Music TO GO!

2011年03月26日

STAXの静電型新フラッグシップ、SR009を試聴しました

今日は角田さん宅にSTAXの新型SR009の試聴機が来ていると言うことでお邪魔して聴いて来ました。
長らく待ち望まれていたSR007を超える新フラッグシップです。価格も388500円と堂々としたものです。さて、実力はどのようなものでしょうか。(発売は4/20です)

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今回の上流はPCオーディオシステムで、目玉の一つはこのLINNのリッピングサーバーのSSDモデルです。これはhushの静音PC筐体にWindows Serverを搭載して、RipNAS Essentialsというソフトウエアでリッピングなどを自動でやってしまうと言うものです。
http://www.linn.jp/products/new/rms.html
内部を開けてみると冷却用のヒートパイプが見えますね。

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ネットワークオーディオ機器はKlimax DSでそこからAyreのプリを通してSTAXの静電ドライバーに接続すると言う豪華な布陣です。

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静電型のドライバー(ヘッドフォンアンプ)はこのようにSRM727AとSRM007tAで、このラックは角田さん手製とのこと。なおここにありませんが、箱はSR007のようなアタッシュケースでなく桐箱だそうです。比較用にSR007を使用しました。
着けてみると装着感もSR009の方が良いですね。良くフィットしますし、スライドする調整機能も良くできてます。

さて、長く待ち焦がれていたSR009の特徴ですが、まず要の振動幕は新開発のスーパーエンプラが使われています。ただし静電型と言うと振動幕の薄さや平面性がよく言われますが、今回のSR009に関しては振動幕よりもむしろ固定電極がポイントのようです。

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上の写真でよくわかりますが、この固定電極のサポートの筋交い6本で剛性を高めたところがポイントと言うことで、高い音圧でも固有音を持たずに鳴らすことが可能と言うこと。この辺にノウハウが込められているようです。

それではと言うことで早速聴いてみました。
無線LAN環境下なので、コントローラは自分のiPhoneのplug playerを使いました。この辺が便利なところです。

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まずSRM727Aで聴きました。
ちょっと聴いて息を呑むくらいに鮮烈で透明感が高くクリアに澄みきった音空間を聴かせてくれます。
SR007と比べると着色が少なくよりフラットでニュートラルです。私もSR007使ってますが性格がまず異なり、SR009が透明感が高く着色が少ないのは際立っています。
特にハイレゾで聴いたアンナ・ネトレプコのソプラノが突き抜けるように感じられるのが圧巻です。

比較にSR007で聴いてみると、暖い色付きを感じ、透明で澄んだ感覚はなくなります。ちっとベールを被ったように感じますね。あきらかにSR009の方がひとレベル以上音質は高いと言えます。まあ価格が高いのはだてではないですね。
低域も007に比べて抑えてあり、かつタイトでスナップが効いた感じです。
クラシックは明らかにSR009が上ですね。ただロックではSR007を好むひとも多いかもしれません。

ドライバーでいうとSRM727の方がSR009らしい透明感は出ますが、音楽的には真空管のSR007tAの方が気持ちよく聴きやすいとは言えます。
アメリカではSR007はよくロマンティックとも称されますが、私だったらSR007にはSRM007tAを合わせたいですが、SR009には存分に性能を引き出すためにSR727Aを使いたいところです。
また比較してみるとSR009の方が感度がちょっと高いのもわかります。

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コンデンサー祭り?と言うことでついでにコンデンサースピーカーのQuad ESLでも同じ上流から聴いて見ました。細やかでかつ柔軟な弦とリアルなピアノの音色再現、スピーカーが消えるような自然な素晴らしい音でした。
こうした自然でリアルな音再現と言うのがコンデンサータイプの持ち味なのかもしれませんね。
posted by ささき at 00:16 | TrackBack(0) | __→ STAX ΩII, 007tA | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年05月24日

SR-007 mkII?

ドイツでやっているHiEndショウでSTAXのSR-007のMkII?らしきものが出品されたようですね。

http://www.head-fi.org/forums/showthread.php?t=241998

外見ではハウジングとケーブルが少し変わったくらいですが、ドライバーが変わるかもしれないという情報もあるようです。(この展示品にはドライバーが入っていないようです)
秋くらいという話もありますが、、ふーむ。


*5/25 追記
コメント欄にあるように欧州市場用の色違いモデルのようです。
posted by ささき at 23:24| Comment(2) | TrackBack(0) | __→ STAX ΩII, 007tA | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月27日

STAX登場 -- SR007(OmegaII)

SR-007(OmegaII、以下O2)はSTAXの現在のフラッグシップで国内外から高い評価を受けています。
もはや語りつくされたという感はあるかもしれませんが、とりあえずはわたしなりに書いてみたいと思います。

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まず良く言われることですが中高域再現性は秀逸で、とくにヴァイオリンはダイナミック型の追随をゆるさないものがあります。再現性というよりも独特の音色というべきかもしれません。O2の世界は独特の音色に彩られています。
ヒラリーハーンのデビュー作にして名盤である「バッハ:シャコンヌ(B0002ZF01M)」では自信に満ち溢れたジャケットの彼女の表情のような完璧な演奏の魅力をあまさず伝えてくれます。ヒラリーハーンは技巧というだけでなくヴァイオリンの音色の引き出し方がとても上手な人だと思いますが、O2で再現される豊かな厚みのある音色には聞き惚れてしまいます。

また、バッハのシャコンヌといえばギドン・クレーメルも連想します。最近も無伴奏の新録音を発表しましたが、ここでは彼が音楽監修をして演奏もしている映画「無伴奏シャコンヌ」のサントラ(B000064ILG)を聴いてみます。
地下鉄の構内で演奏して暮らすヴァイオリニストが主人公のこの映画のサントラでは雑踏や電車の音など映画の環境音がたくさん入っていますが、その環境音のリアルさは驚くほどです。STAXが特殊用途のモニター用にも使われるというのも納得できます。
その地下鉄に響く環境音にクレーメルの尖鋭なヴァイオリンが空間を裂いて切り込んでくると背筋がぞくっとするような感覚を覚えます。このCDはこんなに良かったのかと再認識させられました。

そしてその真価は古楽の演奏で遺憾なく発揮されます。
良録音にこだわることで有名なM・Aレーベルの「サント・コロンブ師のトンボー:ヴィオールのための作品集(M069A)」ではさまざまな古楽器が織り成す美しい音のタペストリーをたくさんの音の糸をつむいでいくような繊細で美しい音で表します。
古楽の場合は古楽器の音を楽しむという側面が大きいのですが、ここでは古楽器の独特の音色の響きがそれぞれの色で塗り分けられます。ダイナミック型だととりこぼしてしまうような音と音の間に埋もれる飛び散った小さな音のかけらまでも拾い上げてくれるようです。古楽演奏は単調にも思えるかもしれませんが、こうした音色の心地よさだけでも聴き進めることができます。
しかしSTAXがこのCDに向いているのは当然のことかもしれません。なぜならこのCDの製作ノートにはマイクやレコーダーの機材とともに「モニター: STAXラムダ・シグニチャー・プロ・イヤースピーカー」としっかり記載があります。
STAXでモニターした録音をSTAXで聴くというわけです。この音楽のモニターにはSTAXが必要であったともいえるかもしれません。


これで静電型という形式から期待される繊細さと高域の美しさという点では十分満たされました。
しかしOmega2はさらにそれを上回ります。
O2の場合は高域に偏らずに低域も含めて帯域全体で高性能を発揮するのが特徴です。これはダイナミック型に比しても遜色ないくらいです。またしっかりした低域が、強みである高域の再現性を下支えしているともいえます。
たとえばストリングカルテットではヴァイオリンとチェロの音がみごとに両立します。ヴァイオリンだけ取ってみてもシンバルのように高域だけで成立しているわけではなく、もう少し下の帯域の再現性が重要であるといえます。
またNYの女性ギタリスト、カーキ・キングの最新アルバムのようにアコースティックギターだけのシンプルな音に分厚い電子音をかぶせていくような場合でも繊細な高音と沈み込む低音が完全に両立するさまは驚くほどです。ジャズでは007tAとの組み合わせでなかなか締まってタイトなベースラインを聴かせます。
サラ・ブライトマンのクエスチョンオブオナーではストリングスは静電型らしい再現力があるし、パワフルなビートもタイトにリズムを刻みます。前にK701で書いたようなポップオペラのポップとクラシックの要素を両立させる再現性がここにもあり、複雑な音のミックスをほぐしてきれいに描き分ける力はかなりのレベルです。静電型がこんな音楽でも向いていると改めて可能性を示唆してくれます。

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このようにOmega2だとどんなジャンルでも聴ける万能性があります。
しかしそれではダイナミック型をも置き換えるかというと、同じ曲を聴いても静電型とダイナミック型では受ける感じが違います。

ダイナミック型では音楽に抑揚がないと聴けませんが、静電型の場合は古楽のように単調になりがちな音楽でも音色のきれいさだけで聴き通すことが出来ます。しかし逆に言うと抑揚が十分にある音楽の場合はダイナミック型で聴きたくなります。これはミクロ的な音楽の再現性を得意とする静電型と、マクロ的な音楽の再現を得意とするダイナミック型の根本的な違いとも思えます。
静電型とダイナミック型の使い分けについて、はじめのうちは静電型の長所・短所というところからジャンルで考えていました。しかしOmega2を基点に発想すると万能なゆえに別な観点が見えてきます。静電型とダイナミック型はなにを聴きたいかではなく、どう聴きたいかで使い分けられる、と言うべきか自然と選択の手がそう動くのに気が付きました。同じCDを聴いても静電型とダイナミック型では受ける印象は違います。別な言い方をすると同じ曲を解釈の異なる二人の演奏者または指揮者で聴いているかのようです。

ミクロ的というのは細かい音のニュアンスから音楽を感じたいとき、マクロ的というのは音楽のフィーリング・雰囲気とかノリとか抽象的なものから音楽を感じていきたいとき、とも思えます。
静電型は音の細部(内側)から音楽を再現していく、ダイナミック型は音の全体像(外側)から音楽を再現すると言えばよいでしょうか。STAXで聴くと音楽において細かいひとつひとつの音の積み上げがいかに重要かがわかりますし、GS-Xで聴いていると音楽においてダイナミック感やPRaT(Pace Rythm & Timing)、または雰囲気の再現が欠かせないものだと思います。
それらはまた二つの方向から見た同じもの、であると思います。

この辺は個人的な感想ですし、いずれにせよまだ聴きはじめですので、これからもいろいろと発見していくことはあると思います。
またもうひとつの楽しみはゼンハイザーの静電型であるHE60(baby-o)との聴き比べで、またあらたな側面から静電型ヘッドホンを見ることが出来るのではないかということです。
HE60のSTAXアダプターを発注しましたので、届けばゼンハイザーの静電型とSTAXを同じ静電アンプ(SRM-007tA)で聞き比べて見ることができます。アダプタの発注先はミハエルさんのところ(SinglePower)です。

さて、駆動力の高い007tAを使ってbaby-oがどのくらい歌うようになるか、O2と比べてどうか、なかなか楽しみなところです。

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posted by ささき at 22:12| Comment(2) | TrackBack(0) | __→ STAX ΩII, 007tA | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月26日

STAX登場 -- SRM-007tA

GS-Xでダイナミック型の可能性について考えていると、ちょっと気分を転換して静電型にも本格的に手を出してみようとおもいました。
静電型はゼンハイザーのHE60/HEV70(通称baby orpheus)を入手したり、静電型とダイナミックのハイブリッドのAKG K340を入手したりと変わったところに手をつけてきましたが、本格的に手を出すならば自然とSTAXに興味がわきます。
そうこう考えているとタイミングよくわりと安く入手できましたので、定番SR-007(OmegaII)と新型ドライバーのSRM-007tAをセットで入手しました。
(静電型はSTAXだけではないので、うちでは静電型ヘッドホン、静電型アンプとも適宜使い分けして呼びます)

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いままでSTAXに手を出さなかった理由の一つは静電アンプについての迷いがあったというのがありました。
STAXの純正は性能は良いかもしれませんが、アンプの音が自分の好みとはやや離れているところが気になっていました。そこでオメガIIだけ買っておいて、静電アンプは個性的な海外アンプを組み合わせようと思っていたのです。
最終的にはSTAXの純正を入手したのですが、そこでまずドライバーの007tAの方から記事として書いてみたいと思います。

STAXの純正の静電型アンプ(ドライバー)で考えると、選択としてはSRM-006tAと007tAの二つに絞られます。
理由としては真空管が静電型に合うのではないかという読みもありますが、もうひとつの問題として単純に717とか旧型の007tはバランス接続が3番ホットなのでIKEMIにはあわないのです。静電アンプもバランスで使いたいと思っていましたので、候補は2番ホット(ヨーロッパタイプというかいまの主流)に改良された006tAと007tAに自然に絞られます。

はじめは海外アンプを追加することが念頭にあったので、とりあえずはコストを勘案して中堅の006tAにしておこうと思いました。
しかし007tAと006tAを聴きくらべてみると、思ったよりも自分としては差を感じました。007tAは006tAをパラシングルにしたものということで基本的な音は006tAの延長上にあるかもしれませんが、omega2と組み合わせた場合に駆動力の余裕というか表現的な彫りの深さを感じます。

こうして買うつもりでまじめに試聴してみると007tAもアンプとしてなかなかよく出来ていると思うようになりました。基本的なところも良いですが、なにより純正のアンプとしてSTAXの長所を引き出すように作られているという気がします。そこで結局007tAの選択となりました。
STAXのアンプはちょっと味気ないように感じるところがいまひとつではあったのですが、IKEMIとつなげればスコットランドの魔法のスパイスをかけてくれるのではないかとも思ったわけです。

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箱には"A"の文字がシールで張ってあるので前の箱を流用したというのがわかります。(ちなみに国外モデルは007tAではなく007tIIです)
設置するとわりと奥に大きく感じますが、大きさを比較してみるとHEV70(Baby-oの専用静電アンプ)がかなりコンパクトさ重視で作られていたということがわかります。新型で改善されたフロントパネルは実際に置いてみるとかなり高級感があります。
使用真空管は6FQ7ですが中を見てみるとGE製のようです。前作の007tのときはいろいろと真空管メーカーが変わっていて、なかには評判の良くないのもあったようですがGEだと安心感はありますね。
真空管らしく動作中はかなり発熱してボリュームノブまで少し暖かくなります。

007tAは静電型では自然な構成であるフルバランスで設計されています。
IKEMIとの接続はバランスがAQ Diamond3、アンバランスがAQ AnacondaというGS-Xと同じパターンで試しましたが、予想通りバランス(XLR)とアンバランス(RCA)ではバランスの方がずっとよい音質が得られます。
アンバランスでは細みで薄くややボリュームレベルが下がります。バランスでは音場の広がりというより、音自体が豊かに厚みを増します。また静電型の軽いという印象もあまりなくなり適度な密度感を持ちます。アンバランスに戻すと解像感やセパレーションなど基本的な性能もやや下がるような気がします。ちょうどGS-Xのシングルエンドとバランス駆動の音に近い感じがします。
IKEMIのXLR出力はフルバランスではないと思いますが、それでもかなり差を感じます。フルバランスのDACがあればおそらくさらにマッチするかもしれません。

つぎに電源ケーブルですが、手持ちのキャメロットPM600とハイエンドホースAC3.5で試してみるとキャメロットの方がクリアさでやや上回りますが、ハイエンドホースの方がより鮮度感や躍動感が出てSTAXのアンプの不満点を補える感じがしました。そこでAC3.5を使うことにしました。

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これでIKEMIとの組み合わせで自分の環境ではまずまず思うような音になったと思います。
音に関してはオメガII編でより詳しく書きますが、買った当初から比べるとだんだんと安定してきましたので傾向はつかめるようになりました。数百時間もエージングに待っているとうちのブログがなくなってしまうかもしれませんから(笑)この辺でコメントしておきます。
あまりつよく真空管のイメージを強調する方ではありませんが、やはりしなやかでシルキーな滑らかさがあるのはシングルの真空管を感じます。音のエッジがシャープというよりはなめらかにトレースされていてヴォーカルに微妙な艶を与えています。音楽の表情にも少しウォームな質感が感じられます。低域もIKEMIとの組み合わせでIKEMIの持つタイトで締まった音を低域でも再現しているのは十分なドライブ力があるといえます。
またSTAXの純正だけあって、細かい音の再現もかなり高いものがあります。音数は多いのですがさきの滑らかさとあいまってささくれた感じはしません。森の木々に風があたっていっせいにざわめくような心地よいさわがしさがあります。
静電型の特徴とあいまって細部の表現とかニュアンスを浮き彫りにしてなかなか表情豊かなアンプだと思います。

難点としては電源を切るとセレクタが1番にリセットされるのがバランス接続(3番)で使っていると煩わしいと感じます。
これならば旧型のような切り替えスイッチの方が機械的にロックされて良いと思いますが、スタートアップ時にいわばミュートのポジションになるのは真空管にとってはいいことかもしれません。

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海外アンプも興味をひきますが、またそちらは項を改めて。。
次はSR-007(オメガII)について書いてみます。
posted by ささき at 21:44| Comment(3) | TrackBack(0) | __→ STAX ΩII, 007tA | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする