Music TO GO!

2014年12月18日

ユニークメロディのユニバーサルIEM、MaverickとMason

カスタムIEMで知られるユニークメロディ(UM)からユニバーサルIEMが発売されました。
単にユニバーサルIEMがUMから発売されたという以上に注目すべき点はその開発手法です。ここにUMのイヤフォン戦略がかいま見えます。

* UMのイヤフォン戦略とユニバーサル化の開発手法

戦略と言うのは理想的なゴールがあって、そこに到達する道のりを決めるというようなものです。まずUMが考えるカスタムイヤフォンのゴールとは、文字通りの「フルカスタム」のようなもので、エンドユーザーが自分で音決めができ、ユーザーが自分でチューニングするということが目標となっているようです。具体的にはUEのパーソナルリファレンスモニターのようなシステムで周波数特性や位相調整までを個人が行えるようにするというものがひとつ考えられると思います。つまりはユーザーにたいしてのカスタム化の完全な自由を与えるというものですね。
しかし、それをユニバーサルタイプに適用した場合、個人個人が作るわけにはいきません。そこでUMの取ったアプローチは国ごとの代理店と共同開発でその国の事情に「カスタム化」した音決めや開発をするということです。実際には日本からはミックスウェーブがメーカーに赴いて開発をしたということで、その成果が今回紹介するユニバーサルIEMのMaverickとMasonです。
他にはシンガポールやロシアの代理店も同様な開発をしているということです。ロシアについては一部要求が厳しすぎたようでちょっと中止しているようですが、シンガポールについてはLegacyという名前で商品化されています。下記はlegacyについてのリンクです。
http://www.head-fi.org/t/736935/unique-melody-legacy-latest-flagship-12ba-ciem
この国別のユニバーサルタイプはその国でないと買えないということで、Legacyはシンガポールでないと買えませんし、MaverickとMasonは日本でしか買えません。

普通代理店はメーカーに意見を言うくらいの影響力のように思いますが、このUMのユニバーサルIEM開発においては代理店とメーカーの共同開発と言ってよいほどかなり深く関与しているのが特徴です。この辺は実際に開発に参加したミックスウェーブの宮永氏に話を伺いました。
具体的には6日間ほど向こうに滞在して共同作業をしたということです。まずイヤフォンを製作するための技術・ノウハウを伝授してもらったそうで、これには測定機器や3Dプリンタ関連の技術も含まれているということです。

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UM社:写真宮永氏提供

実際の開発はまず音決めの関与で、周波数特性、位相について聴きながら各帯域のチューブの長さを決めていくような感じだそうです。UM側がドライバーの選択枝を用意してくれ、MaverickとMasonのドライバー構成についても宮永氏が決めたということです。また外観のデザイン、名称も宮永氏が決定しました。名称については基本的にはUMのネーミングルールであるイニシャル"M"を踏襲したそうですが、シンガポールがLegacyなように絶対的なルールではないということです。

* MaverickとMason

そうして開発されたMaverickとMasonはUMの初のユニバーサルIEMです。それぞれは全く異なる設計で、使用しているドライバーも異なります。さきにも少し触れましたが、どちらも3DプリンタによるユニバーサルIEMです。UMではカスタムは3Dプリンタを導入していませんが、ユニバーサルで3Dプリンタを採用した理由はまずコスト・生産性で、3Dプリンタを採用すると週で100台は生産できるということ。
次はシェル強度で、3Dプリンタを採用するとシェルの厚みが均質になり、一か所の薄いところに応力集中することがないのでシェル強度が上がるということです。

MasonもMaverickもコンパクトで装着感も悪くありません。ケーブルのプラグは2ピンの一般的なものでリケーブル可能ですが、旧UEのようにはめ込み部分がやや深めなのでケーブルのプラグには注意が必要です。下記の試聴はどちらもケーブルはストック(リケーブルなし)で聴きました。
価格は定価はオープンで、参考価格はMasonが13,0000円(税別)で、Maverickが10,8000円(税別)です。

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UM Mason

Masonは片側12ドライバーのBA機で、構成は低中高にそれぞれ4ドライバーずつの3Wayです。ロクサーヌと同じですね。
宮永氏によるとMASONは「石工」とか「れんが職人」という意味あいですが、「ブランドイメージの再構築」、「また一から立て直す・やり直す」という意味で付けたそうです。MASON、MAVERICKともに、メーカーが開発してきた今までの音とは異なるキャラクターを持っているということで、これはUMのサウンドは「こう新しく生まれ変わったんだ」ということをフラッグシップモデルであり、かつ誰でも使えるユニバーサルであることを利用して広く伝えたかったからということです。

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MasonとAK120II

発売後にチューニングがし直されたということでも話題となりましたが、これはチューニング後のタイプです。たしかに先日のヘッドフォン祭で聴いたときにはMasonが元気よくベース過多な印象でしたが、それがおちついて良い帯域バランスになったと思います。全体的な音質も洗練されてフラッグシップらしくなかなか優れています。
相性としては端正なAK120IIと相性が良く、優等生的なそつのない感じで忠実感の高い再現力を感じます。能率も問題なく普通にハイレゾDAP単体でオーケーです。

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UM Maverick

MaverickはダイナミックとBAのハイブリッドで5ドライバー。ネットワークは4Wayとされています。ダイナミックドライバーの大きさは10mmで、担当音域は非公表ということ。UMにはMerlinというカスタムの5ドライバー・ハイブリッド機がありますが、設計は異なるものです。
Maverickの特徴は低域をBAとダイナミックでともに担当しているということです。ハイブリッド構成では繊細なBAが中高域、迫力のダイナミックが低域という分担が一般的で、Merlinはそうなっています。Maverickもはじめの予定ではMerlinのようにダイナミック一発で低域を担当する予定だったそうですが、開発していくうちに20〜40Hz辺りのバスドラムのアタック感が関係してくる箇所がダイナミック一発では再現出来ず、結果的にBAでその部分を補ったということです。一方で反応が良く口径が小さいダイナミック一発でスピード感を上げて、ダイナミック一発で済ますという選択肢もテストしたそうですが、BAを足した方が結果的には良かったので、ダイナミック+BAという形式にしたということです。
Maverickは「一匹狼」という意味がありますが、ダイナミック型ともBA型とも言えないサウンドに仕上げたため、その名前にしたそうですがたしかに分かります。

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MaverickとPAW Gold

Maverickはインパクトやアタック感が良くキレが鋭いイヤフォンという印象です。特にベースのアタック、インパクトが力強さとシャープさが両立しています。ベースの膨らみ感は少なく、かなり低い深い低域で量感がある良い感じです。そして中高音域もキレが良く明瞭感が高い点も良く、チェロの低く重い弦の唸りも、ヴァイオリンの軽やかな鋭さも両立できています。
普通ハイブリッドっていうと低域のダイナミックのぶわーんという迫力を強調するものですが、Maverickは引き締まって鋭いベースが特徴的です。ベースにBAを加えたのがその目的なら十分達成できてると思います。
Maverickはやや鳴らしにくい(インピーダンスは51Ω)ので、ゲイン高めのオーディオ機器の方が音的な相性もあり良い感じがします。そのためどちらかというとハイレゾDAPよりポータブルアンプ別で力感のあるシステムが良いと思います。Portaphile Micro Muses01みたいにゲイン高めでも良いですね。あるいはハイレゾDAPならゲイン切り替えがついているもので、たとえばPAW Goldのハイゲインなどがキレがよく緩みない低域を楽しめます。

個人的にはMarverikがなかなか魅力的でした。Masonの優等生的な音質の高さも良いのですが、Maverickには個性があり、ちょっと独特のインパクト感と切れの良さがあります。


カスタムIEMメーカーがユニバーサル版を出すというにはさまざまな理由があると思います。これはユーザーのメリットと言い換えてもよいかもしれません。たとえばカスタムに比べて価格を下げるため、カスタムではリセールバリューがないのでそれを防ぐため、また1964ADELのように新技術を投入するテスト用、拡販のため、などなど。UMの場合は大きな戦略のなかのユニバーサルの位置付けというものを考慮して、現地代理店との共同開発を取ったという手法が興味深いものです。
今後のUMの製品に関しても、特にユニバーサルモデルに関しては同様な手法を取るということでまた面白いユニバーサル機が出てくるかもしれません。



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2014年11月25日

JVCのウッドシリーズイヤフォンの新フラッグシップ、FX1100登場

JVC(旧ビクター)のFX1100はウッドシリーズのイヤフォンの新しいフラッグシップで12月上旬に発売となります。5万円台後半という高価格帯のハイエンドイヤフォンです。

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*FX1100の特徴

JVCは木を振動させて音楽再生するウッドコーンのスピーカーの要素技術を持っていましたが、イヤフォン市場にその技術を導入して2008年2月に初代であるHP-FX500を発売しました。その後ウッドドームユニットの大型化などの改良で技術を上位機種のFX700を2010年の2月に発売します。
その後4年ほどたって今年の2月に最新技術を投入した待望の新製品が3機種ラインナップします。これがHA-FX650/750/850です。
これは好評を持って迎えられましたが、その上位機種となるのがこの12月に発売予定のFX1100です。

1. ウッド振動板の利点

他のウッドシリーズと共通しますが、FX1100の特徴はまずウッド振動板をはじめウッド素材にこだわった設計です。ウッドイヤフォンシリーズではウッドをハウジングと振動板だけではなく、ウッドダンパー、ウッドディフューザー、振動板の背面ウッドプレートなどウッド素材で音の作り込みをしています。
木製ハウジングというのはヘッドフォンの世界ではオーディオテクニカやGRADOなどでつかわれてきました。木の独特の響きの乗った美しい音が特徴です。しかし振動板まで木製というのはありません。

前述のウッドハウジングのヘッドフォンのように木という素材は楽器のように美しく響くというイメージがありますが、このJVCのウッドシリーズで着眼されているのはむしろ振動板として木が優れた特性を持っているという点です。それは木は伝搬速度が高いので、スピード感がよく広がりのある音を再生することができ、さらには木は内部損失特性が高いので、付帯音がなくピュアな音になる、という従来の素材に比べた利点があるからです。もうひとつ木には紙や金属素材と違って木目があるため、正円形である振動板で均一素材にある共振がないという利点もあります。
(ただイヤフォンはスピーカーと違って木目方向を計算した音場設計ができないのでおのずと異なる点はあるそうです)

2. FX1100と従来製品の違い

従来のFX650/750/850とFX1100の違いは大きくは以下の通りです。
- 黒木目仕様の外装色
- 新しい6N OFC編組ケーブル(L型プラグ採用およびプラグのアルミエンドの採用)
- MMCXでリケーブルできること(FX850もMMCXを採用しているがケーブルのグレードはFX1100の方が高い)
- 入力プラグからドライバーユニットまでの信号伝送経路に音響ハンダを採用して音質を向上させたこと
- スパイラルドットイヤピースの別サイズ(ML/MS)がはいっていること

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新旧のイヤフォンプラグの違い(L型がFX1100)

またこれらの他に、イヤホン本体の最適化チューニングも行われています。
JVCに聞いてみたところ、FX1100はFX850が完成した後で、この完成度の高い母体を活かして更に追求していけばもっと良い音になるはずというエンジニアの意見から密かに試作を重ねたということで、出来た試作機を企画や営業に聞かせたところ、これを世に出さないのは勿体無いということで急遽商品化を進めることとなったということです。
従来のトップモデルであるFX850とは振動板は同じですが最適化チューニングとして各種音響ダンパーの調整と追加を行っているそうです。なお追加された部品はパッケージ等に記載されてる分解図には載っていないそうです。
この最適化チューニングで得たかった事としてはウッドイヤホンの特徴である美しく自然な響きと広がりをもっと高次元で再現したかったということだそうです。響きの部分は音としてデリケートであり、あらが出易く再現が難しい。それを実現させるためによい母体(つまりイヤフォン本体)、高純度なケーブルと高品位なハンダを使用し、これら最高の素材を殺すことなく、よい部分だけを引き出す考えでチューニングした結果、より滑らかで、生々しい再生音を響かせることに成功したということです。

なおウッドシリーズはハイレゾ対応を掲げていますが、日本オーディオ協会の定義とロゴではなく、独自の基準で再生周波数帯域評価や聴感評価を含めた社内基準で実施しています。特に聴感評価におけるハイレゾソースの再現性に重点を置いているということです。

*使用感

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FX1100は手に取るとミニチュアの工芸品のように精密感があり、高級感と質感の高さを感じられます。ちょっとずっしりとした質感が良いですね。比べてみるとFX850はある意味ウッド素材であることを主張していますが、FX1100は玄人好みで黒檀のように渋く仕上がっていると言えると思います。

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反面でちょっと大きめで装着感はいまひとつのところもあります。分解図をみるとかなり複雑な設計になっているので、小型化するのはむずかしいかもしれませんが、もう少し先端部分に工夫があると良いようにも思えます。装着感はイヤピースでも変わりますので、FX1100になって新たにイヤピースにMS/MLのサイズが追加されたのはFX850からの実質的な装着性の改良とは言えるでしょう。

*音質

1. ハイレゾプレーヤーとFX1100の組み合わせ

まず音の個性を確かめるために慣れているAK240を使ってFX1100を聴いてみました。イヤピースはスパイラルドットのMLで、ケーブルは標準の6Nケーブルです。イヤピースはフォーム(低反発)の方がベースは出ますが、スパイラルドットの方がこのイヤフォンらしい音だと思います。
ちなみにスパイラルドットイヤピースとはJVC独自のイヤピースで、イヤーピースの内壁にディンプルを設けて音質劣化の原因となるイヤーピース内の反射音を拡散させ、音のにごりを制御するということです。その結果としてクリアで自然な音が再現できるようになったとのこと。

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まず感じるのは音の広がりの豊かさで、見通しが良くクリアでよく広がる感じです。これはイヤフォンではかなり上位にランクすると思います。
次に感じるのは音色がピュアで濁りがなくきれいな点です。ワイドレンジで高域の伸びも鮮烈で、低域もかなり低いところまで出ていて低い方の量感がしっかりある感じです。低域はかなりたっぷりあって後述するようにFX850よりもあるけれども、全体的にベースヘビーという感じではなく、いわゆるドンシャリ感は少ないと思います。音の高域での伸びてゆく感じ、ベースがよどんで重いのではなくクリーンでしっかりしているのが良い感じです。反面で他のウッドヘッドフォンにあるような木の響き(レゾナンス)というのはあまりなくて、むしろすっきりとしてニュートラルで無着色だと思います。
アタックは適度にあって柔らかすぎるということはなく、パーカッションの打撃を聞くと音のスピードが速くてトランジェントが高い感じが分かります。音の立ち上がりと立ち下りが急峻という感じですね。それが自然でかつ音色がきれいな楽器音の再現につながっています。

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ヴォーカルは聴きやすく、女性ヴォーカルに透明感のある瑞々しさがあります。
弦楽四重奏が美しく、弦の重なりと情報量の多さが印象的で音の消え入る余韻まで聞こえます。この辺は試聴しててもしばし聴き惚れてしまいました。
このへんの音のピュアで純度の高い美しさというのはなかなか他のイヤフォンではない、さきの木の振動板の利点をもったウッドイヤフォンならではの魅力ではないかと思います。

また聴いてみてFX1100と相性が良かったのはSONY Walkman ZX1です。
FX1100の透明で鮮明な楽器音、きれいに音が整ったまま伸びていくところはデジタルアンプのZX1はうまく再現しています。
またFX1100の良いところはチタンなど金属振動板にありがちな硬さがないので、高音域もきつくなりすぎずにZX1の良さも引き出しているように思います。細かい音の粒立ちが鮮明に分かるので、解像力の高さも良くわかります。ベースはたっぷりあって音楽のよい下支えとなり、FX1100の広い音再現がZX1の空間再現力をうまく後押ししてスケール感を演出しているようで、良い組み合わせだと思います。

2. ポータブルヘッドフォンアンプとFX1100の組み合わせ

今回はFX1100やFX850といっしょにJVCのポタアンであるSU-AX7も貸し出してもらいました。SU-AX7はJVC得意のK2技術を採用したDAC内蔵ポータブルアンプで、iPhoneとのデジタル接続を意識しています。また音質追求を考えたフローティングシャーシや光デジタル入力も可能である汎用性なども特徴的です。

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いきなりFX1100とSU-AX7で聞くとどっちの音支配か分からなくなるので、慣れてるWestone W60ではじめにSU-AX7の音を確かめてみました。iPhoneをソースとしてUSB Aを使用したいわゆるiDeviceデジタル方式で接続し、ケーブルはVentureCraftのオーディオ用USBケーブルを使用しています。
音の印象としてはSU-AX7は帯域再現がフラットでかつワイドレンジ、透明感があって音が速いという印象です。どちらかというと玄人好みの音作りだと思います。これはイヤフォンとも共通していると気がついたのですが、JVCらしさ、JVCの音というのはワイドレンジで透明感があって音が歪み感少なくピュアなところではないかと思います。

実際にSU-AX7とFX1100の相乗効果は高く、ひときわ澄んで気持ちよく上も下も伸びるワイドレンジの音空間が広がります。どちらかの音支配というよりは伸ばし合うタイプです。オーケストラものではかなりスケール感を感じられますね。SU-AX7の帯域バランスは良いと思うけれども、人によってはもう少しベースが欲しいと思うかもしれません。そういう意味ではベースを少し足したFX1100はより適合するでしょう。
この組み合わせはかなりオススメ出来ると思います。同じメーカーの同じ思想がうまく噛み合ったという好例と言えるのではないでしょうか。

FX1100ではL字プラグのケーブルになったのでハイレゾプレーヤーやiPhoneではよいんですが、ポータブルアンプだとややボリュームなどの干渉に気を使います。ただしSU-AX7との組み合わせでは特に問題とはなりません。

3. iPhone単体とFX1100の組み合わせ

FX1100は能率は問題なく音は鳴らしやすいほうですので、iPhone単体で聴いても良い音で楽しめます。ただしハイレゾプレーヤーやポータブルアンプで聴いた後だとかなり物足りなく感じられます。特にFX1100の良いところであるピュアでどこまでも伸びていく気持ちよさがなくなり、生楽器再現の音の立ち上がりでかなり甘さを感じます。
言い換えるとFX1100はハイレゾプレーヤーやポータブルアンプで聴いたときの伸びしろが大きいということも言えますね。やはり高性能のポータブル機材をもっているマニア層に聴いてほしいイヤフォンだと思います。

今回はFX1100の他にFX850とFX750も借りました。聴いてみるとFX850は定評のある良い音として、FX750が意外と健闘しているように思いました。iPhone主体で聴くカジュアルユーザーには実売価格を考慮するとFX750がコストパフォーマンスの高い選択ではないかと思います。

4. FX1100とFX850との比較試聴

おそらく多くの人が興味を持つところはFX850との音の違いではないかと思います。そこでAK240を使用してFX1100とFX850の比較試聴をしてみました。ちなみに曲はジャズヴォーカルのTiffanyのBut not for meを使用しています。またイヤピースもたっぷり借りたのでイヤピースはFX1100とFX850とも同じスパイラルドットのMLを使っています。はじめはFX1100、FX850ともそれぞれの標準ケーブルです。(それぞれエージングは十分されていると聴いています)

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FX1100(左)とFX850(右)

はじめにFX1100で曲をしばらく聴いてからFX850に変えると、音が全体に味が薄くなったように感じられます。なにか失ったようで、厚みがなくなり音が粗くなると言っても良いです。全体の音の印象はほぼ同じでキャラクター的には似ていますが、FX850はベースが軽めに感じられます。
ふたたびFX1100に戻すと、ベースがグッと重みが出て迫力が増し、さらに全体の密度感が向上して芯がしっかりとするのが分かります。おそらく差はひとレベル違うのはわかると思います。

では、この差はケーブルだけのものかと言われるかもしれないので、今度はイヤフォン部分のみの違いを聴くために、FX1100の6NケーブルをFX850につけてみました。同様に聴き比べてみると、差は確かに縮まりますが同じにはなりません。ベースの量感は近くなりますのでこれはケーブル影響に思われますが、軽さと粗さの差は縮まりますがまだあります。やはり音響ハンダやさらなるチューニングによって音の荒さが取れて高級感が一段上がってるようには思いますね。
たとえばハイレゾ音源を楽しむというのは細部にこだわるということですから、より高音質の音源を聴いてみようというハイエンドユーザーにはこうした細かい差が意味を持ってくると言えるでしょう。

5. FX1100のリケーブルについて

FX850から引き継いでFX1100でもMMCXでのケーブル交換が可能です。
ただFX1100の6Nケーブルはなかなか優れていると思いますので、音質を上げるという意味ではケーブル交換の必要性は少ないかもしれません。FX1100のキャラクターによく合っているようにケーブルが作られていますし音もよいので、これ以上を求めるとちょっと高くつくでしょう。FX850を買ってはじめからリケーブルしようと思ってたハイエンドユーザーにはお得なモデルがFX1100となるでしょう。
一方でケーブルは好みの部分もあるので、銀線に変えて音色の違いを楽しむというのはありだと思います。

*まとめ

FX1100は高級感を感じさせる工芸品のような質感高い作りの良さがまず魅力的です。少し大きめで装着感に難もありますが、音質はかなり良いイヤフォンです。
木を使ったというと古くはGRADO、または最近のEdition5やKuradaのように木の響きを特徴とするものを想像してしまいますが、FX1100では木を振動板に使うことで得られる内部損失の高さという点に着目してピュアで混じりけのない音を再現することに成功しています。ウッドシリーズは変わり種として見られることもありますが、木の響きによる変わった音色が特徴と言うのではなく、ウッドの採用でストレートな音の良さを可能にしたということがポイントだと思います。
ですからウッド振動板でハイエンドを狙ったイヤフォンを設計するのは理にかなってると言えます。

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そうしたウッドイヤフォンの長所を踏まえると本来ウッドイヤフォンはハイエンドユーザーにもアピールできる音質のポテンシャルをもっていたと言えるでしょう。そこでFX1100は評判の良かったFX850からも音質的にさらに向上していて、音響ハンダの採用もピュアな音再現の追求という点でその思想を突き詰めていると思います。そこがこだわりの要素なのでしょう。
またSU-AX7も使ってみて、アンプとイヤフォンの違いがあってもブランドとしての音の作りが一貫しているのも感じられました。JVCならではの音、というのをイヤフォンの市場でも追求する姿勢もよいですね。
FX1100とFX850の違いはケーブルだけではないと思います。天然シルクと合成繊維のようなもので、ひとクラス上の音を求めるハイエンドユーザーにアピールするポイントだと思います。ウッドイヤフォンの音が好きで、その音を突き詰めたいユーザーにはFX1100はお勧めだと思います。

いわば好評のFX850をベースにして、FX850以上を欲する人のためにオフィシャルで最適なリケーブルをしてさらに音響ハンダやチューニングを詰めてチューンナップしたスペシャルモデルがFX1100ということも言えるかもしれません。他モデルとは違う黒のボディは一味違うスペシャルモデルであることを示しているように思います。
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2014年10月21日

DENONのDAC内蔵ポータブルアンプ、DA-10 レビュー

まえに今年のポタ研でDENONのDA-10の発表会の記事を書きました。今回はDA-10を実際に使用してみてのレビューと解説などを書きます。

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DA-10は国産オーディオメーカーの老舗であるDENONが開発したDAC内蔵のポータブルヘッドフォンアンプです。入力はアナログ入力のほかに2系統のUSB入力をもっています。

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DA-10底面

Appleが30pinドックコネクタを採用していた時はアナログのラインアウトがあったので、アナログ入力で済んだのですが、Appleがライトニングコネクタに変えてからはアナログの出力が出せなくなったので、iPhoneから品質の良い音の取り出しをするためにはこうしたDAC付きのポータブルアンプが必要となってきたという経緯があります。
DA-10のUSB端子はUSB AとUSB microBの二つあります。これは簡単に言うとUSB AがiPhoneとのデジタル接続をする端子で、USB MicroBはPCと接続をするための端子となります。これについて詳細は以降書いていきます。DACチップはいまやバーブラウンの主力であるPCM1795です。DSD再生など最新の技術動向に向いています。

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DA-10正面

出力はミニステレオ端子ひとつで、ヘッドフォン出力です。ただしこれは出力を固定することでアクティブスピーカーなどデスクトップでも使えるようにしてあります。
DACの入力はDA300に準じたもので、最大でPCMが196kHz/24bitまで、DSDは5.6MHz(DSD128)までのネイティブ再生が可能です。iPhoneとの接続では48kHz/24bitが上限です(例外はあとで)。

* 技術的特徴 - Advanced AL32ありき

いわく、アーキテクチャの踏襲という意味ではSX1をデスクトップにしたのがDA300で、町に持ち出すのがDA-10ということです。
DA-10はポータブル版のDA300ともいうべき多くの特徴を持っています。まずDENONの看板でもあるAdvanced AL32(以下AL32)です。
これはまずビット拡張で32bitにしてからアップサンプル(時間軸拡張と言っている)をしています。
特徴的なのは搭載するPCM1975 DACチップの特性を生かして、出来合いのPCM1975のデジタルフィルターをバイパスして、より高精度のAdvanced AL32をデジタルフィルターとして置き換えているということです。
このようにまずアルファプロセッシングありきで設計がなされ、このアップサンプリング・32ビット拡張とフィルター部分の置き換えによってPCM1975の能力を最大限に発揮できるというわけです。アップサンプリングはDA-10に入力されるサンプリングレートによって調整が行われ、ハイレゾデータを生かすことができます。
この効きと言うのはデータの下位ビットに相当するところで、例えば静寂の部分から音の立ち上がりが滑らかと言うことです。前の記事でも書きましたが、この下位ビットの処理が実のところハイレゾのかなめですね。

ちなみにAdvanced AL32はFPGAで実装されています。またAL32はPCM向けのものですから、DSD再生時ではAL32はバイパスされます。

* 技術的特徴 - ちいさくともオーディオ機材

それとDA300と同様にオーディオ機器らしいこった設計もDA-10のポイントです。
DA300のレビューのときも書きましたが、DA-10でもDACマスタークロックデザインを取り入れています。これはDACのクロックを主(マスター)と明示することで、周辺回路との正しい同期を取るというものです。クロックというのはデジタル機器の基本ですから、これによってより正確なクロックタイミングが得られることが期待できます。
ピュアオーディオ製品ではクロックのマスター・スレーブというのは良くありますが、ポータブルでは初めて聞くように思います。ポータブルの場合にはスペースのために実装的にも難があって、例えば他のDAC内蔵ポータブルアンプではUSBコントローラの近くにクロックがあったりしますが、DA-10ではDACの近くにクロックがあり、DACのクロックがあくまでマスターとして周辺機器であるところのUSBコントローラが従になるわけです。
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アンプ部分は±6.5Vの高電圧で駆動し、後段(バッファ部分)がディスクリートで設計されて十分な性能を確保しています。パーツもオーディオグレードコンデンサーの採用や、ポータブルヘッドホンアンプでは標準的な角型チップ抵抗よりも低ノイズ、低歪みのメルフ抵抗(丸いやつ)を採用するなど考慮がなされています。
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また独立電源回路基板もポータブルにしてはかなりこっています。一般的なポータブルアンプだとオーディオ回路と同一基盤に電源があるわけで、これはある意味仕方無いですが、DA-10ではDC-DCコンバーターのノイズの影響を低減させるために基盤構成を2階建てとして電源を別基盤化しています。GNDもデジタルとアナログ部分を分離してノイズを考慮したレイアウトを行っています。
つまり回路・電源別、デジタル・アナログ別という基本も守っています。
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* 技術的特徴 - 小型化への挑戦

まさにDA-10は小さくともオーディオコンポーネントらしいという感じです。DA300が手のひらに入ったというイメージでもありますが、小さくすることはそう容易ではありません。
実際に設計は音質にかかわる主要部品をDA300同等にするというところからスタートしたということです。まずCADなどでシミュレーションを行いますがこの時点で部品の占める面積が多すぎるという問題に直面します。そこで従来ならば基盤構成は4層ですが、DA-10では6層ビルド基盤を採用します。これはウエハースのように基盤を組み合わせたもので、これによりGNDのポテンシャルの向上や、クロックラインの最短接続、パターン干渉の低減などの効果がうまれました。
コスト的にはかなりアップしましたが、音質やサイズの相反する問題をこれで解決できたということです。
DA300みたいなサイズのUSB DACならともかくも、スペースに制約のあるポータブルまでこうしたオーディオの基本を実直に守るのには頭が下がります。これもDENONがまじめなオーディオメーカーである証なのでしょう。

* DA-10のさまざまな機能

DA300からの改良という点では、DA300ではゲインがなくてHD800などが音量が取れなかった問題をDA-10では改良しています。DA300ではHD800は音量的に苦しかったのですが、DA-10ではうるさいくらいに音量が取れます。これで録音レベルの低い高音質録音の音源にも十分対応できます。スペック的には8-600オームまで駆動できます。

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DA-10側面

ラインアウト端子はないのですが、ヘッドフォン出力は可変(var)と固定(Fix)が選べるので、外部出力機器に接続するときは固定で出力することができます。三段システムでDACとして使いたい人もいますからね。
なお可変と固定の切り替えには電源をいったんオフにしなければなりませんので、注意してください。

電池の持ちに関しては、大容量(3200mAh)のリチウムイオンバッテリーにより、iPod接続時(USB AでのiDevice接続時)で7.5時間の再生が可能ということです(USB microBで電池使用した場合には6.5時間ということです)。アナログだけなら24時間は持つのもなにげにすごいところです。この辺は電源管理が徹底されていることもうかがえますね。
電源を投入するときにチャージランプの色点灯でだいたいの残量がわかります。

* DA-10の使いこなしと音質インプレ

パッケージを見ると、箱や梱包の時点で満足感が高いですね。パイオニアのU05でも思ったけど、こういうところはさすが国産で、私みたいに海外の怪しいものに慣れてるとこういうのが新鮮です。なにしろ保証書の代わりに名刺が一枚入ってるというのが当たり前だと思ってましたので(それもない場合がほとんど)、化粧箱に入ってアンプがくるだけで新鮮です。

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iPhoneと合わせるためのケースが付属してきます。ケースを使用した時にはケーブルをガードしてくれるので、入力と出力が逆側なのでバッグの中で収まりにくいという問題を緩和してくれます。

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筐体はデザインや質感は高く高級感があります。DA-10のデザインは表面がヘアライン、テーパー部分が梨地仕上げとなっており、その違いを強調するために処理の境目に段差を設けています。この辺はかなり試行錯誤をしたということで、たしかにすばらしい高級感のある仕上げとなっています。ヘアラインはプレートを張っているのではなくアルミの一枚板です。
金属のシャーシはRFノイズ対策にもなるでしょう。中ではさらにパネルと基板の導通を工夫することでシールド効果を生じさせています。実際に電波を輻射させる状態でiPhoneを置いても全くと言ってよいほどノイズはDA-10に影響しません。

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サイズ的にはやや大きめですが、軽いので携帯にはそれほど苦になりません。デザインはiPhone5に合わせたようですが、iPhone6でも大丈夫です。

DA-10はスマートフォンに向いたアンプということが言えます。それゆえにまたDA-10を手にしたときに、これをどうやって使いこなすかというのが悩みどころなのではないでしょうか。いままでのアナログ入力だけのポータブルアンプだと話は簡単なのですが、デジタル接続ではさまざまな決めごとがあります。これはまずソースであるプレーヤーになにを使うかというところから始まると思います。
そこでソースの場合分けをしながら以降の記事を書いていきます。

1. DA-10とアナログ接続

プレーヤーが旧iPodやAK100などの場合は、いままで通りに3.5mmミニ端子の付いたラインアウトドック(LOD)やミニ・ミニケーブルでアナログ接続が可能です。
DA-10の場合にはアナログ入力端子とヘッドフォン出力端子が反対側にあるので、バックのなかで立てておきたい場合にはケーブルにストレートではなくL字型の端子をもったものを使うとよいでしょう。(あるいはケースとの兼ね合いです)

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iPod ClassicとDA-10

付属のケースを使うこともできますが、私は慣れた背面直置きでバンド留めを使っています。アルミボディの黒いポッチはラバーで、そのままiPhoneをおいてクッションになります。黒いポッチはデザイン的なアクセントにもなってます。海外製品だと両面テープが入ってくれば良い方なので、この辺の細かさは国産メーカー品ですね。

この場合のスイッチ設定は以下のようになります。
出力モード切り替えスイッチ: Varにします
充電モード切り替えスイッチ: OFFにします
入力ソース切り替えスイッチ: AUXにします


ゲインはほとんどの場合はノーマルで良いでしょう。
iPod classicにラインアウトドックを使ってアナログ出ししてDA-10のAUXに接続し、Ultrasone Edition8で試聴しました。
分厚い力強い音で、Edition8のベースを十分生かして迫力を生んでくれます。滑らかでほどよく暖かいところが良いですね。
高音域から低音域までしっかりと再現され、アナログアンプとしての解像力もかなり良く、Edition8クラスでも文句がないくらいの音質です。楽器の音の明瞭感も良く、音色は優しい鳴り方です。ヴォーカルの再現も同様に良いですね。小さくてもデノンらしい厚みがあって力強いデノンサウンドが楽しめます。
iPodソースにしてはかなり良く、アンプ単体としても良い出来だと思います。ただ音の広がりは悪くないけど標準的です。


2. DA-10とデジタル接続

ソース機器がiPhone/iPadやPCに接続する場合にはデジタル接続が向いています。(iPodでも可能です)
この場合、DA-10では2系統のデジタル接続があるため、デジタル接続では二つのUSB端子をどう使い分けるかが問題となるでしょう。主にソースと端子の組み合わせで3通りが考えられます。普通の使い方が2通りと、マニアックな使い方がひとつです。(下記の2-1,2-2,2-3です)
まず簡単に話を始めると、USB AはiPhone/iPad用(2-1)で外で使いたいとき、USB microBはPC用(2-2)で家で使いたいときに使います。

2-1 USB Aを使用する - 外でiPhone/iPad/iPodを使う

これはいわゆるiDevice接続というやつで、ケーブルは同梱のライトニング - USB Aケーブル(10cm)またはApple 30pinドックコネクタ - USB Aケーブル(10cm)を使います。
この接続方式は旧iPod時代からありましたが、最近Appleでは30pinコネクタを排してライトニングになり、アナログラインアウトがライトニングではなくなったので必要性が増したと言えます。また最近この方式は拡張されてPhilipsのM2Lみたいにデジタル接続のヘッドフォンも現れています。iPodでは5.5世代(iPod Video)以降でサポートされていますがDENONの保証はClassic以降です。

この場合のスイッチ設定は以下のようになります。
出力モード切り替えスイッチ: Varにします
充電モード切り替えスイッチ: OFFにします
入力ソース切り替えスイッチ: iPod/iPhoneにします


入力をiPod/iPhone位置に切り替えてから同梱のケーブルでDA-10のUSB AにiPod/iPhoneをつないでください。
ゲインはほとんどの場合はノーマルで良いでしょう。

試聴はiPhoneに標準の白いケーブルを使ってDA-10のUSB Aに接続し、Edition8で試聴しました。
デジタル接続にすると透明感とクリアさがぐっとまして、情報量もかなり増えます。楽器の音鳴りがシャープになり、キレが良く、音色が鮮明にわかります。低域も深くなり、かつ膨らみがあまりなくタイトですね。
全体にかなり音質は向上し、このDAC(+AL32)部分の性能は高いと思います。4万円とは思えないくらい。細部は荒くなくなめらかに音像の面取りが丁寧にされているようで、DAC部分の上質さが分かります。
iPodとのアナログ接続だとやや中低域寄りでしたが、デジタルだと少し高音域にあがって帯域バランスが良くなり、全体も引き締まる感じです。デジタルただとワイドレンジ感もあります。
力強いがやや荒削りのアナログに比べると、デジタルでは上質で整ってHiFiチックに感じられます。けれどもやはり濃厚さと元気さは残り、分析的とかドライさはないですね。

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iPhone6+DA-10+ベンチャークラフトケーブル

標準の白ケーブルでもこのくらいデジタルの良さはわかりますが、さらにケーブルが変えられます。このライトニング - USB Aのタイプのオーディオグレードの交換ケーブルはVentureCraftとフルテックが出しています。
白ケーブルをVentureCraftにするとさらに一・二枚ベールが剥がれたように音空間が晴れあがってクリアになります。いっそう滑らかで音に重みが出る感じで、細部のなめらかさがさらに上質となり、粗さはほぼ消えます。低音域もさらに深く、低い音が自然にぶおっと出てくる感じです。豊かさが増して、全体に音質のかさ上げがあります。このくらいになるとかなりのマニアでも納得する音だと思います。42000円のアンプに15000円のケーブルを足すのかという話もありますが、15000円のケーブルを加えてもコストパフォーマンスはかなり良いと思いますね。
またVentureCraftのケーブルだとL字プラグなので、ケーブル側を下にしてバッグに入れることができます。入力と出力が逆側についているDA-10ではこれがとても便利ですね。

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iPhone5S+DA-10+iQube V3

専用のラインアウト端子はありませんが、出力をFixにして3段重ねの別ポータブルアンプに入れることもできます。(Fixにしたらいったん電源オフが必要です)
こうするとDA-10のDAC部分の音の上質さもよくわかると思います。

また、このようにiPhoneをプレーヤーとして使ったシステムで面白いのはアプリを使って音を変えられるという点だと思います。
たとえば、素直に高音質で聴きたいときはNeutron Playerがお勧めです。iPhoneのライブラリの音源も、FLACなどの音源も聴くことができます。もちろんこれは好みでもあります。
音を変えたいときはAudiophile Playerがお勧めです。これはMaXX AuidoというDSPで信号処理をするので大胆に音が変わります。もちろんRadsonやTxDolbyやCanOpenerなどが良いという人もいるでしょう。この辺ができるのもスマートフォンならではだと思いますね。

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AudioPhileアプリ

最近ではプレーヤー+ポータブルアンプという形態は話題性でハイレゾプレーヤーに押され気味だと思いますが、スマートフォン+ポータブルアンプって面白い展開があると思います。ハイレゾDAPのハード・CPUに比べると最新スマートフォンははるかに強力な演算性能があります。HF Playerの記事でも書きましたが、ソフトウエアの方が柔軟で高精細に信号処理ができます。あるいはアプリでHF Playerのようにアップサンプリングも可能だし、そのうちリアルタイムDSD変換なども可能になるかもしれません。ハイレゾDAPだと機能は固定ですので、アプリを入れ替えられるスマートフォン+ポータブルアンプは面白い展開ができるかもしれません。

2-2 普通にUSB MicroBを使用する - 家でPCで聴く

DA-10は家ではPCにつないでUSB DACとして使えます。このときはUSB MicroBを使用します。
Macではドライバーが不要で、Windowsではドライバーが必要です。オーディオクラス2ですね。下記ページからダウンロードできます。
http://www.denon.jp/jp/Product/Pages/Product-Detail.aspx?Catid=382c2279-a153-4d3c-b8fa-81b930454f67&SubId=USBDAC&ProductId=DA-10

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この場合のスイッチ設定は以下のようになります。
出力モード切り替えスイッチ: Varにします。ただしアクティブスピーカーにつなぐときはFixが良いでしょう。
充電モード切り替えスイッチ: 充電したいときはONですが、OFFにして電池給電にすると充電のノイズが減ります。
入力ソース切り替えスイッチ: USB DACにします

ゲインはほとんどの場合はノーマルで良いとおもいますが、HD800などをつなぐときはHighにします。
USB microB端子のケーブルが同梱されているので、これでPCと接続できますが、オーディオ用のUSBケーブルを使うことでここでも音質をあげられます。

microB端子をPCに接続するときはPCMが192/24まで、DSDは5.6MHzまでです。なお352kHzがソフトによっては見えることがありますが、これはDoP 5.6MHzを通すための一時措置でPCMで352kHzは使えません。(DA300でも同じです)

2-3 マニアックにUSB MicroBを使う - ハイレゾ・DSD対応をポータブルで使う

この辺はちょっとマニアックな世界です。DA-10の場合にはUSB microBもiPhoneで使えました。ただしiOS7.0以上が必要です。

この場合のスイッチ設定は以下のようになります。
出力モード切り替えスイッチ: Varにします
充電モード切り替えスイッチ: OFFにします
入力ソース切り替えスイッチ: USB DACにします


iPhoneにLightningUSBカメラアダプタ(カメラコネクションキット)を接続して、それにUSB A - micro BのUSBケーブルを接続するか、直結アダプタを使ってmicroBに接続します。

スマートフォンをプレーヤーとして使った場合のUSB microBとUSB Aの使い分けはハイレゾ再生とプレーヤーの再生時間のトレードオフ、または自由度の高さと便利さのトレードオフになります。
これは簡単にいうとmicroBのときは基本的にPCと同じ理屈だからで、USB Aのときはいわゆる専用のiDevice接続だからですね。むずかしくいうとプレーヤー(iPhone)をアクセサリーモード(USB A)とホストモード(USB microB)で使う場合の違いによるもので、下記のリンクをご覧ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/404882406.html

* 2-1方式(いわゆるiDevice接続)の利点は次のようなものです。
簡単にケーブル一本で使える(高音質ケーブルもある)。
iPhone側の電池消費が少ない(理屈では)。
音源が48/24までのPCMのみ。

* 2-3方式(ホストモード接続)の利点は次のようなものです。
ケーブルにLightningUSBカメラアダプタ(または30ピンのカメラコネクションキット)が必要。(これはOTGケーブルとおなじです)
iPhone側の電力消費が多い(理屈では)。
入力レートの規制がない。ハイレゾ再生が可能。PCMで192kHzまで、DSDネイティブ再生も可能。

もうひとつの利点としてAndroidでも接続できると書きたかったんですが、やってみたらAndroidはWalkman ZX1+NWH10でもUSB Audio Player Pro+OTGでも対応できないようです。たぶんドライバーとDA-10ファームの問題かと思います。Android 5.0ではどうなるかは分かりません。

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iPhone5S+DA-10+LightningUSBカメラアダプタと直結プラグ

というわけでiPhoneにLightningUSBカメラアダプタと直結プラグを使って、ハイレゾ再生をしてみました。まずアプリはHF Playerを使ってヘルゲリエンの192/24を聴くとちょっとポータブルで聴いてるとは思えないくらい豊かな音を楽しめます。DA-10の場合はAdvanced AL32でアップサンプリングをしているのですが、入力サンプリングレートが高いほど低いリサンプリング率で済みますので(改変が少ない)、やはりハイレゾ音源の効果はあると思います。HF Playerでアップサンプリングしたら、というときにはどちらの補完性能が高いかによると思いますが、この辺はもう自分でいろいろ変えて確かめてみる、という世界だと思います。ちなみにPCM1795のスペック上の最大値は768kHzです。

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Hibikiを使ったDoPによるDSDネイティブ再生

次にアプリにHibikiを使ってDoPでDSDネイティブ再生をしてみました。これは丸くアナログ的なDSDネイティヴ再生オンで、DSDの良さがポータブルでも楽しめます。DSDはAL32を通りませんので純粋にDACの良さです。

3. DA-10のお勧めの使い方

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DA-10の一番のお勧めの使い方はUSB Aを使用したいわゆるiDevice接続でのポータブル使用だと思います。簡単に高音質で聴けます。電車の中でiPhoneでSNSやネットニュースを見終わってから、さあゆっくりしようというときにDA-10にiPhoneをつないで寝ながら音楽タイム、という感じで使えます。
あるいはiPod Touchと化した以前モデルのiPhoneを専用機として有効活用という手もあります(私は主にこれ)。

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DA-10 + HD800

音質が良いので家に帰ったらPCにUSB microBでつないでmini/標準変換のアダプターを使って大きなヘッドフォンで聴くということもできます。ゲインがついたのでゼンハイザーHD800クラスを使うこともできます。
ポータブルでもハイレゾやDSDネイティブを試してみたい人にはポータブルでのUSB microB使用がよいですね。ただケーブルの取り回しがちょっと難です。

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iPhone + DA-10 + LightningUSBカメラアダプタとUSBケーブル

ヘッドフォンの相性で言うと、Edition8はDENONらしい躍動感とDA-10の緻密さを堪能させてくれます。またW60+Estronが滑らかで音楽的、かつ緻密な側面を再現してくれます。Aurisonics Rocketsはダイナミックで動感あふれる側面を再現してくれます。

* まとめ

長く書いて来ましたが、簡易バージョンで言うと、DA-10は力強いアンプ部分と上質なDAC部分があいまって、価格以上の音を出しています。ボディもアルミの仕上げが上等でカッコ良いですね。ポータブルオーディオの初心者でも簡単なiPhoneとのデジタル接続で手軽に高音質が取り出せます。マニアなら、さらにDSDネイティブ再生をしてみたり、三段重ねのシステムに使ったりという拡張性もあります。
価格を考えるとかなりオススメのDAC内蔵ポタアンと言えるでしょう。

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あらためて普通の量販店に行って国産オーディオメーカーのポータブルヘッドフォンアンプが買えて保証もきちんと受けられるという時代になったんだなあと感銘します。私みたいに個人輸入してSR71とかXinとか言ってた昔からやっている人には隔世の感があります。今回いろいろと調べてみてさらにその感を強くしました。

DENON DA-10はスマートフォンに向いたDAC内蔵のポータブルアンプで、私みたいに海外マニアック製品マニアでも納得してしまうくらいの音質の高さがあります。また音へのこだわりがきちんと音質につながっていると思います。はじめはDENONもポータブルアンプを出したかと思ったくらいでしたが、中を調べて音を聞くとよく作られているので納得しました。
DA300でもなかなかと思ったんですが、DA-10では感服するくらい良く出来てると思います。特に音質レベルと価格を考えると、かなりコストパフォーマンスは高いと思います。

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DA-10ではちゃんとデノンらしい音が楽しめるのもよいと思いますね。同じD&Mでもマランツがポータブルアンプを作ったらまた音は違うのではないでしょうか。DA-10とは別のラインをマランツブランドで出すという展開もあってよさそうです。
ただ有線でアンプ接続時はやはりiPhoneは使いづらくなりますので、DA-10がAirplay対応でこの音質だったら、とも思います。Airplayはライセンス問題とかもあると思いますが、DENONはAirplayに強いのでぜひトライしてもらいたいですね。

これから長年使うとさらに国産ブランドの信頼性の高さ・故障のなさという良い面も見えてくるかもしれません。これはパイオニアのU-05でも思ったんですが、たぶん国産メーカーは技術的には地力はかなりあると思うので、あとは企画の問題だと思います。さらにはトレンドを作っていくということも期待したいですね。
これからもこのポータブルの世界に国産の品質の高いが出てくることを期待しています。

      
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2014年10月06日

CHORD Hugoケースの装着例 (iPhoneとCCK編)

この前のCHORDファンミーティングでHugoケースの発表があり、そこでさっそくAK100MK2と光ケーブルの接続例を紹介しました。下の記事です。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/405968825.html
そこで今回はiPhone5Sとカメラコネクションキットを使った時の装着例を紹介します。
まずこちらがHugoケースでボタンとベルクロテープで留めるようになっています。それぞれにはバンパーの役目とケーブルリールの役目も兼ねています。背面にはベルトがついています。

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こちらがiPhone5Sにカメラコネクションキットを付けてUSBケーブル(須山さんケーブル)でHugoに接続した例です。iPhoneの上下をバンドで固定させるので操作性は損なわれません。iPhoneのアプリはNeutronです。右側は接続がわかるようにあえてだらっとさせています。

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下がケーブルを巻き付けた例です。巻取りはケーブルにも寄ると思います。イヤフォンケーブルもライトアングル(L字)だとうまく収まります。ちなみにケーブルはロクサーヌケーブルです。

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またグリップは親指かけも兼ねていてこんな感じでグリップできます(右手でカメラ持ってる都合上やや不自然ですがご容赦)。

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Hugoをガードしながらきれいに保つHugoケースはなかなか機能的で便利でもあります。
これで私もせっかくもらったサインが消えないというものです ^^)


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2014年09月18日

クラウドファンディング開発のイヤフォン、AurisonicsのRocketsレビュー

話題となったPONOをはじめ、PS AudioとかLight Harmonicsなどクラウドファンディングによるオーディオ製品開発も増えてきましたが、本記事で紹介するRocketsはAurisonicsがKickstarterで募集したイヤフォンのクラウドファンディング開発による製品です。
Kickstarterでは私は$129で投資したのですが、最安は$99でした。そのうち$250くらいで市販されると思います。Kickstarterのページはこちらです。(すでに終了しています)
https://www.kickstarter.com/projects/1285259404/aurisonics-rockets-next-gen-iems-made-in-usa

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Rocketsの特徴はまずその名のようにロケットの形をした独特の3枚のタブです。また筐体はチタン製で、ケーブルはケプラーの特注品です。開発中はクラウドファンディングなので開発経過が出資者に報告されていましたが、このケーブルの遅れが出荷の遅れにかなり影響していたようです。

Aurisonicsはイヤモニの会社で、ダイナミックドライバへのこだわりで知られています。ふつうイヤモニはBAを使うことが多いわけですが、この会社はASG-1という大口径ダイナミック15mm一発のイヤモニで知られています。ちなみに他のモデルでは中高域にBAを採用したハイブリッドモデルもありますが、よく知られているのはこの大口径ダイナミック使いのメーカーということです(現行は14.2mmドライバーに変更されています)。
RocketsはShureやゼンハイザーのように最近流行りの小口径ダイナミックドライバーを採用しています。やはりダイナミックにこだわったわけですが、大口径ダイナミックドライバーでならしたメーカーが今度は小口径のダイナミックを採用したわけです。

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コンパクトな金属カンに入ってきます。私の場合はスペアのイヤチップが入っていました。
ケプラーのケーブルは赤と青のユニークなデザインがなされています。ケーブルの表面のビニールはやや摩擦があるタイプです。ここは意図的な設計だと思いますが好き嫌いがあるとは思います。またマニアック系ケーブルほどではないけれどもやや硬めです。残念ながらケーブルの交換はできません。ミニプラグがかなりがっちりしていて、はまりも上々です。ケーブルの質はこだわっただけあって価格的に考えてもかなり高いと思います。
装着についてはストレートも耳巻きも両方できると言うのがうたい文句だけどここが曲者ではあります。また特徴のタブは効果があいまいで、HeadFiなんかではよくはずされてます。

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音を聞いてまず感じるのは能率低いってことです。ボリュームは高めが必要ですがiPhoneでも音量は取れます。
音はわりと硬質でシャープ、柔らかいとか甘い音ではありません。全体にアタックやパンチはかなり鮮明で歯切れがよく、明瞭感があり、引き締まった感じです。音色はニュートラルで着色感はあまりないけれども、無機質にはそれほどなっていないのは良いところです。
低域は出すぎずに意外とあります。高音域も明瞭なので、ワイドレンジ感があります。標準の三角チップだとやや刺さる機種もあると思います。AK120IIはそれほどでもありません。
イメージングが良くてDAPによっては楽器の三次元感覚が楽しめると思います。深み、奥行き感があって、この点でAK120IIによく合うと感じます。音場の二次元的な広さ自体はそこそこですね。
ダイナミックにしては解像度高い方で、iPhoneでもオッと思うくらいですね。
解像力・情報量たっぷりのWestone W60なんかで日ごろ慣れてると、それほどでもないように思えてしまうけれども、やはりダイナミックのシングルドライバー機としてはかなり高いと思います。

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端的に言うと、硬質な明瞭系、シャープ系、スピードある系、イメージングやピントが決まる系でしょうか。音的にはチタンの筐体が利いていると思います。
相性が良く、Rocketsの魅力を引き出すと思ったDAPはAK120II、ARM1、Calyx M(FW0.97以降)でしょうか。Calyx Mは以前のファームだとややハイがきつめだと思います。iPhone5sの直も悪くないです。
HeadFiでははじめはER4Sとよく比べられていたんですが、ちょっと違うようには思います。

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イヤチップは標準のやや尖ったタイプがひとつ(M)と先端がやや丸いタイプが3つ(S/M/L)付属してきます。(わたしのには丸いタイプが一袋予備についてきました)。やや音が違っています。私の耳での変化ですけど、尖った方がやや高域が出てシャープ、丸い方はやや全体が穏やかになって低域が少し出る感じですね。アンプと合わせてきつすぎるときは丸いタイプが良いけど、どちらかというと尖ったタイプがこのイヤフォンらしい音のような気はします。ケーブルで調整できないのでチップで音を調整するとよいでしょう。

全体にかなりコストパフォーマンスが高いと思います。この価格帯にはないような高級な音が楽しめます。Kickstarterの$129だと格安ですね。$250でもかなりよいと思います。
クラウドファンディングなので開発経緯が分かるのも面白いところです。ただクラウドファンディングはプリオーダーではありませんので、あくまでリスクもあるし、納期の遅延やデザイン変更なんかは茶飯事ですから、くれぐれも注意してください。Rocketsは多少遅れはしましたが、クラウドファンディングではよいほうだと思います。
RocketsはKickstarterのみではなく、そのうち市販(予価$250)がなされると思いますのでこの記事で興味を持った人は情報に注意していてください。

いずれにせよ、クラウドファンディングによるオーディオ機器の開発も2014年のトレンドと言えるでしょう。
posted by ささき at 23:30 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年09月13日

"Meaty Monster" - iFI iDSD micro レビュー

*iDSD microとは

iDSD nanoでDAC内蔵ポータブルアンプの世界を席巻したiFIが満を持して発売したのがこのiDSD Microです。nanoに比べると筐体が大きくなり、第一世代のiFi機器に近いサイズとなっていますが、単にnanoの上位機種というラベルにはとどまらない高い汎用性と高い性能を兼ね備えています。基本的にはバッテリー内蔵のポータブル機器と言えますが、据え置きとしても高い能力を持っています。

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iPhone5sからCCKで接続

まず驚いたはiPhoneからのカメラコネクションキット(CCK)でのUSB入力がアダプタなしで接続できるという点です。iPhoneからDACに接続する際にはカメラコネクションキットを使用する必要がありますが、さらにカメラコネクションキットからアダプターを使うなどしてDACのB端子に入力する必要がありました。ところがiDSD microでは機器側が直接CCKのUSB端子を受けることのできる端子となっているため、アダプタを必要としません。かなりすっきりとシンプルに接続ができます。いままでのいかにも裏技でやっている感がありません。またSONYのZX1などのWalkmanでも同様にカメラコネクションキットに相当するNWH10を使用することで直接接続が可能です。まさにマニアがほしかった製品と言えます。

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実のところiDSD microはその構想をクラウドデザインとして始めました。クラウドデザインとはいまはやりのクラウドファンディングにも似たコンセプトで、ユーザー参加によって開発を進めていくというものです。クラウドファンディングとは違ってお金を出資するわけではありませんが、こういうものがほしいというアイディアを出してもらうわけです。クラウド(crowd)とは雲ではなく「皆が集まって」という意味です。その「みながほしいもの」公募はHeadFiに投稿されました。またその進捗を設計日記ということでHeadFiに書きこむというユーザーと一体になる手法を取っていました。(日本語でこの翻訳を読むことができます)
http://www.head-fi.org/t/711217/idsd-micro-crowd-designed-phase-2-smartpower-please-feed-the-meaty-monster-page-124
日本語ではこちらの開発ブログをご覧ください。
http://ifi-audio-jp.blogspot.jp/search/label/%E9%96%8B%E7%99%BA%E6%83%85%E5%A0%B1

いままでのオーディオはいわばメーカーからトップダウンに開発されてきたわけですが、このヘッドフォンやポータブルオーディオの世界はボトムアップの文化と言えるでしょう。その違いを積極的に取り入れていくというiFIの姿勢は、ハイエンド(AMR)の技術をコンシューマーに届ける、というiFIの理念に沿うものと言えます。

* ポータブルでのiDSD micro

まずこの驚きのスマートフォン直結のポータブル形態で音を聞いてみることにしました。

WalkmanとNWH10をiDSD microに直結してEdition8で聞いてみました。
後でも書きますが、このタイプの接続ではセルフパワーでバッテリーを使うために、はじめにボリュームをオンにしてからUSB ケーブルをつなぐことが必要なことに注意してください。

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Walkman ZX1からNWH10で接続

まず感じられるのは透明感が高くクリアな音空間です。ノイズレスで、純粋な雑味のないピュアな楽器の音色表現に感じ入ってしまいます。余計な付帯音がなく、着色感も少なく正確な音再現といえるでしょう。
オーディオ的には周波数特性もワイドで、高いほうはすっと上まで伸びていき、ベルの音もきれいに響きます。これだけ美しく響くならばSNも相当良いのでしょう。帯域の低いほうはロックでもかなり深いベースが絞り出されてきます。ヴォーカルは透き通ったように美しい歌声が堪能できますね。
据え置きレベルと言ってよいかなりレベルの高い音で、これがポータブルで出てくるのなら相当なマニアでも満足でしょう。Edition8のような高性能のヘッドフォンで聴きたくなるような音です。
できればこの音に見合うような高品質なUSBケーブルを作ってほしいところです。

またiDSD microは別に電源出力用のUSBポートを側面に備えていて、バッテリーはスマートフォンの外部バッテリーとしても使用することができます。いまからのインフラでもあるスマートフォンにまじめに取り組んでいると言えるでしょう。

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それに加えてiDSD microは前面に3.5mmミニのアナログ入力端子を備えています。これで聴くとDACだけではなくアンプの能力を切り出してもなかなかすぐれていることがわかります。最近はこうしたDAC内蔵のヘッドフォンアンプでは入力がデジタルだけという割り切りも多いのですが、あえてアナログを設けたのはたしかクラウドデザインでの要求だったと思います。なかなかマニアックな着眼ですね。

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真ん中の小さなプラグがアナログ入力端子

* 据え置きとしてのiDSD micro

次にiDSD microはバッテリー内蔵のポータブルヘッドフォンアンプであると同時に、PCオーディオにおいて高性能なUSB DACとしても使用することができます。この時はバッテリーからクリーンな電源を取り出すこともできます。iDSD microはバッテリーを使用するセルフパワーと、USB経由で電力を受けるバスパワーを任意で切り替えることができます。これは説明書に書かれていますが、パワーオンとUSB接続のタイミングで自分で任意に設定ができます。
もとろんiFIですからバスパワーの品質がなおざりにされているわけではなく、バスパワーでは得意のiPurifierが内蔵されています。これでUSB入力の信号をきれいに整えるわけです。据え置きのデスクトップに置いてはヘッドフォンアンプとしてだけではなく、プリアンプ、またはDACとしても使えます(出力の固定や可変が底面スイッチで設定可能です)。
クリーンな電源とそのパワフルなアンプでポータブルだけではなく、デスクトップでも能力を発揮できます。

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赤いスイッチがパワーモード切り替え

またiDSD microの大きな特徴として出力機器へのパワーを調整する機能を通常のゲインではなく、パワーモードというスイッチで電力の管理をしています。これもおいおいと説明していきます。

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Sennheiser HD800

USB DACとしての音を聴いてみました。WindowsのJRiver19をプレーヤーとしてUSB DACとして接続してバスパワーで聴いてみました。ヘッドフォンはHD800を使用しています。
音質はポータブルの時と同様にピュアでクリアな音ですが、それが一層研ぎ澄まされて、解像感が絞り出されたように情報量が多くなり、さらにダイナミックにかつスピード感のある切れのあるシャープな音が楽しめます。パワーモードはノーマルですが、HD800を十分にドライブしていると思います。バスパワーでも十分ピュアな音なのはiPurifierが効いているのでしょう。
ここでパワーをターボにするとやや力感過剰になりますが、実はこのモードの真価は...後に続きます。

* iDSD microを語るキーワード "OTW"

iDSD microを語るキーワードというか、テーマは“Outta this World (OTW)”(この世のものとは思えない)です。つまり他の機種に比べての大きなアドバンテージです。ちなみにOutta this WorldはOut of this worldのくだけた表現です。

OTWその一はPCMでの768kHz(DXDx2)、DSDでの22.6MHz(DSD512)対応です。
現状ではPCオーディオでの据え置きの先進的な機種でさえごく一部のみに11.2MHz(DSD256)が採用されているにすぎないのですが、iDSD microはコンパクトなパッケージでそれらを凌駕する22.6MHz対応を実現したわけです。
これはiDSD microの開発日記の日本語訳(下記リンク)にその詳細を見ることができます。
http://ifi-audio-jp.blogspot.jp/?m=1
上のリンクの記事で「オーディオは新しい序列を持った」とありますが、新しい序列というと意味がよくわかりません。ここの原文を読むと"New Order"であり、これを翻訳するならば「新秩序」ですね。新秩序のもとの意味は政治的なものもあるので調べていただくとして、いまでは一般的には新しい基準・新しい世界の意味として使われます。"New Standard"でも意味は通じますが、New Orderと言ったのは有名なニューウェーブのバンド名にかけてると思います。
つまりはいままでのPCMは192kHzかすごくても384kHz、DSDは進んでるといっても5.6MHz、最高でも11.2MHzだったのですが、ここで768kHz、22.6MHzという新しい基準を打ち立てたということです。標準と思われていたバーを引き上げたといってよいでしょう。iDSD microの底面には誇らしげにロゴとスペックが所狭しと印字されています。

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22.6MHzはもちろん、11.2MHzのDSD音源さえ入手がまず困難ですが、NetAudio誌のNo15に11.2MHzの音源が付録でついてきます。まずファイルサイズで一曲945MBというところに驚きますね。個人的に言うと、普通のDSD64(2.8MHz)のDSD音源だと192kHzハイレゾと比べて音が柔らかく滑らかという違いがあるくらいですが、DSD128(5.6MHz)となると音の情報量がぐっと違ってより濃密で精細な音質が楽しめるようになります。OTOTOYのCojok+徳澤青弦カルテットのQUANTなんかはよいですね。
http://ototoy.jp/_/default/p/32369
11.2MHz、さらには22.6MHzというとまた可能性が広がることでしょう。ちなみにたいていの再生ソフトは5.6MHzまでしか再生できないので、その辺から立ち上げる必要があります。この11.2MHz音源はFoobarのASIO(+SACDコンポーネント)を使わないとうまく再生できませんでしたが、これはラフに設計されたソフトの方がなまじチェックがないのでかえって柔軟性があるということかもしれません。
(9/16 追記) iOSのhibikiアプリがiDSD microとの11.2MHz(DSD128)でのDoPによるDSDネイティブ再生に対応したということです。
PCMの384KHzを超える世界についてはソフトウエアでアップサンプリングして試してみることができます。Ardivana Plusでアップサンプリングをし、表示ディスプレイで705.6kHzとか見ると新鮮です。この感覚が"OTW"ですね。

OTWその二はヘッドフォンのパワーモードに完璧にマッチしたiEMatchです。
ヘッドフォンアンプの場合には高能率でノイズを拾いやすいイヤフォンから、逆に能率が低くパワーがないと鳴らしにくいヘッドフォンまで多様な再生機器を最適にドライブする必要があります。とはいえ、多くのヘッドフォンアンプはよいところゲイン切り替えがある程度です。
iDSD microではパワーモードに小出力用のecoを設けることで電池の持ちを優先させつつ小出力のイヤフォンなどに対応ができます。さらにそれに加えてIE Matchという機能で高能率、あるいは超高能率のモードを切り替えで選択することで高能率のイヤフォンに対応しています。ここまでやるか、というレベルまで最適化を考えるのがOTWなのでしょう。
最近はやりのカスタムイヤフォンなどはみな高能率なのでこの機能は大いに役に立つでしょう。

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JHA ロクサーヌ カスタム(iPod Classicからアナログ入力)

OTWその三は8v/4000mWのターボヘッドフォン出力、上とは反対に高出力の必要性への対応です。最近のヘッドフォンのはやりの一つは平面型ヘッドフォンです。これらは音質は高いのですが、能率が低く鳴らしにくいという欠点をもっています。そこでiDSD microではパワーモードにターボモードを設けてこの高出力に対応しています。別名で平面駆動ヘッドフォンモードと言っても良いでしょう。中でも特に名指しで対応を表明しているのはHiFiMan HE6です。HE6はK1000と並び称されるほど能率が低いヘッドフォンで、下手なヘッドフォンアンプを使うとクリップさせてしまいます。
私はこのHE6も持っています。こちらについては下記のレビュー記事があります、
http://vaiopocket.seesaa.net/article/171206322.html

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HiFiMan HE560

まず同じHiFiManの最新の平面型であるシングルエンドマグネット方式を採用した平面型HE560を使ってみるとノーマルモードでは物足りなかった力感が生き返ったように生き生きと音楽を奏でてくれます。しかもバッテリー駆動でもその音が出せるのは痛快な感覚さえありますね。単にハイゲインで鳴らすというのとはパワー感も異なるように思えます。

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Audeze LCD-2

次に平面型を復活させるきっかけともなったAudezeが設計したLCD2を使ってみます。ノーマルでも音はならせますが、ターボモードではまるで音が跳ねていくように軽快にパワフルにドライブできます。低音の震える様子もターボではより明瞭に聞こえます。

さて、HE6です。これはEF6のバランスでないとふつう音量を取ることさえかなわないのでバランスプラグを付けたままなんですが、それを外してHE560のシングルエンドケーブルで聴いてみます。
普通のヘッドフォンアンプではフルに回し切っても音量が取れないほどのHE6でも意外とパワーモードがノーマルでもなんとか音量が撮れるくらいはあるので、実はノーマルでもかなりのパワーがあることがわかります。ただしこのモードでは曇り感やだるさ感が感じられます。

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HifiMan HE-6

パワーをターボモードにすると驚くことに息を吹き返したようにあのHE6がスピード感のあふれるジャズやロックを演奏してくれます。いつもはラックサイズのEF6でHE6を使っていますので、このサイズのアンプがこれだけの駆動力を持っているということにただ驚きます。

そしてiDSD microは同時に繊細なカスタムイヤフォンもIE Matchできめ細やかに鳴らすこともできるのです。それに気が付くとまた驚きますね。パワーモード切替は単なるゲインを超えたドライブコントロール力をiDSD microに与えてくれています。

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iPhoneとHE560

このようにIEmatchとパワーモードでHE6(平面型ヘッドフォン)から高感度イヤフォンまで、さきに書いたようにスマートフォンでのポータブルから家でのPCオーディオのUSB DACまで、万能に使えてハイスペックであるのがiDSD microのOTWです。

* ソフトウエアの最適化

iDSD microでは先に書いたようにターボモード、ecoモードのように電源管理を行っています。またユニークな光/SPDIF入力の兼用端子、そして入力の自動切り替えなどこれらはソフトウエアでモニタリングされています。

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SPDIF入力

このように高度なソフトウエア処理をしているのもiDSD microの隠れた特徴ですが、中でも特筆すべきものはXMOSの最適化でしょう。

データの入出力の流れの制御をつかさどるXMOSチップはそれ自体が小さなコンピュータなのでソフトウエア(ファームウエア)が重要になります。XMOSははじめに標準のプログラムコードがついてきますが、それはおまけのようなもので十分ではありません。
以前フェーズテックさんがUSB DACであるHD-7A 192のXMOSのファームウエアを書き変えて、元のコードと切り替えて試聴できるようにしたプロトタイプを聞いたことがあります。新しいXMOSコードは最適化(高音質化)をかなり考慮したものですが、おまけについてきたコードとは低域の実在感や全体の解像力が大きく向上していて、ファームウエアの違いだけでこんなに違うのかと驚いたことがあります。(下記記事)
http://vaiopocket.seesaa.net/article/205289553.html

この点でも参考にする設計チームの日本語訳があります。ただし下記の日本語訳に「ストックされているXMOS USBのプラットフォーム」とありますが、ここも実は適切な訳ではなく意味が通じなくなっています。
http://ifi-audio-jp.blogspot.jp/2014/06/micro-idsd4-2.html
原文は"stock XMOS USB platform"なのですが、ここでのstockは(手が加えられていない)標準添付のとか、(カスタムではない)出来合いのという意味です。つまりここでいう「標準添付(stock)のXMOS USBのプラットフォーム}とは上で言うおまけではじめから付いてくるXMOSのファームウエアのことです。つまりこの標準コードだけでは十分ではありません。
iFIでは標準(stock)状態のXMOSコアの負荷状況を解析して、その最適化をしています。
下図の上が標準(stock)の状態で、不自然な負荷ピークがありますが、最適化後は下図のように自然な負荷分散に改善されています。

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またiFIではスター・クロッキング方式という独自のタイミングを考慮したファームウエアを書きあげています。
これは幾つものXMOSソフトウェアモジュールが単一の高精度マスタークロックによってタイミングコントロールされるというもののようです。解説では軍用のリアルタイム制御システムが例に取られていますが実際にメンバーはそうしたところで豊富な経験を持っているようです。

ちなみに上の記事ページに使われているミサイルの画像は最新のMBDAミーティアです。ミーティアはロケットエンジンではなくジェット(ラムジェット)エンジンです。普通ミサイルは目標に当たる時には燃料が切れて慣性で飛んでるだけですが、ミーティアはジェットで燃費制御出来るので命中時にさらに加速して目標の回避に追従できます。その点でリアルタイム制御はよりシビアなんでしょう。

* iDSD microのこだわり

iDSD microは別な言葉で言うと、これまでのiFI製品の集大成的な製品ということもできます。それは電源・信号のクリーン化へのこだわり、AMRの技術継承などです。

たとえばユニークなこだわりは極性反転スイッチにあると思います。これはなんの役に立つかというと、レコーディングの極性が間違っているときに修正ができるということだと思います。
実際のところ、XTCが極性反転エラーを修正したCDを出し直したのは有名な話で、彼らによると「極性エラーはマスターリングの世界では良くあることで、マルチとミックス間にたった一本の間違ったケーブルがあるだけで発生する」ということだそうです。本当かどうかはわかりませんが一説によるとアルバム約4枚の内1枚に起こるとも言われているとか。音が怪しいと思ったらスイッチを試してみるのもよいかもしれません。
ちなみにXTCの極性を修正したCDはこちらです。
http://www.amazon.co.jp/gp/aw/d/B00IXL18OU?pc_redir=1404837414&robot_redir=1

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XTC - Skylarking (corrected polarity edition)

もちろん高品質パーツも、超低ノイズ&超低歪みの酸化タンタル薄フィルム、あのハイエンドオーディオで使われるテフロンにも近いというC0G絶縁体を採用したコンデンサー、無酸素銅線による金メッキ4層ボードなど第一級の品質にこだわっています。

ハイエンドAMRの技術継承という点で言うと、例えば下記のリンク記事にある電源の正負反転の精密制御などがあります。普通こんな細かいところならコストのために手を抜いて、、とするところが、iFIではすでにコスト転嫁したハイエンドオーディオから持って来てあくまでこだわるわけです。
http://ifi-audio-jp.blogspot.jp/2014/06/micro-idsd15i.html?m=1

また3つのデジタルフィルターもAMRの継承によるものです。Minimum PhaseはAyreでも有名なように他のメーカーでも使われていますが、Bit PerfectはAMR独自のデジタルフィルターです。

iFIのこだわりのひとつ、アナログによる3Dエンハンスもおなじみになりましたが今回も採用されています。iFIの3Dやベースエンハンスは自然な効果があり、実際に使えるエフェクトスイッチだと思います。これらはコンシューマー用の「ベースブースト」などとは一味違います。
またこの3DがiFIのこだわりの理由というのはこの機構がミッドサイド・ステレオ(MS処理)を利用しているからだと思います。Mid-Sideステレオ処理(MS処理)については下記に書きましたので参考までにご覧ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/386365476.html
いまはiFIのシンボルとなった3D機能ですが、iFIのトルステン博士とインタビューしたときにもブルームレインの著書を見せて雄弁にステレオ技術の伝統について語ってくれたのを思い出しました。これはブルームレインと古き良きステレオの時代へのオマージュであるのかもしれません。

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アラン・ブルームレインと著書

普通はカタログにかけないような電源とかはコンシューマ製品ではこだわらないものですが、そこまでやるか、というのがこだわりであり、また英国の技術の伝統への誇りも感じられます。それが技術者集団としてのiFIの矜持と言えますね。

* まとめ

iFI Audioの日本語ホームページはこちらです。
http://ifi-audio.jp/
FacebookにもiFIのページがありますのでご覧ください。最新情報がわかります。
https://www.facebook.com/pages/Ifi-audiojp/449735338455976?fref=nf

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iDSD microは別名を"Meaty Monster"と呼ばれています。中身がいっぱい詰まった怪物という感じでしょうか。これはこれまでの説明からわかっていただけたと思います。
iDSD microはカメラコネクションキットのアダプタ不要での入力や、外部バッテリー機能などスマートフォンとの親和性も考慮しながら、PCM768KHz対応・DSD22.6MHz(DSD512)対応と最先端のスペックを持ち、平面型を鳴らし切ってしまうハイパワーを備え据え置きとしても一級の性能を持つ万能なオーディオ機器と言えます。スマートフォン、DSD、平面型ヘッドフォン、カスタムなどの高能率イヤフォンなどなど、業界のトレンドをとらえて上手に対応しています。
そうしてクラウドデザインによって先端のマニアのこだわりを吸い上げる一方で、極性反転や電源へのこだわりなどiFIらしいハイエンドメーカーの遺伝子を感じさせる自らのマニアックなこだわりも備えています。
まさにiDSD microはiFIのいまを感じさせる集大成的なオーディオ機器と言えるでしょう。


今年はiDSD micro、AK240、Hugoとポータブルの高性能製品が目立っていますが、これらは単に「ポータブルでは音が良い」というところにとどまっていません。AK240によってはじめてDSDの無線ネットワーク再生が実用のものとなりましたし、Hugoは据え置きのハイエンド機さえ凌駕する演算性能を持っています。そしてiDSD microは据え置き機でさえ実現していないDSD22.6MHz対応を実現しました。もはや据え置きのPCオーディオではなく、まずポータブルから革新が始まるというのが2014年に見え始めたトレンドと言えるのかもしれません。
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2014年06月25日

Westoneの新しいフラッグシップモデル、W60レビュー

インイヤーモニターではUEやShureと並ぶ老舗であるWestoneがそのフラッグシップであるW60をCES2014で発表しました。そして2014年CESのヘッドフォン部門で『BEST of CES 2014』アワードを受賞しています。
日本ではテックウインドから発売され、予約は6月13日から開始されています。発売日は6月28日、想定価格は約119000円です。

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特徴はWシリーズのコンパクトな筐体に片側6つのドライバーを搭載したことです。今回試聴してW60は単に6つのドライバーを採用したという話題性だけではない高い実力を持つことがわかりました。
本稿では実際にしばらくW60を使ってみたレビューを書いていきます。

* Westoneについて

まずはじめにWestoneの背景を簡単に解説します。
ウエストンは1959に創業しました。はじめは補聴器の分野で使用するようなカスタムイヤーピースを製作していましたが、80年代後半あたりからインイヤーモニタの製作をはじめました。WシリーズはWestoneシリーズを継ぐWestoneのユニバーサル(カスタムではなく普通のタイプ)イヤフォンです。
以前Westoneのインタビューをした際にはWestoneの強みはまず人の耳に対する我々の長い経験だと言っていました。Westoneは50年にわたって1500万以上のイヤピースを製作してきています。そのためライバルたちよりも人の耳に対して多くのことを知っているという点、どのようにフットし、どのように快適に装着ができ、ステムの角度などさまざまな要素があり、その知見の深さをまず強みとして挙げていました。それは抜群に耳の装着感が良いWシリーズに表れています。シンプルでいて効果的です。
次の特徴はと聞くと、Westoneならではの暖かみがあって滑らかで聴き疲れのないバランスのとれたアナログ的な音であると答えていました。これもWestone4から、W60にわたって引き継がれていると思います。
これらのことについてはまた後で触れることになります。

* 開封した印象

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まず開封して気が付くのはイヤチップの種類が豊富であるということです。また大きさが色別に分類されているのもわかりやすいところです。イヤフォンは装着してうまく耳に合うというのが良い音質を得る条件ですので、これだけの種類があれば耳にぴったりと合うものがあるでしょう。またさきに書いたように耳にフィットするというのがWestoneの強みでもあります。
チップの出来も良く、標準サイズでも低音が漏れてる感が少ないですね。

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またWシリーズの特徴でもありますが、着脱式のカバーもユニークな点です。これはレッド/ガンメタルシルバー/シャンパンゴールドの3色が用意されていて、付属の小さなドライバーで取り外しが簡単に行えます。決められたカラーバリエーションではなく自分で気分に応じて選ぶというのも面白いことだし、右側だけをレッドにして判別しやすくするということもできます。
さきほどのイヤチップともあわせて、カラフルというのが箱を開けた時の印象です。

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ケースはペリカンケース風のオリジナルケースが付属してきます。

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W60の本体を手にしてまず驚くことはそのコンパクトさで、なかに6ドライバーものユニットが入っているとは思えないサイズです。装着はそのためこのクラスにしては考えられないくらい快適で、装着したまま寝ても気にならないと思います。

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後で書きますが、このレベルの高い音質を実現しているユニバーサルタイプはたいていはカスタムIEMをベースにしたもので、あまりコンパクトとは言えません。しかしW60はイヤモニというよりも普通にイヤフォンと呼べる気軽さでこの音質を実現しているのだから感心します。ユニバーサルの手軽さ、気軽さと高性能を併せ持つ。良い意味でイヤフォンと呼べます。

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ケーブルは2本入っています。リモコン付とリモコンなしでツイスト線を使っているものです。上はリモコン付のケーブルです。ケーブルも柔らかくて使いやすく、音の品質も良いと思います。標準の状態でも満足できるのがW60のよいところだと思いますが、W60はMMCXケーブルでリケーブルすることが可能です。
ただ装着部分が傾いていて細身なのでプラグが太いものを使うときには事前に確認したほうが良いと思います。

* 音の印象

箱を開けてとりあえず聞こうとAK240につなぐと「おっ」と思わず言ってしまいました。そのくらいはじめからとても良い音です。小さいのに迫力を感じたので、おっと言ってしまったのかもしれません。まず音の広がりのよさが印象的で、音が広大です。カスタムを入れてもトップレベルかもしれません。ベースも豊かなので迫力があります。特にW60+AK240で聴くクラシックは圧倒的な迫力のある音再現がよく伝わってきます。
おそらくこんなに小さなイヤフォンがこんなにスケールの大きな音が出てくるのは実際に聴いてみないと信じられないでしょう。楽器の立体感もなかなかすぐれていて、おそらく位相もよく揃ってないとこんなにフォーカスがピッタリあって空間表現の雄大な音はできないと思います。
シンプルなシングル孔のステムで音が曇ったり濁ってないのも驚きです。ステムの太さが装着を犠牲にしないで細いのに音質も確保されてるのは、その仕組みについて興味を覚えてしまうほどです。実際これは後でWestoneのサウンドエンジニアに質問をしてみました、その回答は後述します。

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中高音域はシャープで鮮明でありながら、きつさがないのも良いところです。クリアで楽器音の分離も良いですね。解像力・情報量もかなりのもので、しゃがれたようなヴォーカルとかハスキーなヴォーカルの肉質感の豊かさに感心します。また効果音として入っている木の椅子がきしむ音などはとてもリアルで電車で聞いていて思わず振り向いてしまったほどです。

低音域は少し強調感があります。ロックでもエレクトロでもどんどん低音が出てくるのは良いところですが、パーカッションやドラムスでキレが欲しいところではやや緩めです。ここは賛否あるかもしれません。打撃音で柔らかさが出てしまうのが問題といえばそうですが、好みの問題でもあるからです。
低音域の下のほうも十分低い領域まで出てると思います。オーディオテスト用のパイプオルガンのローカットあるなしの音源で聴いても違いがはっきりわかるので、十分な低いレスポンスは出てるはずです。
全体的な帯域バランスは上手によく取れていると思います。

W60の音の全体的な印象はWestoneらしく柔らかみと温かみがフレーバー的に足されて音楽的です。実のところこれが一番気に入った点です。音が滑らかで聴きやすく美しいですね。
わかりやすく言うと、音の性格はWestone4の延長でいながら、ずっと高いレベルの音とも言えるかもしれません。楽器の音も分離感もくっきりとして鮮明で、音色もきれいです。ウエストンらしいよさで音楽をもっと聴いていたくなるような魅力があります。
帯域バランスも良く、AK240のような音楽的DAPに向いています。AK240のスケール感をよく引き出すイヤフォンでもあります。最高のDAPであるAK240にまったく負けていませんね。また別に書きますがAK100IIともよい相性です。

交換ケーブルも用意してたんですが、標準ケーブルと標準チップでずっと聴いてしまいました。標準で完成度が高いのもよいところです。リケーブルするなら快適性をそこなわないEstronなんかが良いですね。MMCX Musicが良かったと思います。

* W60と他機種の比較

片側6基ドライバーの機種では先にEarSonicのS-EM6がありますが、S-EM6は音が混ざって濁る感じで、あまり整理されてません。それに比べるとすっきりクリアなWestoneの設計の巧みさはさすが老舗です。
特にこんなシンプルなほそい一穴ステム、コンパクトなサイズでこれだけの性能が出るのは驚きでさえあります。

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価格の近いユニバーサルのK3003とAK240で比べると端的に言うとW60の方が上だと思います。
まず音場の広さはかなり差がついてW60の方が良く、空間的・立体的な広がりが感じられます。
帯域的な音のバランスの良さでもW60の方が整っています。中高音域はW60は群を抜いていてヴァイオリンのソロなんかを聞くと、高音域に優れると思っていたK3003が薄く軽く思えるくらいですね。W60はK3003に対して伸びがあるだけではなく、高音域の美しい煌めき、音の立体感、充実度合いがずいぶんW60が優れています。
おそらく高音域の厚み豊かさってあまり言われないことではありますが、W60はそれを教えてくれます。ヴォーカルを聴くとW60がK3003に比べていかに豊かで厚みがあるかがよくわかります。K3003は軽薄な印象を受けます。まあ前はK3003は良いと思ってたんですが、上のものが出るとこうなりますね。

ベースはさすがにダイナミックのK3003の方がパンチがあり量感豊かです。ダイナミック対BAだからというよりWestone4もSE535に比べるとそうでしたが少しベースが緩めです。DTECドライバーのくせかWestoneのチューニングかはわかりませんが、W60も少しベースの柔らかさを感じます。ただ量感は意外なほどあって、ぱっと聴くとベースはむしろW60の方が多めと感じるかもしれません。それでもK3003はベースヘビーでW60は全体的にバランスが取れてるように聞こえるので、いかに中高域ではW60が低域に負けないほど充実してるかがわかります。
解像力も驚くことにはW60の方が上ですね。情報量とか音数の豊かさというべきでしょうか、録音の良いアコースティック楽器の音源ではW60の良さを感じるでしょう。さらにW60ではK3003に加えて音数の豊富さが音の厚みに繋がってるように思えます。
ただハウジングの豪華さではやはりK3003が良いところです。W60は見た目よりも音の中身と快適性を重視する人のためのイヤフォンと言えます。

おそらく直接のライバルはShure SE846だけれども、SE846は持ってないので比較できません。
おそらく推測するにWestone4とSE535の比較に近いと思います。ただし進化の方向性はSE846ではユーザーチューニングやローパスフィルターなどの方向に行ったのに対して、Westone W60ではドライバー数を増やして行くという方向性が面白いですね。SE846でもドライバーは増えてますが。

同じWestoneのW50も聴いてませんが、Wファミリー上位機種の住み分けはあると思います。
W60のドライバー構成はおそらくWestone4から推測すると、TWFKx2とDTECみたいな感じでしょうか。おそらくW50は低域一個というのはロードライバーが大きいCIのようなユニットなんでしょう。そうするとW60とW50は単に松竹梅というよりもぶわっとした低域の量感重視の人ならW50で、バランスの取れた音ならW60という切り分けなんでしょう。

* W60の高音質の秘密とは

今回W60がシンプルでコンパクトなデザインなのにもかかわらず、6ドライバー搭載と高音質が可能になった背景に興味を持ったので、テックウインドさん経由でWestoneのサウンドデザイナー、カール・カートライト氏(Westoneサウンドの"ゴッドファーザー"だそうです)にいろいろと質問してみました。

まず普通ひとつ穴のステムでは音が濁り、穴3つが良いとされていますが、W60ではシンプルな一穴のステムで高音質を確保する秘密はと聞いてみたところ、下記のような回答をもらいました。

カートライト:「穴3つはイヤーピースのアウトプットをイヤーカナルに伝える一つのオプションではありますが、物理的なサイズという部分で欠点があります(穴3つはより大きなステムが必要になるため)。
また太いステムにすると、イヤチップのクッション効果が犠牲になり快適性を損なってしまいます。
私は何百何千ものカスタムイヤーピース作成において人々の耳道を見てきましたが、結果として細い口径のステムの方がより良いと信じるようになりました。
このような小口径のステムで高音質を実現するためにはイヤピース内のドライバー相互の物理的位置関係や役割に基づいたクロスオーバーの位相設計、そして直径と長さについて細心の考慮が必要です。」


またステムの中をみると金属チューブが見えますが、これは音響ダンパーだそうで、イヤーピース設計の最終的な共振ピークを「ならす」働きをしているそうです。この辺はきつさの無い高音域に貢献しているのだと思います。

次にこのようなコンパクトサイズに片側6個ものドライバーを内蔵し、さらに位相を揃えるための工夫はどうしたか、と聞いてみました。

カートライト:「根気強さ、実験検証、インスピレーション、多くのプロトタイプ、そして私たちはどのように改善(進歩)したいのかという明確な絵を描くことです。」

Westoneの長い経験、ノウハウに基づいた回答ですね。これはS-EM6と比べるとよくわかります。
実のところドライバー的なスペックではS-EM6の方が上かもしれないんですが、トータルの音性能ではW60はずっと上手です。最終的にはドライバー云々というよりも経験とノウハウに基づいた設計が大事ということなのでしょう。

* まとめ

W60は音のレベル的にはイヤフォン・イヤモニのなかでもトップクラスと言ってよいと思います。
AK240の性能もかなり上手に引き出しますし、RWAK120-B+Portaphile micro Muses01のホームアンプなみの音質でも十分に受け止められる性能レベルがあります。
実際にこのくらいのレベルのアンプでもW60のアラがわかりませんし、このクラスのアンプでないと出ないような強い打撃音でもそのまま再生できる伸び代があります。

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W60は音質の良さを考えるとステムを太くしたり、ハウジングを大きくしたり、やたら太いケーブルを使ったりとマニアックな方向に行っていないというのが面白い点であり、それで高音質を実現した驚きがあります。

高音質だけではなく、快適性も両立させたW60の良さは使ってみて分かると思います。
ぜひこの素晴らしいコンパクトモンスターを試してみてください。
posted by ささき at 22:26 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月27日

タイムロードの短い光ケーブル、TL-OP1

Chord HugoなどDAC内蔵で光入力のポータブルアンプを使用する方は短い光ケーブルの入手にまず悩むことになると思います。いままではそんな短い光ケーブルはなかったからです。普通短くて1mか、あったとしても60cmくらいでした。
私はいつもカナダのSys-conceptに頼むのですが、オーダーメイドなのでアンプの入力位置に合わせた長さを測定する必要があります。また海外通販は苦手という人も多いでしょう。
そこでタイムロードさんがChord発売に合わせて光ケーブルも用意してくれました。TL-OP1というモデルでミニ丸端子と角端子を13.5cmの長さで繋ぎます。
http://www.timelord.co.jp/blog/news/140507_tl-op1/

これは発売前に試聴テストを行い、適切な音質や各種製品との接続スタイルを検討して長さを調査して製作しています。その結果として13.5cmになったということです。
TL-OP1は透明度と柔軟性に優れるアクリル素材の光ファイバー導体を採用することにより、業務用通信機器の仕様に準拠した高信頼性の伝送特性をもたせたと言うことです。またスリムながら装着時の安定性に優れた業務用高信頼性コネクターの採用により、接続時のグラつきが低減され光軸の安定に貢献しているそうです。ハイレゾの伝送にも強いようです。

製品は13.5cmですが、試用で作った12cmのものを貰い受けましたのでレポートします。
製品版とは長さの違いだけで、線材は同じです。
またSys-conceptも通常のケーブルではHugoのプラグに対応できないので、Hugo対応のモデルを注文したので比較して見ます。
価格はSys-conceptが日本円で約6700円、TL-OP1はオープン(約2500円くらい)です。

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タイムロードTL-OP1(左)とSys-Concept Hugoモデル

TL-OP1ではSys-conceptのように上が平たくならないけど、Hugoは上にイヤフォンと光ケーブルをどちらもまとめられるので大きな問題ではありません。

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タイムロードTL-OP1(左)とSys-Concept Hugoモデル

TL-OP1もSys-conceptも両方とも問題なく192/24音源にロックします。
TL-OP1の音質は高く明瞭感もよいのですが、特徴はバランスが良いことです。柔らかさと硬さ、周波数的な高低のバランスがよく取れています。音色として楽器の音は爽やかに聴こえる感じですね。
Sys-conceptと比べると、Sys-conceptの方が音が濃密で低域のレスポンスがあります。またより曇りが取れて明瞭感が高くも感じられます。ただTL-OP1もSys-conceptと比べても価格差を考えると音質レベルはそんなに遜色ないと思います。むしろ好みの問題もあって、整理されてすっきりした音を好む人はTL-OP1が良いかもしれません。

タイムロードのTL-OP1は入手しやすく、安く、十分に満足できる音レベルだと思います。いつもSys-Conceptから買ってるなら別ですが、一般的にはまずTL-OP1を買って試してみて、さらに別の音が欲しいときはSys-Conceptに挑戦してみるというステップが良いのではないかと思います。
posted by ささき at 23:09 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月07日

AK120をすっぽり包むDAC内蔵バランスアンプ "The Glove"登場!

ヘッドフォン祭の直前ですごい製品の情報がJabenからはいって来ました!世界初公開です。
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The Grove(ザ・グラブ) - GloveAudio A1は名の通りにAK120を覆うように装着するDAC内蔵のバランス駆動対応のヘッドフォンアンプです。ケーブルはありません。前のHP-P1のプロトにも似てますね。
現時点で多くの情報はないのですが、光端子に装着してDACを使うようです。DACはSaberと言うのでESSですね。192/24対応です。AKシリーズを強化するパワードスーツにも見えます。
注目はヘッドフォン出力でKobikonn 4pin コネクタとAK式の二つのバランス出力付きです。KobikonnとはいわゆるRSAタイプのポータブル用のバランス端子です。この二つのおかげでポータブルのバランス駆動についても悩む必要は少ないでしょう。AK120ユーザーがAK240の資産である2.5mmバランス端子を使えるようになるのも画期的です。電池は充電池のようです。

GloveAudio は Jaben が全世界配給権をもっていますので、日本でも販売します。ただルートなど詳細はわかりません。価格の目安は6万から7万円でその前半くらいにしたいそうですが、基本的には未定です。
デモ機はヘッドフォン祭にJabenが持ってくると思います。

またJabenではたくさんのDAPを持ってきます。
最近話題となって来たHidizs AP100(下左)もあります。
またCookie(下右)はディスプレイがついて、flacをサポート、音も磨きをかけたそうです。ただハイレゾサポートはないようです。
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Biscuit+はシャッフルを付けた他は変わっていませんが、もともと音はいいのでこれも楽しみです。

ヘッドフォン祭では15FのJabenブースへGO!

*追記
Jaben JapanのFacebookにアップされました。
https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=439427949526792&id=248060828663506
Analog Squared Paperとのコラボアンプも面白そうですね。
https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=439423072860613&id=248060828663506
posted by ささき at 19:53 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月24日

Geek Wave 目標額達成と詳細情報

LH Labsのクラウドファンディング開発によるポータブルオーディオ機器であるGeek Waveが無事目標額を達成しました。
Geek Waveはindiegogoでキャンペーン中です。indiegogoはKickstarterと違ってPaypal払いです。
https://www.indiegogo.com/projects/geek-wave-make-your-smartphone-s-sound-sound-better#home

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Geek Waveについてはいままでで一番仕様不確定のところから開始したので、当初は混乱がありましたが、いまでは下記の仕様にほぼ落ち着いているようです。いまはAdd On(オプション)の追加策定をフォーラム(Geek Force)で話しているところです。

Geek Waveはひとつのデバイスで2つのモードがあります。それはStreamモード(DACモード)とDAPモードです。またStreamモードしかないモデルをGeek Wave-Sと言います。
StreamモードはスマートフォンからUSB経由でデジタル信号を受けるもので、スマホのUSB DACとなるモードです。
DAPモードは内蔵のメモリ(256GB)に格納した音源を再生します。本体には5つの物理ボタンがあります(Play/Pause/Previous/Next/Volume Up&Down)。Geek Waveだけで使うときはあたかもiPod Shuffleのように使います。ただしこのDAPモードのときにスマートフォンにBLE(Bluetooth LE4.0)で接続することができ、そのスマホの上のアプリからプレイリストや楽曲操作が可能です。DAPモードのときはUSB接続は不要であり、無視されます。
本体には物理ボタンのほかにLEDがあって、充電状態とPCM/DSD入力の確認ができます。またバッテリーを内蔵しています。バッテリーが外せるかどうかはユーザー投票で決まります。またスリープモードもあります。

PCと接続するとUSB DACとUSBマスストレージの両方としてPCから見えます。ここでDAPモードの楽曲転送ができます。また充電もなされます(このときにスマートフォンが接続されていればスマートフォンも充電されます)。
スマートフォンと接続すると、Geek WaveはUSB DACとして見えます。またスマートフォンに給電することが可能です。(おそらくバスパワーではなくセルフパワーとして認識されると思います)

また注目のオプションですが下記のものがユーザー投票で策定中です。

SDXC拡張スロット
Bluetoothレシーバーとしての機能
内蔵メモリの追加
一行LEDディスプレイの追加
交換可能なバッテリーのデザイン
第二の出力ポート(Line out?/SPDIF?)
ヘッドフォンのバランス出力
電池容量の増加
デュアルモノ構成(デュアルDACも含むと思います)
フェムトクロックオプション


ちなみに標準のDACはES9018K2Mだったと思います。
ポータブルでフェムトクロックってすごいですが、オプション全部載せならどんなモンスターになるのやら。

ただGeek Waveは納品時期が決定されていませんので念のため(まあXinみたいにはならないと思いますが)。
posted by ささき at 21:21 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月12日

Pono詳細とAppleのハイレゾ配信の噂

Ponoは普通の人のハイレゾプレーヤーを標榜しているのでハード的なことは書かずにひたすらアーティスト限定モデルを増やしてきました。
しかしながらハード詳細を望む声が大きいということで少し詳細を公開してます。
https://www.kickstarter.com/projects/1003614822/ponomusic-where-your-soul-rediscovers-music/posts/807924
回路はフルバランス、オールディスクリート、ゼロフィードバックのアナログ設計です。Ayreのデジタルフィルタもあるけど、音質の良さはこうした設計からということ。
DACはES9018とだけ書かれてましたが、ここの説明を見ると2M版ということがわかります。
またAyreというと副作用が少なく自然な音鳴りのMinimum Phase(MP)フィルタで有名ですが、PonoではさらにMoving Average(移動平均)フィルターをハイレゾ再生時(2x,4x)に採用しているということ。これは副作用(アーティファクト)がないということでさらに優れたフィルターということです。ポータブルにも最高の技術を全力投入ってHugoを思わせます。
出力インピーダンスは5Ωということ。これは別なアップデートでゼロフィードバック回路と電池消費の妥協点として設定したとあります。

ちなみに中にも書いてますが、クラウドファンディングの場合はユーザーがファンドする時はまだ未完成状態ですので仕様や測定は確定してないので念のため。試作はしてると思いますが、ファンドが整ってから量産設計に移ります。(Geek Waveなんかは構想段階からやってますけど)


それと今週はAppleがハイレゾ配信を始めるのではないかというニュースがいくつかありました。
http://www.macrumors.com/2014/04/10/high-definition-itunes-music-downloads/

http://www.monoandstereo.com/search/label/news?m=1

iTunesが全面改修されるという噂があるんですが、それに合わせて6月か7月ころ動きがあるのではということです。すでにAppleは十分な24bit音源を持ってるのではないかという読みです。
Appleとハイレゾの噂は前にもあって、結局はMastered For iTunesという妥協点となりました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/253750773.html
もともとAppleにハイレゾ配信を働きかけたのはニールヤングで、それが結実しなかったので自らPono Musicを作ったわけです。
このPonoとAppleのハイレゾ配信の噂が良い方向で結びつけば、と思わざるを得ません。
posted by ささき at 10:59 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年04月10日

クラウドファンディングのポータブルオーディオ、Geek Wave

USBメモリタイプDACのGeek Out(Kickstarter)、デスクトップDACのGeek Pulse(indiegogo)とクラウドファンディングのオーディオ機器開発を成功させてきたLH labs(ハイエンドメーカーLight Harmonicの子会社)ですが、今度はポータブルオーディオ機器をクラウドファンディングで出して来ました。
これはGeek Waveというデバイスでスマホ用DACと独立したDAPの両方に使えるというものです。またモバイルバッテリー機能も持っています。クラウドファンディングはPonoのKickstarterではなくindiegogoで行います。こちらのリンクです。
https://www.indiegogo.com/projects/geek-wave-your-mobile-life-amplified#description

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これらはポストGeek outとして、ユーザーの声を拾うフォーラムとしてLH labsがたてたGeek Forceで暖められてきたアイディアです。
http://geek.lhlabs.com/force/geekwave.html

Geek outをバッテリー駆動させポータブルデバイス化するのがGeek Ariaってもので、これはスマホDACですね。さらにその派生版としてそれを独立したDAPにするのがGeek Waveだったと思いますが、実際に出てきたのは両方の機能を兼ね備えているようです。

ビデオではPonoを意識しているようです。
http://geek.lhlabs.com/geekwave
スペック的にはPonoの倍の384/32対応でDSD128も再生可能というものです。
メモリは256GBで、バッテリーは3000mAhです。

ただ見た目はiDSD nanoみたいにスマートフォンにつけるモバイルDAC/アンプに見えますが、これがDAPってどういうこと?って疑問が上のフォーラムでもすでに載っています。
Androidを内蔵していてストリーミングをWave側で再生可能で内蔵メモリも持ってるっていうのはたしかにDAPっぽいですが操作画面もボリュームもありません。
これに対してはWaveのコメント欄でスタンドアローンだがコントロールにはスマートフォンが必要とあります。ボリュームはUSBの制御信号を使うのかどうかわかりませんが、この辺も不透明ではあります。あとはスマホ側のアプリでBTで制御するなどですかね。DLNA使えば面白いけどそこまではなにも書いてません。
まあそういう点をユーザーが提案して行くっていうのもクラウドファンディングではあります

実際にLH labsの場合はいきなり完成系を示してあとはアーティストモデルを増やすだけというPonoと違って、このキャンペーン中にもユーザーの声を聞きながら開発を進めて変えていく可能性が見えます。Geek Pulseに似てますね。
例えばケースは3つの案が提示されていて決まってません。Please helpと書いてます。

image.jpg image.jpg image.jpg

またスマホとWaveを結ぶケーブルもユーザーの声を聞きながら決めて行きたいとしています。この辺はGeek Forceフォーラムで吸い上げて行きます。
短いオーディオ用線材のLightningケーブル作ってよーと言いに行きたいと思います。

ハイエンドメーカーのクラウドファンディングでのコンシューマーへの取り組みという点で見ると、LH Labsでは300万のDa Vinci DACで使われている96k以下の音質向上をはかる“Duet Engine”(SonyのDSEEみたいなものか?)とか
即座に電源を立ち上げる“INSTANT POWER” などの技術をハイエンドからの流用としています。ハイエンドの技術を生かしているというのはiFiを意識しているようにも見えますね。
ただPonoが普通の人をターゲットにしてるのに対してGeek(英語で言うおたく)という名の示すようにこっちはマニア志向です。

クラウドファンディングとして見ると、indiegogoでのperk(得点)は早割引で価格は399$(定価は619$)とちょっと高めです。昨日からアナウンスされてたので予想は早割で$199かなと思ってたので強気です。256GBメモリというのもあるでしょう。
スマートフォンとの接続は3タイプあり、
Galaxy S4/5用、その他Android、iPhone5/5s(lightning)に分かれています。
* 注:Geek ForceのメンバーはまずフォーラムのGeek Force Only Perksをみてください。
早割よりさらに安くなります。

さて、Geek Waveはコンセプトのわからなさに今回は早速批判も出てます。仕様未定の部分を残して走り出したGeek Waveですが、キャンペーンの終わりにはユーザーの声によってどうなって行くのでしょうか。


他にAndroidを内蔵したクラウドファンディングのポータブルデバイスというとスマートヘッドフォンを標榜するStreamzがあります。これも直でストリーミングを受けられます。ただ人気はないですね。
https://www.kickstarter.com/projects/272894776/streamz-first-smart-headphones-with-wifi-android-p
また面白いのではウエアラブル・イヤフォン(直訳すると当たり前になるけど)のDashがあります。これはウエアラブルデバイスの考えを持ったイヤフォンでヘルスモニターなどが出来ます。これは成功しました。
https://www.kickstarter.com/projects/hellobragi/the-dash-wireless-smart-in-ear-headphones

ちなみに最新情報ではPonoはKickstarterでも歴代3位の成功プロジェクトとなったようです。
オーディオ機器のクラウドファンディングっていうものもこれを契機にさらに活発になって欲しいものです。
posted by ささき at 08:42 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月27日

高性能ポータブルアンプ、Portaphile Micro MUSES01バージョン

*English summary is available at the end of text.

Portaphile MicroはPortaphile 627を小型にしたものです。仕様はほぼ同一でコンデンサーが一個少ないだけとされています。電池持続時間も同じということ。
プリオーダー特典で$499が$399で販売されていましたので早速オーダーしました。
ホームページはこちらです。
http://portaphile.com/shop/portaphile-627-micro-pre-order/

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今回のポイントはオペアンプの選択が出来ることで、オプションとしてJRCの「オーディオ向け高音質オペアンプ」であるMUSES01がプラス$50で選択できます。
このオプションを取ることでPortaphile Microの3チャンネルのうち左右チャンネルはMUSES01で、GチャンネルはOPA627となります。なんと贅沢な。

MUSES01はオーディオ専用の高音質オペアンプとしてJRC(新日本無線)が制作しているMUSESシリーズのフラッグシップモデルです。
http://semicon.njr.co.jp/jpn/MUSES/MUSES01.html
MUSES01は他のモデルと比較して動作電圧が高い(MUSES01は+/-9Vで他は+/-3.5V)ので、基本的には据え置きのハイエンドオーディオ向けですが、Portaphileはもともと627向けに内部昇圧しているのでMUSES01がポータブルアンプでも使用できるということなんでしょう。
MUSES01バージョンと627バージョンはLEDの色が赤(Muses01)と青(627)で判別できます。

DPP_0003.jpg     DPP_0002.jpg

細かいところではプラグの食い付きが良く、QuickStepと同等になったのが良いところです。またボリュームノブも多少変わっています。ボリュームポッドまで変わったかは分かりません。(627Xはボリュームをより高品質のものに変えたと明記されてます)
USB ミニBで充電できるようになったのが改良点ですがあやしい二股のUSBケーブルがついてきて、PCのUSBから取る時は2つのプラグから取らないと電流が足りません。(付属のACアダプタはひとつで済みます)
しかも、ソースのDAPと同時に一つのPCから取ると誤動作するという謎の症状が報告されています。(PC側の供給の問題かも)
電池の持ちはPortaphile 627と同じく4時間程度ということですが、まだ3時間半程度までしか実測はしていません。いずれにせよ電圧が下がると下記の電源投入不安定問題も出やすくなるのでまめにフルチャージした方がよいと思います。SONYの2個USBソケットのあるモバイルバッテリーでは充電可能でした。

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Portaphile 627(下)とPortaphile Micro

以前のPortaphile 627では電源投入時に2回ひねらないと電源が投入されないという「儀式」があったのですが、Microでは一度で電源が入るようになりました。しかし、、はじめの数秒はノイズがあり、それはすぐに収まってほぼ無音のローノイズフロアとなりますが、音量がはじめ低レベルで少し経ってからポップノイズとともにポンっと上がるというなかなかの癖を見せてくれています。製作者のCaesarに聞くとよくわからないようなのでもしかすると個体の問題かもしれませんが、この辺がひさしぶりに海外マニアックものを感じさせてくれます。
ある程度安定すると問題なくなり、実にすばらしいというか驚きの音質を聴かせてくれます。さすがオーディオ専用とうたうMUSES01です。
Micro MUSES01バージョンはAK120のWM8741デュアル改造のRAWK120-B(S)のために注文したもので、サイズ的にもなかなかぴったりです。デジタル接続システムのAK100+Hugoにたいしてアナログ接続のハイエンドポータブルシステムとなりますね。

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MUSES01バージョンではまず音の解像度と明瞭感が半端なく、いままで良いと思っていた627バージョンと比較しても、627では描ききれず丸めてしまった音の輪郭をMUSES01版ではさらに鮮明に彫り深く描き出し、WM8741デュアルの再生品質の高さをあますところなく再現するという感じです。RWAK120-BとPortaphile MUSES01の再現力にはちょっと圧倒されますね。全体的な明瞭さもかなり鮮明さが向上して楽器音の輪郭がクッキリはっきりとしています。
また高域と低域の再現力も半端なく、かなりのワイドレンジ感があります。高域の明瞭感・鮮明さの素晴らしさと低域の重み・下への沈み込みの深さは新感覚と思えるほどです。ある曲でJH13が耳の中でぶるぶる震えるように感じられたのはちょっと驚きでしたね。
Portaphile 627に戻して聴きなおすと627はよりソフトな感じでちょっとメリハリがなくのっぺりとした感じにはなります(相対的な話ですが)。
もちろん好みの差もあって、前の627のメロウさ・中音域の甘さが良いという向きもあるかもしれません。
Portaphile 627は中音域重視のウォーム感のある音も人気のひとつでした。買う前の予想ではMUSES01バージョンはおそらくドライで分析的になるだろうと思ったのですが、思ったほどはそうドライではありません。もちろん上で書いてきたような差はあるのですが、まったくの別物的な音調になったという感じではないですね。そうした点では聴きやすいPortaphile 627の良さは適度に残していると思います。
また全体的に力強く押しが強い感覚です。Portaphileのゲインは627バージョンではLowが2xだったのですが、MUSES01バージョンでは1.2xに下げられたのもわかります。

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MUSES01の音は素晴らしいのはわかったので、電源が安定できればと思いますが、大きくても良いという人は627XのMuses01バージョンをオーダーするのも良いかもしれません。(問題が収まるかどうかは分かりませんが)
音質的にはいままでのアナログ入力のポータブルアンプでは最上級のレベルのものだと思いますし、AKシリーズと組み合わせてコンパクトなシステムにできるのも魅力です。反面で不安定さがあり、電池持ちも悪いという難点もあります。なかなか海外マニアック製品を久しぶりに堪能した感じですね。
それとMUSES01がすごいのが分かったんで、MUSES01(あるいは02)を使ったポータブルアンプをもっと見たいと思います。MUSESの普及品を使ったのはありますが、やはりトップモデルを使ってこそのマニアック製品。どうせトップモデルなんかポータブルに使っても性能は発揮できないさ、と言う前にまず作って試して聴かせて欲しいと思います。

*English summary here.
Although I experienced pop and noise unstability on the startup, the sound quality is top notch. After some burm-in time the difference between 627 and Meses01 comes to more obvious. Muses01 delivers crisper highs and more weight and details on the lower region. More articulate overall the sound spectrum. Some may say it is analytical but I feel the sound signature is not so far from the original 627 version as I thought first. I think this is not dry nor sterile. But anyway original 627 is sweeter and warmer.
posted by ささき at 22:40 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月18日

ヘッドフォンブック2014に執筆しました

恒例のヘッドフォンブックが今年も発売されました。
まず今回は付録のカスタムブックが注目です。FitEar須山さんの情熱編集による気合いの入ったカスタムイヤフォンブックです。こちらでは私はジェリーハービーのインタビューとキーマンに聞くを書いています。インタビュー
ではロクサーヌや現行品のところを担当しています。ジェリーってとてもまじめな人でこちらからの質問にはとても真摯に答えてくれます。個人的には須山さんとジェリーの絡みをもっと入れこみたかったところです。
こちらはいくつかインタビュー中のスナップです。

headphone3.jpg  headphone5.jpg

headphone1.jpg  headphone6.jpg

他ではP114からのAKシリーズの特集を書いていますが、これは字数4000の大作。またP118でWalkman ZX1も1000字程度で書いています。
また今回もP22でヘッドフォン大賞を書かせてもらっています。個人的には昨年はやはりDita Audioかなあと思います。きちんとポリシーを持っている点がまず良いですね。
あとはP131からのメモリスティックタイプのUSB DAC特集も書かせてもらっています。これも昨年のトレンドですね。
あとはレビユーでパルテールやDita Answer,音茶楽ドングリなどを書いています。

売れ行きは絶好調のようです。ぜひ手に取って読んでください。


posted by ささき at 23:45 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月13日

はじめてのKickstarter

Ponoはわずか9時間で目標額達成し、一日ちょっとで5000個もオーダーが入りました。
おもしろいことにコメント欄などをみると、これがはじめてのKickstarterと書いている人も多く、ハイレゾDAPだけではなく、クラウドファンディングもすそ野を広げてくれたと思います。
PonoでKickstarterに興味を持った人もいると思いますので、基本的なことを書いていきます。

Kickstarterはみんなの投資で製品を開発するクラウドファンディングを運営するサイトです。別な言い方をすると、Start-Up(ベンチャー企業)を支援するサイトです。ちなみにクラウドは雲の意味のクラウド(cloud)ではなく、民衆の意味のクラウド(crowd)です。
各自の出資はPledgeと呼ばれプリオーダーみたいなものですが、期間内に目標額に満たない場合は製作されません。また開発期間の前に出資するのでたいていリードタイムが長い点が製品のプリオーダーとは異なりますので注意が必要です。あくまで購入ではなく出資です。
Kickstarterは名の通りにStart-Upを支援するものですから、ベンチャーゆえに量産に対しては見込みが甘く遅延することも多いのでそこも考慮しておかねばなりません。たとえばPonoにしてもAyreやAQが開発に参画しているといっても、製品を作るのはあくまでPono Teamですからそこは未知数です。念のため。

Kickstarterのサイトはこちらです。
https://www.kickstarter.com/

Kickstarterの場合はウエブとiPhoneアプリで参加ができます(iPadネイティブアプリはいま現在ありません)。
Kickstarterに参加するためにはまずアカウントが必要です。Pledgeは米国Amazonのアカウントが必要でクレジット払いです。目標額に届かなかった場合は、KickstarterではPledgeはキャンセルされて支払いは発生しません。予定額に届いてプロジェクト期間が終了した時点でクレジット支払いが発生します。

Kickstarterのキャンペーンが開始されたら、プロジェクトの内容を見ていくら投資するか決定します。たいていはリストを見て、製品が対価としてもらえるところに出資します。賛同表明で$1だけ、なんていうのもかまいません。日本の場合は送料が別になっていることが多いので注意が必要です。
たとえばPonoの場合には$300 or moreという欄にBlack Pono Playerまたはもう一行あってYellow Pono Playerとありますので、そこが製品が対価として手に入るところです。moreとあるのは賛同する気持ちですのでそれ以上出してもかまわないということです。(またあとで書くようにオプションのための追加支払いもある場合があります)
その欄を見ると海外へは+$15とあります。ここでクリックすると次では+$15の送料も含めてトータルでの支払額があります。おそらくは自動で計算されていると思います。ここを次に進めるとAmazon USでのクレジット支払の画面となります。支払を終了させるとPledge手続きは終わりです。Pledgeをした人はbackerとよばれます。私のtweetを見ている方は私がI just backedというtweetをたまにしていますが、それはこのタイミングです。

プロジェクトの期間中は出資金額を増減したいときはPledge Managerを使用します。これは後で書くようにオプションが途中で追加されてオプション分の金額を増やしたいときに活用できます。また期間中であればキャンセルもできますが、それもPledge Managerから行います。

Kickstarterの各プロジェクトはUpdateとして途中経過が報告されますので、ここは目を通す必要があります。またメールでも知らせが来ます。開発状況、出荷遅れなどが書かれたりします。
プロジェクトが成功して目標額に達成すると、期間が終わったあとにサーベイという調査のメールが来ます。サーベイはbacker kitとも呼ばれることがあります。サーベイでは発送住所とオプションの確認が主な目的です。例えばRingでは海外送料はPledgeの際に加えますが、指輪のサイズはPledgeでは指定しないのでサーベイで聞かれるはずです。

オプションはPledgeで固定される場合とサーベイで後で決める場合があります。オプションが一個だけの場合は前者、複数オプションの場合は後者が多いようです。例えば、
ベース製品: $100
オプションA: $10
オプションB: $20
オプションC: $30

という組み合わせがあり、AとBが欲しい場合はPledgeではとりあえず$130払っておいて、サーベイでAとBを指定するというやり方です。このときCに変更しても良いと思いますが、出資金総額はこの時点では変更できないのが普通です。このサーベイはいくつかシステムがあるらしく、サーベイの方法はプロジェクトによってまちまちなのでメールをよく見て注意が必要です。

私が思うに、Kickstarterの一番のだいご味は開発中にコメント入れられるという点です。出資して作らせるのでフォーラムに好き勝手書けるのがクラウドファンディングの良い点です。もちろん聞いてくれるかどうかはわかりませんが、言うだけは言っておくというのが海外的なやり方でもあります。(日本的だとはじめから言わないでおく、という感じですが)
また実際に開発に取り入れてくれたりもします。Geekでは高出力を主張してたら高出力バージョンも追加してくれました。Kickstarterではありませんが似たようなクラウドファンディングのIndiegogoの方のGeek Pulseではキャンペーン開始時と終了時ではまるでちがったUSB DACになっています。外形デザインもユーザーコメントを取り入れ、オプションもどんどん追加され、ミニモンスター的になりました。
あとはiPhoneのポータブルフラッシュNovaではアプリへのSONYのレンズカメラのライブラリ対応を依頼しましたが、検討するとはありましたが対応不明。Ponoでは出力インピーダンスは低くしてね、DSD対応してねってコメントしときました。
いずれもこれらは単なるプリオーダーでは不可能なことで、開発中にユーザーが参画しているからこそできることです。このユーザーと作り手の関係が新しい点です。

クラウドファンディングによる開発はいままでにないユーザー参加型の製品開発でもあります。また、従来のビジネスモデルに対する変革でもあります。あるいは変革というよりは時代の変化に対する順応といった方がよいかもしれません。ハイエンドオーディオメーカーのLight HarmonicがStart-Up版の分身としてLH Labsを作り、Geek outを開発したのもそうしたトライアルであると思います。LH Labsではユーザーの声を直接聞くサイトも立ち上げました。Ayreも自分で製品を作るわけではありませんが、こうした新しい仕組みに参画することで得ることは大きいと思います。
作り手が買い手の顔が見えない、という時代からいまはもっと作り手と買い手の距離が近くなっています。その変化の背景にはIT進化があります。こうした新しい時代の新しいビジネスモデルとしてクラウドファンディングは面白い展開を見せていくでしょう。
posted by ささき at 22:41 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月07日

CHORD HUGO発表会開催

明日のポタ研ではCHORD Hugoの発表会を行います。
https://m.facebook.com/photo.php?fbid=597599703653739
なんと今回はジョンフランクスのみならず、パルスアレイDACの生みの親ロバートワッツも来日します。
ロバートワッツは初来日のようでQBDでも来ませんでしたが、Hugoでは来日してくれます。これはすごい。ぜひポタ研の熱気を伝えてください。
公開イベントだそうですのでぜひお越しください

場所は中野サンプラザ6F 部屋名:フラワー
http://www.sunplaza.jp/access/
なお、「ポタ研」本会場とはフロアが異なります。下記案内図で(B)の部屋になります。
http://www.fujiya-avic.jp/user_data/docs/0208_potaken_map.pdf
posted by ささき at 15:54 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年02月02日

Jabenの新作Govibe RivoとKASSO真空管アンプ

2月8日のポタ研にはいつものJabenも参加しますが、今回の出展物のお知らせが来ましたので紹介します。
いつものようにコストパフォーマンスの高い二つの新製品があります。

KASSO YJ-01 classA 真空管アンプ

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KASSOというメーカーのヘッドフォンアンプで真空管を採用したAクラスアンプです。価格は24,800円(予価)と据え置きとしてはかなりお手頃です。
DAC機能はなく、純粋なヘッドフォンアンプです。外観はソリッドでなかなかよくできています。
背面にはRCAアナログ入力のほかにプリアウトがあるのでプリアンプとしても使うことができるようです。またミニ入力がついているのでiPodあたりから接続することもできるでしょう。パッケージにはACアダプターのほかにミニ-ミニケーブルもついているのでiPhoneなどから手軽に出力を取り出せます。

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CHORD QuteHDをDACとしてみました。ヘッドフォンはHD800を使います。
箱から出したばかりですが、澄んでいてピュアな美しい音を聴かせてくれます。ニュートラル基調で暖かみというのを強調していませんが、軽く暖かい感じで音が美しく感じられます。柔らかさもあり、この音の美しさは真空管らしさを十分に感じさせます。
楽器の音の分離も良く、ヴォーカルも艶やかです。低域のインパクトも出すぎずにしっかりとあります。ヘッドフォンアンプとしての基本的な解像力とか音の広がりもこの価格にしてはかなり良いのではないかと思います。HD800とQuteHDのような高い性能のシステムに入れても粗さはあまり感じられません。ハイレゾを再生しても差はわかります。

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間接音の多いスピーカーの場合は甘すぎる真空管アンプでも良いかもしれませんが、ヘッドフォンの場合は音がダイレクトなので甘すぎるとそのまま甘さが目立ってしまいます。その点でこのアンプはヘッドフォンアンプとしての基本的なしっかりとした音の再現力と、適度な真空管の柔らかさのバランスが良いように思います。

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付属のケーブルでiPhoneと接続してみましたが、なかなか良い音が再生できました。ケーブルを良いものに変えるとさらに音質の向上が図れます。
ヘッドフォン出力もミニと標準がついているので、家でiPhoneなどをより良い音でヘッドフォン、あるいはイヤフォンで聴きたいという用途に向いていると思います。iPhoneなどはいわゆるきつめのデジタルくささが抜けませんので、こうした真空管でそれを緩和するというのはなかなか良いと思います。
コストパフォーマンスの高いデスクトップアンプという感じですね。

GoVibe Rivo

GoVibeシリーズの新作であまり情報がないのですが、手探りで試してみました。はじめ画面が広いのでDAPと思っていましたが、ポータブルヘッドフォンアンプのようで、DAC内蔵タイプです。画面を見るとFiio E7あたりに似たところがあるのでファームは関係があるのかもしれません。

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アナログ入力はミニ端子がついているのでiPhoneやAK100などに使うことができます。ただRivoの重点はデジタル機能だと思います。

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RivoにはUSB DAC機能がついていてPCにつないで使うことができます。標準ドライバーでインストールなしでWindows PCと接続することができます。おそらくオーディオクラス1でしょう。サウンドのプロパティから推測すると最大96kHzの入力が可能のようです。
USB DACとして聞いてみると、音はFiio E7とは異なる元気なGoVibeサウンドです。音質は良好で明瞭感が十分あり、高いほうの伸びや低いほうの沈み込みもなかなか良好です。低域はかなり豊かなに感じられます。音の広がりも良く、音質的にはなかなか良いですね。

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メニューからアクセスする機能もE7に似た感じで、同様にUSBチャージのオンオフ設定があるので、iPadとiPhnoneにも使うことができます。ここではiPhoneからカメラコネクションキットと須山FitEarのUSB01- Micro35で接続してみました。イヤフォンはDita Answerで、アプリはONKYO HF Playerです。メニューからUSB CFGをオフにしてセルフパワーモードにします
この組み合わせはなかなか音質が良く、音の広がりもかなり印象的にあって、基本的な解像力や明瞭感も高いレベルにあります。Rivoで特徴的なのはさきのPCのところでも書きましたが低域の量感がかなりあるので、迫力たっぷりにアグレッシブな音楽を楽しみたい人には向いていると思います。デジタル接続ものというとお上品な製品が多いのではありますが、Rivoのように基本的な能力を押さえておいて、ベースの迫力たっぷりというのは選択肢としてはありだと思います。
なんとRivoは14,800円(予価)というお値段だそうですので、噂のiPhoneデジタル接続とやらを試してみたいと思う人はぜひどうぞ。

他にもいろいろと出展物はあると思いますので、ぜひJabenブースにお越しください。
もしかするとさらに会場特価もあるかも?
また、Jabenでは3月の初旬に今度はインドネシアのジャカルタでMookヘッドフォンショウを開催します。インドネシアも日本企業進出も多く急発展している地域ですので興味のある方はJabenブースで大山さんに声をかけてみてください。
posted by ささき at 20:30 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年01月28日

BSG TechnologyのReveelとM/S処理のオーディオ活用

こちらユニークな製品の紹介です。
見た目はコンパクトな普通のポータブルアンプで、アナログイン・アナログアウトがあるだけのシンプルなものですが、ただのポータブルアンプではありません。というかアンプと言えるかどうか。これはBSG Technologyというところの開発した"Phase Layering"技術を応用して作られたポータブル・デバイスです。簡単に言うとDAPなどの出力につなげて音質を向上させるものです。

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Reveelは昨年(2013)の11月か12月頃に発表されたもので、名前は英語の「暴き出す」の意味のrevealから来ていて、文字通り録音されているが聴こえなかった音楽情報を暴き出すというものです。開発元のコメントではこの技術はDSPではなくアナログドメインでおこなわれ、クロスフィードの類でもない、もとの信号にないものは足さないとサイトには書かれています。
これだけ聞くとあやしく聞こえますが、特許情報などから調べてみると実のところ使用されている技術はオーディオの世界に古くから知られているものをベースにしています。それはMid-Sideステレオ処理(MS処理)です。
また本稿ではそれに付随する技術としてBlumlein Shuffleも紹介していきます。なぜかというと、本技術は欧米では"Blumlein Shuffle"として紹介されることが多いようすだからです。

*Mid-Sideステレオ処理とBlumlein Shuffleについて

まずMid-Sideステレオ処理とはなにかというと、録音した情報をL chとR chから派生したMid(中央部)とSide(側方)の情報にわけて、さらにはそこから再度LとRを取りだすというものです。こうすることでステレオイメージの調整ができます。
MidというのはM=(L+R)で計算されるステレオイメージの中央部(センター)の情報で、SideはS=(L-R)で示されるステレオイメージの側方部分の情報です。S=0(つまりL=Rのとき)のときはセンターイメージだけとなるので、Sを増減させることでステレオイメージを広げたり縮めたりすることができることがわかります。なぜ(L-R)の計算で側方部の音が取り出せるかと言うと、LとRに均等にある音は中央部の音ですから、片方を逆相にして加算すればその部分の音は打ち消されるからです。
またLとRは前述の式から2L=M+S, 2R=M-Sとあらわされますから、MidとSide情報からふたたびLとRを取りだすことができます。L/RからM/Sへ、そして再びM/SからL/Rへと戻せるわけです。この際に2倍されるのでオリジナルよりも3dB音圧が上がることになります。

ただ、このMid-Sideステレオ処理では単純にSを増減させると高音域と低音域でステレオイメージが異なると言う問題が出てくるようです。それを解決するのがStereo shuffling(Blumlein Shuffle)という技術です。これはAlan Blumleinというイギリス人が中心に開発したのでそういう名前が付いています。さきのSを単純に増減させるだけではなく、それを周波数ごとに変えると言う手法です(イコライジングします)。これを先に書いたMとSからLとRを取りだすステップの前に行うことをShufflingと呼びます。

これらは1930年代から戦後にかけて研究されていたもののようです。Mid-Sideステレオ処理は主にマスタリングやレコーディングのさいに使われていてDTMをやっている人はなじみのある人もいるかもしれません。これをオーディオ再生に応用したのがこのBSGの技術です。
Reveelで使われている技術はBSG Technologyでは"Phase Layering"と呼んでいて、独自特許を取っています。下記のUS特許がそうです。
http://www.google.com.br/patents/US8259960
BSG Technologyの特許を読むとさきの説明でSを取りだすときにS1=(L-R)、S2=(R-L)としてLとRに付随するSide情報を別々に管理し、さらに最後にMとS1/S2をそれぞれ加算してLとRに戻すときに、黄金比(1.618=5:8)を系数として加算すると言うことです。これによって優れたステレオ再生が得られるというのがBSGの主張する技術です。
ただこうするとLとRの成分が微妙に混じってやはりクロスフィードっぽくなるようにも思えますが、よくわかりません。もしそうだとするとスピーカーよりはヘッドフォンに向いた改良とも言えるかもしれませんけれども。

*BSG Technology Reveel

話をReveelに戻すと、はじめはInner FidelityのCESレポートで触れられている下のページを見てちょっと興味がわいたのでいろいろと調べてみました。HeadFiでもスレッドがあります。
http://www.innerfidelity.com/content/ces-2014-show-highlight-bsg-technologies-reveel-signal-completion-stage-headphones

BSG Technology自体はこの技術をライセンス売りしたいようですが、その効果をデモするために前に$3000くらいのq0Lという高価なプリアンプを以前作っていたようです。今回それを$115のポータブルアンプに応用したのがこのReveelです。もともとPhase Layeringの基盤自体はコンパクトなものだったようです。

IMG_3583_filtered.jpg     IMG_3580_filtered.jpg

使い方はポータブルアンプと同様にDAPと組み合わせてアナログ接続します。ヘッドフォン出力はReveelのヘッドフォン端子から取ります。ReveelにボリュームはないのでラインアウトではなくDAPのヘッドフォン端子から取るのが良いでしょう。

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手に取ってみるとかなり小さくて軽いですね。作りはなかなかしっかりしていて質感も価格にしては悪くありません。
本体にはシンプルにin/outプラグと電源スイッチ、機能のオフオンスイッチがあります。機能のオフオンで利きを確かめられます。ちょっと問題はプラグ間隔が狭いので太いケーブルは使えないことです。また電源をつけたままケーブルの抜き差しをすると壮絶にポップノイズが出るので注意が必要です。

少し手持ちでいろいろと試してみましたが、AK100mk2がよく効果がわかります。
ぱっと目の前が開けて音空間が三次元的に広がり、音に明るさというかきらめきが感じられます。またDAPにも寄るけれども、聴覚的により細かく解像力が上がるように感じられます。また少しですが音圧が上がります。
もとの音は少し明るめに変わるけれども、ほぼ性格的には引き継がれている印象です。周波数的にどこかを上げることはないようにも思いますが、少し中高音域よりになるかもしれません。

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パッケージについてきた標準のいい加減そうなミニミニケーブルでも差があるのが十分わかります。おまけのケーブルだとかえって音が劣化するんじゃないかってポータブルアンプもありますからね。上ではオヤイデの最近出たHPC-MSSケーブル(3cm)を使ってみましたがなかなかよくマッチします。
初めのうちは少しヒスっぽい背景ノイズが出てますけど、バーンインしてくうちに多少収まってきます。ただ完全には収まりません。電池持ちは測ってないけど届いた晩にチャージせずに一晩エージングさせて放置しても切れなかったのでそれなりにあると思います。

書いたようにボリューム増減ができないので固定出力のラインアウトから取ることは出来ません。DAPのイヤフォン端子から取るのに向いてます。あるいはDAP/アンプの二段重ねにプラスワンしても良いでしょう。重量級システムならコンパクトなんで側面につけるとかいいかもしれません。アンプというよりアナログフィルターみたいなものと考えたほうが良いですね。
アンプ作る人はこの辺を研究して機能に取り入れてみても面白いんじゃないかと思います。(下に実例を挙げます)

Reveelは下記サイトで購入ができます。
http://reevelsound.com/
海外送料とかは書いてありませんが、これもなんとか売ってと直メールして頼んだら親切なことにDHL送料を折半してくれて送ってくれました。(通常だとDHL送料だけで$50くらいになるから)
こういう場合はカート使わずに直談判で払い方を相談します。

*M/S処理のオーディオ再生における他の応用例

これでM/S処理のオーディオ再生の応用に興味を持った方もいると思います。これを試してみるにはReveel以外にもいろいろと選択があります。

よく知られているところではあのiFI AudioのiCanやiTubeで採用されている3D Holographic Sound systemもこのM/S処理とBlumleinの技術を応用したもののようです。独特のぱっと広がり明るくなる感じは似ています。
http://www.ifi-audio.com/en/iTube.html
またPHAEDRUSという会社もこのBlumlein Shuffleを応用した機材を開発しています。
http://www.phaedrus-audio.com/shuphler.htm
BSG Technologyもその応用例の一つと言うわけです。前のプリアンプは下記のものです。
http://www.stereophile.com/content/bsg-q248l-signal-completion-stage

またPCで試すことができます。もともとマスタリング向け技術ではあるのでいくつかDSPプラグインがあると思います。わたしが試してみたのはVoxengo MSEDという無料のVST/AUプラグインです。
http://www.voxengo.com/product/msed/
Windows PCだとMSEDはVSTプラグインなので、JRMCならばそのまま使うことができます。DSPスタジオからVSTプラグインの追加でインストールします。JRMCではWindows OSのバージョンにかかわらず32bit版を選んでください。またFoobar2000でもあらかじめVSTラッパーを入れておくことで使えると思います。MacではAUプラグインで提供されています。

msed.gif

立ち上げるといくつかモードがありますが、DTM用途ではなく再生用の場合はinlineを選んでください。encoderはL/RからM/Sへ、decoderはM/SからL/Rへ変換する用途です。inlineはこれらを同時に行います。mid成分とside成分はそれぞれゲインで調整が可能です。

このあたりをいろいろと調べていたのですが、日本と欧米の資料をいろいろと読むと面白い事に気が付きました。
日本ではBlumleinという言葉はあまり出てこなくて、主にM/S処理のことが書かれています。対して、欧米ではM/S処理とBlumlein ShuffleをまとめてBlumlein Shuffleと呼んでいることが多いようです。
日本ではM/S処理と言うのは中田ヤスタカ氏がPerfumeなどの製作で音圧を上げるのに使ったことでよく知られているようです。また欧米ではBlumleinという人はたくさんの特許を持つ多才な偉人だったようで、人物自体がよく知られているようです。iFIのトルステン博士とインタビューしたときにも著書を見せて雄弁に語ってくれたのを思い出しました。
この辺もお国柄と言うのが出ていて興味深いものです。
posted by ささき at 22:55 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年01月05日

CHORD HUGO preview report

CHORD is well known in the highend audio industry by their renowned QBD76 or classic DAC64. However we portable audio users think CHORD is in the another league to us.
Now CHORD announced new product called "Hugo". Hugo is a portable gear which is a high performance DAC-Amp combo with a bunch of great features.
Now we get a high-end sound never had before in our hands.

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To my surprise, CHORD stated the Hugo product is a reference grade product which is regarded as a highest class in their range. This tells us they are serious about Hugo sound quality.
Yes Hugo is a cutting-edge product.

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DAC portion of Hugo employs Pulse Array DAC circuit that is well known among CHORD DAC products. Pulse Array DAC is not an off the shelf ready-made product like Wolfson or ESS DAC chips. Instead the Pulse Array DAC is composed within the FPGA. Hugo's pulse array DAC circuit is the new generation of CHORD Pulse Array DACs.

The name HUGO comes from a play on words, it is "Wherever You Go" that means portable product.


* Hugo Preview event at Tokyo

We had a Hugo preview show at Tokyo Timelord showroom.

Timelord is the Japanese distributor of CHORD product. CHORD founder John Franks came to show us the proto type
of Hugo. I interviewed him some queries. Here is the movie of the interview.
http://www.youtube.com/watch?v=trypeVPenSE&feature=youtu.be
http://www.youtube.com/watch?v=fJWnhIRw9HM&feature=youtu.be

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John Franks is a founder of CHORD electronics. He used to work on designing power supply of aircrafts. At CHORD, John is responsible to products concept. As for digital matter, Robert Watts is fully responsible.

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John met Robert when John was at a recording studio installing his amplifiers. Robert showed him his unique DAC which employed the FPGA. It was the origin of Pulse Array DAC nowadays.

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He is holding DAC64 PWB in the picture

DAC64 sounded remarkable but used to get hot. Next QBD76 was improved for both of sound quality and the heat efficiency, thanks to improved FPGA device. QBD won’t get hot. QuteHD is a downscale version of QBD76 to bring a size merit of FPGA. QuteHD employs the same generation FPGA but less capacity.

John thought about the situation of current audio industry and he saw that SONY released a portable headphone amp (HPA-1), he came to the idea that CHORD should design a portable audio gear. So he asked Robert about feasibility of the idea. It was the start of Hugo product 14 months ago.

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Then Robert Watts brought an idea that to use the latest FPGA called Xilinx Spartan-6. The most improved point of Spartan6 is a heat efficiency and low power consumption as well as a compution performance.
Speaking of performance of the CHORD FPGA, refer to the tap value below. Higher is better.

DAC64 1024
QBD76 17000
Qute 8000
Hugo 26000


Looks like Qute is a scale down version of QBD so the tap value is also lower. But Hugo is better than QBD76 in specification thanks to its improved FPGA. Hence CHORD stated the Hugo is the reference product. Hugo also supports THD -140dB ! This is an unbelievable spec even in all the audio product's not only limited to portable products. John told us "When Robert showed the first Hugo prototype, it seemed like something from another planet".

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Notice the large batteries of Hugo. These ensure a good run time.

CHORD also implemented an advanced digital volume control with FPGA.The volume is very accurate and precise, almost no data loss would be found. An optical encoder is used in the volume.

* Hugo and the technology

Highlights of CHORD products are an advanced digital circuit like Pulse array DAC, WTA filter and they also features high quality power supply. Aircraft grade machined aluminum body is also a CHORD signature.
Hugo has all of this. There is no compromise.

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In fact, this advanced power supply is very useful for portable gears that has a severe power restriction. It can be said the CHORD had an elemental technology for portable gears. Another elemental technology is a low power consumption in order to make a portable gear. New Spartan-6 FPGA made that possible.

For example, DAC64 use four Xilinx FPGA consume 3.3V/8W power that could go up to almost same temperature as a human body.
New sixth generation Xilinx Spartan-6 of Hugo consume only 0.7V. Spartan-6 equip high efficiency switching regulator which is free from switching noise. It keeps power consumption low even in a high load condition.

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Not only in the power section but also the improvement can be found in the performance section. Hugo WTA filter runs 1.5 times faster than QBD76 using 26000 taps. That reaches up to THD -140 dB that had never been possible to achieve even with full size gears ever. John said that as a designer he was amazed by this result himself.

Newest digital technology has been fully implemented into this small package.
Until now only obsolete technology has been used for portable gears. But Hugo is different. Hugo employs the latest technology which never used even in high-end audio world. This is the proof of reference class of CHORD.

* Hugo specifications

Here I recap the spec of Hugo. The casing is CHORD signature aircraft grade machined aluminum. Hugo only accepts digital signal. They are optical(TOS), SPDIF, USB(two types) and Bluetooth.
TOS is 192kHz capable and SPDIF is 352/384kHz capable. Hugo has two different USB inputs, one works for iPad or smart devices that accepts only 48kHz 16bit via USB Audio class1. Hence we don't need to install any drivers. This one runs off self-power supply from Hugo battery so we don't have to worry about iPad/iPhone current limitation.
The other one works for computer audio with higher data rate up to 352/384kHz at 32bit. To use this USB, we need to install CHORD driver.
(But you never know, when the CHORD finalize this product, you may see more improvement to this spec!)


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Hugo also accepts DSD natively up to DSD128(5.6MHz).
It requires (We need) DoP to enable native DSD transmission. Bluetooth accepts decent APT-X codec for good sound reproduction. Hugo employs metal body but Hugo has a plastic window to pass thru BT signal that enhances transmission efficiency. I feel the wireless transmission is a desired move for this smartphone age. We used wired connection in iPod age but in this smartphone age the wiring is not a proper method I think. BT said to have poor sound but CHORD has been studying carefully about the implementation of BT device these several years. Hugo is the one of the result came our of their study.

Speaking of output plugs, Hugo has two mini(3.5mm) headphones plug and a 1/4 headphones plug so you can use Hugo either at home or on the go. Hugo has one pair of RCA analog out terminal so you can use Hugo as a decent USB DAC at home. In fact Hugo would also be a good "first CHORD" for many people.

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Multi color LED tells us current sampling rate and volume level. CHORD's unique round window is illuminated by the LED and so as well as the volume control knob. As I wrote earlier, Hugo has an advanced digital volume which retains minimum data loss as possible.

Battery lasts around 12 hours. Full charge will be completed in two hours and one hour charge is enough for casual use.
The amplifier section is analog circuit not digital amp. Amplifier circuit is another highlight of Hugo. Output power is strong enough to drive even the loud speakers that has 8 ohm impedance.

* Use of Hugo

John Franks came to see how Japanese portable users use audio gears at the time of previous show. Hence the Hugo has everything what we need to use for portable audio. Analog out is an exception but by considering very high quality of DA conversion
performance of Hugo, it is likely to be used at home too so it's not an issue.

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AK100mk2 hooked up with Hugo.
The blue light square is the BlueTooth antenna window.


Hugo can be hooked up with various audio gears. For example, PC USB connection, optical out of AK100 or SPDIF out of DX100 and more. In addition to that, Hugo is able to hook up with iPad and iPhone(iOS7 or later) thanks to dedicated 48kHz USB input via camera connection kit. Some of Android phones would be feasible too. (Androids would need USB OTG cable)

Bluetooth is useful with smartphones and tablets. I guess one of the reason why BT sounds poor is a sake of poor audio circuit design of budget gear besides the SBC lossy transmission codec. However, the implementation of Hugo is different. Hugo does not use the poor DA conversion in the BT chip. Instead Hugo directly take digital signal from BT chip. That means the BT signal will be converted by Hugo's marvelous Pulse array DAC section. In addition, Hugo accept APT-X decent transmission codec.
The result would change your mind about BT.

You can use Hugo as a decent USB DAC from your PC. Hugo supports -140 dB of THD so you may want to replace your home rigs with Hugo!
In fact, I tried Hugo with CHORD's fine home DAC and amps with high-end speakers to test the home audio ability of Hugo. Then I was amazed by the sound quality that Hugo could deliver. It was a truly high-end sound and it is well comparable to good home rigs. I found Hugo can be a rival to home DACs.
I can hook my iPhone5 up with Hugo (We need iOS7 to do so).

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Volume control is a round knob on the top plate. You will see color changing along the knob movement.

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Sennheiser HD800 and Hugo.

I tried Hugo headphone sound using Ultrasone Edition 8 and Sennheiser HD800, they are the finest rigs in the headphone world.
Hugo delivers crystal clear and accurate sound that is very transparent and pure like fountain water. Highs and lows are both well extended so I could feel very wide frequency range. I also felt good PRaT in the fast paced music. The instrument notes are well separated. Hugo sounded very sharp, articulated but no harshness there. Yes I felt the sound of Hugo is highly resoluted but very smooth at the same time. This may be similar to the feeling of a virtue of audiophile's beloved DAC64.

I think the amp section is very nice too. Because the sound is thick and rich. It reminds me of a good home audio system sound. An impact of bass and drums is tight and well controlled. Hugo is able to drive high impedance HD800 very well.
I think the "sharp while natural" sounding is a proof of high quality audio gear.

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Hugo hooked up with CHORD amps and Raidho Acoustic speakers.

* Hugo brings a new age

In recent years, portable audio is getting popular and a demand of high quality gears are also
increasing. Hugo costs almost 1000 UK pounds that may be a bit expensive for portable audio however it is still a bargain price. You will understand it from what you see in this document. I think CHORD gets almost no profit at this price point.
Hugo raised the bar of the portable audio quality. To sell outstanding quality gear comes from a philosophy of CHORD. That is CHORD.

John told us the strength of CHORD is a passion to seek perfection. No compromise there. Hugo to break up current portable amp league and start new era. That is no amp reached ever.
Hugo would be a turning point to change audiophile's mind. Portable gears are now on the same ring with speaker listening highend audio gears.

Now we have a portable amp that has THD -140 dB. A history of portable amps has started by small starup manufactures then major manufactures came in like FOSTEX or SONY. Finally we have a high-end audio manufactures too. I see a strong growth in this portable audio world. This must be a good thing for us.

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Lastly John Franks said:
"I hope you like my little baby. 40 years ago people listen to realistic sound of stereo system they never had before and they showed a lovely happy look on the face. With Hugo it gets the same responses. It's a pure pleasure for me"

2013年12月07日

CEntrance HiFi M8レビュー

CEntranceはDACportやDACminiなどのオーディオ製品でも知られていますが、USBのファームウエアでも独自の位置を占めています。たとえばPS AudioやBel Canto、BenchmarkなどのUSBファームウエアを提供していたいわばUSB DACの老舗でもあります。HiFi M8はそのデジタル製品に強いCEntranceが出したデジタル入力のみのDAC内蔵のポータブルヘッドフォンアンプです。
いままでの名称でM1とかM7っていうのはありませんが、HiFi M8のM8は"メイト (エム・エイトのアナグラム)"と読むようです。つまりはルームメイトやチームメイトのようにHiFiを聴く相棒というわけですね。またアメリカではバーやクラブで気軽に人に話しかけるときによくHey manとかHey mateと言いますので、そうした気軽さと言う意味もあるのかもしれません。

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AK120+HiFI M8

ホームページはこちらです(代理店Mixwaveさんのページ)。
http://www.mixwave.jp/audio/centrance/hifi_m8.html

1 HiFi M8の特徴

1-1 豊富な機種バリエーションと豊富な入出力の選択

M8にはいくつかのバリエーションがあります。日本ではそのうち前面パネルで二種類、背面パネルで二種類の組み合わせが選べます。M8の音質レベルが高いので、ポータブルだけではなく家を主体に聞きたいと言う場合にも便利なように出来ています。
前面パネルはひとつはXLR2本のバランス端子を持つものがあります。このバランス用のXLR端子は普通のヘッドフォン端子を兼ねているので、外よりも家で多く使いたいと言う人にはこちらがお勧めです。
もうひとつはコンポジャックと標準ヘッドフォン端子、そして4ピンのポータブル用のバランス端子がついたものです。コンポジャックはミニステレオのヘッドフォン端子と光出力が兼ねられた端子です。コンポジャックを使うことで光出力も可能ですので、iDevice機器を使用している場合にはDDコンバータのように使うこともできます。
4ピンのポータブル用のバランス端子はミニXLRともいわれますが、はじめにサミュエルズさんのRSAが採用したことでRSAタイプともいわれます(HeadFi世界的な言い方)。そのためこちらの全面プレートはRSAモデルと呼ばれます。

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背面パネルはデジタル入力がiPhone/iPodなどいわゆるiDeviceから取る方式か、光入力かで分けられます。光タイプはLXと呼ばれます。
これはメインのソース機器をiPodにするか、AK100にするかで分けられます。一方でiDeviceタイプはiPhoneだけではなくiPod Classicも使えますが44kHz/16bitの上限があります。このタイプの入力はiTransportを嚆矢とするAccesseasry Protocol(iPod/iOSをデバイス側としてデジタル信号を取り出す)ですが、これは最近Herusなどでも話題のUSB DACを使うもの(iPod/iOSをホスト側にしてデジタル信号を送る)とは異なりますので注意してください。この方式では専用のDAC(M8やHP-P1のような)が必要です。

もう一方の光入力タイプ(LX)では角型のTOSリンク端子が装備されています。この方式では192kHz/24bitのハイレゾ入力が可能です。一方でこの組み合わせで使用するショートの光ケーブルが必要になってきます。私はこういうのには基本的にカナダのSys-Conceptのケーブルを使うので、今回も発注しました。これは機種ごとのカスタムで、アンプとDAP間のスペーサーなどによる個体差もあるので個々に角度と長さとTOSの向きをはかって注文時に報告が必要です。ただ実際には長さは測っておいて、後はアンプとDAPを重ねた写真を撮ってSys-conceptに送ると見積もりをしてくれます。その旨を注文時に指定しておくとよいでしょう。AK100が丸端子で、M8側は角端子なのでそれも注意が必要です。

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私は主にポータブルで使うし、ハイレゾで聴きたかったので、前面パネルがRSAタイプで背面はLXを選びました。つまりシステムとしてはAK100/120をソース機材として、光ケーブルはSyS-Conceptの特注品でHiFi M8の光入力に接続しています。
M8はポータブルとしては大柄な筺体ではありますが、このようにユーザーの使い方によってセミオーダーのように機種を選ぶことができます。このユーザーの自由に合わせると言う考え方は後の味付けスイッチでも見て取れます。

1-2 デジタル入力専用

HiFiM8の入力ではアナログはなく、USB入力とiDeviceまたは光入力となります。
またCEntranceは前述のようにデジタル技術に強いメーカーですので、デジタル入力のみと言う仕様は強みを発揮できるところだと思います。
HiFi M8ではJitteGurdという仕組みでジッター低減をしていますが、これはDACminiに使用されたものと同じということです。

1-3 バランス駆動対応

HiFiM8のヘッドフォン出力のポイントはバランス駆動に対応していることです。M8ではさきに書いたように前面プレートの選択によってポータブルではRSAタイプ、家用にはXLRx2本(いわばHeadroomタイプ)のタイプが選べます。

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ポータブル用・イヤフォン用のバランス駆動のための端子は主にこのRSAタイプと、HiFiManなどが使う4極端子で一本のTSSRタイプ、そして国内のラトックが使うステレオミニ2本の端子なとがあります。また標準のヘッドフォンのためには上のXLR2本(Headroomが嚆矢)が一般的ですが、最近では一本で4ピンXLRを持ったタイプもよく使われています。なぜXLR(キャノン)が2本かと言うと、はじめのHeadroomのバランス駆動ヘッドフォンアンプが普通のステレオヘッドフォンアンプ二個を物理的にくっつけたようなBTL構成だったからです。


1-4 多彩な味付け機能

HiFi M8の背面には様々な付加機能があります。左からインピーダンス切り替え、ゲインスイッチ、高音域強調と低音域の強調です。HiFi M8はバランスの良い音調ですが、これらの機能を加えてやることで音の味付けに変化を与えることができます。

一番左は出力インピーダンスの変更です。普通出力インピーダンスは低いほどよく音が引き締まってタイトになると考えますが、低いと分析的すぎると感じる人もいるので、膨らみ感があっても迫力と感じるような高い出力インピーダンスを好む人のためにあえて設定スイッチを付けたということです。いわばオーディオマシーナのようなスピーカーより往年のJBLサウンドを好むという感覚でしょうか。これもユーザーのヒアリングを重視して選択の範囲を広げるという入出力選択のポリシーにも共通しているように思います。
次はゲインスイッチで、3ポジションあります。これはめずらしくないですが、これもユーザーの選択肢を広げると言うポリシーにかなっていますね。
次の2つはトーンコントロールのようなもので、低域と高域のレスポンスを調整できます。3段階あって効き目はあまり強すぎず、適度に使えます。M8自体はあまり誇張感のない音調なので、少し誇張した音が好きな人はこれらのスイッチを付加して味付けを行い、さらにさきのインピーダンスも緩くするとロックポップ向けの設定ができると思います。

2. 使用と音質

M8は少し大柄の筺体で、持ち運びはしにくい点もありますが家で使うにはこのくらいの方が安定して設置できるかもしれません。家と外で両方使いたいと言う人には良いかもしれません。また見た目ほどは重くはありません。私はソース機材としてはAK100/120を使用しています。

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今回はポータブルでのバランス駆動をしますので、ケーブルはBeat SuperNovaのRSAタイプを使用してみました。Supernovaのケーブルはやや硬めだけれども取り回しに問題はありません。Beat独特のメモリーワイヤがついていて、耳のまわりに回すShure方式です。プラグはよくできていて、旧UEの引っ込んだプラグにもきちんとはまり、JHAやWestoneなどの弱いプラグ穴でもしっかりとはまります。このほかにもUnique melodyや1964 Earsにも使えるようです。新UE(現行UE)には使ないと思いますので確認が必要です。またこのカスタムイヤフォンタイプのほかにもいくつかタイプがあって、MMCX、ゼンハイザーにも対応できるようです。他のケーブルとも比べてみましたが、価格の割には音質レベルが高いのではないかと思います。特に音がきつすぎずに滑らかさを感じる点は評価できます。M8と合わせて大人の音を堪能できるでしょう。

試聴は下記のような形態です。
AK120 ⇒ 光ケーブル(Sys-Concept) ⇒ HiFi M8 ⇒ Beat Super Nova RSA Balanced⇒ Ultimate Ears UE18カスタムまたはJH Audio 13/16カスタム
AK120 ⇒ 光ケーブル(Sys-Concept) ⇒ HiFi M8 ⇒ ゼンハイザーHD800やEdition8



試聴はインピーダンスは1オーム、低域、高域強調はオフにして始めました。イヤフォンとしてUE18/JH13/16+Beat Supernovaを使用しました。
全体に透明感が高く、楽器音は音像の形よくきれいに鳴るが、いわゆる美音のように音色が脚色されているわけではないですね。
ポータブル機器としては音がよく整っていて破綻がなく、上質なホームアンプをおもわせます。DAC部分はよく出来ていて、ポータブル機器でよく聴かれる荒さやバランスの悪さというのはありません。例えばベースのピチカートなどはキレが良くタイトで性能が高いと感じるけれども、それによってきつさが副産物になるわけではなく、音像の角も滑らかに取れています。立体感は4芯独立したバランスケーブルで聴いてることもあってかなり高いものがあります。
素の周波数特性はわりとフラットで、低域が物足りなければスイッチで加えることができます。ただ素のままでも低域には必要なほどのインパクトは十分あると思いますが、人によっては物足りないと感じるかもしれません。

DACportやDACminiでは乾いたドライな感じもあったんですが、M8ではそうした感はなく厚みがあって豊かな本格的なオーディオの音が基調だと感じます。ただサミュエルズさんアンプのような強い暖かみはなく、全体に着色感も少ないですね。こうしてバランスが取れている分で、ある意味でリファレンス的、アキュフェーズ的というか、割と中庸な印象も受けます。そのために味付け機能があるとも言えますね。
ハイレゾでは単に細かさが向上するだけではなく、良録音のもたらす空気感を良く伝えてくれます。それによってヴォーカルの息遣いをリアルに聴き取れます。

インピーダンス・スイッチを変えると、インピーダンスを高くするにつれて音像が緩く膨らんできます。インピーダンスが低いといわばジャズや弦楽四重奏のような上品な音楽には向いてますが、インピーダンスを高くすることでメタルなど荒っぽい音楽には合うように感じられます。これに低域増強を足すとかなりアグレッシブなロック再生機となります。
一方でロックこそドラムスのシャープなインパクトが必要と思う人はインピーダンスを低くすれば良いし、これもユーザーの音の好みと聴く音楽による選択であると思いますね。出力インピーダンスを変えると、どう音が変わるかっていうのを知るのも面白い機能だと思います。

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イヤフォンからヘッドフォンに変えて聴いてみると、HD800ではむしろこうした高性能ヘッドフォンでHiFi M8の真価が発揮されると感じます。端正で正確、スピードもあり、インパクトのシャープさも高いですね。バランスでなくてもHD800の空間表現力の豊かさを感じられる基本性能の高さがわかります。荒さもなくスムーズで音に深みが感じられ、堂々とした風格がある音でホームアンプらしくもある上質な音です。余裕があり、いかにも無理してボリューム上げてポータブルでHD800を鳴らしてる感はあまりありません。HD800との組み合わせが素晴らしかったのでXLRx2バランスも試して見たくなるほどです。
むしろこうしたフルサイズのヘッドフォンでM8が生きると思えます。HiFi M8がポータブルとホームアンプの両立を果たしていると感じられるところですね。Edition 8でもかなり良く、どちらかというとこうした本格的なヘッドフォン向きかもしれません。家ではHD800、外ではEdition 8など高性能ヘッドフォンを生かすことができます。大柄ではあるけれども、ホームアンプを持ち歩けるように下のがM8とも言えます。

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もちろんUSB DACとしても使用することができます。USB経由でMacに接続すると、さらに音質は向上してかなり上質なヘッドフォンアンプ内蔵のUSB DACとして使えます。

3. HiFi M8まとめ

海外製アンプでは作り手の個性が強く出て脚色的に暖かかったり美音だったりしますが、HiFi M8はベーシックで高い音性能を中心に据え、ユーザーの好みで入出力が選択出来たり、音の味付けを変えたりできるユーザー主体の製品ともいえます。これによってさまざまな用途、多様なユーザーに対応するように考えられた結果なのだと思います。

実はしばらく前のヘッドフォン祭でM8のプロトタイプ(当時は当然名前はなかったですが)をこそっと見せてもらったことがあるんですが、DAC内蔵のポータブルヘッドフォンアンプという初期コンセプトは同じでも、この製品版はそれとは大きく異なってかなり機能豊富で進化したものになっています。たっぷりと時間をかけて入念に作り上げたのでしょう。
またこちらのCEntranceのブログで進捗を途中からオープンにしたこともユニークです。
http://centrance.com/products/new/blog/
この辺もユーザーとのコミュニケーションを大事にしていますね。

プロ機材中心だったCEntranceにとってのコンシューマー・ポータブル機材はDACportもありましたがDACportはMICportの姉妹機ともいえるので、実質的にHeadFi世界向けのポータブル機材としては初の本格的な参入と言えると思います。そういう点でショウにもよく顔を出しているCEntranceのマイケルさんはユーザーの要求を吸い上げて時間をかけて設計したと思いますし、その成果が結実したのがこのHiFi M8だと言えるのではないでしょうか。
posted by ささき at 10:55 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする