「Pixel Buds Proを聴く、迫力と深みのある低域と疲れにくい装着感」の記事をアスキーに執筆しました。
https://ascii.jp/elem/000/004/104/4104323/
Music TO GO!
「Android 13のオーディオ機能を確認、本命の空間オーディオ、LE Audioはこれから」の記事をアスキーに執筆しました
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https://ascii.jp/elem/000/004/104/4104258/
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「Astell&KernとCampfire Audioの独創的なコラボ、「PATHFINDER」を聴く」の記事をアスキーに執筆しました
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https://ascii.jp/elem/000/004/099/4099239/
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2022年05月30日
DITA audio 10周年モデル Perpetuaレビュー
DITA audio PerpetuaはDITA 10周年を記念する製品であり、新しい世代の始まりの製品でもあります。Perpetuaは筐体・ドライバー・内部配線・ケーブル・プラグまで一新された新しいフラッグシップイヤフオンです。国内では糸竹管弦を経ているようにも思えますが、直接的にはDream XLSの後継となります。

Perpetuaは先行販売と一般販売に分かれます。先行販売はDITA公式ストアおよびfinal STOREとフジヤエービックにて6月10日から開始されます。一般販売はその他の店で6月24日から開始されます。価格は428,000円(税込)の予定です。
* はじまり
先日のヘッドフォン祭におけるPerpetuaの発表会で、CEOダニー氏が語ったように全ては10年前から始まりました。
わたしが10年前のヘッドフォン祭(当時は青山)でうろうろしていたところ、HeadFi仲間から紹介したいイヤフオンがあると呼び出されて、そこに行ってみると数人のシンガポールから来たグループがいました。そこではじめてダニー氏と会ったわけです。デモ機を持参していましたのでその場で試してみました。
こうしたことはよくあって、私も責任があるのでうかつに国内紹介できないわけで慎重にしてはいました。DITAについては当時はあまりないようなその強気の価格設定にも驚きましたが、聴いてみると先鋭的でカチッとした精巧な音で、当時はまだ少なかったような本格的なサウンドに感銘を受けました。これは自分自身も欲しかった音で、マニアが欲しくなるようなサウンドだと思いました。そこで次のヘッドフォン祭に参加できるように尽力したというわけです。まず日本から成功させたいという情熱も良かったですね。

* Perpetua
Perpetua(永遠)に関してダニー氏は日比谷公園で美味しいトマトを食べながら、天啓的に音楽は技術だけではなく情感(emotion)が大事であると感じたそうです。そのためPerpetuaは10周年記念として技術的な進歩も大事だが、一方で情感がきちんと込められる製品にしたということ。技術的には悩みながらも決定した12mmの新型ドライバーがポイントで、直径にすると2mmの差ですが65%も振動板面積が広いとのこと。振動板にはDream XSでの複合術から、帝人の「TEONEX」という優れた強度特性をもつ特殊樹脂を新たに採用。
内部配線も新たに近藤オーディオノートジャパンの純度99.99%の純銀線を使用しています。
そしてPerpetuaはいままで作ったDITAのイヤフォンで最も左右の周波数特性マッチがタイトであるとのこと。

標準ケーブルも新規に設計され、信号経路は導体に高純度無酸素銅(PCOCC)を使用して芯線に6mmピッチで線材を巻き付ける特別仕様のコイル構造を採用した「コイル/オーバー」ケーブルが採用されています。
イヤフォン側端子はユニバーサル2ピン対応で、プレーヤー側端子はAwesome Plugの改良版である第2世代を採用しています。より強度が高く、太いケーブルに合わせて設計されています。

独特の丸みを帯びた筐体は軽量で高剛性のチタン筐体を採用。ロゴはサファイアガラス。
有機的で耳にフィットする人間工学に基づいた筐体形状
黒とシルバーにしたのは原点回帰を含んでいるということです。
キャリングケースには高い質感と使い心地に優れたイタリアンレザーを使用し、また蓋が空気圧でゆっくりと閉まるように計算して設計されたこだわりのキャニスターケース(アルミ切削加工)も付属している。
* インプレッション
Perpetuaのテーマであるエモーションはパッケージから感じられます。外箱は特徴的な引いて開けるタブが設けられていて、開けると10 years of DITAと表示が出てきます。

なにか古い旅行カバンを思わせる内箱にはポストカードが何枚も収納されています。中には空気圧でゆっくりと開け閉めできるキャニスターケースにイヤフオンが格納されており、レザーケースは工業製品的なファスナーではなく手作り工芸品を思わせるはめ込みボタンで留めるのも懐かしい感覚です。このようにパッケージからPerpetuaは「感触・感覚」をテーマにして作られているのがわかります。
イヤフオン本体を出してみるとさらにその「感触・感覚」が伝わるような独特の丸みを帯びた筐体や独特のデザインのケーブルに感じ入ってしまいます。ケーブルは太いのですが柔らかく取り回しには特に不自由はありません。

DITA PerpetuaはTruthからDreamへの先鋭的な進化路線とは異なる滑らかで柔らかく暖かみのある広大なサウンドが感じられます。まるでヘッドフォンが耳に入ってるかのようです。もちろん従来からの細かな音の鮮明さもその音世界の中で際立っています。
音の滑らかさはTwinsからProject71を経て進歩してきたと思います。ケーブルの影響も大きいように思いますが、かなり標準ケーブルの質がいい。
音の系統でいうと振動板がA8000系だった糸竹管弦とも異なる個性的な音です。

またPerpetuaは音の滑らかさもさることながら、予想を超えるところから音が出てくるような立体感も特徴的です。これはダニー氏が発表会で語ったような、今まででもっとも左右の特性マッチングがタイトであるという点も効いてるんでしょう。
Perpetuaでは音の滑らかさや広がりだけでなく、説明しにくいけど迫りくるような音の迫力というかパワー感に圧倒されます。JBLのスピーカー的というか、やはり65%広いという12mmの新しい振動板の面積がより広いので空気が多く動いている感じです。これで自然だけども聴いたことないような独特な迫力と躍動感があるように思います。
滑らかで広大で迫力あるというと味系というかまったりとした鳴りのイヤフォンの特徴にも聞こえるかもしれませんが、PerpetuaのすごいところはそれをDream並みの解像感、先鋭さと併せ持ってるところです。それがダニー氏が発表会で語ったテクニカルとエモーションの両立ということだと思う。

SP2000TとPerpetua
機材との相性でいうと、PerpetuaはA&K SP2000Tのチューブモードと合わせるとポタオデとは思えないような高品質かつ滑らかで豊かな音が楽しめます。ハイエンドスピーカーオーディオのミニチュア版が耳に入ってる感じで、聴いて心地よく情感(ダニーの言うエモーション)が感じられます。きわめてリアルで音楽的なサウンドです。
ほかにはACRO CA1000と相性がいい。やはり音の広がり感の良さですね。家で楽しむのにも良い。
これを書いている時もPerpetuaで聞いているのですが、時折キーを叩く手を止めて音楽に聞き入りたくなります。アメリカの現代音楽ユニット、Bang on a canのSteel Hammerを聞くと声や楽器の音色がリアルでかつ厚みがあり音楽の躍動感が感じられます。Steel Hammerは現代音楽だけれども決して冷めた音楽ではないことを教えてくれますが、同様にPerpetuaもテクニカルとエモーショナルは相反する物ではないことを教えてくれます。

開発の時に掲げたテクニカルとエモーションの調和というPerpetuaのテーマは十分に達成されていると思いますし、完成度が高く、節目にして到達点という感じさえします。それがPerpetuaです。

Perpetuaは先行販売と一般販売に分かれます。先行販売はDITA公式ストアおよびfinal STOREとフジヤエービックにて6月10日から開始されます。一般販売はその他の店で6月24日から開始されます。価格は428,000円(税込)の予定です。
* はじまり
先日のヘッドフォン祭におけるPerpetuaの発表会で、CEOダニー氏が語ったように全ては10年前から始まりました。
わたしが10年前のヘッドフォン祭(当時は青山)でうろうろしていたところ、HeadFi仲間から紹介したいイヤフオンがあると呼び出されて、そこに行ってみると数人のシンガポールから来たグループがいました。そこではじめてダニー氏と会ったわけです。デモ機を持参していましたのでその場で試してみました。
こうしたことはよくあって、私も責任があるのでうかつに国内紹介できないわけで慎重にしてはいました。DITAについては当時はあまりないようなその強気の価格設定にも驚きましたが、聴いてみると先鋭的でカチッとした精巧な音で、当時はまだ少なかったような本格的なサウンドに感銘を受けました。これは自分自身も欲しかった音で、マニアが欲しくなるようなサウンドだと思いました。そこで次のヘッドフォン祭に参加できるように尽力したというわけです。まず日本から成功させたいという情熱も良かったですね。

* Perpetua
Perpetua(永遠)に関してダニー氏は日比谷公園で美味しいトマトを食べながら、天啓的に音楽は技術だけではなく情感(emotion)が大事であると感じたそうです。そのためPerpetuaは10周年記念として技術的な進歩も大事だが、一方で情感がきちんと込められる製品にしたということ。技術的には悩みながらも決定した12mmの新型ドライバーがポイントで、直径にすると2mmの差ですが65%も振動板面積が広いとのこと。振動板にはDream XSでの複合術から、帝人の「TEONEX」という優れた強度特性をもつ特殊樹脂を新たに採用。
内部配線も新たに近藤オーディオノートジャパンの純度99.99%の純銀線を使用しています。
そしてPerpetuaはいままで作ったDITAのイヤフォンで最も左右の周波数特性マッチがタイトであるとのこと。


標準ケーブルも新規に設計され、信号経路は導体に高純度無酸素銅(PCOCC)を使用して芯線に6mmピッチで線材を巻き付ける特別仕様のコイル構造を採用した「コイル/オーバー」ケーブルが採用されています。
イヤフォン側端子はユニバーサル2ピン対応で、プレーヤー側端子はAwesome Plugの改良版である第2世代を採用しています。より強度が高く、太いケーブルに合わせて設計されています。

独特の丸みを帯びた筐体は軽量で高剛性のチタン筐体を採用。ロゴはサファイアガラス。
有機的で耳にフィットする人間工学に基づいた筐体形状
黒とシルバーにしたのは原点回帰を含んでいるということです。
キャリングケースには高い質感と使い心地に優れたイタリアンレザーを使用し、また蓋が空気圧でゆっくりと閉まるように計算して設計されたこだわりのキャニスターケース(アルミ切削加工)も付属している。
* インプレッション
Perpetuaのテーマであるエモーションはパッケージから感じられます。外箱は特徴的な引いて開けるタブが設けられていて、開けると10 years of DITAと表示が出てきます。

なにか古い旅行カバンを思わせる内箱にはポストカードが何枚も収納されています。中には空気圧でゆっくりと開け閉めできるキャニスターケースにイヤフオンが格納されており、レザーケースは工業製品的なファスナーではなく手作り工芸品を思わせるはめ込みボタンで留めるのも懐かしい感覚です。このようにパッケージからPerpetuaは「感触・感覚」をテーマにして作られているのがわかります。
イヤフオン本体を出してみるとさらにその「感触・感覚」が伝わるような独特の丸みを帯びた筐体や独特のデザインのケーブルに感じ入ってしまいます。ケーブルは太いのですが柔らかく取り回しには特に不自由はありません。

DITA PerpetuaはTruthからDreamへの先鋭的な進化路線とは異なる滑らかで柔らかく暖かみのある広大なサウンドが感じられます。まるでヘッドフォンが耳に入ってるかのようです。もちろん従来からの細かな音の鮮明さもその音世界の中で際立っています。
音の滑らかさはTwinsからProject71を経て進歩してきたと思います。ケーブルの影響も大きいように思いますが、かなり標準ケーブルの質がいい。
音の系統でいうと振動板がA8000系だった糸竹管弦とも異なる個性的な音です。
またPerpetuaは音の滑らかさもさることながら、予想を超えるところから音が出てくるような立体感も特徴的です。これはダニー氏が発表会で語ったような、今まででもっとも左右の特性マッチングがタイトであるという点も効いてるんでしょう。
Perpetuaでは音の滑らかさや広がりだけでなく、説明しにくいけど迫りくるような音の迫力というかパワー感に圧倒されます。JBLのスピーカー的というか、やはり65%広いという12mmの新しい振動板の面積がより広いので空気が多く動いている感じです。これで自然だけども聴いたことないような独特な迫力と躍動感があるように思います。
滑らかで広大で迫力あるというと味系というかまったりとした鳴りのイヤフォンの特徴にも聞こえるかもしれませんが、PerpetuaのすごいところはそれをDream並みの解像感、先鋭さと併せ持ってるところです。それがダニー氏が発表会で語ったテクニカルとエモーションの両立ということだと思う。


SP2000TとPerpetua
機材との相性でいうと、PerpetuaはA&K SP2000Tのチューブモードと合わせるとポタオデとは思えないような高品質かつ滑らかで豊かな音が楽しめます。ハイエンドスピーカーオーディオのミニチュア版が耳に入ってる感じで、聴いて心地よく情感(ダニーの言うエモーション)が感じられます。きわめてリアルで音楽的なサウンドです。
ほかにはACRO CA1000と相性がいい。やはり音の広がり感の良さですね。家で楽しむのにも良い。
これを書いている時もPerpetuaで聞いているのですが、時折キーを叩く手を止めて音楽に聞き入りたくなります。アメリカの現代音楽ユニット、Bang on a canのSteel Hammerを聞くと声や楽器の音色がリアルでかつ厚みがあり音楽の躍動感が感じられます。Steel Hammerは現代音楽だけれども決して冷めた音楽ではないことを教えてくれますが、同様にPerpetuaもテクニカルとエモーショナルは相反する物ではないことを教えてくれます。

