Music TO GO!

2013年03月22日

lessloss audioのSDデジタルプレーヤー Laminar

lessloss audioが最近開発していたデジタルプレーヤーの構想図みたいなものが乗ってました。
http://www.lessloss.com/laminar-streamer-a-48.html
これはLaminarというSDカードを使ったデジタルプレーヤーです。
面白いのはOSにはLinuxも使わないでaudiophile operating systemを一から書いたっていうところです。
クロックにはオーディオと同じクロックを使用して、サンプリングレートに応じてシンクロするように設計してるとのこと。これによってジッターのない滑らかでアナログ的な音にすると共に、起動時間0.1秒を達成するということです。Tera Playerのデカイ版?
ちょっと面白そうです。ただし24Kgということでポータブルではありませんので念のため。
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2011年09月02日

Auraliti PK90の新機能とLinuxのインテジャーモード

この前の記事でPK90のWAV再生の問題を書きました。

IMG_9225b.jpg

もともとこの問題はLinuxの現在のALSAドライバーの不具合に起因するようですが、これを解決するためにPK90では新機能を追加すると言うことです。簡単に言うと2つの動作モードを設定画面(初期Webページ)から切り替えることができるようになるようです。実際まだ出来てないようですが、これを仮にモード1、モード2と呼びます。違いはALSAの出力インターフェースで、モード1ではhwインターフェース経由でDACに出力して、モード2ではplughwインターフェースで出力するということのようです。

ちょっとわかりにくいので、もう少し詳しく解説します。
まずALSAというのはLinuxの音声システムのひとつです。LinuxはMacやWindowsのCoreAudioのように単一ではなく、OSSとかALSAのように異なる音声システムを持つことができます。ここでいうのはALSA(Advanced Linux Sound Architecture)についてです。
ALSAではDACなどのデバイス(ALSAでいうcard)に対してデータを送るときにいくつかのインターフェース(転送モードみたいなもの)を指定します。たとえばhwとplughwです。hwを使用した場合はDACにたいしてデータの改変なく(つまりダイレクトに)データを送出します。その代わりDACで扱えるデータのタイプをプログラム(再生ソフト)側で気にする必要があります。plughwを指定したときはALSAシステム側でなんらかの処理の後にデバイスに送出されます。たとえばデバイスが扱えないデータタイプを変換してくれますのでプログラムから見るともっと手軽です。
*ALSA programming basics

これらのインターフェースの使用例に関してはこちらにMPDに関して興味深い記事があります。
http://www.computeraudiophile.com/content/New-mpd-feature-cleaner-signal
ここで書かれているのはVer1.6のMPDから32bit小数点を介さずに直接24bit整数(S24_3LE形式)でドライバーに渡す機能が付いたと言うことが書かれています。ここでいうS24_3LEはWavelengthのProtonとかで使われているDACネイティブ形式と言うやつです。つまり小数点変換を介さずにDACネイティブ形式の整数(インテジャー)でオーディオデータをDACに送ることができます。
うちのブログを見ていてくれる方にはなんとなくピンとくるかもしれませんが、これはMacのプレーヤーソフトで言うところの「インテジャーモード」に似ていますね。Linuxにも似たような概念があってMPDではそれを使用できるというわけです。そこでこれを仮にわかりやすく「ALSAのインテジャーモード」と呼びます。
(この辺はBeyond Bit-Perfectをご覧ください)
この「ALSAのインテジャーモード」を使用するさいにはダイレクトに送るわけですから上に書いたようにhwインターフェースを使用する必要があります。問題はWAVを再生したときにここでエラーがおこると言うことです。
解決策としては上のCAスレッドにあるようにplughwを介してデータをいったん整数から小数点形式に変換するとエラーを回避することができます。つまりplughwインターフェースを介することによってWAVも問題なく再生できますが、先に書いたhwでの「ALSAインテジャーモード」のダイレクトアクセスのメリットは消失してしまいます。

どっちかを選べと言われると困るところもあるのでAuralitiでは先に書いた設定画面のWeb上から切り替え可能にするということです。
つまり機能的に書くと次のようになります。

モード1(hw) : FLACしか再生できないが、「ALSAインテジャーモード」で出力可能
モード2(plughw) : WAVもAIFFもFLACも再生できるが、余分な小数点変換が入る


PK90ではモジュールの差し替えかまたはネットでの書き換えでアップデートすることができます。(ネットでの書き換えはポートを開ける必要があります)
この辺今作業中ということでまたなにかわかったらレポートします。
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2011年08月03日

Auraliti PK90 - 簡単セットアップのLinux MPDサーバー

以前LinuxベースのミュージックサーバーであるAuralitiについて書きましたが、そのUSB DAC向けバージョンを購入しました。Auraliti PK90です。

pk90a.jpg

簡単にいうとAuralitiは従来のプレーヤーにあたるもので、AuralitiではFile Playerと呼んでいます。楽曲は外部ストレージに格納して、PK90であればUSB DACを接続して内蔵されたMPDというソフトで楽曲を再生します。PK100ではDACが内蔵されてアナログ出力とSPDIF出力が出せます。
前バージョンのPK100についてはこれらの記事をご覧ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/134545851.html
http://vaiopocket.seesaa.net/article/188282504.html

Auralitiのサイトはこちらのホームページです。
http://www.auraliti.com/Auraliti_Home.html

1. Auraliti PK90とは

PK90はPK100からJuli@を外して代わりにSOtMの低ノイズUSBカードをつけたものです。下の画像の背面の拡張カードがSOtM tx-USBです。これは日本でも販売しています。

pk90b.jpg

PK90は基本ソフトにはLinuxを採用しています。そのディストリビューションはVoyage MPDの改造版と言うことです。Voyage MPDについては以前下記に記事を書きました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/168303975.html
ただしVoyage MPDがベースですけれども手を加えているとのこと。現行のVoyage MPDとはもう分岐されたバージョンに近いんじゃないかと製作者は言ってます。USBはオーディオクラス2対応です。

Voyage MPDベースだとAlixなんかも安くて良いかもしれませんが、こちらはより本格的にオーディオに対応したハードを持っているといえるかもしれません。価格も$600(いまだと45000円くらい)とSOtMのUSBボードがついていることを思えば値段的にもお得です。
マザーボードは下記のものでAtom N270向けです。
http://www.intel.com/products/desktop/motherboards/D945GSEJT/D945GSEJT-overview.htm
これは一般PC用というよりもむしろ工業用途のボードだそうで信頼性は高いと言うことです。大きさは写真と手を比較してもらうと分かりますがコンパクトです。電源はユニバーサルの外部電源です。

pk90c.jpg

対応フォーマットはFLAC、WAV、AIFFです。試してませんがMP3も大丈夫だと思います。
ただ現バージョンはハイレゾのFLACはオーケーだけどハイレゾのWAVが再生出来ないという既知の問題がありますが、これは修正できると言うことです。

基本的にはローカルのUSBポートにUSB HDDかUSBメモリーキーを接続して音楽ライブラリを格納します。接続はリードオンリーでマウント(OSと接続)します。
なおNFSはサポートしていますが、Sambaはサポートしていないということです。USBバスにはキーボードもマウスもぶらさがってないのでクリーンではありますね。
ファンレスで静音というより無音です。オーディオには向いてます。使ってるとわずかあったかくなります。ディスクもSSDなんかが良いでしょうね。

なおカートからは海外は買えないので欲しいひとは直接メールしてください。送料こみの値段でPaypalのinvoiceをくれます。

2. セットアップと使用方法

面倒臭いと言われるLinuxとMPDですが、PK90はセットアップはとても簡単です。Linuxの知識はまったく不要です。MPDの知識も不要です。というかLANさえ設置されてればパソコンの知識もほとんどいりません。iPhoneが使える程度でオーケーです。インストールはあらかじめされていますし、初期セットアップも極めて簡単です。

まずPK90にUSB DACを接続します。標準ドライバーのものが良いでしょう。
MPDはクライアント・サーバータイプのシステムなのでネットワークケーブルを接続します。これはコントロールのためです。既存の家庭内LANに入れてください。
USB HDDかUSBメモリーキーに音楽データをいれておきます。
次に電源をつなぐと中でパイロットランプが点きます。前面のパワースイッチを入れるとスイッチが青く点灯します。
これでブートしますので、一分くらい待ってください。

次に同じネットワークに接続されているPC/Mac/iPhone/iPadなどでブラウザを開けます。IEでもFirefoxでもなんでも可のはず。(ネット接続はBonjourを使用するのでWindowsではまずBonjourをインストールしてください)
アドレス欄にhttp://auraliti-player.localとタイプします。

pk90d.gif

するとAuralitiに接続されて上のように初期画面が現れます。
これでPK90側の設定は終わりです。
初期画面にはipアドレスなどの情報があるので必要ならばそれを使いますがiPhone/iPadでは基本使いません。Androidアプリからだと必要かもしれません。

MPD(Music Player Daemon)は音楽サーバーです。Daemon(デーモン)はUnix/Linuxの世界のサービスとか常駐プログラムのことです。そこで、MPDではコントロールするクライアント(子機みたいなもの)が必要です。この辺はDLNAでのLINN DSとPlug Playerの関係にも似ていますが、先の記事で書いたようにMPDはDLNAではありません。
MPDのクライアントはたとえばWindowsやMac、iPadやiPhoneなどです。これらにMPDクライアントソフトをインストールしておきます。
なおPK90のビデオ端子からはGUI画面はでません。

pk90c.gif

ただPK90ではNeoMPCというブラウザベースのクライアントが付属してきます。上の画像はNeoMPCのものです。そのためクライアントのインストールも不要となっているのが使いやすいところです。NeoMPCは上記の初期画面からNeoMPCのリンクをクリックすれば立ち上がりますのでとっても便利です。NeoMPCもiPad/iPhoneのSafariでも使えるのでこれだけでも無線LAN環境ならリモートでコントロールができます。
ちなみにNeoMPCの情報は下記のリンクにあります。
http://code.google.com/p/neompc/
NeoMPCはPHPとJavascriptで記述されているようです。

つまり最低限PK90だけで使うことができますが、もっと便利なのはiPhoneでMPoDアプリを使ったり、そのiPad版のMPaDをiPadで使う方法です。
iPhone用のMPoDアプリはこちらです。
http://itunes.apple.com/jp/app/mpod/id285063020?mt=8
iPad用のMPaDアプリはこちらです。
http://itunes.apple.com/jp/app/mpad/id423097706?mt=8
下の画像はMPaDアプリ(iPad)です。タッドさんのnamaですが、アルバムアートも出てますね。

IMG_0029.PNG

下の画像はMPoDアプリ(iPhone)のものです。

IMG_2617.PNG     IMG_2619.PNG

MPaD/MPoDも基本的にはネットにあれば自動的に接続されるはずです。ちょっとまってから設定でAuraliti Music Playerというコネクションが出てくるのを確認してBrowseしてください。
おかしくなったら設定からupdate databaseとかclear local cacheなどやると良いでしょう。cacheをNoにする手もあります。

音はクリアで鮮度感が高いという印象です。最小限のミニマムシステムならでは透明感ですね。また引き締まって贅肉がないという感もあります。とても素晴らしい音質です。
電源はAudioPrismのフィルタリングタップから取ってますが、電源ケーブルをオーディオ用のものに変えると音になめらかさが出てきます。ノイズが取れるんでしょうね。これに合うリニア電源もちょっと物色中です。

AuralitiはLinuxとかMPDっていうむずかしさを上手に隠蔽して高音質と手軽さを両立していると言う感じです。オーディオ再生だけのためにWinかMacの一台追加を考えてるひとにはAuralitiという選択もお勧めです。
posted by ささき at 23:58 | TrackBack(0) | __→ ソース機材・PCプレーヤー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年12月30日

UMPCオーディオプレーヤー

USBで十分な音質が確保できるとなると、既製品のノートPCみたいなものでも静粛性や拡張性を考えると専用のPCトランスポートに負けないのではないかという考えが出てきます。Auralitiみたいなデバイスは小さいノートPCで十分ではないかということですね。
一方でいわゆるPCトランスポートといわれてる製品がいくつも出ていますが、結局は専用機といいながらも管理や操作でマウスと液晶ディスプレイをつけるんだったら、普通のPCとの接点はどこか、という疑問も出てきます。

オーディオ的な意味で電源のノイズ特性とかシャーシの振動特性などもPCに求めて突き詰めるならばPerfectWave Transportみたいなアプローチのほうがより有利なわけです。OSもLinuxベースのほうが有利でしょう。
ただしPCオーディオの柔軟性を考えた場合、普通のWindowsノートをそのまま使うという利点もまた多くあります。たとえばWiFiまでは専用機でも使用できるものが多いかもしれません。しかし固定的なWiFiに対して、WiMaxのような新しいものが出てきた場合、専用機がまたそれに対応させるのはメーカーの作り直しが必要になります。ノートPCならばモジュールを指すだけでユーザーが即日対応できます。

そこで既製品のPCを使用して専用機的な操作性を確保しつつ、PCとしての柔軟性を生かすアプローチをちょっと考えてみました。

umpc3.jpg     umpc1.jpg

ひとつのキーはタッチパネルUMPCとさきの記事で書いたCMP2と組み合わせて専用機の操作性を確保することです。オーディオインターフェースはUSBで外部のみとして出力先と運用の柔軟性を確保します。USBオーディオインターフェースはhiFaceのようなUSB-SPDIFコンバーターを使えばトラポになりますし、ProtonのようなUSB DACであればプレーヤーとなります。
これで静粛性、利便性、そしてハイサンプリングに対応した高音質、ネットワーク接続性を確保しています。

