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2025年09月01日

Windows 11にLE Audio登場、主な目的はゲーミング体験の向上

Windows 11にLE Audioが導入されました。これは下記リンクのマイクロソフトのWindows OS Platform Blogブログで発表されたものです。
https://techcommunity.microsoft.com/blog/windowsosplatform/cutting-the-wire-without-cutting-the-audio-quality/4447942

まず従来の問題として、WindowsでBluetoothヘッドセットで音楽を楽しみながらゲームをプレイし、ボイスチャットを始めると音質が突然モノラルで電話のような低品質に落ちるという難点があったということ。
この長年の問題に対するMicrosoftの解決策が、Windows 11におけるLE Audioのサポートです。つまり、今回のLE Audioのサポートはオーディオマニアにとっても興味深い進化ですが、Microsoftの主な目的は「ゲーミング体験の大幅改善」にあるようです。

なぜかというと、これは従来のBluetoothプロファイルであるA2DPとHFP(Hands-Free Profile:ハンズフリー通話)の制約によるものです。
つまり、ゲームでSEやBGMなどを流しているだけならA2DPでそれなりに高品質な再生ができるのですが、マイクやヘッドセットを使用するとその瞬間からゲームの音の再生が全てHFPに切り替わるからです。
よく知られるA2DPでは44kHzや48kHzのわりとCDなみの音質は確保できますが、HFPでの音質は Narrowband(8 kHzサンプリング) か Wideband(16 kHzサンプリング)となります。Widebandでも再現周波数帯域は約50 Hz〜7 kHz程度です。さらにモノラル専用でステレオ音声が使用できません。
これだと声の明瞭度は確保されますが、音楽再生では高域が不足し、空気感や広がりが失われ、電話のような音質に留まります。

これがLE Audioに変わると音質・帯域が向上します。しかし、留意点があります。
LE Audioというと、おそらく完全ワイヤレスイヤフォン用の高品質再生とか、マルチストリームを思い浮かべるかもしれません。しかし、それらはA2DPに代わるASCS/PACSプロファイルの機能です(AuracastはBAP/BASS)。ここのゲーミングの話ではあくまでHFPの代わりになるLE AudioのTMAP(Telephony and Media Audio Profile)プロファイルに代わることを指しています。(これも正確にいうと少し異なりますが、簡単にいうとそうなります)
TMAPを使うと、LE AudioのSuper Wideband音質(32 kHzサンプリング)が使用でき、 周波数帯域は約50 Hz〜14 kHzと向上します。 高域が大幅に拡張されたことにより、声の自然さや空間性が向上、音楽も日常的に楽しめる実用的なレベルになります。TMAPもコーデックはLC3が使われます。

このSuper Widebandは、LE Audioの標準的な機能としてBluetooth技術で定義されたもので、Microsoft固有の用語ではありません。ただし、MicrosoftはWindows 11でこれを「super wideband stereo」と呼んで強調していて、特にステレオ音声を維持しながら高品質なボイスチャットを実現する点をアピールしています。

まとめると、Windows11にLE Audioを導入することでゲーミング体験が高まり、約14 kHzまでの帯域が確保され、仲間たちの声がよりクリアで自然に聴こえます。ゲーム内の臨場感を損なうことなく、チームコミュニケーションがスムーズになります。BGMやSEもステレオできれいに聴こえます。
また、音声だけではなくLE AudioのLC3によって低遅延が可能となります。デバイス側では低消費電力が可能となります。

またビジネス用途への波及効果も考えられます。例えばMicrosoft Teamsなどの会議アプリで、空間オーディオ(声が画面上の位置から聴こえる機能)を活用可能になり、複数人参加の会議で集中しやすくなります。 また、HAP(Hearing Access Profile)のようなLE Audioの他のプロファイルは、聴覚支援デバイスとの連携を強化します。当然Auracastを用いたALS(聴覚補助システム)への活用もできるでしょう。
最後に要件をまとめておきます。

対応条件
Windows 11、バージョン 22H2 以降
Bluetooth LE Audio対応のヘッドセットやイヤフォン
PC本体も LE Audio をサポートし、対応ドライバーがインストールされていること。

確認方法
設定> Bluetoothとデバイス> デバイス
「デバイス設定」セクションで、「利用可能な場合は「LEオーディオを使用」」設定がオンになっていること

設定法の詳細
https://support.microsoft.com/en-us/windows/check-if-a-windows-11-device-supports-bluetooth-low-energy-audio-2b79c085-0353-4467-8306-ebb2657a91de
posted by ささき at 08:10 | TrackBack(0) | ○ PCオーディオ全般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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