Schiit Mimir (ホームページから)
https://www.schiit.com/products/mimir?srsltid=AfmBOop24KQhm5aQxNurjaqFU5o9TuA_s4m8enmil9nWUBSRD0hSYc4u
特徴は「Mesh DAC」と呼ばれるDACアーキテクチャです。これはChordの「パルスアレイDAC」のようなアーキテクチャ名です。
例えばパルスアレイDACでは「FPGA(デジタルフィルター)+ディスクリートのDA回路(モジュレーター)」という構成ですが、Mesh DACではこのFPGAベースのDACのFPGA部分をマイコンに置き換え、DAモジュレーターを市販DAC IC(ESS ES9028)に置き換えて低価格化させた点がポイントです。
つまり「マイコン(デジタルフィルター) + ES9028(モジュレーター)」となります。
またこのマイコン部分は独立した回路ではなく、実はMimirのUSBコントローラーでありSchiit独自設計のUNISON 384の内部の32bitプロセッサを使用しています。つまりiFIのXMOSを使う独自GTOフィルターの実装に似ています。しかしより簡易です。簡易というのはUNISON 384がPCM専用であり、DSDやMQAに対応していないということです。
なぜMesh(メッシュ) DACという名前なのかというと、英語でメッシュには網目という他に歯車が噛み合う、調和するという意味があり、マイコンとES9028が噛み合うまたは調和するという意味合いがあるからです。
さて、ここで疑問が生じます。
例えば手間のかかるDACとして知られるPCM1704は、よく言われる後処理のIV変換だけではなく、前段のフィルターも外に出せるようにはじめから設計されています。しかし、ESSはもともとオールインワン志向の設計なので、こうした前段のデジタルフィルターが有効かという点です。
そこでMimirではESSの中のフィルターをいじるのではなくバイパスし、ES9028の特性を研究した上でそれをカバーするようなデジタルフィルター(時間ドメイン最適化フィルター)をマイコンで実装したわけです。これはI2S伝送を使うことでレジスタを調整して可能なようです。
こうするとマイコンでESSの硬い音色も暖かくできます。そのオプションのひとつとして用意されたのがForkbeardというオプションモジュールです(+$50)。スマートフォンアプリで制御する内部モジュールで、EQやデジタルボリュームを実装してプリとしても使用でき、OTAアップデートも可能となります。
Forkbeardアプリ
整理するとMimirのプロックダイアグラムはこうなります。
[デジタル入力 (USB/AES/同軸/光入力) ]
↓
[Unison 384: デジタル入力コントローラ(32ビットマイクロプロセッサ内蔵)]
- 信号デコード、ジッター/ノイズ低減
- 時間ドメイン最適化フィルターにより、ES9028の位相歪みを最小化
- Forkbeard処理（オプション：EQ、ボリューム、位相反転、NOSモード、ラウドネス）
↓ [I2Sで伝送]
[ESS ES9028 デルタシグマDAC]
- レジスタ設定で標準フィルターをバイパス/最小化
- 6ビットデルタシグマモジュレーターでD/A変換
- ハイパーストリーム・アーキテクチャによるノイズシェーピング
↓ [電圧出力]
[アナログ出力段]
これによりMimirのDAC回路設計者が1990年に作ったハイエンドDACの価格1/10で、性能はMimirの方がより高いという抜群のコストパフォーマンスを発揮します。(1990年から物価変動を加味すると今だと$3000なので、$300のMimirと比較するということです)
まとめると、FPGAの代わりにマイコンを使用するとか、PCMのみなどの割り切りがあり、市販DACをモジュレーターとして使ってデジタル前処理でその限界を越えさせるというアイディアがあって、このハイコスパDACが登場したというわけです。
ちなみにSchiitは北欧神話の名前を使いますが、Mimir(ミーミル)は進撃の巨人に出てきたユミルと言葉は似てますが、ミーミルはアサ神族(一般にいう神)でユミルは巨人族(悪い方)なので反対の存在です。知恵の神の名はプロセッサベースのDACだからだと思います。
