HP1000つながりで、GRADOのビンテージものというとSR200などもあります。HeadphileのLarryさんは最近ヘッドホンの改造ものに力を入れてますが、最近GRADO SR200の改造ものがDealページにアップされてました。SR200はビンテージGRADOのひとつで、一般にSR225の前身とされていますがちょっと面白い側面があります。
それはドライバーで、SR200にはHP1000のドライバーが使われているものが一部存在するからです。ただ、この改造ものはTransition driverとあるのでHP1000のタイプではないようです。これはストックの状態でグリルから除いて白色(銀)だとHP1000ドライバーで、黒色だとTransition driverと区別ができるようです。
Transition driverもGRADOの謎のひとつのような気がしますが、名のようにJoeからJohnへの移行期に作られたもののようで、後のコンシューマークラスのドライバーとも少し違うようです。もちろんHP1000ドライバーのほうが性能はいいわけですが、意外とこのtransition driverも性能的にはいまひとつでも味系の面白さもそれなりにあるようで、Larryさんの木製ハウジングと意外とあっていいのかもしれません。価格は高いので、さすがに買い手がつかないのか少しずつ下がっています。ただまだ$800前後ではちょっと興味だけでは手が出せませんが。。
Music TO GO!
2007年07月26日
2007年07月25日
GRADO HP-2とパッド
GRADOのヘッドホンはパッドで音が変わるというのは日本だけでなく、世界でも変わらぬ定説のひとつです。
わたしの使っているところのHP-2(HP1000)はFLATパッド(いわゆるflats)がベストといわれています。わたしが買ったときはFlatとBowlの両方ついていたのですが、そのせいかFLATはかなり使用感があって痛んでいました。そこで先日とうとう擦り切れてしまったので、しばらくBowlの方を使っていました。これはこれでFLATとは音傾向がやや異なるのでしばらくは楽しめます。
とはいえやはりFlatsがないと、ということで先日新しくFLATパッドをTTVJから買いました。これはGRADOから買い取ったという純正のストック品です。
頼んだのは先月ですが、独立記念日前後に休みを取っていたようで、7/10にTTVJから出荷通知がきました。
TTVJはいろいろと送料が選べるのはいいんですが、こんかいは価格と内容をかんがみて一番安いフラットレートの通常エアメールにしてみました。7/23に届いたので約二週間弱ほどかかりますね。
ちなみに下記の写真がそれぞれFLATとBOWLパッドです。
FLATパッド

BOWLパッド

こちらはHP-2のドライバーむき出しの写真で、Joe時代のGRADOの誇るメタルハウジングの様子がよく分かると思います。
これはHP1000でも後期型と呼ばれる表面仕上げだと思います。

比べてみるとFLATはより明るめの音になり、よりクリアでかっちりとします。しばらく使っていたBOWLに慣れていると少し高域よりに思いますがバランスがいいという感じです。
BOWLはより低音が出る感じがして、やや豊かというか、全体に味系の要素が強くなるように思えます。これはこれでたまに変えてみるのも悪くありません。
ただやはり正確さというHP1000のイメージというとFLATパッドがベストと言えます。
わたしの使っているところのHP-2(HP1000)はFLATパッド(いわゆるflats)がベストといわれています。わたしが買ったときはFlatとBowlの両方ついていたのですが、そのせいかFLATはかなり使用感があって痛んでいました。そこで先日とうとう擦り切れてしまったので、しばらくBowlの方を使っていました。これはこれでFLATとは音傾向がやや異なるのでしばらくは楽しめます。
とはいえやはりFlatsがないと、ということで先日新しくFLATパッドをTTVJから買いました。これはGRADOから買い取ったという純正のストック品です。
頼んだのは先月ですが、独立記念日前後に休みを取っていたようで、7/10にTTVJから出荷通知がきました。
TTVJはいろいろと送料が選べるのはいいんですが、こんかいは価格と内容をかんがみて一番安いフラットレートの通常エアメールにしてみました。7/23に届いたので約二週間弱ほどかかりますね。
ちなみに下記の写真がそれぞれFLATとBOWLパッドです。
FLATパッド


BOWLパッド

こちらはHP-2のドライバーむき出しの写真で、Joe時代のGRADOの誇るメタルハウジングの様子がよく分かると思います。
これはHP1000でも後期型と呼ばれる表面仕上げだと思います。

比べてみるとFLATはより明るめの音になり、よりクリアでかっちりとします。しばらく使っていたBOWLに慣れていると少し高域よりに思いますがバランスがいいという感じです。
BOWLはより低音が出る感じがして、やや豊かというか、全体に味系の要素が強くなるように思えます。これはこれでたまに変えてみるのも悪くありません。
ただやはり正確さというHP1000のイメージというとFLATパッドがベストと言えます。
2007年05月30日
Balanced HP-2到着!
HaedphileのLarryさんに頼んでいたGRADO HP-2のバランス化がようやく到着しました。やはり11週間くらいかかりましたね。

ケーブルはBlackGoldで頼みました。もともとはBlackSilverだったのですが、そのときは少し高い方にシフトしていたのですが、BlackGoldでは見事にバランスがよく重心が低くなりました。HP-2ってこんなに低い方の重み・力感が表現できるのだと思いました。ただ音の広がりがバランス駆動としてはいまひとつです。ここはちょっと様子見で。。
また、かなりウォームさが付加されて、全体にとても有機的というか音楽的に素晴らしいという感じです。それでいて高域はきつさが抑えられています。
ただそうした分析的なコメントは聴いているうちにどうでもよくなってきました。ピアノやヴァイオリンの音色はただ美しく、K701のお株を奪うかのようです。ハイスピードな曲運びは聴いていて高揚感をもたらします。
HP-2はモニタライクに言われることもありますが、もともとこうした音楽的な素養を持っているともいえます。
HPA-1もそうですが、さすがJoe時代のGRADOはそつなくハイレベルです。
しかし、CD3000といいHP-2といい、一昔前のハイエンド機にこうして少し手を加えると現行機よりも素晴らしい魅力を見せるというのは考えさせられるところもまた、大きいですね。

ケーブルはBlackGoldで頼みました。もともとはBlackSilverだったのですが、そのときは少し高い方にシフトしていたのですが、BlackGoldでは見事にバランスがよく重心が低くなりました。HP-2ってこんなに低い方の重み・力感が表現できるのだと思いました。ただ音の広がりがバランス駆動としてはいまひとつです。ここはちょっと様子見で。。
また、かなりウォームさが付加されて、全体にとても有機的というか音楽的に素晴らしいという感じです。それでいて高域はきつさが抑えられています。
ただそうした分析的なコメントは聴いているうちにどうでもよくなってきました。ピアノやヴァイオリンの音色はただ美しく、K701のお株を奪うかのようです。ハイスピードな曲運びは聴いていて高揚感をもたらします。
HP-2はモニタライクに言われることもありますが、もともとこうした音楽的な素養を持っているともいえます。
HPA-1もそうですが、さすがJoe時代のGRADOはそつなくハイレベルです。
しかし、CD3000といいHP-2といい、一昔前のハイエンド機にこうして少し手を加えると現行機よりも素晴らしい魅力を見せるというのは考えさせられるところもまた、大きいですね。
2007年03月24日
HP-2バランス化へ
CD3000とともにHP-2も本日アメリカへと旅立ちました。
片や東部、片や西海岸と分かれていきます。
CD3000、HP-2と生産完了品に手をつけるのはなかなか勇気が要りますが、HD650とK701でなんとなく分かってきたのでいよいよ第二段階というところでしょうか。
でもバランス化ヘッドホンも増えてくるとバランス駆動アンプも他にも欲しくなってきたりして(^^
片や東部、片や西海岸と分かれていきます。
CD3000、HP-2と生産完了品に手をつけるのはなかなか勇気が要りますが、HD650とK701でなんとなく分かってきたのでいよいよ第二段階というところでしょうか。
でもバランス化ヘッドホンも増えてくるとバランス駆動アンプも他にも欲しくなってきたりして(^^
2007年03月17日
HP-2故郷へ
つぎなるバランス駆動改造はGrado HP-2にしました。
ケーブル交換はひさびさにラリーさんのところ(Headphile.com)にお願いすることで調整しました。Larryさんはあいかわらずノリがいいというか、「アイツ(HP2)にまた会えるとは楽しみだぜ」みたいにカジュアルに雑談交じりで書いてきてくれます。
このHP-2に関してはもともとLarryさんのところから買ったものということと、HP-1000に関してはHeadFi界隈でもやはりLarryさんがノウハウを持っていて強いのでLarryさんにお願いしました。ケーブルはBlackGoldを使う予定です。ケーブルはもとのヘッドホンの短所をカバーするという考え方と長所を伸ばすという考え方があると思いますが、HP-1000の情報量の多さと切れのよい正確さというところを伸ばそうと考えています。
ただLarryさんもけっこう忙しいようで待ちは7-8週間ということです。なんかその待ちの間に...
ケーブル交換はひさびさにラリーさんのところ(Headphile.com)にお願いすることで調整しました。Larryさんはあいかわらずノリがいいというか、「アイツ(HP2)にまた会えるとは楽しみだぜ」みたいにカジュアルに雑談交じりで書いてきてくれます。
このHP-2に関してはもともとLarryさんのところから買ったものということと、HP-1000に関してはHeadFi界隈でもやはりLarryさんがノウハウを持っていて強いのでLarryさんにお願いしました。ケーブルはBlackGoldを使う予定です。ケーブルはもとのヘッドホンの短所をカバーするという考え方と長所を伸ばすという考え方があると思いますが、HP-1000の情報量の多さと切れのよい正確さというところを伸ばそうと考えています。
ただLarryさんもけっこう忙しいようで待ちは7-8週間ということです。なんかその待ちの間に...
2006年07月27日
GRADO HP-2再訪
このまえGRADO GS-1000を試聴してみましたが、ぱっと聴いたときの第一印象は「やはりHP-1000の音を意識してるかもしれない」というものでした。名前から推測されたことだったからです。
ただし少し聴き進めてRS-1とA/Bで比べて行くうちにその印象は変わり、やはり音はRS-1のサウンドシグネチャーの延長上にあり「(いろんな意味で)少し大人になったRS-1」と言う感じに思えました。GS-1000については自分の環境では聴いてないのでコメントはこの程度にしておきますが、そうした第一印象からちょっと最近聴いてなかったGRADO HP-2を取り出してまた聴いて見ようと言う気になりました。

HP-2はHP-1000シリーズの中核機ですが、何回か書いたようにHP-1000というのは型番ではなくHP-1/2/3を総称したJoe時代のGRADOのフラッグシップの総称です。これは約1000台作られたということに由来しているようです。
わたしのHP-2はLarryさんのところ(headphile.com)でケーブル交換してもらったものを買ったものです。もとはいわゆるJGUWBRCケーブルでした。
外観を見るとハウジングのロゴが消えていますが、HP-1000にくわしいLarryさんいわくロゴが消えた固体も多いとのことです。思うにわたしのHP-2の表面仕上げは後期型の磨き方ですが、おそらくコストの関係で後の方ではロゴの彫り込みをプリントにしたと思われます。カメラなんかでもよくやられるコストダウンの方法です。
以前書いたようにこのHP-1000ヘッドホンシリーズはMCカートリッジで成功してオーディオの殿堂入りを果たしたJoe Gradoが晩年の道楽のような形でやっていたようで、一時期はほんとにGRADO社の存続が危うくなったようです。そのあたりできびしいJohnの手が入ったという気もします。
いずれにせよ全金属製でアルミの削りだしというハウジングを持ったHP-2は美しく輝きます。左右のユニットはビスで固定しますが、頭に載せるとずっしりとかっちりとした感触でいまから聴こえる音を予感させます。
音特性はとにかくフラットなことで有名ですが、これは録音の状態を浮き彫りにします。HP-2でヴォーカルが引っ込んでいればそれはそう録音されているということと推測できます。もともとスタジオ用に作られたHP-1000ならではということでしょう。
全体の音調はやや高域よりに感じますが、これは前にDrewさんケーブルとの比較で書いたようにLarryさんのケーブルの特徴でもあり、それに影響されていると考えられます。下記の音の印象もLarryさんケーブルの影響も含まれていると思います。
今回は本来K701やHD650と比較試聴する記事のつもりだったのですが、これは少し聴いてやめました。ケーブル交換したHP-2とストック(ノーマル)のHD650やK701では同じ土俵に立てません。これはあとでまた考えるとします。
HP-2の音は渓流のようにクリアでかつ都会の雑踏のように音数が多くハイスピードです。音の立ち上がりは早く、細かい音も純粋な形をもって解像されエッジはきりっとしています。音のすっきりとした純度の高さはK1000をちょっと思わせます。
低音も必要な量感はありますが、出すぎはしません。ボクサーのようにひきしまったタイトさでウッドベースのピチカートなどは圧巻です。弾くときの音のエッジが情報量の多さと音の立ち上がりの速さとあいまって驚くほどのリアリティと気持ちよさがあります。
音場の広がりは特筆すべきものではありませんが十分広く、それより音の重なりが立体感を感じさせます。やや耳に近い感じがしますが、あまり気になりませんし低能率なのでちょっと引いた感じさえします。
楽器の分離はかなりはっきりしていて、立体的に聴こえます。これは複雑に絡み合った曲で音の構造をレリーフのように浮き彫りにします。ヴォーカルも空間にロットリングで書いたようにはっきりと歌詞がわかります。それでいてサ行(S音)の痛さはあまりありません。
こう書いていくとHP-2がジャズとか室内楽向きのように思われるかもしれませんが、実はロックもかなりかっこよく聴けます。リズムの刻みのテンポが気持ちよく、ドラムのインパクトも小気味良いものです。これはK1000がロックに意外と向くと書いたとのと同じです。また高域がきつくないことも激しい音楽で疲れにくい要因だと思います。
ただし低音の塊りが投げつけられるような迫力や荒々しさを求める人には向きません。
HP-2で気が付くのは金属ハウジングだけれども金属の付帯音があまりしないということです。GRADOのヘッドホンは金属や木などハウジングの素材で響きに色がつきますが、削りだしの構造とかドライバーの材質のせいか余分な音はあまり感じません。
人間の耳は面白いもので、真空管の偶数次歪みとかエンクロージャーの鳴きのように本来は性能的に無い方がよいはずのものが聴こえた方が美音と感じることがあります。そうしたものを求める向きにもHP-2はあわないかもしれません。
しかしHP-2のよいところはこうしたモニター的とも思われる正確なHiFi調の音でありながら、きちんとした音楽性も感じるところです。音色もよく、解像力のせいもあるのかジャズの女性ヴォーカルは艶っぽくなまめかしさを感じますし、ジョニー・キャッシュのような枯れた男声ヴォーカルは年輪を感じる渋さを覚えます。
この辺はIKEMIというかLINNの特徴でもあり、その良さがそのまま出ているともいえます。HiFi調の機器がかならずしもシステムの中でドライな要素として音楽性にマイナスに働くわけではなく、こうして他の音楽性の高い機器のブースターともなり得るというよい見本のようです。
こうしたところがオーディオのシステム作りの面白さでもあり、ヘッドホンシステムでもそれがきちんと生きているというのはさすが殿堂入りしたJoeならではの腕の冴えと言えるでしょう。
-------------------
*この記事のシステム
LINN IKEMI → (根岸通信XLR) → Luxman P-1 → GRADO HP-2
ただし少し聴き進めてRS-1とA/Bで比べて行くうちにその印象は変わり、やはり音はRS-1のサウンドシグネチャーの延長上にあり「(いろんな意味で)少し大人になったRS-1」と言う感じに思えました。GS-1000については自分の環境では聴いてないのでコメントはこの程度にしておきますが、そうした第一印象からちょっと最近聴いてなかったGRADO HP-2を取り出してまた聴いて見ようと言う気になりました。

HP-2はHP-1000シリーズの中核機ですが、何回か書いたようにHP-1000というのは型番ではなくHP-1/2/3を総称したJoe時代のGRADOのフラッグシップの総称です。これは約1000台作られたということに由来しているようです。
わたしのHP-2はLarryさんのところ(headphile.com)でケーブル交換してもらったものを買ったものです。もとはいわゆるJGUWBRCケーブルでした。
外観を見るとハウジングのロゴが消えていますが、HP-1000にくわしいLarryさんいわくロゴが消えた固体も多いとのことです。思うにわたしのHP-2の表面仕上げは後期型の磨き方ですが、おそらくコストの関係で後の方ではロゴの彫り込みをプリントにしたと思われます。カメラなんかでもよくやられるコストダウンの方法です。
以前書いたようにこのHP-1000ヘッドホンシリーズはMCカートリッジで成功してオーディオの殿堂入りを果たしたJoe Gradoが晩年の道楽のような形でやっていたようで、一時期はほんとにGRADO社の存続が危うくなったようです。そのあたりできびしいJohnの手が入ったという気もします。
いずれにせよ全金属製でアルミの削りだしというハウジングを持ったHP-2は美しく輝きます。左右のユニットはビスで固定しますが、頭に載せるとずっしりとかっちりとした感触でいまから聴こえる音を予感させます。
音特性はとにかくフラットなことで有名ですが、これは録音の状態を浮き彫りにします。HP-2でヴォーカルが引っ込んでいればそれはそう録音されているということと推測できます。もともとスタジオ用に作られたHP-1000ならではということでしょう。
全体の音調はやや高域よりに感じますが、これは前にDrewさんケーブルとの比較で書いたようにLarryさんのケーブルの特徴でもあり、それに影響されていると考えられます。下記の音の印象もLarryさんケーブルの影響も含まれていると思います。
今回は本来K701やHD650と比較試聴する記事のつもりだったのですが、これは少し聴いてやめました。ケーブル交換したHP-2とストック(ノーマル)のHD650やK701では同じ土俵に立てません。これはあとでまた考えるとします。
HP-2の音は渓流のようにクリアでかつ都会の雑踏のように音数が多くハイスピードです。音の立ち上がりは早く、細かい音も純粋な形をもって解像されエッジはきりっとしています。音のすっきりとした純度の高さはK1000をちょっと思わせます。
低音も必要な量感はありますが、出すぎはしません。ボクサーのようにひきしまったタイトさでウッドベースのピチカートなどは圧巻です。弾くときの音のエッジが情報量の多さと音の立ち上がりの速さとあいまって驚くほどのリアリティと気持ちよさがあります。
音場の広がりは特筆すべきものではありませんが十分広く、それより音の重なりが立体感を感じさせます。やや耳に近い感じがしますが、あまり気になりませんし低能率なのでちょっと引いた感じさえします。
楽器の分離はかなりはっきりしていて、立体的に聴こえます。これは複雑に絡み合った曲で音の構造をレリーフのように浮き彫りにします。ヴォーカルも空間にロットリングで書いたようにはっきりと歌詞がわかります。それでいてサ行(S音)の痛さはあまりありません。
こう書いていくとHP-2がジャズとか室内楽向きのように思われるかもしれませんが、実はロックもかなりかっこよく聴けます。リズムの刻みのテンポが気持ちよく、ドラムのインパクトも小気味良いものです。これはK1000がロックに意外と向くと書いたとのと同じです。また高域がきつくないことも激しい音楽で疲れにくい要因だと思います。
ただし低音の塊りが投げつけられるような迫力や荒々しさを求める人には向きません。
HP-2で気が付くのは金属ハウジングだけれども金属の付帯音があまりしないということです。GRADOのヘッドホンは金属や木などハウジングの素材で響きに色がつきますが、削りだしの構造とかドライバーの材質のせいか余分な音はあまり感じません。
人間の耳は面白いもので、真空管の偶数次歪みとかエンクロージャーの鳴きのように本来は性能的に無い方がよいはずのものが聴こえた方が美音と感じることがあります。そうしたものを求める向きにもHP-2はあわないかもしれません。
しかしHP-2のよいところはこうしたモニター的とも思われる正確なHiFi調の音でありながら、きちんとした音楽性も感じるところです。音色もよく、解像力のせいもあるのかジャズの女性ヴォーカルは艶っぽくなまめかしさを感じますし、ジョニー・キャッシュのような枯れた男声ヴォーカルは年輪を感じる渋さを覚えます。
この辺はIKEMIというかLINNの特徴でもあり、その良さがそのまま出ているともいえます。HiFi調の機器がかならずしもシステムの中でドライな要素として音楽性にマイナスに働くわけではなく、こうして他の音楽性の高い機器のブースターともなり得るというよい見本のようです。
こうしたところがオーディオのシステム作りの面白さでもあり、ヘッドホンシステムでもそれがきちんと生きているというのはさすが殿堂入りしたJoeならではの腕の冴えと言えるでしょう。
-------------------
*この記事のシステム
LINN IKEMI → (根岸通信XLR) → Luxman P-1 → GRADO HP-2
2005年08月02日
Joe Grado・シグネチャープロダクト - "HPA-1"
Joe GradoのクラフトマンシップはHP-1000ヘッドホンとともにヘッドホンアンプにも発揮されました。それがこのもうひとつのシグネチャープロダクトであるHPA-1です。

まずおどろくのはこのアンプの設計があのマランツの名設計者である(故)シドニー・スミスによるものだということです。
シドニー・スミスはいまや伝説的なマランツ#2,#5,#8,#9(管球王国36参照)などのマランツ前期の代表的なパワーアンプ設計者です。現在の日本マランツのアンプは円形のメーターをデザインの特徴にしていますが、それは#9を規範としています。
http://www.marantz.jp/bc/brand/history/
そうした米国オーディオ界の重鎮的存在の人がこうしたヘッドホンアンプの設計をするとは珍しいことですが、HPA-1の頃には齢60を過ぎていておそらく引退をされていたと思いますのでJoeとの交友関係で設計をしたのでしょう。シドニー・スミス時代のマランツもプロ機器ゆずりのこだわった作りこみを特徴としていますので、おなじようにこだわりのあるjoeとは共鳴するところがあったと思われます。
海外の個性的なオーディオにおいては音決めをするオーナーと音を作る設計者というペアの関係がよく引用されますが(例えばMLASのマークレビンソンとジョンカール)といわれますが、HPA-1においてはそれがジョウ・グラドとシド・スミスというわけでハイエンドオーディオにも比肩するかなり豪華なものです。
そしてもちろんこれもHP-2と同様に妥協のない作りこみがなされています。ボリューム、電子部品、ワイヤー、コネクターなどいたるところでJoeの選んだカスタムメイドのパーツが使われています。
製作はJoe自身とマランツのトム・キャドバス(品質管理部門の技術者)との手作りで生産数はかなり少ないようです。また作成しているうちにJoeのこだわりから試行錯誤でパーツ類も変えていったとも言われますので市場のどのHPA-1も音が違う可能性もあります。中身は大きく二つのタイプがあると言われますが、実際にいくつのバリエーションがあるかは分かりません。
このようにHPA-1はHP-1000よりさらに深いものがありますし、HP-1とRS-1が異なる以上にHPA-1は現在のRA-1とは違うものといえます。(HPA-2というのもあるようですが、これはよくわかりません)
実際にHP-2と組み合わせてみるとヘッドホンとヘッドホンアンプの相乗効果というものをあらためて考えさせられます。
この流れるような音楽性とGradoの暖かいヴォーカルの組み合わせはまさに絶妙です。高域も低域も絶妙のバランスでかつナチュラルです。それでいてモニターというイメージから来る無味乾燥さとは無縁の音楽性の高さが感じられます。

ATH L3000をHPA-1につけてみると特に低域は延びますが、特にアコースティックな音楽を再生したときのバランスは完全にHP-2との組み合わせが上です。L-3000はかなりメリハリがつくように音が強調されて聞こえますが、HP-2に換えるととても自然な音の流れを感じます。おそらくはHP-2のフラットなバランスにあわせてアンプの方で強弱を加えているのだと思います。そうしてシステムとして音楽的なバランスが形成されます。
またフラットなHP-2を動的なHD-1Lにつけると組み合わせとしては良さそうに思えますが、今度はHPA-1と組み合わせたときのような滑らかさが出ないのである意味HP-2の良さを消してしまっています。またこの組み合わせで聴くときついというほどではありませんが、やや高域が強調されます。そこからもHPA-1がうまく子音の抑制を行っていたことがわかります。
やはりHP-2の項で書いた「聴きやすさ」というところはHP-2とHPA-1の相乗効果だと思います。
ただATH L-3000をHD-1Lにつけると今度はきちんとはまります。聴きやすくて動的にもすばらしい再現性です。この組み合わせはいいと思うんですが、この辺も相乗効果というのはあると思います。
今度はHP-2/HPA-1とL-3000/HD-1Lで同じソースを聴くと前者は落ち着いた大人の音楽、後者は動的でダイナミックな演奏者の気持ちが感じられます。また前者よりは後者がウォームに聴こえます。HP-2/HPA-1もややウォームだと思いますが、かなりニュートラルに近いと思います。
ただ相乗効果ということを逆に言えば、これ単体で今の最新のヘッドフォンと組み合わせるのはお勧めできないかもしれません。HP-2との相性という面を別にすると、たしかに現在において最高クラスのLuxman P-1などと比べるとやや情報量や解像力、あるいはSNや定位のフォーカスがやや甘いなどオーディオ性能的なところは劣るといえます。
やはりHP-2と組み合わせてこそ真価を発揮するアンプといえるでしょう。
またHPA-1はこうした小型の高性能ヘッドホンアンプの嚆矢でもあります。いまとはちがってHP-1000の時代はこうした小型ヘッドホンアンプの良いものがなかったのでそれが開発のきっかけということのようです。
電源は12Vのアダプターと9V電池二個のいずれかです。ポータブルも可能というわけですが、大きさから考えると運ぶというよりも電源としてのクリーンさを狙って電池にしたという気もします。さらにバッテリー室に仕切りや押さえがなくてバッテリーがきちんと固定されないので移動時に動いてしまうという点もポータブルには適しません。ただし部屋をまたいで、という点では可搬性は高いと思います。
電源スイッチ位置にスタンバイポジションがあるのもハイエンド機を思わせます。

もし内部の画像に興味がある人はHeadfiの画像倉庫にあります。
http://photo.head-fi.org/
ここでキーワードをHPA-1で検索してください。
当時の価格は$795ですが、こちらはHP-1000と違ってプレミアがないので入手金額はその半額くらいでした。この個体は動作は完全で、ほとんど新品同様でした。しかし事実上修理不能なので本来はある意味で「ビンテージアンプ」として楽しむものかもしれません。しかしこのHP-2とHPA-1の組み合わせはビンテージとして片付けることはできない魅力をもっています。
最近ではMcIntoshがもはや引退したと思われるシドニー・コーダーマン名義で数十年前の名作を焼きなおして新しい真空管アンプを発表していますが、その是非はともかくこうして顔が見えるということが海外オーディオの面白さのひとつだと思います。
HPA-1はHP-2とともにそうしたアメリカオーディオ黄金期の残滓がヘッドホンの分野にあったと思わせてくれます。

まずおどろくのはこのアンプの設計があのマランツの名設計者である(故)シドニー・スミスによるものだということです。
シドニー・スミスはいまや伝説的なマランツ#2,#5,#8,#9(管球王国36参照)などのマランツ前期の代表的なパワーアンプ設計者です。現在の日本マランツのアンプは円形のメーターをデザインの特徴にしていますが、それは#9を規範としています。
http://www.marantz.jp/bc/brand/history/
そうした米国オーディオ界の重鎮的存在の人がこうしたヘッドホンアンプの設計をするとは珍しいことですが、HPA-1の頃には齢60を過ぎていておそらく引退をされていたと思いますのでJoeとの交友関係で設計をしたのでしょう。シドニー・スミス時代のマランツもプロ機器ゆずりのこだわった作りこみを特徴としていますので、おなじようにこだわりのあるjoeとは共鳴するところがあったと思われます。
海外の個性的なオーディオにおいては音決めをするオーナーと音を作る設計者というペアの関係がよく引用されますが(例えばMLASのマークレビンソンとジョンカール)といわれますが、HPA-1においてはそれがジョウ・グラドとシド・スミスというわけでハイエンドオーディオにも比肩するかなり豪華なものです。
そしてもちろんこれもHP-2と同様に妥協のない作りこみがなされています。ボリューム、電子部品、ワイヤー、コネクターなどいたるところでJoeの選んだカスタムメイドのパーツが使われています。
製作はJoe自身とマランツのトム・キャドバス(品質管理部門の技術者)との手作りで生産数はかなり少ないようです。また作成しているうちにJoeのこだわりから試行錯誤でパーツ類も変えていったとも言われますので市場のどのHPA-1も音が違う可能性もあります。中身は大きく二つのタイプがあると言われますが、実際にいくつのバリエーションがあるかは分かりません。
このようにHPA-1はHP-1000よりさらに深いものがありますし、HP-1とRS-1が異なる以上にHPA-1は現在のRA-1とは違うものといえます。(HPA-2というのもあるようですが、これはよくわかりません)
実際にHP-2と組み合わせてみるとヘッドホンとヘッドホンアンプの相乗効果というものをあらためて考えさせられます。
この流れるような音楽性とGradoの暖かいヴォーカルの組み合わせはまさに絶妙です。高域も低域も絶妙のバランスでかつナチュラルです。それでいてモニターというイメージから来る無味乾燥さとは無縁の音楽性の高さが感じられます。

ATH L3000をHPA-1につけてみると特に低域は延びますが、特にアコースティックな音楽を再生したときのバランスは完全にHP-2との組み合わせが上です。L-3000はかなりメリハリがつくように音が強調されて聞こえますが、HP-2に換えるととても自然な音の流れを感じます。おそらくはHP-2のフラットなバランスにあわせてアンプの方で強弱を加えているのだと思います。そうしてシステムとして音楽的なバランスが形成されます。
またフラットなHP-2を動的なHD-1Lにつけると組み合わせとしては良さそうに思えますが、今度はHPA-1と組み合わせたときのような滑らかさが出ないのである意味HP-2の良さを消してしまっています。またこの組み合わせで聴くときついというほどではありませんが、やや高域が強調されます。そこからもHPA-1がうまく子音の抑制を行っていたことがわかります。
やはりHP-2の項で書いた「聴きやすさ」というところはHP-2とHPA-1の相乗効果だと思います。
ただATH L-3000をHD-1Lにつけると今度はきちんとはまります。聴きやすくて動的にもすばらしい再現性です。この組み合わせはいいと思うんですが、この辺も相乗効果というのはあると思います。
今度はHP-2/HPA-1とL-3000/HD-1Lで同じソースを聴くと前者は落ち着いた大人の音楽、後者は動的でダイナミックな演奏者の気持ちが感じられます。また前者よりは後者がウォームに聴こえます。HP-2/HPA-1もややウォームだと思いますが、かなりニュートラルに近いと思います。
ただ相乗効果ということを逆に言えば、これ単体で今の最新のヘッドフォンと組み合わせるのはお勧めできないかもしれません。HP-2との相性という面を別にすると、たしかに現在において最高クラスのLuxman P-1などと比べるとやや情報量や解像力、あるいはSNや定位のフォーカスがやや甘いなどオーディオ性能的なところは劣るといえます。
やはりHP-2と組み合わせてこそ真価を発揮するアンプといえるでしょう。
またHPA-1はこうした小型の高性能ヘッドホンアンプの嚆矢でもあります。いまとはちがってHP-1000の時代はこうした小型ヘッドホンアンプの良いものがなかったのでそれが開発のきっかけということのようです。
電源は12Vのアダプターと9V電池二個のいずれかです。ポータブルも可能というわけですが、大きさから考えると運ぶというよりも電源としてのクリーンさを狙って電池にしたという気もします。さらにバッテリー室に仕切りや押さえがなくてバッテリーがきちんと固定されないので移動時に動いてしまうという点もポータブルには適しません。ただし部屋をまたいで、という点では可搬性は高いと思います。
電源スイッチ位置にスタンバイポジションがあるのもハイエンド機を思わせます。

もし内部の画像に興味がある人はHeadfiの画像倉庫にあります。
http://photo.head-fi.org/
ここでキーワードをHPA-1で検索してください。
当時の価格は$795ですが、こちらはHP-1000と違ってプレミアがないので入手金額はその半額くらいでした。この個体は動作は完全で、ほとんど新品同様でした。しかし事実上修理不能なので本来はある意味で「ビンテージアンプ」として楽しむものかもしれません。しかしこのHP-2とHPA-1の組み合わせはビンテージとして片付けることはできない魅力をもっています。
最近ではMcIntoshがもはや引退したと思われるシドニー・コーダーマン名義で数十年前の名作を焼きなおして新しい真空管アンプを発表していますが、その是非はともかくこうして顔が見えるということが海外オーディオの面白さのひとつだと思います。
HPA-1はHP-2とともにそうしたアメリカオーディオ黄金期の残滓がヘッドホンの分野にあったと思わせてくれます。
2005年08月01日
Joe Grado・シグネチャープロダクト - "HP-2"
日本のGrado製品の購入紹介のページによくGradoの名声を成したヘッドホンとして紹介されているのがこの"HP-2"です。伝説的とも称されますが、いまでは絶版になっています。
ちなみにGrado HP-1/2/3を総称してHP-1000とも呼びます。HP-1000の中でももっともポピュラーなものがHP-2です。

HP-2の特徴はなんといっても細部にわたり加工がオーバークオリティといわれるほど精密なことです。現在とは違いプラスチックパーツはありません。ドライバーを包むイヤピースはアルミ合金削りだしでずっしりと手ごたえがあり、美しく磨きこまれています。位置決めはそのイヤピースをネジで固定します。

HP-2の製作はかのJoe(Joseph) GradoでMCカートリッジの開発などで音の殿堂入りを果たしています。現在Gradoのヘッドホンとして売られているもの(RS-1や325など)は経営が甥のJohn Gradoになってからものです。
Joeの時代のクラフトマンシップあふれる音的にも作りにも妥協なきところは写真好きな私にはライカなどドイツ製品のマイスター魂を思わせます。しかし同じ時期に製作されたヘッドホンアンプのHPA-1とともに採算度外視の作りこみはGradoを赤字に導いたといわれています。そこを継いだJohnはもうすこしアメリカ合理主義があり、やりすぎたところを合理化して音質をできるだけ落とさずにうまく作りこみGradoを立て直しました。そして現在に至ります。

もともとJoe Gradoはスタジオ用のモニターとしてHP-1000を製作したらしく、こうした堅固なアルミ削りだし素材にしたのはスタジオでのタフな使用に耐えうるものとして作られたようです。特別モデルと考えられている現在のメタルハウジングのPS-1も同様な理由でドイツのスタジオ現場からの要求によるものということのようです。HP-1の位相反転機能もレコーディングで使うためのものかもしれません。
まずHP-2は頭にかぶった瞬間にJoe Gradoの主張が伝わります。その金属フレームの剛性感ある装着感はそれだけで個性を感じます。それほど重くはありませんが確かなホールド感があります。イヤピースはビスによって位置を固定しますが、間接部の自由度が大きいので適切に耳にフィットします。

HP-1000はモニター的と評されることもありますが、やや暖かいヴォーカルの再現を基調とした音は現代のGradoに通じるものがあると思います。おそらくは低音の出方が現在のものとは異なるのでモニター的という評が付くことがあると思いますが、そうした言葉から連想されるような冷たくて無味乾燥な音とはまったく違います。
フラットというよりはバランスがよいと言ったほうが良いかもしれません。能率の低さもあって、いまのAKGの繊細さとGradoの艶っぽさをほどよくブレンドした感じにも思えます。端正でかつ上質です。低域はメリハリがあるというよりは適度な量感でタイトに締まっています。高域はとてもよく子音が抑制されて耳に優しい感じがします。このように低域も高域も適切にコントロールされているところにHP-2の特徴のひとつがあります。
(私のものはケーブル交換されていますので音についてはその上での評ということになります)
わたしはRS-1は所持していないので直接比較できませんが、感じとしてはメリハリのあるRS-1に対して滑らかなHP-2ということになると思います。
HP-1000はときには超高性能と評が付くこともありますが、ヘッドフォンとしてのオーディオ性能を考えると実際のところRS-1と同じくらいかもしれません。高域も低域もよどまずにほどよく伸びますが、解像力や周波数特性は最新最高のものほどではないかもしれません。ちなみにHP-1000系は共通データとしてはインピーダンスが40Ω、能率が94dbとやや能率が低くなっています。周波数特性は18Hzから24kHzです。ちなみにRS-1は12Hzから30kHzです。
アンプとの相性はHD-1LよりもLuxman P-1の方が良く思えます。しかしHP-1000用に設計されたGrado HPA-1がやはりもっとも相性は良く音楽性を感じます。Grado HPA-1との"Signature Combo"はナチュラルでかつバランスが良く、そして流れるように歌うように音楽的です。
わたしが聴くようなコンテンポラリー・アコースティックのNew Age系、またはスムースジャズやアーバンジャズ、クラシックの室内楽には特に相性が良く思えます。とにかく気持ちが良いという一言ですね。長時間聴いても聴き疲れしません。
もちろんロックを聴いてもうまく鳴らしますが、低音の迫力が物足りないという人は多いかもしれません。低音のタイトさは申し分ありませんが、ちょっと上品であって音の塊的な量感としての迫力という点ではいまひとつかもしれません。
相場は一時は高騰していたようですがHP-2で現在$700-$900くらいだとおもいます。(ちなみにRS-1の米国価格はだいたい$700)。それにしてももとは$495ですからいまではずいぶんプレミアがついているわけです。こうして昔のヘッドホンで現在価値を見直されているものとしてSTAXの初代オメガをちょっと連想させます。
そのためもあってHP-1000は時とともに過大評価される傾向はあるようですが、Joe Gradoという才人の音の考え方や製品へのこだわりを個性として伝えてくれる名器と言って間違いはないと思います。
Appendix: HP-1000とバリエーション
HP-1000はGradoシグネチャープロダクトのヘッドホンシリーズ(HP-1/HP-2/HP-3)の総称です。HP-1000は80年代末に設計されて90年代前半に5年間ほど1000台程度製作されたようです。これらがHP-1000と呼ばれるのはトータルで1000セット作られたからとも言われています。(実際の製作数については諸説あります)

HP-1000には大きく二つのタイプがあって、それぞれHP-1とHP-2と呼ばれます。その違いはHP-1が左右のイアピースの中央に位相切り替えスイッチがあることですが、スイッチ自体が音に影響するという評もあります。そのためか普通はシンプルなHP-2の方が一般には好まれるようです。ドライバーなどはみな同じはずです。
また少数ですがHP-2の派生型としてHP-3というのもあります。これはHP-2のコストを下げるために左右のドライバー特性の合致の基準を緩めるなどドライバーの製作精度を下げたモデルのようで、HP-2より$100ほど安く販売されていました。HP-1とHP-2は0.05dbの合致基準で製作されていますが、HP-3はそれより低いということです。ちなみに現在はRS-1/SR325iで0.05db、SR125で0.1dbとなっていますのでHP-3は現在の普及クラス並みということになるかもしれません。
見た目はHP-2とほとんど同じなので、元箱がないと区別できません。そのためオークションなどで箱なしのアイテムを買う人は注意が必要です。HP-1000の特徴として本体にシリアルや型番はついていません。(またそのために下記のように外観でバージョンを定めるようです)
*追記: HP-3はパッドをめくると刻印されていたそうです。ただこするとそれも消えてしまうとのことです。HP-3は50作られたそうです。
HP-1000には表面仕上げとケーブルにいくつかマイナーチェンジがあるようです。
まず表面仕上げにはアルミ地のムクに近いものと研磨されたような光沢のあるものがあります。研磨されたほうが後期型ですが、こちらはレタリング文字がとれやすいようです(私の固体)。
さらに後期にはドライバーのネット部分がドームのように盛り上がっているものがあります。
またケーブルは3種類のケーブルがあり、最初期の無印のものと中期の"Joseph Grado Signature Ultra-Wide Bandwidth Reference Cable(通称UWBRC)"と最後期の"Grado Signature Laboratory Standard Audio Cable"と記入のあるものがあります。これらは購入時の選択ではなくあるときから切り替わったようで市場のものはUWBRCが大勢だと思います。
やや音には違いがあるとのことですが、これらはわりと長短あって名前の示すように単純に標準と高級版というわけではないようです。HP-1000の音に対してのリクエストを受けてケーブルで音を調整しようとしたようにも思えます。
今回注文したものにはオリジナルのUWBRCもつけてもらいましたが、プラグ形式ではないので予備的な意味合いです。
*追記: 最近のJohn Gradoのインタビューからケーブルは刻印のある二種類のみがHP-1000用に作られたそうです。

またHP-1/2/3(HP-1000)だけでなくSR100/200/300がJoeの時代のものです。このうちでSR-100/200はHP-1000と同じドライバーを使っているかもしれません。
価格は当時でHP-2が$495で、HP-1は$595、HP-3は$395でした。
ちなみにGrado HP-1/2/3を総称してHP-1000とも呼びます。HP-1000の中でももっともポピュラーなものがHP-2です。

HP-2の特徴はなんといっても細部にわたり加工がオーバークオリティといわれるほど精密なことです。現在とは違いプラスチックパーツはありません。ドライバーを包むイヤピースはアルミ合金削りだしでずっしりと手ごたえがあり、美しく磨きこまれています。位置決めはそのイヤピースをネジで固定します。

HP-2の製作はかのJoe(Joseph) GradoでMCカートリッジの開発などで音の殿堂入りを果たしています。現在Gradoのヘッドホンとして売られているもの(RS-1や325など)は経営が甥のJohn Gradoになってからものです。
Joeの時代のクラフトマンシップあふれる音的にも作りにも妥協なきところは写真好きな私にはライカなどドイツ製品のマイスター魂を思わせます。しかし同じ時期に製作されたヘッドホンアンプのHPA-1とともに採算度外視の作りこみはGradoを赤字に導いたといわれています。そこを継いだJohnはもうすこしアメリカ合理主義があり、やりすぎたところを合理化して音質をできるだけ落とさずにうまく作りこみGradoを立て直しました。そして現在に至ります。

もともとJoe Gradoはスタジオ用のモニターとしてHP-1000を製作したらしく、こうした堅固なアルミ削りだし素材にしたのはスタジオでのタフな使用に耐えうるものとして作られたようです。特別モデルと考えられている現在のメタルハウジングのPS-1も同様な理由でドイツのスタジオ現場からの要求によるものということのようです。HP-1の位相反転機能もレコーディングで使うためのものかもしれません。
まずHP-2は頭にかぶった瞬間にJoe Gradoの主張が伝わります。その金属フレームの剛性感ある装着感はそれだけで個性を感じます。それほど重くはありませんが確かなホールド感があります。イヤピースはビスによって位置を固定しますが、間接部の自由度が大きいので適切に耳にフィットします。

HP-1000はモニター的と評されることもありますが、やや暖かいヴォーカルの再現を基調とした音は現代のGradoに通じるものがあると思います。おそらくは低音の出方が現在のものとは異なるのでモニター的という評が付くことがあると思いますが、そうした言葉から連想されるような冷たくて無味乾燥な音とはまったく違います。
フラットというよりはバランスがよいと言ったほうが良いかもしれません。能率の低さもあって、いまのAKGの繊細さとGradoの艶っぽさをほどよくブレンドした感じにも思えます。端正でかつ上質です。低域はメリハリがあるというよりは適度な量感でタイトに締まっています。高域はとてもよく子音が抑制されて耳に優しい感じがします。このように低域も高域も適切にコントロールされているところにHP-2の特徴のひとつがあります。
(私のものはケーブル交換されていますので音についてはその上での評ということになります)
わたしはRS-1は所持していないので直接比較できませんが、感じとしてはメリハリのあるRS-1に対して滑らかなHP-2ということになると思います。
HP-1000はときには超高性能と評が付くこともありますが、ヘッドフォンとしてのオーディオ性能を考えると実際のところRS-1と同じくらいかもしれません。高域も低域もよどまずにほどよく伸びますが、解像力や周波数特性は最新最高のものほどではないかもしれません。ちなみにHP-1000系は共通データとしてはインピーダンスが40Ω、能率が94dbとやや能率が低くなっています。周波数特性は18Hzから24kHzです。ちなみにRS-1は12Hzから30kHzです。
アンプとの相性はHD-1LよりもLuxman P-1の方が良く思えます。しかしHP-1000用に設計されたGrado HPA-1がやはりもっとも相性は良く音楽性を感じます。Grado HPA-1との"Signature Combo"はナチュラルでかつバランスが良く、そして流れるように歌うように音楽的です。
わたしが聴くようなコンテンポラリー・アコースティックのNew Age系、またはスムースジャズやアーバンジャズ、クラシックの室内楽には特に相性が良く思えます。とにかく気持ちが良いという一言ですね。長時間聴いても聴き疲れしません。
もちろんロックを聴いてもうまく鳴らしますが、低音の迫力が物足りないという人は多いかもしれません。低音のタイトさは申し分ありませんが、ちょっと上品であって音の塊的な量感としての迫力という点ではいまひとつかもしれません。
相場は一時は高騰していたようですがHP-2で現在$700-$900くらいだとおもいます。(ちなみにRS-1の米国価格はだいたい$700)。それにしてももとは$495ですからいまではずいぶんプレミアがついているわけです。こうして昔のヘッドホンで現在価値を見直されているものとしてSTAXの初代オメガをちょっと連想させます。
そのためもあってHP-1000は時とともに過大評価される傾向はあるようですが、Joe Gradoという才人の音の考え方や製品へのこだわりを個性として伝えてくれる名器と言って間違いはないと思います。
Appendix: HP-1000とバリエーション
HP-1000はGradoシグネチャープロダクトのヘッドホンシリーズ(HP-1/HP-2/HP-3)の総称です。HP-1000は80年代末に設計されて90年代前半に5年間ほど1000台程度製作されたようです。これらがHP-1000と呼ばれるのはトータルで1000セット作られたからとも言われています。(実際の製作数については諸説あります)

HP-1000には大きく二つのタイプがあって、それぞれHP-1とHP-2と呼ばれます。その違いはHP-1が左右のイアピースの中央に位相切り替えスイッチがあることですが、スイッチ自体が音に影響するという評もあります。そのためか普通はシンプルなHP-2の方が一般には好まれるようです。ドライバーなどはみな同じはずです。
また少数ですがHP-2の派生型としてHP-3というのもあります。これはHP-2のコストを下げるために左右のドライバー特性の合致の基準を緩めるなどドライバーの製作精度を下げたモデルのようで、HP-2より$100ほど安く販売されていました。HP-1とHP-2は0.05dbの合致基準で製作されていますが、HP-3はそれより低いということです。ちなみに現在はRS-1/SR325iで0.05db、SR125で0.1dbとなっていますのでHP-3は現在の普及クラス並みということになるかもしれません。
見た目はHP-2とほとんど同じなので、元箱がないと区別できません。そのためオークションなどで箱なしのアイテムを買う人は注意が必要です。HP-1000の特徴として本体にシリアルや型番はついていません。(またそのために下記のように外観でバージョンを定めるようです)
*追記: HP-3はパッドをめくると刻印されていたそうです。ただこするとそれも消えてしまうとのことです。HP-3は50作られたそうです。
HP-1000には表面仕上げとケーブルにいくつかマイナーチェンジがあるようです。
まず表面仕上げにはアルミ地のムクに近いものと研磨されたような光沢のあるものがあります。研磨されたほうが後期型ですが、こちらはレタリング文字がとれやすいようです(私の固体)。
さらに後期にはドライバーのネット部分がドームのように盛り上がっているものがあります。
またケーブルは3種類のケーブルがあり、最初期の無印のものと中期の"Joseph Grado Signature Ultra-Wide Bandwidth Reference Cable(通称UWBRC)"と最後期の"Grado Signature Laboratory Standard Audio Cable"と記入のあるものがあります。これらは購入時の選択ではなくあるときから切り替わったようで市場のものはUWBRCが大勢だと思います。
やや音には違いがあるとのことですが、これらはわりと長短あって名前の示すように単純に標準と高級版というわけではないようです。HP-1000の音に対してのリクエストを受けてケーブルで音を調整しようとしたようにも思えます。
今回注文したものにはオリジナルのUWBRCもつけてもらいましたが、プラグ形式ではないので予備的な意味合いです。
*追記: 最近のJohn Gradoのインタビューからケーブルは刻印のある二種類のみがHP-1000用に作られたそうです。

またHP-1/2/3(HP-1000)だけでなくSR100/200/300がJoeの時代のものです。このうちでSR-100/200はHP-1000と同じドライバーを使っているかもしれません。
価格は当時でHP-2が$495で、HP-1は$595、HP-3は$395でした。