驚きです。しかもCardDeluxeはPCカードとしては高価とは言え、一般のオーディオ機器として考えるとかなり安価です。このくらい音のレベルが高いのならメインのオーディオシステムのトランスポートに使いたいという気持ちはよく分かります。
実際にONKYOのPCI200Ltdでもそれなりに良い音で満足していましたし、完結したものと思ってました。たまたまCardDeluxeを入手しなければこのままだったかもしれません。しかし、CardDeluxeを入れたことで、かえってもっと上を見たいという気がしてきたという感じですね。

ただしさきに書いたようにうちのPCのメインの目的は写真の画像処理なので、もしそうしたPCトランスポートのようなものを作るならば別な静音システムをひとつ組みたいところです。なにしろいまのパソコン(DELL XPS)を選ぶ時に選んだ基準が電源が一番大きくてファンも一番でかいものということで選んだくらいですし、次もそうするでしょう。
それはそれとして、いまのPCをベースにしたシステムの向上も考え出してきました。つまりPCで作業をしながらリスニングをする上でのメインとは別なサブシステムです。

うちではメインのオーディオといえるものはLINNの90年代モデル一式とDynaudioの25周年スピーカーです。こちらは自分としてはそれなりに音の統一性をもって取り組んできたのですが、そうするとその方向とは別な性格のものをいれにくくもなってしまいます。そこでサブシステムを1からくんで、少しまた傾向の異なったシステムをいろいろまた試すというわけです。ある意味、この環境でないと実現できないようなシステムも試せます。
最近のPCベースのデジタルシステム・ハイサンプリングデータを試してみるにも好適ですし、ニアフィールドリスニングならではの試行もできます。

なんだか自分にむけて稟議書を書いている気がしてきました(笑)
ということで、スピーカー関係、ヘッドホン関係、再生ソフト、その他もろもろのところでまた見直しをしているというわけです。
posted by ささき at 22:15 | TrackBack(0) | __→ DAL CardDeluxe | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする