LUXURY & PRECISION W2に第二世代としてW2-131が登場しました。オープン価格で、実売想定価格は42,900円(税込)です。
メーカーリンクはこちらです。
https://www.cyras.jp/140021.html
W2-131はいわゆるドングル型のDAC内蔵ヘッドフォンアンプで、スマートフォンと組み合わせるのに好適な機種です。スマートフォンとはUSB-C接続ですが、ライトニング用のケーブルも付属します。W2とは基本機能は同じで、イコライザー設定も多く用意され、さらにDACフィルター設定が可能、さらにチューニングによる音色の切り替えもできるなど多機能、また入出力のサンプルとは液晶画面で確認が可能です。
前モデルのW2については下記にレビューを書いていますのでこちらも参照ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/481684789.html
W2-131での改良点は以下の通りです。
1 DACチップがW2ではCS43198が2基から、CS43131が2基に変更(名称由来です)。
CS43131にはチップ内にヘッドフォンアンプ回路が組み込まれていますが、W2-131ではさらなるハイパワーを目指してDAC内の回路ではなく独立したアンプ回路を搭載しているということです。その結果として先代のW2よりも高出力を達成しているとのことです。
2 本体色がブラックからにブルー(プルシアンブルー)に変わった
3 バランス接続時の出力がアップ
4 消費電力の低減とより長時間の再生が可能となった
* インプレッション
本体の大きさはW2と同一で、使い勝手も変わりません。ただしカラーリングが異なっていて青が基調のデザインとなっています。背面もカーボン調だったW2とは異なってW2-131ではシンプルなデザインになっています。
一番違うのはW2では液晶パネルの枠が電源オフでも見えていたのに、W2-131ではフレームと同一化して見えなくなっているということです。これは見た目に大きな差になっています。同梱アクセサリーなどは同じです。
iPhone12 Proと組み合わせて聞いてみます。W2同様にUSB-C用のケーブルの他にライトニングケーブルが付属しているので極めて簡単に接続ができます。これがないとLightning ー USBカメラアダプターを使用することになるので接続が面倒になります。
イヤフォンはW2の時と同様にCampfire AudioのARAを4.4mmバランス端子に接続して試聴しました。接続は簡単で、USBケーブルをスマホに接続してイヤフォンを端子に接続するだけで使用ができます。悩むところはありません。ただし出力が大きいので、小型だと侮らずに音出しをする前にゲインの設定をしてボリューム音量を下げておいたほうが良いです。
W2-131でiPhone内蔵のハイレゾ音源を聞いてみると、やはり小型DACとは思えないような鋭く鮮明で解像力が高いサウンドですが、W2よりも力強さが加わったように思います。ギターを爪弾く時やドラムを連打するときなど随所でより力感を感じられます。音にスヒード感がある点は同じですが、楽器の歯切れの良さがさらに良くなっているように感じられます。W2は端正で鮮明な音なので器楽曲やジャズに向いた感じでしたが、よりロックやポップに向いた音になった感じに思います。
実際に第一世代のW2とこのW2-131を比較試聴してみると、W2-131の音の方がかなり力強さがあり、よりパワフルな音再現に感じられます。これはTuneモードによらずに同じ傾向です。
基本的な音色自体は両方共ほぼ同じでL&Pらしい付帯色の少ない忠実な音色再現です。基本的な音はニュートラルなので、豊富なイコライザー機能を使うことでより自分好みの音に近づけることができるでしょう。
3.5mm端子でも十分に素晴らしい音質で楽しめますが、やはり真価を発揮するのは4.4mmバランスで聴いたときです。空間的な広がりもいっそうよくなります。解像力は極めて高くてかなり細かい音も拾います。
音質レベルは極めて高いのでハイエンドイヤフォンを組み合わせても満足いくでしょう。正直この大きさでこの音、さらにバスパワー動作というのはちょっと信じられないくらいではあります。アクセサリーには厳しいiPhoneですからね。
ハイレゾ・ストリーミング再生も試してみましたが、やはり素晴らしい音質で楽しむことができます。Macにも使用してみましたが、同様に簡単に接続してあっさり音が出ます。仕事をしながら使うにもいいですね。
* まとめ
W2-131はW2の特徴であるコンパクトで多機能、そして音の良さという点はそのまま引き継いで、音がより力強くなった新モデルだと言えます。バランスでの音の良さは特筆もので、iPhoneに向いたライトニングケーブルが同梱されているので、iPhoneでストリーミングを高音質で楽しみたいという場合にお勧めです。
Music TO GO!
2022年03月04日
2022年02月24日
2022年02月16日
CHORD Mojo 2国内リリース決定
先代のMojoから7年ぶりに待望の後継機Mojo 2が登場します。
Mojo2は簡単に言うとMojoのサイズはそのままに、音質をさらに向上させて電源周りなど各部を改良し、USB-C端子やUHD DSPなどの新機能を追加したものです。正統的な後継機と言えるでしょう。Mojoとサイズや端子は共通なのでPolyもそのまま使えます(ファームウエアについては最新を適用)。
外観的にはUSB-C端子が追加され、様々な機能を管理するために4つめのボタンとしてメニューボタンが追加されています。これによりミュート機能、4 段階クロスフィード機能(Hugo2と同じアルゴリズム)、ボタンロック機能が可能となります。
新規追加されたUHD DSPとは従来64bitで行われていたデジタル計算を104bitで行うことで聴感的な音質ロスがほぼなくなるというもので、主にクロスフィードとイコライザーに使用されます。このため音質低下を気にせずに積極的にイコライザーを使用することができます。
またMojo2ではボリュームがハイボリュームモードとローボリュームモードに分かれているのですがこれでもDSPが活用されています。
内部的には中核となるパルスアレイDACは40,960 タップに解像力が向上してノイズシェーバーは改良型が使われています。FPGAは引き続き剤リンクスArtix-7が使われていますが、Mojo2では電源の改良でフルキャパシティで使えるようになったので能力が向上しているようです。
またカップリングコンデンサーが廃止されています。これによっておそらく着色感もより少ないでしょう。
電源ではFPGA 管理の新バッテリー充電システムにより充電の改良が行われ、バッテリー容量は9%増加しています。また新規追加されたインテリジェントデスクトップモードは据え置き用として電源を繋ぎっぱなしにした時にそれを物理的に切り離してバッテリーを過充電から守るというものです。
本革を使用したMojo 2専用ケースはジョンフランクスによってデザインされてもので、新しい4ボタンに対応しています。
やはり本革を使用したMojo 2 PolyケースはPolyと合体するためのケースで以前のものよりも高級なようですね。
発売日は2 月25 日(金)で先行予約の受付開始日が2 月18 日(金)11:00からとなります。価格は79,980 円(税込み)で、同時発売のMojo2用のケースが7,980 円(税込み)、PolyとMojo2の一体型ケースが12,980 円(税込み)です。
参考リンクは以下のとおりです。
Mojo 2 製品ページURL:https://www.aiuto-jp.co.jp/products/product_3843.php
Mojo 2 Case 製品ページURL:https://www.aiuto-jp.co.jp/products/product_3870.php
Mojo 2 Poly Case 製品ページURL:https://www.aiuto-jp.co.jp/products/product_3871.php
販売はアユート直販サイト「アキハバラe 市場」及び「e☆イヤホン」「フジヤエービック」(50 音順)他、日本国
内正規取扱販売店において扱われるということです。
Mojo2は簡単に言うとMojoのサイズはそのままに、音質をさらに向上させて電源周りなど各部を改良し、USB-C端子やUHD DSPなどの新機能を追加したものです。正統的な後継機と言えるでしょう。Mojoとサイズや端子は共通なのでPolyもそのまま使えます(ファームウエアについては最新を適用)。
外観的にはUSB-C端子が追加され、様々な機能を管理するために4つめのボタンとしてメニューボタンが追加されています。これによりミュート機能、4 段階クロスフィード機能(Hugo2と同じアルゴリズム)、ボタンロック機能が可能となります。
新規追加されたUHD DSPとは従来64bitで行われていたデジタル計算を104bitで行うことで聴感的な音質ロスがほぼなくなるというもので、主にクロスフィードとイコライザーに使用されます。このため音質低下を気にせずに積極的にイコライザーを使用することができます。
またMojo2ではボリュームがハイボリュームモードとローボリュームモードに分かれているのですがこれでもDSPが活用されています。
内部的には中核となるパルスアレイDACは40,960 タップに解像力が向上してノイズシェーバーは改良型が使われています。FPGAは引き続き剤リンクスArtix-7が使われていますが、Mojo2では電源の改良でフルキャパシティで使えるようになったので能力が向上しているようです。
またカップリングコンデンサーが廃止されています。これによっておそらく着色感もより少ないでしょう。
電源ではFPGA 管理の新バッテリー充電システムにより充電の改良が行われ、バッテリー容量は9%増加しています。また新規追加されたインテリジェントデスクトップモードは据え置き用として電源を繋ぎっぱなしにした時にそれを物理的に切り離してバッテリーを過充電から守るというものです。
本革を使用したMojo 2専用ケースはジョンフランクスによってデザインされてもので、新しい4ボタンに対応しています。
やはり本革を使用したMojo 2 PolyケースはPolyと合体するためのケースで以前のものよりも高級なようですね。
発売日は2 月25 日(金)で先行予約の受付開始日が2 月18 日(金)11:00からとなります。価格は79,980 円(税込み)で、同時発売のMojo2用のケースが7,980 円(税込み)、PolyとMojo2の一体型ケースが12,980 円(税込み)です。
参考リンクは以下のとおりです。
Mojo 2 製品ページURL:https://www.aiuto-jp.co.jp/products/product_3843.php
Mojo 2 Case 製品ページURL:https://www.aiuto-jp.co.jp/products/product_3870.php
Mojo 2 Poly Case 製品ページURL:https://www.aiuto-jp.co.jp/products/product_3871.php
販売はアユート直販サイト「アキハバラe 市場」及び「e☆イヤホン」「フジヤエービック」(50 音順)他、日本国
内正規取扱販売店において扱われるということです。
2022年02月04日
ロバートワッツがMojo 2を語る
Mojo 2に関するDarkoとロバートワッツの対談がアップされています。
52分にわたりDarkoがロブワッツにインタビューする形式ですが、興味を引いたところを少し書きだします。
https://soundcloud.com/johnhdarko/rob-watts-on-the-chord-mojo-2?utm_source=clipboard&utm_medium=text&utm_campaign=social_sharing
Mojo2は2018年から4年かけて5つくらいのPCBデザインを試作した。(普通は2-3年のよう)
768kHzまで対応させたのはM Scalerを考慮してのこと。これには将来的にM Scalerが小型化することを見据えているようです。
Wattsが考えるDAC設計で重要なのは3点で、まず低シグナルの解像力・細かさ、測定できるようなノイズフロアモジュレーションがない(背景ノイズが低い)こと、トランジェントのタイミングの正確な再現(楽器の音色再現に重要で、これが他のDACとの一番の違いと言っている)。
FPGAはデジタルチップであり、DAコンバージョンはフリップフロップと抵抗のディスクリート回路で行われる。このためにノイズを切り離すことができる。
アンプなどのアナログ回路は先代と大きな違いはないが、パワーサプライが大きく変わっている。充電においてインテリジェントデスクトップモードが追加された。インテリジェントデスクトップモードにより、フルにチャージされると物理的にバッテリーが切り離される。これによってMojoをデスクトップにおいて電源を繋ぎっぱなしでもバッテリーが痛むことが少ない(ユーザー要求のよう)。これによってバッテリーの劣化による音質低下も防げる。
なぜUHD DSPをロスレスというかというと、従来の64bitのDSP処理では問題があり、例えばPCですべて+1dB設定にして、ボリュームを-1dBにすると変わらないはずだが、実際の出音は違う。これは64bit浮動小数点計算自体がノイズを生む元であり、極小シグナルの取り扱いがうまくないのでフェイズシフトも起こる。
このためDSPコアは64bitではなく104bitにした。これはFPGAならではということ。テストしても音質の低下が認められないのでロスレスと言っている。
Mojo2ではFPGAをフルキャパシティで使っている。前はリミテッドだった。タップ数は40,960。これはパワーマネージメントの改善によるもの(FPGAは同じよう)。これによってデジタルフィルターの向上、EQ追加ができた。クロスフィードはHugo2と同じコード。
Mojo2では低音がよりタイトになり、音場感とリゾリューションがよく聞こえるはず。
顧客の好みのサウンド傾向があるのでロスレスDSPによるイコライザーで音を積極的に変えて欲しい(それが製品の正しい評価にもつながる)。
52分にわたりDarkoがロブワッツにインタビューする形式ですが、興味を引いたところを少し書きだします。
https://soundcloud.com/johnhdarko/rob-watts-on-the-chord-mojo-2?utm_source=clipboard&utm_medium=text&utm_campaign=social_sharing
Mojo2は2018年から4年かけて5つくらいのPCBデザインを試作した。(普通は2-3年のよう)
768kHzまで対応させたのはM Scalerを考慮してのこと。これには将来的にM Scalerが小型化することを見据えているようです。
Wattsが考えるDAC設計で重要なのは3点で、まず低シグナルの解像力・細かさ、測定できるようなノイズフロアモジュレーションがない(背景ノイズが低い)こと、トランジェントのタイミングの正確な再現(楽器の音色再現に重要で、これが他のDACとの一番の違いと言っている)。
FPGAはデジタルチップであり、DAコンバージョンはフリップフロップと抵抗のディスクリート回路で行われる。このためにノイズを切り離すことができる。
アンプなどのアナログ回路は先代と大きな違いはないが、パワーサプライが大きく変わっている。充電においてインテリジェントデスクトップモードが追加された。インテリジェントデスクトップモードにより、フルにチャージされると物理的にバッテリーが切り離される。これによってMojoをデスクトップにおいて電源を繋ぎっぱなしでもバッテリーが痛むことが少ない(ユーザー要求のよう)。これによってバッテリーの劣化による音質低下も防げる。
なぜUHD DSPをロスレスというかというと、従来の64bitのDSP処理では問題があり、例えばPCですべて+1dB設定にして、ボリュームを-1dBにすると変わらないはずだが、実際の出音は違う。これは64bit浮動小数点計算自体がノイズを生む元であり、極小シグナルの取り扱いがうまくないのでフェイズシフトも起こる。
このためDSPコアは64bitではなく104bitにした。これはFPGAならではということ。テストしても音質の低下が認められないのでロスレスと言っている。
Mojo2ではFPGAをフルキャパシティで使っている。前はリミテッドだった。タップ数は40,960。これはパワーマネージメントの改善によるもの(FPGAは同じよう)。これによってデジタルフィルターの向上、EQ追加ができた。クロスフィードはHugo2と同じコード。
Mojo2では低音がよりタイトになり、音場感とリゾリューションがよく聞こえるはず。
顧客の好みのサウンド傾向があるのでロスレスDSPによるイコライザーで音を積極的に変えて欲しい(それが製品の正しい評価にもつながる)。
2021年12月30日
2021年のトレンド2 ASMRとイヤフォン
ゲーミングと並んで今年のトレンドの一つだったのはASMRがあげられると思います。
ASMRは一般には波の音や雨音などもありますが、特に日本で人気があるのはやはり男性もしくは女性が耳元で囁くような密着感のある音源です。実際この分野ではよく知られるfinal E500がブレークしたきっかけというのは池袋界隈の女子たちが多く買い求めたことだったそうだけれども、それはつまりそうした音源に向いているということがネット・口コミで広まったということのようです。そして声優さんの「エッチなイヤフォン」というパワーワードもあってE500がASMR向けイヤフォンとして知られるようになりました。
COTSUBU for ASMRとE500
E500は開発時からバイノーラルに強い左右の音情報を持つことができるイヤフォンとして開発されたようですが、もともとは3DとかCGなどの用途だったそうです。しかし上記のように、市場反応でASMRが向いているということでその点を音響工学的に深く掘り下げて、さらに有線だと寝ながら装着ができないのでワイヤレスとしたのがagのCOTSUBU for ASMRです。ここでポイントとなるのが集中力が途切れないための"没入感"というキーワードです。これは自然な音造りで歯擦音などを含まないという意味のようです。また耳との近さが重要です。
通常COTSUB(クリーム)とASMRバージョン
実際に自分でも通常版のCOTSUBUとCOTSUBU for ASMRを比較してASMR音源を聴いてみるとかなりの違いがあり、通常版のCOTSUBUだと客観的で少し離れたところに音を感じますが、COTSUBU for ASMRでは耳元とか首筋の至近で語り掛けられる感じになります。刺激成分を抑えているとはいいますが、COTSUBU for ASMRの方が声が鮮明でよりリアルに聴こえます。
COTSUBU for ASMRはE500とも耳の近さという点では似ていますが、E500の方がより密着感があります。またVR3000 for Gamingも"没入感"というキーワードではASMR向けイヤフオンと似たような開発方針で作られていて、ASMR音源を聴いてもやはりこうした密着感が感じられます。ただし耳との近さには差があり、近い方からE500/COTSUBU for ASMR/VR3000 for Gamingとなります。
COTSUBU for ASMRの他にもacoustuneの完全ワイヤレスのANIMA ANW01に使われる専用アプリのANIMA StudioにもASMR向けのイコライザーのプリセットがあり、ダミーヘッドやマイクの特性を考慮しながら設定したということです。ANW01はDJのTAKU INOUE氏によるサウンドチューニングなど音造りに主眼がおかけていて、ASMR用プリセットもまたその一環なのでしょう。
当初のASMR 4Cの他にも声優さん監修によりASMR LONGが設けられ、監修した小岩井ことりさんはやはり聴き疲れしない音にポイントを置いているようです。
ANIMA ANW01
最近は空間オーディオ流行りということで、イヤフオン・ヘッドフォンにもスピーカーらしさが求められたりしますが、物理的に違うものだからそれを求めても限界はあると思います。
昔からイヤフオン・ヘッドフォンをやっていて思うのは、むしろイヤフオン・ヘッドフォンで語られるべきは耳との近さ・親密感(海外ではよくintimateと評される)ではないでしょうか。ASMR分野はそれを再確認させてくれるように思います。
ASMRは一般には波の音や雨音などもありますが、特に日本で人気があるのはやはり男性もしくは女性が耳元で囁くような密着感のある音源です。実際この分野ではよく知られるfinal E500がブレークしたきっかけというのは池袋界隈の女子たちが多く買い求めたことだったそうだけれども、それはつまりそうした音源に向いているということがネット・口コミで広まったということのようです。そして声優さんの「エッチなイヤフォン」というパワーワードもあってE500がASMR向けイヤフォンとして知られるようになりました。
COTSUBU for ASMRとE500
E500は開発時からバイノーラルに強い左右の音情報を持つことができるイヤフォンとして開発されたようですが、もともとは3DとかCGなどの用途だったそうです。しかし上記のように、市場反応でASMRが向いているということでその点を音響工学的に深く掘り下げて、さらに有線だと寝ながら装着ができないのでワイヤレスとしたのがagのCOTSUBU for ASMRです。ここでポイントとなるのが集中力が途切れないための"没入感"というキーワードです。これは自然な音造りで歯擦音などを含まないという意味のようです。また耳との近さが重要です。
通常COTSUB(クリーム)とASMRバージョン
実際に自分でも通常版のCOTSUBUとCOTSUBU for ASMRを比較してASMR音源を聴いてみるとかなりの違いがあり、通常版のCOTSUBUだと客観的で少し離れたところに音を感じますが、COTSUBU for ASMRでは耳元とか首筋の至近で語り掛けられる感じになります。刺激成分を抑えているとはいいますが、COTSUBU for ASMRの方が声が鮮明でよりリアルに聴こえます。
COTSUBU for ASMRはE500とも耳の近さという点では似ていますが、E500の方がより密着感があります。またVR3000 for Gamingも"没入感"というキーワードではASMR向けイヤフオンと似たような開発方針で作られていて、ASMR音源を聴いてもやはりこうした密着感が感じられます。ただし耳との近さには差があり、近い方からE500/COTSUBU for ASMR/VR3000 for Gamingとなります。
