アスキーにWi-Fi 7とヘッドホンの関係性、屋外利用での低遅延はVRのカギという記事を執筆しました。
https://ascii.jp/elem/000/004/179/4179327/
Music TO GO!
2024年03月15日
2022年01月03日
うわさのAirPods Pro2にロスレスサポートのうわさ
アップル関連アナリストのミンチークオ氏が今年AirPods Pro2が出ると言っていましたが、今朝の海外メディアはさらにクオ氏がこのAirPods Pro2がロスレスをサポートするという情報を加えたとしています。
これが事実ならばアップルがなんらかのロスレス・ワイヤレス伝送の用意をしてるということになりますね。「ハイレゾ対応」ならばいわゆる「ハイレゾ相当」でサンプルレートだけ96kHzまで拡張して非可逆圧縮で送る手はありますが、「ロスレス対応」というからにはハードルは上がることになります。
しかしアップルの場合はハード・OSを抱えているので不可能なことではないと思います。コーデックだけではなくハードを変えることができるからドングルが必要だったロスレスワイヤレスの手段を内蔵させることもできます。一方でいままでアップルの独自ワイヤレス伝送の特許はあまり見たことがないので、既存技術を使用するという気もします。
考えられる方法としては、
1. Bluetoothを拡張する
Bluetoothはいまでは規格自体は楽に1.4Mbps以上いけるから、A2DPを独自に廃して独自のドライバー(BTプロファイル)を作る手もあるでしょう。この場合はiPhone側にハードの追加は不要です。
Bluetoothでの1:1制限にしてもBluetooth基幹部ではなくプロファイルであるA2DPの制限ですから、TempowのTAPプロファイルのような前例がすでにあります。そしてそれをロスレス拡張できなくもないでしょう。
参照: Bluetoothのマルチキャストオーディオ技術、Tempow Audio Profile
http://vaiopocket.seesaa.net/article/460813992.html
またすでにソニー/McSunc方式やクアルコムの新しいTrueWireless Mirroringで対応しているように同時伝送もできるでしょう。
参照: 完全ワイヤレスの「左右同時伝送」とMCSync方式の謎の解明
http://vaiopocket.seesaa.net/article/476629761.html
もうひとつの可能性としてはアップルがBluetooth SIGに働きかけてLE Audioにロスレス対応を盛り込むというのもないわけではないですが、この場合には事前に分かってしまうことになりますね。
2. WiFi等とAirPlay
WiFiは消費電力を考えると難ですが、ホットスポット機能を追加してAirPlay対応という手はあるかもしれません(Poly+Mojoでやっているような)。この場合もiPhone側にハードの追加はないでしょう。
2. Kleerなど新伝送方式を使用
ジョブズ時代にはKleer採用のうわさがちょっとありました。またカメラではジョブズ時代にLYTROとのうわさがあって消えたんですが、結局いまマルチレンズで似たようなライトフィールド的技術してるからそれが生きてないというわけでもありません。ただしこの場合はiPhone側にハードの追加が必要となります。
3. 独自2.4GHz帯通信とか赤外線
これもゲーム分野を考えると低遅延が可能なのでありえなくはありませんが、iPhone側に追加ハードが必要です。省電力通信のThreadのAirPlay拡張もなくはないですが、見込みは低いように思います。
要はやる気になればアップルはなんでもできたんですが、今までやる気にならなかったわけです。今は自らがハイレゾストリーミングのベンダーになったので、気が熟したということもあるかもしれません。
ただし今のぎゅうぎゅう詰めのiPhoneの中でチップ一個増やすのも大変でしょうからハードの追加は可能性少ないかなとも思いますが、この場合にはiPhone14を待つことになるでしょう。ただハード追加の場合には既存モデルでは対応できないし、AirPods側がiPhone専用になってしまいます(ほとんど現実そうなので問題ないと思いますが)。
いろいろ考えてみると既存技術を使うのが一番かなとは思います。
クアルコムのaptX losslessもあるし、今年はロスレス・ワイヤレスが来るとなかなか面白いかなとは思います。
これが事実ならばアップルがなんらかのロスレス・ワイヤレス伝送の用意をしてるということになりますね。「ハイレゾ対応」ならばいわゆる「ハイレゾ相当」でサンプルレートだけ96kHzまで拡張して非可逆圧縮で送る手はありますが、「ロスレス対応」というからにはハードルは上がることになります。
しかしアップルの場合はハード・OSを抱えているので不可能なことではないと思います。コーデックだけではなくハードを変えることができるからドングルが必要だったロスレスワイヤレスの手段を内蔵させることもできます。一方でいままでアップルの独自ワイヤレス伝送の特許はあまり見たことがないので、既存技術を使用するという気もします。
考えられる方法としては、
1. Bluetoothを拡張する
Bluetoothはいまでは規格自体は楽に1.4Mbps以上いけるから、A2DPを独自に廃して独自のドライバー(BTプロファイル)を作る手もあるでしょう。この場合はiPhone側にハードの追加は不要です。
Bluetoothでの1:1制限にしてもBluetooth基幹部ではなくプロファイルであるA2DPの制限ですから、TempowのTAPプロファイルのような前例がすでにあります。そしてそれをロスレス拡張できなくもないでしょう。
参照: Bluetoothのマルチキャストオーディオ技術、Tempow Audio Profile
http://vaiopocket.seesaa.net/article/460813992.html
またすでにソニー/McSunc方式やクアルコムの新しいTrueWireless Mirroringで対応しているように同時伝送もできるでしょう。
参照: 完全ワイヤレスの「左右同時伝送」とMCSync方式の謎の解明
http://vaiopocket.seesaa.net/article/476629761.html
もうひとつの可能性としてはアップルがBluetooth SIGに働きかけてLE Audioにロスレス対応を盛り込むというのもないわけではないですが、この場合には事前に分かってしまうことになりますね。
2. WiFi等とAirPlay
WiFiは消費電力を考えると難ですが、ホットスポット機能を追加してAirPlay対応という手はあるかもしれません(Poly+Mojoでやっているような)。この場合もiPhone側にハードの追加はないでしょう。
2. Kleerなど新伝送方式を使用
ジョブズ時代にはKleer採用のうわさがちょっとありました。またカメラではジョブズ時代にLYTROとのうわさがあって消えたんですが、結局いまマルチレンズで似たようなライトフィールド的技術してるからそれが生きてないというわけでもありません。ただしこの場合はiPhone側にハードの追加が必要となります。
3. 独自2.4GHz帯通信とか赤外線
これもゲーム分野を考えると低遅延が可能なのでありえなくはありませんが、iPhone側に追加ハードが必要です。省電力通信のThreadのAirPlay拡張もなくはないですが、見込みは低いように思います。
要はやる気になればアップルはなんでもできたんですが、今までやる気にならなかったわけです。今は自らがハイレゾストリーミングのベンダーになったので、気が熟したということもあるかもしれません。
ただし今のぎゅうぎゅう詰めのiPhoneの中でチップ一個増やすのも大変でしょうからハードの追加は可能性少ないかなとも思いますが、この場合にはiPhone14を待つことになるでしょう。ただハード追加の場合には既存モデルでは対応できないし、AirPods側がiPhone専用になってしまいます(ほとんど現実そうなので問題ないと思いますが)。
いろいろ考えてみると既存技術を使うのが一番かなとは思います。
クアルコムのaptX losslessもあるし、今年はロスレス・ワイヤレスが来るとなかなか面白いかなとは思います。
2021年12月10日
finalブランドの名を冠する完全ワイヤレスイヤフォン「final ZE3000」レビュー
先日のヘッドフォン祭で披露され、ひときわ注目を集めた新製品がfinalブランドの名を冠した初めての完全ワイヤレスイヤフォンが「final ZE3000」です。(特別モデルを除く)
そのZE3000がいよいよ来週12月17日(金)から発売されます。本日から予約開始で、想定販売価格は15,800円(税込)です。
本稿では開発情報も交えてこの期待の製品を解説・レビューしていきます。
ZE3000という名前からはfinalユーザーならばだれしもかつての名機である「final E3000」を思い浮かべるでしょう。
finalとしてもやはりE3000には特別の思い入れがあるということです。この価格帯でこうした本格的な音造りのイヤフオンは売れないと一部では言われながらも、音は地味だが聞いてもらえればわかると発売したE3000は、SNSや口コミなどにより高評価が伝わりロングセラーとなる商品となりました。開発側としてもfinalブランドを冠するに当たって完全ワイヤレスの音のスタンダードを作りたいという思いがあったようです。
○ZE3000の特徴と技術
ZE3000はかなり細かな技術の積み重ねで開発された製品ですが、キーとなる大きな特徴は二つあります。ベント無しで音響空間の圧力を最適化する「f-Linkダンピング機構」と新設計ドライバー「f-Core for Wireless」です。
finalは音響工学や音響心理学など正しい理論から正しい開発を行おうとするスタイルのメーカーです。そこでZE3000の開発はそもそもなぜ完全ワイヤレスの音が悪いのか、それはよく言われるようなコーデックの問題なのだろうか、という根本的なところから開発をスタートさせたということ。そこでfinalではまず完全ワイヤレスイヤフォンならではの防水や形的な制約から生じる音響的な歪みの大きさという点に着目をしたそうです。
例えば防水を求められると、ドライバーの正しい動きのために不可欠なベント穴を設けるのが難しいために低域に問題が生じ、それを高域でバランスをとるので音に不自然さが出てしまう。これが完全ワイヤレスイヤフォンがみな同じような音のよくないサウンドに陥ってしまう原因ではないかと気がついたということです。そこでZE3000では内部設計に工夫をしてベント穴と同じような効果を持つチャンバー機構を設けたのがまず一つ目のポイントです。これは「f-Linkダンピング機構」と呼ばれています。
f-Linkダンピング機構
またドライバー自体にも自製が可能なfinalの強みが活かされています。私もZE3000の話を聞いたとき、はじめはAシリーズのF-Coreドライバーを搭載するのではないかと思っていたんですが、実際には完全に新設計のワイヤレス専用のドライバーが搭載されているそうです。それが新設計ドライバー「f-Core for Wireless」です。
f-Core for Wireless
ZE3000のドライバーは形式的には6mmのダイナミックドラバーですが、興味深いことにスピーカーのような独立したエッジがドライバーの振動板周囲に設けられています。このサイズでは接着剤の重さも制限となるのですが、ZE3000のドライバーではエッジがシリコン製でそれ自体が接着する機能を持っているために軽量化と振動板の動きのスムーズさが両立されているとのこと。これはこのクラスでは従来はできなかったことですが、製造方法の工夫により可能になったということです。このためにZE3000のドライバーは6mmだが実質的に9mm相当の音を出すことが可能で、歪みなく大きな低域がだせるといいます。これも他の完全ワイヤレスとの差別化できるポイントです。
このようにアコースティック設計をこだわったためにZE3000の筐体はやや大きくなっています。その装着感の改善のためにfinalではAシリーズで適用した三点支持(finalが考えるIEM型の最適解)を応用しています。角ばったデザインなのは、わざとエッジ(稜線)を作ったデザインにして持つ場合を誘導しているということです。タッチコントロールの箇所もあえて正面ではなく、その斜め後ろにしたのがポイントです。
マニュアルから
また完全ワイヤレスイヤフォンはケースが重要でもあります。ZE3000では筐体同様に人間工学的な考慮により角があるので入れやすい設計がなされています。これは形や材質などがその物自体の扱い方を説明している「アフォーダンス・デザイン」という考え方です。
ケースがポケットに入るようにした点も改良点です。これは深さに対して左右をわざと伸ばしたことで実現されているそうです。このために手で握りやすくもなっています。またよく見ると上下の線が非対称であるなど細かいところに気配りがあります。
外観としては高級カメラに見るようなきちんとした熱塗装を施したシボ塗装を適用している点でも価格を超えた高級感があります。
そしてケースは他社製のイヤーチップの装着も考慮されているとのこと。もちろん全てではないですが、可能な限りイヤーピースを入れる部分の深さや広さを取っているということです。ここはマニアックなfinalの面目躍如というところでしょう。
ZE3000ではSoCにクアルコムのQCC3040を採用していますが、このイコライザーのチューニングについてもまずドライバーユニットを仕上げて、それでできないことをEQでやるという考え方を取っているとのこと。前出したようにまずドライバーを完全に仕上げたことでこれが可能になったわけであり、イコライザーを不出来なドライバーを叩き直すために使用するのは音質を劣化させることだということです。
そしてなにより、こうした手法をとることにより有線イヤフォンではできなかったことが(電気回路と一体になった)完全ワイヤレスでは可能になるとのこと。
ZE3000の仕様は再生時間は7時間で、採用コーデックはSBC/AAC/aptX adaptiveです。付属品は充電ケース・イヤーピース5サイズ(SS/S/M/L/LL)・USBタイプC充電用ケーブルです。カラーはブラックとホワイトの二種類が用意されています。
○ZE3000のインプレッション
実際にデモ機を借りて使用させてもらいました。
*以下のインプレや写真は主に量産前モデルを使用しましたので製品版とは違う点もあるかもしれないことをお断りしておきます。
製品パッケージ
ZE3000のカラーバリエーション
ZE3000の充電機能付きのケースはとてもスリムでポケットに入れやすい形状をしています。agのTWS04Kではポータブルバッテリー付きのアイディアは良かったんですが、やや大柄で取り扱いにくかったのでこの点は助かります。
ケースと本体は表面にシボ加工が施されているので高級感があります。持った感じは軽量です。ケースは底面のUSB-C端子で充電を行います。
ag TWS04Kとの比較(手前/右がTWS04K)
ZE3000ではケースを開けると電源オンとなります。この点はケースから取り出すとオンになる「ag TWS04K」とは異なります。また充電状態表示も異なりますので、TWS04Kユーザーなどはまず説明書を軽く読むことをお勧めします。電源オフと充電開始はケースを閉めることで行います。本体はやや大柄ですが、軽量で耳へのすわりは良好です。
フェイスプレートの面積の広い部分がボタンではないので装着してから指でつまんで位置を修正しやすい点もポイントです。操作したい時は押しやすく、実際に使ってみるとこの多面体デザインは理にかなってると思います。頭を振っても外れる感じは少ないですね。
再生停止などはタッチボタンですが、いわゆるフェイスプレートではない傾いた位置にあります。いままでの完全ワイヤレスだとフェイスプレート部分にボタンがあるので耳にイヤフォンを押し込む際にボタンを押したりしてしまいがちでしたが、この形状だとそういうことは少なそうです。人間工学的にもよく考えられたデザインです。
○音のインプレッション
ZE3000のサウンドは、ぱっと一聴してすぐに他の完全ワイヤレスと違いがわかるような違いがあります。試聴中は本当にケーブルがないかを無意識に思わず何回か触りたくなりました。そのくらいは不思議な違和感すら思えます。
刺激的な成分が少なく、滑らかで豊かな厚みがあってきちんとオーディオの音がするワイヤレスイヤフォンで、TWS04Kとの違いもまずそこに気がつきます。
聴き進めるとアコースティック楽器の音がきれいなことに気がつきます。歪みなく、すっきりした端正なサウンドです。音色の違いが分かりやすく、かつ高音域などで痛みが少ない音です。
アコースティック曲でフライド・プライドの"My Funny Valentine"を聴いてみましたが、こうした生ギターとヴォーカルだけのシンプルな構成で真価が分かります。生ギターの解像力が良くて歯切れが良いと同時に痛さのある角は取れて滑らかでアナログ的です。音が芳醇な感じです。ヴォーカルは鮮明であると同時に肉質感があって女性ヴォーカルの官能的なささやきが艶かしく感じられます。全体的に音楽が豊かに楽しめるサウンドです。実のところ朝飯後にどれちょっとエージングできたかな、と軽く聴き始めたところあまりに良い鳴り方なので、もうそのまま試聴タイムになだれ込んだ感じでした。
帯域バランスは3000番の名のように整っていて自然で誇張感は少ないですね。音の広がり方は標準的な感じですが、不思議な奥行き感というか立体感があります。曲と録音を忠実に再現するスタンダードな音ですが、もちろん先に書いたように無機質的ないわゆるモニター的なサウンドではなく、有機的に音楽を楽しめるのはいままでのfinalイヤフォンらしいと思います。
高域のベルの音が極めて美しいので歪み感がとても少ないのだと思います。高音域は鮮明でいて、かつきつさがとても少なく感じられます。低域は過不足感はなく、とてもタイトで引き締まり、打撃感が今までにない感触の良さがあります。ロックやヘビメタを聞くと気持ち良いですね。ドラムスの叩きつけるような連打が気持ち良くそしてきちんとダイナミックらしく重く感じられます。低域の量感自体は十分にありますが、比べてみるとTWS04Kの方が低音が出ていてZE3000は抑え気味なのでやはり3000番台の音らしく思えますし、コンシューマブランドのagとの切り分けもできていると思います。
包み込まれるような音の広がり感も極めて良いですし、音の厚みがアンプが入ってるかのようなのもポイントです。ただZE3000に専用アンプや専用DACはないので、SoCの電気的な部分にも相当なノウハウの蓄積が秘められているようですね。そこもまずagで経験の蓄積があったからでしょう。
ワイヤレスっぽくないと同時にデジタルっぽくない音と言えば良いか。。デジタルを極めればアナログ的な滑らかさになるのかもしれませんね。
○「ワイヤレスイヤホンは有線より音が悪い」のか
最後にワイヤレス対有線イヤフォンを試してみました。finalでは開発目標として「E3000の音質を超える製品をつくりたい」ということがあったようですので、ここではあえてE3000より上位モデルのA3000/A4000を選びました。ほぼ同価格帯でありワイヤレスだからというハンデはありません。
このためまだ3.5mm端子の付いていたiPhone5を取り出してきて有線のA3000/A4000とワイヤレスのZE3000をMusicアプリで聴き比べてみました。楽曲はアップルロスレスです。ワイヤレスではAACでしょう。
A4000(有線)とZE3000
曲を聞き比べてみると、やや音再現に違いはありますが、それほど音質レベルは差がないように感じられます。音の個性的にはやはりA3000により近い音です。強いて言うとA3000/A4000の方が中高域が強めに出ますが、ここがコーデックのせいかチューニングの違いかはわかりません。一方でヴォーカルはZE3000の方が明瞭感があって歌詞がわかりやすい感じです。音の広がりは同じくらいです。
良録音の器楽曲で比べてもZE3000は細部の解像力でも負けていないように思います。プレーヤーの演奏中のため息やハミングなどもリアルにわかります。
DACやアンプなどの電気回路が優れた良いDAPを使うとA3000/A4000ではさらに良くなり、ZE3000では電気回路がイヤフォン側固定なので差異は少ないとは思いますので、有線かワイヤレスかはDAPを併用するかスマホだけかなどの使用環境によるかもしれません。いずれにせよ同じような価格で同じような音質レベルの製品を提供できるようになったのではないかと思います。
○まとめ
ZE3000はオーディオファイルで音にうるさいという人が聴いても納得できるくらいのレベルはあると思います。いままでいくつも完全ワイヤレスイヤフォンを聴いてきましたが、音質に関しては値段に関わらずにお勧めができます。
TWS04Kでもとても良い音だと感じていたけれども、ZE3000を聴くとそれは「ワイヤレスにしては良い音」だったと気がつかされます。つまりそれが当たり前だと思い込んでいたわけです。ZE3000はE3000がエントリークラスイヤフオンのスタンダードを書き換えたように、ワイヤレスイヤフォンのスタンダードを書き換える存在になりうるかもしれません。
ヘッドフォン祭で本機が披露されてから価格を3万円くらいと考えてた人も多いと思います。実際に音を聴いて製品を手に取るとZE3000を「ANCなしですが音がいいので3万円です」と売っても全然おかしくないでしょう。高価なANC付きモデルと音質で比べたらZE3000の方が良いと思います。ANC自体も振動板で逆位相出してるので音がいいというわけでは無いでしょう。つまりANCがないからこそ良い音が出せるという点もあると思います。
もちろんANCが必要な人もいますし、ASMR向けが欲しいとか低音もりもりが欲しいという人はまた別の選択もあると思いますので、そこは製品多様性の選択だと思います。ただ低域もりもりが欲しいという人でもZE3000の低音を聞いてみると考えも変わるのではないでしょうか。ただしダイナミックなのでエージングはきっちりとしたほうが良いです。
いずれにせよE3000がそうであったように、ZE3000も聴いてもらえば違いがわかるというな音に仕上がっていると思います。
先に書いたように完全ワイヤレスは有線とは違って電気回路が入っていますから、ある意味では有線なみのワイヤレスに留まらずにワイヤレスと有線のいいとこ取りをしたような位置付けになり得ると思う。
私もワイヤレスイヤフオンだから音が悪いという図式には以前から懐疑的でした。ワイヤレスでケーブルがないなら数万円もするような高級ケーブルを買う必要はありません。スマホではなくイヤフォン内部に電気回路があるのはショートシグナルパスの極みでもあります。コーデックの問題を差し引いても本来はワイヤレスの方が音がよいのではないだろうか?とも思っていました。
final ZE3000はそうした私の長年のわだかまりを解消してくれた「ワイヤレスイヤフォンの新スタンダード」となってくれることに期待しています。
そのZE3000がいよいよ来週12月17日(金)から発売されます。本日から予約開始で、想定販売価格は15,800円(税込)です。
本稿では開発情報も交えてこの期待の製品を解説・レビューしていきます。
ZE3000という名前からはfinalユーザーならばだれしもかつての名機である「final E3000」を思い浮かべるでしょう。
finalとしてもやはりE3000には特別の思い入れがあるということです。この価格帯でこうした本格的な音造りのイヤフオンは売れないと一部では言われながらも、音は地味だが聞いてもらえればわかると発売したE3000は、SNSや口コミなどにより高評価が伝わりロングセラーとなる商品となりました。開発側としてもfinalブランドを冠するに当たって完全ワイヤレスの音のスタンダードを作りたいという思いがあったようです。
○ZE3000の特徴と技術
ZE3000はかなり細かな技術の積み重ねで開発された製品ですが、キーとなる大きな特徴は二つあります。ベント無しで音響空間の圧力を最適化する「f-Linkダンピング機構」と新設計ドライバー「f-Core for Wireless」です。
finalは音響工学や音響心理学など正しい理論から正しい開発を行おうとするスタイルのメーカーです。そこでZE3000の開発はそもそもなぜ完全ワイヤレスの音が悪いのか、それはよく言われるようなコーデックの問題なのだろうか、という根本的なところから開発をスタートさせたということ。そこでfinalではまず完全ワイヤレスイヤフォンならではの防水や形的な制約から生じる音響的な歪みの大きさという点に着目をしたそうです。
例えば防水を求められると、ドライバーの正しい動きのために不可欠なベント穴を設けるのが難しいために低域に問題が生じ、それを高域でバランスをとるので音に不自然さが出てしまう。これが完全ワイヤレスイヤフォンがみな同じような音のよくないサウンドに陥ってしまう原因ではないかと気がついたということです。そこでZE3000では内部設計に工夫をしてベント穴と同じような効果を持つチャンバー機構を設けたのがまず一つ目のポイントです。これは「f-Linkダンピング機構」と呼ばれています。
f-Linkダンピング機構
またドライバー自体にも自製が可能なfinalの強みが活かされています。私もZE3000の話を聞いたとき、はじめはAシリーズのF-Coreドライバーを搭載するのではないかと思っていたんですが、実際には完全に新設計のワイヤレス専用のドライバーが搭載されているそうです。それが新設計ドライバー「f-Core for Wireless」です。
f-Core for Wireless
ZE3000のドライバーは形式的には6mmのダイナミックドラバーですが、興味深いことにスピーカーのような独立したエッジがドライバーの振動板周囲に設けられています。このサイズでは接着剤の重さも制限となるのですが、ZE3000のドライバーではエッジがシリコン製でそれ自体が接着する機能を持っているために軽量化と振動板の動きのスムーズさが両立されているとのこと。これはこのクラスでは従来はできなかったことですが、製造方法の工夫により可能になったということです。このためにZE3000のドライバーは6mmだが実質的に9mm相当の音を出すことが可能で、歪みなく大きな低域がだせるといいます。これも他の完全ワイヤレスとの差別化できるポイントです。
このようにアコースティック設計をこだわったためにZE3000の筐体はやや大きくなっています。その装着感の改善のためにfinalではAシリーズで適用した三点支持(finalが考えるIEM型の最適解)を応用しています。角ばったデザインなのは、わざとエッジ(稜線)を作ったデザインにして持つ場合を誘導しているということです。タッチコントロールの箇所もあえて正面ではなく、その斜め後ろにしたのがポイントです。
マニュアルから
また完全ワイヤレスイヤフォンはケースが重要でもあります。ZE3000では筐体同様に人間工学的な考慮により角があるので入れやすい設計がなされています。これは形や材質などがその物自体の扱い方を説明している「アフォーダンス・デザイン」という考え方です。
ケースがポケットに入るようにした点も改良点です。これは深さに対して左右をわざと伸ばしたことで実現されているそうです。このために手で握りやすくもなっています。またよく見ると上下の線が非対称であるなど細かいところに気配りがあります。
外観としては高級カメラに見るようなきちんとした熱塗装を施したシボ塗装を適用している点でも価格を超えた高級感があります。
そしてケースは他社製のイヤーチップの装着も考慮されているとのこと。もちろん全てではないですが、可能な限りイヤーピースを入れる部分の深さや広さを取っているということです。ここはマニアックなfinalの面目躍如というところでしょう。
ZE3000ではSoCにクアルコムのQCC3040を採用していますが、このイコライザーのチューニングについてもまずドライバーユニットを仕上げて、それでできないことをEQでやるという考え方を取っているとのこと。前出したようにまずドライバーを完全に仕上げたことでこれが可能になったわけであり、イコライザーを不出来なドライバーを叩き直すために使用するのは音質を劣化させることだということです。
そしてなにより、こうした手法をとることにより有線イヤフォンではできなかったことが(電気回路と一体になった)完全ワイヤレスでは可能になるとのこと。
ZE3000の仕様は再生時間は7時間で、採用コーデックはSBC/AAC/aptX adaptiveです。付属品は充電ケース・イヤーピース5サイズ(SS/S/M/L/LL)・USBタイプC充電用ケーブルです。カラーはブラックとホワイトの二種類が用意されています。
○ZE3000のインプレッション
実際にデモ機を借りて使用させてもらいました。
*以下のインプレや写真は主に量産前モデルを使用しましたので製品版とは違う点もあるかもしれないことをお断りしておきます。
製品パッケージ
ZE3000のカラーバリエーション
ZE3000の充電機能付きのケースはとてもスリムでポケットに入れやすい形状をしています。agのTWS04Kではポータブルバッテリー付きのアイディアは良かったんですが、やや大柄で取り扱いにくかったのでこの点は助かります。
ケースと本体は表面にシボ加工が施されているので高級感があります。持った感じは軽量です。ケースは底面のUSB-C端子で充電を行います。
ag TWS04Kとの比較(手前/右がTWS04K)
ZE3000ではケースを開けると電源オンとなります。この点はケースから取り出すとオンになる「ag TWS04K」とは異なります。また充電状態表示も異なりますので、TWS04Kユーザーなどはまず説明書を軽く読むことをお勧めします。電源オフと充電開始はケースを閉めることで行います。本体はやや大柄ですが、軽量で耳へのすわりは良好です。
フェイスプレートの面積の広い部分がボタンではないので装着してから指でつまんで位置を修正しやすい点もポイントです。操作したい時は押しやすく、実際に使ってみるとこの多面体デザインは理にかなってると思います。頭を振っても外れる感じは少ないですね。
再生停止などはタッチボタンですが、いわゆるフェイスプレートではない傾いた位置にあります。いままでの完全ワイヤレスだとフェイスプレート部分にボタンがあるので耳にイヤフォンを押し込む際にボタンを押したりしてしまいがちでしたが、この形状だとそういうことは少なそうです。人間工学的にもよく考えられたデザインです。
○音のインプレッション
ZE3000のサウンドは、ぱっと一聴してすぐに他の完全ワイヤレスと違いがわかるような違いがあります。試聴中は本当にケーブルがないかを無意識に思わず何回か触りたくなりました。そのくらいは不思議な違和感すら思えます。
刺激的な成分が少なく、滑らかで豊かな厚みがあってきちんとオーディオの音がするワイヤレスイヤフォンで、TWS04Kとの違いもまずそこに気がつきます。
聴き進めるとアコースティック楽器の音がきれいなことに気がつきます。歪みなく、すっきりした端正なサウンドです。音色の違いが分かりやすく、かつ高音域などで痛みが少ない音です。
アコースティック曲でフライド・プライドの"My Funny Valentine"を聴いてみましたが、こうした生ギターとヴォーカルだけのシンプルな構成で真価が分かります。生ギターの解像力が良くて歯切れが良いと同時に痛さのある角は取れて滑らかでアナログ的です。音が芳醇な感じです。ヴォーカルは鮮明であると同時に肉質感があって女性ヴォーカルの官能的なささやきが艶かしく感じられます。全体的に音楽が豊かに楽しめるサウンドです。実のところ朝飯後にどれちょっとエージングできたかな、と軽く聴き始めたところあまりに良い鳴り方なので、もうそのまま試聴タイムになだれ込んだ感じでした。
帯域バランスは3000番の名のように整っていて自然で誇張感は少ないですね。音の広がり方は標準的な感じですが、不思議な奥行き感というか立体感があります。曲と録音を忠実に再現するスタンダードな音ですが、もちろん先に書いたように無機質的ないわゆるモニター的なサウンドではなく、有機的に音楽を楽しめるのはいままでのfinalイヤフォンらしいと思います。
高域のベルの音が極めて美しいので歪み感がとても少ないのだと思います。高音域は鮮明でいて、かつきつさがとても少なく感じられます。低域は過不足感はなく、とてもタイトで引き締まり、打撃感が今までにない感触の良さがあります。ロックやヘビメタを聞くと気持ち良いですね。ドラムスの叩きつけるような連打が気持ち良くそしてきちんとダイナミックらしく重く感じられます。低域の量感自体は十分にありますが、比べてみるとTWS04Kの方が低音が出ていてZE3000は抑え気味なのでやはり3000番台の音らしく思えますし、コンシューマブランドのagとの切り分けもできていると思います。
包み込まれるような音の広がり感も極めて良いですし、音の厚みがアンプが入ってるかのようなのもポイントです。ただZE3000に専用アンプや専用DACはないので、SoCの電気的な部分にも相当なノウハウの蓄積が秘められているようですね。そこもまずagで経験の蓄積があったからでしょう。
ワイヤレスっぽくないと同時にデジタルっぽくない音と言えば良いか。。デジタルを極めればアナログ的な滑らかさになるのかもしれませんね。
○「ワイヤレスイヤホンは有線より音が悪い」のか
最後にワイヤレス対有線イヤフォンを試してみました。finalでは開発目標として「E3000の音質を超える製品をつくりたい」ということがあったようですので、ここではあえてE3000より上位モデルのA3000/A4000を選びました。ほぼ同価格帯でありワイヤレスだからというハンデはありません。
このためまだ3.5mm端子の付いていたiPhone5を取り出してきて有線のA3000/A4000とワイヤレスのZE3000をMusicアプリで聴き比べてみました。楽曲はアップルロスレスです。ワイヤレスではAACでしょう。
A4000(有線)とZE3000
曲を聞き比べてみると、やや音再現に違いはありますが、それほど音質レベルは差がないように感じられます。音の個性的にはやはりA3000により近い音です。強いて言うとA3000/A4000の方が中高域が強めに出ますが、ここがコーデックのせいかチューニングの違いかはわかりません。一方でヴォーカルはZE3000の方が明瞭感があって歌詞がわかりやすい感じです。音の広がりは同じくらいです。
良録音の器楽曲で比べてもZE3000は細部の解像力でも負けていないように思います。プレーヤーの演奏中のため息やハミングなどもリアルにわかります。
DACやアンプなどの電気回路が優れた良いDAPを使うとA3000/A4000ではさらに良くなり、ZE3000では電気回路がイヤフォン側固定なので差異は少ないとは思いますので、有線かワイヤレスかはDAPを併用するかスマホだけかなどの使用環境によるかもしれません。いずれにせよ同じような価格で同じような音質レベルの製品を提供できるようになったのではないかと思います。
○まとめ
ZE3000はオーディオファイルで音にうるさいという人が聴いても納得できるくらいのレベルはあると思います。いままでいくつも完全ワイヤレスイヤフォンを聴いてきましたが、音質に関しては値段に関わらずにお勧めができます。
TWS04Kでもとても良い音だと感じていたけれども、ZE3000を聴くとそれは「ワイヤレスにしては良い音」だったと気がつかされます。つまりそれが当たり前だと思い込んでいたわけです。ZE3000はE3000がエントリークラスイヤフオンのスタンダードを書き換えたように、ワイヤレスイヤフォンのスタンダードを書き換える存在になりうるかもしれません。
ヘッドフォン祭で本機が披露されてから価格を3万円くらいと考えてた人も多いと思います。実際に音を聴いて製品を手に取るとZE3000を「ANCなしですが音がいいので3万円です」と売っても全然おかしくないでしょう。高価なANC付きモデルと音質で比べたらZE3000の方が良いと思います。ANC自体も振動板で逆位相出してるので音がいいというわけでは無いでしょう。つまりANCがないからこそ良い音が出せるという点もあると思います。
もちろんANCが必要な人もいますし、ASMR向けが欲しいとか低音もりもりが欲しいという人はまた別の選択もあると思いますので、そこは製品多様性の選択だと思います。ただ低域もりもりが欲しいという人でもZE3000の低音を聞いてみると考えも変わるのではないでしょうか。ただしダイナミックなのでエージングはきっちりとしたほうが良いです。
いずれにせよE3000がそうであったように、ZE3000も聴いてもらえば違いがわかるというな音に仕上がっていると思います。
先に書いたように完全ワイヤレスは有線とは違って電気回路が入っていますから、ある意味では有線なみのワイヤレスに留まらずにワイヤレスと有線のいいとこ取りをしたような位置付けになり得ると思う。
私もワイヤレスイヤフオンだから音が悪いという図式には以前から懐疑的でした。ワイヤレスでケーブルがないなら数万円もするような高級ケーブルを買う必要はありません。スマホではなくイヤフォン内部に電気回路があるのはショートシグナルパスの極みでもあります。コーデックの問題を差し引いても本来はワイヤレスの方が音がよいのではないだろうか?とも思っていました。
final ZE3000はそうした私の長年のわだかまりを解消してくれた「ワイヤレスイヤフォンの新スタンダード」となってくれることに期待しています。
2020年11月25日
完全ワイヤレスの音質のゲームチェンジャー、HIFIMAN TWS800レビュー
ワイヤレスイヤフォンは音が悪いというのは、ユーザー側もメーカー側もワイヤレスに音質なんて、という思い込みもあったかもしれません。しかしオーディオマニアブランドであるHIFIMANはそう考えませんでした。そして開発された完全ワイヤレスがHIFIMAN TWS800です。
いまや完全ワイヤレスにしては音がよいというイヤフォンはたくさんあるのですが、音がよいという意味に「オーディオマニアの要求レベル」という垣根は含まれていなかったように思います。TWS800は「オーディオマニアの要求レベル」という垣根を越えることのできる完全ワイヤレスを目指した製品です。
*特徴
1. アンプ回路をSoCとは別に搭載している
いままで完全ワイヤレスの音質のキーはSoCという統合チップに委ねられてきました。本来はワイヤレスの送受信を受け持つICですが、中にオーディオ回路であるDSPなどが含まれていて、このチューニングが音質の良否を決めていたので音質はSoCが限界となります。TWS800ではこのオーディオ回路をSoCとはセパレートされた外に内蔵ヘッドフォンアンプとして搭載しています。そのためその限界を突破することが可能です。
2. 高インピーダンスのドライバーを搭載
普通イヤフオンのインピーダンスは16オーム程度ですが、これは非力なスマホなどでも駆動できるようにした結果です。
しかしTWS800では150オームという高いインピーダンスのドライバーを採用しています。150オームという高いインピーダンスは慣らしにくいのですが、その分で高性能が期待できます。
開発者に聞くと、高いインピーダンスを採用した理由はアンプと組み合わせた際に低域と音場において高い性能を発揮できるからだといいます。つまりTWS800においてはアンプを別搭載するということによってパワーに余裕が生まれたので、高インピーダンスのドライバーの搭載が可能になったというわけです。
3. トポロジー振動板の搭載
TWS800ではドライバーの要である振動板にもポイントがあります。HIFIMANの上級機であるRE2000が採用しているナノ技術を活かしたトポロジー振動板が採用されています。これは異なるナノ素材は物性も異なるという点から振動板にナノ素材のパターンを描き、振動板の伝搬をコントロールするというものです。これにより高音域特性などの向上が見込め、音が滑らかになるという効果があるということです。
RE2000は国内では高価だが人気のある機種で、その技術を譲り受けたというわけです。
4. ユニバーサルイヤフォンのような筐体
一般の完全ワイヤレスは普通のカナル型イヤフォンのような形状かAirPodsにならった形をしていますが、TWS800の筐体は大柄でいわゆるユニバーサルイヤフォン(カスタムイヤフオンの一般向け製品)を完全ワイヤレス化したようなデザインです。これにはHIFIMANが以前手がけたRE1000カスタムイヤフォンの知見が活かされているといいます。このサイズの大きさを利用して内蔵アンプの搭載が可能となったんでしょう。
またTWS800はタッチコントロールですが、普通の完全ワイヤレスよりもフェイスプレートが大きいためにタッチがしやすくなっています。
5. イヤーピースサイズに余裕をもたせたケース
充電機能付きのケースは大柄なものですが、これは最大のイヤーピースを装着してもそのまま格納できる余裕のある大きさにしたといいます。いままでの完全ワイヤレスでは大きなイヤーピースをつけると格納できないこともあったので、これもマニアメーカーならではの視点です。
実際にSednafi ShortとXelastecのLサイズはつけたまま格納することができました。ただケースは端子部分がもう少し深い方がぴったりと充電端子がはまったのではないかと思う。
TWS800は高インピーダンスのイヤフォンを内蔵アンプでぐいぐいとドライブするイヤフォン、というわけです。TWS800の単体での再生時間は4.5時間と最新のトレンドからすると短いんですが、それだけ電力を音質の方に回しているんでしょう。(ケースと併用すると31.5時間)
* インプレ
TWS800はまずイヤーピース選びからはじまります。あとで書きますが、TWS800は高性能なこともあって、いままでの完全ワイヤレスにはないくらいイヤーピースの差が出ます。
TWS800には標準でたくさんイヤーピースがついてきますが、完全ワイヤレスなのにダブルフランジやトリプルフランジまでついてくるのがいかにもマニアックメーカーという感じがします。いろいろ変えてみたけど、ダブルフランジか白色のタイプが良いように思いましたが、自分に微妙に大きさが合わない感じだったので、やはり慣れているSednaFit系を使いました。Sednafit shortとXelastecを比べてみましたが、どちらもかなり差があってどちらもよいところがあります。Sednafit shortだと中低域がよりパワフルになって、サウンドがより個性的になります。下のインプレは主にSednafit shortで聞いてます。
Xelastecだとより中高域がクリアで鮮明に聴こえます。音がよりシャープでより細かい音が鮮明に聞こえるのでXelastecの方が高インピーダンスの高性能イヤフォンらしく聴こえるように思います。
重さは他の完全ワイヤレスよりも重いが、耳につけてみるとあまり重さは気になりません。イヤーピースがきちんと装着されていればさほど脱落を恐れなくても良いと思う。
きちんと耳に座るところはユニバーサルイヤフォンという感じの装着感の良さです。ただユニバーサルタイプでケーブルがないことに私も含めて多くの人は慣れてないと思うので、耳のポジションに入れるために装着してから少し手直しが必要となります。ケーブルが位置決めに大事だったのを再認識しますが、この辺も新鮮ではありますね。
それとTWS800の特徴としては遮音性が高いこともあげられます。おそらくフェイスプレートが金属だからだと思いますが、かなり聞こえないので店とかでは外さないといけないことも多いかもしれません。
ちなみに結構硬め(?)というかほぐれにくいタイプのイヤフォンなので、エージングはしっかりやってから聞いたほうがよいです。
試聴にはiPhone12Proを使っています。
TWS800の音質は高音質と言われる他の完全ワイヤレスよりも明らかにひとクラス違います。マニアでなくともだれでも気がつくような大きな差があります。
特に音の厚み、低音の重さと音の広がりと立体感はやはりSoCベースの電子回路では及ばないとは思いますね。まるでデジタルプレーヤーかアンプを通しているかのようです。ズドン・ドスンという重みが他の完全ワイヤレスだと、ああ低域を盛り上げているなという気がするけれども、TWS800では空気がたくさん動いている感じですね。和太鼓の連打では迫力が違い、ベースのホボーンという迫力がとても気持ち良く感じられます。
躍動感とダイナミクス、力強さはいかにも電気をふんだんに使っている感じで、再生時間が4時間というのも頷けるところです。力強さはアメリカンサウンドを彷彿とさせ、Blueminiのようなパワフルさが感じられます(開発者は違うということですが)。
TWS800の後に他の完全ワイヤレスを聴くと、かなり軽く薄く感じられます。音量の違いではないですね。iPhone直とポタアン通したくらいの差がある感じです。まあ実際にそうなんですが。
高域は透明感があり金属の音、ベルの音がきれいに響きます。低域の重さやパンチ、ドライブ感とパワー感はロックファンならくせになるでしょう。低音が重くたっぷりとあってアンプ内蔵の力強さがあるので、ロックのような音楽には好適です。他の完全ワイヤレスで聴くよりも躍動感があり体が動いてしまいます。
良録音を聴くと他の完全ワイヤレスとは一線を画する音で、良いイヤフォンとプレーヤーで聞いていた人が完全ワイヤレスで物足りないと感じていた部分を補ってくれると思う。厚みとか豊かさというところですね、そこが音楽に感動を深めてくれるポイントです。
解像力が高く、ヴォーカルがため息をつくところなどはかなりリアルに聞こえます。ひとつひとつの楽器音の明瞭感も高いです。
それとパワーに余裕があるのか、他の完全ワイヤレスよりも同じ音量を低いボリューム位置で鳴らすので、クラシックや古楽の低レベル録音で高ダイナミックレンジの良録音なんかにも良いですね。高いボリューム位置は注意が必要なほど音圧が高くなります。
普通は完全ワイヤレスでは書きませんが、TWS800ではボリュームの上げ過ぎに注意してください。それだけすごいんです。
電池の持ちは他の完全ワイヤレスより悪いですが、通勤通学や出かける時の片道には十分以上です。さすがに飛行機の長時間はもたないと思いますが。
また操作性でいうとフェイスプレートが広いのでタッチ操作は容易です。左右のユニットでダブルタップで音量の上下、トリプルタップでスキップやバックができます。
* まとめ
HIFIMANは少し前にTWS600という完全ワイヤレスイヤフォンを出してますが、通信距離という点では見るべきものがあっても音質という点では今一つでした。このTWS800はブランドらしいマニアックな音質重視の製品となっています。
多少電池の持ちは悪いけど、完全ワイヤレスの気軽さで、IEMにアンプ繋げたような広い音場と迫力、独自のパンチと躍動感が楽しめます。
端的に言うと、TWS800は高インピーダンスのドライバーを内蔵ヘッドフォンアンプで駆動する、というコンセプトの製品であり、高級イヤフォンとしてもユニークです。
TWS800は電子機器と一体型の完全ワイヤレスを逆手にとって、プラス思考で考えた製品でもあります。
販売情報は下記の通りです。これが3万円だったらかなりコスパはいいと思います。
市場予想販売価格:30,000円(税抜)
発売予定日:12月2日
完全ワイヤレスも高音質をうたう製品が増えてきました。とはいえ、ハイエンドイヤフォンを使いこなすようなオーディオマニアを満足させるレベルとなるとそこまで突き抜けたものはこれまでにはあまりありませんでした。TWS800がその壁を超える初めての製品と言えるかもしれません。完全ワイヤレスの音質のゲームチェンジャーとなるでしょう。
いまや完全ワイヤレスにしては音がよいというイヤフォンはたくさんあるのですが、音がよいという意味に「オーディオマニアの要求レベル」という垣根は含まれていなかったように思います。TWS800は「オーディオマニアの要求レベル」という垣根を越えることのできる完全ワイヤレスを目指した製品です。
*特徴
1. アンプ回路をSoCとは別に搭載している
いままで完全ワイヤレスの音質のキーはSoCという統合チップに委ねられてきました。本来はワイヤレスの送受信を受け持つICですが、中にオーディオ回路であるDSPなどが含まれていて、このチューニングが音質の良否を決めていたので音質はSoCが限界となります。TWS800ではこのオーディオ回路をSoCとはセパレートされた外に内蔵ヘッドフォンアンプとして搭載しています。そのためその限界を突破することが可能です。
2. 高インピーダンスのドライバーを搭載
普通イヤフオンのインピーダンスは16オーム程度ですが、これは非力なスマホなどでも駆動できるようにした結果です。
しかしTWS800では150オームという高いインピーダンスのドライバーを採用しています。150オームという高いインピーダンスは慣らしにくいのですが、その分で高性能が期待できます。
開発者に聞くと、高いインピーダンスを採用した理由はアンプと組み合わせた際に低域と音場において高い性能を発揮できるからだといいます。つまりTWS800においてはアンプを別搭載するということによってパワーに余裕が生まれたので、高インピーダンスのドライバーの搭載が可能になったというわけです。
3. トポロジー振動板の搭載
TWS800ではドライバーの要である振動板にもポイントがあります。HIFIMANの上級機であるRE2000が採用しているナノ技術を活かしたトポロジー振動板が採用されています。これは異なるナノ素材は物性も異なるという点から振動板にナノ素材のパターンを描き、振動板の伝搬をコントロールするというものです。これにより高音域特性などの向上が見込め、音が滑らかになるという効果があるということです。
RE2000は国内では高価だが人気のある機種で、その技術を譲り受けたというわけです。
4. ユニバーサルイヤフォンのような筐体
一般の完全ワイヤレスは普通のカナル型イヤフォンのような形状かAirPodsにならった形をしていますが、TWS800の筐体は大柄でいわゆるユニバーサルイヤフォン(カスタムイヤフオンの一般向け製品)を完全ワイヤレス化したようなデザインです。これにはHIFIMANが以前手がけたRE1000カスタムイヤフォンの知見が活かされているといいます。このサイズの大きさを利用して内蔵アンプの搭載が可能となったんでしょう。
またTWS800はタッチコントロールですが、普通の完全ワイヤレスよりもフェイスプレートが大きいためにタッチがしやすくなっています。
5. イヤーピースサイズに余裕をもたせたケース
充電機能付きのケースは大柄なものですが、これは最大のイヤーピースを装着してもそのまま格納できる余裕のある大きさにしたといいます。いままでの完全ワイヤレスでは大きなイヤーピースをつけると格納できないこともあったので、これもマニアメーカーならではの視点です。
実際にSednafi ShortとXelastecのLサイズはつけたまま格納することができました。ただケースは端子部分がもう少し深い方がぴったりと充電端子がはまったのではないかと思う。
TWS800は高インピーダンスのイヤフォンを内蔵アンプでぐいぐいとドライブするイヤフォン、というわけです。TWS800の単体での再生時間は4.5時間と最新のトレンドからすると短いんですが、それだけ電力を音質の方に回しているんでしょう。(ケースと併用すると31.5時間)
* インプレ
TWS800はまずイヤーピース選びからはじまります。あとで書きますが、TWS800は高性能なこともあって、いままでの完全ワイヤレスにはないくらいイヤーピースの差が出ます。
TWS800には標準でたくさんイヤーピースがついてきますが、完全ワイヤレスなのにダブルフランジやトリプルフランジまでついてくるのがいかにもマニアックメーカーという感じがします。いろいろ変えてみたけど、ダブルフランジか白色のタイプが良いように思いましたが、自分に微妙に大きさが合わない感じだったので、やはり慣れているSednaFit系を使いました。Sednafit shortとXelastecを比べてみましたが、どちらもかなり差があってどちらもよいところがあります。Sednafit shortだと中低域がよりパワフルになって、サウンドがより個性的になります。下のインプレは主にSednafit shortで聞いてます。
Xelastecだとより中高域がクリアで鮮明に聴こえます。音がよりシャープでより細かい音が鮮明に聞こえるのでXelastecの方が高インピーダンスの高性能イヤフォンらしく聴こえるように思います。
重さは他の完全ワイヤレスよりも重いが、耳につけてみるとあまり重さは気になりません。イヤーピースがきちんと装着されていればさほど脱落を恐れなくても良いと思う。
きちんと耳に座るところはユニバーサルイヤフォンという感じの装着感の良さです。ただユニバーサルタイプでケーブルがないことに私も含めて多くの人は慣れてないと思うので、耳のポジションに入れるために装着してから少し手直しが必要となります。ケーブルが位置決めに大事だったのを再認識しますが、この辺も新鮮ではありますね。
それとTWS800の特徴としては遮音性が高いこともあげられます。おそらくフェイスプレートが金属だからだと思いますが、かなり聞こえないので店とかでは外さないといけないことも多いかもしれません。
ちなみに結構硬め(?)というかほぐれにくいタイプのイヤフォンなので、エージングはしっかりやってから聞いたほうがよいです。
試聴にはiPhone12Proを使っています。
TWS800の音質は高音質と言われる他の完全ワイヤレスよりも明らかにひとクラス違います。マニアでなくともだれでも気がつくような大きな差があります。
特に音の厚み、低音の重さと音の広がりと立体感はやはりSoCベースの電子回路では及ばないとは思いますね。まるでデジタルプレーヤーかアンプを通しているかのようです。ズドン・ドスンという重みが他の完全ワイヤレスだと、ああ低域を盛り上げているなという気がするけれども、TWS800では空気がたくさん動いている感じですね。和太鼓の連打では迫力が違い、ベースのホボーンという迫力がとても気持ち良く感じられます。
躍動感とダイナミクス、力強さはいかにも電気をふんだんに使っている感じで、再生時間が4時間というのも頷けるところです。力強さはアメリカンサウンドを彷彿とさせ、Blueminiのようなパワフルさが感じられます(開発者は違うということですが)。
TWS800の後に他の完全ワイヤレスを聴くと、かなり軽く薄く感じられます。音量の違いではないですね。iPhone直とポタアン通したくらいの差がある感じです。まあ実際にそうなんですが。
高域は透明感があり金属の音、ベルの音がきれいに響きます。低域の重さやパンチ、ドライブ感とパワー感はロックファンならくせになるでしょう。低音が重くたっぷりとあってアンプ内蔵の力強さがあるので、ロックのような音楽には好適です。他の完全ワイヤレスで聴くよりも躍動感があり体が動いてしまいます。
良録音を聴くと他の完全ワイヤレスとは一線を画する音で、良いイヤフォンとプレーヤーで聞いていた人が完全ワイヤレスで物足りないと感じていた部分を補ってくれると思う。厚みとか豊かさというところですね、そこが音楽に感動を深めてくれるポイントです。
解像力が高く、ヴォーカルがため息をつくところなどはかなりリアルに聞こえます。ひとつひとつの楽器音の明瞭感も高いです。
それとパワーに余裕があるのか、他の完全ワイヤレスよりも同じ音量を低いボリューム位置で鳴らすので、クラシックや古楽の低レベル録音で高ダイナミックレンジの良録音なんかにも良いですね。高いボリューム位置は注意が必要なほど音圧が高くなります。
普通は完全ワイヤレスでは書きませんが、TWS800ではボリュームの上げ過ぎに注意してください。それだけすごいんです。
電池の持ちは他の完全ワイヤレスより悪いですが、通勤通学や出かける時の片道には十分以上です。さすがに飛行機の長時間はもたないと思いますが。
また操作性でいうとフェイスプレートが広いのでタッチ操作は容易です。左右のユニットでダブルタップで音量の上下、トリプルタップでスキップやバックができます。
* まとめ
HIFIMANは少し前にTWS600という完全ワイヤレスイヤフォンを出してますが、通信距離という点では見るべきものがあっても音質という点では今一つでした。このTWS800はブランドらしいマニアックな音質重視の製品となっています。
多少電池の持ちは悪いけど、完全ワイヤレスの気軽さで、IEMにアンプ繋げたような広い音場と迫力、独自のパンチと躍動感が楽しめます。
端的に言うと、TWS800は高インピーダンスのドライバーを内蔵ヘッドフォンアンプで駆動する、というコンセプトの製品であり、高級イヤフォンとしてもユニークです。
TWS800は電子機器と一体型の完全ワイヤレスを逆手にとって、プラス思考で考えた製品でもあります。
販売情報は下記の通りです。これが3万円だったらかなりコスパはいいと思います。
市場予想販売価格:30,000円(税抜)
発売予定日:12月2日
完全ワイヤレスも高音質をうたう製品が増えてきました。とはいえ、ハイエンドイヤフォンを使いこなすようなオーディオマニアを満足させるレベルとなるとそこまで突き抜けたものはこれまでにはあまりありませんでした。TWS800がその壁を超える初めての製品と言えるかもしれません。完全ワイヤレスの音質のゲームチェンジャーとなるでしょう。
2020年08月05日
完全ワイヤレスの「左右同時伝送」とMCSync方式の謎の解明
ASCII.jpにRHAの完全ワイヤレスTrueConnect2のレビュー記事を書きました。なかなか音質に優れたイヤフオンですが、ポイントの一つは「左右同時伝送」です。
https://ascii.jp/elem/000/004/022/4022322/
RHA TrueConnect2
今回はじめてAiroha(MediaTekの子会社)のMCSync(MultiCast Synchronization)方式を採用した「左右同時伝送」イヤフオンを使ったのですが、たしかになかなか優れた方式です。再生やスキップも左右別々にできるので完全に左右で双方向の伝送をしています。
従来のTWS Plusや前に書いたTempow( http://vaiopocket.seesaa.net/article/460813992.html )、あるいは最新の標準規格のLE Audioも含めて完全ワイヤレスの「左右同時伝送」には本来スマホ側の対応が必要になるため、例えばTWS Plusではクアルコムと疎遠のiPhoneでは使えないのが大きな難点です。LE AudioはiOS14で対応するかもしれないけど未知数ですし、OSのフラグメンテーションが多いAndroidではプロファイル更新が必要な点は不利です。
しかしMCSyncではスマホ側の対応の必要がありません。そのためAndroidでもiPhoneでも変更なしで使えます。これは大きなメリットであり、最近採用例が広がってきた大きな要因でしょう。ソニーのWF1000XM3の「左右同時伝送」もカスタマイズしているけれどもこの方式を使っているようです。
またクアルコムの新しいTrueWireless Mirroringも同時伝送に関してはTWS Plusの延長ではなく、McSyncと似たような方式ではないかと推測されます。
ただ、この方式の謎はなぜBluetoothのA2DPの1:1制限にかからないか、ということです。そもそもA2DPがひとつのオーディオデバイスとしか伝送できないという制限があったので、従来の完全ワイヤレスでは片方で受信してもう片方に転送するという手間をかけてたわけです。そしてこの過程で(ほぼ水分で)電波を通しにくいユーザーの頭を挟んで接続性に難が生じ、遅延も大きくなっていたわけです。これについては調べてもなかなか載ってないのですが、自分的に納得できないと気持ち悪いのでまずちょっと推測してみました。
これは推測なのでASCII記事には書かなかったのですが、おそらくペアリングするときは片側だけペアリングして、ペアリング成功するともう片方に接続情報(ペアリングコードやアドレスなど)を転送して、それから左右ユニットが(本来片側のみが受けるべき)同じ通信を受信し、右ユニットはRチャンネルのみ再生、左ユニットはLチャンネルのみ再生するんではないかと思います。もし違ってたら私がこの方式を特許に出しますw
それでだいたいのあたりを付けて次にUS特許データベースを検索してみました。すると次の特許を見つけました。
Hsieh; Kuen-Rong (Hsinchu, TW)
Assignee: Airoha Technology Corp.
Bluetooth audio packet sharing method
U. S. Patent 9,794,393 , November 27, 2015
おそらくこれがAirohaのMCSyncの特許(の一部)だと思います。特許だから広く請求を得るために一般的に書いてありますが、骨子は複数のBluetoothデバイスがあったときに、一つ目のデバイスが確立した接続情報(link information)をブロードキャストするという点です。二つ目以降のデバイスはその情報を使用して一つ目のデバイスと同じ接続を利用することができます。
ここでは共有するBluetooth接続情報はBDアドレス, Bluetooth clock, channel map, link keyとされています。BDアドレスはBluetoothのMACアドレスのことです。それならBDアドレスって別々のデバイスが同じアドレスを持てるのか、と思いますがそこをなんとかしたからこそ2つのデバイスが1つのデバイスとみなされてA2DPの制限にかからないのでしょう。Bluetooth clockはBTデバイスの内部クロックで周波数ホップのタイミングなどで使います。channel mapは左右チャンネルではなくBTが周波数ホップするときのチャンネルです。Link keyはマスター・デバイス間の暗号カギでペアリングコードですね。これらの情報を左右デバイスが共有することで、スマホから見るとあたかも一つのユニットとだけ伝送してるように見えるので、1:1制限から逃れられるというわけですね。
*ちなみに周波数ホップについては下記のKleerの時に書いた記事の4をご覧ください。ただし最近ではBluetoothもチャンネル専有方式が可能になっていす。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/109198956.html
公開特許なので図を引用しますが、fig2を見るとまずスマホとBTデバイスで接続を確立し、その情報をブロードキャストするとあります。
cf. fig2 of U. S. Patent 9,794,393
またこの方式では2個を超える音声接続が可能となるのでブロードキャストができますね。Link情報の共有の方法はA2DPである必要はないので複数のデバイスとコネクションが張れます。
ちなみに特許では「完全ワイヤレスイヤフォンの左右同時伝送方式」というアイディア自体は特許になりません。実現可能な仕組みを提示して初めてその実装方法が特許になりますので、クアルコムが似たような方式だけれども違う実装を提示すればそれは特許の抵触にはならないでしょう。クアルコムのTrueWireless Mirroringでは親子のロールスワッピングを前に打ち出してますし、それでSynchronizationではなくMirroringという言葉を使用しているのではないかと思います。
さて仕組みを自分的に(だいたい)納得したところで今後を考察してみると、MCSyncあるいは同様な方式が普及していくと、iPhoneで使えないTWS Plusは分が悪くなり、プロファイル更新が必要で古いOSでは対応できない出たばかりのLE Audioも先行きは怪しくなって来ます。ただクアルコムのTrueWireless Mirroringを採用しているQCC514x/304x系の新SoCはLE Audio Readyを表明しているので両方に保険は掛けてあると言えます。
ただしMCSyncが無敵かというと、クアルコムのQCC514x系の新SoCはAirohaよりも消費電力でアドバンテージがあるようなので、その他いろいろオンチップ機能を考えると十分巻き返しは可能かもしれません。
ただMCSync方式はやはり「ゲームチェンジャー」でしょうし、これが強者クアルコムの一角を崩すとなると、もちろんSoCはこの二社だけではなく中国製の低価格オンチップANC付きSoCとかいろいろ出てきてますし、完全ワイヤレスSoCはちよっとした戦国時代の様相を呈してきたのかもしれません。
https://ascii.jp/elem/000/004/022/4022322/
RHA TrueConnect2
今回はじめてAiroha(MediaTekの子会社)のMCSync(MultiCast Synchronization)方式を採用した「左右同時伝送」イヤフオンを使ったのですが、たしかになかなか優れた方式です。再生やスキップも左右別々にできるので完全に左右で双方向の伝送をしています。
従来のTWS Plusや前に書いたTempow( http://vaiopocket.seesaa.net/article/460813992.html )、あるいは最新の標準規格のLE Audioも含めて完全ワイヤレスの「左右同時伝送」には本来スマホ側の対応が必要になるため、例えばTWS Plusではクアルコムと疎遠のiPhoneでは使えないのが大きな難点です。LE AudioはiOS14で対応するかもしれないけど未知数ですし、OSのフラグメンテーションが多いAndroidではプロファイル更新が必要な点は不利です。
しかしMCSyncではスマホ側の対応の必要がありません。そのためAndroidでもiPhoneでも変更なしで使えます。これは大きなメリットであり、最近採用例が広がってきた大きな要因でしょう。ソニーのWF1000XM3の「左右同時伝送」もカスタマイズしているけれどもこの方式を使っているようです。
またクアルコムの新しいTrueWireless Mirroringも同時伝送に関してはTWS Plusの延長ではなく、McSyncと似たような方式ではないかと推測されます。
ただ、この方式の謎はなぜBluetoothのA2DPの1:1制限にかからないか、ということです。そもそもA2DPがひとつのオーディオデバイスとしか伝送できないという制限があったので、従来の完全ワイヤレスでは片方で受信してもう片方に転送するという手間をかけてたわけです。そしてこの過程で(ほぼ水分で)電波を通しにくいユーザーの頭を挟んで接続性に難が生じ、遅延も大きくなっていたわけです。これについては調べてもなかなか載ってないのですが、自分的に納得できないと気持ち悪いのでまずちょっと推測してみました。
これは推測なのでASCII記事には書かなかったのですが、おそらくペアリングするときは片側だけペアリングして、ペアリング成功するともう片方に接続情報(ペアリングコードやアドレスなど)を転送して、それから左右ユニットが(本来片側のみが受けるべき)同じ通信を受信し、右ユニットはRチャンネルのみ再生、左ユニットはLチャンネルのみ再生するんではないかと思います。もし違ってたら私がこの方式を特許に出しますw
それでだいたいのあたりを付けて次にUS特許データベースを検索してみました。すると次の特許を見つけました。
Hsieh; Kuen-Rong (Hsinchu, TW)
Assignee: Airoha Technology Corp.
Bluetooth audio packet sharing method
U. S. Patent 9,794,393 , November 27, 2015
おそらくこれがAirohaのMCSyncの特許(の一部)だと思います。特許だから広く請求を得るために一般的に書いてありますが、骨子は複数のBluetoothデバイスがあったときに、一つ目のデバイスが確立した接続情報(link information)をブロードキャストするという点です。二つ目以降のデバイスはその情報を使用して一つ目のデバイスと同じ接続を利用することができます。
ここでは共有するBluetooth接続情報はBDアドレス, Bluetooth clock, channel map, link keyとされています。BDアドレスはBluetoothのMACアドレスのことです。それならBDアドレスって別々のデバイスが同じアドレスを持てるのか、と思いますがそこをなんとかしたからこそ2つのデバイスが1つのデバイスとみなされてA2DPの制限にかからないのでしょう。Bluetooth clockはBTデバイスの内部クロックで周波数ホップのタイミングなどで使います。channel mapは左右チャンネルではなくBTが周波数ホップするときのチャンネルです。Link keyはマスター・デバイス間の暗号カギでペアリングコードですね。これらの情報を左右デバイスが共有することで、スマホから見るとあたかも一つのユニットとだけ伝送してるように見えるので、1:1制限から逃れられるというわけですね。
*ちなみに周波数ホップについては下記のKleerの時に書いた記事の4をご覧ください。ただし最近ではBluetoothもチャンネル専有方式が可能になっていす。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/109198956.html
公開特許なので図を引用しますが、fig2を見るとまずスマホとBTデバイスで接続を確立し、その情報をブロードキャストするとあります。
cf. fig2 of U. S. Patent 9,794,393
またこの方式では2個を超える音声接続が可能となるのでブロードキャストができますね。Link情報の共有の方法はA2DPである必要はないので複数のデバイスとコネクションが張れます。
ちなみに特許では「完全ワイヤレスイヤフォンの左右同時伝送方式」というアイディア自体は特許になりません。実現可能な仕組みを提示して初めてその実装方法が特許になりますので、クアルコムが似たような方式だけれども違う実装を提示すればそれは特許の抵触にはならないでしょう。クアルコムのTrueWireless Mirroringでは親子のロールスワッピングを前に打ち出してますし、それでSynchronizationではなくMirroringという言葉を使用しているのではないかと思います。
さて仕組みを自分的に(だいたい)納得したところで今後を考察してみると、MCSyncあるいは同様な方式が普及していくと、iPhoneで使えないTWS Plusは分が悪くなり、プロファイル更新が必要で古いOSでは対応できない出たばかりのLE Audioも先行きは怪しくなって来ます。ただクアルコムのTrueWireless Mirroringを採用しているQCC514x/304x系の新SoCはLE Audio Readyを表明しているので両方に保険は掛けてあると言えます。
ただしMCSyncが無敵かというと、クアルコムのQCC514x系の新SoCはAirohaよりも消費電力でアドバンテージがあるようなので、その他いろいろオンチップ機能を考えると十分巻き返しは可能かもしれません。
ただMCSync方式はやはり「ゲームチェンジャー」でしょうし、これが強者クアルコムの一角を崩すとなると、もちろんSoCはこの二社だけではなく中国製の低価格オンチップANC付きSoCとかいろいろ出てきてますし、完全ワイヤレスSoCはちよっとした戦国時代の様相を呈してきたのかもしれません。
2020年03月11日
コスパの良い完全ワイヤレス、LYPERTEK TEVIレビュー
ASCII.JPでLYPERTEK TEVIのレビュー記事を書きました。
2020年02月04日
Bluetooth LE Audioのアイソクロナス転送について
Bluetoothの新オーディオ規格であるLE Audioを含むBluetooth 5.2の最新改訂版(2020/1/6付け)のオーバービューが公開されています。
ここでは3つの追加が書かれていますが、ここでは3つめの(LE Audioのために)物理層にアイソクロナス(同時性)転送が追加されるというところについて書いてみます。(P26の3章から)
3.1.5のオーディオセクションで新しいLE Audioに対して、A2DPは古いBluetooth BR/EDRに基づいていると書いているので、LE AudioはA2DPとは異なるソフトウエア(プロファイル)になるような気がしますね。
3.2ではLE Isochronous Channel(アイソクロナス - 同時性転送)について書かれています。
これは複数のSink(受け手)が単一のソースから送信された時間的制約のあるデータ(time bounded data)、つまり音楽とかを同時に同期して受け取るということです。アイソクロナスというのは同時性とか等時性と訳されますが、時間が意味を持つという意味です。
これは定められたレイテンシー通りに転送する、time-limited validity(時間的有意)がなくなれば捨てられるとありますので、時間で受け取れなかったデータは欠けるということになりますね。
アイソクロナスはUSBにもIEEE1394にもありますが同じです。つまりデータの正しさよりも時間が優先ということです。たとえばアプリデータの転送ならばこれは許されなく、時間よりもデータの正しさが優先なので欠けたら再送させます。同時性転送の場合には欠けたら時間的にもう有意ではないので再送しても意味がありません。
ちなみにUSBの場合には転送モードのひとつとしてデータ転送用のバルクモードなどと並んで音楽用にアイソクロナスがあって、アイソクロナスの下にアシンクロナス(非同期)とシンクロナス(同期)があります。
ユースケースとしては次のものがあげられています。
1. Personal Audio Sharing
ひとつのスマートフォンから何人もの友人が同時に音楽を楽しむこと。この場合は友人たちのBluetoothヘッドフォン(sink)が一つのグループとみなされるようです。
2. Public Assisted Hearing
シアターなどで映像の会話をブロードキャストするということ。
3. Public television
例えばジムなどで映像の音声を同時に聴く
4. Multi-language Flight Announcement
飛行機内でBluetoothイヤフォンなどで言語選択してから機内放送を聞く。
3.2.2は具体的なアイソクロナス転送が書いてありますが、ここは技術者向けです。この転送は新しいLEアイソクロナス物理チャンネルが使われますが、コネクションあり(CIS - connected Isochronous stream)となしがあって周波数ホップしてアンカーを決めLE-SとLE-Fがどうたらこうたらというやつです。このコネクションありが友人同士で、コネクションなしがブロードキャスト(不特定多数)となるでしょう。
3.2.2.2のところでCISはグループ化してCIG(Connected Isochronous group)となり、それぞれの転送スケジュールはイベントとサブイベントで制御されるとありますので、これがさきに出てきた受信グループでしょう。このイベントは5msから4sまでの1.25ms単位のトリガーになるというので、LE AudioにおけるBluetoothのレイテンシーは理論的な最小値が5msで、レイテンシーのカウントは1.25ms単位となりますね。
3.2.2.4ではグループ内のSinchronization(同期)が書いてありますが、ここはたとえば完全ワイヤレスの左右ユニットの同期のことが触れられています。完全ワイヤレスの左右は二つのSink(受信機)とみなされます。それどれCIS(コネクションあり)でスマートフォンと接続され、CIGとみなされます。
この転送は連続したイベントになります。それぞれのイベントは決められた遅延時間内にすべてのSink(左右イヤフォン)に届いてはじめて再生されます。つまり一つ目のイベントはかならず二つ目のイベントよりも前に再生される(レンダリングされる)ため、左右の音の同期が確保されるということになるのでしょう。
ちなみに今話しているのは物理層(パケットの送受信)の話なので、プロファイルなど上の論理層では違った遅延の定義があるかもしれません。
ちなみにCIGには31個までのCISを含むことができます。完全ワイヤレスは2つのCISを使うので、完全ワイヤレスを使う場合には、15人まで同時に音楽シェアリングできるということになりますね。15人も一緒に聴きたい友達がいる人はそうないと思うのでこれはいいでしょう。
ブロードキャストではコネクションなしなので、いささか状況が異なりますが、いずれにせよブロードキャスト内にある完全ワイヤレスでも左右の音は同期しなければならないので、やはり似たような同期メカニズムがあります。
BIGでも持てるBISは31までなので、空港ラウンジ内に完全ワイヤレスの人が多いとちょっと困ったことになるように思いますが、その場合は論理層でなんとかするのでしょうね。
あと3.2.2.7のセキュリティですが、この辺はペアリングに関係してきますね。ペアリングは送り手と受け手が相互にカギを交換することです。
コネクションありはいままでのペアリングとして、コネクションなしのブロードキャストってペアリングはどうなるんだと思いますが、このために新しいLE security Mode3という新しいセキュリティレベル群が用意されています。レベルはセキュリティなし、認証されたブロードキャストコードの使用、未認証のコードの使用とあります。おそらくコードは以前のBluetoothの様に画面に3241とか出てきてそれをタイプインするというようなことだと思いますが、イヤフォンでそれができるのかはちょっとわからないところですね。現実的にはおそらくセキュリティーなしのモードになると思います。
ここでは3つの追加が書かれていますが、ここでは3つめの(LE Audioのために)物理層にアイソクロナス(同時性)転送が追加されるというところについて書いてみます。(P26の3章から)
3.1.5のオーディオセクションで新しいLE Audioに対して、A2DPは古いBluetooth BR/EDRに基づいていると書いているので、LE AudioはA2DPとは異なるソフトウエア(プロファイル)になるような気がしますね。
3.2ではLE Isochronous Channel(アイソクロナス - 同時性転送)について書かれています。
これは複数のSink(受け手)が単一のソースから送信された時間的制約のあるデータ(time bounded data)、つまり音楽とかを同時に同期して受け取るということです。アイソクロナスというのは同時性とか等時性と訳されますが、時間が意味を持つという意味です。
これは定められたレイテンシー通りに転送する、time-limited validity(時間的有意)がなくなれば捨てられるとありますので、時間で受け取れなかったデータは欠けるということになりますね。
アイソクロナスはUSBにもIEEE1394にもありますが同じです。つまりデータの正しさよりも時間が優先ということです。たとえばアプリデータの転送ならばこれは許されなく、時間よりもデータの正しさが優先なので欠けたら再送させます。同時性転送の場合には欠けたら時間的にもう有意ではないので再送しても意味がありません。
ちなみにUSBの場合には転送モードのひとつとしてデータ転送用のバルクモードなどと並んで音楽用にアイソクロナスがあって、アイソクロナスの下にアシンクロナス(非同期)とシンクロナス(同期)があります。
ユースケースとしては次のものがあげられています。
1. Personal Audio Sharing
ひとつのスマートフォンから何人もの友人が同時に音楽を楽しむこと。この場合は友人たちのBluetoothヘッドフォン(sink)が一つのグループとみなされるようです。
2. Public Assisted Hearing
シアターなどで映像の会話をブロードキャストするということ。
3. Public television
例えばジムなどで映像の音声を同時に聴く
4. Multi-language Flight Announcement
飛行機内でBluetoothイヤフォンなどで言語選択してから機内放送を聞く。
3.2.2は具体的なアイソクロナス転送が書いてありますが、ここは技術者向けです。この転送は新しいLEアイソクロナス物理チャンネルが使われますが、コネクションあり(CIS - connected Isochronous stream)となしがあって周波数ホップしてアンカーを決めLE-SとLE-Fがどうたらこうたらというやつです。このコネクションありが友人同士で、コネクションなしがブロードキャスト(不特定多数)となるでしょう。
3.2.2.2のところでCISはグループ化してCIG(Connected Isochronous group)となり、それぞれの転送スケジュールはイベントとサブイベントで制御されるとありますので、これがさきに出てきた受信グループでしょう。このイベントは5msから4sまでの1.25ms単位のトリガーになるというので、LE AudioにおけるBluetoothのレイテンシーは理論的な最小値が5msで、レイテンシーのカウントは1.25ms単位となりますね。
3.2.2.4ではグループ内のSinchronization(同期)が書いてありますが、ここはたとえば完全ワイヤレスの左右ユニットの同期のことが触れられています。完全ワイヤレスの左右は二つのSink(受信機)とみなされます。それどれCIS(コネクションあり)でスマートフォンと接続され、CIGとみなされます。
この転送は連続したイベントになります。それぞれのイベントは決められた遅延時間内にすべてのSink(左右イヤフォン)に届いてはじめて再生されます。つまり一つ目のイベントはかならず二つ目のイベントよりも前に再生される(レンダリングされる)ため、左右の音の同期が確保されるということになるのでしょう。
ちなみに今話しているのは物理層(パケットの送受信)の話なので、プロファイルなど上の論理層では違った遅延の定義があるかもしれません。
ちなみにCIGには31個までのCISを含むことができます。完全ワイヤレスは2つのCISを使うので、完全ワイヤレスを使う場合には、15人まで同時に音楽シェアリングできるということになりますね。15人も一緒に聴きたい友達がいる人はそうないと思うのでこれはいいでしょう。
ブロードキャストではコネクションなしなので、いささか状況が異なりますが、いずれにせよブロードキャスト内にある完全ワイヤレスでも左右の音は同期しなければならないので、やはり似たような同期メカニズムがあります。
BIGでも持てるBISは31までなので、空港ラウンジ内に完全ワイヤレスの人が多いとちょっと困ったことになるように思いますが、その場合は論理層でなんとかするのでしょうね。
あと3.2.2.7のセキュリティですが、この辺はペアリングに関係してきますね。ペアリングは送り手と受け手が相互にカギを交換することです。
コネクションありはいままでのペアリングとして、コネクションなしのブロードキャストってペアリングはどうなるんだと思いますが、このために新しいLE security Mode3という新しいセキュリティレベル群が用意されています。レベルはセキュリティなし、認証されたブロードキャストコードの使用、未認証のコードの使用とあります。おそらくコードは以前のBluetoothの様に画面に3241とか出てきてそれをタイプインするというようなことだと思いますが、イヤフォンでそれができるのかはちょっとわからないところですね。現実的にはおそらくセキュリティーなしのモードになると思います。
2020年01月07日
Bluetooth LE Audio正式発表、LE Audioと呼んでね
Bluetooth SIGから正式にBluetooth LE Audioがアナウンスされました。
https://www.bluetooth.com/learn-about-bluetooth/bluetooth-technology/le-audio/
これからBluetooth AudioはLE AudioとClassic Audioに分かれます。
LE Audioの特徴は以下の通り
1. 新しいコーデックはLC3(Complexity Communications Codec)と呼ばれる。
低ビットレートでも高音質で、開発に柔軟性があるとのこと。
聞き取りの官能テストでSBCより音質がよく、SBCの半分のビットレートで済む。
2. マルチストリーム
ストリームは同期していて完全ワイヤレスに使えます。
3. LE Audioは補聴器もサポートしてる
4. LE Audioはブロードキャストできる
ブロードキャストはマルチルームみたいな用途でも、Bluetooth Audio Sharingというロケーションベースの用途にも使えます。例えば空港での音楽サービスです。
"20年前Bluetoothはオーディオのコードを切り離してワイヤレスオーディオマーケットを作った。今日我々はその革新を届ける"とのことです。
LE Audioは今年の第一四半期に発布されるとのことですので、ICや製品はまだ少し先になると思います。
https://www.bluetooth.com/learn-about-bluetooth/bluetooth-technology/le-audio/
これからBluetooth AudioはLE AudioとClassic Audioに分かれます。
LE Audioの特徴は以下の通り
1. 新しいコーデックはLC3(Complexity Communications Codec)と呼ばれる。
低ビットレートでも高音質で、開発に柔軟性があるとのこと。
聞き取りの官能テストでSBCより音質がよく、SBCの半分のビットレートで済む。
2. マルチストリーム
ストリームは同期していて完全ワイヤレスに使えます。
3. LE Audioは補聴器もサポートしてる
4. LE Audioはブロードキャストできる
ブロードキャストはマルチルームみたいな用途でも、Bluetooth Audio Sharingというロケーションベースの用途にも使えます。例えば空港での音楽サービスです。
"20年前Bluetoothはオーディオのコードを切り離してワイヤレスオーディオマーケットを作った。今日我々はその革新を届ける"とのことです。
LE Audioは今年の第一四半期に発布されるとのことですので、ICや製品はまだ少し先になると思います。
2020年01月06日
CESでBluetooth LE Audioが登場、正式に完全ワイヤレス対応
CES 2020でBluetoothの新しいオーディオ規格である"Bluetooth LE Audio"が登場します。
これでBluetooth が公式に完全ワイヤレスに対応し、SBCに代わり新しいLC3コーデックが導入されます。従来の規格はClassic Audioと呼ばれて並存するようです。
ポイントは以下のような点です。
1. LC3コーデック
高効率で低電力(軽い?)
2. マルチストリーム
完全ワイヤレスに対応
3. ブロードキャスト
2と3は同期された1:nの接続が可能ということです。
このほかにアイソクロナスチャネルと呼ばれる転送方法が導入されるようです。
https://www.techradar.com/news/bluetooth-le-could-be-the-biggest-news-out-of-ces-2020
これでBluetooth が公式に完全ワイヤレスに対応し、SBCに代わり新しいLC3コーデックが導入されます。従来の規格はClassic Audioと呼ばれて並存するようです。
ポイントは以下のような点です。
1. LC3コーデック
高効率で低電力(軽い?)
2. マルチストリーム
完全ワイヤレスに対応
3. ブロードキャスト
2と3は同期された1:nの接続が可能ということです。
このほかにアイソクロナスチャネルと呼ばれる転送方法が導入されるようです。
https://www.techradar.com/news/bluetooth-le-could-be-the-biggest-news-out-of-ces-2020
2018年07月30日
Bluetoothのマルチキャストオーディオ技術、Tempow Audio Profile
最近はSonos、Roon、ChromecastやAirPlay 2などのように一つのソース機器から複数の再生機器にストリーミングするマルチルーム、マルチキャスト機能が流行りつつありますが、Bluetoothでは1:1の接続しかできないことはよく知られています。完全ワイヤレスイヤフォンも片側ユニットに送ってから、そこからさらにBTないしはNFMIでもう片方に転送しているのはこの1:1制限によるものです。
しかし、BluetoothでもBTヘッドフォンを聴きながら、BTマウスやキーボードを同時に使うなどのようにひとつのスマートフォンから複数のBluetooth接続をすることはもちろん可能です。つまりオーディオにおける1:1制限はBluetoothの制限というよりも、オーディオプロファイル(ドライバー)であるA2DPの制限です。
それに興味ある取り組みをしているのが、TEMPOWです。TEMPOWは2016年に設立されたフランスのベンチャー企業(Startup)で、マルチキャストの可能なTAP(Tempow Audio Profile)というオーディオプロファイルを提案しています。TAPに対応することで最大4つまでの機器と同時に音楽再生の接続ができます。しかし再生デバイス側ではTAPの対応の必要はありません。対応が必要なのはスマホなどホスト側だけです。
TEMPOWホームページ
https://tempow.com/
TEMPOWホームページから転載
これはどういう仕組みかということをTempowのビンセント氏に少し聞いてみました。TAPはA2DP互換ですが、A2DPを直接書き換えたものではなく、スマホ側にA2DPと併存可能です。そのTAPをインストールしたスマホ側の設定で"Multi Bluetooth Audio"という設定項目があり、それを切り替えることでアプリがどのオーディオプロファイルを経由するかを選択できるということです。TAPにすれば同時に複数機器とやり取りできますが、ひとつひとつはA2DP互換ですから、再生デバイス側には対応不要というわけです。なかなかスマートな解法ですね。
現在はAndroidとLinuxだけ対応のようですが、レノボ、モトローラとパートナーシップを結んでいるようです。
ホームページを見ると完全ワイヤレスへの対応も考えられているようで、ちょっと面白そうですね。
しかし、BluetoothでもBTヘッドフォンを聴きながら、BTマウスやキーボードを同時に使うなどのようにひとつのスマートフォンから複数のBluetooth接続をすることはもちろん可能です。つまりオーディオにおける1:1制限はBluetoothの制限というよりも、オーディオプロファイル(ドライバー)であるA2DPの制限です。
それに興味ある取り組みをしているのが、TEMPOWです。TEMPOWは2016年に設立されたフランスのベンチャー企業(Startup)で、マルチキャストの可能なTAP(Tempow Audio Profile)というオーディオプロファイルを提案しています。TAPに対応することで最大4つまでの機器と同時に音楽再生の接続ができます。しかし再生デバイス側ではTAPの対応の必要はありません。対応が必要なのはスマホなどホスト側だけです。
TEMPOWホームページ
https://tempow.com/
TEMPOWホームページから転載
これはどういう仕組みかということをTempowのビンセント氏に少し聞いてみました。TAPはA2DP互換ですが、A2DPを直接書き換えたものではなく、スマホ側にA2DPと併存可能です。そのTAPをインストールしたスマホ側の設定で"Multi Bluetooth Audio"という設定項目があり、それを切り替えることでアプリがどのオーディオプロファイルを経由するかを選択できるということです。TAPにすれば同時に複数機器とやり取りできますが、ひとつひとつはA2DP互換ですから、再生デバイス側には対応不要というわけです。なかなかスマートな解法ですね。
現在はAndroidとLinuxだけ対応のようですが、レノボ、モトローラとパートナーシップを結んでいるようです。
ホームページを見ると完全ワイヤレスへの対応も考えられているようで、ちょっと面白そうですね。
2017年02月13日
Erato Audioの新しい完全ワイヤレス、Muse 5とRio 3のレビュー
Apollo 7のErato Audioからクラウドファンディング(indieGoGo)にてMuse 5とRio 3という新しい完全ワイヤレスイヤフォンが発売されました。Muse 5については国内導入されるようです。Eratoは台湾系のオーディオメーカーでnuForceとも関連があります。
Muse 5
Muse 5はApolloの兄弟ともいえるもので、小口径ドライバーを採用しています。ただし独自の特徴があり、イヤチップのほかに独自の装着性をよくする外耳用のスリープが採用され、3Dサウンドとして音場を広げる回路を内蔵しています。チャージャーもついていますがコストダウンされた感じで、Apolloよりも低価格です。
Rio 3
Rio 3は大口径ドライバー採用です。耳フックが付いているのでスポーツモデルに見えますが、音質もかなり良いです。Museより低コストでチャージャーがついていません。大柄でボタンも片側3つついています。
以下はiPhone 7 Plusで聴いています。
* ドライバー
Muse 5のドライバーは5.5mmの小口径ダイナミックドライバーを採用しています。Rio 3のドライバーは14.2mmの大口径ダイナミックドライバーを採用しています。
この違いはそのまま音質に現れてきます。最近ShureやSennheiserが小口径ダイナミックを採用しているように、大きいから良いとも限りません。ただし大きいドライバーにはそれなりの良さがあります。(後述)
両者は音質の差というよりも音の個性の差が大きいと感じます。
* スマホとの接続、左右ユニット接続
スマートフォンとの接続はBluetoothを採用、左右ユニット間の通信方式は明記がありませんが通常のBluetoothだと思います。
Muse5の場合、左右の音切れはかなり少なく優秀です。一日使っていて数回あるかないかというレベルです。最近は完全ワイヤレスも増えてきて、左右音切れを防止するためにNFMIを採用するモデルも増えてきましたが、BTでもこのくらいのレベルになると十分であるようには思います。
音切れ確認テストとして、ためしに両手で両耳を覆うと左(親機)は切れませんが、右の子機は切れます。iPhoneをポケットに入れていても親機との接続は切れません。電車の中のようにWiFiの濃い環境でも特に問題ありません。
ただし、たまに音が切れたまましばらく戻らないことがありますが、リスタートすると直りますのでおそらく電波的なものではなくソフトウエアの問題だと思います。
Rio3は左右の音切れはややあります。ただしEarinやW800BTよりはずっと少なくて、Aria Oneと同等かやや良いくらいです。なぜMuse 5と違うのか分かりませんがファームウエアは違うところに出しているのかもしれません。
両方ともペアリングは同じで、まず書かれた手順により左右をペアリングします。そのあとでいったん電源切って親機である左をスマートフォンとペアリングします。そしてふたたび右を立ち上げて左右を接続します。このときに音声ガイドがあり、左右接続の時は"True Wireless connected"、スマートフォンとつながったときは"Phone connected"としゃべります。
この辺はやや煩雑で、AirPodsとは差が出るかもしれません。
両方とも日本語マニュアルがあります(クラウドファンディングモデルでも)。ただしやや分かりにくいです。
* 対応CODEC
Muse 5、RIO 3ともにAptX,AAC,SBCに対応しています。またRio3ではどのコーデックで受信しているかの確認がLEDでできます。これは珍しいですね。
* チャージングステーション
Muse 5はApollo 7 同様にチャージャーがついています。ただしApolloの金属製のチャージャーに比べるとプラスチックでやや安くなっています。これは全体的なコストダウン(Apolloの約半額)を考えると仕方ないでしょう。
Muse 5チャージャーケース
実用的にはあまり問題ありませんが、独特のイヤチップのおかげでややはめ込みにくくなっています。ラフにはめ込んで軽く左右にひねると入りやすくなります。ユニットに赤いランプがつくと充電&電源オフとなります。完全ワイヤレスでありがちな、片側だけの充電もこのランプで防止できます。Muse 5はApolloよりも長く4時間持ちます(実測)。
Rio 3はチャージャーがなく、その分長く6時間電池が使えます。充電は各ユニットごとにマイクロUSBの口があるのでそれで充電します。同梱で二股のUSBケーブルがついてきます。
* ユニット側での操作
Muse 5はワンボタンでApollo 7と同様な操作ができます。ボタンが大きくなったのでやや操作感は向上しています。
Rio 3は3つの独立したボタンがあり、多様な機能がありますが、指探りで引っかかりがないのでどのボタン触ってるかがわかりにくいのが難点です。デザイン性はともかく、独立のポッチにした方がよかったと思いますね。
いずれにせよどちらも再生のポーズは簡単なので、ちょっと音楽を止めて外の音を聴きたいと言う時には役に立ちます。
こうしたBTで左右独立タイプの場合は子機側に操作系があると子機側を手で覆ってしまい途切れることがあるので、操作系は親機側においたほうがよいと思います。NFMIだともっと柔軟性があるかもしれません。
* 通話機能
Muse 5もRio 3もマイク内蔵で通話が可能です。またSiriなどの操作にも使用できます。
* 外観と使用感
Muse 5
Rio 3
両方とも箱・パッケージはよくできています。パッケージデザインは共通です。Rio 3にはチャージャーケースがないのでジップポーチがついています。
Muse 5
Muse 5の大きな特徴はフィットスリープという外耳用のスリープがついていて、セミカスタムのようにフィットの適用範囲が大きいということです。これはいままでのイヤフォンにはなかった特徴です。つまり従来通りのシリコンイヤチップのS/M/L、フィットスリープのS/M/Lの3x3の組み合わせでフィットできることになります。
Muse 5のイヤチップとフィットスリーブ
このフィットスリープは実際かなり有効です。特に外耳のフィットスリープは向きが重要なので、少し回転させながらポイントを探すと良いと思います。装着感はすべてのユニバーサルの中でもかなり上位と言えます。
Rio 3
RIO 3はやや大柄でフックにかけるタイプのためにやや装着に違和感はあります。耳掛けは柔軟で痛さはあまりありません。イヤチップは普通のIEMのようにラバーシリコンのイヤチップを使います。
Rio 3は装着性、遮音性に関しては標準的というくらいです。
* レイテンシー
Muse 5はHuluで映画を見るときはまあ悪くない程度だと思います。ゲームではちょっと使えないですね。Rio 3はもう少し遅れます。ちょっと映画でもつらいかもしれません。ただどちらもW800BTよりはかなり良いです。
* 音質
Muse 5の音質はかなり上質です。Apollo同等かそれ以上で私が聞いた中では完全ワイヤレスでいまのところ一番音が良いですね。
だいたいApollo 7と同じような音ですが、遮音性がより高いのと3D機能(後述)があるので実質はMuse 5の方がよいと思います。
シャープで歯切れが良く、スピードがあってノリが良い感じです。ベースの打撃感が鋭くパンチがあります。低音の量はほどほどですが深みが感じられます。全体にわりとワイドレンジ感もあります。ダイナミックだからはじめ音は甘いので、最低3-4時間はエージングして聞いた方が良いですね。
Muse 5
Muse5の売りの一つの3D機能ですが、標準で聴く分にはわりと自然で常用できます。感じとしてはサラウンドというよりは上質なクロスフィードだと思います。
メールによる製品説明によると、右側ユニットに仮想的に左側の音が聞こえるように、という説明なのでDSPを使用して左右チャンネルを混ぜるような仕組みであり、やはりクロスフィードの一種と言えると思います。ただこの仕組みにHead Related Transfer Function (HRTF)というノンリニアで周波数に応じた仕組みを採用しているところがみそのようです。
Rio 3
Rio 3も音質はかなり優れています。Muse 5とくらべると第一印象はRio3の方が音がいいかもとも思います。まあまあクリアというところですが、迫力がかなりあってパワフル。スケール感もあります。さすが大口径でダイアフラムでかい(15mm)だけありますね。低域がイヤフォン離れして、ヘッドホンみたいな余裕のある音が出ます。
なめらかで、思ったより低音出っ張ってる感はなくて、くらべるとAria Oneの方がドンシャリっぽい感じです。低音出るっていうよりも、迫力があってスケール感もあると言えます。また素直できれいな音色も良いです。
ただしよく聴きこむと、ワイドレンジ感とか音の細かさはMuse5やApolloの方が良いと思います。くらべてみるとMuse5の方が端正な音ではあります。どっちかというとオーディオファイル向けですね。ただしぱっと聞きはRio3が良いと言う人も多いでしょう。Rio3はより一般向けで、ロック系はRio3の方が好ましいと思います。
いずれにせよ小口径と大口径のダイナミックドライバー競演というか、それぞれのよいところがうまく生かされているのはEratoさすがだと思います。
* まとめ
簡単にまとめると、Muse 5は端的に完全ワイヤレスで私が見たなかで一番良いです。欠点も少なく、音質も良いですね。電池も十分持ちます。ただし全体にApollo7よりは低コストにした感があってチープではあります。またチャージャーの収納性と取り出してすぐ電源オンに関してはEarinの方がよいですね。それとペアリングはなんとかしてほしいところ。
Rio3は音質が独特で高得点ですが、操作性が良くないとか左右音切れがややあるなど欠点もあります。まずMuse 5を買って、お金に余裕があれば違う音質を楽しむためにRio 3も買うのがお勧めです。(わたしはRio3は70$くらいだったので)
Muse 5
Muse 5はApolloの兄弟ともいえるもので、小口径ドライバーを採用しています。ただし独自の特徴があり、イヤチップのほかに独自の装着性をよくする外耳用のスリープが採用され、3Dサウンドとして音場を広げる回路を内蔵しています。チャージャーもついていますがコストダウンされた感じで、Apolloよりも低価格です。
Rio 3
Rio 3は大口径ドライバー採用です。耳フックが付いているのでスポーツモデルに見えますが、音質もかなり良いです。Museより低コストでチャージャーがついていません。大柄でボタンも片側3つついています。
以下はiPhone 7 Plusで聴いています。
* ドライバー
Muse 5のドライバーは5.5mmの小口径ダイナミックドライバーを採用しています。Rio 3のドライバーは14.2mmの大口径ダイナミックドライバーを採用しています。
この違いはそのまま音質に現れてきます。最近ShureやSennheiserが小口径ダイナミックを採用しているように、大きいから良いとも限りません。ただし大きいドライバーにはそれなりの良さがあります。(後述)
両者は音質の差というよりも音の個性の差が大きいと感じます。
* スマホとの接続、左右ユニット接続
スマートフォンとの接続はBluetoothを採用、左右ユニット間の通信方式は明記がありませんが通常のBluetoothだと思います。
Muse5の場合、左右の音切れはかなり少なく優秀です。一日使っていて数回あるかないかというレベルです。最近は完全ワイヤレスも増えてきて、左右音切れを防止するためにNFMIを採用するモデルも増えてきましたが、BTでもこのくらいのレベルになると十分であるようには思います。
音切れ確認テストとして、ためしに両手で両耳を覆うと左(親機)は切れませんが、右の子機は切れます。iPhoneをポケットに入れていても親機との接続は切れません。電車の中のようにWiFiの濃い環境でも特に問題ありません。
ただし、たまに音が切れたまましばらく戻らないことがありますが、リスタートすると直りますのでおそらく電波的なものではなくソフトウエアの問題だと思います。
Rio3は左右の音切れはややあります。ただしEarinやW800BTよりはずっと少なくて、Aria Oneと同等かやや良いくらいです。なぜMuse 5と違うのか分かりませんがファームウエアは違うところに出しているのかもしれません。
両方ともペアリングは同じで、まず書かれた手順により左右をペアリングします。そのあとでいったん電源切って親機である左をスマートフォンとペアリングします。そしてふたたび右を立ち上げて左右を接続します。このときに音声ガイドがあり、左右接続の時は"True Wireless connected"、スマートフォンとつながったときは"Phone connected"としゃべります。
この辺はやや煩雑で、AirPodsとは差が出るかもしれません。
両方とも日本語マニュアルがあります(クラウドファンディングモデルでも)。ただしやや分かりにくいです。
* 対応CODEC
Muse 5、RIO 3ともにAptX,AAC,SBCに対応しています。またRio3ではどのコーデックで受信しているかの確認がLEDでできます。これは珍しいですね。
* チャージングステーション
Muse 5はApollo 7 同様にチャージャーがついています。ただしApolloの金属製のチャージャーに比べるとプラスチックでやや安くなっています。これは全体的なコストダウン(Apolloの約半額)を考えると仕方ないでしょう。
Muse 5チャージャーケース
実用的にはあまり問題ありませんが、独特のイヤチップのおかげでややはめ込みにくくなっています。ラフにはめ込んで軽く左右にひねると入りやすくなります。ユニットに赤いランプがつくと充電&電源オフとなります。完全ワイヤレスでありがちな、片側だけの充電もこのランプで防止できます。Muse 5はApolloよりも長く4時間持ちます(実測)。
Rio 3はチャージャーがなく、その分長く6時間電池が使えます。充電は各ユニットごとにマイクロUSBの口があるのでそれで充電します。同梱で二股のUSBケーブルがついてきます。
* ユニット側での操作
Muse 5はワンボタンでApollo 7と同様な操作ができます。ボタンが大きくなったのでやや操作感は向上しています。
Rio 3は3つの独立したボタンがあり、多様な機能がありますが、指探りで引っかかりがないのでどのボタン触ってるかがわかりにくいのが難点です。デザイン性はともかく、独立のポッチにした方がよかったと思いますね。
いずれにせよどちらも再生のポーズは簡単なので、ちょっと音楽を止めて外の音を聴きたいと言う時には役に立ちます。
こうしたBTで左右独立タイプの場合は子機側に操作系があると子機側を手で覆ってしまい途切れることがあるので、操作系は親機側においたほうがよいと思います。NFMIだともっと柔軟性があるかもしれません。
* 通話機能
Muse 5もRio 3もマイク内蔵で通話が可能です。またSiriなどの操作にも使用できます。
* 外観と使用感
Muse 5
Rio 3
両方とも箱・パッケージはよくできています。パッケージデザインは共通です。Rio 3にはチャージャーケースがないのでジップポーチがついています。
Muse 5
Muse 5の大きな特徴はフィットスリープという外耳用のスリープがついていて、セミカスタムのようにフィットの適用範囲が大きいということです。これはいままでのイヤフォンにはなかった特徴です。つまり従来通りのシリコンイヤチップのS/M/L、フィットスリープのS/M/Lの3x3の組み合わせでフィットできることになります。
Muse 5のイヤチップとフィットスリーブ
このフィットスリープは実際かなり有効です。特に外耳のフィットスリープは向きが重要なので、少し回転させながらポイントを探すと良いと思います。装着感はすべてのユニバーサルの中でもかなり上位と言えます。
Rio 3
RIO 3はやや大柄でフックにかけるタイプのためにやや装着に違和感はあります。耳掛けは柔軟で痛さはあまりありません。イヤチップは普通のIEMのようにラバーシリコンのイヤチップを使います。
Rio 3は装着性、遮音性に関しては標準的というくらいです。
* レイテンシー
Muse 5はHuluで映画を見るときはまあ悪くない程度だと思います。ゲームではちょっと使えないですね。Rio 3はもう少し遅れます。ちょっと映画でもつらいかもしれません。ただどちらもW800BTよりはかなり良いです。
* 音質
Muse 5の音質はかなり上質です。Apollo同等かそれ以上で私が聞いた中では完全ワイヤレスでいまのところ一番音が良いですね。
だいたいApollo 7と同じような音ですが、遮音性がより高いのと3D機能(後述)があるので実質はMuse 5の方がよいと思います。
シャープで歯切れが良く、スピードがあってノリが良い感じです。ベースの打撃感が鋭くパンチがあります。低音の量はほどほどですが深みが感じられます。全体にわりとワイドレンジ感もあります。ダイナミックだからはじめ音は甘いので、最低3-4時間はエージングして聞いた方が良いですね。
Muse 5
Muse5の売りの一つの3D機能ですが、標準で聴く分にはわりと自然で常用できます。感じとしてはサラウンドというよりは上質なクロスフィードだと思います。
メールによる製品説明によると、右側ユニットに仮想的に左側の音が聞こえるように、という説明なのでDSPを使用して左右チャンネルを混ぜるような仕組みであり、やはりクロスフィードの一種と言えると思います。ただこの仕組みにHead Related Transfer Function (HRTF)というノンリニアで周波数に応じた仕組みを採用しているところがみそのようです。
Rio 3
Rio 3も音質はかなり優れています。Muse 5とくらべると第一印象はRio3の方が音がいいかもとも思います。まあまあクリアというところですが、迫力がかなりあってパワフル。スケール感もあります。さすが大口径でダイアフラムでかい(15mm)だけありますね。低域がイヤフォン離れして、ヘッドホンみたいな余裕のある音が出ます。
なめらかで、思ったより低音出っ張ってる感はなくて、くらべるとAria Oneの方がドンシャリっぽい感じです。低音出るっていうよりも、迫力があってスケール感もあると言えます。また素直できれいな音色も良いです。
ただしよく聴きこむと、ワイドレンジ感とか音の細かさはMuse5やApolloの方が良いと思います。くらべてみるとMuse5の方が端正な音ではあります。どっちかというとオーディオファイル向けですね。ただしぱっと聞きはRio3が良いと言う人も多いでしょう。Rio3はより一般向けで、ロック系はRio3の方が好ましいと思います。
いずれにせよ小口径と大口径のダイナミックドライバー競演というか、それぞれのよいところがうまく生かされているのはEratoさすがだと思います。
* まとめ
簡単にまとめると、Muse 5は端的に完全ワイヤレスで私が見たなかで一番良いです。欠点も少なく、音質も良いですね。電池も十分持ちます。ただし全体にApollo7よりは低コストにした感があってチープではあります。またチャージャーの収納性と取り出してすぐ電源オンに関してはEarinの方がよいですね。それとペアリングはなんとかしてほしいところ。
Rio3は音質が独特で高得点ですが、操作性が良くないとか左右音切れがややあるなど欠点もあります。まずMuse 5を買って、お金に余裕があれば違う音質を楽しむためにRio 3も買うのがお勧めです。(わたしはRio3は70$くらいだったので)
2016年12月24日
AirPodsの左右通信方式について考える
出荷が遅延していたAirPodsが先日発売されました。私はまだ入手していませんがいろいろなところでレビューが上がり始めています。
ちょっと興味があったのは完全ワイヤレスのAirPodsの左右ユニット間接続です。Androidとも接続報告があるのでAirPodsとスマートフォンの間は普通のBT接続と推測できますが、私の興味は完全ワイヤレスでのポイントとなる左右接続はどうかということです。AirPodsでは従来の完全ワイヤレスのような片方から片方へのリレーでBTを渡す方式のほかに、左右独立にスマートフォンとBTで通信しているとか、DashのようなNFMIの仕様(NFMIについてはこちら)、あるいは謎のRF(無線方式)とかいろいろと説がありました。
まず左右独立BTを考えてみます。スマートフォンでBTキーボードでタイプしながらBTヘッドフォンで音楽を聴いている人は多いと思いますが、BT自体は複数の機材とセッションが張れないわけではありません。BTヘッドフォンでKleerのように1(スマホ):2(RとL)の接続ができないのはBT自体というよりA2DPプロファイルの制約です。
ですから左右独立BTであるならばAppleが独自のプロファイルを作ることになりますが、これはAndroidで使えるということと矛盾するのでなくなります。もうひとつは2つのA2DPセッションを張ることですが、これが可能かどうかはわかりませんが、こうすると両セッションのオーディオデータストリームの同期が必要になります。これはちょっと考えにくいように思います。ないとはいえませんが、いずれにせよ左右ユニット間での同期通信が必要になります。
あとはNFMIとか謎の方式ですが、これは中を見て該当の通信チップがあるかどうかを調べれば分かります。
そこでおなじみiFixitがAirPodsを分解したので見てみます。
https://www.ifixit.com/Teardown/AirPods+Teardown/75578
この分解によれば、W1以外の通信チップはないように思えるので(Step11)、W1チップ自体にBT以外の独自通信機能がない限りは、やはり左右ユニット間もBTで通信していて、全体的には左右どちらかがまずスマホとつながり、そこからもう片方に信号を渡すリレー形式であると思います。長いステムの部分はやはりアンテナなので(Step9)、こうした張り出しを設けている点も直進性が高く人体で遮られやすいBTの特質を考慮しているように思います。
またiFixitがケース(チャージャー)側の分解において、ARM SoCのコネクタ部分のはんだ付けが汚く、通常は出荷を急いだ場合にみられる現象があることから、AirPodsの出荷遅れの原因はケース側ではないかと推測しています。
ちょっと興味があったのは完全ワイヤレスのAirPodsの左右ユニット間接続です。Androidとも接続報告があるのでAirPodsとスマートフォンの間は普通のBT接続と推測できますが、私の興味は完全ワイヤレスでのポイントとなる左右接続はどうかということです。AirPodsでは従来の完全ワイヤレスのような片方から片方へのリレーでBTを渡す方式のほかに、左右独立にスマートフォンとBTで通信しているとか、DashのようなNFMIの仕様(NFMIについてはこちら)、あるいは謎のRF(無線方式)とかいろいろと説がありました。
まず左右独立BTを考えてみます。スマートフォンでBTキーボードでタイプしながらBTヘッドフォンで音楽を聴いている人は多いと思いますが、BT自体は複数の機材とセッションが張れないわけではありません。BTヘッドフォンでKleerのように1(スマホ):2(RとL)の接続ができないのはBT自体というよりA2DPプロファイルの制約です。
ですから左右独立BTであるならばAppleが独自のプロファイルを作ることになりますが、これはAndroidで使えるということと矛盾するのでなくなります。もうひとつは2つのA2DPセッションを張ることですが、これが可能かどうかはわかりませんが、こうすると両セッションのオーディオデータストリームの同期が必要になります。これはちょっと考えにくいように思います。ないとはいえませんが、いずれにせよ左右ユニット間での同期通信が必要になります。
あとはNFMIとか謎の方式ですが、これは中を見て該当の通信チップがあるかどうかを調べれば分かります。
そこでおなじみiFixitがAirPodsを分解したので見てみます。
https://www.ifixit.com/Teardown/AirPods+Teardown/75578
この分解によれば、W1以外の通信チップはないように思えるので(Step11)、W1チップ自体にBT以外の独自通信機能がない限りは、やはり左右ユニット間もBTで通信していて、全体的には左右どちらかがまずスマホとつながり、そこからもう片方に信号を渡すリレー形式であると思います。長いステムの部分はやはりアンテナなので(Step9)、こうした張り出しを設けている点も直進性が高く人体で遮られやすいBTの特質を考慮しているように思います。
またiFixitがケース(チャージャー)側の分解において、ARM SoCのコネクタ部分のはんだ付けが汚く、通常は出荷を急いだ場合にみられる現象があることから、AirPodsの出荷遅れの原因はケース側ではないかと推測しています。
2016年10月31日
国産の完全ワイヤレス、ONKYO W800BT
これまで完全ワイヤレスというと海外メーカーのみだったわけですが、W800BTはONKYOが発売する初の国産の完全ワイヤレスイヤフォンとなります。海外では昨年あたりから展示されていたので、開発はかなり早い段階と言えるのでしょう。ちなみに下記の公式ホームページに形式名を「完全ワイヤレスイヤホン」と明記されています。
http://www.jp.onkyo.com/audiovisual/headphone/w800bt/
なかなか人気で品切れのニュースが出た点でも話題となりました。注目度はやはり大きいようです。
以下はiPhone6またはiPhone7Plusで聴いています。
* ドライバー
W800BTのドライバーは8.6mmのダイナミック型ドライバーを採用しています。再生帯域は6Hz - 22kHzです。(SBCのみで22kHzまでいるかはともかく)
* スマホとの接続、左右ユニット接続
スマートフォンとの接続はBluetoothを採用、左右ユニット間の通信方式は明記がありませんが通常のBTだと思います。片側だけの使用はできないと思います。
左右音切れはわりとあります。Earinと同程度だと思います。Apollo 7などに比べると少し多いですね。
また親機の右はiPhoneとの接続では通常はあまり音切れは気になりませんが、iPhone側のBTアンテナを手でふいに覆ってしまうと電波受信が悪くなりやすいです。Apolloはこうした障害にもうちょっと強いように思います。
W800BTは言葉が書いていないマニュアルなので、はじめはペアリングに戸惑うかもしれません。概念が新しいイヤフォンなのできちんと言葉の書かれた各国語向けのマニュアルがあった方がよいかと思います。
とはいえ、なれると簡単で電源両方同時長押しオンで左右ペアリングされて、あっさりiPhoneにもつながります。
またAria OneやApollo7にある接続したときやロストしたときの音声ガイドがないので不便を感じることもあります。(ピッとなるだけ)
* 対応CODEC
SBCのみに対応しています。ただし音質的な問題はあまりないと思います。
* チャージングステーション
完全ワイヤレスにおいてチャージングステーションはとても重要なコンポーネントですが、W800BTは(デザインは良いのですが)チャージャーがでかいのが難です。ケースにケーブル込みは良いように見えますが、実際はチャージャー自体の充電はたいてい家でやるためケーブルは持ち運ばないので、内蔵は不要だと思います。それより小さくして欲しいという感じです。
また充電の時にピンに刺すのがちょっと急いでいるとやりにくいので、他の完全ワイヤレスのように電極を使う形式にしてほしいと思います。ただしこれはがっちり差すため片側のみの充電がおきにくいのでその点では良いかもしれません。
* ユニット側での操作
W800BTの操作ボタンは電源のオンオフと通話機能のみで再生コントロールはできません。これはちょっと不便ですね。またW800BTは環境音ミックスのAudio Transparency機能もありませんのでアナウンスをちょっと聞きたいときに不便ではあります。
(今Audio Transparencyを実装してるのはBragiだけ。来年春にはKanoaが出ます)
* 通話機能
W800BTはマイク内蔵で側面ボタンで通話が可能です。
* 外観と使用感
箱・パッケージはよくできていてさすがOnkyoという感じです。付属品としてシリコンラバーチップが3サイズ付属されています。W800BTの場合は標準チップでよく合います。
W800BTの外観デザインもなかなか良いですね。大柄にも見えますが、ユニット本体は軽くて装着感も良好です。
ただLEDがうるさいので、これは装着したときに見えない位置につけて欲しいと思います。Dashみたいにデザインになっていれば未来的でよいのですが。
* レイテンシー
W800BTの問題の一つはレイテンシーがかなり大きいことで、映画ではあまり使えません。たとえば映画マエストロを見ると、練習場の倉庫の音響をみるためにパンパンと手を叩く(オーディオイベントでもやると思いますが)ところでかなり音がずれるのが分かります。Apolloはこんなにずれないですね。ただSBCうんぬんというよりはバッファリングしていることが大きいと思います。
* 音質
W800BTの長所の一つは音質が良いということでしょう。やはり他の完全ワイヤレスと同じく開放的な音空間が良く、ヴォーカルの明瞭感が高いですね。ONKYOらしくかちっとした明瞭感が感じられます。
ダイナミックにしては歯切れ良い点もプラスです。テンポの良い曲ではリズムに乗りたくなります。メーカーらしいこなれた帯域バランスの良さで、標準チップだと低域は十分あるが出過ぎてもいず、ヴォーカルもきれいに聴こえます。高域も良く確保されてますね。
音に明瞭感があり、これはAria Oneよりもかなり優れています。低音域も結構あって、低域の解像感もありますが、低域に関してはApollo7の方がより深みがあってインパクトもあります。W800BTは低域自体はわりと量感あるけれども、サブベースというか超低域が少し足りない感じ。Apolloの方が5.8mmと口径が小さいのですが、たぶんApolloのドライバーは振幅(ピストンモーション)大きいと思います。
欠点としては標準チップでの中高域が明瞭感はあるのですが、少しブライト過ぎてきつい点があります。音源によってはきつすぎるように感じるかもしれません。ただこれは人に(耳道に)も寄るかもしれません。
チップはコンプライTSかSpin fitが良いですね。コンプライもSpin fitも標準チップでの高域のきつさを抑えられます。Spiral Dotはちょっときつさを強調する方向にいきます。
コンプライだと驚くほど低域の量感があがり、音場の広さと合わせて迫力も上がります。
* まとめ
簡単にまとめると、長所は
- 音質が良い
- デザインが良い
欠点は
- チャージャーが大きい
- レイテンシーが大きい
- 左右音切れが気になる(Earinくらい)
まとめると、音響メーカーらしく音は良いけれども、完全ワイヤレスとしては完成度はまだというところ。映画観賞やゲームはやらないけど音楽だけの人にお勧めです。
本作は手探りで作った感がありますが、品切れになったほど人気が高いと思いますので、いろいろな人がいろいろ使ってみたユースケースを反映してまた次回作も期待したいところです。
こちらはフジヤさんのリンクです。
http://www.fujiya-avic.jp/products/detail115743.html
あるいはAmazonリンクで。
http://www.jp.onkyo.com/audiovisual/headphone/w800bt/
なかなか人気で品切れのニュースが出た点でも話題となりました。注目度はやはり大きいようです。
以下はiPhone6またはiPhone7Plusで聴いています。
* ドライバー
W800BTのドライバーは8.6mmのダイナミック型ドライバーを採用しています。再生帯域は6Hz - 22kHzです。(SBCのみで22kHzまでいるかはともかく)
* スマホとの接続、左右ユニット接続
スマートフォンとの接続はBluetoothを採用、左右ユニット間の通信方式は明記がありませんが通常のBTだと思います。片側だけの使用はできないと思います。
左右音切れはわりとあります。Earinと同程度だと思います。Apollo 7などに比べると少し多いですね。
また親機の右はiPhoneとの接続では通常はあまり音切れは気になりませんが、iPhone側のBTアンテナを手でふいに覆ってしまうと電波受信が悪くなりやすいです。Apolloはこうした障害にもうちょっと強いように思います。
W800BTは言葉が書いていないマニュアルなので、はじめはペアリングに戸惑うかもしれません。概念が新しいイヤフォンなのできちんと言葉の書かれた各国語向けのマニュアルがあった方がよいかと思います。
とはいえ、なれると簡単で電源両方同時長押しオンで左右ペアリングされて、あっさりiPhoneにもつながります。
またAria OneやApollo7にある接続したときやロストしたときの音声ガイドがないので不便を感じることもあります。(ピッとなるだけ)
* 対応CODEC
SBCのみに対応しています。ただし音質的な問題はあまりないと思います。
* チャージングステーション
完全ワイヤレスにおいてチャージングステーションはとても重要なコンポーネントですが、W800BTは(デザインは良いのですが)チャージャーがでかいのが難です。ケースにケーブル込みは良いように見えますが、実際はチャージャー自体の充電はたいてい家でやるためケーブルは持ち運ばないので、内蔵は不要だと思います。それより小さくして欲しいという感じです。
また充電の時にピンに刺すのがちょっと急いでいるとやりにくいので、他の完全ワイヤレスのように電極を使う形式にしてほしいと思います。ただしこれはがっちり差すため片側のみの充電がおきにくいのでその点では良いかもしれません。
* ユニット側での操作
W800BTの操作ボタンは電源のオンオフと通話機能のみで再生コントロールはできません。これはちょっと不便ですね。またW800BTは環境音ミックスのAudio Transparency機能もありませんのでアナウンスをちょっと聞きたいときに不便ではあります。
(今Audio Transparencyを実装してるのはBragiだけ。来年春にはKanoaが出ます)
* 通話機能
W800BTはマイク内蔵で側面ボタンで通話が可能です。
* 外観と使用感
箱・パッケージはよくできていてさすがOnkyoという感じです。付属品としてシリコンラバーチップが3サイズ付属されています。W800BTの場合は標準チップでよく合います。
W800BTの外観デザインもなかなか良いですね。大柄にも見えますが、ユニット本体は軽くて装着感も良好です。
ただLEDがうるさいので、これは装着したときに見えない位置につけて欲しいと思います。Dashみたいにデザインになっていれば未来的でよいのですが。
* レイテンシー
W800BTの問題の一つはレイテンシーがかなり大きいことで、映画ではあまり使えません。たとえば映画マエストロを見ると、練習場の倉庫の音響をみるためにパンパンと手を叩く(オーディオイベントでもやると思いますが)ところでかなり音がずれるのが分かります。Apolloはこんなにずれないですね。ただSBCうんぬんというよりはバッファリングしていることが大きいと思います。
* 音質
W800BTの長所の一つは音質が良いということでしょう。やはり他の完全ワイヤレスと同じく開放的な音空間が良く、ヴォーカルの明瞭感が高いですね。ONKYOらしくかちっとした明瞭感が感じられます。
ダイナミックにしては歯切れ良い点もプラスです。テンポの良い曲ではリズムに乗りたくなります。メーカーらしいこなれた帯域バランスの良さで、標準チップだと低域は十分あるが出過ぎてもいず、ヴォーカルもきれいに聴こえます。高域も良く確保されてますね。
音に明瞭感があり、これはAria Oneよりもかなり優れています。低音域も結構あって、低域の解像感もありますが、低域に関してはApollo7の方がより深みがあってインパクトもあります。W800BTは低域自体はわりと量感あるけれども、サブベースというか超低域が少し足りない感じ。Apolloの方が5.8mmと口径が小さいのですが、たぶんApolloのドライバーは振幅(ピストンモーション)大きいと思います。
欠点としては標準チップでの中高域が明瞭感はあるのですが、少しブライト過ぎてきつい点があります。音源によってはきつすぎるように感じるかもしれません。ただこれは人に(耳道に)も寄るかもしれません。
チップはコンプライTSかSpin fitが良いですね。コンプライもSpin fitも標準チップでの高域のきつさを抑えられます。Spiral Dotはちょっときつさを強調する方向にいきます。
コンプライだと驚くほど低域の量感があがり、音場の広さと合わせて迫力も上がります。
* まとめ
簡単にまとめると、長所は
- 音質が良い
- デザインが良い
欠点は
- チャージャーが大きい
- レイテンシーが大きい
- 左右音切れが気になる(Earinくらい)
まとめると、音響メーカーらしく音は良いけれども、完全ワイヤレスとしては完成度はまだというところ。映画観賞やゲームはやらないけど音楽だけの人にお勧めです。
本作は手探りで作った感がありますが、品切れになったほど人気が高いと思いますので、いろいろな人がいろいろ使ってみたユースケースを反映してまた次回作も期待したいところです。
こちらはフジヤさんのリンクです。
http://www.fujiya-avic.jp/products/detail115743.html
あるいはAmazonリンクで。
2016年09月13日
トレンドリーダーとしてのアップルと二つの技術トレンド
AppleのiPhone7発表の次の日(9/8)にLightというスタートアップのFacebookに次のようなコメントが載りました。
"Welcome to the multi-aperture future, Apple!"
(マルチレンズの未来へようこそ、アップル)
やっと君もここに来たのかい、というような多少皮肉のこもったコメントは、かつてIBMがパソコン業界にIBM PCで参入したときにアップルが掲げた次の言葉を思い出します。
"Welcome, IBM. seriously"
(ようこそIBM、いやほんとうに)
Appleは業界のトレンドリーダーでもあります。これはAppleが初めて作ったものではなくても、Appleが採用することでマイナーだった技術が一気にメインストリームに浮き上がってくるということを意味しています。昔であればGUIやマウスがそうですし、最近であればWiFi規格の802.11もそうといえるでしょう。
この前のiPhone 7の発表会においてもそうなる可能性のある技術トレンドが二つありました。完全ワイヤレスイヤフォンとマルチレンズカメラです。
* 完全ワイヤレス・イヤフォン
iPhone 7ではイヤフォン端子が廃止されたこともあり、Appleは左右分離型の完全ワイヤレスイヤフォンであるAirPodsも発表しました。
完全ワイヤレスイヤフォン(英語だとtruly wireless)は、左右ユニットが分離したワイヤレスイヤフォンのことです。左右のユニット分離にはいままではKleerなどの技術が必要でしたが、Earinなどをはじめとし、Bluetoothで完全ワイヤレスが採用されることで増えてきました。
BTの場合には1:1通信が基本なので本来は1:2となる左右分離ユニットに送れませんが、それを左か右にまず送ってそこから反対側に送り直すことで解決したイヤフォンです。BTスピーカーでもそういうものがありますが、スピーカーと違ってイヤフォンの場合はコンパクトさが必要であり、さらに電波を妨害する人の頭が近接しているのでより難易度は高いと言えます。
Earin
AppleがiPhone 7のイヤフォン端子を廃止し、AirPodsで完全ワイヤレス採用したことで、一部のITガジェット好きのものだったのが、一般にも周知されて「AirPodsは左右どちらかがなくなるだろう」論争なんて言われだしたのも面白いところで、いかにも黎明期を感じさせます。
また完全ワイヤレスはいままでは$300前後でしたが、AirPodsをはじめ、Erato Muse 5やBragi "The Headphone"など$150前後に価格が低下してきました。Bragi DashがIBMワトソンの端末として同時翻訳などの可能性が出てきたのも見逃せない話題でしょう。まだまだ可能性が高い分野です。
完全ワイヤレスについてはうちのブログでいろいろ書いてきたのでこちらのリンクをご覧ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/category/25978943-1.html
* マルチレンズ・カメラ
もうひとつの技術トレンドは冒頭にあげたmulti-aperture cameraです。ただしマルチ・アパチャーというと一般性が低く日本語の座りが良くないのでここではマルチレンズカメラと書きました。アパチャー(aperture)は通常は絞りと訳されますが、ここでは単に開口部のことでマルチアパチャーは複数の開口部、つまりマルチレンズと言い換えることができます。または複眼カメラともいえるでしょう。別の言い方をすれば、ひとつの大口径センサーの代わりにいくつもの小口径センサーを合算して同様な効果を狙うカメラともいえます。この方がスマートフォンやコンパクトカメラには向いているわけです。
つまりマルチレンズ・カメラは初代ライカより続く従来のカメラが一つのレンズ(光学系)だけだったのに対して、複数のカメラユニットの結果を合成して使うカメラのことです。計算して一枚の絵を作るのでComputional Photografyとも言われます。またいくつものカメラを並列で使うのでアレイ・カメラとも呼ばれます。
代表的なものはLight L16ですが、他にもAndroidスマートフォンではすでにいくつか採用されています(LGやファーウエイとか)。冒頭の言葉はLight社がこのiPhone7plusのデュアルカメラを「仲間」とみなしたのでしょう。
すでにAndroidではデュアルレンズは出てはいるのですが、iPhoneはFlicker調べで(キヤノンやニコンも含めても)世界で一番よく使われている「カメラ」です。これにマルチレンズカメラが採用されたことは大きなインパクトとなるでしょう。
iPhone 7 plusではデュアルカメラとして採用されています。この機能仕様については明確でないところもありますが、iOSの開発者ガイドを見ると、単独ではなくデュアルカメラモードで使用すると両方のカメラの情報を合算(combine)して画質を高めると書いてありますので、やはり事前予想のようにアップルが買収したLinx社の技術を使用していると思われます。
Linxの技術でも前の記事で書いたようなクリアチャンネル(ベイヤーフィルタレス)は使用しているかはわかりませんが、二つの視差の違いから深度(距離)情報を得ていることは確実だと思います。この効果は一眼レフのようなボケ味を作るポートレートモードに使用されるとみられています。
深度マッピングの例(Linxページから)
iPhone 7 plusでは今回は56mm相当の望遠カメラが装備されています(もっとも56mmはカメラ界では望遠ではなく標準の範ちゅうですが)。しかし、35mmカメラの換算焦点距離が56mmと言っても実焦点距離は8mm前後だし、8mm/F2.8のレンズは光学的にさほどボケません。そこでデジタルで画像エンジン(ISP)を使用してぼかしますが、このときに自然に効果を生むために距離情報が効果的だと考えられます。
Lytroもこうしたカメラではあり、以前ジョブズが接近したとも伝えられていますが、Lytroの技術は有効画素数が低くて画質という点で使いにくいのも確かで消えていきました。マルチレンズカメラは画質という点でこれからが期待できます。さきのL16はコンパクトカメラなのに5200万画素の画像を作ることができます。詳細は省きますがこれは補完による水増しではなく、複数画像の合成によるものなので真の解像力です。それでいて深度マップでデジタル処理することで一眼のようなボケも使えるというわけです。
たとえば後からピントを変えられると言っても、Lytroのように人物と背景で変えられますでは何回か試して飽きてしまいます。カメラマンが本当に欲しいのは、まつ毛に合わせたはずのピントがよく見るとまぶたにあっていたというような場合でしょう。
一方でこれらは一枚撮るのに時間がかかるという問題もあります。L16だと一枚の5200万画素の画像を得るために1300万画素x10枚の合成をするので、一枚一分弱かかるのではと言われています。この辺もデュアルだとさほどではないと思いますが、これからの課題でしょう。
先日Google(GV)もLightに投資したことでマルチレンズ技術はAndroidスマートフォンにさらに活かされていくのではないかともいわれています。かたやアップルはLinxの技術でデュアルカメラを作ったというわけです。この分野にも注目していきたいものです。
"Welcome to the multi-aperture future, Apple!"
(マルチレンズの未来へようこそ、アップル)
やっと君もここに来たのかい、というような多少皮肉のこもったコメントは、かつてIBMがパソコン業界にIBM PCで参入したときにアップルが掲げた次の言葉を思い出します。
"Welcome, IBM. seriously"
(ようこそIBM、いやほんとうに)
Appleは業界のトレンドリーダーでもあります。これはAppleが初めて作ったものではなくても、Appleが採用することでマイナーだった技術が一気にメインストリームに浮き上がってくるということを意味しています。昔であればGUIやマウスがそうですし、最近であればWiFi規格の802.11もそうといえるでしょう。
この前のiPhone 7の発表会においてもそうなる可能性のある技術トレンドが二つありました。完全ワイヤレスイヤフォンとマルチレンズカメラです。
* 完全ワイヤレス・イヤフォン
iPhone 7ではイヤフォン端子が廃止されたこともあり、Appleは左右分離型の完全ワイヤレスイヤフォンであるAirPodsも発表しました。
完全ワイヤレスイヤフォン(英語だとtruly wireless)は、左右ユニットが分離したワイヤレスイヤフォンのことです。左右のユニット分離にはいままではKleerなどの技術が必要でしたが、Earinなどをはじめとし、Bluetoothで完全ワイヤレスが採用されることで増えてきました。
BTの場合には1:1通信が基本なので本来は1:2となる左右分離ユニットに送れませんが、それを左か右にまず送ってそこから反対側に送り直すことで解決したイヤフォンです。BTスピーカーでもそういうものがありますが、スピーカーと違ってイヤフォンの場合はコンパクトさが必要であり、さらに電波を妨害する人の頭が近接しているのでより難易度は高いと言えます。
Earin
AppleがiPhone 7のイヤフォン端子を廃止し、AirPodsで完全ワイヤレス採用したことで、一部のITガジェット好きのものだったのが、一般にも周知されて「AirPodsは左右どちらかがなくなるだろう」論争なんて言われだしたのも面白いところで、いかにも黎明期を感じさせます。
また完全ワイヤレスはいままでは$300前後でしたが、AirPodsをはじめ、Erato Muse 5やBragi "The Headphone"など$150前後に価格が低下してきました。Bragi DashがIBMワトソンの端末として同時翻訳などの可能性が出てきたのも見逃せない話題でしょう。まだまだ可能性が高い分野です。
完全ワイヤレスについてはうちのブログでいろいろ書いてきたのでこちらのリンクをご覧ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/category/25978943-1.html
* マルチレンズ・カメラ
もうひとつの技術トレンドは冒頭にあげたmulti-aperture cameraです。ただしマルチ・アパチャーというと一般性が低く日本語の座りが良くないのでここではマルチレンズカメラと書きました。アパチャー(aperture)は通常は絞りと訳されますが、ここでは単に開口部のことでマルチアパチャーは複数の開口部、つまりマルチレンズと言い換えることができます。または複眼カメラともいえるでしょう。別の言い方をすれば、ひとつの大口径センサーの代わりにいくつもの小口径センサーを合算して同様な効果を狙うカメラともいえます。この方がスマートフォンやコンパクトカメラには向いているわけです。
つまりマルチレンズ・カメラは初代ライカより続く従来のカメラが一つのレンズ(光学系)だけだったのに対して、複数のカメラユニットの結果を合成して使うカメラのことです。計算して一枚の絵を作るのでComputional Photografyとも言われます。またいくつものカメラを並列で使うのでアレイ・カメラとも呼ばれます。
代表的なものはLight L16ですが、他にもAndroidスマートフォンではすでにいくつか採用されています(LGやファーウエイとか)。冒頭の言葉はLight社がこのiPhone7plusのデュアルカメラを「仲間」とみなしたのでしょう。
すでにAndroidではデュアルレンズは出てはいるのですが、iPhoneはFlicker調べで(キヤノンやニコンも含めても)世界で一番よく使われている「カメラ」です。これにマルチレンズカメラが採用されたことは大きなインパクトとなるでしょう。
iPhone 7 plusではデュアルカメラとして採用されています。この機能仕様については明確でないところもありますが、iOSの開発者ガイドを見ると、単独ではなくデュアルカメラモードで使用すると両方のカメラの情報を合算(combine)して画質を高めると書いてありますので、やはり事前予想のようにアップルが買収したLinx社の技術を使用していると思われます。
Linxの技術でも前の記事で書いたようなクリアチャンネル(ベイヤーフィルタレス)は使用しているかはわかりませんが、二つの視差の違いから深度(距離)情報を得ていることは確実だと思います。この効果は一眼レフのようなボケ味を作るポートレートモードに使用されるとみられています。
深度マッピングの例(Linxページから)
iPhone 7 plusでは今回は56mm相当の望遠カメラが装備されています(もっとも56mmはカメラ界では望遠ではなく標準の範ちゅうですが)。しかし、35mmカメラの換算焦点距離が56mmと言っても実焦点距離は8mm前後だし、8mm/F2.8のレンズは光学的にさほどボケません。そこでデジタルで画像エンジン(ISP)を使用してぼかしますが、このときに自然に効果を生むために距離情報が効果的だと考えられます。
Lytroもこうしたカメラではあり、以前ジョブズが接近したとも伝えられていますが、Lytroの技術は有効画素数が低くて画質という点で使いにくいのも確かで消えていきました。マルチレンズカメラは画質という点でこれからが期待できます。さきのL16はコンパクトカメラなのに5200万画素の画像を作ることができます。詳細は省きますがこれは補完による水増しではなく、複数画像の合成によるものなので真の解像力です。それでいて深度マップでデジタル処理することで一眼のようなボケも使えるというわけです。
たとえば後からピントを変えられると言っても、Lytroのように人物と背景で変えられますでは何回か試して飽きてしまいます。カメラマンが本当に欲しいのは、まつ毛に合わせたはずのピントがよく見るとまぶたにあっていたというような場合でしょう。
一方でこれらは一枚撮るのに時間がかかるという問題もあります。L16だと一枚の5200万画素の画像を得るために1300万画素x10枚の合成をするので、一枚一分弱かかるのではと言われています。この辺もデュアルだとさほどではないと思いますが、これからの課題でしょう。
先日Google(GV)もLightに投資したことでマルチレンズ技術はAndroidスマートフォンにさらに活かされていくのではないかともいわれています。かたやアップルはLinxの技術でデュアルカメラを作ったというわけです。この分野にも注目していきたいものです。
2016年09月08日
アップルが完全ワイヤレスイヤフォンのAirPods発表
iPhone7に合わせてアップルが左右独立の完全ワイヤレスイヤフォンのAirPods発表したのは面白いと思います。
うちのブログの完全ワイヤレスの記事見てもらうと分かりますが、完全ワイヤレスで再生時間はあまり意味がなく海外の飛行機旅行でもなければ2-3時間あれば十分です。
それより重要なのはチャージャーケースの使いやすさです。充電とイヤフォンをいったん外すときに重要です。
だから完全ワイヤレスの場合にはチャージャーケースとシステムの評価が必要だと思います。
またうちの完全ワイヤレスの記事を見てもらうと、左右接続がポイントということがわかると思うので、AirPodsがステム部分を長くとった理由もわかると思います。
つまりはiPhoneとイヤフォンの接続のためにアンテナ長くしたというよりも、左右ユニット接続のときに電波をさえぎる人の頭を避けるためです。またAirPodsは手の指でコントロールするのでそのとき手で電波を妨害するのも避けてると思います。
他のApple製品とのワンタップ接続でicloudアカウントが必要というのは、おそらくペアリング機器情報をicloudでシェアして他のMacなどの製品とはペアリングしなおさなくて良いようにしてると思います。ここは推測ですが。
iPhone 7からは予想どうりに3.5mm端子がなくなりました。ネットでは#RIPHeadphoneJackのタグでヘッドホンジャック追悼のメッセージを書いてます。
そこではみな1878生まれとしてるけどこれは標準端子の方で、3.5mmモノ(TS)は1964年のソニーのラジオ、3.5mmステレオ(TRS)は1979年の初代Walkmanですね。
ソニーが生み、アップルが葬る。
R.I.P ありがとう、ヘッドフォン端子
うちのブログの完全ワイヤレスの記事見てもらうと分かりますが、完全ワイヤレスで再生時間はあまり意味がなく海外の飛行機旅行でもなければ2-3時間あれば十分です。
それより重要なのはチャージャーケースの使いやすさです。充電とイヤフォンをいったん外すときに重要です。
だから完全ワイヤレスの場合にはチャージャーケースとシステムの評価が必要だと思います。
またうちの完全ワイヤレスの記事を見てもらうと、左右接続がポイントということがわかると思うので、AirPodsがステム部分を長くとった理由もわかると思います。
つまりはiPhoneとイヤフォンの接続のためにアンテナ長くしたというよりも、左右ユニット接続のときに電波をさえぎる人の頭を避けるためです。またAirPodsは手の指でコントロールするのでそのとき手で電波を妨害するのも避けてると思います。
他のApple製品とのワンタップ接続でicloudアカウントが必要というのは、おそらくペアリング機器情報をicloudでシェアして他のMacなどの製品とはペアリングしなおさなくて良いようにしてると思います。ここは推測ですが。
iPhone 7からは予想どうりに3.5mm端子がなくなりました。ネットでは#RIPHeadphoneJackのタグでヘッドホンジャック追悼のメッセージを書いてます。
そこではみな1878生まれとしてるけどこれは標準端子の方で、3.5mmモノ(TS)は1964年のソニーのラジオ、3.5mmステレオ(TRS)は1979年の初代Walkmanですね。
ソニーが生み、アップルが葬る。
R.I.P ありがとう、ヘッドフォン端子
2016年09月07日
Erato Audioからも廉価版の完全ワイヤレスイヤフォン発表
iPhone7の発表目前でまた完全ワイヤレスイヤフォン発表です。
https://eratolife.wishpond.com/promoeratomuse5/
この前Apollo7のレビュー記事を書きましたが、
Bragiに続いてApollo 7のEratoも廉価版の完全ワイヤレスイヤフォンMuse 5を出してきました。定価は$179ですが、メール登録した早割だと$79とかなり低価格です。ただし受付は9/12からで、おそらくBragiのThe Headphoneに影響されてアナウンス前倒ししたのかもしれません。
Erato Muse 5 (画像は上記サイトから転載)
Muse5はApollo7のようにコンパクトではありませんが、FitSeal Sleeveというスリーブの工夫での装着感向上の仕組みがあるようです。
また側面に充電端子がないのでそこにタッチセンサーがついたようで、操作性は逆にApolloより向上してるかもしれません。マイクもついて、IPX5防水です。
* 追記: チャージャーケースが付属し、一回の充電で4時間だそうです。
完全ワイヤレスイヤフォンも$300前後と高価を指摘されてましたが、$100台に低下してきたようですね。
https://eratolife.wishpond.com/promoeratomuse5/
この前Apollo7のレビュー記事を書きましたが、
Bragiに続いてApollo 7のEratoも廉価版の完全ワイヤレスイヤフォンMuse 5を出してきました。定価は$179ですが、メール登録した早割だと$79とかなり低価格です。ただし受付は9/12からで、おそらくBragiのThe Headphoneに影響されてアナウンス前倒ししたのかもしれません。
Erato Muse 5 (画像は上記サイトから転載)
Muse5はApollo7のようにコンパクトではありませんが、FitSeal Sleeveというスリーブの工夫での装着感向上の仕組みがあるようです。
また側面に充電端子がないのでそこにタッチセンサーがついたようで、操作性は逆にApolloより向上してるかもしれません。マイクもついて、IPX5防水です。
* 追記: チャージャーケースが付属し、一回の充電で4時間だそうです。
完全ワイヤレスイヤフォンも$300前後と高価を指摘されてましたが、$100台に低下してきたようですね。
2016年09月06日
BragiからDashの廉価版"The Headphone"登場
期待を持たせて発表したBragiの昨日のアナウンスですが、"The Headphone"と呼ばれる新しい完全ワイヤレスイヤフォンでした。(クパチーノうんぬんはフェイク?)
ホームページはこちらです。
http://www.bragi.com/theheadphone/
Bragi "The Headphone" (画像は上記ページより転載)
これはプリオーダー価格が$119(通常は$149)のDashの廉価版と言えるもので、Dashから各種センサー、防水機能、内部ストレージ(4GBあった)を省いたものです。またタッチコントロールも簡易化されてボタンになっているようです。そしてケースには電池が内蔵されてなく、チャージができないようです。その代りにBAドライバーは新しくなり、マイクも新しくなったようです。また動作時間が長くなり、6時間となりました(これがチャージャーを省く言い訳になってます)。左右接続がNFMIかどうかはまだわかりません。
つまりウェアラブルのフィットネス・ヘルス機能は省く代わりに音楽を聴くイヤフォンに特化したものです。たぶんソフトウエアは共通で、同時に新バージョンの2.1.0がリリースされています。
またおそらくはBTチップ自体も刷新されていると思います。The DashではBT接続とかさまざまな問題が指摘されていて、それを根本的に解決するためとも言えるかもしれません。また完全ワイヤレスというと$300前後が相場ですから他の価格でも差別化できます。発売は11月予定です。
* 追記: Bragiが質問に答えてくれましたので明確化。左右接続はNFMIですが、ソフトウェアはアップデートができないそうです。下記のWatson対応は不明。
* 追記2: 日本には現在出荷しないそうです(Kickstarterは特例だそう)。出荷可能な国はUSA, EU, Norway, Switzerland, Canada, Australia, New Zealand, Hong Kong、だそうです
そしてこれに先立ってBragiではIBMのワトソンとの連携を発表しています。つまり完全ワイヤレスイヤフォンがワトソンのデータ端末となりえるということで、翻訳とか知的アシスタントなど広範囲に応用が可能だと思います。ウェアラブルというと単独の分散型コンピューター的なイメージもありますが、IBM ワトソンで集中処理してウェアラブルは端末に徹するというのも「スマートな」切り分けのように思えます。たぶんBragiではこの機会にフィットネスというよりもこちら方向に戦略の舵を取りたいのではないでしょうか。
ホームページはこちらです。
http://www.bragi.com/theheadphone/
Bragi "The Headphone" (画像は上記ページより転載)
これはプリオーダー価格が$119(通常は$149)のDashの廉価版と言えるもので、Dashから各種センサー、防水機能、内部ストレージ(4GBあった)を省いたものです。またタッチコントロールも簡易化されてボタンになっているようです。そしてケースには電池が内蔵されてなく、チャージができないようです。その代りにBAドライバーは新しくなり、マイクも新しくなったようです。また動作時間が長くなり、6時間となりました(これがチャージャーを省く言い訳になってます)。左右接続がNFMIかどうかはまだわかりません。
つまりウェアラブルのフィットネス・ヘルス機能は省く代わりに音楽を聴くイヤフォンに特化したものです。たぶんソフトウエアは共通で、同時に新バージョンの2.1.0がリリースされています。
またおそらくはBTチップ自体も刷新されていると思います。The DashではBT接続とかさまざまな問題が指摘されていて、それを根本的に解決するためとも言えるかもしれません。また完全ワイヤレスというと$300前後が相場ですから他の価格でも差別化できます。発売は11月予定です。
* 追記: Bragiが質問に答えてくれましたので明確化。左右接続はNFMIですが、ソフトウェアはアップデートができないそうです。下記のWatson対応は不明。
* 追記2: 日本には現在出荷しないそうです(Kickstarterは特例だそう)。出荷可能な国はUSA, EU, Norway, Switzerland, Canada, Australia, New Zealand, Hong Kong、だそうです
そしてこれに先立ってBragiではIBMのワトソンとの連携を発表しています。つまり完全ワイヤレスイヤフォンがワトソンのデータ端末となりえるということで、翻訳とか知的アシスタントなど広範囲に応用が可能だと思います。ウェアラブルというと単独の分散型コンピューター的なイメージもありますが、IBM ワトソンで集中処理してウェアラブルは端末に徹するというのも「スマートな」切り分けのように思えます。たぶんBragiではこの機会にフィットネスというよりもこちら方向に戦略の舵を取りたいのではないでしょうか。
2016年08月25日
完全ワイヤレスイヤフォン、Erato Apollo 7レビュー
Apollo 7はErato AudioがKickstarterでキャンペーンを展開していた左右分離型の完全ワイヤレスイヤフォンです。まさに耳栓というコンパクトさが特徴でApolloの名は外観からでしょう。Erato Audioは所在は米国のようですがおそらく台湾系のメーカーで、少なくとも台湾で生産しています。
Kickstarterは終わっていますが、こちらで購入ができます。すでに出荷開始していますので在庫があればすぐ来ると思います。完全ワイヤレスは価格はだいたい$250-$300前後ですね。カラーリングのバリエーションも豊富です。
Kickstarterページはこちらです。
https://www.kickstarter.com/projects/1865494715/apollo-7-worlds-most-compact-true-wireless-earphon
購入はこちらです。現在は$279で販売しています。
https://eratolife.com/
以下はiPhone5sないしiPhone6で聴いています。
* ドライバー
Apollo 7のドライバーはダイナミック型ですが、Micro driverとあるのでおそらくShureやゼンハイザーのような小口径ダイナミックだと思います。ベントがLEDわきについています。ダイアフラムはなにかの複合材(コンポジット)のようで、マグネットが強力なことをうたっています。後で書きますが実際Apollo 7のドライバーはかなり優秀だと思います。
完全ワイヤレスの場合にはハウジング内に基盤・バッテリー等が入るためにエアフローの扱いが難しくないBAの方が向いているようには思います。ただスペースが限られているならシングルドライバーでカバーできる帯域の広いダイナミックが有利ともいえます。Apollo 7はまさに後者の好例です。
* スマホとの接続、左右ユニット接続
スマートフォンとの接続はBluetoothを採用、左右ユニット間の通信もBluetoothです。左右ユニット間の通信方式では一応NMFIにも言及して、NFMIは転送速度の点から音楽向けではなく、現状ではBTがベストだと述べています。なにかワザを使っているかどうかはわかりません。
左右の音途切れはほとんどなく、Earinより優秀でAria Oneとほぼ同じくらいです。Aria Oneのときは大きいのがプラスに働いたかと思いましたが、Apolloのようなコンパクトさでこの性能は優秀だと思います。
スマホと親機との音途切れのなさはさらにAria Oneよりも優秀です。少なくともiPhone6だと接続したまま耳を完全に手のひらで覆っても途切れません。iPhoneをバックパックに入れても、尻ポケットでも大丈夫です。途切れさせる方が難しいと思えるくらい。BTも進歩しましたね。これはiPhone側の進歩もあると思います。iPhone5sとiPhone6だと普通の有線イヤフォンで聴いてもあまり音質差がありませんが、BT完全ワイヤレスで聴くと音質差はかなりあります。できればiPhone6以降で聴くことをお勧めします。
Apollo 7ではユニットについているボタンでいろいろと操作をするので手でかざした時にBT電波が切れると問題なのですが、いままでこうして切れたことはありません。ただしAria Oneと同様に空間(地下鉄構内や電車内)にはいった瞬間にぶつっと途切れることがありますが、また復活します。あとは問題なくなります。ここは引き続きちょっと謎です。たぶんWiFiと干渉してから避けるように調整するのだと思いますが、BTの最新仕様なのですかね。BTとWiFiの干渉については以前の記事をごらんください。この記事自体はKleerとBTの違いですが、BTがどのように他の電波帯と干渉しないように送信するかという基本も書いています。(いまはまた進歩しているかもしれませんが)
http://vaiopocket.seesaa.net/article/109198956.html
BTのペアリングに関しては右(親機)とスマートフォンをペアリングさせてから、左(子機)と右ユニットをペアリングさせるというものでAria Oneと同じです。ただしApollo 7ではEarinのようにモノモード(左右別)でもペアリングできるようですが、推奨されていません。できれば自動で左右もペアリングしてほしいのですが、そうなっていないのは、おそらく自動で左右がペアリングされるのはEarinの特許ではないでしょうか。
ペアリングすると英語音声で知らせてくれるところはAria Oneと同じですが、音声内容は異なります。こちらの方が分かりやすいです。
まず右ユニットをボタンを押してパワーオンすると"Power on"と声がします。そのままボタンを離さずに押し続けると"pairing"と声がするのではじめはここまでやってペアリングさせてください。二回目からは"power on"までです。
次に左ユニットをボタンを押して電源あげると"power on"と左から音声が聴こえます。ここはすぐ離してかまいません。すると数秒後に両方のユニットから"headset connected"と声がします。すると左右が接続されます。
Aria Oneのように電源残量はしゃべりません。(iPhone側のステータスと通知で確認できます)
* 対応CODEC
APT-X, AAC, SBCに対応しています。
* チャージングステーション
完全ワイヤレスにおいてチャージングステーションはとても重要なコンポーネントですが、Apollo 7のチャージングステーションはかなりよくできています。ふたの開け閉めもスムーズで、アルミ製でボディの質感もなかなか高級感を感じます。格納するのはEarinとは異なって並列に入れるのでかさばりますが、外すときは両方を指でちょっと押すだけなので外しにくく格納しにくいEarinよりも使い勝手は良いです。ただEarinの方がコンパクトで筒型になるのはやはりポケットに入れるときにメリットがあります。ここは長短あります。
またApollo7は格納する際に底面の電極端子が完全円形なので向きを気にしなくてよいという点をメリットとしています。これは特許とのこと。ただ円形でないEarinでもここはあまり問題にはならないとは思います。
左:Earin、右:Apollo 7
チャージャーにはめるときはカチッとするまで押し込みます。チャージステーションへのはめ込みは機械的なロックだと思います。磁石ではありません。このとき自動的に(強制的に)オフになりチャージ始めます。Aria Oneのようにはめただけではチャージ始めないほうが良いと言う人もいるとは思いますが、個人的にはチャージャーにはめるとリセットされると考えている方が自然に思います。ただしチャージャーから外してもEarinみたいに自動ではパワーオンしません。
ユニットへのチャージは2.5時間で、再生は3-4時間ということ。
イヤフォン用のチャージライトは一つですが、一個だけはまってるときは点滅で二個ともはまってると点灯なのでEarinみたいに片チャージの懸念はありません。こういうところは細いけど完全ワイヤレスでは重要です。Earinより改善されてますね。
* ユニット側での操作
完全ワイヤレスの場合にはコンビニのレジでちょっとイヤフォンを耳から外すということがしにくいので、再生機能、またはAudio Transparencyなどの環境音ミックス機能が必要になると思います。Apollo 7はAudio Transparency機能はありません。現状ではDashのみ、秋ごろにはKanoaがAudio Transparency機能に対応します。
Apollo 7の操作ボタンはちょっと小さいのでボタンを間違って押しやすいのではじめは注意が必要です。これはなれると気にならなくなります。これも完全ワイヤレスだとケーブルがないのでユニットの方向が分からなくなりやすいということがあります。
Apollo 7はボタン操作でポーズ/再生、スキップ/リワインド、音量上げ下げができます。これを一個のボタンでやるので左右をつかったものとなっています。つまりボタンは左と右で反対方向に使うのが面白いところです。
*右をダブルクリックで音量大、長押しでスキップ
*左をダブルクリックで音量小、長押しでバック
*シングルクリックはどちらもポーズと再生(左右関係なし)
これと通話制御です。
手でスマホを持っているときは音量はいいのですが、ブラウザやメールを操作しているときだと曲送りやポーズをするのにいちいち操作画面を出したりアプリ切り替えをするのは面倒なので、こうした操作スイッチがあった方が便利です。
スマホをカバンに入れてるときはもっと便利です。
* 通話機能
Apollo 7はマイクが付いているので通話することが可能です。
* 外観と使用感
箱・パッケージはよくできていて普通に売っている製品という感じです。実際にApollo 7の場合はKickstarterもほとんどプリオーダーと同じだったと思います。
コンプライT600が3サイズ、ラバー3サイズが付属されています。Apollo 7の場合は標準チップでよく合います。スタビライザーがついていますがエクササイズ以外は不要だと思います。
ユニット本体は軽くて装着感も良好です。まさに耳栓って感じ。ステムが太いのが特徴ですが、装着感は良いです。ちょっとプラスチックっぽいところはありますが、チャージーと違ってこちらは電波を通さなければならないのでしかたないところでしょう。それを踏まえてユニットを質感高く仕上げるのも完全ワイヤレス設計の腕の見せ所かもしれません。
左:Apollo 7、右:Earin
はじめは左右ユニットが分かりづらいかもしれません。なれるとERATOの文字向きで判別できます。
バッテリー残量は本機はBT4.0対応なので電池残量はiPhoneでは通知センターとステータスバーで分かります。本機では20%単位のようです。ユニットだけの電池の持ちは正しく測ってはいませんが2-3時間というところだと思います。完全ワイヤレスの場合はこれにチャージャーを組み合わせながら使います。
Aria oneのように明滅するLEDがうるさいが、側面についているAria oneと違って位置をずらして耳の後ろに隠れるようにできます。
個人的にはEarinで不便ないのでLED不要だと思いますが。。(落とした時に便利という人はいます)
* 音質
端的に言ってApollo 7はかなり音質は高いと思います。特にiPhone6で高音質アプリを使って聴くとBTイヤフォンの先入観を変えてくれるかもしれません。先日記事にしたBirds Requiemをカイザーサウンドにいれて聴いてますがこのくらい良録音でもかなり満足できます(もちろんハイレゾ再生できませんが)。
性格的には小口径ダイナミックということでEarinとAria oneの中間かなと予想した通りですが、思ってたより出音はしっかりしています。
これもまた他の完全ワイヤレスのようにぱっと聞いた時の音の広がりが良く、オーケストラ聴いてもスケール感があります。音はクリアで明瞭感がとても高いと感じます。楽器やヴォーカルがはっきりと聞こえ、音の純度が高いと思います。音調はソリッドでシャープ、音の丸みは少ない感じです。解像力も高く感じます。
Apollo 7の特徴はワイドレンジ感があることで、低域のパンチと量感、高域の伸びの気持ちよさの両方を感じられます。EarinやAria oneよりワイドレンジ感があります。下は深く上も伸びる感じで、ヴォーカルも前に出ないけど引っ込まない適度なバランスです。
左:Apollo 7、右:Earin
特に低音は重みがありパンチを感じられます。Aria Oneは量感はありますが柔らかいので、低音のアタックとかパンチはいまでの完全ワイヤレスで一番あるかもしりません。量はベースヘビーに感じるAria oneほどではないですが、Aria oneは低域は量感あるがやや下の上でなってるという感じです。ただAria oneの方がゆったり滑らかな感はあるので好みの点もあるかもしれません。Aria oneはオールドスピーカーという感じでApolloは現代的でHiFi調です。
楽器のキレはBAのEarinほどではないが近い感じで優秀です。シャープさ、切れ味という点ではAria oneよりはかなり良いですね。有線無線混ぜても普及価格ダイナミックではわりと良い方だと思います。
イヤチップはラバーチップ大を使いました。これに関してはApollo7の音を活かすにはSpiral dotとかより標準ラバーが一番良いとおもいます。コンプライだとAria oneっぽい音になります。低域のパンチがちょっと鈍く、ちょっと音が狭くなります。
* まとめ
音質的にEarinもAria oneも良さはあるけど、トータルではApollo7が一番優れています。ワイドレンジでパンチがありシャープです。
また機能的にもEarinの問題を改善しているところもあるし、Earinが特許を押さえていそうな今一歩な点もあります。気になる点はチャージャーから出した時に自動でオンにならない点と左右ペアリングが自動でされない点くらいです。やはり先行したEarinの影響というのはあるかもしれません。ただ改善されている点のほうが多いと思います。
Apollo7はコンパクトで音も良く、接続の途切れも少なく、チャージャーも良くできています。デザインも良く完成度が高いですね。
完全ワイヤレスもなかなか完成度が高くなっている気がします。
Kickstarterは終わっていますが、こちらで購入ができます。すでに出荷開始していますので在庫があればすぐ来ると思います。完全ワイヤレスは価格はだいたい$250-$300前後ですね。カラーリングのバリエーションも豊富です。
Kickstarterページはこちらです。
https://www.kickstarter.com/projects/1865494715/apollo-7-worlds-most-compact-true-wireless-earphon
購入はこちらです。現在は$279で販売しています。
https://eratolife.com/
以下はiPhone5sないしiPhone6で聴いています。
* ドライバー
Apollo 7のドライバーはダイナミック型ですが、Micro driverとあるのでおそらくShureやゼンハイザーのような小口径ダイナミックだと思います。ベントがLEDわきについています。ダイアフラムはなにかの複合材(コンポジット)のようで、マグネットが強力なことをうたっています。後で書きますが実際Apollo 7のドライバーはかなり優秀だと思います。
完全ワイヤレスの場合にはハウジング内に基盤・バッテリー等が入るためにエアフローの扱いが難しくないBAの方が向いているようには思います。ただスペースが限られているならシングルドライバーでカバーできる帯域の広いダイナミックが有利ともいえます。Apollo 7はまさに後者の好例です。
* スマホとの接続、左右ユニット接続
スマートフォンとの接続はBluetoothを採用、左右ユニット間の通信もBluetoothです。左右ユニット間の通信方式では一応NMFIにも言及して、NFMIは転送速度の点から音楽向けではなく、現状ではBTがベストだと述べています。なにかワザを使っているかどうかはわかりません。
左右の音途切れはほとんどなく、Earinより優秀でAria Oneとほぼ同じくらいです。Aria Oneのときは大きいのがプラスに働いたかと思いましたが、Apolloのようなコンパクトさでこの性能は優秀だと思います。
スマホと親機との音途切れのなさはさらにAria Oneよりも優秀です。少なくともiPhone6だと接続したまま耳を完全に手のひらで覆っても途切れません。iPhoneをバックパックに入れても、尻ポケットでも大丈夫です。途切れさせる方が難しいと思えるくらい。BTも進歩しましたね。これはiPhone側の進歩もあると思います。iPhone5sとiPhone6だと普通の有線イヤフォンで聴いてもあまり音質差がありませんが、BT完全ワイヤレスで聴くと音質差はかなりあります。できればiPhone6以降で聴くことをお勧めします。
Apollo 7ではユニットについているボタンでいろいろと操作をするので手でかざした時にBT電波が切れると問題なのですが、いままでこうして切れたことはありません。ただしAria Oneと同様に空間(地下鉄構内や電車内)にはいった瞬間にぶつっと途切れることがありますが、また復活します。あとは問題なくなります。ここは引き続きちょっと謎です。たぶんWiFiと干渉してから避けるように調整するのだと思いますが、BTの最新仕様なのですかね。BTとWiFiの干渉については以前の記事をごらんください。この記事自体はKleerとBTの違いですが、BTがどのように他の電波帯と干渉しないように送信するかという基本も書いています。(いまはまた進歩しているかもしれませんが)
http://vaiopocket.seesaa.net/article/109198956.html
BTのペアリングに関しては右(親機)とスマートフォンをペアリングさせてから、左(子機)と右ユニットをペアリングさせるというものでAria Oneと同じです。ただしApollo 7ではEarinのようにモノモード(左右別)でもペアリングできるようですが、推奨されていません。できれば自動で左右もペアリングしてほしいのですが、そうなっていないのは、おそらく自動で左右がペアリングされるのはEarinの特許ではないでしょうか。
ペアリングすると英語音声で知らせてくれるところはAria Oneと同じですが、音声内容は異なります。こちらの方が分かりやすいです。
まず右ユニットをボタンを押してパワーオンすると"Power on"と声がします。そのままボタンを離さずに押し続けると"pairing"と声がするのではじめはここまでやってペアリングさせてください。二回目からは"power on"までです。
次に左ユニットをボタンを押して電源あげると"power on"と左から音声が聴こえます。ここはすぐ離してかまいません。すると数秒後に両方のユニットから"headset connected"と声がします。すると左右が接続されます。
Aria Oneのように電源残量はしゃべりません。(iPhone側のステータスと通知で確認できます)
* 対応CODEC
APT-X, AAC, SBCに対応しています。
* チャージングステーション
完全ワイヤレスにおいてチャージングステーションはとても重要なコンポーネントですが、Apollo 7のチャージングステーションはかなりよくできています。ふたの開け閉めもスムーズで、アルミ製でボディの質感もなかなか高級感を感じます。格納するのはEarinとは異なって並列に入れるのでかさばりますが、外すときは両方を指でちょっと押すだけなので外しにくく格納しにくいEarinよりも使い勝手は良いです。ただEarinの方がコンパクトで筒型になるのはやはりポケットに入れるときにメリットがあります。ここは長短あります。
またApollo7は格納する際に底面の電極端子が完全円形なので向きを気にしなくてよいという点をメリットとしています。これは特許とのこと。ただ円形でないEarinでもここはあまり問題にはならないとは思います。
左:Earin、右:Apollo 7
チャージャーにはめるときはカチッとするまで押し込みます。チャージステーションへのはめ込みは機械的なロックだと思います。磁石ではありません。このとき自動的に(強制的に)オフになりチャージ始めます。Aria Oneのようにはめただけではチャージ始めないほうが良いと言う人もいるとは思いますが、個人的にはチャージャーにはめるとリセットされると考えている方が自然に思います。ただしチャージャーから外してもEarinみたいに自動ではパワーオンしません。
ユニットへのチャージは2.5時間で、再生は3-4時間ということ。
イヤフォン用のチャージライトは一つですが、一個だけはまってるときは点滅で二個ともはまってると点灯なのでEarinみたいに片チャージの懸念はありません。こういうところは細いけど完全ワイヤレスでは重要です。Earinより改善されてますね。
* ユニット側での操作
完全ワイヤレスの場合にはコンビニのレジでちょっとイヤフォンを耳から外すということがしにくいので、再生機能、またはAudio Transparencyなどの環境音ミックス機能が必要になると思います。Apollo 7はAudio Transparency機能はありません。現状ではDashのみ、秋ごろにはKanoaがAudio Transparency機能に対応します。
Apollo 7の操作ボタンはちょっと小さいのでボタンを間違って押しやすいのではじめは注意が必要です。これはなれると気にならなくなります。これも完全ワイヤレスだとケーブルがないのでユニットの方向が分からなくなりやすいということがあります。
Apollo 7はボタン操作でポーズ/再生、スキップ/リワインド、音量上げ下げができます。これを一個のボタンでやるので左右をつかったものとなっています。つまりボタンは左と右で反対方向に使うのが面白いところです。
*右をダブルクリックで音量大、長押しでスキップ
*左をダブルクリックで音量小、長押しでバック
*シングルクリックはどちらもポーズと再生(左右関係なし)
これと通話制御です。
手でスマホを持っているときは音量はいいのですが、ブラウザやメールを操作しているときだと曲送りやポーズをするのにいちいち操作画面を出したりアプリ切り替えをするのは面倒なので、こうした操作スイッチがあった方が便利です。
スマホをカバンに入れてるときはもっと便利です。
* 通話機能
Apollo 7はマイクが付いているので通話することが可能です。
* 外観と使用感
箱・パッケージはよくできていて普通に売っている製品という感じです。実際にApollo 7の場合はKickstarterもほとんどプリオーダーと同じだったと思います。
コンプライT600が3サイズ、ラバー3サイズが付属されています。Apollo 7の場合は標準チップでよく合います。スタビライザーがついていますがエクササイズ以外は不要だと思います。
ユニット本体は軽くて装着感も良好です。まさに耳栓って感じ。ステムが太いのが特徴ですが、装着感は良いです。ちょっとプラスチックっぽいところはありますが、チャージーと違ってこちらは電波を通さなければならないのでしかたないところでしょう。それを踏まえてユニットを質感高く仕上げるのも完全ワイヤレス設計の腕の見せ所かもしれません。
左:Apollo 7、右:Earin
はじめは左右ユニットが分かりづらいかもしれません。なれるとERATOの文字向きで判別できます。
バッテリー残量は本機はBT4.0対応なので電池残量はiPhoneでは通知センターとステータスバーで分かります。本機では20%単位のようです。ユニットだけの電池の持ちは正しく測ってはいませんが2-3時間というところだと思います。完全ワイヤレスの場合はこれにチャージャーを組み合わせながら使います。
Aria oneのように明滅するLEDがうるさいが、側面についているAria oneと違って位置をずらして耳の後ろに隠れるようにできます。
個人的にはEarinで不便ないのでLED不要だと思いますが。。(落とした時に便利という人はいます)
* 音質
端的に言ってApollo 7はかなり音質は高いと思います。特にiPhone6で高音質アプリを使って聴くとBTイヤフォンの先入観を変えてくれるかもしれません。先日記事にしたBirds Requiemをカイザーサウンドにいれて聴いてますがこのくらい良録音でもかなり満足できます(もちろんハイレゾ再生できませんが)。
性格的には小口径ダイナミックということでEarinとAria oneの中間かなと予想した通りですが、思ってたより出音はしっかりしています。
これもまた他の完全ワイヤレスのようにぱっと聞いた時の音の広がりが良く、オーケストラ聴いてもスケール感があります。音はクリアで明瞭感がとても高いと感じます。楽器やヴォーカルがはっきりと聞こえ、音の純度が高いと思います。音調はソリッドでシャープ、音の丸みは少ない感じです。解像力も高く感じます。
Apollo 7の特徴はワイドレンジ感があることで、低域のパンチと量感、高域の伸びの気持ちよさの両方を感じられます。EarinやAria oneよりワイドレンジ感があります。下は深く上も伸びる感じで、ヴォーカルも前に出ないけど引っ込まない適度なバランスです。
左:Apollo 7、右:Earin
特に低音は重みがありパンチを感じられます。Aria Oneは量感はありますが柔らかいので、低音のアタックとかパンチはいまでの完全ワイヤレスで一番あるかもしりません。量はベースヘビーに感じるAria oneほどではないですが、Aria oneは低域は量感あるがやや下の上でなってるという感じです。ただAria oneの方がゆったり滑らかな感はあるので好みの点もあるかもしれません。Aria oneはオールドスピーカーという感じでApolloは現代的でHiFi調です。
楽器のキレはBAのEarinほどではないが近い感じで優秀です。シャープさ、切れ味という点ではAria oneよりはかなり良いですね。有線無線混ぜても普及価格ダイナミックではわりと良い方だと思います。
イヤチップはラバーチップ大を使いました。これに関してはApollo7の音を活かすにはSpiral dotとかより標準ラバーが一番良いとおもいます。コンプライだとAria oneっぽい音になります。低域のパンチがちょっと鈍く、ちょっと音が狭くなります。
* まとめ
音質的にEarinもAria oneも良さはあるけど、トータルではApollo7が一番優れています。ワイドレンジでパンチがありシャープです。
また機能的にもEarinの問題を改善しているところもあるし、Earinが特許を押さえていそうな今一歩な点もあります。気になる点はチャージャーから出した時に自動でオンにならない点と左右ペアリングが自動でされない点くらいです。やはり先行したEarinの影響というのはあるかもしれません。ただ改善されている点のほうが多いと思います。
Apollo7はコンパクトで音も良く、接続の途切れも少なく、チャージャーも良くできています。デザインも良く完成度が高いですね。
完全ワイヤレスもなかなか完成度が高くなっている気がします。