Music TO GO!

2025年04月14日

サムスンのUWBワイヤレス特許とクアルコムXPanとハイブリッド技術

AV WatchでXPan説明会レポートとXiaomi実機レビューを執筆しましたが、この二つによりXPanの実像が浮かび上がってくると思います。

XPan説明会レポート
https://av.watch.impress.co.jp/docs/topic/2002406.html

Xiaomi 実機レビュー
https://av.watch.impress.co.jp/docs/review/review/2004499.html

それは純粋なWiFiイヤフォンというよりも、BluetoothとWiFiのハイブリッド技術に近いと思います。つまり接続はBluetoothで行い、データ伝送はWiFiでやるという考え方です。
これは現在のワイヤレスイヤフォンの実態を踏まえてかつ、技術標準を活かしつつもBluetoothの限界を打破するという点で興味深いアプローチだと思います。

これについて連想できるのは最近サムスンが公開したUWBによるワイヤレスイヤフォン技術の特許です。
これはサムスンが提出したUS-20250039604-A1の「ワイヤレスイヤホンおよびその制御方法、コンピュータ機器および記憶媒体」です。
スクリーンショット 2025-04-14 8.34.49.png

この中では下図fig3のように、まずBluetoothで左と右のイヤフォンとの接続を確立した後に、音楽データをUWBで直接左と右のイヤフォンに伝送しています。

スクリーンショット 2025-04-14 7.59.38.png

この特許の背景では「BTテクノロジーは消費電力とオーバーヘッドリソースを節約し、ワイヤレスイヤホンのソフトウェア設計を簡素化するのに役立つが、進歩が遅いので高品質オーディオデータ伝送には向かない」ということが書かれています。
つまりBluetoothの簡易で標準という利点を活かして、かつUWBを併用することで高品質データの伝送を可能にするという「ハイブリッド・アプローチ」特許なわけです。

もしBluetoothを使わずにUWBのみだと、デバイス発見や接続確立、イヤフォンの操作にさらに独自プロトコルが必要となります。そこをBluetoothで補えば標準にも沿えるというわけです。

このUWBをWiFiに置き換えるとXPanに似たものであるということが言えるのではないでしょうか。ただしUWBとWiFiでは広範囲接続や精度などが異なりますので、そこからはまた別ものとなります。

こうしたハイブリッド・アプローチ技術がこれから伸びていくのか、Bluetoothの標準が高品質データを取り込むのか、まだわかりませんが着目して良い方向性であるとは言えると思います。
posted by ささき at 08:29 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年04月09日

AV WatchでXPanの実際の例としてXiaomi Buds 5 proのレビューを執筆

AV WatchでXPanの実際の例としてXiaomi Buds 5 proのレビューを執筆しました。
aptX Adaptive R4など面白い情報も取り上げています。カメラについてもちらっと触れています。

https://av.watch.impress.co.jp/docs/review/review/2004499.html
posted by ささき at 06:25 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年04月02日

A&KがPS10システムを発表

Astell & KernがPS10というシステムを発表。
下記のHeadfi記事によるとクレードル込みのシステムのようです。DACの中身はSP3000に準じてますが、インピーダンスアダプティブ型のアンプが搭載されてます。これは高感度イヤフォンとヘッドフォンの両方に適合するようです。またスマートゲインというゲインの仕組みも採用。最近ポータブル機のハイパワー志向が強く、イヤホンでは適合しにくいケースもありましたが、この仕組みならば高感度イヤホンからヘッドフォンまで広く使えるかもしれません。
本体ではボリュームがボタン化されたのが特徴。
クレードルは据え置き用でXLRバランス出力端子がついています。

A&Kは昨年暮れに韓国のMiwanという不動産会社に買収されています。Miwanでは成長戦略としてオーディオを考慮しているようで、この据え置き志向のシステムもその一環かもしれません。

https://www.head-fi.org/threads/astell-kern-ps10-dap-with-docking-cradle-coming-soon.976374/
posted by ささき at 13:50 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

Philewebに平面型イヤフォンの聴き比べ記事を執筆

PhilewebにAstrolith, SOLO, Type821などの平面型イヤフォン聴き比べ記事を書きました。平面型の特徴についてもしっかり書いています。

https://www.phileweb.com/review/article/202503/26/5978.html
posted by ささき at 13:40 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年03月08日

スティックDAC×DAC POCKETによるポータブルオーディオの勧めの記事をAV Watchに執筆

スティックDAC×DAC POCKETによるポータブルオーディオの勧めの記事をAV Watchに執筆しました。
エッセイ風の記事の第二弾で、「有線イヤフォンの逆襲」をテーマにしています。

https://av.watch.impress.co.jp/docs/review/review/1665838.html
posted by ささき at 09:17 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

xMEMS社の最新ユニット「Sycamore」の記事をPhilewebに執筆

フルオープン型にも対応可能なxMEMS社の最新ユニット「Sycamore」の記事をPhilewebに執筆しました。
ノウルズカーブの記事と合わせるとフルオープンタイプの将来も見えてきます。

https://www.phileweb.com/review/column/202503/05/2539.html
posted by ささき at 09:15 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「ノウルズ・カーブ」をCESの最新展示から読み解く、の記事をPhilewebに執筆

「ノウルズ・カーブ」をCESの最新展示から読み解く、の記事をPhilewebに執筆しました。
xMEMSのシカモアの記事と合わせるとフルオープンタイプの将来も見えてきます。

https://www.phileweb.com/review/column/202503/04/2538.html

posted by ささき at 09:13 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2025年02月05日

AV WatchでUSB-Cアダプタの記事を執筆

AV WatchでUSB-Cから有線イヤフォンを接続するアダプタの記事を執筆しました。
いままでとはちょっとことなりエッセイ風に軽い感じで書いています。

オマケなのに超高音質な「USB-C - 3.5mmアダプタ」と出会い、Ztellaに辿り着いた話
https://av.watch.impress.co.jp/docs/review/review/1656185.html
posted by ささき at 11:53 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年12月26日

AV WatchにCampfire Audio Claraのレビューを執筆

AV WatchにCampfire Audio Claraのレビューを執筆しました。
ケンさんに聞いた開発経緯から、その特徴、そして音の印象まで6500字で詳細に書いていますので興味ある方は是非ご覧ください。

https://av.watch.impress.co.jp/docs/review/review/1650394.html

8 Clara とSR35 表示はApple Musicのコルティーニ氏のページ.jpg
posted by ささき at 08:17 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年12月05日

nwmブランドの新世代新製品「nwm DOTS」、「nwm WIRED」レビュー


nwm(ヌーム)はNTTソノリティが販売するブランドで、オープンイヤー型ながら周囲に音漏れがしない技術「PSZ」を特徴としています。端的に説明すると「PSZ」は背圧を逆相の音として放射して周囲の漏れを打ち消すという仕組みです。
そのnwmブランドの新製品が先日発売されました。オープンイヤー型の完全ワイヤレスイヤフォン「nwm DOTS(ヌーム・ドッツ)」(市場価格24,200円)と安価な有線イヤフォン「nwm WIRED(ヌーム・ワイヤード」(市場価格4,950円)です。NTTソノリティでは耳スピーカーと呼んでいます。

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nwm DOTS(左)、nwm WIRED

研究所のスピンオフ製品を思わせるように以前のnwm製品はいささか実験機的な性格がありました。以前のnwm製品についてはアスキーに書いた記事を参照ください。
音もれを打ち消す、ながら聴きイヤホンの新提案、NTTソノリティ「nwm MBE001」

それと比較すると、今回の製品は「nwm DOTS」、「nwm WIRED」共に同級の他社製品と比較してもイヤフォン製品として十分に完成度が高い本格的な製品群になっているのが特徴です。
デモ機を貸し出してもらったので、本稿ではインプレッションを中心に書いていきます。

* 「nwm DOTS」

オープンイヤー型の完全ワイヤレスイヤフォン「nwm DOTS」はPSZ技術の他にもデザインとカラーリングの点でとても個性的なイヤフォンです。円を基調とした個性的なデザインは"DOTS"の名前とともに点と点が繋がるという意味合いを込めているということです。「nwm DOTS」は通話性能も高く、NTTのもう一つのコア技術である「Magic Focus Voice」を搭載して通話品質を向上させています。
ドライバーの口径は旧モデルと同様に12mmですが、新規開発により以前のモデルよりも音質・音圧を向上させている点がポイントです。特に一般に低音として知覚する100Hz付近のレスポンスを上げたということです。
またPSZの音漏れ低減効果も従来より改善されています。DSPを使って逆相音を出すイヤフォンとは違い、PSZは音響のみで逆相音を実現しているのがポイントですが、その分でPSZの性能向上は単にDSPの性能を上げれば済むというものでもありません。このことを開発元に聞いたところ次のコメントをいただきました。
「音響シミュレーションをデザイン時点から活用し、新規開発ドライバの実力を十分に引き出せるよう音響構造や逆相放射用の穴形状、位置などを工夫・改善しています。実際、nwm DOTSの逆相用の穴はデザインに合わせてかなり複雑な配置・形状になっています。nwm WIREDの逆相穴に関してもデザインに馴染むよう、旧モデル(nwm MWE001)よりもすっきりした印象になっていると思います」
確かに逆相穴は筐体の周囲に開いているのですが、違和感のあるものではありません。

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実機を見ると以前のものよりも普通のイヤフォンという感じです。むしろ円のデザインが印象的で、市販のカジュアルなイヤフォンという印象を受け、PSZのような特徴的な技術が隠されているようには見えません。充電機能付きのケースも前よりもコンパクトになっていて実用的です。
本体はとても軽量で装着感はほとんどありません。極めて快適でオープンイヤータイプの中でも装着感はかなり良いと思います。この装着性の秘密として、「nwm DOTS」ではイヤーフックが特徴的で、普通のイヤーピース(テールチップ)をはめ込んでクッション代わりにし、さらに大きさも調整できるという特徴を備えています。このイヤーピースを使ったクッションがとても良くできているわけです。
また「nwm DOTS」を使い始める時にまず悩むのはこのイヤーピースの大きさの選択と、前後の位置です。大きい方がクッション効果が高いと思うけれども、まず耳のサイズに合わせて選ぶのが基本だと思います。またクッションの大きさで耳への距離が多少変わるので音も少し変わります。小さい方がより音の広がりがよく感じられ、大きい方が普通のイヤフォンに近く密度感があるように感じられます。
またイヤフックの前後でのイヤピースの装着位置も変更できます。個人的にはイヤフックは耳たぶがしっかり円弧に収まるように装着した方が良く、イヤーピースは少し後ろ側に装着した方が良いと感じましたが、耳の形は千差万別なのでここは試行錯誤しながらベストポジションを決めていくのも楽しみの一つでしょう。

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音質についてもかなり優れています。同クラスの他のオープンイヤー型と比べても遜色ありません。独特の開放的な音の広がりが良く、クリアで解像力も高く感じられます。低音はオープンイヤー型らしく軽めですが、パンチがあり引き締まっています。中高音域は普通のイヤフォンと遜色ないくらいの高い音質があると思います。特にピアノの音色が美しく感じられます。弦楽器を聴いても音色が気持ち良く、基本的な音の解像感とか歪みの少なさなど音性能は高いと思う。ベルの音が美しく響くのは歪み感が少ないからでしょう。音色はニュートラルでヴォーカルもクリアでよく歌詞が明瞭に聴き取れます。ロックでも重低音中心でなければスピード感があり、パワフルな感じは十分に楽しめます。
また従来のイヤフォンに比べると、周りの音がそのまま入ってくると同時に、いままでにないような空間が開けていて開放的な音空間が楽しめます。まるで音楽が周囲に溶け込んでいるような感覚にも陥る。中高音域は音質もしっかりしているので、不思議なリアル感が味わえます。
それと高音域にきつい刺激的な音が少ないのも特徴です。これは耳を塞がないことによるもののように思います。

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独特の音の開放感とヴォーカルの聴き取りやすさと楽器音の美しさはこのイヤフォンの長所です。例えばエリックサティの音楽を聴きながら原稿を作成するなどの用途にはうってつけです。
最近発売されたIsabelle Lewis「Greetings」では個性的なヴォーカルと軽いビート感、深みのある落ち着いた曲調が心地よさを感じさせ、ファミレスで聴いていてもどこか別空間に誘われるような感覚を受けます。
作業に向いているApple Musicの「チル・ミックス」をしばらく聴いていたが、あまり低音が足りなくて不満になるケースはなかったですね。録音の優れた曲も多いのですが、音質もミドルクラスのワイヤレスイヤフォンとしては十分に満足できます。ただし曲にウッドベースが入るようなジャズヴォーカルでは少し物足りなさはあります。
アニソンではやはり重低音はありませんが、女性ヴォーカルがとてもクリアで声が聴き取りやすいので、イヤフォンで中高域を重視して選ぶ人には向いていると思う。

音漏れはファミレスであれば多少音量をあげていても隣のテーブルで聴こえることはまずないと思います。数十センチ離れるとかなり聞こえにくいので隣の席でもかなり聴き取りにくい程度にはなるでしょう。

また細かい点ですが、操作性が良くタッチの感度が良いのも特徴的です。ただし普通の完全ワイヤレスとはフェイスプレートの位置が違うので多少の慣れが必要です。

* 「nwm WIRED」

オープンイヤー型の有線イヤフォン「nwm WIRED」は価格が安く試しやすい点がポイントで、PSZイヤフォンのエントリーモデルとして捉えることができます。
有線なので低遅延が重要なゲームで使いたいというときにも使えるでしょう。またPCの3.5mm端子にも使えるので汎用性は高いのも特徴です。後で書きますが、エントリーモデルにしては音質が高いのも特徴といえます。

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Macbook Air(M2)の3.5mm端子で聴いてみました。装着感は良く、周りの音はやはり全て聞こえてきます。
低価格モデルという先入観から音は期待できないと初め思いましたが、予想外に音がよいと感じました。安価な製品にありがちな音の雑味が少なく、中高域中心ならオーディオが好きな人でも気持ちよく聴くことができます。
こちらも原稿執筆中にApple Musicの「チル・ミックス」を聴きながら試してみましたが、滑らかで広がりが感じられる音質で、自然な音場感が感じられます。また弦が擦れるような音までわかる十分高い解像力を持っています。高音域の音がとてもクリアで、ベルの音が心地よく響く。サックスなど楽器音はリアルに聴こえます。ピアノの音色がとても美しく感じられる。
音質に関しては先に書いた「nwm DOTS」との共通点が多いと思います。

オープンイヤー型とはどういうものか、PSZとはどういうものか興味を持っているが高価だと試しにくいと思っているユーザーが試してみるのにもよいでしょう。

* まとめ

nwmブランドのイヤフォンはヘッドフォン祭で初めて披露された時からチェックしていますが、今回の新製品は「nwm ONE」も含めてnwmブランドの第二世代という感じがします。
また発売は先になりますが、「nwm GO」というアウトドアの釣りとかジョギングに向いたモデルが用意されています。もともとビジネス用だったnwmブランドの適用範囲がさらに拡大して行くようです。先日NTT武蔵野研究所の見学をした際にも「nwm」製品が単に音楽を聴くだけではなく、インフラの一部としても機能するということがわかりました。様々な今後の展開にも要注目です。






posted by ささき at 14:36 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

もう一つのMEMSスピーカーのメーカー「USound」の記事をPhilewebに執筆

もう一つのMEMSスピーカーのメーカー「USound」の記事をPhilewebに執筆しました。
MEMSスピーカーに興味のある方はご覧ください。

https://www.phileweb.com/sp/review/column/202412/05/2485.html
posted by ささき at 08:48 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年11月21日

xMEMSがスピーカーにも応用できるニアフィールドタイプのMEMSスピーカーを発表

いままでMEMSスピーカー(MEMSドライバー)は主にイヤフォンに応用されてきましたが、11月19日にxMEMS社は小型スピーカーにも応用できるMEMSスピーカー「Sycamore」(シカモア)を発表しました。
用途としては、いわゆる「ながら聴きの完全オープンイヤフォン」であるオープンワイヤレスステレオ(OWS)イヤホン、スマートウォッチ、スマートグラス、AR/VRヘッドセット、そしてPCスピーカーやスマートフォンスピーカーが考えられます。さらにカーオーディオやポータブルBTスピーカーも応用が考えられているようですが、この場合はツィーター用途になるようです。xMEMSではニアフィールドタイプのMEMSスピーカーと呼んでいます。