COTSUBU for ASMRの他にもacoustuneの完全ワイヤレスのANIMA ANW01に使われる専用アプリのANIMA StudioにもASMR向けのイコライザーのプリセットがあり、ダミーヘッドやマイクの特性を考慮しながら設定したということです。ANW01はDJのTAKU INOUE氏によるサウンドチューニングなど音造りに主眼がおかけていて、ASMR用プリセットもまたその一環なのでしょう。
当初のASMR 4Cの他にも声優さん監修によりASMR LONGが設けられ、監修した小岩井ことりさんはやはり聴き疲れしない音にポイントを置いているようです。
ANIMA ANW01
最近は空間オーディオ流行りということで、イヤフオン・ヘッドフォンにもスピーカーらしさが求められたりしますが、物理的に違うものだからそれを求めても限界はあると思います。
昔からイヤフオン・ヘッドフォンをやっていて思うのは、むしろイヤフオン・ヘッドフォンで語られるべきは耳との近さ・親密感(海外ではよくintimateと評される)ではないでしょうか。ASMR分野はそれを再確認させてくれるように思います。
2021年12月29日
2021年のトレンド1 ゲーミング分野と有線イヤフオン
昨年から継続しているコロナ禍でトレンドとなっているものはゲーミングです。最近行われたクアルコムのイベントでもゲーム分野の注目度の高さが伺えました。
これについてはイヤフォンの分野でも「ゲーム専用」やゲーム特化型のモデルが作られるようになってきました。そしてゲーミングに使われる機材がハイエンド化していることが特徴です。
まず今年初めに平面型のヘッドフォンで知られるAUDEZEが新製品Euclidを発売しています。これは$1,299となかなか高価格のハイエンドイヤフォンです。これ自体はAUDEZEで初めての密閉型の平面磁界型イヤフォンですが、興味ふかい点はこの新型イヤフォン解説のストリーミングをtwitchで行ったということです。twitchはゲームの実況中継を行うサイトです。HeadFiなどのオーディオサイトではなくtwitchで行ったというのは注目点です。
またAUDEZEは昨年7月にワイヤレスヘッドフォンのPenroseを発売してゲーミング分野への興味を示していましたが、この時代に有線イヤフォンを開発するということは低遅延を重視するゲーミング市場も重要に捉えているのでしょう。Penroseは2.4GHzのワイヤレスドングルが付属していて一般的なBluetoothを超える低遅延を実現しています。
今年中盤には映画館でおなじみのTHXから初のコンシューマー向け製品としてドングル型のポータブルUSB DAC Onyxが発売されています。価格はUSD$200くらいでTHX-AAAを採用した本格的な製品です。
ポータブルUSB DACを出したTHXの製品戦略を考えてみると、海外で販売されているのがゲーミングデバイスのRazerのサイトだということがキーになるように思えます。有線ヘッドフォン向けデバイスであるからゲームで重要な遅延も問題になりません。またTHXは「THX Spatial Audio」という今流行りでもある空間オーディオの技術を持っています。つまりRazerが発売しているRazer BlackShark V2のようなTHX Spatial Audioに対応したゲーミングヘッドフォンと組み合わせて、対戦ゲームで求められる高精度の立体音響と高品質でリアルな音質の実現を提供するデバイスとしてOnyxが用意されたのではないかと考えることができます。
Razerのサイト
https://www.razer.com/mobile-accessories/thx-onyx/RC21-01630100-R3M1
オーディオ製品のゲームへの歩み寄りとともに、ゲーム製品のオーディオへの歩み寄りもまたあります。
今年9月にはASUSのRepublic of Gamers (ROG)イベントにおいてゲーミングヘッドセットDelta Sが発表されています。ASUSはすでにゲーミングヘッドセットを出していますが、Delta Sで注目すべきは高音質仕様になっているということです。DAC IC(正しくはオーディオCODEC)にES9281を採用し、MQAをサポート(MQAレンダラー)した初めてのヘッドホンです。
ただしMQAレンダラーはソフトウエアでコードが必要なためにゲームアプリでは対応できないでしょう。ASUSは、MQA対応をメインの特徴とするためにES9281を採用したのではなく、従来モデルのROG DeltaでES9218を採用していたのでその延長上とも考えられますが、やはりES9821の130dBもの高音質がゲーミング分野に重要と読んだのかもしれません。
ゲーミングに好適というゲーム仕様のイヤフォンもまた発売されています。今年の6月には有線イヤフォンのAZLA AZEL Edition Gが発売されています。これはAZELのゲーミング向けバージョンで、AZELをベースにして韓国一の人気プロゲーマー監修により再設計を施したバージョンです。銃声音や足音など細かい音を一つ逃さず、敵の位置を把握しやすいサウンドバランスを実現した点が特徴で、特にFPSゲームに最適化しています。
AZLAによると、オリジナルのAZELも本国ではゲーミング用として1万台以上販売されるほどのニーズがあったということです。 Edition Gでは特に左右バランスの完璧さ(音のピンポイントの定位、音の来る方向)が最大のポイントだということです。このために高度なハイエンドイヤフォン並みのチャンネルマッチングをeditionGでは実施しています。
AZEL EditionGとチャンネルマッチングのために廃棄されたパーツ
特性図は左右がきれいに合致している(赤青の色が重なっている)ことに注目
国内ではfinalが有線イヤフォンのVR3000 for Gamingを発売しています。
finalで重要としたポイントはプレーヤーの没入感を高めるという点だといいます。これは具体的にいうと刺激成分が少なく集中力が途切れないということです。方向感覚も大事ながらも、やはりゲーミングでも集中力を生むことのできる没入感が大事であるとfinalでは考えているということです。
final VR3000 for Gaming
イヤフォンはワイヤレスに移行しつつありますが、ゲーミング分野では低遅延の必要からまだ有線イヤフォンが重宝されているという点も見逃せません。つまりシェアを奪われつつある有線イヤフォンが生き残る道の一つであり、高度化するゲーミングがより優れた方向性で銃撃の方向がわかることや、優れた解像力でかすかな足音がわかるようなハイエンドの特性を欲しているということでもあります。プロのeスポーツプレーヤーの反射神経はオリンピックの運動選手並みということをクアルコムのイベントでゲーマーが話してたのが印象的です。
一方でワイヤレスで有線に匹敵するような低遅延化については、今年オーディオテクニカが音楽練習用で発売した赤外線ワイヤレスEP1000IRがひとつの面白い手段ではあります(処理が単純なために遅延が少ないとのこと)、ただしドングルが必要なためゲーミングに広まるかはわかりません。
オーディオテクニカ EP1000IRとiPadのピアノアプリ
これについてはイヤフォンの分野でも「ゲーム専用」やゲーム特化型のモデルが作られるようになってきました。そしてゲーミングに使われる機材がハイエンド化していることが特徴です。
まず今年初めに平面型のヘッドフォンで知られるAUDEZEが新製品Euclidを発売しています。これは$1,299となかなか高価格のハイエンドイヤフォンです。これ自体はAUDEZEで初めての密閉型の平面磁界型イヤフォンですが、興味ふかい点はこの新型イヤフォン解説のストリーミングをtwitchで行ったということです。twitchはゲームの実況中継を行うサイトです。HeadFiなどのオーディオサイトではなくtwitchで行ったというのは注目点です。
またAUDEZEは昨年7月にワイヤレスヘッドフォンのPenroseを発売してゲーミング分野への興味を示していましたが、この時代に有線イヤフォンを開発するということは低遅延を重視するゲーミング市場も重要に捉えているのでしょう。Penroseは2.4GHzのワイヤレスドングルが付属していて一般的なBluetoothを超える低遅延を実現しています。
今年中盤には映画館でおなじみのTHXから初のコンシューマー向け製品としてドングル型のポータブルUSB DAC Onyxが発売されています。価格はUSD$200くらいでTHX-AAAを採用した本格的な製品です。
ポータブルUSB DACを出したTHXの製品戦略を考えてみると、海外で販売されているのがゲーミングデバイスのRazerのサイトだということがキーになるように思えます。有線ヘッドフォン向けデバイスであるからゲームで重要な遅延も問題になりません。またTHXは「THX Spatial Audio」という今流行りでもある空間オーディオの技術を持っています。つまりRazerが発売しているRazer BlackShark V2のようなTHX Spatial Audioに対応したゲーミングヘッドフォンと組み合わせて、対戦ゲームで求められる高精度の立体音響と高品質でリアルな音質の実現を提供するデバイスとしてOnyxが用意されたのではないかと考えることができます。
Razerのサイト
https://www.razer.com/mobile-accessories/thx-onyx/RC21-01630100-R3M1
オーディオ製品のゲームへの歩み寄りとともに、ゲーム製品のオーディオへの歩み寄りもまたあります。
今年9月にはASUSのRepublic of Gamers (ROG)イベントにおいてゲーミングヘッドセットDelta Sが発表されています。ASUSはすでにゲーミングヘッドセットを出していますが、Delta Sで注目すべきは高音質仕様になっているということです。DAC IC(正しくはオーディオCODEC)にES9281を採用し、MQAをサポート(MQAレンダラー)した初めてのヘッドホンです。
ただしMQAレンダラーはソフトウエアでコードが必要なためにゲームアプリでは対応できないでしょう。ASUSは、MQA対応をメインの特徴とするためにES9281を採用したのではなく、従来モデルのROG DeltaでES9218を採用していたのでその延長上とも考えられますが、やはりES9821の130dBもの高音質がゲーミング分野に重要と読んだのかもしれません。
ゲーミングに好適というゲーム仕様のイヤフォンもまた発売されています。今年の6月には有線イヤフォンのAZLA AZEL Edition Gが発売されています。これはAZELのゲーミング向けバージョンで、AZELをベースにして韓国一の人気プロゲーマー監修により再設計を施したバージョンです。銃声音や足音など細かい音を一つ逃さず、敵の位置を把握しやすいサウンドバランスを実現した点が特徴で、特にFPSゲームに最適化しています。
AZLAによると、オリジナルのAZELも本国ではゲーミング用として1万台以上販売されるほどのニーズがあったということです。 Edition Gでは特に左右バランスの完璧さ(音のピンポイントの定位、音の来る方向)が最大のポイントだということです。このために高度なハイエンドイヤフォン並みのチャンネルマッチングをeditionGでは実施しています。
AZEL EditionGとチャンネルマッチングのために廃棄されたパーツ
特性図は左右がきれいに合致している(赤青の色が重なっている)ことに注目
国内ではfinalが有線イヤフォンのVR3000 for Gamingを発売しています。
finalで重要としたポイントはプレーヤーの没入感を高めるという点だといいます。これは具体的にいうと刺激成分が少なく集中力が途切れないということです。方向感覚も大事ながらも、やはりゲーミングでも集中力を生むことのできる没入感が大事であるとfinalでは考えているということです。
final VR3000 for Gaming
イヤフォンはワイヤレスに移行しつつありますが、ゲーミング分野では低遅延の必要からまだ有線イヤフォンが重宝されているという点も見逃せません。つまりシェアを奪われつつある有線イヤフォンが生き残る道の一つであり、高度化するゲーミングがより優れた方向性で銃撃の方向がわかることや、優れた解像力でかすかな足音がわかるようなハイエンドの特性を欲しているということでもあります。プロのeスポーツプレーヤーの反射神経はオリンピックの運動選手並みということをクアルコムのイベントでゲーマーが話してたのが印象的です。
一方でワイヤレスで有線に匹敵するような低遅延化については、今年オーディオテクニカが音楽練習用で発売した赤外線ワイヤレスEP1000IRがひとつの面白い手段ではあります(処理が単純なために遅延が少ないとのこと)、ただしドングルが必要なためゲーミングに広まるかはわかりません。
オーディオテクニカ EP1000IRとiPadのピアノアプリ
2021年12月16日
acoustuneのプロ用モニターイヤフォン、RS oneレビュー
おなじみのAcoustuneから新製品が登場です。しかしいつもの製品とはまったく異なるラインで、「Monitor(モニター)」シリーズの第1弾となるステージモニターイヤフォン「RS ONE」です。発売日は2021年12月10日(金)で、価格は12,980円です。二色カラーの展開です
「RS ONE」は高耐久性とモニタリング性能に焦点を当てて、新開発のミリンクスELドライバーを搭載したステージモニター向けのイヤホンです。もちろん一般ユーザーが音楽を聴くのにも使うことができます。
例えばスパウト部分の折損、コネクター部分やハウジング部分の破損、ケーブルの接触不良等のトラブルが発生しがちな部分をクリアしつつ、大入力でも飛ばないとか、強靭ながら取り回しが良いケーブル、イヤホンとイヤモニシステムがマッチするようにインピーダンスをデザインするなどの工夫でプロフェッショナルの現場を想定して開発されたとのこと。
*モニター用のミリンクスEL ドライバーの採用
音質の面ではAcoustuneらしくポリマーバイオマテリアル「ミリンクス」を振動板素材に採用しています。
ミリンクスは医療用の合成基材ですが、振動板素材としても非常に高い音響性能を誇る高機能樹脂です。このミリンクスを薄膜化した振動板は、軽量でありながら高い強度と柔軟性を合わせ持つのが特徴です。これはいわばムチのように強いがよくしなるということのようです。
ステージモニターとして設計したRS ONEでは新たに「ミリンクスEL ドライバー」を採用しています。このミリンクスEL ドライバーは通常のミリンクスドライバーに比べ、より正確なモニタリングを実現する為のドライバーで、内部損失が大きいのが特徴のようです。
内部損失が大きいということは叩いても反響音がしない材質ということで、余計な付帯音を減らしてモニタリング性能を高めています。
