Music TO GO!

2007年12月10日

Qables iQube - インプレッション

iqube12.jpg

前記事ではiQubeの特徴を紹介しましたので、今回は音の印象を中心に書いていきたいと思います。

Millet Hybridに真空管らしさを期待したように、iQubeに関してはやはりデジタルアンプならではという音質を期待したいところです。(本稿では簡便のためにClass Dとデジタルアンプはとくに区別しません)
一般的なデジタルアンプの音的な利点はSNの高さといわれていて、アナログでは得られないほどの高いSN比を得ることが可能とも言われます。それを物量投入によらずにコンパクトにかつ発熱もせずに仕上げられることもまた利点です。
わたしも前にヤマハのデジタルパワーアンプを自宅試聴したことがありますが性能の高さには驚きました。特に楽器配置が明瞭で奥行き方向がはっきりわかったのを覚えています。またNU FORCEの試聴で感じたようなダンピングの高さ(出力インピーダンスの低さ)もあります。iQubeもまずスペックからして出力インピーダンスの低さが印象的です。スピーカーの常識をそのままヘッドホンにあてはめることはできないかもしれませんが、この点でも期待ができました。
このようにデジタルアンプには可能性があります。それを名門フィリップスで研究していたプロのベテラン技術者であるBruno Putzeysがポータブルアンプのために設計したというiQubeにはかなり興味がありました。そこでipastudioでプリオーダーがあったときには一番で予約してしまいました。


実際にiQubeを聴いてみるとその期待は裏切られませんでした。
ぱっと聴くとちょっと硬質感を感じるほど透明で芯が強い音を感じます。音の形はゆるさやあいまいさを感じさせることなくきれいな直線となって滑らかで音場に満ちていきます。音は立体的で自然に音が重なり、定位は明確です。音像は正確で端正な美があるように思います。

特筆すべきは音が明瞭で歯切れが良いことで、これはアンプの中でもトップレベルだと思います。音はかなりタイトにコントロールされていて、MOVEを聞くとゆるく感じるほどですね。SR71とくらべてもこの辺では優っている感があります。低域はかなり低く沈むますが、強調された感じはなく自然で十分な量感があり、歯切れの良さとあいまってほどよいパンチを感じます。
これは器楽曲のピッキングの心地良さだけではなく、ロックでもドラムの連打が気持ち良く感じるところです。

この音のタイトさは出力インピーダンスの低さが反映され、歪み感の少なさは入力のところでかなりうまい処理がされているように思います。一方では暖かみという感じはなく、全体的な音の基調はニュートラルさを感じます。ただし安価なデジタルアンプから予想されるようなかさついた硬さや無機的な感じはあまりありません。
性能が高いだけではなくバランスがとれていますが、この辺はさすがにプロの手による設計を感じさせます。

iqube1.jpg

いまのお気に入りの組み合わせはATH-ESW9で、iMod5.5GにGoldXSilverを組み合わせています。上の感想もこの組み合わせのものです。
UE11とMOVEではやや暖かみのあるCryoXSilverを組み合わせて暖色方向にすこし降っているのですが、この組み合わせではよりストレートに組んで銀系のような歯切れ良さを生かした方がよいとおもいます。

HD25とはやや硬さが感じられることがあるので、銅線とか暖かさを感じる組み合わせを選ぶと良いように思います。とくにリケーブルされたものほどきつくなりやすいので、適度な緩和剤がどこかに必要かも知れません。
UE11ではMOVEよりタイトでしまった音を出すのはさすがと言えます。ただし高能率のUE11(とE5c)ではボリュームを絞ってもヒスが聞こえます。これが背景の黒さを阻害して解像力を落としているように思えます。UE11がすごいと感じさせるのはそうした解像力のさらに先のところなのでここは残念です。ヒスは12時くらいまでは固定の大きさなのでアンプ内部から出ていると思われますが、デジタルアンプの瑕疵でしょうか。ただしESW9ではこうしたヒスは感じられません。トータルではUE11にはやはりMOVEを取ります。

総じて言うといままでのアンプとはやや性質が異なるので、やりすぎると冷たくメタリックになったり人工的に感じられたりということもあると思うので、いろいろと試行してみることも必要かもしれません。ただ元がとてもストレートで色がないので、染めようによっていかにでも変わるという面白さもありそうです。

iqube7.jpg iqube8.jpg

上は実際にiQubeとiPodを組み合わせたもので、写真中のゴムバンドはプリオーダー特典でついてきたものです。

問題点はちょっとプラグ間隔がオフセットしていてDockのケーブルをひねる必要があるという点と、ボリュームとプラグが通常の反対にあるのはやはり使いにくいということです。ただLプラグを常用したりする人はいいのかもしれません(付属のmini-miniケーブルはL-Lプラグです)。
また隠れた欠点としてバッテリーカバーがとても硬くて開けにくい、というのがあります。これはわたしが不器用なせいもあるかもしれませんが、マニュアルにもわざわざ開け方について1.5ページも解説しているのではじめはかなり開けにくいということだと思います。
わたしは布を滑り止めに使ってなんとか開けました。。二回目からはロックピンを少し緩めてやることで簡単に開くようになりました。
電池は単4が4本でアルカリでも充電池でも使えますが、音的には充電池の方がより透明感が高くiQubeにあっているように思います。たわしはSANYOの1000mAhのものを使っています。

下はSR71とのサイズ比較です。両者とも外観の美しさ、音の素晴らしさともに両立した魅力を持っていると思います。

iqube10.jpg

そうしたiQubeはたとえて言うなら、親しみやすさと言うよりは凛とした才色兼備のクールビューティー。
音楽的かというと意見が分かれるかもしれません。いわゆる真空管的な暖かみはないけれども、滑らかさはあります。リズムを刻むスピード感がかなり気持ち良くそういう意味では音楽的です。この辺はプロデューサーであるHansさんも意図してたところだともいます。
分析的かというと、むしろ音楽を正確に再現するという意味では歌い文句の通りにHiFiなアンプであるといったほうがよいかもしれません。

音を絵に例えると、暖かみという色彩の演出的な美しさはありませんが、きれいに直線が直線であることの美しさを感じます。それは本来の音が持っているHiFiの美しさだと思います。

posted by ささき at 22:18| Comment(5) | TrackBack(0) | __→ iQube | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
いつも参考にさせて戴いています。

現在HD60GD9EC-Tomahawk-須山カナルで聞いていて、背景の黒さには満足しているのですが、興味あるiQubeだとUE-11でヒス(背景ノイズ?)が出るとの事で少し残念です。

The PredatorはHornetやTomahawkより背景が黒いとの事で期待してます。

ES9Wのような木製も憧れますが、もう少し機器を繊細に扱えるようになってから購入してみたいと思います。
Posted by ET. at 2007年12月11日 00:56
むむむ、とても私好みな音色な気がします。
これは欲しいかも・・・うーむ。
Posted by Chris at 2007年12月11日 01:17
moveより良い感じっぽいですね〜!
moveでは電池室とジャックに
苦しめられてきたのでこれを機に
i-qubeに乗り換えようかと思う次第です。
音の歯切れが良いというのも好ましいですし
EDITION9で使うにはよさげですねー
Posted by kodie at 2007年12月11日 07:37
みなさん、コメントどうも。
Pico Vs Predator(PVP?)の影で、iQubeもわりと注目度がありますね!
Posted by ささき at 2007年12月11日 23:38
はじめまして、benoitと申します。
以前から、ヘッドホンやオーディオの基礎知識の宝庫として参考にさせていただいていました。
僕も、iQubeの購入に思い切りました。
これからも、よろしくお願いいたします。

ではでは
Posted by benoit at 2008年07月08日 09:42
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