「Sycamore」のサイズはわずか8.41 x 9 x 1.13 mmで、重さはわずか150ミリグラムです。これは従来のダイナミックドライバー・パッケージのサイズの1/7、暑さは1/3です。またIP58規格の防水性能があります。
この技術は超音波変調を用いたxMEMS「Cypress」と、ICの空冷ファンであるxMEMS「XMC-2400」の技術を応用したもののようです。これにより超低域では従来のダイナミックドライバーを超え、中音域では同程度、高音域はより高性能というパフォーマンスを得られるようです。

xMEMS「Cypress」については下記のPhileweb記事をご覧下さい。
https://www.phileweb.com/review/article/202403/13/5517.html
xMEMS「XMC-2400」については下記の当ブログ記事をご覧ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/504455112.html

xMEMSでは「Sycamore」について次のように語っています。
「スマートフォンでは、Sycamoreはよりクリアな通話とプライバシーのため、車の中ではSycamoreのサイズ、重量、性能により、ヘッドレスト、天井部分、ピラーに搭載できるマイクロサイズのツイーターになります。そしてもちろん、Sycamoreのオーディオパフォーマンスは、スマートウォッチやメガネに最適なサウンド体験を提供するだけでなく、そのサイズにより、デザイナーはより洗練されたファッショナブルな製品を製作できます」

xMEMSは2025年第1四半期にSycamoreをサンプリングし、2025年10月から量産を開始するとのことです。おそらくはCES2025になんらかの展示があるでしょう。
ちなみにsycomore(シカモア)とは西洋カエデのことで過酷な環境で生育できるので、海外ではよく街路樹として使われているそうです。


参考リンク: xMEMSリリース
https://xmems.com/press-release/xmems-introduces-sycamore-the-worlds-first-1-mm-thin-near-field-full-range-mems-micro-speaker-for-smart-watches-xr-glasses-and-goggles-open-fit-earbuds-and-other-applications/
posted by ささき at 08:33 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年11月19日

Softears開発者インタビュー

先日当ブログでSoftears「Enigma」のレビューを書きました。実際に聴いてみるとかなり特徴のあるメーカーだと思いましたが、開発者たちが先日のヘッドフォン祭の時に来日した際にインタビューをしました。以下はそのインタビューとメールでのやり取りから構成した内容です。

Softears製品は国内ではJaben Japanから購入できます。
https://jabenjapan.thebase.in

* Softears開発メンバーインタビュー

今回来日したメンバーの名前と担当は以下の通りです。

来日メンバー.jpg
(左から) ゼネラルマネージャ:杜(Crade Dio)、創業者・主任技術者:NKウォン(NK WONG)、海外担当マネージャ:翁昊(Hao Weng)

Q: みなさんが来日した今回の目的を教えてください

ヘッドフォン祭に参加して日本市場を調査するために来日しました。我々はこれから日本市場にもっと深く参入したいと考えています。

Q: Softearsの設計哲学について教えてください

まず我々の目標は中国を代表するハイエンド・カスタム・イヤホン・ブランドになることです。Softearsのスローガンは 「HEAR THE TRUTH (真実を聴く)」で、創業者のNKウォンは完璧をあくなき追求する人物であり、その性格はビジネスへのアプローチにも反映されています。彼はSoftearsが発売するすべての製品に美的な感覚も追求し、(音的に)クリアなモデルは見た目でも透明に見えるように作ろうとしています。接着部から隙間に至るまで、細部に至るまで綿密に管理され、そのすべてが均質でなければならないわけです。品質基準の適合度合いについては国や業界の基準を超えています。このように目に見える部分と見えない部分の両方で考え抜かれた設計がなされ、イヤホンひとつひとつが優れた職人技として扱われなければならないと考えています。
Softearsはクラフトマンシップの精神を持ち、常に卓越性を追求し、消費者に高品質でハイエンドの中国製イヤホンを提供することに尽力しています。

Q: Softearsのこれまでの歩みについて教えてください

創業者のNKウォンはイヤホンの研究開発で10年の経験を持っています。当初、Softearsは深センの華強北にあるスタジオとして、カスタムオーダーを受けるところからスタートしました。しかし、より大きな飛躍のためNKウォンは、自社ブランドの設立を決意。彼はMoondrop(水月雨)のCEO鄭氏とも協力し、成都に移ってSoftearsを設立しました。
2017年に設立されたSoftearsは、1000平方メートルの工場を拠点に、研究開発、撮影、販売、生産、管理、財務、倉庫スタッフを含む40人以上の従業員を擁しています。
いまでは優れた設計と革新的技術のおかげで、我々は国家ハイテク企業として認められるようになりました。

Q: Softearsの現在の業務について教えてください

我々はイヤホンの設計、チューニング、オーディオ検査機器の開発を専門とし、はダイナミックドライバー、バランスド・アーマチュア、その他各種スピーカーの開発にも注力しています。Softearsは若い会社ですが経験豊富な企業として、研究開発、製造、販売を総合的に行っています。我が社は独立した問題解決能力と研究開発能力、標準化された業務手順を有しています。また、2台の小型5軸CNC精密フライス盤や10台の3Dプリンターなど、さまざまな研究開発支援設備も保有しています。
Softearsは自社開発の他にOEMとODMサービスも行っており、国内外の数多くのブランドに研究開発と製造を提供しています。我々はほぼすべてのインイヤーモニタービジネスのニーズにワンストップソリューションを提供できます。

Q:Softearsの代表的なイヤフォン製品と技術について教えてください

2019年にSoftearsは最初の2つの製品、「RS10」と「ケルベロス」を正式に発売しました。特にRS10は、そのユニークで精巧な透明のデザインと、片側15個の部品からなる複雑な内部構造で際立っています。当時としては最も複雑なクロスオーバーのひとつであり、真の5ウェイ・クロスオーバーと10+1バランスド・アーマチュア・ドライバーの組み合わせが特徴です。
RS10は高音域に2基のKnowles製のBAドライバー、中音域に4基のeaudio(中国メーカー)製のBAドライバーを搭載、eaudioのドライバーはフルレンジタイプでNKウォンが設計しています。低音域には4基のSonion製BAドライバーを搭載、他にBAのパッシブドライバーを搭載しています(後述)。
中国では、オーディオファンの間でイヤホンのリファレンスとして知られるようになりました。この成功によりSoftearsは大きな注目と賞賛を集めることになったのです。その後、ユニークな外観と優れた音質の「Turii」は、さらに多くのユーザーを魅了して、高い評価を得ています。

RS10とEnigma.jpg
Softears RS10(左)とEnigma

我々は技術と革新に重点を置いています。一例を挙げるとパッシブドライバーの開発に注力していることです。Enigmaにはダイナミックドライバーのパッシブドライバーを搭載していますが、RS10には革新的なBAドライバーのパッシブドライバーを搭載しています。

Q: BAドライバーのパッシブドライバーというのは聞きなれない言葉ですが、どのようなものですか

従来のBAドライバーからコイルとアーマチュアを取り外したBAドライバーのことです。このRS10の画像をみるとBAドライバーに結線されてなく、音導管のみで接続されているのが分かると思います。
RS10.jpg RS10のパッシブBA.jpg
RS10と赤丸部分がパッシブドライバー、ちなみにRS10のシェルは空洞ではなく樹脂が詰まっています

パッシブドライバーは他のBAドライバーから発生する音圧を吸収する吸音体として効果的に機能します。これによってより良いエアフローを作ることができ、鼓膜に対する圧力を軽減でき、低音の音質を向上させることができます。

Q: 今回の新製品について教えてください

まず人気のあった「Voleme」の後継機である「Volume S」です。Volumeにはなかった音質切り替えのスイッチを搭載し、低音の量感を変えることができます。
アルミとカーボンの筐体で、ドライバー構成はBAドライバー2基、ダイナミックドライバー1基、ダイナミックのパッシブドライバーを1基搭載しています。
位相を電気的に制御する技術も採用しています。
パッシブ・ダイナミック・ドライバーは、ウール素材から作られた素材を反転させて低音ユニットのドームに配置したものです。それにより低音ユニットの高域成分を吸収し、低音をよりピュアにしてエネルギー性能を向上させます。

VolumeSb.jpg
Softears Volume S

新たなエントリーモデルは「Studio2」で、従来プロメーカー向けだったStudio4の下位機種ですが、リスニング目的にも向くように設計しました。
「22955(knowles)」、「29689(knowles)」という人気のある「クラシックな」構成に似た設計を採用しています。オールBAドライバーですが高域のBAには外部に通じるベントがあり、これによって鼓膜の負担を軽減します。

Studio2b.jpg Studio2のベント.jpg
Softears Studio2、右の写真にベント穴が見えます

またUSB/3.5mmアダプターの「S01」も販売します。我々はこれを"Softtail"と呼んでいます。軽量化を念頭に開発しました。

Softtail.jpg IMG_1058.jpeg
"Softtail" USBアダプター、右はiPhoneにSofttail経由でStudio2を接続

Q: 今後の製品計画について教えてください

今度はダイナミックドライバー構成のみのマルチドライバー機を計画しています。3-4基の帯域別のダイナミックドライバーを搭載する予定です。
ダイナミックドライバーのマルチドライバーにしたのは低音を増やすためではなく、シングルダイナミックモデルは中音域が薄くなりやすいからです。これにより解像力とヴォーカルの魅力を引き出せるでしょう。
またシングルダイナミックでハイエンドの機種も検討しています。

ワイヤレスイヤフォンについても開発しています。まだ明かせませんがとてもユニークな特徴を搭載する予定です。

Q: 最後に日本のイヤフォンファンへのコメントをお願いします

日本のみなさん、私たちは研究開発と技術に専念するブランドです。真面目に心を込めて制作していますので、みなさんに我々の製品を気に入ってもらえたら幸いです。よろしくお願いします。

* 製品インプレッション

今回の新製品をいくつか聴かせてもらったので、そのインプレッションを最後に掲載します。

「Volume S」はクリアで鮮明な音で、低音のパンチが気持ち良いサウンドです。ヴォーカルの明瞭感も高く、全体にリスニングよりのサウンドです。
スイッチを切り替えて「クラシック」モードにすると低音が減ることで低域の量感が変化します。

「Studio」はプロ機ベースらしく、モニターライクなサウンドでスピード感があります。すっきりとした音調で音楽聴くにも躍動感があって歯切れが良い。音の開放感がある。解像度が高い。

それと「Softtailアダプター」も小さい割に優れた音質で躍動感があります。

Softearsはとてもユニークな技術を持っている技術志向のメーカーだと感じました。これからの展開にも期待できるメーカーです。



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2024年10月31日

PhilewebにAuracastの実際の使用の記事を執筆

PhilewebにJBLのTour Pro3の液晶ケースを用いて、Auracastの実際に近い使用シナリオのデモを東芝情報システムさんのシステムを借りて実施した記事を執筆しました。
JBLのイヤホンを東芝情報システムの送信機と組み合わせて実施したわけです。操作にはTour Pro3の液晶ケースのUIをAuraacstアシスタントとして活用しています。

https://www.phileweb.com/sp/review/column/202410/28/2457.html

3TourPro3の画面.JPG
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2024年09月21日

AirPods 4はどのようにイヤチップなしでANCをしているか

AirPods 4はどのようにイヤチップなしでANCをしているか、という記事がengadgetに掲載されています。
https://www.engadget.com/audio/headphones/weve-got-to-make-it-happen-how-apple-designed-airpods-4-for-effective-anc-130008844.html

これはアップルのハードウエア担当Kate Bergeronとマーケティング担当Eric Treskiがインタビューで語ったものです。
それによるとAirPods 4のフィット感の監視のためのアルゴリズムの延長にあるようです。アップルによればそのリアルタイム監視機能はH2でなければ実現できなかったとのこと。また実のところイヤーチップなしの外音取り込み機能の方がさらに難しかったということです。これは外音取り込みの場合にはレイテンシーがより重要になるからのようです。また内側マイクとドライバーが干渉しないような工夫も必要だったとのこと。
以前クアルコムがアダプティブANCの発表をした際に、イヤフォンがズレて装着されていてもそれを補完する形でANCを効かせられるという説明をしたことがありますが、それに近いのではと思います。いずれにせよアダプティブ機能の延長ではあるのでしょう。
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2024年09月17日

ヘッドフォンもマルチBAも鳴らすスティックDAC「L&P W2Ultra」レビュー

これまでこのブログではLUXURY&PRECISIONのスティックDACをいくつか紹介してきました。「W2」,「W2-131」,「W4」,「W4EX」です。
LUXURY&PRECISION(LP楽彼)は中国のオーディオブランドで、はじめはHeadFiなど海外マニアックフォーラムで人気を集めていましたが、2018年からサイラスが国内でも扱いを始めました。

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W2UltraとHD800 (液晶にHD800設定が表示されている)

今回紹介するのはW2-131の後継機である「W2Ultra」です。W2-131とDAC構成は同じくシーラスロジック製「CS43131」のデュアルですが内部回路の再設計や特注パーツの新規作成、追加機能などがあります。
まずW2Ultraの特徴はハイパワーを可能にして鳴らしにくいヘッドフォンにも対応したことです。

W2Ultraの製品情報のページはこちらです。
https://cyras.myshopify.com/products/w2ultra

* W2Ultraの特徴

まずヘッドフォンへの対応ということですが性能面で言えば、W2Ultraの最大出力は32Ω負荷時890mWを実現しているということなので、スティック型DACながら据え置きアンプに近いくらいのハイパワーを出すことができます。だいたい1W(1000mW)くらい出力があれば据え置きなみと言って良いと思います。
これはデータシートに載せるためだけの瞬間ピーク値ではなく機器の持続的で安定した真の駆動力を重視しているということで、800mW持続可能高出力アンプを搭載するほかに特性の大型ヒートシンクも採用しています。小型ながらコンパクトな据え置きアンプのような設計です。
かなり電力を消費するようですが、PAV±6V時に60分の再生ではスマートフォンのバッテリーは4%程度の消費ということです。

ヒートシンク.png
W2Ultraのヒートシンク

しかしながらW2Ultraのポイントはハイパワー版という特別モデルではなく、あくまで応用範囲が広がったという点です。つまり単に「パワー番長」のようなスティックDACではなく、様々なイヤフォン・ヘッドフォンに対応できるスティックDACということができます。
ハイパワー版というと今まで上手く相性があった高感度マルチBAには今度は合わなくなるような印象を受けますが、W2Ultraではそれを設定の多様さを活かして解決しています。

それを実現するためには出力先に合わせたいくつかの設定を組み合わせて最適なイヤフォン・ヘッドフォンを使い分けることができます。
例えば従来からある「ゲイン切り替え」、そして新しい機能のイヤフォンとヘッドフォン向けに電圧を最適化する「PAV切り替えモード」、特定のイヤフォン/ヘッドフォンの特性に合わせたサウンドスタイルに切り替えられる「SDF切り替えモード」があります。SDFは従来からありましたが、ゼンハイザーHD800、FOCAL Utopiaなどのヘッドフォンが加わっています。LP楽彼ではSDFとHigh Gainを組み合わせるとフラッグシップ級ヘッドホンですら完全に駆動するとしています。

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W2Ultra

このほかにも曲に応じたTUNE01、TUNE02のカスタム設定も継続して搭載されています。LP楽彼ではTUNE01ではより広がりのある音で人の声を特徴とする楽曲に最適、TUNE02は精巧な音で交響曲や複雑な楽曲に最適としています。わたしの受けた印象としてはTUNE01は音に着色感がなく広がりのあるハイファイ系・モニター系の音で、TUNE02はやや温かみがあって密度感のあるリスニング寄りの音に感じます。試聴は主にTUNE01で行いました。

* 実機インプレッション

大きさやサイズ感は以前のW2/W4シリーズとほぼ同じで、外観デザインと操作性はW4譲りのものとなっています。前機種に慣れているとマニュアルを読まずにも操作できますが、設定項目が増えています。
パッケージも同じですが同梱品からライトニングケーブルがなくなっています。これはライトニング端子の制限および電流の不安定さがW2Ultraの本来のスペックを十分に発揮できず、接続の想定外となったためということです。

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まずゼンハイザーHD800を使用してみました。(設定 SDF:HD800 Gain:High PAV:6.0V)
たしかにW2Ultraの駆動力は高く、鳴らしにくいハイインピーダンスのHD800を軽々と鳴らしているのが分かります。単に音量が取れるというのではなく、軽々と駆動しているようで苦しそうな歪みも重苦しさもありません。HD800の性能と個性を十二分に引き出している感じです。
ジャズヴォーカル曲のウッドベースのピチカートはBAイヤホンのように繊細で細かな鳴りが楽しめ、ヴォーカルは鮮明で声質の細かいところまでよく聴くことができます。空間表現も奥行き感があって立体的です。低音の打撃力もきちんと制動がきいていてタイトでかつ鋭いアタック感です。またHD800はわりと低域がフラットで軽めですが、そういう感じがなくパンチのある量感たっぷりの音楽が楽しめます。
小さなDACから出ているとは思えないようなパワーが出ているのがわかります。目を瞑って目の前のスティックを見なければ優秀なアンプで駆動しているように思える感覚です。

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W2UltraとHD800

ここで試しにSDF設定を「HD800」ではなく「Normal(汎用)」にしてみると音量は取れていますが全体的な整った音が減退して少し雑に感じられます。SDFの設定をもどすと高性能アンプから出ているようなとても高い整った音質レベルに感じられます。またこれも試しにPAV設定を4.5Vにすると音が少し薄く軽く感じられるので、やはり6.0Vの方が良いようです。
HD800の独自端子に合う4.4mmケーブルがなかったので3.5mmで試聴しましたが、これでも相当満足できるレベルです。おそらく4.4mmで聴くとさらに素晴らしい音質になるでしょう。

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W2UltraとWHITE TIGER

次にマルチBAイヤホンであるqdc「White Tiger」を4.4mmで試聴しました。(設定 SDF:Normal Gain:Low PAV:4.5V)
これまで同様に解像力は高く、弦楽器の鳴りが細やかでリアルです。音の切れ味の鋭さ、周波数特性のフラットさ、歪みが少ないすっきりとした音の端正な感じもW2/W4と同系統であり、LP楽彼のDAPにも通じる音作りだと思います。フェイキーやFRIED PRIDEのようなシンプルなヴォーカルとギターデュオの音で音質の高さの本領を聴かせてくれます。
PAV設定を6.0Vにするとゲインと違って音量は変化しませんが、音に力強さが加わります。好みの部分もありますが、適正でいうとやはりマルチBAイヤフォンにはPAV:4.5の方が繊細な音を取り出せる感じがあって良いと思います。

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W2Ultraと3T-154

次にダイナミック型で駆動力が必要なiBasso「3T-154」を4.4mmで試聴しました。(設定 SDF:Normal Gain:Low PAV:6.0V, TUNE02)
3T-154では線が太く重みのあるダイナミックドライバーらしさをたっぷり味わえるような濃厚なサウンドを楽しめます。ウッドベースも鳴りっぷりがよく聞こえます。3T-154ではTUNE02にするとより雰囲気のある温かみが楽しめます。
また3T-154ではPAVを6.0Vにすることでより力強いパワフルな音が楽しめます。これはなかなかよく3T-154の良さを引き出しています。音もより端切れがよくパンチの強さが向上します。かなり相性の良い設定だと思います。PAV:6.0Vで聴いてからPAV:4.5に戻すと物足りなさが感じられます。
ちなみにゲインを変えると音量自体が大きくなりますが、PAVだと音量は変化せず力強さが変わります。

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W2UltraとW2-131(左)

前モデルのW2-131とマルチBAイヤホンのWhite Tigerを用いて比較試聴しました。W2-131の設定はSDF:Normal Gain:Lowです。
W2-131でも同じ設定にするとパッと聴きにはほとんど同じ音質と感じます。少し詳細に聴き比べるとW2-131の方が少しおとなしい感じで、ややW2Ultraの方が解像力が高いようには感じます。特にハイパワーだからW2Ultraではホワイトノイズが大きいと言うこともないと思います。
いずれにせよW2-131で感じたハイエンドのマルチBAイヤフォンとの相性の良さと言うのは、設定さえ変えればW2Ultraでもそのまま引き継がれていると言うことが言えると思います。
そう言う意味ではW2Ultraが特別なバージョンではなく、W2-131の後継機に当たると言うのは正しいと思う。以前のものはきちんと引き継がれた上で、さらにハイパワーのヘッドフォン対応がなされているわけです。

* まとめ

W2Ultraは音の傾向は従来を踏襲していますが、パワーと音のカスタマイズの自由度が格段に向上したモデルです。W2Ultraのポイントは単にヘッドフォンに特化したのではなく、設定によりさまざまな種類のヘッドフォン・イヤフォンにむいているということです。ハイエンドヘッドフォンが鳴らせるようになったと言っても、従来相性の良かったマルチBAイヤホンとの相性がなくなったわけではありません。イヤホンで使ってもまったくこれまで同様に使えます。ハイパワーすぎてイヤホンではボリュームの調整が難しいということもありません。

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イヤホンでもハイエンドヘッドフォンでも使用できるだけではなく、イヤフォンもマルチBAとダイナミックで音を変えて最適な音を引き出せます。ハイエンドヘッドフォンをスティックDACで楽しみたいというユーザーだけではなく、自慢のダイナミックドライバーイヤフォンをきちんと鳴らしたいというユーザーにも向いています。マルチBAイヤホンとはいままで通りに相性は良いので、色々な種類のイヤホン、ヘッドフォンを所持しているマニアのユーザーに一番向いているといえるでしょう。特にHD800ユーザーで手軽にHD800を楽しみたい人には特におすすめだと言えます。

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2024年09月10日

AppleがAirPodsを刷新、AirPods Pro2にOTC補聴器モードを搭載

日本時間9月10にAppleの恒例の発表会があり、iPhone 16/16 Proと共にAirPods 4が発表されました。
AirPods 4ではH2が搭載され、ANC採用のモデルもラインナップされています。カナルタイプではなく、オープンイヤータイプでANCが入ったのはポイントかもしれません。音響部分や装着感にも手が入っています。
なおAirPods Maxはカラバリが増えてUSB-C化されましたが、USB-C化はEU要求で必須ですので最小限度のみということのようです。この辺の匙加減には売り上げも影響しているのかもしれません。

今回注目点はAirPods Pro2に(OTC)補聴器モードが搭載される案内があったことです。国制限がありますが、日本にもこの秋にアップデートで提供されるようです。
Appleでは「聴覚の健康をサポートする体験」と呼んでいますが、これはつまり噂されていたAirPods Pro2のOTC補聴器モードです。
リリースでは「軽度から中程度の難聴が認められる方向けに処方箋不要のヒアリング補助機能」がAirPods Pro2に追加されるとありますが、この説明はアメリカにおけるOTC(Over The Counter)補聴器の説明と同じです。ちなみにOTC補聴器はアメリカの法に基づく呼称なので、Appleのようなグローバル企業では言い方は変えるでしょう。

ここ2-3年でアメリカからの情報では完全ワイヤレスイヤフォンを巡る話題に補聴器が絡むことも多くなっていました。この背景としてはアメリカで2022年の8月に米国FDAが医療従事者(オーディオロジストなど)の関与しないOTC補聴器が認可されたことが理由です。OTC補聴器とは店頭販売が可能な補聴器のことです。それまではアメリカでは補聴器の購入にオーディオロジストの処方箋が必要でした。
これによって軽度から中程度の難聴者にとっては従来よりもかなり安価に補聴器が入手できるようになったわけです。これは全米人口の15%に関係するというのでかなり大きな市場の話になります。
OTC補聴器は本格的な補聴器に比べるとかなり安価ですが、完全ワイヤレスイヤホンに比べると価格を上げることができます。

実際に世界的にはオーディオメーカーと補聴器メーカーが協業する動きが近年進んでいます。例えばSONOVAに買収されたゼンハイザー、ソニーもデンマークのWS Audiologyとの協業で業界参入をしています。JAVARAもすでにOTC補聴器を市場導入しています。
これは流通や互いの分野のノウハウの問題でどうしても協業体制が必要となるからのようです。

このようにOTC補聴器と完全ワイヤレスイヤホンの相互関係も注目したい流れの一つと言えます。
もともとLE Audioも補聴器をワイヤレス化するために低消費電力化しなければならないのでBluetoothオーディオ機能にBLEを適用するというところから始まっていますから。

アップルのアナウンス
https://www.apple.com/jp/newsroom/2024/09/apple-introduces-airpods-4-and-a-hearing-health-experience-with-airpods-pro-2/
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2024年08月30日

新機軸を投入したiBassoの高性能DAP「DX260」レビュー

本記事はiBasso Audioの新製品DX260のレビュー記事です。
その前に簡単にiBasso Audioとポータブルオーディオの歴史を振り返ります。

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DX260とCampfire Fathorm

わたしはiBasso Audioの製品は2007年のiBasso D1から使っていますが、これはポータブルヘッドフォンアンプに初めて本格的なDACが搭載されたことで当時は画期的な製品でした。それだけではなくD1は2007年当時からMCU (Micro Controller Unit)を入出力コントロールに使用するなど先進的な技術を搭載していました。そしてiBassoは大型だったD1をよりコンパクト化したD10でこのカタチを進化させ、iPodとアンプ二段重ねのポータブルオーディオ世界を牽引していきます。
次に画期的だったのは2012年のDX100で、これは今で言うハイレゾDAPです。これはAndroidをOSに使いながらもAndroidの制限であるミキサーをバイパスしてハイレゾ再生を可能とし、当時最新だったDACであるESS ES9018の性能を引き出しています。これがDX260の直接の先祖にあたります。このAndroidのミキサーバイパス方式は今は普通ですが、iBassoが先駆けで極めて先進的で画期的なDAPでした。
このようにiBassoは10年以上もこのポータブル業界を牽引してきた会社で、先進的でかつマニアックなメーカーです。

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iBasso D10(左、2009)とiBasso DX100(2012)

そしてDX100の最も進化したものが最新作のDX260そしてDX180です。両者の違いは簡単にいうとDACの種類・数と価格で、それぞれDX240、DX170の後継機にあたります。
この他にiBassoにはMAXラインモデルがありますが、MAXラインが物量投入型の直球勝負のフラッグシップであるのに対してこのDX260/DX180は最新技術を投入したラインナップです。
すでに述べたようにiBasso Audioはこの分野では常に先進的な技術を導入する会社で、DX260、DX180もその例外ではありません。DX260、DX180を外見からパッとみるとカジュアルなDAPのように見えますが、その実はかなり高度な機能を内に秘めています。

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DX260とPathfinder

* DX260の特徴

1. 8基のDAC ICを組み合わせた高音質設計、ディレイパラレルの採用とアナログFIRフィルター

DX260はシーラスロジックのフラッグシップDACチップのCS43198を8基搭載しています。しかしDX260のポイントは数ではなくその使い方です。iBassoらしくFPGAとの組み合わせで8基のDAC ICをピコ秒レベルでデータ送信を制御、従来的な「シンクロナス・パラレル出力」に加えて新しい「ディレイ・パラレル出力」を可能としています。

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ディレイパラレル図
それぞれのDACの波形のギザギザの部分が重なり合ってスムーズになっています


DX260での特徴は「ディレイ・パラレル出力」で、これはDACチップの出力を少しずつずらしながら合算する方法です。これにはDACチップをグループ化するためにx2とx4のモードがあります。(DX180ではx2のみ)
これは出力波形のギザギザになっている部分を重ね合わせることで滑らかにする効果があります。こちらはiBasso開発に「ディレイ・パラレル出力」について聞いたコメントです。
"Delay-parallel is our FIR filter. You can imagine that several identical waveforms with a little delay are superimposed. As a result, the analog signal is more accurate and smoother."
(ディレイパラレル は当社のFIRフィルターです。 少し遅延した複数の同じ波形を重ね合わせることを想像してください。その結果、アナログ信号はより正確で滑らかになります)

言い換えるならば、デジタルカメラに最近よく搭載されているピクセルずらしによる超解像出力に似ているかもしれません。ただしiBasso開発に「これは解像力(resolution)を向上させるものですか」と聞いたところ、"resolutionというのはデジタルでの概念ですが、この機能はいわばアナログ領域のものです"と返答が返ってきました。この辺りが本機能をアナログFIRフィルターと呼んでいるゆえんかもしれません。つまり「ディレイ・パラレル出力」という機能はあくまでアナログでの音をスムーズに改善する機能ということのようです。

iBassoでは最大4基までの「ディレイ・パラレル」により、ハードウェア・アナログFIRフィルターを形成し、複数のDAC間の差異を無くすことで性能を向上させると書いています。DX260ではこうした機能によりSN比が最大133dBと驚くほどの性能を実現しています。

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DX260とFathorm

2. Androidのミキサーのバイパス、および独自OSの切り替え方式の採用

DX260は基本的にAndroid 11をそのまま使用したDAPで、ストリーミングを再生したいときにはApple MusicやAmazon Musicなどのアプリをそのままインストールできます。またのちに述べますが、USB Audio Player ProやNeutronなどマニアックなAndroidらしいアプリもインストールすることができます。ローカル音源の再生にはMango PlayerというiBassoの音楽再生アプリがプリインストールされていてすぐに使用できます。
基本はAndroid端末そのものなので、例えばDX260のマニュアルをダウンロードしてAdobe readerをインストールして開くことができます。SNSアプリをインストールすればフィードで流れてきた気になる曲をそのままクリックしてすぐ良い音で聴くことができます。

ただしAndroidをそのまま使う時にはAndroid 14以降の「ロスレスUSBオーディオ」機能を使用しない限りはミキサー制限のためにハイレゾ・ロスレスでの再生はできません。そのためにiBassoでは冒頭で書いたようにDX100からそれをバイパスする仕組みを有しています。DX260でももちろんミキサーをバイパスできるのでハイレゾ・ロスレスで出力できます。

この件についてどのようにしてロスレス出力を実現しているのかをiBasso開発に聞いてみました。
"We modified Android's mixer, audio flinger, and audio hardware abstract layer. Android's SRC issues have been resolved since DX100"
(Androidのミキサー、audio flinger、オーディオハードウェアアブストラクトレイヤーに手を加えています。こうしてAndroidのSRC問題はDX100以降解決されています)

解説するとミキサーはDAP上で使われる音源のサンプルレートを一つに変更するソフトのこと(でないとDACに送れない)、audio flingerとはAndroidにおける基本音声システム(Core Audioのこと)、ハードウェアアブストラクトレイヤー(通称HAL)は音をドライバーに送る前段です、

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これによりMango Player以外のApple MusicやAmazon Musicアプリでストリーミングを再生する時にもAndroidのミキサーをバイパスしてハイレゾ・ロスレス音源を再生できると開発は言っています。こうしたOSに近い仕組みに手を加えたからでしょう。

そしてDX260はMango Playerと同じ操作感で使用できる独自OSの音楽再生専用OSのMango OSがインストールされているので、Androidと切り替えて使うことができます。ただしMango OSではWi-FIとBluetoothは使えないので、多機能が使いたい時はAndroid、音質を重視したいときはMango OSと切り替えて使うことができます。

* インプレッション

DX260の魅力の一つはサイズ感です。大きさの割には軽く、それでいて金属のシャーシの高級感を感じるデザインが採用されています。標準添付のケースは透明のスマホケースのような樹脂製で、高級感はありませんがとても実用的です。大きさが適度でシャツの胸ポケットやジーンズの前ポケットにも入れることができます。
ボリュームのトルク感は軽めですがクリックはしっかりあって回しやすい設計です。設定で画面が消えている時は回らないようにすることができます。ボリューム付近の整備用の背面パネルがメカらしく、デザインのポイントになっています。