開発の時に掲げたテクニカルとエモーションの調和というPerpetuaのテーマは十分に達成されていると思いますし、完成度が高く、節目にして到達点という感じさえします。それがPerpetuaです。
2022年05月25日
iFI Audioのハイエンドスティック型DAC、GO Barレビュー
ハイエンド志向のスティック型DAC。4.4mmバランス端子と3.5mm(S-balance)を装備。ライトニング対応でiPhoneでも使えます。
金属ボディがシックでデザインも良いですね。スマホと近くで使うものなので金属ボディだとRFインターフェアにも強そうで良いです。
小売価格は49,500円(税込)です。

* iFI GO Barの特徴
1 コンパクトで高音質
超高解像力で周波数特性もよく取れてます。

2 iFI技術の全部入り
IE MatchやXBassやXSpaceなどiFIこだわりのDSPでないアナログ信号処理技術もコンパクトながら全部入りです。

3 デジタルフィルターが効く
GTOだと内部アップサンプリングするのでサンプル表示も変わります。
4 MQAをフルデコードで対応
これもコンパクトながら良いところです。今はレンダラーはDACでやる手もありますが、フルデコードだとソフトウェア能力の高さが必要になります。ハードだけでなくソフト部分も優れてるのがiFIのポイントです。
* インプレション
Campfire audio ARAのバランス駆動で試聴。

透明感が極めて高く、コンパクトにしては音の広がりもよいです。すごく細かい音が鮮明に聞こえる解像度の高さが驚異的にさえ思うレベルです。
それとGo barの良い点としては音造りが良いです。コンパクトだと細身の音になりがちですが、GO Barでは厚みも感じられるくらい高級オーディオの音がします。ヘッドフォン祭で初めて聴いたときに「これってジョンカールが絡んでるんですか?」って聞いちゃったくらいです。さすがに本製品には絡んでないようですが、音は単にシャープなだけではなく高級感があるのがスティック型としてはポイントが高いと思います。
iFIらしくIE matchも効いてるのも良い点です。ARAみたいに高感度マルチBAのIEMの場合はボリューム下げるよりもIEmatchかけてボリューム上げた方がダイナミックレンジが広いので立体的に聞こえます。
ダイナミックドライバーの場合は逆にIEmatchがオフの方が力強さがあるように思いますね。
ただし音質を極めている反面で電力消費が激しいというところがあります。とはいえ、オーディオマニア的には音質に振り切れていたほうが良いように思います。

どんなハイエンドIEMを使っても十分に見合うようなハイクラスの音質がこんな小さなボディから出るのは驚きだし痛快でもあります。この先はiPhoneという点を考えると尚更です。
さらに高価なDAPとも音質では比肩できるくらいだと思いますし、スティック型DACにしては高いけど、高いだけある製品と言えると思います。
金属ボディがシックでデザインも良いですね。スマホと近くで使うものなので金属ボディだとRFインターフェアにも強そうで良いです。
小売価格は49,500円(税込)です。

* iFI GO Barの特徴
1 コンパクトで高音質
超高解像力で周波数特性もよく取れてます。

2 iFI技術の全部入り
IE MatchやXBassやXSpaceなどiFIこだわりのDSPでないアナログ信号処理技術もコンパクトながら全部入りです。

3 デジタルフィルターが効く
GTOだと内部アップサンプリングするのでサンプル表示も変わります。
4 MQAをフルデコードで対応
これもコンパクトながら良いところです。今はレンダラーはDACでやる手もありますが、フルデコードだとソフトウェア能力の高さが必要になります。ハードだけでなくソフト部分も優れてるのがiFIのポイントです。
* インプレション
Campfire audio ARAのバランス駆動で試聴。

透明感が極めて高く、コンパクトにしては音の広がりもよいです。すごく細かい音が鮮明に聞こえる解像度の高さが驚異的にさえ思うレベルです。
それとGo barの良い点としては音造りが良いです。コンパクトだと細身の音になりがちですが、GO Barでは厚みも感じられるくらい高級オーディオの音がします。ヘッドフォン祭で初めて聴いたときに「これってジョンカールが絡んでるんですか?」って聞いちゃったくらいです。さすがに本製品には絡んでないようですが、音は単にシャープなだけではなく高級感があるのがスティック型としてはポイントが高いと思います。
iFIらしくIE matchも効いてるのも良い点です。ARAみたいに高感度マルチBAのIEMの場合はボリューム下げるよりもIEmatchかけてボリューム上げた方がダイナミックレンジが広いので立体的に聞こえます。
ダイナミックドライバーの場合は逆にIEmatchがオフの方が力強さがあるように思いますね。
ただし音質を極めている反面で電力消費が激しいというところがあります。とはいえ、オーディオマニア的には音質に振り切れていたほうが良いように思います。

どんなハイエンドIEMを使っても十分に見合うようなハイクラスの音質がこんな小さなボディから出るのは驚きだし痛快でもあります。この先はiPhoneという点を考えると尚更です。
さらに高価なDAPとも音質では比肩できるくらいだと思いますし、スティック型DACにしては高いけど、高いだけある製品と言えると思います。
アスキーに「Knowlesが提唱する新しいターゲットカーブが登場、イヤホン音質の底上げを進めるか」の記事を執筆
アスキーに「Knowlesが提唱する新しいターゲットカーブが登場、イヤホン音質の底上げを進めるか」の記事を執筆しました。
https://ascii.jp/elem/000/004/092/4092169/
https://ascii.jp/elem/000/004/092/4092169/
2022年05月09日
Astell & Kern初の完全ワイヤレス、AK UW100レビュー
AK UW100はAstell&Kern初の完全ワイヤレスイヤフォンです。普通の完全ワイヤレスはオーディオ回路にSoC内蔵の回路をそのまま使用しています。UW100ではオーディオ回路にSoCとは独立したDACチップAK4332を搭載しています。また普通の完全ワイヤレスではダイナミックドライバーを使用するのですが、UW100はBAドライバーを使用しています。
この二点が際立った特徴となっています。ANCは搭載していません。音質特化型の完全ワイヤレスです。

* 外部DACを搭載するということ
普通の完全ワイヤレスイヤフォンでは本来は通信に使用するBluetoothのSoCチップに内蔵されているオーディオ回路を使用します。実はこの仕組みはUSB DACに似ています。

USB DACも初期の設計はPCM270xみたいなUSBコントローラーICにDAC機能がついてこれをそのまま使ってるものが多かったんですが、これでは性能が限られているのでそこからデジタル信号を引き出して専用DACを搭載したもので、USB DACがPCの周辺機器的なスタンスからオーディオ機器へと脱皮できました。(ちなみにUSBコントローラーICになぜDAC機能がついていたかというとバーブラウンの拡販戦略です)
BTレシーバーのDACを使わないで専用DACを持つAK UW100もそれに似てます。SoCではアナログ信号にしないでデジタルのまま引き出して専用のオーディオDACであるAK4332でアナログ化します。AK4332はもともと完全ワイヤレスを意識して設計されたモノラルDACでアンプ機能も含まれています。
* BAドライバーを搭載するということ
普通の完全ワイヤレスイヤフォンではダイナミックドライバーが用いられますが、そこにBAドライバーを用いることで様々なメリットが生まれます。
音質の傾向がダイナミックとBAでは異なるというのはもちろんで、これはAstell & Kernらしい音にするためには向いているでしょう。

そしてBAドライバーを採用することでダイナミックドライバーでは必要となるベント穴が不要となるという点も大きいと考えられます。というのはイヤモニでBAで使われる理由が主に完全密閉のモニターをつくるためであるということに似ているからです。(UW100のシェルの穴はマイク穴)
これはUW100がANCを採用していないという点に関連してきます。
静粛性を得ることはSNを上げるためにも有効です。つまり本来は音質向上にも有効です。しかしANCでノイズレベルを下げるには振動板自体を使用するので必ずしも音質向上に寄与できないのではないかという考え方もまたあります。
そこでUW100ではANCを使用せずにノイズを下げるために完全密閉型が可能となるBAドライバーを採用したのではないかと思えます。外で使うとたしかに他のANCなしモデルよりも静粛な感じはします。ANC並みとは言わないけど、特に電車の走行音とかかなり低減されてるように思います。

* インプレッション
箱は小さいけどずっしりしてます。いつものA&Kの丁重なパッケージです。

ケースは蓋のロックがきっちりしてるのもブランドらしい品質管理だと感心します。
ケースと本体ともにやや大きめですが、本体は割と軽く感じられます。大柄だけど耳の座りは良いです。角形のデザインが耳にうまく入る感じ。少し回すと確実に耳にロックされるポイントがあります。
ケースが大柄なのは良い点もあって、インスタチップを装着したままするっと入り充電もできます。普通はいってもけっこうギリギリですが。

実測で再生時間は6時間くらい。バッテリーゼロからフルチャージまでは約1時間半だと思います。
アンビエントモードが聞きやすいのも良い点。

音質は端的にかなりレベルが高い音で、全然エージングしないでもレベル高さを感じられるでしょう。
普通はちょっと聴いたらエージングに入れるけど、これは音があまり良いのでしばらく聴きたくなった製品の一つです。BAはあまりエージングで変わらないと言いますが、内部の回路もあるからそれなりにエージングしたほうが良いです。
中高域の楽器音や声がはっきりクッキリと明瞭感があるのはBAならではのサウンド、低音がソリッドで甘さがなくタイトで引き締まってるのもBAならではサウンドです。この辺はダイナミック型との違いを楽しめるでしょう。
音に曖昧さがない。ソリッドなBAの音で、音質面においてもBAの良さをうまく生かしていると思います。
高域は伸びやか鮮明でクリアだけど痛キツすぎないのがいいですね。ベルの音の響きもすっきりと美しいので高音域の歪み感も少ないと感じられます。ドラムスもBAらしく歯切れ良くスピード感あるのでロックポップも躍動感あります。ハイテンポの曲では足が勝手に動いてリズムとりたくなるくらい。
シングルだからワイドレンジ感は欲張ってないけど物足りないことはなく、むしろよくフルレンジBA1発でここまで出る感じではあります。
中音域はヴォーカルが浮き上がるように明瞭なのに感銘します。SHANTIの"Lotus flower"なんかは声が前に出て気持ちよく歌声を楽しめます。アニソンなんかではバッキングサウンドが多少ごちゃごちゃしてても歌詞がはっきり聞き取れるので良いと思う。特に最新のファームではいわゆる日本人好みの音に近いと思う。
シングルなので位相も揃って定位感もピンポイント、音の広がりの良さは空間に広がる感じが圧倒的なくらい良い。
DACの効果も高くて空気感があり、聴いててDAPで聴いてるような感じがします。細部の表現力、厚みとか豊かさを感じられます。普通Bluetoothワイヤレスは薄く軽く刺さる音ですが、AK UW100ではその反対に音の厚みとか重み豊かさといった項目が極めて高く感じられ、薄く軽くない音ですね。
耳の中にDAPが詰まってるような錯覚を覚えます。

有線と比べるも何も、有線でiPhoneから聴くよりも確実に音が良いです。仮にイヤフォン端子が残っていてもiPhoneから直だとそれなりに良いイヤフォン使ってもこういう音にはならないと思う。また有線イヤフォンに比べると配線やケーブル部分がないのでクロストークが少ないのか音場の広がりが良く楽器の定位がピンポイントです。これにはシングルで位相問題がないことも寄与してると思う。またDAC回路とドライバーが直結に近い超ショートシグナルパスのせいか音の鮮明感も高いですね。
むりやり高級イヤフォンをiPhoneに直挿ししても、よりワイドレンジやでかい低音は出るかもしれないけど、その音の細部は荒れて乾いてるはずです。そこがアンプやDACの良さが介在するオーディオ機器の領域だと思う。
その違いはiPhone直とiPhoneにスティック型DACを使ったくらいあると思うので、スマートフォンの音をよくするためにドングル型DACを使ってる人は確実に違いがわかると思う。その回路が耳に入ってるんですから多少大きくなっても仕方ないと思う。iPhoneの地の音質は凌駕してるので何かDAPと比べるべきかもしれません。

端的に言ってBAドライバー採用と外部DAC回路採用が両方とも際立って効いてると思う。BAのおかげでとても鮮明なサウンド、外部DAC回路のおかげで豊かで厚みあるオーディオ的なサウンドが楽しめます。
前者の方は一般コンシューマレベルでも違いが分かり、後者の方はオーディオファイルにありがたい違いとなるでしょう。
ANCなしにしては遮音性が良い。細かい音も消えにくいと思う。そうじてオーディオファイルでも納得できるレベルの音だと思う。
この外部DAC/アンプ方式の完全ワイヤレスがさらに他社でも採用されて欲しいとは思います。
この二点が際立った特徴となっています。ANCは搭載していません。音質特化型の完全ワイヤレスです。

* 外部DACを搭載するということ
普通の完全ワイヤレスイヤフォンでは本来は通信に使用するBluetoothのSoCチップに内蔵されているオーディオ回路を使用します。実はこの仕組みはUSB DACに似ています。

USB DACも初期の設計はPCM270xみたいなUSBコントローラーICにDAC機能がついてこれをそのまま使ってるものが多かったんですが、これでは性能が限られているのでそこからデジタル信号を引き出して専用DACを搭載したもので、USB DACがPCの周辺機器的なスタンスからオーディオ機器へと脱皮できました。(ちなみにUSBコントローラーICになぜDAC機能がついていたかというとバーブラウンの拡販戦略です)
BTレシーバーのDACを使わないで専用DACを持つAK UW100もそれに似てます。SoCではアナログ信号にしないでデジタルのまま引き出して専用のオーディオDACであるAK4332でアナログ化します。AK4332はもともと完全ワイヤレスを意識して設計されたモノラルDACでアンプ機能も含まれています。
* BAドライバーを搭載するということ
普通の完全ワイヤレスイヤフォンではダイナミックドライバーが用いられますが、そこにBAドライバーを用いることで様々なメリットが生まれます。
音質の傾向がダイナミックとBAでは異なるというのはもちろんで、これはAstell & Kernらしい音にするためには向いているでしょう。

そしてBAドライバーを採用することでダイナミックドライバーでは必要となるベント穴が不要となるという点も大きいと考えられます。というのはイヤモニでBAで使われる理由が主に完全密閉のモニターをつくるためであるということに似ているからです。(UW100のシェルの穴はマイク穴)
これはUW100がANCを採用していないという点に関連してきます。
静粛性を得ることはSNを上げるためにも有効です。つまり本来は音質向上にも有効です。しかしANCでノイズレベルを下げるには振動板自体を使用するので必ずしも音質向上に寄与できないのではないかという考え方もまたあります。
そこでUW100ではANCを使用せずにノイズを下げるために完全密閉型が可能となるBAドライバーを採用したのではないかと思えます。外で使うとたしかに他のANCなしモデルよりも静粛な感じはします。ANC並みとは言わないけど、特に電車の走行音とかかなり低減されてるように思います。

* インプレッション
箱は小さいけどずっしりしてます。いつものA&Kの丁重なパッケージです。



ケースは蓋のロックがきっちりしてるのもブランドらしい品質管理だと感心します。
ケースと本体ともにやや大きめですが、本体は割と軽く感じられます。大柄だけど耳の座りは良いです。角形のデザインが耳にうまく入る感じ。少し回すと確実に耳にロックされるポイントがあります。
ケースが大柄なのは良い点もあって、インスタチップを装着したままするっと入り充電もできます。普通はいってもけっこうギリギリですが。

実測で再生時間は6時間くらい。バッテリーゼロからフルチャージまでは約1時間半だと思います。
アンビエントモードが聞きやすいのも良い点。

音質は端的にかなりレベルが高い音で、全然エージングしないでもレベル高さを感じられるでしょう。
普通はちょっと聴いたらエージングに入れるけど、これは音があまり良いのでしばらく聴きたくなった製品の一つです。BAはあまりエージングで変わらないと言いますが、内部の回路もあるからそれなりにエージングしたほうが良いです。
中高域の楽器音や声がはっきりクッキリと明瞭感があるのはBAならではのサウンド、低音がソリッドで甘さがなくタイトで引き締まってるのもBAならではサウンドです。この辺はダイナミック型との違いを楽しめるでしょう。
音に曖昧さがない。ソリッドなBAの音で、音質面においてもBAの良さをうまく生かしていると思います。
高域は伸びやか鮮明でクリアだけど痛キツすぎないのがいいですね。ベルの音の響きもすっきりと美しいので高音域の歪み感も少ないと感じられます。ドラムスもBAらしく歯切れ良くスピード感あるのでロックポップも躍動感あります。ハイテンポの曲では足が勝手に動いてリズムとりたくなるくらい。
シングルだからワイドレンジ感は欲張ってないけど物足りないことはなく、むしろよくフルレンジBA1発でここまで出る感じではあります。
中音域はヴォーカルが浮き上がるように明瞭なのに感銘します。SHANTIの"Lotus flower"なんかは声が前に出て気持ちよく歌声を楽しめます。アニソンなんかではバッキングサウンドが多少ごちゃごちゃしてても歌詞がはっきり聞き取れるので良いと思う。特に最新のファームではいわゆる日本人好みの音に近いと思う。
シングルなので位相も揃って定位感もピンポイント、音の広がりの良さは空間に広がる感じが圧倒的なくらい良い。
DACの効果も高くて空気感があり、聴いててDAPで聴いてるような感じがします。細部の表現力、厚みとか豊かさを感じられます。普通Bluetoothワイヤレスは薄く軽く刺さる音ですが、AK UW100ではその反対に音の厚みとか重み豊かさといった項目が極めて高く感じられ、薄く軽くない音ですね。
耳の中にDAPが詰まってるような錯覚を覚えます。

有線と比べるも何も、有線でiPhoneから聴くよりも確実に音が良いです。仮にイヤフォン端子が残っていてもiPhoneから直だとそれなりに良いイヤフォン使ってもこういう音にはならないと思う。また有線イヤフォンに比べると配線やケーブル部分がないのでクロストークが少ないのか音場の広がりが良く楽器の定位がピンポイントです。これにはシングルで位相問題がないことも寄与してると思う。またDAC回路とドライバーが直結に近い超ショートシグナルパスのせいか音の鮮明感も高いですね。
むりやり高級イヤフォンをiPhoneに直挿ししても、よりワイドレンジやでかい低音は出るかもしれないけど、その音の細部は荒れて乾いてるはずです。そこがアンプやDACの良さが介在するオーディオ機器の領域だと思う。
その違いはiPhone直とiPhoneにスティック型DACを使ったくらいあると思うので、スマートフォンの音をよくするためにドングル型DACを使ってる人は確実に違いがわかると思う。その回路が耳に入ってるんですから多少大きくなっても仕方ないと思う。iPhoneの地の音質は凌駕してるので何かDAPと比べるべきかもしれません。

端的に言ってBAドライバー採用と外部DAC回路採用が両方とも際立って効いてると思う。BAのおかげでとても鮮明なサウンド、外部DAC回路のおかげで豊かで厚みあるオーディオ的なサウンドが楽しめます。
前者の方は一般コンシューマレベルでも違いが分かり、後者の方はオーディオファイルにありがたい違いとなるでしょう。
ANCなしにしては遮音性が良い。細かい音も消えにくいと思う。そうじてオーディオファイルでも納得できるレベルの音だと思う。
この外部DAC/アンプ方式の完全ワイヤレスがさらに他社でも採用されて欲しいとは思います。

2022年03月20日
新機軸を搭載した後継機、Chord Mojo2レビュー
Chord Mojo2とは先代のMojoから7年ぶりに発売された後継機です。開発は2018年に始まって、様々なプロトタイプを経て改良が重ねられました。

端的に言うとMojo2はMojoのサイズはそのままに、音質をさらに向上させて電源周りなど各部を改良し、USB-C端子やイコライザやクロスフィードなどの新機能を追加したものです。正統的な後継機と言えるでしょう。
DSPにはUHD DSP「ロスレスDSP」と呼ばれる新機軸が採用されています。
Mojoとサイズや端子は共通なのでPolyもそのまま使えます(ファームウエアについては最新を適用)。

* Mojo2の特徴
Mojo2は外観変わらないように見えて中身はけっこう手が入ってます。
なにげに大きいのが、新しくFPGA制御の充電回路を導入したことによってFPGAのポテンシャルが最大限に発揮されていることです。FPGAチップ自体はMojoと同じくザイリンクスのArtix-7 XC7A15Tですが、初代Mojoが電力制限のために限られた能力しか使用してなかったのに対して、電力改善によりフルキャパシティで能力が引き出せるようになりました。

内部的にはトランジェントのタイミングをより向上させたWTAフィルターにより、より良い音高と音色がもたらされ、微弱信号の精度を向上させたノイズシェーバーにより奥行き感の向上が行われています。
中核となるパルスアレイDACは40,960タップに解像力が向上してノイズシェーバーは改良型が使われています。これによって音の深みがより再現されるとのこと。しかしタップ数(解像力)だけではパルスアレイDACは語れません。
Mojo2のパルスアレイDAC自体は4eと呼ぶパルスアレイが4個あったMojoのenhancedバージョンです。バルスアレイ回路はFPGAチップ以外にも抵抗などアナログ部分がありますので、物理的なサイズによってパルスアレイの個数は制限を受けます。ここはパルスアレイが10個ある、よりサイズの大きなHugo2との差別化ポイントです。(バルスアレイDACについては以前のこちらの記事を参照ください)
http://vaiopocket.seesaa.net/article/448035198.html
一方でMojo2ではHugo2にない新基軸が追加されています。その心臓部となるのがUHD DSP「ロスレスDSP」です。
UHD DSPとは従来64bitで行われていたデジタル計算を104bitで行うことで聴感的な音質ロスがほぼなくなるというもので、クロスフィードやイコライザーなどに使用されます。このため音質低下を気にせずに積極的にイコライザーを使用することができます。
またMojo2ではボリュームがボリュームの範囲が広がって、ハイボリュームモードとローボリュームモードに分かれているのですがこれでもDSPが活用されています。これは高感度IEMのために設けられています。
Mojo2ではよりニュートラルなトーンバランスが目指されていて、このためにカップリングコンデンサーが廃止されています。コンデンサーはどうしても着色感がありますからね。ただ除去するだけだと出力側にDCが漏れて出力先を痛めるかもしれないのでMojo2ではDCサーボ回路が導入されています。
こうしてよりニュートラルなトーンバランスにしておいて、ユーザーが暖かみや明るさを欲しいときはUHD DSPを活用したイコライザーで"トランスペアレンシー(transparency = 後述)"を低下させずにトーンバランスを暖かくも明るくも変更可能です。
こうしてMojo2では機能が増えたためにメニューボタンが新設されています。これにより各ボタンは小さくなっていますが、より回りにくくなっていて誤動作防止も兼ねています。ボタンロック機能も追加されました。
メニューボタンから4段階のクロスフィード(オフ、最小、中程度、最大)やイコライザーが設定できます。クロスフィードのプログラムコードはHugo2と同じものが搭載されています。
外観的にはUSB-C端子が追加されていますが、Polyとも互換性を持っています。そのためにUSB-C端子はややオフセットして設けられています。
Mojo 2のUSB-C端子はこんな感じに差し込みます。

そのほかの入出力はMojoと同様に豊富なデジタル接続が用意されています。

電源ではFPGA 管理の新バッテリー充電システムにより充電の改良が行われ、バッテリー容量は9%増加しています。また新規追加されたインテリジェントデスクトップモードは据え置き用として電源を繋ぎっぱなしにした時にそれを物理的に切り離してバッテリーを過充電から守るというものです。
* Mojo2の目指すところ、トランスペアレンシー
Mojo2のデザインポリシーは"トランスペアレンシー(transparency)"を保つということです。
音のトランスペアレンシー/トランスペアレントはなかなか日本語にしにくい英語のオーディオ用語だと思います。transparentには透明という一般訳語があるので透明感って訳したくなるんですが、間違いではないけど意味合いはちょっと違うと思います。
ITでNetwork transparencyをネットワーク透過性と訳すけどこちらの透過に近いと思う。つまり入るものと出てくるものが足したり壊れたりせずに同じと言うことで、transparencyに一番近い日本語のオーディオ用語は意訳すると「原音忠実」ではないかと思います。デジタルドメインで言うビットパーフェクトに近い、アナログドメインの言葉がトランスペアレンシーとも言える感じです。
(ちなみに英語では「嘘偽りのない」という意味もあります。日本語的にはわかりにくいんですがtransparentとhonestは近い言葉なんです)
ロバート・ワッツによればトランスペアレンシーを得るために大事なポイントは3つあります。小信号の振幅の正確性、小信号の位相の正確性、ノイズフロア変動です。
いずれも微弱信号の正確性という点がキーとなり、その微弱信号とはDAVEの開発を通して-301dBの再現という値が設定されていたようです。ChordのDACは同じアーキテクチャで設計されているので、DAVEを頂点としていかにDAVEに近づくかがキーとなります。
* 「ロスレス」UHD DSPの導入
ワッツによるとMojo2ではMojoよりもよりニュートラルになったので、逆に温かみなど着色感がほしいユーザーに対してDSPを提供したいが、普通のDSPでは問題があります。
これまでの64bitのDSPではサウンドがトランスペアレントではなかったということです。解像力や音の奥行きが失われていて、サウンドが平板になり高音はギラギラとキツめでリスニングに疲労感をもたらしていました。
Mojo2で導入されたのが、104bitのDSPです。これもただビット幅を104bitにしただけではなく、デジタル処理の工夫も施されて微弱信号の正確さを実現したとのこと。
これはつまり-301dBという微弱な信号においてDSPを適用してある量を持ち上げ、同じ量を落として本来はゼロになるべきものが、実際はどの程度の計算誤差が生じるかということです。(計算誤差とは例えば1/3x3が元の1になるかということです)
結果としてトランスペアレンシーを確保する上で必要な-301dBの再現性を達成しているために実質上の「ロスレス」となるというわけです。
このUHD DSPを使用してデジタルボリュームやイコライザ、クロスフィードなどが実装されています。
Mojo 2のUHD DSPは実際の設定が分かりにくいと思いますので簡単に説明します。まず左図のような4つの領域があり、それぞれごとに+/-で1dBごとにアップダウンできます。
その4つを合成すると右図のようになり、各周波数で合計値を取ると右図の点線になります。これがイコライジングカーブになります。音についてはまた後述します。

* Polyとの接続
基本的にMojoはスマホやDAPともつながりますが、Polyとの使用がオススメです。

オリジナルのMojo/PolyケースにMojo2を入れると音量ボタンに干渉するので、そこを切ってみました。切るだけだと断面が白く残るのでボールペンで黒く塗ってます。この元からあったような一体感いい感じですね。Mojoとまったく同様に接続できて違和感もありません。
* Mojo2インプレと初代との比較

見た目には微妙にスマートになっていて一回り小さく見えるのですが、実際にはほぼ同じ大きさです。ただMojo 2のボタン類はかなり小さくなり、前よりも滑りにくいのでよりボタンらしくなってます。
基本的な音はMojoと同じく透明感が高く、かつ躍動感があるサウンドです。
箱開けてすぐ聞いても初代Mojoより情報量が多くなってるのがわかります。より線が細くなってる感じです。エージングを進めると音はさらに滑らかに自然になっていきます。この自然で高音質というのがChordらしい点かなと思います。

また、端的に言うと音がより上位機種に近づいて高級になったという感もあります。音の細やかさと情報量がだいぶ向上してるのでマルチBA機とかESTやプラナー使ったマルチドライバー機に向いてるように思います。
Mojo時代によく合わせてたacoustune HS1697tiと合わせると、Mojo2では音の細やかさと奥行き感がだいぶ向上してるのがわかります。旧Mojoと比べてみましたが、細かい音の抽出はFPGA同じと思えないくらい向上してる感じです。

Mojo2とacoustune HS1697ti
* 各イヤフォンとのインプレ
Mojo2にはAK ZERO1とも相性が極めて良いです。音がとても明瞭でクッキリはっきり聴こえて性能がよく引き出されてる感じがします。細かさだけでなく、低音の引き締まり方もいいですね。
ただフラットなAK ZERO1だと音楽によっては低音が物足りなくなります。そこでUHD DSPの出番です。たしかに音質が劣化する感はまったくないですね。
Mojo2とAK ZERO1
AK ZERO1はさらにFitearインスタチップをつけて音質アップしました。ZERO1はPDによるものか音になにか説明しにくい個性的な滑らかさと厚みがあって美しいサウンドが堪能できます。
インスタチップつけてブーストした分をUHD DSPで少し中高音と中低域を聴きやすく調整するのも簡単です。UHD DSPが体の一部になったみたいに馴染みます。
Mojo2にはFitear TG334もとても相性が良い感じです。クリアで透明感が高く、ピアノなどの楽器音もリアルに聞こえます。
なによりヴォーカルがとても聞こえやすくて、声が際立って明瞭に聞こえます。ここは特筆ものって言っていいかもしれません。イヤモニらしさを堪能できる組み合わせと言えますね。

Mojo2とTG334
アニソンやヴォーカルにはMojo2とFotear TG334がとてもすごく相性いい感じです。
怪しい北欧の音楽なんかでもパーカッションが引き締まってパンチあっていいです。それでちょっと低音をDSPで味付けして迫力あげたりと楽しめます。
TG334は素直な帯域特性なので、Mojo2のUHD DSPで自分なりの音を作って楽しむという目的にもぴったりかもしれません。
* UHD DSPについて
Mojo2での売りであるUHD DSPによるイコライザを試してみると二つ驚きがあります。その並外れた音質と、思ったよりも簡単に使えるという点です。

UHD DSPによるイコライザーの使用
普通のイコライザーだと音が劣化してても味濃くして誤魔化してるからまあいいかみたいな感じですが、Mojo2の場合は低域の細やかさやウッドベースの材質感もまったく変わらないで量感だけ増える、というか元からこうだったみたいな錯覚に陥ります。
わたしはイコライザーとかDSPってあまり使わないで機材の生音を楽しみたい派なんですが、Mojo2はその考えを変えてくれます。なにしろ機材の生音とDSPを適用した音の境目がないんですから。自分で設計を変えているような感覚でさえあります。
Mojo2のUHD DSPの使い方としては、一つは上で書いたようにTG334とかAK ZERO1みたいなフラットなイヤフォンを使って好みのサウンドにするというのと、もう一つは相性がいまひとつと思ったイヤフォンをDSPで調整して好みの音にするっていうのがあると思います。
いままでは機材の相性が良くないと、いかにイヤフオンの性能が良くてもその組み合わせは使わなかったんですが、Mojo2の場合にはUHD DSPを駆使して相性をよくしてしまうことさえ可能なように思います。
例えばMojo2とFir audio Five x Fiveを合わせた時に最初はいま一つかと思ったけど、UHD DSPでこねくり回してたらすごくいい感じになりました。それでちゃんとFive x Fiveの持ち味であるチューブレスの鮮明さとかATOM第二の鼓膜の開放感が浮き出てくるように個性発揮できるのがすごい点です。個性が分かる=トランスペアレンシーと言えるかもしれません。

Mojo2とFir audio Five x Five
万能マシンというと言い過ぎかもしれませんが、イヤフォンと再生機器の相性の問題に革新をもたらしてるような気さえするMojo2のUHD DSPはもうイコライザーの再発明と言っても過言ではないかも取れません。
そしてボタンだけだとやや難しいと思っていたイコライザーの操作も、やってみると以外と簡単でした。慣れるとマニュアルなしでもできます。メニューボタンで帯域選んでボリュームで上下です。
音のバランスはなかなかデリケートで、低域増やすとヴォーカル被りが増えるのはアナログ的な問題だからUHD DSPとは別の話です。そこで低域増やすと他も調整が必要になるかもしれません。
こうした音のバランスを変えていくのは開発のチューニング気分ですが、はじめから決めるよりも雑に決めて音楽聴きながらイコライザーの色のついた図を思い浮かべて赤領域を増やすかな〜黄領域を減らすかな〜と追い込むのがいいと思います。
Mojo2のメニューを使っててわからなくなったら、とりあえず手を離して放置すると10秒でトップに戻ります。これを覚えておくと便利です。
Mojo2のUHD DSPとイコライザーは音の良さと操作の簡単さで使う気にさせてくれるDSP・イコライザーと言えるでしょう。これ、ほんとに画期的です。
* まとめ
前のMojoは素の性能が良いので高評価を得ていたわけですが、Mojo 2はその基本面の向上に加えて、UHD DSPなど機能面で新味があるのでいじりがいが加わったと言えます。
価格的には以前のMojo(発売時価格73,440円)よりも発売時がやや高いのですが、いまのなんでも高くなった状況からすると据え置きと言っても良いようなレベルだと思います。Chord製品はポータブルでも安易に2や3を連発せずに一度すごいのを作ると長く持たせる点がハイエンドメーカーらしいのですが、今回のMojo2もまた長く持つことでしょう。
Mojo2では-301dBという微弱信号にハイエンド機器のDAVEなみにこだわった点もまたハイエンドオーディオメーカー製らしい点です。ハイエンドオーディオをポータブルにしたのがMojo2であるということを実感できることでしょう。


端的に言うとMojo2はMojoのサイズはそのままに、音質をさらに向上させて電源周りなど各部を改良し、USB-C端子やイコライザやクロスフィードなどの新機能を追加したものです。正統的な後継機と言えるでしょう。
DSPにはUHD DSP「ロスレスDSP」と呼ばれる新機軸が採用されています。
Mojoとサイズや端子は共通なのでPolyもそのまま使えます(ファームウエアについては最新を適用)。

* Mojo2の特徴
Mojo2は外観変わらないように見えて中身はけっこう手が入ってます。
なにげに大きいのが、新しくFPGA制御の充電回路を導入したことによってFPGAのポテンシャルが最大限に発揮されていることです。FPGAチップ自体はMojoと同じくザイリンクスのArtix-7 XC7A15Tですが、初代Mojoが電力制限のために限られた能力しか使用してなかったのに対して、電力改善によりフルキャパシティで能力が引き出せるようになりました。

内部的にはトランジェントのタイミングをより向上させたWTAフィルターにより、より良い音高と音色がもたらされ、微弱信号の精度を向上させたノイズシェーバーにより奥行き感の向上が行われています。
中核となるパルスアレイDACは40,960タップに解像力が向上してノイズシェーバーは改良型が使われています。これによって音の深みがより再現されるとのこと。しかしタップ数(解像力)だけではパルスアレイDACは語れません。
Mojo2のパルスアレイDAC自体は4eと呼ぶパルスアレイが4個あったMojoのenhancedバージョンです。バルスアレイ回路はFPGAチップ以外にも抵抗などアナログ部分がありますので、物理的なサイズによってパルスアレイの個数は制限を受けます。ここはパルスアレイが10個ある、よりサイズの大きなHugo2との差別化ポイントです。(バルスアレイDACについては以前のこちらの記事を参照ください)
http://vaiopocket.seesaa.net/article/448035198.html
一方でMojo2ではHugo2にない新基軸が追加されています。その心臓部となるのがUHD DSP「ロスレスDSP」です。
UHD DSPとは従来64bitで行われていたデジタル計算を104bitで行うことで聴感的な音質ロスがほぼなくなるというもので、クロスフィードやイコライザーなどに使用されます。このため音質低下を気にせずに積極的にイコライザーを使用することができます。
またMojo2ではボリュームがボリュームの範囲が広がって、ハイボリュームモードとローボリュームモードに分かれているのですがこれでもDSPが活用されています。これは高感度IEMのために設けられています。
Mojo2ではよりニュートラルなトーンバランスが目指されていて、このためにカップリングコンデンサーが廃止されています。コンデンサーはどうしても着色感がありますからね。ただ除去するだけだと出力側にDCが漏れて出力先を痛めるかもしれないのでMojo2ではDCサーボ回路が導入されています。
こうしてよりニュートラルなトーンバランスにしておいて、ユーザーが暖かみや明るさを欲しいときはUHD DSPを活用したイコライザーで"トランスペアレンシー(transparency = 後述)"を低下させずにトーンバランスを暖かくも明るくも変更可能です。
こうしてMojo2では機能が増えたためにメニューボタンが新設されています。これにより各ボタンは小さくなっていますが、より回りにくくなっていて誤動作防止も兼ねています。ボタンロック機能も追加されました。
メニューボタンから4段階のクロスフィード(オフ、最小、中程度、最大)やイコライザーが設定できます。クロスフィードのプログラムコードはHugo2と同じものが搭載されています。
外観的にはUSB-C端子が追加されていますが、Polyとも互換性を持っています。そのためにUSB-C端子はややオフセットして設けられています。
Mojo 2のUSB-C端子はこんな感じに差し込みます。

そのほかの入出力はMojoと同様に豊富なデジタル接続が用意されています。

電源ではFPGA 管理の新バッテリー充電システムにより充電の改良が行われ、バッテリー容量は9%増加しています。また新規追加されたインテリジェントデスクトップモードは据え置き用として電源を繋ぎっぱなしにした時にそれを物理的に切り離してバッテリーを過充電から守るというものです。
* Mojo2の目指すところ、トランスペアレンシー
Mojo2のデザインポリシーは"トランスペアレンシー(transparency)"を保つということです。
音のトランスペアレンシー/トランスペアレントはなかなか日本語にしにくい英語のオーディオ用語だと思います。transparentには透明という一般訳語があるので透明感って訳したくなるんですが、間違いではないけど意味合いはちょっと違うと思います。
ITでNetwork transparencyをネットワーク透過性と訳すけどこちらの透過に近いと思う。つまり入るものと出てくるものが足したり壊れたりせずに同じと言うことで、transparencyに一番近い日本語のオーディオ用語は意訳すると「原音忠実」ではないかと思います。デジタルドメインで言うビットパーフェクトに近い、アナログドメインの言葉がトランスペアレンシーとも言える感じです。
(ちなみに英語では「嘘偽りのない」という意味もあります。日本語的にはわかりにくいんですがtransparentとhonestは近い言葉なんです)
ロバート・ワッツによればトランスペアレンシーを得るために大事なポイントは3つあります。小信号の振幅の正確性、小信号の位相の正確性、ノイズフロア変動です。
いずれも微弱信号の正確性という点がキーとなり、その微弱信号とはDAVEの開発を通して-301dBの再現という値が設定されていたようです。ChordのDACは同じアーキテクチャで設計されているので、DAVEを頂点としていかにDAVEに近づくかがキーとなります。
* 「ロスレス」UHD DSPの導入
ワッツによるとMojo2ではMojoよりもよりニュートラルになったので、逆に温かみなど着色感がほしいユーザーに対してDSPを提供したいが、普通のDSPでは問題があります。
これまでの64bitのDSPではサウンドがトランスペアレントではなかったということです。解像力や音の奥行きが失われていて、サウンドが平板になり高音はギラギラとキツめでリスニングに疲労感をもたらしていました。
Mojo2で導入されたのが、104bitのDSPです。これもただビット幅を104bitにしただけではなく、デジタル処理の工夫も施されて微弱信号の正確さを実現したとのこと。
これはつまり-301dBという微弱な信号においてDSPを適用してある量を持ち上げ、同じ量を落として本来はゼロになるべきものが、実際はどの程度の計算誤差が生じるかということです。(計算誤差とは例えば1/3x3が元の1になるかということです)
結果としてトランスペアレンシーを確保する上で必要な-301dBの再現性を達成しているために実質上の「ロスレス」となるというわけです。
このUHD DSPを使用してデジタルボリュームやイコライザ、クロスフィードなどが実装されています。
Mojo 2のUHD DSPは実際の設定が分かりにくいと思いますので簡単に説明します。まず左図のような4つの領域があり、それぞれごとに+/-で1dBごとにアップダウンできます。
その4つを合成すると右図のようになり、各周波数で合計値を取ると右図の点線になります。これがイコライジングカーブになります。音についてはまた後述します。


* Polyとの接続
基本的にMojoはスマホやDAPともつながりますが、Polyとの使用がオススメです。


オリジナルのMojo/PolyケースにMojo2を入れると音量ボタンに干渉するので、そこを切ってみました。切るだけだと断面が白く残るのでボールペンで黒く塗ってます。この元からあったような一体感いい感じですね。Mojoとまったく同様に接続できて違和感もありません。
* Mojo2インプレと初代との比較


見た目には微妙にスマートになっていて一回り小さく見えるのですが、実際にはほぼ同じ大きさです。ただMojo 2のボタン類はかなり小さくなり、前よりも滑りにくいのでよりボタンらしくなってます。
基本的な音はMojoと同じく透明感が高く、かつ躍動感があるサウンドです。
箱開けてすぐ聞いても初代Mojoより情報量が多くなってるのがわかります。より線が細くなってる感じです。エージングを進めると音はさらに滑らかに自然になっていきます。この自然で高音質というのがChordらしい点かなと思います。


また、端的に言うと音がより上位機種に近づいて高級になったという感もあります。音の細やかさと情報量がだいぶ向上してるのでマルチBA機とかESTやプラナー使ったマルチドライバー機に向いてるように思います。
Mojo時代によく合わせてたacoustune HS1697tiと合わせると、Mojo2では音の細やかさと奥行き感がだいぶ向上してるのがわかります。旧Mojoと比べてみましたが、細かい音の抽出はFPGA同じと思えないくらい向上してる感じです。

Mojo2とacoustune HS1697ti
* 各イヤフォンとのインプレ
Mojo2にはAK ZERO1とも相性が極めて良いです。音がとても明瞭でクッキリはっきり聴こえて性能がよく引き出されてる感じがします。細かさだけでなく、低音の引き締まり方もいいですね。
ただフラットなAK ZERO1だと音楽によっては低音が物足りなくなります。そこでUHD DSPの出番です。たしかに音質が劣化する感はまったくないですね。

Mojo2とAK ZERO1
AK ZERO1はさらにFitearインスタチップをつけて音質アップしました。ZERO1はPDによるものか音になにか説明しにくい個性的な滑らかさと厚みがあって美しいサウンドが堪能できます。
インスタチップつけてブーストした分をUHD DSPで少し中高音と中低域を聴きやすく調整するのも簡単です。UHD DSPが体の一部になったみたいに馴染みます。
Mojo2にはFitear TG334もとても相性が良い感じです。クリアで透明感が高く、ピアノなどの楽器音もリアルに聞こえます。
なによりヴォーカルがとても聞こえやすくて、声が際立って明瞭に聞こえます。ここは特筆ものって言っていいかもしれません。イヤモニらしさを堪能できる組み合わせと言えますね。

Mojo2とTG334
アニソンやヴォーカルにはMojo2とFotear TG334がとてもすごく相性いい感じです。
怪しい北欧の音楽なんかでもパーカッションが引き締まってパンチあっていいです。それでちょっと低音をDSPで味付けして迫力あげたりと楽しめます。
TG334は素直な帯域特性なので、Mojo2のUHD DSPで自分なりの音を作って楽しむという目的にもぴったりかもしれません。
* UHD DSPについて
Mojo2での売りであるUHD DSPによるイコライザを試してみると二つ驚きがあります。その並外れた音質と、思ったよりも簡単に使えるという点です。


UHD DSPによるイコライザーの使用
普通のイコライザーだと音が劣化してても味濃くして誤魔化してるからまあいいかみたいな感じですが、Mojo2の場合は低域の細やかさやウッドベースの材質感もまったく変わらないで量感だけ増える、というか元からこうだったみたいな錯覚に陥ります。
わたしはイコライザーとかDSPってあまり使わないで機材の生音を楽しみたい派なんですが、Mojo2はその考えを変えてくれます。なにしろ機材の生音とDSPを適用した音の境目がないんですから。自分で設計を変えているような感覚でさえあります。
Mojo2のUHD DSPの使い方としては、一つは上で書いたようにTG334とかAK ZERO1みたいなフラットなイヤフォンを使って好みのサウンドにするというのと、もう一つは相性がいまひとつと思ったイヤフォンをDSPで調整して好みの音にするっていうのがあると思います。
いままでは機材の相性が良くないと、いかにイヤフオンの性能が良くてもその組み合わせは使わなかったんですが、Mojo2の場合にはUHD DSPを駆使して相性をよくしてしまうことさえ可能なように思います。
例えばMojo2とFir audio Five x Fiveを合わせた時に最初はいま一つかと思ったけど、UHD DSPでこねくり回してたらすごくいい感じになりました。それでちゃんとFive x Fiveの持ち味であるチューブレスの鮮明さとかATOM第二の鼓膜の開放感が浮き出てくるように個性発揮できるのがすごい点です。個性が分かる=トランスペアレンシーと言えるかもしれません。

Mojo2とFir audio Five x Five
万能マシンというと言い過ぎかもしれませんが、イヤフォンと再生機器の相性の問題に革新をもたらしてるような気さえするMojo2のUHD DSPはもうイコライザーの再発明と言っても過言ではないかも取れません。
そしてボタンだけだとやや難しいと思っていたイコライザーの操作も、やってみると以外と簡単でした。慣れるとマニュアルなしでもできます。メニューボタンで帯域選んでボリュームで上下です。
音のバランスはなかなかデリケートで、低域増やすとヴォーカル被りが増えるのはアナログ的な問題だからUHD DSPとは別の話です。そこで低域増やすと他も調整が必要になるかもしれません。
こうした音のバランスを変えていくのは開発のチューニング気分ですが、はじめから決めるよりも雑に決めて音楽聴きながらイコライザーの色のついた図を思い浮かべて赤領域を増やすかな〜黄領域を減らすかな〜と追い込むのがいいと思います。
Mojo2のメニューを使っててわからなくなったら、とりあえず手を離して放置すると10秒でトップに戻ります。これを覚えておくと便利です。
Mojo2のUHD DSPとイコライザーは音の良さと操作の簡単さで使う気にさせてくれるDSP・イコライザーと言えるでしょう。これ、ほんとに画期的です。
* まとめ
前のMojoは素の性能が良いので高評価を得ていたわけですが、Mojo 2はその基本面の向上に加えて、UHD DSPなど機能面で新味があるのでいじりがいが加わったと言えます。
価格的には以前のMojo(発売時価格73,440円)よりも発売時がやや高いのですが、いまのなんでも高くなった状況からすると据え置きと言っても良いようなレベルだと思います。Chord製品はポータブルでも安易に2や3を連発せずに一度すごいのを作ると長く持たせる点がハイエンドメーカーらしいのですが、今回のMojo2もまた長く持つことでしょう。
Mojo2では-301dBという微弱信号にハイエンド機器のDAVEなみにこだわった点もまたハイエンドオーディオメーカー製らしい点です。ハイエンドオーディオをポータブルにしたのがMojo2であるということを実感できることでしょう。

2022年03月04日
W2の進化形、L&P W2-131レビュー
LUXURY & PRECISION W2に第二世代としてW2-131が登場しました。オープン価格で、実売想定価格は42,900円(税込)です。
メーカーリンクはこちらです。
https://www.cyras.jp/140021.html

W2-131はいわゆるドングル型のDAC内蔵ヘッドフォンアンプで、スマートフォンと組み合わせるのに好適な機種です。スマートフォンとはUSB-C接続ですが、ライトニング用のケーブルも付属します。W2とは基本機能は同じで、イコライザー設定も多く用意され、さらにDACフィルター設定が可能、さらにチューニングによる音色の切り替えもできるなど多機能、また入出力のサンプルとは液晶画面で確認が可能です。
前モデルのW2については下記にレビューを書いていますのでこちらも参照ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/481684789.html
W2-131での改良点は以下の通りです。
1 DACチップがW2ではCS43198が2基から、CS43131が2基に変更(名称由来です)。
CS43131にはチップ内にヘッドフォンアンプ回路が組み込まれていますが、W2-131ではさらなるハイパワーを目指してDAC内の回路ではなく独立したアンプ回路を搭載しているということです。その結果として先代のW2よりも高出力を達成しているとのことです。
2 本体色がブラックからにブルー(プルシアンブルー)に変わった
3 バランス接続時の出力がアップ
4 消費電力の低減とより長時間の再生が可能となった
* インプレッション

本体の大きさはW2と同一で、使い勝手も変わりません。ただしカラーリングが異なっていて青が基調のデザインとなっています。背面もカーボン調だったW2とは異なってW2-131ではシンプルなデザインになっています。

一番違うのはW2では液晶パネルの枠が電源オフでも見えていたのに、W2-131ではフレームと同一化して見えなくなっているということです。これは見た目に大きな差になっています。同梱アクセサリーなどは同じです。

iPhone12 Proと組み合わせて聞いてみます。W2同様にUSB-C用のケーブルの他にライトニングケーブルが付属しているので極めて簡単に接続ができます。これがないとLightning ー USBカメラアダプターを使用することになるので接続が面倒になります。
イヤフォンはW2の時と同様にCampfire AudioのARAを4.4mmバランス端子に接続して試聴しました。接続は簡単で、USBケーブルをスマホに接続してイヤフォンを端子に接続するだけで使用ができます。悩むところはありません。ただし出力が大きいので、小型だと侮らずに音出しをする前にゲインの設定をしてボリューム音量を下げておいたほうが良いです。

W2-131でiPhone内蔵のハイレゾ音源を聞いてみると、やはり小型DACとは思えないような鋭く鮮明で解像力が高いサウンドですが、W2よりも力強さが加わったように思います。ギターを爪弾く時やドラムを連打するときなど随所でより力感を感じられます。音にスヒード感がある点は同じですが、楽器の歯切れの良さがさらに良くなっているように感じられます。W2は端正で鮮明な音なので器楽曲やジャズに向いた感じでしたが、よりロックやポップに向いた音になった感じに思います。
実際に第一世代のW2とこのW2-131を比較試聴してみると、W2-131の音の方がかなり力強さがあり、よりパワフルな音再現に感じられます。これはTuneモードによらずに同じ傾向です。
基本的な音色自体は両方共ほぼ同じでL&Pらしい付帯色の少ない忠実な音色再現です。基本的な音はニュートラルなので、豊富なイコライザー機能を使うことでより自分好みの音に近づけることができるでしょう。

3.5mm端子でも十分に素晴らしい音質で楽しめますが、やはり真価を発揮するのは4.4mmバランスで聴いたときです。空間的な広がりもいっそうよくなります。解像力は極めて高くてかなり細かい音も拾います。
音質レベルは極めて高いのでハイエンドイヤフォンを組み合わせても満足いくでしょう。正直この大きさでこの音、さらにバスパワー動作というのはちょっと信じられないくらいではあります。アクセサリーには厳しいiPhoneですからね。
ハイレゾ・ストリーミング再生も試してみましたが、やはり素晴らしい音質で楽しむことができます。Macにも使用してみましたが、同様に簡単に接続してあっさり音が出ます。仕事をしながら使うにもいいですね。
* まとめ
W2-131はW2の特徴であるコンパクトで多機能、そして音の良さという点はそのまま引き継いで、音がより力強くなった新モデルだと言えます。バランスでの音の良さは特筆もので、iPhoneに向いたライトニングケーブルが同梱されているので、iPhoneでストリーミングを高音質で楽しみたいという場合にお勧めです。
メーカーリンクはこちらです。
https://www.cyras.jp/140021.html

W2-131はいわゆるドングル型のDAC内蔵ヘッドフォンアンプで、スマートフォンと組み合わせるのに好適な機種です。スマートフォンとはUSB-C接続ですが、ライトニング用のケーブルも付属します。W2とは基本機能は同じで、イコライザー設定も多く用意され、さらにDACフィルター設定が可能、さらにチューニングによる音色の切り替えもできるなど多機能、また入出力のサンプルとは液晶画面で確認が可能です。
前モデルのW2については下記にレビューを書いていますのでこちらも参照ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/481684789.html
W2-131での改良点は以下の通りです。
1 DACチップがW2ではCS43198が2基から、CS43131が2基に変更(名称由来です)。
CS43131にはチップ内にヘッドフォンアンプ回路が組み込まれていますが、W2-131ではさらなるハイパワーを目指してDAC内の回路ではなく独立したアンプ回路を搭載しているということです。その結果として先代のW2よりも高出力を達成しているとのことです。
2 本体色がブラックからにブルー(プルシアンブルー)に変わった
3 バランス接続時の出力がアップ
4 消費電力の低減とより長時間の再生が可能となった
* インプレッション

本体の大きさはW2と同一で、使い勝手も変わりません。ただしカラーリングが異なっていて青が基調のデザインとなっています。背面もカーボン調だったW2とは異なってW2-131ではシンプルなデザインになっています。


一番違うのはW2では液晶パネルの枠が電源オフでも見えていたのに、W2-131ではフレームと同一化して見えなくなっているということです。これは見た目に大きな差になっています。同梱アクセサリーなどは同じです。

iPhone12 Proと組み合わせて聞いてみます。W2同様にUSB-C用のケーブルの他にライトニングケーブルが付属しているので極めて簡単に接続ができます。これがないとLightning ー USBカメラアダプターを使用することになるので接続が面倒になります。
イヤフォンはW2の時と同様にCampfire AudioのARAを4.4mmバランス端子に接続して試聴しました。接続は簡単で、USBケーブルをスマホに接続してイヤフォンを端子に接続するだけで使用ができます。悩むところはありません。ただし出力が大きいので、小型だと侮らずに音出しをする前にゲインの設定をしてボリューム音量を下げておいたほうが良いです。

W2-131でiPhone内蔵のハイレゾ音源を聞いてみると、やはり小型DACとは思えないような鋭く鮮明で解像力が高いサウンドですが、W2よりも力強さが加わったように思います。ギターを爪弾く時やドラムを連打するときなど随所でより力感を感じられます。音にスヒード感がある点は同じですが、楽器の歯切れの良さがさらに良くなっているように感じられます。W2は端正で鮮明な音なので器楽曲やジャズに向いた感じでしたが、よりロックやポップに向いた音になった感じに思います。
実際に第一世代のW2とこのW2-131を比較試聴してみると、W2-131の音の方がかなり力強さがあり、よりパワフルな音再現に感じられます。これはTuneモードによらずに同じ傾向です。
基本的な音色自体は両方共ほぼ同じでL&Pらしい付帯色の少ない忠実な音色再現です。基本的な音はニュートラルなので、豊富なイコライザー機能を使うことでより自分好みの音に近づけることができるでしょう。

3.5mm端子でも十分に素晴らしい音質で楽しめますが、やはり真価を発揮するのは4.4mmバランスで聴いたときです。空間的な広がりもいっそうよくなります。解像力は極めて高くてかなり細かい音も拾います。
音質レベルは極めて高いのでハイエンドイヤフォンを組み合わせても満足いくでしょう。正直この大きさでこの音、さらにバスパワー動作というのはちょっと信じられないくらいではあります。アクセサリーには厳しいiPhoneですからね。
ハイレゾ・ストリーミング再生も試してみましたが、やはり素晴らしい音質で楽しむことができます。Macにも使用してみましたが、同様に簡単に接続してあっさり音が出ます。仕事をしながら使うにもいいですね。
* まとめ
W2-131はW2の特徴であるコンパクトで多機能、そして音の良さという点はそのまま引き継いで、音がより力強くなった新モデルだと言えます。バランスでの音の良さは特筆もので、iPhoneに向いたライトニングケーブルが同梱されているので、iPhoneでストリーミングを高音質で楽しみたいという場合にお勧めです。
2022年02月24日
2022年02月16日
CHORD Mojo 2国内リリース決定
先代のMojoから7年ぶりに待望の後継機Mojo 2が登場します。

Mojo2は簡単に言うとMojoのサイズはそのままに、音質をさらに向上させて電源周りなど各部を改良し、USB-C端子やUHD DSPなどの新機能を追加したものです。正統的な後継機と言えるでしょう。Mojoとサイズや端子は共通なのでPolyもそのまま使えます(ファームウエアについては最新を適用)。

外観的にはUSB-C端子が追加され、様々な機能を管理するために4つめのボタンとしてメニューボタンが追加されています。これによりミュート機能、4 段階クロスフィード機能(Hugo2と同じアルゴリズム)、ボタンロック機能が可能となります。
新規追加されたUHD DSPとは従来64bitで行われていたデジタル計算を104bitで行うことで聴感的な音質ロスがほぼなくなるというもので、主にクロスフィードとイコライザーに使用されます。このため音質低下を気にせずに積極的にイコライザーを使用することができます。
またMojo2ではボリュームがハイボリュームモードとローボリュームモードに分かれているのですがこれでもDSPが活用されています。

内部的には中核となるパルスアレイDACは40,960 タップに解像力が向上してノイズシェーバーは改良型が使われています。FPGAは引き続き剤リンクスArtix-7が使われていますが、Mojo2では電源の改良でフルキャパシティで使えるようになったので能力が向上しているようです。
またカップリングコンデンサーが廃止されています。これによっておそらく着色感もより少ないでしょう。
電源ではFPGA 管理の新バッテリー充電システムにより充電の改良が行われ、バッテリー容量は9%増加しています。また新規追加されたインテリジェントデスクトップモードは据え置き用として電源を繋ぎっぱなしにした時にそれを物理的に切り離してバッテリーを過充電から守るというものです。

本革を使用したMojo 2専用ケースはジョンフランクスによってデザインされてもので、新しい4ボタンに対応しています。
やはり本革を使用したMojo 2 PolyケースはPolyと合体するためのケースで以前のものよりも高級なようですね。

発売日は2 月25 日(金)で先行予約の受付開始日が2 月18 日(金)11:00からとなります。価格は79,980 円(税込み)で、同時発売のMojo2用のケースが7,980 円(税込み)、PolyとMojo2の一体型ケースが12,980 円(税込み)です。
参考リンクは以下のとおりです。
Mojo 2 製品ページURL:https://www.aiuto-jp.co.jp/products/product_3843.php
Mojo 2 Case 製品ページURL:https://www.aiuto-jp.co.jp/products/product_3870.php
Mojo 2 Poly Case 製品ページURL:https://www.aiuto-jp.co.jp/products/product_3871.php
販売はアユート直販サイト「アキハバラe 市場」及び「e☆イヤホン」「フジヤエービック」(50 音順)他、日本国
内正規取扱販売店において扱われるということです。

Mojo2は簡単に言うとMojoのサイズはそのままに、音質をさらに向上させて電源周りなど各部を改良し、USB-C端子やUHD DSPなどの新機能を追加したものです。正統的な後継機と言えるでしょう。Mojoとサイズや端子は共通なのでPolyもそのまま使えます(ファームウエアについては最新を適用)。


外観的にはUSB-C端子が追加され、様々な機能を管理するために4つめのボタンとしてメニューボタンが追加されています。これによりミュート機能、4 段階クロスフィード機能(Hugo2と同じアルゴリズム)、ボタンロック機能が可能となります。
新規追加されたUHD DSPとは従来64bitで行われていたデジタル計算を104bitで行うことで聴感的な音質ロスがほぼなくなるというもので、主にクロスフィードとイコライザーに使用されます。このため音質低下を気にせずに積極的にイコライザーを使用することができます。
またMojo2ではボリュームがハイボリュームモードとローボリュームモードに分かれているのですがこれでもDSPが活用されています。
内部的には中核となるパルスアレイDACは40,960 タップに解像力が向上してノイズシェーバーは改良型が使われています。FPGAは引き続き剤リンクスArtix-7が使われていますが、Mojo2では電源の改良でフルキャパシティで使えるようになったので能力が向上しているようです。
またカップリングコンデンサーが廃止されています。これによっておそらく着色感もより少ないでしょう。
電源ではFPGA 管理の新バッテリー充電システムにより充電の改良が行われ、バッテリー容量は9%増加しています。また新規追加されたインテリジェントデスクトップモードは据え置き用として電源を繋ぎっぱなしにした時にそれを物理的に切り離してバッテリーを過充電から守るというものです。

本革を使用したMojo 2専用ケースはジョンフランクスによってデザインされてもので、新しい4ボタンに対応しています。
やはり本革を使用したMojo 2 PolyケースはPolyと合体するためのケースで以前のものよりも高級なようですね。


発売日は2 月25 日(金)で先行予約の受付開始日が2 月18 日(金)11:00からとなります。価格は79,980 円(税込み)で、同時発売のMojo2用のケースが7,980 円(税込み)、PolyとMojo2の一体型ケースが12,980 円(税込み)です。
参考リンクは以下のとおりです。
Mojo 2 製品ページURL:https://www.aiuto-jp.co.jp/products/product_3843.php
Mojo 2 Case 製品ページURL:https://www.aiuto-jp.co.jp/products/product_3870.php
Mojo 2 Poly Case 製品ページURL:https://www.aiuto-jp.co.jp/products/product_3871.php
販売はアユート直販サイト「アキハバラe 市場」及び「e☆イヤホン」「フジヤエービック」(50 音順)他、日本国
内正規取扱販売店において扱われるということです。
2022年02月04日
ロバートワッツがMojo 2を語る
Mojo 2に関するDarkoとロバートワッツの対談がアップされています。
52分にわたりDarkoがロブワッツにインタビューする形式ですが、興味を引いたところを少し書きだします。
https://soundcloud.com/johnhdarko/rob-watts-on-the-chord-mojo-2?utm_source=clipboard&utm_medium=text&utm_campaign=social_sharing
Mojo2は2018年から4年かけて5つくらいのPCBデザインを試作した。(普通は2-3年のよう)
768kHzまで対応させたのはM Scalerを考慮してのこと。これには将来的にM Scalerが小型化することを見据えているようです。
Wattsが考えるDAC設計で重要なのは3点で、まず低シグナルの解像力・細かさ、測定できるようなノイズフロアモジュレーションがない(背景ノイズが低い)こと、トランジェントのタイミングの正確な再現(楽器の音色再現に重要で、これが他のDACとの一番の違いと言っている)。
FPGAはデジタルチップであり、DAコンバージョンはフリップフロップと抵抗のディスクリート回路で行われる。このためにノイズを切り離すことができる。
アンプなどのアナログ回路は先代と大きな違いはないが、パワーサプライが大きく変わっている。充電においてインテリジェントデスクトップモードが追加された。インテリジェントデスクトップモードにより、フルにチャージされると物理的にバッテリーが切り離される。これによってMojoをデスクトップにおいて電源を繋ぎっぱなしでもバッテリーが痛むことが少ない(ユーザー要求のよう)。これによってバッテリーの劣化による音質低下も防げる。
なぜUHD DSPをロスレスというかというと、従来の64bitのDSP処理では問題があり、例えばPCですべて+1dB設定にして、ボリュームを-1dBにすると変わらないはずだが、実際の出音は違う。これは64bit浮動小数点計算自体がノイズを生む元であり、極小シグナルの取り扱いがうまくないのでフェイズシフトも起こる。
このためDSPコアは64bitではなく104bitにした。これはFPGAならではということ。テストしても音質の低下が認められないのでロスレスと言っている。
Mojo2ではFPGAをフルキャパシティで使っている。前はリミテッドだった。タップ数は40,960。これはパワーマネージメントの改善によるもの(FPGAは同じよう)。これによってデジタルフィルターの向上、EQ追加ができた。クロスフィードはHugo2と同じコード。
Mojo2では低音がよりタイトになり、音場感とリゾリューションがよく聞こえるはず。
顧客の好みのサウンド傾向があるのでロスレスDSPによるイコライザーで音を積極的に変えて欲しい(それが製品の正しい評価にもつながる)。
52分にわたりDarkoがロブワッツにインタビューする形式ですが、興味を引いたところを少し書きだします。
https://soundcloud.com/johnhdarko/rob-watts-on-the-chord-mojo-2?utm_source=clipboard&utm_medium=text&utm_campaign=social_sharing
Mojo2は2018年から4年かけて5つくらいのPCBデザインを試作した。(普通は2-3年のよう)
768kHzまで対応させたのはM Scalerを考慮してのこと。これには将来的にM Scalerが小型化することを見据えているようです。
Wattsが考えるDAC設計で重要なのは3点で、まず低シグナルの解像力・細かさ、測定できるようなノイズフロアモジュレーションがない(背景ノイズが低い)こと、トランジェントのタイミングの正確な再現(楽器の音色再現に重要で、これが他のDACとの一番の違いと言っている)。
FPGAはデジタルチップであり、DAコンバージョンはフリップフロップと抵抗のディスクリート回路で行われる。このためにノイズを切り離すことができる。
アンプなどのアナログ回路は先代と大きな違いはないが、パワーサプライが大きく変わっている。充電においてインテリジェントデスクトップモードが追加された。インテリジェントデスクトップモードにより、フルにチャージされると物理的にバッテリーが切り離される。これによってMojoをデスクトップにおいて電源を繋ぎっぱなしでもバッテリーが痛むことが少ない(ユーザー要求のよう)。これによってバッテリーの劣化による音質低下も防げる。
なぜUHD DSPをロスレスというかというと、従来の64bitのDSP処理では問題があり、例えばPCですべて+1dB設定にして、ボリュームを-1dBにすると変わらないはずだが、実際の出音は違う。これは64bit浮動小数点計算自体がノイズを生む元であり、極小シグナルの取り扱いがうまくないのでフェイズシフトも起こる。
このためDSPコアは64bitではなく104bitにした。これはFPGAならではということ。テストしても音質の低下が認められないのでロスレスと言っている。
Mojo2ではFPGAをフルキャパシティで使っている。前はリミテッドだった。タップ数は40,960。これはパワーマネージメントの改善によるもの(FPGAは同じよう)。これによってデジタルフィルターの向上、EQ追加ができた。クロスフィードはHugo2と同じコード。
Mojo2では低音がよりタイトになり、音場感とリゾリューションがよく聞こえるはず。
顧客の好みのサウンド傾向があるのでロスレスDSPによるイコライザーで音を積極的に変えて欲しい(それが製品の正しい評価にもつながる)。
2021年12月30日
2021年のトレンド2 ASMRとイヤフォン
ゲーミングと並んで今年のトレンドの一つだったのはASMRがあげられると思います。
ASMRは一般には波の音や雨音などもありますが、特に日本で人気があるのはやはり男性もしくは女性が耳元で囁くような密着感のある音源です。実際この分野ではよく知られるfinal E500がブレークしたきっかけというのは池袋界隈の女子たちが多く買い求めたことだったそうだけれども、それはつまりそうした音源に向いているということがネット・口コミで広まったということのようです。そして声優さんの「エッチなイヤフォン」というパワーワードもあってE500がASMR向けイヤフォンとして知られるようになりました。

COTSUBU for ASMRとE500
E500は開発時からバイノーラルに強い左右の音情報を持つことができるイヤフォンとして開発されたようですが、もともとは3DとかCGなどの用途だったそうです。しかし上記のように、市場反応でASMRが向いているということでその点を音響工学的に深く掘り下げて、さらに有線だと寝ながら装着ができないのでワイヤレスとしたのがagのCOTSUBU for ASMRです。ここでポイントとなるのが集中力が途切れないための"没入感"というキーワードです。これは自然な音造りで歯擦音などを含まないという意味のようです。また耳との近さが重要です。

通常COTSUB(クリーム)とASMRバージョン
実際に自分でも通常版のCOTSUBUとCOTSUBU for ASMRを比較してASMR音源を聴いてみるとかなりの違いがあり、通常版のCOTSUBUだと客観的で少し離れたところに音を感じますが、COTSUBU for ASMRでは耳元とか首筋の至近で語り掛けられる感じになります。刺激成分を抑えているとはいいますが、COTSUBU for ASMRの方が声が鮮明でよりリアルに聴こえます。
COTSUBU for ASMRはE500とも耳の近さという点では似ていますが、E500の方がより密着感があります。またVR3000 for Gamingも"没入感"というキーワードではASMR向けイヤフオンと似たような開発方針で作られていて、ASMR音源を聴いてもやはりこうした密着感が感じられます。ただし耳との近さには差があり、近い方からE500/COTSUBU for ASMR/VR3000 for Gamingとなります。
COTSUBU for ASMRの他にもacoustuneの完全ワイヤレスのANIMA ANW01に使われる専用アプリのANIMA StudioにもASMR向けのイコライザーのプリセットがあり、ダミーヘッドやマイクの特性を考慮しながら設定したということです。ANW01はDJのTAKU INOUE氏によるサウンドチューニングなど音造りに主眼がおかけていて、ASMR用プリセットもまたその一環なのでしょう。
当初のASMR 4Cの他にも声優さん監修によりASMR LONGが設けられ、監修した小岩井ことりさんはやはり聴き疲れしない音にポイントを置いているようです。

ANIMA ANW01
最近は空間オーディオ流行りということで、イヤフオン・ヘッドフォンにもスピーカーらしさが求められたりしますが、物理的に違うものだからそれを求めても限界はあると思います。
昔からイヤフオン・ヘッドフォンをやっていて思うのは、むしろイヤフオン・ヘッドフォンで語られるべきは耳との近さ・親密感(海外ではよくintimateと評される)ではないでしょうか。ASMR分野はそれを再確認させてくれるように思います。
ASMRは一般には波の音や雨音などもありますが、特に日本で人気があるのはやはり男性もしくは女性が耳元で囁くような密着感のある音源です。実際この分野ではよく知られるfinal E500がブレークしたきっかけというのは池袋界隈の女子たちが多く買い求めたことだったそうだけれども、それはつまりそうした音源に向いているということがネット・口コミで広まったということのようです。そして声優さんの「エッチなイヤフォン」というパワーワードもあってE500がASMR向けイヤフォンとして知られるようになりました。

COTSUBU for ASMRとE500
E500は開発時からバイノーラルに強い左右の音情報を持つことができるイヤフォンとして開発されたようですが、もともとは3DとかCGなどの用途だったそうです。しかし上記のように、市場反応でASMRが向いているということでその点を音響工学的に深く掘り下げて、さらに有線だと寝ながら装着ができないのでワイヤレスとしたのがagのCOTSUBU for ASMRです。ここでポイントとなるのが集中力が途切れないための"没入感"というキーワードです。これは自然な音造りで歯擦音などを含まないという意味のようです。また耳との近さが重要です。

通常COTSUB(クリーム)とASMRバージョン
実際に自分でも通常版のCOTSUBUとCOTSUBU for ASMRを比較してASMR音源を聴いてみるとかなりの違いがあり、通常版のCOTSUBUだと客観的で少し離れたところに音を感じますが、COTSUBU for ASMRでは耳元とか首筋の至近で語り掛けられる感じになります。刺激成分を抑えているとはいいますが、COTSUBU for ASMRの方が声が鮮明でよりリアルに聴こえます。
COTSUBU for ASMRはE500とも耳の近さという点では似ていますが、E500の方がより密着感があります。またVR3000 for Gamingも"没入感"というキーワードではASMR向けイヤフオンと似たような開発方針で作られていて、ASMR音源を聴いてもやはりこうした密着感が感じられます。ただし耳との近さには差があり、近い方からE500/COTSUBU for ASMR/VR3000 for Gamingとなります。
COTSUBU for ASMRの他にもacoustuneの完全ワイヤレスのANIMA ANW01に使われる専用アプリのANIMA StudioにもASMR向けのイコライザーのプリセットがあり、ダミーヘッドやマイクの特性を考慮しながら設定したということです。ANW01はDJのTAKU INOUE氏によるサウンドチューニングなど音造りに主眼がおかけていて、ASMR用プリセットもまたその一環なのでしょう。
当初のASMR 4Cの他にも声優さん監修によりASMR LONGが設けられ、監修した小岩井ことりさんはやはり聴き疲れしない音にポイントを置いているようです。

ANIMA ANW01
最近は空間オーディオ流行りということで、イヤフオン・ヘッドフォンにもスピーカーらしさが求められたりしますが、物理的に違うものだからそれを求めても限界はあると思います。
昔からイヤフオン・ヘッドフォンをやっていて思うのは、むしろイヤフオン・ヘッドフォンで語られるべきは耳との近さ・親密感(海外ではよくintimateと評される)ではないでしょうか。ASMR分野はそれを再確認させてくれるように思います。
2021年12月29日
2021年のトレンド1 ゲーミング分野と有線イヤフオン
昨年から継続しているコロナ禍でトレンドとなっているものはゲーミングです。最近行われたクアルコムのイベントでもゲーム分野の注目度の高さが伺えました。
これについてはイヤフォンの分野でも「ゲーム専用」やゲーム特化型のモデルが作られるようになってきました。そしてゲーミングに使われる機材がハイエンド化していることが特徴です。
まず今年初めに平面型のヘッドフォンで知られるAUDEZEが新製品Euclidを発売しています。これは$1,299となかなか高価格のハイエンドイヤフォンです。これ自体はAUDEZEで初めての密閉型の平面磁界型イヤフォンですが、興味ふかい点はこの新型イヤフォン解説のストリーミングをtwitchで行ったということです。twitchはゲームの実況中継を行うサイトです。HeadFiなどのオーディオサイトではなくtwitchで行ったというのは注目点です。
またAUDEZEは昨年7月にワイヤレスヘッドフォンのPenroseを発売してゲーミング分野への興味を示していましたが、この時代に有線イヤフォンを開発するということは低遅延を重視するゲーミング市場も重要に捉えているのでしょう。Penroseは2.4GHzのワイヤレスドングルが付属していて一般的なBluetoothを超える低遅延を実現しています。
今年中盤には映画館でおなじみのTHXから初のコンシューマー向け製品としてドングル型のポータブルUSB DAC Onyxが発売されています。価格はUSD$200くらいでTHX-AAAを採用した本格的な製品です。
ポータブルUSB DACを出したTHXの製品戦略を考えてみると、海外で販売されているのがゲーミングデバイスのRazerのサイトだということがキーになるように思えます。有線ヘッドフォン向けデバイスであるからゲームで重要な遅延も問題になりません。またTHXは「THX Spatial Audio」という今流行りでもある空間オーディオの技術を持っています。つまりRazerが発売しているRazer BlackShark V2のようなTHX Spatial Audioに対応したゲーミングヘッドフォンと組み合わせて、対戦ゲームで求められる高精度の立体音響と高品質でリアルな音質の実現を提供するデバイスとしてOnyxが用意されたのではないかと考えることができます。
Razerのサイト
https://www.razer.com/mobile-accessories/thx-onyx/RC21-01630100-R3M1
オーディオ製品のゲームへの歩み寄りとともに、ゲーム製品のオーディオへの歩み寄りもまたあります。
今年9月にはASUSのRepublic of Gamers (ROG)イベントにおいてゲーミングヘッドセットDelta Sが発表されています。ASUSはすでにゲーミングヘッドセットを出していますが、Delta Sで注目すべきは高音質仕様になっているということです。DAC IC(正しくはオーディオCODEC)にES9281を採用し、MQAをサポート(MQAレンダラー)した初めてのヘッドホンです。
ただしMQAレンダラーはソフトウエアでコードが必要なためにゲームアプリでは対応できないでしょう。ASUSは、MQA対応をメインの特徴とするためにES9281を採用したのではなく、従来モデルのROG DeltaでES9218を採用していたのでその延長上とも考えられますが、やはりES9821の130dBもの高音質がゲーミング分野に重要と読んだのかもしれません。
ゲーミングに好適というゲーム仕様のイヤフォンもまた発売されています。今年の6月には有線イヤフォンのAZLA AZEL Edition Gが発売されています。これはAZELのゲーミング向けバージョンで、AZELをベースにして韓国一の人気プロゲーマー監修により再設計を施したバージョンです。銃声音や足音など細かい音を一つ逃さず、敵の位置を把握しやすいサウンドバランスを実現した点が特徴で、特にFPSゲームに最適化しています。
AZLAによると、オリジナルのAZELも本国ではゲーミング用として1万台以上販売されるほどのニーズがあったということです。 Edition Gでは特に左右バランスの完璧さ(音のピンポイントの定位、音の来る方向)が最大のポイントだということです。このために高度なハイエンドイヤフォン並みのチャンネルマッチングをeditionGでは実施しています。
AZEL EditionGとチャンネルマッチングのために廃棄されたパーツ

特性図は左右がきれいに合致している(赤青の色が重なっている)ことに注目
国内ではfinalが有線イヤフォンのVR3000 for Gamingを発売しています。
finalで重要としたポイントはプレーヤーの没入感を高めるという点だといいます。これは具体的にいうと刺激成分が少なく集中力が途切れないということです。方向感覚も大事ながらも、やはりゲーミングでも集中力を生むことのできる没入感が大事であるとfinalでは考えているということです。

final VR3000 for Gaming
イヤフォンはワイヤレスに移行しつつありますが、ゲーミング分野では低遅延の必要からまだ有線イヤフォンが重宝されているという点も見逃せません。つまりシェアを奪われつつある有線イヤフォンが生き残る道の一つであり、高度化するゲーミングがより優れた方向性で銃撃の方向がわかることや、優れた解像力でかすかな足音がわかるようなハイエンドの特性を欲しているということでもあります。プロのeスポーツプレーヤーの反射神経はオリンピックの運動選手並みということをクアルコムのイベントでゲーマーが話してたのが印象的です。
一方でワイヤレスで有線に匹敵するような低遅延化については、今年オーディオテクニカが音楽練習用で発売した赤外線ワイヤレスEP1000IRがひとつの面白い手段ではあります(処理が単純なために遅延が少ないとのこと)、ただしドングルが必要なためゲーミングに広まるかはわかりません。

オーディオテクニカ EP1000IRとiPadのピアノアプリ
これについてはイヤフォンの分野でも「ゲーム専用」やゲーム特化型のモデルが作られるようになってきました。そしてゲーミングに使われる機材がハイエンド化していることが特徴です。
まず今年初めに平面型のヘッドフォンで知られるAUDEZEが新製品Euclidを発売しています。これは$1,299となかなか高価格のハイエンドイヤフォンです。これ自体はAUDEZEで初めての密閉型の平面磁界型イヤフォンですが、興味ふかい点はこの新型イヤフォン解説のストリーミングをtwitchで行ったということです。twitchはゲームの実況中継を行うサイトです。HeadFiなどのオーディオサイトではなくtwitchで行ったというのは注目点です。
またAUDEZEは昨年7月にワイヤレスヘッドフォンのPenroseを発売してゲーミング分野への興味を示していましたが、この時代に有線イヤフォンを開発するということは低遅延を重視するゲーミング市場も重要に捉えているのでしょう。Penroseは2.4GHzのワイヤレスドングルが付属していて一般的なBluetoothを超える低遅延を実現しています。
今年中盤には映画館でおなじみのTHXから初のコンシューマー向け製品としてドングル型のポータブルUSB DAC Onyxが発売されています。価格はUSD$200くらいでTHX-AAAを採用した本格的な製品です。
ポータブルUSB DACを出したTHXの製品戦略を考えてみると、海外で販売されているのがゲーミングデバイスのRazerのサイトだということがキーになるように思えます。有線ヘッドフォン向けデバイスであるからゲームで重要な遅延も問題になりません。またTHXは「THX Spatial Audio」という今流行りでもある空間オーディオの技術を持っています。つまりRazerが発売しているRazer BlackShark V2のようなTHX Spatial Audioに対応したゲーミングヘッドフォンと組み合わせて、対戦ゲームで求められる高精度の立体音響と高品質でリアルな音質の実現を提供するデバイスとしてOnyxが用意されたのではないかと考えることができます。
Razerのサイト
https://www.razer.com/mobile-accessories/thx-onyx/RC21-01630100-R3M1
オーディオ製品のゲームへの歩み寄りとともに、ゲーム製品のオーディオへの歩み寄りもまたあります。
今年9月にはASUSのRepublic of Gamers (ROG)イベントにおいてゲーミングヘッドセットDelta Sが発表されています。ASUSはすでにゲーミングヘッドセットを出していますが、Delta Sで注目すべきは高音質仕様になっているということです。DAC IC(正しくはオーディオCODEC)にES9281を採用し、MQAをサポート(MQAレンダラー)した初めてのヘッドホンです。
ただしMQAレンダラーはソフトウエアでコードが必要なためにゲームアプリでは対応できないでしょう。ASUSは、MQA対応をメインの特徴とするためにES9281を採用したのではなく、従来モデルのROG DeltaでES9218を採用していたのでその延長上とも考えられますが、やはりES9821の130dBもの高音質がゲーミング分野に重要と読んだのかもしれません。
ゲーミングに好適というゲーム仕様のイヤフォンもまた発売されています。今年の6月には有線イヤフォンのAZLA AZEL Edition Gが発売されています。これはAZELのゲーミング向けバージョンで、AZELをベースにして韓国一の人気プロゲーマー監修により再設計を施したバージョンです。銃声音や足音など細かい音を一つ逃さず、敵の位置を把握しやすいサウンドバランスを実現した点が特徴で、特にFPSゲームに最適化しています。
AZLAによると、オリジナルのAZELも本国ではゲーミング用として1万台以上販売されるほどのニーズがあったということです。 Edition Gでは特に左右バランスの完璧さ(音のピンポイントの定位、音の来る方向)が最大のポイントだということです。このために高度なハイエンドイヤフォン並みのチャンネルマッチングをeditionGでは実施しています。
AZEL EditionGとチャンネルマッチングのために廃棄されたパーツ
特性図は左右がきれいに合致している(赤青の色が重なっている)ことに注目
国内ではfinalが有線イヤフォンのVR3000 for Gamingを発売しています。
finalで重要としたポイントはプレーヤーの没入感を高めるという点だといいます。これは具体的にいうと刺激成分が少なく集中力が途切れないということです。方向感覚も大事ながらも、やはりゲーミングでも集中力を生むことのできる没入感が大事であるとfinalでは考えているということです。
final VR3000 for Gaming
イヤフォンはワイヤレスに移行しつつありますが、ゲーミング分野では低遅延の必要からまだ有線イヤフォンが重宝されているという点も見逃せません。つまりシェアを奪われつつある有線イヤフォンが生き残る道の一つであり、高度化するゲーミングがより優れた方向性で銃撃の方向がわかることや、優れた解像力でかすかな足音がわかるようなハイエンドの特性を欲しているということでもあります。プロのeスポーツプレーヤーの反射神経はオリンピックの運動選手並みということをクアルコムのイベントでゲーマーが話してたのが印象的です。
一方でワイヤレスで有線に匹敵するような低遅延化については、今年オーディオテクニカが音楽練習用で発売した赤外線ワイヤレスEP1000IRがひとつの面白い手段ではあります(処理が単純なために遅延が少ないとのこと)、ただしドングルが必要なためゲーミングに広まるかはわかりません。

オーディオテクニカ EP1000IRとiPadのピアノアプリ
2021年12月16日
acoustuneのプロ用モニターイヤフォン、RS oneレビュー
おなじみのAcoustuneから新製品が登場です。しかしいつもの製品とはまったく異なるラインで、「Monitor(モニター)」シリーズの第1弾となるステージモニターイヤフォン「RS ONE」です。発売日は2021年12月10日(金)で、価格は12,980円です。二色カラーの展開です

「RS ONE」は高耐久性とモニタリング性能に焦点を当てて、新開発のミリンクスELドライバーを搭載したステージモニター向けのイヤホンです。もちろん一般ユーザーが音楽を聴くのにも使うことができます。
例えばスパウト部分の折損、コネクター部分やハウジング部分の破損、ケーブルの接触不良等のトラブルが発生しがちな部分をクリアしつつ、大入力でも飛ばないとか、強靭ながら取り回しが良いケーブル、イヤホンとイヤモニシステムがマッチするようにインピーダンスをデザインするなどの工夫でプロフェッショナルの現場を想定して開発されたとのこと。

*モニター用のミリンクスEL ドライバーの採用
音質の面ではAcoustuneらしくポリマーバイオマテリアル「ミリンクス」を振動板素材に採用しています。
ミリンクスは医療用の合成基材ですが、振動板素材としても非常に高い音響性能を誇る高機能樹脂です。このミリンクスを薄膜化した振動板は、軽量でありながら高い強度と柔軟性を合わせ持つのが特徴です。これはいわばムチのように強いがよくしなるということのようです。
ステージモニターとして設計したRS ONEでは新たに「ミリンクスEL ドライバー」を採用しています。このミリンクスEL ドライバーは通常のミリンクスドライバーに比べ、より正確なモニタリングを実現する為のドライバーで、内部損失が大きいのが特徴のようです。
内部損失が大きいということは叩いても反響音がしない材質ということで、余計な付帯音を減らしてモニタリング性能を高めています。
また瞬間的に最大250mWの信号が入力された後でも正常に使用できる高耐入力性を実現ているということです。これにより、突発的にステージ上でハウリングのような大きな入力があった場合でも、イヤホンのスピーカーが壊れにくい堅牢性を持つとのこと。
*ワイヤレスイヤモニシステムとのインピーダンスマッチ
ステージモニターは主にワイヤレスイヤモニシステムと組み合わされて使用されます。このイヤモニシステムとイヤホンのインピーダンスが合っていない場合、音量が取りにくくなったりイヤホンの特性が変わってしまい、モニタリング性能が低下する等のケースがあります。RS ONEではこういったトラブルを避けるため、インピーダンスマッチングを的確に行うことでイヤモニシステムと相性問題を少なくしているとのことです。
*新規開発ケーブル『ARM011』と『Pentaconn Ear Long-Type』の採用
ケーブルにはRS ONE 用に新規開発した「ARM011」を採用しています。これは高純度リッツ線とケブラーワイヤーを編み込んだ線材を4芯構造で使用しPU 素材の被覆をしたもので、取り回しが良いながらも癖がつきにくく、かつ断線しにくいとのことです。イヤモニシステム使用上との相性を考え、プラグ部はストレートタイプです。

端子は好評のPentaconn Earタイプで、RS ONEでは、ステージモニターとして重要となる汗対策として、ボディに対して埋め込み式となりコネクター部分に汗が入りにくい構造である『Pentaconn Ear Long-Type』を採用しています。

付属品としてはAcoustune イヤホン開発時のリファレンスとしても使用されているシリコンイヤーピース「AET07」、フォームタイプならではの密閉感を得られる「AET02」が付属します。更にキャリングケースも付属しています。
インプレッション
簡素な箱がプロ用と言う感じを受けます。筐体は軽くカールがあるのでかなりしっかりはまり装着感は良好です。ケーブルはやや硬めだけどしなやかなので取り回しは悪くないですね。見るからに音が良さそうなケーブルです。

モニターらしく帯域バランスの良いフラットな音で、ソリッドでシャープなサウンドです。楽器やホールの立体感、音空間の深みがよく再現されています。
音的にはレベルが高くもっと高くてもおかしくなさそうなくらいの音です。良録音を聞くと音の細かなニュアンスまでよく聞こえ、音の歯切れが良く音像のエッジがよく立っています。音像がつかみやすい音ですね。着色感が少なく、元の音に忠実で、楽器の音色もよくわかります。特にピアノの打鍵音が良いですね。
高域のベルやハイハットの音はかなりシャープで、低音もHD800のような正確な低域で、引き締まっていて、かなり深く沈むように思います。ワイドレンジ感も高いですね。低域が出過ぎていないのでヴォーカルもかなり明瞭に聴こえます。

とても音楽が綺麗に聞こえるので、モニター用としてではなく音楽用としても良いでしょう。
この価格ではかなりレベルが高い音でミリンクスのポテンシャルの高さを感じます。たぶんリケーブルするとさらにレベルの高い音になると思います。
しっかりとした音の輪郭がアコースチューンらしいと思います。独特のミリンクスらしい空間表現が個性的な点もあります。
普段遣いでも気軽にバッグに入れておけそうだし、質実剛健でコスパの良いイヤフォンです。


「RS ONE」は高耐久性とモニタリング性能に焦点を当てて、新開発のミリンクスELドライバーを搭載したステージモニター向けのイヤホンです。もちろん一般ユーザーが音楽を聴くのにも使うことができます。
例えばスパウト部分の折損、コネクター部分やハウジング部分の破損、ケーブルの接触不良等のトラブルが発生しがちな部分をクリアしつつ、大入力でも飛ばないとか、強靭ながら取り回しが良いケーブル、イヤホンとイヤモニシステムがマッチするようにインピーダンスをデザインするなどの工夫でプロフェッショナルの現場を想定して開発されたとのこと。

*モニター用のミリンクスEL ドライバーの採用
音質の面ではAcoustuneらしくポリマーバイオマテリアル「ミリンクス」を振動板素材に採用しています。
ミリンクスは医療用の合成基材ですが、振動板素材としても非常に高い音響性能を誇る高機能樹脂です。このミリンクスを薄膜化した振動板は、軽量でありながら高い強度と柔軟性を合わせ持つのが特徴です。これはいわばムチのように強いがよくしなるということのようです。
ステージモニターとして設計したRS ONEでは新たに「ミリンクスEL ドライバー」を採用しています。このミリンクスEL ドライバーは通常のミリンクスドライバーに比べ、より正確なモニタリングを実現する為のドライバーで、内部損失が大きいのが特徴のようです。
内部損失が大きいということは叩いても反響音がしない材質ということで、余計な付帯音を減らしてモニタリング性能を高めています。
また瞬間的に最大250mWの信号が入力された後でも正常に使用できる高耐入力性を実現ているということです。これにより、突発的にステージ上でハウリングのような大きな入力があった場合でも、イヤホンのスピーカーが壊れにくい堅牢性を持つとのこと。
*ワイヤレスイヤモニシステムとのインピーダンスマッチ
ステージモニターは主にワイヤレスイヤモニシステムと組み合わされて使用されます。このイヤモニシステムとイヤホンのインピーダンスが合っていない場合、音量が取りにくくなったりイヤホンの特性が変わってしまい、モニタリング性能が低下する等のケースがあります。RS ONEではこういったトラブルを避けるため、インピーダンスマッチングを的確に行うことでイヤモニシステムと相性問題を少なくしているとのことです。
*新規開発ケーブル『ARM011』と『Pentaconn Ear Long-Type』の採用
ケーブルにはRS ONE 用に新規開発した「ARM011」を採用しています。これは高純度リッツ線とケブラーワイヤーを編み込んだ線材を4芯構造で使用しPU 素材の被覆をしたもので、取り回しが良いながらも癖がつきにくく、かつ断線しにくいとのことです。イヤモニシステム使用上との相性を考え、プラグ部はストレートタイプです。



端子は好評のPentaconn Earタイプで、RS ONEでは、ステージモニターとして重要となる汗対策として、ボディに対して埋め込み式となりコネクター部分に汗が入りにくい構造である『Pentaconn Ear Long-Type』を採用しています。


付属品としてはAcoustune イヤホン開発時のリファレンスとしても使用されているシリコンイヤーピース「AET07」、フォームタイプならではの密閉感を得られる「AET02」が付属します。更にキャリングケースも付属しています。
インプレッション
簡素な箱がプロ用と言う感じを受けます。筐体は軽くカールがあるのでかなりしっかりはまり装着感は良好です。ケーブルはやや硬めだけどしなやかなので取り回しは悪くないですね。見るからに音が良さそうなケーブルです。


モニターらしく帯域バランスの良いフラットな音で、ソリッドでシャープなサウンドです。楽器やホールの立体感、音空間の深みがよく再現されています。
音的にはレベルが高くもっと高くてもおかしくなさそうなくらいの音です。良録音を聞くと音の細かなニュアンスまでよく聞こえ、音の歯切れが良く音像のエッジがよく立っています。音像がつかみやすい音ですね。着色感が少なく、元の音に忠実で、楽器の音色もよくわかります。特にピアノの打鍵音が良いですね。
高域のベルやハイハットの音はかなりシャープで、低音もHD800のような正確な低域で、引き締まっていて、かなり深く沈むように思います。ワイドレンジ感も高いですね。低域が出過ぎていないのでヴォーカルもかなり明瞭に聴こえます。

とても音楽が綺麗に聞こえるので、モニター用としてではなく音楽用としても良いでしょう。
この価格ではかなりレベルが高い音でミリンクスのポテンシャルの高さを感じます。たぶんリケーブルするとさらにレベルの高い音になると思います。
しっかりとした音の輪郭がアコースチューンらしいと思います。独特のミリンクスらしい空間表現が個性的な点もあります。
普段遣いでも気軽にバッグに入れておけそうだし、質実剛健でコスパの良いイヤフォンです。
2021年12月09日
アスキーに「ASMR専用をうたう「COTSUBU for ASMR」、ではASMR向けの音作りとは何か?」を執筆しました
アスキーに「ASMR専用をうたう「COTSUBU for ASMR」、ではASMR向けの音作りとは何か?」を執筆しました。
https://ascii.jp/elem/000/004/077/4077279/
https://ascii.jp/elem/000/004/077/4077279/