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2011年09月22日

AKG K3003 ハイエンドイヤフォンの時代

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AKGが1000ユーロというハイエンドのイヤフォンを開発したと言うことでしばらく前から話題となっていましたが、そのAKG K3003がIFAでベールを脱ぎ、間おかずに国内でも代理店のハーマンから発売されました。私は雑誌記事のために試聴機をしばらく借りていたんですが、その音のよさに自分でも欲しくなってしまいフジヤさんに予約して入手しました。価格的には国内価格はかなり高価になるかと思われたんですが、妥当な値段ですね。なおハーマン経由ではリモコンなしのモデルを扱い、アップルもリモコンありのモデルを扱うと言うことです。その兼ね合いも合っての価格決定かもしれません。

K3003の特徴は3Wayのトリプルドライバーにバランスド・アーマチュア(BA)とダイナミック型のハイブリッド構成を取っているという点です。3Wayのトリプルドライバーはいまや珍しくありませんが、BAとダイナミックのハイブリッドはユニークです。BAがその特性を生かして中高域を担当し、ダイナミックタイプはいわばウーファーとなり低域を担当します。
またスペックを見ると驚くのは高域が30kHzまで伸びると言うことです。通常このタイプでは20kHzまでとしても高い性能であり、16kHzでもおかしくありません。実際は30kHzで何dB損失かと言うことを比較しなければならないので、単純には比べられませんがかなり特徴的な点です。これは倍音再生などにも利いてくるでしょう。

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実際その性能レベルは驚くほど高く、JH13とかUE18のようなハイエンドクラスのカスタムイヤフォンにTWagとかPiccolinoのような高性能ケーブルを常用していても驚くほどです。これらのカスタムイヤフォンでは総じてBAによる細部表現は良いが、能率が高すぎて音が膨らみ締りのない音になりがちです。JH16やUE18は顕著ですが、そうした傾向が少ないJH13でも緩みによる甘さはあるということをK3003は気づかせてくれます。
K3003はそうした贅肉がなく、あくまでソリッドで淀みないシャープさを堪能できます。それが本来的な楽器の美しさを再現しているように感じられます。明瞭さと言う点ではEty ER4を始めて聴いたときのような驚きがあるように思えますね。
スピードが早く立ち上がりとたち下がりが素早く正確で、アコースティック楽器の音は端正で美しく響きます。

もうひとつの特徴はかなりワイドレンジであると言う点です。低いほうは量感も低域の深さもかなりのもので、パイプオルガンの低音によるローカットのあるなしのテストトラックで聴いてみるとかなりローカットがはっきりわかるので低いほうにも相当深く沈んでいると感じられます。また高いほうはさらに印象的で、高域のベンチマークになるベルの音なんかは今まで聴いたことがないくらいのカチッとした正確な金属の硬質感を感じられ、しっかりとした強さでベルの存在感を主張しています。ソプラノもどこまでも突き抜けて行くかのように気持ちよく高く伸びていきますね。
また特筆すべきなのは立体感や楽器の重なりの明瞭さで、HP-P1やHM801などの良いアンプを使うと三次元感覚はちょっと驚きます。アコースティック楽器だけではなく、音響系(エレクトロニカ)アーティストの複雑で精巧な電子音の構築はポータブルではちょっと聴いたことがないくらいの音の重なりを楽しめます。

いずれにせよ、今までのようにカスタムがユニバーサルより上である、とはいえなくなったのは事実です。SE535もWestone4もやはりJH13とかUE18と比べると、というのはありましたが、(まあ価格も比較になりませんが)K3003には正直舌を巻くと言うかユニバーサルでここまでできるとは思いませんでした。それだけでもエポックメーキングなイヤフォンと言えます。実際にカスタムではなくユニバーサルということを逆に利用して高い剛性のステンレスシャーシを使うことで音の純度を高められたということはあるかもしれません。

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FOSTEX HP-P1などの優れたDACを持ったヘッドフォンアンプで音世界の緻密さを味わって欲しいと思いますが、iPhone直とFLAC Playerで聴いて欲しいとも思います。iPhoneでこれだけの音が出せたのかと驚くことでしょう。FOSTEX HP-P1ではぜひDirgentのUSBケーブルなど良いUSBケーブルを使ってください。ホームアンプで高性能ヘッドフォンで楽しむような立体感や質感が楽しめることでしょう。

ケースも高級感あるとともによくできていて、あまり添付のケースは使わない私でもこれは常用しています。チップがいま一つにも思えますが、これでこの音が出ると言うところにも逆に驚きますね。意外とダイナミック用のいろいろなチップがはまるので少し工夫してみたいところです。また音響フィルターを交換してHighブーストとかBassブーストもできるのですが、標準のリファレンスでの完成度に比べるとちょっと必要性は薄いように思えます。ただ組み合わせるアンプによってはフィルターを換えてみるのも面白いでしょう。

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K3003はBAとダイナミックのハイブリッドと言う点で変わってるようにも思えますけど、ふとAKGにはK340があったのを思い出しました。
これは静電型とダイナミックのハイブリッドで、静電型ドライバーが高域を担当してダイナミック型ドライバーが低域を担当します。K340は静電型と言ってもSTAXと違ってエレクトレットタイプです。K340はK240という機種をベースにした発展型ですが、K240はスピーカーで言うところのパッシブラジエーターをヘッドフォンに取り入れた独特のデザインでした。AKGってK1000もそうだけどけっこうユニークな製品を作るメーカーです。K3003がハイブリッドというのも不思議はないかもしれません。K340については以前書きましたのでこのリンクをご覧ください。
http://vaiopocket.seesaa.net/category/1059886-1.html

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さすがにK240についてはついに買いませんでしたが、この頃はGRADO HP-1000(HP-2)なんかも研究していました。思うとK3003の音の印象ってHP-1000にもある面で似てるかも知れません。精緻で正確、そして美しいサウンド、美しいハウジングです。Joe Gradoがその理想を追うために開発したのがHP-1000シリーズです。これは商業的には失敗しましたが、その音をいまでも求める人が絶えません。私もその一人だったわけですが、思えばうちのサイトもこの頃の方がマニアックだったかもしれません。
しかし今ではこんなマニアックなK340やHP-1000をネットをあさって発掘してこなくても、HD800やEdition8など量産品で中野のお店に行けば十分良いものを買える時代です。K240にしてもK340にしても当時のドライバーの再現レンジの限界をさまざまな工夫で突破しようとしていたわけですが、いまでは同じようなことをより強力なマグネットや進化したドライバーが可能にしてしまいます。
それを考えると今と言うのはヘッドフォンやイヤフォンの良い時代なのかもしれません。
posted by ささき at 23:47 | TrackBack(0) | __→ AKG K3003 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする