- 到着とイントロ編
Ultimate Earsの新しいフラッグシップモデルであるカスタムIEMのUE-11 proが到着しました。
わたしはフルカスタムということでペインティングもオーダーしました。
デザインは知っている方も多い通り、FAKiEの"To the limit"のジャケットです。これは今回の使用に関してお願いをして、keicoさんに許可してもらいました。
外装ではクリアのシェルにカスタムでチタニウムプレートデザインをオーダーしています。なかなかシックにうまく出来ているのではないかと思います。
フィットは多少きついくらいなので問題ないようです。はじめはこんなの耳にはまるか?と思いますが、こつをつかむと恐ろしいほど耳にぴったりと吸い付きます。自分の耳型を取っているので当たり前かもしれませんが、ここはやはりカスタムです。
ビニール皮膜の部分はメモリーワイヤーになっていて曲げて耳にかけます。
今回は音のコメントから行きます。これにはとにかく驚きました。
triple.fiに比べると能率が高めでやや明るめですが、とてもクリアでtriple.fiが荒く思えるほどUE11の中高域は繊細です。STAXのように繊細さからかもしだされる空気感があってとても気持ちが良い雰囲気で全帯域を包み込みます。
低域はtriple.fiよりもさらに豊かでカスタムのアイソレーションのよさとあいまって驚くほどです。ミッドドライバーのおかげかこんなに低域が豊かなのに中域がtriple.fiのようにマスクされるという感じがしません。
しかし一番驚いたのは立体的で奥行きを感じる空間表現と言うか音場の深さ・立体感で、これはあまりIEMでは聴いたことがありません。
高低のレンジの広さ、繊細な解像力・独特の空気感とあいまって端的に言っておそろしいくらいリアルです。音楽表現にも優れていてクラシックはスケール感豊かに鳴らし、ロックはパワフルでインパクトがあります。
分かりやすい例えはやはりtriple.fiですが、良く聴いていくとずいぶんちがうというか、かなり進化しています。つい昨日まではtriple.fiが一番と思っていましたが、やはりUE11はクラスが違うという感じがします。さきほどtriple.fiで聴いていた曲をUE11で聴きなおすと新たに感動します。ありえない音、というのが率直な感想です。
箱から出したばかりでこんなに恐ろしいとか驚いたと連発して良いのか、と思いますがちょっとここでクールダウンします。
うちのサイトでは夏休みの自由研究として、一昨年は「HP-2とGrado」、昨年は「ヘッドホンのバランス駆動」といろいろと課題を選んできました。
今年は夏の自由研究がなかったんではないか、と思われている方もいるかもしれません。しかしレポートの提出は遅れましたが、実はこの夏は8月あたまのUE11の発売開始からUE11の発注でいろいろと苦労していました。
そこで今年の夏休みの自由研究のテーマを「カスタムIEM」として以下そのメモをまとめてみました。
*カスタムIEMとはなにか
最近UEのtriple.fiを使っていて気がついたのは最新のIEMの性能の高さと、高音質を得るための外出時でのアイソレーション(遮音)の必要性です。
アンプとヘッドホンの性能があがると解像力が高くなり細部の情報量や微妙な再現性が高くなります。また低域特性も豊かになります。これらは音再現をより豊かにしますが、その差である細部とか低域はきちんと外部雑音からアイソレートされてないと発揮できないということです。
たとえばHD25-1とリケーブルでもかなり高い音再現能力がありますが、HD25のアイソレーションではやや不足してしまい、外出時にはその真価を発揮できなくなることがあります。
そのため、まじめにIEMに取り組みたくなりました。カスタムタイプのIEMもほしかったこともあり、UE-11を注文することにしました。
基本的なことがらですがまず、IEMはインナー・イヤー・モニター(あるいはイン・イヤー・モニター)の略でいわゆるイヤホンを総称的にいう言葉です。iPodについてくるイヤホンも含みますが、最近では耳の穴に挿入するカナルタイプが増えてきています。ここでは以降カナルタイプのIEMについて言います。
もともとカナルタイプはミュージシャンがステージ上でモニターとして使用するもので、それがコンシューマー向けに転用されてきたという側面があります。たとえばE2cやE5cのcはコンシューマー向け販売経路という意味です。
カナルタイプはステージ上で目立たない、遮音性が高いという利点がありますが、耳の中に入れるため耳道の形が人によって異なり、カナルタイプのフィット感はたまたまイヤチップにあうかとかIEMの形状があうという製品との相性に左右されてしまいます。
そこで耳の型を取って、個人に合わせてIEMを作成するものを「カスタムIEM」と呼びます。これは量販店で購入するのではなく、メーカーや代理店に直接依頼して作成します。
たとえばUEのUE-11やWestoneのES-3、Sensaphonicsの2X-Sなどです。
カスタムIEMがどういうものかについては、こちらの装着方法ビデオを見ると分かりやすいと思います。
http://www.ultimateears.com/videos/
カスタムIEMにたいしてUE Triple.fi 10 proやShure E500など量販店に売っているものは一般に「ユニバーサルIEM」とも呼ばれます。ユニバーサル(Universal)は"一般的、自在・万能"というような意味です。たとえばユニバーサル・ジョイントなどの言葉が使われていると思います。
多くの市販IEMはユニバーサルタイプですが、カスタムIEMにはフィットに優れるが、かなり高価になってしまうという価格的な問題もあります。カスタムタイプが高価格であるのは手間がかかるからだと一般に説明されています。
そのカスタムIEMを作る工程はこちらにページがあります。
http://www.ilounge.com/index.php/articles/comments/why-custom-earphones-cost-so-much-inside-ultimate-ears-labs/
このようにカスタムIEMとユニバーサルIEMは基本的に別のものですが、互いに関連がある場合もあり、それぞれに得失があります。
*カスタムIEMとしてのUE-11 pro
今回わたしが注文したUltimate Ears社のUE 11 proはそれまでのUE 10 proに代わってフラッグシップとなるカスタムIEMで、この8月初旬から発売開始された新型です。
こうした高性能IEMではバランスド・アーマチュアというタイプのドライバ(発音体)を使っていますが、バランスド・アーマチュアは軽量小型で繊細な音が出せる代わりに帯域特性に劣るという欠点があるようです。そのため、こうした高性能IEMではスピーカーのツィーターとウーファーのようにいくつものドライバを組み合わせて高域から低域まで広い帯域を確保しています。また、こうしたマルチウエイ方式ではツィーターとウーファーにそれぞれ適切な帯域の音を振り分けるためにクロスオーバーという回路が必要です。
これまでは2Wayで高域用と低域用、あるいは低域用を二つ備えて2つないしは3つのドライバーを持つものが一般的でした。たとえばカスタムのUE 10 proやユニバーサルのtriple.fi 10 proは2Wayで3つのドライバーを持っています。ひとつが高域専用で、ふたつが低域専用です。ふたつ低域ドライバがあるので豊かな低域が出せます。
UE 11 proの特徴はさらに中域を専用のドライバーに受け持たせて、トータル4つものドライバーを備えた3Way、4ドライバー方式であるということです。
ミッドレンジが追加されたということに関して、(もはや都市伝説と化した)Westone3などでは中域の再現性向上というところがうたわれていましたが、UE 11でははじめの音のコメントにあるようにtriple.fiに比べても高い方も低い方もさらに進化しているので、その間をマスクされないように専用のドライバーで埋めたとも考えられます。
次回にはカスタムIEMに必要なものと実際の注文編を書きます。
Music TO GO!
2007年09月29日
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ここまで繊細な物になると、自作は特殊な職業に就いていないとお手上げですね。
それにしても、どこまで進化するのでしょう。
あ、認証コードが・・・(^^;
ささきさんのお気に入り度がここに反映されるわけですね。(笑)
ミッドレンジドライバ搭載というのがtriple.fiの弱点を
完全に埋めた感じですね。
ただカスタムだけに、こればかりはちょっと聴かせて
いただく、ということができなくて残念です(w
まあ人に聞かせられない分でコメントは好きに書けると言う話はあります(^^
ヘッドホンも真面目な2Wayが出てこないかなぁと妄想しつつ、自由研究の成果を読ませて頂く事にします。
次回の記事が楽しみです。
カスタムIEMも一般的になっていけば、大人の科学の付録で「実験カスタムIEM製作セット」とか、ディアゴスティーニから「週間カスタムIEM」とか出てくるんではないかと思います(笑)。
しかしうっかり認証コードの欄に「xin reference」と設定してしまうと数ヶ月はそのままにしないといけないので、認証コードの意味がないということに..(笑)
たしかにいろいろと濃いものを買ってたんで、いつも自由研究みたいなものだという感じもします。
今年はHDトランスポート研究も予定でしたが、なかなかこれはというのがなかったので、これはまた来年に期待です。
たしかにこうしたマルチドライバーのハイエンドIEMを聴いていると、ハイエンドヘッドホンでも性能向上に2Wayが必要な時期なんではないかと思いますね。
わたしもカスタムは初めてなので、UE11とtriple.fiを比べた場合にどの部分が4ドライバーやクロスオーバーなどの設計上の進化か、カスタム自体によるものなのか、ということはなかなか切り離して言えません。
しかし、カスタムによる効果は大きいと思いますので試してみる価値は大きいと思います。
Westone3ではユニバーサルとカスタムと両バージョンを買ってみようかと思ったりして(^^
聴けないのが残念です;;
同じ耳の形になりたいです・・・。
しかもFAKiEとはニクイですねぇ。
これ、考えたんですけど私の耳型を使ってメスタイプのアダプタを作るというのはどうでしょう(笑)
もちろん到着後の第一曲目の試聴はTo The Limitでした(^^