Music TO GO!

2010年12月29日

RSA SR71B バランス駆動ポータブルアンプ

ポータブルアンプの定番のひとつ、Ray Samuels AudioのSR71がバランス対応として登場しました。

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つまり、デュアルモノだったSR71Bがバランス対応になったので、デュアルモノx2、つまりクアッドモノとなっています。SR71というと9V電池二個で知られていますが、SR71Bは9V電池4個搭載だったらどうしようと思いましたが、充電池を搭載しているようです。一応14時間程度稼動できるということです。

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作りは相変わらずすばらしい出来ですが、SR71Aで若干ワインがかっていた黒はきちんとした黒になったようです。
また、アンプが4個並列という関係上でとてもひらべったく思えます。ただし、平面サイズはほぼiPodと同じでSR71AよりもiPodとあわせたときの形はより安定しています。

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Protectorと比べるとバランス入力に対応しているということと、このデュアルモノ対応が機能強化点となっています。それとゲインは左右独立になっていますので、注意が必要です。
とはいえ、ポータブルでのバランスソースもいまないので、SE(シングルエンド)入力から、とりあえずはいつものiModを聴いています。IEMはRSAバランス仕様にしたWhiplashのTWagケーブルとJH16です。つまりProtectorと前後は同じです。
バランスソースでないとあまりProtectorとの差はないかというとそうではなく、シングルエンド入力でもProtectorよりさらに立体的に広がる三次元的な音の広がりと奥行き感が得られます。音の力感があり、ダイナミックさが感じられます。堂々とした音、という感じでしょうか。小編成とか電子モノよりオーケストラなどのスケール感はなかなか圧巻という感じで、広がりのある空間表現がより自然で現実的に感じられます。やはりバランスにはこれにしかない世界というのがあると思いますね。またHeadFiでも書かれていますが、バーンインしていくと音の滑らかさがとてもよい感じに思えます。

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ただこのレベルになると改造していてもiPodベースである限りソースがもの足らないのも事実かと思います。アンプの性能が高くなるにつれて、ソースの粗が目立つということでしょうか。特に最近はHM801やColorflyのような強力なDAC内蔵ハイエンドプレーヤーを聞いているのでそう思います。
いまのところバランス出力に対応しているポータブルDACというとiBassoのBoomslangくらいに思えるので、バランス入力を生かしていくと選択肢はとりあえずこれでいってみるかという気はします。というか、もう既にBoomslangとiHP140間の光ケーブルはsys-conceptに新型ケーブル仕様で作ってもらってます。Colorflyみたいに一体型で高性能のリグもあるときに、三段重ねもなんですが、、
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2010年04月13日

RSA Protector、バランスポータブルの威力

ちょっと最近忙しくて書けなかったんですが、少し前にWhiplashのバランス対応ケーブルが届きました。

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買ったのは最新のTWagではなく、一つ前の旧作SCSCagです。TWagは高いのでもっと安いのはないかと聞いてこれを教えてくれました。この時点では実はわたしはポータブルでやるバランスアンプというのに懐疑的で、それほど期待はしていませんでした。けれど、目新しいのでまあどんなものか試しに買ってみるかという感じでした。だから安いのを選んで買ったのです。ブリッジ接続っていうとスピーカーの世界でもアンプの電源に厳しいので、ポータブルで持つのかとい感じでした。
でもいまは後悔してます。こんなにProtectorとJH13の組み合わせが良いんなら良いものを買っておけばよかったと。
このケーブルとTwagは線材はほとんど同じだそうですが、大きな違いはこちらはソリッドコアなので曲げにくく、曲がりはしますが「針金」っぽい感はあります。

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セットアップはiPod5.5G+ALO SXC+RSA Protector+Whiplash SCSCag+JH13です。もともとProtectorの発案はJH13をバランスで使いたいということがあったと思います。HeadfiでもJH13が発売されていらいのひとつの評判はHD800に負けないというものでした。その真偽はともかく家で聞くヘッドホンにも負けないということで、据え置きのバランスアンプで聞くというのはよく行われてました。Protectorの開発はその流れの中にあります。
Protector自体はハイエンドヘッドホンでも鳴らせると思いますが、やはりポータブルで便利なカスタムで使いたいわけです。

バランスコネクターはなかなかしっかりと接続されがっちりと固定されます。
バランスコネクターを接続した状態ではProtectorのシングルエンド(通常のミニ)プラグは隠されるようになっているので、同時にはつなげないように配慮されています。

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まず一聴してみてこの圧倒的な音世界に魅了されます。
2005年に始めて初代SR71を買ってからずっとポータブルオーディオにどっぷりと浸ってますが、こんな感覚は初めてですね。単にケーブルが4線になって音場が広いというだけではなくひとつひとつの音の表現と存在感が違います。
シングルエンドで聴いたときには前に書いたように悪くないけどSR71Aなんかに比べると今ひとつぱっとしない感がありましたが、バランスで聞くと完全に別物です。

音場は左右に広いというのはもちろんとして、際立つのは奥行き方向です。例えていうといままでの音像の表現は紙人形の芝居のようなものでしたが、バランスでは自然なボリューム感を持った彫像のようです。普通は奥行きのある立体感というのは、室内楽ならヴァイオリンとチェロの重なり表現のような視点で言うと思いますが、Protectorではヴァイオリンやチェロの音自体に奥行きがあります。これはいわゆる膨らんだ音とは別次元の新鮮な感覚です。
もうひとつ立体感という以上に音の重みに大きな違いをかんじます。Protectorのバランスの音は重みがあり、しっかりとした強さがあります。音の芯がよりしっかりと強固になっている感じもあります。前にも書いたかもしれませんが、ライト級のボクサーのパンチと、ヘビー級のボクサーのパンチの違いのようなものです。

前にも書いたかもしれないというのは、思い起こすとこの感覚ははじめてGS-XでバランスHD650を聞いて、そのシングルエンドとの差というものを一生懸命考えたときのものに似ています。ちょっとデジャブ感がありますね。つまりProtectorではしっかりとバランスの効果が感じられるということです。

Protectorではポータブルでのバランス駆動の世界がはっきりと開けたのが実感できます。
サミュエルズさんは幾多のポータブルアンプの分野ではもちろん、据え置きのバランス駆動アンプでもApacheやB52を製作して、ポータブルとバランスの両分野に多大な経験があります。それがこのポータブルのバランスという分野でもProtectorのような成功作を作れるゆえんでしょう。

もちろんケーブルもストック(標準品)から変えたので、ケーブルの差も大きいと思います。
このWhiplashのケーブルも極めて良いです。シャープだけどきつさがないのがいいですね。音色もきれいでJH13に適度な低域の強さを加えます。音のシャープさを追求したケーブルは得てしてきつく、高域によりがちですが、Whiplashはそういうこともなくバランスがよいようです。
ケーブルも気に入ったのでHM801用にシングルエンドのものも買おうと思ってます。そのときにはもっとケーブルとアンプの違いを切り離して確認できるでしょう。

JH13をいかに変えるかという点で言うと、DNAが変わるというよりは弱点がカバーされている感じがします。低域はUE11みたいにぼこっと量感が増えるわけではないけど、より低域が力強くパンチを感じるのでいままで弱いと思っていたロックやポップにも気持ちよさが出てきます。いままでよかったピアノトリオなんかはさらに良く、リアルさの向上が感じられます。
JH13はどちらかというとUE18などより弱いと思っていた空間表現がこのセットアップで改良されるのも魅力です。音色のニュートラルさなどはかわりません。

Hifiman801がハイエンドのPCM1704をもちいて、ポータブルオーディオのソース部で変革をみせたように、Protectorはアンプの部分でもまだまだ変革が可能だということを教えてくれますね。
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2010年03月14日

ポータブルバランスアンプ、RSA Protector到着

おなじみサミュエルズさんの新作にしてポータブルのバランスアンプであるProtectorが到着しました。

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ただしバランス駆動のアンプのために専用のコネクタが必要になります。RSAは写真のような4ピンのコネクタを採用しています。わたしはWiplash AudioにIEM用のバランス対応ケーブルを頼んでいますが、まだ届いていないのでしばらくはシングルエンド(普通のアンバランス)で使用することになります。

前にも書きましたが、フルサイズのバランス駆動アンプの場合はHeadroomのBlock headという唯一の手本があったのでキャノンXLRx2がデファクトスタンダードになって各社はそれにならってやってきたわけです。(Bock headはスピーカーのBTL駆動のようにアンプ二個を結合したものだったので二股のケーブルが必要でした)
ただポータブルの場合はそうしたものがないので、ほおっておくと無秩序状態になってしまいます。

人気のRSAの新作ということでProtectorは数も出ると思いますし、ProtectorがBlock headのような役割を果たしこのコネクターが世界標準になればよいのではないかと思います。今後は続く人たちはぜひこれを採用してほしいですね。
そうすることでいろんなアンプを使えますのでユーザーも便利になると思います。標準がなくて困るのはユーザーですからね。
カメラでいうとマウントを統一してほしいということですね。


Protectorは前面に4ピンバランスと普通のミニプラグがあり、どちらでもヘッドホンにつなげます。背面にはゲインと入力プラグがあります。

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ProtectorについてはこちらのHead Fiフォーラムで販売受付をしています。
http://www.head-fi.org/forums/f38/first-balanced-ultra-portable-headphone-amp-world-460603/
ここのポストで特に販売方法について書かれています。ただしここでの価格はHeadfierの予約特典価格です。
http://www.head-fi.org/forums/6449067-post637.html

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ProtectorとSR-71A

箱を開けてまずおもったのは「小さっ」ということです。バランスというとアンプのサイズも大きいかと思ってましたが意外と小さいですね。SR-71よりはP-51に近いくらいです。コンパクトで小さすぎず、大きすぎず、このくらいが適当かもしれません。電池は充電式です。
バランスといっても入力はiPodなどなので当然アンバランスです。そこでフェーズスプリッタを使用してボリュームの後でバランスにしています。

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Protectorは4ピンバランスだけでなく、通常のミニプラグも付いています。音はバランスケーブルがいまないので、ミニプラグにUE18を挿して聴いています。
RSAはハウスサウンドの代名詞というくらいサミュエルズさんの音というのがあって、SR-71に代表される古きよきオーディオのような音楽性あふれる音が楽しめますが、Protectorもやはりそうしたハウスサウンドを継承しています。P-51とSR-71Aを混ぜたどこか、という感じではありますね。
特にUE18のようなタイプとの組み合わせでは、音性能と音楽性を高いところで両立できます。この辺はさすがですね、バランスという前にアンプとしてよくできています。ポータブルでのバランスという奇をてらっただけではないわけです。
全体的な音のレベルも非常に高いのですが、シングルエンド比較ではまったくバーンインしてない状態だと、長らく使い倒しているSR-71Aよりやや眠いところはあるように思います。
この辺はProtectorがバランス化で本領を発揮したときにまたどう変わるかは楽しみです。
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2008年09月24日

SR71A has landed!

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SR71Aが到着しました!
なにげにシリアル一番を狙っていたのですが、それは逃してしまいました(^^
たぶん十数分くらいの差だったと思いますが、、

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思ったより軽いというのが第一印象です。音の第一印象もかなり良好で、この時点でもうオリジナルよりも良いという予感がします。
ボリュームもはじめはオリジナルの方がよいと思っていましたが、適度にトルクがあってなかなか悪くありません。
ただ指摘されていたようにやはりMAHA 9.6Vが入りきらずに少しはみ出てしまいます。とはいえ、ここはやはりMAHAを使いたいので無理やり閉めます(笑)
*HeadFiのサミュエルズさんの返信によると「(わたしのところでは)さまざまなバッテリーがきちんと入る。これはバッテリーポストが新品で固いからで、裏蓋をぎっちりと閉めてからノブで止めてほしい」とのことです。

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少し鳴らしてからさっそくオリジナルのSR71と比べてみました。iMod+Cotton Dock+HD25(APureSound V3)という慣れたセットアップを使います。
並べてみると色が黒といっても微妙に異なります。

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実際に音の傾向とか個性についてはオリジナルのSR71とほぼ同じですが、サミュエルズさんが書いた通りにSR71Aの方がより洗練されて解像感も高く感じ、よりクリアに聞こえます。また、オリジナルのSR71に比べて低域により力強さとパンチを感じられます。
おそらくオリジナルに比べてもより背景が黒く、SNが高くなっているのでクリアでかちっとした音のエッジのたち方をしているのではないかと思います。

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またゲインの効果もあり、UE11をつけてもノイズフロアはかなり低く、もやっとした感じはありません。IEMにも好適です。

電池室の問題はありますが、定番ともいえるSR71がより洗練されたというのは期待通りでした。
また、これはいままでのアンプの中でもまさにトップクラスだと思います。
少しバーンインしてまた音が開いていくのが楽しみです。

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2008年09月23日

SR-71A recon flight

アメリカでは到着を始めているようですが、筐体が小型可したせいかMAHA9.6Vがどうやら使えないというのは残念です。
ただ性能面ではかなり良いようで、IEMでも良好と言うことなのでゲインの設置も効いているようです。
posted by ささき at 10:46 | TrackBack(0) | __→ RSA SR-71 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年09月18日

SR-71A Ready for take off

考えてみるとうちのブログがまじめに海外製品を扱い始めたのはSR-71がはじめだったと思います。だいたい2005年の6月ころです。
ER-4関係の情報を海外サイトで集めているうちに、Head-Fiというサイトを知り、SR-71とかXinのSM3などの優秀なポータブル用のアンプというものがあるということを知りました。当時わたしはDrHeadとER-4とポケットドックなどを組み合わせて原始的なポータブルオーディオを模索していたのですが、SR-71の購入で一気に方向性が固まりました。

そしていま、デノンのD7000の試聴にSR-71を持っていったようにやはりいまでも一番安心して聴ける音だし、いまでも気に入っているアンプです。
性能という面以外でSR-71をデノンに持っていったもうひとつの理由は一般的なオーディオ製品に一番近い音だと思うからです。その点でオーディオ畑の人に分かってもらいやすい音でもあると思います。サミュエルズさんはベテランだしやはりオーディオのことをよく知っていると思います。

SR-71はわたしが入手するずいぶん前からHeadFiでは人気がありました。つまりSR-71はこの手のアンプの嚆矢であると同時にいまだにトップクラスであるということがすごいわけではありますが、それは時代の流れとはやはり切り離せません。当時は高感度のIEMがこんなに全盛ではなかったと思いますし、RoHS対応もあまり言われていませんでした。
SR-71はここしばらくディスコンでしたが、理由は入手できなくなったパーツがあるということでした(どこかのポストによるとRoHS対応で入手できなくなったものということだったと思います)。それでも要求はあったのだけれども、単にそのまま再生産するというよりもゲインを付加するなどもっと柔軟性のあるアンプにするという道を選んだとのこと。たしかオリジナルのSR-71は6dB固定のゲイン設定だったと思いますが、今回SR-71Aで3ポジションのゲインスイッチを設けることで、特に設計に手を加えることなくIEMからHD650などまで対応できるようにしたということです。
このため新しくパーツを追加するために基盤を再設計したということです。ただしコンセプトとしては基本的にうまくいっていたオリジナルの設計を生かすということのようです。そのため、パーツはオリジナルと同じものもあれば一部の抵抗や配線などのようにさらにリファインされているものもあるとのこと。SR-71のポイントはポータブルながらデュアルモノであるということなので、必然的に電池は二個必要なことになります。ここを残してくれたという点が一番うれしいところです。
また筺体はひとまわり小さくはなっているようですが、大きさという点では他のアンプに譲ると思います。

そうしてSR-71の改良型である待望のSR-71Aがアナウンスされました。"The Black bird"というニックネームがついています。これは以前書いた記事のようにもとの機体のニックネームです。
前述のことから考えてSR-71Aは基本的にはオリジナルのSR-71と同じで、今風に少し手を加えたというところのようです。いくつかのパーツを変えたことで音的には若干向上しているのではないかと思います。シカゴやコロラドのmeetでかなり高評価を得ていますのでここは期待したいところです。

そろそろ私のSR-71も動作が怪しくなってきていたので、この発表はちょうど良いタイミングでした。まだ一部到着していないパーツもありますが、週末までには揃うとのこと。
500個限定で$450プラス送料とのことですが、国際送料はメールで聞いてほしいそうです。特に日本などからの引き合いが多いとのことです(^^
Black, Clear/white, Dark GrayのカラーがありBlack以外は$15追加ということです。実際はオプション込の価格に4%のpaypal手数料が必要になりますので注意してください。メールを出せば見積もりを教えてくれると思います。

サミュエルズさんからは金曜までに発送を開始できるとの連絡がありました。
Ready for take off!
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2008年09月17日

SR-71Aタキシング開始

払いました!
、、、寝ます Zzz
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SR-71Aロールアウト!

いよいよSR-71の後継機、SR-71Aがアナウンスされました!

http://www.head-fi.org/forums/f38/announcement-emmeline-black-bird-sr-71a-364051/

とはいえ、ちょっといまフォトキナ情報の収集と記事で写真ブログが忙しいので、SR-71Aについてはまたあとで、、、
posted by ささき at 01:49 | TrackBack(0) | __→ RSA SR-71 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年06月22日

SR-71A

なんとなく、飛行機のことが書きたくなったので飛行機の記事を書きます。他意はありません(笑)

SR-71 "Blackbird"

SR-71の登場には偵察機U2が撃墜されたことによって米国の国際的な信用が大きく失墜したことが背景になっています(パワーズ事件)。
そこで絶対に撃墜されない偵察機が要求され、マッハ3でコンスタントに巡航できる機体が必要とされました。設計はこうした特殊な機体の設計に長けたスカンクワークスが担当し、1960年代初めに登場しました。時まさに冷戦の緊張感のただなかです。
それから現在に至るまで実際に幾多の偵察任務において、いままで一機も撃墜された機体はなかったと思います。SR-71はそのためにあらゆる面で特別な設計がされています。

NASAのSR-71に関するページ
http://www.nasa.gov/centers/dryden/news/FactSheets/FS-030-DFRC.html

NASAドライデン研究所のSR-71写真ギャラリー
http://www.dfrc.nasa.gov/Gallery/Photo/SR-71/Small/index.html

まず特徴は二つの大きなエンジンが並列で配置されていることです。まるでデュアルモノ構成のアンプのようです。あ、今回はあくまで飛行機の話です(笑)
このP&W J58ジェットエンジンはかなり特殊なエンジンで、離昇と通常の飛行は普通のタービン圧縮を使うターボジェットですが、速度と高度を獲得した後の超高速域では空気の圧縮をおもに高速によるラム圧(詰め込み圧縮)自身によっています。タービンをバイパスした空気は直接アフターバーナーに導かれます。高高度を飛ぶためにパイロットは宇宙服のようなスーツを着なければなりません。

今年初めの映画「アイ・アム・レジェンド」にNYに係留された空母の艦上に出てきますが、正確に言うとあれはA-12というSR-71の原型です。あの空母はイントレピッド博物館という実在のものですが、他の機体と比べるとSR-71(A-12)がかなり大きいというのが分かると思います。
普通アフターバーナーは燃料消費が激しいので一時的に使うものですが、SR-71の場合は高速で飛ばないとそもそもラム圧を利用した空気の圧縮ができないので、アフターバーナーを常用します。このようにSR-71は燃費が悪いために替えの電池携帯が必須で、じゃ無く、常に上空で空中給油で満タンにします。
マッハ3を越えると空気との摩擦熱で表面はおそろしいほど高温になるので機体の93%はチタン合金ですが、それでもガソリンタンクがオーブンの中を飛んでいるようなものです。そのためSR-71は発火点の非常に高い特殊な燃料を使います。
独特なエイのような形は空気力学的なものもありますが、レーダー投影面を減らし、ステルス効果を狙ったもので現在のステルスの先駆けでもあります。


ニックネームは有名な「ブラックバード」ですが、関係者には沖縄でついたあだ名からハブとも呼ばれます。これはよくあることで、たとえばA-10は正式なニックネームはサンダーボルトIIですが、ふつう関係者はWarthog(いのしし)と呼びます。またSR-71は計画当初は開発者に「アークエンジェル(大天使)」とも呼ばれていましたが、案外これが一番あっているようにも思います。
ちなみに"Black bird"はなんとなく黒い鳥という意味であるように思えます。実際にBlackbird(クロウタドリ)という鳥もいるのですが、実は英語の俗語でBlackbirdは黒人のことを意味します。たとえば音楽でもジャズのスタンダードに「バイ・バイ・ブラックバード」がありますし、ビートルズにも「ブラックバード」がありますが、どちらも黒人問題をテーマにしたものです。
SRはStrategic Recon(戦略偵察機)の機種記号であるといわれますが、もともとはRS-71と呼ばれる予定でした。(名称変更には諸説あります)
つまり71という中途半端な番号なのはRS-70という機種の後継と考えられていたからです。
そしてこのRS-70というのはB-70(XB-70)というやはりマッハ3を誇った超音速爆撃機の偵察型です。結局B-70は試作のみに終わったのですが、航空機史上でもっとも美しいとも称される機体で、そのニックネームは「パルキリー」です。
この名前をなんかつい最近よく聞くことがある、とか思う人がいるかもしれません。大元は北欧神話のワルキューレですが、F-14をモデルにするくらいの飛行機好きならおそらくこのB-70が由来でつけたものでしょう。
それほどB-70「バルキリー」は航空機ファンにとっては人気がある機体ですが、下記のNASAの写真集を見ればその理由が分かると思います。

NASAドライデン研究所のXB-70写真ギャラリー
http://www.dfrc.nasa.gov/Gallery/Photo/XB-70/Small/index.html

予備知識なしで見たならば米軍が研究中の近未来の爆撃機です、と言われても納得することでしょう。しかし写真の日付を見ると分かるとおり、B-70もSR-71同様におよそ40年前の機体です。
機能美という言葉がありますが、まさに最高の性能を持ったものが、最高の美しさも持ち合わせるという見本といえます。バルキリーは変形して、超音速では翼端が折れて下がるように設計されています。これはもちろん空気力学的な意味があるのですが、まるでSFのデザイナーが描いた未来の機体のような美しさがあります。


1960年代のSR-71の就役後から半世紀が経とうとしますが、いまだに航空機の最高速度記録はSR-71が持っています。
また、いまだマッハ3をコンスタントに越えられる機体はほとんどありません。一時喧宣されたMig-25もマッハ3は無理して一時的に超えられるという程度です。それほど熱の壁を含めて技術的な難易度は高い領域です。
上のB-70の形状はコンプレッション・リフトと呼ばれる衝撃波をわざと集中発生させて揚力に利用する技術で、NASAがスペースシャトルのずっと以前に開発していた大気圏再突入実験機の研究から生まれたものです。SR-71もB-70も冷戦という時代背景からコスト度外視で作られたもので、それゆえ当時のアメリカの航空技術力の高さを示す記念碑的な機体と呼んで良いでしょう。

発売されてから、、ではなく就役してからかなり長い年月がたちますがSR-71がこの分野でいまだにトップの座にいるということは注目すべきことです。

なお派生型にはSR-71A、SR-71B、SR-71Cなどがありますが、A型以外は複座で、一般にSR-71と呼んでいるのはSR-71Aのことです。

と、いうところでホーネットやトマホークなどはまた今度。
posted by ささき at 09:57 | TrackBack(0) | __→ RSA SR-71 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月15日

SR-71再考とSuperMacro-IV

KSC35/CARDASを加えましたので、手持ちのポータブル機材を組み替えながらベストな組み合わせなどをいろいろ試行していました。そこで引っ張ったままでひさしく仕舞っていた(忘れていた)XinのSuperMacroIV(以下SM4)とSR-71のいわば頂上対決にも少し触れてみたいと思います。
最近Xinを使う機会が多かったのでSR-71を取り出してみるといろいろと考えることもあります。そこでSM4とSR-71では単にA/B比較で白黒つけるというよりも、この機会に「SR-71再考」という視点で書いたほうがふさわしいと思うようになりました。SM4と比較することでかえって設計者のサミュエルズさんがSR-71にこめたものがよく見えるような気がしたのです。

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あらためてSR-71をSM4と比較するとまずハードとしての作りの優秀さが際立ちます。
SR-71は一年以上経ちますがいまだなんの不具合もありません。まさにもと軍事関係の開発をしていたサミュエルズさんらしく"Build like a tank"という感じです(彼は飛行機関係ですが)。
SM4は数ヶ月ですがヘッドホン端子に太い端子をつけたときの安定がやや心もとなく、ビスには錆も浮き出てきました。ぱっと見はそんなに大きい差はないように思えますが、このような細かい仕上げについてかなり差はあります。


SM4はオペアンプやバッファの仕様のバリエーションが豊富でそれによって大きく音が変わりますが、SR-71にはオプションはありません。Xinはバージョンアップを重ねていますが、SR-71はそうした大きな変更はありません。また音を変更するインピーダンス切り替えやベースブーストなどXinにある豊富な機能はSR-71にはありません。ただひとつの音がSR-71です。まさに「この音を聴け」というサミュエルズさんの主張が聞こえるようです。
ちなみにSR-71のオペアンプは公開されていませんがおそらくAD8610であろうと言われています。対してわたしのSM4はMaxed outということでOPA627+スタックバッファ(BUF634x2)Hi-Cモードというフル装備になっています。

Xinの言によればバッファのHi-Cモードの効果が現れるのは低歪み性能においてということです。それだけ音が正確なかたちで出るということでしょう。
実際にスタックバッファ+Hi-Cの効果は顕著で音の純度とかタイトさ、切れの良いシャープさ、楽器のきっちりとした分離感、SNなどにあらわされるクリアな感じはSM4の方が上です。ベースのピチカートなどはSR-71はやや丸みを帯びるのに対してSM4の方がくっきりとタイトで切れ味良く感じます。音の広がりも4チャンネルの威力か、3次元的な独特の広がり方は新世代を感じさせます。

しかしオーディオアンプとしての温かい味のある感覚や、高域の美しさによる味付けなど、ウェットで有機的な魅力はSR-71の方により大きく感じます。これはアンプが温まってくると顕著で、特にヴォーカルのウォームな表現でSR-71はかなり音楽的な鳴りを感じます。音の広がりはデュアルモノの効果で自然に左右に広さを感じます。
KSC35/CARDASはHD25/BDv2に比べると低域の押しが強すぎることもなくバランスよく聴くことができます。このKSC35/CARDASとSR-71と組み合わせると特にヴォーカルに暖かさ・滑らかさ・独特の質感を感じてとても印象的です。この組み合わせでジャズヴォーカルものを聴くとぞくっとする不思議な音楽的魅力を感じます。

HiFi、つまり高再現性という意味ではSM4に軍配が上がり、音楽性という意味ではSR-71の方により魅力を感じます。これはSM4が音楽性に劣る分析的な音というわけではありません。XinはXinなりに前にでるアグレッシブな音で聴かせてくれます。
ただSR-71の方がいぶし銀のこなれた魅力を持っています。気合を入れて超絶技巧テクニックを披露する若いSM4にくらべて、聞かせどころを心得た熟練ミュージシャンという感じです。


ここに書いたのは比較的という意味であって、もちろん他のアンプに比べればSR-71は性能という面でもぬきんでたものがあるでしょう。しかしSR-71はそれだけ取り上げると性能面が表に出てきますが、こうしてSM4-Maxedoutという強力な比較対象であるライバルが出てくると内なるSR-71の真の姿である音楽性の高いアンプという点が光ってくると思います。
SM4-Maxedoutではポータブルとは思えない豪華絢爛たる音空間にただ圧倒されますが、SR-71ではより音楽そのものに没入させる力があります。その力をオーディオというのではないか、とふと思いました。

アンプというのはオーディオ機器で一番設計にセンスが出るものだそうです。とくに海外のオーディオはつくった人の感性がそのまま反映されます。わたしがオーディオでLINNが好きなのも総帥たるアイバー・ティーフェンブルンの感性というか主張に共感するところが大きいと思います。
わたしはXinとサミュエルズさんのどちらが設計が上手かということについてはまったく判断できません、しかしこの二つのアンプを聴いていると二人の音楽経験や考え方まで見えてくるような気がします。

音楽を生かすためにはオーディオは無個性であるべきと考える人もいるかもしれません。しかしこうした音の個性を楽しむということはオーディオの大きな魅力の一つではあると思います。
ポータブルオーディオという世界においても、単に性能を競うというよりもこうして作り手の個性と音楽性が評価できるようになってきたことは喜ばしいことです。
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2005年08月21日

stereophileに載ったSR-71

ポータブルアンプのSR-71が権威あるオーディオ雑誌のstereophile誌に載ったというのが向こうのフォーラムで少し話題になっていましたが、わたしも今日そのstereophileを買ってみました。最新の9月号です。

SR-71はビシェイの抵抗やミリタリーグレードの基板など高品質なパーツを使っています。これはサミュエルズ氏がもと軍関係の仕事をしていた関係ということで、アンプの名前がSR-71だのホーネットだのと軍用機の名前を使っているのもそのためです。
ただしOPアンプはなにを使っているかは公式には秘密だそうで開けてもわざわざ型番が消してあるそうです。
レビューはおおむね好意的なもので聴こえなかったキースジャレットのハミングまで聴こえた、ということで解像力の高さを大きく取り上げています。iPod miniからMusicalFidelityのCD/DACコンポーネントにまでつなげてテストしています。MFの機器を使うのはのちにXCanとテストするからです。

テストでは昔のhedroom supremと比べるとさすがに隔世の感があるとのことですが、MusicalFidelityのXCan(V3)と比べるとHD650やAKG501などの鳴らしにくい系のヘッドフォンではさすがにXCanに分があると書いています。
またstereophileらしく計測テストもされていて、さすがにデュアルモノらしいチャンネルセパレーションの良さやノイズ・歪みの低さが高評価されています。

http://www.stereophile.com/
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2005年08月07日

ポータブルアンプのない風景

今回はバスの旅だったのでたっぷりと時間がありました。それで音楽でも聴こうと、HD25+SennV2とE5cを持って行きました。ただカメラ機材も多いのでSR71はおいて行きました。バスの中だとHD25でもまず音は漏れませんが、となりの人に威圧感を与えるのもうまくないのでE5cも持って行って混み具合で使い分けようと思いました。
往きは4割乗車率程度だったのでゆったりと二座席占有できました。そこでHD25で気兼ねなく聴きました。高速に乗るとふとスーパートランプのCannonballが聴きたくなりスーパートランプ・ベストとかAOR(死語?)流れでフィルコリンズ・スーパーヒッツなんていうのを聴いていてもあまりアンプがないのは気になりません。
The Very Best Of Supertramp
そのうち車窓の景色も移り変わり、灰色から緑が増えてきます。今回は書きかけの原稿を少し持ってきているので、ちょっと考え事をしていてアルヴォ・ペルトのスターバト・マーテル(ミサ曲の現代版編曲)が聴きたくなり再生してみると、アンプなしではあの静謐でかつ切れるような魅力にはちょっと欠けます。
まあバスの中でこんなの聴くなよと言うのもありますが、SR-71を加えていると電車の中でもこの曲を聴くと思考トリップできます。SR-71をおいてきたことをちょっと後悔しました。

「アンプ=パワー」というイメージも多いのかポータブルアンプというとiPodで大きなヘッドホンを付けて大音量でガンガンならすため、という感を持っている人も多いと思います。でもこうしたアンプはそれよりも一つ一つの音の響きと美しさを楽しむようなピアノ、ヴァイオリンなどアコースティク楽器や声楽曲を楽しむ人にこそお勧めしたいものです。

そして帰りは。。疲れたのでひたすら寝てました(笑)
posted by ささき at 00:28| Comment(4) | TrackBack(0) | __→ RSA SR-71 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月18日

SR-71電池切れ

今日の朝に出かけようとするとSR-71の音がはげしく割れていました。とうとう電池切れのようです。だいたい私の使い方で2週間ほど持つようですね。
しかし昨日はなんともなかったのでもしかするとスイッチ切り忘れかもしれませんけど(汗)
乾電池式のいいところは出先でも買えるところで、ちょっと家電量販店があればそれなりの値段で9Vを買うことが出来るので家までお預け、ということはありません。

SR-71の電池交換は下記のように指で回せるネジをゆるめてバックプレートを外します。
非常に簡単ですね。

SR71e.jpg
posted by ささき at 23:55| Comment(0) | TrackBack(0) | __→ RSA SR-71 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月16日

SR71と電池

RSAのSR-71は買ってから一日平均1〜1.5時間ほど使ってますが、まだまだ電池は持っています。けっこう持ちますね、というかインジケーターがないのでどうなれば電池が終わったのか分かりません(笑)
まあ他のと同様に音が割れ出したら終わりだと思いますが、急に終わるのか、徐々に終わるのか、、

SR-71は9Vが二個なのでランニングコストがやや高いのが困りものです。いまはパナソニックのを使ってますが、ヨドバシで二個で890円ほどです。
そこでまたしても100円ショップに行って(笑)電池を探しましたら9Vもありますね(中国製)。これなら二個で210円です。
しかし、試しにいれて見ると、パナソニックのときに比べて音の締りや歯切れのよさ、SN感などすべての面で劣ってしまいます。やはり電池も違いますね、またパナソニックにもどしました。うん、これです。SR-71のしゃきっとした気持ちの良い世界がもどりました。
オキシライドで9Vがあればいいんですが、、
posted by ささき at 19:59| Comment(5) | TrackBack(0) | __→ RSA SR-71 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月10日

SR71とロスレスとAAC

iPod/HD25と組み合わせたSR-71はほんとうに驚異的な音の世界を作り出してくれます。
SR-71のありなしを一言でいうとスターウォーズの第一作と最新作くらいの違いがあると言えるかもしれません(笑)
ストーリーとか中身は同じですが、高度な表現力の差でずいぶん違ったものに見えます。アンプとしてはヘッドホンアンプというよりはピュアオーディオアンプを思わせる本格的なもので、直接的には色付けの少なさとスピード感から四十七研究所のゲインカード(4706)をちょっと思わせます。

しかし高性能すぎると反面で気が付かなくて良いものまで気になってしまうということもあります。
それはエンコーディングの違いです。普通は192kbpsくらいのハイビットレートでAACでエンコードすれば圧縮音源とはいえほとんど劣化が気にならないはずです。
音の圧縮は聞こえない音を削るというより、本来気にならない部分を削るという方がより正しいと思いますがその部分が気になりだすという感じです。
具体的にいうと音そのものではなくてその周りにあって音を豊かにしている部分に違いが出るようです。これは聞き比べて分かるという感じですので少し誇張して言うと、
AACはやや硬く乾いて聞こえます。ロスレスはより豊かにある意味でウェットに柔らかく聞こえます。
これはアコースティック楽器を中心とした音楽では顕著ですが、ロックなどはかえってAACの方がアタック感が感じられてかっこよくなったりするので好みの問題もあるかもしれません。

いずれにせよこれで自分の音楽ライブラリのロスレス化を進めています。すると容量も5倍になり、せっかくminiから20Gに5倍にしたiPodが打ち消しに(爆)
やはり60Gにしておくべきであったか。。
posted by ささき at 23:00| Comment(5) | TrackBack(0) | __→ RSA SR-71 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年07月05日

ポータブル・ヘッドホンアンプ SR-71を入手しました

少し前にここで紹介記事を書いたEmmeline SR-71ポータブル・ヘッドフォンアンプを注文していたですが、週末に届きました。

SR71a.jpg

オーダー先はヘッドホン関係では有名なアメリカのTodd The Vinyl Junkieです(ちなみにVinyl=ビニールはLPレコードやアナログ盤の通称です)。
USPS Priorityで約一週間から10日、日本では郵便局の速達として配達されます。
さきの記事を書いたときにSR-71かSuperMacroを買おうと思いましたが、アンプの個性に引かれてこちらを選びました。詳しくはこちらのリンクをご覧ください。

基本的に手作りアンプですので、届いたパッケージには箱はありませんし説明書もありません。Toddさんの名刺が入ってただけです。この名刺が保証書かもしれません(笑)
しかし質感は高くとても手作りとは思えません。ヘアラインを切ったボリュームノブや厚みのある外装ときれいに印刷されたシルクスクリーンのレタリングは満足感の高いものです。工作精度はとても高いように見えます。

SR71d.jpg

その背面のレタリングには"DUAL MONO HIGH RESOLUTION"と誇らしげにうたっていますが、これこそSR-71の一番の特徴といえます。SR71は2個の9V電池を必要としますが、これらがそれぞれ独立したLとRの電源として働き、増幅回路も分離されています。
まずテストドライブとしてゼンハイザーHD25、Shure E5cを使いました。システムはiPod/iPod miniからポケットドックでLine出力を介してDrHead付属のmini-miniケーブルを使って接続しています。

SR71b.jpg

音を出してまず驚くのは音場の豊かさです。ヘッドホンの弱点は頭の中に音がこもってしまうことですが、SR-71ではそれらが解き放たれたかのように豊かな音場に広がります。これはあまりポータブルでは体験したことのない感覚です。豊かといったのは単に左右の広がりがあるだけでなく、前後や距離感をも含めた3次元的な音の定位さえ感じるので無理に引き伸ばしたという感じではなく自然にステージに楽器が置かれているように感じたからだと思います。
またそれぞれの音の分離もかなりはっきりとしています。この辺がまずデュアルモノの効果のようです。

低域は力感があってかつとてもタイトに締まっています。これはジャズのアコースティックベースでもロックやポップのエレクトロニカでもかなりいい感じです。
そして高域は..HD25と組み合わせてびっくりです。いままでHD25のところで書いたようにキンキンとしたブライトで聴き疲れすると思ったHD25の高音がなんと繊細な高音というイメージに変ってしまいました!これはまるでマジックのようです。高域をコントロールするというのはこういうことですね、これぞアンプの力です。

またアタックやスピード感というか音の立ち上がりと立ち下げのような歯切れもよいので、締った低音とともにビート系の音楽にも向いてますし、整った高音もあいまってアコースティク楽器のフレット音や胴鳴りもリアルです。これはHD25に特に向いていて、こうしたダイナミックさからHD25の真にあるべき姿が見えるような気もします。
海外のSR-71のレビューで小さいことでかえってシグナルパスが短縮されて良い面もあるのではないかという話がありましたが、納得できます。

もうひとつ特筆すべきところは背景ノイズの少なさです。これは高能率のE5cを使うとよく分かります。
これはE5cを聴く上ではかなりプラスです。さきの音のエッジの鋭さもあってE5cでER-4のように聴こえるというのは新しい体験ですね。これならUE-10のように同様な高感度タイプも良い結果が得られるでしょう。

ヴォリュームノブもヘアライン仕上げで質感が高いだけでなく大きくてまわしやすく、さらにゲインのせいかちょっとまわしてピーキーに反応するということはないのでコントロールが容易です。これもE5cにはプラスです。
電源スイッチは始めは小さく押しづらいと感じますが、大きなヴォリュームノブの影のところにあるのでノブ自体がプロテクターとなりバッグの中で間違って押すことは少ないかもしれません。
重さはDrHeadよりやや重く感じます。また密度感がありちょっと落下に気を使います。ただ頑丈なので落としても大丈夫かもしれません。あえてテストはしませんが(笑)
電池はバックプレートを外して入れるようになっていて、簡単に指でまわせるスクリューねじで止まっています。
ちなみにDrHeadとの大きさの比較は下記のようになります。音の比較としては次期DrHead2が出てから比較する方がフェアとは言えるかもしれません。

SR71c.jpg

解像力も高くていままでポータブルでは聴こえなかったような小さい音も拾うし、全体的な性能はかなり高いと思います。
またアンプの色付けは少ない方だと思います。そのためにソースの力やシステムの限界をそのまま明瞭にする感じも受けます。それゆえにMP3プレーヤーの限界は圧縮フォーマットよりもむしろプレーヤーのDACなどにあるという感じがします。他方ではHD25のメリハリのついた特徴やE5cのフラットさとウォーム感がはっきりわかるということもあります。機器の特徴をそのまま引き出すとも言えるかもしれません。
そのため今度はホームシステムに組み込んで試してみたいと思いますが、SR-71がmini端子のみなので用意できたらということになりそうです。
それにしても小型でこんなにすばらしいならSamuels氏の他の据え置きタイプも気になるところです。
posted by ささき at 00:22| Comment(56) | TrackBack(1) | __→ RSA SR-71 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年06月22日

ハイエンド・ポータブルヘッドホンアンプ SR-71とSuperMacro

これもUE-10や2X-Sのように日本ではあまり語られないポータブル機材です。ヘッドホンアンプですらかなりマイナーな機材ですが、ポータブルのヘッドホンアンプとなるとかなり選択は限られてしまいます。
欧米にはDrHeadのようなポータブルのヘッドフォンアンプとしてPortaCorda(現行は3型)やHeadroomのAirHeadやBitHeadシリーズ、また少しマイナーなものだと小型のMINTやiPodに背負わせられるSimpl A1などがありますが、これらは性能的に言うとどちらかというとエントリークラスのものです。しかしこの世界にもハイエンドのものがあります。それがRay AudioのEmmeline SR-71とXin fengのSuperMacro V3です。
アメリカのこうした会社はたいていガレージメーカーですが、ここでも例に漏れずそれぞれ会社の名前は代表者の名前からきています。欧米のオーディオメーカーは代表オーナーの音決めで大きく個性が変るといいますが、この二社も次のように個性的な対比を見せています。

Emmeline SR-71

Ray Audioのホームページ
http://www.raysamuelsaudio.com/

SR-71は驚くことには恐らく世界最小の電源まで独立した完全デュアルモノ構成のアンプで9V電池を二個(つまりLR別に)使います。乾電池のみの使用ですが電池のもちはかなりよいようです。
オーナーのRay Samuelsという人はこの界隈ではわりと有名な設計者らしく、むこうのフォーラムではたまに名前を見かけます。
SR-71は次に紹介するSuperMacroとは対照的に質実剛健タイプのようでクロスフィードのような機能はありません。筺体はかなりソリッドで入力はミニのみです(RCA端子はない)。
音は刺激的な音を避けた音楽性重視で、デュアルモノの効果か音場は広くクロスフィードのような機能はそれゆえ不要とか。据え置きの中級クラスにも匹敵するようです。
検索するときは"SR-71"だと死ぬほど出るので"Emmeline"をキーワードにつけましょう(笑)

レビューは次のようなページがあります。
http://ipodstudio.com/reviews/showproduct.php/product/74

http://www.6moons.com/audioreviews/emmeline/sr71.html

http://www.enjoythemusic.com/magazine/equipment/0105/emmlinesr71.htm


SuperMacro Version3

Xinのホームページ
http://www.fixup.net/

対してSuperMacroは小型とは思えないほど多機能で、電源は充電池(AAAx8)です。大きさ的にはSuperMacroがSR-71よりやや小さいですが、充電池のために重さは同じと言います。重さは6.5オンスといいますのでだいたい200g弱のようです。こちらはAC電源も使用ができます。(ただしこちらもRCA接続はありません)
特徴としてはオプションが多くて、なんとインピーダンススイッチでER-4Pを4S相当にできるとあります。つまりあの変換ケーブルが不要なわけです。他にも低音ブースト機能やクロスフィード、またゲイン切り替えまであります。
これらのオプションのために専用の基板があるほどです。そのためホームページの写真のように内部は二枚の基板で構成されています。
またホームページにはOPアンプのリストがあって、マニュアルには取り替え方の指示まであります。Head-Fiあたりのレビューを読むとバッファオプションも変えられるようですが、クロスフィードのあるなしはともかく、オペアンプの選択やバッファーオプションと電流やインピーダンスの関係などちょっと専門的な知識がないと選択が分からないという感じです。
それともうひとつの特徴としてバージョンアップが多いこともあげられます。現在は3月に出たばかりのV3が最新で音的な向上がかなりあるようです。音的にはV1のころはかなりダイナミックで高音も低音もメリハリがあったということです。ただしV3になってかなり落ち着いてきたようでHI-FI志向を目指しているようにも思えます。
検索するときは旧名称の"SuperMono"も良いキーワードかもしれません。

レビューは次のようなページがあります。またXinの上記ホームページからもレビューがたどれます。
http://www.misticriver.net/boards/articles.php?action=viewarticle&artid=12

下記にはオペアンプの交換レビューなどもあります。
http://www4.head-fi.org/forums/showthread.php?t=119401

このようにとにかく味のある良い音を聴きたい人はSR-71で、いろいろこりたいひとはSuperMacroという住み分けもありかもしれません。
音については実際聴いてみないと判断できませんが、レビューから推測するとだいたいSR-71とSuperMacroV3はほぼ拮抗で、他のエントリークラスのものとはかなり差があるということのようです。
もうちょっと高いものではHeadRoomのCosmicやRayのXP-7もありますが、このクラスになるとiPodと組み合わせるには大きいということになると思います。ポータブルCDPと組み合わせるなら良いかもしれません。
またRayもXinもより小型のものを製作中とのうわさもあります。

こうした高音質指向のほかの流れとしては小型のヘッドホンアンプへのUSBの搭載があります。これはPCにつけることを前提としたもので、BitHeadやPorta CordaIIIなどがあります。

またポータブルアンプの全リスト?はこのHead-Fiのスレッドにまとめられています。
http://www4.head-fi.org/forums/showthread.php?t=103327
posted by ささき at 01:03| Comment(6) | TrackBack(0) | __→ RSA SR-71 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする