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2016年08月22日

完全ワイヤレスイヤフォン、fFLAT5 Aria Onレビュー

前に紹介したEarinにつづいて左右分離型の完全ワイヤレスイヤフォンであるfFLAT5 Aria Oneのレビューです。Earinで完全ワイヤレスという分野に興味が出てきて、これも買ってみました。

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* ドライバー

Aria OneはEarinとは違ってダイナミック型のドライバーです。この違いがそのままEarinとの音の違いとなります。
ドライバーは古川電工との共同開発で新しいタイプのPET素材を使用しているようです。

完全ワイヤレスの場合にはハウジング内に基盤・バッテリー等が入るためにエアフローの扱いが難しくないBAの方が向いているようには思います。ただスペースが限られているならシングルドライバーでカバーできる帯域の広いダイナミックが有利ともいえます。この辺も今後考えていくところですね。Aria Oneはハウジング下部にベント穴があります。

* スマホとの接続、左右ユニット接続

スマートフォンとの接続はBluetoothを採用、左右ユニット間の通信もBluetoothです。
前に書いたように左右ユニット間の通信は電波の通りにくい人体を挟むため、完全ワイヤレスではポイントになります。Earinでは壁面反射などの工夫がありましたが、Aria Oneではサラウンドアンテナ設計という頭を回り込む独自技術を採用しているという事です。詳細は分かりませんが、ここは筺体の大きさが幸いしているということもあるでしょう。

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実際に左右の音途切れはほとんどなく、Earinよりずっと少ないと思います。スマホと親機との音途切れもあまりないですね。iPhoneをバックパックに入れても、尻ポケットでも大丈夫でなかなか優秀です。手でかざすとさすがに切れるので、耳につけたままボタンを操作しようとすると切れることがあります。
ただ閉空間(地下鉄構内や電車内)にはいった瞬間にぶつっと途切れることがたまたまありますが、また復活します。あとは問題なくなります。ここはちょっと謎です。

BTのペアリングに関しては右(親機)とスマートフォンをペアリングさせてから、左(子機)と右ユニットをペアリングさせるというもので慣れないとやっかいではあります。親機との初期のペアリングは青の点滅ではなく青赤の早い点滅ですので注意ください。二回目からもこの左右同士の同期は必要です。Earinは左右のペアリングは自動なので便利でした。ただしW800BTもAria One同様のペアリングだったので、Earinが工夫していると言うべきでしょう。
ペアリングすると英語音声で知らせてくれるところもユニークです。(立ち上げ時に電池残量も音声案内します)

* 対応CODEC

APT-Xに対応していますが、なぜかAACには対応していません。ただし実質大きな問題ではないと思います。後述するように音質は問題なく良好です。

* チャージングステーション

チャージステーションへの合体は磁石のようでしっかりしてます。ちょっと残念なのはチャージステーションが(Earinに比べると)大きい点で、本体が大きいから仕方ないのですが、Earinだと店に入るときとかチャージステーションごとポケットに入れられる点がけっこう便利です。完全ワイヤレスの場合にはイヤフォンをケーブルでひっかけて耳や首から垂らしておけないので、一時的に格納する場所には意外と気を使います。

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チャージもボタンを押さないとチャージされません。(earinは自動というか勝手に始まる)。ただしこれは長短あって、わざと継ぎ足し充電したくないという場合もあるとは思います。
また充電中は左右ともLEDが光りますが、EarinだとLEDがまとめて一個なのでチャージステーションに片側だけはめそこなって、片側だけ充電されるということがありますので、当たり前でもこれは便利です。Aria OneだとイヤフォンごとにLEDがあるので片側充電は避けられます。

* ユニット側での操作

Aria Oneは再生/ポーズがサイドボタンで可能です。ここも完全ワイヤレスの場合にはコンビニのレジでちょっとイヤフォンを耳から外すということがしにくいので、こうした再生機能、またはAudio Transparencyなどの環境音ミックス機能が必要になると思います。Aria OneはAudio Transparency機能はありません。(KANOAやDASHが対応しています)

* 通話機能

Aria Oneはマイクが付いているので通話することが可能です。

* 外観と使用感

ここはEarinに比べると質感的にはいかにもプラスチックという感じでいまひとつです。
大柄ですが、フィットは割と良くてあまり苦になりません。イヤチップもこだわることがあり、それなりに音に影響しますが、いわばダイナミックの大味の音のためEarinほどチップにはうるさくないと思います。標準のラバーかコンプライも3種類ずつではじめはこれで十分だと思います。ただ私はJHAのラバーがぴったりなのでこれを使ってます。

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音量はたっぷり取れるので足りなくなることはないでしょう。使用の難点はLEDがうるさいことで、ここはオンオフスイッチがほしかったところです。
バッテリー残量は本機はBT4.0対応なので電池残量はiPhoneでは通知センターとステータスバーで分かります。本機では10%単位のようです。

それと完全ワイヤレスイヤフォンを使っているとわかりますが、ケーブルがないと絡みを解くこともなくケースやバッグから出すのがとても容易なので、使用頻度があがります。特にEarinやAria Oneのようにチャージングステーションが完備されていると出し入れが楽なので、その辺が面倒に感じることもありません。ただし前に書いたようにケーブルがないのでストアのレジや車内アナウンスを聞きたいときなどちょっとしまうのが難になります。このため、ケーブル付きのイヤフォンとはまた異なった運用がでてくるでしょう。

* 音質

Aria Oneでの音質はなかなか良好で、外観のプラスチックなチープさはすぐ忘れるでしょう。
ダイナミックだからEarinとは方向が違うけれど、ダイナミックらしいパンチのあるベース多い音が楽しめます。ベースが量が多いというより深みを感じます。
またAria Oneでは広がり感が独特で、ヘッドホンみたいなゆったりした音を感じます。うたい文句通りにドライバーの性能も高いと思いますが、スピーカーでいえばウーファーが前後に大きく振動して大量の空気を動かしているのが分かるという感じの音です。

また音自体も団子になりにくい程度には明瞭感があります。ただBAのEarinほどは切れがよく明瞭感が高いわけではありません。
それと結構良いと思うのは楽器音が歪みなくすっきりクリーンに聴こえる点です。なめらかで音楽的ですね。ヴォーカルも明瞭でベースが多いけど埋もれる感は少ないと思います。ただコンプライだとベース過多になりやすいかもしれません。
低域は十分な量感があり重い良い低音域で、ここはEarinよりさすがに優れてます。アタックやスピード感のあるEarinのベースも良いけど、やはり一般にはAria Oneのほうが迫力あって良いという人は多いでしょう。ただ全体的に上下の帯域レンジはやや狭い感はあります。

鋭角なEarinに比べると丸い音ですが、悪い意味での丸いとか鈍いというよりスムーズでなめらかというべきかもしれません。コンプライだと低域が強調されるけど、ラバー系でフィットできるものだと音のバランスは悪くないと思います。

* まとめ

製品としてみると、Aria OneはスマートなEarinに対し、泥臭いが確実に動作するという印象です。
Earinは機能も再生に特化してシンプルだし磁石でくっつく中箱とか随所に洗練されててアップル製品にならった感があります。Aria Oneは質実剛健、機能もそこそこ揃ってる点が良いと思います。
Aria Oneは外観がいま一つですが、音は満足感が高いと思います。接続の音切れが少ないのも良い点です。
Earinもケーブルがないせいで音質面でプラスもあるかも、た思いましたがAria Oneもそう感じる点もあります。この辺もちょっと注視していきたいところです。


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2016年07月13日

完全ワイヤレスイヤフォンの技術(1) - NFMI

左右独立した完全ワイヤレスイヤフォンを達成する技術の一つとして前回の記事で取り上げたBragi Dashに採用されたNFMIですが、その後少し調べてみました。
NFMI(Near Field Magnetic Induction)とは電波(RF)ではなく、電磁誘導を利用する技術のようです。ただし電波のように変調して情報を載せることができるのであたかも至近距離にしか届かない電波のように使えるということ。だいたい2m程度が限界でそれより外には届かないので逆にセキュリティの高い通信としても使えるそうです。
NFMIはFreeLincという会社の独自技術のようです。
http://www.freelinc.com/technology/

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(画像はFreeLincページから転載)

主に補聴器用に用いられていたそうで、歴史は長いということ。身につける携帯電話との中継機と耳のデバイスを接続するのに用いられるそうです(この場合は携帯と中継器はBT)。
球状に広がるのでまず人体で遮られるということはなく、水を貫通できるので水泳でも使えると言うこと。Dashならば内蔵4GBメモリがあるので、水泳に使える唯一のステレオイヤフォンとなるでしょう。もしかするとDashがNFMIを採用したのは左右の音切れというよりも、むしろ水泳とかエクササイズ的な側面からかもしれません(Dashは水深1mの防水)。
省電力にも向いているようです。またマルチチャンネル通信も可能ということ。もちろん電波ではないのでBTのようなWiFiとの干渉もありません。電車みたいにWiFi密度が濃いところでは特に良さそうです。
良さそうですが、弱点は情報量が少ないことでBT4.0の3Mbpsに対してNFMIでは596Kbpsと制限があるようです。

実際に海外のワイヤレスイヤフォンのフォーラムで聴いてみたところ、EARINのような右だけの音切れはDashではまず起こらないということです。ただしDashはiPhoneとデバイス自体の音切れが頻発するそうで、EARINではこれはあまりありませんから、製品としては長短あるということになりますね。また音質においてもEARINとDashをくらべるとEARINの方が良いと言う人がいたので、製品的な問題かもしれないけれども、もしかするとDashは情報量制限の問題でそうした弱点もあるのかもしれません。APT-Xを採用できないのもこの辺でしょうか。

総じて言うとNFMIは左右の音切れ対策には有効ですが、音質的には不利であるかもしれません。ただ製品数が少ないので今後この方式が使われることをちょっと期待して見ています。
また他の完全ワイヤレスイヤフォンであるKANOAは左右接続をBluetoothに独自技術を加えているということで、NFMI以外の取り組みもまだありそうです。
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2016年07月02日

左右分離型のBTワイヤレスイヤフォン、EARINレビュー

この前の左右分離型ワイヤレスイヤフォンの記事を書いていたら自分でもやはり試してみようと、いまさらながらEarinを入手しました。

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Earinはスウェーデンの会社によるワイヤレスイヤフォンで、Kickstarterでも成功を収めました。ドライバーはBAシングル(Knowles SR)です。
特徴はBluetoothを使用していて、左右分離型であり左右ユニットを結ぶケーブルを排したという点です。この辺は下記リンクの前回記事を参照ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/439219276.html
KickstarterのときはBTの分離型は面白いけど製品としての音質的にはどうかなあと見送りしたのですが、結果的にはやはりあのとき入れとけばよかったと思います。Kickstarterは玉石混交ですが、Earinはあたりですね。

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パッケージはいわゆるApple風というか北欧風というか、シンプルで感じのよいデザインで、中箱がマグネット閉じになっているのもアップルっぽさを思わせます。やはりスタートアップのお手本はアップルなんでしょうね。

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耳栓型ともいわれるEarinはさすがに小さく軽いと感じます。付属のカプセル(ケース)はモバイルチャージャーも兼ねていますが、価格にしては高級感もあります。

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このほかにiPhoneのアプリも用意されています。アプリではBluetoothでユニットと交信してバッテリー残量の確認、左右のバランス調整、低音増強ができます。スポーツに使う時には本体を耳たぶに固定しておけるラバーのスタビライザ(耳とめ)もついています。

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Earinの特徴としては簡単に使えると言うことです。左右ユニットはカプセルから出すと電源オンとなり、しまうと電源オフとなります。またカプセルに格納するとカプセルから本体ユニットに充電がなされます。カプセルは家で充電しておきます。本体もカプセルもフル充電に要するのは75分とのことです。
Earin本体はスペックでは2時間50分もつとされています(ステレオモード)。カプセルは2-3回のチャージができるので、カプセルと組み合わせることで一日の持ち出しには不都合のないように出来ています。実際に使ってみると通勤ではまず不便を感じないと言うか、思ってたよりも電池はもつ感じです。バッテリー残量はアプリから確認ができます。またこのベータカプセルのようなチャージング・カプセルに収めて使うと言うのがガジェット感覚をくすぐります。

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本体ユニットは基本的にはステレオモードと言って左右のユニットをペアでイヤフォンとして使いますが、モノラルモードがあって、片方だけをカプセルから出すとその片方とモノラルで再生ができます(ラジオとか)。これは左ユニットだけではなく右側だけでも可能です。これは左右通信をBluetoothにしている利点ですね。DashなどNFMIを左右間通信に採用しているとこれはできません。

はじめに使用するときには普通のBluetoothデバイス同様にペアリングが必要ですが、これは左とだけやれば済みます。(Earin Lと出ます)
私はiPhone6とAK380を使いました。EarinはApt-x対応です。ボリュームを上げて最大音量にするとプッと警告音が左から出ます。
モノモードで右だけの場合は右だけケースから取り出して、Earin Rとペアリングします。同時に二つ取り出していると自動的にEarin Lとのみペアリングします。

まず書いておかねばならないEarinの問題点はイヤチップの少なさです。
イヤチップは標準サイズラバーがひとつと、コンプライが二つはいってきます。しかしいまどきのイヤフォンの替えイヤチップとしては少なすぎます。Earinのレビューをみると低音不足とよく書いてありますが、その原因はこのチップの少なさだと思います。耳に合うイヤチップを使わなければ当然低音は漏れます。
また、これは北欧らしいというかEUらしいところですが、マニュアルなどを読むと意図的に小さいサイズのチップにして遮音性を下げて外の音が「安全に」聞こえるようにしているふしもあります。
おそらくガジェット的にEarinを購入するIT好きの人はこういうところは慣れていないと思いますので、小さいサイズを使って低音でないよということは多々あるでしょう。これは逆に言うと、たんまりとイヤチップを持っている私のようなマニア層はEarinを音質的に使いこなすことができると言うことです。イヤチップのサイズはCom,plyで言うとTS400で、外径は4mです(公式情報)。
耳に入れるときは少しひねってベスト位置を探すと良いように思います。基本はL/R文字が後方(背面)に来る位置です。

そしてEarinの良い点はやはり自由で快適なことです。
このプレーヤーとのケーブルがなく、さらに左右を結ぶケーブルもないというのはすごく快適です。私は前にゼンハイザーのMX W1も使ってましたが、これは装着性に難があり、そうした真の快適性というのはつかみにくかったんですが、Earinは慣れたカナル型であり落ちにくいし、ずれるのを気にする必要はありません。また電車でも使えます。とにかく軽く、上を見たり、横を見たりするたび、頭を動かすごとにいろんな面で自由さを感じられます。カバンを肩から外すときにもそうです。これは使わないとわからないと思います。

音は端的に言ってとても良く、思ってたよりも良いです。
特に立体感や広がりは独特の良さがあります。もしかすると左右ユニットの位相を何らかの方法で調整しているのかもしれませんが、あるいはケーブルがないことによるクロストークの低減やグランドを共有してない利点があるのかもしれません。そう思ってた方がケーブルレスのメリットがありそうで面白そうです。
そしてきちんと耳に合うチップを入れて、フィッティングをきちんとすると低音はシングルBAとしては十分以上によく出ます。けっこうパワフルでドラムやベースも良いです。すこしいろいろチップを試してみましたが、コンプライだとうまくはまると中低域はロックやポップで気持ちよくインパクトを感じられるくらいの低域レスポンスはあります。
イヤチップでは音茶楽スピンフィットやJVCスパイラルドットも試してみましたが、こうした工夫したイヤチップはなかなか音質を良くあげてくれます。Earinの方もそれだけ特性は素直だと思います。

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左:スピンフィット、右:スパイラルドット

シャープさや音の細かさはiPhoneで使う分には不満に思わないでしょう。音色は悪くなく聴きやすく、変にドライになりすぎない点は悪くないです。

ただクラシックみたいにレベルが低い録音だとちょっと音量が取れにくいかもしれません。ロックポップのコンブの効いた海苔波形の録音だと問題ありません。
またAK380だとAptxは認識しますけど、ボリュームが上がちょっと足りない気がしますね。またAK380のような高性能プレーヤーと組み合わせると、Earinの音質は物足りなさが出てしますいます。悪くはないけどやはりそれなり、シングルBAなりというところですが、iPhoneと組み合わせる分には相性もあるんでしょうがかなり良いと思わせます。音質レベル的にはその辺でしょうか。
別なデバイスとのペアリングはいったんカプセルにしまってからの方が良いかもしれません。

そしてやはり問題点というと右ユニットが音切れすることです。定期的に途切れる感じで、おそらくバッファにためてるデータがなくなると切れるという感じに思えます。実際に使ってみると右の音切れって思ってたよりはあまりないと思います。たまに思い出したように音が切れると言う感じです。途切れる時間はたいてい1-2秒以下だと思います。
ただしこの間隔がいまひとつ環境依存なのかが良くわからず、ないときは数曲に一回程度ですが、ある時はわりと一曲で2−3回途切れます。また右チャンネルがしばらく聴こえなくなり、落ちたかと思うと1-2分後に普通に復帰すると言うこともあります。この途切れているときに左ユニットを右ユニットの近傍に持ってきても復帰しません。電波というよりソフトウエア的な問題にも思えますが。。そしてEarinの装着中に手のひらで耳を覆うとやはり途切れやすくなります。
Wall Street jounalにあったような室外と室内の右音切れの差はあまり明白ではないように思えます。この辺はこのタイプの実験目的に買ったところも大きいので、そのうち左ユニットを右ユニットの見通しの取れるところに置いて長時間使ってみるとかやってみようと思ってます。

遅延はわずかにありますが、選曲時に少し気になる程度です。サポートページにはバッファリングにより0.5秒の遅延があるとされています。動画やゲームには不向きですが、VLCなど動画の方の遅延機能があるものは使えるかもしれません。

* まとめ

やはりケーブルの束縛から完全に離脱した解放感は格別のものがあると思います。それとガジェット感も味わえるのがEarinの魅力です。音質もシングルBAとしては悪くありません、というか結構良いと思います。iPhoneと組み合わせると十分良い音質で満足でき、とくにジャンルは選ばないと思います。
また右の音途切れはあるのである程度それが許容できる人にお勧めです。
しかし、問題点はフィッティングです。イヤチップによるところがすごく大きいというのが悩ましいところですね。と、伏線を張っておいて、、

Earinは国内版が下記リンクのフジヤさんのような専門店やAmazonで購入できます。
http://www.fujiya-avic.jp/products/detail95805.html


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2016年06月20日

左右独立型ワイヤレスイヤフォンのトレンドと秘密

最近のイヤフォンのトレンドのひとつとして、左右が独立したワイヤレスイヤフォンが数多く出てきていると言うことがあげられます。ケーブルレスでワイヤレスの自由さ、加えてiPhoneがイヤフォン端子をなくすという観測が後押ししていることもありますが、やはりEarinのヒットが要因でしょう。
Earinのほかにもさまざまな特徴をもった左右独立のワイヤレスタイプが出ています。スマートイヤフォンであるDash、ダイナミックドライバーのAria One、ワイヤレス充電のTruu、スポーツ用のPhazon、バッテリーの持ちが良いTrueBuds、Onkyoのなぞの海外発表品のW800BTなどもあります。またこのほかにもまだまだあります。

このようにたくさん出てきた背景にはEarinのヒットという商業的なものもあると思いますが、短期間でみなが追いついてくるというとなにか技術的な課題が解決されたのではとも考えてしまいます。
たとえばネットワークプレーヤーがどんどん出てきた背景にあるのは、オーディオメーカーではむずかしいネットワークのソフトウエアをStreamUnlimitedのようなOEMメーカーが引き受け、オーディオメーカーはそれに独自のオーディオ回路を加えるだけでよかったということがあります。
そこでこの左右独立型ワイヤレスイヤフォンの共通の技術課題はなんだろうとちょっと考えてみることにしました。

もともとBluetoothはこうした左右独立型のワイヤレスイヤフォンには向いていませんでした。Bluetoothではマスターとスレーブの関係が明確で、1:1のコネクションのみが可能だからです。そのためケーブルが目立たないヘッドフォンは良いのですが、イヤフォンではどうしても左右をケーブルで結ぶ必要があります。つまり左の耳のユニットでワイヤレス信号を受けて、それを有線で右耳のユニットに伝えるわけです。

この問題を解決したワイヤレス技術は2008年ころのKleer(クリア―)が先鞭を切りました。KleerはCD品質の伝送や、マルチチャンネル伝送の伝送が可能であったため、左右のユニットにそれぞれワイヤレス信号を送ることができました。ゼンハイザーのMX W1がはじめての完全左右独立のイヤフォンとして知られています。

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ゼンハイザー MX W1

ところが特別なドングルを送信機に付けねばならないKleerは流行ることなく、いつのまにか表舞台からいなくなってしまいました。

Bluetoothでの左右独立のワイヤレスイヤフォンはクラウドファンディングで2014年に登場しました。実際はEarinよりもスマートイヤフォンを標榜するBragi Dashの方が早かったと思いますが、Earinのコンパクトさにより注目が集まりました。フィットネス機能もあるDashは複雑すぎる点もあったと思います。

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Earin - Kickstarterページから

ではどうやってEarinではBluetoothでこのケーブルレスの左右独立を可能にしたかというのはKickstarterのページに書かれています。
earin.png
出展: https://www.kickstarter.com/projects/earin/earin-the-worlds-smallest-wireless-earbuds/description
つまりEarinで採用されているBluetoothチップは送り手と受け手の両方が使えるもので、左耳のユニットがワイヤレスでBluetoothの信号をうけたのちには、右チャンネルのデータをやはりBluetoothで右側ユニットに送ると言うものです。
これは左右独立のBluetoothスピーカーなどでも採用されているものだと思います。これだけでも左右の同時接続やシンクロ、バッテリーマネージメントなどはEarinのコンパクトさを考えると十分にハードルは高いと思います。

しかし、実はこれだけではまだ完全な答えではないと思います。それは縦の変化球が消える魔球の秘密の80%でしかないのと同様に、それだけでは完全に(ケーブルが)消えないでしょう。その最後の20%の秘密は障害物をよけて左右の電波を送信する方法です。その障害物とは人の頭です。
スピーカーとEarinにはコンパクトさ以外にも大きな違いがあります。スピーカーでは互いのユニットが見通しが取れているのに対して、Earinでは左右間にBluetooth電波の透過ができない(むずかしい)と言われる人の頭があります。加えてBTの2.4GHz帯という電波は直進性がとても高いので曲がりにくいのです。左右のユニット間の電波の送信はイヤフォンにとっては思った以上の難しい課題と思います。

これについては面白い記事がWall Street Journalのテックレビューにありました。
それは電波の壁面反射を使うという方法です。直進性の高い電波を壁面にあてて、その反射を特殊アンテナで拾うという方法です。これはコンパクトな耳内におさまるためアンテナ配置に自由度のないEarinには特に重要だと思われます。
実際にこのライターが試してみたところによると、Earinでは室内よりも(壁面反射の使えない)屋外で右接続の不良がよくおこったと言うことです。
ただここは明確にそうかはメーカーの明記がないのでわかりません。左の入力をBTで右に飛ばしているよという普通に思いつくところは公開していますが、こうした最後の細かなノウハウが実はポイントではないかと思います。

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Dash - Dash home pageから

一方でDashについては左ユニットまではBluetoothですが、左右ユニット間の電波の送信はNFMI(Near Field Magnetic Induction)という技術を採用していると明記されています。つまり左右接続はBluetoothではありません。
NFMIは近距離(2m程度)専用の14Mhzくらいの長い波長の通信を使うもので、頭を回り込んでいけるんでしょう。頭を気泡でくるむようにという説明があります。NFMIは補聴器などでも使われているようです。
2.4G帯ではないのでBluetoothのような干渉は受けないでしょうからWiFi環境にも強いでしょう。
こちらのDashのサポートページにも記載があります。


たくさん出てきている「左右独立型ワイヤレスイヤフォン」については左右チャンネルのシンクロとかレイテンシーとか課題はいろいろあるとは思います。ただそこは左右独立ワイヤレススピーカーでもやったことですから、イヤフォン独自の課題となるとこの障害物である頭をどうよけるかという左右の電波送信技術ということはあるかもしれません。
実際測ったわけではないので、どの程度の影響があるかはよくわかりませんが、この左右の電波送信というところにポイントを見つけるとスペック外の長所短所も見えてくるのかもしれません。
posted by ささき at 21:29 | TrackBack(0) | __→ 完全ワイヤレスイヤフォン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする