しかし本来のD1の姿はやはりDAC内蔵型アンプと言う点にあると思います。DAC1とかDA10をポータブルにしたような感覚です。
一体型ならば電池も共有できるし、iPod+Ampと同様に2ピースで済むという手軽さがあります。またアナログ伝送で劣化させるDACとアンプを結ぶインターコネクトケーブルも不要です。この辺はiHP-140とMicroDAC、SR71の3ピースで運用していた2年前からほしかったものがやっと手に入ったという感じです。
1. D1での光ケーブルの問題
iBasso D1をDAC内蔵型アンプとしてポータブル運用する上での問題の一つに、iPodベースのポータブルアンプのシステムとは接続が異なることがあげられます。デジタル接続のために光ケーブルを使うというところが問題で、光ケーブルは極端に曲げられないので長さと曲げ半径の問題があります。
それと端子が角とミニの二つある点も注意が必要です。D1側は角でiHP側はミニです。ケーブルが対応していないときはアダプタを使います。
たくさんの種類があるiPodケーブルのようには光ケーブルは選択の余地があまりなく、既製品から選ぶのが主となります(例外として後でカナダのSys Conceptのカスタムケーブルを紹介します)。この場合はたいてい最短でも50cmで、多くは1mになってしまうと思います。
また光ケーブルは強く曲げてはいけないという問題がバッグの中で場所をとることになります。高性能ケーブルほど石英などの材質を使っているため、あまり極端に曲げることができません。
これは特に背面に光端子のあるD1では問題で、ヘッドホン端子と反対側にあるのでバッグの中ではアンプの両端からケーブルが延びることになります。そのためアンプを縦にバッグに入れることができません。またボリュームがバッグの口の側に来ないと操作に困ります。
この問題に関してはケーブルを買ったついでに富士パーツさんから光用のL字(ライトアングル)の90度に曲げられるアダプタを購入しました。これの効果は劇的でそれまでバッグの中で従来のアンプのように縦に入れられるようになったので、ボリューム操作も楽で容積も最小限です。

50cmのケーブルでは、一回ループを作ることで短くつなげます。この場合はD1の光端子側とiHP140の光端子は反対側になります。
2. 既製品の高性能光ケーブル SAEC Opt-M1

一般に光デジタル接続より同軸デジタル接続の方が音質的にも有利とも言われていますが、光は電気的なノイズがケーブルに影響しないとか、トラポとDACを電気的に分離できるなどの利点もあります。そういうわけで接続さえしっかりできれば性能的には期待できるものがありますし、それなりの高性能なものもほしいわけです。
そこで光ケーブルを求めて少しお店を彷徨ってみるとなんと、要求にびったりのSAECのOpt-M1の30cmが中古で6,900円なりで置いてあります。これは元値は18,900円のものなのでかなりお得でした。Opt-M1は石英系ではなくプラスチック素材ですので、石英よりは曲げに強いと思います。
また一本ごとに方向性を測定してシールで方向が貼ってあります。Opt-M1の30cmは既製品では最短だと思います。Opt-M1の30cmではループを作ることなく、最短でiHPと接続できました。
しかし1mならともかく、30cmが中古にたまたまあるというのも、これはまたヘッドホンの神様が聴き比べろと、置いてくれたものと思いますのでさっそく試聴して音の差をたしかめてみました。
比較は他にD1付属の光ケーブルとこの前書いた富士パーツの光ケーブルです。
まずD1付属ケーブルと富士パーツケーブルではかなりの差があります。付属ケーブルは音が痩せていてささくれて感じます。また音場が妙につぶれていてあまり聴く気にならないという感じです。富士パーツケーブルに変えると音が厚みを増し広がりを持ち、かなりよくなります。これならわりと満足できます。価格的には立派です。
富士パーツケーブルをSAEC Opt-M1に変えると、おっこれはまさにオーディオ、と思います。音はより豊かにクリアになり、かなり細かいところも聴こえます。富士パーツケーブルでなんとなく解きほぐれないと思っていたところはかっちりときれいに解像され、なにより音がかなり締まりタイトになります。
楽器の音の質感表現もかなりリアルになります。音が複雑なときに富士パーツではもう少し整理されてほしいと思ったところが、Opt-M1ではきちんと整理されて聞こえます。
言葉を変えるといわゆる赤黒のテレビ用ケーブルからオーディオ用の初級ケーブルに換えてびっくりする、という感覚がはじめの比較(付属ケーブルと富士パーツ)、オーディオ用の初級ケーブルからより上級のケーブルに変えた差が富士パーツケーブルからSAEC Opt-M1への変化と言えるかもしれません。
しかしアナログならともかく、劣化のないはずのデジタル信号を伝えるケーブルでこんなに違うとは驚きです。
この話を信じるか信じないかは、あなた次第です(都市伝説かっ!)
3. カスタムケーブル Sys Concept

30cmのSAEC Opt-M1でもかなりコンパクトにはなりますが、理想はALOなどのiPodケーブルのように最短パスでの接続です。
そこで調べてみるとカナダのSys ConceptというところでHeadFier向けにiBasso D1とiHP140で使える最短のU字型の光ケーブルを作成してくれます。ALOなどのmini-miniケーブルのTosLink版です。(ちなみに英語では角はToslink、ミニはmini)
詳細は下記リンクですが、ちなみにこのページのサンプル写真をわたしが提供しています。
http://www.sys-concept.com/U-toslink_miniplug.html
難点は上のリンクを見ると分かるようにカスタム注文で最短で結ぶため少し注文がややこしいことです。
使用状態でぴったりと合わせたDACとトラポのそれぞれのケーブル端子の中心距離を実測ではかり、さらに角の場合はプラグの丸頭側の方向と位置関係まで記述が必要です。
わたしは90度アダプタと組みでホースシュー(馬蹄形)になるようにオーダーをしましたが、この場合はそうすることを伝えていたので、基本的にはcenter to center = 3cm(iHP140とD1をくっつけて実測)のみのデータを渡して頼みました。
届いたものは完全に角アダプタの丸頭側の方向がそろってはいませんでしたが、ねじりの許容範囲でした。
ホースシューを形成するには富士パーツのと同じタイプのL字アダプタ(カブラー)が用意されていますので、ここで一括で注文できます。またこちらではミニ端子のL字アダプタもあります。
必要なものはL字カブラー(Toslink)、L字カブラー(mini)とTos-Tosのプレミアムケーブルです。プレミアムケーブルのページでは長さで最短を意味するSを選び、メモ欄にcenter to center = 3cmを指定します。端子の色は好みで設定できます。わたしはシルバーです。全部で$30くらいです。
Sys ConceptとOPT-M1を比較するとOPT-M1の方が広がりがあり、柔らかくしなやかで高級感があるように聴こえます。一方でSYS Conceptの方がSN感が良く、くっきりとシャープに聞こえますがその分で硬質感がややあります。
一長一短ありますが、さほど大きくは違わずに性格の差という感じです。そこで価格を考えるとSys Conceptがお勧めです。
Sys Conceptの担当者とメールのやり取りを少ししましたが、SAECのOpt-M1で使用されている素材のSSI(Special Step Index) とは特に特別なものではなく、Sys Conceptで使われているのと同じだそうです。
断面図も送ってもらいましたが、構造的にはOpt-M1よりやや簡略化されていますがほぼ同じでした。
4. 光ケーブルのまとめ
実は1.2.3の記事は別々に書いていたのですが、書きかけで溜めてしまっていたのでわかりやすくまとめました。
いまの時点での最終的な結論を書くと一番のお勧めはSys Conceptのカスタムケーブルです。価格と性能、最短経路接続とL字アダプタとすべて文句ありません。
もし海外通販に抵抗あれば、最低でも富士パーツケーブルくらいをお勧めします。添付品をそのまま使うのはデジタル運用に幻滅する恐れがあるのでお勧めしません。
そのあとで各自の好みでOPT-M1のような高級ケーブルを買うという方向に行くのが良いのではと思います。
5. デジタルでの音
iHP140+D1(D1のシーラスCS4398でDACした)の音とiMod5.5G+アンプ(iPodのWolfsonでDACした)の音の差は以前書いたMicroDACとiModの比較ににています。
iHP140+D1の方が音像が明確に描き出され、空間にくっきりとした像を結びます。iModシステムに戻すとやや甘く丸く軽く感じられます。この辺の違いでD1の音はかなりホームオーディオに近いHiFiな音に聞こえます。
D1では実体感というか、音にはっきりとした音像の輪郭線の力強さを感じます。いままでたよりなかった木綿の線が鋼のロープになったようにクリーンで歪み感が少なくすっきりとした音です。音の印象はよりタイト、SN感が高い分で音のエッジの彫りも深く、音に重みを感じます。
それに静かさから浮き出る仔細な情報量の多さが音を表情ゆたかにします。iModに比べると、色鉛筆の色数が増えた感じもします。16色の色鉛筆と32色の色鉛筆の違い。つまり中間色をつかうことで、より滑らかな声や楽器の質感を再現できるという感じです。この辺がいわゆる音のテクスチャとか、評論家によっては音触と言ったりするところだと思います。
ただし以前書いたようにiModもポータブルとしては十分な力がありますし、組み合わせによってはやさしく聴きやすいということもあります。WolfsonのDACを採用しているARCAMの音もそういう感じですので、もともとWolfsonの音傾向なのかもしれません。
iPodの音に関しても本来はこうした視点から語られることがあっても良かったかもしれませんが、DAP機器をソースとして捉えると言うのはこうしたことだと思います。
D1はできれば2ピースで運用したいところですが、アンプ部分はより向上の余地はあると思います。この点ではより高音質を求める、あるいはこのアンプをどうしても使いたい、というときにはD1をDACとして単体運用するというのもアリかもしれません。またD1の新型に期待したい部分でもあります。
お気に入りのUE11と組み合わせれるといいんですが、そう甘くもなくて、D1はtriple.fiだとあまり背景ノイズを感じませんが、UE11だとかなり感じます。このため背景の黒さがなくなり、音楽の楽器と楽器の音の間隙にもゃっとした抜けの悪さが感じられます。
また音がやや膨らむように感じるのでD1のアンプ部分はMOVEと違い低インピーダンスに弱いように感じます。全体の音としては無機的なわけではないですが、SR71に比べるとウェットさとか音楽性は一歩譲ると思います。
このDAC/アンプ一体型機を生かすには歪みが小さくなるインピーダンス高めのヘッドホンが良いと感じるので、HD25-1とHD25-13(ともにAlexケーブル)を交互に使ってみました。
やはりHD25-13の方がクリーンでゆがみ感が少ないHiFiな音で重厚感もありますが、XenosほどHD25-13を気持ちよく軽々とならせるほどではないため、これについてはどちらがいいとは言えません。
D1は6dBゲインと言うことで必ずしもアンプはハイインピーダンス向きではないですが、DAC部分の出力レベルが高いので全体ではハイインピーダンスも鳴らせます。HD650だとわりと楽に鳴る感じがしますが、600オームはやや高すぎるかもしれません。(実際にスペック範囲外です)
HeadroomのMicroDACとざっと比べるとMicroDACの方がウオームで重心が低く、D1はニュートラルでやや高域よりという違いがあります。そのため、D1のような一体型機ではアンプの音が変わったように感じられ、アンプ単体(つまりiPodのDAC)だとバランス良く感じたD1もDAC一体型機として使うとやや高域よりに感じられます。ただ全体的な性能としてはかなりいい勝負をしているように思います。
一体型で運用したときの電池の持ちはDACと込みで10数時間というところではないかと思います。電池が切れそうなときはLEDが点滅しますが、点滅後は数分しか持たないで強制的に電源が切れます。
全般にD1のデジタルの音はやはりひとクラスは上で、よりホームオーディオに近づいたと言えるでしょう。ホームオーディオレベルとしてみると完全ではないですが、価格を考えると文句ないレベルと言えると思います。やはりソース機材を変えた効果と言うのはかなり大きいものがありますし、それはまたアンプを変えたのともまた違います。
もっともさきに書いたようにiPodベースでもそれなりのよさと言うのがありますし、実際にいまは交互に使っています。
ポータブルオーディオでもアンプだけでなくソース部分の選択も出来るようになったというのはうれしいことです。