また瞬間的に最大250mWの信号が入力された後でも正常に使用できる高耐入力性を実現ているということです。これにより、突発的にステージ上でハウリングのような大きな入力があった場合でも、イヤホンのスピーカーが壊れにくい堅牢性を持つとのこと。
*ワイヤレスイヤモニシステムとのインピーダンスマッチ
ステージモニターは主にワイヤレスイヤモニシステムと組み合わされて使用されます。このイヤモニシステムとイヤホンのインピーダンスが合っていない場合、音量が取りにくくなったりイヤホンの特性が変わってしまい、モニタリング性能が低下する等のケースがあります。RS ONEではこういったトラブルを避けるため、インピーダンスマッチングを的確に行うことでイヤモニシステムと相性問題を少なくしているとのことです。
*新規開発ケーブル『ARM011』と『Pentaconn Ear Long-Type』の採用
ケーブルにはRS ONE 用に新規開発した「ARM011」を採用しています。これは高純度リッツ線とケブラーワイヤーを編み込んだ線材を4芯構造で使用しPU 素材の被覆をしたもので、取り回しが良いながらも癖がつきにくく、かつ断線しにくいとのことです。イヤモニシステム使用上との相性を考え、プラグ部はストレートタイプです。
端子は好評のPentaconn Earタイプで、RS ONEでは、ステージモニターとして重要となる汗対策として、ボディに対して埋め込み式となりコネクター部分に汗が入りにくい構造である『Pentaconn Ear Long-Type』を採用しています。
付属品としてはAcoustune イヤホン開発時のリファレンスとしても使用されているシリコンイヤーピース「AET07」、フォームタイプならではの密閉感を得られる「AET02」が付属します。更にキャリングケースも付属しています。
インプレッション
簡素な箱がプロ用と言う感じを受けます。筐体は軽くカールがあるのでかなりしっかりはまり装着感は良好です。ケーブルはやや硬めだけどしなやかなので取り回しは悪くないですね。見るからに音が良さそうなケーブルです。
モニターらしく帯域バランスの良いフラットな音で、ソリッドでシャープなサウンドです。楽器やホールの立体感、音空間の深みがよく再現されています。
音的にはレベルが高くもっと高くてもおかしくなさそうなくらいの音です。良録音を聞くと音の細かなニュアンスまでよく聞こえ、音の歯切れが良く音像のエッジがよく立っています。音像がつかみやすい音ですね。着色感が少なく、元の音に忠実で、楽器の音色もよくわかります。特にピアノの打鍵音が良いですね。
高域のベルやハイハットの音はかなりシャープで、低音もHD800のような正確な低域で、引き締まっていて、かなり深く沈むように思います。ワイドレンジ感も高いですね。低域が出過ぎていないのでヴォーカルもかなり明瞭に聴こえます。
とても音楽が綺麗に聞こえるので、モニター用としてではなく音楽用としても良いでしょう。
この価格ではかなりレベルが高い音でミリンクスのポテンシャルの高さを感じます。たぶんリケーブルするとさらにレベルの高い音になると思います。
しっかりとした音の輪郭がアコースチューンらしいと思います。独特のミリンクスらしい空間表現が個性的な点もあります。
普段遣いでも気軽にバッグに入れておけそうだし、質実剛健でコスパの良いイヤフォンです。
「RS ONE」は高耐久性とモニタリング性能に焦点を当てて、新開発のミリンクスELドライバーを搭載したステージモニター向けのイヤホンです。もちろん一般ユーザーが音楽を聴くのにも使うことができます。
例えばスパウト部分の折損、コネクター部分やハウジング部分の破損、ケーブルの接触不良等のトラブルが発生しがちな部分をクリアしつつ、大入力でも飛ばないとか、強靭ながら取り回しが良いケーブル、イヤホンとイヤモニシステムがマッチするようにインピーダンスをデザインするなどの工夫でプロフェッショナルの現場を想定して開発されたとのこと。
*モニター用のミリンクスEL ドライバーの採用
音質の面ではAcoustuneらしくポリマーバイオマテリアル「ミリンクス」を振動板素材に採用しています。
ミリンクスは医療用の合成基材ですが、振動板素材としても非常に高い音響性能を誇る高機能樹脂です。このミリンクスを薄膜化した振動板は、軽量でありながら高い強度と柔軟性を合わせ持つのが特徴です。これはいわばムチのように強いがよくしなるということのようです。
ステージモニターとして設計したRS ONEでは新たに「ミリンクスEL ドライバー」を採用しています。このミリンクスEL ドライバーは通常のミリンクスドライバーに比べ、より正確なモニタリングを実現する為のドライバーで、内部損失が大きいのが特徴のようです。
内部損失が大きいということは叩いても反響音がしない材質ということで、余計な付帯音を減らしてモニタリング性能を高めています。
また瞬間的に最大250mWの信号が入力された後でも正常に使用できる高耐入力性を実現ているということです。これにより、突発的にステージ上でハウリングのような大きな入力があった場合でも、イヤホンのスピーカーが壊れにくい堅牢性を持つとのこと。
*ワイヤレスイヤモニシステムとのインピーダンスマッチ
ステージモニターは主にワイヤレスイヤモニシステムと組み合わされて使用されます。このイヤモニシステムとイヤホンのインピーダンスが合っていない場合、音量が取りにくくなったりイヤホンの特性が変わってしまい、モニタリング性能が低下する等のケースがあります。RS ONEではこういったトラブルを避けるため、インピーダンスマッチングを的確に行うことでイヤモニシステムと相性問題を少なくしているとのことです。
*新規開発ケーブル『ARM011』と『Pentaconn Ear Long-Type』の採用
ケーブルにはRS ONE 用に新規開発した「ARM011」を採用しています。これは高純度リッツ線とケブラーワイヤーを編み込んだ線材を4芯構造で使用しPU 素材の被覆をしたもので、取り回しが良いながらも癖がつきにくく、かつ断線しにくいとのことです。イヤモニシステム使用上との相性を考え、プラグ部はストレートタイプです。
端子は好評のPentaconn Earタイプで、RS ONEでは、ステージモニターとして重要となる汗対策として、ボディに対して埋め込み式となりコネクター部分に汗が入りにくい構造である『Pentaconn Ear Long-Type』を採用しています。
付属品としてはAcoustune イヤホン開発時のリファレンスとしても使用されているシリコンイヤーピース「AET07」、フォームタイプならではの密閉感を得られる「AET02」が付属します。更にキャリングケースも付属しています。
インプレッション
簡素な箱がプロ用と言う感じを受けます。筐体は軽くカールがあるのでかなりしっかりはまり装着感は良好です。ケーブルはやや硬めだけどしなやかなので取り回しは悪くないですね。見るからに音が良さそうなケーブルです。
モニターらしく帯域バランスの良いフラットな音で、ソリッドでシャープなサウンドです。楽器やホールの立体感、音空間の深みがよく再現されています。
音的にはレベルが高くもっと高くてもおかしくなさそうなくらいの音です。良録音を聞くと音の細かなニュアンスまでよく聞こえ、音の歯切れが良く音像のエッジがよく立っています。音像がつかみやすい音ですね。着色感が少なく、元の音に忠実で、楽器の音色もよくわかります。特にピアノの打鍵音が良いですね。
高域のベルやハイハットの音はかなりシャープで、低音もHD800のような正確な低域で、引き締まっていて、かなり深く沈むように思います。ワイドレンジ感も高いですね。低域が出過ぎていないのでヴォーカルもかなり明瞭に聴こえます。
とても音楽が綺麗に聞こえるので、モニター用としてではなく音楽用としても良いでしょう。
この価格ではかなりレベルが高い音でミリンクスのポテンシャルの高さを感じます。たぶんリケーブルするとさらにレベルの高い音になると思います。
しっかりとした音の輪郭がアコースチューンらしいと思います。独特のミリンクスらしい空間表現が個性的な点もあります。
普段遣いでも気軽にバッグに入れておけそうだし、質実剛健でコスパの良いイヤフォンです。
2021年12月09日
アスキーに「ASMR専用をうたう「COTSUBU for ASMR」、ではASMR向けの音作りとは何か?」を執筆しました
アスキーに「ASMR専用をうたう「COTSUBU for ASMR」、ではASMR向けの音作りとは何か?」を執筆しました。
https://ascii.jp/elem/000/004/077/4077279/
https://ascii.jp/elem/000/004/077/4077279/
2021年11月24日
アスキーに「Astell&Kernの「AK ZERO1」を聴く、平面駆動/ダイナミック/BA型の異種アンサンブル」の記事を書きました
アスキーに「Astell&Kernの「AK ZERO1」を聴く、平面駆動/ダイナミック/BA型の異種アンサンブル」の記事を書きました。
https://ascii.jp/elem/000/004/075/4075708/
https://ascii.jp/elem/000/004/075/4075708/
2021年10月18日
アスキーに「HIFIMANが新DAC「HYMALAYA DAC」開発、小型のマルチビットDAC」の記事を執筆しました
アスキーに「HIFIMANが新DAC「HYMALAYA DAC」開発、小型のマルチビットDAC」の記事を執筆しました。
https://ascii.jp/elem/000/004/071/4071119/
https://ascii.jp/elem/000/004/071/4071119/
2021年09月24日
Oriolusのハイエンドイヤフォン「Mellianus JP」レビュー
OriolusのMellianus JPは生産終了した先代Mellianusのマイナーチェンジモデルです。Oriolusの「JPシリーズ」はOriolus本社から全面的なサポートを受けた上に、日本代理店と関連会社のノウハウで作り出したOriolusハイエンドラインナップということです。
Mellianus JPは、先代Mellianusの音の傾向を維持しながら、低音域から高音域までさらにフラットになるようにチューニングされ、情報量とディテールをさらに増すという方向で音造りがなされたとのこと。そのポイントの一つとなるのがPW Audio社の特注のケーブルを採用するということです。これはPW audio社のノウハウを借りながら10数種類の候補を用意してもらい、その中で「Silver Liar」が一番目標に近いということで選ばれています。先代の片方10BAという構成は本機でも堅持されています。これは様々な試行錯誤の結果だということです。インピーダンスは36Ωで、出力音圧レベルは109dB/mWです。
Mellianus JPにはカスタムモデルもありますが、今回レビューするのはユニバーサルタイプです。カスタムモデルもユニバーサルモデルもチューニングは同じだとのことです。
ユニバーサルモデルは発売日が9月24日で価格はオープンですが推奨価格は税込みで385,000円。カスタムモデルは9月24日に受注開始(納期が2-3ヶ月ほど)で、価格はやはりオープンですが推奨価格は税込みで431,200円です。かなりのハイエンドモデルと言えます。
インプレッション
Vannuysのヘビーデューティーなケースに格納されています。ソフトケースですが、ちょっとやそっとの衝撃では大丈夫そうです。高価なモデルなので安心感は高いでしょう。
本体はシェルが透明で10個のドライバーが整然と配列されているのがよくわかります。シェルの透明度も高いですね。フェイスプレートはシルバーでOriolusのロゴが記されておりシンプルな感じです。
PW Audio製のケーブルはやはりシルバーで配色されていて豪華ですが、柔軟性は高く全体にそう重くはないので取り回しは大変ではないでしょう。プラグは4.4mm端子のみです。日本ディックス製Pentaconnブランドの立派なプラグで実際にかなりしっかりと接続できます。
ケーブルは2ピンのタイプで、旧UEやfinalのようにはめ込みのガイド溝のあるタイプですので2ピンでよく問題になる極性を間違うことはありません。これを買うクラスの人は多数ケーブルをお持ちだと思いますが、ガイド溝だけ気をつければ付け外しも硬くないのでリケーブルは簡単でしょう。
特徴的なのはノズルの先端のボア(穴)が4つもあいていることで、3つは金属のチューブが挿入されていて、一つはアクリルの無垢です。そのためノズルが太いので少しイヤーピースは嵌め込みにくい感じです。
デモ機には試用のイヤーピースが一組だけ入っていましたが(ウエブ画像はデモイヤピース)、SednaEarfit light shortが装着できました。装着感は良好で10ドライバーの割にシェルのサイズはそう大きくないので耳への座りも良いですね。重さもさほどではありません。
試聴はAKのA&Futura SE180で行いました。AK4497のSEM2を使用しています。能率は適度で通常ゲインで十分に音量は取れます。
音は厚みがあって豊かなサウンドで高級オーディオのような品格高い音です。音はシャーブですが、マルチBAにありがちな細身な音ではなく、どっしりとした太身の音です。しかし、もちろんハイエンドイヤフォンですから大味なわけではありません。豊かで洋々としたサウンドですが、細かいところに耳を傾けると楽器の音や声質がよくわかります。アカペラの多声曲を聴くと煌めくようなソプラノからどっしりとしたバリトンやバスまで様々な声質が巧みに描き分けられています。着色感は少ない方でここはBAらしい音色です。
音の広がりも良く、ホールに響き渡るように広い音空間が感じられます。一方でヴォーカルはわりと耳に近い方ですから、広いホールの前方席で聴いている感じですね。
低域はたっぷりとあって迫力があります。これも音のスケール感の高さに貢献している感じです。
AK SE180とMellianus JP
高再現性の音ですがモニター系の音ではなく、聴いて楽しむ系の音造りと言えるでしょうね。それでいて音楽の細部の表現までしっかりと再現されていて、音鳴り自体を楽しむハイ・ファイオーディオ向けのサウンドでもあります。
楽器音の再現はとても鮮明で、弦楽器のピッキングの切れ味も気持ち良く聞くことができます。良録音のサウンドチェック用音源で聴くとかなり細かい音まで抽出されて鮮明に聴き取ることができます。音が漆黒に消え入る時の残響感も見事で情報量の多さには圧倒されます。SE180/SEM2の性能を極限まで楽しめることでしょう。
SE180のDACカードをES9038ProのSEM1に変更するとサウンドはもっとアクティブで音場により深みが感じられ、ヴォーカルはより鮮明に聞き取れるようになります。SEM2に比べるとよりシンプルな楽曲で音再現の凄みを感じられます。ES9038Proの圧倒的な性能をしっかりと再現している点はさすがです。
全体的に音性能はかなり高いのですが、あまり分析的にならずによく音楽の楽しさを伝えているサウンドです。
まとめ
個人的には帯域バランスや音色なども含めてかなり完成度が高く、あえてリケーブルする必要はないかなとは思います。そういう意味では今回採用したPW Audioのケーブルは十分狙い通りだったと言えます。
全体にBAらしい着色感のなさや音のタイトさを生かしながらも、ある意味でダイナミック的な迫力や分厚さを兼ね備えた音です。情報量の多さもあいまってハイエンドの凄みを堪能できるサウンドですが、客観的なプロデューサー向けの音ではなく週末に好きな音楽を楽しみたくなる感じの音です。最高クラスのDAPを持っている方で、音楽を楽しみたいイヤフォンを探している人にお勧めです。
Mellianus JPは、先代Mellianusの音の傾向を維持しながら、低音域から高音域までさらにフラットになるようにチューニングされ、情報量とディテールをさらに増すという方向で音造りがなされたとのこと。そのポイントの一つとなるのがPW Audio社の特注のケーブルを採用するということです。これはPW audio社のノウハウを借りながら10数種類の候補を用意してもらい、その中で「Silver Liar」が一番目標に近いということで選ばれています。先代の片方10BAという構成は本機でも堅持されています。これは様々な試行錯誤の結果だということです。インピーダンスは36Ωで、出力音圧レベルは109dB/mWです。
Mellianus JPにはカスタムモデルもありますが、今回レビューするのはユニバーサルタイプです。カスタムモデルもユニバーサルモデルもチューニングは同じだとのことです。
ユニバーサルモデルは発売日が9月24日で価格はオープンですが推奨価格は税込みで385,000円。カスタムモデルは9月24日に受注開始(納期が2-3ヶ月ほど)で、価格はやはりオープンですが推奨価格は税込みで431,200円です。かなりのハイエンドモデルと言えます。
インプレッション
Vannuysのヘビーデューティーなケースに格納されています。ソフトケースですが、ちょっとやそっとの衝撃では大丈夫そうです。高価なモデルなので安心感は高いでしょう。
本体はシェルが透明で10個のドライバーが整然と配列されているのがよくわかります。シェルの透明度も高いですね。フェイスプレートはシルバーでOriolusのロゴが記されておりシンプルな感じです。
PW Audio製のケーブルはやはりシルバーで配色されていて豪華ですが、柔軟性は高く全体にそう重くはないので取り回しは大変ではないでしょう。プラグは4.4mm端子のみです。日本ディックス製Pentaconnブランドの立派なプラグで実際にかなりしっかりと接続できます。
ケーブルは2ピンのタイプで、旧UEやfinalのようにはめ込みのガイド溝のあるタイプですので2ピンでよく問題になる極性を間違うことはありません。これを買うクラスの人は多数ケーブルをお持ちだと思いますが、ガイド溝だけ気をつければ付け外しも硬くないのでリケーブルは簡単でしょう。
特徴的なのはノズルの先端のボア(穴)が4つもあいていることで、3つは金属のチューブが挿入されていて、一つはアクリルの無垢です。そのためノズルが太いので少しイヤーピースは嵌め込みにくい感じです。
デモ機には試用のイヤーピースが一組だけ入っていましたが(ウエブ画像はデモイヤピース)、SednaEarfit light shortが装着できました。装着感は良好で10ドライバーの割にシェルのサイズはそう大きくないので耳への座りも良いですね。重さもさほどではありません。
試聴はAKのA&Futura SE180で行いました。AK4497のSEM2を使用しています。能率は適度で通常ゲインで十分に音量は取れます。
音は厚みがあって豊かなサウンドで高級オーディオのような品格高い音です。音はシャーブですが、マルチBAにありがちな細身な音ではなく、どっしりとした太身の音です。しかし、もちろんハイエンドイヤフォンですから大味なわけではありません。豊かで洋々としたサウンドですが、細かいところに耳を傾けると楽器の音や声質がよくわかります。アカペラの多声曲を聴くと煌めくようなソプラノからどっしりとしたバリトンやバスまで様々な声質が巧みに描き分けられています。着色感は少ない方でここはBAらしい音色です。
音の広がりも良く、ホールに響き渡るように広い音空間が感じられます。一方でヴォーカルはわりと耳に近い方ですから、広いホールの前方席で聴いている感じですね。
低域はたっぷりとあって迫力があります。これも音のスケール感の高さに貢献している感じです。
AK SE180とMellianus JP
高再現性の音ですがモニター系の音ではなく、聴いて楽しむ系の音造りと言えるでしょうね。それでいて音楽の細部の表現までしっかりと再現されていて、音鳴り自体を楽しむハイ・ファイオーディオ向けのサウンドでもあります。
楽器音の再現はとても鮮明で、弦楽器のピッキングの切れ味も気持ち良く聞くことができます。良録音のサウンドチェック用音源で聴くとかなり細かい音まで抽出されて鮮明に聴き取ることができます。音が漆黒に消え入る時の残響感も見事で情報量の多さには圧倒されます。SE180/SEM2の性能を極限まで楽しめることでしょう。
SE180のDACカードをES9038ProのSEM1に変更するとサウンドはもっとアクティブで音場により深みが感じられ、ヴォーカルはより鮮明に聞き取れるようになります。SEM2に比べるとよりシンプルな楽曲で音再現の凄みを感じられます。ES9038Proの圧倒的な性能をしっかりと再現している点はさすがです。
全体的に音性能はかなり高いのですが、あまり分析的にならずによく音楽の楽しさを伝えているサウンドです。
まとめ
個人的には帯域バランスや音色なども含めてかなり完成度が高く、あえてリケーブルする必要はないかなとは思います。そういう意味では今回採用したPW Audioのケーブルは十分狙い通りだったと言えます。
全体にBAらしい着色感のなさや音のタイトさを生かしながらも、ある意味でダイナミック的な迫力や分厚さを兼ね備えた音です。情報量の多さもあいまってハイエンドの凄みを堪能できるサウンドですが、客観的なプロデューサー向けの音ではなく週末に好きな音楽を楽しみたくなる感じの音です。最高クラスのDAPを持っている方で、音楽を楽しみたいイヤフォンを探している人にお勧めです。
2021年09月18日
アスキーに「テクニクスがLDAC対応で第2世代の完全ワイヤレス「EAH-AZ60/AZ40」」の記事を執筆しました
アスキーに「テクニクスがLDAC対応で第2世代の完全ワイヤレス「EAH-AZ60/AZ40」」の記事を執筆しました。
https://ascii.jp/elem/000/004/069/4069083/
https://ascii.jp/elem/000/004/069/4069083/
アスキーに「珍しいアクティブクロスオーバー対応のワイヤレスポータブルシステム、zionote」の記事を執筆しました
アスキーに「珍しいアクティブクロスオーバー対応のワイヤレスポータブルシステム、zionote」の記事を執筆しました。
https://ascii.jp/elem/000/004/066/4066748/
https://ascii.jp/elem/000/004/066/4066748/
2021年08月21日
アスキーに「Astell&KernのOpenAppサービスでApple Musicが利用可能に」の記事を執筆
アスキーに「Astell&KernのOpenAppサービスでApple Musicが利用可能に」の記事を執筆しました。
https://ascii.jp/elem/000/004/064/4064530/
https://ascii.jp/elem/000/004/064/4064530/