Music TO GO!
2008年05月19日
Head-Direct RE1 "Dragon"
1. ハイ・インピーダンスIEMとしてのRE1
RE1はHead-Directが販売する150ΩのIEMです、ピリオド。
と、いうくらいこれについてはあまりよく分かりません。ウエブをみてもインピーダンスが150Ωであること以外は書いてありません。
よくわからないのに買うなよ、という話もありますが、あのYUIN PK1を販売しているHead-Directが企画したもので、PK1と同じ150Ωでカナルタイプというだけでなんとなくピンとくるものがあったわけです。
YUINはPK1の次機種としてはOK1というイヤホンにもなるし、カナルタイプにもなるというコンバーチブル機を開発したんですが、イヤホンモードのときはかなり良いけれどもカナルモードでアタッチメントをつけるといまいち、というレビューが大勢なので少し様子見をすることにして、ハイインピーダンスのカナルタイプとしてはRE1の方を選んでみました。
たとえばUE11なんかは音は素晴らしいのですが、高能率のうえにインピーダンスが低すぎて使いにくい面があります。PK1はハイインピーダンスの良さを教えてくれましたが、イヤホンですので電車内での使用に限界があります。そこでハイインピーダンスのカナルタイプが欲しかったわけです。
2. RE1の購入について
RE1はHead-directのサイトから購入することができますが、Group Buyという扱いなので注意してください。
http://www.head-direct.com/
Group Buyは共同購入とかまとめ買いという意味ですが手法はさまざまで、ユーザーが集まってまとめて発注して安く買おうというときもありますし、ディーラーがあるロット分の注文がたまった時点でメーカーに発注をかけるというときもあります。
サイトには中一日で発送とは書いてあって、わたしの場合も頼んで二日で発送されました。気になる人は問い合わせてから注文してみてください。Group buyというよりは先行発売とかテスト販売のようなもののように思えます。発注自体はBuyボタンを押してからPaypalで手続きするだけですので簡単です。Group Buyだからと、とくに交渉等はありません。なおGroup buyは(少なくともRE2については)6/15までだそうで、その後はわかりません。
なお、Group buyの利益の50%は四川大地震の支援に寄付されるそうです。
3. RE1のデザインとパッケージ
Group buyのせいか外箱はついていませんが、専用ケースがついています。RE1は「ドラゴン」という愛称がついているようで、龍のデザインがなかなか中華風です。ちなみに32ΩバージョンのRE2は「フェニックス」というコードネームで箱も不死鳥の絵になっています。
やや大きめのケースの中には付属品がたくさんはいっています。
RE1のケーブルはたしか1mだったとおもいますが、少し短めですのでこのように延長ケーブルがついてきます。ケーブルのジャンクションには金メッキの留め具がついていてなかなか高級感はあります。
RE1の外見的な特徴としては背面に開口部があるということで、これは低音のためのポートのようですが、同時に遮音性を少し損ないます。ちなみにRE1はこの部分がゴールドでRE2はシルバーです。
このように先端にはフィルターがついています。
RE1についてはチップがいくつか付属してきます。
シングルフランジの大小、ダブルフランジの色違いなど、フォームがついているというレポートもあったように思いますがOK1の方だったかもしれません。小さな子袋があって、なかには極小のシングルがついていました。この辺はテスト販売ということかもしれません。
(右下の灰白のチップはComplyチップです)
4. RE1の音
RE1は150Ωということからポータブルアンプを使うことが前提です。nanoなんかを使うと、アンプなしでもPK1よりは音量が取れるようにはなっているようです。ただしiPod直では音性能はとても発揮できているとはいえません。アンプなしで使いたいという人にはRE2という低インピーダンスのバージョンがあります。
わたしはとりあえずiMod5.5G+Super Cotton iMod dock+Xin SM4というセットアップで聴きました。
IABCスイッチのゲイン(A)はハイにしていますが、他のスイッチはオフで使います。
4-1 音の印象と経過
まず箱から出しての第一印象ですが、ぱっと聴いて少し甘く感じます。
ただ細かい音はよく解像してるので、はじめは中低域の空気感のようなぼんやりしたものがそう感じるのかと思ってたんですが、imageなんかとちょっと比べると高域がごっそり落ちているような刺激性のなさがありました。たとえば流行りのエリックモングレインのようなアコースティックギターの早弾きなんかでは音のエッジが切れの部分で丸くなってしまっている感があり、「キー」とか「キュッ」といった高域の切れの気持ち良さの点でいまひとつ物足りなさが感じられました。男声ヴォーカルはよいんですが、女性ヴォーカルとかヴァイオリンで不満がありました。
しかし、これも一日聴いていくにつれて緩和され、その後に一晩エージングしてみると高域はかなり再現されるようになり不満点はほぼなくなります。それでもバランストアーマチュアのような切り裂く高音はありませんが、さ行のきつさもまるでないのでここは好みの問題と言えるレベルです。この時点では女性ヴォーカルもヴァイオリンも不満なくなります。かえって強調感のない高音がよいという人もいると思います。
ふつうは高域がきついのをエージングで柔らかくするものだけど、これは逆に弱い高域がエージングで出てくる感じです。感じとしては発音ユニットのピストンモーションがかなり硬かったのが、エージングでより闊達に動くようになったという感じです。それが高域では顕著に感じられたように思います。全体的な音も聴き始めからタイトではありましたが、やはりエージングを少しすることでさらにシャープになり、音のゆるみはほぼなくなります。
ハイインピーダンスでノイズフロアが低いことで音は明瞭であり、PK1同様に解像力もかなり高く感じられます。こうなるとインピーダンスの高さがメリットとして生きてきます。十分にエージングされると高域も含めて音は研ぎ澄まされてクリーンでよどみがありません。効果音やささやき声のような音はかなりリアルに聞こえます。
これこそハイインピーダンスと良いアンプがうまく融和している音だと思います。
箱から出した時はエージングゼロであるというバイアスをかけていつも評価していますが、RE1はそれでもかなりエージングが必要な手ごわいタイプではあるということを意識しておいた方がよいかもしれません。
これでRE1に期待していたハイインピーダンスならではのタイトなIEMという期待条件は満たされましたが、さらにRE1には他より抜きんでた長所があります。こちらは初日からでもかなり感じますが、スケール感がかなりあって音の広がりと空間表現がとても立体的であるという点です。
Ultrasoneのデモディスクに波の音が動き回るように聞こえるトラックがありますが、これなんかはかなり気持ちが悪くなるくらいに聞こえます。IMAGEもかなり音の広がりは良い方ですが、IMAGEだと波が左右にいったりきたり動くという感じだけですが、RE1だと背後に回りこむ感覚もあり、もっと立体的にサラウンド感のようなものが感じられます。ただ横に広いというよりも、前後左右の空間的な奥行き感があるという感じです。
もうひとつの長所は低域の豊かさです。これはポートが効いているのかもしれませんが、低域のレスポンスが妙に強いというような張り出し感ではなく、自然な豊かさがあります。また低域の解像力も高く、コントラバスソロも弦のうなりがよく聞こえ、量感とともに質も高い低域再現力があります。またタイトな音の特性とあいまって、低域ではパンチがありダイナミックと言う感じでロックにもとても向いています。
フラメンコのタップなんかもダイナミックで、ダンっと叩きつけるような感覚が切れがよく気持ち良いものがあります。
タイトでシャープな音の鳴り方からジャズのピアノトリオのようなものも個々の楽器の再現が良いですが、立体感が高く低域が気持ち良いのでポストロック・エレクトロニカのような電子的に処理されたいわゆる打ち込み系でもかなり楽しめます。音が動き回るようなトラックだとなかなか楽しめるでしょう。
いずれにせよ良いアンプは必須です。
ここまで書いてきて、特に空間表現のところなんかは聴いていたXin SM4の特性をそのまま書いているような気がするのに気が付きました。
そういう意味ではアンプの性能を映す鏡のような面もあるように思います。
4-2 遮音性
低域特性の良さの反面で、ポートのせいでRE1は遮音性を犠牲にしてはいます。いずれのチップでも外の音はこもってではなく小さいけどクリアに抜けて聞こえるので、ポートから入ってきていると思います。
どの程度かということですが、音を止めていると電車の中の環境音はわりと聞こえます。ただイヤホンのようにまったく遮音性がないというわけではなく、それなりには小さくなります。音楽を聴いているときはイヤホンのように環境騒音で聴こえなくなるというほどではないと思います。音漏れも多少あるとは思いますが、IEMなのでそれなりだと思います。
4-3 チップ
RE1もIEMとしてかなりチップで音は左右されます。装着感はあまりよい方ではないと思います。つけにくさではtriple.fiなみという感じでしょうか、ここはやはりユニバーサルタイプではIMAGEは傑出していると思います。装着がわるいと確実に低音が逃げるので、RE1の良さの一つが失われてしまいます。
結局はわたしには上の写真の標準の透明なダブルフランジが一番空間表現や帯域バランス、遮音性が良かったと思います。
またComplyチップも合うようです。これは上の写真になります。
ComplyチップはHeadFiではよく出てきますが、春のヘッドホンショウのときに書いたように日本ではEntry Japanから販売されるようになりました。わたしはそのときにサンプルでもらったものを付けてみましたが、するっとはまります。むこうのポストによるとT400というタイプのようです。Complyチップだとフィットは一番良いけど、全体にやわらかい感じになり、これの方が好みという人もいるかもしれませんが、RE1の凄みのようなものは減退するように思えます。
この状態でも環境音はそれなりに聞こえますが、遮音は十分なレベルとは思います。
5. まとめ
ちょっとだらだらと書いたのでまとめると、結局いまの時点でのRE1の特徴は下記のように思います。
* ハイインピーダンスならではのタイトな音再現(ただしアンプが必須)
* 高域はおとなしいがサ行のきつさも少ない
* 低域再現は解像力、量感ともにかなり良い
* 立体感がかなり高く、3次元的
* 装着性と遮音性はいまひとつ
RE1にはPK1のカナル版を単に期待していたんですが、結局は良い意味でも悪い意味でもそうではないという感じではあります。
(RE1のドライバはPK1より小口径(8mm)の新開発されたものだそうです)
やはり高域が物足りないという人もいるだろうし、遮音性がこれではという人もいるでしょう。アンプが必須というのも考えものという人もいるでしょう。しかし、アンプ前提という条件でより高いものを目指してほしいという人もいるでしょう。
そういう意味では平均点というところからは、はみ出したやはりPK1同様にニッチな面白い個性的な製品です。
個人的にはとても気に入っています。
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RE1遂に届きましたか!
最近オープンのインイヤタイプが好きなのでOK1が気になります。 資金が集まれば購入したいと思います。
RE1は150ΩのIEMなだけあって個性的ですねぇ
途中経過レポートも楽しみにしています。
メジャーメーカーの製品が面白みが少ないとは言いませんが、こうしてアンプを前提としたポータブルシステムのための製品を出してくれるのは小回りの聞く会社ならではです。
Fangsさんはよくheadfi meetingに出てheadfierの意見を吸い上げてくれてますしね。