ただ基本的なところはやはりアンプなわけですから、まずポータブルアンプとしてのD1を考えてみました。
そこでiMod5.5GをソースにしてCryo X Silverで接続したシステムで他のアンプと比べていろいろと考えてみたところを書いてみます。
これははじめの一週間でアンプとして使ってみた印象になります。
ヘッドホンとしてはtriple.fiとHD25-1(apuresoundケーブル)を使っています。

ギターのピッキングやピアノの音などはきれいで楽器の音は分離が良く明瞭に感じます。
高域は十分にベルが響くきれいさとシャープさはありますが、さほど刺激的にとがっているわけではないように思います。そのためいつものロザンナ・キャッシュの女声ナレーションでS音チェックをしてもきつさをあまり感じません。低域はほどよいインパクトと量感があります。
全体のバランスも良くて、思ったのはXOのようにドライな感じがなく音色も好ましいということです。この辺でわりと常用して聴きたいという感じにはなります。
音場感も良く、奥行きよりは横に広い感じで、驚きはないかもしれないけれども厚みがある音再現とあいまってスケール感があって自然に良いと感じます。SR71ほどリラックスした感じではなく、適度に音の強さを前に出て鳴らします。

十分なくらいの解像力はあり、音はクリアでかちっとしていますが、トップクラスからみると解像力や情報量といったものはやや物足りなく思うところはあるかもしれません。
ひとつ面白いのはキャラクターの違うMOVEとの比較です。(MOVEはクロスフィードオフにしています)
MOVEと聴き比べると全体でクリアさや精細感はMOVEが上と感じます。またMOVEの得意とする帯域の広さの点では、特に低域はMOVEが深くより細かい低音の解像力があります。
たしかに細かいところではMOVEのほうが一枚上手ではあるけれども、一番大きな違いは性能の差というよりもむしろ先に書いたように音楽表現の違いと言った方が良いように思います。
ぱっと聴いて思うのはMOVEはタイトでシャープだけどもやや細みで全体に実際よりコンパクトに感じます。反面でD1は音に厚みがあって実際の広がりよりもスケール感を感じさせます。自然で違和感のない感じです。
また少し明るく明瞭なMOVEに比べるとD1はやや落ち着いた感じがします。分析的に聴くとMOVEに軍配をあげますが、全体に大きくとらえるとD1のほうが好ましいと思う人も多いと思います。
MOVEはちょっと驚く良さがあるけれども、D1は聴いていて普通に良いという感じ、という違いでしょうか。
個人的にはD1はバランスを考えて作った完成されている音だと思いますが、興味のある人はオペアンプ交換すればいろいろとまた違った印象もあるかもしれません。
操作感にも少しふれておきます。
フロントパネルは整理されてアナログ系の入出力のみが配置されています。ボリュームノブは大きくて適度にトルクがあるので使いやすく感じます。

かなり大柄ですが、実際に持ち運んでみるとそれほどでもないように思います。ただしやはりアンプ機能のみのものと比べると大きさの差はあります。
ちなみにサイズを比較してみるとこうなります。
左がMOVEで右がSR71です。

D1がもし一回りかふた回り小さいなら$200前後の単体アンプとしても良いと思うし、D1はD1なりの良さがあるので単体のポータブルアンプとしても成立していると思います。性能は最高ではないかもしれないけれども、かなり高いレベルにあります。
もちろんD1の真価はDACとの組み合わせですが、もしアンプ性能が良くないならば単体DACとして使った方が良いということになり、microDACと変わらなくなってしまいます。
そうした意味でひとつ結論を言えばD1はまず合格と言えるのではないかと思います。
そしてもうひとつ結論を付け加えると、今書いている時点でわたしはもうiHP140と組み合わせたデジタルでの使用に進んでいますが、後で考えるとこのDACあってのこのアンプの音、と考えるところもまたあります。
それはまた、やはりDACとアンプの一体型機という専用に組み合わされた面でのアンプの音作りがあると思うし、この分野のちょっと深いところではないかと思います。