おそらくオーディオに凝る人はカメラにもこだわる人も多いと思います。
最近話題のSigma DP1はまさにそうした人のためのカメラです。そこでこちらにもちょっと記事を書いておきます。
DP1はSigmaが3月初めに発売したばかりのコンパクトデジタルカメラです。
大きなむきだしのレンズを別にすると、一見するとちょっと落ち着いた外観の普通のコンパクトデジカメのように思います。しかしSigma DP1は普通のそうしたコンパクトデジカメにはない特徴をもつ画期的な新製品です。
1. 一眼レフと同じサイズの撮像素子を搭載したコンパクトデジタルカメラであるということ
デジタルカメラのスペックの要素として画素数というものがよく挙げられます。これはどれだけ細かい解像ができるかということを示しています。
いまはコンパクトデジタルカメラでも1000万画素を標榜するものもあります。一眼レフデジタルでも普通のラインのトップクラスは1200-1000万画素程度なので、これだけを見ると変らないようにも思えますが、実際には一眼レフデジタルの方がトータルではずっと高画質です。
それはCCD(CMOS)のサイズがコンパクトと一眼レフデジタルでは大きく差があるからです。端的に言って面積比で10倍近くもの差があります。それだけ多くの光を集めることができるので、サイズの大きな一眼レフではダイナミックレンジやノイズ特性、諧調再現性などで大きく有利になります。またボケの量も大きくなるので被写体をより際立たせることができます。
このDP1ではコンパクトながらほぼ一眼レフデジタルと同じくらいのAPS-Cに近いサイズを実現した大判撮像素子を使用しています。
(コンパクトでは世界初になります)
2. 撮像素子にフォビオンを搭載したコンパクトデジタルカメラであるということ
DP1は上に書いたように一眼レフ用の撮像素子をそのままコンパクトカメラに使用したという点がまず画期的ですが、さらに特徴的なのはその撮像素子がフォビオン(FOVEON)センサーであるということです。
普通のデジタルカメラでは一眼レフ、コンパクトを問わずにカラーフィルターというものを使用しています。
それは普通のCCD(CMOS)はそれぞれの一画素でひとつの色を再現できないからです。なぜならCCD(CMOS)はそもそも光の強弱しかわからないので、色を判別できません。
そのために色を再現するにはRGGBという4つの画素でひとまとまりのパターン(ベイヤーパターンといいます)を形成してそれぞれに青や赤以外をカラーフィルターを通してブロックします。それで透過する光の量を単色として認識します。つまり一画素(ひとつのドット)で単色しかわかりません。
しかしここが複雑なところですが、実際の画像は一画素でフルカラーを再現しています。これは自分の色を割り出すために隣接ドットの色を参考にして計算をしているのです。しかしそのため、髪の毛のような細い物体が各ドットを横断してしまうと計算ミスをして間違った色情報をわりだします。これを偽色といいます。
それを防ぐためにローパスフィルターというもので細かい像をわざと拡散させて計算ミスをしにくくします。そのためにピクセル等倍で見たデジカメの画像はなんとなくもやっとしています。
しかしこのフォビオンという素子は立体的に色をRGBで感知できるため、一ドットでフルカラーを直接検知することができます。そのため、上記のように細い物体が各ドットを横断しても計算ミスが発生することは少なく、そのためローパスフィルターがついていません。ピクセル等倍で見たフォビオンの画像は拡大してもきりっとしています。
つまり公称は1400万画素と書いてありますが、普通のカメラと同じ二次元的な解像力では約470万画素(2652x1768)と同じです。つまり470万画素(2652x1768)x3層(RGB)ということです。
このフォビオンはシグマの一眼レフカメラではずいぶん前から使われていたのですが、今回はそれがそのままコンパクトカメラに搭載されたということになります。
3. 高性能の単焦点レンズを搭載したコンパクトデジタルカメラであるということ
ここまででDP1がコンパクトにしては究極の画質を目指しているというのが分かってもらえたかもしれませんが、やはり最後の決め手はレンズです。
通常のデジカメがズームレンズを搭載しているのに対して、このDP1は単焦点レンズが搭載されています。
つまり広角の28mm相当の画角のみしか使えません。つまり望遠はありません(デジタルズームはあります)。
不便に見えるかも知れませんが、これはひとえに画質のためです。単焦点レンズはズームに比べると構造自体が単純で最適化や高性能化が可能です。解像力は高く、歪みも最小です。
ここまで述べてきたようにDP1は利便性を捨ててもコンパクトながら究極の画質にこだわる、というカメラなわけです。
実際に画質は一眼レフデジタルに比肩しうるもの、あるいはフォビオンの能力により追い越す部分もあるかもしれません。
何点かDP1のの試写がてら撮った写真を掲載します。
28mmという広角の単焦点なので、それを生かして撮るという点を工夫するのが面白いところです。それしかないため逆に割り切って工夫して撮ることができます。
広角というのは単に広く取れるという意味だけではなく、被写体との遠近感が強調されるということです(逆に望遠では遠近感は圧縮されます)。こうしたレンズの特性を考えながら撮るのが写真術の面白いところの一つです。
ちなみに大きさ比較のためにSR71と比べてみます。DP1はコンパクトと言っても最近の薄型デジカメに比べると一回り大きいサイズです。SR71と比べているのはうちのブログくらいだと思われます(笑)
ここの記事で書いているポータブルアンプにしても、利便性をかなりそこなうものです。でもよりよい音質を求めるためにはそれを納得してくれると思います。そうした意味ではDP1も似たところがあるかもしれません。
カメラについて詳しくはこちらのシグマのスペシャルサイトをご覧ください。
http://www.sigma-dp1.com/jp/index.html
フォビオンセンサーについてはこちらをご覧ください。
http://www.sigma-photo.co.jp/sd10/quality/index.htm
また、わたしの写真ブログでも記事をいくつか書いていますので興味のある方はどうぞ。
http://blog17gray.seesaa.net/category/4812879-1.html
興味ある方はフジヤさんでも取り寄せをしてもらえるそうですので、ちょっとカメラ専門店は入りずらいという方は中野に行ったときでも店長さんに相談してみてください。
写真をまじめに取り組みたいという人にはまず普通の一眼レフをお勧めします。ただ、ちょっと個性的なカメラが欲しいという人は要注目です。
Music TO GO!
2008年03月14日
この記事へのトラックバック
「Sigma DP1」は発売されてましたね。
大変興味深い記事でした。
写真の場所は東京国際フォーラムでしょうか。
カメラとオーディオはよく似ているような
気がしますね。
私もこの世界にどっぷりはまりそうな
気がします・・・恐ろしいんですが^^;
私も発売日にDP1を入手し愛用しています。
応答速度などには色々注文を付けたくなりますが、
APS-Cサイズ素子+Foveon x3+高性能ワイド単焦点レンズ、と言うだけで広角派の私はもう十分です。
21ミリ相当レンズ搭載機の出現を心待ちにしていますが、出ないでしょうね。
最近は、DP1と自分で改造したBolexマウントデジカメで、レンズ遊びを再開しました。
ずぶずぶ 再びです。
そうです、オーディオショウをやっていた国際フォーラムです。オーディオにも個性にあった試聴曲があるように、レンズにもそれにあった試写場所というのがあるわけです。
わたしは食もひとつ共通する気が(笑)
DP1はニッチ製品に見えてけっこう人気があるようで、好きなひとはたいてい買ってますね。
わたしは50mmがやはりほしいところです。21mmだしとGRデジタルみたいにワイコンの追加と言うのがあっても良さそうですね。シグマさんなら15mmくらいでフォビオンウルトラワイドというのを作って欲しいところです(^^
出たら買っちゃうんだろうな、多分。
私は広角派なので、我慢できそうにないです。