Music TO GO!

2008年03月11日

Headroom Micro Portable 2007

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1. HeadroomとMicro Portable 2007について

Headroom Micro Portable 2007はMicro Stackと呼ばれていたMicro DACとMicro ampが一体になったDAC内蔵型ポータブルアンプです。
Headroomはヘッドホンアンプでは一番の老舗と言えますが、ラインナップも豊富で製品は小さいポータブルのAirHeadから最強デスクトップのMaxまでいくつかの階層レベルで区別されます。また内蔵するDACやアンプのグレードなどオプションも多岐にわたり、モジュール化されています。
やや複雑になっていますが、最近はバージョンを示すために2006や2007という年号をつけて区別するようになりました。たとえば「2006のDesktopモジュールと2007のMicroモジュールを比べると音質は...」という具合です。年号で呼ぶようになったのは昨年のHeadFi全国大会のあたりにバッファのディスクリート化など大きな改修をしたあたりからだったと思います。(ちなみに車などでもありますが、アメリカにはイヤーモデルを設けて改良するという慣習があるようです)
Micro系列は昨年の記事でも書きましたが、ラインナップが増えた分で電池駆動できるものとできないものに分かれました。電池駆動できるのはこのMicro Portable 2007だけです。ほかのモデルはいわばコンパクト・デスクトップという感じでしょう。実際のところ、Headroomは今はデスクトップスピーカーやアンプも販売したりしていますので、その辺も踏まえての分化と言えるのかもしれません。

いままでのラインナップではMicroはポータブルの単体DACであるMicroDACと同じ筺体でポータブルアンプのMicroAmpに分かれていました。そのMicroDACとMicroAmpを組み合わせたある意味ポータブルでは最強の組み合わせをMicro Stackと言っていました。以前のMicroDAC関連の記事にあるようにわたしもとSR71とあわせてMicroDACを使っていましたが、音は良いとは言え、プレーヤーを含めて3ピースのボディを持つというのはかなりかさばります。そのMicro Stackを一体にしたものがこのMicro Portable 2007で、いわば待ち望んでいたものです。
Micro Portable 2007はHeadFiの昨年の全国大会で披露されたのが始めだと思います。ただしポータブルのDAC一体型アンプとしては先に発売されたiBasso D1に話題をさらわれた形となってしまいました。

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ボディーはDAC内蔵と言うこともあってやや大きめですが基本的には前作Microと同じです。かなり頑丈でHeadroomのTyllさんいわく車に踏まれても壊れないが、テストをするのはお勧めしかねるということです。並べてみるとiBasso D1とほぼ同じ大きさです。

筺体はMicroと同じものを使用していますが、電池は9Vではなく7.4V 2200mahの内蔵充電池になりました。内蔵充電池は最近のトレンドの一つで長短あるとは思いますが、Micro Portable 2007ではこの大容量を電池の持ちというよりは音質の方に振って内蔵DAC運用やアンプのA級バイアスに使用して高音質を得ているようです。
電池の持ちはアンプ単体で15-20hということで、DAC併用だともっと短くなるとのこと。正確に測っていませんが、日中はずっと演奏続けても大丈夫なのでそれほど短いということはないとおもいます。実際のところ、同時に使っているとiHP140の方が先に何回か切れてしまいます。わずか数時間というMicro DACから思うと長足の進歩と言えます。

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Micro Portable 2007に関しては仕様がはっきりしなかったのですが、LT6234が前段でAD8397を出力用として使用しているとのこと。またDACチップはMicro DACのときのようにシーラスロジックのCS4398ではなく、TIのPCM1793です。これはなぜかホームページには記載がなく、マニュアルの方に記載があります。

マニュアルでは入力切り替えがMicroDACのようにスイッチになっていますが、実際はiBasso D1のように自動で切り替わります。注意が必要なのは、D1では電源が立ち上がっていたときに接続されていたポートをチップで検知して切り替えを行いますが、Micro Portable 2007では多少異なります。
優先順位は1.アナログ -> 2.USB -> 3.光(同軸)となります(HeadfiのHeadroomフォーラムで直接確かめています)。
まずアナログ入力があるかないかはメカスイッチで検知されて優先になり、デジタルの中では入力ポートは常にスキャンされているようです。
そのため、D1の場合はもしiHP140を先に立ち上げていないと(あるいは光出力がOnになっていないと)、アンプを立ち上げなおし(リブート?)しなければなりませんが、Micro Portable 2007ではさきにアンプを立ち上げておいてもかまいません。その代りD1ではひとつのポートをアナログIN/OUTの両用として使えるという柔軟性があります。
またMicro Portableの場合はDACからの出力はラインレベルアウトはなく、プリアウトのみになります。

2. ポータブルアンプとしてのMicro Portable 2007

製品発売のアナウンスはMicro Portable 2007の方が早かったのですが、発売はD1が先になりました。リリースに時間がかかったのでiBasso D1にお株を取られた感はありますが、それだけのものはあります。


Micro Portable 2007の能力はiPodのアンプとして使ってもかなりのものがあり、SR71やMOVEなどと比べても引けを取るものではありません。一長一短あるけれども、DCアンプをうたっているせいか特に低域方向には強くて適度な重みが載っていて力強くしっかりした印象があります。説明書にもシグナルパスの最短化を意識したと記載されていて、全体にHeadroomのデスクトップ機を思わせる歯切れのよいダイナミックなスピード感が感じられ、Headroomの音作りの統一性も感じます。Micro Portable 2007の大きさはネックですが、大容量のバッテリーがこれらをもたらしたというとうなづける点はあります。

3. DAC一体型アンプとしてのMicro Portable 2007

システムはiHP-140とSys-Conceptの光ケーブルでMicro Portable 2007につないでいます。(一番上の画像です)
Sys-Conceptの光ケーブルは今回特注したさらに短いものですが、それは別に記事にします。
iHP-140にはOSとしてRockboxを入れてAppleロスレスをソースとして使用可能にしています。

2007j.jpg

端的に言うとトータルのDAC/Amp一体型として使用した場合、ポータブルシステムとしての音の再現力はiPodベースのシステムとは一線を画していて、iBasso D1も上回ります。
ただしヘッドホンを選びます。選ぶというのは、これだけの再現力を引き出すためにはそれなりのヘッドホンが必要であるということです。
いまのところ、これはという組み合わせはHD25-1 + Apuresoundケーブルです。まずスピード感と音のアタックが尋常ではありません。バンっというたたきつけるような音の切れ味はかつて感じたことのない気持ち良さを味わえます。特に低い打音で顕著に良さを実感できますが、これはアンプでのダンピングの高さとDACでのジッター低減の両方がそろっていないとなかなか実現できないと思います。また低音にたっぷりと重みが載っていて、薄さ軽さはありません。音は直線的に伸びていき、あいまいさはなくやや硬質感を感じるくらいです。
この気持ち良さにはHD25-1の適度なインピーダンスの高さと銀を主体にしたApuresoundケーブルの切れ味というのも加味されていると思います。

情報量と細部の解像力もかなりのレベルでiPodベースではなんとなく聞こえるようなライブ背景の客のささやきは、このシステムでははっきりとヴォーカルやギターの音と同一の主張を持つに至り、レイヤーを持った重なりとしてライブのリアルさを演出する一員となります。
また背景の黒さも特筆もので、いままでのアンプでもトップクラスと言えると思います。これはSNの向上や高感度IEMと合わせたときに実感できます。

2ピース構成でDAC込みとは言え、さすがにやや大きめではあります。しかしいったんこのくらいの音を聞いてしまうと手放せなくなってしまいます。これを聴くと美は細部に宿るという意味を再確認できます。まさに戸外で妥協なくオーディオを楽しんでいるという感じです。オーディオ趣味というのは単に音楽を聴くというところからさらに一歩踏み込んだ所にあると思います。そこを一歩踏み込むところの面白さ、というのを実感できると言えるかもしれません。
ただHD25だとシャープさは申し分ないんですが、どうしても音がコンパクトになってしまいます。その分で耳に近く、密度感のある濃いサウンドが楽しめますが、HD25の大きさでもうちょっと空間表現の豊かなハイエンド・ポータブルがほしいところです。
つまり良くなれば良くなるだけ欲が出る、というわけですね。
posted by ささき at 23:22| Comment(0) | TrackBack(0) | __→ MicroDAC, iHP-140 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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