前の記事でのKlipsch IMAGEの紹介に続いてIMAGEの使用感と考察を少し書いてみたいと思います。
1. パッケージ
パッケージは本体の割りには大きく、中にはiPodをいれて収納できるケースと本体のみ収めることのできる小さなケースがついています。
どちらも作りは悪くないですが、おそらく大きな方はatrioについていたものと似ていて、小さい方はUEのオプションであるIEMケースと同じように見えます。この辺は共通のOEM品なんでしょうね。
クリーニングキットと標準プラグとエアライン用のアダプターもついています。
2. 装着感
箱から出したIMAGEはデザインがスマートなだけに小ささが引き立ちます。大きさ的にはER4Pより一回り小さいくらいかも知れませんが、デザインとあいまって見た目よりも小さな感じがします。
実際に後でIMAGEを装着して街を歩いていたら、こっちの耳を不思議そうに見る人がいました。見たことのないイヤホンなので興味を引かれたのだろうと思ったんですが、手洗いで鏡を見て納得しました。みる角度によってはケーブルしか見えませんね、これ(笑)
持つというよりつまむという方が正しいように思えます。耳に掛けるとか特につけ方というのはなくて、真っすぐにいれることができます。そうするとするっと耳穴に吸い込まれて行くように入ります。
片手でするっとはまるところはカナルをつけるというよりイヤホンをつける感覚ににているくらいで、両手で格闘しながら耳に突っ込むという感じではありません。ただほんとにはまっているかがちょっと心配になるので、やはり両手で耳たぶをひっぱったりしてしまいます。奥にいれてもあるところでかならず止まるので入れ過ぎる心配はないと思います。
抜く時に傘のオチョコのようになるのでかなりぴったりはまっているようです。ただ使っているとすこしゆるくなり初めのきつさほどではなくなりますが、それでも十分なフィット感があります。
(マニュアルにはUE11のようなアーティスト式に後ろで止める装着が書いてあります)
ユニバーサルタイプなので正しい大きさのチップを選択する必要があるところは他と同じです。
付属にはシングルフランジのS・M・LとダブルフランジのSとMがあります。わたしはたいていのIEMではMサイズがあいますが、これに関してはLサイズがしっくりきます(写真はMサイズです)。あっさりといれる分でちょっと大きめのサイズの方がいいですね。これでもフランジ部分はすっぽりと耳に入っているようです。
遮音効果もなかなか高いようで、たしかにこのKlipschのイヤチップは装着感と遮音性を両立させているように思います。
難を言うとケーブルがすこしちゃちで、高反発ではなくからみやすいというところです。ただケーブルを重くしてしまうとimageの良さも半減するのでここはトレードオフというところでしょう。
3. 音質について
宮本笑里 Smile
iMod/SM4とER4Pとimage
まず入り口としては相対評価が分かりやすいと思うので、ER-4Pと比較してみます。iMod+SM4を使いました。
ER4Pと比較するとER4Pの方がすこしシャープでタイト、背景も黒くSN感が良く聴こえますが、IMAGEも楽器の分離や解像感ではそう劣らないように思えます。IMAGEはインピーダンスが50オームとこのクラスにしては高めですが、能率もかなり高めなため、この差は納得できるものだと思います。
他方で音場の広さや音の豊かさ、厚み表現でIMAGEの方がかなり良く、低域もIMAGEの方がかなり豊かでかつ解像感よく感じます。それでいて低域はそんなに張り出しているわけではありません。単純に低域が盛り上がっているだけならER-4Pの方が控えめでも質が良いと言えるかもしれませんが、IMAGEはそのまま低域方向にレンジが広く豊かで質が良いという感じです。量感はほどほどでタイトでパンチがあるという感じですね。低音部楽器の質感再現も良いです。
高域はIMAGEがある程度エージングされて落ちついてみるとER4Pの方が鋭い感じではあります。Westoneの人はアーマチュアはエージングがあまりないといいましたが、ケーブルなども含めてIEM全体としてはそれなりに音が落ち着くということがあると思います。
IMAGEは特にヴォーカルに良さがあって、肉質感がうまく再現されます。全体にIMAGEに比べるとER4Pは薄めで軽い感じがあります。音楽全般にわたってIMAGEの方が聴いていて楽しいですね。かつ楽器の分離など切れの良さも兼ね備えています。
4対1
一方で高価なだけにマルチドライバーモデルとも比べたくなります。
いま手元にはtriple.fiがないということもありますが、ここではあえてUE11と比べてみます。セットアップは同じiMod+SM4です。
ここはさすがに全域で見劣りを感じてしまうというのが率直なところで、特に高い方から低い底までの帯域にわたる再現性で、どうしてもIMAGEは小降りというかコンパクトです。解像力もスケール感もUE11の方がクラス上です。
これは比べる相手が適当でないように思えるかも知れませんが、ここで考察したいのはIMAGEとUE11のガチンコ勝負ではなくマルチの最たる4ドライバーのUE11とシングルドライバー(フルレンジ)のIMAGEの違いです。
ダイナミックレンジや音域が広い曲ではどうしても差はついてしまいますが、もともとコンパクトな曲、たとえばヴォーカルが中心となっている曲ではIMAGEのヴォーカル再現性がよいために意外と健闘したりします。発声は明瞭で歌詞がとても聴き取り安いと言えます。フライド・プライドでもshihoさんのヴォーカルは滑らかでかつ独特のハスキーさがよく表現されていますね。
ここで人の声に着目すると興味深いものがあることが分かります。
たとえばポッドキャストで良く聴くe-chat vancouverから英会話を聞いてみると、日本語でも英語でもUE11やtriple.fiではER-4Pに比べて膨らみ感というか口もとが大きい感があり、この人の声の再現の自然なリアルさがUE11やtriple.fiがどうしてもER-4Pに引けをとる部分だと思います。この辺はEtyのチューニングもあるでしょうけれども、マルチドライバーの位相の問題やクロスオーバーと関係があるように思えます。
IMAGEではER-4Pに肉薄するくらいに違和感は少なくリアルな再現性があります。それでいて、さきに書いたように音楽性も併せ持っているので、IMAGEは曲によってはとてもリアルで癖がなく聴き安いものを持っています。
総じて言うとUE11の方がいろんな意味で限界は高いがIMAGEはシンプルで小気味よいという感じです。複雑だがそれぞれの帯域特性に専門のドライバを持つ強みと、単発ゆえのシンプルで無理のない滑らかさの違いと言いましょうか。
例えていうと、4WDと電子制御で固めたGT-Rに比べたホンダS2000のような感じではないかとちょっと考えました。湾岸からアップダウンの峠までトータルで考えるとGT-Rの優位はあきらかですが、ドライブの醍醐味たるワインディングを飛ばす爽快さはどうでしょうか。
単純に価格だけで考えるとマルチドライバの方がお得かもしれませんが、IMAGEのように個性的な魅力は代えがたいものがあります。
nanoとIMAGEとアンプと
少しまとめるとIMAGEが音的に特徴的と思えるのはヴォーカルの再現性の良さと低域の質の良さだと思います。声の肉質感や低音部のテクスチャが良く再現されていて、これはアンプなしでもnanoの直差しでもよく分かります。
nanoから直に聴いた時にわたしの持ってるIEMの中では一番しっくりすると思います。nano+IMAGEはポケットに入るコンパクトなセットアップとしてなかなか魅力的なものがあります。
ただシンプルだけにアンプの差も良く対比して見られるので、iModとSR71/SM4/MOVEの違いもかなり分かる性能も秘めています。
この辺を次の機会には見ていくことにしたいと思います。
Music TO GO!
2008年01月17日
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こちらのレビューを参考にKlipsch Imageを
購入しました。まだ鳴らしはじめたばかりなの
ですが、スケール感こそ感じないものの、なん
ともダイナミックというかドラマチックな鳴り
ですね(もっとも、私は今までE4cとかEP720しか
聴いてきていないのですが…)。既に非常に気に
入っています。
今後もさまざまなレビューを期待しておりま
す。まずは良いものを紹介してくださったお礼
まで。
ちょっと個性的なものが買えるのが海外製品の魅力です。お楽しみください。