久々にiQubeのレビューをします。新しいV5のレビューです。
iQube V5
V5においては外観はV3とほとんど変更ないのですが、中身は回路再設計やバッテリー変更で大きく変わっています。あえてV4をスキップしたのはV3からの差が大きいということを強調したいからだそうです。
すでにタイムロードはiQubeの国内代理店を終了していますが、本記事ではQables直販でのV5への優待アップグレードの情報と共にこのV5の紹介をします。
* iQubeのこれまで
さて、iQubeもTriFiやWestone30同様に、解説の前にまずは昔話から始めましょう。
2006年はTriple.fi、Westone 3、E500とハイエンドイヤフォンの革新が見られましたが、その翌年2007年は今度はポータブルアンプの当たり年でした。
4月にはポータブルアンプとして初めて真空管が使われたMillet Hybridが発売されました。
6月はおなじみMeier Audioのアナログ傑作機Moveが登場し、8月にはポータブルアンプと同軸/光/USBをサポートしたポータブルDACの一体型機、iBasso D1が出ました。このDAC内蔵分野は老舗のHeadroomもMicroで追いすがります。
左からMillet Hybrid, CORDA Move, iBasso D1
こうしてポータブルアンプに真空管が乗ったり、DACが内蔵されて進化していく中、10月にはポータブルアンプにクラスDアンプが搭載されるという記事が載りました。HeadFiではなく当時iPod Studioっていうフォーラムがあって、そこも活発だったんですがそこにひっそりとオランダのQablesというメーカーが案内を出し、海外分は20個という割り当てがされました。私はポータブルでのデジタルアンプということで飛びついたのですが、実のところ海外分は半分の10個程度が売れたのみでした。のちに人気を博することになるiQubeも始まりはこのようなものでした。
2007年は他にもなつかしのXinの最後の作Reference、ド級アンプの先駆けLISA IIIの登場なんかもありました。いまから思うと2007年はおそらく前年に登場したハイエンドイヤフォンに刺激されたことで、まるでカンブリア紀の爆発のように多種さまざまな種がポータブルアンプの世界に登場したわけです。いまに続くポータブルのソース機材とイヤフォンとの良い依存関係がこの頃に始まったと言えるかもしれません。
そのころ日本ではまだまだヘッドフォンオーディオは発展途上であり、ヘッドフォン祭の前身であるハイエンドヘッドフォンショウを中野ブロードウェイの会議室でこじんまりとやっていた時代でしたが、それはまた別の話です。
当時のiQube V1とSR71
はじめは細々としたスタートを切ったiQubeですが、後にベストセラーのように人気を博したのはやはり性能の高さでしょう。
iQubeの売りは元フィリップスにいたD級アンプ(デジタルアンプ)設計の第一人者のBruno Putzeysが設計した本格的なデジタルアンプが採用されたポータブルアンプであると言うことです。PutzeysはいまではHypexなどで有名ですし、Mola Molaを知っている人もいるかもしれません。
デジタルアンプは出力インピーダンスが非常に低い(スピーカーで言うダンピングファクターが高い)という点が特徴でヘッドフォンをがっしりと制御する力に長けていると言えます。またiQubeのデジタルアンプならではの歪みのなさはすっきりと端整な音に現れているでしょう。そしてもちろん効率の良さからくる消費電力の少なさです。
Brunoがこうしたポータブル製品に参加してくれたのは、初めてデジタルアンプをポータブルで採用すると言う興味からだったろうとQablesのハンスさんは語ってくれました。QablesのハンスさんがBruno PutzeysやGuide Tentといったオランダのオーディオオールスターズのような豪華チームをそろえてこのiQubeという製品をプロデュースしたわけですが、ハンスさんはAppleの"Look&Feel"によくマッチするような優れたオーディオ製品を作りたかったというのが動機だったそうです。デザイン的にはレトロとモダンの調和を図ったということでした。たしかにiQubeは性能だけではなくデザインも優れていますね。
2008年には日本でタイムロードさんがiQubeを輸入販売して当時はベストセラーになるほどの売れ行きとなりました。
2009年には簡易的なUSB DACがついたV2が発売されました。オリジナルではバッテリー交換が面白かったんで、ちょっと残念かとも思いましたが、V2ではバッテリーが内蔵型となりました。
そして2012年にV3が登場します。v2とv3は光とSPDIFのデジタル入力が可能となったことが大きな特徴です。
仕様はUSBが48kHz/16bitまで、SPDIF/光入力は192/24までとなります。SPDIFは4ピンのミニ端子の入力で、RCAメス->ミニ端子のケーブルが付属しています。こちらのレビューも参考に。いまならAK100などを使う光出力ソースが当時はでかいQLS QA-350というところが泣かせます。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/246334145.html
* V5の特徴
そして昨年、先に書いたようにV4はスキップされ大幅に改良がくわえられたV5が登場しました。
iQube V5
まず目玉のD級アンプの回路は御大Bruno Putzeysの手によって、再設計されました。主な眼目は能率の低いヘッドフォンに適合するためのパワーの増大です。また以前よりも効率がさらに良くなっているようです。
また残りの回路はBrunoの片腕であるBart van der Laanによって再設計されています。基盤も再設計されて4層のメディカルグレードとなってフロアノイズの低減がなされています。Bartによる再設計の目玉は新しい電源回路です。これによってより安定した電源供給が可能となっり、アンプのパワー増大にも貢献しています。
またバッテリーはそれまでのNiMHからリチウムに変更されています。これも大きい変更で、たとえば以前はデジタルアンプでバッテリーの持ちが良いと言っても一日に数時間使ってしばらくほおっておくと自然放電でかなり低下しますので、実質のバッテリーの持ちは意外とよくなかったのですが、リチウムならばデジタルアンプの効率の良さを生かせます。ちなみにV5ではアナログのみで40時間、DAC込みで12時間使えるということです。
またV5ではハイレゾ再生能力が高くなり、USBは192/24対応となりました。DSDは5.6MHzまでネイティブ再生(DoP)で対応します。(ただしUSBポートがミニのままなのが残念なところ)。
そして操作系がROM搭載となり、より詳細なLEDによる状態表示ができるようになっています。
細かいところではゲインがそれまでの低2/高7から、低0/高6に低められています。これは高感度IEM対応にも良いかもしれません。
このようにV5では外観は変わりないのですが、中身は「唯一変わったのはその全て」というどこぞのキャッチそのままで別物というくらいに変わっています。
* V5の音と使用感
パッケージはいままでと同様に缶ケースに入っています。同梱はケーブル類で、USBケーブル(mini)の長短二本のほかに、SPDIF同軸デジタルケーブルのRCA/miniアダプタケーブルが入っています。
取り回しはほとんどV3と同じです。USBプラグがminiのままなのはポータブル使用では難かもしれませんが、据え置きで使う分にはもしかすると高品質USBケーブルの選択ではUSB mini端子もいぜん多いかもしれません。
使用形態はV3と同様に光デジタル、同軸デジタル(専用アダプターがついています)、USB(mini)、アナログ入力があります。ここでは光デジタルでDAC一体型アンプ、アナログ入力で普通のヘッドフォンアンプとして二通りで試してみました。
AK100+光デジタル+V5
まずAK100IIと光デジタルでiQubeをDAC+アンプとして聴きました。ケーブルはSys-conceptの以前のV3用に作ったのがそのまま使えます。タイムロード/アユートの光ケーブルでも良いです。主にマベカスとBeat Signalを使いましたが、やはり高性能イヤフォンだけではなくケーブルもSignalクラスのケーブルが欲しいほどの高音質です。
音は整っていてデジタルアンプらしく正確さを感じます。SNが高く音の形の明瞭感がくっきりとし、透明感も非常に優れていますね。楽器の音の歯切れの良さは鋭いのですが、きつさはさほど感じません。躍動感があって、ジャズトリオなんかはシンプルな音の際立つ正確さやくっきりとした明瞭感、パワフルな躍動感にちょっと感動すると思う。
やはりパワーアップしたせいかもしれないけれど、アンプ部分はかなり性能向上されたように思います。V1の当時からすると、周りに優れたアンプが増えたんですが、今日の水準と比してもトップレベルだと思います。
このまま光デジタルでV3とV5を比べると、V5ではかなり透明感が上がって、よりクリアになるとともに音場も開けたように感じられるようになります。V5ではひとつひとつの楽器の音もより先鋭で、ヴォーカルの発声も明瞭感が上がっています。音の一つ一つの歪のなさもより少なくなって明確な形ですね。V5では周波数的にも低いほうと高いほうの限界がより広がったように、高い音はより伸びて、低い音は沈み込む感じです。ただしV3とV5では全体のニュートラルでよく整ったiQubeとしての音の個性はほぼ変わらないで、全体的に鮮明さが大きく上がったという印象ですね。
V5からV3に戻すと音がだるく感じられ、鮮明さが後退して濁った感じになります。もちろんV3の音もよかったわけですが、V5と比較すると大きな差があると思います。
RWAK120+アナログ+V5
次にアナログ接続を試してみましたが、V3のアナログ入力の具合が悪くV5とV3のアンプ自体の差の比較はできませんでした。アナログケーブルはDirigent Red(Crystal Cable Micro)です。イヤフォンは同じくマベカスとSignalを使いました。
V5で試すと、アナログ接続でのiQubeの音の良さに久々に感銘しました。DACなしでコンパクトにアナログアンプだけでも良かったのではないかと思いますね。全体的な音の整った感じはやはりデジタル入力のほうが良いかもしれませんが、このグッと力感がみなぎる感じはいかにもアンプを付けたというアナログ入力ならではの魅力があります。アナログソースのDAPの魅力を生かしたい人には好適です。
はじめはAK100IIのアナログ出力で試していましたが、これはすごいというのでRWAK120(AK120のWM8741x2に改造したラインアウト専用版)に変えたところRed Wineらしい暖かい有機的で高精細な音と、iQube V5の正確で歪みなくワイドレンジの高性能さのマッチングが素晴らしいですね。RWAK120のラインアウトのみっていう潔さがよく似合います。
RWAK120とアナログ入力での組み合わせは濃くて有機的で分厚い感じ、力感と重みがよく乗っています。細かい表現でもWM8741のフラッグシップDACらしさがよく伝わってきます。AK380をアナログ入力してもAK380のよくま整った音の感じが伝わりかなり高レベルの音です。
AK380でも使ってみましたが、同じように力強さと厚みが感じられるのでこれはiQube由来の良さでしょう。AK100IIと光接続で内蔵DACを使ってもよい音ですが、少し軽めに感じられます。
iQubeのアンプは上品なイメージでしたが、V5ではパワーアップしたことで力感が加わってよりアンプっぽくなったと思います。デジタルアンプっていうと硬いイメージだけど、悪い意味での硬さはないですね。強靭という意味なら当たってます。アタック感は鋭く強靭です。
* まとめ
V5のDACも悪くはないけれど、アナログ入力でのアンプの音を聞くとやはりiQube V5はALOのContineltal Dual MonoのようにアンプメインのDAC内蔵型かなととらえたほうがよいように思います。RAWK120(WM8741x2)のような優れたアナログソースプレーヤーと組み合わせたiQube V5は素晴らしいオーディオらしい音、豊かで力強く整っていて躍動感がある、を再生してくれます。もちろんDAC部分も悪くはありませんが、いまはAKプレーヤーのように良いアナログソースが増えましたからね。
V5で生まれ変わったiQubeは音質レベルの高さも現行のトップクラスに比肩できるくらいのレベルがあると思います。
マーベリックカスタム/Signal
AK380とかRAWK120のように優れたアナログソースを持っている人はアナログ接続、AK100などを活用したい人はDAC一体型として使用、などの使い分けができると思います。iQube再訪というのもよいのではないでしょうか。
* アップグレード情報
最後に既存のiQubeユーザーへのハンスさんからの優待アップグレード情報です。タイムロードさんは関与いたしませんので、Qablesと直接に取引をお願いします。(私も関与いたしませんのであしからず)
現在ヨーロッパにおいては稼働状態のV3を返品することで、200ユーロ引き(税抜き)でV5を販売しているということです。購入者が行きの送料を負担して、Qablesが帰りの送料を負担するそうです。これはヨーロッパでの話しで米国でも考慮中だがまだ開始していないとのことです。
日本でもQablesと直接にやり取りをすることで、ヨーロッパ同様のディスカウントを考えてくれるそうです。ただしコンディションがあるので、直接QablesのHansさんにメールして、ケースバイケースで判断すると言うことです。またV1においても考慮するとのことなので、興味のある方はQablesのHans Oosterwaalさん(sales@qables.com)にメールしてください。
QablesのiQubeページはこちらです。
http://www.qables.com/iqube
Music TO GO!
2016年02月23日
2012年01月15日
デジタル入力を持ったiQube V3登場
人気のハイエンドポータブルアンプのiQubeに新型のiQube v3が登場します。
iQube V3+QA-350+Sys concept
1/18から発売予定です。こちらタイムロードさんのリリースです。
http://www.timelord.co.jp/brand/products/qables-com/iqube/v3/?mode=consumer
http://www.timelord.co.jp/blog/news/release_iqube-v3/?mode=consumer
iQubeというといまやハイエンド・ポータブルアンプの代名詞的なものですが、その始まりはつつましやかなものでした。一番はじめにiQubeがアナウンスされたときはHead-Fiではなく、いまはなきiPod StudioというiPod関係のフォーラムだったんですが、そこでオランダ以外の海外枠を募集したところ、私を含めて全世界でわずか数人と言うものでした。しかし、日本で国内発売されると少しずつ人気を延ばしていき、いまでは大変高い人気と不動の地位を占めるまでになっているのはやはり基本性能の高さです。
今回はそれにデジタル入力がついたと言うことでまた応用例が広がりますのでその辺を中心に紹介していきます。
*iQube V3の特徴
iQubeが発売されたのは2007年のことで、その年は真空管使ったMillet Hybridなどポータブルアンプ世界の大きな進化が見られた年でした。
ここで少しおさらいをしたいと思います。
iQubeの売りは元フィリップスにいたD級アンプ(デジタルアンプ)設計の第一人者のBruno Putzeyが設計した本格的なデジタルアンプが採用されたポータブルアンプであると言うことです。出力インピーダンスが非常に低い(スピーカーで言うダンピングファクターが高い)という点が特徴でヘッドフォンをがっしりと制御する力に長けていると言えます。スピーカー用のデジタルアンプだとNuForceのIA-7なんかがコンパクトの割には非常に高いダンピングファクターを誇っていますね。またiQubeのデジタルアンプならではの歪みのなさはすっきりと端整な音に現れているでしょう。
v1とv2はバッテリーが交換できなくなったこととUSB DACがついたことがあげられますが、v2とv3は光とSPDIFのデジタル入力が可能となったことが大きな特徴です。
仕様はUSBが48kHz/16bitまで、SPDIF/光入力は192/24までとなります。SPDIFは4ピンのミニ端子の入力で、RCAメス->ミニ端子のケーブルが付属しています。光は角型入力端子です。(後述)
*実際の使用例
アナログシステム
- iPod
一番ベーシックな構成です。
デジタルアンプ回路自体は変化がないようですが、そのほかにもパーツなどが交換されているのか、以前から持っているiQube v1とこのv3を比較すると音質もより向上しているように思えます。特にヴォーカルなど中音域の明瞭感があがり、全体的にもよりバランスの取れた自然な音再現になっているようです。
- Walkman Z
Walkman Zからラインアウトを取るにはオヤイデのLODを使用しました。これは低価格の割りに音が良いと思います。再生アプリはPowerAmpを使用して音源はアップルロスレスを使用できます。これもなかなか相性の良い組み合わせと言うか、iQubeの持っている正確な音再現がより磨かれるように感じられます。
デジタルシステム
- PC
光経由でPCにつないで音を出してみましたが、かなり明瞭感・解像感の高い音でDACの性能はかなり良いように思います。
ただ比較するとUSBがちょっと弱いかもしれません。USBだと48kHzが最大と言うこともあるので、PC/USBとは光や同軸デジタルが取り出せるDDC経由でつなぐと良いかもしれません。
- QLS QA-350
これが今回のハイライトですが、光入力と言うことでひさびさにポータブルデジタルシステムのこったのを組み合わせてみました。
以前デジタルのポータブルシステムと言うとトランスポート側はiRiverのiHP140を使うのが定番でした。たとえばiHP140とiBasso D10などです。これはデジタルを出せるDAPが光出力の付いたiHP-140しかないという限定された選択肢だったんですが、いまではこのQA-350のようにちゃんと高精度クロックやジッター低減された高音質のトランスポートとして設計された機器をポータブルでも使用することができるようになりました。
QLS QA-350のページはこちらです。
http://qlshifi.com/en/wzcapi/qa350_mod_v2.htm
QA-350は人気も高いSDカード・トランスポートであるQA-550のポータブル版です。QA-550との違いはトランスポート部は同じで、それにバッテリーとDAC、ヘッドフォンアンプ部がついていて、これだけでHM801みたいに単体のDAPとして機能します。私が買ったのはQA-350 mod v2というタイプでパーツ交換などいくつか公式改造がされたものです。
これはヘッドフォンアンプ部にAD8397を使用しています。8397自体はオペアンプですがバッファが内蔵されているのでこれ一発でヘッドフォンアンプとして機能します。8397自体嫌いではないんですが、Xinとやりとりしてたような時期の古いものなので、いまとなってはアンプ周りはディスクリートで組んでほしいと言うのがあります。その分でQA350をバッテリー式のトランスポートとしてv3のようなDAC内蔵の高性能アンプと組み合わせるのが理想的といえます。
ただ価格を考えると単体DAPとしても悪くはありません。
Sysconceptの光ケーブル
QA-350は光デジタルアウト(丸)とSPDIFアウト(RCA)の2系統があります。光は角ではなく丸端子なので注意ください。光デジタルケーブルはSys-ConceptのiHP140とiBasso D10をつなぐためのものを流用しました。Sys-conceptのケーブルはこちらのリンクです。
http://www.sysconcept.ca/product_reviews_info.php?products_id=349&reviews_id=86
これは最小距離をとるために機種ごとにカスタムオーダーしています。ここで流用するためには適当にクリーニングクロスなどをスペーサーにして距離を調整しています。
SPDIFは短いケーブルがないので、オス・オスのRCAジョイントプラグ(別売)を使用しました。それにiQubeに付属しているRCAメス-4pin miniのケーブル(上の写真)を使ってiQubeとつなぎます。このiQube側の端子はアナログ・デジタル共用で自動判別します。インピーダンス整合がどうこういうデジタルケーブルでこれでいいのかという気もしますが、きちんとロックします。
これで最短な気がしますが、やはりコンパクトな光ケーブルに比べるとかさばります。音も光とSPDIFで比べてみたところさほど変わらないのでコンパクトな光のほうで使っています。自作できる人ならもっとコンパクトに結線できるのかもしれません。
このシステムの音は濃くて実体感と言うかしっかりとした質感があります。単に解像感が高いとかシャープと言うよりは、質感が高い・情報量というか密度が高い音という感じですね。
ふつうのアナログシステムにもどすと、あっさりと薄味というかなにか物足りなくなります。
問題点はQA-350がWAV専用であり、操作性はRockbox+iHP140より使いにくいと言う点です。
またポータブルでDACも使うとバッテリーをかなり消費するように思います。
かさばるのも難点ですが光ケーブルを使うと意外とバックへの収まりは良いのでこれは実用範囲内です。
−SOLO+iPod
SoloはDDCとしてSPDIFが出せるので同様なシステムを組むことができます。iPod/iPhoneを使えるのは良いんですが、ただしこれだとケーブルを含めてかさぱってしまうので実際には使用していません。
ひさびさにデジタル入力がついた本格的なポータブルアンプと言うことで、いろいろと面白いシステムが工夫できるのではないでしょうか?
iQube V3+QA-350+Sys concept
1/18から発売予定です。こちらタイムロードさんのリリースです。
http://www.timelord.co.jp/brand/products/qables-com/iqube/v3/?mode=consumer
http://www.timelord.co.jp/blog/news/release_iqube-v3/?mode=consumer
iQubeというといまやハイエンド・ポータブルアンプの代名詞的なものですが、その始まりはつつましやかなものでした。一番はじめにiQubeがアナウンスされたときはHead-Fiではなく、いまはなきiPod StudioというiPod関係のフォーラムだったんですが、そこでオランダ以外の海外枠を募集したところ、私を含めて全世界でわずか数人と言うものでした。しかし、日本で国内発売されると少しずつ人気を延ばしていき、いまでは大変高い人気と不動の地位を占めるまでになっているのはやはり基本性能の高さです。
今回はそれにデジタル入力がついたと言うことでまた応用例が広がりますのでその辺を中心に紹介していきます。
*iQube V3の特徴
iQubeが発売されたのは2007年のことで、その年は真空管使ったMillet Hybridなどポータブルアンプ世界の大きな進化が見られた年でした。
ここで少しおさらいをしたいと思います。
iQubeの売りは元フィリップスにいたD級アンプ(デジタルアンプ)設計の第一人者のBruno Putzeyが設計した本格的なデジタルアンプが採用されたポータブルアンプであると言うことです。出力インピーダンスが非常に低い(スピーカーで言うダンピングファクターが高い)という点が特徴でヘッドフォンをがっしりと制御する力に長けていると言えます。スピーカー用のデジタルアンプだとNuForceのIA-7なんかがコンパクトの割には非常に高いダンピングファクターを誇っていますね。またiQubeのデジタルアンプならではの歪みのなさはすっきりと端整な音に現れているでしょう。
v1とv2はバッテリーが交換できなくなったこととUSB DACがついたことがあげられますが、v2とv3は光とSPDIFのデジタル入力が可能となったことが大きな特徴です。
仕様はUSBが48kHz/16bitまで、SPDIF/光入力は192/24までとなります。SPDIFは4ピンのミニ端子の入力で、RCAメス->ミニ端子のケーブルが付属しています。光は角型入力端子です。(後述)
*実際の使用例
アナログシステム
- iPod
一番ベーシックな構成です。
デジタルアンプ回路自体は変化がないようですが、そのほかにもパーツなどが交換されているのか、以前から持っているiQube v1とこのv3を比較すると音質もより向上しているように思えます。特にヴォーカルなど中音域の明瞭感があがり、全体的にもよりバランスの取れた自然な音再現になっているようです。
- Walkman Z
Walkman Zからラインアウトを取るにはオヤイデのLODを使用しました。これは低価格の割りに音が良いと思います。再生アプリはPowerAmpを使用して音源はアップルロスレスを使用できます。これもなかなか相性の良い組み合わせと言うか、iQubeの持っている正確な音再現がより磨かれるように感じられます。
デジタルシステム
- PC
光経由でPCにつないで音を出してみましたが、かなり明瞭感・解像感の高い音でDACの性能はかなり良いように思います。
ただ比較するとUSBがちょっと弱いかもしれません。USBだと48kHzが最大と言うこともあるので、PC/USBとは光や同軸デジタルが取り出せるDDC経由でつなぐと良いかもしれません。
- QLS QA-350
これが今回のハイライトですが、光入力と言うことでひさびさにポータブルデジタルシステムのこったのを組み合わせてみました。
以前デジタルのポータブルシステムと言うとトランスポート側はiRiverのiHP140を使うのが定番でした。たとえばiHP140とiBasso D10などです。これはデジタルを出せるDAPが光出力の付いたiHP-140しかないという限定された選択肢だったんですが、いまではこのQA-350のようにちゃんと高精度クロックやジッター低減された高音質のトランスポートとして設計された機器をポータブルでも使用することができるようになりました。
QLS QA-350のページはこちらです。
http://qlshifi.com/en/wzcapi/qa350_mod_v2.htm
QA-350は人気も高いSDカード・トランスポートであるQA-550のポータブル版です。QA-550との違いはトランスポート部は同じで、それにバッテリーとDAC、ヘッドフォンアンプ部がついていて、これだけでHM801みたいに単体のDAPとして機能します。私が買ったのはQA-350 mod v2というタイプでパーツ交換などいくつか公式改造がされたものです。
これはヘッドフォンアンプ部にAD8397を使用しています。8397自体はオペアンプですがバッファが内蔵されているのでこれ一発でヘッドフォンアンプとして機能します。8397自体嫌いではないんですが、Xinとやりとりしてたような時期の古いものなので、いまとなってはアンプ周りはディスクリートで組んでほしいと言うのがあります。その分でQA350をバッテリー式のトランスポートとしてv3のようなDAC内蔵の高性能アンプと組み合わせるのが理想的といえます。
ただ価格を考えると単体DAPとしても悪くはありません。
Sysconceptの光ケーブル
QA-350は光デジタルアウト(丸)とSPDIFアウト(RCA)の2系統があります。光は角ではなく丸端子なので注意ください。光デジタルケーブルはSys-ConceptのiHP140とiBasso D10をつなぐためのものを流用しました。Sys-conceptのケーブルはこちらのリンクです。
http://www.sysconcept.ca/product_reviews_info.php?products_id=349&reviews_id=86
これは最小距離をとるために機種ごとにカスタムオーダーしています。ここで流用するためには適当にクリーニングクロスなどをスペーサーにして距離を調整しています。
SPDIFは短いケーブルがないので、オス・オスのRCAジョイントプラグ(別売)を使用しました。それにiQubeに付属しているRCAメス-4pin miniのケーブル(上の写真)を使ってiQubeとつなぎます。このiQube側の端子はアナログ・デジタル共用で自動判別します。インピーダンス整合がどうこういうデジタルケーブルでこれでいいのかという気もしますが、きちんとロックします。
これで最短な気がしますが、やはりコンパクトな光ケーブルに比べるとかさばります。音も光とSPDIFで比べてみたところさほど変わらないのでコンパクトな光のほうで使っています。自作できる人ならもっとコンパクトに結線できるのかもしれません。
このシステムの音は濃くて実体感と言うかしっかりとした質感があります。単に解像感が高いとかシャープと言うよりは、質感が高い・情報量というか密度が高い音という感じですね。
ふつうのアナログシステムにもどすと、あっさりと薄味というかなにか物足りなくなります。
問題点はQA-350がWAV専用であり、操作性はRockbox+iHP140より使いにくいと言う点です。
またポータブルでDACも使うとバッテリーをかなり消費するように思います。
かさばるのも難点ですが光ケーブルを使うと意外とバックへの収まりは良いのでこれは実用範囲内です。
−SOLO+iPod
SoloはDDCとしてSPDIFが出せるので同様なシステムを組むことができます。iPod/iPhoneを使えるのは良いんですが、ただしこれだとケーブルを含めてかさぱってしまうので実際には使用していません。
ひさびさにデジタル入力がついた本格的なポータブルアンプと言うことで、いろいろと面白いシステムが工夫できるのではないでしょうか?
2009年07月08日
iQube V2アナウンス
人気のハイエンドポータブルアンプのiQubeの新型V2の発売がタイムロードさんからアナウンスされています。
http://blog.timelord.shop-pro.jp/
今回はSEバージョンなど、いろいろなラインナップも用意されています。
ちなみにスペックは下記のサイトにアップされています。かなり詳細に普通のメーカーでは発表しないところまで書き込まれているのはさすが技術集団という感じです。
http://i-qube.nl/index.php?id=25
とくに出力インピーダンスの低さに驚いてわたしは初版の予約をしました。それからだんだん人気が出てきたのはやはり音質の高さに尽きると思います。
CESから続くUSB DACが脚光を浴びる中で、またこのUSB DAC部分にこっているV2も注目といえるでしょう。
http://blog.timelord.shop-pro.jp/
今回はSEバージョンなど、いろいろなラインナップも用意されています。
ちなみにスペックは下記のサイトにアップされています。かなり詳細に普通のメーカーでは発表しないところまで書き込まれているのはさすが技術集団という感じです。
http://i-qube.nl/index.php?id=25
とくに出力インピーダンスの低さに驚いてわたしは初版の予約をしました。それからだんだん人気が出てきたのはやはり音質の高さに尽きると思います。
CESから続くUSB DACが脚光を浴びる中で、またこのUSB DAC部分にこっているV2も注目といえるでしょう。
2008年10月10日
iQube V2登場
iQubeの新バージョン、V2がHeadFiのQablesフォーラムでアナウンスされています。
初代はiPod Studioのフォーラムでアナウンスされたんですが、いまはiPod StudioもなくなっていてHeadFiのQablesフォーラムでのアナウンスとなったようです。
その初回のときは20個の米英を含めた海外枠があったのに、私を含めて全世界で数人しか予約しないというさみしい滑り出しでした。それが、いまでは定評あるトップクラスアンプの一つとなったのはうれしいことですが、やはり音質の素晴らしさによるものでしょう。
そういうわけですので、V2もキープコンセプトで改良と追加機能といった内容になっています。
細かい変更点はいくつかありますが、今回のポイントはまずUSB DACがついたということです。
一般にUSB DACと言っても大きく二つのタイプがあります。それはUSBレシーバーについているおまけのDAC機能を使用するものと、USBレシーバーでは単にSPDIFなどの汎用信号に変換して、それを後段のより精度の高いDACでアナログ変換するというものです。iQubeのV2では後者ということのようですので、より本格的なものと言えます。
ちなみにCORDA MOVEやRSA Predatorは前者で、HeadroomのMicro PortableやHeadampのPicoは後者になります。
いままではわたしはあんまりUSB DAC付きアンプには気を引くことはなかったんですが、最近発表されたASUSのS101なんかがちょっと興味があるということもあって、こうしたのと組み合わせて使うのも面白いかと思います。
それと、バッテリーが単4の詰め替えタイプから内蔵タイプになっているようです。USB DACとか内蔵バッテリーはポータブルアンプのトレンドでもありますが、iQubeの場合は特にバッテリーのふたが開けにくいという問題があったので実質的な改良と言えるでしょう。
また、もうひとつ注目したい記述はクロックの記載です。これはおもにDAC搭載の関係だと思いますが、iQubeはDクラスアンプなのでそのスイッチング動作にも関係するということのようです。この辺は音質にも影響しそうです。
HeadFiスレッドのフォローアップでアンプの回路自体はv1と同じとありますが、このクロックの件でより音質がよくなっているのかもしれません。
それとiQubeの対抗馬になるかと思われたNuForceのMobile Iconですが、HeadFiにプロトタイプを試聴させてもらった人のポストが載っています。
これをみるとMobile Iconは普通のアナログアンプでDクラス(スイッチング)アンプではないようです。そうするとiQubeはやはりここしばらくは唯一のDクラスのポータブルアンプとなりそうです。
初代はiPod Studioのフォーラムでアナウンスされたんですが、いまはiPod StudioもなくなっていてHeadFiのQablesフォーラムでのアナウンスとなったようです。
その初回のときは20個の米英を含めた海外枠があったのに、私を含めて全世界で数人しか予約しないというさみしい滑り出しでした。それが、いまでは定評あるトップクラスアンプの一つとなったのはうれしいことですが、やはり音質の素晴らしさによるものでしょう。
そういうわけですので、V2もキープコンセプトで改良と追加機能といった内容になっています。
細かい変更点はいくつかありますが、今回のポイントはまずUSB DACがついたということです。
一般にUSB DACと言っても大きく二つのタイプがあります。それはUSBレシーバーについているおまけのDAC機能を使用するものと、USBレシーバーでは単にSPDIFなどの汎用信号に変換して、それを後段のより精度の高いDACでアナログ変換するというものです。iQubeのV2では後者ということのようですので、より本格的なものと言えます。
ちなみにCORDA MOVEやRSA Predatorは前者で、HeadroomのMicro PortableやHeadampのPicoは後者になります。
いままではわたしはあんまりUSB DAC付きアンプには気を引くことはなかったんですが、最近発表されたASUSのS101なんかがちょっと興味があるということもあって、こうしたのと組み合わせて使うのも面白いかと思います。
それと、バッテリーが単4の詰め替えタイプから内蔵タイプになっているようです。USB DACとか内蔵バッテリーはポータブルアンプのトレンドでもありますが、iQubeの場合は特にバッテリーのふたが開けにくいという問題があったので実質的な改良と言えるでしょう。
また、もうひとつ注目したい記述はクロックの記載です。これはおもにDAC搭載の関係だと思いますが、iQubeはDクラスアンプなのでそのスイッチング動作にも関係するということのようです。この辺は音質にも影響しそうです。
HeadFiスレッドのフォローアップでアンプの回路自体はv1と同じとありますが、このクロックの件でより音質がよくなっているのかもしれません。
それとiQubeの対抗馬になるかと思われたNuForceのMobile Iconですが、HeadFiにプロトタイプを試聴させてもらった人のポストが載っています。
これをみるとMobile Iconは普通のアナログアンプでDクラス(スイッチング)アンプではないようです。そうするとiQubeはやはりここしばらくは唯一のDクラスのポータブルアンプとなりそうです。
2008年04月18日
iQube国内販売へ !
ポータブルアンプのリファレンス機的存在のようなiQubeですが、なんとタイムロードさんが国内取り扱いをはじめるそうです!
タイムロードさんのアナウンスはこちら。
http://tlcons.exblog.jp/7870851/
Philewebにも記事があります。
http://www.phileweb.com/news/audio/200804/18/7924.html
iQubeについては本サイトのこちらのカテゴリーをご参照ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/category/4249729-1.html
タイムロードさんというとヘッドホン系ではDJ1のようなカジュアルなものからいわずとしれたEdition9までラインナップも豊富ですし、もちろん良く知られたDAC64、またCHORDのような文字通りのハイエンド機材まで取り扱っています。
iQubeならとても音質的にもHiFi指向ですし、デザインもとてもしっかりしているのでタイムロードが扱うHiFiオーディオ商品としての風格もあります。
また、もともとの販売元のQablesはオランダでのUltrasoneの代理店でもあります。iQubeのプロデューサーであるQablesのHansさんはUltrasoneのヘッドホンとセット販売をしていたりしますので、そうした点でも相性は良さそうですね。
わたしもいまClassDアンプのことをいろいろ調べていますが、調べるほど改めてiQubeのデザイナーであるBruno Putzeysがいかにすごい人であるかがわかりますし、そうした人がよくぞポータブルアンプを作ってくれたものだと感心します。
たとえばここのサイトではClass Dアンプの特集をしていますが、ICE Powerを使っているジェフロウランド(本人)などとともにBruno Putzeysもインタビューに答えています。
下記ページではBruno Putzeysの写真も載っています。
http://www.avguide.com/features/class-d/why-class-d.php
タイムロードさんに扱ってもらうことで、ヘッドホン・ファンのみならず広くオーディオファイルの耳目を集める存在になっていって欲しいと思いますし、そうした価値があるポータブルアンプだと思います。
タイムロードさんのアナウンスはこちら。
http://tlcons.exblog.jp/7870851/
Philewebにも記事があります。
http://www.phileweb.com/news/audio/200804/18/7924.html
iQubeについては本サイトのこちらのカテゴリーをご参照ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/category/4249729-1.html
タイムロードさんというとヘッドホン系ではDJ1のようなカジュアルなものからいわずとしれたEdition9までラインナップも豊富ですし、もちろん良く知られたDAC64、またCHORDのような文字通りのハイエンド機材まで取り扱っています。
iQubeならとても音質的にもHiFi指向ですし、デザインもとてもしっかりしているのでタイムロードが扱うHiFiオーディオ商品としての風格もあります。
また、もともとの販売元のQablesはオランダでのUltrasoneの代理店でもあります。iQubeのプロデューサーであるQablesのHansさんはUltrasoneのヘッドホンとセット販売をしていたりしますので、そうした点でも相性は良さそうですね。
わたしもいまClassDアンプのことをいろいろ調べていますが、調べるほど改めてiQubeのデザイナーであるBruno Putzeysがいかにすごい人であるかがわかりますし、そうした人がよくぞポータブルアンプを作ってくれたものだと感心します。
たとえばここのサイトではClass Dアンプの特集をしていますが、ICE Powerを使っているジェフロウランド(本人)などとともにBruno Putzeysもインタビューに答えています。
下記ページではBruno Putzeysの写真も載っています。
http://www.avguide.com/features/class-d/why-class-d.php
タイムロードさんに扱ってもらうことで、ヘッドホン・ファンのみならず広くオーディオファイルの耳目を集める存在になっていって欲しいと思いますし、そうした価値があるポータブルアンプだと思います。
2007年12月10日
Qables iQube - インプレッション
前記事ではiQubeの特徴を紹介しましたので、今回は音の印象を中心に書いていきたいと思います。
Millet Hybridに真空管らしさを期待したように、iQubeに関してはやはりデジタルアンプならではという音質を期待したいところです。(本稿では簡便のためにClass Dとデジタルアンプはとくに区別しません)
一般的なデジタルアンプの音的な利点はSNの高さといわれていて、アナログでは得られないほどの高いSN比を得ることが可能とも言われます。それを物量投入によらずにコンパクトにかつ発熱もせずに仕上げられることもまた利点です。
わたしも前にヤマハのデジタルパワーアンプを自宅試聴したことがありますが性能の高さには驚きました。特に楽器配置が明瞭で奥行き方向がはっきりわかったのを覚えています。またNU FORCEの試聴で感じたようなダンピングの高さ(出力インピーダンスの低さ)もあります。iQubeもまずスペックからして出力インピーダンスの低さが印象的です。スピーカーの常識をそのままヘッドホンにあてはめることはできないかもしれませんが、この点でも期待ができました。
このようにデジタルアンプには可能性があります。それを名門フィリップスで研究していたプロのベテラン技術者であるBruno Putzeysがポータブルアンプのために設計したというiQubeにはかなり興味がありました。そこでipastudioでプリオーダーがあったときには一番で予約してしまいました。
実際にiQubeを聴いてみるとその期待は裏切られませんでした。
ぱっと聴くとちょっと硬質感を感じるほど透明で芯が強い音を感じます。音の形はゆるさやあいまいさを感じさせることなくきれいな直線となって滑らかで音場に満ちていきます。音は立体的で自然に音が重なり、定位は明確です。音像は正確で端正な美があるように思います。
特筆すべきは音が明瞭で歯切れが良いことで、これはアンプの中でもトップレベルだと思います。音はかなりタイトにコントロールされていて、MOVEを聞くとゆるく感じるほどですね。SR71とくらべてもこの辺では優っている感があります。低域はかなり低く沈むますが、強調された感じはなく自然で十分な量感があり、歯切れの良さとあいまってほどよいパンチを感じます。
これは器楽曲のピッキングの心地良さだけではなく、ロックでもドラムの連打が気持ち良く感じるところです。
この音のタイトさは出力インピーダンスの低さが反映され、歪み感の少なさは入力のところでかなりうまい処理がされているように思います。一方では暖かみという感じはなく、全体的な音の基調はニュートラルさを感じます。ただし安価なデジタルアンプから予想されるようなかさついた硬さや無機的な感じはあまりありません。
性能が高いだけではなくバランスがとれていますが、この辺はさすがにプロの手による設計を感じさせます。
いまのお気に入りの組み合わせはATH-ESW9で、iMod5.5GにGoldXSilverを組み合わせています。上の感想もこの組み合わせのものです。
UE11とMOVEではやや暖かみのあるCryoXSilverを組み合わせて暖色方向にすこし降っているのですが、この組み合わせではよりストレートに組んで銀系のような歯切れ良さを生かした方がよいとおもいます。
HD25とはやや硬さが感じられることがあるので、銅線とか暖かさを感じる組み合わせを選ぶと良いように思います。とくにリケーブルされたものほどきつくなりやすいので、適度な緩和剤がどこかに必要かも知れません。
UE11ではMOVEよりタイトでしまった音を出すのはさすがと言えます。ただし高能率のUE11(とE5c)ではボリュームを絞ってもヒスが聞こえます。これが背景の黒さを阻害して解像力を落としているように思えます。UE11がすごいと感じさせるのはそうした解像力のさらに先のところなのでここは残念です。ヒスは12時くらいまでは固定の大きさなのでアンプ内部から出ていると思われますが、デジタルアンプの瑕疵でしょうか。ただしESW9ではこうしたヒスは感じられません。トータルではUE11にはやはりMOVEを取ります。
総じて言うといままでのアンプとはやや性質が異なるので、やりすぎると冷たくメタリックになったり人工的に感じられたりということもあると思うので、いろいろと試行してみることも必要かもしれません。ただ元がとてもストレートで色がないので、染めようによっていかにでも変わるという面白さもありそうです。
上は実際にiQubeとiPodを組み合わせたもので、写真中のゴムバンドはプリオーダー特典でついてきたものです。
問題点はちょっとプラグ間隔がオフセットしていてDockのケーブルをひねる必要があるという点と、ボリュームとプラグが通常の反対にあるのはやはり使いにくいということです。ただLプラグを常用したりする人はいいのかもしれません(付属のmini-miniケーブルはL-Lプラグです)。
また隠れた欠点としてバッテリーカバーがとても硬くて開けにくい、というのがあります。これはわたしが不器用なせいもあるかもしれませんが、マニュアルにもわざわざ開け方について1.5ページも解説しているのではじめはかなり開けにくいということだと思います。
わたしは布を滑り止めに使ってなんとか開けました。。二回目からはロックピンを少し緩めてやることで簡単に開くようになりました。
電池は単4が4本でアルカリでも充電池でも使えますが、音的には充電池の方がより透明感が高くiQubeにあっているように思います。たわしはSANYOの1000mAhのものを使っています。
下はSR71とのサイズ比較です。両者とも外観の美しさ、音の素晴らしさともに両立した魅力を持っていると思います。
そうしたiQubeはたとえて言うなら、親しみやすさと言うよりは凛とした才色兼備のクールビューティー。
音楽的かというと意見が分かれるかもしれません。いわゆる真空管的な暖かみはないけれども、滑らかさはあります。リズムを刻むスピード感がかなり気持ち良くそういう意味では音楽的です。この辺はプロデューサーであるHansさんも意図してたところだともいます。
分析的かというと、むしろ音楽を正確に再現するという意味では歌い文句の通りにHiFiなアンプであるといったほうがよいかもしれません。
音を絵に例えると、暖かみという色彩の演出的な美しさはありませんが、きれいに直線が直線であることの美しさを感じます。それは本来の音が持っているHiFiの美しさだと思います。
2007年11月21日
Qables iQube - Class D ポータブルアンプ
ポータブルアンプの世界も広がって、真空管を使ったものとかDAC内蔵タイプのものとかさまざまな形態が登場してきました。そしていよいよデジタルアンプも登場しました。それがiQubeです。もう少し正確に言うとデジタルアンプと言うよりはClass D増幅のアンプです(後述)。
iQubeはQableの製作するポータブルアンプです。Qableはケーブルメーカーとしてよく知られています。
iQubeのプロデュースはオーナーのHansさんですが、設計はHansさんではありません。これはなんと元はあのPhilipsに勤めていてClass Dの設計で有名なBruno Putzeysという人で特許もいくつも取得しているとか。Class Dアンプに関してはかなりベテランで名声のあるひとのようです。その人とオランダではやはり定評のあるDIY畑のGuido Tentという人が設計を担当しているようです。これだけでもかなりプロフェッショナルなデザインであるといえると思います。
正確に言うとClass Dというのはそのままデジタルアンプを指しているわけではありません。そもそもデジタルアンプと言うのはよく聞くわりには定義があいまいではっきりとした定義はむずかしいと思います。
ただし増幅に関してのD級(Class D)というのは定義がはっきりしていて、簡単に言うと0と1のスイッチングで増幅をおこなうものです。D自体はA,B,C,DのDなのでDigitalの意味ではなく、デジタル増幅と言うよりはスイッチング増幅アンプと言う方が正しい言い方ではあると思います。
通常のアナログアンプの増幅は水門に例えられますが、その水門の蛇口をどのくらいひねるかがソースからの音の信号に比例するわけです。通常(AとかAB)はこの蛇口をひねる動作は真空管とかトランジスタの動作によるアナログ的な連続動作です。D級はその蛇口の代わりに0と1のバタバタした開閉によって行われます。しかしもともとの信号はアナログなわけですからそれを0と1のバタバタと開け閉めするタイミングに変換しなければなりません。それがPWM(1bitアンプではPDM)という方式で、この変換はアナログによるものとデジタルによるものがあります。過去にSONYがアナログによるPWM変換を行うD級増幅を行うアンプを作っていますので、アナログによるスイッチングアンプもまた可能です。そのためにClass D = デジタルとは一概には言えません。
とはいえ広義でいえばPWM変換をするということ自体デジタル化であると言ってもよいとは思います。
増幅方式からもたらされるD級の特徴は効率が良いということです。これは電力消費が少なくて済むということでもあります。アナログでは30-50%というところを90%以上の効率があります。たとえばA級アンプはかなり熱くなりますが、これは裏を返すと効率が悪いので電気が熱になってしまっているのです。D級アンプはほとんど発熱しません。
ただデジタルアンプと電源の関係についてはかなり深く複雑なのであまり踏み込みませんし、わたしもそれほどは分かりません。
iQubeのサイトはこちらです。
http://www.i-qube.nl/
iQubeは10月中旬頃に情報が出始めて、10/27のデンマークのショウでデビューしました。初期出荷量はネット上で20台、デンマーク国内で30台と言うことのようです。もとの価格の499ユーロはVAT含んだ価格なので、他の地域には$476ということのようです。デザインがすばらしく筺体がこっていて高品質のパーツがおごられているというだけあって高価なアンプと言えます。
わたしはiPod studioのプリオーダーセールで注文しました。プリオーダーのVATを除いたディスカウント価格は304ユーロ(約$430)でした。充電用のUSBケーブルとiPodと本体を束ねるゴムバンドがついています(これは便利)。
11/12から出荷され、11/19に到着しました。
開封してまず驚くのはパッケージがきちんとしていることで、きれいな外箱とインナーに分かれています。ふつうのポータブルアンプのように外箱が梱包の段ボールそのままというのに慣れていると驚きます。
本体は写真どおりにかなり素晴らしく作られています。Hansさんによるとシルバーと黒の組み合わせでレトロ感覚も活かしたモダンな作りを考えているとのこと。
本体は持ってみてずっしりとした質感がありほどほどの重さです。バッテリーは単4が4本でアルカリでも充電池でも使えます。スペックによれば70時間は持つとのことです。
前置きが長くなったので使用感と音についてはまた項を改めます。
2007年11月20日
2007年10月20日
ポータブルのデジタルアンプ登場間近?
またまた新しいポータブルアンプが出てきそうです。
Class Dというとデジタルアンプですね。これはまた楽しみです。
下記ポストのリンク中にホームページへのリンクがありますが、まだ作成途中のもののようです。発売開始は11月のはじめになるようですね。
写真からして底面にコネクタがあるというのがちょっと分かりませんが。。
http://www.head-fi.org/forums/showthread.php?t=266793
発売のリンクはiPod studioの方にあるようです。
*追記: 11月12日より販売を開始してプリオーダー(グループバイ?)はiPod Studioで取るということのようです。
http://www.qables.com/index.php?id=16
それとHead RoomのPortable Microは発売が11月に伸びたようです。ここにきてほとんどコンセプトがかぶり1/3の価格のiBasso D1とかUSBだけならpico, predatorとライバルが続々出てきたのでなにか対策をしているのかもしれません。いずれにせよ$600で出てくるならそれなりの性能を期待したいところです。
Class Dというとデジタルアンプですね。これはまた楽しみです。
下記ポストのリンク中にホームページへのリンクがありますが、まだ作成途中のもののようです。発売開始は11月のはじめになるようですね。
写真からして底面にコネクタがあるというのがちょっと分かりませんが。。
http://www.head-fi.org/forums/showthread.php?t=266793
発売のリンクはiPod studioの方にあるようです。
*追記: 11月12日より販売を開始してプリオーダー(グループバイ?)はiPod Studioで取るということのようです。
http://www.qables.com/index.php?id=16
それとHead RoomのPortable Microは発売が11月に伸びたようです。ここにきてほとんどコンセプトがかぶり1/3の価格のiBasso D1とかUSBだけならpico, predatorとライバルが続々出てきたのでなにか対策をしているのかもしれません。いずれにせよ$600で出てくるならそれなりの性能を期待したいところです。