Music TO GO!

2016年05月31日

プレミアム・ヘッドホン・ガイドマガジン(Vol6)に執筆しました

昨日発売開始されたプレミアム・ヘッドホン・ガイド・マガジン(Vol6)に執筆しました
P122から見開き2ページでBeat Audioのケーブル解説とLaylaIIと組み合わせた試聴記事を書いています。
本誌は名作ヘッドホン特集という事でゼンハイザーHE-1の記事もあり、フェンダーイヤホンの誕生秘話、ハイレゾプレーヤー紹介など盛りだくさんでスピンフィットも付録についていますのでぜひお買い上げください。



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2016年05月16日

ラズベリーパイのオーディオ日記 Moode Audio 2.6のAP機能とラズパイ3のパワー

Moode Audio 2.6のテストリリース(TR)が入手可能となったので、さっそくAPモードをはじめとして試してみました。(現時点でTR4)
APモードはWiFiルーターがなくてもスマートフォンとラズパイを直結できるもので、ラズパイ3の内蔵WiFiでも動作します。
今回は内蔵WiFiで使うためにRaspberry PI 3を使用しました。これに今回はUSB DACとしてLH labsのGeek Out 450を使用しています。
ちなみにMoode AudioはOSコアがJessie-liteをベースにしたMoodeOS1.0と呼称するものに変わったようです。

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Moode Audio 2.6(テストリリース)はホームページのTest Codeボタンからダウンロードできます。インストールすると特に設定もなく、MoodeというWiFiネットワーク名がiPhoneのWiFi画面に出てきますのでそれを選択してパスワードはmoodeaudioで入ります。
立ち上げたときに普通にWiFi設定をしているとそれが優先となり、AP機能は働きません。AP機能のオンオフと言うボタンはないようです。WiFi設定をしていても、そのネットが見つからない場合とか、WiFi設定をしていない場合にAP機能が働くようです。AP機能使うとインターネットを見られないのでこれは場合によりけりです。ただMPoDはAP機能の方が早くプレーヤーを見つけられるような気がします。

使用するプラットフォームをラズパイ2からラズパイ3に更新して面白いのはアップサンプリングです。ラズパイ3では192kどころか、384kHz/32bitのリサンプリングが可能で、しかもSoXの最高品質でリサンプリングできます。ラズパイ2ではVolumioですけど96/24の中品質リサンプルどまりだったことを考えるとさすがすごいパワーです。これで32bitモードですから64bitモードだとさらに向上するでしょう。

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背面の黒いケースがmSATA USBケース

またストレージにはpiCorePlayerで使えなかったmSATAの500GB SSDを使ったところ動作しました。
384/32でES9018K2MのGeek Outを動作させ、純A級増幅(かなり熱い)、無線ルーターも不要でリモートでiPhoneから500GBの音源を管理できます。その辺のノートPC顔負けのPCオーディオシステムです。ただSSDは使ってみるとやはり動作が不安定なのでいまはUSB メモリを使ってます。

Geek OutやSSDの使用を考えるとPi3で化された電源も効いているのかもしれません。Geek outでは384kHzでロックしたのをLEDで確認しました。
とはいえバッテリーはいつもの2500mAh(1A)を使うとこんな感じで容赦なく使ってるとだいたい一時間でなくなりました。なかなか音が良いので軽くするよりも、大きなバッテリー付けたいシステムです。

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いまは4000mAhのバッテリーを使ったますが、一応これで2時間はカバンの中に入れてもファンレスで熱暴走せずに動作するのを確認しました。ラズパイ3のSOCには放熱ブロックを付けています。
ただ純A級増幅をするGeek Outもラズパイ3も熱くなります。Geek Outは一秒以上は触れない感じ、放熱ブロックは一瞬でも触れません。

実際音質はかなり良いです。冗談で組んだけど冗談じゃないくらい良いですね。このなんだかよくわからないポータブルオーディオデバイス、結構いけます。音質が力強くひずみが少ない感じです。Moode AudioだとリサンプリングはSoXを使用するのですけど、SoX very highでリサンプリングしたときにデジタルフィルターがかかったような歪み感を減らす効果が同時にあるような気がします。音が細かくなると言うよりもむしろあいまいさがなく正確になるという感じです。

問題は384/32再生時にMPodでアルバムアートを多数MPDから取り出すときなど、パチパチとノイズが乗りますね。たぶん前に書いたUSBとWiFiの同一パスの競合によるラズパイならではの干渉問題だと思います。
GPIO経由のUSB拡張ボードがあればよいのですが、意外とないのですよね。


本日Raspberry PIではZeroのV1.3が発表されてカメラコネクションポートがZeroに追加されました。Raspberry Piファウンデーションもかなりやる気を見せてますね。iPhoneもカメラコネクションで音楽出してるんですから、パイゼロもこのカメラコネクションで音楽を出せるようになってほしいものです。
posted by ささき at 21:17 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月12日

ポスト3.5mmの新顔、インテルの提唱するUSB-Cデジタルオーディオ

最近のポータブルオーディオ界のトピックの一つにiPhoneの3.5mmプラグがなくなるのではないかと言う噂があります。これはさらなる薄型を進めるためにはもう3.5mmの端子が厚すぎると言うわけですね。実際に他の薄型を標榜する海外のスマートフォンではイヤフォン端子を排してしまっているのもすでにいくつか出ています。

この3.5mmステレオミニ端子は初代Walkmanで初めて採用されたものです(3.5mmモノはもっとはるかに古い)。それがデファクトスタンダードになったという経緯があります。それではこの3.5mmステレオミニ端子がなくなってしまったら、そのあとはどうするのか、と言うのはいくつかの候補があります。まずBluetooth、そしてiPhoneならライトニング端子があります。Audeze SINEのライトニングケーブルはなかなか好評です。

そしてもうひとつ新しい可能性が出てきました。それがインテルの提唱するUSB-Cオーディオ端子です。Ananda techに詳しい記事が載っています。
http://www.anandtech.com/show/10273/intel-proposes-to-use-usb-typec-cables-to-connect-headsets-to-mobile-devices

これはチャージやデータ交換用のスマートフォンのUSB-C端子をそのまま音楽用に使うというわけで、Appleのライトニングのインテル版みたいなものです。

USBというとああデジタル出力専用ね、と思うかもしれませんが、USB-Cにはサイドバンド・ユーティリティ(SBU-1,SBU2)というピンアサインがあり、これはなにを通してもかまいません。つまりアナログ信号も通せます。またサイドバンドの名の通りに、ここの伝送は他のメインの信号伝送とは独立しています。つまりデータの転送をしながら、アナログ出力でオーディオを聴くと言うこともできます。ただ規格がまだできていないのでアナログ伝送まで含められるかはわかりません。

Anandatechによるとこの仕様はまだ完全に決まってないが、USB オーディオクラス2.0の仕様にも影響を与えるかもしれないと言います。たとえば電源供給とか、同期の仕方などです。

またAnandatechの別記事によると、このUSB-Cオーディオに即したチップが出てきたようです。ConexantのCX20985とCX20899です。
http://www.anandtech.com/show/10311/conexant-introduces-usb-c-digital-audiocompliant-chips
これはいわゆるスマートフォンのオーディオCODECチップ(ADCとDACを兼ねるIC)になるとおもいます。これが今年の2Qなかには出荷できるということなので、早ければ今年後半にはUSB-Cオーディオを採用したスマートフォンが登場するのではないかと言うこと。まだUSB-C自体が規格化されていませんが、これらはUSB-Cオーディオに対応しているとのこと。インテルと協業関係なのでしょう。
CX20985はコンパクトで48kHzどまりですが、ヘッドセットに特化したものでイコライザ内蔵、カップリングコンデンサ内蔵などヘッドセットなど機器を簡単に接続できるようになっています。目的はおもにスカイプ用のヘッドセットのサポートにあるようです。
CX20899は大型でおそらくスマートフォンの外に付けるデバイス用。こちらはDSP内蔵、ハイレゾ対応、SPDIFやI2S対応でオーディオ用途も考慮されているようです。

具体的なチップも出てきているのでインテルは着々と地盤固めをしているように思えます。
基本的にはPCやAndroid向けですが、AppleもEUでは端子を独自ではなくUSBに変えるように勧告されてもいますのでどうなるかはわかりませんけれども。。
posted by ささき at 22:24 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月06日

64 AudioのADELモジュールによる音質の差(S1とB1)

ながらくかかりましたが、Kickstarterで頼んだ64 Audio ADELシリーズのKickstarterモデルが届きました。これは一般販売はされないと思いますが、X2と言うモデルです。

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X2はKickstarterのダイナミック型であるControlがポシャってその代替の2ドライバーモデルです。その切り替えに時間がかかって到着が遅れました。
もともとControlの代替にはU1というモデルを作る予定だったのですが、ユーザーフィードバックでより小さいシェルで、耳掛けではなくストレートイン可能な手軽なものという要望にこたえて、Uシリーズとは別にX2が作られました。作りは3Dプリントという感じでちょっとチープです。
しかし音質は素晴らしくKickstarter価格ではありますが、$100という点からは想像つかないくらい高い音質でADELの音の可能性が感じられます。独特の透明感と立体的な音の広がり方がADELの特徴ですね。

リケーブルできないのが惜しいくらい音が良いので、独特な音の魅力があって1964 earsがADELよりになる理由もわかります。

このX2を用いてADELモジュールを変えたことによる音質の違いと言うのを調べてみたのが本稿の趣旨です。

* ADELモジュールと音質の変化

この64 Audio ADELシリーズの中核をなすADELモジュールについてはKickstarterで登場した時に紹介しました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/408595702.html
ADELモジュールは「第二の鼓膜」というキャッチフレーズから聴覚保護のための機構とよくとらえられています。それは正しいことではありますが、すべてでもありません。それはこのADELモジュールにより音質を向上させることができ、さらにモジュールを交換することで音質傾向を変えることができるからです。
ADELモジュールによる音質の向上についてはホームページに説明がありますが、ADELモジュールで音の信号とは別に音の空気圧(pneumatic pressure)を抜くことで位相的によりよい音質が得られ、音が立体的になるとともに、楽器の分離が優れたものになると言うことです。またモジュールを交換することによって音質傾向が変えられるのは小技ということではなく、はじめからメーカーによって設定された仕様です。

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現在64 AudioのADELシリーズを購入すると付属しているシルバーのADELモジュールはS1と呼ばれます。メーカーが初期のころから公言している他のモジュールにはMAM(マニュアルモジュール)があります。そして最近出たのがブラックのB1です。S1とB1は色だけではなく音質が異なります。S1とB1はMAMに対してAutoモジュールと呼ばれますが、実際はプリセットモジュールといったほうが正しいと思います。S1とB1はADELモジュールのベントとしての外気への開度がことなります。S1がもっとも閉じた状態に近く、B1はもっとも開いた状態に近いのですがフルオープンではありません。このためS1とB1では音質傾向と遮音性に違いがあります。(遮音性についてS1は-18dB、B1は-10dB)

64 Audioでは将来的には出荷時にS1かB1を選ぶようにするようですが、これはまだ分かりません。ちなみにS1がシルバーのみで、B1がブラックのみなのはそれぞれ2種類のカラーを用意すると手間がかかると言うことのようです。ちなみにB1モジュールはミックスウェーブでも国内取り扱い予定だそうです。

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B1モジュールは上のような小さなケースに入ってきます。これはスペアを入れておくにも好都合です。

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まずS1を付けたままのX2の音質ですが、AK380とAMPで聴きました。まず高い透明感と立体感のある独特の音の広がり方に圧倒されます。実際にこの二点がADELの音質的な特徴ともいえると思います。聴覚保護というとなんとなくまったりとした甘い音を考えるかもしれませんが、X2の音はかなり明瞭で解像力も高いものを感じます。
$100とは到底思えないほど音質はかなり高いです。$100はKickstarter価格ではあり等価と思われるU2となるとそれなりの値段になりますが、それでも同価格帯の中ではかなり秀でているでしょう。低域はかなり豊かです。

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ADELモジュールは爪をかけてぐいっと引くと外れます。引き出すと第二の鼓膜の振動板がわかると思います。

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B1に変えると低音が抑えられてヴォーカルがよりクリアに聞こえるようになります。周波数特性的にはS1よりもフラットに近くなっていると感じます。音も全体に整った感じがします。またドラムのアタックがより鋭くなったように聞こえます。ただしB1だと低域が物足りないと思う人も多いかもしれません。

ふたたびS1に戻すとダブルベースとヴォーカルがごちゃっとして混濁しているようにも感じます。B1は全体にもっとすっきりとしています。パーカッションやダブルベースのピチカートはB1に比べるとやや鈍く感じます。ただ低音がたっぷりあるのでジャンルによってはS1の方が好ましいことも多いと思います。

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ちなみにどちらもつけずにベント穴をフルオープンで聴いても音楽は再生できますが、かなり気が抜けた音になってしまうので実用にたえません。ADELベントはそれなりになにかしているということですね。

このようにどっちもよい点があるので、その開度を手動で調整可能なMAM(マニュアルモジュール)も発売が待たれるところです。
またADELではS1やB1をイヤチップに直接装着して耳栓にするアクセサリーがあるようですが未発売です(海外でも)。

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このように私がADELに注目していることはBAドライバーとベントの関係です。
昨年ハイブリッドが隆盛を極めたおかげでイヤフォンとベントの関係について焦点が集まりました。FitEar Airのようにベントレスの道を歩むものもあります。
もちろんエアフローはイヤフォンでは重要なテーマではあるし、これらのベントは主に従来からあるようなダイナミックドライバーに関するもので、一般的にはダイアフラムのPET素材の脆弱性についての対策です。しかしながら、最近ではこの64 ADELのようにBAドライバーなのにベントを持ったものも出てきました。他にもWestoneのAM Proなどがあります。
AM Proの場合は主に外の音を聴くという目的がありADELとは異なりますが、音質もまたちょっと個性的なので気にはなっています。外の音を聴くと言うアンビエント機能のためにベントを開けると言うのはUE11時代などのカスタムにもあったのでいままでにBAでベントと言うのがなかったわけではないのですが、UE11アンビエントモデルなどはこんな複雑ではなかったと思います。

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いずれにせよADELモジュールを変えて音質が変わると言うことは、BAでもベント次第で音質が変わると言うことです。これは(うちのブログで取り上げる他の話題と同様に)まだよくわからないことの一つではあるが気になるもので、ちょっと興味あるテーマではあります。
posted by ささき at 21:15 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年03月30日

ラズベリーパイとポータブルアンプのアナログ接続 (piCorePlayer編)

ラズベリーパイのポータブルオーディオ運用日記です。
前の記事でポータブルアンプとラズベリーパイを組み合わせたポータブルオーディオの記事を書きましたが、ケーブルをライトアングルに変えたらスッキリと今までの2段重ねアンプっぽく収まって妙に実用的になってきました。ジャケットのポケットにもすっぽり入ります。

IMG_9691_filtered[1].jpg  IMG_9692_filtered[1].jpg  IMG_9689_filtered[1].jpg

ラズベリーパイだけ取り出すと下のような感じです。Raspberry PI2にHAT DACとしてHiFiBerry DAC+のPhono仕様を取りつけて、積層型のケースでガードしています。(このケースにはプロセッサの放熱フィンも付属しています)

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こうしてラズベリーパイをポケットに突っ込んでる人もそういないでしょう。シールドしなくてよいのかと言うと、それほど影響はないように思います。微妙なノイズフロアへの影響は図れませんが、少なくともWiFiアクセスのたびにプチプチしたノイズが入ると言うことは全くありません。

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ポータブルアンプはあいかわらずPortaphile627を使用しています。理由はサイズ的な相性と、音性能の高さ、音の相性などでしょうか。

ソフトウエアも変えました。
こうしてDAPやスマートフォンではなくコンピューターをポータブルアンプにくくりつけるメリットのひとつはソフトウエアをごそっと基本ソフトウエアから入れ替えられることです。スマートフォンだとアプリを変えれる程度ですね。
たとえばVolumioやRune Audio、Moode Audioを好みに応じて入れ替えられますが、実のところこれらはいずれもMPDを使ったディストリビューション(Linuxのバリエーション)なので似たり寄ったりではあります。そこで今回は根本的に異なるものとしてpiCorePlayerを使ってみました。これのMPDに相当する部分はSqueezeliteとLMSというソフトウエアです。

* piCorePlayerとは

piCorePlayerはかつてあったSlim DevicesのSqueezeboxプレーヤーのソフトウエア版と言ってよいソフトウエアです。Squeezeboxは割と古いと言うか先駆的なネットワークオーディオシステムですが、Slim DevicesからLogitechに移った後に2012年に製造中止されています。その後は再生エンジンの部分がLinuxに移植されてSqueezeliteとなり、それを元にしたのがこのラズベリーパイ用のpiCorePlayerです。
ホームページは下記です。
https://sites.google.com/site/picoreplayer/home

piCorePlayerは現在では2.0がリリースされていてわりと活発に更新されてる方ではないかと思います。少し荒削りでマニアックに寄っていて、メニュー上でオーバークロック設定なんかもできます。出力デバイスもI2SのHAT DACが使えるのでHifiberryやiQAudioが使えます。もちろんUSB DACも使えます。
以下はコマンドを使ったりファイルを書き換えたりしませんが、全体の難易度はVolumioよりはやや難しいかもしれません。

Squeezeboxのシステム構成は基本的にはサーバーとプレーヤーから成り、サーバーが音源をプレーヤーにストリーミングしてプレーヤーが音楽を再生します。ただしプレーヤーは実際にはDLNAでいうところのレンダラー(音楽再生エンジン)とコントローラとに分離できます。このレンダラー部分がSqueezeliteつまりpiCorePlayerにあたります。
Squeezeliteは非常に軽量でRAM上に展開できるので、電源をぶち切りしてもよいという利点もあります。軽量と言う点からオーディオマニアなら、音質が良いのではないかと期待するでしょう。
これ(Squeezelite)単体では使えないので、他にLMS(Logitech Media Server)というサーバーが必要です。またコントローラ(リモート)も必要です。

このため、ポータブルで使うにはひとつ問題があります。それはさきに書いたようにサーバーであるLMSが必要であるということです。
普通のSqueezeboxシステムの使い方はLMSをPCにインストールしてpiCorePlayerをラズパイにインストールしてラズパイにDACを設置し、PC上のLMSとラズパイをネットワークでつなぐと言うのが一般的な使い方です。

しかしながら、この3/19にリリースされた2.03からLMSがpiCorePlayerと同一のラズパイにインストールできるようになりました。このため、
DLNAでいうとレンダラーとサーバーが同一筐体で動作しているようなもので、他のVolumioのようなMPDディストリビューションと変わりません。これでSqueezeboxシステムのポータブル運用(と言うか一体型運用)ができるようになりました。

またリモートコントロールはVolumioのようなWebUIも使えますが、Squeezeboxの良さは優れたリモートクライアントアプリが出ていることです。私はiPengというiPhoneの有料アプリを買いました。MPD系で使うMPodに比べるとかなり使い勝手は向上します。


* インストール手順

ラズパイ2にpiCorePlayerをLMS込みでインストールし、無線LANの設定をする方法を書きます。

0. mysqeeze.comでアカウント作成しておきます。無料です。これはLMSを使うために必要です(ステップ17)。

1. 下記サイトからpiCorePlayerの最新版イメージをダウンロードします。
https://sites.google.com/site/picoreplayer/home/download
download 最新(2.0.3以降)
いったんインストールすると以後の更新は設定ページからできるようになります。

2.イメージをWin32 disk imagerなどでMicroSDに書きます。(8GBもあれば十分かと思います)

3. ラズパイ2にMicroSDを入れます

4. ラズパイ2に有線LANを接続します

5. 電源投入します

6. ここがまず難かもしれませんが、
htt://(ラズパイのローカルアドレス)
でpiCorePlayer設定ページを開きます。
本来はhttp://picoreplayer.localで開くはずですが、Rune audio 0.3と同様に名前解決にやや難があるようで、これで開かないかもしれません。ただ自分のローカルアドレス(192.168.xx.xx)はだいたい同じで2つか3つ振れる程度なので、見当がつくと思います。確実にはモニタとキーボードを付けてuser:tc, passwd:piCoreでログインしてipconfigして確認してください。
あとで実用に使うときはクライアントからは自動検出なのでipアドレスの確認は不要です。

以後の設定ページでの操作はボタンを押してすぐに適用される時もあれば、ボタンを押してからインストールが始まって少し待つこともあります。
挙動と言うか画面表示を少し見て慣れてください。

screen1.png
piCorePlayer設定画面

7. 設定ページが出たら中段のSqueezelite settingsタブをクリックしてI2S設定からDAC+やDigi+を設定する。
(これが間違っているとSqueezeliteが停止します)

8. ここがポイントなのですが、一番下のタブに行って、betaをクリックする。
すると選択肢が大幅に増えます。

9. Main Pageタブをクリックする。

10. Expand FSをAutoのままで実行する。(FSはファイルシステムのことでしょう)
これはLMSをインストールする領域を確保するためです。これをしないでinstall LMSとしても領域不足ではねられます。
LMSを一緒にインストールすればポータブルで使えると言うのはすぐ気付いたんですが、このExpand FSのことが分かるまでちょっと悩みました。これでMicroSDカードいっぱいまで領域が大きくなります。
数分かかります。

11. LMSタブをクリック

lms.png
LMS設定画面

12. Install LMSを実行します。
多少時間がかかります。
ボタン押してリブートします。これでレンダラーとメディアサーバーが両方ラズパイ上で動いている状態になります。

13. WiFi Settingsタブをクリック
SSIDとパスワード入力します。

14. ここはオプションですが、Tweaksタブをクリック
Tweaksは小技とか言う意味です。この辺に魅惑の設定がたくさんあってわくわくします 笑
オススメは次の二点です。

screen2.png
Tweaks設定画面

14-1 Overclockオプション
この辺はまたあとで書きます。Advanced overclockというオプションもありますが、別ボタンになっていて、動かなくなったときの回避方が書いてあるのが恐怖をそそります 笑

14-2 Shairport-syncオプション
これでAirPlayが使えるようになります。これをオン(enable)にするとモジュールがダウンロードされます。
なおたまにこれやってもAirPlayがオンにならない場合がありますので、次の14-3でShairportがオンにならなかったら、この設定をいったんオフにしてリブート、もう一度オンにしてリブートしてください。

14-3 Mainタブをクリックして、
squeezelite、LMS、Shairport(AirPlay)が動作していること(緑のチェック)を確認する

なるべくひとつの機能をオンにしたらリブートして、これを繰り返した方が無難です。

* ALACとWMAを再生するためにはMain PageタブのSelect and update Squeezeliteの項目でffmpeg versionをインストールしてください(ただしSqueezeliteのサイズが大きくなります)

15. LMSタブをクリック(中段ではなく最上段のタブ)

17. LMSタブでログイン画面を出してMySqueezeboxのアカウントを入力
一番下のNextまたは「次」を押す

19. 音源はいっているフォルダを指定する(選択する)
一番下のNextまたは「次」を押す

20. プレイリスト作るフォルダを指定
一番下のNextまたは「次」を押す

21. Finishで終わり。

これ以降は右下のSettingでLMSの設定を変更します。するとLMS設定の別画面が出てきます。

lms-admin.png
LMS設定画面

* 操作方法

piCorePlayerの操作はWebUIによる方法と、アプリによる方法があります。WebUIはVolumioやRuneaudioとは少し違います。設定画面でも基本的な操作は可能ですか、実際に使うにはLMS側の画面(一番上のタブで切り替え)を使うことになります。これはスマートフォン対応がなくやりにくいのでアプリをお勧めします。

lms-play.png
LMSのWebUI操作画面

WebUIはPCだと使いやすいので動作確認時か家で使う時がよいでしょう。
実際このpiCorePlayerを使う大きなメリットが優れたリモートアプリを使えると言うことです。お勧めは定番のiPengで、これはMPDにおけるMPoDとは接続安定性、操作性、機能性のすべてでレベルが違います。iPengはClassicと最新の9がありますが、私はiPeng 9(1000円)を使っています。後でふれますが、iPhoneをLMSのレンダラーにできるオプション(600円)があります。

音源はUSBメモリに入れておきます(LMSが現在USBメモリしか読めません)。

立ち上げはラズパイにバッテリー電源をつなぐとスイッチオンです。立ち上げからWiFiに認識されるまでにはたぶん数分かかります。Squeezeliteは10-15秒で立ち上がるそうですが、LMSとネットでの認識が時間がかかってると思います。

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iPengプレーヤー画面

iPeng(私はipeng9)を立ち上げるとしばしして自動的にpiCorePlayerを見つけてきます。数分程度かかります。
このプレーヤー画面では最上段のpiCorePlayerがLMS(サーバー)のことで、中段のpiCorePlayerはレンダラーであるSqueezeliteのことです。この状態で単体プレーヤーとして機能しています。下段のiPhoneはiPengをレンダラーとして使う場合にここを選択してスイッチします。このときはLMS(ラズパイ)の音源をiPhoneでストリーミング再生できます。

WiFi接続もVolumioにMPodを使っていると外でよくフリーズしたり動かなくなりますが、iPengはかなり安定して接続しています。まるでiPhoneの単体音楽再生アプリのように使えます。これは高いアプリだけありますね。

IMG_2699.PNG  IMG_2701.PNG
iPeng操作画面

iPeng(piCorePlayer)の接続が確立したら操作画面に移ります。piCorePlayerと書かれた上下のバーで画面切り替えをします。
再生画面は3枚の画面があって、フリックで切り替えます。真中は再生画面、左は歌詞画面、右は曲リスト(キュー)です。歌詞はメタデータではなくサーバーから取ってきているようです。詳細は省きますが、使えない場合はLMS設定でプラグインが足りない場合があります。
再生画面ではアルバムアートを長押しするとコンテキストメニューと言うか別画面に行ってお気に入り登録などができます。

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iPnegアルバム、アーティスト選択画面

再生から<"で戻ると上のようにアルバムやアーティスト、ランダム再生やフォルダー再生などができます。すべて説明しませんが、ポイントはアルバムの曲リストを開いているとき、右上の再生マークアイコンをクリックで切り替えることでモードが切り替えられます。これでMPD系で言うところのPlay nextやClear&Play Nextの使い分けができます。すぐ再生したい場合はアルバム表示のモードで再生モードにし、追加モードにするとキューにたまります。

IMG_2708.PNG  IMG_2709.PNG
iPengでは日本語表示はできますが、文字化けすることもありここが難点ではあります

iPengの有料オプションでiPhoneがレンダラーになれるものがあります。EXtrasからたどれます。この場合はラズパイは単なるサーバーとなり、iPengでの再生はiPhoneから出力されます。これもけっこう音が良いので試してみるとよいと思います。
これはこれでラズパイをポータブルミュージックサーバーに使用して、iPhoneで再生ができますので応用は広がります。

iPengはあくまでSqueezeboxのプレーヤーなので、piCorePlayerの設定はできません。
piCorePlayerの設定はさきに書いた設定画面、またはLMSの設定画面になります。つまり設定はpiCorePlayer画面とLMS画面では別々になります(もともとは別のソフトなので)。
LMS側の操作(管理)は次のようなものです。
 USBメモリの音源の指定、プレイリストの格納場所、ライブラリの再スキャン、プラグインのインストール
これらの音源関係の管理はLMS設定で行います。

シャットダウンは正式にはラズパイのpiCorePlayer設定WebUIからShutdownを選択します。piCorePlayerはメモリ展開なので電源ぶちきりでも良いと言いますが、LMSがあるので本来はShutdownした方がよいと思います。シャットダウン時にアクセスランプがつくのでなにかライトバックして同期してます。
ただいちいち設定UIにつなぐのも面倒なのでたいていはアクセスランプがついてないのを見て電源をぬいちゃってます。

またこのほかにもRoonからもSqueezeboxがゾーンとして認識できるので、Squeezeboxゾーンで見えるはずですが、いまのところうまく見えていません。

* 音質

かなりワイドレンジで、超低域も高域も驚くほど出ます。音像はキッチリしてシャープです。特に感じるのは平面的ではない音の深みと言うか立体感で、これは前にVolumioで聴いてた時とも共通してます。価格以上の音質で、まず文句はでないでしょう。Volumioとくらべてもこちらの方がよりよいように感じられます。
透明感も高く、背景も静粛な方だと思います。ノイズだらけと言われるコンピュータをそのまま入れてますが、そう問題があるようには思えないですね。知覚できるようなプチノイズはもちろんないし、微妙なノイズでノイズフロアが上がってSNが下がるという感じでもないです。
音質はもちろんPortaphile627の高音質込みだけれど、Portaphile627やLayla UFのように最高レベルで聴いてても十分負けない音をDAC+とラズパイが出している点に驚かされます。

このソフトのよいところはオーバークロックが簡単にできる点です。オーバークロックすると音がより先鋭に変わります。
mildでエッジがキリッとして、moderateでさらにアタックも強くなりますが、ちょっとガチャガチャ聞こえる感もあるかもしれません。好みもあるかもしれません。また予想通り電池消費は増えてMildでも2500mAhの電池は3時間弱程度しか持ちません。まだ見ていませんが、VolumioよりもpiCorePlayerとLMSの組み合わせ自体が電池消費が激しいのかもしれません。二つ違うものを動作させていますからね。
またこのオーバークロック設定を見てみると、raspi-configでの設定と似ているので、もしかするとラズパイ2では実はアンダークロックで動いているのかもしれませんが(mildでarm_frq=800だから)、この辺はまた調べてみます。いずれにせよ音質は標準状態から変わりますので試してみると面白いと思います。

音質を変えると言う点では、設定ページでのMainタブにふた通りのpiCorePlayerのビルドバージョンが用意されていて、これを変えても微妙に音質が変わるので変えてみても面白いと思います。

* まとめ

まとめると、piCorePlayerを使用してできることは以下の4点です。

1. USBメモリの音源を呼んで再生する
2. AirPlayでiPhoneから音楽を再生する
3. USBメモリの音源をiPhoneにストリーミングする
4. Roonからストリーミング再生する(未確認)


piCorePlayerを使う利点はと言うと、音質が良い(好みもありますが)とSqueezeboxの資産としてクライアントが充実しているので使いやすいと言う点だと思います。iPengだけではなく、他にもいろいろとあります。
RAM上にすべて展開するので電源ぶち切りできると言う利点はこの形態ではLMSと同居させているのであまり言えないかもしれません。(ぶち切りしていますが)
SqueezeliteとLMSの併用は便利ではありますが、ブート速度やぶち切り可能などSqueezeboxの家電的な有利さをちょっと損なってはいるかもしれません。
またVolumioなどのMPDディストリビューション系に比べると設定などでマニアックな追い込みもできます。(MPD系もファイルを手でいじればできますが)
もちろんポータブルだけではないので、今までMPD系のVolumioなどを使ってた方も試してみてください。
ラズベリーパイを使うというと、いままではDIY系の人が多かったと思いますが、ここに書いてきたことははんだごては必要ありませんので誰にでも試してみることができます。

それと今回Squeezboxのことをまじめに調べてみて、かなり優れたコンセプトだったということに改めて気がつかされました。使ってみるとそのコンセプトやユーザビリティ、音質などかなり優れていると思います。LMSからiPhoneにストリーミングできるところもSqueezeboxらしい良さで、これだけでポータブルアンプ無しで運用するのもアリだと思います。
Squeezeboxは時代に早すぎたと思いますね。いまのストリーミング時代ならちょうどよいかもしれません。また操作性に関しても、iPnegのような高度なクライアントアプリでの操作はVolumioやRune AudioのWebUIやMPoDとは別次元の快適さです。この辺は一度は商品として世に出ていたシステムのことはあります。
ちょっとこのSqueezeboxエコシステムの中で少し使ってみようと思ってます。

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このラズパイ使ったポータブルアンプのシステムもなかなかまじめに使えるようになりました。操作はiPhoneで快適にでき、電源落とすときに難がありますが、音質も価格にしてはかなり良いですね。
ポケットにコンピュータいれてポータブルアンプで、サーバー設定変えながらリブートを繰り返し、あーでもないこーでもないと音質のチューニングやってるとあっという間に駅に着きますので、乗り過ごしにご注意を。(実際やりました。。)

      
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2015年12月31日

2015年を振り返る

今年もいろいろと書いてきましたが、今年度の振り返りの記事を書いて終わりとしたいと思います。

いわゆるこの「ヘッドフォンオーディオ」界隈では近年はイヤフォンがトレンドの主導をする傾向がありましたが、今年は年明けからスピーカー技術を取り入れたAudio QuestのNighthawkや、ポータブル平面型のOpo PM-3そしてAstell & KernのベイヤーコラボモデルであるAKT5pなどヘッドフォン復権とも言うべき盛り上がりがありました。
ポータブルでは久々のEditionシリーズであるEdition Mなんかもありましたが、ポータブル系だけではなく、ハイエンド方面でもMrSpeakersの野心作Ether、テスラ第二世代T1 2ndとAK T1p、ゼンハイザーHD800Sなど他にも多数発表がありました。

平面型はわりと定着してきたと思います。もともと平面型は新しい技術ではなくオーディオ黄金期に流行っていたものですが、いったん廃れて最近再び流行るきっかけとなったのはHiFimanとAudezeが推進材となったからです。その両者ともHE1000系やLCD4などトップモデルを更新しています。静電型もオルフェウス2やSTAXの新製品、ポータブルのShureなど驚きの展開となりました。

イヤフォン方面では近年のマルチBAの多ドライバー化のアンチテーゼともいうべき流れが出てきたことが注目事項だと思います。
ひとつはダイナミックの復権で、いままでのDita AnswerやIE800の流れを受けて、CampfireのLyraやAstell & KernのAK T8iE、ビクターのFX1100など、ハイエンド・ダイナミックの流れが定着してきたように思えます。
Shureのまさかのポータブル静電型であるKSE1500もやはりスタッフが語っていたようにマルチBAのアンチテーゼの一派と言えるでしょう。
またCampfire audioのOrion,Jupiterなどで採用されたアコースティック・チェンバー方式(チューブレス)も複雑化に対してのアンチテーゼの一種と言えます。

またカスタム方面ではハイブリッドが人気のカテゴリーとなり、マーヴェリックカスタム、FitEar Air, Justear MH-1/2などなど、たくさん人気機種が登場してきました。
また閉鎖空間の耳道におけるベントホールの問題も、そうしたハイブリッドモデルはもちろん、ちょんまげ3号のA.I.R.や64 AudioのADELモジュールなど注目をされました。
カスタムではWestone Sシリーズやオンキヨーのように一層の低価格化が進むとともに、3Dスキャナ・3Dプリンタの導入など新しい技術動向にも注目です。

それと今年はWestone 3のオマージュであるWestone30やTriple.fi 10 proのオマージュであるJH Audio TriFiなどかつての人気機種の10周年を祝うモデルも話題となりました。これらが日本限定というのもこの10年で日本市場の果たした役割の重さを感じさせます。

DAP(デジタルプレーヤー)では中国製DAPの隆盛は大方の予想通りですが、オンキヨー・パイオニア連合など国産も加わって戦国時代の様相を呈してきている一方で、いち抜けしているAstell & KernはAK380/AK320、AK Jrとラインナップを大きく広げました。
イヤフォンも含めてポータブル製品の価格帯は引き上げられていますが、普通はこうした従来の価格トレンドから離れた高価格製品はオルフェウスのようにメーカーの看板としてあるもので売れるものではありません。しかしポータブル製品の場合は売れ行きも好調であるというのがポイントです。つまり試しに作ったというものではなく、それが価格帯のレンジを引き上げて恒常的に商品選択の幅を増やしたと言えるように思います。

またポータブルアンプではChord Mojoが好評のHugoをついでより小型・低価格で発売されたのが大きな話題となりました。来年は拡張性を広げるアクセサリーの登場にも期待したいところです。


PCオーディオでは、、、なにかありましたっけ?と私が聴きたいくらい。それは技術トレンドに欠けているからだと思います。たとえばDoPによるDSDネイティブ再生やクラス2による96Kの壁の突破などの技術的なブレークスルーがなく、スペックもDSD11Mの浸透くらいで頭打ちに近い状態です。
ハイレゾはもはやマーケット用語であり、技術的なトレンドとしてはすでに48Kや96Kの壁を突破したときに終わってます。40kHzで数10dBも落ち込む「ハイレゾ対応」製品を技術的な壁を突破したと言えるのでしょうか。
MQAについては昨年末に話題となりましたが、対応機種がいくつか出たものの一年たっても市場に登場していません。PCでどうやって聴くかのガイドも十分に提示されていません。
ストリーミングについてはApple Musicの登場や日本での導入、年末のビートルズ、海外でのTidal人気など話題性はいまだありますが、技術トレンドと言うべきか。
ソフトウエアでも今年はPCの音楽ソフトウエアではRoonが海外では話題になっているということは知っていたのですが、RoonはAudirvanaやHQ Playerのようにソフトウエアで音質を高めると言うような方向性の技術主導のソフトウエアではなく、あまり興味が持てなかったということでうちの記事にすることはありませんでした。

PCオーディオ界隈はかつて技術トレンドの先端として、自分でも情報収集がわくわくと楽しみでしたが、最近は正直言ってかなり退屈です。普及期に入って安定したのだ、と言えば良いのですが、トレンドの牽引車に欠けると言う印象も否めません。

昨年の終りに来年(今年)はPCオーディオにできてポータブルにできないことはなくなる、と書いたのは予言というよりすでにその時すでにCelsus Companion oneなどを使っていたのでそう書いたんですが、さらに今年はAstell & Kernの第二世代機以降がDLNA互換のネットワークプレーヤーの機能を有するに至り、Mojoのアクセサリーでもそうしたモジュールが検討されているなど、PCオーディオ的なお株を奪ってしまったように見えます。ポータブルではさらに無線の方面でネットワークオーディオが発展していく期待感もあります。

スマートフォン方面ではあいかわらずの煮え切らないAppleの対応もありますが、Androidでは期待していたUSB標準ドライバーに失望し、レイテンシー向上で期待し、というところでしょうか。来年はさらなる薄型化のためにスマートフォンのイヤフォン穴の動向に注目でしょうか。
高音質アプリでは久々に本格的なiOSのRelistenが出ました。これは使いこんでいくとiPhone直でもAnswerのような高性能イヤフォンで不満ないようにはなります。

また個人的にはシンガポールのMookショウも興味深い経験でした。
今年はヘッドフォンアワードの表彰式の立ち上げしたり、カスタム座談会などの司会も面白かったですね。
現在もいろいろ活動していて、来年はなにか面白い報告ができれば良いなと思ってますが、まだわかりません。
さて来年はどうなるか。
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2015年12月24日

ファイナルオーディオデザインのイヤフォン作成講座(シンガポール出張版)

Mookショウで開催されたファイナルオーディオのイヤフォン作成講座に参加させてもらいました。これは人気企画「自作イヤホンで音のチューニングを楽しもう!〜イヤホン組立体験〜」講座の出張版です。イヤフォンの組み立てをすることで構造を学ぶとともに、音のチューニングをどうするかまで学ぶことができます。
日本での参加費は12800円で、ダイナミック型のMMCXリケーブルが可能な本格的なものです。チューニングという観点からするとダイナミックの方が自由度があるとはいえるでしょう。

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使われるイヤフォンもほとんど参加費はパーツ台だけでとんとんというくらいなので、できるイヤフォンは市販品相当だとなかなかのものというのがわかると思います。十分に自分でも使えるくらいになるので、それ目当てということでも良いと思います。

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上のようにはじめにパーツをすべて皿に開けます。このときにパーツが小さいので神経を使いますが、実際のパーツはもっと小さいと言われて改めてイヤフォンのミニチュア感覚の世界に感じ入ります。

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上でブラブラしてるのがダイナミック・ドライバーです。ハンダは使わずに部品を止めていくだけですが、なかなかうまくはまりません。ドライバーのゴムパッキンなどは熟練は1秒でやるそうです。

だいたい作ってチップとケーブルをつけると音を聴くことができます。今回は特別にFinalの好意でJabenのSpiral Strandケーブルをおごられたので音が良すぎという感じです。これが一万くらいの音か!といいたいところですが、ちとベースが過大な感じです。

そこで次は聞いたらチューニングに移ります。

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まずドライバー自体の背面の開口部をテープで塞ぎます。上の写真で左のドライバーの下にあいた穴をふさぎます。右はすでにふさいでいます。ただしこれは完全にふさいでいるわけではなく、いくらか通気しています。ダイナミック型はこれが大事なので、これになにを貼るかがポイントだそうです。
実際はバックベントよりも、ドライバー自体の開口部ポートが低域に与える影響が大きいそう。

これですっきり上質な音になった気がします。言い換えると少し高いイヤフォンになった感じです。低域が抑えられよりフラットになりヴォーカルも引き立ちます。このドライバーの背面の開口部で100hz-1Khzまでを抑えるとのこと。

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次は上のハウジングのバックベントを塞ぎます。ねじで回転させて開口部を閉じます。こちらは低域でもより低い方をかえるということで、いわゆる重低音がなくなる感じがします。ここは確認したら好みで戻します。

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次は上のようにいわゆる音響フィルターをチューブに詰めてハイを抑えます。密度が高いほどハイが落ちるわけで、ストッキングなどを入れても良いそう。実のところこれをいろいろ家にある素材で変えて欲しいということです。天然素材が良いそうです。またハイを変えることで知覚的に低音も変わるとのこと。

最後にメッシュのフィルターをつけるが、これはイヤワックス(耳あか)用なのでなくても良いそうです。むしろいろいろフィルターを変えるにはいらないかもしれません。

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けっこう立派なイヤフォンが出来上がり、音質も良くて十分これで楽しめます。

まとめるとチューニングのポイントとしては、次のようになります。
1. チューブにフィルターを詰めて高音域の調整
2. ドライバーの背面開口部のテープを変えて低音の調整
3. ハウジングのバックポートの開け閉めで超低域の調整
加えてケーブルを交換することでも音が変えられます。

イヤフォンの構造が分かりやすく、チューニングなどの知識も得ることができ、作ったイヤフォンで楽しめるとなかなかお得な講座ですので次の開催にはぜひ参加してみてください。
ファイナルデザインの口座案内(前回)はこちらです。
http://final-audio-design.com/archives/3832

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2015年12月23日

ポタ音スタイル2016に記事を書きました

発売中のCDジャーナルムック、ポタ音スタイルにいくつか記事を書きました。
プレーヤー・アンプとヘッドフォンイヤフォン徹底ガイドのレビューでAK Jr、Continental Dual Mono, AK T1p、Campfire Audio Lyra、Chord Mojo、ちょんまげ3号を書いています。
アプリガイドではHF Player、USB Audio Player pro、FLAC Playerとともに新しいRelistenも書いています。
またP146から「ポタ音放談」として私とフジヤの根元さんの対談でポータブルアンプやプレーヤーに関する不満点やこうあるべきという形を話していますので、ぜひご覧ください。


posted by ささき at 10:53 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年12月18日

日本向け限定モデル、Westone30

Westoneから新製品Westone30が12/26日に発売されます。バランスド・アーマチュアを採用していて3Way・3ドライバーのイヤフォンです。詳細はテックウインドさんのホームページをご覧ください。価格はオープンで市場推定価格は49,800円前後です。
http://www.tekwind.co.jp/information/WST/entry_450.php

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特徴

Westone30には二つの大きな特徴があります。
まずひとつは日本市場向けにサウンドデザインがなされている、日本限定モデルであるということです。これはWestone社のサウンドマイスターであるところのカール・カートライトが日本人好みにチューニングしたものです。
そのためにカールが日本のロック・ポップ、アニメ音楽などを研究したということ。

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Westone30

もうひとつはこれがあのWestone 3のオマージュになっているということです。筐体デザインは似ていますね。本体ロゴも数字の意匠化が踏襲されています。ドライバはWシリーズとは少し異なり、ネットワーク調整を一から日本向けに作っているということです。(つまり現行のW30とは異なります)

昔話を少しすると、2006年初頭のCESに3ドライバーという画期的なスペックを持ち、$500という「驚くほど」高価格のShureのE500がE5系の後継としてデビューして話題となりました。いまでいうハイエンドイヤフォンのはしりですね。それを同じ2006年にUE(というより当時のジェリー)が3ドライバーで追いかけて当初は別のコード名でしたがtriple.fi 10の発表をし、続いて2007年にWestoneが3ドライバーで3Wayという画期的なWestone 3を発表して追いかけるという展開になりました。それまではカスタムには3wayがありましたが、普通のイヤフォンでは2wayが一般的でした。
特にWestoneはこのモデルで一気に高性能コンシューマーイヤフォンの分野に躍り出た記念すべきモデルですね。モデル名もそれまでとは変わりました(Westone 2はこの後)。日本市場ではShureやUEの陰にあった感のWestoneがこのWestone 3で一気に表舞台に登場した感じでした。なかなか発売されずにユーザーがやきもきして待ち焦がれていたのを覚えています。
この後E500はさらにSE530となり、高性能イヤフォンの戦国時代がはじまります。それは「普通の市販イヤフォン」がカスタムに追いつく時代でもありました。そしてジェリーはUEを離れますが、それはまた別の物語です。

それからほぼ10年が立ち、この2015年末というタイミングにJH AudioがジェリーのUE時代のtriple.fi 10のオマージュであるTriFiを発表し、WestoneがWestone3のオマージュであるWestone30を出すというのは面白い符合であると思います。

音質

ここではWestone30とWestone 3を聴き比べてみました。たしかに似ていますね。ロゴはそれぞれ3と30の意匠化です。フィット感もほぼ同じです。ただ30の方はケーブルは新しいepicです。
試聴する時はチップは両方とも形とサイズを合わせてますが、同一のものではないので多少そこで違いが出るかもしれません。

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左がWestone30、右がWetone3

いままでのアルバム随想録を見てもらうと分かるように私はきわめて洋楽偏重な人なんですが、日本向けモデルということで今回は邦楽で選曲してみました。日本人アーティストで有名どころというと戸川純とかヒカシューですか、とか、アニメ関連なら再発されたYBO2でもいいよね、とか言わないで素直に狙ったあたりと思われる音楽でiPhoneで試聴してみました。

志方あきこ: Arcadia
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ヴォーカルにはさまざまな言葉を駆使して言語感覚を大事にする人ですが、Westone30では特に日本語歌詞の部分の明瞭さが高いように思いますね。Westone3よりも全体に音が整理されていてヴォーカル部分が良くわかります。また楽器パートはよりきれいに聴こえる感じがあります。

アンジェラ: 騎士行進曲
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最近のアニソンはヒーロー名連呼型が少なくなって寂しいんですが、これは合格。複雑な曲ですが、Westone30ではスケール感もよく表現され、スピード感も軍歌っぽい高揚感も魅力的に聞こえます。

中村桜: パンツアーリート
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こちらはリアル軍歌がベースですが、原曲の勇壮感とJ-pop編曲されたビートのスピード感がカッコ良く表現されてます。やはりヴォーカルが聞き取りやすく低域はWestone 3よりもわずかに抑えられているように思います。

Babymetal: アカツキ
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最近ようやく新アルバムの発表あったBabymetalのヴォーカルソロパート定番曲。これは武道館ライブ盤ですが、Westone30ではリードするピアノの音色がWestone 3よりもより好ましくなっているように思います。ヴォーカルはあきらかにWestone30の方が明瞭で声質がきれいに聴こえます。

遊佐未森: ロカ
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これはよくドライブでかけるんですが、Westone30では曲の持つ爽やかな雰囲気と遊佐未森の独特な歌声の気持ち良さがよく表れていて気持ち良く聴くことができます。3だとちょっとごちゃごちゃした音楽になってしまいます。

まとめ

Westone30は全体に高域のきつさが少なく全体的に音がうるさくなく整理されていて、かつ低域が中域にかぶらずにヴォーカル域を重視したチューニングがなされているように思います。また楽器の音色もより正しくきれいに再現されているようですね。
30はJ-Popあたりの録音のきつさを和らげるチューニングとも言えます。もともと低価格イヤフォンのためにきつめに強調した録音を、高性能イヤフォンで聴くときつ過ぎるのでそれを和らげると言ってもよいかもしれません。

また女性ヴォーカルがWestone3より明瞭感があり、好ましく聴こえます。ちょっと興味深いと思ったのはヴォーカルの発声は同じヴォーカルでも特に日本語歌詞の場合に好ましく感じられたことです。これは外国語は子音型が多いのに対して日本語は母音型であるというところとか、日本語の発声周波数帯域が低めということに関連しているように思いますがよくわかりません。
マスマーケット用のTVなんかは国別にスピーカーの音を変えることもあるようですが、こうしたあたりも突き詰めていくと面白そうです。

Westone30はJ-Popやアニソンなどを良く聴く人にお勧めだと思います。また洋楽でもロックポップには好みの合う人もいると思います。ぜひお店で自分の音源でも試聴してみてください。そしてこのイヤフォンという分野にも歴史があること、そして日本市場が大きくそこに貢献してWestone30があることもちょっと思い出してみてください。
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2015年12月08日

Astell & Kernとベイヤーのコラボイヤフォン、AK T8iEレビュー

AK T8iEはベイヤーダイナミックとAstell & Kernの共同開発による高性能イヤフォンです。
構成はシングルダイナミックを採用していて、最近トレンドのハイエンド・ダイナミックの流れの一つともみなすことができます。

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Astell & Kernはこれまでもハイエンドイヤフォンを販売してきましたが、JH AudioとコラボのAKR03がAK240をリファレンスとしてロクサーヌUFをチューニングしたのに対して、AK T8iEは一からの新規設計がなされています。今回はAK380をリファレンス機として使用したようですが、特定の機種に対してのチューニングというはされていないようです。

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ベイヤーとAstell & KernのコラボレーションはA200P(日本ではAK10)の開発から始まり、T5pを2.5mmバランス化したAKT5p、T1 2ndをAstell & Kern向けにアレンジしたAK T1pなどが行われています。
AK T8iEもその延長ですが、特筆すべき点はこれがイヤフォンであるということです。ベイヤーは戦前から続く伝統を受け、ずっとヘッドフォンのメーカーとしてやってきたわけです。ですからこうしてハイエンドのイヤフォンを開発すると言うこと自体画期的なことと言えるでしょう。あのベイヤーダイナミックがノウハウを活かした高性能イヤフォンを開発したこと自体がAstell & Kernとのコラボの大きな成果と言えるでしょう。

AK T8iEの製品紹介ページは下記リンクです。
http://www.iriver.jp/products/product_114.php

* 特徴

AK T8iEの特徴はまずイヤフォンとして初のテスラ・テクノロジーを搭載したことです。テスラ・テクノロジーとはT1ではじめて採用されたベイヤーの独自技術です。

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T1に限らずスタジオや放送局向けのプロ仕様ヘッドフォンはインピーダンスが高く設定されています。こうした高インピーダンスのヘッドフォンは音量を上げるためには大きな出力が必要で鳴らしにくくなってしまいます。そこで、鳴らしやすくするためにドライバーの磁束密度を上げて能率を高めると言う手法がこのテスラテクノロジーです。T1は1テスラを超える磁束密度をもった初めてのヘッドフォンです。これはそれまでの二倍くらいの強度です。
マグネットは大型化するため一般的な中央ではなく、コイルを囲むようにリング状に配されて、これがテスラドライバーの特徴ともなっています。

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その後この磁束密度を高める手法は他のヘッドフォンメーカーでも高音質化のキーとして採用するようになり、ベイヤーでもT51pのようにインピーダンスの高くないコンシューマーヘッドフォンでも高音質化のために採用されるようになってきました。

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しかしながらそれらは大きなヘッドフォンでの話であり、それよりはるかに小さなイヤフォンにこの技術を収めるには単なる思い付き以上の高度な技術力が必要となります。例えばテスラドライバーはマグネットを大型化することですから、そのリングマグネットも小型化しなければなりません。
AK T8iEではT1比で1/16もの小型化を実現したということです。その磁力はサイズを考慮するとT1/T5よりも強力なほどだといいます。
ダイアフラムは11mmの大型のもので、豊かな低音をもたらしています。ダイアフラムは髪の毛の1/5という1/100mmの薄さです。

テスラテクノロジーはまた単にマグネットを大きくするだけではなく、いかに効率的に磁束を利用するかということにも注力されています。例えばギャップ部分に磁力を集めるなどですが、これは逆に言うと磁力を無駄に外に放出しないということも意味していると言います。

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ハウジングは重厚感があり、非常になめらかでキズに対しても強いクロム合金で、表面には3層コーティング(銅+クロム+企業秘密)がなされていて、鏡面仕上げになっています。
AK T8iEで特徴的なものの一つはイヤチップです。良く言われるようにダースベイダーのヘルメットのような(わたし的にはフリッツメットと呼びたいですが)非対称形のユニークなイヤチップを採用しています。これは耳への装着性を重視して設計され、チップをはめこむステムは面積を最大にして音質を稼ぐために楕円形をしています。

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ケーブルシースにはKevlar素材を採用し、細くて軽いケーブルを実現しています。またTPE(熱可塑性エラストマー)によるタッチノイズ軽減も工夫されています。ケーブルは40,000回、プラグ部分は100,000回もの屈曲テストを実施したそうです。
ケーブルはMMCXでリケーブル可能となっています。Astell & Kern製品らしく2.5mmバランスケーブルが付属してきます。

もちろんAK T8iEはベイヤーのプレミアム製品らしくドイツ製で最高の機能とワークマンシップを実現しています。

* 開封と装着感

箱はこれもAtell & Kernらしく高級感を感じさせる豪華なものです。内箱にはイヤフォン本体と3.5mm、2.5mmバランスの両方が格納されていて、保証書がはいっています。

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さらに内箱には側面に引き出しが設けられていて、そのなかには5タイプのオリジナルイヤーチップと3種類のコンプライイヤーチップ、そして革製のキャリングケースが入っています。ケースは箱型のシンプルなものです。またケーブルクリップもなかなか高級なものが同梱されています。

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イヤーチップの装着は向きに注意する必要があります。フランジの長い方をL/Rの刻印と反対側にします。これはかなり遮音性に影響するので、チップの向きは細かく調整したほうが良いと思います。
耳への装着はカナル型と呼ばれるインイヤータイプと、耳に置くイヤフォンの中間的な装着方法だと思います。ただしきちんと装着しないと低音が出ないだけでなく、外からノイズがはいりますので装着については試行錯誤して個人のベストを見つけるのが良いと思います。

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基本は大きめのチップを使い、耳に置くだけでなくちょっとねじ込むと良いように思います。するとチップのフランジがかぱっとはまるポイントが見つかるように思います。ここは人それぞれですが、このイヤフォンのツボは確実な装着方を見つけることかもしれません。
この方式は快適性が高いのもまた事実で、イヤフォンもケーブルも軽量なのと合わせて付け心地はかなり快適です。音のきつさが少ないのと合わせると長時間リスニングにも良いでしょう。
メモリワイヤーはないけれども耳に回しやすく、ワイヤーに適度な摩擦力があるので問題はないと思います。ただしチョーカー(スライダー)はきちんと締めた方が良いでしょう。


* 音質

試聴は主に開発にも使われたというAK380AMPで聴きました。基本的にはシングルエンド(3.5mmケーブル)で聴いています。
エージングなしでも耳にした瞬間にいままでのイヤフォンとは鳴り方が違うと感じられます。ダイナミックでは今までにない音で、一言で言うと余裕がある音と言う感じです。イヤフォンだけど、ヘッドフォンで聴いてるみたいというか、そういう意味で音に余裕がありますね。広がりというよりは余裕という感じでしょうか。
音自体はダイナミックらしい音で、暖かみや柔らかさがあり、ドライとか分析的という音ではありません。音が滑らかで階調再現力が高いのも特徴で、マルチBAだとこういう滑らかでスムーズな音って出ないように思います。
音はヘッドフォンで例えたくなりますが、Dita AnswerやLyraをEdition 8とするなら、AK T8iEはEdition 5でしょうか。ベイヤーでいうとT1に対してのT5pですね。

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スピーカーだと良く音像型と音場型って言う分類があります。この定義自体が曖昧で感覚的なものだと思いますが、あえてこの例えを使うと、AK T8iEは音場型のイヤフォンという感じでしょうか。最近のIE800、Answer, Lyraなんかは目の前にくっきりと楽器の音の形を描き出すという意味では音像型って言ってもよいでしょう。
シングルダイナミックでここまで音世界の奥深さを再現できるのは少ないと思います。空間表現力だけではなく、豊かな情報量もその音世界の構築に寄与してますね。音の余韻が豊かで美しく、ヴォーカルが艶っぽい感じです。たっぷりとある低域も音に重厚感をもたらしています。

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端的に言うと音楽的なイヤフォンとも言えます。もしかすると柔らかさとか音楽的と言うと、甘くてにぶい音質の丁寧表現じゃないか、と裏読みされるかもしれません。しかし、AK T8iEに関してはそういう事はなく、たくさんの細かい音が次々に湧き上がってくる感覚が味わえます。ただLyraなどの先鋭なタイプのダイナミックに比べると柔らかくなだらかな印象です。
AK T8iEの音を聴くと思うんですが、解像力というか情報量もとても高いんだけど、表現力をそれに頼ってなく、音世界を豊かにする補助的な意味で情報量が豊富にあると言う感じです。
AK T8iEは柔らかいという音表現がにぶいの丁寧語とは違うことだと教えてくれます。
ダイナミックだからエージングすることで甘さはだいぶ消えますが、ただAK T8iEはエージング前の音もなかなか甘い感じがプラスに働いて良いと思うので、ゆっくり楽しんで聴くと良いと思います。

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もうひとつAK T8iEを聴いていて思ったのはシングルエンドとバランスでかなり音が変わり、それぞれ良いという点です。同じAK380AMPで聴いても、ケーブルを変えることで2つの味が楽しめると言う感じです。
シングルエンドだと柔らかめでふわっとした感じ、緩め、低音域はピラミッド型で重厚感があってゆったりして多め、迫力やスケール感を重視したいとき、などの印象です。
バランスにすると横方向というより奥行き感が出て、低域はよりコントロールされて抑制されるようになります。音場だけでなく音像もきちっとしてタイトになり、低音域も締まってタイトなパンチを感じます。スピード感や切れの良さも感じられます。
AK T8iEの場合はシングルエンドとバランスのどちらが良いというより好みの問題に思えます。
シングルエンドで普通に音が良いのでいろんなDAPにも合わせられるのも良い点です。

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AK JrではJr特有の低域のパンチと中高域のきらびやかさを活かして楽しく音楽を聴くことができるのもダイナミックならではだと思いますね。
音が耳に近く感じられ、迫力を一層感じます。楽器再現の正確性とかキレの良さ、音の細やかさでは上位機種に譲りますが、華やかな魅力があります。なにより軽くて音が良い組み合わせです。
また、こうしてプレーヤーのグレードの差が明確に出てくるというのもAK T8iEが高い能力を持っている証拠だと思います。

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Linumバランス

もともとのケーブルもわりと良いと思うけど、リケーブルしてみるのも新たな面を発見できます。
ただAK T8iEの場合はコンパクトさと独特の装着性がポイントなので、ゴツいのよりなるべく軽量ですっきりしたケーブルが合うと思います。
そういう点では細いEstron Linumシリーズが好適だと思いますし、音質的にも楽器音の明瞭感を高め、透明感をいっそう引き上げてくれるように思います。AK T8iEの隠れてた能力が聴こえてくるようです。
ただ一方でややキツさも聴こえてくるようになるので、標準ケーブルはAK T8iEの穏やかな周波数特性の調整にも一役買っていたのかもしれません。
またLinumではプラグ部分がストレートなので装着性に影響するかもしれません。標準ケーブルのプラグ部分はだいぶコンパクトに出来ていると改めて気付かされます。


* まとめ

装着が独特なので、それを自分なりにうまくこなせると、他のイヤフォンにはない情報量豊かで余裕ある上質な音世界を堪能できます。高性能イヤフォンらしい細かく緻密で、かつ迫力ある空間の両立はAK T8iEならではのものだと思います。
またダイナミックらしい暖かく豊かでパンチのある中低域も魅力です。モニター的に分析的に聴くと言うより音楽を楽しむと言う聴き方が向いていると思います。軽量であり、深く差しこまないこともあって、長時間のリスニングも快適にこなせるという利点もあります。
一方でバランスで聴いたりリケーブルすることで性能を高めていくようなポテンシャルの高さも持ち合わせています。
パッケージはAstell & Kernらしい高級感が演出され、AKハイエンドDAPとあわせて音質でも作り込みでも満足できる組み合わせとなります。

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AK T8iEはダイナミック型らしいダイナミック型イヤフォンとも言えるでしょう。
世界初のダイナミック型ヘッドフォンであるベイヤーダイナミックのDT48は1937年以来ほとんど変わらず最近まで生産がおこなわれていました。それだけはじめから高い能力を持っていたわけです。ベイヤーダイナミックの初の本格的イヤフォン製品であるAK T8iEもまたはじめから高い能力を持っています。それはAK T8iEはベイヤーの長い伝統とノウハウ、そして最新の技術をそのまま凝縮した、ベイヤーの強みを活かしたヘッドフォンのミニチュアのようなイヤフォン製品だからと言えるのかもしれません。
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2015年11月25日

Campfireのチューブレス設計のJupiterと、シンプルイズベストのOrion登場

JupiterとOrionはALOのKenさん率いる新ブランドであるCampfire AudioのLyraに続く新製品です。Lyra(こと座)と同様に、それぞれJupietr(木星)、Orion(オリオン座)と、キャンプファイヤーを囲む夜空に見える星から名前を取っています。
Lyraはシングルのダイナミックドライバーでの性能をつきつめたイヤフォンでしたが、JupiterとOrionはバランスド・アーマチュアドライバーを採用しています。JupiterはBAを4ドライバー搭載で、OrionはBAのシングルです。

*2016/7/8
Orionについて改稿しました

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Jupiter(左)とOrion

KenさんがはじめにLyraでシングルのダイナミックドライバーでの高性能をつきつめたのは、Kenさんがダイナミックドライバーの音が好みであるというほかに、複雑化するマルチBAイヤフォンへのアンチテーゼと言う点もありました。つまりオーディオはシンプル・イズ・ベスト(less is more)というわけで、それがKenさんの信条にもなっています。

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右が設立者のKen Ball

今回JupiterとOrionでBAを採用したのは、バランスド・アーマチュアにはやはりダイナミックにない良さがあるので、それにless is moreの思想を盛り込みたいという思いがあったようです。そしてそのために新機軸を採用しています。それがJupiterに採用されたレゾネーター・チャンバーをもちいたチューブレス設計です。

* BAドライバーの本来の音を出すチューブレス設計とは

チューブレス設計というのは文字通りチューブがないということですが、ここでは音導管(サウンドガイド・チューブ)がないということです。
通常見るBAユニットには四角い箱に出っ張った突起がついています。これは音導管(チューブ)につないで音を外(耳内)に出します。
しかしJupiterに採用されているBAドライバーユニットにはこの出っ張りがなく、すっぱりと切られています。Jupiterにはいわゆる音導管がなく(チューブレス)、その通常の音導管の代わりに、BAユニットには「レゾネーターチャンバー(またはアコースティック・チャンバー)」という音響室(空間)がくっつけられています。レゾネーターチャンバーからイヤフォンの音の出る穴(ポートまたはボア)まではストレートです。ちなみにこのチャンバーは3Dプリンタで実現されています。この構造を「Resonator assembly( レゾネーター・アセンブリー)」と呼んでいるとのこと。

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ヘッドフォン祭の時に書いてもらったレゾネーターアセンブリーの模式図の一部
真ん中の四角がレゾネーター・チャンバー、上の四角がBAドライバ、下側がポート(ボア)

このレゾネーターチャンバーの目的は音響空間を設けることで帯域特性の改善と拡張をすることです。これによってシンプルにワイドレンジ化が可能となります。
ポイントは従来のサウンドガイド・チューブを使用しないことで音響フィルターも省くことができ、高周波域のレスポンスを向上させる働きがあるということです。つまり従来のチューブによる周波数特性の変化をふせぎ、音響フィルターを使わないことによって高周波域の劣化を防ぐわけです。音響フィルターは帯域特性を改善しますが音を濁らせてしまいます。

チューブレス設計ではBAドライバーの音が直で出るのでバランスド・アーマチュアドライバーが本来持つ周波数特性をより正確に再現することができます。その成果として、高域に角が立たない(歪の少ない)明瞭感ある高域が得られるということ。高域の特性が改善されたことにより、中域(ヴォーカル領域)の表現がより開放的でリアルになり、より自然な階調再現性が得られています。特に中高域の伸びがスムーズで自然になり、能率も改善されると言うことです。

* Jupiter

Jupiterは4基のBAドライバーを採用しています。4基のBAドライバーは2Wayで、低音域に2基、高音域に2基のBAドライバーが配置され、クロスオーバーでつないでいます。低域用は中低域をカバーするもので、高音域用は新型だと言うことです。
国内ではミックスウェーブから発売され、メーカー希望小売価格は税別で114,500 円です。

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筺体はニッケルメッキのアルミ製です。やや大柄ですが、見た目より軽くて耳への装着感も良好です。
チップはフォームとラバーがついていますが、Jupiterについてはフォームを主に使いました。
箱はLyraと共通の簡素なものですが、アウトドア志向のブランド名を考えると環境対応の一環と思えます。なかにはLyraのようなレザーケースと2.5mmバランスケーブルがはじめから付属しています(バランスケーブルはJupiterのみの付属品です)。またレザーケースの質感もLyraやJupiterに比べるとより年季の入ったような枯れたというかエージングされた感じの質感がある革を使っています。全体に高級モデルと言うことを意識させてくれます。
イヤホン側端子にはLyra同様にベリリウム銅で加工されたMMCX 端子を採用していてかなりがっちりとしています。

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主にMojoと標準ケーブルで聴きましたが、Jupiterは正確で緻密な音再現のMojoが向いていると思います。わりと能率は高い方です。
Jupiterはまず透明感が際立ち、ベールをはぐって言う言葉がふさわしいような、ちょっと独特の鮮度感と言うか生々しさを感じます。ぱっと聴きにLyraでも独特の音の質感表現を感じましたが、やはりJupiterでも独特の音像の質感再現理があります。ナレーションなどの話し言葉がとてもリアルというか自然に聴こえます。本当に耳元でささやかれてる感じがしますね。特に中高音域が透明感があって、よく上に伸びていく感じです。それでいて子音のきつさなどはあまり感じられません。
解像力も高くよくMojoの情報量を引き出すようです。振動版が良く軽く動いているという感じです。


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次に感じられるのはとても広い帯域再現力、ワイドレンジ感ですね。高い音は突き抜けるように伸びてシャープです。中高域にかけての鮮明さは印象的です。低い音は深く沈み、超低域の量感もたっぷりあります。このためスケール感があって音に余裕がある感じます。高域もきつさは抑えられていて、低域が張り出して膨らむような感じはなく、良好な周波数特性を感じます。
プレーヤーをAK380AMPに変えるとインパクト感もあり、ダイナミックさも伝わってきます。ぱっと聞くとLyraにも似た音調を感じます。
またiPhone直でApple Musicなんか聞いていてもシャープでのびやかな透明感あふれる音が楽しめます。

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JupiterはユニバーサルながらトップグレードのカスタムIEMを超えるほどの音質があり、その音の新しさはベテランの6ドライバー機であるUltimate EarsのUE18と比べるとよくわかります。ここでまず両方とも標準ケーブルで聴き比べてみます。
UE18と比べると、UE18は帯域的に寸詰まりに感じられ、音濁りが感じられます。UE18ではギターのピッキングの切れは鈍く感じられます。Jupiterでは特にヴォーカルが耳の近くにいるように生々しく鮮烈に聞こえるのが特徴的です。Jupiterでは音空間もより広く感じます。UE18はいまでもハイレベルのIEMで、これだけ聴くと良い音です。しかしJupiterと比べるとやはり差は歴然としてあります。
標準ケーブル同士で比較すると、ややケーブルでUE18が不利かとも思ったので、今度はUE18をWhiplashの8芯ケーブルに付け替えてみました。国内価格だと10万円くらいするでしょう。対してJupiterは標準のままで聴き比べてみました。Jupiterで標準として採用されているALO Tinselは26000円くらいですから今度はだいぶ差が逆転してしまいますが、こうするとたしかにUE18の音場の広さやシャープさは向上して差は縮まったようにも聴こえます。しかしこれでもまだJupiterの音の持つ鮮明さ・生っぽさには及びません。Jupiterと比較すると一枚ベールをかんでいるように聞こえますね。ここはもう設計の違いというしかないと思います。

マルチドライバーにする理由の一つは高音域を伸ばすことです。3Wayの6ドライバーよりも2Wayの4ドライバーの方がそれに関しても上に感じられますから、このように高い音の伸びや鮮明さではこのチューブレス方式はかなり効いていると思います。

* Orion

Orionは1基のみのBAドライバーを採用している求めやすい価格のモデルです。シンプルイズベスト(less is more)の設計思想のもとに開発されたと言えるでしょう。
メーカー希望小売価格は税別で38,700 円です。

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BA1基にしてはLyraより大きくやや大柄です。ただ装着感を阻害するほどではなく、装着感は良好です。
チップはフォームとラバーがついていますが、Orionについてもフォームを主に使いました。
箱はLyraやJupiterと同じものです。Orionには帆布製のケースが付属します。

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たしかにJupiterと比べると音がコンパクトになり、高低の余裕がなくなるように思えますがシングルにしてはかなり優れているように思います。Jupiterで書いたような鮮烈さも持ち合わせています。
低域のアタック感や高域の伸びが両立してるのはシングルBAにしてはかなりワイドレンジだと思います。シングルダイナミックと違って、シングルBAは守備範囲が狭いのでたいてい高域よりか低域よりのどちらかになってしまいますが、Orionはよくバランスが取れていると思います。
様々な楽器のショーケースであり、ワイドレンジ性能が要求されるブリテンの青少年のための管弦楽入門なんか聞いても破綻なくまとまって聴こえます。
なおOrionにはチューブレス設計はなされてなく、音響フィルターや音導管の最適化設計でこの音質を達成しているということです。

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Skyバージョン

またOrionにはSkyという日本のみのスカイブルーの限定カラーがあります。200個限定ですので販売店に確かめてくださしい。

* まとめ

Jupiterは上にすっきりときれいに伸びていく中高音域の美しさと、深みがあってソリッドな低音が魅力です。全体的な音質レベルはカスタムを入れてもかなり上位にあると言えるでしょう。BAドライバーの濁りのない純な魅力はこういうことかとも思います。
OrionはJupiterにも似た透明感と、シングルBAでこれだけ帯域が広い点がポイントでコストパフォーマンスは高いと思います。

3way以上が当たり前のようないまでも、2Wayやシングルでこれだけできるということが証明できたのはCampfire Audioの理念の正しさを感じます。
両モデルともワイドレンジであるとともに、独特の鮮度感の高い生々しい質感表現が特徴的です。ここでちょっと思い出したのはBursonのヘッドフォンアンプです。Bursonもシンプルイズベストをテーマにして最小の部品で構成して鮮度の高い生々しい音を可能にしています。Campfire Audioはイヤフォンのメーカーですが、どこか似たところがあるように感じられました。オーディオにおける洗練さ、シンプルさの価値を教えてくれます。
Lyraのときも思いましたが、Campfire Audioって新しい体験があると思います。

こと座(Lyra)は夏の夜空を代表する星座でしたが、オリオン座(Orion)と木星(Jupiter)は冬の夜空を飾る代表的な星ぼしです。これからひときわ明るく輝くことでしょう。
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2015年11月12日

茶楽音人(音茶楽)の新機構A.I.R.採用の「ちょんまげ3号」

このユニークなネーミングのイヤフォンはTTR株式会社のブランドであり、音茶楽が技術提供した茶楽音人(サラウンド)の新作です。春のヘッドフォン祭でプロトタイプが展示されていたので覚えてる人も多いでしょう。

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「ちょんまげ3号」の特徴は「トルネード・ターボ・A.I.R.」機構を採用したことです。
「トルネード・ターボ」は高音域のきつさを抑えるトルネード・イコライザーと、低音域を向上させるアコースティック・ターボ方式の複合技術で、これは前作dunguriなどにすでに採用された技術です。
今回新しく採用されたのはA.I.R.という技術ですので本稿ではまずそこを解説します。

ダイナミック型ドライバーを効率的に動かすためには、完全な密閉にしないで適度な空気抜きのベントを設けて外気と通じさせるのがドライバーを動きやすくさせ高音質を得るためのキーであることは、最近のハイブリッド方式のカスタムIEMでもよく出てくる話題です。
実際にちょんまげ3号も完全な密閉に見えますが、この下のリングのところに空気抜きのベント穴があります(下図のMc)。

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ベントは外気と通じてるので、ドライバーが動きやすくなって高音質が得られるメリットと引き換えに、外からノイズとなる音が入ってくると同時に中の音楽が外に漏れてしまうというデメリットもあります。
そこで、ドライバーと外との空気の流れの経路に音響フィルターとなるチャンバー(気室)を設けてそのデメリットを軽減するのがこのA.I.R.技術です。

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上図を見てもらうとまずドライバーユニットの前後が音響抵抗Ma,Raで連結されることでユニットの動きが軽減されますが、さらにドライバーの背圧を逃す必要があります。単に外部にベントで出すと先のデメリットの問題があるので、A.I.R.ではまず第一のチャンバー(Cb)に逃げた空気がダクトMbを通って第二チャンバー(Cc)に逃げ、さらにベント穴のMcを通って外に出ます。
Mb,Mcはハイカットフィルターとして機能して外向きと内向きのノイズを低減します。これで低音域が伸びるということです。またドライバーがより自由に動けることで音場を改善できるそうです。
春のヘッドフォン祭でプロトタイプをいくつか出展してユーザーの意見を聴いていたのは、このチャンバーの形などをいろいろと変えて工夫していたということのようです。

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A.I.R.の応用で面白いのは今回同時にリリースされた「ちょんまげ君」です。これは語学学習に最適というイヤフォンですが、これはA.I.R.の特性を逆に利用してMb,Mcをふさぐことにより低音域を弱めているということ。さらに高域フィルターを使用して声の帯域に特化させているようです。

* 試聴

チップは好評のSpinfit大中小の3セットとコンプライが1セットはいっています。
中には金属ケースがあり、布に包まれてイヤフォン本体が入ってます。パッケージングは価格にすると丁寧な感じはしますね。

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音に関してはチップはSpinfitのほうが特徴ははっきり分かるように思います。
iPhoneで聞いてみましたが、「ちょんまげ3号」でまず感じるのは、音の鳴り方というか、音色がちょっと独特だということ。抜けが良いというかこもり感が少ない感があります。ダイナミックだと厚みがあるようで実は重く濁った感があることも多いんですが、これはすっきりとして雑味が少ないという感じです。
密閉型ヘッドフォンでこもる感じが嫌な人に良いと思いますし、この辺が独特の開放感があります。

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Spinfitでは帯域的にドンシャリっぽさは少なく洗練された帯域再現で、音茶楽さんらしいピーク低減の効果もあってか高音域のささり感も少ないですね。低音域は膨らみすぎず質の良いベースの音がします。低域は量感も結構ありますが、ワイドレンジというか超低域の低いほうの量が多い感じで中低域のベースの演出感は少ない方だと思います。音茶楽さんのイヤフォンに共通しますが、楽器の音色再現も自然でリアルだと思います
ただSpinfitだとロックポップでやや物足りない感はあります。
コンプライだとベースの量感もたっぷりにロックポップに向いてる感じで、ヴォーカルもコンプライの方が良いように思います。

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ちょんまげ3号

遮音性についてはたしかに電車で使ってると普通のカナルインイヤータイプのように周りの騒音が低くなるだけではなく、マイルドというか柔らかく優しく聞こえるように思います。特に高域の尖った感が少ないですね。ここもちょっと面白い特徴だと思います。

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ちょんまげ君

ちょんまげ君の方も試してみました。iPhoneに入っているTOEIC対策のリスニングアプリを使ってみました。すると英語の発音がとても明瞭にわかるようになり、理解度が上がります。低音域がなくなることで、音声にかからなくなって発音のごにょごにょしたところがすっきりする感覚です。
難易度が上がると噂の来年から始まる新新TOEIC向けにもちょんまげ君で学習しておくと言うのは良いかもしれません。また語学だけでなく、ラジオ聴いたりいろいろと応用ができると思います。

ユニークなネーミングのちょんまげ3号は音もなかなかユニークなところがありますので、ぜひ試してみてください。

   

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2015年10月15日

Chordの新しいポータブルDAC内蔵アンプ、Mojoレビュー

ハイエンドメーカーであるCHORDが世に出したポータブルオーディオ製品、HugoはDAC内蔵アンプとしては最高クラスの音質を誇り、それゆえにアナログ部を強化したHugo TTなど"HUGOファミリー"ともいうべき製品展開もされていきました。
しかしHugoはポータブルというよりは「トランスポータブル」ともいうべき大きさで、常に持ち運ぶポータブル製品としては不満も残りました。

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そして再びCHORDがHugoの小型版ともいうべきDAC内蔵ポータブルアンプを開発しました。Mojoです。
日本での価格はオープン(想定75000円前後)、アユートから11月に発売される予定です。アユートの製品ページはこちらです。
http://www.aiuto-jp.co.jp/products/product_1701.php#1

* Mojoとは

MojoはHugo同様に鬼才ロバートワッツにより設計された製品で、FPGAを用いたパルスアレイDACを採用したCHORDらしい製品です。あのパルスアレイDACがこんなに小さなアンプに入ってしまいました。その秘密のひとつはXilinx(ザイリンクス)の第7世代FPGAのArtix-7を採用したことによります。Mojoで採用されているのはさらにワッツによりカスタマイズされ、この8月に本格的にロットが出荷され始めたばかりの最新モデルです。Artix-7の採用は小型化とともにより多くの機能の提供ができるようになり、デジタル入力の自動選択やボリューム位置の記憶などにも活用されています。
そういう意味ではMojoはやはりHugoのときと同様に最新の技術が可能にしたハイエンドメーカー渾身の製品です。

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また、Hugoの時はChordが初めてポータブルに取り組むということもあり、イヤフォンプラグの相性問題などがありましたが、Mojoはいわゆるポタアン製品として違和感のないものに仕上がっています。

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以降実機を使用して説明していきますが、私の持っているものは製品版ではなく生産前モデルなので承知おきください。
Mojoは旧AK100とほぼ同じ大きさの筐体サイズでとても小さく感じられます。とはいえ、そのがっしりとしたつくりの良さと手に適度な重みの感じられる本体から安っぽさは感じられません。小さくとも本物感がありますね。本体は航空機グレードの切削アルミニウムで「戦車のような」強さを持っています。重さは180gです。

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Mojoのユニークなところは電源ボタンと音量ボタンがプラスチックのボールでできていて、カラフルに色が変わり、そしてくるくると動くという点です。

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このボールが動くこと自体に機能というのはないのですが、開発責任者のJohn Franksに聞いてみたところ、彼はMojoをユーザーが手で触って感じられるもの(tactile)にしたかったということです。それはあたかも小石をポケットに詰めるようにポケットに入れることができ、子供が小石をこすり合わせて遊ぶようにMojoを楽しんでほしいという願いからきています。
MojoではHugoにあったCHORDの「窓」のようなアイコンはなくなりましたが、かわりにこのカラフルなボールが新しいMojoのアイコンとなるでしょう。
ボールの色については意味があり、音量ボタンの色はdb単位の音量変化、電源ボタンの色はロックしたデジタル入力の周波数を示しますが、製品版とは異なるかもしれないというのでここでは詳細には色の変化については書かないことにします。だいたいHugoを知っていればわかるでしょう。
カラフルなボールがくるくる回るのはおもちゃ感覚もあって面白いんですが、こうしたJohn Franksの「遊び心」が生きているのはCHORDらしい点だと言えると思います。ちなみにMojoとは"Mobile Joy"の略称です。
Mojoは設計のみならず製造もイギリスで行われています。

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Mojoはスマートフォンをターゲットにして多彩なデジタル入力が可能な点が特徴です。操作がシンプルで簡単であるというのも特徴で、入力選択は自動で行われます(優先順はUSB->同軸->光)。
本体にはUSB入力と光入力、そして同軸デジタル入力が装備されています。出力はミニのヘッドフォン出力が2つです(Hugoと同様に同一のものです)。ヘッドフォンは4オームから800オームまで対応していてかなり駆動力の必要なヘッドフォンでも対応が可能です。
入力はPCMが44kHzから768kHzまで入力できます(光では192kHzまで)。DSDはDoP入力でDSD64/128/256(11.2MHz)のネイティブ再生が可能です。
MojoをDACとして使用したい場合には二つの音量ボタン(音量ボール)を電源投入時に同時に押すことにより、固定出力のラインレベルアウトとして使用することができます。

またMojoのポイントの一つは電池で4時間という短時間で充電が可能なことで、8時間の使用が可能とされています。
バッテリー入力ポートには入力中のインジケーターが点灯します。これは使用中はバッテリーのレベルメーターになります。

箱はシンプルで基本的にはUSBケーブルのみ入っています。もし私なんかのようにすでにケーブルを持っている人はこれで十分なはずですが、ケーブルなどアクセサリーについてはまた案内があるかもしれません。
ちなみにHugoから省略されたものはBluetoothとクラス1専用のUSBポートとクロスフィード機能、RCAアナログ出力、同軸デジタルのRCA端子などです。

* Mojoの音質

Mojoを手に持つとその小ささが良くわかります。Hugoの小型版が出るというのは聞いてはいたんですが、予想よりもずいぶん小さいサイズです。筐体は高級感があり、その強靭さをうかがうことができます。

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サイズが旧AK100と合わせるとぴったりということもあり、私はAK100の光出力を使用してMojoと組み合わせて聞いてみました。ケーブルはタイムロードの光ケーブルもありますが、慣れているSys-Opticのhugo用ケーブルを使いました。こうするとちょっと大きいんですが、プラグ向きが同じなのでだいたい使えます。
ポケットにMojoを入れてる時には独特のボールボタンのおかげで手探りでわかりやすく操作はしやすいですね。

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これだけ小さいと音はどうなんだろうと思いますが、ダイナミックレンジ(SN比)は125dBを誇り、数値的にもハイエンドオーディオ並みの性能があります。出力インピーダンスは0.075オームという低さです。低インピーダンスのカスタムでも無問題ですね。
ただ数値以上に驚かされるのは価格レベルを超えた音の良さです。これは誰もが驚くでしょう。
John FranksはFPGAはあくまで絵画をはめこむ枠に過ぎず、その絵画は我々の技術であると言います。そうしたいままでのスピーカーの世界の頂点で磨かれたハイエンドメーカーの技術力が、この小さなポータブルアンプにも詰め込まれているのが音を聴けばわかります。

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まず感じるのは音の透明感の高さで、クリアに澄み切った音空間に端正で明瞭な楽器音が鳴りわたります。楽器の音は引き締まって贅肉がまったくなく弛んだところがありません。音像は非常に正確で鮮明です。
どんな高感度イヤフォンでも背景は非常に静粛で黒く、とても細かい音が粒立つように聞こえてきます。とにかくケーブルもイヤフォンも最高のものを使って細かい音が抽出されてくるのを聞きたくなるでしょう。

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良録音のアコースティック楽器の音源だと細かな擦れ合う音など、すごく細かい音がはっきりと鮮明に聴こえます。リマスターしたアルバムの音も光りますね。
音楽の再現力は素晴らしく、音の立体感、楽器やヴォーカルの重なり合わせの明瞭さは値段を忘れてしまうくらいのクラスにあります。たとえば女性ヴォーカルがふっとため息をつき、ささやくようなヴォーカルのリアルさ、なまめかしさは逸品ですね。

次に感じたのはHugoにも通じる、ベースのパワフルさやダイナミックさ、つまりアンプとしての音楽性の高さです。Mojoは音の再現性能が高いのですが、味気ない音を奏でるいわゆるモニターライクな機器ではありません。
打ち込み系でもアコースティックベースでも低音域の重みが伝わってきます。ドラムやパーカッションの打撃感にパワフルな力がこもり、音楽的にも躍動感が伝わってきます。スピード感も一流ですね。
DACもさることながら、アンプ部分のすばらしさが光ります。音像のたるみの無さは力強いインパクトやアタックの鋭さにも繋がっています。

Mojoは小さいながら十分すぎる駆動力があり、平面型のHifiman HE560を存分に鳴らすことができます。HE560はゼンハイザーHD800より鳴らしにくいヘッドフォンです。Mojoでは単に音量が取れるというだけでなく、HE560の性能を発揮できるくらい良い音でならせることができます。

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Mojoの正確な音再生能力からはクラシックやジャズ向きにも聞こえるかもしれませんが、実のところロックやエレクトロニカが非常によく楽しめました。力強く鋭いインパクトが音楽のカッコ良さを感じさせます。

イヤフォンでは私はCampfire AudioのLyraがとてもよく合うように感じました。あとは最高のリケーブルをしたカスタムイヤフォンでもいうことはありません。
ピアノの打撃音の正確さ、ウッドべースのピチカートの鋭さと引き締まりの良さ、あくまで静かな背景には感嘆の声が出てしまいます。このAK100+Lyraで聞いてるMojoの音は、10万円以下の機材の音とはちょっと思えません。おそらく10万円台のDACやプレーヤーでもこの音質はむずかしいのではないかと思います。
音質のレベル的にはさらにHugoにかなり肉薄するレベルの素晴らしい音質があります。このサイズで、です。

* スマートフォンとの接続

Mojoの狙いの一つはスマートフォンとの親和性です。
実際にiPhoneとは非常によく適合します。iPhone/iPadとはカメラコネクションキットを介してデジタル接続をします。標準の音楽アプリからも再生ができるのでApple Musicなどストリーミングの再生機にも良いですね。試したOSはiOS9.0.2ですが、ほかでも最近のものなら問題ないでしょう。
またHF Playerなどを使えばハイレゾ音源の再生も可能です。DSDは11.2MHz(DSD256)まで実際にロックしてスムーズにDSDネイティブ再生できることを確認しました。DoPですが、切り替え時のノイズなどはないように思います。

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またAndroidとはNexus 9(OS 5.1.1)で試してみましたが、Androidの標準ドライバーだと音が割れてしまうことがあってあまりよくありません。このためGoogle PlayやNeutronなどは使えません。これは他のDAC機材でもそうなので、MojoではなくAndroid側の問題だと思います。この辺はそろそろ予定されているAndroid OS5.2に期待です。
*2015/10/21追記:Nexus9にAndroid 6.0 (Marshmallow)を入れて試しましたが、結果は変わらないようです。

一方でUSB Audio Player ProやAndroid版のHF Playerのようにアプリ内蔵ドライバーを持っているアプリは問題ないようでした。スムーズに再生ができ、ハイレゾもロックしています。
またSONY ZX1ともNWH10を使用して接続ができました。これはiPhoneとカメラコネクションキットを介して繋ぐのと同じですね。

ちなみにUSBはオーディオクラス2ですのでWindowsではドライバーのインストールが必要となります。

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* まとめ

"No Compromise"(妥協なし)
Mojoの資料には誇らしげにそう書かれています。そしてMojoを聴いたものは誰しもそれを認めざるを得ないと思います。
Chord Mojoは数年前ならポータブルの世界からは遠いハイエンド機材にしか採用されなかったパルスアレイDACを、手のひらに入る大きさと手頃な価格で実現し、価格帯を超えた音質を達成しています。
Mojoを手にしてもらえれば、このポータブルの世界にChordが参入した意義がわかるでしょう。

Mojoはヘッドフォン祭にて試聴ができます。ぜひ15階リーフのアユートブースにお越しください。
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2015年08月20日

Campfire Audioの第一弾、Lyraレビュー

新しいイヤフォン・ヘッドフォンのブランドが誕生しました。ALOのKen Ballが立ち上げたCampfire Audioです。日本ではミックスウエーブさんが取り扱いします。
本稿はその第一弾であるハイエンドクラスのダイナミック型イヤフォン、Lyraのレビューです。

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まずはKenさんがALOという確立したブランドではなく、なぜ新しいブランドを立ち上げたのか、そこに込めた思いをKenさんへのインタビューから解説していきます。

* 新ブランドCampfire Audioについて

Campfire Audioという新しいブランドについて、Kenさんは次のように答えてくれました。
もともとALO(Audio Line Out)というブランドでケーブルを作り始めたのはIEMやヘッドフォンの音をよくするための要素の一つを自分で作りたい、ということだったということです。しかし、ケーブルというのはやはり部品の一つでしかないので、次にヘッドフォンの改造を手がけました。この作業はヘッドフォンを解体して手を加えてまた組みなおすというちょっと非効率な方法です。それにくわえてそもそもドライバーや基本設計には手を付けることはできません。
それゆえKenさんはもっと根本的に自分で一からヘッドフォンやIEMを設計・製作するという選択をしました。もちろんいまはたくさんのヘッドフォンのブランドがあるので、自分ならではの考えをそれに盛り込まねばなりません。そうして自分の考えを試しながら進んでいきたいと考えたわけです。
こうして初めてケーブルを手がけた日から持ち続けてきたオーディオへの情熱を実現するというのがCampfire Audioの目的だそうです。

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Campfire Audioロゴ

ALOのある西海岸ポートランドは自然に恵まれた土地でKenさん自身もアウトドア好きだそうです。このアウトドアのひとつの象徴はキャンプファイヤーの灯りです。ぱちぱちとはぜる音や揺らめく光など、このともしびは音楽にも似て瞑想的です。つまりヘッドフォンやIEMはKenさんにとって、Campfireにも似ています。そうした思いを込めて、ブランド名をCampfire Audioとしたということです。
そしてこの西海岸の夜空を見上げた時、文字通り宇宙にいるようにも思うそうです。その美しさの中にあるひとつひとつの小さな星々がCampfire Audioの製品名になっています。
Jupiter(木星)、Orion(オリオン座)そしてLyra(こと座)です。

* Campfire Audioの第一弾、Lyra

Campfire Audioのイヤフォンの第一弾はダイナミック型のLyraです。BA型のJupiterとOrionは少し後に発売される予定です。

Lyraは2年ほど前からIE800をおおよそのターゲットとして始めたということです。IE800は使用感やデザインはもちろん、なによりもダイナミックドライバーとしての音が気に入っていて、その当時は一番使っていたイヤフォンだったということです。
人にはいろいろと好みの要素があり、ダイナミックドライバーの音を好む人もいれば、BAの音を好む人もいます。kenさん自身はダイナミックドライバーが持つ深みがあって自然で疲れ感のない音が好きだということです。
また昨今の10個も12個もあるような複雑化するマルチBAの流れに対しては懐疑的で、オーディオ的なシンプル・イズ・ベスト(less is more)のアプローチをするという意味でもシングルのダイナミックドライバーを選んだということです。
もちろんBAはBAでよいところがあるので、今回はダイナミックのLyraとともにBAのJupiterやOrionも作ったということです。

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基本的な紹介をすると、Lyraはシングルドライバのダイナミック型イヤフォンです。MMCXコネクタによりリケーブルができます。
なによりLyraにはユニークな特徴があります。
ドライバーにスピーカー世界のハイエンドオーディオで使われるベリリウム・ドライバー(8.5mm径)を採用したということ、音質的な見地からのセラミック・ハウジング採用、そしてALOらしい高性能ケーブルを標準ケーブルに採用したことなどです。

* ベリリウム・ドライバー採用

やはりLyraの最大の特徴はイヤフォンにベリリウム・ドライバーを採用したということです。ベリリウムと言っても削り出しではなく、極薄のPET(プラスチックフィルム材)にベリリウムをCVD(化学蒸着法)で蒸着させたものです。オーディオにおいては特性の高さから、ベリリウムがハイエンドオーディオにつかわれてきました。たとえばかつての名器であるYAMAHA NS-1000やNS-2000などです。これらはベリリウムを真空蒸着で製作していました。フォーカルなども採用していますね。
一方でベリリウムは扱いの難しい材質ですが、Lyraにおいては国際機関における検査に合格しているということです。

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ベリリウムは大変硬度の高い素材であり、これを振動板に使うことで音の伝搬において不要な偽信号を排除して、結果的に高音域をより上に伸ばし、低音域においてはひずみを減らすことができます。
正確に音の信号を伝えるということはどういうことかというと、たとえばDACがアナログ信号を正しくデジタル信号に変えるように、ドライバーでも電気信号を正しく音の信号に変えるということで例えて考えることができます。ベリリウムはこの「変換」プロセスにおいて、構造的な強み、音の速さ、高い硬度(ヤング率)において形が変わりにくいため、音も正しく伝えられるというわけです。
(ちなみにCampfireではCVDによるダイヤモンド・ドライバーのヘッドフォンも開発しているそうです)
もちろんダイアフラムだけではなく、日本製のボイスコイルなど高品質部品を組み合わせてドライバーが形成されています。

* セラミック・ハウジング採用

このセラミック素材はZrO2(Zirconium Oxide Ceramic)というもので、高密度のセラミックです。これで音響室を作ることにより、解像力が高くひずみの少ない自然な音が得られます。

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ハウジング(シェル)に関してはポリカーボネイトから流体金属に至るまでさまざまな素材を試したのですが、セラミックが最高だったということです。測定した周波数特性(50Hz - 20kHz)は似たようなものだそうですが、実際に聞いた時の音は大きく違ったということ。ほかの素材の音が薄かったのに対してセラミックは深くて自然だったそうです。もちろんコストは高くなってしまいますが、音質向上は十分それに見合うということです。これは実際にポリカーボネイトと流体金属でまったく同じシェルを作成して聴き比べてみた結果で、そう判断したそうです。

* ALO品質の高性能ケーブルを標準ケーブルに採用

もちろんALOらしくケーブルははじめから優秀なケーブルが標準ケーブルとして付属しています。これは高純度銀メッキ銅のTinsel Earphone cableで、普通ならばリケーブルするための高性能交換ケーブルです。
標準でついてくるのは3.5mmですが、4芯線なので音の広がりの良さが期待できます。
またTinsel Earphone cableには2.5mmのバランスケーブル版もあります(後述)。これはAstell&Kern 第二世代以降DAPやALOのCDMで真価を発揮します。

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普通の標準ケーブルはPVC(塩化ビニール)被膜をしていますが、これはFET(テフロン)を使用していて、電気的にも耐久性でも優れています。MMCXプラグなどはカスタムメイドでブラスなどではなく、焼き入れしたベリリウム銅を採用しています。このためとても高い硬度を持っています。普通のブラスを使ったMMCXパーツは使っているうちに柔らかくなってはまりが悪くなりますが、このケーブルはそうしたことのない強い硬度を持っています。

* Lyraの質感

Lyraは簡素な紙製の箱に入ってきます。シンプルなパッケージですが、これはさきに書いたようにアウトドアというところからCampfireの理念が来ていますので、環境対応ということだと思います。
箱を開けると中から革製のケースが出てきますが、これはなかなか高級感あってよくできています。

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ケースを開けるとまずケーブルが出てきますが、標準ケーブルの枠を超えるような高品質ケーブルがはじめからついているのが目で見てもわかります。MMCXで交換可能ですが、しばらくは必要ないようにも思いますね。
本体はコンパクトで、セラミックらしくかなりガッチリと硬い感じがします。全体的に質感は高いと思います。プラグ周りも含めてモノとしては精密感さえ感じる、という感じですね。

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チップはフォームチップが二種類で、一方は柔らかくフィルター付き、もうひとつはやや硬めで高反発です。デフォルトは後者で、下記の音質はほとんどデフォルトのチップを使っています。またフォームに加えてシリコン(ラバー)チップもついています。

コンパクトなので装着感は悪くはありませんが、標準的というところだと思います。
能率はそれほど低くなく、iPhoneでも余裕をもって音量を取ることができます。

* Lyraの音質

Lyraの魅力はやはり音質にあると思います。全体的な音質レベルの高さもDita AnswerやIE800なみにダイナミックとしてはトップクラスにあると思いますが、Lyraはその独特な音再現に特徴があります。

一番初めに箱からだして聴いてみて、その独特の聴いたことがないような音再現に耳を奪われました。
これはどう表現すればよいかちょっと困るんですが、はじめに思ったのは、もし「これが新発明のバランスド・アーマチュア型ダイナミックドライバーです」と言われていたらそのまま信じたかもしれないという感じです。
ダイナミックの音ではあるけれども、バランスド・アーマチュアと比べたときにダイナミックに欠けているような細やかさ・繊細さ、たとえば弦楽器がこすれる松やにが飛ぶようなという感じの繊細さ、楽器音のエッジの鋭さをも兼ね備えているような感じです。

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はじめは慣れてるはずのAK240で聴いたんですが、ちょっと驚きました。あまり独特で面白かったので、いつもならここでダイナミックだからエージングに入れるとこですが、Lyraはしばらくエージングしないで聴いていくことにしたくらいです。まずはじめの時点で十分いい音だし、音の変化をリアルタイムで聴きたいからです。後になってレビューするのでエージングしなきゃな、と思ってからしたくらい。
とくにバイオリンやヴォーカルなどでよくわかります。ホーミー(喉声)のような細かく震える特殊な唱法ではいっそうリアルさが感じられます。
Ditaがストレートなダイナミックらしい音を突き詰めていってかつ洗練させた感じとすると、こっちは今までにない感じの高品位なダイナミックの音だと思います。

レビュー的に書くと、Lyraの音はかなり高いレベルの音色表現力、空間表現の深みがあります。音のインパクトもビシッと力強くシャープで歯切れよく聴こえます。楽器音はかなり鮮明に再現されます。また音色はニュートラルで余分な着色感はありません。(たしかベリリウムは内部損失が大きく固有着色が少なかったと思います)
楽器音はとてもきれいですが、脚色的に味付けがあってきれいなのではなく、ひずみなく澄んだ音だからきれいに響くという感じです。特にピアノの音がきれいです。透明感が高く、かつヴォーカルの声はかなり明瞭に聞き取れます。

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音調は明るく鮮明で、解像力がとても高いと感じられます。それはあたかもほかのイヤフォンで聴いたときには埋もれていた微小情報が立体感を丁寧に再現しているかのようです。また空間表現も深く立体感があり、独特の彫りの深さがあります。音の輪郭のあいまいさというのがありません。この辺はシングルゆえの位相の正しさもあると思います。

帯域的には高音域が強いとか、低音域が盛り上がってるとか、そうした誇張感はなく、普通に音楽を聴くのにバランス良い感じ。気持ち低音域が少し強目でロックポップを楽しく聴けるバランスで、この辺はチップでも調整できます。高域や子音のきつさは私が聞いた範囲ではあまりないと思いますが、シャープ感は強いので音源やDAPの組み合わせによっては少し出るかもしれません。そういう時はソフトフォームのチップで緩和できると思います。

思うんですけど、Lyraは音源の良さやDAPの良さをそのまま再現する感じです。これは簡単なことではなく、KenさんがDACの例を出したように、音の電気信号を音の空気の信号にイヤフォンが「変換」する際に、変換しきれない微小情報や、正しく変換できないひずみがあります。
Lyraはその間に挟まった時の濁りが極めて少ないように思います。
私であればカメラのレンズで例えたいですね。高級レンズならばシャープで歪みない像と同時に、途中の光のロスが少ないので透明感が高く濁りない絵を見せてくれます。そうしたすっきりとした細部の見通しの良さです。

DACの優れたDAPでは音再現が凄まじいのはいうまでもなく、iPhoneだとはじめは、おっiPhoneの音がこんなに良くなった、と思うと同時に、しばらく聴くとiPhoneのDACのあらがいやでも聞こえてきてしまうという感じですね。普通のイヤフォンだと再現しにくい、または埋もれてしまうようなDAC性能の微少なニュアンスを引き出す感じです。

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音楽的にはロックポップ系では、インパクトが強いのでドラムやベースは歯切れ良く気持ちよく聴けます。ヴォーカルも明瞭で聴き取りやすく、ノリやスピード感もよいですね。
しかしながらLyraの真価は24bitでの良録音を再生したときです。たとえばLINNの24bit クリスマスアルバムなどです。おそらくは安易なハイレゾ主張ではない本当の音源の良さを再認識させてくれるイヤフォンの性能がわかると思います。
もちろん16bit CDリッピングでも生楽器の良録音の生々しさには感動するでしょう。ぜひ良録音を良いDAPで聴いてみてください。

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美は細部に宿ると言いますが、24bitハイレゾ音源でその細部をもたらすのは拡張された最下位8bitの部分です。しかしそれは-96dBから-144dBというものすごく微細な音の成分で、引き出すのは容易ではありません。いわばなくても音楽は聴けるけれども、上質の音楽体験には欠かせない8ビット、それを引き出すのが優れたイヤフォンであり、Lyraにはそれができると思います。

* バランス化

次にもう一段階の高みに行くためにLyraをバランス化してみました。他の条件を合わせてバランス化の効果をはかるために、これにはAk380と、ALOのTinsel eaphone cable balanced(2.5mm)を使用しました。これならば線材やケーブル設計は同じです。

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Tinsel balanced

実際この組み合わせで使ってみると、Lyraがバランスでこそ真価を発揮するというのがわかります。
同じタイプのケーブルでバランスにしただけですが、Lyraの表現力に滑らかさと暖かみが加わってより音楽的でダイナミックドライバーらしい魅力がわかります。より自然な音になっているようにも思います。比較するとシングルエンドでは硬さというかほぐれなさが残ってたかもしれません。

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シングルエンドではわりとモニターライクな実直な側面を聴かせますが、バランスでは余裕があってその分が別な良さを引き出している感じです。
おそらくはLyraに能率とはまた別な鳴らしにくさがあって、バランスで駆動力が高くなったことでよりスムーズになるようになったという感覚でしょうか。
いずれにしろLyraにバランスはおすすめです。

* まとめ

Lyraは全体にとても完成度が高く、ダイナミックのハイエンドクラスの新顔といってよいと思います。装着感の良さはもう少しほしい気がしますが、音的には申し分がないですね。
帯域バランスよく、音場感・立体感も素晴らしく、楽器の音再現は抜群です。また独特の解像感の高さはポイントになると思います。
ベリリウムドライバーとセラミックハウジング、そしてALOケーブルの相乗効果は高いと言えるでしょう。

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Lyra + Tinsel balanced + AK380

ダイナミック型イヤフォンをAK380やAK240、PAW Goldのようなハイエンド機で使いたい人にはDita Answerともどもぜひ第一選択にお勧めします。AK380の高い解像感を生かしながらダイナミック型を楽しみたいという贅沢な要求にもこたえてくれるでしょう。
また日頃シングルドライバーのダイナミックなんて、と思っているハイクラスのマルチBAカスタムユーザーにも聴いてほしいですね。Kenさんが言うようにシングルなのでクロスオーバーのないシンプルさ・位相の正しさというのもプラスであると思いますが、そうした良さも発見できるでしょう。
私にとっては新しい音の世界を聴かせてくれるという期待感があり、楽しみにAK380とカバンに入れています。Lyraを高性能DAPと良録音に組み合わせるとマジックのような凄みのある音再現を聴かせてくれます。

しかし、Campfire Audioのラインナップは一作目から全開で来たっていう感じです。まさに意欲作ですね。
LyraはCampfire Audioブランドここにありというメッセージを十分に発信してくれたと思います。

MixwaveさんのLyraのページはこちらです。
http://www.mixwave.co.jp/dcms_plusdb/index.php/item?category=Consumer+AUDIO&cell002=Campfire+Audio&cell003=Lyra&id=30
Lyraは本日から予約開始、発売日は明日(8/21)です。
価格はオープンで、市場想定価格は92,500円です。
ぜひこの意欲作を店頭で聴いてみてください。
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2015年07月09日

ALOの真空管ポータブルアンプ、Continental Dual Mono登場

Continental Dual Mono(CDM)はALOの最新のDAC内蔵ポータブルヘッドフォンアンプです。真空管を採用している点からはあの評判の良かったContinentalを想起するでしょう。CDMはより大型でポータブルでの究極を目指した製品と言えます。

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ALOのCDMホームページはこちらです。
http://www.aloaudio.com/amplifiers/continental-dual-mono

CDMはこの週末にポタ研のミックスウェーブさんのブースで試聴することができますが、それにさきだって今回はポタ研予習としてCDMを考えてみようと思います。まずはCDMがどういう製品か、ということです。

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DAC内蔵ポータブルアンプと言っても、私が思うにCDMはアンプとしての性格がとても強いと思います。まず入出力を見るとデジタルに比べてアナログの入出力がとても豊富であるということがあります。2.5mmバランス入力まであります。対してみるとHugoはDACとしての性格が強いと言えましょうか。
たとえばアンプ部分はバランス設計がなされています。アンプとしては真空管アンプでサブミニ管の6111を採用しています。6111は双三極管(1本でステレオ)なので、二本で4ch対応していることになります。
また回路の特徴としてはDC/DC回路やステップアップトランスがなく、ノイズレスであるという特徴があります。またマイクロフォニックノイズも低く抑えられています。実際にシャーシをがしがしたたいてもマイクロフォニックノイズはまったく出てきません。旧Continentalはパワーがありましたがノイズとマイクロフォニックの影響がありました。CDMではそれを改良することでよりイヤフォン向けに適性があります。
そしてCDMの一番の特徴は「真空管交換(真空管転がし)」がポータブルなのに可能であるということです(セルフバイアス)。マニアックなこだわりが感じられますね。

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私が思うには、CDMは単にContinentalの改良というよりも、ALOの誇る真空管アンプであるStudio Sixのポータブル版を目指した、ポータブルの最強真空管アンプを作るというところにあると思います。
DACもWolfsonフラッグシップのWM8741を採用するなどかなり強力ですが、ここも真空管アンプの良さを引き出すためにWM8741を採用したということです。実際にESSも試したそうですが真空管の音に合わなかったそうです。これはKenさんのめざすアナログ的な音ですね。

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実際に軽く聴いてみました。RWAK120をソースとしてアナログ入力で聴いてみましたが、驚くほど豊かで厚みのある音です。ポータブルでは聴いたことがないレベルですね。アナログ入力でこそ生きるアンプかもしれません。後でまたいろいろな運用をして記事を書いてみたいと思います。

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そうしたALOのKenさんの理想と思う音を、あのRed WineのVinnieさんが設計して実現したCDMをどうぞ週末はポタ件で聴いてみてはいかがでしょうか。
ミックスウェーブさんではほかには同じくKenさんのCampfire Audioのイヤフォンや1964のV6ユニバーサル、マベリックなども展示されます。
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2015年06月04日

ワイヤレス・ネットワークシステムをポータブルに、Celsus Sound Companion 1

Celsus SoundのCompanion1は世界初(米国発売は今年の1月)のWiFiによるワイヤレス再生を実現したDAC内蔵のポータブルアンプです。ひとことでいうと、DLNAのネットワークオーディオプレーヤーがポータブルになったということです。ただし正確に言うとDLNAは商標なので、その技術規格であるuPnPに対応したDLNA互換の製品です。

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Celsus SoundはもとNuForceのJasonがNuForceから分かれて設立したいくつかのブランドのひとつです。そのため技術力に関してはNuForce譲りと言えるので信頼できると思います。(ほかのプロダクトには開放型イヤフォンのGramoがあります)
国内ではフューレンさんが代理店となります。昨年の秋のヘッドフォン祭で参考に持ってきてくれていたのですが、そのときにプロトを少し使ってみて、いろいろと調べてきたのですが、今度は正式に国内発売となります。ちなみに国内では接続機種のサポートはiOSのみになりますのでご注意ください。
以下の記事はJasonから少し前に提供してもらったデモ機(生産版)によるもので、最新のものとは違うかもしれませんので念のため。

* 特徴

Companion1はデジタル入力専用のDAC内蔵型のポータブルアンプです。入力はUSBとWiFiの二系統あります。DAC ICはES9018K2Mです。
出力はヘッドフォン端子のほかにラインアウトと光デジタルアウトがあります。

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WiFi接続はさらにDLNA互換(uPnP対応)接続とAirPlay接続の二通りに対応しています。
これは比喩ではなく、そのままの意味でCompanion1はDLNAネットワークシステムの一員となれます。DLNAではCompanion1はレンダラーの役割になることができます。
またDLNAだとプレーヤーアプリが限られるので、AirPlayでつなぐこともできます(iOSのみ)。
たとえばDLNAを使う場合はPlugPlayerを使用し、AirPlayならば標準プレーヤーやNeutronが使えます。

WiFi無線ネットワークで使用するので通常はWiFiルーター(ハブ)が必要ですが、Companion1はiPhoneとダイレクトにつなぐモードも備えています。
そのためWiFi接続はAP(Access Point)とClientの二つのモードがあります。APというのはいわばダイレクトモードでルーターは不要、ClientというのはすでにあるWiFiネットワークに参加するもので、ルーターが必要です。このどちらかでWiFi経由でiOSやAndroidとワイヤレスで接続します(国内ではiOSのみサポート)。最近カメラなどでSDカードに無線LANが内蔵されたものがありますが、APモードはそうした感覚です。

APとClientの切り替えはボタンで行いますが、このときにイヤフォンから"Direct Mode"とか"being join in wifi network"とか女声で確認音声が聞こえるのが新しいところです。Clientモードではいったんローカルアドレス(198.x)に入ってCompanion1の設定画面からWiFiネットワークの情報を入力します。
(* ClientとAPの切り替えなどで接続が不安定な時は、いったんiPhoneの登録ネットワークを削除することをお勧めします)
uPnP(DLNA)ではサーバー一覧においてメディアレンダラー(DMR)としてCompanion1が見えますのでそれを指定します。AirPlayではAirPlayでの出力切り替えでCompanion1を指定します。

ヘッドフォン祭の後にプロトタイプでテストをしたんですが、接続はかなり簡単になっています。またAirPlayの音質が上がって、DLNAと同じ程度になりました。

Companion1はUSB DACとしても使えます。ライトニング-USBケーブルが付属しているので接続はシンプルにできます。

*使用例と音質

パッケージングはきれいでシュリンクラップまでなされています。箱も中箱のなかにさらにアンプとケーブルが分かれて入っていて、ケーブルはビニール梱包、アンプはカバーされていてかなりしっかりとしたパッケージングです。

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USBのポートはへこんでいるので普通のケーブルが入らないのですが、Jasonいわくこれも指摘したところ安全性との考慮のうえで決定したということで、専用のケーブルを添付したということです。

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Companion Oneを使用してみてまず思うのはCompanion OneがWiFi機能だけのアンプではないということです。
たしかにはじめの興味はWiFiによるスマートフォンとの接続で、USB DACはおまけ的なものかと思っていました。しかし実際のところはUSB接続の音質は極めて高く、ライトニングケーブルなどのアクセサリーもよく出来ています。Companion1はWiFi接続ができるというだけの色物的な製品ではなく、音質がかなり高いのが特徴といってよいと思います。

Westone ES60で聴いてみましたが、uPnPでの接続はいままでKleerもいれてワイヤレスでは聴いたことがないくらい良い音で驚きました。透明感があり、とても細かい音まで鮮明に聞こえます。ポータブルアンプとしての音も良いと思います。というか有線のDAC内蔵ポータブルアンプと比べても十分にトップクラスの音と言えると思います。多少大柄な筐体ですが、音を聴くとちょっと納得します。音の性格がドライにならずに音楽的に楽しく聴けるのはnuForce譲りの良いところでしょう。
惜しむらくはWiFi使用時に背景で少しポップ音がはいることで、これは音楽が鳴っていると気にならない程度ではありますが、もし気になる場合はUSB接続がよいでしょう。

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実際に使ってみるとケーブルのない自由さをあらためて感じますね。iPhone6/iOS8という組み合わせで試しましたが、この組み合わせだとAPモードで接続しながら4Gにも接続することができます。まさにスマートフォンの利点をまったく阻害しません。
私が思うにはポータブルアンプはもともとiPodの音質を向上させるためにはじまったわけです。しかしいまでは音源が格納されるiPodの機材ポジションはiPhoneなどのスマートフォンに変わっています。スマートフォンではさらにストリーミングなどの新たな音源を扱うことが可能です。
iPodの時代にはiPodにミニミニケーブルをつけて背中合わせでバンドで固定するのでよかったものが、いまの全面タッチのスマートフォンにおいて同じかたちでよいものか、という疑問があります。つまりポータブルアンプも時代につれてちがうかたちがあるのではないかということです。
もしスマートフォンに合わせた形のポータブルアンプがあるとすれば、それはワイヤレスでの接続になると思います。
しかしながらBluetoothは音質が劣り、Kleerは余分なドングルが必要となります。それを考慮すればあるべき形はWiFiでの接続になると思います。それがCelsus Companion 1です。

Astell & KernのAK380もDLNA互換で出てきましたが、もはやPCオーディオにできてポータブルではできないということはないと感じます。
むしろWiFiによる無線のネットワークオーディオというのはポータブルのほうが上手に発展させていくでしょう。こうして新たなオーディオの形というものが少しずつ作られていくのではないかと思います。
posted by ささき at 22:17 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年02月12日

Shanling(シャンリン) M3レビュー

Shanling(シャンリン)は中国の大手オーディオメーカーで、1989年に創業してCDプレーヤーやDAC、真空管アンプなどスピーカーオーディオからPCオーディオまで多様なラインナップがあります。以前は真空管アンプなどが日本でも販売されていたと思います。

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M3はシャンリンのハイレゾプレーヤーで192/24対応です。
メモリーは内蔵が8GB、MicroSDスロットがひとつ装備されています。最近のFWアップデートでexFATが読めるようになり、最大で128GBまで認識できます。
ファームウエアのアップデートが多いのですが、レビューは音と機能は一番使ったFW1.08、UIは大きく刷新された最新のFW1.15ベータを使用しています。またハード的に昨年の古いユニットといまの新しいユニットがあって、新しいユニットではイヤフォンプラグや音質が改善されているようです。下画像は主に新しいユニットです。

電池の持ちは公称で9時間程度だと思います。重さは220gです。色はブラックとシルバーがあります。

* M3の回路設計

まず私がM3に興味をもった点は、オペアンプ構成がAD8610+BUF634ということです。つまりこれはあのサミュエルズさんのSR71と同じ構成だからです。聞いてみるとやはりSR71同様にデュアルモノを意識して設計しているということです。この辺は音に効いていると思います。
DACチップはシーラスのCS4398で、CS8422によって192kHzアップサンプリングが可能です(中の設定で行います)。最近のファームでは24bit拡張も同時に行っています。またこのCS8422によってジッター制御も行っています(おそらくASRC)。

またM3のタオバオの広告を見ていて興味を引いたのはこれが台湾の有名な博士によって設計されたとうたっていることです。広告に載せるくらい向こうでは有名なのかと、これもShanlingの人に聞いてみたところ、その人はDr Choiという人で台湾のオーディオ世界では名の知られた設計者であるということです。この人は回路設計と音質解析のエキスパートで、38°やESTiなどのブランドを立ち上げたことでも知られているということです。
設計者を広告に使うというのもちょっと興味深いことです。

* M3の操作系と機能

M3のはじめの特徴はユニークな操作系です。M3はAndroidではなく独自ファームウエアを採用しています。そのためタッチパネルではなくキーでの操作になりますが、その操作は右上のコントロールホイールを使用します。これはボリュームと十字キーを合わせたような機能を持ち、回転させるとボリュームの上下、ジョイスティックのように倒すと十字キーのような機能を持ちます。

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これは使ってみるとなかなか便利です。よく曲を変えると録音レベルが違ったり、静かな曲とかうるさい曲で音のボリュームをすぐ変えたくなることがありますが、この仕組みだとそれが簡単に可能です。
このほかにある操作系は電源ボタンだけで、これは操作ロックも兼ねています。

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シャンリンの人に聞いてみると、普通のハイレゾプレーヤーはボタンが多くてデザインに制約を与えてしまい発想の余地がない、そこで彼らはジョイスティックひとつとボタン一つというシンプルな形にしたかったということです。これによって片手だけでの操作が可能だということ。
このスティック自体はジッポライターから発案したという話で、今後もこのミニマル志向で設計していきたいということです。

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画面は2.4インチ液晶でタッチではありません。前はメニュー階層が分かりにくかったし、デザインがいまひとつだったのですが、最新ファームではUIが大きく変わって メニュー階層も分かりやすく、デザインも洗練された感じです。

もうひとつのM3の特徴は入出力が豊富だということです。光出力もついています。入力はアナログインと光イン、出力もアナログアウトと光アウトがついています。ラインアウトがついててるDAPはいろいろありますが、アナログインがついているのはあまりないように思いますね。通常の音楽はDAPに入れておけばよいですが、たとえばiPhoneで動画をみてたりゲームをやってるときに、より迫力ある音で楽しみたいというときにも使えます。

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ハイレゾDAPというより、TEACのようにハイレゾDAP+ポータブルアンプととらえることもできるような汎用性も期待できそうです。


* M3の音質

M3はファームウエアで音がよく変わるので、よく覚えてるFW1.08でのレビューです。
イヤフォンはFitEar fitearが良い感じでお勧めです。キレの良さと細かさを堪能できます。私は001ケーブルをつけてチップを変えて使用しています。JVCのFX1100やJH Audioアンジーなんかもお勧めです。ワイドレンジ感や空間表現など、これらの高性能イヤフォンの性能を十分に生かしている感じですね。

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M3でまず印象的なのはバランスでなくてなにがわるい、と言いたくなるような広大な音の広がりの良さです。これはバージョン問わずM3の基本的な長所だと思います。おそらくデュアルモノの設計が効いているのでしょうね。
ワイドレンジで高低の帯域バランスはクセがないので、組み合わせたイヤフォンの性格が素直に出ると思います。音色もニュートラルでクセがない方だと思います。
素直な素材感のある一方で、モニター的というよりはコンシューマーライクでメリハリがあって迫力があってパワフルです。耳に近い感じで迫力もありますね。音の良さがわかりやすく、MP3でも音が良いのでエントリーユーザーにも向いてると思います。
楽器音は明瞭感が高くクリアですが、加えて滑らかさがあって、そこが価格以上に上質に感じさせるところでもあります。情報量とか音の正確さはこの価格帯ではかなり良い方だと思います。
それとM3で良いと思うのはいわゆるモニターライクではなく、聴いていて音楽的にきれいな音と感じられる点ですね。

周波数特性は低域が張り出してないでバランスよくフラットに聞こえるけれど、低いほうまでよく出て量感が確保されているのでベースが強いように聞こえると思います。またワイドレンジ感があり、高域も透明によく上に伸びる感じですね。この辺はFWバージョンでも少し異なるかもしれません。

Fitear fitearの空間再現の良さ、雰囲気感、クリアな細かさがよく発揮できます。この組み合わせでは躍動感とかインパクトも良いですね。
fitearだとキレの良さとかスピード感があって、ノリの良いジャズではフットステップ踏みたくなるくらいです。

* まとめ

総じてコストパフォーマンスが良く、価格以上の内容が楽しめると思います。またジョイスティック方式の操作はなかなか良くできていますが、多少慣れは必要かもしれません。
ホタ研では上の新UIでデモするということなので、当日は須山さんブースにどうぞ。
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2015年01月24日

GloveAudio S1プリプロダクションモデルレポート

GloveAudio S1はGloveAudio A1のSONY ZX1バージョンです。SONY ZX1と一体型でケーブルレスで接続(合体)できるDAC内蔵のヘッドフォンアンプです。

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以下プリプロダクションモデルをCEntranceから貸与してもらいましたのでレポートします。情報はGloveAudioならびにCEntrance CEOのマイケルから直接聞いたものです。ただしプリプロダクションモデルでのレポートであり、製品版では変わるかもしれませんので注意ください。
たとえばプロトタイプではX1と表示されていますが、製品版ではS1となる予定です。

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サイズはZX1に合わせてA1よりもやや大きくなっていますが、今回もぴったりと一体にはまります。ZX1のシルバーと合わせて、メカ的にカッコよいですね。なおこのS1のシルバーカラーは日本国内仕様になる予定で、国際仕様はブラックのようです。

このプリプロダクションでは組み立てはA1での六角レンチから普通のプラスドライバーに変わっています。ZX1とは底面プレートの電極プラグを経て接続します。

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端子をみるとわかりますが、ZX1とはUSB経由で接続します(A1ではAK100/120と光でつないでいました)。これでオーディオ信号の伝達と電力供給ができます。ご存知の方もいると思いますが、CEntranceはドライバーでも知られるようにPCオーディオでのUSB接続のプロであり、USB接続でのS1は彼らの能力をいかんなく発揮できると思います。オーディオ回路設計が優れていることもA1で実証済みです。

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S1の側面にはマイクロUSB B端子がひとつあります。これでS1とZX1を同時にチャージできます。またZX1へのデータ転送もできます。USB DACとしては機能しません。
充電はA1のように二股のUSBケーブルでなく、ひとつのケーブルで同時に充電が可能です。このためにはまずS1とZX1を両方電源を落としてからS1のUSB端子にケーブルを接続します。S1が動作状態ではZX1に充電できません。
充電状態はLED点滅で表示されますが、点滅の意味は製品版で変わることが確実なので書かないでおきます。

ボリュームはS1側面のボリュームを使用します。動作中はZX1のボリュームは使用できません。出力は3.5mmバランスとKobiconn(RSAタイプ)バランス、2.5mmA&Kバランスです。
DACチップはA1と同じく標準タイプのES9018です。標準タイプのES9018は一般に使われている省電力型ES9018K2Mに比べても性能が高いのが長所で、K2MがDNR 127dBのところ、標準タイプでは133dBあります。これは現時点でのDAC ICの最高レベルの性能と言ってよいでしょう。他の回路は少し改良されていますがほぼA1と同等だと聞いています。

音はA1からも想像できると思いますが大変に素晴らしく、特にバランスで素晴らしい再現性を聴かせてくれます。GloveAudio A1と比べてみると音質レベルは同じくらいだと思いますが、S1の方がややクリアで硬質に感じられます。この辺はもとのZX1の音を少し引き継いでいる感もあり興味深いところです。もちろんZX1にくらべると大幅に音質は良くなっていて、別物と考えてよいと思います。
彩との001バランスでの相性がとてもよかったですね。ちょっとあり得ないくらいの音再現を聴かせてくれました。AKR03なんかも2.5mmバランスで素晴らしい音質を聴かせてくれました。

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FitEar 彩とGloveAudio S1

問題点は電池の持ちが短いことです。これはS1の問題ではなくZX1のデジタル接続での電池消費が多いことによるもので、これは他のHPA-2などでもデジタル接続なら同じはずです。実際にここがZX2で電池が倍増された理由でしょう。ただS1では普通のUSB MicroB端子を使って手軽に5V USB充電できるので、普段使いにはあまり問題にならないと思います。

ZX2とどちらを取るかは悩むひともいるかもしれませんが、うちのブログを読むような方はGloveAudio S1でしょうね。私見ですが、ZX2での音質の改良はアナログ回路の範囲であり、肝心のS-MasterはZX1と同じです。かたやS1では最高のDACチップであるES9018を採用しています。おそらくS-MasterはASICで実装されているので、ZX2だけのリリースのタイミングでは書き換えが難しかったのではないでしょうか。ASICはFPGAに比べると書き換えに生産量が必要になります。おそらく次のS-Masterの書き換えは生産量が確保できる次のWalkmanの発表のタイミングではないかと個人的には思います。そうした意味で言うと、良くも悪くもS-Masterに束縛されてしまうZX1を音質面で大きく改善するにはS1のような外部DACアンプが最善ではないかと思います。

S1の価格と国内提供経路は後日発表になると思います。
このユニットはすでに返却しましたが、来月2/14のポタ研で試聴できるようになりそうです。興味のある方はチェックしておいてください!
posted by ささき at 12:47 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月12日

SONY ZX1用のGloveAudio S1登場

人気のハイレゾプレーヤー、SONY ZX1用の画期的な外付けアンプが登場しました
AK100用の一体型DACアンプ、GloveAudio A1を紹介しましたが、そのZX1版です。これは生産前版なので外観は変更があると思います。名称はX1ではなくS1になります。日本国内でも販売予定です。

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FitEar 彩バランスとGloveAudio S1

ヘッドフォン祭の時にちらっと見せてもらったんですが、そのときは前面シルバーでした。このモデルではさらに磨かれてなかなかかっこよく、高い質感はZX1に合わせてもまったく見劣りしません。

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ケーブルレスでの一体型の取り付けは六角レンチから普通のプラスドライバーになったようです。背面はZX1のふくらみに合わせて段が付けられています。A1とは異なりUSBでの接続になります。内部の回路はほぼA1に沿ったもので、出力も同じで2.5mmとKobiconnのバランス対応です。つまりZX1ユーザーも2.5mmバランスが使えるようになります。S1素晴らしい音質を聴かせてくれ特にバランスは圧巻と言える音再現です。
またあとで詳しくレポートします。
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2015年01月09日

ESSから新しいDAC/アンプ統合型ICが登場

おなじみESSの新しいラインナップが発表されました。SABRE9018Q2Cです。

ESSは少し前にヘッドフォンアンプチップも発表しました。
これは低電圧用で最近はよく使われてるDACチップrのES9018K2Mと組み合わせるためのICですが、こんどのQ2Cはこの二つを統合したもののようです。全部入り、という感じで一発で使うものなのでしょう。名前もESxxではなくSABRExxが冠されてます。

用途としては高音質スマホがまず考えられますが、低電圧で従来よりコンパクトに設計できると思うので、iPhoneのライトニングポートにさしてMMCXコネクターを持った交換ケーブル、なんてのも欲しいところです。

posted by ささき at 07:41 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする