DALIは良く知られたデンマークのスピーカーメーカーです。幅広いラインナップと音色の美しさ、北欧らしい美しいデザインが特徴です。日本ではディーアンドエムホールディングスが輸入販売しています。最近ではコスパの良いオベロンシリーズなんかが話題です。
そのスピーカー専業だったDALIがヘッドフォン分野に参戦した初の製品がiO-6とiO-4です。今年のドイツハイエンドショウで発表されました。本稿はそのDALI iO-6のレビューです。これはDALI本社からレビユーしてほしいということで送ってもらったものです(技適はメーカーで取得済み)。ちなみにiO-6とiO-4の違いはiO-6がANC(アクティブノイズキャンセリング)機能を持っているということですので、以下はANC以外はiO-4でもほぼ同じだと思います。また振動板など技術内容等はDALIの担当に問い合わせて確認したものです。
*特徴
1. Bluetoothワイヤレス対応
iO-6は密閉型のワイヤレスヘッドフォンです。これは外で使うため、ストリーミングソースを主としたスマートフォンとの親和性のためです。そのためワイヤレスはBluetoothを採用しています。BLuetoothバージョンは5.0に対応して、対応コーデックはAAC、AptX、AptX HDです。
3.5mmステレオミニ端子の付属ケーブルを使用してアナログの有線接続もできます。これは飛行機などで便利でしょう。この場合は電源オフでも使用できます。
2. 高い遮音性
iO-6は外で使うことを想定した密閉型で日本市場に向いています。実際にiO-6を使いながら電車に随分乗ってみましたが、気がつくのはiO-6がこうした密閉型ヘッドフォンの中でもかなり遮音性が高いということです。あとで書くANCなしでもかなりしっかりと音が聞こえなくなり、遮音性はトップクラスだと思います。
3, 美しいデザイン
iO-6を手に取った時に感じるのはとてもデザインが美しいということです。キャラメルホワイトとブラックがあり、本機はキャラメルホワイトですが、北欧家具のようにセンスがよいカラーリングとデザインでここはさすがデンマーク製です。これなら装着して外に出たくなることでしょう。
人間工学的にも大きなサイドボタンや装着感の良さなどよく考えられていて、ヘッドフォン第一号とは思えません。これはFocalのときにも感じましたが、かなり開発を重ねてきて作ったもののように感じます。
3. ANC(アクティブノイズキャンセリング)機能搭載(iO-6のみ)
iO-6にはANC(アクティブノイズキャンセリング)が搭載されています。またオーディオ・トランスペアレント機能がついているので逆に周囲の音をよく聞くこともできます。
iO-6を立ち上げるとまずANCオフではじまり、下部のボタンを押下することでANCがオンになります。たとえば電車の中でオンにすると周囲からすうっと電車のゴーっという音が引いていきます。しかし車内アナウンスははっきり聞こえます。というか車内アナウンスはANCオフよりも明瞭に聞こえます。iO-6は遮音性が高いので本来車内アナウンスも聞こえにくいのですが、ANCオンにすると周波数を選択的に通したりノイズを減らしています。音楽に集中して乗り過ごすことはないわけですね。ノイズ低減効果もかなり高いと思います。
ANCオンではあまり音量をあげなくても良いので音漏れも少なくなるでしょう。
もう一度ANCボタンを押すと、完全ワイヤレスなどにもあるいわゆるオーディオ・トランスペアレント機能で周囲の音が普通に聞こえるようになります。ANCオフよりもこれも明瞭に聞こえますので、つまりパッシブの遮音性よりも聞こえるようになります。ヘッドフォンをつけたままレジの人などと会話するのに向いています。
ちなみに家の中でもANCが有効に使えます。家でPCにBT接続してANCオンにすると、PCのうるさいファンノイズの近傍にいてもファンのノイズがすうっと引いていきます。家でも夜はけっこう便利に使えるでしょう。
4. ミニチュアスピーカーのようなドライバー設計
ワイヤレスやノイキャンは他社でもありますが、オーディオメーカーたるDALIらしいこだわりはここです。
iO-6は50mmのダイナミック型ドライバーを採用していますが、特徴的なのはスピーカーのミニチュア版のようなドライバー設計がなされていることです。ヘッドフォンは小さなスピーカーのようなものと考えがちですがも実は一般的なヘッドフォンのトライバーはスピーカーに比べると簡略設計されています。
DALIはヘッドフォンを設計するにあたって、「基本的にヘッドフォンは頭の両側に取り付けられたスピーカーである」というポリシーを立てたそうです。これは当たり前そうで、実はなかなか実現しにくいことです。
普通のヘッドフォンは振動板のエッジが固定されていますが、iO-6ではスピーカーのようなフリーエッジが採用されています(分解図)。またマグネットではスピーカーのようにボビン(芯材)を採用し、最適な磁力特性を持たせているということです。
こうした設計は以前ではAudioQuestのNighthawkを想起させますし、デノンの高級機でも採用されていますが、こうした低価格帯(400-500ユーロ)のモデルに採用された例はないということです。
振動板は非常に軽量で強固なペーパーファイバーを使用して良好な内部損失特性を持っています。DALIのスピーカーではウッドファイバーを採用しているのだそうですが、ヘッドフォンでは重すぎるのでペーパーファイバーとしているそうです。
iO-6はこうしたDALIらしいDNAをきちんとうけついだヘッドフォンだということですね。
5. 長時間駆動できる電池
60時間(iO-4)持続できます。iO-6は30時間程度持ちます。実際にエージングするときに丸一日以上つけっぱなしにしていてもまだ再生していたのでなかなかの持ちだと思います。実際には毎日充電しなくてもたまに充電すれば十分という感じです。充電にはUSB-C端子を使用します。
6. 機能性
iO-6はワイヤレスの利便性を保つために音量変更や再生指示はヘッドフォン側で可能です。このためのサイドボタンは極めて大きく、操作は単純です。ロゴの部分をクリックすると再生やスキップ、サイドボタンの上下を押下するとボリュームの上下ができます。
操作していると男声による英語音声ガイドが聞こえてきます。電源ボタンを押し下げ続けると"Bluetooth paring",接続すると"Bluetooth connected"、また電源投入時に"Battery level 90%"などです。ちなみにバッテリーが100%のときには"Battery full"と言います。
電源オンで既に接続されているスマホとは自動でつながります。もちろんマイク内蔵で通話も可能です。
*インプレッション
iO-6はパッケージのデザインもなかなかセンスが良く、デニム地のヘッドフォンケースも洒落ています。iO-6はカップをひねって平たくしてたたむことができます。内容物は有線ケーブル、USB-Cケーブル、航空機アダプターなどです。
中にはスタートガイドも付属していますが操作はそれほど難しくありません。電源ボタンを押し続けてペアリング、ANCボタンでANC機能変更、右側面はメカスイッチになっていて押すとタップで再生停止、ダブルタップで曲スキップ、トリプルタップでバックします。そのボタンの上下のリム部分を押すと音量調整などです。サイドボタンは指を二本添えると軽くタップしやすいと思います。
本体は品が良いという感じのデザインで大人がつけても違和感はないでしょう。また肌触りがよく高級感がとても高いと感じます。サイズ調整のスライド機構もしっかりしています。
重さは325g(iO-6)、320g(iO-4)で重いというほどではなく装着感は快適です。側圧もきつめでDJタイプっぽいしっかりとした装着感です。ANCを使わなくても遮音性がとても高く周りの音はかなり聞こえなくなります。
音は主にiPhone Xを使い、Windows10とも組み合わせています。
音も上質感が高くスムーズで深みのあるかなり高いレベルの音質です。たしかにNighthawkに似た独特の滑らかさがあり、音質はコンシューマー向けの安いモデルとは一線を画しています。
中高域は透明感がかなり高く、明瞭で歪みも少ないすっきりした質の高い音です。
密閉型だけどもDJタイプのようなバフバフいうこもった音ではなく、開放型を感じさせるようなすっきりした音でオーディファイル的な美音系に近い音を出します。海外のメーカーらしく個性を持った音にチューニングで、デンマーク製のスピーカーに期待するような感じの音ですね。
低域はパワフルで密度感のある密閉型らしい重みがあって深みもあり、男性ボーカルは深く渋さを感じさせます。この辺の音バランスはよくできてると思いますね。スピード感のあるパーカッションでは足踏みしたくなるくらいで、この辺の迫力はやはりイヤホンでは味わいにくいと思います。音にはまってしまい、しばらくは外出時はiO-6をずっと使ってましたね。
ANCのありなしで音が変わるかというと、静かなところでANCオンオフで聴き比べると多少音は違うが大きく差がないので常時オンでも良いと思います。
Bluetooth機器としては遅延も大きくなく、iPhoneでNetflixなど映画を見ても違和感はとくにありません。
*まとめ
ワイヤレスやノイズキャンセリングで今風の機能性を持つとともに、オーディオメーカーらしい音質へのこだわりも兼ね備えたヘッドフォンがiO-6です。デザインも北欧家具のように上質感があり、音も上質感があります。音質にコストパフォーマンスは悪くないと思う。
100ユーロの違いはあるが、やはりANCの効果は大きいのでありのiO-6を勧めます。ただ遮音性が高いのでiO-4でもかなり良いと思います。
密閉型なので外に持って行ってストリーミングを高音質で楽しみたいという要望に応えるヘッドフォンです。操作性や電池の持ちなどそつなく上手に練られています。
Music TO GO!
2019年10月22日
2019年08月21日
HIFIMANの完全ワイヤレスイヤフォン、TWS600レビュー
TWS600は音質では定評のあるHIFIMANが開発したTWS(True Wireless Stereo)、つまり完全ワイヤレスイヤフォンです。
8月23日から発売開始され、価格はオープン(予想売価13,800円程度)です。BluetoothイヤフオンとしてコーデックはAAC,SBCに対応しています。
* 特徴
1. HIFIMAN独自のトポロジーダイヤフラムを採用
高級機RE2000でも採用されているHIFIMAN独自のナノ技術を応用した「トポロジーダイヤフラム」技術を採用しています。振動板自体はTWS600向けの専用設計です。
トポロジーダイヤフラムとは何かというと、ダイヤフラムの表面に幾何学的な特殊なメッキを施したものです。目的はこの幾何学模様の形状、素材、厚さを変化させることで音の周波数特性の調整を可能にすることです。トポロジーダイヤフラムは「異なるナノ素材は構造が違い、特性も違う」という点から着目されたものです。このようにダイヤフラムの異なる表面構造の特性を適切に調整することで、振動の伝搬をコントロールしているわけです。こうした技術によってTWS600においては従来の完全ワイヤレスイヤフォンよりも、より自然で解像力の高い音質が得られるということです。
TWS600においては他にも先進的な合金製ヴォイスコイルやハイテク・マグネットの採用など高音質のための技術が詰め込まれています。ちなみにエージングは40時間が推奨されています。
2. 長距離再生が可能
TWSの大きな特徴の一つは150mもの距離での通信が可能であるということです。これについてはHIFIMANが検証する動画を公開しています。
また使っていても左右ユニット、ユニットとスマホ間でも接続が切れにくいと思います。電車などで普通に使っていて左右切れすることは少なく、片耳を手で覆ってもひと昔前の完全ワイヤレスみたいに接続切れになりません。
3. 合計38.5時間の再生が可能長時間の再生が可能
本体が5.5時間、バッテリー内蔵ケースを使用してさらに33時間の長時間再生が可能です。
HIFIMANによれば38.5時間の再生時間があれば、アメリカ大陸の端から端まで6回のフライトが可能であり、ジムで一日1時間使用しても一か月以上も持つということです。
バッテリー内蔵のケースは充電器も兼ねていて、USB-Cタイプのケーブルをケースの充電端子に接続します。充電中はケース内側の充電用LEDが赤く点滅し、その4個のLEDが点滅することで残りの充電レベルを知ることができます。
充電は実測で4-5回ほどケースから充電が可能です。ただしケースが透明ではないので充電中のライトが見られないのが残念ではあります。
4. 人間工学的なデザイン
完全ワイヤレスは片方だけ取れてしまうという不安がある人が多いのですが、TWS600においては運動をしていてもわりとしっかりとフィットします。実際にイヤフォンとしての装着感がとても良いのもポイントが一つで、5.9gの軽さとともに使用感は快適です。
こちらにスポーツで使われている動画があります。
他にもIPX4防水で汗と埃を防ぐことができます。
5. 左右どちらでも片側で使用可能
TWS600は片側使用が可能であるところにこだわっているのも他の完全ワイヤレスとは異なる点です。左だけでも、右だけでも使えます。これは通常どちらか親機のみが片方使用可能な完全ワイヤレスとしては珍しい特徴だと思います。
ただし左と右では少し使い方が異なります。
左のみ使うときは右側のイヤフォンはケースに収納したままにしておくと、左側のイヤフォンは自動的に片側専用モードになります。ステレオモードに戻すには単に右側のイヤフォンをケースから取り出します。
右のみの時は右側のイヤフォンをケースから取り出してから、”Power Off”と音声が聞こえるまでボタンを押し続けるというものです。そしてさらに”Power On”と音声が聞こえるまで押し続けます。ただしこちらの方はなかなかうまくいかないようです。
* インプレッション
TWS600のパッケージ
スマホはiPhone Xを使用しています。
TWS600はケースから取り出した時に自動的に電源がオンになりますが、取り出してすぐ電源オンされるのは良いですね。またTWS600はケースに収納した時に自動的に電源がオフになり、充電を開始します。
ケースから取り出した時に自動的に右ユニットが左ユニットとペアリングをします。それからイヤフォンはペアリングモードになり、LEDの赤と青が交互に点滅します。スマホとのペアリングに関しては普通のBTイヤフォンと変わりません。ちなみに3分間以内に他のデバイスとの接続がない場合にイヤフォンは自動的に電源オフになります。
英語での音声ガイド機能があり、取り出すと"power on"、左右接続された時は"TWS connected"、スマホと接続されると"connected"とガイド音声が流れます。
イヤフォン側面のボタンによる操作が可能で、タップ(クリック)の回数で一回なら再生/一時停止、二回なら左右ボタンに応じて音量調整、三回なら左右ボタンに応じて前の曲/次の曲にスキップができます。
またマイク内蔵で、2秒押し続けることでヴォイスアシスタントを起動可能です。
前述したようにTWS600は装着感が良く、耳に密着してぴったりとはまります。静粛性は高くて電車の中でも遮音性は高いと思います。
音質は中高域寄りの音で、生ギターの音色やピッキングの切れなど立体感と解像感はなかなか良いと思います。他方で低域はタイトですが軽いので、使用する際にはスマホのイコライザーを使って低域を持ち上げた方が良いと思います。基本的な音質は悪くないので、たとえばEQuアプリのバスブーストで聞くとかなり違った面を聞かせてくれます。
低遅延をうたっていて、実際にNetflixアプリで映画をみてみましたが、口とのシンクロは違和感が少ないレベルで、特に映画を見ていて気にはならないと思います。ゲームは私はあまりやらないので明確には言えませんが、遅延はわりと少ない方だと思います。
* まとめ
わりと低価格で装着感も良好、長距離送信可能で切れにくいという特徴を持った使いやすい完全ワイヤレスイヤフオンだと思います。今週末(8/24)はフジヤさんにてHIFIMANの試聴会を行うそうですので興味ある方はいらしてください。
音質に関してはイコライザーを使用して大きく低域を持ち上げるとかなり変わりますので、ぜひ試してみてください。
8月23日から発売開始され、価格はオープン(予想売価13,800円程度)です。BluetoothイヤフオンとしてコーデックはAAC,SBCに対応しています。
* 特徴
1. HIFIMAN独自のトポロジーダイヤフラムを採用
高級機RE2000でも採用されているHIFIMAN独自のナノ技術を応用した「トポロジーダイヤフラム」技術を採用しています。振動板自体はTWS600向けの専用設計です。
トポロジーダイヤフラムとは何かというと、ダイヤフラムの表面に幾何学的な特殊なメッキを施したものです。目的はこの幾何学模様の形状、素材、厚さを変化させることで音の周波数特性の調整を可能にすることです。トポロジーダイヤフラムは「異なるナノ素材は構造が違い、特性も違う」という点から着目されたものです。このようにダイヤフラムの異なる表面構造の特性を適切に調整することで、振動の伝搬をコントロールしているわけです。こうした技術によってTWS600においては従来の完全ワイヤレスイヤフォンよりも、より自然で解像力の高い音質が得られるということです。
TWS600においては他にも先進的な合金製ヴォイスコイルやハイテク・マグネットの採用など高音質のための技術が詰め込まれています。ちなみにエージングは40時間が推奨されています。
2. 長距離再生が可能
TWSの大きな特徴の一つは150mもの距離での通信が可能であるということです。これについてはHIFIMANが検証する動画を公開しています。
また使っていても左右ユニット、ユニットとスマホ間でも接続が切れにくいと思います。電車などで普通に使っていて左右切れすることは少なく、片耳を手で覆ってもひと昔前の完全ワイヤレスみたいに接続切れになりません。
3. 合計38.5時間の再生が可能長時間の再生が可能
本体が5.5時間、バッテリー内蔵ケースを使用してさらに33時間の長時間再生が可能です。
HIFIMANによれば38.5時間の再生時間があれば、アメリカ大陸の端から端まで6回のフライトが可能であり、ジムで一日1時間使用しても一か月以上も持つということです。
バッテリー内蔵のケースは充電器も兼ねていて、USB-Cタイプのケーブルをケースの充電端子に接続します。充電中はケース内側の充電用LEDが赤く点滅し、その4個のLEDが点滅することで残りの充電レベルを知ることができます。
充電は実測で4-5回ほどケースから充電が可能です。ただしケースが透明ではないので充電中のライトが見られないのが残念ではあります。
4. 人間工学的なデザイン
完全ワイヤレスは片方だけ取れてしまうという不安がある人が多いのですが、TWS600においては運動をしていてもわりとしっかりとフィットします。実際にイヤフォンとしての装着感がとても良いのもポイントが一つで、5.9gの軽さとともに使用感は快適です。
こちらにスポーツで使われている動画があります。
他にもIPX4防水で汗と埃を防ぐことができます。
5. 左右どちらでも片側で使用可能
TWS600は片側使用が可能であるところにこだわっているのも他の完全ワイヤレスとは異なる点です。左だけでも、右だけでも使えます。これは通常どちらか親機のみが片方使用可能な完全ワイヤレスとしては珍しい特徴だと思います。
ただし左と右では少し使い方が異なります。
左のみ使うときは右側のイヤフォンはケースに収納したままにしておくと、左側のイヤフォンは自動的に片側専用モードになります。ステレオモードに戻すには単に右側のイヤフォンをケースから取り出します。
右のみの時は右側のイヤフォンをケースから取り出してから、”Power Off”と音声が聞こえるまでボタンを押し続けるというものです。そしてさらに”Power On”と音声が聞こえるまで押し続けます。ただしこちらの方はなかなかうまくいかないようです。
* インプレッション
TWS600のパッケージ
スマホはiPhone Xを使用しています。
TWS600はケースから取り出した時に自動的に電源がオンになりますが、取り出してすぐ電源オンされるのは良いですね。またTWS600はケースに収納した時に自動的に電源がオフになり、充電を開始します。
ケースから取り出した時に自動的に右ユニットが左ユニットとペアリングをします。それからイヤフォンはペアリングモードになり、LEDの赤と青が交互に点滅します。スマホとのペアリングに関しては普通のBTイヤフォンと変わりません。ちなみに3分間以内に他のデバイスとの接続がない場合にイヤフォンは自動的に電源オフになります。
英語での音声ガイド機能があり、取り出すと"power on"、左右接続された時は"TWS connected"、スマホと接続されると"connected"とガイド音声が流れます。
イヤフォン側面のボタンによる操作が可能で、タップ(クリック)の回数で一回なら再生/一時停止、二回なら左右ボタンに応じて音量調整、三回なら左右ボタンに応じて前の曲/次の曲にスキップができます。
またマイク内蔵で、2秒押し続けることでヴォイスアシスタントを起動可能です。
前述したようにTWS600は装着感が良く、耳に密着してぴったりとはまります。静粛性は高くて電車の中でも遮音性は高いと思います。
音質は中高域寄りの音で、生ギターの音色やピッキングの切れなど立体感と解像感はなかなか良いと思います。他方で低域はタイトですが軽いので、使用する際にはスマホのイコライザーを使って低域を持ち上げた方が良いと思います。基本的な音質は悪くないので、たとえばEQuアプリのバスブーストで聞くとかなり違った面を聞かせてくれます。
低遅延をうたっていて、実際にNetflixアプリで映画をみてみましたが、口とのシンクロは違和感が少ないレベルで、特に映画を見ていて気にはならないと思います。ゲームは私はあまりやらないので明確には言えませんが、遅延はわりと少ない方だと思います。
* まとめ
わりと低価格で装着感も良好、長距離送信可能で切れにくいという特徴を持った使いやすい完全ワイヤレスイヤフオンだと思います。今週末(8/24)はフジヤさんにてHIFIMANの試聴会を行うそうですので興味ある方はいらしてください。
音質に関してはイコライザーを使用して大きく低域を持ち上げるとかなり変わりますので、ぜひ試してみてください。
2019年08月12日
Andromeda Gold海外発表
Campfire Audioの人気モデルAndromedaに1000本限定のGoldバージョンが登場するということです。違いは外見だけではなく、低域ドライバーが2つから4つに増え、さらにクロスオーバーレスのデザインになっています。かなり大きく違いますね。
Headfi TVでさっそくレビューがあげられています。
https://www.head-fi.org/threads/campfire-audio-introducing-2-new-models-hello-andromeda-and-nova.805107/page-501#post-15113948
音に関しては低域はAtlasなどより誇張していないが、しっかりある感じで、増えた低域とバランスをとるために高域も少し上がっているようです。上のビデオで新旧の周波数測定値が公開されています。
また最近のCampfire Audioの大きな特徴として、左右のマッチングがかなり良いことがここでも触れられています。マルチドライバーモデルとしてはかつてないくらいに左右のマッチングが取られているということです。
またインピーダンスが8Ωとなったことで、センシティブと言われるAndromedaがさらにセンシティブになっているようです。
Headfi TVでさっそくレビューがあげられています。
https://www.head-fi.org/threads/campfire-audio-introducing-2-new-models-hello-andromeda-and-nova.805107/page-501#post-15113948
音に関しては低域はAtlasなどより誇張していないが、しっかりある感じで、増えた低域とバランスをとるために高域も少し上がっているようです。上のビデオで新旧の周波数測定値が公開されています。
また最近のCampfire Audioの大きな特徴として、左右のマッチングがかなり良いことがここでも触れられています。マルチドライバーモデルとしてはかつてないくらいに左右のマッチングが取られているということです。
またインピーダンスが8Ωとなったことで、センシティブと言われるAndromedaがさらにセンシティブになっているようです。
2019年07月05日
Campfire Audioの新製品、Polaris IIとIOのレビュー
Campfire Audioの新製品が国内発売されました。その中から今回はPolarisの改良型であるPolaris IIと、新ラインナップのエントリー機であるIOのレビューをしていきます。
まず、この前のヘッドフォン祭でKenさんが来た時に簡単に今回の製品についてインタビューしたものがあるのでそれを掲載します。
* Campfire Audio Kenさんとのインタビュー
- PolarisIIについて
ささき: これはPolarisの新バージョンですか?
Kenさん: そうです。いくつか改良をしたものです。
まずダイナミックドライバーが大口径化しています。8.5mmから9.2mmに変更しています。
ささき: それはAtlasとは違うものですね?
Kenさん: そうです。新規開発したものです。
ドライバー以外ではクロスオーバーも異なってます。また筐体を前は3Dプリントしていたところをステンレススチールにしています。
MMCX端子も改良され、ケーブルも新しくなっています。メモリーワイヤではなくメモリータイプのヒートシュリンク(被覆)を使っています。
ケースも改良されています。もちろん音質もよくなっていますよ。
ささき: ケーブルはSolarisと同じものですか?
Kenさん: ゲージはより細いもので、線材は同じですが拠り方は異なります。
- IOについて
ささき: IOはまったく新しいデザインですね。
Kenさん: Campfire Audioのエントリーモデルとして低価格を目標にしたんです。2ドライバーで大きなBAドライバーと小さな高域BAドライバーの組み合わせで、クロスオーバーを介しています。またインピーダンスの変動が少ない設計を施しています。
もちろん低価格でも音質はよいものを目指しているので、コストパフォーマンスは高いですよ。
ケーブルは新Polarisと同じで、ケースも新Polarisと同じです。
ささき: 高域ドライバーはTAECを採用しているのですね?
Kenさん: はい、音響抵抗も使用していません。TAECは音響抵抗を省略できる理由の一つですが、すべてではないのですよ。
音的にはJupiterに似ています。特に高域の伸びがそう感じさせると思います。
ささき: 改良されたJupiterのような感じですか?
Kenさん: まあそういう感じかな(sort of that)。
(改良されたというよりは)似た感じといったほうが良いかもしれません。
* Polaris IIインプレッション
以前のPolarisのレビューはこちらです。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/453783142.html
旧タイプとの差は見た目がフェイスプレートが青に変わっているということが異なっていますが、印象はかなり似ていますね。
PolarisIIパッケージ
音が細かく高域は鮮烈でこまかな響きもよく再現している。かなりレベルが高い音と言えますね。低音はかなり深く量感あり、EDMなどを聴いた時のベースの重さがすごく迫力があふれます。
旧タイプよりも低音が強いのが特徴で、よりハイブリッドらしいとも言えます。旧タイプとの比較でなく、絶対的にもかなり低域の量感があって、重みがあります。あくまで大口径ダイナミックらしい重みのある迫力あふれる低域表現です。
ここが前のPolarisとは一番異なる点で、以前はつながりがよくシングルのようなある意味ハイブリッドらしくない完成度を目標にしていたように思えるけれども、新Polarisではあくまでハイブリッドらしい低域のパンチの強さを売りにしています。
ただし中域はクリアで低域にあまりマスクされていないように思えますね。ボーカルは男性も女性も明瞭感があって歌詞が聴き取りやすいように聴こえます。
イヤピースとケーブルをPolaris IIのものに統一して旧Polarisと比較するとかなり大きく音が違います。音の個性自体は似ていますが、旧タイプでは低音がかなりばさっとローカットフィルターをかけたように減ります。能率自体はあまり変わっていないように思えます。旧Polarisも低音がないわけではなく、深くて抑えめのバランスのよい低音ですが、量感がまるで違います。旧Polarisはわりとフラットですっきりとした(ある意味BAよりの)音再現ですが、新しいPolarisはいかにもハイブリッドという感じの低音です。これによって迫力がだいぶ違います。
ただ新Polarisはこんなに低域が増えたのに中域があまり埋もれないのはなかなかのチューニングの冴えと言えると思います。
旧タイプのPolarisはCampfireの技術の総集編的な投入をしつつ、コストパフォーマンスの高いモデルを作ることを目指したと言えるでしょう。それに対して新タイプはよりハイブリッドらしい高性能イヤフオンを作ることを念頭に置いたと思います。
*IOインプレッション
Campfire Audioは天文の名称を付けてきましたが、IOは木星の月であるイオ(英語だとアイオー)からつけています。木星は以前Jupiterという製品があったということがポイントです。
IOのパッケージ
Campfireの低価格モデルだけども、ケンさんがシンプルイズベストを極めたって言ってたんですが、透明感というか鮮明さが独特で価格が安いだけではなく他にない個性がある。チューブレス構造の極み、みたいな音の気持ち良さがありますね。
中高域の透明感、鮮明さはIOならではの個性があります。低価格モデルということを忘れて、この気持ちよさの魅力で思わずIOを持ち出したくなることでしょう。良録音のアコースティック・アンサンブル、女性ヴォーカルの良さはひとしおです。
帯域的にはわりとフラット、ニュートラルで低域の量感も十分にあります。低域も質は良くタイトで解像感のある低域で超低域(サブベース)もそれなりにあると思います。アコギの胴鳴りの豊かさ良いですね。
とはいえダイナミックドライバー機やハイブリッド機と比べるとやや軽めには感じられるかもしれません。言い換えると全体にBAらしい音の作りであり、あたかもシングルBA機のような感じを覚えるのがひとつのポイントだと思います。
もうひとつのIOの特徴はこれも独特の立体感が良いことです。Campfire Audioは前作のSolarisから一皮むけた立体感の良さが感じられますが、Kenさんに聴いてもあまりなにか特別の技術云々というわけではないようです。
関連するのかどうか、HeadFiでJudeがCampfire Audioを測定したグラフが公開されていますが、いままで測定した中でも最も左右の周波数特性とTHDがマッチしたイヤフォンの一つと言っています。
https://www.head-fi.org/threads/campfire-audio-io.905408/page-27#post-14972084
これもあってか、IOはものすごく性能の良いシングルBAイヤフォンって感じに思えるのが面白いと思います(実際はデュアルですが)。
シンプルイズベストを単なる低価格というのではなく音の魅力にした点はさすがです。BAらしいイヤフォンがほしい人で、ダイナミックと差別化したいならこれをお勧めできますね。
まとめ
ひと言でいうと、IOがBAらしいさわやかな明瞭感を出しているのに対して、Polarisはハイブリッドらしい高域の鮮烈さと低域の重さを両立させていると思います。
それぞれらしさ、個性を明確にしているというのは海外製品らしい個性的な魅力を感じさせてくれることでしょう。
まず、この前のヘッドフォン祭でKenさんが来た時に簡単に今回の製品についてインタビューしたものがあるのでそれを掲載します。
* Campfire Audio Kenさんとのインタビュー
- PolarisIIについて
ささき: これはPolarisの新バージョンですか?
Kenさん: そうです。いくつか改良をしたものです。
まずダイナミックドライバーが大口径化しています。8.5mmから9.2mmに変更しています。
ささき: それはAtlasとは違うものですね?
Kenさん: そうです。新規開発したものです。
ドライバー以外ではクロスオーバーも異なってます。また筐体を前は3Dプリントしていたところをステンレススチールにしています。
MMCX端子も改良され、ケーブルも新しくなっています。メモリーワイヤではなくメモリータイプのヒートシュリンク(被覆)を使っています。
ケースも改良されています。もちろん音質もよくなっていますよ。
ささき: ケーブルはSolarisと同じものですか?
Kenさん: ゲージはより細いもので、線材は同じですが拠り方は異なります。
- IOについて
ささき: IOはまったく新しいデザインですね。
Kenさん: Campfire Audioのエントリーモデルとして低価格を目標にしたんです。2ドライバーで大きなBAドライバーと小さな高域BAドライバーの組み合わせで、クロスオーバーを介しています。またインピーダンスの変動が少ない設計を施しています。
もちろん低価格でも音質はよいものを目指しているので、コストパフォーマンスは高いですよ。
ケーブルは新Polarisと同じで、ケースも新Polarisと同じです。
ささき: 高域ドライバーはTAECを採用しているのですね?
Kenさん: はい、音響抵抗も使用していません。TAECは音響抵抗を省略できる理由の一つですが、すべてではないのですよ。
音的にはJupiterに似ています。特に高域の伸びがそう感じさせると思います。
ささき: 改良されたJupiterのような感じですか?
Kenさん: まあそういう感じかな(sort of that)。
(改良されたというよりは)似た感じといったほうが良いかもしれません。
* Polaris IIインプレッション
以前のPolarisのレビューはこちらです。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/453783142.html
旧タイプとの差は見た目がフェイスプレートが青に変わっているということが異なっていますが、印象はかなり似ていますね。
PolarisIIパッケージ
音が細かく高域は鮮烈でこまかな響きもよく再現している。かなりレベルが高い音と言えますね。低音はかなり深く量感あり、EDMなどを聴いた時のベースの重さがすごく迫力があふれます。
旧タイプよりも低音が強いのが特徴で、よりハイブリッドらしいとも言えます。旧タイプとの比較でなく、絶対的にもかなり低域の量感があって、重みがあります。あくまで大口径ダイナミックらしい重みのある迫力あふれる低域表現です。
ここが前のPolarisとは一番異なる点で、以前はつながりがよくシングルのようなある意味ハイブリッドらしくない完成度を目標にしていたように思えるけれども、新Polarisではあくまでハイブリッドらしい低域のパンチの強さを売りにしています。
ただし中域はクリアで低域にあまりマスクされていないように思えますね。ボーカルは男性も女性も明瞭感があって歌詞が聴き取りやすいように聴こえます。
イヤピースとケーブルをPolaris IIのものに統一して旧Polarisと比較するとかなり大きく音が違います。音の個性自体は似ていますが、旧タイプでは低音がかなりばさっとローカットフィルターをかけたように減ります。能率自体はあまり変わっていないように思えます。旧Polarisも低音がないわけではなく、深くて抑えめのバランスのよい低音ですが、量感がまるで違います。旧Polarisはわりとフラットですっきりとした(ある意味BAよりの)音再現ですが、新しいPolarisはいかにもハイブリッドという感じの低音です。これによって迫力がだいぶ違います。
ただ新Polarisはこんなに低域が増えたのに中域があまり埋もれないのはなかなかのチューニングの冴えと言えると思います。
旧タイプのPolarisはCampfireの技術の総集編的な投入をしつつ、コストパフォーマンスの高いモデルを作ることを目指したと言えるでしょう。それに対して新タイプはよりハイブリッドらしい高性能イヤフオンを作ることを念頭に置いたと思います。
*IOインプレッション
Campfire Audioは天文の名称を付けてきましたが、IOは木星の月であるイオ(英語だとアイオー)からつけています。木星は以前Jupiterという製品があったということがポイントです。
IOのパッケージ
Campfireの低価格モデルだけども、ケンさんがシンプルイズベストを極めたって言ってたんですが、透明感というか鮮明さが独特で価格が安いだけではなく他にない個性がある。チューブレス構造の極み、みたいな音の気持ち良さがありますね。
中高域の透明感、鮮明さはIOならではの個性があります。低価格モデルということを忘れて、この気持ちよさの魅力で思わずIOを持ち出したくなることでしょう。良録音のアコースティック・アンサンブル、女性ヴォーカルの良さはひとしおです。
帯域的にはわりとフラット、ニュートラルで低域の量感も十分にあります。低域も質は良くタイトで解像感のある低域で超低域(サブベース)もそれなりにあると思います。アコギの胴鳴りの豊かさ良いですね。
とはいえダイナミックドライバー機やハイブリッド機と比べるとやや軽めには感じられるかもしれません。言い換えると全体にBAらしい音の作りであり、あたかもシングルBA機のような感じを覚えるのがひとつのポイントだと思います。
もうひとつのIOの特徴はこれも独特の立体感が良いことです。Campfire Audioは前作のSolarisから一皮むけた立体感の良さが感じられますが、Kenさんに聴いてもあまりなにか特別の技術云々というわけではないようです。
関連するのかどうか、HeadFiでJudeがCampfire Audioを測定したグラフが公開されていますが、いままで測定した中でも最も左右の周波数特性とTHDがマッチしたイヤフォンの一つと言っています。
https://www.head-fi.org/threads/campfire-audio-io.905408/page-27#post-14972084
これもあってか、IOはものすごく性能の良いシングルBAイヤフォンって感じに思えるのが面白いと思います(実際はデュアルですが)。
シンプルイズベストを単なる低価格というのではなく音の魅力にした点はさすがです。BAらしいイヤフォンがほしい人で、ダイナミックと差別化したいならこれをお勧めできますね。
まとめ
ひと言でいうと、IOがBAらしいさわやかな明瞭感を出しているのに対して、Polarisはハイブリッドらしい高域の鮮烈さと低域の重さを両立させていると思います。
それぞれらしさ、個性を明確にしているというのは海外製品らしい個性的な魅力を感じさせてくれることでしょう。
2019年07月03日
Acoustune HS1670SSレビュー
Acoustuneは香港に拠点を置くイヤフォンメーカーですが、スタッフは日本でオーデイオ産業に従事していたベテラン技術者が含まれているようです。Acoustuneは日本ではアユートが代理店となり、イヤフォンとともに交換用のイヤピースでも知られるようになりました。本稿はHS1670SSのレビューです。下記は製品ページで、価格は7万円を切るくらいです。
https://www.aiuto-jp.co.jp/products/product_2498.php
* 特徴について
1. 医療技術を用いた独自のMyrinx(ミリンクス)振動板
HS1670SSを聞く前に中高域が美しいという評判はすでに聞いていました。しかし実際に自分で聞いてみて驚いたのは評判通りの中高音域の美しさと伸びの良さに負けずにきちんと量感もある質の良い低域表現が聴けたという点です。シングルダイナミックにしてはかなりのワイドレンジ再生力です。
そのひとつの理由は振動板に使われているミリンクスという素材です。ミリンクスは医療分野で人工皮膚や手術縫合糸などに使われる合成素材ということです。ミリンクスとは医療用語で鼓膜という意味だそうですが、HS1670SSはミリンクスを薄膜化した10mm径のダイナミックドライバーを採用しています。HS1670SSには改良された第4世代ドライバーを採用しています。
ミリンクスの振動板としての特徴としてはまず軽いということ、これは入力に対して素早くかつ正しく振動できるというメリットをもたらします。そして大事なのはミリンクスが強度と柔軟性を両立している(言い換えるとムチのように強靭でかつよくしなる)ということです。振動板の素材としては強度、つまり変形しにくさは音を正しく伝えるのに重要ですが、ミリンクスでは加えて柔軟性を両立しているというわけです。ここが広いダイナミックレンジをもたらす秘密のようで、振動板として一般的なPETとの違いでもあるようです。またこれは残響音の再現においても優れているということです。
こうしたミリンクスの特質がHS1670SSの中高域のみならず優れた低域再生力を支え、かつ強度を保ったまま薄膜化できることで音の細かさや速さも再現できるのでしょう。
実際に聴いてみるとその音は単に立体感というよりも、独特な彫りのある音の深みを感じられる個性的な音再現を感じますが、そうした特性ゆえなのかもしれません。
もうひとつ面白いのはミリンクスが安定性が高いということです。これはエージングをあまり必要とせずに、長期間にわたる使用で音質劣化が少ないというメリットがあるということです。
かなり特徴的なメリットを持つミリンクスですが、なかなか製造は難しいようで独自のノウハウをもっているのがAcoustuneであると言えるのでしょう。
2. 共振を減らしたモジュラー構造
HS1670SSの大きな特徴のひとつはやはりその見た目の良さです。金属製CNC加工でまるで精密機器のようなカッコ良いイヤフオンで、私もいつになく気合をいれて、箱を開けてしばらくいつまでも写真を撮ってしまいました。特にマクロレンズで撮っていると細部の緻密さに惹かれます。
特にいつくかのモジュールが組み合わされたメカ感が良いですね。これは機能美でもあり、HS1670SSではモジュラー構造で音響チャンバー部と機構部が分離されています。
この仕組みのメリットは共振の防止で、筐体のパーツを最小化することで振動するユニットから生じる悪影響を減らすことができるということです。音響チャンバーは効果的な音場感とソリッドな低域を実現しているということですが、モジュラー構造により低域で生じる歪みが中高域に伝わることを抑えるということです。
HS1670SSの場合にはステンレススチールの特性とこのモジュラー構造がすっきりとした純度の高い音を生み出しているのでしょう。
3. 多種のイヤピースが付属
最近ではさまざまなメーカーが音を変えるタイプのイヤピースを出して話題となり、イヤピースに対しての注目度も上がってきていると思います。
Acoustuneはイヤピースを単体発売もしていて、こだわりを見せています。標準となるのはAET07ですが、AET08はAET07にくらべて軸の直径が太く長めです。これは音響的に低域を増強するということで、組み合わせることでイヤフォンの音をいろいろと変えて楽しむことができます。HS1670SSには他にダブルフランジタイプのAET06とフォームチップが付属してくるのでイヤピースについては選択の余地はかなりあると言えると思います。
HS1670SS付属のイヤピース
イヤピースで音が変わるかというと、変わります。これにはいくつかの要素があります。まずイヤピースの傘の部分の遮蔽によって漏れやすい低域の音が失われないできちんと出ること、それと同時に低域のマスキング効果によって中高域の特性が影響を受けるということです。これにはイヤピースの傘の長さやサイズがポイントになります。
次にイヤピースの軸の長さと太さ、材質などによって帯域の出方が異なります。このためにAcoustuneではAET07の他にAET08という軸の異なるタイプを用意しています(AETとはAcoustune Ear-Tips)。これもイヤフォンのチューニングが音導管の長さ・太さで行われるということを想起すると納得できると思います。
ちなみに各タイプの詳細はメーカーによると以下の通りです。
AET06
遮音性を重視しダブルフランジ形状を採用。S+とM+でフランジ形状を若干変更し最適化。遮音性を確保し低域の減衰を最小化。
AET07
acoustuneイヤホンの開発工程でも使用するベンチマーク。ノズル開口部を可能な限り広く短く設計。更にノズル軸部の硬度を高めに成形する事で、特に中高域の減衰を抑え、再生周波数全域における高い解像度と抜けの良さを実現。(サイズ表のM-は単体販売のみ)
AET08
ノズル内径を狭く長めに設計。意図的に高音域を減衰させる事で、相対して低音域を押し上げる音響を実現。
AET06,AET07,AET08のサイズ表
イヤピースについてはHS1670SSではAET07が合うと思いました。特にHS1670SSでイヤピースを選ぶコツは合うちょうどくらいを選ぶことであり、あまり大きなサイズを使わないということだと思います。大きすぎて低音が多くなると低域のマスキング効果で中高域にも影響を与えてしまうことがあるので、独自の美しい中高域が消えてしまう場合もあります。あまり高い音がきれいに出ないと思ったら、ひとつ下のサイズのイヤピースにしてみるのも良いと思います。
もちろんロックやEDMなどの低音がほしい音楽の時は逆にそうした大きめのイヤピースで音を変えてみるのも面白いですし、低音が欲しい時はAET08を使うのも良いかもしれません。こうしていろいろと変えたり試したりできるというのも面白さの一つです。
4. 高品質な標準ケーブル
HS1670SSの見た目の美しさはイヤフォン本体だけではなく、ケーブルも太くて高級感があります。中身もシルバーコート銅線とOFC線材のハイブリッド設計というユニークなもので、8芯ケーブルを3重にシールドしたものです。端子はMMCXでリケーブル可能です。
このケーブルは太いわりにはタッチノイズが少ないのも長所としてあげられるかもしれません。
* インプレッション、使用感、音質
HS1670SSはまず見た目のかっこよさに惹かれてしまいます。手に取るとずっしりと重みがあり精密機器らしいメカの美しさの魅力がよくわかります。特にHS1670SSはステンレススチール製なので、金属製の高級感と持った感触が価格以上のものを感じさせてくれます。
またメカニカルで武骨な形ですが、実のところはするっと耳におさまってぴったりと確実に耳穴に固定される装着感の良さも意外とポイントだと思います。装着してしまうと重さはさほど気になりません。
HS1670SSパッケージ
さきにも書きましたが、まずHS1670SSではイヤピース選びがポイントになります。多種のイヤピースが付属しているので自由度が高いということと、音の良さを引き出すためです。
ここはもちろん個人差があるところなんですが、私の場合にはAET07のMサイズを主に使用しました。AET07だとリファレンス的なサウンドでHS1670の良さを引き出すのに向いていると思います。
AET08だと低音が太く迫力を感じるとともに、全体に重みが乗ってくるので低音がほしいビート系音楽にはAET08がよいですね。中高域を活かしつつ低音域によりパンチがほしいときはAET08の同じサイズを使うのが良いと思います。ただし中高域はやはりAET07が良く出ると思います。
一番低域を引き出すのはひとサイズ上のAET08となるでしょう。
またAZLAのSednaEarfitも試してみました。SednaEarfitはやはりよくフィットし、Mサイズで十分に低域が出ます。
音的にはAET07の同サイズのほうがやはり中高域はきれいに出ていますが、SednaEarfitはAET08に近い感じでより低域寄りの音になるように思いました。SednaEarfit lightではよりよくフィットして低域はより出てくるようです。ただしAET08とSednaEarfitを比べるとよりAET08のほうが低域が出ている感じなので、この辺はいろいろ試してみるのがやはり面白いところでしょう。
音はやはり中高域が美しいのが特徴であり、強みでしょう。高い音が美しくベルやハイハットの音もピュアできれいに響き、よく上に伸びる感じです。歯切れよく明るく明瞭な音調で、音の歯切れよさもよいんですが、特に痛さを感じずに鈍くならない点もポイントです。また音の倍音成分がたっぷりと豊かに聴こえる中高域も魅力的です。たとえばバロックバイオリンの音など古楽器系の再現力の豊かさです。
しかしそれと同時にソリッドで質の良い低域も実現していて軽さがありません。
女声ヴォーカルと合わせた時の美しさはひとしおで、試聴でよく聞く混声アカペラグループのRajatonを聴いて、こんなにいい曲だったかと改めて感動してしまいました。女声のメインパートは声質が良く伝わり抒情的で、男声のサブパートも太く豊かに曲全体の豊かさと深みをよく表現しています。ヴォーカルよりも帯域の広い器楽曲を聴いても同様に思います。これらのことがシングルドライバーで再現されているのだから、かなり優れたドライバーと筐体設計だと思います。
着色感は少なく、暖かくも冷たくもない感じです。たぶんドライバーの特性もありますが、ケーブルも良いと思います。着色感は少なくとも無機的にならずに音楽が美しく感じられるのはなかなか得がたいものがあります。
シングルダイナミックにしてはかなりワイドレンジでダブルベースを聴くと低い方にもよく沈みこみ、ロックでも低域は十分にあってパンチがあります。もしEDMとかもっと低音が欲しい時にはイヤピースをAET08とかもっとサイズの大きいものに変えると良いと思います。
中高域が美しいのが特徴なんですが、低域の方も厚みがあって音が豊かに聴こえるのがトータルの音の再現性を上げていると思います。
特にMojoとかSP1000など高性能の機材を使用した時の深みがある音空間が特徴的で、同じ曲でAK380からSP1000に変えた時の情報量の増加がよくわかります。高級オーディオを聞いているような感じです。細かい音の再現力の高さも含めて、音再現力の高さも価格を超えているように思います。
* まとめ
見た目の美しさと音の良さは価格を超えていて、価格が10万円を超えていてもおかしくない気はしますね。
音の美しさなど優れた長所を持つ一方で、ケーブルのタッチノイズもかなり少なく、全体にそつなく弱点も少なく設計されています。オーディオ業界のベテランによって創立された会社というのもうなづけます。トータルの完成度も高く、コストパフォーマンスもよいイヤフオンだと言えるでしょう。
https://www.aiuto-jp.co.jp/products/product_2498.php
* 特徴について
1. 医療技術を用いた独自のMyrinx(ミリンクス)振動板
HS1670SSを聞く前に中高域が美しいという評判はすでに聞いていました。しかし実際に自分で聞いてみて驚いたのは評判通りの中高音域の美しさと伸びの良さに負けずにきちんと量感もある質の良い低域表現が聴けたという点です。シングルダイナミックにしてはかなりのワイドレンジ再生力です。
そのひとつの理由は振動板に使われているミリンクスという素材です。ミリンクスは医療分野で人工皮膚や手術縫合糸などに使われる合成素材ということです。ミリンクスとは医療用語で鼓膜という意味だそうですが、HS1670SSはミリンクスを薄膜化した10mm径のダイナミックドライバーを採用しています。HS1670SSには改良された第4世代ドライバーを採用しています。
ミリンクスの振動板としての特徴としてはまず軽いということ、これは入力に対して素早くかつ正しく振動できるというメリットをもたらします。そして大事なのはミリンクスが強度と柔軟性を両立している(言い換えるとムチのように強靭でかつよくしなる)ということです。振動板の素材としては強度、つまり変形しにくさは音を正しく伝えるのに重要ですが、ミリンクスでは加えて柔軟性を両立しているというわけです。ここが広いダイナミックレンジをもたらす秘密のようで、振動板として一般的なPETとの違いでもあるようです。またこれは残響音の再現においても優れているということです。
こうしたミリンクスの特質がHS1670SSの中高域のみならず優れた低域再生力を支え、かつ強度を保ったまま薄膜化できることで音の細かさや速さも再現できるのでしょう。
実際に聴いてみるとその音は単に立体感というよりも、独特な彫りのある音の深みを感じられる個性的な音再現を感じますが、そうした特性ゆえなのかもしれません。
もうひとつ面白いのはミリンクスが安定性が高いということです。これはエージングをあまり必要とせずに、長期間にわたる使用で音質劣化が少ないというメリットがあるということです。
かなり特徴的なメリットを持つミリンクスですが、なかなか製造は難しいようで独自のノウハウをもっているのがAcoustuneであると言えるのでしょう。
2. 共振を減らしたモジュラー構造
HS1670SSの大きな特徴のひとつはやはりその見た目の良さです。金属製CNC加工でまるで精密機器のようなカッコ良いイヤフオンで、私もいつになく気合をいれて、箱を開けてしばらくいつまでも写真を撮ってしまいました。特にマクロレンズで撮っていると細部の緻密さに惹かれます。
特にいつくかのモジュールが組み合わされたメカ感が良いですね。これは機能美でもあり、HS1670SSではモジュラー構造で音響チャンバー部と機構部が分離されています。
この仕組みのメリットは共振の防止で、筐体のパーツを最小化することで振動するユニットから生じる悪影響を減らすことができるということです。音響チャンバーは効果的な音場感とソリッドな低域を実現しているということですが、モジュラー構造により低域で生じる歪みが中高域に伝わることを抑えるということです。
HS1670SSの場合にはステンレススチールの特性とこのモジュラー構造がすっきりとした純度の高い音を生み出しているのでしょう。
3. 多種のイヤピースが付属
最近ではさまざまなメーカーが音を変えるタイプのイヤピースを出して話題となり、イヤピースに対しての注目度も上がってきていると思います。
Acoustuneはイヤピースを単体発売もしていて、こだわりを見せています。標準となるのはAET07ですが、AET08はAET07にくらべて軸の直径が太く長めです。これは音響的に低域を増強するということで、組み合わせることでイヤフォンの音をいろいろと変えて楽しむことができます。HS1670SSには他にダブルフランジタイプのAET06とフォームチップが付属してくるのでイヤピースについては選択の余地はかなりあると言えると思います。
HS1670SS付属のイヤピース
イヤピースで音が変わるかというと、変わります。これにはいくつかの要素があります。まずイヤピースの傘の部分の遮蔽によって漏れやすい低域の音が失われないできちんと出ること、それと同時に低域のマスキング効果によって中高域の特性が影響を受けるということです。これにはイヤピースの傘の長さやサイズがポイントになります。
次にイヤピースの軸の長さと太さ、材質などによって帯域の出方が異なります。このためにAcoustuneではAET07の他にAET08という軸の異なるタイプを用意しています(AETとはAcoustune Ear-Tips)。これもイヤフォンのチューニングが音導管の長さ・太さで行われるということを想起すると納得できると思います。
ちなみに各タイプの詳細はメーカーによると以下の通りです。
AET06
遮音性を重視しダブルフランジ形状を採用。S+とM+でフランジ形状を若干変更し最適化。遮音性を確保し低域の減衰を最小化。
AET07
acoustuneイヤホンの開発工程でも使用するベンチマーク。ノズル開口部を可能な限り広く短く設計。更にノズル軸部の硬度を高めに成形する事で、特に中高域の減衰を抑え、再生周波数全域における高い解像度と抜けの良さを実現。(サイズ表のM-は単体販売のみ)
AET08
ノズル内径を狭く長めに設計。意図的に高音域を減衰させる事で、相対して低音域を押し上げる音響を実現。
AET06,AET07,AET08のサイズ表
イヤピースについてはHS1670SSではAET07が合うと思いました。特にHS1670SSでイヤピースを選ぶコツは合うちょうどくらいを選ぶことであり、あまり大きなサイズを使わないということだと思います。大きすぎて低音が多くなると低域のマスキング効果で中高域にも影響を与えてしまうことがあるので、独自の美しい中高域が消えてしまう場合もあります。あまり高い音がきれいに出ないと思ったら、ひとつ下のサイズのイヤピースにしてみるのも良いと思います。
もちろんロックやEDMなどの低音がほしい音楽の時は逆にそうした大きめのイヤピースで音を変えてみるのも面白いですし、低音が欲しい時はAET08を使うのも良いかもしれません。こうしていろいろと変えたり試したりできるというのも面白さの一つです。
4. 高品質な標準ケーブル
HS1670SSの見た目の美しさはイヤフォン本体だけではなく、ケーブルも太くて高級感があります。中身もシルバーコート銅線とOFC線材のハイブリッド設計というユニークなもので、8芯ケーブルを3重にシールドしたものです。端子はMMCXでリケーブル可能です。
このケーブルは太いわりにはタッチノイズが少ないのも長所としてあげられるかもしれません。
* インプレッション、使用感、音質
HS1670SSはまず見た目のかっこよさに惹かれてしまいます。手に取るとずっしりと重みがあり精密機器らしいメカの美しさの魅力がよくわかります。特にHS1670SSはステンレススチール製なので、金属製の高級感と持った感触が価格以上のものを感じさせてくれます。
またメカニカルで武骨な形ですが、実のところはするっと耳におさまってぴったりと確実に耳穴に固定される装着感の良さも意外とポイントだと思います。装着してしまうと重さはさほど気になりません。
HS1670SSパッケージ
さきにも書きましたが、まずHS1670SSではイヤピース選びがポイントになります。多種のイヤピースが付属しているので自由度が高いということと、音の良さを引き出すためです。
ここはもちろん個人差があるところなんですが、私の場合にはAET07のMサイズを主に使用しました。AET07だとリファレンス的なサウンドでHS1670の良さを引き出すのに向いていると思います。
AET08だと低音が太く迫力を感じるとともに、全体に重みが乗ってくるので低音がほしいビート系音楽にはAET08がよいですね。中高域を活かしつつ低音域によりパンチがほしいときはAET08の同じサイズを使うのが良いと思います。ただし中高域はやはりAET07が良く出ると思います。
一番低域を引き出すのはひとサイズ上のAET08となるでしょう。
またAZLAのSednaEarfitも試してみました。SednaEarfitはやはりよくフィットし、Mサイズで十分に低域が出ます。
音的にはAET07の同サイズのほうがやはり中高域はきれいに出ていますが、SednaEarfitはAET08に近い感じでより低域寄りの音になるように思いました。SednaEarfit lightではよりよくフィットして低域はより出てくるようです。ただしAET08とSednaEarfitを比べるとよりAET08のほうが低域が出ている感じなので、この辺はいろいろ試してみるのがやはり面白いところでしょう。
音はやはり中高域が美しいのが特徴であり、強みでしょう。高い音が美しくベルやハイハットの音もピュアできれいに響き、よく上に伸びる感じです。歯切れよく明るく明瞭な音調で、音の歯切れよさもよいんですが、特に痛さを感じずに鈍くならない点もポイントです。また音の倍音成分がたっぷりと豊かに聴こえる中高域も魅力的です。たとえばバロックバイオリンの音など古楽器系の再現力の豊かさです。
しかしそれと同時にソリッドで質の良い低域も実現していて軽さがありません。
女声ヴォーカルと合わせた時の美しさはひとしおで、試聴でよく聞く混声アカペラグループのRajatonを聴いて、こんなにいい曲だったかと改めて感動してしまいました。女声のメインパートは声質が良く伝わり抒情的で、男声のサブパートも太く豊かに曲全体の豊かさと深みをよく表現しています。ヴォーカルよりも帯域の広い器楽曲を聴いても同様に思います。これらのことがシングルドライバーで再現されているのだから、かなり優れたドライバーと筐体設計だと思います。
着色感は少なく、暖かくも冷たくもない感じです。たぶんドライバーの特性もありますが、ケーブルも良いと思います。着色感は少なくとも無機的にならずに音楽が美しく感じられるのはなかなか得がたいものがあります。
シングルダイナミックにしてはかなりワイドレンジでダブルベースを聴くと低い方にもよく沈みこみ、ロックでも低域は十分にあってパンチがあります。もしEDMとかもっと低音が欲しい時にはイヤピースをAET08とかもっとサイズの大きいものに変えると良いと思います。
中高域が美しいのが特徴なんですが、低域の方も厚みがあって音が豊かに聴こえるのがトータルの音の再現性を上げていると思います。
特にMojoとかSP1000など高性能の機材を使用した時の深みがある音空間が特徴的で、同じ曲でAK380からSP1000に変えた時の情報量の増加がよくわかります。高級オーディオを聞いているような感じです。細かい音の再現力の高さも含めて、音再現力の高さも価格を超えているように思います。
* まとめ
見た目の美しさと音の良さは価格を超えていて、価格が10万円を超えていてもおかしくない気はしますね。
音の美しさなど優れた長所を持つ一方で、ケーブルのタッチノイズもかなり少なく、全体にそつなく弱点も少なく設計されています。オーディオ業界のベテランによって創立された会社というのもうなづけます。トータルの完成度も高く、コストパフォーマンスもよいイヤフオンだと言えるでしょう。
2019年06月25日
ラズベリーパイ4登場
ラズベリーパイの新型、ラズベリーパイ4が発表・発売開始(海外)となりました。
これにともなって前モデルがなくなるということはありません。
https://www.raspberrypi.org/blog/raspberry-pi-4-on-sale-now-from-35/
今回はモデルBだけとなりますが、これはいままでのようにAモデルを作ってもそれほど安くならないという判断のようです。
そのかわりメモリがいくつか選べます。またCM3のような拡張カードタイプのモデルは検討中ということのようです。
ラズパイ4のオーディオ的な特徴としては、今回はUSB3を搭載し、かつUSBとネットのバスが分離されたという点です。これはもともと搭載されていたギガビットイーサの通信速度をフルに発揮するためですが、USB的にも通信中の干渉がなくなります。
いままではUSBとネットのバスが供用されていたことがオーディオ的な問題で、ラズパイ2あたりではMPDでアートワークを取り出しているとUSBにノイズが乗ったりしました。ただ3ではCPUの速度が速くなったこともあるのか、かなりそうした障壁は少なくなり、4で論理的に解消されたということになりますね。
また電源がUSB-Cとなっているので最近の進歩著しいポータブルデバイスと組み合わせた場合の可能性も面白そうです。以前はポータブルストリーマーを作った時は3でもかなり暑くなりましたが、発熱はどうなんでしょうか。冷却用のペルチェ素子がほしい。。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/437948475.html
ただ根本的なオンボード音源はあまり変わってないようですね。DAC ICはいままでも低価格化のために搭載されていませんでしたが、今回も見送られているようです。映像で4K60PのハードデコードができてデュアルHDMIが搭載された割にはオーディオには冷たいですが、IQAudioとかHiFiBerryとか下記リンクのようなHAT DACが増えているのであまり関係ないかもしれませんね。HAT互換性は高いようです。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/435943475.html
これにともなって前モデルがなくなるということはありません。
https://www.raspberrypi.org/blog/raspberry-pi-4-on-sale-now-from-35/
今回はモデルBだけとなりますが、これはいままでのようにAモデルを作ってもそれほど安くならないという判断のようです。
そのかわりメモリがいくつか選べます。またCM3のような拡張カードタイプのモデルは検討中ということのようです。
ラズパイ4のオーディオ的な特徴としては、今回はUSB3を搭載し、かつUSBとネットのバスが分離されたという点です。これはもともと搭載されていたギガビットイーサの通信速度をフルに発揮するためですが、USB的にも通信中の干渉がなくなります。
いままではUSBとネットのバスが供用されていたことがオーディオ的な問題で、ラズパイ2あたりではMPDでアートワークを取り出しているとUSBにノイズが乗ったりしました。ただ3ではCPUの速度が速くなったこともあるのか、かなりそうした障壁は少なくなり、4で論理的に解消されたということになりますね。
また電源がUSB-Cとなっているので最近の進歩著しいポータブルデバイスと組み合わせた場合の可能性も面白そうです。以前はポータブルストリーマーを作った時は3でもかなり暑くなりましたが、発熱はどうなんでしょうか。冷却用のペルチェ素子がほしい。。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/437948475.html
ただ根本的なオンボード音源はあまり変わってないようですね。DAC ICはいままでも低価格化のために搭載されていませんでしたが、今回も見送られているようです。映像で4K60PのハードデコードができてデュアルHDMIが搭載された割にはオーディオには冷たいですが、IQAudioとかHiFiBerryとか下記リンクのようなHAT DACが増えているのであまり関係ないかもしれませんね。HAT互換性は高いようです。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/435943475.html
2019年06月04日
final E1000がまるっと入ったHeadphone Book Special Edition発売
Headphone BookのSpecial Editionとして人気のfinal E1000の特別版(グリーン)がそのまま入ったSpecial Editionが発売されました。あのピアノフォルテの入った号を思い出しますね。しかも市価より安く入手できるというのがポイントです。すでにお持ちの人ももう一個ぜひどうぞ。
ちょっと隔月刊F1マシンコレクションとかを思わせるように、箱に冊子が付いた形となります。
なかにはそのままE1000SE(グリーン)がはいっています。
冊子にもE1000の魅力をはじめ、細尾社長にインタビューして聴いたEシリーズの開発コンセプトなど私もいくつか書いて盛りだくさんですので、この機会にぜひお買い求めください。
ちょっと隔月刊F1マシンコレクションとかを思わせるように、箱に冊子が付いた形となります。
なかにはそのままE1000SE(グリーン)がはいっています。
冊子にもE1000の魅力をはじめ、細尾社長にインタビューして聴いたEシリーズの開発コンセプトなど私もいくつか書いて盛りだくさんですので、この機会にぜひお買い求めください。
2019年04月22日
DITAの新機軸、Project71レビュー
DITAはAnswerからDream、Twinsと様々な製品ラインナップを広げていき、シリアスで硬派なダイナミック型イヤフォンの代表格の一つになりました。PROJECT 71は同社の記念モデルであり、全世界で300個の限定生産販売となります。
Project71の名の由来はDITAの親会社であるシンガポールのPackager Pte Ltd.が1971年に創業されてから47年目を意味するということです。この会社は自動包装機械のメーカーであり、DITAイヤフォンの優れた機械加工技術はこの会社あってのものです。
* Project71の哲学
他のDITAイヤフォン同様にこのProject71もCEOであるダニー・タン氏の理想の実現と言えます。ダニー氏がProject71の秘話を教えてくれたんですが、まずそのキーワードは"enjoyable"、つまり楽しめることです。
彼がProject71のアイディアを思いついた当初、2つのことを考えたということです。
まずひとつは昔ながらのイヤフォンの形を取りながらも、他から大きく違う個性を持つものです。使いやすく楽しみやすいということですね。彼は高品質なものこそ、マニアだけではなく多くの人に楽しめるものでなければならないと考えているということです。
この場合は耳に回すいわゆるShure掛けタイプのイヤフォンはプロやマニア向けであり、一般の音楽愛好家にはあまりなじみがないので、普通に耳にストレートに装着できるものを目指しているわけです。
マルチドライバーのように手段が目的になりがちな、あまりマニア的なものに陥らずにいかに音質をよくするかというところに注力したい、音楽を楽しむのに手段を忘れるようなものを作りたいというわけです。
つまり良い靴がそれを履いていことを忘れるようにしたいというわけですね。
もうひとつは従来のDITAのラインナップとは別のラインナップを作りたいということです。AnswerからTwinsのようにどこかメカニカルでオーディオファイル的なものもよいけれども、もっと別のアナログ的なものを作りたかったということですね。
* 特徴
そうした点で今回は素材・材料を重要だと考えたということです。Project71では真鍮とマッカサルエボニーという楽器にも用いられる木材を組み合わせています。
このように真鍮や木材が使われるのには音質的な意味が必要であり、よくある木製のイヤフォンのように表面だけ木材で中身がプラスチックというようなものは作りたくなかったということです。ただしここがかなり難関となります。Project71のポイントの一つはこのように真鍮と木材を組み合わせたという点で、独特の音響効果を生み出せますが、金属と木材という加工の難易度はかなり高いということです。
Project71ではパーツを個々に製作されて重ねられていきますが、双方の加工中の熱膨張率の違いなどで精密な加工は難易度が高かったようです。特にMMCX端子の部分の接合が難しかったということです。またベント穴を設けるのも大変で、Project71では大きな独自の音響チャンバーを作ってエアフローのコントロールをしているのですが、その設計も難しかったようです。
また、音響的な効果だけではなく、この筐体は使い込むほどに味が出てくるということで、まさに持ち主の個性が出るでしょうとのこと。
ドライバーには複合材を採用した第3世代の新しいもので、音楽的な情感に訴えるような特性を持たせたということ。
木材と真鍮製の筐体、新型のドライバーに加えてProject71のさらなるポイントは独自開発のOSLOケーブルです。
従来のVan Den Hulのケーブルは硬いこともあり、今回の製品には向いていないので、日本のケーブルメーカーと共同で開発したのがOSLOケーブルです。
OSLOはまったく新しいケーブルでOil Soaked Long Oxygen Free cableのことです。Oil Soakedはオイルに浸したという感じの意味で、金と銀の粒子がサメ油に浮いているような感じです。これによって顕微鏡的な大きさでのPC-tripleCの高品質線材表面の不規則さを整えて、信号伝達を高めて豊かな音と細かなニュアンスの再現に貢献するということです。たぶん接点活性剤のようなものではないかと推測しています。
端子は今回はMMCXであり、ノッチがあって不要なMMCXの回転をロックするメカニズムがついています。もちろん好評のAwesomeコネクターが引き続き採用されてリケーブルを簡単にしています。このAwsomeコネクターはかなり便利で、3.5mmと2.5/4.4mmバランスをすぐに交換できるのでDAPとスマホを使い分けて聞いているときなどに便利です。端子だけポケットに入れておけばいいですからね。
* パッケージ
記念モデルということもあって、パッケージもなかなか豪華なものです。
* 音質
Project71の最大のポイントはその独特の音質です。
音はこれまでのDITAの硬質なイメージとは変わって、暖かみのある滑らかなものです。いわば聴いていて楽しく美しい、音楽的というべきものですが、DITAらしい切れ味の良さは残していて、ダイナミックにしては解像力もかなり高いと思います。音楽的で甘いというと、クリアではなく鈍い音のように聴こえますが、Project71の場合はそうしたことはなく、甘くて滑らかな音ですが、透明感が高く歯切れの良さ・解像力はtwinsと比べてもそうひけをとらないでしょう。
基本的な性能が高く、ハイエンドDAPの底力も引き出しています。AK380よりもSP1000でより実力を発揮できるのはDITAならではで、楽器の響きが豊かで、音楽の情熱を伝えてくれると言えますね。
能率は低めですが、スマホやBTアダプターで鳴らせないほどではありません。
SP1000CPとProject71
Project71の音の個性で際立っているのは音の滑らかさ・スムーズさの部分で、なかなか書いて説明がむずかしいのですが、ほかのイヤフォンと比べてもわりと差がわかります。バターのようにスムーズ、シルクのように滑らか、という感じです。美しくきもち良いのでもっと聞いていたくなるという感じの音です。
Mojo+PolyとProject71
DITAはダイナミック型らしい低域の充実感が良さの一つでしたが、Project71でも低域の迫力はいっそうパワフルです。低域の量感はわりとある方ですが、膨らんで贅肉がついている感じはなく、すっきりとしてパンチがあります。音は低音に迫力があり暖かみのあるダイナミックドライバーらしい音ですが、低域の細かな再現力もDITAらしく情報量が多く、楽器の響きがよく聴こえます。中音域でのヴォーカルの深みも良いですね。
Awesomeプラグで簡単に2.5mm/4.4mmに変えることでバランス駆動でよりスケール感も楽しめます。SP1000でバランス駆動で使った音の迫力と躍動感の魅力は格別です。
音はケーブルを変えてもこうした傾向があるのでOSLOのみの効果ではありません。
* 別売りのOSLO交換ケーブル
OSLOケーブルにはリケーブル用の単体売り交換ケーブルが用意されています。MMCXと2pinです。ちなみにMMCX仕様でもProject71に付属しているケーブルとは端子部分の形状が異なり、またメモリーワイヤになっています。
MMCXはどのイヤフォンでもあまり問題がありませんが、2ピン版は最近の2ピンが出たり引っ込んだりしているので適合するのがなかなか見つからないかもしれないので、店で試着させてもらったほうが良いでしょう。
SolarisとOSLOケーブル
MMCX版をCampfire Audio Solarisにつけてみました。Solarisの標準ケーブルもかなりよいものが付属していますが、OSLOケーブルの効果は高く、いわゆるすべての音源を聴きなおしたくなるくらい向上効果があります。
音がよりリアルで滑らかに聴こえ、音の深みが増して濃くなるという感じです。また音場がさらに少し大きくなります。適度に暖かみは加わりますが、着色感が大きいわけではないようです。
ケーブル替えたというよりDACを変えたような感じでもありますね。一枚ベールをはがすというよりも、音色が別な感じになるという感もあります。
標準ケーブルに戻すと少しこじんまりとして、あっさりとした感じに聴こえます。
* まとめ
Project71のポイントは、普通でありながら個性的であること。
ストレートに耳に入れられる簡単な取り扱いで、真鍮と木材、そしてOSLOケーブルのもたらす音楽的で絹のように滑らかな音質、その材料がもたらす経年変化など持つ喜びもあります。
個性的という点ではDITAの中で個性的というだけではなく、シングルダイナミックの高性能イヤフォンの中でも個性的です。
DITAのラインナップに新しい魅力が加わったと言えますね。
SP1000などのハイエンドDAPでダイナミックドライバーの音楽性を楽しみたい人に薦めたいですね
月末のヘッドフォン祭にてぜひ試してみてください。
Project71の名の由来はDITAの親会社であるシンガポールのPackager Pte Ltd.が1971年に創業されてから47年目を意味するということです。この会社は自動包装機械のメーカーであり、DITAイヤフォンの優れた機械加工技術はこの会社あってのものです。
* Project71の哲学
他のDITAイヤフォン同様にこのProject71もCEOであるダニー・タン氏の理想の実現と言えます。ダニー氏がProject71の秘話を教えてくれたんですが、まずそのキーワードは"enjoyable"、つまり楽しめることです。
彼がProject71のアイディアを思いついた当初、2つのことを考えたということです。
まずひとつは昔ながらのイヤフォンの形を取りながらも、他から大きく違う個性を持つものです。使いやすく楽しみやすいということですね。彼は高品質なものこそ、マニアだけではなく多くの人に楽しめるものでなければならないと考えているということです。
この場合は耳に回すいわゆるShure掛けタイプのイヤフォンはプロやマニア向けであり、一般の音楽愛好家にはあまりなじみがないので、普通に耳にストレートに装着できるものを目指しているわけです。
マルチドライバーのように手段が目的になりがちな、あまりマニア的なものに陥らずにいかに音質をよくするかというところに注力したい、音楽を楽しむのに手段を忘れるようなものを作りたいというわけです。
つまり良い靴がそれを履いていことを忘れるようにしたいというわけですね。
もうひとつは従来のDITAのラインナップとは別のラインナップを作りたいということです。AnswerからTwinsのようにどこかメカニカルでオーディオファイル的なものもよいけれども、もっと別のアナログ的なものを作りたかったということですね。
* 特徴
そうした点で今回は素材・材料を重要だと考えたということです。Project71では真鍮とマッカサルエボニーという楽器にも用いられる木材を組み合わせています。
このように真鍮や木材が使われるのには音質的な意味が必要であり、よくある木製のイヤフォンのように表面だけ木材で中身がプラスチックというようなものは作りたくなかったということです。ただしここがかなり難関となります。Project71のポイントの一つはこのように真鍮と木材を組み合わせたという点で、独特の音響効果を生み出せますが、金属と木材という加工の難易度はかなり高いということです。
Project71ではパーツを個々に製作されて重ねられていきますが、双方の加工中の熱膨張率の違いなどで精密な加工は難易度が高かったようです。特にMMCX端子の部分の接合が難しかったということです。またベント穴を設けるのも大変で、Project71では大きな独自の音響チャンバーを作ってエアフローのコントロールをしているのですが、その設計も難しかったようです。
また、音響的な効果だけではなく、この筐体は使い込むほどに味が出てくるということで、まさに持ち主の個性が出るでしょうとのこと。
ドライバーには複合材を採用した第3世代の新しいもので、音楽的な情感に訴えるような特性を持たせたということ。
木材と真鍮製の筐体、新型のドライバーに加えてProject71のさらなるポイントは独自開発のOSLOケーブルです。
従来のVan Den Hulのケーブルは硬いこともあり、今回の製品には向いていないので、日本のケーブルメーカーと共同で開発したのがOSLOケーブルです。
OSLOはまったく新しいケーブルでOil Soaked Long Oxygen Free cableのことです。Oil Soakedはオイルに浸したという感じの意味で、金と銀の粒子がサメ油に浮いているような感じです。これによって顕微鏡的な大きさでのPC-tripleCの高品質線材表面の不規則さを整えて、信号伝達を高めて豊かな音と細かなニュアンスの再現に貢献するということです。たぶん接点活性剤のようなものではないかと推測しています。
端子は今回はMMCXであり、ノッチがあって不要なMMCXの回転をロックするメカニズムがついています。もちろん好評のAwesomeコネクターが引き続き採用されてリケーブルを簡単にしています。このAwsomeコネクターはかなり便利で、3.5mmと2.5/4.4mmバランスをすぐに交換できるのでDAPとスマホを使い分けて聞いているときなどに便利です。端子だけポケットに入れておけばいいですからね。
* パッケージ
記念モデルということもあって、パッケージもなかなか豪華なものです。
* 音質
Project71の最大のポイントはその独特の音質です。
音はこれまでのDITAの硬質なイメージとは変わって、暖かみのある滑らかなものです。いわば聴いていて楽しく美しい、音楽的というべきものですが、DITAらしい切れ味の良さは残していて、ダイナミックにしては解像力もかなり高いと思います。音楽的で甘いというと、クリアではなく鈍い音のように聴こえますが、Project71の場合はそうしたことはなく、甘くて滑らかな音ですが、透明感が高く歯切れの良さ・解像力はtwinsと比べてもそうひけをとらないでしょう。
基本的な性能が高く、ハイエンドDAPの底力も引き出しています。AK380よりもSP1000でより実力を発揮できるのはDITAならではで、楽器の響きが豊かで、音楽の情熱を伝えてくれると言えますね。
能率は低めですが、スマホやBTアダプターで鳴らせないほどではありません。
SP1000CPとProject71
Project71の音の個性で際立っているのは音の滑らかさ・スムーズさの部分で、なかなか書いて説明がむずかしいのですが、ほかのイヤフォンと比べてもわりと差がわかります。バターのようにスムーズ、シルクのように滑らか、という感じです。美しくきもち良いのでもっと聞いていたくなるという感じの音です。
Mojo+PolyとProject71
DITAはダイナミック型らしい低域の充実感が良さの一つでしたが、Project71でも低域の迫力はいっそうパワフルです。低域の量感はわりとある方ですが、膨らんで贅肉がついている感じはなく、すっきりとしてパンチがあります。音は低音に迫力があり暖かみのあるダイナミックドライバーらしい音ですが、低域の細かな再現力もDITAらしく情報量が多く、楽器の響きがよく聴こえます。中音域でのヴォーカルの深みも良いですね。
Awesomeプラグで簡単に2.5mm/4.4mmに変えることでバランス駆動でよりスケール感も楽しめます。SP1000でバランス駆動で使った音の迫力と躍動感の魅力は格別です。
音はケーブルを変えてもこうした傾向があるのでOSLOのみの効果ではありません。
* 別売りのOSLO交換ケーブル
OSLOケーブルにはリケーブル用の単体売り交換ケーブルが用意されています。MMCXと2pinです。ちなみにMMCX仕様でもProject71に付属しているケーブルとは端子部分の形状が異なり、またメモリーワイヤになっています。
MMCXはどのイヤフォンでもあまり問題がありませんが、2ピン版は最近の2ピンが出たり引っ込んだりしているので適合するのがなかなか見つからないかもしれないので、店で試着させてもらったほうが良いでしょう。
SolarisとOSLOケーブル
MMCX版をCampfire Audio Solarisにつけてみました。Solarisの標準ケーブルもかなりよいものが付属していますが、OSLOケーブルの効果は高く、いわゆるすべての音源を聴きなおしたくなるくらい向上効果があります。
音がよりリアルで滑らかに聴こえ、音の深みが増して濃くなるという感じです。また音場がさらに少し大きくなります。適度に暖かみは加わりますが、着色感が大きいわけではないようです。
ケーブル替えたというよりDACを変えたような感じでもありますね。一枚ベールをはがすというよりも、音色が別な感じになるという感もあります。
標準ケーブルに戻すと少しこじんまりとして、あっさりとした感じに聴こえます。
* まとめ
Project71のポイントは、普通でありながら個性的であること。
ストレートに耳に入れられる簡単な取り扱いで、真鍮と木材、そしてOSLOケーブルのもたらす音楽的で絹のように滑らかな音質、その材料がもたらす経年変化など持つ喜びもあります。
個性的という点ではDITAの中で個性的というだけではなく、シングルダイナミックの高性能イヤフォンの中でも個性的です。
DITAのラインナップに新しい魅力が加わったと言えますね。
SP1000などのハイエンドDAPでダイナミックドライバーの音楽性を楽しみたい人に薦めたいですね
月末のヘッドフォン祭にてぜひ試してみてください。
2019年04月13日
Poly 2.0アップデートとPolyでのAirPlay使用のヒント
Chord PolyがVersion 2.0となりました。
今回からアップデート方法が変更されましたので注意してください。まずGoFigureを最新版にする必要があります。
まず1.0.41というバージョンにいったん更新してから、GoFigureからDevice Settings→Firmware Updateです。あとはつけっぱなしでP-Statusが青赤黄色の点滅をするとファーム更新中です。今回から自動でリブートを行うようになりました。
2.0ではBluetoothやWiFiドライバーなどがより安定するとともに、今回から正式にRoonの認証を受けてRoonReady機器となりました。
Roonでつなぐと384kHzアップサンプリングをRAATで受けられるので、とてもポータブルで聴いているとは思えません。
またDLNAアプリからTIDALやQobuzのストリーミングの使用が可能となりました。MQA対応していないのでTIDALではハイレゾストリーミングできませんが、FLACで送ってるQobuzならハイレゾストリーミングもいけそうです。
方法はGoFigureから下にあるUserをクリックするとログイン画面が出ますのでストリーミングサービスのアカウントを入力します。次にPolyをOther(DLNA/MPD)モードにします。
コントロールはDLNAアプリから行うので、8playerアプリにいって、Polyをサーバー(DMR/DMS)として追加。
TIDAL(またはQobuz)というタブができているのでそこから階層を辿ってジャンルとかMyMusicで曲リストが出てきます。
また新規にRadio機能がついています。GoFigureからRadioを立ち上げることができます。BBCのラジオがプリセットされてますが、自分で追加できます。
ところでPolyはiPhoneを使っているときはAirPlayで接続できるのが強みです。Bluetoothと比べてみるとやはり音質的には一枚上で、特にハイエンドイヤフォンを使っているときはかなり差が出ます。Bluetoothと違ってロスレスのALACで送信していますからね。
とはいえAirPlayはWiFi環境下でないとつなげないので、外出時にはモバイルルーターを使わなければなりません。しかしPolyにはHotspotモードがあり、GoFigureが出てからはピンでつかなくてもGUIで変更できるようになりましたので、外出時でもPolyをHotspotモードに入れればAirPlayを使えます。Hotspotモードに入れて、Poly-xxxというネットワークにつなげばPoly自身が持っているローカルWiFiにつなげます。
ところが、、このままだとiPhoneがインターネットにつながらなくなり、Polyに音楽は流せますがネット作業がなにもできなくなります。
この時はWiFiとセルラー4Gを同時に使う方法があります。(以下iOS12の場合)
1.WiFiでPoly-xxxxにつないだら、その右の(i)を押下してください。
2.ipアドレスとサブネットマスクをメモって下さい。(たぶん192.168.1.xと255.255.255.0です)
3.その画面の「IPを構成」を"手動"に変えてください。
4. さきのIPアドレスとサブネットマスクを入力してください
5.画面を戻ります。これで右上に4Gと出ていたらインターネットがセルラーで使えています。音楽はいままでどおりにPoly-xxでつながっています。
今回からアップデート方法が変更されましたので注意してください。まずGoFigureを最新版にする必要があります。
まず1.0.41というバージョンにいったん更新してから、GoFigureからDevice Settings→Firmware Updateです。あとはつけっぱなしでP-Statusが青赤黄色の点滅をするとファーム更新中です。今回から自動でリブートを行うようになりました。
2.0ではBluetoothやWiFiドライバーなどがより安定するとともに、今回から正式にRoonの認証を受けてRoonReady機器となりました。
Roonでつなぐと384kHzアップサンプリングをRAATで受けられるので、とてもポータブルで聴いているとは思えません。
またDLNAアプリからTIDALやQobuzのストリーミングの使用が可能となりました。MQA対応していないのでTIDALではハイレゾストリーミングできませんが、FLACで送ってるQobuzならハイレゾストリーミングもいけそうです。
方法はGoFigureから下にあるUserをクリックするとログイン画面が出ますのでストリーミングサービスのアカウントを入力します。次にPolyをOther(DLNA/MPD)モードにします。
コントロールはDLNAアプリから行うので、8playerアプリにいって、Polyをサーバー(DMR/DMS)として追加。
TIDAL(またはQobuz)というタブができているのでそこから階層を辿ってジャンルとかMyMusicで曲リストが出てきます。
また新規にRadio機能がついています。GoFigureからRadioを立ち上げることができます。BBCのラジオがプリセットされてますが、自分で追加できます。
ところでPolyはiPhoneを使っているときはAirPlayで接続できるのが強みです。Bluetoothと比べてみるとやはり音質的には一枚上で、特にハイエンドイヤフォンを使っているときはかなり差が出ます。Bluetoothと違ってロスレスのALACで送信していますからね。
とはいえAirPlayはWiFi環境下でないとつなげないので、外出時にはモバイルルーターを使わなければなりません。しかしPolyにはHotspotモードがあり、GoFigureが出てからはピンでつかなくてもGUIで変更できるようになりましたので、外出時でもPolyをHotspotモードに入れればAirPlayを使えます。Hotspotモードに入れて、Poly-xxxというネットワークにつなげばPoly自身が持っているローカルWiFiにつなげます。
ところが、、このままだとiPhoneがインターネットにつながらなくなり、Polyに音楽は流せますがネット作業がなにもできなくなります。
この時はWiFiとセルラー4Gを同時に使う方法があります。(以下iOS12の場合)
1.WiFiでPoly-xxxxにつないだら、その右の(i)を押下してください。
2.ipアドレスとサブネットマスクをメモって下さい。(たぶん192.168.1.xと255.255.255.0です)
3.その画面の「IPを構成」を"手動"に変えてください。
4. さきのIPアドレスとサブネットマスクを入力してください
5.画面を戻ります。これで右上に4Gと出ていたらインターネットがセルラーで使えています。音楽はいままでどおりにPoly-xxでつながっています。
2019年03月27日
プレミアム限定モデル、Luxury & Precision、LP6 Tiレビュー
先日の春のポタ研では70万円近くの高価なDAPが話題となりました。これはLuxury & PrecisionのLP6 Tiという機種です。(正確な価格は販売店に確かめてください)
Luxury & Precisionは中国のオーディオブランドで、HeadFiなど海外フォーラムを見ている人にはおなじみでしたが、昨年からサイラスさんが国内でも扱いを始めました。昨年L3-GT、L4、L6、LP5 Ultraの記事を書きましたのでそちらもご覧ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/460897457.html
Luxury & Precision LP6Ti
Luxury & Precision(以下L&P)はうちのブログでもおなじみだった、ColorFly C4の流れを汲むということです。実際L&Pで話題となったのがColor Fly C4によく似たクラシカルな形をしたLP5 Ultraという限定生産モデルでした。これは上のレビューを持ていただくとわかるように音質的には据え置きなみで、ポータブルよりも格上の印象さえ受けるものでしたが、デザインや操作性も含めてクラシカルで現代的なDAPとは言い難いものでした。
L&Pでは一方でL4やL6のような現代的なタッチUIのDAPを出していましたが、この現代的なラインの延長でLP5 Ultraのような究極のDAPを目指して開発したのがLP6 Tiです。Tiはチタンのことで、ボディがチタン製であるところから名づけられています。
*LP6 Tiの特徴
インテル製のFPGAの採用
ハードウエア的にLP6Tiを特徴づけているのはまずインテル製のFPGAの採用です。これはポータブルオーディオでは世界初ということです。FPGAを採用したDACではChord社製の製品が良く知られていますが、こうした例ではいままでザイリンクス社製のFPGAがよく使われていました。LP6Tiではインテル製の「フルサイズ工業グレードの大型FPGA」が採用されているということです。これはメーカーによるとザイリンクスの上位バージョン以上の性能を持つということです。ただし消費電流に関してはすべての部分を使用してはいないので電力消費を抑えているということです。
L&Pでインテル製のFPGAを使用したのはL&PがPCパーツ由来の仕事をしていた関係もあると思いますが、中国市場でのサポートの良さもあるということです。またL&PのCTOであるWan氏はかつてAMDの中国支社で活躍していたこともあり、こうした分野には長けていると思います。
FPGAとはプログラム可能なICのことで、FPGAを用いたDACと言ってもFPGAでデジタル・アナログ変換をしているわけではありません。そのため当然のことながらDA変換を行うDAC部分が必要です。FPGAの機能としては主にDAC部分に入る信号をきれいに整形するためのデジタルフィルタがメインですが、LP6Tiではそのほかに高音質のEQ機能、ロスレスDSD/PCM変換、超低ジッターSPDIF出力、高精度のクロックソース、ワイドバンド高速通信などの機能も含まれているということです。
ちなみにロスレスDSD/PCM変換というのはこのFPGAの効率が良く他社のようにDSD/PCM変換チップやIPコアを使用する方式に比べて、インテル製のDSP並行処理能力が高いことからそう名付けているということです。
医療用R2R DACの採用
次にLP6Tiのキーとなるのは医療用R2R DACの採用です。R2R DACとはマルチビットDACとも呼ばれ、いわゆる1ビットのデルタシグマ方式ではなく、PCMの各ビットを直接変換できることから特にPCMの再生においてはデジタルっぽさが少なくアナログライクで自然な音質に優れていると言われている方式です。ただし最近では効率の良いデルタシグマ方式が席巻しているため、ほとんど採用されなくなっています。
しかしオーディオマニア向けのDACでは音が良いことからよく採用されるのですが、多くの場合はバーブラウン(TI)のPCM1704というDAC ICが使われます。ただしこのPCM1704はすでに生産が終了していて市場デッドストックの品が使われるのですが、L&PではこのPCM1704を超えるようなR2R DACを作りたかったので医療用R2R DACを採用したということです。
この医療用R2R DACはMRIなどに使われるもので、非常に高精度です。メーカーはADI製ですが、モデルはメーカー非公開品ということです。LP6TiではこのICを4基使用しています。このDAC ICの単価はわかりませんが、MRIは数億円の製品なのでそのDACも推して知るべしというところでしょうか。LP6Tiの価格の高さもちょっとわかります。
R2R DACは精度を高めるのが難しいのですが、このICはPCM1704に比べてはるかに高精度で変換誤差が非常に少なく、低歪みで温度差のばらつきも非常に少ないということです。高精度というのはICのDA変換のエラー自体が極めて少なくリニアリティ(信号の入出力の比例性が高い)があって温度変化に強いという意味です。
これによって、LP6TiのダイナミックレンジはPCM1704UK(選別品)を32個搭載したDAPに相当し、SN比はPCM1704UKを8個搭載したDAPに相当するということです。また歪率でのTHDもPCM1704UK搭載DAPの約半分ということです。
つまりR2R DACというのは音は自然でよいが性能的には最新のデルタシグマDACに負けてしまいます。LP6Tiでは医療用の高精度DACを採用したことで、音の自然さも性能の高さも両立できたということですね。
そもそもオーディオ用DACでなくてもよいのか、と素人考えしてしまいますが、その点について出てくるのが先ほど説明したインテル製のFPGAです。このデジタルフィルターの性能が良いために、オーディオ用にこの医療用DACを採用できたということもあるということです。
つまりハードウエアとしてのキーはインテル製FPGAの採用とR2R DAC ICの採用で、面白いことにこの二つは関連しているということです。
購入者による音のカスタマイズが可能
LP6Tiのユニークな点のひとつはDAPに自分の音の好みを反映できるということです。カスタムイヤフォンのJust earっぽい感じのサービスです。ポータブルマニアなら電力消費はもっと多くてもよいから音質を上げてほしい、ということを思ったことのある人は多いと思いますが、それが実現できるというわけです。
これには大きく分けて2種類あって、カスタムリストの1-2はFPGAの設定で、こちらは一回程度は後で無料で変更してくれるということです。これはメーカーによるファームの直接の変更で、ユーザーが自分で変更できるわけではありません。
カスタムリスト
1:音楽ジャンル(POP・アニソン・演歌・EDMなどなど)
2:ボーカル調整(ボーカルの遠さ近さ・横音場の広さ)
3-7の項目はハード設計を直接変えるために納品後の変更はできないということです。
3:ヘッドフォン回路オペアンプ選定(電力消費と音質の兼ね合い)
4:LPF入力電圧の調整(LPF電圧の上下で信号の歪みと動作時間の兼ね合い)
5:出力インピーダンスとZobelフィルター(出力インピーダンスの大きさと保護フィルター設定)
6:ヘッドフォン回路オペアンプ入力電圧と出力電圧(音質と電力消費の兼ね合い)
7:LPFの調整(クラシック音楽で効く信号と位相の兼ね合い)
このほかにもLP6TiではTC4チタニウムを採用したチタン製の筐体や、デジタルとアナログ別でそれぞれ高品質な電源部、高出力のヘッドフォンアンプの搭載なども特徴的です。4.4mmのバランス出力も備え、バランス出力では特に低能率のヘッドフォンでの性能を高め、シングルエンド出力では通常のヘッドフォンやイヤフォンに向けた設計をしているようです。コンデンサーなども軍用グレードの高品質品を使用しているとのこと。(オペアンプのExcelsというのは既製品オペアンプをL&Pがリブランドしたもののようですが、詳細は不明です)
このためにHD800用の専用ケーブルも開発しています。
音源はマイクロSD(FAT32のみ)と64GBの内蔵ストレージです。スペック上の再生時間は7時間となっています。
* HD800専用ケーブル(別売)について
LP6TiではHD800を開発リファレンス機として使ったということもあり、LP6Tiの能力をフルに発揮するために高純度金メッキPCOCC銅線+らせん状の銀メッキという線材を用いた別売りのケーブルも用意されています。これはUltimate Zone U75というケーブルで4.4mmのバランス仕様です。
* インプレッション
試聴用にはマルチドライバー機のCampfire Audio Solaris(4.4mmバランス)とヘッドフォンにはHD800(6.3mm)を使いました。
パッケージは木製の化粧箱が採用されていて、ふたをスライドして開ける方式です。開けると中にLP6Ti本体とUSBケーブル、ヘッドフォン用の標準端子アダプター、保証書が入っています。
本体はL&Pらしくいかにも精密機器というか精巧な金属の塊という感じのデザインですが、持ってみると意外に軽いのに驚きます。チタンは非常に硬くて薄く作ることができるので航空機の軽量化にもよく使われています。材質感はアルミとも違った硬質感がありますが、両側面は木製のプレートがはめ込まれていてよいアクセントになっています。
上部には端子が並んでいます。ヘッドフォン用6.3mm、バランス用の4.4mm、ラインアウト専用(固定出力)の3.5mm端子があります。ボリュームはガード付きで適度なトルク感があるところが好印象です。
側面には電源ボタン、再生、バック、先送りのハードボタンがあります。
底面にはSPDIF出力のRCA端子、マイクロSDスロット、USB端子がありUSB DACとしても使えます。
UIはタッチ操作が可能で独自OSらしいきびきびとしてとても反応が速く感じられます。
設定項目としては基本的なリピートなどの再生設定、グライコ的なEQ設定(プリセットもあり)、またかなり詳細な音質に関する設定があります。デジタルフィルター設定ではおなじみのSLOW/FAST roll-offなどのほかに低遅延やNON Over Samplingなども選択できます。
DACモードに並列モードとタイムシェアリングというのがありますが、並列モードはチャンネルごとにDAC二つが同時に動作、タイムシェアリングは1つのサンプリング周期内でDAC二つが交互に動作するということのようです。
またDCオフセットのオンオフはオンにすると直流信号の修正をするが電力消費がかさむという設定ということです。
はじめにSolarisで4.4mmバランスで聴き始めました。ゲインは設定項目にあります。
音質はとても透明感が高くて美しく、かつパンチがあって歯切れが良いのが特徴的です。現行品と比べてみると、LP5 Ultraなみの据え置きに近いクラス上のアンプ性能と、L6のような洗練されたサウンドを併せ持つ感じですが、実のところ音質はずっと上のレベルにあることに驚きます。
静かな曲を聴くと消え入るような小さな細かい音の再現にも優れているのがわかります。透明感がとても高く、楽器の音が美しく聴こえます。またヴォーカルの声の艶やかさとリアルさも秀逸です。アコースティック楽器の音色がとても端正で澄み切った感じがするのはR2R DACの美点でもありますが、加えて回路の良さ、歪の少なさで雑味のない端正な音が出ているとも感じます。
ダイナミックレンジを強調しているだけあって、試聴曲のパイプオルガンの音域の広さは圧倒的です。Solarisのような空間再現性に長けたイヤフォンでは音の迫力に圧倒されます。低音域もかなり深く下に沈み込み、高域はどこまでも伸びていくかのようです。
パンチがあってロックやアニソンなど動的な曲での打楽器が気持ちよく、躍動感にたいへい優れています。かなりアンプのパワーがあってトランジェントにも優れているので歯切れが良いですね。おそらく電源の良さもあると思います。必要な時に素早く電流が出ている感じです。
またこうして歯切れの良さやパンチを強調してもきつくなりにくいのもR2R DACでPCM音源を聴くときの良い点だと思いますね。
かなりパワフルで高出力志向であることがうかがえます。どちらかというとヘッドフォン向けの設計がなされていると思います。
そこで次にヘッドフォンのHD800で聴いてみました。まずノーマルのケーブルを使って聴きます。
たしかにリファレンスとしてHD800を使ったというだけあってかなり良い組み合わせだと思いますね。HD800の独特の空間表現力がとてもよく再現され、自然で広い音空間が楽しめます。
また音の自然でリアルな再現力にちょっと驚かされます。アカペラコーラスなどはまさに耳元で本当に歌っているようなリアルさです。もちろんパワーもあって躍動感も楽しめます。HD800でパンチのあるベースや打ち込み音が出るのがちょっとすごいと思いますね。音の細かな残響、ホールトーンの表現も優れて聴こえる。
たしかにHD800とLP6Tiの組み合わせはR2R DACの面目躍如というか、リアルさがちょっとすごいレベルにあると思います。まさにHD800が生き生きとしているようで、おそらくLP6TiのDACもかなりハイエンドに近いようなレベルににあるのではないかとも思いますね。据え置きのヘッドフォンアンプでもなかなかこのレベルのDAC内蔵アンプはないように思います。
HD800の別売りケーブルを付けてみると、冷っとしていた音にやや温かみが加わります。標準のケーブルが冷たく客観的な音だとすると、こちらはより音楽的な楽しみを持った音と言えるように思います。楽器音がより美しく、ベルの音も澄んで聞こえます。また楽器音もヴォーカルも滑らかで気持ちよいですね。標準ケーブルとは使い分けてみてもよいでしょう。
また平面型ヘッドフォンとしてHIFIMAN HE580を使ってみました。これはHD800よりもやや鳴らしにくいのですが、十分に音量は取れてよい音で鳴らすことができました。ただ相性としてはHD800のほうが良いと思います。
まとめ
音質の高さは圧倒的で、間違いなく現行DAPトップクラスの一つですが、LP6Tiではダイナミックレンジやトランジェントといった性能面の高さと、楽器の音色の良さといった感覚的な良さの両面に優れている点が素晴らしいですね。特に音再現の美しさ・細かさなどDACのレベルはポータブルを超えている感じで、もし試聴会に行くときはイヤフォンで日頃聞いているにしてもぜひHD800を持って行って試してみてください。
カスタマイズは使用イヤフォンやヘッドフォン、また好みにもよるのでまず試聴したほうが良いでしょう。
わたしなら3はdefault、4は(2)、Zobelフィルターは3か4、出力インピーダンスは1か2、7は1か2、入力電圧は4か5、出力電圧は3か4にするかなと思います、まあオーダーできませんが(笑)考えるのもちょっと面白いですね。
LP6Tiはたしかに高価格も納得できるような高品質・高精度の設計と面白いカスタマイズのサービスですが、日本向けの数は少ないそうです。3/30(土曜日)にフジヤエービックで試聴会を行うそうなので興味のある方はどうぞ参加してこの音を確かめてください。
Luxury & Precisionは中国のオーディオブランドで、HeadFiなど海外フォーラムを見ている人にはおなじみでしたが、昨年からサイラスさんが国内でも扱いを始めました。昨年L3-GT、L4、L6、LP5 Ultraの記事を書きましたのでそちらもご覧ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/460897457.html
Luxury & Precision LP6Ti
Luxury & Precision(以下L&P)はうちのブログでもおなじみだった、ColorFly C4の流れを汲むということです。実際L&Pで話題となったのがColor Fly C4によく似たクラシカルな形をしたLP5 Ultraという限定生産モデルでした。これは上のレビューを持ていただくとわかるように音質的には据え置きなみで、ポータブルよりも格上の印象さえ受けるものでしたが、デザインや操作性も含めてクラシカルで現代的なDAPとは言い難いものでした。
L&Pでは一方でL4やL6のような現代的なタッチUIのDAPを出していましたが、この現代的なラインの延長でLP5 Ultraのような究極のDAPを目指して開発したのがLP6 Tiです。Tiはチタンのことで、ボディがチタン製であるところから名づけられています。
*LP6 Tiの特徴
インテル製のFPGAの採用
ハードウエア的にLP6Tiを特徴づけているのはまずインテル製のFPGAの採用です。これはポータブルオーディオでは世界初ということです。FPGAを採用したDACではChord社製の製品が良く知られていますが、こうした例ではいままでザイリンクス社製のFPGAがよく使われていました。LP6Tiではインテル製の「フルサイズ工業グレードの大型FPGA」が採用されているということです。これはメーカーによるとザイリンクスの上位バージョン以上の性能を持つということです。ただし消費電流に関してはすべての部分を使用してはいないので電力消費を抑えているということです。
L&Pでインテル製のFPGAを使用したのはL&PがPCパーツ由来の仕事をしていた関係もあると思いますが、中国市場でのサポートの良さもあるということです。またL&PのCTOであるWan氏はかつてAMDの中国支社で活躍していたこともあり、こうした分野には長けていると思います。
FPGAとはプログラム可能なICのことで、FPGAを用いたDACと言ってもFPGAでデジタル・アナログ変換をしているわけではありません。そのため当然のことながらDA変換を行うDAC部分が必要です。FPGAの機能としては主にDAC部分に入る信号をきれいに整形するためのデジタルフィルタがメインですが、LP6Tiではそのほかに高音質のEQ機能、ロスレスDSD/PCM変換、超低ジッターSPDIF出力、高精度のクロックソース、ワイドバンド高速通信などの機能も含まれているということです。
ちなみにロスレスDSD/PCM変換というのはこのFPGAの効率が良く他社のようにDSD/PCM変換チップやIPコアを使用する方式に比べて、インテル製のDSP並行処理能力が高いことからそう名付けているということです。
医療用R2R DACの採用
次にLP6Tiのキーとなるのは医療用R2R DACの採用です。R2R DACとはマルチビットDACとも呼ばれ、いわゆる1ビットのデルタシグマ方式ではなく、PCMの各ビットを直接変換できることから特にPCMの再生においてはデジタルっぽさが少なくアナログライクで自然な音質に優れていると言われている方式です。ただし最近では効率の良いデルタシグマ方式が席巻しているため、ほとんど採用されなくなっています。
しかしオーディオマニア向けのDACでは音が良いことからよく採用されるのですが、多くの場合はバーブラウン(TI)のPCM1704というDAC ICが使われます。ただしこのPCM1704はすでに生産が終了していて市場デッドストックの品が使われるのですが、L&PではこのPCM1704を超えるようなR2R DACを作りたかったので医療用R2R DACを採用したということです。
この医療用R2R DACはMRIなどに使われるもので、非常に高精度です。メーカーはADI製ですが、モデルはメーカー非公開品ということです。LP6TiではこのICを4基使用しています。このDAC ICの単価はわかりませんが、MRIは数億円の製品なのでそのDACも推して知るべしというところでしょうか。LP6Tiの価格の高さもちょっとわかります。
R2R DACは精度を高めるのが難しいのですが、このICはPCM1704に比べてはるかに高精度で変換誤差が非常に少なく、低歪みで温度差のばらつきも非常に少ないということです。高精度というのはICのDA変換のエラー自体が極めて少なくリニアリティ(信号の入出力の比例性が高い)があって温度変化に強いという意味です。
これによって、LP6TiのダイナミックレンジはPCM1704UK(選別品)を32個搭載したDAPに相当し、SN比はPCM1704UKを8個搭載したDAPに相当するということです。また歪率でのTHDもPCM1704UK搭載DAPの約半分ということです。
つまりR2R DACというのは音は自然でよいが性能的には最新のデルタシグマDACに負けてしまいます。LP6Tiでは医療用の高精度DACを採用したことで、音の自然さも性能の高さも両立できたということですね。
そもそもオーディオ用DACでなくてもよいのか、と素人考えしてしまいますが、その点について出てくるのが先ほど説明したインテル製のFPGAです。このデジタルフィルターの性能が良いために、オーディオ用にこの医療用DACを採用できたということもあるということです。
つまりハードウエアとしてのキーはインテル製FPGAの採用とR2R DAC ICの採用で、面白いことにこの二つは関連しているということです。
購入者による音のカスタマイズが可能
LP6Tiのユニークな点のひとつはDAPに自分の音の好みを反映できるということです。カスタムイヤフォンのJust earっぽい感じのサービスです。ポータブルマニアなら電力消費はもっと多くてもよいから音質を上げてほしい、ということを思ったことのある人は多いと思いますが、それが実現できるというわけです。
これには大きく分けて2種類あって、カスタムリストの1-2はFPGAの設定で、こちらは一回程度は後で無料で変更してくれるということです。これはメーカーによるファームの直接の変更で、ユーザーが自分で変更できるわけではありません。
カスタムリスト
1:音楽ジャンル(POP・アニソン・演歌・EDMなどなど)
2:ボーカル調整(ボーカルの遠さ近さ・横音場の広さ)
3-7の項目はハード設計を直接変えるために納品後の変更はできないということです。
3:ヘッドフォン回路オペアンプ選定(電力消費と音質の兼ね合い)
4:LPF入力電圧の調整(LPF電圧の上下で信号の歪みと動作時間の兼ね合い)
5:出力インピーダンスとZobelフィルター(出力インピーダンスの大きさと保護フィルター設定)
6:ヘッドフォン回路オペアンプ入力電圧と出力電圧(音質と電力消費の兼ね合い)
7:LPFの調整(クラシック音楽で効く信号と位相の兼ね合い)
このほかにもLP6TiではTC4チタニウムを採用したチタン製の筐体や、デジタルとアナログ別でそれぞれ高品質な電源部、高出力のヘッドフォンアンプの搭載なども特徴的です。4.4mmのバランス出力も備え、バランス出力では特に低能率のヘッドフォンでの性能を高め、シングルエンド出力では通常のヘッドフォンやイヤフォンに向けた設計をしているようです。コンデンサーなども軍用グレードの高品質品を使用しているとのこと。(オペアンプのExcelsというのは既製品オペアンプをL&Pがリブランドしたもののようですが、詳細は不明です)
このためにHD800用の専用ケーブルも開発しています。
音源はマイクロSD(FAT32のみ)と64GBの内蔵ストレージです。スペック上の再生時間は7時間となっています。
* HD800専用ケーブル(別売)について
LP6TiではHD800を開発リファレンス機として使ったということもあり、LP6Tiの能力をフルに発揮するために高純度金メッキPCOCC銅線+らせん状の銀メッキという線材を用いた別売りのケーブルも用意されています。これはUltimate Zone U75というケーブルで4.4mmのバランス仕様です。
* インプレッション
試聴用にはマルチドライバー機のCampfire Audio Solaris(4.4mmバランス)とヘッドフォンにはHD800(6.3mm)を使いました。
パッケージは木製の化粧箱が採用されていて、ふたをスライドして開ける方式です。開けると中にLP6Ti本体とUSBケーブル、ヘッドフォン用の標準端子アダプター、保証書が入っています。
本体はL&Pらしくいかにも精密機器というか精巧な金属の塊という感じのデザインですが、持ってみると意外に軽いのに驚きます。チタンは非常に硬くて薄く作ることができるので航空機の軽量化にもよく使われています。材質感はアルミとも違った硬質感がありますが、両側面は木製のプレートがはめ込まれていてよいアクセントになっています。
上部には端子が並んでいます。ヘッドフォン用6.3mm、バランス用の4.4mm、ラインアウト専用(固定出力)の3.5mm端子があります。ボリュームはガード付きで適度なトルク感があるところが好印象です。
側面には電源ボタン、再生、バック、先送りのハードボタンがあります。
底面にはSPDIF出力のRCA端子、マイクロSDスロット、USB端子がありUSB DACとしても使えます。
UIはタッチ操作が可能で独自OSらしいきびきびとしてとても反応が速く感じられます。
設定項目としては基本的なリピートなどの再生設定、グライコ的なEQ設定(プリセットもあり)、またかなり詳細な音質に関する設定があります。デジタルフィルター設定ではおなじみのSLOW/FAST roll-offなどのほかに低遅延やNON Over Samplingなども選択できます。
DACモードに並列モードとタイムシェアリングというのがありますが、並列モードはチャンネルごとにDAC二つが同時に動作、タイムシェアリングは1つのサンプリング周期内でDAC二つが交互に動作するということのようです。
またDCオフセットのオンオフはオンにすると直流信号の修正をするが電力消費がかさむという設定ということです。
はじめにSolarisで4.4mmバランスで聴き始めました。ゲインは設定項目にあります。
音質はとても透明感が高くて美しく、かつパンチがあって歯切れが良いのが特徴的です。現行品と比べてみると、LP5 Ultraなみの据え置きに近いクラス上のアンプ性能と、L6のような洗練されたサウンドを併せ持つ感じですが、実のところ音質はずっと上のレベルにあることに驚きます。
静かな曲を聴くと消え入るような小さな細かい音の再現にも優れているのがわかります。透明感がとても高く、楽器の音が美しく聴こえます。またヴォーカルの声の艶やかさとリアルさも秀逸です。アコースティック楽器の音色がとても端正で澄み切った感じがするのはR2R DACの美点でもありますが、加えて回路の良さ、歪の少なさで雑味のない端正な音が出ているとも感じます。
ダイナミックレンジを強調しているだけあって、試聴曲のパイプオルガンの音域の広さは圧倒的です。Solarisのような空間再現性に長けたイヤフォンでは音の迫力に圧倒されます。低音域もかなり深く下に沈み込み、高域はどこまでも伸びていくかのようです。
パンチがあってロックやアニソンなど動的な曲での打楽器が気持ちよく、躍動感にたいへい優れています。かなりアンプのパワーがあってトランジェントにも優れているので歯切れが良いですね。おそらく電源の良さもあると思います。必要な時に素早く電流が出ている感じです。
またこうして歯切れの良さやパンチを強調してもきつくなりにくいのもR2R DACでPCM音源を聴くときの良い点だと思いますね。
かなりパワフルで高出力志向であることがうかがえます。どちらかというとヘッドフォン向けの設計がなされていると思います。
そこで次にヘッドフォンのHD800で聴いてみました。まずノーマルのケーブルを使って聴きます。
たしかにリファレンスとしてHD800を使ったというだけあってかなり良い組み合わせだと思いますね。HD800の独特の空間表現力がとてもよく再現され、自然で広い音空間が楽しめます。
また音の自然でリアルな再現力にちょっと驚かされます。アカペラコーラスなどはまさに耳元で本当に歌っているようなリアルさです。もちろんパワーもあって躍動感も楽しめます。HD800でパンチのあるベースや打ち込み音が出るのがちょっとすごいと思いますね。音の細かな残響、ホールトーンの表現も優れて聴こえる。
たしかにHD800とLP6Tiの組み合わせはR2R DACの面目躍如というか、リアルさがちょっとすごいレベルにあると思います。まさにHD800が生き生きとしているようで、おそらくLP6TiのDACもかなりハイエンドに近いようなレベルににあるのではないかとも思いますね。据え置きのヘッドフォンアンプでもなかなかこのレベルのDAC内蔵アンプはないように思います。
HD800の別売りケーブルを付けてみると、冷っとしていた音にやや温かみが加わります。標準のケーブルが冷たく客観的な音だとすると、こちらはより音楽的な楽しみを持った音と言えるように思います。楽器音がより美しく、ベルの音も澄んで聞こえます。また楽器音もヴォーカルも滑らかで気持ちよいですね。標準ケーブルとは使い分けてみてもよいでしょう。
また平面型ヘッドフォンとしてHIFIMAN HE580を使ってみました。これはHD800よりもやや鳴らしにくいのですが、十分に音量は取れてよい音で鳴らすことができました。ただ相性としてはHD800のほうが良いと思います。
まとめ
音質の高さは圧倒的で、間違いなく現行DAPトップクラスの一つですが、LP6Tiではダイナミックレンジやトランジェントといった性能面の高さと、楽器の音色の良さといった感覚的な良さの両面に優れている点が素晴らしいですね。特に音再現の美しさ・細かさなどDACのレベルはポータブルを超えている感じで、もし試聴会に行くときはイヤフォンで日頃聞いているにしてもぜひHD800を持って行って試してみてください。
カスタマイズは使用イヤフォンやヘッドフォン、また好みにもよるのでまず試聴したほうが良いでしょう。
わたしなら3はdefault、4は(2)、Zobelフィルターは3か4、出力インピーダンスは1か2、7は1か2、入力電圧は4か5、出力電圧は3か4にするかなと思います、まあオーダーできませんが(笑)考えるのもちょっと面白いですね。
LP6Tiはたしかに高価格も納得できるような高品質・高精度の設計と面白いカスタマイズのサービスですが、日本向けの数は少ないそうです。3/30(土曜日)にフジヤエービックで試聴会を行うそうなので興味のある方はどうぞ参加してこの音を確かめてください。
2019年03月08日
Ultrasoneから静電型ハイブリッドイヤフォンとEdition15の密閉型が登場
3/1よりアユートが代理店引き継ぎを行ったUltrasoneから2つの新製品が発表されました。
ひとつは静電型ハイブリッド形式のイヤフォン、SAPHIRE(サファイア)とEdition15の密閉型であるEdition15 Veritusです。
当日は再びCEOに戻ったマイケルウインバーグ氏が来日して製品解説をしました。ひげをはやしていたので前のイメージとはちょっと違いますね。
Veritusとは真実という意味でEdition15の密閉型版です。ドライバーは同じですが、音は密閉型に合わせて一からチューニングしたということです。イヤパッドにも改良があるということ。
Ultrasoneはチタン振動板の少し硬めの音が特徴でしたが、GTCドライバーでは柔らかめの音を目指しているということです。
デモ機を聴いてみましたが、解像感はとても高くてeditionスタンダードという感じです。
また密閉型だけども広がりのある音が特徴的で、S-Logicが効いているように思います。もちろん密閉型のパンチもあって、低域は膨らみすぎてないが気持ち良いと思いました。edition9のような低域偏重という感じではなく全体にバランスは良く、高域もかなり伸びてワイドレンジ感も高いと思います。
もうひとつの新製品、SAPHIREの登場した背景としては、edition7から15年ということで、edition7は当時はなかった価格帯のモデルだったが評判を得てハイエンドヘッドフォンとUltrasoneの礎となった、その15年後にイヤフォンで同じことをしたいということです。
サファイアの名前はedition7 tributeをインスピレーションに青く輝く名前にしたということです。
Tribute7の記事はこちら
当初editionラインでイヤフォンをやりたかったが、前のIQがレベルが十分高かったので静電型で他社にないものにしたかったということです。
IQではダイナミックとBAのハイブリッドでしたが、BAとのハイブリッドにしたのは主にサイズ的な要因があったようです。実際にマルチドライバー・ハイブリッドとしてはかなりコンパクトです。
SAPHIREは6ドライバーのBAと静電型とのハイブリッドタイプのイヤフォンで完全密閉型のシェルデザインです。静電型は2ユニットをスーパーツィーターとして使用しているということ。クロスオーバーは設けていないようです。2ユニット使用したのは試行錯誤していろいろな組み合わせを試した結果、この組み合わせが良かったということです。2ユニットはスタガード(ずらし)ではなく同一帯域を担当しているということ。
静電型としてはいわゆるエレクトレットタイプで自己荷電して外部のバイアス電流は不要なタイプです。ちなみに静電型ドライバーユニットはすでに市場に出ている他社の静電型イヤフォンの採用しているユニットとは異なるようです。
3つ穴が開いているのはそれぞれ高域(と静電ドライバー)、中域、低域と分かれています。
ケーブルは2ピンでリケーブルできますが、引っ込んでいるタイプで極性指示のためのノッチがついています。
用意されていたアンバランスとバランスは線材も異なり、アンバランスで聴くとIQに似た音調で、高音質だが厚みがあって優しく滑らかな音です。バロックバイオリンの倍音の響きは美しく、スーパーツィーターはアンビエント感のためのようなことを言っていたように音楽的な傾向の音作りのように感じられました。バランスではケーブル線材も異なり、より明瞭感が高くなるように思います。
(左はFitEar EST)
BTとかワイヤレス製品は、と聴いてみるといまやっているという感じでした。また体制も少し変わったようで今後の展開も興味が持てます。
ところでedition7から15年ということは、考えてみるとうちのブログも15年ということに気が付きました。この世界もスピーカーオーディオ同様に歴史というものが感じられるようになってきましたね。
ひとつは静電型ハイブリッド形式のイヤフォン、SAPHIRE(サファイア)とEdition15の密閉型であるEdition15 Veritusです。
当日は再びCEOに戻ったマイケルウインバーグ氏が来日して製品解説をしました。ひげをはやしていたので前のイメージとはちょっと違いますね。
Veritusとは真実という意味でEdition15の密閉型版です。ドライバーは同じですが、音は密閉型に合わせて一からチューニングしたということです。イヤパッドにも改良があるということ。
Ultrasoneはチタン振動板の少し硬めの音が特徴でしたが、GTCドライバーでは柔らかめの音を目指しているということです。
デモ機を聴いてみましたが、解像感はとても高くてeditionスタンダードという感じです。
また密閉型だけども広がりのある音が特徴的で、S-Logicが効いているように思います。もちろん密閉型のパンチもあって、低域は膨らみすぎてないが気持ち良いと思いました。edition9のような低域偏重という感じではなく全体にバランスは良く、高域もかなり伸びてワイドレンジ感も高いと思います。
もうひとつの新製品、SAPHIREの登場した背景としては、edition7から15年ということで、edition7は当時はなかった価格帯のモデルだったが評判を得てハイエンドヘッドフォンとUltrasoneの礎となった、その15年後にイヤフォンで同じことをしたいということです。
サファイアの名前はedition7 tributeをインスピレーションに青く輝く名前にしたということです。
Tribute7の記事はこちら
当初editionラインでイヤフォンをやりたかったが、前のIQがレベルが十分高かったので静電型で他社にないものにしたかったということです。
IQではダイナミックとBAのハイブリッドでしたが、BAとのハイブリッドにしたのは主にサイズ的な要因があったようです。実際にマルチドライバー・ハイブリッドとしてはかなりコンパクトです。
SAPHIREは6ドライバーのBAと静電型とのハイブリッドタイプのイヤフォンで完全密閉型のシェルデザインです。静電型は2ユニットをスーパーツィーターとして使用しているということ。クロスオーバーは設けていないようです。2ユニット使用したのは試行錯誤していろいろな組み合わせを試した結果、この組み合わせが良かったということです。2ユニットはスタガード(ずらし)ではなく同一帯域を担当しているということ。
静電型としてはいわゆるエレクトレットタイプで自己荷電して外部のバイアス電流は不要なタイプです。ちなみに静電型ドライバーユニットはすでに市場に出ている他社の静電型イヤフォンの採用しているユニットとは異なるようです。
3つ穴が開いているのはそれぞれ高域(と静電ドライバー)、中域、低域と分かれています。
ケーブルは2ピンでリケーブルできますが、引っ込んでいるタイプで極性指示のためのノッチがついています。
用意されていたアンバランスとバランスは線材も異なり、アンバランスで聴くとIQに似た音調で、高音質だが厚みがあって優しく滑らかな音です。バロックバイオリンの倍音の響きは美しく、スーパーツィーターはアンビエント感のためのようなことを言っていたように音楽的な傾向の音作りのように感じられました。バランスではケーブル線材も異なり、より明瞭感が高くなるように思います。
(左はFitEar EST)
BTとかワイヤレス製品は、と聴いてみるといまやっているという感じでした。また体制も少し変わったようで今後の展開も興味が持てます。
ところでedition7から15年ということは、考えてみるとうちのブログも15年ということに気が付きました。この世界もスピーカーオーディオ同様に歴史というものが感じられるようになってきましたね。
2019年01月16日
THX AAA技術を採用したFiiO X7/Q5アンプモジュールAM3Cレビュー
AM3CはFiiO X7/X7mkII/Q5用の取り外し可能なアンプモジュールです。FiiO X7/X7 mkIIはFiiOのデジタルオーディオプレーヤーの最新世代のフラッグシップ機であり、ESS社製のハイエンドDACを採用したDAPですが、アンプ部分がユーザー交換可能で様々な音を楽しめるのが特徴です。Q5はBluetoothレシーバーとUSB DAC機能を持ったポータブルアンプです(固有のUIはありません)が同様にX7用のモジュールを使うことができます。
FiiO X7 mkIIとAM3Cモジュール
アンプモジュールではこれまでにAM2(シングルエンド中出力)、AM5(シングルエンド高出力)、AM3A(2.5mmバランス)、AM3B(4.4mmバランス)などが出ていますが、その新しいラインナップがこのAM3Cです。これはAM3Bを出してから特に日本のユーザーに4.4mmバランス端子が好評であったために開発した、4.4mmバランス端子を搭載した新しいアンプモジュールだということです。AM3Bと同様に3.5mm端子も装備しています。
* THX AAAとは
AM3Cの特徴は最近開発されたTHX AAAと呼ばれるヘッドフォンアンプ技術を採用していることです。THXは映画館に行くとドルビーとともにロゴが現れることでご存知の方も多いと思いますが、映画の音響評価をつかさどっている会社で、もとはルーカスフィルムの一部門でした。映画館で出てくるロゴはTHXお墨付きのシアターですという意味です。同様にAV機器に対してもTHXお墨付きという認証を与えてもいます。
そのTHX社がTriad Semiconductor社と共同で開発したオーディオアンプ用のICがAAA(Achromatic Audio Amplifier)です。これはTHX社の戦略によるVRなどのパーソナル製品のオーディオ面を支えるために開発されたものですが、THX社のLaurie Finchamという音響開発担当重役がオーディオマニアであったということも関係しているようです。つまりTHXと聞くと重低音とかサラウンド音響効果を思い浮かべますので、そうしたDSP的なものかと考えてしまいますが、実のところTHX AAAはHIFIオーディオ寄りのところからスタートしているヘッドフォンアンプICです。
AAAのAchromatic(アクロマティック)とは望遠鏡やカメラレンズでよく使われる単語ですが、色のにじみがないという意味です(アポクロマートも同様な意味です)。この場合オーディオでは着色感のない、あるいは高忠実度という意味で使われています。つまり原音そのままを通す技術という感じですね。
その名のように、AAAチップは低ノイズ、低歪み、そして低消費電力を特徴としています。特に歪みという点ではフィードフォワードという技術で他とは文字通り桁違いの低歪みを達成しているとのことです。「フィードフォワード」はCHORDの最新アンプのetudeでも採用されていましたね。
これは増幅のさいの歪みとして取り出した成分を最終出力で逆相で減らして歪を取るというようなもののようです。増幅としては一般的なAB級よりもバイアス電流は少なくて効率が良い(省電力)ということです。
あまり詳しい説明は私もできませんが、興味ある方にはTHXが出願しているこちらの米国特許を参照できます。
https://patents.google.com/patent/US8421531B2/en
https://patents.google.com/patent/US8004355B2/en
AM3Cモジュール
THX AAA技術を採用したICはいくつかあるのですが、AM3CではTHXAAA-78というヘッドフォンアンプICを採用しています。これはTHX AAAファミリーではモバイル向けのFrontierというシリーズの高音質タイプのICで、DAPやポータブルヘッドフォンアンプのために開発されたものです。SN比は128dB(モジュールで)というもので、よく知られるヘッドフォンアンプICのLME49600よりも低歪みで消費電力も低くなっています。
IC単体ではなく製品としてのAM3Cでも従来品のAM3Bを超えた性能を発揮できます。AM3Bに比べるとより出力インピーダンスが低く、周波数特性がよりフラット、特に歪であるTHDはAM3Bが0.001%に対してAM3Cでは0.0008%と大幅に改善されていてTHX AAAモジュール採用の効果が表れています。
THXAAA-78は2chアンプですので、バランスアンプ回路を実現するためにAM3CにはTHXAAA-78が二基搭載されています。またAM3CはTHX社の定めた検査に合格しています。
他のヘッドフォンアンプICやTHX AAAでの各IC間の比較は下記ページにあります。
https://www.thx.com/mobile/aaa/
海外ではすでにBenchmarkやMassdropなどからTHX AAA技術を採用した据え置きヘッドフォンアンプが発売されており、Heafiなどオーディオコミュニティで高い評価を得ています。特にMassdropのコンシューマタイプのアンプですが評価としてはさまざまなアンプと比べてもやはり着色感がとても少なく、分析的でフラットな価格を超えたサウンドというものです。
もちろんアンプICだけではなく製品としての評価が必要ですので、本稿では以降AM3BやAM5など他のモジュールと比較しながらレビューしていきます。
* AM3Cと他のモジュールの比較
はじめにFiiO X7 MkIIを使いました。アンプモジュールの脱着はドライバーで簡単に行うことができます。ただしねじが小さいので紛失に注意しましょう。ドライバーは日本にはあまりないトルクスタイプです。このアンプモジュールの脱着はなかなかに精密感があって、ぴったりと嵌合します。
アンプモジュールの脱着
AM3Cはプロトタイプを使用して試聴したので製品版とは異なるかもしれないことは注記しておきます。他は製品版です。イヤフォンはCampfire AudioのフラッグシップであるSolarisを主に使いました。まずシングルエンドの3.5mm端子を使用します。
AM3Bモジュール
全体の音は上流がESSらしくニュートラル傾向だけれども、AM3Bではわずか暖かみを感じます。またAM3BではSolarisの豊かな低域が少しふくらみを感じます。
AM3Cではほぼ音の着色感はなく、AM3Bのシングルエンドに比べるとAM3Cでは特に低域が引き締まって低域のふくらみが少なくタイトで、帯域バランス的にもフラット感が感じられます。AM3Cのほうがより低いところまで出る感じで良質な低域ですね。
AM3Cではより音が整理されていて、一つ一つの楽器の音が聴き取りやすく感じます。透明感はAM3Bでも高いレベルにありますが、比較するとAM3Cのほうが少し透明感が高いと思います。音の広がりはAM3Bのほうが少し広く感じます。
AM3CではAM3Bに比べると粗さが減って端正な音表現になるのも気が付いた点です。例えばバロックバイオリンの中高域ではAM3Bではややきつさが感じられますが、AM3Cではスムーズできつさの少ない美しい倍音再現が楽しめます。
AM3Cは分析的だからと言って無機的というのではないですね。ただベースに迫力を求める人はAM3Bの方を好むかもしれません。端的にいうとAM3Bはやや演出的で、AM3Cはかなり忠実な音再現を感じ取れます。
AM3BとAM3Cの諸特性の比較はFiiO Japanの製品紹介ページにあります。
https://www.fiio.jp/products/amp-module/
左:AM2、右:AM5
シングルエンドのみのAM5と比べると、パワー感ではAM5がとてもパワフルな表現であるのに対して、AM3Cは自然な再現と言えます。ハイパワータイプのAM5とイヤモニでは少し音が強すぎるかもしれないですが、その場合ではAM2を使用すると力強さは少し抑えられて聴きやすく音の締まりも切れもよいと感じられます。AM2とAM5は音的には似ていて、力強さの度合いが異なるというべきかもしれません。
次に3.5mmと同じ種類のALOケーブルで4.4mm端子に付け替えてバランスでも聴いてみました。AM2とAM5はシングルエンドのみです。
AM3Bはバランスに変えることで立体感がより際立って、3次元的に聴こえます。AM3Bはバランスで聴いたほうが音も整理されて聴きやすく洗練されて聞こえます。
バランスにおいてもやはりAM3CのほうがAM3Bよりもよりシャープでタイトな音再現を聴かせてくれます。
気が付いたのはAM3Cをバランスで聴くとパワー感が加わって力強さが感じられるようになるということです。
3.5mmで聴くとAM3Cは多少控えめな優等生的な感じですが、4.4mmバランスで聴くとAM3Cも元気でパンチがより感じられるようになります。音の歯切れもよく気持ちよく音楽を楽しめます。こうした点からAM3Cでもやはりバランス駆動の効果はあると思います。
FiiO Q5(アンプモジュールを外したところ)
iPhoneからBluetoothレシーバーとしてQ5でもAM3BとAM3Cで聴き比べてみましたが、やはり同様な差は感じられます。やはりAM3Cのほうがよりタイトで引き締まった音が感じられます。
Q5自体はBluetoothレシーバーとしてなかなかすぐれていると思いますね。どのモジュールでも音の広がりが気持ちよく感じられます。
* まとめ
いろいろとモジュールを変えて聞いてみましたが、それぞれ個性を楽しめました。
端的にいうとAM3Bは音楽的で演出感があり、AM3C(THX)はよりHIFIで優等生的で玄人好みの音です。またAM5はパワフルな音再現を望む人に向いています。
FiiO X7/Q5のモジュラーシステムの場合は上流が同じということもありますが、音質のレベルがモジュール間で大きく違うというよりも、個性で選ぶべきかもしれません。自分はどう音楽を聴きたいかということと、イヤフォン・ヘッドフォンとの組み合わせもあるでしょう。暴れ気味のイヤフォンを手なづけるにはAM3Cが良いでしょう。
またロックファンとしてはシングルエンドだけどAM2やAM5もパンチがあって魅力的に思えました。ジャズとかクラシックではAM3Cを取ると思いますが、オーケストラ物ではAM3Bもスケール感があってよいですね。ポップではAM3Bを使いたい感じです。
X7 mkIIブート画面
それぞれ個性があってよいのですが、客観的にレビュワーとしてどのモジュールの完成度・チューニングがもっともHIFIオーディオらしいかというと、やはりAM3Cであると思います。帯域がフラットになるということと、着色感が少なくなること、音にきつさが少なくなめらかであることなど、よくチューニングされてると思うのはTHXのお墨付きゆえかもしれません。
映画館でのTHXから想起されるようなでかい重低音だとかDSPサラウンドっぽくなるのではなく、あくまで一番ピュアオーディオ的な洗練された印象となるのがAM3Cです。低歪み、低ノイズ、低出力インピーダンスのTHX AAA技術が効いていると言えるでしょう。
AM3Cは優等生的ですが無機的というわけではなく、ジャズトリオのスピード感あふれる演奏ではリズムに乗れるし、楽器音の滑らかな再現は魅力的です。なかなかすぐれたアンプモジュールだと思います。
AM3Cは本日予約開始で、1月下旬に数量限定で発売ということです。詳しくは下記の案内をご覧ください。
https://www.fiio.jp/news/am3c/
FiiO X7 mkIIとAM3Cモジュール
アンプモジュールではこれまでにAM2(シングルエンド中出力)、AM5(シングルエンド高出力)、AM3A(2.5mmバランス)、AM3B(4.4mmバランス)などが出ていますが、その新しいラインナップがこのAM3Cです。これはAM3Bを出してから特に日本のユーザーに4.4mmバランス端子が好評であったために開発した、4.4mmバランス端子を搭載した新しいアンプモジュールだということです。AM3Bと同様に3.5mm端子も装備しています。
* THX AAAとは
AM3Cの特徴は最近開発されたTHX AAAと呼ばれるヘッドフォンアンプ技術を採用していることです。THXは映画館に行くとドルビーとともにロゴが現れることでご存知の方も多いと思いますが、映画の音響評価をつかさどっている会社で、もとはルーカスフィルムの一部門でした。映画館で出てくるロゴはTHXお墨付きのシアターですという意味です。同様にAV機器に対してもTHXお墨付きという認証を与えてもいます。
そのTHX社がTriad Semiconductor社と共同で開発したオーディオアンプ用のICがAAA(Achromatic Audio Amplifier)です。これはTHX社の戦略によるVRなどのパーソナル製品のオーディオ面を支えるために開発されたものですが、THX社のLaurie Finchamという音響開発担当重役がオーディオマニアであったということも関係しているようです。つまりTHXと聞くと重低音とかサラウンド音響効果を思い浮かべますので、そうしたDSP的なものかと考えてしまいますが、実のところTHX AAAはHIFIオーディオ寄りのところからスタートしているヘッドフォンアンプICです。
AAAのAchromatic(アクロマティック)とは望遠鏡やカメラレンズでよく使われる単語ですが、色のにじみがないという意味です(アポクロマートも同様な意味です)。この場合オーディオでは着色感のない、あるいは高忠実度という意味で使われています。つまり原音そのままを通す技術という感じですね。
その名のように、AAAチップは低ノイズ、低歪み、そして低消費電力を特徴としています。特に歪みという点ではフィードフォワードという技術で他とは文字通り桁違いの低歪みを達成しているとのことです。「フィードフォワード」はCHORDの最新アンプのetudeでも採用されていましたね。
これは増幅のさいの歪みとして取り出した成分を最終出力で逆相で減らして歪を取るというようなもののようです。増幅としては一般的なAB級よりもバイアス電流は少なくて効率が良い(省電力)ということです。
あまり詳しい説明は私もできませんが、興味ある方にはTHXが出願しているこちらの米国特許を参照できます。
https://patents.google.com/patent/US8421531B2/en
https://patents.google.com/patent/US8004355B2/en
AM3Cモジュール
THX AAA技術を採用したICはいくつかあるのですが、AM3CではTHXAAA-78というヘッドフォンアンプICを採用しています。これはTHX AAAファミリーではモバイル向けのFrontierというシリーズの高音質タイプのICで、DAPやポータブルヘッドフォンアンプのために開発されたものです。SN比は128dB(モジュールで)というもので、よく知られるヘッドフォンアンプICのLME49600よりも低歪みで消費電力も低くなっています。
IC単体ではなく製品としてのAM3Cでも従来品のAM3Bを超えた性能を発揮できます。AM3Bに比べるとより出力インピーダンスが低く、周波数特性がよりフラット、特に歪であるTHDはAM3Bが0.001%に対してAM3Cでは0.0008%と大幅に改善されていてTHX AAAモジュール採用の効果が表れています。
THXAAA-78は2chアンプですので、バランスアンプ回路を実現するためにAM3CにはTHXAAA-78が二基搭載されています。またAM3CはTHX社の定めた検査に合格しています。
他のヘッドフォンアンプICやTHX AAAでの各IC間の比較は下記ページにあります。
https://www.thx.com/mobile/aaa/
海外ではすでにBenchmarkやMassdropなどからTHX AAA技術を採用した据え置きヘッドフォンアンプが発売されており、Heafiなどオーディオコミュニティで高い評価を得ています。特にMassdropのコンシューマタイプのアンプですが評価としてはさまざまなアンプと比べてもやはり着色感がとても少なく、分析的でフラットな価格を超えたサウンドというものです。
もちろんアンプICだけではなく製品としての評価が必要ですので、本稿では以降AM3BやAM5など他のモジュールと比較しながらレビューしていきます。
* AM3Cと他のモジュールの比較
はじめにFiiO X7 MkIIを使いました。アンプモジュールの脱着はドライバーで簡単に行うことができます。ただしねじが小さいので紛失に注意しましょう。ドライバーは日本にはあまりないトルクスタイプです。このアンプモジュールの脱着はなかなかに精密感があって、ぴったりと嵌合します。
アンプモジュールの脱着
AM3Cはプロトタイプを使用して試聴したので製品版とは異なるかもしれないことは注記しておきます。他は製品版です。イヤフォンはCampfire AudioのフラッグシップであるSolarisを主に使いました。まずシングルエンドの3.5mm端子を使用します。
AM3Bモジュール
全体の音は上流がESSらしくニュートラル傾向だけれども、AM3Bではわずか暖かみを感じます。またAM3BではSolarisの豊かな低域が少しふくらみを感じます。
AM3Cではほぼ音の着色感はなく、AM3Bのシングルエンドに比べるとAM3Cでは特に低域が引き締まって低域のふくらみが少なくタイトで、帯域バランス的にもフラット感が感じられます。AM3Cのほうがより低いところまで出る感じで良質な低域ですね。
AM3Cではより音が整理されていて、一つ一つの楽器の音が聴き取りやすく感じます。透明感はAM3Bでも高いレベルにありますが、比較するとAM3Cのほうが少し透明感が高いと思います。音の広がりはAM3Bのほうが少し広く感じます。
AM3CではAM3Bに比べると粗さが減って端正な音表現になるのも気が付いた点です。例えばバロックバイオリンの中高域ではAM3Bではややきつさが感じられますが、AM3Cではスムーズできつさの少ない美しい倍音再現が楽しめます。
AM3Cは分析的だからと言って無機的というのではないですね。ただベースに迫力を求める人はAM3Bの方を好むかもしれません。端的にいうとAM3Bはやや演出的で、AM3Cはかなり忠実な音再現を感じ取れます。
AM3BとAM3Cの諸特性の比較はFiiO Japanの製品紹介ページにあります。
https://www.fiio.jp/products/amp-module/
左:AM2、右:AM5
シングルエンドのみのAM5と比べると、パワー感ではAM5がとてもパワフルな表現であるのに対して、AM3Cは自然な再現と言えます。ハイパワータイプのAM5とイヤモニでは少し音が強すぎるかもしれないですが、その場合ではAM2を使用すると力強さは少し抑えられて聴きやすく音の締まりも切れもよいと感じられます。AM2とAM5は音的には似ていて、力強さの度合いが異なるというべきかもしれません。
次に3.5mmと同じ種類のALOケーブルで4.4mm端子に付け替えてバランスでも聴いてみました。AM2とAM5はシングルエンドのみです。
AM3Bはバランスに変えることで立体感がより際立って、3次元的に聴こえます。AM3Bはバランスで聴いたほうが音も整理されて聴きやすく洗練されて聞こえます。
バランスにおいてもやはりAM3CのほうがAM3Bよりもよりシャープでタイトな音再現を聴かせてくれます。
気が付いたのはAM3Cをバランスで聴くとパワー感が加わって力強さが感じられるようになるということです。
3.5mmで聴くとAM3Cは多少控えめな優等生的な感じですが、4.4mmバランスで聴くとAM3Cも元気でパンチがより感じられるようになります。音の歯切れもよく気持ちよく音楽を楽しめます。こうした点からAM3Cでもやはりバランス駆動の効果はあると思います。
FiiO Q5(アンプモジュールを外したところ)
iPhoneからBluetoothレシーバーとしてQ5でもAM3BとAM3Cで聴き比べてみましたが、やはり同様な差は感じられます。やはりAM3Cのほうがよりタイトで引き締まった音が感じられます。
Q5自体はBluetoothレシーバーとしてなかなかすぐれていると思いますね。どのモジュールでも音の広がりが気持ちよく感じられます。
* まとめ
いろいろとモジュールを変えて聞いてみましたが、それぞれ個性を楽しめました。
端的にいうとAM3Bは音楽的で演出感があり、AM3C(THX)はよりHIFIで優等生的で玄人好みの音です。またAM5はパワフルな音再現を望む人に向いています。
FiiO X7/Q5のモジュラーシステムの場合は上流が同じということもありますが、音質のレベルがモジュール間で大きく違うというよりも、個性で選ぶべきかもしれません。自分はどう音楽を聴きたいかということと、イヤフォン・ヘッドフォンとの組み合わせもあるでしょう。暴れ気味のイヤフォンを手なづけるにはAM3Cが良いでしょう。
またロックファンとしてはシングルエンドだけどAM2やAM5もパンチがあって魅力的に思えました。ジャズとかクラシックではAM3Cを取ると思いますが、オーケストラ物ではAM3Bもスケール感があってよいですね。ポップではAM3Bを使いたい感じです。
X7 mkIIブート画面
それぞれ個性があってよいのですが、客観的にレビュワーとしてどのモジュールの完成度・チューニングがもっともHIFIオーディオらしいかというと、やはりAM3Cであると思います。帯域がフラットになるということと、着色感が少なくなること、音にきつさが少なくなめらかであることなど、よくチューニングされてると思うのはTHXのお墨付きゆえかもしれません。
映画館でのTHXから想起されるようなでかい重低音だとかDSPサラウンドっぽくなるのではなく、あくまで一番ピュアオーディオ的な洗練された印象となるのがAM3Cです。低歪み、低ノイズ、低出力インピーダンスのTHX AAA技術が効いていると言えるでしょう。
AM3Cは優等生的ですが無機的というわけではなく、ジャズトリオのスピード感あふれる演奏ではリズムに乗れるし、楽器音の滑らかな再現は魅力的です。なかなかすぐれたアンプモジュールだと思います。
AM3Cは本日予約開始で、1月下旬に数量限定で発売ということです。詳しくは下記の案内をご覧ください。
https://www.fiio.jp/news/am3c/
2018年12月13日
Campfire Audio Solarisのレビュー記事をPhilewebに執筆しました
PhilewebにCampfire Audio Solarisのレビュー記事を執筆しました。
https://www.phileweb.com/review/article/201812/13/3305.html
Kenさんに直接インタビューした内容が記事に盛り込まれていますので、興味ある方はぜひご覧ください。
Solarisはまさにポータブルオーディオという感じで、スケール感があり、迫力もあり、解像感もあり、Kenさんがこれ以上はないと言っていたように素晴らしいイヤフォンだと思います。
https://www.phileweb.com/review/article/201812/13/3305.html
Kenさんに直接インタビューした内容が記事に盛り込まれていますので、興味ある方はぜひご覧ください。
Solarisはまさにポータブルオーディオという感じで、スケール感があり、迫力もあり、解像感もあり、Kenさんがこれ以上はないと言っていたように素晴らしいイヤフォンだと思います。
2018年11月20日
ユニークで高音質なダイナミック、FAudio Majorレビュー
FAudioは香港のメーカーで、もとは音響・スタジオでのエンジニアだった人々が立ち上げたメーカーです。当初はカスタムのリモールド・リシェルを行い、2016にはカスタムIEMをリリースしました。
FAudioはユニークな取り組みを行うメーカーで、マルチBA設計においてフルレンジドライバーを組み合わせて設計するTrue Crossover Technologyなど独自のアプローチが光ります。
本稿で紹介するMajorは今年の新製品でダイナミックドライバーの高性能モデルです。ドライバーは10.5mmの大口径シングル・ダイナミックですが、FAudioらしくユニークな切り口でシングルの良さを生かしながらシングルの限界を超えるような製品に仕上げています。
* Majorの特徴
1. トリプル・アコーステック・チャンバー
イヤフォンでは昔からエアフローが音を改善しドライバーの働きを向上させる重要な項目でしたが、最近ではアコーステック・チャンバーと呼ばれる音響空間または空気室を用いて音の改善を図る方法をよく見かけるようになってきました。Majorではこのアコーステック・チャンバーを3段階に使用して効果を高めています。
これによってドライバーの効率を高めてより深い低域を出し、ピークやマスキングを抑えて自然な周波数特性を実現、さらに音圧疲労を軽減するなどの効果を得ています。
2. ダブルレイヤード・ダイヤフラム
音の要となるダイヤフラム(振動板)はチタニウム製のダイヤフラムと、メディカルファイバー製ダイヤフラムを二枚重ねた二重構造となっています。これによってチタニウムでの高音域の拡張し、メディカルファイバーでのトランジェント改善によりよりタイトなサウンド、明瞭なヴォーカルを再現させているということ。
ダイヤフラムの二枚重ねというのはなかなかないですね。
3. 軍用線材のケーブル
標準ケーブルも軍用のクリスタル銅ケーブルを採用。シースもがっちりとした高級ケーブルが初めからついています。
またケーブル端子は2ピン仕様で交換可能となっています。
4. 音を変えられるイヤチップが付属
Majorにはシリコン製の白と黒、黒のフォームの3種類のイヤチップが付属しますが、白のシリコンチップにはInstrument、黒のシリコンチップにはVocalと名前がついているのがユニークです。
これはFaudioの自社開発によるもので、中芯の音が通る部分の材質を変えることで音の個性を変えることができます。いままでもこうした試みをユーザー側でよくやっていましたが、メーカーが公式に提供するのはユニークな試みだと思います。
* 製品レビュー
Majorは黒い箱にコンパクトにパッケージングされています。中にはイヤチップを格納した内箱と、イヤフォンのソフトケースが添付され、本体は金属製のケースに収納されています。
イヤチップは先に書いたように3種類入っていてそのうちシリコンラバーチップは黒(Vocal)と白(Instrument)に分かれて各サイズが入っています。普通は装着性の違いでイヤチップがわかれているものですが、音質の違いをうたうのはなかなかユニークです。これについては音質コメントのところで触れることにします。
筐体はCNC加工で作れたアルミニウム合金と無酸素銅サウンドチューブを採用したかなり頑丈なもので、高い工作精度が感じられます。この頑丈な筐体で共振が少ない、素材特有の音鳴りが少ないというメリットもあるそうです。
装着してみるとアルミ製のせいかそれほどの重さは感じません。ケーブルは太めですが柔軟で余計なノイズも少ないと思います。
まず初めにイヤチップの音の違いを書きますと、黒(Vocal)は中域の明瞭感があって声が分かりやすく、フラットでニュートラルだと思います。いわばオーディオファイルっぽい音で、比較すると音が整理されて落ち着いています。同じ音量でもinstrumentより聴覚的に低く聴こえるように思います。
白(Instrument)では低域と高域の強調感があります。いわばコンシューマライクな音で派手めです。また材質が違うせいか黒よりもややノズルにハメにくいので注意してください。
もうひとつのフォームイヤチップは他のチップが耳に合わない時の落とし所と言えますが、やや大人しくなります。やはりVocalかInstrumentのシリコンチップがMajorらしい凄みがあるのでお勧めです。
VocalとInstrumentではどちらがよいかというよりは好みや音楽、DAPで変えるのが良いと思います。
以下の音質コメントは主に黒(Vocal)で聴きました。
まず感じるのはダイナミック・ドライバーという先入観とは異なり、BAのようなシャープで鮮明な音鳴りです。しかし聴いていくと深く厚みのある低域から、鮮明で突き抜けるように上に伸びるような高音域まで、まるでマルチBAのようなワイドレンジの広い帯域特性の良さを感じます。イヤフォンとしての能率はやや低めです。
高音域は明るく軽く伸びる感じで、ダイナミックの粗さは感じられずBAのようなスムーズで整った高域で、中低域はダイナミックらしくたっぷりとした深みのあるインパクトの強い気持ちよさを感じます。低域は迫力とともに制動が効いててタイトでパンチがありますね。
また、中音域ではヴォーカルの再現性が素晴らしく、ささやくような細かさ、声のかすれ、発声の明瞭感、声質の再現力の良さを感じさせます。色付けは少なく、すっきりとして過剰な温かみはありません。
楽器音が鮮明でくっきり聞こえるだけでなく、整っていて歪み感が少ない点が優秀で、いわば正確なパルスレスポンスっぽく聞こえます。特に高域のベルとかはかなり歪感が少ない感じですね。
Majorはダイナミック・ドライバーのワイドレンジ感だけど、フルレンジBAのようなスムーズで端正な音が感じられます。ダイナミックドライバーの迫力もありますが、透明感とか音が整っているとかBAドライバーのような印象もする不思議な音再現に魅力を感じます。
さすがシングルドライバーというか、音場感が良く、広くて立体感が半端ないところが良いですね。
Majorのアコースティック楽器のベール剥がした生々しい鮮明さとか音の深みなど聴くとシンプルなシングルドライバー機っていいなあと思いますが、普通はシングルBAだとナロウレンジで、シングルダイナミックだとシャープさに欠けて荒いものです。しかしMajorはシングルでありながらワイドレンジの音、ダイナミックでありながらBAのような音をを両立してるのが優れていると感じます。
*まとめ
シングルダイナミックでも最近はDita DreamとかHiFiMan RE2000など優れたモデルが出てきていますが、FAudio Majorもそうしたトップクラスに加えてもよいような素晴らしい音再現性能と、個性的な音の魅力を持っていると思います。
また、イヤチップを変えることで音を二種類楽しめるのもなかなか良い点です。ちょっと電車に乗る時間が長いと、イヤチップでいろいろと音を変えながらあーでもないこーでもないと試行錯誤しながら楽しめるのもポータブルオーディオならではの楽しみですね。
MajorはFAudioらしいユニークなアプローチでトップクラスの音を実現した優れたモデルだと思います。
2018年11月15日
iFI Audio製品の新デジタルフィルターGTOについて(5.3c)
iFI Audio製品では今回のファームウエアの更新(5.3c)で新しいGTOフィルターというトランジェント重視のデジタルフィルターが採用されました。これはMQA社と開発協力があったそうで、音楽を正確に再現するというフィルターです。技術的な内容は下記のページをご覧ください。
https://ifi-audio-jp.blogspot.com/2018/11/blog-post.html?m=1
適用範囲についてなのですが、上記ファームウェア更新ページのリリースノートには従来のミニマムフェイズフィルターを置き換えるとあります。しかし例えばiDSD BLではMinimum Phaseフィルターのスイッチがありますが、xDSDではありません。そこでこの辺の明確化をiFIのおなじみトルステン博士に聞いてみました。
すると5.3cを適用したファームのiFI Audio製品においては、GTOフィルターは従来のデジタルフィルターの代わりにPCM再生の際には常に動作していて、従来のフィルタースイッチの位置はPCM再生においては意味がなくなるということのようです。ただしDSDを再生する際には従来のフィルタースイッチは従来どおりの意味をもつそうです。(従来仕様のほうがよければファームウェア更新は適用しないでほしいとのこと)
また、PCMにおいても352k/384kの入力の時はGTOがかからないということです(iDSD proは除く)。それはこの領域ではアナログフィルターで十分で、デジタルフィルターはかけなくても良いということだからということです。
加えてPCMにおいてもMQA再生時にはGTOフィルターは適用されないということです。MQAのポイントは「時間的正確性」と「コンパクトさ」で、前者はデジタルフィルターによるものと考えられますが、GTOとの関連も推測するには面白いと思います(あえてそこまで突っ込んで聞きませんでしたが)。
またいままではFPGAで実現していたようなデジタルフィルター機能をXMOSで実現したのも驚きです。iFIはDSDネイティブ再生の頃からXMOSのプログラミングには長けていると思ってましたがさすがです。端的にいうとカスタムICの中でもXMOSはソフト寄りでFPGAはハード寄りです(ちなみにASICはもっとハード寄り)。
しかし、もともとハード実装するような機能がFPGAで実装され、今ではXMOSでも可能になったというのは、ムーアの法則まだまだ健在という感じですね。
https://ifi-audio-jp.blogspot.com/2018/11/blog-post.html?m=1
適用範囲についてなのですが、上記ファームウェア更新ページのリリースノートには従来のミニマムフェイズフィルターを置き換えるとあります。しかし例えばiDSD BLではMinimum Phaseフィルターのスイッチがありますが、xDSDではありません。そこでこの辺の明確化をiFIのおなじみトルステン博士に聞いてみました。
すると5.3cを適用したファームのiFI Audio製品においては、GTOフィルターは従来のデジタルフィルターの代わりにPCM再生の際には常に動作していて、従来のフィルタースイッチの位置はPCM再生においては意味がなくなるということのようです。ただしDSDを再生する際には従来のフィルタースイッチは従来どおりの意味をもつそうです。(従来仕様のほうがよければファームウェア更新は適用しないでほしいとのこと)
また、PCMにおいても352k/384kの入力の時はGTOがかからないということです(iDSD proは除く)。それはこの領域ではアナログフィルターで十分で、デジタルフィルターはかけなくても良いということだからということです。
加えてPCMにおいてもMQA再生時にはGTOフィルターは適用されないということです。MQAのポイントは「時間的正確性」と「コンパクトさ」で、前者はデジタルフィルターによるものと考えられますが、GTOとの関連も推測するには面白いと思います(あえてそこまで突っ込んで聞きませんでしたが)。
またいままではFPGAで実現していたようなデジタルフィルター機能をXMOSで実現したのも驚きです。iFIはDSDネイティブ再生の頃からXMOSのプログラミングには長けていると思ってましたがさすがです。端的にいうとカスタムICの中でもXMOSはソフト寄りでFPGAはハード寄りです(ちなみにASICはもっとハード寄り)。
しかし、もともとハード実装するような機能がFPGAで実装され、今ではXMOSでも可能になったというのは、ムーアの法則まだまだ健在という感じですね。
2018年09月29日
AptX Adaptive体験試聴会、AptX Adaptiveとはなにか
音元出版主催のAptX Adaptiveの体験試聴会に参加してきました。
https://www.phileweb.com/news/d-av/201809/11/44977.html
AptX AdaptiveとはQualcommが提案している一連のAptX関連技術の一つで、ビットレートを動的に可変するという技術です。
まずAdaptiveというのはAptXだけの言葉ではなく一般的に使われる言葉です。
なぜAdaptiveが必要かと、送信側と受信側の間の回線品質が一定でないときに、音切れ(または画像乱れ)が起こらないようにするためです。普通Adaptiveと言うと、TIDALやYoutubeのようにストリーミングで回線状態が悪い時に使います。
Bluetoothの場合のそれは、電車のようにWIFI密度が濃い場合やお尻ポケットにスマホを入れると言うことに相当します。
WIFIとBluetoothは同じ2.4G帯で干渉します。以前書いたKleerとBT比較記事の4項を参照ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/109198956.html
2.4G帯域は直進性が強いので回線品質はアンテナの見通しに左右されます。
また、AptX HDは音質は良いが、固定ビットレートのために常にたくさんデータを送るために切れやすくなります。そうした場合に「音質優先」とか「接続性優先」などを設定でデータ量を手動で変えたりしますが、AptX Adaptiveではこれを自動で行うので設定を気にする必要はありません。
試聴会ではQualcommのJonny McClintock氏による技術解説や実際に開発基盤を使用したデモや試聴デモを行いました。たしかに見てみると送信しているビットレートがアンテナの遮蔽状況などに応じて自動的に可変されていくのがよくわかります。
そこでどうやって周辺状況の込み具合をフィードバックしているのだろうと不思議に思ったので、直接McClintock氏に聞いてみました。するとヘッドセットとスマートフォンで正しく送信されているかの2wayコミュニケーションをするということです。そのためヘッドフォン・イヤフォン側にも対応が必要です。
完全ワイヤレスのためのTWSでもTWS プラスでもいっしょに使えるということなので、両耳で受信状況が違ったらどうなるかと意地の悪い質問をしましたが、その場合はスマートフォンで悪い方に合わせるということです。
Qualcommの技術はたくさん出てきましたが、とりあえずAptX Adaptiveがあれば、(まったく同じではないが)音質においてもAptX HD相当であるし、レイテンシーに関してもAptX Low Latency相当であるということ。つまりAptX AdaptiveがあればHDとLow Latencyを包括できるということです。
それに加えて電車の中とかWIFIが混んでるところやお尻ポケットにスマートフォンを入れても音切れしにくい、というわけです。それを「音質優先」とか「接続優先」のような操作を人がしなくて良いのが優れたポイントです。
製品は現行の845の次の次世代チップのSnapdragon 855で来年くらいに出てくるだろうということ。
つまりユーザーから見ると、AptX Adaptive対応のイヤフォン・ヘッドフォンとSnapdragon 855以降を採用したスマートフォンでこの技術が使用可能となるというわけです。iOSで使えないのが残念ではありますが、なかなか期待の技術と言えますね。
https://www.phileweb.com/news/d-av/201809/11/44977.html
AptX AdaptiveとはQualcommが提案している一連のAptX関連技術の一つで、ビットレートを動的に可変するという技術です。
まずAdaptiveというのはAptXだけの言葉ではなく一般的に使われる言葉です。
なぜAdaptiveが必要かと、送信側と受信側の間の回線品質が一定でないときに、音切れ(または画像乱れ)が起こらないようにするためです。普通Adaptiveと言うと、TIDALやYoutubeのようにストリーミングで回線状態が悪い時に使います。
Bluetoothの場合のそれは、電車のようにWIFI密度が濃い場合やお尻ポケットにスマホを入れると言うことに相当します。
WIFIとBluetoothは同じ2.4G帯で干渉します。以前書いたKleerとBT比較記事の4項を参照ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/109198956.html
2.4G帯域は直進性が強いので回線品質はアンテナの見通しに左右されます。
また、AptX HDは音質は良いが、固定ビットレートのために常にたくさんデータを送るために切れやすくなります。そうした場合に「音質優先」とか「接続性優先」などを設定でデータ量を手動で変えたりしますが、AptX Adaptiveではこれを自動で行うので設定を気にする必要はありません。
試聴会ではQualcommのJonny McClintock氏による技術解説や実際に開発基盤を使用したデモや試聴デモを行いました。たしかに見てみると送信しているビットレートがアンテナの遮蔽状況などに応じて自動的に可変されていくのがよくわかります。
そこでどうやって周辺状況の込み具合をフィードバックしているのだろうと不思議に思ったので、直接McClintock氏に聞いてみました。するとヘッドセットとスマートフォンで正しく送信されているかの2wayコミュニケーションをするということです。そのためヘッドフォン・イヤフォン側にも対応が必要です。
完全ワイヤレスのためのTWSでもTWS プラスでもいっしょに使えるということなので、両耳で受信状況が違ったらどうなるかと意地の悪い質問をしましたが、その場合はスマートフォンで悪い方に合わせるということです。
Qualcommの技術はたくさん出てきましたが、とりあえずAptX Adaptiveがあれば、(まったく同じではないが)音質においてもAptX HD相当であるし、レイテンシーに関してもAptX Low Latency相当であるということ。つまりAptX AdaptiveがあればHDとLow Latencyを包括できるということです。
それに加えて電車の中とかWIFIが混んでるところやお尻ポケットにスマートフォンを入れても音切れしにくい、というわけです。それを「音質優先」とか「接続優先」のような操作を人がしなくて良いのが優れたポイントです。
製品は現行の845の次の次世代チップのSnapdragon 855で来年くらいに出てくるだろうということ。
つまりユーザーから見ると、AptX Adaptive対応のイヤフォン・ヘッドフォンとSnapdragon 855以降を採用したスマートフォンでこの技術が使用可能となるというわけです。iOSで使えないのが残念ではありますが、なかなか期待の技術と言えますね。
2018年08月13日
SONY DMP-Z1とS-Masterの功罪について考える
SONYが香港AVショウで超ド級のDAP、DMP-Z1を発表したと下記Philewebなどに報じられて話題をまいています。
https://www.phileweb.com/news/audio/201808/09/20057.html
少し調べてみるとこのDMP-Z1で興味を引いたのが、ウォークマンのみならず据え置きのTA-ZH1ESまで採用されていたSONY自慢のS-Masterが採用されず、一般的なDAC IC(AK4497)+アンプIC(TPA6120)という組み合わせに収まっているということです。
本稿ではこの辺の理由を考え、SONYのこれからを推察していくことにします。
まず下記のスペックからDMP-Z1ではDSD Remastering engineという機能でPCMを 5.6MHz DSDに変換するということが書かれています。ここから推察されるのはDMP-Z1がDSD中心のアーキテクチャになっているということです。これはDSDをネイティブ処理する能力に長けているAKMのAK4497を採用していることでもわかります。
http://www.sony.com.hk/en/electronics/walkman/dmp-z1
また下記のHeadFi投稿にありますが、このDSD Remasteringを行うDSPはSONYの自家製だが、Walkmanでも採用されていたがS-Masterとの相性が悪いのでRemastering機能は使えず、TA-ZH1ではそのためにFPGAを使う羽目になったと書かれています。
https://www.head-fi.org/threads/official-sony-dmp-z1-thread.886122/page-9#post-14417586
つまりS-Masterから決別した第1の理由はここで、S-MasterはPCMに特化した設計であったため、DSDを中心とするアーキテクチャには向いていないと言えます。
次に下記のPhileweb記事にも乗っているSONY自身の説明にもあるように、S-Masterでは大出力が取り出しにくいということがあります。HeadFiでも同様なことを開発者から聴いたという投稿がありましたが、これもそれを裏付けています。
https://www.phileweb.com/news/d-av/201808/11/44729.html
また、これらを解決するためにはDSD中心で大出力のS-Masterを開発すればよいのでは、と思われる人もいるかもしれません。しかしS-Masterのような大規模なカスタムICは設計開発費がかさむので、小ロット高利益率のような製品には向いていないということがあります。一般ウォークマンのようなコンシューマ向け大量生産品の性能を上げるには向いていますが、似た用途でも高級オーディオのカスタムICではCHORDのようにFPGAか、XMOSのような小回りの利くものが向いています。おそらくS-MasterはASICのようなものだと思います。
そして、これまで出てきた断片からDMP-Z1が新技術のテストベッドではないかということも推測できます。ほんとのワンオフの特別モデルであれば最高性能を追求するためにはDACはともかくアンプはディスクリートを使う手もあります。しかしあえてDAC IC+アンプICというスキーム(図式)を取っているのは、周辺のガワとか高級パーツを簡易化すれば、のちにもっと求めやすい「なにか」になるのではないかということです。それがWMなんとかかはわかりませんが。
ソニーはかつて技術の最高のものを集めてコスト度外視でクオリアを作りましたが、これは次につながるものにはなりませんでした。DMP-Z1は新しい技術を試したくてコスト度外視となり、次につなげたいということがあるのかもしれません。
以上からソニーはS-Masterを捨てて、DAC IC+アンプICでDMP-Z1を開発したのではないかと推測します。もちろん省電力の良さもあってコンシューマープロダクトではS-Masterは継続すると思いますが、DMP-Z1はひとつのマイルストーンになるのかもしれません。
ところで蛇足ながら最後にもっと推測をひとつ。
ソニーは自分の固有形式・技術にこだわる会社で、この場合それはDSDだと思います。ソニーはDSDをソニーが生み出した形式として捉えているのではないでしょうか。PCMに縛られるS-Masterを捨てることで、そこに立ち返ろうとしたのではないかとふと思いました。まあ私のただの思いつきですけれども。
2018年06月13日
iFI Audio の新機軸、xDSDレビュー
iFI Audio xDSDはiFIポータブルアンプの最新機種であり、その一新された斬新なデザインが目を引きます。そのコンパクトさにも関わらずに従来の定評あるiFIの技術全部入りともいえる中身の濃い製品で、加えて話題のMQA対応も果たしています。
iFI-Audioは新興のポータブルオーディオメーカーではありません。AMRというハイエンドオーディオでは歴史と定評があるメーカーの子会社であり、最新の技術とユーザー動向に敏感に対応するために作られたブランドがiFI Audioです。そのため深い技術力の蓄積があり、最新のPCオーディオ分野で話題のMQAにもいち早く対応しました。
xDSDは少し前に昨年秋のヘッドフォン祭でプロトタイプを見せてくれた時にはX-15と呼ばれていたんですが、トルステン博士は新たなデザイナーを連れていました。彼がこのXシリーズの斬新なデザインを手掛けているようです。
*xDSDの特徴とは
xDSDはデジタル入力のみのDAC内蔵ポータブルアンプで、コンパクトでスタイリッシュなボディの中にこれまでのiFI技術のほぼすべてが全部入りで詰め込まれているのは驚異的です。またxDSDはいままでのiFI Audioの集大成であると同時に、新たな技術を投入しています。
継承されているのは以下のようなものです
1. これまでのiFI技術のほぼすべてが全部入り、iPhoneとのCCK直結
2. BLで投入されたiFI独自オペアンプ(OV)、S-Balanced端子などの高音質技術
新たな試みは以下のようなものです
3. コンパクトでスタイリッシュな新デザイン
4. Bluetooth機能
5. 多色LEDを使用して操作性向上
6. デジタルエンコーダーでパワーマネージメントを統合、省電力、操作性向上に貢献(Cyber Drive)
xDSDではこの最後のCyber Driveという言葉がキーになってきます。これは単一機能というよりも設計コンセプトのようなものと言えるでしょう。これについてはトルステン博士に直接聞いてみました。
xDSDではボリュームが従来のアナログボリューム(いわゆるボリュームポッド)からデジタルエンコーダー方式でのアナログボリュームに変更されています。ダイヤルを回せばリモートコントロールで内蔵のアナログボリュームが変化するわけです。ボリュームの左右誤差を減らせるとともに、デジタルボリュームのようなビット落ちがありません。
しかしこれは珍しい方式ではありませんが、xDSDではこれをMCU(制御プロセッサ)と結びつけて高度な電流制御をしています。これを称してCyber Driveと言ってもよいかもしれません。
xDSDではIE Matchやecoなど従来のパワーモードがなくなったように見えますが、実のところCyberDriveはデジタル化されたボリュームとプロセッサが連動して最適な出力と電力消費を扱う機能であり、実質的にIE Matchやパワーモードが統合されたものでもあります。
トルステン博士によると以前のiDSDなどでもゲインコントロールとパワーサプライは常にMCUの制御下にあったのですが、ボリュームがマニュアルなのでスイッチが必要だったということです。しかしxDSDではボリュームが電子制御になったことにより、そうしたスイッチ類をボリュームにまとめることができたそうです。そのため、xDSDでは基本はecoモードにあって、ボリュームを回すだけパワーを取り出すことができるわけです。
これにより、小型化された筺体にたくさんのスイッチを付ける必要がなくなり、電池持ちの良い小型でかつ高機能なアンプが実現できたと言えます。つまり総合的な操作性も向上しています。
これもデジタル回路のみならず、ソフトウエアも含めたiFIの高い総合的な技術力の高さが可能にしたものです。
xDSDとWestone ES80
* MQA対応
前出のようにiFI Audioが優れている隠れたポイントはファームウェア/ソフトウエアの設計能力です。これがわかるのがMQA対応です。
xDSDはMQA対応として「MQAレンダラー」を搭載しています。これは新製品のxDSDの新機能と言うだけではなく、現行製品もアップデートによってMQA対応が可能です。
この理由はiFI-AudioのポータブルDAC内蔵アンプのシリーズはすべてUSB入出力制御にXMOSを採用していますが、iFI-AudioのMQA対応はXMOS内部のソフトウエアによって行われています。このためラインナップの上下、新旧を問わずにMQA対応が可能となるわけです。XMOSは小型のコンピューターのようなICで、ソフトウエアの書き換えによって動作を変更できます(FPGAより容易です)。iFI-Audioはいち早く高レートのDSDネイティブ再生を可能にするなど、XMOSのソフトウエア制御に長けた会社であり、それがMQA対応でも発揮されているわけです。
ちなみに市場に出ているコンパクトオーディオ製品でMQA対応しているものは他にAudioQuestのDragonFlyがありますが、DragonFlyの開発者はUSB DACにハイレゾをもたらしたあのゴードン・ランキンですので、手早いMQA対応は技術志向のメーカーならではと言えるでしょう。
xDSDとDita Fidelity
「MQAレンダラー」とはなにかというと、MQAのハードウエアデコーダーのことです。ただし「MQAフルデコーダー」とは異なり直接MQA音源を認証してデコードすることはできません。このため外部にMQAコアデコーダー(つまりソフトウエアデコーダー)が必要となります。これは「MQAレンダラー」が比較的プロセッサパワーの足りない小型機器で使うモジュールだからです。
またMQAコアデコーダーでは96kHzまでしか主力出来ませんが、MQAレンダラーは192kHz(またはそれ以上)の出力ができますので、「MQAコアデコーダー」と「MQAレンダラー」はお互いに補完関係にあるとも言えます。
これについては現在では主にTIDALプレーヤー、Audirvana Plus 3やRoon 1.5のMQAコアデコーダー機能を使うことになります。
こちらについてはPhilewebとiFI Audioのサイトに詳しく書きましたので下記リンクを参照してください。
https://www.phileweb.com/review/article/201805/24/3042.html
http://ifi-audio-jp.blogspot.com/2018/05/mqa.html
* xDSDの使い方と音質
xDSDはデジタル入力のみのポータブルアンプです。使い方としては主に次の二つです。
ボリューム中央ボタンの長押しで切り替えます。
1. USB接続でスマートフォンやDAP、またはPCと接続する
2. SPDIF接続でPCやDAPと接続する
2. BluetoothでスマートフォンやDAPと接続する
xDSDの音の真価はやはりSPDIFかUSB経由です。
xDSD背面の入力端子
試聴はUSBで聞いてみますが、電源オン時に中央ボタンが緑になるのを確認します。それ以後はボリュームの大きさで中央LEDの色が変わります。このようにLEDの色でさまざまな情報を知らせるのもxDSDの特徴の一つです。
USBではコンパクトサイズにもかかわらず、micro iDSDで採用されたiPhoneのCCKを直結できるUSB Aオス端子を使っているため、アダプターを間に入れるロスがありません。
microUSBを使用するUSB デジタル出力機能をもったAK70のようなDAPにはAudioQuestのDragonTail(Android用)が使えます。
SPDIFの場合にはさまざまなアダプターが同梱されています。
xDSDの同梱品
音質はまずWestoneのES80で聞いてみましたが、このくらいのハイエンドイヤフォンが使いたくなるような高い音質レベルを感じさせます。
はじめにiPhoneと組み合わせてみると音の鮮烈さに驚くほどです。透明感がとても高いのが印象的で、音空間には深みがあって立体的です。解像感もひときわ高く、音の細かい粒子を数えられるように感じられます。
iPhone XとxDSD
AK70等とはAudioQuestのDragonTailがおすすめです。
透明感と音空間の深みは一段と向上し、さらにiPhoneとCCKでは線材のせいか粗探しをするとやや薄さと荒さを感じましたが、音に厚みと豊かさが加わります。ポータブルリスニングでは最高レベルのひとつと言って良いでしょう。
音のキレはよく打楽器のアタック感の気持ちよさはひとしおです。
AK70とxDSD、AQ DragonTail使用
デジタルフィルターは今まではAMRの設定を受け継いだMPフィルターなどでしたが、今回からMesureとListenに分かれて音の硬さが変えられます。トルステン博士は普段はListenでいいよ、と言ってたように思いましたがListenだと音が柔らかめで、Mesureだとよりシャープ傾向があると思います。
これは組み合わせるイヤフォンによって、きつめならListenにするとか、より先鋭的に聞きたいときにはMesureにするとか好みで変えられると思います。
xDSDの特筆すべき長所はBluetoothでも極めて音が良いことです。
Bluetoothに切り替えるときはいったん電源を切ってから、電源オンの長押しを長めに押し続けると緑から青に変わるので指を離します。
BluetoothはiPhoneがイヤフォン端子を排したことで注目が集まっていますが、xDSDを使えばワイヤレスでも高い音質で楽しむことができます。Bluetoothの音質が悪いというのは多くのBTイヤフォンやアダプターが音の悪いBTチップ組み込みのDACをそのまま使うからですが、xDSDならばRetro Stereo50ベースの高品質なDA変換を行うとともに、高精度のクロック・システムもBluetoothに使用されて抜かりがありません。
実のところxDSDではBluetoothの音質が際立って高いのが特徴です。比べればやはりiPhoneとはUSB接続の方が音質は高いのですが、少し劣るくらいと言ってもよいような音質の高さには脱帽します。スマートフォンとの組み合わせではよりBluetoothを使いたくなることでしょう。
xDSDは音が良いのでさまざまなイヤフォンを使って試してみたくなります。
xDSDとMaverick II カスタム
xDSDでは音の切れ味が鋭く、アタック感もよいのでUM Maverick IIカスタムとの相性も抜群です。
xDSDとHeir TZAR 350/Beat Signal
xDSDのパワーと音の純度の高さをインピーダンス350オームとSignalのレアメタル線材で生かそうという組み合わせです。Tzar350で音が綺麗に伸び上がっていく感じは他で得られない気持ち良さがあります。
xDSDとCampfire Lyra2/Dita cable
引き締まった歪み少ない音でかつパンチがある音というとこの組み合わせもなかなか魅力的でした。
* まとめ
xDSDは音質、機能、電池の持続時間、操作性、小型軽量のすべてを妥協なく実現した優れた機種と言えます。それらすべてを高度に統合したのが、トルステン博士率いるiFI Audioの技術力の高さともいえるでしょう。
スマートフォンをよく使いストリーミングを良い音で聴きたい人、ハイエンドの音がほしいが小型のポータブル機器がほしい人、先進のMQAをさっそく試してみたい人など進んだポータブルオーディオユーザーにお勧めです。
xDSDとWestone ES80
iFI-Audioは新興のポータブルオーディオメーカーではありません。AMRというハイエンドオーディオでは歴史と定評があるメーカーの子会社であり、最新の技術とユーザー動向に敏感に対応するために作られたブランドがiFI Audioです。そのため深い技術力の蓄積があり、最新のPCオーディオ分野で話題のMQAにもいち早く対応しました。
xDSDは少し前に昨年秋のヘッドフォン祭でプロトタイプを見せてくれた時にはX-15と呼ばれていたんですが、トルステン博士は新たなデザイナーを連れていました。彼がこのXシリーズの斬新なデザインを手掛けているようです。
*xDSDの特徴とは
xDSDはデジタル入力のみのDAC内蔵ポータブルアンプで、コンパクトでスタイリッシュなボディの中にこれまでのiFI技術のほぼすべてが全部入りで詰め込まれているのは驚異的です。またxDSDはいままでのiFI Audioの集大成であると同時に、新たな技術を投入しています。
継承されているのは以下のようなものです
1. これまでのiFI技術のほぼすべてが全部入り、iPhoneとのCCK直結
2. BLで投入されたiFI独自オペアンプ(OV)、S-Balanced端子などの高音質技術
新たな試みは以下のようなものです
3. コンパクトでスタイリッシュな新デザイン
4. Bluetooth機能
5. 多色LEDを使用して操作性向上
6. デジタルエンコーダーでパワーマネージメントを統合、省電力、操作性向上に貢献(Cyber Drive)
xDSDではこの最後のCyber Driveという言葉がキーになってきます。これは単一機能というよりも設計コンセプトのようなものと言えるでしょう。これについてはトルステン博士に直接聞いてみました。
xDSDではボリュームが従来のアナログボリューム(いわゆるボリュームポッド)からデジタルエンコーダー方式でのアナログボリュームに変更されています。ダイヤルを回せばリモートコントロールで内蔵のアナログボリュームが変化するわけです。ボリュームの左右誤差を減らせるとともに、デジタルボリュームのようなビット落ちがありません。
しかしこれは珍しい方式ではありませんが、xDSDではこれをMCU(制御プロセッサ)と結びつけて高度な電流制御をしています。これを称してCyber Driveと言ってもよいかもしれません。
xDSDではIE Matchやecoなど従来のパワーモードがなくなったように見えますが、実のところCyberDriveはデジタル化されたボリュームとプロセッサが連動して最適な出力と電力消費を扱う機能であり、実質的にIE Matchやパワーモードが統合されたものでもあります。
トルステン博士によると以前のiDSDなどでもゲインコントロールとパワーサプライは常にMCUの制御下にあったのですが、ボリュームがマニュアルなのでスイッチが必要だったということです。しかしxDSDではボリュームが電子制御になったことにより、そうしたスイッチ類をボリュームにまとめることができたそうです。そのため、xDSDでは基本はecoモードにあって、ボリュームを回すだけパワーを取り出すことができるわけです。
これにより、小型化された筺体にたくさんのスイッチを付ける必要がなくなり、電池持ちの良い小型でかつ高機能なアンプが実現できたと言えます。つまり総合的な操作性も向上しています。
これもデジタル回路のみならず、ソフトウエアも含めたiFIの高い総合的な技術力の高さが可能にしたものです。
xDSDとWestone ES80
* MQA対応
前出のようにiFI Audioが優れている隠れたポイントはファームウェア/ソフトウエアの設計能力です。これがわかるのがMQA対応です。
xDSDはMQA対応として「MQAレンダラー」を搭載しています。これは新製品のxDSDの新機能と言うだけではなく、現行製品もアップデートによってMQA対応が可能です。
この理由はiFI-AudioのポータブルDAC内蔵アンプのシリーズはすべてUSB入出力制御にXMOSを採用していますが、iFI-AudioのMQA対応はXMOS内部のソフトウエアによって行われています。このためラインナップの上下、新旧を問わずにMQA対応が可能となるわけです。XMOSは小型のコンピューターのようなICで、ソフトウエアの書き換えによって動作を変更できます(FPGAより容易です)。iFI-Audioはいち早く高レートのDSDネイティブ再生を可能にするなど、XMOSのソフトウエア制御に長けた会社であり、それがMQA対応でも発揮されているわけです。
ちなみに市場に出ているコンパクトオーディオ製品でMQA対応しているものは他にAudioQuestのDragonFlyがありますが、DragonFlyの開発者はUSB DACにハイレゾをもたらしたあのゴードン・ランキンですので、手早いMQA対応は技術志向のメーカーならではと言えるでしょう。
xDSDとDita Fidelity
「MQAレンダラー」とはなにかというと、MQAのハードウエアデコーダーのことです。ただし「MQAフルデコーダー」とは異なり直接MQA音源を認証してデコードすることはできません。このため外部にMQAコアデコーダー(つまりソフトウエアデコーダー)が必要となります。これは「MQAレンダラー」が比較的プロセッサパワーの足りない小型機器で使うモジュールだからです。
またMQAコアデコーダーでは96kHzまでしか主力出来ませんが、MQAレンダラーは192kHz(またはそれ以上)の出力ができますので、「MQAコアデコーダー」と「MQAレンダラー」はお互いに補完関係にあるとも言えます。
これについては現在では主にTIDALプレーヤー、Audirvana Plus 3やRoon 1.5のMQAコアデコーダー機能を使うことになります。
こちらについてはPhilewebとiFI Audioのサイトに詳しく書きましたので下記リンクを参照してください。
https://www.phileweb.com/review/article/201805/24/3042.html
http://ifi-audio-jp.blogspot.com/2018/05/mqa.html
* xDSDの使い方と音質
xDSDはデジタル入力のみのポータブルアンプです。使い方としては主に次の二つです。
ボリューム中央ボタンの長押しで切り替えます。
1. USB接続でスマートフォンやDAP、またはPCと接続する
2. SPDIF接続でPCやDAPと接続する
2. BluetoothでスマートフォンやDAPと接続する
xDSDの音の真価はやはりSPDIFかUSB経由です。
xDSD背面の入力端子
試聴はUSBで聞いてみますが、電源オン時に中央ボタンが緑になるのを確認します。それ以後はボリュームの大きさで中央LEDの色が変わります。このようにLEDの色でさまざまな情報を知らせるのもxDSDの特徴の一つです。
USBではコンパクトサイズにもかかわらず、micro iDSDで採用されたiPhoneのCCKを直結できるUSB Aオス端子を使っているため、アダプターを間に入れるロスがありません。
microUSBを使用するUSB デジタル出力機能をもったAK70のようなDAPにはAudioQuestのDragonTail(Android用)が使えます。
SPDIFの場合にはさまざまなアダプターが同梱されています。
xDSDの同梱品
音質はまずWestoneのES80で聞いてみましたが、このくらいのハイエンドイヤフォンが使いたくなるような高い音質レベルを感じさせます。
はじめにiPhoneと組み合わせてみると音の鮮烈さに驚くほどです。透明感がとても高いのが印象的で、音空間には深みがあって立体的です。解像感もひときわ高く、音の細かい粒子を数えられるように感じられます。
iPhone XとxDSD
AK70等とはAudioQuestのDragonTailがおすすめです。
透明感と音空間の深みは一段と向上し、さらにiPhoneとCCKでは線材のせいか粗探しをするとやや薄さと荒さを感じましたが、音に厚みと豊かさが加わります。ポータブルリスニングでは最高レベルのひとつと言って良いでしょう。
音のキレはよく打楽器のアタック感の気持ちよさはひとしおです。
AK70とxDSD、AQ DragonTail使用
デジタルフィルターは今まではAMRの設定を受け継いだMPフィルターなどでしたが、今回からMesureとListenに分かれて音の硬さが変えられます。トルステン博士は普段はListenでいいよ、と言ってたように思いましたがListenだと音が柔らかめで、Mesureだとよりシャープ傾向があると思います。
これは組み合わせるイヤフォンによって、きつめならListenにするとか、より先鋭的に聞きたいときにはMesureにするとか好みで変えられると思います。
xDSDの特筆すべき長所はBluetoothでも極めて音が良いことです。
Bluetoothに切り替えるときはいったん電源を切ってから、電源オンの長押しを長めに押し続けると緑から青に変わるので指を離します。
BluetoothはiPhoneがイヤフォン端子を排したことで注目が集まっていますが、xDSDを使えばワイヤレスでも高い音質で楽しむことができます。Bluetoothの音質が悪いというのは多くのBTイヤフォンやアダプターが音の悪いBTチップ組み込みのDACをそのまま使うからですが、xDSDならばRetro Stereo50ベースの高品質なDA変換を行うとともに、高精度のクロック・システムもBluetoothに使用されて抜かりがありません。
実のところxDSDではBluetoothの音質が際立って高いのが特徴です。比べればやはりiPhoneとはUSB接続の方が音質は高いのですが、少し劣るくらいと言ってもよいような音質の高さには脱帽します。スマートフォンとの組み合わせではよりBluetoothを使いたくなることでしょう。
xDSDは音が良いのでさまざまなイヤフォンを使って試してみたくなります。
xDSDとMaverick II カスタム
xDSDでは音の切れ味が鋭く、アタック感もよいのでUM Maverick IIカスタムとの相性も抜群です。
xDSDとHeir TZAR 350/Beat Signal
xDSDのパワーと音の純度の高さをインピーダンス350オームとSignalのレアメタル線材で生かそうという組み合わせです。Tzar350で音が綺麗に伸び上がっていく感じは他で得られない気持ち良さがあります。
xDSDとCampfire Lyra2/Dita cable
引き締まった歪み少ない音でかつパンチがある音というとこの組み合わせもなかなか魅力的でした。
* まとめ
xDSDは音質、機能、電池の持続時間、操作性、小型軽量のすべてを妥協なく実現した優れた機種と言えます。それらすべてを高度に統合したのが、トルステン博士率いるiFI Audioの技術力の高さともいえるでしょう。
スマートフォンをよく使いストリーミングを良い音で聴きたい人、ハイエンドの音がほしいが小型のポータブル機器がほしい人、先進のMQAをさっそく試してみたい人など進んだポータブルオーディオユーザーにお勧めです。
xDSDとWestone ES80
2018年05月24日
iFI-Audio機器とMQA対応の記事を執筆しました
iFI AudioサイトとPhilewebに、MQA対応を果たしたxDSDなどiFI機器をどのように活用するか、そもそもMQAデコーダーとレンダラーの違いはなにか、というところを詳細記事に書きました。内容に関してはMQA ltdに協力をいただきました。
またトルステン博士に聞いたxDSDではなぜパワーモードがなくても良いかなどのヒミツ、またMQA-CDをリッピングした音源はソフトウエアによって挙動が異なる、という細かなところまでカバーしてます。これはAudirvanaもRoonも直に開発者に聞いて確認しています。
ぜひご覧ください!
iFI-Audioサイト
Phileweb
PhilewebにCampfireインタビューと新製品レビューを執筆しました
PhilewebでCampfire AudioのKenさんインタビューと新製品ATLAS、COMET、CASCADEのレビューを執筆しました。
インタビューはなぜCOMETはシングルでワイドレンジを達成できるか、VEGAからATLASへの進化など濃い内容になってますのでぜひご覧ください。