CES2008のときに紹介したNuForceのデスクトップ・デジタルアンプのIcon-1が動き出しました。
1. NuForceとIcon-1について
NuForce(ニューフォース)は最近日本でもよく知られるようになってきたアンプのメーカーでカリフォルニアに本拠があります。主催はJason Limという人で10人ほどの会社のようです。
アメリカでも近年かなり注目されてきたようですが、特徴はそのドライブ能力の高さで、比較的低価格のプリメインのIA7Eでも4000というとてつもなく高いダンピングファクターを特徴にしています。デジタルアンプについてはiQubeのところで書いたので繰り返しませんが、Jasonさん本人の弁によるとデジタルというよりもアナログ・スイッチングアンプという方がより適切ということです。
プリメインのIA-7E(約25万くらい)については試聴したことを前に書きましたが、他にもセパレートのシリーズなどがあります。ハイエンドの音を手ごろな価格で、というメーカーと言えるかもしれません。
メーカーページはこちらです。
http://www.nuforce.com/
日本のページと製品はこちら。
http://www.nuforce.jp/
Icon-1はそのNuForceの初のコンシューマー向け製品で、なんと$250という低価格と多機能を特徴にしています。Trendsなどを筆頭にこのクラスのデジタルアンプは珍しくありませんが、ハイエンドで名を知られるメーカーの参入は興味深いものがあります。
(正式出荷の時はシルバーのみ特別価格$199で販売されると思います)
正式な一般出荷は4/25からのようですが、いろいろ問い合わせていたら先行で少数が販売されるということを教えてもらいさっそくオーダーをかけて昨日届きました。
2. Icon-1の特徴
Icon-1はアンプとしてはめずらしく赤、青、ブラック、シルバーのカラフルなシャーシが用意され、パッケージデザインもかなりこったものです。パッケージはいわゆるピザボックスタイプで、アメリカでの通販の箱にフィットしやすいということを想定しているようで、これもコンシューマー向けの量販を意識していると思います。
中にはUSBケーブルとAC電源(ユニバーサル対応)、アルミ製のスタンド、専用のスピーカーケーブル(1m)が入っています。これでそのまま使用ができます。
AC電源はACケーブルとは分離していて、オーディオ用のハイグレードケーブルに変えることができます。専用のスピーカーケーブルについては後で触れます。
出力は12W/chという控えめなものですが、Icon-1はUS特許を取得している上位機の技術をベースに卓越したドライブ能力を誇るということです。
ブランドから推して高いコストパフォーマンスは期待できますが、そのほかにIcon-1のもう一つの特徴は多機能であると言う事です。
基本はデジタルのプリメインアンプですが、USB入力がありUSB DAC(PCM2706)も内蔵されています。またプリアンプアウトもついているようですが、先行販売ユニットにはマニュアルがついていないので、この辺はマニュアルがアップロードされてからまた書きます。(マニュアルは今週に出来上がる予定ということです)
ラインアウトはやはりミニタイプで背面から出ています(ここはCESのときのプロトタイプとは異なります)。
さらに高品位なヘッドホンアンプまでついています。こうしたものについたヘッドホン出力というとおまけ的なものを考えますが、なんとディスクリートで設計している気合の入り様です。実際NuForceはスピーカーのみならず、こちら方面にも力をいれるようで、NuForceのオリジナルIEM($79くらい)も販売用意しているようです。さらに。。(5章に続く)
また、入力で特徴的なのは3.5mmミニプラグの端子がついていることで、iPodやドックから普通のmini-miniケーブルで接続できます。
大きさをiPodと比較してみました。
3.Icon-1の新機軸
Icon-1の斬新なところの一つはスピーカーケーブルです。
Icon-1のスピーカーケーブル端子は興味深いことにネットワークケーブル用のRJ45端子を使っています。そしてネットワークケーブルはCAT5(カテゴリー5)の100BASE-T用のものです。簡単に言うと家や会社でネットワークケーブルとして使っているものとほとんど同じということです。
それで付属のケーブルは一見するとネットワークケーブルにバナナプラグをつけたようなものがついています。接続はネットワークハブをいじっているような感覚に陥ります。
CAT5のネットワークケーブルをスピーカーケーブルに使うということについてのメリットをJasonさんに直接聞いてみたところ、いくつか回答してもらえました。
この特殊な接続はIcon側の背面スペースという問題のほかに、まず5月に発売される専用スピーカーのS-1とこのネットワークケーブルで接続したときにequalization networkという新機軸のネットワークの仕組みが働くようです。これは従来のクロスオーバーネットワークの仕組みがスピーカー側ではなく、アンプ側(Icon-1に内蔵されている)にあるということのようです。このS-1はやはりRJ45の口を持っているようで、Icon-1とS-1の接続はまるでネットワーク接続のようなものになります。そのため、CAT5の配線のうち6本はオーディオ用ですが、残りはS-1との通信に使われるということです。
またCAT5ケーブルは帯域幅が広いということと、低出力のオーディオ伝送にも向いているということです。もともとネットワークケーブルのツイストペアは外来ノイズを抑えるための仕組みなのでその辺も関係あるのかもしれません。
もちろんバナナプラグを使えば普通のスピーカーに接続できます。(付属のケーブルがこれです)
4. Icon-1の音
ここまででもいろいろ驚かされますが、一番驚いたのはやはりその音の良さです。
はじめはPCにUSB接続でYAMAHAのNS PF-7につなぎました。PCからはUSB Audioデバイスとして認識されます。
NSPF-7は販売終了していますが、マグネシウムコーンを採用しているデスクトップスピーカーではかなり優秀なものです。ただし能率が80dBと非常に低く、低域が軽く不足しがちという欠点はあります。
実際にIcon-1でも音量が取りづらいところもありますが、80dBは少々異常な低さなのでこれはいたしかたないです。またゲインがやや低めかもしれません。
それよりも、つないだだけであっさりと高品質な音が出てきたのに驚きました。NSPF-7でこんな堂々としっかりとした音が出るというのは驚きです。
夜遅く帰ったので、とりあえず初期不良をチェックする意味でいいかげんにつないだんですが、いきなりしっかりとした音が出たので、バーンインしてないとか、電源コンディショナーを通してないとか、そういうことはすっかり忘れていました。
これはさっそくメインにつながねばと本気モードでLINN IKEMIから入力してDynaudio 25周年スピーカーにつなぎます。電源ケーブルもオーディオ用に変えて、AudioPrismの電源タップにつなぎます。ここで夜の一時を回りましたがやめられません(笑)
ちょっと当分は夜がメインなのであまり大きく出せませんが、能率が88dBのDynaudio SP25(だいたい普通の現代スピーカーはこのくらい)ならまったく普通のアンプと同様に扱うことができます。(もちろんわたしのアパートでは、ということです)
まず低域に重量感がしっかりと乗っていて、全体に音に重みや実体感があります。サイズからは想像できません。
もちろん解像力も高く情報量もあります。しかし一番気に入ったところは音が分析的ではなく、適度に音楽的でデジタルアンプくさくないというところです。硬い、冷たい、無機的ということはありません。ここのところはJasonさんいわく、デジタルアンプではない、音は0と1にはしていないということです。あくまでアナログスイッチングアンプと呼んでほしいということのようです。
しかし音楽的でいて、楽器もきちんと分離しているという"デジタルアンプ"の良さもきちんとあります。
さすがNuForceの遺伝子というべきか、20hzまで沈む4ΩのDynaudio SP25の低域をわりとうまくコントロールしてベースのピチカートも大したものです。
ヘッドホンアンプはATH-W2002で聴きましたが、これも基本的な音の傾向は上と同じで、とても素晴らしい出来です。テストだから次々に曲を飛ばすべきですが、おもわず一曲に聞き入ってしまいました。
$250のヘッドホンアンプとしても価格以上だと思います。難というかもったいないのはミニプラグというところでしょうね。
これが$250の音か、アンプ界のモンペラか、という感じです。
とてもDrAmpとかそういうレベルのものではありません。一度DrAmpを試しに似たようなセッティングでやりましたが、二度とやる気は起きませんでした。
Icon-1は今日もこの記事を書きながらDynaudioで聴いています。
欠点は入力の切り替えやヘッドホンの抜き差しなどのタイミングでポップノイズが出やすいというところです。
また、性能についてもたしかにある程度のレベルのコンポーネントと入れ替えて、そうしたシステムの中に入れるとさすがに粗はあります。しかしいままでそこに入っていたのが、数十万円のセパレートアンプや十万円のスピーカーケーブルということ、いま入っているのは$250のアンプとおまけのケーブルということに気が付くと思考停止します。
デスクトップとしてはB&WのM-1なんかをちょっと考えていましたが、デスクトップとしてではなくミドルクラスくらいまでのオーディオならメインシステムの中核に入れてもおかしくないようなアンプと言えます。
手軽なサブ機がほしいという人から、これからスピーカーをそろえてちょっとオーディオに手を出したいという人まで広くお勧めできます。
5. Icon-1の周辺と今後
ちなみに6moonsではすでにレビューが出ています。(もともと先行出荷分はレビュー用のものです)http://www.6moons.com/audioreviews/nuforce7/icon.html
ここのJasonさんのコメントにも書いてありますが、関連製品としてはより性能の高いパワーサプライユニットが出るかもしれません。それとRJ45ではない通常のスピーカーケーブルのための拡張スピーカーポストもあるようです。
また予告されていたS-1というスピーカーは5月に発売の予定です。当初はS-1と組みで$400を想定していたようですが、それはやはりこの内容では無理だったようで、S-1も$250くらいになる予定です。S-1に関してはCESのときの反応を受けてかなり改良しているようでなかなか楽しみです。
NuForceをすでに知っている人は、NuForceのスピーカーというと意外にも思えるかもしれません。日本では知られていませんが、NuForceはS-9というリファレンススピーカーもラインナップしています。これはやはり自分のところでリファレンススピーカーがほしいからということのようです。スピーカーの設計は外部に委託しているようです。
さらに...NuForceオリジナルのIEMに加えてIcon Mobileというバッテリー駆動のタイプも来年あたりあるようです。これってもしや、、iQubeみたいなもの??
この音でポータブルならいくらでも必ず買います。しかし、ポータブルアンプはBruno PutzeysについでNuForceも出るというと驚きますね。ポータブルアンプというとマイナーな世界のようですが、Dクラスアンプの研究に関しては欧州の最高峰に続いてアメリカの雄みたいなところが参戦するとなると、、ほかのところがついてこれるか心配です(汗)
ちなみに4/19の中野のショウにはIcon-1も持っていく予定です。音は出せないかもしれませんが、スピーカーとのディスプレイやヘッドホン出力のデモを予定しています。興味のある方はどうぞ。
Music TO GO!
2008年04月03日
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こういうものにも発売前から着目して、入手して試してるささきさん、いつもながら、その慧眼と行動力に感心してます。
このアンプはぼくもぜひ一つ入手して試してみたいです。
ただいままでのハイエンド製品とは少し異なるので代理店さんは大変だと思いますが、機会があればお願いしたいところですね。
神さんに怒られそうだけど、しかもいまスピーカー(Bang&Olfusen for Macとやらでこれも買ったばかり)が修理に出てるんだけど、
来年の同時期くらいにそろえば、今年はいい年になりそうだと、
でも鬼に笑われちゃいますかね。
情報ありがとうございました。