うちのブログのアクセスログを確認してみるとちょっと面白いのは、ずいぶん前に書いたPS AudioのDigital Link IIIの記事がいまだにコンスタントにヒットしていることです。実際にDigital Link IIIはかなり売れていてロングセラー的な商品になっているようです。価格も当初より下がっていて、10万を切るくらいになっているようですね。この性能でこの価格ではたしかに良いでしょう。
うちではDigital Link IIIはCDプレーヤーのIKEMIから同軸デジタルでSPDIF入力して、アナログ出力はバランスでSTAXのドライバーにつないでいます。ただコンピューターオーディオに取り組み始めてからはちょっと使っていませんでした。そこで多少古くなったこのDigital Link IIIをHalide Bridgeを使ってPCからバランスヘッドホンで使うシステムに組み込んでみました。
システムはWin7(Foobar2k)->(USB)Halide Bridge(同軸SPDIF)->Digital Link III->バランスアナログ出力(Kimber KCAG)->Headroom Desktopバランスアンプという感じです。Digital Link IIIの電源ケーブルは今回は力感のあるHeadroomにあわせてハイエンドホースAC3.5を使ってみました。
ちょっと復習するとDigital Link IIIの良さというのはまず脚色された分かりやすく良い音ということです。DACはニュートラルフラットな音が多いのですが、PS Audioの場合は暖かみを意図的に重視しています。また、基本性能も高く解像力とか広がり感でもBenchmark DAC1に負けずよいということです。安いのに良質なバランス出力を取り出せるというのもポイントです。全体にコストパフォーマンスが高いですね。
詳しくは下記の前の記事をご覧ください。このころでコストパフォーマンスがいいと書いていたので、安くなった今はさらに手ごろ感が高いでしょう。
http://vaiopocket.seesaa.net/category/2072352-1.html
Headroomにつけてみるとさすがに良質なバランス出力を持っているだけあって、音の広がり感が良いですし、ギターなどアコースティック楽器の音色もよく、ノリがよくジャズなんかのスイング感もよく出ています。ウッドベースなどの低域もDLIIIの強みのひとつで、豊かでかつしっかりした制動力を感じます。また、やや強めの個性の厚手のサウンドでロックのかっこよさもひきたちます。アナログ性能が高いと感じるのは、ディスクリートのIV変換とか強力な電源もきいているでしょう。
標準のUSBとBridgeの同軸で比べると、標準のUSBもWin7/FoobarのWASAPI排他モードで出すとわりと悪くありませんが、Bridge経由だと音が豊かになり、空気感というか倍音豊かに聞こえ、細やかさも増します。特にバランス出力のよさも分かりやすくなります。標準のUSBより一ランクあがったように思えます。
ただここまではいいんですが、DLIIIのUSBは48/16までなのでBridgeで96/24ハイレゾ再生も試してみようと思ったんですが、ちょっと試せません。これはDLIIIは独自のアップサンプリング機能があり、前面スイッチで96か192にアップサンプリングしますがオン・オフができません。これはPS Audioに直接聴いてみたのですが、そういう仕様のようで、入力信号がなんであれ、前面スイッチ位置の96/24か192/24にアップサンプリングされてしまうということです。
これは44/16前提のCDプレーヤーからのデジタル入力では気になりませんが、PCから出すときに96/24で出しても96/24に再度リサンプルされるということでなんとなくすっきりとしませんね。
それを考えると、88/24とか96/24などハイレゾ音源をかけたり本格的にコンピューターオーディオにも取り組みたい場合はちょっと向いていません。
オーディオ入門用と考えた場合にDLIIIはCDプレーヤーに初めて付ける単体DACとして、分かりやすい性能向上がありコストパフォーマンスの高さは優れています。PS AudioもPerfectWaveでハイエンドへ志向したのも良いですが、DLIIIのような安くてコストパフォーマンスの良いものの後継も考えてほしいものです。
Music TO GO!
2010年09月07日
2006年12月01日
Digital Link III来る!
Digital Link IIIが再び我が家に戻ってきました!
いまチェックのためにスピーカーオーディオとGS-Xにつけています。IKEMIをトランスポートとして前のレビューと同じ組み合わせにしています。まだ箱から出したばかりですが、さすが単体DACという音の切れの良さと解像力を堪能できます。
やはりDLIIIはフルバランスだけあって音のセパレーションは一級です。スピーカーだとアンバランスでつないでいますが、音が広がるだけでなくIKEMIのアンバランス出力よりいっそうフォーカスがよくなって定位感がぐっと上がった気がします。音の位置がぴしっと決まりますね。バランスのGS-Xだと空間に音が満ちるという快感が素晴らしいです。
全体に前よりも音の密度感がぐっと上がって進化したような気もします。電源ケーブルはさっそく替えていますが前と同じものなので、電源あたりが改良されたのかも。
これで10万円台前半ですから、聴きなおすとやはりコストパフォーマンスの高さが光りますね。
明日も紅葉撮るので早く寝ないといけないんだけどこれは夜更かししたくなって困ったなぁ(笑)
いまチェックのためにスピーカーオーディオとGS-Xにつけています。IKEMIをトランスポートとして前のレビューと同じ組み合わせにしています。まだ箱から出したばかりですが、さすが単体DACという音の切れの良さと解像力を堪能できます。
やはりDLIIIはフルバランスだけあって音のセパレーションは一級です。スピーカーだとアンバランスでつないでいますが、音が広がるだけでなくIKEMIのアンバランス出力よりいっそうフォーカスがよくなって定位感がぐっと上がった気がします。音の位置がぴしっと決まりますね。バランスのGS-Xだと空間に音が満ちるという快感が素晴らしいです。
全体に前よりも音の密度感がぐっと上がって進化したような気もします。電源ケーブルはさっそく替えていますが前と同じものなので、電源あたりが改良されたのかも。
これで10万円台前半ですから、聴きなおすとやはりコストパフォーマンスの高さが光りますね。
明日も紅葉撮るので早く寝ないといけないんだけどこれは夜更かししたくなって困ったなぁ(笑)
2006年11月29日
DLIII無事入荷!
この前レビューしましたDigital Link IIIが無事入荷しました!
http://avic.livedoor.biz/archives/50650296.html
わたしを含めて予約の方には随時出荷されると思います。楽しみですね〜
予想以上に好評だったようで、それなりの数が入ってますが初回入荷もほとんど埋まっていてあまり予約なしで買える数はないようです。
試聴機の用意はもう少しかかるようですが、機会があればぜひこの新しいDACに触れてみてください。
http://avic.livedoor.biz/archives/50650296.html
わたしを含めて予約の方には随時出荷されると思います。楽しみですね〜
予想以上に好評だったようで、それなりの数が入ってますが初回入荷もほとんど埋まっていてあまり予約なしで買える数はないようです。
試聴機の用意はもう少しかかるようですが、機会があればぜひこの新しいDACに触れてみてください。
2006年10月17日
PS Audioの新型DAC登場 ! Digital Link III レビュー
PS Audioが開発中だったDACがDigital Link IIIという名称でいよいよ製品化されました。
これはちょうど昨年のいま頃すこし情報ということで記事にしましたが、このたび完実電気さんより国内むけに発売することが決まりました!
http://avic.livedoor.biz/archives/50622069.html
わたしもかなり興味があったので個人輸入を考えていましたが、電気製品は故障を考えるとちょっと二の足を踏みます。しかし完実さんのような代理店に国内販売してくれるというのはかなり安心できます。
そこで今回フジヤさんよりデモ機をお借りできましたので、そのレビューをしていきたいと思います。
Digital Link III(以下DLIII)のバージョンがIIIというのは意味があります。PS Audioは実は世界で始めて単体DACを世に出したメーカーということでそうした伝統を含めた番号のようです。PS Audioというと電源アクセサリーが特に有名ですが、こうしてさまざまな製品を世に出している総合的なオーディオメーカーでもあります。
PS Audioのそうした早くからの取り組みの原点は初期のデジタルオーディオが硬い生気のない音を出していたことに対する不満からです。
それはいまでも変わりません。そのDLIIIの目指すところは"Warm, spacious, open"、つまりはアナログのように温もりがあって開放的で空間表現に優れた音を出すデジタルオーディオです。それを達成するためにDLIIIではいくつかの特徴を備えています。そこでまず、どうやってその目標を達成するために設計したかを見ていくことにしましょう。
1.1 フルバランス出力
DLIIIでは目標とする開放感のある広大な音を実現するために高品質のバランス出力が可能になっています。
バランス構成は信号伝達のノイズをキャンセルできるように正相(+)と逆相(-)をチャンネルごとに別々に伝達する方式です。プロ機材やハイエンドオーディオでよく見られます。
通常のDACではアンバランス出力から一部を反転させてバランスを取り出している簡易バランス出力ですが、DLIIIはもとのチップがはじめからバランス出力できる新型のTI PCM1798DBなので優れたバランス出力品質を取り出すことが出来ます。これにより空間表現の向上が期待できます。
これはバランス駆動のGS-Xのみならず、静電型のSTAXのドライバーなど中が完全バランス(チャンネルごとに完全に+/-系が分かれている)構成のアンプで特に大きな力を発揮するでしょう。また一般的なアンバランス(RCA)で接続してもDACがフルバランス構成であればDAC内部のチャンネル分離やSNの良さの恩恵を受けることが出来ます。
1.2 アナログ回路設計のこだわり
またDLIIIでは暖かみのあるアナログのような良い音を実現するために従来オペアンプなどで組まれていた出力段をオペアンプを使わないディスクリート構成にするこだわりを見せています。
まずDACのデジタルから変換された音の出力段で99%のDACがオペアンプを使用する部分(電流/電圧変換)をオペアンプではなくディスクリートで設計してあります。PS Audioによるとこの電流/電圧変換の部分にオペアンプを使用すると歪みが避けられなく、それがきつさの元凶となるということです。
またDACではスイッチングノイズというデジタル特有のノイズを発生するので、それをDAC内で取り除いておく必要がありますが、ここでもDLIIIでは独自のパッシブフィルターという方法で通常のDACで見られる硬さを取り除いています。
そして出力段自体をオペアンプを廃してFETとトランジスターで組むことで最終的に柔らかさのある刺のない音を可能にしています。
(画像掲載はPS Audioの許可を取得)
これに上の画像のようにPS Audioらしく強力な電源部を組み合わせることでDACでありながらアナログ部分を充実させたオーディオらしい音を出すことが出来ます。
これにより温もりのある暖かくて美しい音が期待できます。
1.3 デジタル回路の最新技術
DLIIIはもちろんデジタルの部分にもポイントがあります。
デジタル信号はアップサンプリングされて192kHzの高精細な信号に変換されより滑らかな音を取り出せるようになります。
ポイントはDLIIIではこのアップサンプリングを同時にジッター除去にも用いていることです。これはBenchmark DAC1と同様なASRC(Asymmetric Sample Rate Conversion:非同期式サンプリング変換)と呼ばれる方法です。
非同期式サンプリング変換とは読み出し側(CD)と受け手側(DAC)の時間基準(クロック)が同じでないという意味です。つまりアップサンプリング時に信号を細分化すると同時に時間軸をより正しく整列しなおすわけです。この利点はDAC64のようなバッファを使うジッター除去の方式に比べて音の遅れのようなものがないことです。
ここで使われているTIのSRC4192は新型で、定評あるDAC1のAD1896とピンコンパチブルということです。おそらく前に記事にかいたようにはじめはAD1896を使用するつもりだったのをこの新製品に変更したのでしょう。それだけ性能の向上には期待ができます。
ジッター処理が優れているということはより低価格なソース機器(CDプレーヤーとかデジタル・光ケーブル類)でも高い性能が発揮できるということにもなります。
*ジッターはさまざまな理由によるデジタル信号の時間的誤差(ゆらぎ)のことで、情報の内容が完全でもジッターによって音質は左右されます。
1.4 高品質なUSB入力
DLIIIでは音だけではなく、機能的にも入出力を充実させています。
現在ではCDプレーヤーからだけではなく、PCから音楽を聴く人も増えています。そのためDLIIIにはUSB入力がついています。こうしたDACを待っていた人も多いことでしょう。
しかもDLIIIにおいてUSBはおまけ機能ではありません。GCHAではUSBレシーバーチップがDACも兼ねるいわば簡易版のDACでした。DLIIIではUSBからの入力はそこでDAC処理されずにS/PDIF変換されて他のデジタル入力と同じ扱いで本体のDACチップで変換されます。
つまりDACの性能をフルに発揮した高品質な音になります。これによりCDプレーヤーなどと同様にPCを音楽ソースとして扱えるでしょう。
1.5 コストパフォーマンスの高さ
こうした様々な特徴がありながら価格をわりと安く抑えています(US$995)。
ここも大きなポイントといえます。
このように低価格なわりにはかなり高機能・高性能なDACです。特にDLIIIしかないという個性的なポイントが多いのもわかります。
DLIIIは実物を見るとかなり高級感があります。デザインはPS AudioのGCHAとあわせてありサイズも同一です。そのため組み合わせると統一性があります。上面がわずかにカーブを描いているのもデザイン的なポイントは高いといえます。
サイズはやや大きく、STAXのドライバーと奥行きはほぼ同じで平面的にも同じくらいです。STAXのドライバーの上半分をそいだ感じの大きさと重さです。
DLIIIのデジタル入力は同軸・光・USBの3系等あってそれを自動で判断します。優先度はランプの上から順にスキャンされるようです。またデジタル入力が二回のスキャンで検知されないとスリープのようなモードに入るようです。このためDLIIIには電源スイッチはありません。
また前面のスイッチでアップサンプリングレートを96kHzと192kHzに可変できます。
Part1ではPS Audioの目標とする音を実現するためにDLIIIがどういう特徴を備えているかについて説明しました。今度は音質面でそれがどう実現されているかを聴いていくことにしましょう。
試聴はLINN IKEMIをCDトランスポートとして使い同軸のデジタルケーブル(Wire World GoldStarlight3)から出します。またBenchmark DAC1と比較しますがDAC1はIKEMIからAES/EBUのデジタルケーブル(Wire World GoldStarlight3)で接続します。DLIIIは残念なことにAES/EBUのXLRコネクタ(通称キヤノン)を持っていません。
DLIIIからアンプへのインターコネクトはバランス(XLR)ケーブルはAQ Diamond3、アンバランス(RCA)ケーブルはAQ Anacondaでアナログ出力します。この2つはほぼ同じ性能と特性です。
またDLIIIはアナログ部分が本格的なせいか電源ケーブルでかなり性格が変わると思います。はじめにハイエンドホースAC3.5をあわせてみましたがやや音がきつめになるので、少し音が柔らかめのケーブルを探すとうちではLuxman P-1の添付ケーブルが良さそうなのであわせてみました。結果はなかなか良いので、おそらく柔らかめ系のケーブルがあうと思います。
試聴は基本的に平日夜に行ったのでヘッドホンアンプ中心に行っています。
機材はバランス接続用としてSTAX(オメガIIとSRM-007tA)とGS-X/バランスHD650、またアンバランス接続はHD-1LとEdition7です。
アップサンプリングの切り替えで音質はやや繊細でなめらかに変わりますが、全体的な印象は同じなので特に分けては書きません。
3.1 STAXとDLIII
まずSTAXシステムに接続します。STAXの自慢の一つはピュアバランス構成のドライバーにありますが、真のバランス出力を持つDLIIIによって上流からイヤースピーカーまで完全にバランスで統一できるわけです。
まず音をだしてぱっと聴いたときにはっとするくらい音の広がりがあります。これは左右に広いというより、3次元的に空間的に広がるという感じです。
高音域は純度が高く美しく繊細ですが同時に豊かさを感じます。中域は充実していて厚みと艶やかさがあります。低域はとてもタイトで解像感があります。ただし強くはありません。
中域から高域は美音ですが情報量がかなりあるためにか弱さは感じなく豊かさがあります。また音質がとても柔らかく高い音の分離感がありながら音のエッジはきつくなく柔らか味を感じます。007tAの真空管という特性を差し引いても全体に柔らかさを感じて、子音のきつさはまったくありません。
比較しているIKEMIも一体型CDプレーヤーとはいえ定価60万円くらいのかなりハイレベルの機器です。それを考えると単体DACのDLIIIはなかなか高性能といえると思います。
全体にまとまってバランスが良く上品な感じで荒さは感じません。基本的に分析的な音でも無味乾燥な音でもなくとても潤いのある音楽的な音ですが、人によってはやや控えめに感じるかもしれません。ただしダイナミックな感じも程よくあります。それでいてうるさく前に出るほうではありません。
3.2 GS-XとDLIII
次にGS-Xとバランス駆動のHD650に替えると音の広がりはさらに顕著で、広がりというよりも壮麗という言葉を使いたくなります。まさに豪華絢爛たる絵巻の壮大な音世界という感覚に圧倒されます。
これはオーケストラや複雑な音をミックスした楽曲だけではありません。
なんとヴァイオリンのソロでさえIKEMIのバランス出力と比べると音が豊かで響きがヴォリューム感よく実体感があるように聴こえます。IKEMIのバランス出力も音自体は繊細できれいですが、DLIIIに比べるとやや痩せて細く感じられます。この辺が真のバランスの強みでしょう。
次に驚くのは低域の解像力です。前に紹介したコントラバスの試聴ディスクで聴きましたが、こんなに超低域のアコースティック楽器の音が音離れ良くくっきりとした解像感をもって聴こえるのはあまり聴いたことがありません。またかなりタイトで余分な膨らみをまったく感じさせません。
以前ある試聴会でジッターの悪影響についてメーカーの人が説明してくれましたが、良く分かるのは低域の音の膨らみ加減でベースのピチカートに顕著に表れる、と言ってジッターの影響の大小について機器を変えて聴き比べをさせてくれたことがあります。
そうした意味ではまさにDLIIIのジッター低減は効果を奏しています。
3.3 アンバランス(RCA)接続とDLIII
DLIIIの強みはアンバランス(RCA)の接続でも発揮されます。
基本的な左右のチャンネルセパレーションが良いためか、アンバランスで接続しても音の広さはかなり感じられます。
RCA接続でHD-1LとEdition7の組み合わせで聴くとEdition7とHD-1Lを組み合わせたときのややきつい感じがなく、適度な低音の強調感とともにとてもパワフルでダイナミックです。低域の不足感はあまり感じません。
きつい感じがわりと抑えられているわりに解像感や音の分離感はEdition7の性能を十二分に引き出しています。Edition7のともすれば膨らみがちな低域が見事にタイトに締まって気持ちよくビートを刻んでいます。わたしは持ってませんがEdition9だとさらによいバランスになるかもしれません。
早く帰宅したときにちょっと音出しをしてスピーカーでも聴いてみましたが、印象はこのHD-1Lに近いものです。(うちのアンプはアンバランスで接続します)
あとでまたスピーカーについてはレポートしてみたいものです。
3.4 DAC1との比較
ここでは同じくらいの価格で定評のあるBenchmark DAC1と比べて見ます。
機材はGS-XとSTAXを使いDAC1からもバランスでつなぎます。ケーブルはつなぎかえて同じものを使います。
GS-Xで聴くと差はかなり分かります。差が浮き彫りにされると言う感じです。特に同じバランスケーブルでつないでいてもDAC1とDLIIIでは音の広がりは大きな差があります。DAC1はずいぶんとこじんまりとして聴こえるという感じです。
また意外なことに低域の解像力も差があります。これもDLIIIの方が上で、前述のコントラバス試聴ディスクの超低域での「やにが飛ぶような」胴鳴りのリアルさや情報量はDLIIIの方が少し上に聴こえます。またDLIIIの方がより締まって低音に贅肉がありません。これはジッター除去には定評のあるあのDAC1よりもさらにジッター除去がうまくできているということのように思えます。
細かいところからチェックしましたが、すこし俯瞰的に見てみると音の印象の全体では鳴り方の性格的な違いを感じます。これは予想していたところではありますが、DAC1のやや硬めのプロ機的な鳴り方がDLIIIの柔らかくより音楽的な鳴りと対比されます。また聴覚的には情報量もDLIIIの方が上に思います。全体的な印象としては滑らかでスムーズなDLIIIに対してDAC1は荒さを感じます。
これはひとつにDLIIIと比べた場合にDAC1は高域と低域の両方で強調感を感じるということもあります。低域はDLIIIの方がより洗練されていますがDAC1の方が比較的強く出るので好みによるとは思います。ただ高域はキンキンとしたブライト感があり聴きづらいDAC1に比してDLIIIはかなり滑らかでかつきれいでDLIIIの方があきらかに上です。また中域に関しては特にヴォーカルでDLIIIの方が肉感豊かに感じます。
STAXだとDAC1のきつさを007tAの真空管が緩和するという感じでDAC1にはやや有利です。しかし逆にDAC1に潤いがないという感じもはっきりします。またやはりDAC1では音の広がりはあまり感じられませんし、全体に情報量もDLIIIがより上と感じられます。情報量というよりも繊細さといった方がよいかもしれません。これは静電型の音再現にとっては重要なポイントであると思います。
DLIIIに変えるとDAC1のときに感じた荒さがなくなり整って端正に聴こえます。また低域の解像力も高いと感じるところもGS-Xでの印象と同じです。中域の厚みと高域の美しさが上品な音を感じさせます。
3.5 USB接続でのPCとDLIII
さきに述べたようにDLIIIのポイントの一つはUSBでPCと直接接続できるということです。これはGS-XとHD-1Lで聴きました。
まずわたしのPC(Windows XP)に接続します。わたしはあまりPCオーディオはやっていないので特に変わったドライバなどは入れていません。またUSBケーブルも普通にHDなど周辺機器を繋ぐためのケーブルを流用しました。
DLIII側のUSBのコネクタは上の画像にあるように山型のいわゆる「シリーズB」タイプです。
インストールはとても簡単です、というより実質なにもしません。USBケーブルをPCに差し込むだけです。
そこでDACの電源をあげる(わたしの場合はタップのマスタースイッチをオン)と自動的にWindowsが標準のUSB Audio CODECオーディオデバイスを認識してコンパネのデバイス選択が自動的に変わります。
まずiTunesで試聴します。ソースはiTunesでiPod用に格納しているAppleロスレスの音楽ファイルです。
CDプレーヤー(IKEMI)につなげたのに比べるとやや薄口になりますが音はかなり良いと思います。またCDP接続に比べるとやや音の広がりは減退して情報量も減ります。
また下記のWinampを含めてすべてのソフトでたまに音が途切れますが、これはUSB接続ゆえのものでしょう。
Winamp(5.3)だとiTunesに比べて音質は大きく改善されて、かなり満足できるレベルになります。音の広がりも改善されるように思います。
ただしいまわたしがPCで持っている音楽ソースのほとんどがiPod用でAppleロスレスなのでWinampだとあまり多くの曲を聴けません。Winampと次のFoobarについてはCDexで何曲かWaveにRIPして聴いています。
そこで他のソースを聴いてみましたが、DLIIIは音が柔らかいのでMP3や低ビットレートのインターネットラジオの試聴で聴きやすいと思いました。この辺はPCオーディオ環境にもむいているといえるかもしれません。
Foobar2000(0.9.4)でも試してみました。Winampと比べるとやや重心があがり音の精細感もややあがるように感じますが、Winampに比べて音の性格が変わるせいかもしれません。Winampの方がやや落ち着いた感じがすると思います。WinampとFooBar2000だと好みでも左右されるような気はしますが、この両者だとかなりレベルは高いように思えます。
GS-Xは一般的とはいえないですが、アンバランスでEdition7+HD-1L+DLIIIで聴いたWinampかFoobar2kでも驚くほどレベルが高い音楽再生環境だと思います。これはまさにオーディオ用の単体DACならではの高音質だと思いますので、ぜひ試してみてほしいものです。
PCオーディオに詳しい人ならばASIOを使ってみたり、さらなる高音質化の可能性があるのではないかと思います。
一通りの分析的なテストを終えて今度はゆっくりと聴きかえして音楽をふつうに楽しんでみました。
DACだからDigitalをAnalogに変換すれば良いんだろうというのではなく、いかに音楽的な良いアナログ信号を作るかというポリシーがDLIIIには見えます。
DLIIIはジッターの除去や情報量の多さなど性能の高さと暖かくて柔らかな音楽性の高さを高次元で、かつ低価格で両立しています。しかもフルバランスの音の広がりは圧倒的で、GS-XやSTAXのようなバランス構成の機器をより魅力的なものにしています。またプリメインアンプやHD-1Lのようなアンバランス(RCA)で使用してもそうした音質のよさを実感できます。
音楽性というとわたしの主観が入ってしまいますので、そこは好みによるとは思います。ただ音の広さとか解像力の高さなど性能な意味での音質の高さは実感できると思います。
端的にまとめるならば、DLIIIはPS Audioのうたい文句である"Warm, spacious, open"のテーマどおりによく作られていると思います。
現在10万円から20万円くらいのCDプレーヤーを使っている人のステップアップには文句なくコストパフォーマンスの高い選択となるでしょう。いままでこの価格帯でコストパフォーマンスの高いDACとしてはBenchmark DAC1がありました。DAC1と比較するとDAC1のようにプロ機的な味気の無いところが無く、コンシューマー用としてきれいな音が出るので広く勧められます。
ヘッドホンで使うさいにはDAC1のようにヘッドホンアンプがついていませんが、最近はヘッドホンアンプも普及してきたのでさらなる高音質化のために単体DACを追加したいという人も多いでしょう。例えばGCHAをUSB接続しているが、せっかくのGCHAの高性能を生かすためにより高音質でUSBでつなぎたいというひとにも勧めたいところです。
またSTAXを使っていて完全バランスのシステムを経験してみたいという人にもお勧めだと思います。さらなる音の広がりの豊かさでそれを実感できると思います。
ただし従来品を使う方はDLIIIは2番ホットというところに気をつけてください。とはいえ新製品情報を見るとSTAXも2番ホットに順次切り替えているようなので将来的にはこちらの方が良いでしょう。
音質面だけでなくかなりカジュアルに使えるDACだとも思います。たとえばUSBがついていることでPCで音楽を聴いたりゲームをしたりという人にもむいているでしょう。PCオーディオを使用している人の高音質化でCDプレーヤーの導入を考えていた人にはよい選択となりそうです。
MP3や低ビットレートのインターネットラジオなどプアなソースに対して強いのもメリットといえるでしょう。
さて、デモ機でIKEMIと差し替えながらじっくり聴きました。こうして聴き比べてみるとなんだかこのDLIIIの作り出す世界から離れたくない気がしてきました。そういうわけで、わたしはデモ機を返す前の日に電話してDLIIIの予約を入れました。
いろいろ長く書いてみましたが、考えてみるとこれが今回の結論のような気もします。
また自分のものが到着したら今回あまりできなかったスピーカー関係もレポートしていきたいと思います。
これはちょうど昨年のいま頃すこし情報ということで記事にしましたが、このたび完実電気さんより国内むけに発売することが決まりました!
http://avic.livedoor.biz/archives/50622069.html
わたしもかなり興味があったので個人輸入を考えていましたが、電気製品は故障を考えるとちょっと二の足を踏みます。しかし完実さんのような代理店に国内販売してくれるというのはかなり安心できます。
そこで今回フジヤさんよりデモ機をお借りできましたので、そのレビューをしていきたいと思います。
1. Digital Link IIIの特徴について
Digital Link III(以下DLIII)のバージョンがIIIというのは意味があります。PS Audioは実は世界で始めて単体DACを世に出したメーカーということでそうした伝統を含めた番号のようです。PS Audioというと電源アクセサリーが特に有名ですが、こうしてさまざまな製品を世に出している総合的なオーディオメーカーでもあります。
PS Audioのそうした早くからの取り組みの原点は初期のデジタルオーディオが硬い生気のない音を出していたことに対する不満からです。
それはいまでも変わりません。そのDLIIIの目指すところは"Warm, spacious, open"、つまりはアナログのように温もりがあって開放的で空間表現に優れた音を出すデジタルオーディオです。それを達成するためにDLIIIではいくつかの特徴を備えています。そこでまず、どうやってその目標を達成するために設計したかを見ていくことにしましょう。
1.1 フルバランス出力
DLIIIでは目標とする開放感のある広大な音を実現するために高品質のバランス出力が可能になっています。
バランス構成は信号伝達のノイズをキャンセルできるように正相(+)と逆相(-)をチャンネルごとに別々に伝達する方式です。プロ機材やハイエンドオーディオでよく見られます。
通常のDACではアンバランス出力から一部を反転させてバランスを取り出している簡易バランス出力ですが、DLIIIはもとのチップがはじめからバランス出力できる新型のTI PCM1798DBなので優れたバランス出力品質を取り出すことが出来ます。これにより空間表現の向上が期待できます。
これはバランス駆動のGS-Xのみならず、静電型のSTAXのドライバーなど中が完全バランス(チャンネルごとに完全に+/-系が分かれている)構成のアンプで特に大きな力を発揮するでしょう。また一般的なアンバランス(RCA)で接続してもDACがフルバランス構成であればDAC内部のチャンネル分離やSNの良さの恩恵を受けることが出来ます。
1.2 アナログ回路設計のこだわり
またDLIIIでは暖かみのあるアナログのような良い音を実現するために従来オペアンプなどで組まれていた出力段をオペアンプを使わないディスクリート構成にするこだわりを見せています。
まずDACのデジタルから変換された音の出力段で99%のDACがオペアンプを使用する部分(電流/電圧変換)をオペアンプではなくディスクリートで設計してあります。PS Audioによるとこの電流/電圧変換の部分にオペアンプを使用すると歪みが避けられなく、それがきつさの元凶となるということです。
またDACではスイッチングノイズというデジタル特有のノイズを発生するので、それをDAC内で取り除いておく必要がありますが、ここでもDLIIIでは独自のパッシブフィルターという方法で通常のDACで見られる硬さを取り除いています。
そして出力段自体をオペアンプを廃してFETとトランジスターで組むことで最終的に柔らかさのある刺のない音を可能にしています。
(画像掲載はPS Audioの許可を取得)
これに上の画像のようにPS Audioらしく強力な電源部を組み合わせることでDACでありながらアナログ部分を充実させたオーディオらしい音を出すことが出来ます。
これにより温もりのある暖かくて美しい音が期待できます。
1.3 デジタル回路の最新技術
DLIIIはもちろんデジタルの部分にもポイントがあります。
デジタル信号はアップサンプリングされて192kHzの高精細な信号に変換されより滑らかな音を取り出せるようになります。
ポイントはDLIIIではこのアップサンプリングを同時にジッター除去にも用いていることです。これはBenchmark DAC1と同様なASRC(Asymmetric Sample Rate Conversion:非同期式サンプリング変換)と呼ばれる方法です。
非同期式サンプリング変換とは読み出し側(CD)と受け手側(DAC)の時間基準(クロック)が同じでないという意味です。つまりアップサンプリング時に信号を細分化すると同時に時間軸をより正しく整列しなおすわけです。この利点はDAC64のようなバッファを使うジッター除去の方式に比べて音の遅れのようなものがないことです。
ここで使われているTIのSRC4192は新型で、定評あるDAC1のAD1896とピンコンパチブルということです。おそらく前に記事にかいたようにはじめはAD1896を使用するつもりだったのをこの新製品に変更したのでしょう。それだけ性能の向上には期待ができます。
ジッター処理が優れているということはより低価格なソース機器(CDプレーヤーとかデジタル・光ケーブル類)でも高い性能が発揮できるということにもなります。
*ジッターはさまざまな理由によるデジタル信号の時間的誤差(ゆらぎ)のことで、情報の内容が完全でもジッターによって音質は左右されます。
1.4 高品質なUSB入力
DLIIIでは音だけではなく、機能的にも入出力を充実させています。
現在ではCDプレーヤーからだけではなく、PCから音楽を聴く人も増えています。そのためDLIIIにはUSB入力がついています。こうしたDACを待っていた人も多いことでしょう。
しかもDLIIIにおいてUSBはおまけ機能ではありません。GCHAではUSBレシーバーチップがDACも兼ねるいわば簡易版のDACでした。DLIIIではUSBからの入力はそこでDAC処理されずにS/PDIF変換されて他のデジタル入力と同じ扱いで本体のDACチップで変換されます。
つまりDACの性能をフルに発揮した高品質な音になります。これによりCDプレーヤーなどと同様にPCを音楽ソースとして扱えるでしょう。
1.5 コストパフォーマンスの高さ
こうした様々な特徴がありながら価格をわりと安く抑えています(US$995)。
ここも大きなポイントといえます。
このように低価格なわりにはかなり高機能・高性能なDACです。特にDLIIIしかないという個性的なポイントが多いのもわかります。
2. デザイン・使いやすさ
DLIIIは実物を見るとかなり高級感があります。デザインはPS AudioのGCHAとあわせてありサイズも同一です。そのため組み合わせると統一性があります。上面がわずかにカーブを描いているのもデザイン的なポイントは高いといえます。
サイズはやや大きく、STAXのドライバーと奥行きはほぼ同じで平面的にも同じくらいです。STAXのドライバーの上半分をそいだ感じの大きさと重さです。
DLIIIのデジタル入力は同軸・光・USBの3系等あってそれを自動で判断します。優先度はランプの上から順にスキャンされるようです。またデジタル入力が二回のスキャンで検知されないとスリープのようなモードに入るようです。このためDLIIIには電源スイッチはありません。
また前面のスイッチでアップサンプリングレートを96kHzと192kHzに可変できます。
3. 音質
Part1ではPS Audioの目標とする音を実現するためにDLIIIがどういう特徴を備えているかについて説明しました。今度は音質面でそれがどう実現されているかを聴いていくことにしましょう。
試聴はLINN IKEMIをCDトランスポートとして使い同軸のデジタルケーブル(Wire World GoldStarlight3)から出します。またBenchmark DAC1と比較しますがDAC1はIKEMIからAES/EBUのデジタルケーブル(Wire World GoldStarlight3)で接続します。DLIIIは残念なことにAES/EBUのXLRコネクタ(通称キヤノン)を持っていません。
DLIIIからアンプへのインターコネクトはバランス(XLR)ケーブルはAQ Diamond3、アンバランス(RCA)ケーブルはAQ Anacondaでアナログ出力します。この2つはほぼ同じ性能と特性です。
またDLIIIはアナログ部分が本格的なせいか電源ケーブルでかなり性格が変わると思います。はじめにハイエンドホースAC3.5をあわせてみましたがやや音がきつめになるので、少し音が柔らかめのケーブルを探すとうちではLuxman P-1の添付ケーブルが良さそうなのであわせてみました。結果はなかなか良いので、おそらく柔らかめ系のケーブルがあうと思います。
試聴は基本的に平日夜に行ったのでヘッドホンアンプ中心に行っています。
機材はバランス接続用としてSTAX(オメガIIとSRM-007tA)とGS-X/バランスHD650、またアンバランス接続はHD-1LとEdition7です。
アップサンプリングの切り替えで音質はやや繊細でなめらかに変わりますが、全体的な印象は同じなので特に分けては書きません。
3.1 STAXとDLIII
まずSTAXシステムに接続します。STAXの自慢の一つはピュアバランス構成のドライバーにありますが、真のバランス出力を持つDLIIIによって上流からイヤースピーカーまで完全にバランスで統一できるわけです。
まず音をだしてぱっと聴いたときにはっとするくらい音の広がりがあります。これは左右に広いというより、3次元的に空間的に広がるという感じです。
高音域は純度が高く美しく繊細ですが同時に豊かさを感じます。中域は充実していて厚みと艶やかさがあります。低域はとてもタイトで解像感があります。ただし強くはありません。
中域から高域は美音ですが情報量がかなりあるためにか弱さは感じなく豊かさがあります。また音質がとても柔らかく高い音の分離感がありながら音のエッジはきつくなく柔らか味を感じます。007tAの真空管という特性を差し引いても全体に柔らかさを感じて、子音のきつさはまったくありません。
比較しているIKEMIも一体型CDプレーヤーとはいえ定価60万円くらいのかなりハイレベルの機器です。それを考えると単体DACのDLIIIはなかなか高性能といえると思います。
全体にまとまってバランスが良く上品な感じで荒さは感じません。基本的に分析的な音でも無味乾燥な音でもなくとても潤いのある音楽的な音ですが、人によってはやや控えめに感じるかもしれません。ただしダイナミックな感じも程よくあります。それでいてうるさく前に出るほうではありません。
3.2 GS-XとDLIII
次にGS-Xとバランス駆動のHD650に替えると音の広がりはさらに顕著で、広がりというよりも壮麗という言葉を使いたくなります。まさに豪華絢爛たる絵巻の壮大な音世界という感覚に圧倒されます。
これはオーケストラや複雑な音をミックスした楽曲だけではありません。
なんとヴァイオリンのソロでさえIKEMIのバランス出力と比べると音が豊かで響きがヴォリューム感よく実体感があるように聴こえます。IKEMIのバランス出力も音自体は繊細できれいですが、DLIIIに比べるとやや痩せて細く感じられます。この辺が真のバランスの強みでしょう。
次に驚くのは低域の解像力です。前に紹介したコントラバスの試聴ディスクで聴きましたが、こんなに超低域のアコースティック楽器の音が音離れ良くくっきりとした解像感をもって聴こえるのはあまり聴いたことがありません。またかなりタイトで余分な膨らみをまったく感じさせません。
以前ある試聴会でジッターの悪影響についてメーカーの人が説明してくれましたが、良く分かるのは低域の音の膨らみ加減でベースのピチカートに顕著に表れる、と言ってジッターの影響の大小について機器を変えて聴き比べをさせてくれたことがあります。
そうした意味ではまさにDLIIIのジッター低減は効果を奏しています。
3.3 アンバランス(RCA)接続とDLIII
DLIIIの強みはアンバランス(RCA)の接続でも発揮されます。
基本的な左右のチャンネルセパレーションが良いためか、アンバランスで接続しても音の広さはかなり感じられます。
RCA接続でHD-1LとEdition7の組み合わせで聴くとEdition7とHD-1Lを組み合わせたときのややきつい感じがなく、適度な低音の強調感とともにとてもパワフルでダイナミックです。低域の不足感はあまり感じません。
きつい感じがわりと抑えられているわりに解像感や音の分離感はEdition7の性能を十二分に引き出しています。Edition7のともすれば膨らみがちな低域が見事にタイトに締まって気持ちよくビートを刻んでいます。わたしは持ってませんがEdition9だとさらによいバランスになるかもしれません。
早く帰宅したときにちょっと音出しをしてスピーカーでも聴いてみましたが、印象はこのHD-1Lに近いものです。(うちのアンプはアンバランスで接続します)
あとでまたスピーカーについてはレポートしてみたいものです。
3.4 DAC1との比較
ここでは同じくらいの価格で定評のあるBenchmark DAC1と比べて見ます。
機材はGS-XとSTAXを使いDAC1からもバランスでつなぎます。ケーブルはつなぎかえて同じものを使います。
GS-Xで聴くと差はかなり分かります。差が浮き彫りにされると言う感じです。特に同じバランスケーブルでつないでいてもDAC1とDLIIIでは音の広がりは大きな差があります。DAC1はずいぶんとこじんまりとして聴こえるという感じです。
また意外なことに低域の解像力も差があります。これもDLIIIの方が上で、前述のコントラバス試聴ディスクの超低域での「やにが飛ぶような」胴鳴りのリアルさや情報量はDLIIIの方が少し上に聴こえます。またDLIIIの方がより締まって低音に贅肉がありません。これはジッター除去には定評のあるあのDAC1よりもさらにジッター除去がうまくできているということのように思えます。
細かいところからチェックしましたが、すこし俯瞰的に見てみると音の印象の全体では鳴り方の性格的な違いを感じます。これは予想していたところではありますが、DAC1のやや硬めのプロ機的な鳴り方がDLIIIの柔らかくより音楽的な鳴りと対比されます。また聴覚的には情報量もDLIIIの方が上に思います。全体的な印象としては滑らかでスムーズなDLIIIに対してDAC1は荒さを感じます。
これはひとつにDLIIIと比べた場合にDAC1は高域と低域の両方で強調感を感じるということもあります。低域はDLIIIの方がより洗練されていますがDAC1の方が比較的強く出るので好みによるとは思います。ただ高域はキンキンとしたブライト感があり聴きづらいDAC1に比してDLIIIはかなり滑らかでかつきれいでDLIIIの方があきらかに上です。また中域に関しては特にヴォーカルでDLIIIの方が肉感豊かに感じます。
STAXだとDAC1のきつさを007tAの真空管が緩和するという感じでDAC1にはやや有利です。しかし逆にDAC1に潤いがないという感じもはっきりします。またやはりDAC1では音の広がりはあまり感じられませんし、全体に情報量もDLIIIがより上と感じられます。情報量というよりも繊細さといった方がよいかもしれません。これは静電型の音再現にとっては重要なポイントであると思います。
DLIIIに変えるとDAC1のときに感じた荒さがなくなり整って端正に聴こえます。また低域の解像力も高いと感じるところもGS-Xでの印象と同じです。中域の厚みと高域の美しさが上品な音を感じさせます。
3.5 USB接続でのPCとDLIII
さきに述べたようにDLIIIのポイントの一つはUSBでPCと直接接続できるということです。これはGS-XとHD-1Lで聴きました。
まずわたしのPC(Windows XP)に接続します。わたしはあまりPCオーディオはやっていないので特に変わったドライバなどは入れていません。またUSBケーブルも普通にHDなど周辺機器を繋ぐためのケーブルを流用しました。
DLIII側のUSBのコネクタは上の画像にあるように山型のいわゆる「シリーズB」タイプです。
インストールはとても簡単です、というより実質なにもしません。USBケーブルをPCに差し込むだけです。
そこでDACの電源をあげる(わたしの場合はタップのマスタースイッチをオン)と自動的にWindowsが標準のUSB Audio CODECオーディオデバイスを認識してコンパネのデバイス選択が自動的に変わります。
まずiTunesで試聴します。ソースはiTunesでiPod用に格納しているAppleロスレスの音楽ファイルです。
CDプレーヤー(IKEMI)につなげたのに比べるとやや薄口になりますが音はかなり良いと思います。またCDP接続に比べるとやや音の広がりは減退して情報量も減ります。
また下記のWinampを含めてすべてのソフトでたまに音が途切れますが、これはUSB接続ゆえのものでしょう。
Winamp(5.3)だとiTunesに比べて音質は大きく改善されて、かなり満足できるレベルになります。音の広がりも改善されるように思います。
ただしいまわたしがPCで持っている音楽ソースのほとんどがiPod用でAppleロスレスなのでWinampだとあまり多くの曲を聴けません。Winampと次のFoobarについてはCDexで何曲かWaveにRIPして聴いています。
そこで他のソースを聴いてみましたが、DLIIIは音が柔らかいのでMP3や低ビットレートのインターネットラジオの試聴で聴きやすいと思いました。この辺はPCオーディオ環境にもむいているといえるかもしれません。
Foobar2000(0.9.4)でも試してみました。Winampと比べるとやや重心があがり音の精細感もややあがるように感じますが、Winampに比べて音の性格が変わるせいかもしれません。Winampの方がやや落ち着いた感じがすると思います。WinampとFooBar2000だと好みでも左右されるような気はしますが、この両者だとかなりレベルは高いように思えます。
GS-Xは一般的とはいえないですが、アンバランスでEdition7+HD-1L+DLIIIで聴いたWinampかFoobar2kでも驚くほどレベルが高い音楽再生環境だと思います。これはまさにオーディオ用の単体DACならではの高音質だと思いますので、ぜひ試してみてほしいものです。
PCオーディオに詳しい人ならばASIOを使ってみたり、さらなる高音質化の可能性があるのではないかと思います。
4. 感想とまとめ
一通りの分析的なテストを終えて今度はゆっくりと聴きかえして音楽をふつうに楽しんでみました。
DACだからDigitalをAnalogに変換すれば良いんだろうというのではなく、いかに音楽的な良いアナログ信号を作るかというポリシーがDLIIIには見えます。
DLIIIはジッターの除去や情報量の多さなど性能の高さと暖かくて柔らかな音楽性の高さを高次元で、かつ低価格で両立しています。しかもフルバランスの音の広がりは圧倒的で、GS-XやSTAXのようなバランス構成の機器をより魅力的なものにしています。またプリメインアンプやHD-1Lのようなアンバランス(RCA)で使用してもそうした音質のよさを実感できます。
音楽性というとわたしの主観が入ってしまいますので、そこは好みによるとは思います。ただ音の広さとか解像力の高さなど性能な意味での音質の高さは実感できると思います。
端的にまとめるならば、DLIIIはPS Audioのうたい文句である"Warm, spacious, open"のテーマどおりによく作られていると思います。
現在10万円から20万円くらいのCDプレーヤーを使っている人のステップアップには文句なくコストパフォーマンスの高い選択となるでしょう。いままでこの価格帯でコストパフォーマンスの高いDACとしてはBenchmark DAC1がありました。DAC1と比較するとDAC1のようにプロ機的な味気の無いところが無く、コンシューマー用としてきれいな音が出るので広く勧められます。
ヘッドホンで使うさいにはDAC1のようにヘッドホンアンプがついていませんが、最近はヘッドホンアンプも普及してきたのでさらなる高音質化のために単体DACを追加したいという人も多いでしょう。例えばGCHAをUSB接続しているが、せっかくのGCHAの高性能を生かすためにより高音質でUSBでつなぎたいというひとにも勧めたいところです。
またSTAXを使っていて完全バランスのシステムを経験してみたいという人にもお勧めだと思います。さらなる音の広がりの豊かさでそれを実感できると思います。
ただし従来品を使う方はDLIIIは2番ホットというところに気をつけてください。とはいえ新製品情報を見るとSTAXも2番ホットに順次切り替えているようなので将来的にはこちらの方が良いでしょう。
音質面だけでなくかなりカジュアルに使えるDACだとも思います。たとえばUSBがついていることでPCで音楽を聴いたりゲームをしたりという人にもむいているでしょう。PCオーディオを使用している人の高音質化でCDプレーヤーの導入を考えていた人にはよい選択となりそうです。
MP3や低ビットレートのインターネットラジオなどプアなソースに対して強いのもメリットといえるでしょう。
さて、デモ機でIKEMIと差し替えながらじっくり聴きました。こうして聴き比べてみるとなんだかこのDLIIIの作り出す世界から離れたくない気がしてきました。そういうわけで、わたしはデモ機を返す前の日に電話してDLIIIの予約を入れました。
いろいろ長く書いてみましたが、考えてみるとこれが今回の結論のような気もします。
また自分のものが到着したら今回あまりできなかったスピーカー関係もレポートしていきたいと思います。