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バックパネル

ユニークなのは付属品にエージング用のケーブルが入っていることです。エージングケーブルはインピーダンスを持ったケーブルで、実際にイヤフォンを接続しなくてもエージングができます。実際にイヤフォンを繋ぐと音漏れがするので便利に使えると思います。推奨エージング時間はメーカーによると200時間ということですが、私は50時間ほどエージングしてから聴き始めました。
電池の持ちが良いのも特徴で、エージングしてる時に測ったら連続で13-14時間ほど持つようです。

まず透明感の高いCampfire Audio Fathomを用いて聴き始めました。AndroidのMango Playerで初期設定です。エージングなしでまず少し聴いてみましたが、いきなり透明感の高い鮮烈な音が出てきたのでちょっと驚きです。
それからのエージングには付属のエージングケーブルを使ってみたんですが、エージング中に音漏れがしないのは良いですね。エージングの進み具合も良好に思えます。エージングを進めると粗さが取れて滑らかになっていく感じです。

DX260の音は、中高域の鮮烈なほどのクリアな鮮明感と低域のパンチの強さの気持ちよさがまず特徴的です。音調はニュートラルで着色感がなく、いつもの少し暖かみのあるシーラスロジックの音ではなく無着色のESSの音のように感じられます。というかCS43198の音というよりもAKMやESSの最上位機種のような音です。この辺はマルチDACの効果かもしれません。
透明感の高さは印象的なほどで、とても細かい音が聞こえます。SN比が極めて高い感じです。音像が鮮明でくっきりはっきりとしています。くっきりはっきり系に振り切ったような鮮烈でクリアなサウンドです。研ぎ澄まされた日本刀のような切れ味で、このSN比の高さは価格帯を超えた音質だと思います。

中音域のヴォーカルの歌詞はかなり明瞭に聞こえ、どちらかというと女声の方が得意だと思います。
高音域は突き抜けるようにシャープに伸びていく。金属が擦れる音のシャープさはあまり聴いたことがないほどの鋭さがあるけれども、それほどきつさは感じられません。高音域のベルの音が澄んで美しいので歪み感も少ないと思う。
とてもワイドレンジで低域は深く、低音はタイトでパンチが鋭く重いのでロックでも思わず聴き入ってしまいます。DX260の低域は解像感のある質の高い低音を楽しむスピード感あるスリリングな低音再現が楽しめます。
音場が立体的で昔のロックを聴いても音に奥行き感が感じられる点も良いです。

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DX260とFathorm

* イヤフォンを色々と変えてみる

次にいろいろとイヤフォンを変えて聴き比べてみました。

Campfire Audio Pathfinder
オールBAのFathomと異なりハイブリッドモデルです。
ハイブリッドらしく低音がうなりを上げ、かなり迫力があります。少しモニター寄りだったFathomとの組み合わせよりもさらにリスニング寄りの音に感じられ、低音のパワー感が一層感じられます。DX260のアンプ部分のパワーもかなりあると思います。ジャズを聴くとギターの端切れがとてもシャープで気持ち良い。元気があるサウンドです。
音の広がりがやはり立体的で、奥行き表現に長けていて空間が感じられます。

qdc White Tiger
2EST+6BAモデル。プロ御用達のqdcブランドらしくモニター的で原音忠実的に聞きたい時に向いた組み合わせです。低域もよくコントロールされて全体に明瞭感が高く、スピードがあります。低域も深くパンチがありますが、Pathfinderよりは抑えめとなります。

iBasso 3T-154
15.4mm大口径シングルダイナミック。例えると暴れん坊の3T-154をうまく慣らしてテームしているという感じです。低音は弛まずうまくコントロールしています。ミドルゲインにするとより暴力的なパワフルさが再現できます。男声の時はダイナミックモデルがより合うかもしれません。
ちなみに付属ケースの端子の切り欠きは3T-154の太めの端子のサイズに合わせたようで、ぴったりと装着できます。

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DX260とFathorm

DX260自体はフラットでニュートラルかつアンプのコントロール力もあるので、イヤフォンの個性を引き出しています。イヤフォンを変えることでモニター的に聞きたいか、リスニング的に聞きたいかを選べます。
強いてあげるなら、DX260に向いているのはハイブリッドかマルチBAモデルです。BAの音のシャープさを特にうまく引き出すDAPと言えます。


* Androidモードで音楽アプリを色々と変えてみる

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Androidモード、Mangoプレーヤー画面

DX260の基本的な使い方は、Androidモードで標準のMango Playerを使って内蔵メモリやSDカードの音楽を楽しみます。また、そうしたSDカードなどローカル音源を聞きたい時はMango OSモードにするとさらに音質よく聴くことができます。しかしMango OSではWiFiやBluetoothが使えないのでストリーミングを聞きたい時はAndoidモードにしてApple MusicやAmazon Musicをインストールすることになります。

DX260はAndroid OSモードにしている時はGoogle Playストアが使用できるAndroid11端末と同じなので、多彩なアプリをインストールできます。標準でインストールされている「アプトイデ」も3rdパーティーのアプリストアです。またAmazonも独自のアプリストアを持っています。いろいろとアプリを変えて楽しめるのがAndroidの良い点ですが、その自由な分でリスクもあるので注意は必要です。

まずストリーミングを楽しめたい場合には「Apple Music」や「Amazon Music」のようなストリーミングサービス純正のアプリをインストールできます。

Apple Musicアプリ
Apple Music.png
Apple Music画面

画面も広く操作感も軽いので、スマホを使っているのとさほど変わらない感覚で使用ができます。搭載しているSoCはSnapdragon660なのでミドルクラスのスマホなみです。スマホと比べると少し画面が狭くて本体の厚みがある感覚です。画面はスマホよりは小さいものの、フォントも見やすく画面遷移も十分に早いと感じます。ストリーミング用としては文句ない使い勝手だと思う。

Amazon Musicアプリ
Amazon音質画面.png
Amazon Music音質設定画面

Amazonアプリはやや遅く感じますが、これはアプリの問題だと思います。Amazonのアプリはなんでもアプリ内に入れるので重いのですよね。
オーディオ品質を見ると96kHz/24bitの曲はデバイスでも96/24でデコードされているので、先に書いたように3rdパーテイーのアプリによるストリーミングでもハイレゾ対応がなされているようです。
音質も良く、クラシックでのフルートや楽器の音色がとても正しく再現されているように感じられます。

Bandcampアプリ
これは私がいつも新曲をチェックするために使っているインディーズ・マイナーアーティスト用の配信サイトです。これも十分に使用でき、かつiPhoneとは違ってこのアプリから直で買うオプションが見えているのはオープンなAndroidらしいところです。

またAndroidの魅力は自由度が高いことなので、オーディオマニア向けの音楽再生アプリも選べます。例えば高音質に振ったマニアックな「Neutron Player」や、多機能な「USB Audio Player Pro」です。多機能という点では「PowerAmp」アプリなども定番ですが、オーディオマニア向けというのとはちょっと違うかもしれません。

Neutron Playerアプリ
Neutronハード.png
Neutronプレーヤー、オーディオハード画面

これは高音質に特化したアプリでAndroidのMango Playerよりも高音質で再生できるように思います。再生タブで64bit処理、リサンプリングでオーディオファンモードを選んでおくと良いと思う。
前に使っていた時よりもDAPの性能が上がっているせいか、より音が良くなっているように思いますね。より音が細かく濃く聞こえます。
上のようにハードウエア画面でARMアーキテクチャの隣に+NEONと表示されてあればそのプロセッサではNEON対応しています。NEONとは音楽データのような大量データを高速に処理するための専用部分です。DX260ではNEON対応されています。
Mango Playerとはまた異なる高音質が楽しめるので、切り替えて使ってみるのもよいかと思います。

USB Audio Player Pro(UAPP)アプリ
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USB Audio Player ProのTIDAL画面

通常Android(Android13まで)はミキサー制限でハイレゾ・ビットパーフェクト出力ができませんが、アプリ側で独自のハイレゾ・ロスレス出力ができるようにしたアプリです。
以下はDX260での設定の例です。
設定→「内部オーディオドライバ」=ハイレゾダイレクトドライバ(DAP内蔵DACを使用)
設定→「ハイレゾドライバ」→「ビットパーフェクトモード」=オン

