1.

P-51ムスタングはRay Samuels Audioの最新作で小型のポータブルアンプです。
電他は充電式のものがつかわれています。もともとサミュエルズさんのアンプのトレードマークは巨大なコンデンサーがどーんと配置されているところです。しかしホーネットとかトマホークくらいになるとコンデンサーが筺体サイズを律してしまいそれ以上は小さくできないということになってしまいます。
ムスタングではそれがかなり小型のものに代わり、その代りにパワーレールの+/-両方につけられているということです。この辺はわたしは分かりませんが、コンデンサーをおもいっきり小さくするという手法は日本で言うと47研究所のGain Card(4706)などのアンプなどを思い起こさせます。Gain Cardではその利点としてトランジェント・スピード感の向上をあげています。その代りGain Cardでは電源自体を強力にして電力供給力をあげています。
これがP-51の小型コンデンサー + 充電池という構成につながるアナロジーかは分かりませんが、RSAとしてはいままでの流れを変える設計ではあると思います。
またP-51はハイカレントの出力を誇り、同サイズのトマホークに比べて2倍の電流供給力があるということです。端的に言うとインピーダンスの高いヘッドホン・イヤホンで十分なSPL(音圧)を得るためには十分な電圧が必要になりますが、インピーダンスの低いヘッドホン・イヤホンで膨らまない整った音を得るためには十分な電流が必要になります。
サミュエルズさんのアンプは飛行機の名前をつけていますが、今回は第二次大戦のプロペラ戦闘機の名前となりました。
それに関しては以前のこちらの記事をご覧ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/108414043.html2.
実物はかなり小型で実際トマホークよりも小さくさえあります。

さて昨日今日と少し鳴らして聴いてみました。まだ絶対的にどのくらいまでいくのかは分かりませんが、相対的な音の傾向はわかってきたように思います。
主にiMod5.5G+ESW10JPNとUE11で聴いています。ESW10はMIDゲイン、UE11はLOWゲインを使います。ゲインスイッチはかなり小さくて細いドライバなどが必要ですが、スペースの都合でこうせざるを得なかったということです。
はじめは少し曇っていますが、聴いていると数時間で徐々に窓を拭くようにきれいに音が磨かれていきます。
ESW10とは立体的な空間表現を引き出すという点でALO Super Cottonドックが良いように思います。
ただし小ささゆえにSuper CottonのカナレF12プラグとボリュームノブがやや干渉します。無理ではありませんが、この状態でボリュームを動かすと少しプラグを擦ります。またこのときにヘッドホンプラグもapuresound V3のSwitch craftとはかなりぎりぎりのようです。

さて、まず感じる音の特徴はインパクトというか音のキレが良く、タイトで小気味良いということです。この点ではSR71Aよりさらに良いくらいにも思います。
また全体にSNが高く黒く引き締まっていて、解像力も高くシャープに感じます。バーンインが進むとこの傾向がはっきりして、はじめの曇りがどんどん取れて汚れていたガラスが磨かれて行くようになります。
実際ノイズフロアも非常に低くてLOWゲインだとUE11を使っても3時過ぎでようやくヒスが聞こえるくらいですので、トマホークよりもさらに優れているかもしれません。これだとSNでいうところの、音のあるところとないところの差のコントラストがかなりはっきりとすると思います。
P-51も全体的にはサミュエルズさんアンプということを感じさせる音の性格がありますが、ウォーム感は控えめであると思います。たとえばSR71Aだと音が滑らかにより有機的、厚みがある感じですが、P-51はコントラストが明解で明瞭感が高く聞こえます。
この辺はバーインして行くとまた少し変わるかも知れませんが、サミュエルズさんサウンドの延長上にあるようにもあり、今までと異なる感じもします。
音のバランスとしては低域がやや強めに出るように思えるけれども、これはオリジナルSR71とSR71Aを比べた時に感じたことにも似ています。
そのときの記事でその差は全体的に透明感・明瞭感が高くなったことと、低域がやや強めに出るようになったことと書きましたが、ムスタングでもこの方向での進化の傾向があるように思います。
ムスタングの場合は低く低域が沈むというよりも、低域に力感があるといった方が良いかもしれません。パンチのある音表現も加わっているのかもしれませんが、MOVEと比べてもこの辺の低域の強調感はあるように思います。
また、MOVEと比べると全体に抑揚があるというか、端正なMOVEともまた異なるように思います。
音場はUltrasoneのS-LogicデモCDの波の音(Brandung)で比較するとSR71Aよりはさすがに小振りで、ぱっと聞いたスケール感は一歩譲ります。
ただ、これだけ聴くとこじんまりしているという感じはあまりないとおもいます。

3.
いろいろと試してみて今のところ気にいっているのはムスタングとUE-11、Kenさんの新作ALO SXC iMod LODです。これはかなり"キラー"セットアップです。UE-11のよさを久々にまた実感したという感じです。
UE-11は鳴らすにはむずかしいIEMで、アンプのノイズフロアが高ければ音はすぐに曇るし、貧弱な出力しかなければ音はふくらみます。ヘッドホン・イヤホンを鳴らす、という言葉は単に音量を取るということとは違うということをUE-11は教えてくれます。
ノイズフロアがとても低くハイカレント出力のムスタングはUE-11を素晴らしく鳴らし、存分に力を発揮させることができます。ムスタングの強めの低域とUE11があいまって低域がすごくなってしまうのではないかという予見もあるかもしれませんが、ムスタングのドライブ力は高く、それをうまくコントロールします。低域の量感があってもたるんだりしないためにそれがマイナスとなるのではなく、重みがあり迫力があるというプラス面に変えてしまいます。ALOの新製品SXC LODの透明感とすばらしい切れの良さも加わってUE-11でこれだけ切れがあってパンチを感じるならば申し分ないでしょう。
単にUE11をダイナミックに鳴らすというなら、Nichiconホーネットなどもそうではありますが、やや大味な初代ホーネットに比べるとムスタングは精細な器用さを兼ね備えているという感じです。
ここでもUE11マスターのMOVEとはやや違う面を見せますが、これは同じ楽器を使っても二人の優れたアーティストが違う表現をするようなものです。
今の季節だとジャンパーやコートのポケットにすっぽり入ってしまうセットアップでこれだけ良く鳴ると通勤も楽しくなるというものです。
と、ここまで書いて文中にまだ記事に書いていないものを続々登場させてしまったのに気が付いてしまいました。まあいろいろ忙しくて、、でも実はまだまだあるんですけど(笑)