Music TO GO!

2009年05月20日

DigiFiの新型S2とS5登場

日本でもKleer(クリアー)ワイヤレスを使用したDigiFiのS1がしばらく前に発売されました。
これはいわばKleerというワイヤレスの方式を世に広めるようなモデルだったわけです。そのときにより高性能モデルが出ると書きましたが、今日(5/19)プレスリリースをもらいました。

DigiFi S2

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DigiFi S5

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Photos courtesy of Kleer

S5はiPodのドックにさせるタイプで、Made for iPodのロゴを取得しています。音質はかなり向上しているということなので、ちょっと楽しみではあります。また今回は本体にボリュームとトラックのコントロールがついているということです。

*なおこのボリュームとトラックのコントロールはS5のみです。曲選択とボリュームはiPod側と連動しているということです。
この点でKleer社に確認してみたのですが、Kleer方式では現在音声信号の双方向通信をしていないが、こうした制御信号の双方向通信はできるということです。

プレスリリースによると発売は6/20で価格は代理店によるとのことです。Sleekもこれをベースにしたものを出すのでしょうか。。
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2009年03月16日

Kleerの直販ショップと私の写真

ワイヤレス期待の新星、Kleer(クリアー)社が自らのサイトでも直販ショップを運営しています。
こちらです。
http://www.kleer.com/purchase/index.php

そして、、
ゼンハイザーMX W1とSleek Wirelessのページでは私の写真が採用されています。こちらです。(ページ下部にうちへのリンクがあります)
http://www.kleer.com/purchase/sennheiser_mxw1.php#pictures

http://www.kleer.com/purchase/sleek_audio_wireless.php#pictures

これはKleerの担当者と技術情報のやりとりで知り合いになり、直販ショップを作るのでわたしのサイトの写真を提供してほしいと依頼を受けて許可したものです。
ま、ちょっと照れくさい気もしますが(^^ゞ
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2009年01月23日

DigiFiの新製品

最近はKleer製品も順当に浸透しつつあるようですが、低価格のDigiFiのOpeara S1もなかなか好評のようです。
http://www.slashgear.com:80/ces-2009-digifi-digital-opera-headphones-kleer-pmp-watch-1029976/
CESにそのDigiFiの新製品が出ていたようですが、上記リンクに載っていました。
前にウスログさんに書いてあったS1の上級モデルのほかにフルサイズのヘッドホンとKleer内蔵の腕時計なんていうのも出品されていたようです。このヘッドホンの新機軸はとうとうレシーバー側に音量調節ができるようになったということです。これはSleek customでもMX W1でもこまりものだったんですが、ぜひイヤホンタイプでも実装してほしいものです。
腕時計の方はKleerの送信機が内蔵されたタイプのようです。


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2008年12月18日

Sennheiser MX W1 - Kleerの築く新時代

1.

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Sennheiser MX W1は今年(2008)初めのCESで話題になったワイヤレスイヤホンです。その最大の特徴はワイヤレスの新基軸であるKleer技術を採用しているところです。
Kleerについてはこちらの先の記事を参照ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/109198956.html

Kleer技術を用いた製品は昨年(2007)のCESにもRCAのデモIEMモデルが発表されていて昨年DAPなども登場していますが、注目度は今ひとつでした。ゼンハイザーという大手が本格的な製品を出したことによって、今年2008年が本格的な始動の年となったようです。
Kleerを応用して既存のIEMをワイヤレス化するという試みでは先に書いたSleek Wirelessがありました。Sleek Wirelessでは従来のケーブルを使ったものと比べることができ、その違いがほとんどないか、あるいはレシーバーの作りによってはケーブルがあるもの以上のなにか可能性があるのではないかと思わせるKleerの可能性を感じさせてくれました。
ちなみにSleek WirelessはたしかPopular Scienceが選ぶ2008年度の新機軸プロダクト100選に選ばれています。

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ただし従来のIEMをワイヤレス応用したという点で、Sleek WirelessやOperaでは左右のイヤホンが有線でつながっているために完全なワイヤレスというにはやや不満がのこります。MX W1はゼロからKleerを使えばこういうものができるということをまさに目の前に提示してくれたと言えるでしょう。それは完全に左右が分離したワイヤレス・イヤホンです。ワイヤレスイヤホンのあるべき姿にたどり着いたとも言えます。

さきに書いたように左右が分離するということは送信機と受信機が1:2の関係になるため、1:1の伝送制限のあるBluetoothでは片耳のヘッドセットは作れても両耳独立のものは作ることができませんでした。しかしKleerでは1:4までのマルチポイント伝送が可能なのでこの形が実現できます。

こちらにゼンハイザーの宣伝用のビデオ(You Tube)がありますので、装着したイメージなどはこちらで確認ください。



http://www.youtube.com/watch?v=3jzGVNb3TXo

2.

パッケージには左右のイヤホンと送信機、そして左右のイヤホンをドッキングさせるドックステーションが入っています。ドックステーションはポータブルで持ち運んで、外部電源がなくてもイヤホンを充電することが可能です。充電は3回まで行えます。

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これは送信機は一回の充電で約10時間ほど持つのですが、イヤホンは約3時間程度しか持たないので、外でも追加の充電ができるようにしているためです。一回の充電には一時間程度はかかるようなので、長い外出をするときは行きに聴いて行って、目的地について用事をしているうちにポータブルドックで充電しておいて、また帰りに聴くという風に使うことができます。

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送信機とはミニプラグでオーディオ機器を接続します。このため汎用性は高く、iPodから据え置きのオーディオ機器まで応用ができます。そのため外出時だけでなく、家に帰ってから家の中で聴くのにも便利です。
わたしはiMod5.5GとSR71Aのセットにバンドで固定していますが、これはちょうど横につけられるので大変取り回しが良くあつらえたようです。

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バッグにこのセットとイヤホン、そして長く外出するときはドック(チャージー)という組み合わせが便利です。
SR71Aはこのセットに対しては少し過大ではないかと思われるかもしれませんが、MX W1はその重さに答えてくれる音質をきちんと提供してくれます。

3.

W1のイヤホン部分はツイスト・トゥ・フィットという装着法で耳にはめ込みます。耳に入れる発音部とは別に耳を支えるためのステムがついていてラバーで滑り止めにして、耳に固定します。ラバーは大中小の3タイプあります。これについては試行錯誤で装着法を探るしかないんですが、慣れるとそれなりには固定できるようになります。
この方式の利点は着脱が簡単なことで、カナルタイプに比べると手軽に装着できるというイヤホンの利点は損なわれていません。また、やや大柄に見えますが、軽いので装着が負担になることはありません。

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装着して外出し音楽を聴いてみると、Ety8やSleek Wirelessでも感じたことがない、はじめての不思議な感覚があります。慣れるまではちょっと気味が悪いくらいで、なにか忘れているような気がします。
これは家の中で使うときもそうで、日常の歯磨きから日常生活をなんでもそのままできるので、ちょっと前の流行でいうと、真にユービキタスな音楽環境と言えます。また、片耳だけ使ってモニターイヤホンのように使えるとか、思ってなかった使い方もできます。

やはり完全なワイヤレスは違います、というよりも慣れてくるとこれがワイヤレスイヤホンのあるべき姿という気がしてきます。

4.

音質に関してはSleekのようにケーブルタイプとは直接比較できませんが、普通のIEMとして評価してもかなり音質は高いと思います。とくにシングルドライバーとしては低域から高域までバランスがとれて洗練された音です。
ダイナミック型なので自然ですし、ゼンハイザーらしいやや艶っぽい聴きやすさも魅力です。音色は良くて、ドライとか分析的というのとは違います。

洗練されているという点で言うと、全体に音のたるみがなくクリーンでタイトな音と言えます。イヤホン内に電子部品も多いためか、エージング前はやや甘く聞こえるように思いますが、時間がたてば解像力もなかなかあって、質感表現も優れています。中高域はかなり良くて、Kleerの特徴としてスピード感があるようにも思います。音は少し耳に近く適度にダイナミックな感じがあり、広がりの良さも感じられます。
カナルではないので構造的にどうしても超低域はリークしてしまいますが、全体に低域は豊かで質の高い低音が出ているのはわかります。
またリークに関しても普通のイヤホンよりはステムで固定している分で少しは良いと思います。

バランスが良いと言っても低音が漏れる関係もあり、イヤホンのタイプ的にやや腰が高めにはなりがちですので、イコライザやケーブルなどで低域方向を調整するとよいと思います。わたしはアンプのセットアップとしてはiMod用のGoldXSilverが腰を低くしてバランスを良くするのに良いと思いました。
またiPhone 3Gから直で取ってもなかなかの高音質で楽しめます。この場合もイコライザーでdanceなど低めに重心が行くものを選ぶと全体にバランスが取れるのではないかと思います。もちろんこの辺は言うまでもなく各自の好みの部分ではあります。

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実際のところDAPとアンプ間のケーブルを変えたり、アンプを変えたりして音が変わるということも普通のケーブルのIEMとまったく変わりません。iPodやiPhoneだけで手軽に良い音を楽しむこともできますし、SR71Aなど良いアンプを加えてより音楽的に豊かな表現力を楽しむことできます。また、その描写を書き分ける能力も十分に持っていると思います。

5.

MX W1を使って思うことはまず、ガジェット感覚が面白いということです。普通のイヤホンとはちょっと違うデジモノとしての魅力もあります。
手軽なところもプラスです。

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Sleek Wirelessに感じたノイズもいっさいなく、細かいところでもより完成度は高いと思います(そういえばOperaを試聴したときはこのノイズはなかったように思います)。この辺は高いなりにゼンハイザー品質です。また音も先に書いたようにワイヤレスという色眼鏡をかけずにIEMとしてみてもよいと思います。
実際にこれを聴いたおかげで、いままであまり興味のわかなかったIE6/7/8もちょっと気になり出しました。
たしかに低域などを考えるとこれのカナル版が欲しいとは思うけれども、装着の手軽さもあって、これはこれでありだと思います。

全体的な完成度は高いのですが難を言うと、イヤホンの電池の持続時間が少し物足りないという点はあります。この辺はポータブルチャージャーがあるとは言え、Kleerの長所として持続時間があるので何とかならないかと思いますが、贅沢に電流を使って音質に貢献しているならばそれもいいでしょう。


Kleerで思うのはケーブルがないということの特質を便利さだけではなく、一歩進んで音質で考えられるようになったということです。
ケーブルという不純物も多い金属抵抗の中を音楽が通ることによる劣化と、音楽をいったんパケットにして送るということによるプロセスにおける劣化のトレードオフという点です。いままでのワイヤレスだとマイナスであることが分かり切っているので、とりあえずあんまりひどくしてくれるな、というマイナスを小さくしてほしいという感じではありますが、こうして積極的にケーブルのありなしを比較するという気にはならないと思います。

人間、見えるものに対しては抵抗がないけれども見えないものに対してはなかなか価値を推し量りにくいというところがあると思います。ワイヤレスもそうしたものかもしれません。

ワイヤレスというと新しくて意外と古いものですが、このKleerの登場であたらしいワイヤレスの時代の第二幕の幕開けとなるように思います。
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2008年11月06日

KleerとBluetooth

まずはじめの疑問にお答えしますと、"Kleer"の読みかたですが「クリアー」と読むようです。CESのゼンハイザーブースでのMX W1の紹介ビデオを見ているとそう呼んでいるようです。発音がまったく同じかは分かりませんが、Clearにかけているのでしょう。

Kleerはその名の通りにクリアなオーディオ伝送を行うための主にワイヤレスイヤホンのための規格です。適用範囲としては動画やマルチチャンネルオーディオにも応用できます。
形式で言うとKleerは2.4GHz帯の小電力通信ということになります。これはBluetoothとライバル関係にあるということを示します。ただしBluetoothがそもそもはUSBケーブルとかシリアルケーブルの無線による代用で機器間の接続を広くカバーするのに対して、Kleerはワイヤレスのオーディオ・ビデオ転送という点に特化しています。

さて、次の疑問は「KleerとBluetoothはどう違うのか」というものだと思います。
そこでKleerの特徴を主にBluetoothとの比較でまとめてみます。
出展はKleerのホームページからダウンロードできるいくつかのホワイトペーパーです。


1. CD品質の伝送能力

Kleerの一番の特徴はこれですが、Bluetoothに対して高音質なところが特徴です。これはCD品質の音楽データを非破壊(可逆)で送ることができるということです。
非圧縮の44KHz/16bitのCDデータの伝送には1.4112MB/sの伝送能力が必要です。BluetoothはMP3を簡略化したようなSBCという非可逆圧縮を使うのですが、Kleerではロスレス圧縮をして伝送しているようです。ロスレス圧縮を行うと1MB/s程度の伝送能力でも可能ということですが、無線での通信ということを考えるとパケットの到達ロスやミスを考慮して最低でも2MB/s程度の帯域幅が必要になるということです。
Kleerは2.37MB/sの伝送能力がありますのでこれをクリアできます。

ただBluetoothでもEty8のところで書いたように2.0規格のEDRという拡張方式を使うとこの伝送力は確保できるようです。この辺はよく分かりませんが、おそらくKleerとBluetooth EDRの差は後に述べるISM干渉の排除能力の違いで効率の差に表れるのではないかと思います。

2. 低消費電力

KleerはBluetoothに比較して約10倍の電力消費効率があると主張しています。
単純に比較すると平均的なBluetooth機器の消費電力の約150mWに比してKleerでは約30mWで済むとのことです。これだけでもすごいことですが、これではまだ5倍です。
ただしKleerの主張は伝送能力はBluetoothとKleerでは違いがあるので、この差を勘案してトータル10倍の差があるとしているようです。

3. マルチポイント伝送が可能

2008年1月のCESでゼンハイザーのMX W1が登場した時に驚かれたのは左右のレシーバーがワイヤでつながっていない、完全に独立した真のワイヤレスだったからです。これが簡単そうでできなかった理由はBluetoothだとレシーバーとトランスミッタが1:1の関係に限定されてしまうからです。
そのためにBluetoothでも片耳だけのヘッドセットなら実現可能です。しかしステレオのイヤホンの場合は両耳(つまり二台)に対して同時に送れないので、左右のどちらかで受け取って他方にケーブルで送る必要があります。

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Kleerは"Listen In"と呼ばれる技術で1:4のマルチポイント伝送が可能です。そのため上の制約に縛られません。つまりMX W1の場合は左右の2台のイヤホンはそれぞれ本来は独立した二台のレシーバーとしてステレオの信号を受けているけれども、それぞれLかRのみ再生しているということでしょう。そのためMX W1では実際は1:2の通信をしていることになります。
実際にMX W1の説明書では同時に使えるW1は2セットまでと書いています。(Sleek Customは4セットと書いてある)

4. ISMバンドでの干渉に強い

2.4GHz帯のことをアメリカでは通称ISMバンドとも呼びます。Industrial, Science and Medicalの略です。無線LANだけではなく、コードレスフォンやベビーモニターとかこの帯域を使用する機器がかなりあるようです。
そこで、この帯域を使用する無線機器は常に干渉防止の機構を備えていなければなりません。それは自分が干渉を避けるためでもありますが、不必要に帯域を占有しないマナーのようなものでもあります。
ここは少し解説が必要かもしれません。

ISMバンドの中でも使用できるのは80MHzの帯域ですが、機器はそれを自分が必要な分(データ量)を考慮して、チャンネルという形でいくつかに分けています。送信はそのチャンネルで行われます。干渉防止とはつまり自分が使用しているチャンネルでパケットに送信エラーがあった場合、どう対処するかということです。
ポイントはこれには大きく二つの方式があるということです。ひとつはTDMA(Time division multi accsess)ともうひとつはFDMA(Frequncy division multi acccess)という方式です。

TDMAは簡単に言うとチャンネルで送信ミスがあった場合、時間をずらす、つまり混んでいたら空くまで待つという方式です。重要な点はこのときチャンネル自体は変更しないということです。同じチャンネルで空くまで待ちます。
TDMAは無線LANで使われています。これはつまり無線LANはプログラムやファイルなどの静的なデータを扱うという性質のため、1ビットたりとも欠けることは許されませんが、時間的には早くても遅れても問題にならないからです。

FDMAは簡単に言うとチャンネルで送信ミスがあった場合、周波数(チャンネル)を変えるというやり方で、つまり混んでいたら別な道を行くという方式です。たとえば音楽データなどは同時性が必要なため、空くまで待つという悠長なことは出来ません。
これに対しては受け手側でバッファを使って吸収できるのではないか、と言われるかもしれません。しかしこれは次に述べるレイテンシーの問題でそう大きなバッファはもてません。なぜかというと、オーディオバッファが大きければ多少途切れても大丈夫なのですが、バッファが大きいと動画のフレームと音声などで時間的なずれが生じてしまいます。
FDMAにはいくつかのさらにさまざまな方式があります。知っている方も多いと思いますが、BluetoothはFHSS(周波数ホッピング)という方式を使います。これは2.4G帯はどうせ込んでいるのだから定期的に周波数を変える、という考え方です。
具体的には80MHzの帯域を79の1Mhzの幅を持つチャンネルに分割して、それを決まったスケジュールで常にチャンネルを変えながらホップしていきます。

しかし、ここに問題があります。もし無線LANと同居していた場合、無線LANはTDMAですからチャンネルを動的に変えるということはないので常に同じ車線を走行します。そのため車線を蛇行してジグザクに走行するBluetoothとは常にどこかで定期的にぶつかります。そこでBluetoothではAFHという拡張方式を使用して一度ぶつかったチャンネルは塞いでしまうということでこれを回避します。しかし音声データを送信する場合にBluetoothでは最低でも20チャンネル(20MHz)は必要という仕様があるので複数の無線LANがチャンネルを多くふさいでいる場合に空きが見つけられなくなる可能性があります。

KleerではやはりFDMAですが、ダイナミックチャンネルセレクションという方式を使います。Kleerでは80MHzを16の5MHz幅のチャンネルに分割します。これは無線LANの間隙に入りやすい分割法だそうです。そしてBluetoothとは異なり、基本的には同じチャンネルを使い続けます。もし送信ミスがあった場合は空いているチャンネルをサーチしてそこに自動的に移ります。そしてまたミスが起こるまでそこを使い続けます。基本的にKleerはひとつのチャンネルで十分に音声伝送が可能です。
この方式だと無線LANが複数あってもその隙間が5MHzはあるので、そこにするっと潜り込むことで互いに干渉しないというメリットがあります。これはつまり渋滞していてもバイクなら車線間をすり抜けていくようなものです。そのすきまに別のバイクが入っていたらぐるりと見渡して空いている車線の隙間を探し、あとはそこをまた車線と平行に直進します。
そのためKleerは無線LANに影響されにくいという特性と同時に、無線LANに影響しにくいマナーの良さがあるとも言えます。

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graphic courtesy of Kleer

上記の図はKleerのホワイトペーパーに掲載されている模式図です(Kleerの掲載許可を得ています)。
横軸が時間で縦軸が周波数帯です。(2.40GHz - 2.48GHz)

上の図では青のドットがFHSSでホップするBluetoothのパターンを示しています。黄色がWiFi、緑の線がKleerのチャンネルです。
常にチャンネルを動くことで黄色のWiFiと干渉してしまう青のBTのドットに対して、平行に走り干渉しないKleerのチャンネル選択がよく分かるのではないかと思います。


5.低レイテンシー

Kleerはステレオのオーディオだけではなく、動画やマルチチャンネルにも対応しています。こうした分野では音声と画像の同期や各チャンネルの整合というものが重要になります。

一般に動画やマルチチャンネルにはそれぞれ許容されるレイテンシー(遅延)というのがあるようです。
ポータブルオーディオでは100msec程度の遅延でもかまいませんが、ビデオと音声の同期を考えると45msec-70msec程度の遅延しか許されません。
マルチチャンネルオーディオ(リアスピーカー)の場合は20msec程度の遅延しか許されないということになります。

KleerではもともとCODECの負荷の少ない圧縮を使用していることもありますし、チャンネルを頻繁に切り替えることもないのでレイテンシーはBluetoothの約半分の45msecというかなり低いようです。
またバッファ長が可変であるので将来的には20msecまで短縮してAVシステムのリアスピーカーをKleerで無線化することも可能なようです。

* *


あと個人的に付け加えるならば、リケーブルを考えなくて済むのがありがたいというところでしょうか(笑)

こうした技術を総称してKleer Audio LPと呼びますが、実体はKLR3012というモジュールに集積されています。これにチップやソフトウエアが集約されているので開発もかなり楽に行えるということです。
これは韓国のDigiFiにもライセンスされていて、Sleek WirelessはこのDigiFiのOperaを使用したもののようです。この辺はウスログさんのブログをご覧ください。


Kleer機器の使用シークエンスはまず受信機の電源を長押しでオンにすると受信機のLEDが普通の間隔で点滅を繰り返します。これがEnrollment(受信待機)モードです。次に送信機の電源を長押しでオンにすると早い点滅に変わり、Associate(機器認証)モードになったことを示します。その後にすぐ点滅間隔がゆっくりしたものに変わり、これでデータ送信モードに入ったことを示します。電源オフは長押しか無入力によるオートパワーオフです。
Kleerではこうして状態遷移をLEDの点滅間隔で示すのですが、その間隔はSleek WirelessとSennheiser MX W1ではまったく同じです。これはKLR3012で制御していることが伺えます。
他方でLEDでバッテリーの残量を示す表示は異なりますので、電源管理まではKLR3012の仕事ではないということが分かります。


ちなみにKleerはアメリカの会社で所在地はカリフォルニアのクパチーノです(Cupertino, California)。
なんかよく聞いたことがある地名だという人も多いかと思いますが、まあそれがなんらかの意味を持っているならば大いに歓迎したいところです。
本稿で書いた利点はあるものの、Kleerも汎用性と普及度合いではBluetoothには遠く及びません。しかし、この辺がキーになって一気に化けるということは、意外とあるのかもしれません。
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2008年10月22日

Sleek Wireless - Kleerワイヤレス登場

Sleek audioのSA6は日本でも発売されるようになりましたが、そのSleekのうわさされていたワイヤレスアダプターSleek Wirelessが先週発売されました。
わたしはプリオーダーを入れていましたので週末くらいに届きました。
http://beta.sleek-audio.com/products/sleek-wireless

これはBluetoothではなく、Kleer(クリアー) Audioというワイヤレス技術を使用しています。端的に言うとBluetoothに比較してKleerは音質が高く省電力です。またKleerは4台まで同時にストリーミングできます。
http://www.kleer.com/

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SA6は着脱式のケーブルプラグがついていますが、そのためSleek WirelessはわたしのSleekカスタムでも使うことができます。ワイヤレス・カスタムIEMというマニアックな上にまたマニアックな感じではあります。

Sleek WirelessはプロトタイプではiPodのドックをトランスミッタにつけていたのですが、製品版では3.5mmプラグになりました。そのためiPodに特化したわけではありませんが、汎用性は上がってポータブルアンプでも使えます。また、iPhoneのコンパチビリティの問題もありません。
また、JasonさんによるとSleek Wireless自体がアンプ(イコライザー?)の機能も持っていて主に低域を少し持ち上げるようです。HeadfiではSA6は低域が足りない(++Bassアダプタがほしい)とよく評されるのでその対応というところなのでしょう。

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Sleek Wirelessは立派な化粧箱に入ってきます。これなら店頭に置いても見栄えがします。
中のトランスミッタとレシーバーもなかなか製品としては質感高くよく出来ています。
他にはトランスミッタとアンプ/iPodを延長して結ぶためのコードとシステムを入れるポーチも入っています。また、USBでチャージするので先端が二股になった変ったUSBケーブルがついています。これで約2-3時間チャージします。
トランスミッターとレシーバーの両方に充電池があり、USBケーブルで充電をします。省電力のKleerのこと、スペック的には連続では10時間聞くことが出来るそうです。またスタンバイ状態では7日持つそうです。

電源スイッチは小さいディップスイッチのようなものがカバーに隠されています。こちらがメインでハードパワースイッチとも呼んでいます。
トランスミッタとレシーバーに大きく見えているスイッチはセカンダリーでソフトパワースイッチとも呼ばれています。こちらはスタンバイからの復帰と、他の機器とシンクロ(associate)するためのスイッチです。associateはBluetoothでいうところのペアリングです。一個のトランスミッタで4つのレシーバーをassociateできます。初期状態はassociateされているので、初期設定は特に必要ないようです。
もし他の無線と干渉するようなときにはassociateをし直すことでチャンネルを切りかえることができるようです。

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手順としてはまずトランスミッタをヘッドホン端子に差し込み、メインスイッチを入れ、次にセカンダリースイッチを入れます。この状態でEnrollmentという通信待機状態になります。LEDの点灯で通信状態が分かります。そしてレシーバーのセカンダリーをオンにすると再生状態(data transfer)になります。
基本的にSleek Wirelessはオートパワーオフで電源をオフにします。オートパワーオフは音楽を鳴らしていないと5分で自動的に切れてスタンバイになります。完全に使わないときはハードパワースイッチをオフにしますが、こちらはディップスイッチなので精密ドライバーのような細いものが必要です。


装着はゼンハイザーのMX-W1のように分割されていないので、レシーバーを首とシャツの襟ではさむ形になります。レシーバーの左右のケーブルの長さも多少変えられます。20g程度なので重さはほとんどありません。多少首の違和感はありますが、ety8の項で書いたようにケーブルのない自由さは新鮮な感覚です。
ケーブルがあるとどうしてもiPodを入れたカバンを抱えていないとなりませんが、ワイヤレスではバッグを網棚に上げられるので、カメラバックみたいに大きいバックにiPodを入れているときはとても便利です。


音は驚くほどクリアで解像力が高く、これが無線とは信じられません。思わず手で探ってしまいました。Kleerおそるべし。。
もとのケーブルとも聞き比べましたが変わりません。あるいは線が短い分で抵抗が少ないんでは、なんて思わせます。ただアンプが入っているのでやや音の特性は異なりますので直接比較はあまりできません。低音は太くなっていて迫力を増しています。
ただしheadfiのフォーラムでもレポートされていますが、背景に少しノイズを引きます。これが残念です。回路の雑音のように思えますがよく分かりません。
ただ全般に背景を濁してノイズフロアをあげるようなものではなく、特定周波数に出ているようなので、全体のSNを下げるというものでないのは救いです。これだと多少うるさい音楽のときは気になりません。
それとこれもレポートされていますが、ごくたまに音が途切れることがあります。ただこちらは20-30分に一回程度なのでそう気になりません。

細かい点では手元でボリュームを変えられないのが不便とは言えます。
またBluetoothのety8と違ってレシーバー側からのコントロールが出来ません。そのため曲をスキップしようとしてもできないのがやや不便ではあります。
もともと有線なのでケーブルさえ用意していれば電池が切れても有線で普通に聞くことも出来ます。これも意外と便利かもしれません。

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iPhoneでもかなり満足できますが、SR71A+iModなどを使い、バッグにいれて網棚においておくと手ぶらでいることができます。こんなに良い音で聴いているのに手ぶらというのはちょっと違和感を感じるほど新鮮な感覚です。
iPodもそのうちにKleerを搭載するのではともうわさされていますが(Kleerの会社がAppleの近くにあるらしい)、そうなるとかなり便利なシステムになるでしょうね。
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