またUSB Audio Player Proアプリ内でRoonやAurdivanaのようにTidalとQobuzを呼び出すことができます。
TIDALアプリは日本ではGoogle Playストアではダウンロードできないので、TIDALをAndroidアプリで聞きたい時に使えます。またTIDALを聴きながらUAPPの機能もフルに使えます。MQAデコードもできますが、TIDALはMQAを廃することを決めたのであまり意味がないかもしれません。さらにuPnP(DLNA)サーバーの音源も再生できるなど多機能な音楽再生アプリです。

このようにAndroidでアプリを変えて音質を変えたいとか弄っていきたいというときに、iOSにはないAndroidらしさが楽しめるので、iPhoneユーザーがDX260を買うと新鮮な楽しみ方ができると思います。

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DX260とPathfinder

* 音質設定での音質変化を楽しむ

設定変更はゲイン、デジタルフィルター、FIRモードなどが変更できます。デジタルフィルターはDACのデジタルフィルターを変更することで、これは他のDAPでも可能です。
DX260独自なのはFIRモードです。これは特徴のところに書いたマルチDACの使い方を変更するモードです。FIRモードをnormalからx2、x4と変えていくと音が滑らかになり、より濃くなっているように思います。x4からNormalに戻すと音が軽く硬めに感じます。やはりx4がもっとも音質が良く感じられます。

* Mango OSモードに変更して音質変化を楽しむ

DX260ではAndroidの他にiBasso独自のMango OSという軽量OSが搭載されています。音質設定や使い方はMango Playerと同じで戸惑うことはありません。他のアプリは動かないMango Player専用のOSモードみたいな感覚です。ただしBluetoothやWiFiサポートもないので、ストリーミングはできません。単体でSDカードや内蔵音源などローカル音源を楽しむ時のモードです。

音質はAndroidモードのMango Playerよりも、Mango OSモードの方が鮮烈でちょっと驚くほど鮮烈な高い音質を味わえます。Androidモードから一枚ペールを剥がした感じです。
FIRモードの差もMango OSの方がより違いが分かります。Mango OSモードでFIRのx4モードの音質は価格以上の性能を感じさせると思います。

* USB DACモードを使う

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USB DACモードでの使用例

DX260はUSB DACにもなります。注意点はこのときケーブルに関してはOTGではなく、通常のUSB-Cデータケーブルを使用することです。iBassoの開発によると、DX260においてUSB-DACとして使用する際には、USB SLAVEとして認識されるのでOTGではない普通のUSB-Cデータケーブルを使用するということです。
USB DACモードを使うにはプレーヤーの設定画面から切り替えて使用します。特徴的なのはこの時に充電するかどうかを選択できることです。充電しないにするとノートPCと接続する時はノートPC自体のバッテリーを使わないでDX260側のバッテリーを使うことができるので、ノートPCでもバッテリーの持ちを気にせずに使用できます。DX260自体がコンパクトなのでMacbookと合わせてもそんなに邪魔にならずに使用できます。
音質もかなりレベルの高いものです。MacのAudio Midi画面を見ると384kHz対応のようです。

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macOSのAudio MIdi画面

* Bluetoothレシーバーモードを使う

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Bluetoothレシーバーでの使用例

iPhone 15 Pro MAXと接続してみました。接続自体は普通のBluetooth機器と同様に簡単にペアリングすることができます。レシーバーとしてのコーデックはAACとSBCのみとなります。
音質もそれほど劣化を感じせずに使うことができるので音質も十分に実用的です。ただしDX260本体がストリーミング可能で多機能なので出番は少ないかもしれません。


* まとめ

DX260は第一に鮮明でクリアな音が堪能できるDAPです。パンチがあって躍動感のある点も良いと思う。
そして第二にとにかくモードが多く使い出があるDAPです。デジタルフィルターも多彩、Androidでアプリを変えたり、Mango OSモードもあるのでものすごく多彩な音質オプションが選べます。もちろんこの他にイコライザーも使えます。ノートPC側の電池を使わないUSB-DACにもなりますし、Bluetoothレシーバーとして使用すればWi-Fiやテザリングのできない環境でもストリーミング再生が使用できます。SPDIFがついているのもD1から知ってる私にとってはiBassoらしい感じはします。その点でぶれてないですね。

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DX260とFathorm

そしてDX260の良さは圧倒的な音質の良さとサイズ感がうまく組み合わされているところです。最近は完全ワイヤレスイヤフォンの進化で有線イヤフォンの出番が減る傾向にありますが、その中でもDAPを持ち出して使いたいという気にさせてくれるDAPといえます。わかりやすい鮮烈なサウンドで、完全ワイヤレスでは到達できないレベルの音質を明示することで、有線イヤフォンの有意さを示しています。サイズ的には日本の事情に即しているDAPのように思います。やはり手持ちの有線イヤフォンを高性能DAPで活かしたいけど、DAPが重いと持ち出すのに躊躇するという方にはおすすめです。
posted by ささき at 09:24 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年08月22日

JBLが液晶UIでAuracast対応のTour Pro 3を発表

JBLのケースに液晶画面搭載の完全ワイヤレスイヤフォンシリーズでTour Pro 3が海外発表されました。
注目点はこれがJBLとしては初の完全なAuracast機能を備えているという点です。
スマート充電ケースのディスプレイのAuracastボタンを使用して、Auracast対応デバイスとオーディオコンテンツを簡単に共有でき、ケースと付属のアプリをタップするだけで既存のブロードキャストに参加できるとあります。

これがなぜ注目かというと、以前アスキーに書いた記事でAuracastアシスタントの記事を書いたのですが、それが実際にTWSのケースで実現されたからです。
TWSはスマホからの伝送を受けるのが常識ですが、Auracastでの大きな変化はそれがスマホ外からの伝送をTWSで受ける点です。しかしTWSには画面がないので複雑なUIを持てません。そこで代理でUIを提供するのがAuracastアシスタントです。

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Auracastアシスタント概念図

Auracastアシスタントはスマホのアプリが提供することが普通ですが、もちろんスマホでなくても構いません。そこでJBL Tour Pro3ではケースの画面がそのUIの役割を果たしているようです。下の画像はJBLホームページの画像ですが機内映画を見ている人がJBL Tour Pro 3で

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さらに画面を拡大すると、液晶にはAuracastボタンの他に、BluetoothアイコンとAuracastアイコンが描かれてその切り替えができるという点に注目できます。
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Auracastアシスタントではチャンネル選択の他に、まずスマホから聴いているのか(ユニキャストモード)と、Auracastのブロードキャストモードを切り替える必要があります。そうでないとストリーミング音楽を楽しんでいるTWSを、電車内のAuracast放送に切り替えることができません。
こうしたユニキャストとブロードキャストの切り替えが実際に実装されているのを見るのは興味深いことです。
ちなみにTour Pro 3では従来機種よりも30%画面が大きくなっているとのこと。

実際にTWSがAuracast対応されたと言ってもそれが使えなければ意味がありません。こうして実用的な機能を見るとAuracast普及に一歩近づいた感があります。


JBLの製品ページ
https://news.jbl.com/en-CEU/239681-enjoy-everywhere-entertainment-with-jbl-tour-pro-3-leading-the-next-generation-of-tws-earbuds
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2024年08月21日

xMEMSがMEMS空冷ファンを発表

xMEMSがMEMS技術を応用した空冷ファンを発表しました。
https://xmems.com/press-release/xmems-introduces-1mm-thin-active-micro-cooling-fan-on-a-chip/

このxMEMS XMC-2400 μCoolingチップはおそらく熱くなる一方のスマホの空冷に使われるのではないかと思えます。MEMSはチップなので、SoCやCPUとの実装の相性がよいでしょう。MEMSベースなので超薄、静音でCPU/SoCの冷却ができるというわけです。
同種のファンに比べると96%もコンパクトということです。
あと特筆すべきは超音波技術を使用したxMEMSサイプレスと同じ製造プロセスのようです。サンプル出荷は2025/Q1とのこと。

IMG_4031.png IMG_4032.png
(xMEMSホームページより)

公開された動画を見ると、チップでチップを冷やすMEMS空冷ファンの様子がわかりやすいと思います。サイズ的には10mmx7mmなのでSoCよりもやや小さいくらいですね。



posted by ささき at 12:33 | TrackBack(0) | ○ ポータブルオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする