NUMERIKです。

これでうちの90年代LINNサウンドを核にしたシステムはこうなりました。
iTransport(NeutronStar mod) -> LINN NUMERIK(DAC) -> LINN KAIRN(Pre) -> LINN Krout(Pwr) -> Dynaudio SP25
まさに当時のQE2のシステムにまた一歩近づきました。
LINNは総合オーディオメーカーではありますが、アナログプレーヤーのLP12で成功した会社なのでソース機器にはひとしおの思い入れがあると思います。
そこでなかなか当初はCDプレーヤーを出さなかったんですが、満を期して出したCDプレーヤー、というよりシステムがこのDACのNumerikとCDトランスポートのKarikです。90年代初頭のことです。
Numerikについて詳しくはさまざまなタイプをテストした記事がStereophileにあり、とても参考になります。
http://www.stereophile.com/cdplayers/930/index.html
このリリースにあたり、LINNはアナログにはなかったクロックとジッターという課題に対してある回答を用意していました。
このKarikとNumerikの画期的な点は、民生機としては初めてマスタースレイブという方式を導入したことです。
*マスター・スレイブ方式とSPDIF
マスター・スレイブ方式はDAC側(Numerik)のクロックをsyncケーブルを通して、トランスポート(Karik)に送るということです。トランスポート側は自分のクロックではなく、送られてくるDACのクロックを使用します。
この方式の利点はより精度の高いDACのクロックを利用できると説明されることもありますが、実はもっと本質的な問題があります。それは精度というよりもむしろ、DACとトランスポートで同一のクロック(タイミング)を保証できるということです。
これはSPDIFというデジタル伝送方式そのものに内在するクロックリカバリーという問題に起因します。
デジタル機器とはデジタルデータを扱う機器というよりはむしろクロックにより回路の動作が制御される機器と言ったほうがよいかもしれません。DACは独立したデジタル機器として送出側とは別な固有のクロックを使います。
デジタル(PCM)信号と言うのはどういうタイミングで区切ったかという情報(クロック)と、そのタイミングでの大きさはいくらだったか(ワードデータ)という情報(および付加情報)からなります。機器間で同じものをリレーしていかないとタレントがTVでよくやる変な伝言ゲームみたいに中身がずれていきます。それを確実にするには本来はクロック情報とデータは別に送るべきです。
しかし古いSPDIF規格においてはクロックを別に伝送するのではなく中にタイミングとして埋め込まれて(エンコードされて)います。これを主にPLLなどを使って同期(ロック)し、それをリカバリーしてクロックを掘り起こすという手間が入ります。その際にジッターが入り込む余地が大きいというわけです。
つまり別に送ってないことで、直接的にはっきり言わないで間接的にジェスチャーで伝えているようなものです。それで伝言ゲームのようにぴったりではなく、似たような近いが違ったものになりえます。これをジッターの問題と読み替えてもいいかもしれません。

マスタースレイブとはそれを防ぐために強制的にDAC(自分・マスター)のクロックをトランスポートに使用させます。つまり掘り起こすことなく、自分のクロックがトランスポートから送出されるクロックであるという保証が得られるという簡単で効果的な解決方法です。
上の写真ではデジタル入力(BNC)の右にある端子がSync端子で、KARIKだけではなくIKEMIも対応しています。Syncケーブルは通常のRCAアンバランス(通称LINNの黒)を使います。
この辺は古きをたずねて新しきを知る、というのにも通じるかもしれません。
*NUMERIKのタイプ
Numerikにはいくつかタイプがあります。大きく分けると、もっとも初期のタイプ(PCM63)、DACチップが変更されたタイプ(PCM1702)、スイッチング電源(SPS)になったタイプです。スイッチング電源のものはいくつかさらにタイプがあります。
これはIKEMI/KARIN PRO同等のスリムライン電源搭載の最終タイプで、ちょっとだけレアです。(シリアル4000-)
Streophileなんかのレビューを見ると上の二番目のもの(スイッチング電源ではないPCM1702のタイプ)が一番評価がよくないので、性能を取るときはSPS以降、味を取るなら一番初期モデルということのようです。

*NUMERIK SPSの音
「古きワインを新しい器に」というのはプラスでもマイナスでも使われることわざなのですが、このiTransport+Numerikの組み合わせでもいえるかもしれません。
より細かい埋もれている音の抽出とか、先鋭さ、音の分離・定位などはIKEMIよりも向上して、端正な歪み感のなさなどは一ランク上を感じさせます。ただLINNっぽい滑らかさはありますが、まだ90年代LINNと現代配信ソースの音のマッチングは想定ほどうまくかみ合ってないようにも思います。
この辺がこうしたオーディオシステムの難しいところなんですが、もうすこし練りこみが必要です。
ただ古いアンプはどうしても電源オンからの立ち上がりが遅いので週末で時間のあるときくらいしかゆっくりと使えません。先に書いたようにIKEMIもSync端子を装備していて、マスタースレイブ運用はKARIKではなくIKEMIでも可能なのでその辺もまたおいおいと、まあゆっくりと使っていこうと思います。