いまではハイレゾプレーヤーはたくさん出ていますが、その元祖はHifiMan HM801といえるでしょう。そのHifiManを長年扱ってきたトップウイングさんから年末に新しいハイレゾプレーヤー、Lotoo(ロトゥー)のPAW Gold(パーゴールド)が発売されました。価格的にもPAW Goldはトップクラスのハイレゾプレーヤーとなります。PAW Goldはマニアの話題ではありましたが、いよいよ国内で発売がなされるわけです。先週の金曜日に秋葉原で製品発表会を行い、そこで私がプレゼンいたしました。
PAW Goldは名門ナグラのポータブル録音機材をODM開発するLotooが開発したものだという点と、ナグラっぽいというかメカっぽい造り、そして高い基本性能が特徴です。
現在は予約を受け付け中で発売は12/19の予定です。
* PAW Goldとは
LotooはInfomediaという中国のメーカーのオーディオブランドです。Infomediaは中国の放送用機器や制御用の組み込み機器の会社で、その分野の中国でのシェアは75%にもなるといいます。
ここで強調したいのはInformadiaが、あの有名なブランドであるNagraのプロ用の録音機器のODM生産をしているということです。ODMとはただ設計書を渡されて生産するだけのOEMとは異なり、自分で設計をする形態のことです。それだけ高い技術力と信頼が要求されます。
彼らはプロ用としてはトップクラスのレコーダーを作れるので、我々はトップレベルのコンシューマーDAPも作れると考えたということです。音質や信頼性についてもコンシューマーメーカーには負けない自信があったそうです。
中国製品と言うことで偏見をもたられる向きもあるかもしれませんが、そうした方は高い品質の代表であるiPhoneも中国生産ということを思い起こしてもらいたいと思います。きちんとした協業体制がればあれだけの品質のものが作れるわけです。
* 外観
やはり見た目のメカっぽさが特徴と言えるでしょう。ハイレゾプレーヤーは未来的なデザインのものが多いので、かえってアピールする部分になっていると思います。
シャーシは航空機グレードのアルミで製作されています。そのため質感はかなり高く仕上がっています。操作画面のガラスはサファイアガラスです。
サファイアガラスはiPhone6でも採用がうわさされていましたが、ダイヤモンドに近く、ゴリラガラスより4倍硬いと言われるガラスです。かなり傷つきにくいと思いますが、ゴリラガラスよりコストもかかると言われています。
操作はタッチではなくコントロールキーで行います。この24KのキーもPAW Goldデザインの象徴で、航空機グレードアルミ、サファイアガラスとともに高価なパーツを使用している感じを与えています。
そしてこの特徴的なデザインのキーの意味はギリシャ神話のアポロです。PAW Gold 設計のシンボルはアポロであり、輝きと力強さの象徴、それが音に込めた思いということです。
* 基本性能の高さ
ハイレゾプレーヤーと言えばハイエンドDAC ICの採用ですが、PAW GoldはDAC ICにハイエンドDACの代名詞でもあるPCM1792を採用しています。現在はPCM1795の採用例が多くなってきましたが、音質だけを取ってみるといまだに1792がバーブラウンではトップエンドと言えると思います。またアンプ部分にはAurender FLOWと同じ高出力のLME49600とかなり強力なICを使用しています。しかしながら良いパーツを使用していても、やはり設計自体が重要です。
PAW Goldのポイントは基本性能が高いということです。それはジッター5ps、クロック精度が5ppmという数値に表わされています。ジッター5psというのはポータブルと言うよりももはや高性能DACの数値です。クロック精度も実際には1ppmで設計しているのですが精度を保証するのがむずかしいため対外的には5ppmと言っているそうです。優秀なクロックを使うだけではなく、回路で正確な動作を保証するように設計しているということ。
いずれにせよデジタルオーディオで一番重要なのはタイミングであり、その基本がきちんと出来ているのがPAW Goldです。また出力インピーダンスについても0.1オーム以下と高い性能を示しています。
* ファームウェア
最近よくつかわれているAndroidは操作性や機能追加には優れていますが、立ち上げが遅かったりします。PAW Goldは独自のリアルタイムOSを採用しています。これは彼らのプロ用機と同じです。
これは電源オン・オフ、メディアスキャン、デジタル信号処理の機能の実装などで有利です。Informediaは組み込み機器の会社でもあり、ここは得意分野でしょう。また組み込み系OSは処理が軽いので音質面でも有利でしょう。
ただし現在タグによるアーチストやアルバムの検索はできないので、ファイル名で音源を指示することになります。プレイリストは作成が可能です。
メモリは内蔵メモリはなく、SDXC(普通サイズのSD)が一枚です。私はTranscendの128GBを使用しています。メニューにカードテストと言うのがあってカードの速度をテストしてくれます。フォーマットはFAT32が必要ですが、PAW Goldに内蔵のフォーマッタがあって、FAT32のフォーマットに悩む必要はありません。
PCからの転送はUSB 3.0を採用しているのも特徴で、高速に転送が可能です。接続はUSBマスストレージクラスです。
音源はFLACやALACなど多くの音源が使えますが、特徴としてはプレーヤー単体でのDSDネイティブ再生に対応しています。
またスタジオ品質のDSPハード(Blackfin)を搭載しています。これも組み込み系OSの利点と言うことです。DSPでATEとPMEという機能を担当しています。
PMEはいわゆるパラメトリック・イコライザーで、特定帯域を上下させるものですが、ATEは音場を変更したり、ヴォーカルの声質を変えたり、声を近くしたり、楽器の音をスムーズにしたりという処理です。いわゆる信号処理でハードウエアのDSPチップを使っています。
ATEの例としてはBrightというと高域が輝きを増し、Sweetではやや甘めになります。Dentalは子音のきつさを抑えるもので、歯を抜ける音をあらわしているのでdentalといっています。また701はAKG701で、990はDT990とヘッドフォンに合わせた設定とのこと。Diffuseはいわゆるクロスフィードのことです。
また本格的な2Vのラインアウトをもっていますので、外部機器に接続することも用意です。発表会ではiFIのRetroに接続してデモを行いました。
電池は充電式で、約11時間持つとのこと。実際に使ってみてだいたいこのくらいは持つと思います。ユニークなのは電池残量が時間で分かること。これはなんで他のDAPにないのと思うくらい便利です。
* 使用感
まず届くと驚くのはきちんとシュリンクラップされていることです。私みたいに外国製品に慣れていると、アンプが段ボールに]無造作に新聞にくるまってきて向こうの国の新聞をフムフムと楽しく読んだり、とかいうのに慣れてるとやはりこうした細かいところに驚きます。やはりナグラ品質の管理という感じでしょうか。管理と言えば、使用したデモ機には"サンプル"の文字がはっきりと書かれています。これもサンプル機の管理も使用という意図が見えますね。細かい日本人にアピールするくらいしっかりしてます。
航空機グレードアルミの筐体はさすがに質感高く、持つと重いというよりはずっしりとした質量感を感じます。またボリュームは適度に軽くトルクとクリック感があり、ねっとりと回る感じはやはり精密感があります。モノですね。
起動も早く、すぐに使うことができます。コントロールはキーで行い、選択後に右キーでポップアップ(コンテキスト)メニューが出ることを覚えておいた方がよいです。
表示は録音機っぽいレベルメーターと周波数表示、カバーアートが選べます。カバーアートは埋め込み式には対応してなく、同一フォルダにあるアルバム名(フォルダ名?)と同じファイル名のjpgを表示します。周波数表示では上限70k(90k?)まで表示され、CD品質、96kHz、192kHzの曲でピークが変わるのが面白いところ。ナイキスト周波数(サンプリングレート÷2)まで表示されるわけですね。
ゲインは二段階あって、Lでは高感度BAでの背景ノイズもなく、Hでは平面型のHE560でも鳴らすことができます。またトップウイングさんではHifiManの経験からケーブル式のミニ-標準プラグをつけるようです。普通のミニ-標準プラグだと弱いからだそうです。これでヘッドフォンでも楽しめるでしょう。
充電は5Vではなく12VなのでUSBではなく、専用のチャージャーを使用します。
* 音質
音質は価格に見合った大変高いレベルの音です。まず特徴的なのは音像が明瞭で輪郭が鮮明であることです。緻密で妥協をゆるさんという音で聴いてると緊張感があるほどです。聞き流すというより音に取り組まないと、向き合わないといけないと思えます。音の重なりが明瞭で、例えばヴォーカルの背景にかすかな楽器音が重なってるのが明確に分離できます。
また感じたのは低音域に置いて、とても低い超低域が浮き上がるように出てくることです。これはもちろん100-200Hzあたりを盛り上げるとか安易な作りではなく、ワイドレンジというか基本的な周波数特性が高いんでしょう。
クロック精度が高いと輪郭が鮮明になるとともに低域もしっかりとしてきますが、そんな感もあります。
しかしながら、音に無機的なところやいわゆるモニター的な無味なところはなく、少し暖かみのあるオーディオらしい音です。
ドライブ力も高く、低インピーダンスBAが高インピーダンスダイナミックのように引き締まります。あれ、これ本当にBAだっけと見直したくらい。
ロクサーヌあたりと合わせるとハイエンドオーディオかって思います。何この音ってたひたび、はっとします。
オーディオでもクロックを高精度にすると良いのはわかりますが、ポータブルもそういう世界になったかという感じ。なお中国サイトで「原子クロックなみ」とサイトにあるのをLottoの人に聞いてみたら「あれは中国国内向けの宣伝文句さ」という感じでした。まあそこまでは無理にしても、やはりポータブルオーディオもクロック精度を求めるレベルの時代になったという気はします。
* まとめ
PAW Goldはナグラゆずりのメカとしての魅力にあふれた作りがまず特徴です。操作性は必要十分なくらいですが、音はポケットに入るハイエンドオーディオ、という感じですね。質実剛健なハイグレードモデルです。
私も長いことポータブルオーディオやってますけど2014年はポータブルオーディオの歴史に残る年になったと思います。大物の発表が相次ぎ、息つく間もない感じでポータブルオーディオが進化してきました。
PAW Goldは高性能据え置きオーディオなみの性能をもって、2015年にむけたリファレンスになりうる音質の高さをもっていると思います。
Music TO GO!
2014年12月10日
2014年12月05日
ナグラの血統、ハイレゾプレーヤー PAW Gold登場
本日私がプレゼンをして、トップウイングさんから高性能のハイレゾプレーヤー、Lotoo PAW Goldが発表されました。Lotoo(ロトゥー)は中国のInformediaのオーディオブランドであり、あの名門ナグラのプロ録音機のODMをしています。ODMはOEMに対して自分で設計まですることです。つまりナグラの血統のハイレゾプレーヤーともいえるでしょう。PAW Gold(パーゴールド)はその同じラインで生産されるといいます。
また基本性能もかなり高く、DAC ICにはハイエンドの定番であるPCM1792を採用し、ジッター値は5psというポータブルというよりも高性能PCオーディオDACなみの値を実現しています。また基本であるクロックも5ppmとかなり精度が高く、基本性能が充実していると言えます。実際は1ppmで設計しているようですが、精度は余裕をもって公言しているというところもプロっぽいところ。ドライブ力も高く、出力の大きなLME49600を採用し出力インピーダンスも0.1Ω以下と万全です。
音質も極めて高く、明瞭でくっきりとした音像再現が特徴的です。いままで埋もれていたような超低域を浮かび上がらせるような素晴らしい帯域特性も見事です。さすがプロ品質です。
今年最後の大物、というより2015年に向けてのリファレンスクラスのハイレゾプレーヤーとしてPAW Goldに注目ください。
また基本性能もかなり高く、DAC ICにはハイエンドの定番であるPCM1792を採用し、ジッター値は5psというポータブルというよりも高性能PCオーディオDACなみの値を実現しています。また基本であるクロックも5ppmとかなり精度が高く、基本性能が充実していると言えます。実際は1ppmで設計しているようですが、精度は余裕をもって公言しているというところもプロっぽいところ。ドライブ力も高く、出力の大きなLME49600を採用し出力インピーダンスも0.1Ω以下と万全です。
音質も極めて高く、明瞭でくっきりとした音像再現が特徴的です。いままで埋もれていたような超低域を浮かび上がらせるような素晴らしい帯域特性も見事です。さすがプロ品質です。
今年最後の大物、というより2015年に向けてのリファレンスクラスのハイレゾプレーヤーとしてPAW Goldに注目ください。
2014年12月04日
ニールヤングのPONO到着とファーストインプレ
* ニールヤングのPONO
今年はクラウドファンディングで開発されるオーディオ機器が盛り上がりを見せてきました。その中でも象徴的に取り上げられたのはニールヤングのPONOだと思います。もともとPONOはニールヤングの音楽を変えよえとした試みでした。
ニールヤングはジョブズとともに音楽・オーディオ業界にiPodの次を考えて話をしていたわけですが、ジョブズを失った後に自分がやらなければ、と思ったのか、それが形になったのがPONO Music Player、つまりニールヤングが作ったハイレゾプレーヤーです。これはハイレゾ音源を販売するPONO Musicストアと合わせてニールヤングの考える高い音質の音楽リスニングのあり方を提示したと言えるでしょう。
ただし市場はおそらくヤングの想像以上に進んでいて、実のところすでにAstell&Kernがハイレゾプレーヤーの位置を占めていたわけです。そこにPONOが追う形になったというのがひとつのポイントだと思います。つまり考えていた以上のものを世に出す必要が出たということです。
また、当初はアンチPONO的なネガティブ意見が意外と多かったのも興味深いところです。とはいえAK100ではそうしたことはありませんでしたので、ニールヤングのプロモーション自体がいかにいままでにそうしたものに興味なかった層にアピールしたかがわかります。実際にはWalkmanよりもさらに一般層にアピールしたということだと思います。
* PONOとKickstarter
そうしてPONO PlayerはKickstarterキャンペーンで開始するという面白い展開ではじまりました。こちらに記事を書きました。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/391214911.html
ちなみにクラウドファンディング・Kickstarterについてはこちらをお読みください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/391376986.html
私はキャンペーン開始当日は出るだろうEarly birdの安いモデルに照準を合わせていて早起きしたのですが、日本時間の早朝に起きた時にはすでに$299だった早割モデルは売り切れでした。たしか始まったのが日本時間の3時ころだったと思います。そこでアーティストモデルのなかでもやはり象徴的なニールヤング・シグネチャーモデルを選択しました。そうしたらこれも早々に売り切れてしまい、事前のネガティブ意見を上回る実際のPONO人気の高さを伺わせてくれました。結果としてPONOはKickstrterでも上位に入るクラウドファンディングの優等生となったわけです。おそらくPONOではじめてクラウドファンディングに手を染めた人も多いと思います。
ニールヤング・シグネチャモデル
KickstarterがKickstrterであるゆえんは、スタートアップ、つまり新興企業を支援するためで、そうしたところは技術的な気概はあってもロジステックスや企業運営には素人なわけです。ですのでたいていKickstarterものは遅延します。当然PONOの会社も例外ではありません。
10月中に届ける、という目標はなんとか10月中に出荷を開始と言う線をキープできた程度です。その後も遅れたりサポート問題でおそらく12月中までは最低かかるでしょう。12月予定だった分は来年だと思います。
Update#50でサポートが強化されましたが、私の場合はまず住所欄にJapanが選べないという問題がありました。途中でデータをKickstarterからPono Musicのデータベースに移動した際に起こったと思います。次にニールヤングモデルの仕上げに不備があるという問題があり、これは特定のシグネチャーモデルに発生しました。
これは他のクラウドファンディングでも同じですが、クラウドファンディングものはパーツがそろった順に組み立てるので、届く早さは申し込みの日時より、オプションのパーツがそろう順になってしまうのが常だと思います。ブラックを頼んだ人は仮に私のように初日に頼んでいたとしてもおそらくさらに遅れていると思います。
なにはともあれ、やっと手元にPONO Playerが届きました。
* PONO Player
ハイレゾプレーヤーとして見た場合、話題をまいたのは設計がAyreによってなされたという点です。AyreといえばMPフィルタの使用で知られています。これも当初情報では設計はMeridianでした。おそらく途中までは実際にやっていたのではないかと思います。というのは、もともとPONOはニールヤングがなにか新しい音楽フォーマットを策定しているといううわさがはじまりですが、おそらくそれはMeridianの独自形式MLPのことだったのではないかと考えられるふしがあるからです。しかしながらなんらかの理由でMeridianとは別れて、最終的にはAyreが設計担当になっています。
液晶の立ち上げ時にもPowered by Ayreの文字が表示されます。また当初の協力クレジットにはAudioQuestの名前もありました。ただし製品としてのPONOはあくまでPONO Music社の製品ですので、品質管理などはそちらの責任となりますので念のため。
またPONOが特徴的なのはバランス駆動に対応していることです。一見そうは見えませんが、3.5mmイヤフォン端子と3.5mmラインアウトを同時に使うことでバランス駆動が実現できます。ソニーと同じような規格のようです。実際にソニーバランスを使っている人もいますね。
バランスプラグの極性は下記のリンクに図式があります(PONO Musicのアカウントが必要です)。これを見てもらうとわかりますが、Ayreのレターヘッドにチャーリーハンセンのサインが記入されています。
https://ponomusic.force.com/069A0000001eCMz
またラインアウトを使って2人で聴くモードもあります。これらのことから考えると、このラインアウトはいわゆる真のラインアウトではないと思います。
PC上のソフトウエアも提供されますが、音源はPCからUSBで直接出し入れできるので特にソフトウエアがなくてもかまいません。PCとのUSB接続はMTPではなくマスストレージクラスです。PCと接続するとルート直下にAndroidというフォルダーがあって、ははーんと思わせてくれます。
マスストレージクラスなので曲の転送が終わったらライブラリの再構築が必要です。(MTPの場合はファイル単位で送られるので都度ライブラリがアップデートできて、まとめて再構築不要なのが良い点です)
メモリは内蔵64GBに64GBのMicroSDが付属してきます。MicroSDは128GBまで認識できるので、トータルで192GBまで拡張できます。
シグネチャーモデルは竹製の化粧箱に入って届けられます。これも一部の国では輸入禁止品目に当たるため、遅延をもたらす原因となりました。
話題となった三角形のボディデザインはデスクトップに横置きするためのものですが、手に持ってみると意外としっくりきます。手に包むように握れる感覚はたしかにiPodを思い出します。
○ボタンは電源オンオフだけではなく、iPhoneイヤフォンのリモコンのように二回クリックで曲スキップ、三回でリワインドという風にも使えます。操作系がでかいのは便利ですね。
ただタッチパネルの液晶で曲を選択していくのはやや不便なものはあります。また大きさの割には軽い感じです。
はじめちょっと聴いたときはいまひとつか、と思いましたが一日バーンインしたらかなりよくなりました。後で書きますが、PONOの音の良さは滑らかさなので、滑らかにならないとPONOの良さが出てこないと思います。
まず楽器の音がきれいで、ピアノの再現なんかは良いですね。明瞭感とか細かさもよい方です。クリアでありながら柔らかく滑らかに音の角が取れています。ESS的な細かさはありますが、ESS的なドライさはなく、ここはAyreのMPフィルタ技術が抑え勝ちをしたというところでしょうか。音楽的な設計でスムーズな音鳴りだと思います。バランスケーブル作るなら銀線よりは銅線で作りたい感じです。
また帯域バランスもよく出来ていて、いろんなジャンルに合うと思います。音の広さはもうちょっとほしい気はしますが、悪くはありません。立体感はなかなか良いです。
ただイヤフォンではややゲインが高いのでヘッドフォン向けに作ってる気はします。ただ背景ノイズはないので、高感度BAでも大丈夫です。
ハイレゾ音源を再生中はLEDが転倒したり、曲リストでマークされていたりとハイレゾを意識しているのも面白いところです。
PONOにははじめから曲がインストールされています。私の場合はニールヤングのHarvestとStorytoneの新旧二作のハイレゾアルバムが入っていました。Harvestはあの有名なHeart Of Goldが入っているアルバムです。
PONOは音楽好きのために作ったと言いながらバランス駆動とか意外とマニアックなものになってますし、音も本格派です。操作性はまずまずというところですが、音は価格以上はあるでしょう。優しく音楽を楽しめる風に作りこんでいます。音に関しては伊達にAyreの名前は使っていないというか、なかなかよい出来だと思います。
Ayreも自ブランドでハイレゾプレーヤーのハイエンドモデルをだしたくなるんじゃないかと思いますね。
RocketsとPONOを組み合わせてもよい感じですが、今年はKickstarterでハイレゾプレーヤーもイヤフォンも高性能なものがそろってしまいました。来年もすでにGeek Waveや1964ADELなどクラウドファンディングものが見えてますが、まだまだ出てくることでしょう。
さてこのニールヤングの試みはどう評価されるのか、これも2015年にかけての興味の一つです。
2014年07月21日
ハイレゾDAP Calyx Mレビュー
Calyx Mは韓国のデジタル&アナログ社の発売するハイレゾDAPです。
Calyxはデジタル&アナログ社のオーディオ製品のブランド名です。国内ではJaben Japanから発売される予定となります。日本ではアレグロがデジタル&アナログ社の代理店でしたが、このCalyx Mにおいては一から代理店を選びなおすという意気込みのもとにポータブル系に強いJaben Japanを選びました。
デジタル&アナログ社はFemto DACをはじめとしてすでに定評あるメーカーですが、Calyx Mにかける期待はそれほど大きいと言えます。
デジタル&アナログ社ではさきの春のヘッドフォン祭の時にCEO自らがCalyx Mの試作品をもってデモに来ました。そのときにインタビューを行いましたのでまず、それをイントロとして紹介したいと思います。
* デジタル&アナログ社CEOインタビュー
Music To Go: まずお名前と役職をお聞かせ願えますでしょうか?
CEO「私はイ・スンモクと申します。デジタル&アナログ社のCEOです。」
(通訳はフリー翻訳者のチョン・ピルギュさん)
Music To Go: デジタル&アナログ社とCalyx Mについて簡単に紹介願えますか?
CEO「まずCalyxはデジタル&アナログ社の扱うハイエンドオーディオのブランド名です。デジタル&アナログ社の扱ってるものはCalyx 500というモノブロックのデジタルアンプやCalyx CTIというデジタルのプリメインアンプ、そしてCalyx coffee、Calyx femtoなどのUSB DACがあります。
99年度に会社を設立したときはPWMのチップを作るメーカーでした。それから総合オーディオメーカーとして2005年からさきにあげたようなハイエンドのオーディオ製品を開発しています。
Calyx Mはポータブルブランドの名前で製品名もかねています。もし次の商品が出るならばCalyx M2となるでしょう。」
Music To Go: なぜポータブルプレーヤーを作ろうとしたのでしょうか?
CEO「いままでつちかってきた技術を使ってより多くのユーザー層に我々の音を聴かせたいと思いました。Calyx Mは2013年から開発を始めましたが、企画としてはその前から暖めていたものです。」
Music To Go: Calyx Mの製品の特徴を聞かせてください
CEO「まずスペック上でDSD128まで単体でのDSDネイティブ再生に対応しています。PCMは384対応でほぼすべてのレートに対応していると言えます。
次にUSB DACとして使うことができます。このときにはDopでDSDネイティブ再生が可能です。またUSB Audio class 2.0でWindowsではドライバーインストールが必要で、Macは不要です。
また、M:useというインターフェースを採用しています。これは使いやすく考えられた我々独自の設計です。基本ソフトウエアはAndroidをベースにしていますが、大幅に手を加えているのでほとんどLinuxを使用しています。これはAndroidそのままでは不要なものがはいってしまうという点とAndroidでは通常ハイレゾ再生ができないので、Linuxを直接使うことでハイレゾ再生やDSDネイティブ再生を可能としているからです。
そして大容量のメモリを可能としています。メモリ容量は内蔵は64GBですが、拡張メモリはmicroSDと普通のSDスロットが用意されているため、最大容量は448GB(256GB+128GB+64GB)となります。
また特に言いたいことですが、我々はリサイクルを重視したいというポリシーを持っています。このため資源を大事にすることを主眼として、パッケージも再生紙を使っています。本体もリサイクルできるアルミを採用していますし、本革ケースはリサイクルできないので付属させません。
また設計思想としては「コンサートを手の上に」ということで、特に音楽性を重視しています。
DACチップとしてはESS社製のES9018K2Mを一基搭載しています。実は我々はESS Saberを世界ではじめて使った会社なのです。またXMOSも我々が世界初で採用しています(Calyx MもXMOSを搭載している)。
つまりESSもXMOSも膨大なノウハウがあり、それを活かしたのがCalyx Mです。」
Music To Go: Calyxのライバルと比べた強みはどこですか?
CEO「それは音楽性です。我々はモニターと音楽性を分けるのではなく、音源にはいっている音を100%取り出せれば高い音楽性が実現できると考えています。音のチューニングに関しては韓国の音楽家に聴いてもらってチューニングをしています。
またマグネット式のボリュームもユニークでしょう。これはアナログ的な感触を活かすのにスライド式にこだわったからです。普通スライド式の場合にはすきま(スリット)ができてしまいますが、このマグネット方式であれば隙間がないためにほこりが入らないのです。これは精密機器としては重要なことです。もちろんマグネットは一週間ずっとポケットに入れておいても取れることはありません。
またスクリーンの解像力にもこだわりました。サムスン製のOLEDディスプレイを採用しています。これはアルバムアートの表示にこだわりたかったからです。CDなどにあったブックレットが、デジタルファイル音源ではありませんので、遊び心・持つ楽しみを求めたかったのです。
またファームウェアはダウンロードによって可能で発展させることができます。」
Music To Go: 将来の計画はありますか?
CEO「近いうちにCalyx Mと合わせられるアナログポータブルアンプを作る予定です。もちろんこれはほかのプレーヤーでも使えるでしょう。またCalyx Mのバリエーションも増やしたいですし、プロ向けの録音も可能なものも考えています。」
Music To Go: 日本市場をどう考えていますか?
CEO「日本の人は音楽がすきなことを知っています。また規模もおおきいと思います。
日本の市場に入るためによろしくお願いします。」
* Calyx Mとは
インタビューでほぼCalyx Mについてはまとめられていますが、ここで特徴を再確認します。
細かなスペックはこちらのサイトをご覧ください。
http://www.calyx.kr/index_en.html
Calyx MのMはMusicやeMotionなどの意味で音楽性を重視していることを示しています。
画面は4.65インチのOLEDでかなり鮮明で発色も優れています。
DACチップはESS9018K2Mです。インタビューにあるようにCalyxはESSとXMOSについては世界でもかなり先進的なメーカーです。私もXMOSが出たばかりのころではXMOSの採用についてCalyxに注目していました。私的にはCalyxというのはPCオーディオでの注目ブランドだったのです。そこが出したDAPという点が目を引きました。
再生可能ファイルフォーマットはAIFF,ALAC,FLAC,WAV,AAC,MP3,OGG,DXDそしてDSF,DFFとほとんどすべての形式に対応しています。(ファームv0.6ではApple系は不可でしたが0.95から可能になりました)
PCMでは最大384kHz/32bit、DSDでは5.6MHz(DSD128)でDSDは単体とUSB DACとしての両方でDSDネイティブ再生が可能です。USB DACの場合にはDoPを使用します。
出力インピーダンスはスペック的にはほぼ0ohmと書いていますので1ohm以下ということなんでしょう。
内蔵メモリは64GBです。上部にSDXCとMicroSDの端子が両方ともあります。このため最大容量はSD256GB+MicroSD128GB+64GB=448GBと0.5TBに近いところまで拡張可能です。
ヘッドフォン端子は3.5mmミニのみです。機能としてはシャッフル(ランダム)、リピートとギャップレスもあります。ゲイン切り替えはハード的にはありませんが、v0.95からソフトウエア的に選択がLow/Mid/Highから選べるようになりました。
ファームウェアはアップグレードが可能で先行版はv0.6でしたが、国内販売版はv0.95以上となるでしょう。(本日現在での最新は0.96です)
0.6ではAndroid System Recoveryを使用していたのでかなり面倒でしたが、0.95以降ではアップデートボタンで簡単にアップデート出来るようになりました。0.6ではSDカードにアップデートファイルを格納しましたが、0.95からは内蔵メモリにアップデートファイルを格納してボタン一つで簡単にアップデートできるようになりました。この点は劇的に進化しました。
なおCalyx MをPCにつなぐときにはMTP転送を使用しているので、MacからつなぐときにはAndroid data Transferが必要になるかもしれません。Windowsは問題なく接続できます。
なおSDXCのフォーマットは私は0.6のころの制限からFAT32にして使用しています。最新のでexFATが読めるかはまだ試していません。
電池の持ちは正確に測っていませんがファームv0.95で5-6時間前後くらいだと思います。一日通して使うためにはやや少なめです。通勤や通学だけなら大丈夫でしょう。
使用しているとそれなりにやや熱を持ちますが、他の高性能DAPとそうは変わりません。
*外観
パッケージを開けるとMの文字、そして音符のロゴと、MUSICへのこだわりが感じられます。
梱包品はシンプルで、革ケースは付属していません。これは単価を安くするというよりも、デジタル&アナログ社がリサイクルを重視しているので、リサイクルができない本革製のケースはあえていれなかったということです。なお本体のアルミもリサイクル可能だそうです。
革ケースが欲しい方にはなかなかよいサードパーティー品がeBayで販売されています。
http://m.ebay.com/itm?itemId=291181573413
同梱されていたサンプルDVDには日本でもPCオーディオでは試聴に使われるAudiophile Jazz 3のハイレゾ192kHzがまるまる入っていました。またUSBケーブルは短いのと長いの二本が入っています。
デザイン的にはシンプルで高級感も感じられます。
外観では大きなAndroid端末という雰囲気です。おそらく日頃大画面のAndroidを持っている人はやや厚みがある程度だと思うでしょう。重さは230gです。
上部には電源ボタンがあり、側面にはREW/Play/FWDのハードキーがあります。画面表示時に操作ができます。
特徴的なのはボリュームがスライド式でマグネットでノブがついているということです。
これはアナログ的な操作感を生かしたかったが、スライド式だとスリットが必要になるのでごみ侵入を避けるためにマグネットにしたということ。力を込めると取れますが普段使いで取れることはないでしょう。
底面にはMicroBのUSBポートがあります。アナログラインアウト端子や光デジタル出力はありません。
電源を立ち上げてみると画面がとても鮮明で精彩、きれいだと感じます。DAPにしてはかなり質の高いディスプレイを使っていると思います。これもアルバムアートワーク表示のこだわりなのでしょう。
SDカードを挿入するとマウントされたとメッセージがあってライブラリスキャンが自動で開始されます。
* 画面と操作の説明
操作はM:USEというユーザーインターフェースでAndroidとはかなり異なります。
電源ボタンの長押しで電源をたちあげます。ブート時間はやや長めかもしれません。音楽記号がロゴに使われているのも音楽性の重視を表しています。
画面が表示されるとロック画面が表示されますので、アルバムアートを下に引き下げることで解除します。操作感はやや遅めです。
基本は再生画面で、アルバムアートは円形にトリミングされて表示されます。これを長押しすると通常サイズでアルバムアートが表示されます。シャッフルとリピートはここ、ギャップレスは設定の中でセットします。再生曲はサンプルレートとファイルタイプも表示されます。
再生画面で右にスワイプさせるとライブラリ画面が表示され、左スワイプでJUKEBOX画面が表示されます。JUKEBOXとは手軽なプレイリストのようなもので、分類がない分で素早くJUKEBOXに曲を追加できます。ライブラリ画面ではアルバムやアーティストなどをタグでリストできます。通常のプレイリストはここにあります。
面白いのはタグがないWAVの扱いです。WAVでタグがなくとも階層があればタグがあるように表示します。iTunes階層(Artist/Album/track)でのアルバム名を認識しているようです。
そのためフォルダメニューがなくてもタグのないWAVにアクセスができるのはユニークである。ただし逆にフォルダをたどるメニューがないのも残念ではある。ただしアーティスト名は認識されない。
ファームv0.95ではFolder Viewという階層をたどれそうな名前のナビゲーションが増えたが、いわゆる他のDAPの「フォルダ」機能のように階層をたどるのではなく、曲名表示に階層の情報がついているというもののようだ。
左上の三ドットをクリックするとマウントしているメディア一覧と設定ボタンがあります。また次の曲もここで表示されます。(おそらくギャップレスバッファに入ってる曲でしょう)
またImpedance MatchingもあらかじめEasy Access を設定しておくとこの画面に現れます。(またUSB DACモードでも設定変更できます)
Impedance Matchingはインピーダンスマッチングというよりはゲイン切り替えと言った方が良いようには思えます。高感度イヤフォンではLowに設定するとボリューム動作の余地が確保されます。
Calyx Mのユーザーインターフェースの動作自体はややゆったりとしてA&Kのようなキビキビしたスムーズ感はないのですが、実用上は大きく問題にはならないと思います。むしろZX1のように一テンポ遅れてカクカク動く方が気にはなります。CalyxMでは遅くてもスムーズに動くという感じですね。この辺がAndroidカスタマイズの程度問題なのかもしれません。
v0.95ではソフトウエアも急に落ちたりとか変な動作はないように思います。表示言語はメニュー上は日本語がありますが、日本語ではメニューは出てきません(ただし日時表示などのロケール設定が日本語になるようです)。
また日本語のアルバムタイトルは表示されますが、アルファベット順に並んだ時に漢字が先頭だとUnknownに分類されています。ここはCalyxに伝えて直してくれるようにお願いしてはいます。
* Calyx Mの音質
Calyx Mの音質はかなり高いレベルにあります。高性能のヘッドフォン、イヤフォンのポテンシャルを十分に引き出してくれるでしょう。
以下ではJHA ロクサーヌ(カスタム)やFitear 335DW、Westone W60、Ultrasone Edition8、Dita Answer Trueなどを使いました。細かさと情報量を抽出するカスタムも良いですが、力感もあるのでダイナミックで高性能のAnswerもかなり良く合います。
まず透明感が高くてSN感がとても良いのが特徴です。音空間はクリアで、音像はシャープで鮮明に浮き上がるように力強い描かれ方をします。このために立体感もとても高く感じられます。背景ノイズはなく、高感度イヤフォンがよく合います。曲の背景に入っているSEとしてのささやきのような低い日常会話がかなり鮮明に聴こえます。普通は聞き取りにくい歌詞もわりとよく聞き取れますね。
音のキレが良く、ウッドベースやパーカッションの音の刻みも歯切れ良く聞こえます。一つの楽器の音像再現が鮮明で立体感が高いのはさきの高いSN感によるものでしょう。イヤフォンの相性が良いと際立って彫りの深い音像再現が得られます。
高音域から低音域への帯域もかなり広く、ロクサーヌで聴くと高音域の伸び、低域のしっかりした反応が気持ち良く感じられます。音場も十分広くロクサーヌやW60などでは生きてきます。
低音域はベースラインも歯切れよく、また重みがあります。ベースのゴリっとした質感もよく再現されていますね。
音の個性としてはパワフルで畳み掛けるようなドラムスでは力感がありダイナミックです。ゆっくり落ち着いた感じではなく、勢いがあってパワフル、音楽的な滑らかさと力強さを両立しています。
音はESSらしく細かいのですが、細かいだけではなくやや暖かみのある豊かな音楽再現性を持っています。ここがアナログらしく音楽性が高いというこだわりの点なのでしょう。ただしSR71的なはっきりした暖色ではなく、ドライとか分析的っていう冷たい音ではないという意味ではあります。
録音の良し悪しがかなりはっきり分かります。音楽性をうたうアンプは甘いことが多いんですが、Calyx Mでは音楽性をうたっても甘くないことが分かります。
解像力が高くSN比が良いのはES9018の特徴だけれども、Calyx Mにはそれだけではない音の豊かさがある。Calyx Mのサイトがオープンした当初はDACチップを公開したがらなかったけれども、DACの音はチップだけで決まるものではないという主張がよくわかる。
DX100とCalyx M
たとえば2M以前のオリジナルですが同じESSのES9018を使用したiBassoのDX100(ヒビノR10のベース機)と比べてみます。DX100だけを聴いている分には十分にESSらしい細やかな音だと思いますが、Calyx Mを聴くとさらに音の透明感が高く、ひとつひとつの音がより先鋭で、くっきりと鮮明に聴こえます。特にCalyx Mの微細な小さい音の描き出しはちっょとすごいですね。DX100だけ聴いているとわからないけれども、Calyx Mを比較して聞くと実はさらに磨きをかけてよりクリアに仕上げることができるとわかります。Calyx Mに比べるとDX100は比較的ではあるけれども音がやや曇って濁って聞こえますね。
DX100との比較ではさらにCalyx Mのほうが音場も広く、低音域などの帯域の強調感も少なく全体的な音の歪み感の低さなど音質も一回り洗練された感があり、DX100よりは一つか二つレベル以上は音質はよいと思います。Calyx Mはかなり低いところまで出てるのか、低域の強調はないですが低域はむしろ充実していると思えます。
ただしシャープな分で箱から出したては少しきつめなので、はじめはW60のようなあまり刺さらないで高性能なタイプが良いですね。けっこうエージングが必要で、かつエージングでずいぶん変わります。だいたいの方向性としては高域のきつさが取れ、透明感が増します。そしてCalyx Mの特徴である制動力の高さ、キレの良さがはっきりとわかるようになっていきます。最低でも50時間はきっちりエージングしておいてから聞いたほうがよいかもしれません。
DSDのネイティブ再生もなかなか好ましい音質で、同じ曲をハイレゾWAVとDSDで聴き比べてもDSDのほうがより滑らかで自然、いわゆるデジタルっぽさが緩和されて聴くことができます。
PCオーディオとしてのCalyx Mもなかなか優秀です。MacのAudirvana PlusやPure Musicで接続してみましたがなかなか良い音です。DSDもきちんとDSD128が良い音で聴くことができました。
ハイレゾDAPにUSB DAC機能がついていても十分に活用しないことが多いのですが、Calyx MはUSB DACメーカーの作ったDAPですからそこはきちんとしています。
Calyx Mは標準イヤフォンプラグが合ったほうがデスクトップにも使えて、使い方としては面白いかなと思いました。そうすればやや大柄な点もプラスにさえなったかもしれません。またUSBプラグもMicroBだと高音質USBケーブルの選択肢がないので、ミニBかフルサイズB端子がついていると良かったかもしれません。
* Calyx M まとめ
簡単にまとめると、Calyx Mの良い点はまず鮮明で高いDACの音再現力がありながらドライや分析的に陥らない音楽的なうるおいも持っている点だと思います。適度な力感とダイナミズムが感じられるところもMの表す音楽性と言える点でしょうか。
オススメのイヤフォンはマルチBA機も情報量が多くて合いますが、ダイナミックのDita Answer Trueが面白い選択です。Mのちょい高めのゲインと合い、キレの良いDAC性能の高さを浮き彫りにします。ただし十分なエージングが必要でしょう。
いままでのハイレゾDAPは従来のMP3プレーヤを進化させてきたボトムアップのアプローチとするならば、Calyx Mはオーディオ機器のDACをポータブルにしようとしたトップダウンのアプローチと言えるでしょう。Calyxは世界でもはじめてESS Saberを使ったメーカーですが、ESS DACの使いこなしではResonessenceなみと言えるのではないかとiBasso DX100と比べたときに思いました。
大柄で電池もちも少なくフォルダナビゲーションがないなど、DAPとしてこなれてない点もありますが、音質に妥協したくなかったという熱意はよく伝わってきますし、実際によくできていると思います。
たくさんハイレゾDAPも出てますが、選ぶポイントはどこかと一言でいうならば、Calyx Mの場合はオーディオメーカーが作ったDAPの良さがあると言う点だと思います。
日本ではJaben Japanからフジヤさんで先行発売される予定で、発売時期は8月初旬頃、価格は11万4800円(税抜き)だということです。デモ機はフジヤさんの店頭でも近日中に手に取って試すことができるようになります。
Calyxはデジタル&アナログ社のオーディオ製品のブランド名です。国内ではJaben Japanから発売される予定となります。日本ではアレグロがデジタル&アナログ社の代理店でしたが、このCalyx Mにおいては一から代理店を選びなおすという意気込みのもとにポータブル系に強いJaben Japanを選びました。
デジタル&アナログ社はFemto DACをはじめとしてすでに定評あるメーカーですが、Calyx Mにかける期待はそれほど大きいと言えます。
デジタル&アナログ社ではさきの春のヘッドフォン祭の時にCEO自らがCalyx Mの試作品をもってデモに来ました。そのときにインタビューを行いましたのでまず、それをイントロとして紹介したいと思います。
* デジタル&アナログ社CEOインタビュー
Music To Go: まずお名前と役職をお聞かせ願えますでしょうか?
CEO「私はイ・スンモクと申します。デジタル&アナログ社のCEOです。」
(通訳はフリー翻訳者のチョン・ピルギュさん)
Music To Go: デジタル&アナログ社とCalyx Mについて簡単に紹介願えますか?
CEO「まずCalyxはデジタル&アナログ社の扱うハイエンドオーディオのブランド名です。デジタル&アナログ社の扱ってるものはCalyx 500というモノブロックのデジタルアンプやCalyx CTIというデジタルのプリメインアンプ、そしてCalyx coffee、Calyx femtoなどのUSB DACがあります。
99年度に会社を設立したときはPWMのチップを作るメーカーでした。それから総合オーディオメーカーとして2005年からさきにあげたようなハイエンドのオーディオ製品を開発しています。
Calyx Mはポータブルブランドの名前で製品名もかねています。もし次の商品が出るならばCalyx M2となるでしょう。」
Music To Go: なぜポータブルプレーヤーを作ろうとしたのでしょうか?
CEO「いままでつちかってきた技術を使ってより多くのユーザー層に我々の音を聴かせたいと思いました。Calyx Mは2013年から開発を始めましたが、企画としてはその前から暖めていたものです。」
Music To Go: Calyx Mの製品の特徴を聞かせてください
CEO「まずスペック上でDSD128まで単体でのDSDネイティブ再生に対応しています。PCMは384対応でほぼすべてのレートに対応していると言えます。
次にUSB DACとして使うことができます。このときにはDopでDSDネイティブ再生が可能です。またUSB Audio class 2.0でWindowsではドライバーインストールが必要で、Macは不要です。
また、M:useというインターフェースを採用しています。これは使いやすく考えられた我々独自の設計です。基本ソフトウエアはAndroidをベースにしていますが、大幅に手を加えているのでほとんどLinuxを使用しています。これはAndroidそのままでは不要なものがはいってしまうという点とAndroidでは通常ハイレゾ再生ができないので、Linuxを直接使うことでハイレゾ再生やDSDネイティブ再生を可能としているからです。
そして大容量のメモリを可能としています。メモリ容量は内蔵は64GBですが、拡張メモリはmicroSDと普通のSDスロットが用意されているため、最大容量は448GB(256GB+128GB+64GB)となります。
また特に言いたいことですが、我々はリサイクルを重視したいというポリシーを持っています。このため資源を大事にすることを主眼として、パッケージも再生紙を使っています。本体もリサイクルできるアルミを採用していますし、本革ケースはリサイクルできないので付属させません。
また設計思想としては「コンサートを手の上に」ということで、特に音楽性を重視しています。
DACチップとしてはESS社製のES9018K2Mを一基搭載しています。実は我々はESS Saberを世界ではじめて使った会社なのです。またXMOSも我々が世界初で採用しています(Calyx MもXMOSを搭載している)。
つまりESSもXMOSも膨大なノウハウがあり、それを活かしたのがCalyx Mです。」
Music To Go: Calyxのライバルと比べた強みはどこですか?
CEO「それは音楽性です。我々はモニターと音楽性を分けるのではなく、音源にはいっている音を100%取り出せれば高い音楽性が実現できると考えています。音のチューニングに関しては韓国の音楽家に聴いてもらってチューニングをしています。
またマグネット式のボリュームもユニークでしょう。これはアナログ的な感触を活かすのにスライド式にこだわったからです。普通スライド式の場合にはすきま(スリット)ができてしまいますが、このマグネット方式であれば隙間がないためにほこりが入らないのです。これは精密機器としては重要なことです。もちろんマグネットは一週間ずっとポケットに入れておいても取れることはありません。
またスクリーンの解像力にもこだわりました。サムスン製のOLEDディスプレイを採用しています。これはアルバムアートの表示にこだわりたかったからです。CDなどにあったブックレットが、デジタルファイル音源ではありませんので、遊び心・持つ楽しみを求めたかったのです。
またファームウェアはダウンロードによって可能で発展させることができます。」
Music To Go: 将来の計画はありますか?
CEO「近いうちにCalyx Mと合わせられるアナログポータブルアンプを作る予定です。もちろんこれはほかのプレーヤーでも使えるでしょう。またCalyx Mのバリエーションも増やしたいですし、プロ向けの録音も可能なものも考えています。」
Music To Go: 日本市場をどう考えていますか?
CEO「日本の人は音楽がすきなことを知っています。また規模もおおきいと思います。
日本の市場に入るためによろしくお願いします。」
* Calyx Mとは
インタビューでほぼCalyx Mについてはまとめられていますが、ここで特徴を再確認します。
細かなスペックはこちらのサイトをご覧ください。
http://www.calyx.kr/index_en.html
Calyx MのMはMusicやeMotionなどの意味で音楽性を重視していることを示しています。
画面は4.65インチのOLEDでかなり鮮明で発色も優れています。
DACチップはESS9018K2Mです。インタビューにあるようにCalyxはESSとXMOSについては世界でもかなり先進的なメーカーです。私もXMOSが出たばかりのころではXMOSの採用についてCalyxに注目していました。私的にはCalyxというのはPCオーディオでの注目ブランドだったのです。そこが出したDAPという点が目を引きました。
再生可能ファイルフォーマットはAIFF,ALAC,FLAC,WAV,AAC,MP3,OGG,DXDそしてDSF,DFFとほとんどすべての形式に対応しています。(ファームv0.6ではApple系は不可でしたが0.95から可能になりました)
PCMでは最大384kHz/32bit、DSDでは5.6MHz(DSD128)でDSDは単体とUSB DACとしての両方でDSDネイティブ再生が可能です。USB DACの場合にはDoPを使用します。
出力インピーダンスはスペック的にはほぼ0ohmと書いていますので1ohm以下ということなんでしょう。
内蔵メモリは64GBです。上部にSDXCとMicroSDの端子が両方ともあります。このため最大容量はSD256GB+MicroSD128GB+64GB=448GBと0.5TBに近いところまで拡張可能です。
ヘッドフォン端子は3.5mmミニのみです。機能としてはシャッフル(ランダム)、リピートとギャップレスもあります。ゲイン切り替えはハード的にはありませんが、v0.95からソフトウエア的に選択がLow/Mid/Highから選べるようになりました。
ファームウェアはアップグレードが可能で先行版はv0.6でしたが、国内販売版はv0.95以上となるでしょう。(本日現在での最新は0.96です)
0.6ではAndroid System Recoveryを使用していたのでかなり面倒でしたが、0.95以降ではアップデートボタンで簡単にアップデート出来るようになりました。0.6ではSDカードにアップデートファイルを格納しましたが、0.95からは内蔵メモリにアップデートファイルを格納してボタン一つで簡単にアップデートできるようになりました。この点は劇的に進化しました。
なおCalyx MをPCにつなぐときにはMTP転送を使用しているので、MacからつなぐときにはAndroid data Transferが必要になるかもしれません。Windowsは問題なく接続できます。
なおSDXCのフォーマットは私は0.6のころの制限からFAT32にして使用しています。最新のでexFATが読めるかはまだ試していません。
電池の持ちは正確に測っていませんがファームv0.95で5-6時間前後くらいだと思います。一日通して使うためにはやや少なめです。通勤や通学だけなら大丈夫でしょう。
使用しているとそれなりにやや熱を持ちますが、他の高性能DAPとそうは変わりません。
*外観
パッケージを開けるとMの文字、そして音符のロゴと、MUSICへのこだわりが感じられます。
梱包品はシンプルで、革ケースは付属していません。これは単価を安くするというよりも、デジタル&アナログ社がリサイクルを重視しているので、リサイクルができない本革製のケースはあえていれなかったということです。なお本体のアルミもリサイクル可能だそうです。
革ケースが欲しい方にはなかなかよいサードパーティー品がeBayで販売されています。
http://m.ebay.com/itm?itemId=291181573413
同梱されていたサンプルDVDには日本でもPCオーディオでは試聴に使われるAudiophile Jazz 3のハイレゾ192kHzがまるまる入っていました。またUSBケーブルは短いのと長いの二本が入っています。
デザイン的にはシンプルで高級感も感じられます。
外観では大きなAndroid端末という雰囲気です。おそらく日頃大画面のAndroidを持っている人はやや厚みがある程度だと思うでしょう。重さは230gです。
上部には電源ボタンがあり、側面にはREW/Play/FWDのハードキーがあります。画面表示時に操作ができます。
特徴的なのはボリュームがスライド式でマグネットでノブがついているということです。
これはアナログ的な操作感を生かしたかったが、スライド式だとスリットが必要になるのでごみ侵入を避けるためにマグネットにしたということ。力を込めると取れますが普段使いで取れることはないでしょう。
底面にはMicroBのUSBポートがあります。アナログラインアウト端子や光デジタル出力はありません。
電源を立ち上げてみると画面がとても鮮明で精彩、きれいだと感じます。DAPにしてはかなり質の高いディスプレイを使っていると思います。これもアルバムアートワーク表示のこだわりなのでしょう。
SDカードを挿入するとマウントされたとメッセージがあってライブラリスキャンが自動で開始されます。
* 画面と操作の説明
操作はM:USEというユーザーインターフェースでAndroidとはかなり異なります。
電源ボタンの長押しで電源をたちあげます。ブート時間はやや長めかもしれません。音楽記号がロゴに使われているのも音楽性の重視を表しています。
画面が表示されるとロック画面が表示されますので、アルバムアートを下に引き下げることで解除します。操作感はやや遅めです。
基本は再生画面で、アルバムアートは円形にトリミングされて表示されます。これを長押しすると通常サイズでアルバムアートが表示されます。シャッフルとリピートはここ、ギャップレスは設定の中でセットします。再生曲はサンプルレートとファイルタイプも表示されます。
再生画面で右にスワイプさせるとライブラリ画面が表示され、左スワイプでJUKEBOX画面が表示されます。JUKEBOXとは手軽なプレイリストのようなもので、分類がない分で素早くJUKEBOXに曲を追加できます。ライブラリ画面ではアルバムやアーティストなどをタグでリストできます。通常のプレイリストはここにあります。
面白いのはタグがないWAVの扱いです。WAVでタグがなくとも階層があればタグがあるように表示します。iTunes階層(Artist/Album/track)でのアルバム名を認識しているようです。
そのためフォルダメニューがなくてもタグのないWAVにアクセスができるのはユニークである。ただし逆にフォルダをたどるメニューがないのも残念ではある。ただしアーティスト名は認識されない。
ファームv0.95ではFolder Viewという階層をたどれそうな名前のナビゲーションが増えたが、いわゆる他のDAPの「フォルダ」機能のように階層をたどるのではなく、曲名表示に階層の情報がついているというもののようだ。
左上の三ドットをクリックするとマウントしているメディア一覧と設定ボタンがあります。また次の曲もここで表示されます。(おそらくギャップレスバッファに入ってる曲でしょう)
またImpedance MatchingもあらかじめEasy Access を設定しておくとこの画面に現れます。(またUSB DACモードでも設定変更できます)
Impedance Matchingはインピーダンスマッチングというよりはゲイン切り替えと言った方が良いようには思えます。高感度イヤフォンではLowに設定するとボリューム動作の余地が確保されます。
Calyx Mのユーザーインターフェースの動作自体はややゆったりとしてA&Kのようなキビキビしたスムーズ感はないのですが、実用上は大きく問題にはならないと思います。むしろZX1のように一テンポ遅れてカクカク動く方が気にはなります。CalyxMでは遅くてもスムーズに動くという感じですね。この辺がAndroidカスタマイズの程度問題なのかもしれません。
v0.95ではソフトウエアも急に落ちたりとか変な動作はないように思います。表示言語はメニュー上は日本語がありますが、日本語ではメニューは出てきません(ただし日時表示などのロケール設定が日本語になるようです)。
また日本語のアルバムタイトルは表示されますが、アルファベット順に並んだ時に漢字が先頭だとUnknownに分類されています。ここはCalyxに伝えて直してくれるようにお願いしてはいます。
* Calyx Mの音質
Calyx Mの音質はかなり高いレベルにあります。高性能のヘッドフォン、イヤフォンのポテンシャルを十分に引き出してくれるでしょう。
以下ではJHA ロクサーヌ(カスタム)やFitear 335DW、Westone W60、Ultrasone Edition8、Dita Answer Trueなどを使いました。細かさと情報量を抽出するカスタムも良いですが、力感もあるのでダイナミックで高性能のAnswerもかなり良く合います。
まず透明感が高くてSN感がとても良いのが特徴です。音空間はクリアで、音像はシャープで鮮明に浮き上がるように力強い描かれ方をします。このために立体感もとても高く感じられます。背景ノイズはなく、高感度イヤフォンがよく合います。曲の背景に入っているSEとしてのささやきのような低い日常会話がかなり鮮明に聴こえます。普通は聞き取りにくい歌詞もわりとよく聞き取れますね。
音のキレが良く、ウッドベースやパーカッションの音の刻みも歯切れ良く聞こえます。一つの楽器の音像再現が鮮明で立体感が高いのはさきの高いSN感によるものでしょう。イヤフォンの相性が良いと際立って彫りの深い音像再現が得られます。
高音域から低音域への帯域もかなり広く、ロクサーヌで聴くと高音域の伸び、低域のしっかりした反応が気持ち良く感じられます。音場も十分広くロクサーヌやW60などでは生きてきます。
低音域はベースラインも歯切れよく、また重みがあります。ベースのゴリっとした質感もよく再現されていますね。
音の個性としてはパワフルで畳み掛けるようなドラムスでは力感がありダイナミックです。ゆっくり落ち着いた感じではなく、勢いがあってパワフル、音楽的な滑らかさと力強さを両立しています。
音はESSらしく細かいのですが、細かいだけではなくやや暖かみのある豊かな音楽再現性を持っています。ここがアナログらしく音楽性が高いというこだわりの点なのでしょう。ただしSR71的なはっきりした暖色ではなく、ドライとか分析的っていう冷たい音ではないという意味ではあります。
録音の良し悪しがかなりはっきり分かります。音楽性をうたうアンプは甘いことが多いんですが、Calyx Mでは音楽性をうたっても甘くないことが分かります。
解像力が高くSN比が良いのはES9018の特徴だけれども、Calyx Mにはそれだけではない音の豊かさがある。Calyx Mのサイトがオープンした当初はDACチップを公開したがらなかったけれども、DACの音はチップだけで決まるものではないという主張がよくわかる。
DX100とCalyx M
たとえば2M以前のオリジナルですが同じESSのES9018を使用したiBassoのDX100(ヒビノR10のベース機)と比べてみます。DX100だけを聴いている分には十分にESSらしい細やかな音だと思いますが、Calyx Mを聴くとさらに音の透明感が高く、ひとつひとつの音がより先鋭で、くっきりと鮮明に聴こえます。特にCalyx Mの微細な小さい音の描き出しはちっょとすごいですね。DX100だけ聴いているとわからないけれども、Calyx Mを比較して聞くと実はさらに磨きをかけてよりクリアに仕上げることができるとわかります。Calyx Mに比べるとDX100は比較的ではあるけれども音がやや曇って濁って聞こえますね。
DX100との比較ではさらにCalyx Mのほうが音場も広く、低音域などの帯域の強調感も少なく全体的な音の歪み感の低さなど音質も一回り洗練された感があり、DX100よりは一つか二つレベル以上は音質はよいと思います。Calyx Mはかなり低いところまで出てるのか、低域の強調はないですが低域はむしろ充実していると思えます。
ただしシャープな分で箱から出したては少しきつめなので、はじめはW60のようなあまり刺さらないで高性能なタイプが良いですね。けっこうエージングが必要で、かつエージングでずいぶん変わります。だいたいの方向性としては高域のきつさが取れ、透明感が増します。そしてCalyx Mの特徴である制動力の高さ、キレの良さがはっきりとわかるようになっていきます。最低でも50時間はきっちりエージングしておいてから聞いたほうがよいかもしれません。
DSDのネイティブ再生もなかなか好ましい音質で、同じ曲をハイレゾWAVとDSDで聴き比べてもDSDのほうがより滑らかで自然、いわゆるデジタルっぽさが緩和されて聴くことができます。
PCオーディオとしてのCalyx Mもなかなか優秀です。MacのAudirvana PlusやPure Musicで接続してみましたがなかなか良い音です。DSDもきちんとDSD128が良い音で聴くことができました。
ハイレゾDAPにUSB DAC機能がついていても十分に活用しないことが多いのですが、Calyx MはUSB DACメーカーの作ったDAPですからそこはきちんとしています。
Calyx Mは標準イヤフォンプラグが合ったほうがデスクトップにも使えて、使い方としては面白いかなと思いました。そうすればやや大柄な点もプラスにさえなったかもしれません。またUSBプラグもMicroBだと高音質USBケーブルの選択肢がないので、ミニBかフルサイズB端子がついていると良かったかもしれません。
* Calyx M まとめ
簡単にまとめると、Calyx Mの良い点はまず鮮明で高いDACの音再現力がありながらドライや分析的に陥らない音楽的なうるおいも持っている点だと思います。適度な力感とダイナミズムが感じられるところもMの表す音楽性と言える点でしょうか。
オススメのイヤフォンはマルチBA機も情報量が多くて合いますが、ダイナミックのDita Answer Trueが面白い選択です。Mのちょい高めのゲインと合い、キレの良いDAC性能の高さを浮き彫りにします。ただし十分なエージングが必要でしょう。
いままでのハイレゾDAPは従来のMP3プレーヤを進化させてきたボトムアップのアプローチとするならば、Calyx Mはオーディオ機器のDACをポータブルにしようとしたトップダウンのアプローチと言えるでしょう。Calyxは世界でもはじめてESS Saberを使ったメーカーですが、ESS DACの使いこなしではResonessenceなみと言えるのではないかとiBasso DX100と比べたときに思いました。
大柄で電池もちも少なくフォルダナビゲーションがないなど、DAPとしてこなれてない点もありますが、音質に妥協したくなかったという熱意はよく伝わってきますし、実際によくできていると思います。
たくさんハイレゾDAPも出てますが、選ぶポイントはどこかと一言でいうならば、Calyx Mの場合はオーディオメーカーが作ったDAPの良さがあると言う点だと思います。
日本ではJaben Japanからフジヤさんで先行発売される予定で、発売時期は8月初旬頃、価格は11万4800円(税抜き)だということです。デモ機はフジヤさんの店頭でも近日中に手に取って試すことができるようになります。
2014年05月20日
Geek Wave DAPリブート
以前書いたクラウドファンディングのハイレゾDAP、LH LabsのGeek Waveが再始動ということで新しいキャンぺーンを始めました。
https://www.indiegogo.com/projects/geek-wave-it-s-not-a-next-gen-ipod-it-s-a-no-compromise-portable-music-player
Da Vinch DACという300万円のDACで使用した技術を応用しているというところがポイントで、たとえばアップサンプリングなしで音質を倍にできるとうたっているDuet Engineという処理エンジンと、3層のデコードバッファ?(ソース層、デカップリング層、I2S層)のデータのデコード、Instant Powerという電源投入(または信号入力イベント)即時フル稼働できるという仕組みなどを採用しています。
プロセッサにはMIPSを使用しているのがちょっと面白いところ。またXMOSを採用していて、USB DACとしても万全のようです。
容量は64GBと128GB版に別れました。256GBはなくなったようです。
Xがついているものはバランス出力ができます。3.5mmTRRSです。この場合はアンプ部分(TPA6120A2)が4ch(2xLR)となります。
XDがついているのはデュアルモノで、ES9018K2M DACのデュアルでIV回路や前段オペアンプ(OPA1612)がデュアルとなります。アンプもバランスです。またXDではフェムトクロックを採用してます。ポータブルでのフェムトクロック採用は始めてでしょう。
以前のGeek Waveに出資していた人は新しいGeek Waveにアップグレードできます。これはスタンドアローンDAPに出資していた人のことだけで、model-Sに出資していた人は少し待ってくれと書いてあります。
まず前に出資した時と同じアカウントでIndiegogoにログインします。新しいGeek WaveのOne Dollar Confirmation Perkを見てここで$1出資すれば新しいGee Wave X 128にアップグレードされるはずです。
もしXD128にしたい場合は、変更してからUpgrade X 128 to XD128にすればよいと思います。
https://www.indiegogo.com/projects/geek-wave-it-s-not-a-next-gen-ipod-it-s-a-no-compromise-portable-music-player
Da Vinch DACという300万円のDACで使用した技術を応用しているというところがポイントで、たとえばアップサンプリングなしで音質を倍にできるとうたっているDuet Engineという処理エンジンと、3層のデコードバッファ?(ソース層、デカップリング層、I2S層)のデータのデコード、Instant Powerという電源投入(または信号入力イベント)即時フル稼働できるという仕組みなどを採用しています。
プロセッサにはMIPSを使用しているのがちょっと面白いところ。またXMOSを採用していて、USB DACとしても万全のようです。
容量は64GBと128GB版に別れました。256GBはなくなったようです。
Xがついているものはバランス出力ができます。3.5mmTRRSです。この場合はアンプ部分(TPA6120A2)が4ch(2xLR)となります。
XDがついているのはデュアルモノで、ES9018K2M DACのデュアルでIV回路や前段オペアンプ(OPA1612)がデュアルとなります。アンプもバランスです。またXDではフェムトクロックを採用してます。ポータブルでのフェムトクロック採用は始めてでしょう。
以前のGeek Waveに出資していた人は新しいGeek Waveにアップグレードできます。これはスタンドアローンDAPに出資していた人のことだけで、model-Sに出資していた人は少し待ってくれと書いてあります。
まず前に出資した時と同じアカウントでIndiegogoにログインします。新しいGeek WaveのOne Dollar Confirmation Perkを見てここで$1出資すれば新しいGee Wave X 128にアップグレードされるはずです。
もしXD128にしたい場合は、変更してからUpgrade X 128 to XD128にすればよいと思います。
2014年03月12日
PONOプレーヤーのKickstarterキャンペーン開始
本日日本時間の2:55にPonoプレーヤーのKickstarterキャンペーンが開始されました。3/15からと当初描かれていましたが、のちにプレスリリースが改定されました。Geek out、Rocketsに続いてクラウドファンディングでのオーディオ製品開発もだんだんと増えてきました。
ページはこちらです。
PonoMusic - Where Your Soul Rediscovers Music
まず上記ページではPonoのイントロ動画がありますが、その出演ミュージシャンの顔ぶれがすごい。かつてこんなに多くの豪華ミュージシャンが登場したPVってないのでは。ニールヤングの人脈すごしです。
音質インプレも各ミュージシャンが語ってますが、たいていは「すげーぜ、こんな音聴いたことねーぜ」みたいなのはそこはそれ。ハイレゾの説明をソニーなんかでは理系で説明してますが、ミュージシャンがハイレゾ説明するとこんな感じ。でもセッションミュージシャンなんかはさすがに音が広くて楽器の配置が立体的でわかりやすいとか的確なコメントしています。ニールヤングはハイレゾをダイビングに例えて解説し、192kHzで水面で息が継げるって言ってます。
私も開始2時間後くらいに見に行ったところ、すでに100台限定のEarly Birdスペシャルは無し。早いよ!
私は$400のニールヤングスペシャルモデル(500台限定)をゲットしました。私がゲットした時点ですでに194台残り程度でした。この時点ですでに1000人以上が参加しています。
キャンペーンは4月16日までです。目標額は$80万ドル、Kickstarterにしては高いほうですが、これに満たないとキャンペーンがキャンセルされます。ただこの分だと大丈夫でしょう。開始後3時間ですでに目標額の半分いっています。かなりのスピードの立ち上がりです。これを書いてる時点ですでにKickstarterの電機部門の最も人気あるプロダクトになっています。
出荷は今年の10月の予定です。クラウドファンディングのKickstarterではプリオーダーと言っても製品量産開始前ですので、リードタイムが長くかかりますので注意してください。
Ponoプレーヤーはさきに書いたようにAyreのほかにAudioQuestの名前もあります。PCオーディオ周りがAudioQuestということですが、もしやゴードンも絡んでいるか?
三角形にしたのは円筒形のバッテリーを積むことで電源容量を確保するためだそう。フラットより円筒形の方が容量を稼げるようです。またデスクトップに置く時も安定してるからだとか。画面は縦横回転します。
Ponoプレーヤーの重さは128gでmicro USBで同期(PCとMac)と充電をします。電池は8時間ほどです。DACはES9018(CA情報)でバッファはディスクリートとたいしたスペックで、AyreのMPフィルタを採用して、自然な音再現を標榜しています。ただし内蔵メモリは128GBと書きましたが、64GBで、MicroSDの追加でトータル128GBということのようです。操作はタッチパネルで縦横回転します。
サポートフォーマットはFLAC、ALAC、mp3、WAV、AIFF、AAC(DRMなし)と一通り揃ってます。Appleロスレスもサポートしてるのは良いですね。
また、PC/Mac上の音楽ソフトウエアですが、この辺を見るとおそらくJRMCのOEMバージョンになるのではないかと思います。
Ponoミュージックストアのアナウンスもあり、配信フォーマットはFLACです。最大で192/24です。オールメジャーレーベルが用意されていると書いてあります。一つのアルバムで価格は$14.99 - $24.99です。
ストリーミングは予定しているが、当初はないようです。
前にニールヤングが新フォーマットを策定しているとうわさがありましたが、これははじめMeridianとやっていたのでMLPのことではないかとも言われています。(MLPは使われていないようです)
クラウドファンディングではPledge(出資額)に応じて対価がもらえます。PonoでのKickstarterキャンペーンの内容は以下の通りです。ちなみに製品化した後のPonoプレーヤーの予価は$399です。
$5 - Thanks - ただの謝意。ふつうどのKickstarterキャンペーンでもあるんですが、製品目当ての場合はここは名目だけのことが多くパスします。でもPONOではけっこうここにも人が入っています。ニールヤングに共感したぜ、という人が多いんでしょう。
$50 - PONO Music founders club - Tシャツとステッカー
$100 - ニールヤングのサイン入りポスター
$200 - Early Bird(早割) - ブラックのPonoプレーヤーを一台。100台限定であっというまに売り切れ。
$300 - ブラックまたはイエローのPonoプレーヤーを一台。海外へは送料で$15プラス。
$400 - 以下のアーティストスペシャルモデル。各タイプ500台限定。色はクロームでサインの浮彫。各ミュージシャンの代表曲の2アルバムが初めから入っています。レザーケース付き。
ニールヤング、ウィリーネルソン、トムベティ、パティスミス、パールジャム、ベック(ジェフベック?)、クロスビー・スティルス・ナッシュ、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング(ニールヤングの加入ありなしで別)、デイヴ・マシューズ・バンド、フー・ファイターズ、ノラジョーンズ、レニー・クラヴィッツ、アーケイドファイア
$5000 - どれかアーティストモデル一台、ニールヤングとお食事権
一般へのお披露目は開催中のSXSWで、ニールヤングのスピーチ・インタビューは下記リンクで見ることができます。
http://sxsw.com/live
さて、Ponoはどう成長していくかはこのKickstarter次第ですね。書いてるうちからすごいスピードで伸びていてニールヤングモデルはもう売り切れです。ソニーがハイレゾのコンシューマーへの間口を広げたように、Ponoも別な層にアピールしてハイレゾのマーケットを切り開くかもしれませんね。
追記: 開始後9時間ほどで目標額達成しました!量産にGOです。
すごいハイペースです。
ページはこちらです。
PonoMusic - Where Your Soul Rediscovers Music
まず上記ページではPonoのイントロ動画がありますが、その出演ミュージシャンの顔ぶれがすごい。かつてこんなに多くの豪華ミュージシャンが登場したPVってないのでは。ニールヤングの人脈すごしです。
音質インプレも各ミュージシャンが語ってますが、たいていは「すげーぜ、こんな音聴いたことねーぜ」みたいなのはそこはそれ。ハイレゾの説明をソニーなんかでは理系で説明してますが、ミュージシャンがハイレゾ説明するとこんな感じ。でもセッションミュージシャンなんかはさすがに音が広くて楽器の配置が立体的でわかりやすいとか的確なコメントしています。ニールヤングはハイレゾをダイビングに例えて解説し、192kHzで水面で息が継げるって言ってます。
私も開始2時間後くらいに見に行ったところ、すでに100台限定のEarly Birdスペシャルは無し。早いよ!
私は$400のニールヤングスペシャルモデル(500台限定)をゲットしました。私がゲットした時点ですでに194台残り程度でした。この時点ですでに1000人以上が参加しています。
キャンペーンは4月16日までです。目標額は$80万ドル、Kickstarterにしては高いほうですが、これに満たないとキャンペーンがキャンセルされます。ただこの分だと大丈夫でしょう。開始後3時間ですでに目標額の半分いっています。かなりのスピードの立ち上がりです。これを書いてる時点ですでにKickstarterの電機部門の最も人気あるプロダクトになっています。
出荷は今年の10月の予定です。クラウドファンディングのKickstarterではプリオーダーと言っても製品量産開始前ですので、リードタイムが長くかかりますので注意してください。
Ponoプレーヤーはさきに書いたようにAyreのほかにAudioQuestの名前もあります。PCオーディオ周りがAudioQuestということですが、もしやゴードンも絡んでいるか?
三角形にしたのは円筒形のバッテリーを積むことで電源容量を確保するためだそう。フラットより円筒形の方が容量を稼げるようです。またデスクトップに置く時も安定してるからだとか。画面は縦横回転します。
Ponoプレーヤーの重さは128gでmicro USBで同期(PCとMac)と充電をします。電池は8時間ほどです。DACはES9018(CA情報)でバッファはディスクリートとたいしたスペックで、AyreのMPフィルタを採用して、自然な音再現を標榜しています。ただし内蔵メモリは128GBと書きましたが、64GBで、MicroSDの追加でトータル128GBということのようです。操作はタッチパネルで縦横回転します。
サポートフォーマットはFLAC、ALAC、mp3、WAV、AIFF、AAC(DRMなし)と一通り揃ってます。Appleロスレスもサポートしてるのは良いですね。
また、PC/Mac上の音楽ソフトウエアですが、この辺を見るとおそらくJRMCのOEMバージョンになるのではないかと思います。
Ponoミュージックストアのアナウンスもあり、配信フォーマットはFLACです。最大で192/24です。オールメジャーレーベルが用意されていると書いてあります。一つのアルバムで価格は$14.99 - $24.99です。
ストリーミングは予定しているが、当初はないようです。
前にニールヤングが新フォーマットを策定しているとうわさがありましたが、これははじめMeridianとやっていたのでMLPのことではないかとも言われています。(MLPは使われていないようです)
クラウドファンディングではPledge(出資額)に応じて対価がもらえます。PonoでのKickstarterキャンペーンの内容は以下の通りです。ちなみに製品化した後のPonoプレーヤーの予価は$399です。
$5 - Thanks - ただの謝意。ふつうどのKickstarterキャンペーンでもあるんですが、製品目当ての場合はここは名目だけのことが多くパスします。でもPONOではけっこうここにも人が入っています。ニールヤングに共感したぜ、という人が多いんでしょう。
$50 - PONO Music founders club - Tシャツとステッカー
$100 - ニールヤングのサイン入りポスター
$200 - Early Bird(早割) - ブラックのPonoプレーヤーを一台。100台限定であっというまに売り切れ。
$300 - ブラックまたはイエローのPonoプレーヤーを一台。海外へは送料で$15プラス。
$400 - 以下のアーティストスペシャルモデル。各タイプ500台限定。色はクロームでサインの浮彫。各ミュージシャンの代表曲の2アルバムが初めから入っています。レザーケース付き。
ニールヤング、ウィリーネルソン、トムベティ、パティスミス、パールジャム、ベック(ジェフベック?)、クロスビー・スティルス・ナッシュ、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング(ニールヤングの加入ありなしで別)、デイヴ・マシューズ・バンド、フー・ファイターズ、ノラジョーンズ、レニー・クラヴィッツ、アーケイドファイア
$5000 - どれかアーティストモデル一台、ニールヤングとお食事権
一般へのお披露目は開催中のSXSWで、ニールヤングのスピーチ・インタビューは下記リンクで見ることができます。
http://sxsw.com/live
さて、Ponoはどう成長していくかはこのKickstarter次第ですね。書いてるうちからすごいスピードで伸びていてニールヤングモデルはもう売り切れです。ソニーがハイレゾのコンシューマーへの間口を広げたように、Ponoも別な層にアピールしてハイレゾのマーケットを切り開くかもしれませんね。
追記: 開始後9時間ほどで目標額達成しました!量産にGOです。
すごいハイペースです。
2014年03月08日
ニールヤングがPono Musicを発表
ニールヤングが噂されていたPonoMusicの発表をしました。
http://www.computeraudiophile.com/f8-general-forum/neil-young-announces-launch-ponomusic-19703/
PonoMusicは単にDAPだけではなく、ハイレゾ音楽配信ストアのPonoMusic.comとそれを再生するポータブルプレーヤーのThe PonoPlayerからなります。
ユーザーはパソコン上のiTunesみたいな音源管理ツールであるPono desktop media managementというアプリケーションでPonoMusic.comからダウンロード購入してPonoPlayerに転送して聴くというエコシステムのようです。アプリケーションからは他のDAPにも同期できるようです。メジャーやインディー系の音源を用意するようですが、DRMは適用しないそうです。
ハイレゾDAPとしてのPonoPlayerはMeridianが開発に参画してたと言われてましたが実際に開発したのはなんとAyreです。(中を読むとわかりますが途中までMeridianが実際にかかわっていたと思います)
Ayreはポータブル作りそうにありませんでしたが、ハイエンドオーディオメーカーではChordに続いてAyreもポータブルに参入です。Ayreの総帥チャーリーハンセンがニールヤングに共感した旨を書いてます。
PonoPlayerのDACはESS ES9018です。おそらくは2Mでしょう。バッファはディスクリートです。またZX1なみの128GBのストレージを備えています。メモリカードも使えるようです。操作はタッチ式のLCDで、縦置きも横置きも対応しているようです。だからボディが三角形なんでしょう。上部の端子にはヘッドフォン端子とラインアウトが見えますね。またAyre得意のMP(ミニマムフェイズ)デジタルフィルター技術も採用されているようです。ハード的にはAyre的なものになるといってもよいかもしれません。価格は$399で、DAPとしてのPonoも予想以上で来ましたね。
で、、面白いのはニールヤングはこのシステムをクラウドファンディングのKickstarterで立ち上げようとしているようです。3/15から開始します。
私もKickstarterでは最近ウエアラブルデバイスのRingとかコンシューマ向けドローンのPocketDroneなんかに手を出してます。オーディオとしてはAurisonicsのRocketイヤフォンとかLH Labs(LightHarmonic)のGeek Out DACですね。
はじめこのAK240とかZX1の時代にPonoはジョブズの言葉を借りればDOA(dead on arrival - 生まれた時に死んでいる)みたいなもんではないかと思ってましたが、ニールヤングに賛同するかどうかはさておき、Ayre製のDAPってところにちょっとひかれます。ハード的にも思ってたよりハイスペックです。
またAyreもLightHarmonicのようにクラウドファンディングに参入しようとしているところも注目です。Ayre的にはそこがうまみなんでしょう。
価格は$399ですが、後発なので戦略的な価格付けできたというところでしょうか。Kickstarterではさらに安くプリオーダー価格で買えそうです。PonoMusic.comは音源だけではなくハードも購入できるようです。
なおリリースの日付が3/10ですが、CAは早期リリースの許可を得ているようです。先日Computer Audiophileの管理者のクリスさんがニールヤングに会いに行くって書いてましたがこの件だったんですね。
あとはニールヤングが言っていたといわれる新しい音楽フォーマットの件(スケーラブル・ロスレスのやつ)はどうなったかなど気になりますが、Ponoも忘れられた存在から今後の展開に注目できるレベルになったというところでしょうか。
追記3/11: Kickstarterキャンペーン開始は3/12に変更されたようです。
また現在開催中のSXSWにおいて米時間の本日ニールヤングがPonoを発表するようです。
http://www.computeraudiophile.com/f8-general-forum/neil-young-announces-launch-ponomusic-19703/
PonoMusicは単にDAPだけではなく、ハイレゾ音楽配信ストアのPonoMusic.comとそれを再生するポータブルプレーヤーのThe PonoPlayerからなります。
ユーザーはパソコン上のiTunesみたいな音源管理ツールであるPono desktop media managementというアプリケーションでPonoMusic.comからダウンロード購入してPonoPlayerに転送して聴くというエコシステムのようです。アプリケーションからは他のDAPにも同期できるようです。メジャーやインディー系の音源を用意するようですが、DRMは適用しないそうです。
ハイレゾDAPとしてのPonoPlayerはMeridianが開発に参画してたと言われてましたが実際に開発したのはなんとAyreです。(中を読むとわかりますが途中までMeridianが実際にかかわっていたと思います)
Ayreはポータブル作りそうにありませんでしたが、ハイエンドオーディオメーカーではChordに続いてAyreもポータブルに参入です。Ayreの総帥チャーリーハンセンがニールヤングに共感した旨を書いてます。
PonoPlayerのDACはESS ES9018です。おそらくは2Mでしょう。バッファはディスクリートです。またZX1なみの128GBのストレージを備えています。メモリカードも使えるようです。操作はタッチ式のLCDで、縦置きも横置きも対応しているようです。だからボディが三角形なんでしょう。上部の端子にはヘッドフォン端子とラインアウトが見えますね。またAyre得意のMP(ミニマムフェイズ)デジタルフィルター技術も採用されているようです。ハード的にはAyre的なものになるといってもよいかもしれません。価格は$399で、DAPとしてのPonoも予想以上で来ましたね。
で、、面白いのはニールヤングはこのシステムをクラウドファンディングのKickstarterで立ち上げようとしているようです。3/15から開始します。
私もKickstarterでは最近ウエアラブルデバイスのRingとかコンシューマ向けドローンのPocketDroneなんかに手を出してます。オーディオとしてはAurisonicsのRocketイヤフォンとかLH Labs(LightHarmonic)のGeek Out DACですね。
はじめこのAK240とかZX1の時代にPonoはジョブズの言葉を借りればDOA(dead on arrival - 生まれた時に死んでいる)みたいなもんではないかと思ってましたが、ニールヤングに賛同するかどうかはさておき、Ayre製のDAPってところにちょっとひかれます。ハード的にも思ってたよりハイスペックです。
またAyreもLightHarmonicのようにクラウドファンディングに参入しようとしているところも注目です。Ayre的にはそこがうまみなんでしょう。
価格は$399ですが、後発なので戦略的な価格付けできたというところでしょうか。Kickstarterではさらに安くプリオーダー価格で買えそうです。PonoMusic.comは音源だけではなくハードも購入できるようです。
なおリリースの日付が3/10ですが、CAは早期リリースの許可を得ているようです。先日Computer Audiophileの管理者のクリスさんがニールヤングに会いに行くって書いてましたがこの件だったんですね。
あとはニールヤングが言っていたといわれる新しい音楽フォーマットの件(スケーラブル・ロスレスのやつ)はどうなったかなど気になりますが、Ponoも忘れられた存在から今後の展開に注目できるレベルになったというところでしょうか。
追記3/11: Kickstarterキャンペーン開始は3/12に変更されたようです。
また現在開催中のSXSWにおいて米時間の本日ニールヤングがPonoを発表するようです。
2013年12月30日
SONY Walkman ZX1 およびM505 レビュー、そしてSONYの今年
今年後半の話題はソニーがハイレゾムーブメントを盛り上げたことにあります。
ここではそのフラッグシップであるWalkman ZX1と、BluetoothにS-Masterを応用したM505のインプレッションを書いていきます。
* Walkman M505
まずはじめにWalkman M505を購入しました。前にも書いたように私はスマートフォン時代のオーディオのあり方としてワイヤレスに興味がありますので、BluetoothでS-Master搭載というところに惹かれました。つまりMyst 1866みたいにまじめに音質面を設計したBTデバイスが欲しかったわけです。
M505のBT再生は品質がよく、デジタルをS-Masterでデコードしているのでしょう。実際にかなり音はよく、従来のBTレシーバーとはレベルが違います。まじめに高性能イヤフォンで聴き込めるレベルで、Dita Answerなんかで聴いても聴き劣りしないくらいです。
M505はBluetoothレシーバーとメモリーWalkmanが一緒になったような機種で、BTだけではなく内蔵メモリもあります。そこで一番の興味はM505はメモリ音源も再生できるので、BTと内蔵メモリで同一音源を聴き比べできます。M505で内蔵メモリ再生とBTで同じ音源(WAV)で比べてみると、たしかにBTでもかなり良いですが、内蔵音源と比べてよく聞くと音のエッジが鈍っていて全体にやや明瞭感が落ちています。WAVとMP3の聴き比べにも似ているかもしれません。これはたしかにSBCの非可逆圧縮のためでしょう。こうした音質レベルの造り込みをして初めてSBCとかAPTXの話になるのではないかと思います。
Myst1866とは音傾向も異なりますが、小さい割にかなり肉薄しています。ちょっとした普及クラスの高音質DAPなみといって良いレベルだと思います。
試聴してるとS-Masterのデジタルアンプのメタリックなところが耳についちゃったりしてたんですけど、自分の音源とイヤフォンで聴いてるとそこはあまり気にならないで、むしろデジタルアンプらしいピュアで精緻な良さが分かります。
M505の問題としてはBTレシーバーとしてはやや大きく、クリップの力が弱くて重さに比して落ちやすいところです。またFLACやAppleロスレスが使えないなどいくつも問題はあります。
しかし、一番の問題はこれでちょっとZX1に興味を持ってしまったという点です。
* Walkman ZX1
というわけでここにZX1があります。
仕様説明などは省きますが、Walkman F800との相違は128GBのメモリ、コンデンサーやケーブルなどアナログ・電源系の改良、アルミ切削シャーシ、S-Masterクロックの改良などです。以前書いたZ1000からはS-MasterがMXからハイレゾ対応のS-Master HXとなり、側面に操作ハードボタンが付いた点が改良ですね。
アルミ削り出しのデザインはなかなかよいのですが、アクセントともなっているイヤフォンプラグは思ったよりもいまひとつで、CORDA QuickStepのようながっちりしたイヤフォンプラグを期待していたけれどもそうではありません。背面のふくらみはアナログ部分の改良のためですが、ここはかえって持ちやすくて良いと思います。
Z1000と同じくほとんど素のAndroidベースですが、ハイレゾ化するためにサウンド周りは手が入っているでしょう。なぜ素のAndroidでは48/16が上限で、一部のAndroidプラットフォームがそれをどう回避してるかは下記の記事スレッドをご覧ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/category/13805095-1.html
ZX1を入手した理由のひとつには今持ってるZ1000に変わるAndroidでの新しいオーディオアプリのテスト用に欲しかったというのがあります。ただこの辺ではちょっと不満もあります。
その理由はプロセッサが古いことです。ZX1ではTIのOPMAP4をプロセッサとして採用しています。Z1000のTegra2に比べてOMAP4だとほぼ同世代のデュアルコア機なんで基本性能はあまり変わりません。ただTegra2に比べると3Dとかベクター演算性能に優れ、NEONの搭載がちょっと良い点です。
http://m.pc.watch.impress.co.jp/docs/topic/feature/20120510_531266.html
ただしTegra3に比べてはかなり見劣りします。いま時代遅れとなった初代Next7よりも今ひとつというわけです。
Neutronプレーヤーのハードウエア情報画面
ただDAPには電池の持ちを考えると、クロックも控えめなこの程度で十分と思ったかもしれませんが、WalkmanがiPod touchのような汎用機を目指すなら今一つとは言えます。DSEEの計算コストもこの程度で十分かもしれないけど、後でちょっと書くようにもっとスムーズだったかもしれません。デジタル信号処理をハードでなくソフトでやるのは柔軟性も高く良いけど、それならプロセッサも奢って欲しいところ。
Z1000に比べるとFシリーズ以降はiPhoneと同じサイズにしたのでXperiaやZ1000に比べるとバッテリー搭載余地は不利になります。そのためクロックをあげにくいというのはiPhoneと同じですが、iPhoneは低クロック64bit化のように進化しますが、こうしたDAPもどきプラットフォームは取り残されてしまいます。
本来はiPod touchのSONY/Android版と言うならば、5インチが至当だと思うし、実際にZ1000ではそうだったわけですが、今度はDAPとしてでかすぎるということでFシリーズになるわけです。
この点でちょっと中途半端感をZX1でも引きずってる気はします。操作性もDX100よりは良いけど、いま一つスムーズさにかけます。
とは言え、ZX1の主眼はあくまで音質ですからそれは置いといてあげても良いのですが、なぜ汎用のAndroidベースか、というのは問わねばならないでしょう。ストリーミング対応というのはF800では重要でもZX1ではあまり大きな比重とならないでしょう。
この辺は全くの新規設計にするというよりは、F800のグレードアップで済ませた感のするところではあります。
iPhone5SとZX1
ZX1はいままでのアンプ・DAPの中でも一番バーンインに時間かかるほうです。
だいたいのアンプって100-200時間かかるって言われても20-30時間もやればだいたい音は落ち着くものですが、ZX1の場合はこういう音かなと思った見込みの音が出るのに100時間近く、初めに落ち着いてきたかと思えるまでに50-60時間かかります。バーンインすると音のきつさだけでなくベースも落ち着きます。
落ち着くとなかなか良い個性的な音を聴かせてくれます。
ZX1の音はクールで緻密・正確、細身で付帯音が少なくピュアで、低くも高くも真っ直ぐに伸びきる音です。正負左右別の電源の改良によるものか、音場が広いのも特徴です。
またジッターかよく抑えられクロック向上の効果があるのか、歯切れよく制動の効いた音で、電源向上の効果もあるかもしれません。やはりアナログ部の改良が効いていると思います。デジタルアンプとはいえ冷たく無機質になりすぎていない点は良く作ったところだと思います。そのためさきに書いたようにじっくりとバーンインが必要です。
そしてZX1のハイライトはフルデジタルアンプのS-Masterです。
よくWalkmanのDACはなに、という質問がありますが、S-MasterのDACはS-Masterですね。S-Master自体がパワーDACとかフルデジタルアンプともいうべきもので、DACとアンプが一体型です。簡単に言うとPCM/PWM変換機能付きのデジタルアンプ、という感じでしょうか。もっともWalkmanの場合は正しくはPWMではなく、SONY改良のC-PLMです。もう少しいうと、D級増幅というもの自体デジタルでもアナログでも実現できるので、本来はデジタルアンプというよりスイッチングアンプと言った方が正しいとは思います。ですのでもう一度言い換えると、S-MasterはPCMからC-PLMへの変換機能を持ったスイッチングアンプと言えるでしょう。
ZX1のS-Master HXはカタログ的にいうとモバイルに特化したS-Master MXにハイレゾ機能を加えたものです。普通S-Masterはワンチップになっていると思います(ASIC?)。
Walkman F800とコアのS-Master HXは同じですけど、ワンチップ化したものを別版にすると金がかかるので同じにしたとは言えるでしょう。その代わりアナログ部分のグレードアップと容量追加を行ったわけです。Walkman F800でもし128GB版があれば5万超えになると思うので、それを考えると2万数千円でアルミ切削シャーシとアナログ部の改良は文句のないところでしょう。またS-Master自体もZX1ではクロックの向上などを改良しているようです。
もう一つのZX1のポイントはDSEE HXです。これはサンプリングレートを192または176kにアップサンプリングすると共に補完をし、ビット幅も24bitに拡張するというものです。
オンオフで試してみるとDSEE HXの効果はCDリッピング音源でもあるし、これはヴォーカルがかすかにため息のような微妙な表現をするときに差が出ます。たとえばSHANTIのLotus flower/Memoriseの29秒あたりのところとか、聴き比べるとDSEEオンの標準プレーヤーの方が音数が多く細かな音のグラデーションが表現できています。さらにDSEEを入れると空気感は向上してやや厚みが増すように思います。
ただしソフトウエア由来のジッターが付加されるのか、切れがやや鈍くなり軽やかさシャープさがやや減衰するようにも思えます。ここも聴き比べ(と電池の持ち)で決めても良いと思います。またDSEE設定がメニュー深いのでClearAudioと位置を変えて欲しいところです。
ヘッドフォンのEdition8を使用して、同じく薄型ハイエンドDAPのPCM1794搭載のAcoustic Research ARM1あたりで音質を比べてみると、オーディオ機器としての音の良さはARM1の方が上かと思います。ZX1は透明感に優れ切れも良いですが、豊かさとか厚みが足りないので、やはりZX1はその性格をうまく使うのがポイントでしょう。また、そこを足そうとしてHPA-2などを使うと逆にZX1の良さが劣化するので、そこはやはりZX1の単体 - S-Masterの良さを生かす方向が良いと思います。
ARM1とZX1
イヤフォンとしては反応の速いダイナミックイヤフォンとしてDita Answerが一番ZX1を光らせると思います。もう少し先鋭さを抑えて普通っぽく聴かせるにはK3003が良い感じでした。マルチBAだとJH13あたりでしょうか。
Dita Audio AnswerとZX1
ヘッドフォンではHD800でも音量は取れるけれども、あまり向いていないと思います。キャラクターとしては向いているようにも思うけれども、ちょっと分かりません。Edition8でも悪くないけど、ZX1の音の軽さが耳についてしまいます。そうじてヘッドフォンに対してちょっと弱いように思います。音量が足りないわけではないけど、ゲインを足したくなります。ゲインという概念があるかどうか知りませんが、S-Masterのその辺の問題のようにも思えます。ただ試してないけどCD900STとは合いそうに思います。
音質からいうとたしかにとても高いですが、どちらかというと、他のハイレゾプレーヤーとは音質のレベル差ではなく音の性格が違うものと考えた方が良いと思います。逆に言うと、これを感じたので買っても良いかなと思いました。それはデジタルアンプならではの音です。iQubeのDAP版、と言う感じです。
ただ音自体は低域強めで全体にメリハリがあります。ただせっかくの良い素材に化学調味料をふりかけるようなClearAudio+はなぜこれをZX1に付けたか、上に書いたことに加えて位置づけに疑問を感じるところではあります。
標準プレーヤーとNeutronの画面
プレーヤーアプリとしてはNeutronとKamertonを入れました。Rockboxは入れてません。
依然としてNeutronとKamertonと標準プレーヤーとでは多少音の差はあるけれども、Z1000のときに比べたようなNeutronの絶対的な優位というのはないと思います。むしろDSEEなどの機能でハイレゾ相当の情報量を扱える標準プレーヤーの方が、ZX1の性能を生かせるため向いているかもしれません。DSEEオフの音が良いならNeutronが良いでしょうね。
また(試聴機でしか聞いてないけど)HPA-2などと組み合わせるとアナログちっくな音になり、たしかに別の面で音は変わりますが、これだとZX1の良さを失っていると思います。やはりZX1は単体使用して、上のようにハイスピード系でコンパクトにまとめると一番良いように思います。HPA-2をつないだ方が音が良いと感じた人は、はじめからZX1ではなく別のハイエンドDAPの選択を考えた方が良いと思います。
そういう意味でもZX1はたしかに優れたところがあるけれども、唯一無二のDAPというわけではないと思います。フルデジタルのS-Masterを特徴とするDAPで、数あるハイエンドDAPのひとつにすぎません。
アナログアンプのHAP-2でつなげるなら別の選択があると思いますし、別のハイエンドDAPもあるし、別のポータブルアンプがあります。AK120なりHiFiManHM901を試聴した方がよいでしょう。他にもAK100+HiFi M8とか。
ネットを見ててもなんとなく思いますが、おそらくZX1のユーザーの多くはこのポータブルオーディオ分野に今までなじみのない人たちだと思います。ZX1ではじめてこの分野に足を踏み込んだ人は多いと思います。そうした意味ではこの分野のパイの大きさを広げているということはありますし、そうした人たちがまた別の選択を考えるきっかけになればよいと思います。それでまたこの分野は広がっていくでしょう。
* SONYの今年
これは個人的な視点で気がついたけど、今年はカメラも含めてSONY製品をいっぱい買ってます。つまり上で書いたことは逆も言えます。従来SONY製品のファンがZX1で本格的なポータブルオーディオのマニアック世界にはまるように、いままでSONYを買ってなかった私のようなマニア系の人がSONYを買ってます。
今もα7Rにちょっと興味惹かれてます。考えてみるとZX1、RX1と言ったSONYのマニアックハイエンド製品を両方持ってる人は珍しいかもしれません。ちなみにRX1のレビューはこちらです。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/364970256.html
SONY RX1
RX1はズームに慣れた人には使えないでしょうし、QX100なんかは欠点だらけだけど他にない製品です。そういうのがいいんです。
RX1なんかは半年使ったけど、まだ凄いと思うし、持ち出すたびに面白いって思います。DP3Mと持ち出すと画質は一長一短ではあるので両持ちしたいことはあるけどカメラとしては別物です。DP3Mはセンサーにシャッターを付けて箱に詰めた機械だけど、RX1は紛れもないカメラです。
シグマもカメラメーカーとは言えないレンズメーカーではあるけど、SONYもミノルタ吸収したとはいえ家電メーカーです。しかもRX1は実装技術その他で家電メーカーの強みも活かしてるし、ちょっと脱帽のところはありますね。
また最近のSONYで良いと思ったのはα7用のFEレンズ群が、ツァイスというプレミアレンズなのにあえて明るさを抑えているところです。
35mmなら35/F2が売れ線だけど地味レンズの代表の35/F2.8にしてますし、50mm標準はF1.4ではなくキット入門レンズの代表のようなF1.8です。またあえてダブルガウスでは50mmよりもっと設計が楽な55mmにしてるのもポイントです。
これは小型のα7に合わせたコンパクト化ということもありますが、あえて性能を高めるために半段から一段暗くするというのは、いままでの国産レンズではなかったことです。そもそも明るさが売りだったのは戦前のゾナーF1.5の時代にISO10程度しかフィルムの感度がなかったからですね。それをISO100000の時代にまで引っ張ってるってのはどうなんでしょうというのもあります。でもそこには明るくないとカタログでアピールできないから売れない、という理由がありました。
暗いレンズは特に球面収差などレンズの性能を低減する諸収差補正の必要が大きく軽減されるので本来高性能レンズに向いているのだけれど、考えると不思議なことに明るいレンズの方が性能が高いイメージがあります。これはメーカーが暗いレンズだと売れないということで、暗いレンズは低価格の普及品にして、カタログスペックを宣伝できる明るいレンズにコストをかけて高付加価値にしていたからです。
いままでそれをやらなかったのはライカですが、ライカでズミルクス(F1.4)よりズミクロン(F2.0)が高性能レンズ・名玉として有名なのはそういうことです。同じコストをかけて設計したら暗いレンズの方が光学性能は高くなります。これは本来は普通のことなんです。
いままで国産のカメラメーカーができなかったのは、その普通のことです。だからツァイス銘のプレミアムレンズの明るさで抑えるっていうSONYのやり方は注目に値すると思います。
これはオーディオ製品でも同じことです。みなが買うWalkmanだからこのくらいの値段にして、そこから性能を逆算する、だからこの程度の音質でいいだろうというやり方ではなく、あえてそこを度外視して音質ありきでコンデンサーやワイヤーにまで細かく気を配って設計しているというのは、本来はオーディオ製品ならそうすべきことです。それがZX1の良さです。
たぶん最近SONYがよくなってきたと感じるのは、本来当たり前にすべきことを当たり前にやるようになってきたから、ではないでしょうか。
ここではそのフラッグシップであるWalkman ZX1と、BluetoothにS-Masterを応用したM505のインプレッションを書いていきます。
* Walkman M505
まずはじめにWalkman M505を購入しました。前にも書いたように私はスマートフォン時代のオーディオのあり方としてワイヤレスに興味がありますので、BluetoothでS-Master搭載というところに惹かれました。つまりMyst 1866みたいにまじめに音質面を設計したBTデバイスが欲しかったわけです。
M505のBT再生は品質がよく、デジタルをS-Masterでデコードしているのでしょう。実際にかなり音はよく、従来のBTレシーバーとはレベルが違います。まじめに高性能イヤフォンで聴き込めるレベルで、Dita Answerなんかで聴いても聴き劣りしないくらいです。
M505はBluetoothレシーバーとメモリーWalkmanが一緒になったような機種で、BTだけではなく内蔵メモリもあります。そこで一番の興味はM505はメモリ音源も再生できるので、BTと内蔵メモリで同一音源を聴き比べできます。M505で内蔵メモリ再生とBTで同じ音源(WAV)で比べてみると、たしかにBTでもかなり良いですが、内蔵音源と比べてよく聞くと音のエッジが鈍っていて全体にやや明瞭感が落ちています。WAVとMP3の聴き比べにも似ているかもしれません。これはたしかにSBCの非可逆圧縮のためでしょう。こうした音質レベルの造り込みをして初めてSBCとかAPTXの話になるのではないかと思います。
Myst1866とは音傾向も異なりますが、小さい割にかなり肉薄しています。ちょっとした普及クラスの高音質DAPなみといって良いレベルだと思います。
試聴してるとS-Masterのデジタルアンプのメタリックなところが耳についちゃったりしてたんですけど、自分の音源とイヤフォンで聴いてるとそこはあまり気にならないで、むしろデジタルアンプらしいピュアで精緻な良さが分かります。
M505の問題としてはBTレシーバーとしてはやや大きく、クリップの力が弱くて重さに比して落ちやすいところです。またFLACやAppleロスレスが使えないなどいくつも問題はあります。
しかし、一番の問題はこれでちょっとZX1に興味を持ってしまったという点です。
* Walkman ZX1
というわけでここにZX1があります。
仕様説明などは省きますが、Walkman F800との相違は128GBのメモリ、コンデンサーやケーブルなどアナログ・電源系の改良、アルミ切削シャーシ、S-Masterクロックの改良などです。以前書いたZ1000からはS-MasterがMXからハイレゾ対応のS-Master HXとなり、側面に操作ハードボタンが付いた点が改良ですね。
アルミ削り出しのデザインはなかなかよいのですが、アクセントともなっているイヤフォンプラグは思ったよりもいまひとつで、CORDA QuickStepのようながっちりしたイヤフォンプラグを期待していたけれどもそうではありません。背面のふくらみはアナログ部分の改良のためですが、ここはかえって持ちやすくて良いと思います。
Z1000と同じくほとんど素のAndroidベースですが、ハイレゾ化するためにサウンド周りは手が入っているでしょう。なぜ素のAndroidでは48/16が上限で、一部のAndroidプラットフォームがそれをどう回避してるかは下記の記事スレッドをご覧ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/category/13805095-1.html
ZX1を入手した理由のひとつには今持ってるZ1000に変わるAndroidでの新しいオーディオアプリのテスト用に欲しかったというのがあります。ただこの辺ではちょっと不満もあります。
その理由はプロセッサが古いことです。ZX1ではTIのOPMAP4をプロセッサとして採用しています。Z1000のTegra2に比べてOMAP4だとほぼ同世代のデュアルコア機なんで基本性能はあまり変わりません。ただTegra2に比べると3Dとかベクター演算性能に優れ、NEONの搭載がちょっと良い点です。
http://m.pc.watch.impress.co.jp/docs/topic/feature/20120510_531266.html
ただしTegra3に比べてはかなり見劣りします。いま時代遅れとなった初代Next7よりも今ひとつというわけです。
Neutronプレーヤーのハードウエア情報画面
ただDAPには電池の持ちを考えると、クロックも控えめなこの程度で十分と思ったかもしれませんが、WalkmanがiPod touchのような汎用機を目指すなら今一つとは言えます。DSEEの計算コストもこの程度で十分かもしれないけど、後でちょっと書くようにもっとスムーズだったかもしれません。デジタル信号処理をハードでなくソフトでやるのは柔軟性も高く良いけど、それならプロセッサも奢って欲しいところ。
Z1000に比べるとFシリーズ以降はiPhoneと同じサイズにしたのでXperiaやZ1000に比べるとバッテリー搭載余地は不利になります。そのためクロックをあげにくいというのはiPhoneと同じですが、iPhoneは低クロック64bit化のように進化しますが、こうしたDAPもどきプラットフォームは取り残されてしまいます。
本来はiPod touchのSONY/Android版と言うならば、5インチが至当だと思うし、実際にZ1000ではそうだったわけですが、今度はDAPとしてでかすぎるということでFシリーズになるわけです。
この点でちょっと中途半端感をZX1でも引きずってる気はします。操作性もDX100よりは良いけど、いま一つスムーズさにかけます。
とは言え、ZX1の主眼はあくまで音質ですからそれは置いといてあげても良いのですが、なぜ汎用のAndroidベースか、というのは問わねばならないでしょう。ストリーミング対応というのはF800では重要でもZX1ではあまり大きな比重とならないでしょう。
この辺は全くの新規設計にするというよりは、F800のグレードアップで済ませた感のするところではあります。
iPhone5SとZX1
ZX1はいままでのアンプ・DAPの中でも一番バーンインに時間かかるほうです。
だいたいのアンプって100-200時間かかるって言われても20-30時間もやればだいたい音は落ち着くものですが、ZX1の場合はこういう音かなと思った見込みの音が出るのに100時間近く、初めに落ち着いてきたかと思えるまでに50-60時間かかります。バーンインすると音のきつさだけでなくベースも落ち着きます。
落ち着くとなかなか良い個性的な音を聴かせてくれます。
ZX1の音はクールで緻密・正確、細身で付帯音が少なくピュアで、低くも高くも真っ直ぐに伸びきる音です。正負左右別の電源の改良によるものか、音場が広いのも特徴です。
またジッターかよく抑えられクロック向上の効果があるのか、歯切れよく制動の効いた音で、電源向上の効果もあるかもしれません。やはりアナログ部の改良が効いていると思います。デジタルアンプとはいえ冷たく無機質になりすぎていない点は良く作ったところだと思います。そのためさきに書いたようにじっくりとバーンインが必要です。
そしてZX1のハイライトはフルデジタルアンプのS-Masterです。
よくWalkmanのDACはなに、という質問がありますが、S-MasterのDACはS-Masterですね。S-Master自体がパワーDACとかフルデジタルアンプともいうべきもので、DACとアンプが一体型です。簡単に言うとPCM/PWM変換機能付きのデジタルアンプ、という感じでしょうか。もっともWalkmanの場合は正しくはPWMではなく、SONY改良のC-PLMです。もう少しいうと、D級増幅というもの自体デジタルでもアナログでも実現できるので、本来はデジタルアンプというよりスイッチングアンプと言った方が正しいとは思います。ですのでもう一度言い換えると、S-MasterはPCMからC-PLMへの変換機能を持ったスイッチングアンプと言えるでしょう。
ZX1のS-Master HXはカタログ的にいうとモバイルに特化したS-Master MXにハイレゾ機能を加えたものです。普通S-Masterはワンチップになっていると思います(ASIC?)。
Walkman F800とコアのS-Master HXは同じですけど、ワンチップ化したものを別版にすると金がかかるので同じにしたとは言えるでしょう。その代わりアナログ部分のグレードアップと容量追加を行ったわけです。Walkman F800でもし128GB版があれば5万超えになると思うので、それを考えると2万数千円でアルミ切削シャーシとアナログ部の改良は文句のないところでしょう。またS-Master自体もZX1ではクロックの向上などを改良しているようです。
もう一つのZX1のポイントはDSEE HXです。これはサンプリングレートを192または176kにアップサンプリングすると共に補完をし、ビット幅も24bitに拡張するというものです。
オンオフで試してみるとDSEE HXの効果はCDリッピング音源でもあるし、これはヴォーカルがかすかにため息のような微妙な表現をするときに差が出ます。たとえばSHANTIのLotus flower/Memoriseの29秒あたりのところとか、聴き比べるとDSEEオンの標準プレーヤーの方が音数が多く細かな音のグラデーションが表現できています。さらにDSEEを入れると空気感は向上してやや厚みが増すように思います。
ただしソフトウエア由来のジッターが付加されるのか、切れがやや鈍くなり軽やかさシャープさがやや減衰するようにも思えます。ここも聴き比べ(と電池の持ち)で決めても良いと思います。またDSEE設定がメニュー深いのでClearAudioと位置を変えて欲しいところです。
ヘッドフォンのEdition8を使用して、同じく薄型ハイエンドDAPのPCM1794搭載のAcoustic Research ARM1あたりで音質を比べてみると、オーディオ機器としての音の良さはARM1の方が上かと思います。ZX1は透明感に優れ切れも良いですが、豊かさとか厚みが足りないので、やはりZX1はその性格をうまく使うのがポイントでしょう。また、そこを足そうとしてHPA-2などを使うと逆にZX1の良さが劣化するので、そこはやはりZX1の単体 - S-Masterの良さを生かす方向が良いと思います。
ARM1とZX1
イヤフォンとしては反応の速いダイナミックイヤフォンとしてDita Answerが一番ZX1を光らせると思います。もう少し先鋭さを抑えて普通っぽく聴かせるにはK3003が良い感じでした。マルチBAだとJH13あたりでしょうか。
Dita Audio AnswerとZX1
ヘッドフォンではHD800でも音量は取れるけれども、あまり向いていないと思います。キャラクターとしては向いているようにも思うけれども、ちょっと分かりません。Edition8でも悪くないけど、ZX1の音の軽さが耳についてしまいます。そうじてヘッドフォンに対してちょっと弱いように思います。音量が足りないわけではないけど、ゲインを足したくなります。ゲインという概念があるかどうか知りませんが、S-Masterのその辺の問題のようにも思えます。ただ試してないけどCD900STとは合いそうに思います。
音質からいうとたしかにとても高いですが、どちらかというと、他のハイレゾプレーヤーとは音質のレベル差ではなく音の性格が違うものと考えた方が良いと思います。逆に言うと、これを感じたので買っても良いかなと思いました。それはデジタルアンプならではの音です。iQubeのDAP版、と言う感じです。
ただ音自体は低域強めで全体にメリハリがあります。ただせっかくの良い素材に化学調味料をふりかけるようなClearAudio+はなぜこれをZX1に付けたか、上に書いたことに加えて位置づけに疑問を感じるところではあります。
標準プレーヤーとNeutronの画面
プレーヤーアプリとしてはNeutronとKamertonを入れました。Rockboxは入れてません。
依然としてNeutronとKamertonと標準プレーヤーとでは多少音の差はあるけれども、Z1000のときに比べたようなNeutronの絶対的な優位というのはないと思います。むしろDSEEなどの機能でハイレゾ相当の情報量を扱える標準プレーヤーの方が、ZX1の性能を生かせるため向いているかもしれません。DSEEオフの音が良いならNeutronが良いでしょうね。
また(試聴機でしか聞いてないけど)HPA-2などと組み合わせるとアナログちっくな音になり、たしかに別の面で音は変わりますが、これだとZX1の良さを失っていると思います。やはりZX1は単体使用して、上のようにハイスピード系でコンパクトにまとめると一番良いように思います。HPA-2をつないだ方が音が良いと感じた人は、はじめからZX1ではなく別のハイエンドDAPの選択を考えた方が良いと思います。
そういう意味でもZX1はたしかに優れたところがあるけれども、唯一無二のDAPというわけではないと思います。フルデジタルのS-Masterを特徴とするDAPで、数あるハイエンドDAPのひとつにすぎません。
アナログアンプのHAP-2でつなげるなら別の選択があると思いますし、別のハイエンドDAPもあるし、別のポータブルアンプがあります。AK120なりHiFiManHM901を試聴した方がよいでしょう。他にもAK100+HiFi M8とか。
ネットを見ててもなんとなく思いますが、おそらくZX1のユーザーの多くはこのポータブルオーディオ分野に今までなじみのない人たちだと思います。ZX1ではじめてこの分野に足を踏み込んだ人は多いと思います。そうした意味ではこの分野のパイの大きさを広げているということはありますし、そうした人たちがまた別の選択を考えるきっかけになればよいと思います。それでまたこの分野は広がっていくでしょう。
* SONYの今年
これは個人的な視点で気がついたけど、今年はカメラも含めてSONY製品をいっぱい買ってます。つまり上で書いたことは逆も言えます。従来SONY製品のファンがZX1で本格的なポータブルオーディオのマニアック世界にはまるように、いままでSONYを買ってなかった私のようなマニア系の人がSONYを買ってます。
今もα7Rにちょっと興味惹かれてます。考えてみるとZX1、RX1と言ったSONYのマニアックハイエンド製品を両方持ってる人は珍しいかもしれません。ちなみにRX1のレビューはこちらです。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/364970256.html
SONY RX1
RX1はズームに慣れた人には使えないでしょうし、QX100なんかは欠点だらけだけど他にない製品です。そういうのがいいんです。
RX1なんかは半年使ったけど、まだ凄いと思うし、持ち出すたびに面白いって思います。DP3Mと持ち出すと画質は一長一短ではあるので両持ちしたいことはあるけどカメラとしては別物です。DP3Mはセンサーにシャッターを付けて箱に詰めた機械だけど、RX1は紛れもないカメラです。
シグマもカメラメーカーとは言えないレンズメーカーではあるけど、SONYもミノルタ吸収したとはいえ家電メーカーです。しかもRX1は実装技術その他で家電メーカーの強みも活かしてるし、ちょっと脱帽のところはありますね。
また最近のSONYで良いと思ったのはα7用のFEレンズ群が、ツァイスというプレミアレンズなのにあえて明るさを抑えているところです。
35mmなら35/F2が売れ線だけど地味レンズの代表の35/F2.8にしてますし、50mm標準はF1.4ではなくキット入門レンズの代表のようなF1.8です。またあえてダブルガウスでは50mmよりもっと設計が楽な55mmにしてるのもポイントです。
これは小型のα7に合わせたコンパクト化ということもありますが、あえて性能を高めるために半段から一段暗くするというのは、いままでの国産レンズではなかったことです。そもそも明るさが売りだったのは戦前のゾナーF1.5の時代にISO10程度しかフィルムの感度がなかったからですね。それをISO100000の時代にまで引っ張ってるってのはどうなんでしょうというのもあります。でもそこには明るくないとカタログでアピールできないから売れない、という理由がありました。
暗いレンズは特に球面収差などレンズの性能を低減する諸収差補正の必要が大きく軽減されるので本来高性能レンズに向いているのだけれど、考えると不思議なことに明るいレンズの方が性能が高いイメージがあります。これはメーカーが暗いレンズだと売れないということで、暗いレンズは低価格の普及品にして、カタログスペックを宣伝できる明るいレンズにコストをかけて高付加価値にしていたからです。
いままでそれをやらなかったのはライカですが、ライカでズミルクス(F1.4)よりズミクロン(F2.0)が高性能レンズ・名玉として有名なのはそういうことです。同じコストをかけて設計したら暗いレンズの方が光学性能は高くなります。これは本来は普通のことなんです。
いままで国産のカメラメーカーができなかったのは、その普通のことです。だからツァイス銘のプレミアムレンズの明るさで抑えるっていうSONYのやり方は注目に値すると思います。
これはオーディオ製品でも同じことです。みなが買うWalkmanだからこのくらいの値段にして、そこから性能を逆算する、だからこの程度の音質でいいだろうというやり方ではなく、あえてそこを度外視して音質ありきでコンデンサーやワイヤーにまで細かく気を配って設計しているというのは、本来はオーディオ製品ならそうすべきことです。それがZX1の良さです。
たぶん最近SONYがよくなってきたと感じるのは、本来当たり前にすべきことを当たり前にやるようになってきたから、ではないでしょうか。
2013年09月23日
デュアルPCM1704とデュアルバッテリーのHiFi ET MA9レビュー
HiFi ETは中国のDAPメーカーでオーディオファイル向けのDAPを製造しています。特徴は音質に徹底したこだわりのある製品です。
音質重視はどのブランドでもそういいますが、HiFi ETは下記に見るように徹底しています。
製品としては上位のMA9(約US$850)とその下のMA8(約US$500)があります。両方ともボード差し替えによるモジュール設計になっていてDACとアンプを別々に組み合わせることができます。標準仕様はMA9はDACボードにPCM1704x2とアンプボードはチャンネル毎にOPA627+BUF634x2という豪華版、MA8はDACボードにPCM1792とアンプボードはAD797とAD8397という組み合わせです。MA8は廉価版と言うより異なった性格と言った方が良さそうです。MA9は古き良きマルチビットDAC、MA8はより現代的なデルタシグマDACと使い分けられます。それがモジュール方式の利点ですね。パワースプリッタ不要の+/-独立デュアルバッテリーというこだわりも他にありません。
このHiFi ETのMA9単体とMA8のDACボードのみを購入しましたので以下レポートしていきます。ちなみにMAとはMonster Audioのことで初期のブランド名のようです。でも名は体を表し、まさにモンスターのような機器に仕上がっています。
HiFi ET MA9のメーカーホームページはこちらです。
http://en.hifi-et.com/ma9
1 MA9の特徴
MA9の他にない特徴はデュアルPCM1704とデュアルバッテリーというユニークな点です。またアンプ部は左右チャンネルでOPA627が採用されていて、バッファもPortaphileかよといいたくなるように一個のOPA627の後段にBUFF634が二個ずつついています。上から下まで徹底的にこだわって、理想的なポータブルオーディオを目指して設計されたというのがよくわかります。
MA9の特徴を以下にあげていきます。
1-1. デュアルDAC、PCM1704x2
マルチビット(R2R)DACの最高峰で、いまでも多くの人が至高のDACチップと認めるのがPCM1704です。
前にも書いたようにそもそもPCMというデジタルフォーマットはマルチビットDACでのデコードを前提としています。つまり一般的なPCM音源であればマルチビットDACで再生するのがもっとも自然な音再現が期待できるわけです。デルタシグマDACでデコードするならば変換で生じるアーチファクト(副産物)により人工的なテイストが乗ることが避けられません。
ただし多くのマルチビットDACが16bitどまりのようにマルチビットDACではビット幅を広げようとすると製造が難しく高価になります。そのためハイレゾ前提のADC/DACマーケット(24bitをマスターとするスタジオなど)では24bit幅を簡単に達成するためにデルタシグマDACが多くなってきたわけです。そして24bit対応するマルチビットDACの数少ない例外がこのPCM1704です。すでに製造中止されているPCM1704が、いくたの高級オーディオシステムで採用されているゆえんでもあります。
(ただしPCM1704はサインビットがあるので加減算に使う精度は実質23bit整数だから、厳密にいえばDACとしては23bitDACと言うようですが。)
(HiFi ETのホームページより転載)
とはいえ、PCM1704は古き良きめんどうなDACチップというか、最先端のES9023やWM8533のようにDACチップから直接2Vのラインレベルで電圧出力が手軽に取り出せるというわけではありません。基本的にDACチップとはデジタル信号をアナログの電流の強弱に変えるICです。しかしオーディオのアナログ領域では電圧変動が信号の変化を意味しますので、電流出力を電圧に変えるDACチップ後段のI/V変換が必要になります。特にPCM1704ではこの辺がうまくできていないと性能を十分に発揮できません。ES9023などではポンと置けばシンプルで手軽にDACを設計できますが、PCM1704ではそうはいきません。DACの性能はDACチップと周辺回路の総合力のようなものですが、さきに述べたような最先端のチップが周辺回路までワンチップ化して簡素化しているのに対して、古き良きDACチップでは複雑な周辺回路まで必要と言うわけです。総合力を得るためにはかさばるというのがポータブルでPCM1704を使用するネックです。
このMA9ではそのめんどくさいPCM1704をデュアルで使っているわけですので、ポータブルとしてはかなり挑戦的といえます。MA9ではI/V変換にもOPA627をおごり、LPFにも高性能ICを配しています。また1704の前段のデジタルフィルターには専用のDF1704を採用するなど、ポータブルながら万全の設計を施しています。PCM1704はNOSで使うこともできますが、こではDF1704を介して8倍オーバーサンプリング(768kHz)することで、音楽的でメロウというよりは自然で高性能と言う方向にPCM1704を生かそうとしているのが見て取れます。
AK120では普及クラスのWM8740をデュアルで使用することでトップクラスの音質を獲得したわけですから、PCM1704をデュアルで使うというのはハイエンドオーディオなみのぜいたくさと言えますね。
1-2. デュアルバッテリー、正負の別
デュアルバッテリーというのも他のDAPにはないMA9のユニークな特徴です。一般に電源は正負(+/-)2系統のパワーレールが必要になりますが普通電池は一個のみ入れますので、一個の電池の電圧を2分してそれぞれ正負の電源とします。しかしながらこれにはレールスプリッタと言う余分な回路が必要になりますので、理想的にはやはりパワーレール別に電源(バッテリー)を2個使用することです。これによって電圧を二分しなくてもよくなります。
しかしLRチャンネルを二個の電源で分けると言うのはたまにありますが、+/-を二個の電源でわけるというのはあまりないですね。MA9では8.4Vの電池の同じものを2個+/-別に使用しますので、昇圧などしなくても自然に16.8Vの十分な電圧振幅が確保できます。つまりMA9ではここでも「自然に、ピュアに」と電源品質にもこだわりをいれているわけです。
ただしこの方式は電池の片減りの問題があります。そこで、なんと液晶には+と-の両方の電池の減り具合が表示されます。これはほかにないのでちょっと面白いディスプレイのアクセントになっています。
電池の容量はそれぞれ1100mAhありますが、電池の持ちは公称8〜9時間とわりと一日持つくらいあります。実際には7時間くらいかなと思いますが、ARM1やPortaphile627とは違って、休日でも一日分はあるかと思います。
1-3. デュアルバッファ BUF634x2
いかに前段のDACの音質が高くとも、アンプ部分の品質が悪ければ総合的な良い音は得られません。
MA9のアンプボードは高品質で知られるOPA627を両チャンネル個別に用いて前段としています。それに定評あるバッファであるBUF634を2個使用して出力を高めています。627+634というのは高性能のOP+BUFと言われるアンプではよく使われますね。このデュアルバッファも音の制動力の高さによく効いています。
(HiFi ETのホームページより転載)
1-4. モジュール設計
HiFimanでもアンプカードの差し替えができますが、MA9ではさらに徹底したモジュール化が行われていて、DACボード、アンプボード、それとメインボード(コントローラ・ディスプレイ関連)の3つのパーツに分けられます。それと2個の電池とボディ外殻ですね。MA9の外観は箱形のシンプルなデザインですが、モジュール設計されたボードのコンテナと言う感じです。DACボード、アンプボードはMA9とMA8のものをそれぞれ互換的に使用ができます。これはHiFi ETに直接確かめました。開発元では一眼レフのレンズを交換できるように、と言っていますね。
ただ現実的にはHeadFiインプレを読むとMA8はPCM1792のDACは素晴らしいのですが、MA8のアンプボードはやはり普及価格にするためいまひとつということで、HiFiManとは逆にDAC交換がメインとなるでしょう。そのため、HIFi ETからMA8のDACボードも入手しました。将来的にはES9018ボードも計画されているようです。
またHIFi ETはロシアのディーラーとのむすびつきが強くて、ロシア製のバランスアンプボードが3rdパーティーとして用意されているようです($250くらい?)。ロシア製では後に述べるRockboxファームがあります。
ボードの積層は背面から外すので、背面からアンプボード、DACボード、メインボードの順です。
1-5 MA9のこだわり
こうしてみるとRとLのデュアルDAC、+と-の別のデュアルバッテリー、片チャンネルに634を2個投入と言うデュアルバッファと、いままでは妥協してひとつで賄っていたものを、本来あるべき2系統で、あるいはコンバーターを廃してピュアに、というこれでもかという徹底的なこだわりが見て取れます。
ポータブルでは電圧を上げるのに昇圧したりしますが、MA9では自然に16Vの電圧振幅が得られます。
こうしたいわゆる「ビュアリスト・アプローチ」と言うべきこだわりはシグナルパスに余分なものを入れないとか、シグナルパスを短く保つべき、というようなスピーカー系のハイエンドオーディオの世界でよく言われることです。
開発者は3名のオーディオファイルと紹介されていますが、ポータブルオーディオの世界ではコストやサイズ的な問題もあったものを妥協を廃して作ったのがMA9と言えるでしょう。
2. MA9の実際の使用感
到着すると一式は化粧箱に入っています。電源はそのままだとBだかCタイプの中国向けプラグなので変換アダプターが必要です。またはメガネタイプの電源ケーブルがあればベターです(私はこちら)。
MA9は金属製のボディでかなりがっちりと作られていてちっょとやそっとでは壊れないような作りです。重さは300gということですからDX100より重いのですがそれほど重いという感じではありません。胸ポケットにはギリギリ入るサイズで、厚みはあるけど横幅がやや狭めなのでOKという感じです。
バッチによるかもしれませんが私のものはブラックですが、少しグレーがかっています。
側面にはMicroSDのスロットがあります。32GBまでのようですが、FAT32ならもっといけるかもしれません。内蔵では8GBのメモリが入っています。USBポートはミニで充電も兼ねています。充電は専用のチャージャーを使用します。一般のUSB充電器からは充電できません。
反対側面にはアナログボリュームとラインアウト端子、そしてリセット穴があります。
アナログボリュームと書きましたが、実はMA9にはボリュームが二つ付いています。ひとつは側面のアナログボリュームともうひとつは再生中に十字キーの上下でデジタルボリュームが可変できます。MA9にはゲインがないので、高能率イヤフォンにはデジタルボリュームを下げることで調整ができるようです。ただ実際にはそうした必要性もそれほどないので、私はデジタルボリュームは常にMax(32)にしています。
操作は液晶と十字キーを組み合わせて行います。液晶はタッチではありません。また操作はとくにもたついたりすることはありません。
タグ情報はデータベースの再構築メニューから手動で行います。タグはパースできますが、なぜかUIにはアルバムとかアーチストの項がなく、「すべての楽曲」のみです。やはりユニークなのは液晶画面に電池の残量表示が2個あることで、それぞれ+と-の担当電池の減り具合です。どちらかがゼロになると使えなくなります(たいてい+の方)。
MA9のメニューキーはリピートやシャッフルの設定を行います。画面と楽曲は日本語表示が可能ですが、「再生」を「放送」と訳したり誤訳もあります。設定画面はデジタルフィルターの切り替えも可能です。SlowとSharpがあり、音色を微妙に描き分けられます。これはDF1704の機能のようです。
MA9/MA8両方ともDACはハイレゾ対応ですが、DAPチップ(Rockchip)ファームの制約によりハイレゾ再生はできないようです。ただしあとで書くようにRockboxが用意されていますので、それを使うことでハイレゾ対応可能なようです。
使っているとけっこう熱くなりますが、容積があるのかARM1ほどは熱くなりません。エージングは少し時間をかけたほうがよいタイプ。噛めば噛むほど味が出るって感じですね。
またARM1と違ってUSB DACの機能もあります(PCM270x系なので48khzまで)。音も悪くはないですがSDカードからの再生の方が良いですね。
3. MA9の音質
JH13+TWagで聴いてみました。長短のはっきりしていたARM1に比べるとニュートラルで総合的に良いのでヘッドフォン、イヤフォンはいろいろと合わせられるかもしれません。ただしハイエンドの機材を使用しないとMA9の良さは引き出せません。
まず感じるのはとてもニュートラルで正確性が高く、据え置きアンプ並みの堂々とした音質レベルの高さです。ポータブルであるという言い訳を感じさせません。ぱっと聴きに感じるのはベースの力強さと音の端正な美しさでしょう。
特に印象的なのはマルチビットDACという先入観から来る暖かみとか「音楽性」の着色がほとんどないという点です。おなじPCM1704を搭載したHM801とはここが大きく異なります。
PCM1704を前段のフィルターから後段のOP627やローパスフィルターに至るまで、音楽性というあいまいな要素ではなく、性能の高さと自然な再現力というはっきりした目標で設計されていると思います。パッと聴きはマルチビットというより現代DACのように聞こえるけど細部では硬くなく人工的なところもありません。はじめは硬めでさえあるけど、エージングで滑らかにほぐれてきます。
PCM1704はあくまで人工的ではない自然な音鳴りのために使われ、甘さや暖かみのために使われているわけではありません。設計者がHiFiという高い音楽再現性を目指しているのが分かります。
マルチビットDACを使って「真空管的な、音楽的な、」甘い音を作ろうとしてるのではなく、あくまで開発者の狙いは高忠実性のHiFi再現であり、マルチビットは自然な音再生のためにすぎないという目的に貫かれてると思います。
録音の違いは明確に現れ、「甘さ」で隠してはくれません。良録音に福音をもたらす音ですね。
細かな点で聴いていくと、制動力とインパクトがかなり強力です。これはDAC部分だけではなく、アンプ部分も強力であるということを示しています。47研のように電源の強力なアンプを思わせます。
スピードや切れ味と言う点でも悪くないですが、ARM1ほどスピードテンポの良さや鮮度感はないように思えます。これも大方の外付けポータブルアンプ以上だと思います(Portaphile627とかごく一部は除く)。
声や楽器の細かな再現性はマルチビットらしくとても滑らかでシルクのようです。このひとつの音の再現力がMA9の長所の一つです。楽器音が脚色なく端正で美しいですね。ここがポイントなのですが、いわゆる美音のように脚色して美しく聴かせるというのではなく、ただ純粋にピュアだからゆえの美しさです。
繊細なクラシックの器楽曲では感動的な響きの良さが感じられます。アコギのトレモロを聴いても音鳴りはリアルであり人工的な色が少なく自然に感じられます。
また細やかな彫の深さを感じさせる音像イメージングもMA9のポイントです。音像イメージングが見事で音像の浮かび上がり方が立体的で独特です。ここはデュアルDACが生きていると思います。
ただし音像はピンポイントですが、音場がいまひとつ狭いのがMA9のもうひとつなところではあります。
周波数特性では高い方もきちんとレスポンスがあって明瞭です。高域のベンチマークのベルの音も綺麗で淀みがありません。ベルの音の鳴りの良さではポータブルオーディオ機器でもでも一・二を争うでしょう。硬すぎず強すぎませんし、上で書いたように音色は脚色なく、歪みが少ないのできれいという感覚です。
MA9では低域のインパクトの良質さ・力強さもさることながら、中高音域の鮮明さも特筆ものです。音がきちんとタイトに締まっています。またベースが重いって感覚がきちんとあり、密度感を感じるベースの重いインパクトとレスポンスと制動力が印象的です。やはり電源が強力なせいか力強いインパクトがあり、音の切れと制動力も高い。ロックも迫力ありパワフルに聞こえます。
iBassoのDX100と比べるとサイズでは似たようなものですがMA9の方がなんとか胸ポケットに入る長細い形ではあります。
JH13+TWagでMA9とiBassoのDX100と比べるとDX100もすばらしい再現性ですが、やはりMA9が音の純度・端正さという点で一レベル上回ります。またMA9の方が贅肉はさらに少なく引き締まった感じです。ものすごく細かい音の抽出はさずがES9018のDX100の方が明瞭な細やかさを感じますが、音の再現自体はやはりMA9の方が歪み感すくなく端正な感じです。ベースはDX100は量感はありますが少し音がゆるめです。MA9はやはりベースはタイトです。ヴォーカルはMA9の方がかなり魅力的です。スムーズで明瞭感もあります。総じていうと性能という点ではDX100が低いとは言えませんが、MA9の方が音楽再生という点でより上質感を感じさせます。
やはりES9018 vs PCM1704的なところはありますが、DX100は長所をのばすために透明感やアンプ部分などもう少し全体にがんばってほしいという点もあります(あるいは現代DAC vs マルチビットDACと置き換えても良いかも)。MA9はPCM1704の良さを出しきったというところでしょうか。
MA9の音についてまとめると、まずひとつひとつの音の鳴り方の品質というものがすごく高いということです。おそらく聴いたDAPの中ではトップクラスでホームアンプ+普通のDACでもここまでだせるかどうか。真空管の(良い意味で)歪みで作られた甘い美音と言うものではなく、歪みや音質的な瑕疵を極限に排除して音が美しい感じですね。ベースの力強さもパラメーターをちょっといじって盛られたというものではなく、バッファとか電源的なものとか基本的な性能の高さを感じさせます。
良くいいますが、ミュージックライブラリを聴き直したくなるような上質感が楽しめますね。良録音で楽器の音が上手に入ったクラシックがよく合いますが、ポップロックでもノリが良くタイトで小気味良いインパクト感を楽しめます。
ホームオーディオ的な堂々とした余裕が感じられます。いろいろデュアルDAC、デュアルBUF634、デュアルバッテリーと書いてきましたが、やはりそれなりの物量投下しなければ達成できない玄人好みの音質の高さが感じられます。基本的な能力を磨いた結果ともいえます。基本的というのは、ノイズがまざってはいけない、左右チャンネルは別に処理しなければいけない、電源はクリーンで強力でなくてはならない、と言ったオーディオの基本則を妥協なく守ったことですね。ただ音場が狭いのがちょっと難点で、豊かさがちょっと箱庭的に感じられます。
MA9を使っているとマルチビットDACと現代デルタシグマ(あるいはハイブリッド)DACの違いというのも考えさせられます。
* MA8
MA8はMA9の廉価版でもあり、DACにPCM1792(シングル)を採用したモデルでもあります。DACのPCM1792はスペックでは1704より上であると思いますが、アンプボードが廉価版としてAD797+AD8397に変更されているため、DACは良いけどアンプがよくないということになっているようです。そこでMA8のDACボードのみを購入しました(直でHiFi ETからゆずってもらいました)。
MA8のDACボードをMA9に装着するというのはまた次の機会にしたいと思います。
* Rockbox
MA8/9は標準のファームウエアではハイレゾ音源に対応していないようですが、Rockboxが公開されていて公式ページにもダウンロードリンクがあります。Rockboxを使えばハイレゾ対応もできるようです。
MA9/MA8はロシアで人気があるようでこのRockboxもロシア系のようですが、このほかにもバランス出力アンプボードなどが売られているようです。
* まとめ
音の一つ一つの上質な再現力はハイエンドDAP随一だと思います。また低域の充実に見られる腰の強さと基本性能の高さはこだわり設計の反映なのでしょう。
ただ、くっきりはっきりのようなSN感は現代DACにゆずるところもあって、箱庭的な美しさでややこじんまりしてるところがあります。ここまで設計が徹底してるとすべてに卓越したDACチップなどないとかえってよくわかります。その点でPCM1792と変えられるモジュール設計は利点だと思います。
購入はHifi ETに直接コンタクトしてみると、はじめは直接コンシューマーには売れないということでTaoBaoのリンクを紹介されたのですが、TaoBaoは中国語わからないと買えないなあ。。とこぼしたところ親切にも直接売ってもらえ、さらにMA8のDACボードもパーツとして売ってもらえました。Hifi ETに感謝です。全般に対応がとても親切で、メール返答も速かったですね。
日本に代理店はありませんが、探してみると輸入販売しているところはありますのでそちらを使用することもできると思います。ヘッドフォン祭に来て日本の事情を見てみませんか、とは言っておきました。
ARM1のスピード感・鮮度感とHifi ETの堂々として端正な音再現を聴くと、DX100の高音質に驚いてたのも、もはや過去のものだなあと思います。高性能化と多様化が行われていますね。ARM1は今年の春くらい、MA9は昨年末くらいの製品なのでいま現在はもっと進んでいるかもしれません。HM801とかT51あるいはColorfly C4あたりがハイエンドDAPの第1世代だとすると、HM901やDX100は第2世代と言えるでしょう。さしずめARM1やMA9あたりは2.5世代と言えるかもしれませんが、iBassoやHiFimanといった大手以外の新規参入にも多様化が見られます。
ハイエンドDAPの進化も次の世代に来ているのかもしれません。
音質重視はどのブランドでもそういいますが、HiFi ETは下記に見るように徹底しています。
製品としては上位のMA9(約US$850)とその下のMA8(約US$500)があります。両方ともボード差し替えによるモジュール設計になっていてDACとアンプを別々に組み合わせることができます。標準仕様はMA9はDACボードにPCM1704x2とアンプボードはチャンネル毎にOPA627+BUF634x2という豪華版、MA8はDACボードにPCM1792とアンプボードはAD797とAD8397という組み合わせです。MA8は廉価版と言うより異なった性格と言った方が良さそうです。MA9は古き良きマルチビットDAC、MA8はより現代的なデルタシグマDACと使い分けられます。それがモジュール方式の利点ですね。パワースプリッタ不要の+/-独立デュアルバッテリーというこだわりも他にありません。
このHiFi ETのMA9単体とMA8のDACボードのみを購入しましたので以下レポートしていきます。ちなみにMAとはMonster Audioのことで初期のブランド名のようです。でも名は体を表し、まさにモンスターのような機器に仕上がっています。
HiFi ET MA9のメーカーホームページはこちらです。
http://en.hifi-et.com/ma9
1 MA9の特徴
MA9の他にない特徴はデュアルPCM1704とデュアルバッテリーというユニークな点です。またアンプ部は左右チャンネルでOPA627が採用されていて、バッファもPortaphileかよといいたくなるように一個のOPA627の後段にBUFF634が二個ずつついています。上から下まで徹底的にこだわって、理想的なポータブルオーディオを目指して設計されたというのがよくわかります。
MA9の特徴を以下にあげていきます。
1-1. デュアルDAC、PCM1704x2
マルチビット(R2R)DACの最高峰で、いまでも多くの人が至高のDACチップと認めるのがPCM1704です。
前にも書いたようにそもそもPCMというデジタルフォーマットはマルチビットDACでのデコードを前提としています。つまり一般的なPCM音源であればマルチビットDACで再生するのがもっとも自然な音再現が期待できるわけです。デルタシグマDACでデコードするならば変換で生じるアーチファクト(副産物)により人工的なテイストが乗ることが避けられません。
ただし多くのマルチビットDACが16bitどまりのようにマルチビットDACではビット幅を広げようとすると製造が難しく高価になります。そのためハイレゾ前提のADC/DACマーケット(24bitをマスターとするスタジオなど)では24bit幅を簡単に達成するためにデルタシグマDACが多くなってきたわけです。そして24bit対応するマルチビットDACの数少ない例外がこのPCM1704です。すでに製造中止されているPCM1704が、いくたの高級オーディオシステムで採用されているゆえんでもあります。
(ただしPCM1704はサインビットがあるので加減算に使う精度は実質23bit整数だから、厳密にいえばDACとしては23bitDACと言うようですが。)
(HiFi ETのホームページより転載)
とはいえ、PCM1704は古き良きめんどうなDACチップというか、最先端のES9023やWM8533のようにDACチップから直接2Vのラインレベルで電圧出力が手軽に取り出せるというわけではありません。基本的にDACチップとはデジタル信号をアナログの電流の強弱に変えるICです。しかしオーディオのアナログ領域では電圧変動が信号の変化を意味しますので、電流出力を電圧に変えるDACチップ後段のI/V変換が必要になります。特にPCM1704ではこの辺がうまくできていないと性能を十分に発揮できません。ES9023などではポンと置けばシンプルで手軽にDACを設計できますが、PCM1704ではそうはいきません。DACの性能はDACチップと周辺回路の総合力のようなものですが、さきに述べたような最先端のチップが周辺回路までワンチップ化して簡素化しているのに対して、古き良きDACチップでは複雑な周辺回路まで必要と言うわけです。総合力を得るためにはかさばるというのがポータブルでPCM1704を使用するネックです。
このMA9ではそのめんどくさいPCM1704をデュアルで使っているわけですので、ポータブルとしてはかなり挑戦的といえます。MA9ではI/V変換にもOPA627をおごり、LPFにも高性能ICを配しています。また1704の前段のデジタルフィルターには専用のDF1704を採用するなど、ポータブルながら万全の設計を施しています。PCM1704はNOSで使うこともできますが、こではDF1704を介して8倍オーバーサンプリング(768kHz)することで、音楽的でメロウというよりは自然で高性能と言う方向にPCM1704を生かそうとしているのが見て取れます。
AK120では普及クラスのWM8740をデュアルで使用することでトップクラスの音質を獲得したわけですから、PCM1704をデュアルで使うというのはハイエンドオーディオなみのぜいたくさと言えますね。
1-2. デュアルバッテリー、正負の別
デュアルバッテリーというのも他のDAPにはないMA9のユニークな特徴です。一般に電源は正負(+/-)2系統のパワーレールが必要になりますが普通電池は一個のみ入れますので、一個の電池の電圧を2分してそれぞれ正負の電源とします。しかしながらこれにはレールスプリッタと言う余分な回路が必要になりますので、理想的にはやはりパワーレール別に電源(バッテリー)を2個使用することです。これによって電圧を二分しなくてもよくなります。
しかしLRチャンネルを二個の電源で分けると言うのはたまにありますが、+/-を二個の電源でわけるというのはあまりないですね。MA9では8.4Vの電池の同じものを2個+/-別に使用しますので、昇圧などしなくても自然に16.8Vの十分な電圧振幅が確保できます。つまりMA9ではここでも「自然に、ピュアに」と電源品質にもこだわりをいれているわけです。
ただしこの方式は電池の片減りの問題があります。そこで、なんと液晶には+と-の両方の電池の減り具合が表示されます。これはほかにないのでちょっと面白いディスプレイのアクセントになっています。
電池の容量はそれぞれ1100mAhありますが、電池の持ちは公称8〜9時間とわりと一日持つくらいあります。実際には7時間くらいかなと思いますが、ARM1やPortaphile627とは違って、休日でも一日分はあるかと思います。
1-3. デュアルバッファ BUF634x2
いかに前段のDACの音質が高くとも、アンプ部分の品質が悪ければ総合的な良い音は得られません。
MA9のアンプボードは高品質で知られるOPA627を両チャンネル個別に用いて前段としています。それに定評あるバッファであるBUF634を2個使用して出力を高めています。627+634というのは高性能のOP+BUFと言われるアンプではよく使われますね。このデュアルバッファも音の制動力の高さによく効いています。
(HiFi ETのホームページより転載)
1-4. モジュール設計
HiFimanでもアンプカードの差し替えができますが、MA9ではさらに徹底したモジュール化が行われていて、DACボード、アンプボード、それとメインボード(コントローラ・ディスプレイ関連)の3つのパーツに分けられます。それと2個の電池とボディ外殻ですね。MA9の外観は箱形のシンプルなデザインですが、モジュール設計されたボードのコンテナと言う感じです。DACボード、アンプボードはMA9とMA8のものをそれぞれ互換的に使用ができます。これはHiFi ETに直接確かめました。開発元では一眼レフのレンズを交換できるように、と言っていますね。
ただ現実的にはHeadFiインプレを読むとMA8はPCM1792のDACは素晴らしいのですが、MA8のアンプボードはやはり普及価格にするためいまひとつということで、HiFiManとは逆にDAC交換がメインとなるでしょう。そのため、HIFi ETからMA8のDACボードも入手しました。将来的にはES9018ボードも計画されているようです。
またHIFi ETはロシアのディーラーとのむすびつきが強くて、ロシア製のバランスアンプボードが3rdパーティーとして用意されているようです($250くらい?)。ロシア製では後に述べるRockboxファームがあります。
ボードの積層は背面から外すので、背面からアンプボード、DACボード、メインボードの順です。
1-5 MA9のこだわり
こうしてみるとRとLのデュアルDAC、+と-の別のデュアルバッテリー、片チャンネルに634を2個投入と言うデュアルバッファと、いままでは妥協してひとつで賄っていたものを、本来あるべき2系統で、あるいはコンバーターを廃してピュアに、というこれでもかという徹底的なこだわりが見て取れます。
ポータブルでは電圧を上げるのに昇圧したりしますが、MA9では自然に16Vの電圧振幅が得られます。
こうしたいわゆる「ビュアリスト・アプローチ」と言うべきこだわりはシグナルパスに余分なものを入れないとか、シグナルパスを短く保つべき、というようなスピーカー系のハイエンドオーディオの世界でよく言われることです。
開発者は3名のオーディオファイルと紹介されていますが、ポータブルオーディオの世界ではコストやサイズ的な問題もあったものを妥協を廃して作ったのがMA9と言えるでしょう。
2. MA9の実際の使用感
到着すると一式は化粧箱に入っています。電源はそのままだとBだかCタイプの中国向けプラグなので変換アダプターが必要です。またはメガネタイプの電源ケーブルがあればベターです(私はこちら)。
MA9は金属製のボディでかなりがっちりと作られていてちっょとやそっとでは壊れないような作りです。重さは300gということですからDX100より重いのですがそれほど重いという感じではありません。胸ポケットにはギリギリ入るサイズで、厚みはあるけど横幅がやや狭めなのでOKという感じです。
バッチによるかもしれませんが私のものはブラックですが、少しグレーがかっています。
側面にはMicroSDのスロットがあります。32GBまでのようですが、FAT32ならもっといけるかもしれません。内蔵では8GBのメモリが入っています。USBポートはミニで充電も兼ねています。充電は専用のチャージャーを使用します。一般のUSB充電器からは充電できません。
反対側面にはアナログボリュームとラインアウト端子、そしてリセット穴があります。
アナログボリュームと書きましたが、実はMA9にはボリュームが二つ付いています。ひとつは側面のアナログボリュームともうひとつは再生中に十字キーの上下でデジタルボリュームが可変できます。MA9にはゲインがないので、高能率イヤフォンにはデジタルボリュームを下げることで調整ができるようです。ただ実際にはそうした必要性もそれほどないので、私はデジタルボリュームは常にMax(32)にしています。
操作は液晶と十字キーを組み合わせて行います。液晶はタッチではありません。また操作はとくにもたついたりすることはありません。
タグ情報はデータベースの再構築メニューから手動で行います。タグはパースできますが、なぜかUIにはアルバムとかアーチストの項がなく、「すべての楽曲」のみです。やはりユニークなのは液晶画面に電池の残量表示が2個あることで、それぞれ+と-の担当電池の減り具合です。どちらかがゼロになると使えなくなります(たいてい+の方)。
MA9のメニューキーはリピートやシャッフルの設定を行います。画面と楽曲は日本語表示が可能ですが、「再生」を「放送」と訳したり誤訳もあります。設定画面はデジタルフィルターの切り替えも可能です。SlowとSharpがあり、音色を微妙に描き分けられます。これはDF1704の機能のようです。
MA9/MA8両方ともDACはハイレゾ対応ですが、DAPチップ(Rockchip)ファームの制約によりハイレゾ再生はできないようです。ただしあとで書くようにRockboxが用意されていますので、それを使うことでハイレゾ対応可能なようです。
使っているとけっこう熱くなりますが、容積があるのかARM1ほどは熱くなりません。エージングは少し時間をかけたほうがよいタイプ。噛めば噛むほど味が出るって感じですね。
またARM1と違ってUSB DACの機能もあります(PCM270x系なので48khzまで)。音も悪くはないですがSDカードからの再生の方が良いですね。
3. MA9の音質
JH13+TWagで聴いてみました。長短のはっきりしていたARM1に比べるとニュートラルで総合的に良いのでヘッドフォン、イヤフォンはいろいろと合わせられるかもしれません。ただしハイエンドの機材を使用しないとMA9の良さは引き出せません。
まず感じるのはとてもニュートラルで正確性が高く、据え置きアンプ並みの堂々とした音質レベルの高さです。ポータブルであるという言い訳を感じさせません。ぱっと聴きに感じるのはベースの力強さと音の端正な美しさでしょう。
特に印象的なのはマルチビットDACという先入観から来る暖かみとか「音楽性」の着色がほとんどないという点です。おなじPCM1704を搭載したHM801とはここが大きく異なります。
PCM1704を前段のフィルターから後段のOP627やローパスフィルターに至るまで、音楽性というあいまいな要素ではなく、性能の高さと自然な再現力というはっきりした目標で設計されていると思います。パッと聴きはマルチビットというより現代DACのように聞こえるけど細部では硬くなく人工的なところもありません。はじめは硬めでさえあるけど、エージングで滑らかにほぐれてきます。
PCM1704はあくまで人工的ではない自然な音鳴りのために使われ、甘さや暖かみのために使われているわけではありません。設計者がHiFiという高い音楽再現性を目指しているのが分かります。
マルチビットDACを使って「真空管的な、音楽的な、」甘い音を作ろうとしてるのではなく、あくまで開発者の狙いは高忠実性のHiFi再現であり、マルチビットは自然な音再生のためにすぎないという目的に貫かれてると思います。
録音の違いは明確に現れ、「甘さ」で隠してはくれません。良録音に福音をもたらす音ですね。
細かな点で聴いていくと、制動力とインパクトがかなり強力です。これはDAC部分だけではなく、アンプ部分も強力であるということを示しています。47研のように電源の強力なアンプを思わせます。
スピードや切れ味と言う点でも悪くないですが、ARM1ほどスピードテンポの良さや鮮度感はないように思えます。これも大方の外付けポータブルアンプ以上だと思います(Portaphile627とかごく一部は除く)。
声や楽器の細かな再現性はマルチビットらしくとても滑らかでシルクのようです。このひとつの音の再現力がMA9の長所の一つです。楽器音が脚色なく端正で美しいですね。ここがポイントなのですが、いわゆる美音のように脚色して美しく聴かせるというのではなく、ただ純粋にピュアだからゆえの美しさです。
繊細なクラシックの器楽曲では感動的な響きの良さが感じられます。アコギのトレモロを聴いても音鳴りはリアルであり人工的な色が少なく自然に感じられます。
また細やかな彫の深さを感じさせる音像イメージングもMA9のポイントです。音像イメージングが見事で音像の浮かび上がり方が立体的で独特です。ここはデュアルDACが生きていると思います。
ただし音像はピンポイントですが、音場がいまひとつ狭いのがMA9のもうひとつなところではあります。
周波数特性では高い方もきちんとレスポンスがあって明瞭です。高域のベンチマークのベルの音も綺麗で淀みがありません。ベルの音の鳴りの良さではポータブルオーディオ機器でもでも一・二を争うでしょう。硬すぎず強すぎませんし、上で書いたように音色は脚色なく、歪みが少ないのできれいという感覚です。
MA9では低域のインパクトの良質さ・力強さもさることながら、中高音域の鮮明さも特筆ものです。音がきちんとタイトに締まっています。またベースが重いって感覚がきちんとあり、密度感を感じるベースの重いインパクトとレスポンスと制動力が印象的です。やはり電源が強力なせいか力強いインパクトがあり、音の切れと制動力も高い。ロックも迫力ありパワフルに聞こえます。
iBassoのDX100と比べるとサイズでは似たようなものですがMA9の方がなんとか胸ポケットに入る長細い形ではあります。
JH13+TWagでMA9とiBassoのDX100と比べるとDX100もすばらしい再現性ですが、やはりMA9が音の純度・端正さという点で一レベル上回ります。またMA9の方が贅肉はさらに少なく引き締まった感じです。ものすごく細かい音の抽出はさずがES9018のDX100の方が明瞭な細やかさを感じますが、音の再現自体はやはりMA9の方が歪み感すくなく端正な感じです。ベースはDX100は量感はありますが少し音がゆるめです。MA9はやはりベースはタイトです。ヴォーカルはMA9の方がかなり魅力的です。スムーズで明瞭感もあります。総じていうと性能という点ではDX100が低いとは言えませんが、MA9の方が音楽再生という点でより上質感を感じさせます。
やはりES9018 vs PCM1704的なところはありますが、DX100は長所をのばすために透明感やアンプ部分などもう少し全体にがんばってほしいという点もあります(あるいは現代DAC vs マルチビットDACと置き換えても良いかも)。MA9はPCM1704の良さを出しきったというところでしょうか。
MA9の音についてまとめると、まずひとつひとつの音の鳴り方の品質というものがすごく高いということです。おそらく聴いたDAPの中ではトップクラスでホームアンプ+普通のDACでもここまでだせるかどうか。真空管の(良い意味で)歪みで作られた甘い美音と言うものではなく、歪みや音質的な瑕疵を極限に排除して音が美しい感じですね。ベースの力強さもパラメーターをちょっといじって盛られたというものではなく、バッファとか電源的なものとか基本的な性能の高さを感じさせます。
良くいいますが、ミュージックライブラリを聴き直したくなるような上質感が楽しめますね。良録音で楽器の音が上手に入ったクラシックがよく合いますが、ポップロックでもノリが良くタイトで小気味良いインパクト感を楽しめます。
ホームオーディオ的な堂々とした余裕が感じられます。いろいろデュアルDAC、デュアルBUF634、デュアルバッテリーと書いてきましたが、やはりそれなりの物量投下しなければ達成できない玄人好みの音質の高さが感じられます。基本的な能力を磨いた結果ともいえます。基本的というのは、ノイズがまざってはいけない、左右チャンネルは別に処理しなければいけない、電源はクリーンで強力でなくてはならない、と言ったオーディオの基本則を妥協なく守ったことですね。ただ音場が狭いのがちょっと難点で、豊かさがちょっと箱庭的に感じられます。
MA9を使っているとマルチビットDACと現代デルタシグマ(あるいはハイブリッド)DACの違いというのも考えさせられます。
* MA8
MA8はMA9の廉価版でもあり、DACにPCM1792(シングル)を採用したモデルでもあります。DACのPCM1792はスペックでは1704より上であると思いますが、アンプボードが廉価版としてAD797+AD8397に変更されているため、DACは良いけどアンプがよくないということになっているようです。そこでMA8のDACボードのみを購入しました(直でHiFi ETからゆずってもらいました)。
MA8のDACボードをMA9に装着するというのはまた次の機会にしたいと思います。
* Rockbox
MA8/9は標準のファームウエアではハイレゾ音源に対応していないようですが、Rockboxが公開されていて公式ページにもダウンロードリンクがあります。Rockboxを使えばハイレゾ対応もできるようです。
MA9/MA8はロシアで人気があるようでこのRockboxもロシア系のようですが、このほかにもバランス出力アンプボードなどが売られているようです。
* まとめ
音の一つ一つの上質な再現力はハイエンドDAP随一だと思います。また低域の充実に見られる腰の強さと基本性能の高さはこだわり設計の反映なのでしょう。
ただ、くっきりはっきりのようなSN感は現代DACにゆずるところもあって、箱庭的な美しさでややこじんまりしてるところがあります。ここまで設計が徹底してるとすべてに卓越したDACチップなどないとかえってよくわかります。その点でPCM1792と変えられるモジュール設計は利点だと思います。
購入はHifi ETに直接コンタクトしてみると、はじめは直接コンシューマーには売れないということでTaoBaoのリンクを紹介されたのですが、TaoBaoは中国語わからないと買えないなあ。。とこぼしたところ親切にも直接売ってもらえ、さらにMA8のDACボードもパーツとして売ってもらえました。Hifi ETに感謝です。全般に対応がとても親切で、メール返答も速かったですね。
日本に代理店はありませんが、探してみると輸入販売しているところはありますのでそちらを使用することもできると思います。ヘッドフォン祭に来て日本の事情を見てみませんか、とは言っておきました。
ARM1のスピード感・鮮度感とHifi ETの堂々として端正な音再現を聴くと、DX100の高音質に驚いてたのも、もはや過去のものだなあと思います。高性能化と多様化が行われていますね。ARM1は今年の春くらい、MA9は昨年末くらいの製品なのでいま現在はもっと進んでいるかもしれません。HM801とかT51あるいはColorfly C4あたりがハイエンドDAPの第1世代だとすると、HM901やDX100は第2世代と言えるでしょう。さしずめARM1やMA9あたりは2.5世代と言えるかもしれませんが、iBassoやHiFimanといった大手以外の新規参入にも多様化が見られます。
ハイエンドDAPの進化も次の世代に来ているのかもしれません。
2013年09月03日
薄型デザインの高音質ハイエンドDAP、Acoustic Research M1(ARM1)レビュー
最近ではメジャーなiPodやWalkmanの他に、マニアック・オーディオ志向のハイエンド高音質DAPもずいぶんと出てきました。国内で手に入るAK100/120、HM901、DX100/RD1、Tera Player、Colorfly C4/CK4などが良く知られていると思います。
しかしまだまだ日本にはあまり入っていないものもあります。たとえば、国内でもそのうち出るかもしれないFiio X3やiBass DX50から、xDuoo X3やX1、QLS 350とQLSみたいなiHiFi960/812/760、HiFi ET MA8/MA9などなど。そしてこのAcoustic Research M1(以降ARM1)もそのひとつです。
Acoustic Researchは50年代創業の米国の老舗スピーカーオーディオメーカーです。ただしいまはブランドが別の会社に所持されているようです(Voxx InternationalというOEM電気メーカー)。またAcoustic Researchブランドでは以前LyraというコンパクトMP3プレーヤーも出しているので、DAPはこれがはじめてではありません。
下記Acoustic ResearchホームページにARM1の記載があります。
http://www.acoustic-research.com/search/?ks=ARM1
1. ARM1とは
ARM1の特徴は薄型でスリムな金属製の魅力的な筺体に、TIフラッグシップのDACチップであるPCM1794を採用して、アンプ部にも高性能ヘッドフォンアンプICであるところのTPA6102A2を採用するなど、デザインと音質にこだわった本格的なハイエンドDAPです。iPod Classicと比べても少し厚いだけというスリムさで、DX100、HM801/901といったあたりとはかなり異なります。シャツのポケットにするっとはいりますし、デザインも質感が良くなかなか優れたものがあります。
一方で欠点を上げると、電池での持続時間がわずか4時間(もっと少ないかも)、メモリーは32GB固定(拡張外部SDスロットなし)、値段が約US$900程度とかなり高い、など欠点も多くあります。この辺の極端な長所と短所の同居がARM1の特徴です。すごいDACとアンプを薄型ボディに採用するために潔くバッテリー時間を切り捨てると言うのはなかなかの決断です。この音質最優先と言う思い切りはある意味でPortaphile 627を思わせます。事実ARM1の音質は大変に優れています。
PCM1794は高性能据え置きDACでよく使われるPCM1792と兄弟で、その違いは設定方法がハードかシリアルかの違いなので性能は同じです。ちなみに他ではHiFi ET MA8がPCM1792を使用しています。
ボリュームはデジタルではなく、アルプスのアナログボリュームが採用されているのもポイントでしょう。TPA6102は国産メーカー製ポータブルアンプでも使われている高性能のヘッドフォンアンプ(バッファ)ICで、TPA6102A2は低電圧版のようです。TPA6102A2の前段オペアンプはOPA2134です。全体にTIのかっちり系のICでまとめた感じでしょうか。後で書きますが、この辺も音質傾向に影響していると思います。
こうしてPCM1794、TPA6102A2、アルプスのボリュームなどかなりマニアックで高級パーツが抑えられているわけです。また基盤はきちんとアナログ部とデジタル部を分けた設計がなされています。
このような本格オーディオ仕様の中身をコンパクトで高級感あふれるデザインの金属ボディでくるんだのがARM1です。外見はデザイン優先の軟派なDAPにも見えるかもしれませんが、しゃれたボディに大きく開けられた放熱孔が良い味を出しています。カッコ良いスマートなスポーツカーに大きなラジエーターグリルが取り合わせてあるイメージで、古い言葉の「羊の皮をかぶったオオカミ」を思いだしますね。実際に使っているとけっこう熱くなり、まじめに仕事しているのがわかります。
2. 開封と外観
箱は立派なものですが中身はそれほどではなく、ポーチとUSB充電一式くらいが入っているだけです。マニュアルもなしです。(ホームページからクイックリファレンスはダウンロード可能)
箱にはLyraとありますが、Lyraは以前もあったようなのでおそらくARM1の愛称と言うよりもAcoustic ReasearchのMP3プレーヤーブランド名を言っていると思います。
ARM1を実際に手に取ってみるとなかなかの高級感で精密感もあり、モノ的な魅力が十分にあります。この手のハイエンドDAPにはモノ的な魅力も大切ですね。重さはAK120と同じ(約150g)のはずですが見た目のメタルボディのせいか、かなり密度感のあるずっしりとした感じがあります。大きさはiPod Clasicよりやや厚い程度でこの手のDAPとしてかなりスリムです。
背面のチェックのヘアライン加工もなかなか良いですね。細かいところではゲインのLow Highの表示など本体の印字もぱっとみると無いように見えますが、よく目を近付けると印刷があるというような細かいデザインにも凝っています。いままでハイエンドDAPではなかったようなB&Oなみのこだわりですね。
上部にはパワーボタン、ゲイン切り替え、ボリュームがあります。ボリュームはアナログのアルプス製です。ロータリーダイヤルはとても操作が楽です。側面にはキーロックボタンがあります。
底面にはヘッドフォン端子、USB(ミニB)、ラインアウト端子があります。USBは充電とデータ転送のみでUSB DACとしては使えません。
正面にはiPod風のコントロールキーがありますが、二列に分かれていて、外側がMENU、スキップ・早送り、巻き戻し、バックボタンです。MENUはトップに戻るのではなくコンテキストメニューのようなオプション呼び出しに使います。たとえば曲の再生中であればMENUを押すとノーマル再生、リピート再生、シャッフル、ランダムが選べます(シャッフルとランダムの違いはよくわかりません)。真ん中の再生ボタンを押すことで選択オプションが順にかわります(十字キーで上下ではありません)。これはトップメニューでもそうですが、ARM1のUIのルールです。
バックボタンは一般的な階層の戻りで、トップ画面に戻るときはパックを使います。真中のボタンが再生と選択です。内側のリングはメニュー画面にいるときの十字キーとして働きます。
画面はOLEDだと思いますが、発色もかなりきれいですね。アルバムアートもわざと左半分のみ表示して右はフェードして黒バックのままというのもデザイン的に洗練されています。外観ともども見せるDAPということがよく考えられています。
トップ画面は再生中、音楽ライブラリ、設定の大きく3つに分かれていて、音楽ライブラリではタグをもとにアーティストや曲名で検束できます。またフォルダ階層でもたどることができます。
設定ではDACのフィルター切り替えのようなあまり細かいマニアックな項目はありません。言語では日本語が選べるのが面白いところ。ただ途中で文字が切れちゃってなんのエラーかわからないという未完成なところはあります。新曲を追加した時のデータベースの再構築は自動でのみ行われます。日本語の曲名も表示可能です。
対応楽曲フォーマットはWAV, FLAC,APE, MP3, WMA, OGGです。残念ながらALACはないですね。AIFFもだめです。
またハイレゾ音源が再生できないようです。これは仕様なのかアップデートで対応できるのかはまだわかりません(サポートに問い合わせ中)。ちなみにiHiFI系やMA8/MA9も標準ではDAPコントローラのRockchipの制約でハイレゾ対応はできません。
Androidではなく独自(か汎用DAP)ファームなので操作はサクサク動きます。曲が多いとちょっと時間がかかりますが動作時間ではなく、なにかウエイトを入れてるように思います。
32GBというところがネックですがerj.netあたりには開腹画像が乗っていて、MicroSDがソケットにさしてあるだけなので開腹すれば交換は可能かもしれません。ただ持ってる曲すべてなどは入りませんが、32GBでも良く聞くアルバムを選択していけばけっこうFLACで入りますので特にそこまでは、という感じではあります。MP3などで聴くのはARM1はちょっともったいないと思います。
3. 音質インプレッション
ARM1の音質は端的に言って大変すばらしく、十分価格に見合うDAPトップクラスの音質です。また他のハイエンドDAPをも凌駕する面も見せてくれます。まず透明感がとても高く、平面的な音再現ではなく全体のメリハリが明瞭ではっきりしています。そしてダイナミックでハイスピードな音で、元気さが感じられます。また性能面だけではなく音楽性も感じられるまとまりの良さをも兼ね備えています。
音質のレベルはDX100、AK120(100ではなく)あたりと競い合うレベルです。だてにTIフラッグシップのPCM1794やTPA6102を使っているわけではありませんね。ARM1のコンパクトさを考えると驚きます。
以下もう少し詳細に聴いていきます。これはJH13 + TWag(v1)で聞いたインプレです。味付けの少ないAK120などだとイヤフォンは好みで好きなものを使って、と言う感じですが、個性的なARM1は性能を引き出すイヤフォン(とケーブル)を選んで使った方が良いと思います。
まずはじめに感じるのは透明感の高さで、極めてクリアで見通しが良く、背景も黒いので音空間にも深みがあります。高感度カスタムIEMでも背景ノイズはほとんどありません。楽器音などの音像はシャープで解像度も高いんですが、ES9018みたいな細身で高精細というよりは芯ががっちりしている印象です。高感度IEMでもクリアでSN感が高く、ベルの音もキーンと淀みなくきれいに磨かれて響きが歪みなく感じられます。この辺は他のハイエンドDAPより優れているように思います。そしてきれいに磨かれたようなゆがみの少ない楽器の音のひとつひとつがくっきりと漆黒の背景に明瞭で鮮やかに浮かび上がってきます。これが立体感にもプラスして、音場の広さとともに三次元的な空間再現にも寄与しています。
次に感じるのは音が速くキレが良いことです。音の立ち上がりと立下りが急峻です。これは他のハイエンドDAPと比べても際立って優れています。パーカッションのアタックやインパクト、ギターのピッキング、ベースのピチカート、すべてが気持ちよく切れます。ポータブルというよりもPCオーディオレベルのトランジェントと制動力を持っていますね。ヘルゲリエンとかHandsのような曲を聞いても圧倒されます。スピード感もあり、のっぺりとはしていないダイナミックな音楽再生が楽しめます。
興味深いのはAK100だとアンプつけて音質が劣化することはまずないんですが、ARM1ではラインアウトをポータブルアンプに接続して試してみると、逆にギターのピッキングでキレが悪くなったり音像のエッジが甘くなったりするので、ARM1のアンプ部の力とDACアンプ一体型のメリットを感じます。実際にラインアウト経由で超高性能のPortaphile627につないでみましたが、アンプを付けるとかえって音が鈍くなり切れの良さとスピードが失われてしまいます。(もちろん厚みとか豊かさのような点では向上しますが)
まさにDAC+アンプ一体型の新世界という感じで、外部ポータブルアンプなしで完成された音の世界があります。PCM1794クラスのDACとTPA6102を使用した据え置き一体型DACアンプはいろいろあると思いますが、こんなショートシグナルパスで実装してるのは他にないでしょうね。PCM1794がイヤフォンに直結という感じです。
音の印象はポータブル系というよりは、例えていうとバーソンのヘッドフォンアンプに似ていると思います。バーソンでもSoloistよりHA160DのDAC使用した場合の音を思い出しました。
帯域的にはかなりワイドレンジで高音域は透き通るようにクリアで伸びやか、低域はベースのインパクトがタップリあります。かなり下の低域のレスポンスもよいですね。ただしバーンインしていないと高音域はイヤフォンによってはややきつく感じるかもしれません。音の広がりや立体感もさきほど書いたように重なりが鮮明で奥行きがよく見えるようです。
また、ARM1で面白いのはここまで書いたように性能系とおもいきや、意外と音楽性が良いことです。音調はドライではなくむしろ音楽的です。音楽的なアンプと言うと暖かみ・ウォーム感があって柔らかいものが連想されますが、ARM1はわりと硬派でいて無機質な音楽再生には陥っていません。中音域は滑らかでヴォーカルも良いし、ノリの良いリズム感は抜群です。ただし音楽性と言うことから連想する厚みや暖かさ、豊かさは物足りない面もあります。
もちろん全般的な回路設計もありますが、1794+2134+6102という組み合わせは正解のように思えますね。1704+627のような典型的な「音楽性」DAPではありませんが、別な意味でICのキャラクターがうまく効いてる感じはあります。性能系と音楽性の両立ができるのは設計のバランス感覚が良いからでしょうね。
HeadFiでよく尋ねられるDX100との比較で言うと、ARM1をDX100と同じ曲で同じJH13で比較すると数曲どのジャンルで聴いてもARM1の方がより明瞭感があり、音の輪郭がくっきりと鮮明です。DX100は少し鈍く甘く感じられます。ARM1の方がSNの高さなど音質的にはより優れていると感じられます。もちろん音の個性的にも異なるので好みの問題があるとは思います。
またARM1の方がはるかに薄いのですが。操作性はARM1の方がずっとサクサクです。
音楽ジャンルで言うとロックポップ・ジャズはスピード感とインパクトがあって気持ちよくかっこ良く再生します。クラシックでも解像度が高く洗練された音再現が楽しめます。また空間表現力も高いのでオーケストラのスケール感もけっこうありますね。
ノリの良さではよく上原ひろみのVoiceをテストに聴くんですが、ARM1での再生はインパクトフルでスピード感があり電車の中でもついリズムを取ってしまいます。オーケストラ曲では現代作家ペルトの交響曲三番ではペルトらしい独特の静謐さを透明感がいかし、音の芯の強さで荘厳さを感動的に盛り上げてくれます。
イヤフォンはさきに書いたようにJH13+Twagが音のスピードを引き出して音像を明確にするのにベストだと思いました。またFitEar togo 334+Twagなんかもよいですね。Heir Tzar90+Magnus1なんかもロックに良いです。スピード感と明瞭感と言う点からケーブルは銀線が良いと思いますが、バーンインしてないとややきつめに出ます。TWagが良いのは高音域がきつすぎないからで、ARM1の使いこなしのポイントはきつすぎない銀線をイヤフォンケーブルに使うことかと思います。またイヤフォン・ヘッドフォンもトランジェントが良い系がお勧めです。
一方でJH16のようなJH13と似たキャラクターでより音楽性が高く柔らかいものを合わせるのも、ARM1の音楽性を引き出すのに向いています。ただJH13で聴いたようなARM1らしい"マジック"を失う感もありますね。JH13のFreqphase版がほしいかも。音楽性もよいことから、あえて銅線+JH16でも良いかもしれませんが、このJH13+TWag+ARM1のいままでのDAPにないような音世界を味わうと変えづらいですね。
イヤフォンとケーブルをうまく選ぶとARM1はPCM1794の力を開放して、他のハイエンドDAPにないような音の世界を作り出してくれるでしょう。
4. 使用インプレッション
使ってるとどんどん電池メーターが減って行くのでドキドキしたりします。もしかするとエンコードによるかもしれませんが、FLAC主体だと3時間半から4時間くらいしか持たないような気がします。(FLAC連続再生で実測してほぼ3時間45分くらいでした)。自分で買っておいて言うのもなんですが、これよく製品にしたと思いますね。
ずっと以前の8年くらい前にHeadroom MicroDACを入手して3段重ねをやってた時があるんですが(iHP140-MicroDAC-SR71)、その時もMicroDACは2時間くらいしか電池駆動できませんでした。それをちょっと思い出しました。(下記リンクです)
http://vaiopocket.seesaa.net/article/6510135.html
ただPortaphile627も4時間しか持たないけど通勤の行き来には不自由しないし、ARM1はUSB充電なのでiPhoneなどのためのUSB外部バッテリーで充電できます。SONYのCP-2LAではOKでした。ただ旧製品のCP-2Lで試したところうまく給電できなかったので相性はあるかもしれません。CP-2LAではMode1で可能でした。この辺の「空中給油」が外では役に立ちます。
PCのUSB端子に接続すると自動的に転送モードになり、同時に充電がなされます。PCから充電しているときは自動的に接続モードになるので充電同時再生はできませんが、PCではなく添付のアダプターからなら充電中の再生はできます。ただかなり熱くなるので充電中の再生は避けた方が良さそうです。
操作・コントローラはわりと安定していると思います。ただ熱を持ちすぎるとセンサーがあるのか電源が切れることがあります。
使っていると結構熱くなりますが一部のアンプのようにもてないほどは熱くならないのは大きな放熱孔が効いて熱がこもらないおかげかもしれません。ただし囲われていると熱を持つようです。夏はかばんの中に入れておくよりも、ポケットに入れておいた方がよいかもしれません。まあまじめに増幅仕事をしているなと言う感じです。
ただポップノイズがイヤフォンさしたり、再生をリジュームするときに出るのはちょっといただけません。
ARM1はラインアウト端子が専用についているのでポータブルアンプのシステムでも活かせます。AK100/120とは異なってきちんとしたラインアウトが装備されていて、底面にあるのでアンプと合わせやすいとはいえます。ただ面白いのは先に音質のところで書いたようなポータブルアンプを付加する功罪です。
iQubeにラインアウト経由で付けると音の空間再現性があがり、全体に厚みが少し増します。単体だとやや軽めに感じられます。半面でアンプ付加によりややクリアさが減退します。
さきに書いたようにPortaphileなどはかなり顕著で、厚みや滑らかさの向上と、スピード感や切れ味の減少とのトレードオフで組み合わせることになるでしょう。まあPortaphileと組み合わせると電池の持ちが両方4-5時間と言うショートライフコンビでちょうど良いとはいえますが。
各DAPとの大きさ比較は以下の通りです。
iPod ClassicとARM1
AK120とARM1
DX100とARM1
5. ARM1とは
ARM1は現在の中国中心の流通や一部の中国製DAPらしい特徴を考慮するとおそらく中国メーカーの開発だと思います。Acoustic Researchはおそらくブランド名だけなのでしょう。
私の購入先は香港のMingoです。海外送料がわからなかったこともあり直で英語でメールして、これをPaypalで売ってくれと交渉して取り寄せてもらっています。はじめてMingoを使いましたが、メールのやりとりからここはわりと信頼できると思います(別にeBayにもあります)。米国で流通しているとはあまり聞いたことがありません。検索するとわかりますが、レビューもほとんど中国国内で、インプレなどは翻訳サイト経由で読みました。むこうでも「試聴したら買って帰らざるをえなくなった」というくらい音については高評価ではあります。
ちなみに支払ったのはMingoで送料込みで6748HKDです(おおよそUS$900)。このへんにMusicToGo本の売り上げ=あやしいものレビュー増える、の成果が出ております。
上に書いたようにARM1のプロダクト記載はAcoustic Researchの公式ホームページ内にありますが、Voxx自体は米国なので中国メーカーへのOEMかもしれません。ただ海外展開と言うのも用意されているようには思えないのは不思議です。ARM1のようにかっこよくて音は素晴らしいけど電池は4時間しか持たない、というニッチな製品が売れる市場が中国国内に形成されているというのも注目点ですね。
まとめるとARM1はデザイン的にも洗練されて細部まで凝っています。音は素晴らしく長短はありますが他のトップクラスのハイエンドDAPにも引けを取らないでしょう。ただし電池はわずかしか持たずに、メモリも拡張性はありません。価格も高価です。マイナーな点ではTera Playerに似ているかもしれませんが、もっと長短がはっきりしています。Tera Playerのときに人によって興味のあるなしが極端に分かれると書きましたが、そこはARM1も同じです。
ARM1を一般にお勧めするかと言うと、一般的にはコンパクト高性能DAPとしてはAK120をお勧めします。AK120が音質・サイズ・電池の持ち・メモリ拡張性・国内サポートと優等生的なバランスを実現しているのに対すると、ARM1はいかにも長所と短所がはっきりしている天才肌の不良生徒の印象です。
近所に文句のないまじめな優等生の幼馴染がいながら、なぜかチョイ不良だけどきらっと光るものがあるカッコいい転校生に惹かれる乙女、という少女マンガチックな感じで感性がピンと来た人にはARM1をお勧めします。
JH13でARM1を聴くと普通のデザイン重視のスリムなDAPに見えて、一般的なDAPとはクラスが違う音再現の高さにはうならされます。
他のトップクラスのハイエンドDAPをも凌駕するようなこの鮮明でキレの良い音を聴くとコンパクトゆえにシンプルに鮮度よく、フラッグシップDACであるPCM1794の高音質をストレートに伝えていると感じます。電池持続がわずか4時間と引き換えに美しいスリムデザインと他にない音質の高さを実現しているわけです。
なにかを得ることができるものは、なにかを捨てることができるもの、というどこかの言葉を思い起こさせてくれるのがARM1です。
しかしまだまだ日本にはあまり入っていないものもあります。たとえば、国内でもそのうち出るかもしれないFiio X3やiBass DX50から、xDuoo X3やX1、QLS 350とQLSみたいなiHiFi960/812/760、HiFi ET MA8/MA9などなど。そしてこのAcoustic Research M1(以降ARM1)もそのひとつです。
Acoustic Researchは50年代創業の米国の老舗スピーカーオーディオメーカーです。ただしいまはブランドが別の会社に所持されているようです(Voxx InternationalというOEM電気メーカー)。またAcoustic Researchブランドでは以前LyraというコンパクトMP3プレーヤーも出しているので、DAPはこれがはじめてではありません。
下記Acoustic ResearchホームページにARM1の記載があります。
http://www.acoustic-research.com/search/?ks=ARM1
1. ARM1とは
ARM1の特徴は薄型でスリムな金属製の魅力的な筺体に、TIフラッグシップのDACチップであるPCM1794を採用して、アンプ部にも高性能ヘッドフォンアンプICであるところのTPA6102A2を採用するなど、デザインと音質にこだわった本格的なハイエンドDAPです。iPod Classicと比べても少し厚いだけというスリムさで、DX100、HM801/901といったあたりとはかなり異なります。シャツのポケットにするっとはいりますし、デザインも質感が良くなかなか優れたものがあります。
一方で欠点を上げると、電池での持続時間がわずか4時間(もっと少ないかも)、メモリーは32GB固定(拡張外部SDスロットなし)、値段が約US$900程度とかなり高い、など欠点も多くあります。この辺の極端な長所と短所の同居がARM1の特徴です。すごいDACとアンプを薄型ボディに採用するために潔くバッテリー時間を切り捨てると言うのはなかなかの決断です。この音質最優先と言う思い切りはある意味でPortaphile 627を思わせます。事実ARM1の音質は大変に優れています。
PCM1794は高性能据え置きDACでよく使われるPCM1792と兄弟で、その違いは設定方法がハードかシリアルかの違いなので性能は同じです。ちなみに他ではHiFi ET MA8がPCM1792を使用しています。
ボリュームはデジタルではなく、アルプスのアナログボリュームが採用されているのもポイントでしょう。TPA6102は国産メーカー製ポータブルアンプでも使われている高性能のヘッドフォンアンプ(バッファ)ICで、TPA6102A2は低電圧版のようです。TPA6102A2の前段オペアンプはOPA2134です。全体にTIのかっちり系のICでまとめた感じでしょうか。後で書きますが、この辺も音質傾向に影響していると思います。
こうしてPCM1794、TPA6102A2、アルプスのボリュームなどかなりマニアックで高級パーツが抑えられているわけです。また基盤はきちんとアナログ部とデジタル部を分けた設計がなされています。
このような本格オーディオ仕様の中身をコンパクトで高級感あふれるデザインの金属ボディでくるんだのがARM1です。外見はデザイン優先の軟派なDAPにも見えるかもしれませんが、しゃれたボディに大きく開けられた放熱孔が良い味を出しています。カッコ良いスマートなスポーツカーに大きなラジエーターグリルが取り合わせてあるイメージで、古い言葉の「羊の皮をかぶったオオカミ」を思いだしますね。実際に使っているとけっこう熱くなり、まじめに仕事しているのがわかります。
2. 開封と外観
箱は立派なものですが中身はそれほどではなく、ポーチとUSB充電一式くらいが入っているだけです。マニュアルもなしです。(ホームページからクイックリファレンスはダウンロード可能)
箱にはLyraとありますが、Lyraは以前もあったようなのでおそらくARM1の愛称と言うよりもAcoustic ReasearchのMP3プレーヤーブランド名を言っていると思います。
ARM1を実際に手に取ってみるとなかなかの高級感で精密感もあり、モノ的な魅力が十分にあります。この手のハイエンドDAPにはモノ的な魅力も大切ですね。重さはAK120と同じ(約150g)のはずですが見た目のメタルボディのせいか、かなり密度感のあるずっしりとした感じがあります。大きさはiPod Clasicよりやや厚い程度でこの手のDAPとしてかなりスリムです。
背面のチェックのヘアライン加工もなかなか良いですね。細かいところではゲインのLow Highの表示など本体の印字もぱっとみると無いように見えますが、よく目を近付けると印刷があるというような細かいデザインにも凝っています。いままでハイエンドDAPではなかったようなB&Oなみのこだわりですね。
上部にはパワーボタン、ゲイン切り替え、ボリュームがあります。ボリュームはアナログのアルプス製です。ロータリーダイヤルはとても操作が楽です。側面にはキーロックボタンがあります。
底面にはヘッドフォン端子、USB(ミニB)、ラインアウト端子があります。USBは充電とデータ転送のみでUSB DACとしては使えません。
正面にはiPod風のコントロールキーがありますが、二列に分かれていて、外側がMENU、スキップ・早送り、巻き戻し、バックボタンです。MENUはトップに戻るのではなくコンテキストメニューのようなオプション呼び出しに使います。たとえば曲の再生中であればMENUを押すとノーマル再生、リピート再生、シャッフル、ランダムが選べます(シャッフルとランダムの違いはよくわかりません)。真ん中の再生ボタンを押すことで選択オプションが順にかわります(十字キーで上下ではありません)。これはトップメニューでもそうですが、ARM1のUIのルールです。
バックボタンは一般的な階層の戻りで、トップ画面に戻るときはパックを使います。真中のボタンが再生と選択です。内側のリングはメニュー画面にいるときの十字キーとして働きます。
画面はOLEDだと思いますが、発色もかなりきれいですね。アルバムアートもわざと左半分のみ表示して右はフェードして黒バックのままというのもデザイン的に洗練されています。外観ともども見せるDAPということがよく考えられています。
トップ画面は再生中、音楽ライブラリ、設定の大きく3つに分かれていて、音楽ライブラリではタグをもとにアーティストや曲名で検束できます。またフォルダ階層でもたどることができます。
設定ではDACのフィルター切り替えのようなあまり細かいマニアックな項目はありません。言語では日本語が選べるのが面白いところ。ただ途中で文字が切れちゃってなんのエラーかわからないという未完成なところはあります。新曲を追加した時のデータベースの再構築は自動でのみ行われます。日本語の曲名も表示可能です。
対応楽曲フォーマットはWAV, FLAC,APE, MP3, WMA, OGGです。残念ながらALACはないですね。AIFFもだめです。
またハイレゾ音源が再生できないようです。これは仕様なのかアップデートで対応できるのかはまだわかりません(サポートに問い合わせ中)。ちなみにiHiFI系やMA8/MA9も標準ではDAPコントローラのRockchipの制約でハイレゾ対応はできません。
Androidではなく独自(か汎用DAP)ファームなので操作はサクサク動きます。曲が多いとちょっと時間がかかりますが動作時間ではなく、なにかウエイトを入れてるように思います。
32GBというところがネックですがerj.netあたりには開腹画像が乗っていて、MicroSDがソケットにさしてあるだけなので開腹すれば交換は可能かもしれません。ただ持ってる曲すべてなどは入りませんが、32GBでも良く聞くアルバムを選択していけばけっこうFLACで入りますので特にそこまでは、という感じではあります。MP3などで聴くのはARM1はちょっともったいないと思います。
3. 音質インプレッション
ARM1の音質は端的に言って大変すばらしく、十分価格に見合うDAPトップクラスの音質です。また他のハイエンドDAPをも凌駕する面も見せてくれます。まず透明感がとても高く、平面的な音再現ではなく全体のメリハリが明瞭ではっきりしています。そしてダイナミックでハイスピードな音で、元気さが感じられます。また性能面だけではなく音楽性も感じられるまとまりの良さをも兼ね備えています。
音質のレベルはDX100、AK120(100ではなく)あたりと競い合うレベルです。だてにTIフラッグシップのPCM1794やTPA6102を使っているわけではありませんね。ARM1のコンパクトさを考えると驚きます。
以下もう少し詳細に聴いていきます。これはJH13 + TWag(v1)で聞いたインプレです。味付けの少ないAK120などだとイヤフォンは好みで好きなものを使って、と言う感じですが、個性的なARM1は性能を引き出すイヤフォン(とケーブル)を選んで使った方が良いと思います。
まずはじめに感じるのは透明感の高さで、極めてクリアで見通しが良く、背景も黒いので音空間にも深みがあります。高感度カスタムIEMでも背景ノイズはほとんどありません。楽器音などの音像はシャープで解像度も高いんですが、ES9018みたいな細身で高精細というよりは芯ががっちりしている印象です。高感度IEMでもクリアでSN感が高く、ベルの音もキーンと淀みなくきれいに磨かれて響きが歪みなく感じられます。この辺は他のハイエンドDAPより優れているように思います。そしてきれいに磨かれたようなゆがみの少ない楽器の音のひとつひとつがくっきりと漆黒の背景に明瞭で鮮やかに浮かび上がってきます。これが立体感にもプラスして、音場の広さとともに三次元的な空間再現にも寄与しています。
次に感じるのは音が速くキレが良いことです。音の立ち上がりと立下りが急峻です。これは他のハイエンドDAPと比べても際立って優れています。パーカッションのアタックやインパクト、ギターのピッキング、ベースのピチカート、すべてが気持ちよく切れます。ポータブルというよりもPCオーディオレベルのトランジェントと制動力を持っていますね。ヘルゲリエンとかHandsのような曲を聞いても圧倒されます。スピード感もあり、のっぺりとはしていないダイナミックな音楽再生が楽しめます。
興味深いのはAK100だとアンプつけて音質が劣化することはまずないんですが、ARM1ではラインアウトをポータブルアンプに接続して試してみると、逆にギターのピッキングでキレが悪くなったり音像のエッジが甘くなったりするので、ARM1のアンプ部の力とDACアンプ一体型のメリットを感じます。実際にラインアウト経由で超高性能のPortaphile627につないでみましたが、アンプを付けるとかえって音が鈍くなり切れの良さとスピードが失われてしまいます。(もちろん厚みとか豊かさのような点では向上しますが)
まさにDAC+アンプ一体型の新世界という感じで、外部ポータブルアンプなしで完成された音の世界があります。PCM1794クラスのDACとTPA6102を使用した据え置き一体型DACアンプはいろいろあると思いますが、こんなショートシグナルパスで実装してるのは他にないでしょうね。PCM1794がイヤフォンに直結という感じです。
音の印象はポータブル系というよりは、例えていうとバーソンのヘッドフォンアンプに似ていると思います。バーソンでもSoloistよりHA160DのDAC使用した場合の音を思い出しました。
帯域的にはかなりワイドレンジで高音域は透き通るようにクリアで伸びやか、低域はベースのインパクトがタップリあります。かなり下の低域のレスポンスもよいですね。ただしバーンインしていないと高音域はイヤフォンによってはややきつく感じるかもしれません。音の広がりや立体感もさきほど書いたように重なりが鮮明で奥行きがよく見えるようです。
また、ARM1で面白いのはここまで書いたように性能系とおもいきや、意外と音楽性が良いことです。音調はドライではなくむしろ音楽的です。音楽的なアンプと言うと暖かみ・ウォーム感があって柔らかいものが連想されますが、ARM1はわりと硬派でいて無機質な音楽再生には陥っていません。中音域は滑らかでヴォーカルも良いし、ノリの良いリズム感は抜群です。ただし音楽性と言うことから連想する厚みや暖かさ、豊かさは物足りない面もあります。
もちろん全般的な回路設計もありますが、1794+2134+6102という組み合わせは正解のように思えますね。1704+627のような典型的な「音楽性」DAPではありませんが、別な意味でICのキャラクターがうまく効いてる感じはあります。性能系と音楽性の両立ができるのは設計のバランス感覚が良いからでしょうね。
HeadFiでよく尋ねられるDX100との比較で言うと、ARM1をDX100と同じ曲で同じJH13で比較すると数曲どのジャンルで聴いてもARM1の方がより明瞭感があり、音の輪郭がくっきりと鮮明です。DX100は少し鈍く甘く感じられます。ARM1の方がSNの高さなど音質的にはより優れていると感じられます。もちろん音の個性的にも異なるので好みの問題があるとは思います。
またARM1の方がはるかに薄いのですが。操作性はARM1の方がずっとサクサクです。
音楽ジャンルで言うとロックポップ・ジャズはスピード感とインパクトがあって気持ちよくかっこ良く再生します。クラシックでも解像度が高く洗練された音再現が楽しめます。また空間表現力も高いのでオーケストラのスケール感もけっこうありますね。
ノリの良さではよく上原ひろみのVoiceをテストに聴くんですが、ARM1での再生はインパクトフルでスピード感があり電車の中でもついリズムを取ってしまいます。オーケストラ曲では現代作家ペルトの交響曲三番ではペルトらしい独特の静謐さを透明感がいかし、音の芯の強さで荘厳さを感動的に盛り上げてくれます。
イヤフォンはさきに書いたようにJH13+Twagが音のスピードを引き出して音像を明確にするのにベストだと思いました。またFitEar togo 334+Twagなんかもよいですね。Heir Tzar90+Magnus1なんかもロックに良いです。スピード感と明瞭感と言う点からケーブルは銀線が良いと思いますが、バーンインしてないとややきつめに出ます。TWagが良いのは高音域がきつすぎないからで、ARM1の使いこなしのポイントはきつすぎない銀線をイヤフォンケーブルに使うことかと思います。またイヤフォン・ヘッドフォンもトランジェントが良い系がお勧めです。
一方でJH16のようなJH13と似たキャラクターでより音楽性が高く柔らかいものを合わせるのも、ARM1の音楽性を引き出すのに向いています。ただJH13で聴いたようなARM1らしい"マジック"を失う感もありますね。JH13のFreqphase版がほしいかも。音楽性もよいことから、あえて銅線+JH16でも良いかもしれませんが、このJH13+TWag+ARM1のいままでのDAPにないような音世界を味わうと変えづらいですね。
イヤフォンとケーブルをうまく選ぶとARM1はPCM1794の力を開放して、他のハイエンドDAPにないような音の世界を作り出してくれるでしょう。
4. 使用インプレッション
使ってるとどんどん電池メーターが減って行くのでドキドキしたりします。もしかするとエンコードによるかもしれませんが、FLAC主体だと3時間半から4時間くらいしか持たないような気がします。(FLAC連続再生で実測してほぼ3時間45分くらいでした)。自分で買っておいて言うのもなんですが、これよく製品にしたと思いますね。
ずっと以前の8年くらい前にHeadroom MicroDACを入手して3段重ねをやってた時があるんですが(iHP140-MicroDAC-SR71)、その時もMicroDACは2時間くらいしか電池駆動できませんでした。それをちょっと思い出しました。(下記リンクです)
http://vaiopocket.seesaa.net/article/6510135.html
ただPortaphile627も4時間しか持たないけど通勤の行き来には不自由しないし、ARM1はUSB充電なのでiPhoneなどのためのUSB外部バッテリーで充電できます。SONYのCP-2LAではOKでした。ただ旧製品のCP-2Lで試したところうまく給電できなかったので相性はあるかもしれません。CP-2LAではMode1で可能でした。この辺の「空中給油」が外では役に立ちます。
PCのUSB端子に接続すると自動的に転送モードになり、同時に充電がなされます。PCから充電しているときは自動的に接続モードになるので充電同時再生はできませんが、PCではなく添付のアダプターからなら充電中の再生はできます。ただかなり熱くなるので充電中の再生は避けた方が良さそうです。
操作・コントローラはわりと安定していると思います。ただ熱を持ちすぎるとセンサーがあるのか電源が切れることがあります。
使っていると結構熱くなりますが一部のアンプのようにもてないほどは熱くならないのは大きな放熱孔が効いて熱がこもらないおかげかもしれません。ただし囲われていると熱を持つようです。夏はかばんの中に入れておくよりも、ポケットに入れておいた方がよいかもしれません。まあまじめに増幅仕事をしているなと言う感じです。
ただポップノイズがイヤフォンさしたり、再生をリジュームするときに出るのはちょっといただけません。
ARM1はラインアウト端子が専用についているのでポータブルアンプのシステムでも活かせます。AK100/120とは異なってきちんとしたラインアウトが装備されていて、底面にあるのでアンプと合わせやすいとはいえます。ただ面白いのは先に音質のところで書いたようなポータブルアンプを付加する功罪です。
iQubeにラインアウト経由で付けると音の空間再現性があがり、全体に厚みが少し増します。単体だとやや軽めに感じられます。半面でアンプ付加によりややクリアさが減退します。
さきに書いたようにPortaphileなどはかなり顕著で、厚みや滑らかさの向上と、スピード感や切れ味の減少とのトレードオフで組み合わせることになるでしょう。まあPortaphileと組み合わせると電池の持ちが両方4-5時間と言うショートライフコンビでちょうど良いとはいえますが。
各DAPとの大きさ比較は以下の通りです。
iPod ClassicとARM1
AK120とARM1
DX100とARM1
5. ARM1とは
ARM1は現在の中国中心の流通や一部の中国製DAPらしい特徴を考慮するとおそらく中国メーカーの開発だと思います。Acoustic Researchはおそらくブランド名だけなのでしょう。
私の購入先は香港のMingoです。海外送料がわからなかったこともあり直で英語でメールして、これをPaypalで売ってくれと交渉して取り寄せてもらっています。はじめてMingoを使いましたが、メールのやりとりからここはわりと信頼できると思います(別にeBayにもあります)。米国で流通しているとはあまり聞いたことがありません。検索するとわかりますが、レビューもほとんど中国国内で、インプレなどは翻訳サイト経由で読みました。むこうでも「試聴したら買って帰らざるをえなくなった」というくらい音については高評価ではあります。
ちなみに支払ったのはMingoで送料込みで6748HKDです(おおよそUS$900)。このへんにMusicToGo本の売り上げ=あやしいものレビュー増える、の成果が出ております。
上に書いたようにARM1のプロダクト記載はAcoustic Researchの公式ホームページ内にありますが、Voxx自体は米国なので中国メーカーへのOEMかもしれません。ただ海外展開と言うのも用意されているようには思えないのは不思議です。ARM1のようにかっこよくて音は素晴らしいけど電池は4時間しか持たない、というニッチな製品が売れる市場が中国国内に形成されているというのも注目点ですね。
まとめるとARM1はデザイン的にも洗練されて細部まで凝っています。音は素晴らしく長短はありますが他のトップクラスのハイエンドDAPにも引けを取らないでしょう。ただし電池はわずかしか持たずに、メモリも拡張性はありません。価格も高価です。マイナーな点ではTera Playerに似ているかもしれませんが、もっと長短がはっきりしています。Tera Playerのときに人によって興味のあるなしが極端に分かれると書きましたが、そこはARM1も同じです。
ARM1を一般にお勧めするかと言うと、一般的にはコンパクト高性能DAPとしてはAK120をお勧めします。AK120が音質・サイズ・電池の持ち・メモリ拡張性・国内サポートと優等生的なバランスを実現しているのに対すると、ARM1はいかにも長所と短所がはっきりしている天才肌の不良生徒の印象です。
近所に文句のないまじめな優等生の幼馴染がいながら、なぜかチョイ不良だけどきらっと光るものがあるカッコいい転校生に惹かれる乙女、という少女マンガチックな感じで感性がピンと来た人にはARM1をお勧めします。
JH13でARM1を聴くと普通のデザイン重視のスリムなDAPに見えて、一般的なDAPとはクラスが違う音再現の高さにはうならされます。
他のトップクラスのハイエンドDAPをも凌駕するようなこの鮮明でキレの良い音を聴くとコンパクトゆえにシンプルに鮮度よく、フラッグシップDACであるPCM1794の高音質をストレートに伝えていると感じます。電池持続がわずか4時間と引き換えに美しいスリムデザインと他にない音質の高さを実現しているわけです。
なにかを得ることができるものは、なにかを捨てることができるもの、というどこかの言葉を思い起こさせてくれるのがARM1です。
2012年11月26日
iBasso DX100とAPI開示の可能性
別のHM901記事のスピンオフですが、カテゴリを分けるために別記事にしました。
DX100の話を続けると、他のDAPのようにLinuxネイティブというわけではなくAndroidベースであることがDX100の音質をすくなからずスポイルしているということはあると思います。やはりJAVA介してるところもありますし、OSのオーバーヘッドも少なくないでしょう。
ただしAndroidベースが悪いというわけではなく、HeadFiのDX100スレッドを読むとサードパーティーアプリ開発者にiBassoのAPI(前に書いたこのALSA NDKあたりだと思います)をオープンにするという情報もあります。そうするとPowerAmpやRockboxがiBasso APIを使用してDX100で192/24再生できるようになれば最強ですので、Androidベースにしたという強みはその辺から出てくるのではないでしょうか。iBassoもタグ問題やらPowerAmpとの相性問題やらで全部アプリを自分のところで抱える大変さというのを知ったのではないかとも思いますね。
Android Walkmanでもそうですけど、AndroidベースのDAPに関してはDAPハードベンダーは基本ソフト(ドライバーやALSA APIなど)を開示して、標準はおまけ程度の再生アプリをバンドルし、サードパーティーのアプリ専門ベンダーが本格的な高音質再生アプリを作るというのがAndroidベースのDAPの本来的なあり方のように思えます。そもそも自分のところですべて抱えるならAndroidベースにする必要もないかと思います。その方が音質的にもよいものはできるでしょうからね。タッチ操作のためとしてもAK100のように独自ファームでもタッチ操作は可能です。やはりAndroidにするなら、広いオープンな世界に即したものを作ってほしいと思います。
たとえばニコンCOOLPIX S800cみたいなAndroidカメラも面白いと思います。最近のデジカメで機能についてくるアートフィルターやパノラマ機能などは、カメラメーカーがおまけで付けるものよりiOSやAndroidのアプリの方が多様で強力なものを見つけることができます。それを足していくことで機能向上が図れます。これをカメラメーカーがすべて抱えていったら大変でしょう。
そしてAndroid DAPも面白い可能性を秘めていると思いますので、DX100の方向性も期待しています。
DX100の話を続けると、他のDAPのようにLinuxネイティブというわけではなくAndroidベースであることがDX100の音質をすくなからずスポイルしているということはあると思います。やはりJAVA介してるところもありますし、OSのオーバーヘッドも少なくないでしょう。
ただしAndroidベースが悪いというわけではなく、HeadFiのDX100スレッドを読むとサードパーティーアプリ開発者にiBassoのAPI(前に書いたこのALSA NDKあたりだと思います)をオープンにするという情報もあります。そうするとPowerAmpやRockboxがiBasso APIを使用してDX100で192/24再生できるようになれば最強ですので、Androidベースにしたという強みはその辺から出てくるのではないでしょうか。iBassoもタグ問題やらPowerAmpとの相性問題やらで全部アプリを自分のところで抱える大変さというのを知ったのではないかとも思いますね。
Android Walkmanでもそうですけど、AndroidベースのDAPに関してはDAPハードベンダーは基本ソフト(ドライバーやALSA APIなど)を開示して、標準はおまけ程度の再生アプリをバンドルし、サードパーティーのアプリ専門ベンダーが本格的な高音質再生アプリを作るというのがAndroidベースのDAPの本来的なあり方のように思えます。そもそも自分のところですべて抱えるならAndroidベースにする必要もないかと思います。その方が音質的にもよいものはできるでしょうからね。タッチ操作のためとしてもAK100のように独自ファームでもタッチ操作は可能です。やはりAndroidにするなら、広いオープンな世界に即したものを作ってほしいと思います。
たとえばニコンCOOLPIX S800cみたいなAndroidカメラも面白いと思います。最近のデジカメで機能についてくるアートフィルターやパノラマ機能などは、カメラメーカーがおまけで付けるものよりiOSやAndroidのアプリの方が多様で強力なものを見つけることができます。それを足していくことで機能向上が図れます。これをカメラメーカーがすべて抱えていったら大変でしょう。
そしてAndroid DAPも面白い可能性を秘めていると思いますので、DX100の方向性も期待しています。
2012年04月10日
iBasso DX100 ポケットES9018の実力
前回の到着編に続いてiBasso DX100のインプレ編です。
主に使用したのはiBassoの標準Musicアプリです。前にも書いたようにiBassoの標準アプリを使うときだけ真の24bit出力がAndroid上で可能になります。
iBasso再生アプリではプレイモード(ランダムなど)、イコライザーの設定、デジタルフィルターの切り替え(Slow Role off、Sharp roleoff)、サンプルレート変換(192kHzまで)、ギャップレス設定などができます。
ヘッドフォン・イヤフォンはFitear To Go 334とEdition8が良いと思った。それぞれポータブル機材としては現在ベストのものだけど、結局DX100はこれくらいで聴かないともったいないほどの性能があるといえます。
バーンインしないともやっとしたところがあるけど、バーンインしていくと音も細かさが際立ってきます。そうすると逆にきつさが目立つようになるのですが、さらにバーインすると音が落ち着いていい感じになるというパターンのように思います。バーンインの変化が大きいタイプにも思えるので、デジタルフィルタの切り替えなどを試すのは音が落ち着いてからの方が良いと思いますね。
まず気がつくのはFitear to go 334やK3003なんかで聴くと細かい音が浮き上がってくるようにくっきり明瞭に立っている感じですが、そうした点ではESSのDACらしいという感じですね。やはりマルチウエイ・バランスドアーマチュア系の細かい音が再現できるイヤフォンだとこの音のきめ細かい解像力の高さを堪能できるという気がします。
DX100の良い点はまずこのきめの細かさが表現力の高さにつながっているところです。
女性ヴォーカルがふっとため息をつくところの声の質感とニュアンス、声の細かな震え、ギターの音が消えいる余韻などはまさに秀逸です。
またSNが高く、音の形もきれいに歪みなく整っているように感じられます。分析的という言葉から来る無機的な軽い音ではなく、適度な厚み表現があり、音は彫りが深く実に陰影豊かですね。
それと楽器の音の分離と立体感に優れていて、独特の3次元的な立体感が感じられます。ドラムやパーカッションのインパクトも強烈で重さ・深みがあるためロックもかっこ良く聴けます。Fitear to go 334のでかいCIドライバーの能力もフルに発揮されてると思える瞬間です。Fitear to go 334では持ち味のダイナミックで広大な音楽表現が楽しめます。
驚くのはFitear to go 334と合わせた表現力の高さですが、ジャズトリオとかオーケストラなど賑やかな音楽はちょっと音が良ければそれなりに聴けるものですが、DX100+Fitear To Go 334でちょっとすごいと思ったのは、現代音楽家のDavid LangのThe passing measuresを聴いたときです。これはオーケストラの40人の演奏者に一つの和音をできる限り静かに長く弾かせ、それを電子的に増幅するというややこしい手法で作られた作品です。これはドローンと呼ばれるもので、ぱっと聞きにはズォーン、ブォーンと鳴ってるだけなんですが、細かく聴くととても小さな音が色彩豊かに鮮やかな音楽の諧調再現を描いているのが分かります。DX100+Fitear To Go 334では、その細やかさに包まれる心地よさがしっかりと感じられます。また同じく現代音楽家John Luther Adamsのピアノとベルが和音をひたすらならして行くミニマル手法のFour thousand holesもやはり良いですね。これもベルの音の再現力が高いゆえですが、現代音楽って結局音による表現の可能性を追及するもので、ポータブルの再現力でここまで聴かせるって言うのはなかなかありません。
多少大柄ですが毎日持って歩いて大きさという点で特に大きな不便を感じるということはないですね。ただしやはり電池の持ちの悪さが問題です。通勤に使う程度では一日で不足するということはないが、一日持ち歩いているとぎりぎりというところですね。だいたい5-6時間というところでしょうか。
まめに電源を切りたいところですが、一度切ってしまうとAndroidをブートしてさらにアプリが使用可能になるのにやや時間がかかってします。
またプレイ、スキップのハードキーがないのはDAPとして使いづらいところではあります。画面がスリープして復帰する際にいちいちロック解除をするのも面倒な一因ですが、これはNo Lockというアプリをインストールして解消しました。
それとUSB DAC機能があるとなお良かったとは思いますね。そうすると標準プラグで家用のヘッドフォンが使える意味も大きくなります。ただAudio-gdがES9018とUSBで散々手こずったので避けて正解かもはしれないとも思います。
..というのはまあ前振りで、このあとDX100のひみつ2に続きます。
(続く)
主に使用したのはiBassoの標準Musicアプリです。前にも書いたようにiBassoの標準アプリを使うときだけ真の24bit出力がAndroid上で可能になります。
iBasso再生アプリではプレイモード(ランダムなど)、イコライザーの設定、デジタルフィルターの切り替え(Slow Role off、Sharp roleoff)、サンプルレート変換(192kHzまで)、ギャップレス設定などができます。
ヘッドフォン・イヤフォンはFitear To Go 334とEdition8が良いと思った。それぞれポータブル機材としては現在ベストのものだけど、結局DX100はこれくらいで聴かないともったいないほどの性能があるといえます。
バーンインしないともやっとしたところがあるけど、バーンインしていくと音も細かさが際立ってきます。そうすると逆にきつさが目立つようになるのですが、さらにバーインすると音が落ち着いていい感じになるというパターンのように思います。バーンインの変化が大きいタイプにも思えるので、デジタルフィルタの切り替えなどを試すのは音が落ち着いてからの方が良いと思いますね。
まず気がつくのはFitear to go 334やK3003なんかで聴くと細かい音が浮き上がってくるようにくっきり明瞭に立っている感じですが、そうした点ではESSのDACらしいという感じですね。やはりマルチウエイ・バランスドアーマチュア系の細かい音が再現できるイヤフォンだとこの音のきめ細かい解像力の高さを堪能できるという気がします。
DX100の良い点はまずこのきめの細かさが表現力の高さにつながっているところです。
女性ヴォーカルがふっとため息をつくところの声の質感とニュアンス、声の細かな震え、ギターの音が消えいる余韻などはまさに秀逸です。
またSNが高く、音の形もきれいに歪みなく整っているように感じられます。分析的という言葉から来る無機的な軽い音ではなく、適度な厚み表現があり、音は彫りが深く実に陰影豊かですね。
それと楽器の音の分離と立体感に優れていて、独特の3次元的な立体感が感じられます。ドラムやパーカッションのインパクトも強烈で重さ・深みがあるためロックもかっこ良く聴けます。Fitear to go 334のでかいCIドライバーの能力もフルに発揮されてると思える瞬間です。Fitear to go 334では持ち味のダイナミックで広大な音楽表現が楽しめます。
驚くのはFitear to go 334と合わせた表現力の高さですが、ジャズトリオとかオーケストラなど賑やかな音楽はちょっと音が良ければそれなりに聴けるものですが、DX100+Fitear To Go 334でちょっとすごいと思ったのは、現代音楽家のDavid LangのThe passing measuresを聴いたときです。これはオーケストラの40人の演奏者に一つの和音をできる限り静かに長く弾かせ、それを電子的に増幅するというややこしい手法で作られた作品です。これはドローンと呼ばれるもので、ぱっと聞きにはズォーン、ブォーンと鳴ってるだけなんですが、細かく聴くととても小さな音が色彩豊かに鮮やかな音楽の諧調再現を描いているのが分かります。DX100+Fitear To Go 334では、その細やかさに包まれる心地よさがしっかりと感じられます。また同じく現代音楽家John Luther Adamsのピアノとベルが和音をひたすらならして行くミニマル手法のFour thousand holesもやはり良いですね。これもベルの音の再現力が高いゆえですが、現代音楽って結局音による表現の可能性を追及するもので、ポータブルの再現力でここまで聴かせるって言うのはなかなかありません。
多少大柄ですが毎日持って歩いて大きさという点で特に大きな不便を感じるということはないですね。ただしやはり電池の持ちの悪さが問題です。通勤に使う程度では一日で不足するということはないが、一日持ち歩いているとぎりぎりというところですね。だいたい5-6時間というところでしょうか。
まめに電源を切りたいところですが、一度切ってしまうとAndroidをブートしてさらにアプリが使用可能になるのにやや時間がかかってします。
またプレイ、スキップのハードキーがないのはDAPとして使いづらいところではあります。画面がスリープして復帰する際にいちいちロック解除をするのも面倒な一因ですが、これはNo Lockというアプリをインストールして解消しました。
それとUSB DAC機能があるとなお良かったとは思いますね。そうすると標準プラグで家用のヘッドフォンが使える意味も大きくなります。ただAudio-gdがES9018とUSBで散々手こずったので避けて正解かもはしれないとも思います。
..というのはまあ前振りで、このあとDX100のひみつ2に続きます。
(続く)
2012年04月01日
iBasso DX100、Sabre32搭載、Androidベースの最新DAP
*iBasso DX100とは
iBasso DX100はHM801とかColorfly C4のような高性能DAC一体型のDAPです。
1stバッチは一月発売だったのですが、発売後にかなり多くの問題点が指摘されて改良がくわえられてこの3月に仕切り直しされたのが、この2ndバッチです。改良にはソフトウエアだけではなくハードもあるので、1stバッチのユーザーも送り返すことで改修されたようです。現在は3rdバッチの受付中で、1stと2ndはディスカウントがあったんですが、価格は通常価格の$830となっています。私は2ndバッチで購入しました。
販売リンクはこちらです。
http://www.ibasso.com/en/products/show.asp?ID=78
*主な特徴
1. ES9018を採用したDACチップ
最先端の32bitチップであるESS Sabre 32アーキテクチャのトップモデルであるES9018を採用しています。据え置きとしても最新・最高クラスのチップをポータブルで採用していると言うわけです。
ES9018については下記のAudio-gd NFB10ESの記事でも書いてますが、特徴的なアーキテクチャを持った新世代32bitチップの雄ですね。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/171562949.html
これがなんとポータブルで使えるというわけですが、高度に統合化されたSabre32はポータブルにも意外と向いているのかも。
2. DAPの基本ソフトとしてAndroidを採用
Walkman Z1000のようにOSとしてAndroidを採用しています。(2.3)
Androidマーケット(現Google Play)に対応しているので様々なアプリをダウンロード出来ます。進化するDAPというわけですね。なお私の2ndバッチでははじめはAndroidマーケットでしたが、ネットにつないだら速攻更新されてGoogle Playになりました。
3. 192kHz 24bit対応
DACが192/24対応であっても、通常Androidでは24bit対応はできません。下記に書いた通りです。
Androidは24bitの夢を見るか? Part1
http://vaiopocket.seesaa.net/article/251275779.html
Androidは24bitの夢を見るか? Part2
http://vaiopocket.seesaa.net/article/251928177.html
簡単にまとめるとAndroidの音声システムであるAudioFlingerとアプリのSDKがそもそも24bit対応していないというによります。
それではなぜDX100で24bit対応できるかというと、iBassoが独自にAduioFlinger相当の部分に手を加えたということのようです。そのためDX100の上でもiBassoの独自アプリ以外では24bit出力はできません。
4. 出力が豊富
光・同軸のデジタルアウト、ミニと標準のヘッドフォン出力端子、アナログのラインアウトと出力系が豊富です。Androidの柔軟性を生かしてDLNAアプリなどをいれることで応用は広がるでしょう。ES9018のパワーをスマートフォンの手軽さで簡単にネットに接続できるというわけです。
なお同軸はミニ端子ですがミニ-RCAのケーブルが付属しています。
*DX100ハンズオン
紆余曲折ありましたが、やっと届きました。
デザインはとても良いと思いますね。HM801、Colorflyと少しクセがあるデザインでしたが、いままでの高級DAPの中ではストレートなかっこよさがあります。少し厚みがあってやや持ちにくいがあまり問題ではありません。
バックカバーの品質が良くないと出荷遅延があったんですが、そういうところに気を使うのは良いですね。
*Android端子としてのDX100
立ち上げると円形のロック解除が出てきます。
スライドさせる(slide to unlock)のはアップルの特許なのでその辺の兼ね合いもあるかもしれません。
http://m.guardian.co.uk/technology/2012/feb/16/apple-patent-slide-unlock-motorola?cat=technology&type=article
ホームはDX100標準アプリのウイジェットで、そこからiBasso標準の音楽再生アプリを立ち上げることができます。下右の画面はメニューハードキーを押したところです。SRC(サンプルレートコンバーター)やデジタルフィルター切り替えなどもあります。
Android端末としてWalkman Zに比べると動作が全体に遅い気もしますね。Walkman Zは同時期の最高のAndroid端末に比べると劣るけど、そんなに悪くないスペックです。DX100のタッチ精度も良くないですが、液晶がWalkman Zよりも小さいのがAndroid端末としては使いづらいところです。iPhoneはタッチ精度が高いので画面が小さくても良いんですが、Androidは画面小さいと思うように動かせない気はします。
Androidとしての設定は基本的なところは、まず時刻や言語設定を日本向けにすることですが、入力が基本的に英語キーボードと中文キーボードのみなので日本語キーボード(IME)を入れるのがお勧めです。
まず設定からWiFiコネクションを確立してAndroidマーケット(Google play)を使用可能にして、simejiを使うのが定番です。下はSimejiの画面です。
下記はDX100のアプリの並ぶデスクトップですが、はじめはAndroidマーケットが表示されていましたが、WiFi設定したら速攻でGoogle Playに入れ替わりました。
曲データはMicroSDに加えて内蔵メモリが64GBと大容量です。ここで注意点は内蔵メモリのsdcard以下はmicro SDのマウントポイントなのでそこには入れずに別にmusicみたいなディレクトリを作るということです。
マウントポイントというのはUNIX系だと/export/homeみたいな感じですが、外部記憶のファイルシステムをコンピューターのファイルシステムに組み込む接点です。ここではMicroSDの中身をDX100にマウントするときにsdcardを使っているようです。(絶対パスで書くと/mnt/storage/sdcardです)
またAndroidではsdcard以下はUNIX系でいうと/varと/homeを合わせたみたいに様々なデータが入ったりするので、/mnt/storage/sdcard以下(つまりMicroSDの中身)は音楽を入れても良いですが基本的にAndroid用と考えるのがよいかもしれません。
Walkman Zではsdcard以下に音楽データを格納してたんでちょっと混乱するところですが、Walkmanは外部記憶がないのでマウントポイントを作らなくて良いということでしょう。
なお楽曲データはFLACのほかにAppleロスレスも使えます。
さてそこで早速スクリーンショットを取るためもあって、USBでPCのAndroid開発環境と接続して見ました。ちなみにUSB端子はミニではなくMicroです。
ここが実は一番設定困難なので心配していたところですが、Android SDK側の設定はWalkman Zと同じで変える必要がなくて助かりました。ちなみにHTCのADBドライバーを使ってるようです。
これでスクリーンキャプチャも簡単に撮れるようになりました。この記事のDX100のスクリーンはddms接続で撮っています。ddmsについては上記のAndroidは24bitの夢を見るか?Part1をご覧ください。
下はddmsで接続したDX100のプロセス(Dalvik VM)とスレッド一覧です。
左上の携帯アイコンがDX100です。その下のemulator-5544というのは気にしないでください。次の記事ネタです 笑。
これはTwitterアプリ(プロセス)をハイライトしたところです。私とかこれ見てると面白いんですが、アンプなどを買ったら即ばらして中の回路とかパーツを調べてみる人の気持ちがよーくわかります。
しかしUSBデバッグモードがデフォルトでonになっていたのはなんだかという感じではあります。なんか直前までデバッグやってて慌てて出した感じではありますね。
さて、そこで肝心の音質ですが、はじめすこしもやっとしたところがあったんですが、バーンインしていくとだんだんと細かさが浮き出てくるようなESSの味が出てきたように思いますので、この辺はもう少し後に書こうと思います。
PowerAmpなんかを入れてもやはり音は違いますがこの辺も少し見ていきたいですね。
2012年03月05日
Altmann Tera-Player - 手のひらの上の192k再生・高音質DAP
Tera-PlayerはAltmann Micro Machinesというドイツのオーディオメーカーが開発した小型の高音質ポータブルプレーヤー(DAP)です。
手のひらに入る小型軽量ですがその代わりディスプレイはありません。分かりやすく言うと「高級iPodシャッフル」みたいなものです。ではなぜ高級とつけたのかというとこんな感じです。
1. 192/24まで再生可能 (ただしDACの仕様は16bitです - 後述)
2. 小さいのにとても音質が良い (CK4とかHM601ではなく、HM801とかC4と比肩できるくらい)
3. 小さいのにとても高価 (840ユーロ=約88,000円 2012/2月現在)
ここまでですでに興味を失った方と、少数のかえってとても興味がわいたという方に両極端に分かれると思います。このあとはこれで興味が出たという方にお送りします。
(うちのブログはだいたいそういう感じではありますが)
* Tera-Playerとは
一般にポータブルシステムの音質を高めるにはiPod+ポータブルアンプのような組み合わせを使いますが、これはかなりかさばります。2段ならともかくSoloなんかを使うと3段になってしまいますね。最近では高性能DACとアンプの一体型DAPとしてHM-801、Colorfly C4、iBasso DX100などがありますが、音質は素晴らしくてもやはりそれなりにみな大きいものです。AMP3なんかは小さくてよいんですが、音的にはいまひとつ物足りません。T51(sflo2)、CK4、以下同文ですね。
多少利便性は犠牲にしても、ほんとにポケットにはいってかつ、さきのHM801とかC4など高性能DAPに匹敵する音質のポータブルプレーヤーがほしかったという人もいるでしょう。わたしもそうです。
そして、それがこのTera-Playerです。
開発者はAltmann Micro MachinesのCharles Altmannさんで、発売されたのは昨年の12月くらいです。私が買ったのは三週間ほど前で、そのときはCharlesさんはTera-Playerは日本にはじめて送ると言ってました。ホームページはこちらです。
http://www.tera-player.com/
再生できるファイル形式はWAVのみで、192kHz/24bitまで再生できます。音源はSDカードに入れます。
要になるDACチップは明記されていませんが、フィリップスのR2R DACをNOS(ノンオーバーサンプリング)使用しているということです。このR2Rというのはデルタシグマに対するマルチビットDACのことです(RというのはRegister)、またNOSについてはこちらのHM-601ページをご覧ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/160865129.html
チップはこの手の小型NOS DACでは一般的なTDA1543ではなく、最大で384kHzを受けられるフィリップスのDACチップと言うことです(1543は192kまで)。ただし先に触れたように24bit音源は再生できますが、DACのリゾリューションは24bitではなく16bitになります(ソフトで切り捨ててます)。マルチビットDACはビット幅が増えるとそのまま回路が複雑化しますので16bitというのは致し方ないことではあります。PCM1704は優れた24bitのマルチビットDACですが、1704はチップだけでなく電源やI/V変換など周辺から大変でこれをこんなコンパクトなパッケージでは作れません。
高性能DAPはたとえばHifiMan HM801ならPCM1704、Colorfly C4ならCS4398、iBasso DX100はES9018と据え置き並みのハイエンドDACチップを使う点がポイントではありますが、もともとポータブルの制約でそれらのDACチップのポテンシャルをフルに発揮できないなら、発揮できるDACチップを使用してフルに性能を引き出すと言うのがTera-Playerのポリシーのように思います。たとえばクロックなども手を抜かずにAudiophilleoなみの高精度(Period jitter: 5ps max、Phase jitter: 1ps max)です。
これはCharlesさんが他に普通のDACも制作していてジッターについても一家言あるという理由があると思います。(jitter.deというサイトも運営していてジッターに関する情報とジッターを提言する製品が書いてあります)
Tera-Playerは開発に4年かけたといいますがソフトウエアが一番大変だったそうです。
ここで病的なのは、Tera-PlayerはプロセッサにARM Cortex系を使用しているのですが、そのプログラムをすべてアセンブラで書いたそうです。普通はファームウエアでもCなどのわかりやすい言語(高級言語)を使うのですが、アセンブラは機械寄りというより機械語そのままで、たしかに効率よく細かい点まで書けるでしょうが組むのもそうとう大変なはずです。CharlesさんがARMに不明点を問い合わせをしたときにむこうからC言語で書いたらどうですか、と言われたそうです(笑)。
でもCharlesさんいわく、Cで書いていたらこんなサイズのパッケージでは192k対応のソフトウエアは書けないということです。実際にTeraでも176k超えの音源を再生すると曲によってはたまにプツプツと途切れノイズが出るので、この辺がぎりぎりなんでしょうね(44kや96kではそうしたノイズは出ません)。このあたりの実装が一番大変だったそうで、まあWAVしか再生できないというのも許してあげましょう。
もうひとつのソフトウエアでのポイントはSDカードのアクセスです。SDカードを読むさいにFATで読むのですが、その読み取りを最適化しないと不連続データを読む際に電源サージが発生してしまい、それがジッターに影響するとのこと。それにたいしてフラグメントの連続性を考えたカウンタかなにか使って最適化を行いサージの発生を最小限に抑えたら劇的にジッターが減ったとのこと。そうしないとSDカードは動くパーツが無いといってもジッターに与える影響がばかにできないとのことです。
こんな小さなパッケージですが、ソフトウエアの中になかなか濃い中身が詰まっているということですね。
Tera-Playerについての開発中の話やプロトタイプの中身はこちらのリンクで見られます。なおここで記述されているDACチップなどは製品版とは異なりますので念のため。
http://www.altmann.haan.de/tera_player/default.htm
* Tera Playerのデザインと使用感
実際に手に取ってみるとかなり小さく軽いということを実感します。ほぼiPodの半分ですね。完全に胸ポケットに入りますし、かなりがっしりしているので多少では壊れないでしょう。重さは80gです。
書いたようにディスプレイはありません。コントロールは再生・停止、ボリュームアップ、ボリュームダウン、次の曲、前の曲の5つのボタンを組み合わせて操作します。中央ボタンはPlay/PauseではなくPlay/Stop (止めると曲の先頭に戻る)です。
キーの組み合わせで次のアルバム、次のアーティスト、ランダムプレイ(シャッフル)再生も可能です。アーティストとアルバムはメタデータではなく階層で判断します。そのため基本的にはiTunesの階層にならってSDカードに格納するのが良いでしょう。ただし一階層だけや階層なしで入れても再生はできます。音源データはSDHCカードを使用します。64GB以上のSDXCは対応できないと考えたほうが良いようです。
このSDHCカードを入れることで電源オン、外すことで電源オフになります。上の写真では左がオンの状態です。SDカードはスプリングがないので、指で引き出します。
ヘッドフォン端子は二つあって、それぞれゲインが異なります。内側のほうがLowで外側がHighです。ただLowとHighというよりはLowとMidで、HD800だとハイゲイン側にさして普通に音量が取れるかどうかです。良録音でレベル低めに入ってるのではHD800では音量が取れないでしょう。Edition8などは問題ありません。
USB端子は充電のみでUSB DAC機能はついていません。LEDは青(外側)がアクセスで赤(内側)が充電ステータスです。
上の写真は背面で説明文が書かれています。Made in Germanyが新鮮ですね。
電池は15時間ほど持つということなので他の高性能プレーヤーよりはけっこう持ちます。
充電も5V USBから取れるので、いつもiPhone用に予備バッテリーを持っていればUSBミニ端子があれば充電できますので便利です。充電時間は80%で2時間とされています。
買ってから二週間ほど毎日使ってみた感想としては動作はかなり安定していますが、たまに読めないWAVがあると止まります(後述)。そのときは電源オフオンでリスタートできます。ただし電源オンですぐに一曲目を読みに行くので、一曲目が読めないWAVだとスタックしてしまうので注意が必要です。
キー操作に慣れが必要なときもありますが、ランダム再生主体ならそれほど問題はありません。私は基本的にはランダム再生で楽しんで、週末買ったCDを今日聴きたいという時はフォルダ名の頭に0を付加して先頭にフォルダが来るようにしています。
* Tera Playerの音質
主にK3003とユニバーサル334、Edition8で聴きました。K3003とTera-Playerの組み合わせは普通の人から見たらいいとこ数万円の組み合わせだと思うでしょうね。実際は20万以上するオーディオシステムが手のひらに乗ってるんですが(笑)
おそらくTeraの価値はほんとにどれだけ音が良いかという点でしょう。そこで少し詳しく書いてみます。
- マクロ的にみた音の感じは
ぱっと聴いて思い浮かんだベタなキャッチは「小さな巨人」。小さくても音はビッグというフレーズが陳腐ですがぴったりときます。
小さいから音がこじんまりとしているわけではありません。音場に広がりがあり、深みがあります。その三次元的な立体感がちょっと驚かされます。小さいからがちゃがちゃした粗い音ではありません。とても微細な音まで描き出す高い解像力と、厚みのある本格的な音の再現力を持っています。
音の性格的にはNOS DAC、マルチビットDACということからだいたい想像つくと思いますが、「音楽的で自然な」再現を重視した設計です。実際にわずかな暖かみがあり滑らかで自然な音の再現力があるいわゆるオーディオっぽい音です。薄い音ではなく音にしっかりとした密度感があります。また音再現に滑らかさを感じます。
- ミクロ的にみた音の感じは
背景がかなり黒く、楽器の音が明瞭に浮き上がり、環境音や楽器が擦れる音も良く拾います。音に甘さがなく鮮明に描き出されるという他の高性能DAC一体型のDAPにみられる特徴も感じさせます。解像力はとても高いので高性能のBAイヤフォンだとかなり情報量が多いという印象を受けます。K3003なんかで聴いていると、ものすごく細かい録音中の環境音まで拾っています。音の立体感にも優れていてここはユニバーサル334なんかでは音楽表現に圧倒されます。
また楽器の音色がとても正確でリアルな感じです。音が消えいるまでのニュアンスも見事で、ここは小さいDAPとは思えないですね。音の制動がすごくタイトでビシッ、バシッとドラムやベースのインパクトが決まります。帯域特性はかなりフラットで低域も強調感はありません。
- イヤフォン・ヘッドフォンとの組み合わせで言うと
さきに書いたようにK3003とかユニバーサル334がとてもよく合うというか、この二者の違いも鮮明に描き出します。K3003だとやや小ぶりな音再現だけど細部をよく拾い音場の見通しが良くクリアで、室内楽的なミクロレベルの細かさとダイナミックさがあります。ユニバーサル334だとイヤフォンながらスケール感も豊かにマクロ的な音楽の構成を精密に描き出すという感じでしょうか。立体感も堪能でき、リアルに音楽を聴いているという実感がわくことでしょう。
背景が黒いので高感度カスタムにも合います。滑らかさも生きてきて、適度な低域の量感もありJH16+TWagがいい感じです。
Edition8で聴いてもEdition8の性能に聴きおとりしないですね。むしろReference Recordings HRXのブリテンの青少年のための管弦楽入門(192/24)なんかはやはりEdition8で聴くとオーケストラの迫力が堪能できます。ただしHRXのデータのWAVそのままだと再生できないので、いったんWAV-WAVの空変換を実施しました。これはWAVによってはタグの有効化のためにややフォーマットを変更しているケースがあるためということです。
- 他のDAPとの比較で言うと
おおまかにレベル的に言うとHM601とかCK4ではなく、HM801とかC4、HP-P1と比肩できるようなものです。
CK4と比べるとCK4は音の芯が甘い感があり、立体感がなく平面的で、全体に密度感が希薄な感じです。TeraはCK4に比べると音の微妙なニュアンスを滑らかで諧調豊かに伝える感じです。
HM801ではTeraとHM801(IEM用カード)を持ち出して適当に変えながら一日聴き比べましたが、一つの音の正確さ、贅肉がなく引き締まった感じ、切れ味ではむしろTeraが上かもしれません。TeraはHM801よりも高いほうですっきり伸びる感じもあります。ドラムのバシっとしたインパクトの制動や切れ味はTeraはかなり優れていて、TeraのDAC部分は極めて優秀ですね。ただ全体的な躍動感や立体感・豊かさなど音楽表現ではやはりHM801が一枚上手に思います。アナログ部はどうしても物量の差は出るのでこのサイズでもアンプ部分の制約として効いているのかもしれません。ただTeraとHM801を並べて比べないでTeraだけ聴いているとこの辺の違いは劣っているという風には感じず、個性の違いと感じるくらいかもしれません。
DAC一体型のDAPとして考えると、DAC部分はややTeraが上でアンプ部分はHM801が上ということでしょうか。素のDACチップ性能的にはHM801のPCM1704が上であるはずですが、やはりDACチップの性能を引き出すCharlesさんの職人芸が効いているというところなのでしょう。
Dirigent USBケーブルで補強したHP-P1だとHP-P1が空間の広がりで優位、とくにユニバーサル334との組み合わせではそう思います。一方で音のシャープさではTeraが同等以上かもしれません。ただ両者についてはどちらかというとアンプ自体の個性の差・好みの差になるでしょう。しょうゆ系(HP-P1)、ウスターソース(Tera)、中農ソース(HM801)という感じでしょうか。関西の人、分かりにくくてすいません。
Colorfly C4だと音の輪郭の明確さ・音が引き締まっていて贅肉のない点、ぴしっとした音の制動感はかなり近い感じです。ややC4がシャープでクリアにも思えますが、Teraの方が自然な音鳴りのようにも思えます。またEdition8なんかで聞いた時の細かい音のニュアンスはややC4が上かもしれません。一方で音の立体感ではTeraの方がやや上に思います。これらはどちらかというと性能というより個性の差のようにも思えます。
音質のレベルについて価格を考えると期待したところではありますが、サイズを考えると上記の高性能DAPとEdition8を使ってガチで比較してしまえるというのがすごいところではあります。
HM801、HP-P1、C4のよいところをそれぞれ9掛くらいで持っていると言っておきましょうか、ただ9掛けしたのはもしかするとこのサイズで同じはずがないという思い込みのなせることかもしれません。
* まとめ
上に書いたように音質の絶対的なレベルも高いですが、Teraの個性もあるので小さいからこれを選ぶんではなく音の好みでこれを選ぶって言うのもあるかもしれません。そのくらい音は良いです。ただしあの曲が聴きたいという時にぱっと選曲できないもどかしさはありますので念のため。
どちらかというとHM801とかC4、HP-P1を持ってる人がセカンドとして、音に妥協したくないけど気軽にランダム再生主体で聴くので小さいなら操作性は目をつぶっていいと言う人に向いてると言えます。そのクラスを持ってるひとならTeraの良さもわかるでしょう。
カメラの世界には一眼レフを使いこなす人が画質に妥協したくないけど小さいのを持ちたいという時に使うサブカメラというジャンルがあります。一般に高級コンパクトカメラといわれたリコー GR1、ミノルタ TC1とかコンタックス T2などですね。いまだとシグマ DP2があげられるかもしれません。これらは使い方によってはへたすると一眼レフを上回るような画質を持っています。そういう意味ではTeraも高級コンパクトDAP、サブDAPというジャンルというとピンと来そうです(私だけ?)
今年はDAC一体型の高性能DAPがまたちょっと焦点になるかもしれません。
手のひらに入る小型軽量ですがその代わりディスプレイはありません。分かりやすく言うと「高級iPodシャッフル」みたいなものです。ではなぜ高級とつけたのかというとこんな感じです。
1. 192/24まで再生可能 (ただしDACの仕様は16bitです - 後述)
2. 小さいのにとても音質が良い (CK4とかHM601ではなく、HM801とかC4と比肩できるくらい)
3. 小さいのにとても高価 (840ユーロ=約88,000円 2012/2月現在)
ここまでですでに興味を失った方と、少数のかえってとても興味がわいたという方に両極端に分かれると思います。このあとはこれで興味が出たという方にお送りします。
(うちのブログはだいたいそういう感じではありますが)
* Tera-Playerとは
一般にポータブルシステムの音質を高めるにはiPod+ポータブルアンプのような組み合わせを使いますが、これはかなりかさばります。2段ならともかくSoloなんかを使うと3段になってしまいますね。最近では高性能DACとアンプの一体型DAPとしてHM-801、Colorfly C4、iBasso DX100などがありますが、音質は素晴らしくてもやはりそれなりにみな大きいものです。AMP3なんかは小さくてよいんですが、音的にはいまひとつ物足りません。T51(sflo2)、CK4、以下同文ですね。
多少利便性は犠牲にしても、ほんとにポケットにはいってかつ、さきのHM801とかC4など高性能DAPに匹敵する音質のポータブルプレーヤーがほしかったという人もいるでしょう。わたしもそうです。
そして、それがこのTera-Playerです。
開発者はAltmann Micro MachinesのCharles Altmannさんで、発売されたのは昨年の12月くらいです。私が買ったのは三週間ほど前で、そのときはCharlesさんはTera-Playerは日本にはじめて送ると言ってました。ホームページはこちらです。
http://www.tera-player.com/
再生できるファイル形式はWAVのみで、192kHz/24bitまで再生できます。音源はSDカードに入れます。
要になるDACチップは明記されていませんが、フィリップスのR2R DACをNOS(ノンオーバーサンプリング)使用しているということです。このR2Rというのはデルタシグマに対するマルチビットDACのことです(RというのはRegister)、またNOSについてはこちらのHM-601ページをご覧ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/article/160865129.html
チップはこの手の小型NOS DACでは一般的なTDA1543ではなく、最大で384kHzを受けられるフィリップスのDACチップと言うことです(1543は192kまで)。ただし先に触れたように24bit音源は再生できますが、DACのリゾリューションは24bitではなく16bitになります(ソフトで切り捨ててます)。マルチビットDACはビット幅が増えるとそのまま回路が複雑化しますので16bitというのは致し方ないことではあります。PCM1704は優れた24bitのマルチビットDACですが、1704はチップだけでなく電源やI/V変換など周辺から大変でこれをこんなコンパクトなパッケージでは作れません。
高性能DAPはたとえばHifiMan HM801ならPCM1704、Colorfly C4ならCS4398、iBasso DX100はES9018と据え置き並みのハイエンドDACチップを使う点がポイントではありますが、もともとポータブルの制約でそれらのDACチップのポテンシャルをフルに発揮できないなら、発揮できるDACチップを使用してフルに性能を引き出すと言うのがTera-Playerのポリシーのように思います。たとえばクロックなども手を抜かずにAudiophilleoなみの高精度(Period jitter: 5ps max、Phase jitter: 1ps max)です。
これはCharlesさんが他に普通のDACも制作していてジッターについても一家言あるという理由があると思います。(jitter.deというサイトも運営していてジッターに関する情報とジッターを提言する製品が書いてあります)
Tera-Playerは開発に4年かけたといいますがソフトウエアが一番大変だったそうです。
ここで病的なのは、Tera-PlayerはプロセッサにARM Cortex系を使用しているのですが、そのプログラムをすべてアセンブラで書いたそうです。普通はファームウエアでもCなどのわかりやすい言語(高級言語)を使うのですが、アセンブラは機械寄りというより機械語そのままで、たしかに効率よく細かい点まで書けるでしょうが組むのもそうとう大変なはずです。CharlesさんがARMに不明点を問い合わせをしたときにむこうからC言語で書いたらどうですか、と言われたそうです(笑)。
でもCharlesさんいわく、Cで書いていたらこんなサイズのパッケージでは192k対応のソフトウエアは書けないということです。実際にTeraでも176k超えの音源を再生すると曲によってはたまにプツプツと途切れノイズが出るので、この辺がぎりぎりなんでしょうね(44kや96kではそうしたノイズは出ません)。このあたりの実装が一番大変だったそうで、まあWAVしか再生できないというのも許してあげましょう。
もうひとつのソフトウエアでのポイントはSDカードのアクセスです。SDカードを読むさいにFATで読むのですが、その読み取りを最適化しないと不連続データを読む際に電源サージが発生してしまい、それがジッターに影響するとのこと。それにたいしてフラグメントの連続性を考えたカウンタかなにか使って最適化を行いサージの発生を最小限に抑えたら劇的にジッターが減ったとのこと。そうしないとSDカードは動くパーツが無いといってもジッターに与える影響がばかにできないとのことです。
こんな小さなパッケージですが、ソフトウエアの中になかなか濃い中身が詰まっているということですね。
Tera-Playerについての開発中の話やプロトタイプの中身はこちらのリンクで見られます。なおここで記述されているDACチップなどは製品版とは異なりますので念のため。
http://www.altmann.haan.de/tera_player/default.htm
* Tera Playerのデザインと使用感
実際に手に取ってみるとかなり小さく軽いということを実感します。ほぼiPodの半分ですね。完全に胸ポケットに入りますし、かなりがっしりしているので多少では壊れないでしょう。重さは80gです。
書いたようにディスプレイはありません。コントロールは再生・停止、ボリュームアップ、ボリュームダウン、次の曲、前の曲の5つのボタンを組み合わせて操作します。中央ボタンはPlay/PauseではなくPlay/Stop (止めると曲の先頭に戻る)です。
キーの組み合わせで次のアルバム、次のアーティスト、ランダムプレイ(シャッフル)再生も可能です。アーティストとアルバムはメタデータではなく階層で判断します。そのため基本的にはiTunesの階層にならってSDカードに格納するのが良いでしょう。ただし一階層だけや階層なしで入れても再生はできます。音源データはSDHCカードを使用します。64GB以上のSDXCは対応できないと考えたほうが良いようです。
このSDHCカードを入れることで電源オン、外すことで電源オフになります。上の写真では左がオンの状態です。SDカードはスプリングがないので、指で引き出します。
ヘッドフォン端子は二つあって、それぞれゲインが異なります。内側のほうがLowで外側がHighです。ただLowとHighというよりはLowとMidで、HD800だとハイゲイン側にさして普通に音量が取れるかどうかです。良録音でレベル低めに入ってるのではHD800では音量が取れないでしょう。Edition8などは問題ありません。
USB端子は充電のみでUSB DAC機能はついていません。LEDは青(外側)がアクセスで赤(内側)が充電ステータスです。
上の写真は背面で説明文が書かれています。Made in Germanyが新鮮ですね。
電池は15時間ほど持つということなので他の高性能プレーヤーよりはけっこう持ちます。
充電も5V USBから取れるので、いつもiPhone用に予備バッテリーを持っていればUSBミニ端子があれば充電できますので便利です。充電時間は80%で2時間とされています。
買ってから二週間ほど毎日使ってみた感想としては動作はかなり安定していますが、たまに読めないWAVがあると止まります(後述)。そのときは電源オフオンでリスタートできます。ただし電源オンですぐに一曲目を読みに行くので、一曲目が読めないWAVだとスタックしてしまうので注意が必要です。
キー操作に慣れが必要なときもありますが、ランダム再生主体ならそれほど問題はありません。私は基本的にはランダム再生で楽しんで、週末買ったCDを今日聴きたいという時はフォルダ名の頭に0を付加して先頭にフォルダが来るようにしています。
* Tera Playerの音質
主にK3003とユニバーサル334、Edition8で聴きました。K3003とTera-Playerの組み合わせは普通の人から見たらいいとこ数万円の組み合わせだと思うでしょうね。実際は20万以上するオーディオシステムが手のひらに乗ってるんですが(笑)
おそらくTeraの価値はほんとにどれだけ音が良いかという点でしょう。そこで少し詳しく書いてみます。
- マクロ的にみた音の感じは
ぱっと聴いて思い浮かんだベタなキャッチは「小さな巨人」。小さくても音はビッグというフレーズが陳腐ですがぴったりときます。
小さいから音がこじんまりとしているわけではありません。音場に広がりがあり、深みがあります。その三次元的な立体感がちょっと驚かされます。小さいからがちゃがちゃした粗い音ではありません。とても微細な音まで描き出す高い解像力と、厚みのある本格的な音の再現力を持っています。
音の性格的にはNOS DAC、マルチビットDACということからだいたい想像つくと思いますが、「音楽的で自然な」再現を重視した設計です。実際にわずかな暖かみがあり滑らかで自然な音の再現力があるいわゆるオーディオっぽい音です。薄い音ではなく音にしっかりとした密度感があります。また音再現に滑らかさを感じます。
- ミクロ的にみた音の感じは
背景がかなり黒く、楽器の音が明瞭に浮き上がり、環境音や楽器が擦れる音も良く拾います。音に甘さがなく鮮明に描き出されるという他の高性能DAC一体型のDAPにみられる特徴も感じさせます。解像力はとても高いので高性能のBAイヤフォンだとかなり情報量が多いという印象を受けます。K3003なんかで聴いていると、ものすごく細かい録音中の環境音まで拾っています。音の立体感にも優れていてここはユニバーサル334なんかでは音楽表現に圧倒されます。
また楽器の音色がとても正確でリアルな感じです。音が消えいるまでのニュアンスも見事で、ここは小さいDAPとは思えないですね。音の制動がすごくタイトでビシッ、バシッとドラムやベースのインパクトが決まります。帯域特性はかなりフラットで低域も強調感はありません。
- イヤフォン・ヘッドフォンとの組み合わせで言うと
さきに書いたようにK3003とかユニバーサル334がとてもよく合うというか、この二者の違いも鮮明に描き出します。K3003だとやや小ぶりな音再現だけど細部をよく拾い音場の見通しが良くクリアで、室内楽的なミクロレベルの細かさとダイナミックさがあります。ユニバーサル334だとイヤフォンながらスケール感も豊かにマクロ的な音楽の構成を精密に描き出すという感じでしょうか。立体感も堪能でき、リアルに音楽を聴いているという実感がわくことでしょう。
背景が黒いので高感度カスタムにも合います。滑らかさも生きてきて、適度な低域の量感もありJH16+TWagがいい感じです。
Edition8で聴いてもEdition8の性能に聴きおとりしないですね。むしろReference Recordings HRXのブリテンの青少年のための管弦楽入門(192/24)なんかはやはりEdition8で聴くとオーケストラの迫力が堪能できます。ただしHRXのデータのWAVそのままだと再生できないので、いったんWAV-WAVの空変換を実施しました。これはWAVによってはタグの有効化のためにややフォーマットを変更しているケースがあるためということです。
- 他のDAPとの比較で言うと
おおまかにレベル的に言うとHM601とかCK4ではなく、HM801とかC4、HP-P1と比肩できるようなものです。
CK4と比べるとCK4は音の芯が甘い感があり、立体感がなく平面的で、全体に密度感が希薄な感じです。TeraはCK4に比べると音の微妙なニュアンスを滑らかで諧調豊かに伝える感じです。
HM801ではTeraとHM801(IEM用カード)を持ち出して適当に変えながら一日聴き比べましたが、一つの音の正確さ、贅肉がなく引き締まった感じ、切れ味ではむしろTeraが上かもしれません。TeraはHM801よりも高いほうですっきり伸びる感じもあります。ドラムのバシっとしたインパクトの制動や切れ味はTeraはかなり優れていて、TeraのDAC部分は極めて優秀ですね。ただ全体的な躍動感や立体感・豊かさなど音楽表現ではやはりHM801が一枚上手に思います。アナログ部はどうしても物量の差は出るのでこのサイズでもアンプ部分の制約として効いているのかもしれません。ただTeraとHM801を並べて比べないでTeraだけ聴いているとこの辺の違いは劣っているという風には感じず、個性の違いと感じるくらいかもしれません。
DAC一体型のDAPとして考えると、DAC部分はややTeraが上でアンプ部分はHM801が上ということでしょうか。素のDACチップ性能的にはHM801のPCM1704が上であるはずですが、やはりDACチップの性能を引き出すCharlesさんの職人芸が効いているというところなのでしょう。
Dirigent USBケーブルで補強したHP-P1だとHP-P1が空間の広がりで優位、とくにユニバーサル334との組み合わせではそう思います。一方で音のシャープさではTeraが同等以上かもしれません。ただ両者についてはどちらかというとアンプ自体の個性の差・好みの差になるでしょう。しょうゆ系(HP-P1)、ウスターソース(Tera)、中農ソース(HM801)という感じでしょうか。関西の人、分かりにくくてすいません。
Colorfly C4だと音の輪郭の明確さ・音が引き締まっていて贅肉のない点、ぴしっとした音の制動感はかなり近い感じです。ややC4がシャープでクリアにも思えますが、Teraの方が自然な音鳴りのようにも思えます。またEdition8なんかで聞いた時の細かい音のニュアンスはややC4が上かもしれません。一方で音の立体感ではTeraの方がやや上に思います。これらはどちらかというと性能というより個性の差のようにも思えます。
音質のレベルについて価格を考えると期待したところではありますが、サイズを考えると上記の高性能DAPとEdition8を使ってガチで比較してしまえるというのがすごいところではあります。
HM801、HP-P1、C4のよいところをそれぞれ9掛くらいで持っていると言っておきましょうか、ただ9掛けしたのはもしかするとこのサイズで同じはずがないという思い込みのなせることかもしれません。
* まとめ
上に書いたように音質の絶対的なレベルも高いですが、Teraの個性もあるので小さいからこれを選ぶんではなく音の好みでこれを選ぶって言うのもあるかもしれません。そのくらい音は良いです。ただしあの曲が聴きたいという時にぱっと選曲できないもどかしさはありますので念のため。
どちらかというとHM801とかC4、HP-P1を持ってる人がセカンドとして、音に妥協したくないけど気軽にランダム再生主体で聴くので小さいなら操作性は目をつぶっていいと言う人に向いてると言えます。そのクラスを持ってるひとならTeraの良さもわかるでしょう。
カメラの世界には一眼レフを使いこなす人が画質に妥協したくないけど小さいのを持ちたいという時に使うサブカメラというジャンルがあります。一般に高級コンパクトカメラといわれたリコー GR1、ミノルタ TC1とかコンタックス T2などですね。いまだとシグマ DP2があげられるかもしれません。これらは使い方によってはへたすると一眼レフを上回るような画質を持っています。そういう意味ではTeraも高級コンパクトDAP、サブDAPというジャンルというとピンと来そうです(私だけ?)
今年はDAC一体型の高性能DAPがまたちょっと焦点になるかもしれません。