アスキーにLuxury & Precision W2で、Apple Musicのハイレゾ・ロスレスを楽しむの記事を執筆しました。
https://ascii.jp/elem/000/004/059/4059702/
Music TO GO!
アスキーにジャック変更が可能、iPhoneで高音質イヤホンを手軽に使える「AS2000 Lightning Adapter」の記事を執筆しました
アスキーにジャック変更が可能、iPhoneで高音質イヤホンを手軽に使える「AS2000 Lightning Adapter」の記事を執筆しました。
https://ascii.jp/elem/000/004/058/4058313/
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2021年05月26日
iPhoneに好適なコンパクトDAC、LUXURY & PRECISION W2
LUXURY & PRECISION W2はいわゆるドングル型・スティック型と呼ばれるポータブルDAC内蔵ヘッドフォンアンプです。PCにも使用できますが、バスパワーでの動作が可能でコンパクトなのでスマホ向けに最適です。特に標準添付のケーブルでアダプタなしにiPhoneに直結できるのでiPhoneに向いています。
Luxury & Precision(楽彼)は何回か書いていますが中国のオーディオブランドで、はじめはHeadFiなど海外マニアックフォーラムで人気を集めていましたが、2018年からサイラスが国内でも扱いを始めました。L&Pは一時期うちでもよく書いていたColorFly C4の流れを汲む会社でもあります。最近では世界初のディスクリート方式マルチビットDAC搭載のポータブルプレーヤー「L&P P6とP6Pro」を発表して話題になりました。
LUXURY & PRECISION W2は同様なスティック型DAC内蔵アンプのLUXURY & PRECISION W1の上位モデルです。価格は39,600円(税込)です。
iPhone12 Proとライトニングケーブルで接続
* 特徴
1. iOS、Android、PCの全てに対応可能
W2は対応機種が広く、USB-C to USB-C, USB-C to Litghtning, USB-B変換アダプターが付属しているので、iPhoneやAndroid、PCに広く対応しています。
2. DACはCS43198をデュアル搭載
CS43198は久しぶりに開発されたシーラスロジックの最新DACチップで、長らくこの座にあった4398の後継でもあります。シーラスの基準のMasterHIFIというハイグレード製品ですが、主眼としてはコンパクトで低消費電力なので、ポータブル製品向けと言えると思います。
CS43198は同社のハイレゾDAPであるL4にも搭載されていますし、他ではA&K SR15やiBasso DX300などにも採用されています。W2では最大131dBのS/N比を実現しているということです。
3. 4.4mm端子でバランス出力対応
W2には3.5mmシングルエンド端子と4.4mmバランス端子が採用されています。 W2では特にバランス時の性能が圧巻で、歪みがバランス時にはシステムとして0.00012%(バランス出力,300Ω)と超低歪みでDACチップの仕様より優れているとしています。これはにわかには信じがたいですが、実際に音を聞いてみると納得します。これがバスパワーで動作しているというのはちょっと驚きますね。バランス端子は日本Dics製Pentaconnジャックです。
4. 鳴らしにくいヘッドフォンにも、高感度IEMにも対応
W2はバランス時に230mW/@300Ωとハイパワーであり、さらにゲイン切り替えでHighとLowの2段階のゲイン切り替えが可能なので様々なヘッドフォンやイヤフォンに対応ができます。
またW2は低消費電力でもあり、USBチップとDACチップ用に別々の電源を備えているという凝った設計を採用しています。
5. 豊富な音質調整のオプション
W2は豊富なデジタル処理が可能です。イコライザーはClassic/Jazz/Rock/Pop/Bass/Movie/Gameのモードが可能、さらにDACフィルター設定でFAST/SLOW/NOS/LL FAST/LL SLOWが設定可能です。
またチューニング切り替えがあって、リラックスしてポップスやボーカル向けのTune01と繊細で情報量が多くオーケストラ向きというTune02が用意されています。
6. SPDIF出力可能
いったんアナログに落として劣化することなく、直接スマホからデジタル信号を取り出して他のDACに送ることができます。端子はイヤフオン端子と共用です。
これによって他の据え置きDACに接続することも可能です。
7 その他
本体には0.91型モノカラー有機ELのディスプレイが搭載されていて、入力サンプルレートやモードなどが表示されます。本体のサイズは60x22x12.5mmで22gと軽量です。
* インプレッション
W2は極めてコンパクトでかつ軽量です。スマホに取り付けるタイプは重いとケーブルの負担になりますが、W2はまずそうしたことはないでしょう。作りはL&Pらしいメカニカルな角ばった形で背面にはカーボン風のパネルが採用されていて小さい割にはなかなか高級感があります。
ケーブルはUSB-C to USB-CとUSB-C to ライトニングの二つとUSB-CとUSB-Bの変換コネクタが付属しています。ライトニングでiPhoneと接続し、USB-CでAndroidスマホやノートPC、そしてアダプタを取り付けてデスクトップPCとマルチに接続が可能です。ちなみにケーブルについては付属品ではなく無償の同梱品という扱いになるため色や長さなどは予告なしに変更になる場合があるということです。
なおファームウェアアップグレードについては国内公式のサポートはできないが(ソフトは英語のみでかつWindows限定なので国内での案内は難しいとのこと)、国内正規版は海外モデルと同じく、メーカー発表のツールでFWの更新が可能だそうです。
本体側の端子はUSB-Cと3.5mm、4.4mmのイヤフォン端子があり、液晶パネルと二つのボタンが搭載されています。ボタンはモード切り替えと音量上下および設定値変更に使います。ボタンを押してモードを選択して上下キーで値を変更するという形式です。
接続は簡単で、USBケーブルをスマホに接続してイヤフォンを端子に接続するだけで使用ができます。iPhoneと試しましたが、あっさりと認識しました。音を出す前にゲインを調整したほうがよいかもしれません。Amazon Music HDの出力確認をすると端末は192kHz/24bit対応でハイレゾ出力ができているのがわかります。
設定が多いんですがまずはデフォルトの状態で聴き始めます。音質はたしかにSNの高さを感じるようにメリハリがくっきりとした音で小さい音もかなりしっかりと明瞭に聞こえます。小さいと言って侮るなかれというくらいかなりレベルが高い音質で、バスパワーでこれだけ引き出せるのはちょっと驚きです。
DACフィルタの効きはわりと大きくてそれなりに音が大きく変わります。この手の設定では違いが大きい方ですね。SNが高いのでわかりやすいというのもあるかもしれません。私はSLOW設定が好きですね、
EQも大きく音が変わりますが、W2の音自体がHIFI風なのであまり味付けをするよりは音楽はNormalのままで良いかなと思います。チューニング切り替えは02だとやや誇張感があるので、低価格イヤフォンなどでは変えても良いですが、ハイエンド系では01を使用した方が良いように思います。W2の基本的な音質が高いので設定はいろいろいじれますが、デフォルトが良いように思いますね。イヤフオンによってはいろいろと変えてみるのもよいかもしれません。
ゲインはイヤフォンはダイナミックでもBAでもLOWで良いように感じますが、低能率ヘッドフォンをつけるときはHIGHでバランスが良いですね。
3.5mmではイヤフオン的には切れ味の鋭いFAudioのMajorがなかなか相性がよいように感じました。
バランスでARAと組み合わせ
CampfireのARAで同じケーブルで3.5mmと4.4mmバランスで聞いてみます。
4.4mmではバランスらしく力強さが一段と増して、空間的な広がりもいっそうよくなります。解像力は極めて高くてかなり細かい音も拾います。楽器の擦れている音は圧巻です。たしかにバランスで聞いているのが一番ハイレベルで、力感だけではなく歪みなどもこちらの方が端正で優れているように感じられます。音の歯切れが良くARAの鋭い切れ味もよく活かせます。このくらいのハイレベルな音がスマホ+ちょっと付の機材で出るのは不思議な感覚でさえあります。
聞いているとシーラスの音というよりはESSっぽい感じさえしますね。電子設計がかなり際立っているのでしょう。DACのスペックよりシステムのスペックが上というとにわかには信じられないですが、音を聞いていると嘘ではないような気もします。3.5mmでも十分良いんですが4.4mmで聞くとちょっと後戻りできなくなります。絶対にバランスがオススメです。
Mac上のTIDALアプリで使用
Macに使用してみましたが、同様に簡単に接続してあっさり音が出ます。仕事をしながら使うにもいいですね。
ちなみにW1と比較するとW1もかなり良い音ですが、やはりW2はさらにレベルが高いというか音の鮮明さがかなり上です。驚くほどの音と言って良い感じがします。W2がおすすめです。
左がW1
* まとめ
コンパクトで多機能、そしてバランスでの音の良さは特筆ものです。こんな小型デバイスとは思えません。細かい音が再生できるという点ではハイレゾ再生に向いていますし、iPhoneでストリーミングを高音質で楽しみたい、話題のApple Musicロスレスを楽しみたいという場合にうってつけの機材です。
Luxury & Precision(楽彼)は何回か書いていますが中国のオーディオブランドで、はじめはHeadFiなど海外マニアックフォーラムで人気を集めていましたが、2018年からサイラスが国内でも扱いを始めました。L&Pは一時期うちでもよく書いていたColorFly C4の流れを汲む会社でもあります。最近では世界初のディスクリート方式マルチビットDAC搭載のポータブルプレーヤー「L&P P6とP6Pro」を発表して話題になりました。
LUXURY & PRECISION W2は同様なスティック型DAC内蔵アンプのLUXURY & PRECISION W1の上位モデルです。価格は39,600円(税込)です。
iPhone12 Proとライトニングケーブルで接続
* 特徴
1. iOS、Android、PCの全てに対応可能
W2は対応機種が広く、USB-C to USB-C, USB-C to Litghtning, USB-B変換アダプターが付属しているので、iPhoneやAndroid、PCに広く対応しています。
2. DACはCS43198をデュアル搭載
CS43198は久しぶりに開発されたシーラスロジックの最新DACチップで、長らくこの座にあった4398の後継でもあります。シーラスの基準のMasterHIFIというハイグレード製品ですが、主眼としてはコンパクトで低消費電力なので、ポータブル製品向けと言えると思います。
CS43198は同社のハイレゾDAPであるL4にも搭載されていますし、他ではA&K SR15やiBasso DX300などにも採用されています。W2では最大131dBのS/N比を実現しているということです。
3. 4.4mm端子でバランス出力対応
W2には3.5mmシングルエンド端子と4.4mmバランス端子が採用されています。 W2では特にバランス時の性能が圧巻で、歪みがバランス時にはシステムとして0.00012%(バランス出力,300Ω)と超低歪みでDACチップの仕様より優れているとしています。これはにわかには信じがたいですが、実際に音を聞いてみると納得します。これがバスパワーで動作しているというのはちょっと驚きますね。バランス端子は日本Dics製Pentaconnジャックです。
4. 鳴らしにくいヘッドフォンにも、高感度IEMにも対応
W2はバランス時に230mW/@300Ωとハイパワーであり、さらにゲイン切り替えでHighとLowの2段階のゲイン切り替えが可能なので様々なヘッドフォンやイヤフォンに対応ができます。
またW2は低消費電力でもあり、USBチップとDACチップ用に別々の電源を備えているという凝った設計を採用しています。
5. 豊富な音質調整のオプション
W2は豊富なデジタル処理が可能です。イコライザーはClassic/Jazz/Rock/Pop/Bass/Movie/Gameのモードが可能、さらにDACフィルター設定でFAST/SLOW/NOS/LL FAST/LL SLOWが設定可能です。
またチューニング切り替えがあって、リラックスしてポップスやボーカル向けのTune01と繊細で情報量が多くオーケストラ向きというTune02が用意されています。
6. SPDIF出力可能
いったんアナログに落として劣化することなく、直接スマホからデジタル信号を取り出して他のDACに送ることができます。端子はイヤフオン端子と共用です。
これによって他の据え置きDACに接続することも可能です。
7 その他
本体には0.91型モノカラー有機ELのディスプレイが搭載されていて、入力サンプルレートやモードなどが表示されます。本体のサイズは60x22x12.5mmで22gと軽量です。
* インプレッション
W2は極めてコンパクトでかつ軽量です。スマホに取り付けるタイプは重いとケーブルの負担になりますが、W2はまずそうしたことはないでしょう。作りはL&Pらしいメカニカルな角ばった形で背面にはカーボン風のパネルが採用されていて小さい割にはなかなか高級感があります。
ケーブルはUSB-C to USB-CとUSB-C to ライトニングの二つとUSB-CとUSB-Bの変換コネクタが付属しています。ライトニングでiPhoneと接続し、USB-CでAndroidスマホやノートPC、そしてアダプタを取り付けてデスクトップPCとマルチに接続が可能です。ちなみにケーブルについては付属品ではなく無償の同梱品という扱いになるため色や長さなどは予告なしに変更になる場合があるということです。
なおファームウェアアップグレードについては国内公式のサポートはできないが(ソフトは英語のみでかつWindows限定なので国内での案内は難しいとのこと)、国内正規版は海外モデルと同じく、メーカー発表のツールでFWの更新が可能だそうです。
本体側の端子はUSB-Cと3.5mm、4.4mmのイヤフォン端子があり、液晶パネルと二つのボタンが搭載されています。ボタンはモード切り替えと音量上下および設定値変更に使います。ボタンを押してモードを選択して上下キーで値を変更するという形式です。
接続は簡単で、USBケーブルをスマホに接続してイヤフォンを端子に接続するだけで使用ができます。iPhoneと試しましたが、あっさりと認識しました。音を出す前にゲインを調整したほうがよいかもしれません。Amazon Music HDの出力確認をすると端末は192kHz/24bit対応でハイレゾ出力ができているのがわかります。
設定が多いんですがまずはデフォルトの状態で聴き始めます。音質はたしかにSNの高さを感じるようにメリハリがくっきりとした音で小さい音もかなりしっかりと明瞭に聞こえます。小さいと言って侮るなかれというくらいかなりレベルが高い音質で、バスパワーでこれだけ引き出せるのはちょっと驚きです。
DACフィルタの効きはわりと大きくてそれなりに音が大きく変わります。この手の設定では違いが大きい方ですね。SNが高いのでわかりやすいというのもあるかもしれません。私はSLOW設定が好きですね、
EQも大きく音が変わりますが、W2の音自体がHIFI風なのであまり味付けをするよりは音楽はNormalのままで良いかなと思います。チューニング切り替えは02だとやや誇張感があるので、低価格イヤフォンなどでは変えても良いですが、ハイエンド系では01を使用した方が良いように思います。W2の基本的な音質が高いので設定はいろいろいじれますが、デフォルトが良いように思いますね。イヤフオンによってはいろいろと変えてみるのもよいかもしれません。
ゲインはイヤフォンはダイナミックでもBAでもLOWで良いように感じますが、低能率ヘッドフォンをつけるときはHIGHでバランスが良いですね。
3.5mmではイヤフオン的には切れ味の鋭いFAudioのMajorがなかなか相性がよいように感じました。
バランスでARAと組み合わせ
CampfireのARAで同じケーブルで3.5mmと4.4mmバランスで聞いてみます。
4.4mmではバランスらしく力強さが一段と増して、空間的な広がりもいっそうよくなります。解像力は極めて高くてかなり細かい音も拾います。楽器の擦れている音は圧巻です。たしかにバランスで聞いているのが一番ハイレベルで、力感だけではなく歪みなどもこちらの方が端正で優れているように感じられます。音の歯切れが良くARAの鋭い切れ味もよく活かせます。このくらいのハイレベルな音がスマホ+ちょっと付の機材で出るのは不思議な感覚でさえあります。
聞いているとシーラスの音というよりはESSっぽい感じさえしますね。電子設計がかなり際立っているのでしょう。DACのスペックよりシステムのスペックが上というとにわかには信じられないですが、音を聞いていると嘘ではないような気もします。3.5mmでも十分良いんですが4.4mmで聞くとちょっと後戻りできなくなります。絶対にバランスがオススメです。
Mac上のTIDALアプリで使用
Macに使用してみましたが、同様に簡単に接続してあっさり音が出ます。仕事をしながら使うにもいいですね。
ちなみにW1と比較するとW1もかなり良い音ですが、やはりW2はさらにレベルが高いというか音の鮮明さがかなり上です。驚くほどの音と言って良い感じがします。W2がおすすめです。
左がW1
* まとめ
コンパクトで多機能、そしてバランスでの音の良さは特筆ものです。こんな小型デバイスとは思えません。細かい音が再生できるという点ではハイレゾ再生に向いていますし、iPhoneでストリーミングを高音質で楽しみたい、話題のApple Musicロスレスを楽しみたいという場合にうってつけの機材です。
2021年05月17日
新ブランド、Fir Audio Five x Fiveレビュー
Fir Audio(ファーオーディオ)は2018年頃から話題になったブランドですが、この業界ではすでに長く様々な経験を積んでいて、その技術力を背景にしていますので全く新規のメーカーというわけではありません。はじめはクリーナーやケーブルテスターなどのアクセサリーを販売していましたが、最近ではM5やM4などの高性能カスタムIEMやユニバーサルモデルで知られるようになりました。オレゴン州ポートランドに拠点があります。
Five x Five(ファイブ・バイ・ファイブ)はそのエッセンスを求めやすい価格で提供するという目的のモデルで、そのためもあるのかカジュアルなデザインが採用されています。国内ではfinalが輸入してフジヤエービックにて50台限定で販売されています。
フジヤエービックの販売ページ
https://www.fujiya-avic.co.jp/shop/g/g200000058716/
FIVE×FIVEは名称の通りに5つのドライバーを搭載したモデルで、1基のダイナミックドライバー、2基の中音域用BAドライバー、1基の高音域用BAドライバー、1基の超高音域用のBAドライバーを搭載しています。MMCXでリケーブル可能で、2.5mmバランス端子のケーブルが標準で添付されています。国内では標準の2.5mmケーブルに加えてfinalのシルバーコートケーブル(MMCX/3.5mm)をセットにした特別仕様になっています。
* 特徴
1. チューブレス設計を採用
Fir Audioのイヤフオンは基本的にチューブレス設計が採用されています。これは通常BAドライバーと音の出るポートをつなぐ音導管(チューブ)を排した方式のことです。普通のBAドライバーではチューブ途中に音響フィルターという薄膜を使用して音の調整をするのですが、そうすると音が濁りやすくなります。このチューブレス方式では音導管を排して口を広げ、音響室を設けてそこで出音の調整を行います。このことにより音のロスを少なくします。音響フィルターを使わないで音の鮮明さをアップさせるので、フィルターレス設計と言い換えても良いかもしれません。
またFir Audioのダイレクトボア機構では鼓膜との距離をできるだけ短くすることにより、高域のロスを最小限にとどめ歪み感を抑制し、伸びやかな高域を実現するとしています。
2. タクタルベース機構
低域に割り当てられているダイナミックドライバーを、イヤホンの筐体全体を振動板のように使用するように設計し、音を豊かに響かせるように鳴らす機構です。タクタル(TACTILE)というのは手触り・触覚という意味の英語ですが、海外のオーディオレビューでもよく使われる単語です。日本語にしづらいんですが辞書には"tactile = producing a sensation of touch"とあるので手触り感を生み出すような音、リアル感のある音、と考えればよいのかもしれません。
3. 「第二の鼓膜」ATOM技術を採用
筐体内部ドライバー前方の圧力を外へ逃がし鼓膜にかかる過度な圧力を調整する機構です。これにより、メリハリのある力強いサウンドでありながら、サウンドステージは広くまた聴き疲れがしにくい音質を実現するとしています。
これは他でADELやAPEXと言っているものと似た技術だと思います。私も2016年にKickstarterでADELのX2イヤフオンを購入してわずか1万円程度で驚異的な音質だったのにはちょっと驚きました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/437594645.html
これは通称「第二の鼓膜」とも言われていて、2枚目の鼓膜という半透過の薄膜をベントのところに設置するものです。閉ざされた耳道内の不要な圧力をこの薄膜がうけて、実際の鼓膜の負担を軽減してくれるというもののようです。耳に優しいとも言いますが個人的には音質向上の効果が高いと思います。またこの圧力を可変することで音をチューニングすることができます。
Fir AudioのカスタムIEMでは同様のADELとかApexのように取り外せるフィルターバルブを設けるオプションもありますが、ユニバーサルのFive x Fiveではモジュールは別ではなく内蔵となり、端子の根元部分にダイナミックドライバー用のベント穴と一緒に設けられています。(他のFirユニバーサルでも同じ)
* インプレッション
実機を見てみるとウサギのイラストがカジュアルな製品らしい雰囲気を醸し出しています。
フェイスプレートはプラスチック製に見えますが、樹脂でありながら金属にも迫る高い強度と耐衝撃性を持つという、デュポン社のDelrinという特殊な樹脂が使用されています。本体は耐食性と強度に優れた航空機グレードのアルミニウム合金の切削筐体です。筐体はさほど大きくはなく、軽量で装着感も良好です。標準ケーブルはしなやかで取り回しやすいケーブルです。
シリコンチップのSMLの他にフォームチップ1サイズとダブルフランジ1サイズが同梱されています。
まず2.5mmで聞いてみます。A&K SE200のAKM側を使います。
音は個性的で極めてレベルが高く、極めて開放感があり鮮明な独特の音質です。バランスだとはわかっていてもまさに三次元的と言えるような開放感ある空間の広がりに感銘します。すかっと晴れ上がってクリアで明瞭感が高く、ぞくぞくするような独特の音の深みが感じられる。
音の解像力も高く、声の質感が艶やかで肉質感も高くリアルです。低域の量感はたっぷりとしていてロックなどでは迫力があります。Fir Audioの他のIEMは聞いたことがないですが、少なくともFive x Fiveは全体にモニター的ではなくコンシューマーよりの音造りをしているように思います。
やや低域寄りの音なので特に男性ヴォーカルに深みがあって味が感じられますね。高音域は開放感があって楽器の響きが美しい音です。シャープながらきつさを感じにくいところも「第二の鼓膜」技術らしいかもしれません。きつさが少ないのでアニソンやポップスのような硬い録音でも聴きやすく、かつ引き締まってスピード感があります。
独特の鮮明さから中高音は美音系と言ってもいいくらい音はきれいです。
低域は叩きつけるようなパーカッションがとても歯切れが良くシャープでタイトな音再現を楽しめます。低域の量は多いと言っても解像力も高く引き締まって鋭いベースサウンドを実現しています。
国内版ではfinalの3.5mm端子のシルバーコートケーブルが付属してきます。2.5mmだけだとMojoに使用できないとか不便でもあるので3.5mmケーブルがあると汎用性は向上しますね。
final製ケーブル
次に3.5mm finalケーブルで聴いてみるとシングルエンドだけれどもとても開放感があり鮮明な音で、バランスだけでこの音になっているわけではないのがわかります。また聴いてみるとこのfinal製ケーブルはとてもFive x Fiveの音との親和性が高い音で、鮮明で音に深みのあるVxVの音をさらに引き出してくれるようなケーブルだとわかります。またバランスの標準ケーブルと似た個性で音の違いの違和感も少ないようです。十分検討した上で添付しているように感じます。
* まとめ
さきに書いたように2016年に初の「第二の鼓膜」搭載イヤフォンであるX2というイヤフオンを聴いたときにもわずか$100の価格でも説明がし難いほど独特の透明感と空間の立体的な広がりを感じたけれども、たしかにここにも同じDNAを感じます。音の広がりというよりは独自の開放感といったほうがいいように思いますね。それがハイエンドイヤフォンになり、独自性と高音質を両立したように思います。
いずれにせよプレーヤーをいろいろ変えてみても、ケーブルを変えてもこの独特の開放感と鮮明さや引き締まったサウンドはあるので、とても強い個性をもった高音質のハイエンドイヤフォンだと言えるでしょう。
Five x Five(ファイブ・バイ・ファイブ)はそのエッセンスを求めやすい価格で提供するという目的のモデルで、そのためもあるのかカジュアルなデザインが採用されています。国内ではfinalが輸入してフジヤエービックにて50台限定で販売されています。
フジヤエービックの販売ページ
https://www.fujiya-avic.co.jp/shop/g/g200000058716/
FIVE×FIVEは名称の通りに5つのドライバーを搭載したモデルで、1基のダイナミックドライバー、2基の中音域用BAドライバー、1基の高音域用BAドライバー、1基の超高音域用のBAドライバーを搭載しています。MMCXでリケーブル可能で、2.5mmバランス端子のケーブルが標準で添付されています。国内では標準の2.5mmケーブルに加えてfinalのシルバーコートケーブル(MMCX/3.5mm)をセットにした特別仕様になっています。
* 特徴
1. チューブレス設計を採用
Fir Audioのイヤフオンは基本的にチューブレス設計が採用されています。これは通常BAドライバーと音の出るポートをつなぐ音導管(チューブ)を排した方式のことです。普通のBAドライバーではチューブ途中に音響フィルターという薄膜を使用して音の調整をするのですが、そうすると音が濁りやすくなります。このチューブレス方式では音導管を排して口を広げ、音響室を設けてそこで出音の調整を行います。このことにより音のロスを少なくします。音響フィルターを使わないで音の鮮明さをアップさせるので、フィルターレス設計と言い換えても良いかもしれません。
またFir Audioのダイレクトボア機構では鼓膜との距離をできるだけ短くすることにより、高域のロスを最小限にとどめ歪み感を抑制し、伸びやかな高域を実現するとしています。
2. タクタルベース機構
低域に割り当てられているダイナミックドライバーを、イヤホンの筐体全体を振動板のように使用するように設計し、音を豊かに響かせるように鳴らす機構です。タクタル(TACTILE)というのは手触り・触覚という意味の英語ですが、海外のオーディオレビューでもよく使われる単語です。日本語にしづらいんですが辞書には"tactile = producing a sensation of touch"とあるので手触り感を生み出すような音、リアル感のある音、と考えればよいのかもしれません。
3. 「第二の鼓膜」ATOM技術を採用
筐体内部ドライバー前方の圧力を外へ逃がし鼓膜にかかる過度な圧力を調整する機構です。これにより、メリハリのある力強いサウンドでありながら、サウンドステージは広くまた聴き疲れがしにくい音質を実現するとしています。
これは他でADELやAPEXと言っているものと似た技術だと思います。私も2016年にKickstarterでADELのX2イヤフオンを購入してわずか1万円程度で驚異的な音質だったのにはちょっと驚きました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/437594645.html
これは通称「第二の鼓膜」とも言われていて、2枚目の鼓膜という半透過の薄膜をベントのところに設置するものです。閉ざされた耳道内の不要な圧力をこの薄膜がうけて、実際の鼓膜の負担を軽減してくれるというもののようです。耳に優しいとも言いますが個人的には音質向上の効果が高いと思います。またこの圧力を可変することで音をチューニングすることができます。
Fir AudioのカスタムIEMでは同様のADELとかApexのように取り外せるフィルターバルブを設けるオプションもありますが、ユニバーサルのFive x Fiveではモジュールは別ではなく内蔵となり、端子の根元部分にダイナミックドライバー用のベント穴と一緒に設けられています。(他のFirユニバーサルでも同じ)
* インプレッション
実機を見てみるとウサギのイラストがカジュアルな製品らしい雰囲気を醸し出しています。
フェイスプレートはプラスチック製に見えますが、樹脂でありながら金属にも迫る高い強度と耐衝撃性を持つという、デュポン社のDelrinという特殊な樹脂が使用されています。本体は耐食性と強度に優れた航空機グレードのアルミニウム合金の切削筐体です。筐体はさほど大きくはなく、軽量で装着感も良好です。標準ケーブルはしなやかで取り回しやすいケーブルです。
シリコンチップのSMLの他にフォームチップ1サイズとダブルフランジ1サイズが同梱されています。
まず2.5mmで聞いてみます。A&K SE200のAKM側を使います。
音は個性的で極めてレベルが高く、極めて開放感があり鮮明な独特の音質です。バランスだとはわかっていてもまさに三次元的と言えるような開放感ある空間の広がりに感銘します。すかっと晴れ上がってクリアで明瞭感が高く、ぞくぞくするような独特の音の深みが感じられる。
音の解像力も高く、声の質感が艶やかで肉質感も高くリアルです。低域の量感はたっぷりとしていてロックなどでは迫力があります。Fir Audioの他のIEMは聞いたことがないですが、少なくともFive x Fiveは全体にモニター的ではなくコンシューマーよりの音造りをしているように思います。
やや低域寄りの音なので特に男性ヴォーカルに深みがあって味が感じられますね。高音域は開放感があって楽器の響きが美しい音です。シャープながらきつさを感じにくいところも「第二の鼓膜」技術らしいかもしれません。きつさが少ないのでアニソンやポップスのような硬い録音でも聴きやすく、かつ引き締まってスピード感があります。
独特の鮮明さから中高音は美音系と言ってもいいくらい音はきれいです。
低域は叩きつけるようなパーカッションがとても歯切れが良くシャープでタイトな音再現を楽しめます。低域の量は多いと言っても解像力も高く引き締まって鋭いベースサウンドを実現しています。
国内版ではfinalの3.5mm端子のシルバーコートケーブルが付属してきます。2.5mmだけだとMojoに使用できないとか不便でもあるので3.5mmケーブルがあると汎用性は向上しますね。
final製ケーブル
次に3.5mm finalケーブルで聴いてみるとシングルエンドだけれどもとても開放感があり鮮明な音で、バランスだけでこの音になっているわけではないのがわかります。また聴いてみるとこのfinal製ケーブルはとてもFive x Fiveの音との親和性が高い音で、鮮明で音に深みのあるVxVの音をさらに引き出してくれるようなケーブルだとわかります。またバランスの標準ケーブルと似た個性で音の違いの違和感も少ないようです。十分検討した上で添付しているように感じます。
* まとめ
さきに書いたように2016年に初の「第二の鼓膜」搭載イヤフォンであるX2というイヤフオンを聴いたときにもわずか$100の価格でも説明がし難いほど独特の透明感と空間の立体的な広がりを感じたけれども、たしかにここにも同じDNAを感じます。音の広がりというよりは独自の開放感といったほうがいいように思いますね。それがハイエンドイヤフォンになり、独自性と高音質を両立したように思います。
いずれにせよプレーヤーをいろいろ変えてみても、ケーブルを変えてもこの独特の開放感と鮮明さや引き締まったサウンドはあるので、とても強い個性をもった高音質のハイエンドイヤフォンだと言えるでしょう。
2021年05月15日
アップルミュージックのAndroidアプリにロスレス再生の情報が
アップルミュージックの高音質HIFI版が出るのではないかという情報は、前回はiOSを開けてみた情報ですが、今度はApple MusicのAndroid版にもロスレス再生時の電池消費の警告文が入っているのが見つかったそうです。
https://9to5google.com/2021/05/14/apple-music-android-lossless-audio-streaming/
Apple musicがロスレスをサポートしたとしてもアップルの狙いはオーディオマニアが言う高音質化よりも、Dolby Atmosのサポートと空間オーディオ関連というのはあるかもしれません。
Dolby Atmosもメタデータをエンコードしてるのでロスレスというかビットパーフェクト必要ですからね。360度オーディオ対応というのはありえます。
そうすると上限は48/24ロスレス程度かもはしれません。
https://9to5google.com/2021/05/14/apple-music-android-lossless-audio-streaming/
Apple musicがロスレスをサポートしたとしてもアップルの狙いはオーディオマニアが言う高音質化よりも、Dolby Atmosのサポートと空間オーディオ関連というのはあるかもしれません。
Dolby Atmosもメタデータをエンコードしてるのでロスレスというかビットパーフェクト必要ですからね。360度オーディオ対応というのはありえます。
そうすると上限は48/24ロスレス程度かもはしれません。
2021年05月05日
Windows 10でAACをサポート
Windows 10のアップデートBuild21370でBluetoothで二点改良が行われます。
まずAACがサポートされます。今はSBCとaptXなのでAirPodsを使うときに音質向上が期待されます。
それとエンドポイントの改良で、ビデオ会議をやったり音楽再生したりの切り替えがよりスムーズにできるようになります。
2021年03月22日
アスキーにアップルの出願特許からイヤーピースのIDタグの記事を執筆しました
アップルが最近出願した特許から推測して第二のMFI認証になるか?という記事です。
2021年03月08日
2021年02月24日
アスキーにAUDEZE EUCLIDとハイエンド・ゲーミングイヤフオンのトレンドについて執筆しました
アスキーに平面型イヤフォンAUDEZE EUCLIDとハイエンド・ゲーミングイヤフオンのトレンドについて執筆しました。
https://ascii.jp/elem/000/004/044/4044137/
https://ascii.jp/elem/000/004/044/4044137/
アスキーにカスタマイズが楽しいAcoustune「HS1300SS」の記事を執筆しました
アスキーにイヤピースの位置で音色変化、カスタマイズが楽しいAcoustune「HS1300SS」の記事を執筆しました。
https://ascii.jp/elem/000/004/041/4041428/
https://ascii.jp/elem/000/004/041/4041428/
2020年12月22日
ASCII.jpにfinal/Ditaコラボ製品発表会の記事を執筆
ASCII.jpにfinalとDita Audioのコラボ製品「SHICHIKU.KANGEN」発表会の記事を執筆しました。音のコメントもありますのでご覧ください。
2020年12月05日
ASCII.jpにFALCON PROのレビュー記事を執筆しました
ASCII.jpにNoble FALCON PROのレビュー記事を書きました。
ハイブリッド化で高音質になっても使い勝手が損なわれてない点が良いと思います。
2020年12月03日
世界初のディスクリート方式マルチビットDAC搭載のポータブルプレーヤー、L&P P6とP6Proレビュー
Luxury & Precision(以下L&P)は中国のオーディオブランドで、はじめはHeadFiなど海外マニアックフォーラムで人気を集めていましたが、2018年からサイラスが国内でも扱いを始めました。L&Pは一時期うちでもよく書いていたColorFly C4の流れを汲む会社でもあります。L&PはクラシカルなC4の流れとL4やL6のような現代的なDAPを主に販売しています。
P6とfinal A8000
少し前にインテル製のFPGAと医療用のR2RラダーDAC ICを搭載したハイエンドDAP、LP6の記事を書きました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/464787064.html
R2R形式DACのRはRegister(抵抗)の意味で抵抗を組み合わせたDACのことで、日本ではマルチビットDACという名のほうが通りが良いと思います。マルチビットDACというのは現代のDACがほとんどそうである1ビット形式のデルタシグマ方式のDACとも対になります(現代デルタシグマDACが実際には複数ビットであるということはおいといて)。
世のほとんどのデジタルオーディオのデータはPCM形式です。PCMはいわばコード化された音楽のデータであり、そのまま音として聴くことはできません。音楽として再生するには各ビットごとに対応するコードを復号する必要があり、これを抵抗を組み合わせた回路で行うのがマルチビットDACです。つまりマルチビットDACとはコード化(エンコード)されたPCMをデコードするためのDACであり、抵抗回路はPCMを復号するためのコード表のようなものです。
しかしながら世のほとんどすべてのDACはハイレゾ化(ハイビット化)のためにデルタシグマ形式となったため、PCMとはまったく違うので必然的に変換が必要になり、そこにデジタル臭さが生まれます。これは逆に言い換えれば、ソースがPCMならば「変換」の必要のないマルチビットDACであれば、デジタル臭さが少なくなるとも言えるわけです。
マルチビットDACはほとんどの場合はすでに生産停止したDAC IC(ハイレゾ対応ならPCM1704、16bitならフィリップス製ICなど)を使用するのですが、LP6は医療用のR2R DAC ICを使うという点で画期的でした。しかしやはりICを使う点は同じです。
今回登場したP6およびその特別モデルのP6Proはポータブルとしては世界初のディスクリート方式のR2RラダーDAC(マルチビットDAC)を搭載しています。つまりICではなく抵抗を使ってディスクリートで組んだわけです。(ちなみにアンプではよくオペアンプではなくトランジスタを使ったものをディスクリートと言いますが、もともとdiscreteとは分離したという意味でトランジスタを使ったという意味ではありません)
LPシリーズがヘッドホン向けのフラッグシップラインであったのに対して、このPシリーズはイヤホン向けのフラッグシップシリーズです。
国内での発売時期は12月下旬で、販売価格はP6/P6Proともオープン価格ですが、市場価格はP6は34万円前後、P6Proは43万円前後と想定しているということです。
* 特徴
1. ディスクリート方式のR2R(マルチビット) DAC採用
既述しましたが、LP6の時は医療用のR2R DACのICを使ってたのですが、P6/P6Proではそれを抵抗組み合わせてICを使わずにディスクリート設計にしたということです。ビット数(深度)は24bitまで対応しています。
R2R DACの弱点はビット深度が深くなるほど精度を確保するのが難しくなるということです。よく知られているマルチビットDAC ICのPCM1704も24bitと言われていますが、実際は23bit精度で最上位ビットは符号ビットとしてしか使用できません。
L&Pでは開発チームが今までの開発で纏めたノウハウで、既成の抵抗を自社基準で一個一個選別しているそうです。精度の決めは絶対値ではなく、他のパーツとの相対的な数値が合格品かどうかで決めるため、他社に特注するよりもLP5の時代から積み重ねてきた自社の独自ノウハウを使って選別しているということです。もちろん一つ一つ測定しながら生産するには時間や人件費などのコストが掛かりますが、L&Pではそれを必要だと思っているということです。
またPCMが入力されてからアナログに変換されるまでの過程に関して具体的にどういうアーキテクチャかというと、まずファイルの解析からはじまって、MCUで再生される予定のファイルのサンプリング数を判断し、それをFPGAのクロック管理機能によってどのクリスタルオシレーターを使うかを決めます。その後にFPGA内でファイルのデータ上のクロック数に合わせてデコードします。あとはR2R回路経由でアナログ信号に変換して、のちに述べるL.L.M.V.S.システムにより音量調整され、アンプへ送り込みます。
性能としてはPCM1704Kが8個相当のダイナミックレンジを達成しています。これはLP6同等ですね。ちなみにProは16個相当となるそうです。
2. R2R方式でもDSDネイティブ再生が可能
これもICからディスクリートにした利点かもしれません。
R2R方式はいわばPCMに特化した方式なので、これまではDSDを再生する時にはいったんPCM変換が必要でした。P6/P6ProではDSDを入力した時の信号経路は、DSD信号は1bitのままで、OSからFPGAへ、そしてDAC回路に流れます。P6/P6Proは自社設計の回路の中に流すことで、基本的にPCM変換しないで完全にネイティヴ方式で1bitそのままでDSD信号を処理します。
つまりはDSD用の別DACがあるわけではないが、この自社製のDAC回路の中でDSDネイティブ再生ができるような回路部分があるのだと思います(ローパスフィルタやバッファなど)。
また、設定でデコード方式をPCM変換に設定すると、OS上でマルチビットのPCM信号に変換してからR2R回路に流すこともできます。
3. 独自のボリュームコントロールシステム
LP6/LP6Proではボリュームも凝っていて、独自の電子リレーアレイ・ロスレスボリュームコントロール、LLMVS(Luxury&Precision Lossless Matrix Volume control System)というメーカー独自のシステムを採用しています。これは電子方式のステップアッテネーターのようなもののように思います。実際にP6ではボリュームが操作UIの上下ダイヤルも兼ねるのでデジタルエンコーダーとなっているのがわかります。アナログボリュームではありません。
つまりP6シリーズは、DAC回路はもちろん音量調整システムも抵抗回路ベースで構築したわけです。これはある意味で据え置きピュアオーディオを意識しながら開発されたということです。
この独自のシステムを採用する理由は、全ての音量レベルのもとでダイナミックレンジが低下せず、かつ情報量が減らないということだそうです。このシステムは、ハイエンドの据置機で採用されているディスクリート式の音量調整機構に近いということ。それをポータブル機器に合わせてサイズと消費電力の面で一番バランスの良い設計をしたそうです。この方式だと音量調節もイヤフォンに合わせてカスタムや最適化が可能なので設計の幅が広いというメリットもあるということ。
4. 独自のFPGAを採用
LP6ではインテル製のFPGAがキーでしたが、P6では中国製FPGAを使用しています。LP6を開発した時にインテルのFPGAを使った理由の一つは、インテル側と共同でデジタルフィルダーなどの開発をしたからということです。今回はその時の経験から、高性能なものでなくてもシステムに合うFPGAを使えば、同じ機能を実現させられるということでインテル製採用をしなかったということのようです。
FPGAは主に下記のタスクを遂行しています。
R-2R回路の線形補償
SPDIFとI2Sプロトコルの解析とデコード
クロック管理
R2R回路のデコード
FPGA内部のDSPリソースを使って、イヤホン&ヘッドホンごとに最適化するカスタム機能(後述)
5. 特定のイヤホンやヘッドホンに合わせたDSP調整が可能
さきに書いたFPGAのタスクの一つがこの特定のイヤホンやヘッドホンに合わせてDSP調整を行うという機能です。
これはシステム設定内の音声出力設定に、サウンドスタイルという項目が追加され、特定のイヤフォンに合うDSP設定を選べるということです。これはOSレベルではなく、FPGAの中の設定を調整しているということ。
ちなみにOS自体はLP6と基本的には同じで違うUIデザインになっています。
P6の大きさは124x67.3x20mmで重さは248g、液晶は3.5インチのIPSで解像度は480x320。P6はなるべくノイズ源を避けたということでタッチ操作ではありません。P6Proはタッチ操作です。
内蔵メモリーは64GBでMicroSDカードスロットが一基搭載されています。USB端子はUSB-Cで、PCとのデータ交換とUSB DAC機能に使うことができます。再生時間は15時間です。
* P6のインプレ
まずP6を解説してから、あとでP6Proと違いについて述べます。
はじめに立ち上がりがすごく早いのが印象的です。これはOSが軽量だからでしょうね。P6の操作はタッチではなく決定キーとバックキー、そしてボリュームダイヤルを使用してメニューを上下させる方式です。タッチに慣れた身にはやや使いにくいんですが、この分でAndroidなどの複雑なOSを避けていると言えます。
筐体はシルバーグレイの航空機グレードアルミニウム合金製です。重さ感覚としては軽くはないが、この手のハイエンド機としては特に重いとということもないと思います。大きさも手頃というところですね。持ち運びに不便はないでしょう。ディスクリートDACといってもかなり集積化した設計なんでしょうね。この辺はL&Pらしくもあります。
音を聴いてみると、例えばシャープで正確だが硬質感のあるNoble KATANAやDITA Dreamのようなイヤフオンだと、特に音を大きくした時に不快感が少ない印象をうけます。
さらにこうしたイヤフォンを使った時にP6で印象的に感じるのは、恐ろしいほどに澄み切って奥行きと細かい音が良く聞こえる透明感の高さです。特にThe Real GroupのWORDSみたいなアカペラのときに、声の背景にたくさんの音の重なり合いがあるので驚きます。16bitにこんなに情報が詰まっていたのかと感じるほどで、こんな音があったっけと再発見する感じです。いわゆるホールトーンのような響きが聞こえて音楽が豊かに感じられます。
おそらくノイズフロアもかなり低いと思いますが、聴覚的にもSNもすごく高く感じられます。Andromeda 2020を使ってみたが気になるヒスノイズのようなものはないと思います。
また音の正確さも印象的です。高域は澄んでひときわクリアであり、中域のヴォーカルは鮮明、低域は引き締まって正確なベースラインを感じさせます。R2Rの美点か、いわゆるモニター的な正確さが無機的と感じられることもありません。
DITA Dreamで聞きながら端子のみ4.4mmに変えてみました。4.4mmmバランスで聞くとさらに音が厚みをましてより自然に聴こえます。これはとても魅力的なサウンドです。インパクトの強さもいっそう強くなり、パワフルな感じがあります。やはり4.4mmで聞くのが一番良いですね。
DSD再生のモードでは個人的にはネイティブ(PCM変換しない)の方が好ましいように感じられます。差は大きくないがやはり差はあると感じます。
デジタルフィルターのところにノンオーバーサンプリングがあるのも面白いですが、これはやはり差は微妙ではありますね。
* P6とP6proの違い
左:P6 右:P6Pro
P6とP6proの違いは次のようなものです。
1. R2R回路用抵抗は、P6より選別レベルの高いものを採用
2. PCM1704Kを計16個使用する時のダイナミックレンジと同等なスペックを達成(P6は8個相当)
3. SN比125dBを達成(P6は123dB)
4. G+G液晶タッチ機能搭載。(P6はタッチパネル非搭載)
5. P6はシルバー筐体や強化ガラスバックパネル、P6Proはブラックと天然木
実際に使ってみましたが、P6Proの方はタッチ操作が可能なので操作はだいぶ楽になります。
やはりきになるのは音質差なんですが、P6でもかなりレベルが高い音が、Proだとより一層音が鮮明で、かつよりきつさが少なく感じられます。たとえばサ行のきつさがより緩和される感じだと思います。P6Proではより高品質な音であるので選別品の効果はあると思います。
* まとめ
本機の音はSagraDACのようにR2Rを主張する柔らかなものというよりも、どちらかというとLP6をHD800で聞いた音の進化系というか、L&Pの音のつきつめたところにある音と言えるように思いました。
音楽がニュートラルであるがままに聞こえる、自然で正確に聴こえる、というある意味当たり前だけれどもいままでなかった音と言えるかもしれません。特にDITA Dreamなどを持っている人は要チェックだと思います。
P6とfinal A8000
少し前にインテル製のFPGAと医療用のR2RラダーDAC ICを搭載したハイエンドDAP、LP6の記事を書きました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/464787064.html
R2R形式DACのRはRegister(抵抗)の意味で抵抗を組み合わせたDACのことで、日本ではマルチビットDACという名のほうが通りが良いと思います。マルチビットDACというのは現代のDACがほとんどそうである1ビット形式のデルタシグマ方式のDACとも対になります(現代デルタシグマDACが実際には複数ビットであるということはおいといて)。
世のほとんどのデジタルオーディオのデータはPCM形式です。PCMはいわばコード化された音楽のデータであり、そのまま音として聴くことはできません。音楽として再生するには各ビットごとに対応するコードを復号する必要があり、これを抵抗を組み合わせた回路で行うのがマルチビットDACです。つまりマルチビットDACとはコード化(エンコード)されたPCMをデコードするためのDACであり、抵抗回路はPCMを復号するためのコード表のようなものです。
しかしながら世のほとんどすべてのDACはハイレゾ化(ハイビット化)のためにデルタシグマ形式となったため、PCMとはまったく違うので必然的に変換が必要になり、そこにデジタル臭さが生まれます。これは逆に言い換えれば、ソースがPCMならば「変換」の必要のないマルチビットDACであれば、デジタル臭さが少なくなるとも言えるわけです。
マルチビットDACはほとんどの場合はすでに生産停止したDAC IC(ハイレゾ対応ならPCM1704、16bitならフィリップス製ICなど)を使用するのですが、LP6は医療用のR2R DAC ICを使うという点で画期的でした。しかしやはりICを使う点は同じです。
今回登場したP6およびその特別モデルのP6Proはポータブルとしては世界初のディスクリート方式のR2RラダーDAC(マルチビットDAC)を搭載しています。つまりICではなく抵抗を使ってディスクリートで組んだわけです。(ちなみにアンプではよくオペアンプではなくトランジスタを使ったものをディスクリートと言いますが、もともとdiscreteとは分離したという意味でトランジスタを使ったという意味ではありません)
LPシリーズがヘッドホン向けのフラッグシップラインであったのに対して、このPシリーズはイヤホン向けのフラッグシップシリーズです。
国内での発売時期は12月下旬で、販売価格はP6/P6Proともオープン価格ですが、市場価格はP6は34万円前後、P6Proは43万円前後と想定しているということです。
* 特徴
1. ディスクリート方式のR2R(マルチビット) DAC採用
既述しましたが、LP6の時は医療用のR2R DACのICを使ってたのですが、P6/P6Proではそれを抵抗組み合わせてICを使わずにディスクリート設計にしたということです。ビット数(深度)は24bitまで対応しています。
R2R DACの弱点はビット深度が深くなるほど精度を確保するのが難しくなるということです。よく知られているマルチビットDAC ICのPCM1704も24bitと言われていますが、実際は23bit精度で最上位ビットは符号ビットとしてしか使用できません。
L&Pでは開発チームが今までの開発で纏めたノウハウで、既成の抵抗を自社基準で一個一個選別しているそうです。精度の決めは絶対値ではなく、他のパーツとの相対的な数値が合格品かどうかで決めるため、他社に特注するよりもLP5の時代から積み重ねてきた自社の独自ノウハウを使って選別しているということです。もちろん一つ一つ測定しながら生産するには時間や人件費などのコストが掛かりますが、L&Pではそれを必要だと思っているということです。
またPCMが入力されてからアナログに変換されるまでの過程に関して具体的にどういうアーキテクチャかというと、まずファイルの解析からはじまって、MCUで再生される予定のファイルのサンプリング数を判断し、それをFPGAのクロック管理機能によってどのクリスタルオシレーターを使うかを決めます。その後にFPGA内でファイルのデータ上のクロック数に合わせてデコードします。あとはR2R回路経由でアナログ信号に変換して、のちに述べるL.L.M.V.S.システムにより音量調整され、アンプへ送り込みます。
性能としてはPCM1704Kが8個相当のダイナミックレンジを達成しています。これはLP6同等ですね。ちなみにProは16個相当となるそうです。
2. R2R方式でもDSDネイティブ再生が可能
これもICからディスクリートにした利点かもしれません。
R2R方式はいわばPCMに特化した方式なので、これまではDSDを再生する時にはいったんPCM変換が必要でした。P6/P6ProではDSDを入力した時の信号経路は、DSD信号は1bitのままで、OSからFPGAへ、そしてDAC回路に流れます。P6/P6Proは自社設計の回路の中に流すことで、基本的にPCM変換しないで完全にネイティヴ方式で1bitそのままでDSD信号を処理します。
つまりはDSD用の別DACがあるわけではないが、この自社製のDAC回路の中でDSDネイティブ再生ができるような回路部分があるのだと思います(ローパスフィルタやバッファなど)。
また、設定でデコード方式をPCM変換に設定すると、OS上でマルチビットのPCM信号に変換してからR2R回路に流すこともできます。
3. 独自のボリュームコントロールシステム
LP6/LP6Proではボリュームも凝っていて、独自の電子リレーアレイ・ロスレスボリュームコントロール、LLMVS(Luxury&Precision Lossless Matrix Volume control System)というメーカー独自のシステムを採用しています。これは電子方式のステップアッテネーターのようなもののように思います。実際にP6ではボリュームが操作UIの上下ダイヤルも兼ねるのでデジタルエンコーダーとなっているのがわかります。アナログボリュームではありません。
つまりP6シリーズは、DAC回路はもちろん音量調整システムも抵抗回路ベースで構築したわけです。これはある意味で据え置きピュアオーディオを意識しながら開発されたということです。
この独自のシステムを採用する理由は、全ての音量レベルのもとでダイナミックレンジが低下せず、かつ情報量が減らないということだそうです。このシステムは、ハイエンドの据置機で採用されているディスクリート式の音量調整機構に近いということ。それをポータブル機器に合わせてサイズと消費電力の面で一番バランスの良い設計をしたそうです。この方式だと音量調節もイヤフォンに合わせてカスタムや最適化が可能なので設計の幅が広いというメリットもあるということ。
4. 独自のFPGAを採用
LP6ではインテル製のFPGAがキーでしたが、P6では中国製FPGAを使用しています。LP6を開発した時にインテルのFPGAを使った理由の一つは、インテル側と共同でデジタルフィルダーなどの開発をしたからということです。今回はその時の経験から、高性能なものでなくてもシステムに合うFPGAを使えば、同じ機能を実現させられるということでインテル製採用をしなかったということのようです。
FPGAは主に下記のタスクを遂行しています。
R-2R回路の線形補償
SPDIFとI2Sプロトコルの解析とデコード
クロック管理
R2R回路のデコード
FPGA内部のDSPリソースを使って、イヤホン&ヘッドホンごとに最適化するカスタム機能(後述)
5. 特定のイヤホンやヘッドホンに合わせたDSP調整が可能
さきに書いたFPGAのタスクの一つがこの特定のイヤホンやヘッドホンに合わせてDSP調整を行うという機能です。
これはシステム設定内の音声出力設定に、サウンドスタイルという項目が追加され、特定のイヤフォンに合うDSP設定を選べるということです。これはOSレベルではなく、FPGAの中の設定を調整しているということ。
ちなみにOS自体はLP6と基本的には同じで違うUIデザインになっています。
P6の大きさは124x67.3x20mmで重さは248g、液晶は3.5インチのIPSで解像度は480x320。P6はなるべくノイズ源を避けたということでタッチ操作ではありません。P6Proはタッチ操作です。
内蔵メモリーは64GBでMicroSDカードスロットが一基搭載されています。USB端子はUSB-Cで、PCとのデータ交換とUSB DAC機能に使うことができます。再生時間は15時間です。
* P6のインプレ
まずP6を解説してから、あとでP6Proと違いについて述べます。
はじめに立ち上がりがすごく早いのが印象的です。これはOSが軽量だからでしょうね。P6の操作はタッチではなく決定キーとバックキー、そしてボリュームダイヤルを使用してメニューを上下させる方式です。タッチに慣れた身にはやや使いにくいんですが、この分でAndroidなどの複雑なOSを避けていると言えます。
筐体はシルバーグレイの航空機グレードアルミニウム合金製です。重さ感覚としては軽くはないが、この手のハイエンド機としては特に重いとということもないと思います。大きさも手頃というところですね。持ち運びに不便はないでしょう。ディスクリートDACといってもかなり集積化した設計なんでしょうね。この辺はL&Pらしくもあります。
音を聴いてみると、例えばシャープで正確だが硬質感のあるNoble KATANAやDITA Dreamのようなイヤフオンだと、特に音を大きくした時に不快感が少ない印象をうけます。
さらにこうしたイヤフォンを使った時にP6で印象的に感じるのは、恐ろしいほどに澄み切って奥行きと細かい音が良く聞こえる透明感の高さです。特にThe Real GroupのWORDSみたいなアカペラのときに、声の背景にたくさんの音の重なり合いがあるので驚きます。16bitにこんなに情報が詰まっていたのかと感じるほどで、こんな音があったっけと再発見する感じです。いわゆるホールトーンのような響きが聞こえて音楽が豊かに感じられます。
おそらくノイズフロアもかなり低いと思いますが、聴覚的にもSNもすごく高く感じられます。Andromeda 2020を使ってみたが気になるヒスノイズのようなものはないと思います。
また音の正確さも印象的です。高域は澄んでひときわクリアであり、中域のヴォーカルは鮮明、低域は引き締まって正確なベースラインを感じさせます。R2Rの美点か、いわゆるモニター的な正確さが無機的と感じられることもありません。
DITA Dreamで聞きながら端子のみ4.4mmに変えてみました。4.4mmmバランスで聞くとさらに音が厚みをましてより自然に聴こえます。これはとても魅力的なサウンドです。インパクトの強さもいっそう強くなり、パワフルな感じがあります。やはり4.4mmで聞くのが一番良いですね。
DSD再生のモードでは個人的にはネイティブ(PCM変換しない)の方が好ましいように感じられます。差は大きくないがやはり差はあると感じます。
デジタルフィルターのところにノンオーバーサンプリングがあるのも面白いですが、これはやはり差は微妙ではありますね。
* P6とP6proの違い
左:P6 右:P6Pro
P6とP6proの違いは次のようなものです。
1. R2R回路用抵抗は、P6より選別レベルの高いものを採用
2. PCM1704Kを計16個使用する時のダイナミックレンジと同等なスペックを達成(P6は8個相当)
3. SN比125dBを達成(P6は123dB)
4. G+G液晶タッチ機能搭載。(P6はタッチパネル非搭載)
5. P6はシルバー筐体や強化ガラスバックパネル、P6Proはブラックと天然木
実際に使ってみましたが、P6Proの方はタッチ操作が可能なので操作はだいぶ楽になります。
やはりきになるのは音質差なんですが、P6でもかなりレベルが高い音が、Proだとより一層音が鮮明で、かつよりきつさが少なく感じられます。たとえばサ行のきつさがより緩和される感じだと思います。P6Proではより高品質な音であるので選別品の効果はあると思います。
* まとめ
本機の音はSagraDACのようにR2Rを主張する柔らかなものというよりも、どちらかというとLP6をHD800で聞いた音の進化系というか、L&Pの音のつきつめたところにある音と言えるように思いました。
音楽がニュートラルであるがままに聞こえる、自然で正確に聴こえる、というある意味当たり前だけれどもいままでなかった音と言えるかもしれません。特にDITA Dreamなどを持っている人は要チェックだと思います。
2020年11月10日
PW Audioの4.4mmアダプターレビュー
今回紹介するのはPW AUDIO製の4.4mmバランス出力の変換アダプターです。PW AUDIOは2010年から続く香港のオーディオメーカーで、ケーブルやアクセサリーなどを取り扱っています。国内ではサイラスが代理店となって販売しています。
こちらはサイラスのPW Audio製品ページです。
https://www.cyras.jp/97513.html
この4.4mmアダプターは4.4mmバランス出力端子を持っていないプレーヤーやアンプを4.4mm対応にするものです。今回試したものはAstell&Kern用とHUGO2用の計5機種です。
どの製品も筐体は耐久性のあるアルミ削り出しで、端子は日本ディックス製4.4mm端子を採用しています。
* Astell & Kernプレーヤー用
Astell & Kernプレーヤーの3.5mmと2.5mm端子の両方のプラグに接続します。Fはストレート型のイヤフォン端子に好適です。
どうして2.5mmと3.5mmの両方を差すかというと、バランスの信号(R+/-, L+/-)は2.5mmの方から取るんですが、グランド(G)を3.5mmのものを使うからです。普通の4.4mmケーブルは効果がないかもしれませんが、PW Audioでは外部ノイズ遮断用のシールドを採用したGNDも生きているケーブルを企画中で、そうしたグランド分離タイプのケーブルで真価を発揮するということです。
1. AK TO 4.4F ストレート型(通常モデル)
通常版と限定版の違いは外観だけではなく、内部配線も違うということです。価格は11,000円(税別)。通常版のL型は12,000円(税別)。
2. AK TO 4.4F ストレート型(秋モデル)
これはPW AUDIOが企画した限定版だそうです。価格は予価13,000円(税別)。L型は予価15,000円(税別)。
3. AK TO 4.4F ストレート型(日本限定モデル)
こちらは代理店のサイラスが企画したもので、線材もサイラスの指定になるものということです。価格は予価24,000円(税別)。L型も予価24,000円(税別)。
試聴ではCampfire AudioのSolaris2020にDITAのAWESOMEプラグを使用して、2.5mmと4.4mmを変えながらイヤフオンとケーブルは同じで聴いています。
実際に試してみると、思ったよりも音質に差はあります。2.5mm直差しから4.4mmアダプター経由に変えると少し音圧が上がって音の広がりがより広く感じます。より音に厚みも加わります。ひとレベル上の音と言ってもよいくらいでしょう。やはり4.4mmアダプタを介した方が音はいいという感じです。こうしたアクセサリーを使おうとするマニアのユーザーなら違いは大きいと感じると思います。
もともと2.5mmよりも4.4mmの方が電気的特性は上だと思いますが、このようにアダプタを介した時も効果があるのは意外です。
4.4mm(+アダプター)から2.5mmに戻すと音がやや軽くこじんまりとして、音圧が少し下がります。
通常版とJP限定版も音が違います。音の良さのレベルは同じくらいですが、JP限定版は少し明るめで多少クリアな音になっています。ただ通常盤も重みがある感じで、これは好みの違いと考えてよいかと思います。JP限定版の方がいわゆる中高域好きの日本人好みの音になっているかもしれません。
秋版も音が違いますが、やや通常盤に近い感じです。通常盤-秋版-JP限定版の順に違いがあるように思います。
実のところ聞く前は違いはあっても差は微小かと思ってたんですが、けっこう違いますね。いわゆる一旦聞いてしまうと外せなくなるというタイプのアクセサリーのように思います。このAstell&Kern用のアダプターはAKユーザーにはオススメですので、一度試してほしいと思います。
* Chord Hugo2用
これはHUGO2のプリアウトRCA出力のLとRに接続するアダプターです。「RCA to 4.4mmアダプター」と言ってもいいかもしれません。RCAはプリアウトですが、メーカーはイヤフォンをつけても聞けると言っているようなので今回はイヤフォンをつけてAK版と同じようにして試してみました。
1. HUGO2 TO 4.4 ストレート型(通常モデル)
Hugo2においては他のポートの邪魔をしないのでストレート型の方がよいかもしれません。価格は予価12,000円(税別)。通常版のL型は14,000円(税別)。
2. HUGO2 TO 4.4L L型(限定モデル)
この限定版は通常モデルとは異なる線材を使用しているということです。価格は予価24,000円(税別)。通常版のL型は24,000円(税別)。
HUGO2でも同じくDITAのAWSOMEプラグで3.5mmをHUGO2の3.5mm端子に挿した時の音と、4.4mmに変えてアダプタの4.4mm端子につけた時の音を比べました。
より広がりのある音になるのはAKと同じですが、やはりこちらはプリアウトなので差は微妙ではありますね。L型(限定モデル) はストレート型(通常モデル)に比べてAKタイプと同傾向でより明るくてクリアな音になるようです。
やはりHUGO2の方は手持ちの4.4mmを生かしたい人向け、あるいは4.4mm to 4.4mmケーブルを使ってアンプに接続したい人向けと考えたほうがよいように思います。(いま手元に4.4mm入力のアンプがないので試せませんが)
* Chord MOJO用
また今回試していませんが、このほかにMOJO用のアダプターもあります。価格は予価18,000円(税別)。
2020年09月18日
Oriolus Rebornの美音チューンモデル、Crassirostris
CrassirostrisはJabenとOriolusのコラボモデルのイヤフォンで、JABEN CHINAの企画商品です。
名前はフウキンチョウという鳥のことのようで、箱絵にも鳥の絵が描かれています。おそらくは美しい声で鳴く鳥ではないかと思います。
価格はオープンで、実売は税抜122,000円前後を予定しているとのこと。
Crassirostrisの構成はBA3+D1のハイブリッド構成で基本的にはOriolus Rebornと同じ系列で、BAの部分(ツィーター)が違う型番ということです。このイヤホンはモニター的ではなく、基本的に楽しく美音を聞いてもらうためにチューニングされたということです。Oriolus Rebornの派生モデルという感じですね。
シェルは3Dプリントで製作されています。感度は115dB/mW、インピーダンスは21オームで、周波数特性は10Hz-40kHzで箱にはハイレゾシールが貼ってあります。ケーブルの線材は銅,銀,銀メッキ銅線ということです。ケーブル端子は3.5mmです。シリコンイヤーピースとフォーム、ダプルフランジ(M)が付属しています。
シェルが透明でドライバー配置がよくわかります。ベント穴が直接シェル空間に空いています。ベント穴にはなにかフィルターが入っているように見えます。シェル内空間はダイナミックドライバーにとって、全てチャンバーとなるとのこと。またノズル部分が広く作られています。
プラグがごっついのでマニアックな製品と感じますね。ケーブルはなかなかに凝った標準ケーブルで、しなやかで取り回しは悪くないです。
大柄なシェルだけれども、わりと装着感はよく特にシリコンイヤーピースがよくできていて密着します。吸い付くような感触がありますね。かなり遮音性は良いと思います。能率は高めで鳴らしやすい方でしょう。
まず音がニュートラルで聴きやすいA&K AK380で試してみます。
音楽的にチューニングしたというだけあって、音はわかりやすく端的に言って低重心でベースの重みがあって、音の広がりがすごいサウンド、という感じです。
AK380とCrassirostris
中高域はシャープでギターをつま弾く音が鮮明に聞こえますね。低域はかなり誇張されて量感がたっぷりとあります。ハイブリッド構成らしく、音に重みもずっしりと感じられます。この辺からもモニター的に聞くのではなく音を楽しんで聞く方向性が伝わってきます。ただ低域は強いけれども、ヴォーカルはわりとはっきりと聞こえると思います。
周波数特性はかなり誇張されていますが、音調自体は暖かすぎるものではなくわりとニュートラルです。この辺はケーブル特性も関係していると思います。
もう一つCrassirostrisのポイントは音の広がりが良いことです。左右にもわりと広い方ですね。奥行き感もあります。低音がたっぷりとあって音もよく広がるのでオーケストラものでのスケール感もいいですね。
音の個性がA&K SP1000CPに合いそうなのでプレーヤーを変えてみたところ大当たりという感じです。この組み合わせは最高にいいですね。
AK380からSP1000CPになってより音性能が向上したことで、こちらの方がCrassirostrisの力を引き出すという意味合いもあります。Crassirostrisは解像力もあってただのfunタイプのイヤフォンではなく、ポテンシャルも高いようです。これは元になったOriolus Rebornの性能の賜物でしょう。
SP1000CPとCrassirostris
高域もSP1000CPで聴く方がより美しく感じられます。音場の良さとあいまって、エレクトロニカではベルの音やそれに近いような電子音が頭の中に響き渡り、豊かな低域と相まって美しい中高域が浮き上がったように聞こえます。音楽の作る世界に引き込まれるようです。
女性ボーカルのジャズでは囁くようなボーカルも細かく再現される側面もあります。例えば定番の"Spanish Harlem"だとバックのベースはやや大きめに聴こえますが、ヴォーカルは綺麗に声質もよく聞き取れます。アニソンだとやはりバックの演奏はやや大きく聞こえるけれどもやはり躍動的に楽しめます。こうしたヴォーカル主体のジャンルでは、ヴォーカルだけではなく演奏も楽しみたい人向けの再現のように感じられます。
特にパワーがあって、低域の再現力が高いので、一番向いているジャンルはロックだと思います。
パーカッションやドラムのパンチがあって、ダンダン・バンバンという音がパワフルで気持ち良いんですよね。畳み掛けるようなベースギターとドラムの絡みなんかは最高です。パワフルで躍動的な音の世界を楽しめます。なかなかここまでベースギターやバスドラの気持ち良さを再現できるイヤフォンもないのではと思います。ドラムやパーカッションの連打では気持ち良さを感じられる、かなり気持ちもハイになって上がっていくと思います。
例えばメタルとかだと、低いデス声のバックで聞こえる美しい女性ヴォーカルなんていう曲でもそれぞれが楽しめ、そこにドスッドンドンという破壊的なドラムが気持ちよく聴こえてきます。
Oriolus 1795で聴く相性もまた良いです。スマートフォンとBTで聴きたいならば、Oriolus 1795くらいの音の良さがないと面白くないと思います。
やはり音の広がりがよく、低音の迫力を堪能できます。音色もきれいに再現され、音も細かさもかなり高いと感じられます。おそらくこの組み合わせだとBluetoothを聴いているという感覚なく音楽に浸れます。Oriolus 1795はBTレシーバーにしては音のスピード感がある点もcrassirostrisを生かせるでしょう。
Oriolus 1795とCrassirostris
音楽を分析的ではなく、躍動感あふれる最前列で楽しみたい人向けのイヤフォンと言えるでしょう。またOriolus Rebornを元にした基本的な性能も高いのでパワーのある高性能なプレーヤーに向いています。
音楽を楽しみたい人、パワーのあるハイエンドプレーヤーを持っている人にオススメです。
名前はフウキンチョウという鳥のことのようで、箱絵にも鳥の絵が描かれています。おそらくは美しい声で鳴く鳥ではないかと思います。
価格はオープンで、実売は税抜122,000円前後を予定しているとのこと。
Crassirostrisの構成はBA3+D1のハイブリッド構成で基本的にはOriolus Rebornと同じ系列で、BAの部分(ツィーター)が違う型番ということです。このイヤホンはモニター的ではなく、基本的に楽しく美音を聞いてもらうためにチューニングされたということです。Oriolus Rebornの派生モデルという感じですね。
シェルは3Dプリントで製作されています。感度は115dB/mW、インピーダンスは21オームで、周波数特性は10Hz-40kHzで箱にはハイレゾシールが貼ってあります。ケーブルの線材は銅,銀,銀メッキ銅線ということです。ケーブル端子は3.5mmです。シリコンイヤーピースとフォーム、ダプルフランジ(M)が付属しています。
シェルが透明でドライバー配置がよくわかります。ベント穴が直接シェル空間に空いています。ベント穴にはなにかフィルターが入っているように見えます。シェル内空間はダイナミックドライバーにとって、全てチャンバーとなるとのこと。またノズル部分が広く作られています。
プラグがごっついのでマニアックな製品と感じますね。ケーブルはなかなかに凝った標準ケーブルで、しなやかで取り回しは悪くないです。
大柄なシェルだけれども、わりと装着感はよく特にシリコンイヤーピースがよくできていて密着します。吸い付くような感触がありますね。かなり遮音性は良いと思います。能率は高めで鳴らしやすい方でしょう。
まず音がニュートラルで聴きやすいA&K AK380で試してみます。
音楽的にチューニングしたというだけあって、音はわかりやすく端的に言って低重心でベースの重みがあって、音の広がりがすごいサウンド、という感じです。
AK380とCrassirostris
中高域はシャープでギターをつま弾く音が鮮明に聞こえますね。低域はかなり誇張されて量感がたっぷりとあります。ハイブリッド構成らしく、音に重みもずっしりと感じられます。この辺からもモニター的に聞くのではなく音を楽しんで聞く方向性が伝わってきます。ただ低域は強いけれども、ヴォーカルはわりとはっきりと聞こえると思います。
周波数特性はかなり誇張されていますが、音調自体は暖かすぎるものではなくわりとニュートラルです。この辺はケーブル特性も関係していると思います。
もう一つCrassirostrisのポイントは音の広がりが良いことです。左右にもわりと広い方ですね。奥行き感もあります。低音がたっぷりとあって音もよく広がるのでオーケストラものでのスケール感もいいですね。
音の個性がA&K SP1000CPに合いそうなのでプレーヤーを変えてみたところ大当たりという感じです。この組み合わせは最高にいいですね。
AK380からSP1000CPになってより音性能が向上したことで、こちらの方がCrassirostrisの力を引き出すという意味合いもあります。Crassirostrisは解像力もあってただのfunタイプのイヤフォンではなく、ポテンシャルも高いようです。これは元になったOriolus Rebornの性能の賜物でしょう。
SP1000CPとCrassirostris
高域もSP1000CPで聴く方がより美しく感じられます。音場の良さとあいまって、エレクトロニカではベルの音やそれに近いような電子音が頭の中に響き渡り、豊かな低域と相まって美しい中高域が浮き上がったように聞こえます。音楽の作る世界に引き込まれるようです。
女性ボーカルのジャズでは囁くようなボーカルも細かく再現される側面もあります。例えば定番の"Spanish Harlem"だとバックのベースはやや大きめに聴こえますが、ヴォーカルは綺麗に声質もよく聞き取れます。アニソンだとやはりバックの演奏はやや大きく聞こえるけれどもやはり躍動的に楽しめます。こうしたヴォーカル主体のジャンルでは、ヴォーカルだけではなく演奏も楽しみたい人向けの再現のように感じられます。
特にパワーがあって、低域の再現力が高いので、一番向いているジャンルはロックだと思います。
パーカッションやドラムのパンチがあって、ダンダン・バンバンという音がパワフルで気持ち良いんですよね。畳み掛けるようなベースギターとドラムの絡みなんかは最高です。パワフルで躍動的な音の世界を楽しめます。なかなかここまでベースギターやバスドラの気持ち良さを再現できるイヤフォンもないのではと思います。ドラムやパーカッションの連打では気持ち良さを感じられる、かなり気持ちもハイになって上がっていくと思います。
例えばメタルとかだと、低いデス声のバックで聞こえる美しい女性ヴォーカルなんていう曲でもそれぞれが楽しめ、そこにドスッドンドンという破壊的なドラムが気持ちよく聴こえてきます。
Oriolus 1795で聴く相性もまた良いです。スマートフォンとBTで聴きたいならば、Oriolus 1795くらいの音の良さがないと面白くないと思います。
やはり音の広がりがよく、低音の迫力を堪能できます。音色もきれいに再現され、音も細かさもかなり高いと感じられます。おそらくこの組み合わせだとBluetoothを聴いているという感覚なく音楽に浸れます。Oriolus 1795はBTレシーバーにしては音のスピード感がある点もcrassirostrisを生かせるでしょう。
Oriolus 1795とCrassirostris
音楽を分析的ではなく、躍動感あふれる最前列で楽しみたい人向けのイヤフォンと言えるでしょう。またOriolus Rebornを元にした基本的な性能も高いのでパワーのある高性能なプレーヤーに向いています。
音楽を楽しみたい人、パワーのあるハイエンドプレーヤーを持っている人にオススメです。