15-17インチクラスのノートだとオーディオにあわせるのに大きすぎるかと考えて、ポータブルでの使用も考慮してコンパクトな7インチクラスにしました。ケーブルが伸ばせれば手元でも操作できます。またCMP2は7インチLCDを持ったHTPCに特化していますので相性を考慮しています。
ProtonとのUSBケーブルは標準のものではなく、フルテックのGT2です。オーディオ用USBケーブルについてはまた別に書きたいと思います。

使用したのは工人舎の7インチUMPC(ウルトラモバイルPC)です。
余談ですがネットブックというと12-13インチLCDくらいで普通のノートPCだけどプロセッサが低価格版で安さ重視のもの、という感じだと思いますので、こうした10インチ以下のコンパクトさを重視したタッチパネル機はUMPCということになります。たとえばAtomプロセッサを使っていてもそれを低価格のためと捉えるか、小型にするためと捉えるかで違いはでるかもしれません。
さらに小さいネットウォーカーのようなものは最近はMID(Mobile Internet Device)と呼ぶようですが、この辺はiPhoneも含めてスマートフォンと重なります。

スペックは下記のようなものです。
Intel Atom Z520(1.33GHz) 、1GBメモリ、60GB HDD、WiFi内蔵、タッチパネル7インチ液晶、重量約800g
ちなみにアウトレットストアで39800円で買いました。hiFaceとなら合わせても6万円弱というところでしょうか。

軽量なので電源不要のProtonと組み合わせて、下記のような究極のモバイルオーディオ的なものもできます。ポータブルとは思えない、なんていう形容詞を良く使いますがここまでくるとホームシステムそのものです。

umpc2.jpg

CMP2の運用で若干問題あるのがワークフロー(運用手順)の観点です。
CMP2+HTPCでは、内蔵ドライブが必須で、EAC(Exact Audio Copy)でRIPすることが前提です。そのときにCUEファイル込みのワークフローを想定しています。
EAC->WAV+CUE->CMP2という感じですね。cPlayはジャンルなどのタグ付けされたメタデータは読んでいないようなので、この辺が厄介な点ではあります。

もちろんfoobarなど一般のプレーヤーを使うこともできます。ただフォントのサイズ等は工夫が必要ではあります。
使ってみると普通のPCとしての速度には問題ないのですが、foobarとCPU食いのSecret Rabit Codeを組み合わせたときに音切れが出る(デスクトップ機のCore2では出ない)ので、処理性能はやはり小さいなりというところかもしれません。Atomもワープロや一般アプリの立ち上げなど、演算よりもディスクI/Oに律速されるような場合には、あまり遅いという気はしませんが、DSPなどの演算系の処理をさせるとCore2などとの差は歴然とでるように思います。
オーディオプレーヤーというと画像処理とか動画処理に比べてそんなにパワー使わないようにも思いますが、リアルタイムで処理するというのはなかなかパワーを使うものです。そのため良い音質という点でもそれなりのCPUパワーは必要だと思います。
cPlayの音質はかなり良いものですが、やはりせっかく用意されているアップサンプラーを効果的に利用したいものです。このシステムでもSoXは大丈夫ですが、Secret Rabit Codeだと上記のようにうまく動かせません。ただしfoobarの場合は多少詳細設定をチューニングする必要があります。
この辺はトレードオフでもあり、さらなる試行錯誤が必要ではあると思います。
このほかにもデスクトップPCに外付けのタッチパネルディスプレイをつけて使うこともできるでしょう。
CMP2もいろいろと応用できるものではあると思います。


Asyc USBやUSB-SPDIF DDC、Edition8(ハイエンドヘッドホン)など、ある意味で今年のオーディオトレンドをまとめてみた試みでもありますが、また来年もどういうものが出てくるのか楽しみではあります。
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2009年12月03日

Auralitiとネットワークとオーディオ

RMAFの記事で紹介したAuralitiは11月リリース予定と聞いていましたがまだリリースされていません。現在の状況がちょっと分かりませんが、前に書いた記事以後にわかったことをここでまとめておきます。
その結果として前回の記事からはいくつか訂正が必要です。(まえの記事はこちら)

まずAuralitiとはなにかというと、従来のオーディオシステムに176kHzや192kHzといったハイサンプリング音源の再生を可能にするためのプレーヤーに当たるソース機器です。
機能的に見るとAuralitiはハイサンプリング音源に対応したDACからのアナログ出力を取り出すことができ、デジタル出力によりトランスポートとしても機能します。楽曲ファイルはUSB接続する外部ハードディスクに格納します。後述しますがネットワークについては直接DLNA対応のNASとつなぐ機能はなく、コントローラーとの接続のためにWiFiを使います。iPod touch/iPhoneはコントロールに使いますが、iPod内の楽曲を再生することはできません。

デバイスとしてみるとAuralitiはLinuxベースでサウンドカードを装備したコンピューターを利用したオーディオデバイスです。もしオーディオに特化したコンピュータをトランスポートとして設計するならWindowsをベースにするよりUnix/Linux系のほうが有利なのでしょう。サウンドカードはLinuxとの親和性という点でJuli@が選ばれていたと思います。

ポイントとしてはAuralitiはLinux上でMPDサービスが動作することで音楽プレーヤーとして機能します。MPDとはMusic Player DaemonのことでLinuxで動作するオーディオ用のサーバープログラムです。Daemon(デーモン)はUnixにおいて常駐動作するソフトウエアのことで、Windowsでいうサービスのことです。MPDは楽曲を管理して再生したり、コントローラーと通信する機能があります。
前の記事でLINN DSのような、とも書きましたが、実はAuralitiはこれらの点でDLNA準拠のLINN DSとは異なります。

たとえばDSもAuralitiもiPod touch/iPhoneで操作が可能ですが、DSはDLNAが採用しているuPnPプロトコルに対応したアプリ(Music Player, Plug Player)を使用します。それに対してAuralitiではMPD対応のアプリ(MPoD)から操作します。
(ちなみにオーディオコントローラーとしてのiPhone/iPod touchという意味ではこのほかにリモート端末のVNCを使う手もあります)

Auralitiは前回書いたようにウエブ画面でコントロールするというのではなく、あくまでMPD対応のiPhoneアプリ、またはMPD対応のPC/Macソフトウエアから操作するようです。なおAuralitiはそれのみではUIを持たないため、こうしたコントロールのためのクライアントが必須です。
このようにネットワークという点で見るとAuralitiはDLNA対応ではありません。これはちょっと混乱するところですが、ネットワークオーディオの世界はDLNAだけではないということです。

DLNAはガイドラインのようなものです。たとえばL社のネットワークプレーヤーが楽曲ファイルを再生するためにB社のNASから楽曲の一覧表を取得しなければならないとします。そのときにどうやりとりしましょうか、それではuPnPというプロトコル(手順)を使いましょう。という会社間での取り決めガイドがDLNAです。
それにたいして、AuralitiではMPDの世界の取り決めでそうしたデータのやり取りが行われます。そこでいったんDLNA(uPnP)の世界に行くにはゲートウエイとも呼ぶべき仲介者が必要になります。そのため独自のNetworkサーバーを用意しているようで、そのサーバーはDLNA対応です。つまりDLNA対応のNASなどとは
Auraliti<--(MPD)-->Network Server<--(DLNA)-->NASなどのDLNA機器
という接続になるのでしょう。

DLNAのベースとなっているuPnP(ユニバーサル・プラグ&プレイ)はマイクロソフトの規格です。それにたいしてMPDはLinuxベースなわけですから、オーディオの世界でもマイクロソフト対Linuxのような対立の構図を引きずるのでしょうか。
オーディオがPCの世界に寄っていくということは思っていた以上にさまざまな影響をはらんでいるのかもしれません。
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2007年02月15日

ハードディスク・トランスポートを考える

ここでハードディスク・トランスポートというものを少し考えてみたいと思います。
本来は今年の夏休みの自由研究にしようと思っていたんですが、広範囲なテーマなので少しずつやっていきたいと思います。

CDトランスポートとは普通のCDプレーヤーからDACを除いたものと考えてよいと思います。つまりデジタル出力に特化したものです。もちろんIKEMIのようにアナログ出力もデジタル出力もついていて両方使えるものもありますが、単におまけについているのではなくそれなりの性能を持っているものを普通はCDトランスポートと呼びます。
HDトランスポートは後述するようにさまざまな形が考えられますが、ハードディスクに格納された音楽データをデジタル出力できるものです。(なお本稿ではPCオーディオはひとまずおいて専用機をまず考えて見ます)
つまりDACからみれば双方の違いはありません。

まずHDトランスポートのCDトランスポートに比べた利点は大きく二つあります。
ひとつは選曲の簡便さ、操作性です。またここに付け加えるならば曲名の取得やダウンロード配信に対応したネットワークとの親和性も重要です。
もうひとつは不安定なCD板の回転によらないため、安定したデータストリームを供給可能でビット落ちやジッターの点で有利という音質面の利点があります。
つまりHDトランスポートの利点を生かすためには、インターフェースが優秀でかつデジタル出力品質が高くなければなりません。

ここで整理するためにHDトランスポートに類するものをタイプ別に分類してみます。
ここではオーディオ的な観点から見たHDトランスポートとしての専用機を中心に見てみます。

1 静音PCを応用したもの

Ikeon PCM-S1 http://www.ikeon.co.jp/pcm_s1.htm 
オンキョー HDC 1.0 http://www.jp.onkyo.com/hdc_1_0/
Zero One Ti48 http://www.zerooneaudio.com/
(他にはデジタルアンプで知られるeARのMusic 3Dもありますが詳細不明です)

これらはいわゆる静音PCを応用したものですが、S1に見られるようにノイズや騒音に対してかなりオーディオに特化した選別が行われています。また筐体もオーディオラックに収められるようになっています。
そのかわり中身を見るとPCそのまま、インターフェースも別に液晶モニタが必要であったりします。逆に言えばソフトウエアの柔軟性は高いといえます。
HDC1.0とTi48はリモコンだけでも操作できます。

2 PC/Macとは異なるアーキテクチャ

Olive Musica/Opus, Rondo(Nokia)
http://www.olive.us/p_bin/
これはPower PCベースでLinuxを使った専用機でPCとは異なります。
インターフェースは前面パネルを使ってにDAPのUIのように操作する方法のほかに無線LANを応用したPC上でブラウザを使った操作も可能のようです。さらにこれを拡張してNokiaのPDAを使って無線LANでNokiaとリンクすることによりあたかもリモコンのように操作することができます。
またミュージックサーバーとしての側面も大きく、PCにストリーミングしたり子機を配することが出来ます。
DACを内蔵しているのでアナログでも取り出せますし、Vinnieさんが改造したバッテリー駆動タイプもあります。

Escient FireBall
TVにメニューを出力します。FireBallはシリーズの名前ですが、これはどちらかというとAV志向が強いようです。
ネットワークドライブとしてマウントできて、専用ソフトでPCからもストリーミングできます。しかしこれ自体はWiFiを待っていないようです(有線のみ)。

またこの2のタイプは1に比べるとソフトウエアの柔軟性に欠け、高音質圧縮(可逆)フォーマットはたいていFLACのみです。iTunes Music Storeで買ったプロテクトAACは再生できないなどの制限もあります。
しかし一番の問題としては日本語のサポートがされていないことです。ただしOliveについては聞いてみたところ、計画には入っているとのこと。

3. そのほか

iMSBLink
iPod(システム)をHDトランスポートとするもので、別記事にて紹介しました。
PCに依存せずにポータブルとホームシステムを統合できるところが魅力です。

**

このほかにiMSBLinkの記事で比較用にAirMacを使ったように、オーディオシステムとPCを融合するため、PCからオーディオに接続する際のハブとなるものもあります。

これはオーディオ/DACへは有線・無線LAN経由で送るものです。PC/Mac上にはそのためのストリーミングソフトが必要です。
よく使われているのはAirMac Expressですが、他にも日本で知られているのはSqueezeboxと、その高級版のTranspoterなどもあります。
これらでストリーミングを受けてDACに同軸もしくは光で接続します。またはこれらにDACが内蔵されていてアナログ出力を提供します。


これらの必要性は人それぞれの環境と考え方によると思います。
たとえばiMSBLinkなんかはPC側の視点で見ている人は必要性を感じないかもしれませんが、オーディオ側から見ている人は我が意を得たりと思うひともいるでしょう。また、ストリーミングタイプがいいと思う人もあれば、やはりラックに入れたいと思う人もいるでしょう。

いずれにせよキーの一つは無線LANの整備にありそうです。ただそれをストリーミングに使うか、CDDBとか曲のブラウズだけに使うかということでもまた選択とトレードオフはあると思います。

2007年02月13日

iMSBLink - ハードディスク・トランスポートとしてのiPod

1. iMSBLinkとは

わたしがよく使っているRed WineのiModはiPodを高品質なCDプレーヤーとしました。シグナルパスの短縮と高品質なBlackgateコンデンサーの追加で音質は向上しましたが、iPodの内蔵DACであるWolfsonに音質が縛られます。

これ以上の音をiPodから取り出すには、iPodをさらにトランスポートとして使いデジタルで出力して外部DACを利用するしかありません。これならばDAC次第でいくらでも音質が向上できます。
しかし、そのキーはいかにiPodからSPDIF形式でデジタル信号を取り出すか、ということです。
実はiModのVinnieさんもこれに関して研究をしていました。しかしiPodからデジタル信号を取り出せるというところまでは解析しているのですが、それは独自形式であって音声信号とクロックを標準形式であるSPDIFにしないとDACが理解してくれません。このSPDIFで取り出すというところが高いハードルだったわけです。

ところが最近MSBから発表されたこのiMSBLinkシステムはそれをクリアして、かつかなりレベルの高いシステムにしています。
ただしポータブルのシステムではありません。iMSBLinkシステムはiPodをハードディスクトランスポートにしてしまうというものです(はじめ名前はiLinkでしたがiMSBLinkに変わるそうです)。

iMSBLinkのメーカーの紹介ページはこちらです。
http://www.msbtech.com/products/iLinkDetail.php

imsblink1.jpg          imsblink2.jpg

本体は上の写真のように一見すると普通のiPodドックですが、背面にデジタル出力端子があります。また後述しますが、右の写真のiPodドックに装着しているのがiPodをリモコンとして使えるRFインターフェースです。写真は後述の試聴環境でのものです。

iMSBLinkの背面には上記リンクページの画像にあるようにAES/EBU、同軸、光のデジタル出力端子がついています。使うときはこれをトランスポートとしてPS Audio Digital Link IIIのような単体DACにつなぎます。

これを実現するためには、まずiPodからデジタル信号が取り出せるように改造をします。この改造ではなんらiPodの機能をそこなうことはないようです。iPodのドックはなかなかに奥が深いようで未使用のピンをiMSBLink用のデジタル出力にアサインしているようです。
しかしこのままではSPDIF形式ではないので、外部ドックでそのデジタル信号にクロックを付加しSPDIF変換を行ってデジタル出力します。そのため外部ドック(これがiMSBLinkの本体)が必要です。ドックには同軸と光のほかにAES/EBUのデジタルバランス端子まで備えられています。トランスポートなのでアナログ出力はありません。

実のところiMSBLinkが真にすごいのは(というか病的なこだわりなのは)単にデジタル出力できればいいだろう、というのではなくそれをかなり高度なレベルで実現したというところです。
MSBはアメリカではわりと有名なハイエンドDACメーカーで以前からむこうのオーディオファイルの間では知られていました。
この外部ドックにはそのMSBの数千ドルするトランスポートと同じ高精度のクロックや0.5秒のバッファ、そしてフロントエンドのSHARC DSPなどのハイエンド機材が使われていて、一般的な低価格のiPodドックとは一線を画しています。
それがiMSBLinkを単なる色もの的な製品ではなく、真にハイエンドコンポーネントに組み込むことのできる可能性ある存在にしています。

このように内部的にはかなりハイレベルですが、外観と使い勝手からみるとiMSBLinkは単に普通のiPodドックにデジタル出力がついただけです。またiPodも改造してももとの機能はそこなわれません。これはシステムの柔軟性という意味ではかなりメリットがあります。
つまり同じiPodを外ではポータブルで聴いて、家ではiMSBLinkを使って家のオーディオで聴けるわけです。
またiPodのドックに専用のRF送信機をつけてまるでリモコンのように使うことができます。このため家でも手にiPodをもって外で聴くように自由に選曲ができます。


実のところデジタル領域でのiPod/iTunesシステムの可能性はなかなか高いようで、デジタル出力をうまく作りさえすればビットパーフェクトの出力を得ることができるとのこと。
ハードディスクトランスポートというと最近オンキヨーでもPCのシステムを発売しました。このようにハードディスクトランスポートというと静音PCの応用がまず頭に浮かびますが、iMSBLinkはHDトランスポートはさまざまな形になりうることが可能だということを教えてくれます。
音楽がMP3の圧縮フォーマットであれ、96k/24bitのCDを越える高音質フォーマットであれ、これからネット配信の形に移行して行くとこうしたインフラとしてのHDトランスポートも必要となっていくでしょう。
また選曲の利便性だけではなく、CDのように不安定なポリカーボネート板の高速回転に頼らない安定した読み出しによる高品位なデジタル出力が期待できます。

問題は価格が高いことです。システムでは$2349もします。
http://www.sound4sale.com/
サイトを見るといくつか選択がありますが、わかりにくいのでここは解説が必要です。$1995というのは一台のiPodの改造費とドックの価格です(自前のiPodが必要です)。$199は追加するiPod一台当たりの改造費です。iPodは第5世代の80GBと30GBのものが可能です。
始めから改造されたiPodと外部ドックのセットは$2349になります。
日本ではイーディオさんが取り扱うようです。


2. iMSBLink 試聴レポート

神楽坂のイーディオさんはER-4を初期に手がけたことで知っている人も多いと思います。CESで発表されたシステムを見てさっそくデモ機を持ち帰ったそうですので、試聴させてもらいました。

試聴はCDトラポと聞き比べる形で行いました。またAirMacを使った光リンクとも比べています。
使用した機材は次の通りです。

1) CDT CEC TL-2x (DACとはAES接続) *クロック改造しているそうです
2) iMSBLink (DACとはAES接続)
3) PC iTunesからAirMac (DACとは光接続)

すべてDACはMSBの同じものにつないでいます。MSBのDACはアメリカではわりと定評あるものです。アンプとスピーカーはイーディオオリジナルということです。
CDTとiMSBLinkはケーブルのつなぎかえ、AirMacの光(TOS)はDACのセレクタで変更します。

試聴は音そのものを確認するためギターとヴォーカルのシンプルな曲と低域方向をみるためにコントラバスの曲を使いました。実際にRIPしてもらい改造されたiPodにいれてCDと聞き比べます。これを何回か差し替えて試聴しました。

まずギターとヴォーカル曲ですが、システムの音になれるためしばらくCDTで聴いてからiMSBLinkに変えました。
iMSBLinkに替えるとまずヴォーカルが厚みをもって生き生きと聴こえます。全体にCDTがやや細めに思えますが、iMSBLinkは実体感があるというか豊かな音のテクスチャがあります。タイトなギターの切れ味を活かしながらより鮮度が高く生っぽく感じられます。CDTも音のコントロールは悪くはありませんが、聴いていて物足りなく感じます。ここは好みや曲もあるかもしれませんが、わたしはiMSBLinkの方が豊かで鮮度感がありかなり好印象でした。
AirMacはまず帯域が詰まった感じがして上に伸びる気持ちよさに欠けます。また全体に細いというより痩せている感じで、これはわたしは途中で聞くのを止めました。

そしてコントラバスの曲はiMSBLinkから先に聴きましたが、次にCDTに変えたところやはり物足りないという感じがします。ただ低音はCDTもなかなかよく制御しています。CDTもクロック改造しているそうで、そのせいもあるかもしれません。
AirMacでは音が膨らんでしまって、ちょっと前の二つとは差がつく感じがしました。ただロックなどで聴くと迫力あると思う人もいるかもしれません。

個人的にはiMSBLinkとCDTではiMSBLinkの方がよいと思いました。わたしは客観的に見てもiMSBLinkが上と思いますが、好みによるところもあるでしょう。CECは柔らかいといわれるベルトドライブの特性があったのでやや鮮度感にかけたと思ったかもしれません。
しかしDACならともかくトランスポートで音がこんなに違うというのは驚きます。
AirMacはさきの二つとは大きな差がついたと思います。AirMacに関してはテストしてみると悪くないところもあるようなのでシステムの組み方にもよるかもしれません。

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次にiMSBLinkとRF送信機のテストをしてみました。これは先の曲と合わせてiPodに入っている試聴用の曲を普通iPodを使っているように腰掛けながら次々と聴きます。ちなみに写真のRFモジュールは試作品で製品版はもう少しきちんとした形になるようです。
音的には気持ち甘くなるような気はしますが、音楽に聴き入っているとあまり気にならない程度です。それよりもiPodそのままの操作感で使えるというのは爽快で不思議な気がします。あまりに自然に使えるのでシステムの存在が消えてしまいますね。
ただしボリュームコントロールはiPodからできないのでそれを補うために別にリモコンが用意されています。ここだけ残念なところです。


正直言って音もシステムとしてもかなりいいとおもいます。わたし的には外ではiPodなので、外で聴いているiPodをそのまま家でもオーディオシステムに組み込んで高音質で使えるというのはなかなかに魅力です。いずれにせよ第5世代iPodはiMod改造ができないのでALOなどのドックを使うことになりますからね。
価格がもう少し安ければ物欲だけで即買いだと思いますが、iPod込みとはいえ30万だと他の選択があるというところを考えてしまいます。
たとえばVinnieさんが主張するOliveとNokiaのPDAの組みあわせならばほぼこのシステムと同じ音と操作性が確保できるかもしれません。きちんとした電源を持ったOliveのシステムならばより安定して低ノイズの高品質な音を期待できます。
ただしOliveとNokiaの組み合わせは日本語対応されていませんが、iPodベースならその心配はありません。またOliveはAppleロスレスが使えないので別のライブラリが必要になります。
それとAppleがiPodのAV機能を高めていくと純正でこうしたデジタルアウトがでるのではないかという推測はあります。ただしその場合はCDトランスポートと少なくとも互角以上というようなこだわりの高品質なデジタル品質を達成するということはないでしょう。
4月に出荷ということなので、ま、ちょっと考えモードです。